(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】電子機器及び筐体部材
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20250121BHJP
H05K 5/00 20250101ALI20250121BHJP
【FI】
G06F1/16 312L
G06F1/16 312E
G06F1/16 312F
H05K5/00 B
(21)【出願番号】P 2024029880
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 武仁
(72)【発明者】
【氏名】堀内 茂浩
(72)【発明者】
【氏名】中西 爽
(72)【発明者】
【氏名】細貝 達哉
【審査官】小林 義晴
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第218054286(CN,U)
【文献】中国実用新案第215520555(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0034115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
縁部に立壁を有する筐体部材と、
表示面を有し、前記表示面とは反対側の背面が前記筐体部材の内面で支持されたディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルの表示面を覆い、前記ディスプレイパネルの外周側面から張り出した外縁部の端面が前記立壁に対向するガラスプレートと、
を備え、
前記ガラスプレートの外縁部は、コーナー部を有し、
前記立壁は、前記コーナー部を回り込むように配置され、前記コーナー部に対向する内壁面を有するコーナー壁部を有し、
前記コーナー壁部の内壁面には、
前記ガラスプレートの外縁部と対向し、前記コーナー部から離れる方向に凹んだ凹状穴が設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記立壁の起立方向を基準として、前記凹状穴の上端は、前記ガラスプレートの表面と同一以下の高さ位置にある
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記立壁の起立方向を基準として、前記凹状穴の下端は、前記ガラスプレートの裏面よりも低い位置にある
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器であって、
前記コーナー壁部の内壁面は、該コーナー壁部の根本側に向かって次第に前記ディスプレイパネル側へと傾斜した傾斜部を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の電子機器であって、
前記立壁は、前記ディスプレイパネルの外周側面に沿って延在する直線壁部を有し、
前記コーナー壁部の板厚は、隣接する前記直線壁部の板厚よりも大きい
ことを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項5に記載の電子機器であって、
前記コーナー壁部は、前記内壁面とは反対側で前記筐体部材の外面を形成する外壁面を有し、
前記コーナー壁部の前記内壁面及び前記外壁面は、それぞれ円弧形状を有し、
前記コーナー壁部は、コーナーの中間に向かって次第に板厚が増加している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1に記載の電子機器であって、
さらに、
前記筐体部材を有し、矩形状の外形を有する第1筐体と、
矩形状の外形を有し、前記第1筐体と隣接する第2筐体と、
前記第1筐体の一縁部と、前記第2筐体の一縁部とを相対的に回動可能に連結するヒンジと、
を備え、
前記立壁は、
前記ヒンジが連結される前記第1筐体の一縁部と直交する一対の縁部に沿って延在し、前記コーナー壁部の一方を形成する一対の縦壁と、
前記ヒンジが連結される前記第1筐体の一縁部とは反対側で前記一対の縦壁と直交するように延在し、前記コーナー壁部の他方を形成する横壁と、
を有し、
前記凹状穴は、前記一対の縦壁と前記横壁との間に形成される一対のコーナー壁部のそれぞれに設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
表示面を有するディスプレイパネルと、前記表示面を覆うと共に外縁部が前記ディスプレイパネルの外周側面から張り出すように設けられるガラスプレートと、を有するディスプレイアセンブリを支持するための筐体部材であって、
前記ディスプレイパネルの表示面とは反対側の背面を支持するためのプレート部と、
前記プレート部の縁部から起立した立壁と、
を備え、
前記立壁は、その内壁面に
前記ガラスプレートの外縁部と対向する凹状穴が設けられたコーナー壁部を有する
ことを特徴とする筐体部材。
【請求項9】
請求項8に記載の筐体部材であって、
前記コーナー壁部の内壁面は、該コーナー壁部の根本側に向かって次第に前記プレート部側へと傾斜した傾斜部を有する
ことを特徴とする筐体部材。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の筐体部材であって、
前記立壁は、前記コーナー壁部の両端からそれぞれ連続し、互いに直交する方向に延在した一対の直線壁部を有し、
前記コーナー壁部の板厚は、隣接する前記直線壁部の板厚よりも大きい
ことを特徴とする筐体部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び筐体部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、液晶ディスプレイ等で構成されたディスプレイパネルを備える。例えば特許文献1には、縁部に立壁を有する筐体部材の内面でディスプレイパネルを支持した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-5541号公報
【文献】特開2017-91150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、ディスプレイパネルの表示面がガラスプレートで覆われている。ガラスプレートはコーナー部を有する。ディスプレイパネルを支持する筐体部材の立壁も、ガラスプレートのコーナー部を回り込むように配置されるコーナー壁部を有する。従って、このような電子機器が落下等の衝撃を受けると、衝撃で変形した立壁がガラスプレートのコーナー部に衝突し、ガラスが破損又は損傷する懸念がある。
【0005】
この点、特許文献1の構成では、ガラスプレートの端面と立壁との間に樹脂製のベゼル部材に設けた薄い板片が介在している。このため、上記した落下等の衝撃時のガラスの破損等がある程度抑えられている。
【0006】
ところで、ディスプレイパネルの外周を囲むベゼル幅は、外観品質の向上のため、可能な限り幅狭に構成することが望まれている。特許文献1の構成では、ガラスプレートと立壁との間に介在するベゼル部材の板厚分だけベゼル幅が広がっている。一方で、この構成からベゼル部材を削減した場合は、立壁にガラスが直接的に干渉して破損又は損傷することが懸念される。
【0007】
特に、上記のような電子機器では、2つの筐体間を360度まで回転させてタブレット型PCとしても利用ができる機種もある(例えば特許文献2参照)。この種の電子機器は、一般的なクラムシェル型PCよりも高い位置、例えば起立したユーザの腰より上で使用される場合も多い。このため、この構成では落下時の衝撃が一層増大し、ガラスの破損等が一層問題となる。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ガラスプレートの破損や損傷を抑制することができる電子機器及び筐体部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係る電子機器は、縁部に立壁を有する筐体部材と、表示面を有し、前記表示面とは反対側の背面が前記筐体部材の内面で支持されたディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの表示面を覆い、前記ディスプレイパネルの外周側面から張り出した外縁部の端面が前記立壁に対向するガラスプレートと、を備え、前記ガラスプレートの外縁部は、コーナー部を有し、前記立壁は、前記コーナー部を回り込むように配置され、前記コーナー部に対向する内壁面を有するコーナー壁部を有し、前記コーナー壁部の内壁面には、前記コーナー部から離れる方向に凹んだ凹状穴が設けられている。
【0010】
本発明の第2態様に係る筐体部材は、表示面を有するディスプレイパネルと、前記表示面を覆うと共に外縁部が前記ディスプレイパネルの外周側面から張り出すように設けられるガラスプレートと、を有するディスプレイアセンブリを支持するための筐体部材であって、前記ディスプレイパネルの表示面とは反対側の背面を支持するためのプレート部と、前記プレート部の縁部から起立した立壁と、を備え、前記立壁は、その内壁面に凹状穴が設けられたコーナー壁部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、ガラスプレートの破損や損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、ディスプレイアセンブリの背面図である。
【
図4】
図4は、筐体部材の一部を拡大した斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、第1筐体のコーナー壁部及びその周辺部を拡大した平面図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す筐体部材からディスプレイアセンブリを取り外した平面図である。
【
図7】
図7は、
図5A中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る電子機器及び筐体部材について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。本実施形態の電子機器10は、第1筐体11と第2筐体12とをヒンジ14によって相対的に回動可能に連結した構成である。
【0015】
本実施形態の電子機器10は、筐体11,12間の角度位置に応じてノート型PC(ノートモード)やタブレット型PC(タブレットモード)として使用できる、いわゆるコンバーチブル型PCである。電子機器10は、筐体11,12間を0度~360度の角度範囲内で所望の角度位置に設定することができる。0度は、筐体11,12の面方向が互いに平行し、第1筐体11の正面11aと第2筐体12の表面(キーボード16)が対面する位置である。360度は、筐体11,12の面方向が互いに平行し、第1筐体11の背面11bと第2筐体12の底面(キーボード16側とは反対側の面)が対面する位置である。電子機器10は、コンバーチブル型PC以外にも、筐体11,12間を0度~180度程度の角度範囲内で所望の角度位置に設定することができる一般的なノート型PC又は一枚板状のタブレット型PC等、各種の電子計算機でもよい。
【0016】
第2筐体12は、平面視で矩形状の外形を有する扁平な箱体であり、第1筐体11と隣接している。第2筐体12の内部には、CPU等を搭載したマザーボード、バッテリ装置、メモリ、アンテナ装置等の各種電子部品が収容されている。第2筐体12の上面には、キーボード16及びタッチパッド17が臨んでいる。
【0017】
第1筐体11は、平面視で矩形状の外形を有し、第2筐体12よりも薄い扁平な箱体である。第1筐体11は、ディスプレイパネル18を搭載している。
【0018】
以下、第1筐体11及びこれに搭載された各構成要素について、ディスプレイパネル18の表示面18aを視認するユーザから見た方向を基準とし、左右方向をそれぞれX1,X2方向、上下方向をそれぞれY1,Y2方向、奥行方向をそれぞれZ1,Z2方向と呼んで説明する。X1,X2方向をまとめてX方向と呼ぶこともあり、Y1,Y2方向及びZ1,Z2方向についても同様にY方向、Z方向と呼ぶことがある。
【0019】
ディスプレイパネル18の表示面18aは、第1筐体11のZ1側表面(正面11a)を臨んでいる。表示面18aは映像や画像の表示面である。ディスプレイパネル18は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。ディスプレイパネル18は、例えばガラス、液晶層、及び導光板等を積層してそれぞれの層の外周縁部同士を両面テープや接着剤等で固定した構造である。
【0020】
ディスプレイパネル18の表示面18aはガラスプレート19で覆われている。ガラスプレート19はディスプレイパネル18も含め、第1筐体11の正面11aの略全面を覆うカバーガラスである。ガラスプレート19はタッチ操作に対応したタッチガラスで構成することができる。ガラスプレート19はタッチ操作に非対応でもよい。
【0021】
第1筐体11は筐体部材20を有する。
図2は、第1筐体11を構成する筐体部材20の模式的な正面図である。
図2では、筐体部材20の内面20a(背面11bの裏面)と、この内面20aに設置された所定の構成要素とを図示している。
【0022】
筐体部材20は、矩形状のプレート部21と、プレート部21の外周縁部から起立する立壁22とを有する。筐体部材20は浅いバスタブ形状を成している。プレート部21は、第1筐体11のZ2側表面(背面11b)を形成する。立壁22は、プレート部21の四周の大部分を囲むように設けられ、Z1方向に起立している。筐体部材20は、例えば金属製であり、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金で形成されている。筐体部材20は樹脂製でもよい。筐体部材20は、例えば炭素繊維強化樹脂で形成したプレート部21の周囲に立壁22を構成するフレーム材を接合した構成でもよい。
【0023】
筐体部材20は、ディスプレイパネル18の表示面18aとは反対側の背面18bを内面20aで支持する。具体的には、ディスプレイパネル18の背面18bは、プレート部21の内面20aに両面粘着テープ24を用いて固定される。
【0024】
ヒンジ14は、第1筐体11のY2側縁部(縁部11c)に左右一対で連結されている。
図2中の参照符号14aは、ヒンジ14が固定されるヒンジ固定部である。筐体部材20が金属製の場合、ヒンジ固定部14aはプレート部21に対する直接加工によってねじ山を形成することができる。筐体部材20が樹脂製の場合、ヒンジ固定部14aはヒンジ14をねじ止め可能な金属ブラケットで構成することができる。筐体部材20は、ヒンジ14が配置される切欠部20bをヒンジ固定部14aの側部に有する。
【0025】
本実施形態のディスプレイパネル18は、表示面18aにガラスプレート19を固定したディスプレイアセンブリ26として用いることができる。上記したように、ディスプレイパネル18の背面18bは両面粘着テープ24で筐体部材20に固定される。この際、ガラスプレート19は、その外周が立壁22の内周に沿って延在する。これによりディスプレイアセンブリ26が筐体部材20に組み付けられる。
【0026】
次に、筐体部材20に対するディスプレイアセンブリ26の組付構造を説明する。
【0027】
図3は、ディスプレイアセンブリ26の背面図である。
図4は、筐体部材20の一部、具体的にはコーナー壁部CW1及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図5Aは、第1筐体11のコーナー壁部CW1及びその周辺部を拡大した平面図である。
図5Bは、
図5Aに示す筐体部材20からディスプレイアセンブリ26を取り外した平面図である。
図6は、
図5Bに示す筐体部材20の形状説明図である。
図7は、
図5A中のVII-VII線に沿う模式的な断面図である。
【0028】
先ず、立壁22の概略構成を説明する。
【0029】
図2、
図4~
図7に示すように、立壁22は、第1筐体11の内側を臨む内壁面22aと、内壁面22aと反対側で第1筐体11の外側を臨む外壁面22bとを有する。内壁面22aは、ディスプレイパネル18の外周側面18cの方向を向いている。外壁面22bは、必要に応じて表面が塗装され、筐体部材20の外面を形成する。
【0030】
立壁22は第1筐体11の四周を囲むように延在している。立壁22は、X方向に沿って延びる一対の横壁30,31と、Y方向に沿って延びる一対の縦壁32,33とを有する。壁30~33は、X方向又はY方向に沿って延在する直線状の立壁(直線壁部)である。
【0031】
一方の横壁30は第1筐体11のY1側縁部(縁部11d)を構成する。横壁30は縁部11dの略全長に亘って延在している。本実施形態の第1筐体11は、縁部11dの長手方向の中央部に外側(Y1側)に膨出した膨出部34を有する(
図2参照)。膨出部34は、立壁22(横壁30)とディスプレイパネル18の外周側面18cとの間のスペースを拡大し、高性能なカメラモジュール36の設置スペースを確保したものである。カメラモジュール36はカメラレンズ36aを備える。カメラレンズ36aは動画撮影等に用いることができるカメラであり、中心に集光用のレンズを有し、レンズの裏側にイメージセンサが設けられている。カメラモジュール36は、さらにIRLED(赤外線カメラ)及び照度センサ等を備えることもできる。
【0032】
縦壁32,33はY方向に沿って延在し、それぞれ横壁30,31と直交する。これにより立壁22の四隅にはコーナー壁部CW1~CW4が形成されている。直線壁部である横壁30及び縦壁32,33は、コーナー壁部CW1,CW2の両端からそれぞれ連続し、互いに直交する方向に延在している。
【0033】
図2及び
図4に示すように、横壁30は、内壁面22aの下(立壁22の根本側)に支持面22cを有することができる。支持面22cは、内面20aよりも一段高い高台の上面であり、内壁面22aの下端からY1側に突出している。支持面22cは、後述する樹脂部材52を支持することができる。支持面22cは、少なくともY1側の横壁30に設けられるが、他の壁31~33にも同様に設けてもよい。
【0034】
本実施形態の横壁30は、コーナー壁部CW1,CW2の側方に凹み24aを有する。凹み24aは支持面22cの一部をY1方向に切り欠いたものである。凹み24aは、両面粘着テープ24の端部を配置することができる。横壁30は、さらに凹み24aとコーナー壁部CW1,CW2との間にも支持面22cをY1方向に円弧状に切り欠いた凹み37が形成されている。凹み37は、電子機器10が床面等に落下した際の衝撃でディスプレイパネル18の角が立壁22と衝突することを避けるための逃げ部である。
【0035】
このような立壁22のコーナー壁部CW1,CW2は、凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44の全部又は一部を有することができる。これら凹状穴40等の詳細は後述する。
【0036】
次に、ディスプレイアセンブリ26の構成を説明する。
【0037】
図3、
図5A及び
図7に示すように、ディスプレイアセンブリ26は、ディスプレイパネル18の表示面18aにガラスプレート19を固定した積層体である。
【0038】
ガラスプレート19は、表示面18aに対して透明な粘着部材50で固定することができる。ガラスプレート19の表面積は、ディスプレイパネル18の表面積よりも一回り大きい。このためガラスプレート19は、ディスプレイパネル18の外周側面18cから外側に張り出した庇状の外縁部19aを有する。
【0039】
ガラスプレート19は、外縁部19aの端面19bが立壁22の内壁面22aと所定の隙間Cをあけて対向する。隙間Cは、例えば0.2mmである。具体的には、四辺の立壁22のうち、Y1側の横壁30及び左右の縦壁32,33は、内壁面22aが隙間Cをあけて端面19bと対向する。なお、Y2側の横壁31は、端面19bとの間にはヒンジ14や配線に関連する部品が配設されるため、内壁面22aと端面19bとの隙間は、例えば10mm以上と広い。
【0040】
ガラスプレート19の四隅には、筐体部材20のコーナー壁部CW1~CW4に沿ってカーブしたコーナー部C1~C4が形成されている。Y1側の外縁部19aの長手方向の一端及び他端に設けられたコーナー部C1,C2は、コーナー壁部CW1,CW2の内壁面22aに対して隙間Cをあけて対向する。なお、Y2側の外縁部19aの両端に設けられたコーナー部C3,C4は、コーナー壁部CW3,CW4に対して上記した横壁31との間の広い隙間(例えば10mm以上)と同様な隙間をあけて配置される。
【0041】
ディスプレイアセンブリ26は、さらに、左右一対の樹脂部材52,52を有することができる。樹脂部材52は、ガラスプレート19のY1側の外縁部19aの裏面19cに粘着部材54を用いて固定することができる(
図7参照)。粘着部材54は両面粘着テープ、粘着剤又は接着剤を例示できる。以下、ガラスプレート19のY1側でX方向に延在する外縁部19aを「外縁部19a1」と呼ぶこともある。外縁部19a1には、長手方向の中央部に膨出部34の形状に対応したY1側への膨出部19a2が形成されている。筐体部材20は膨出部34を持たない構成としてもよい。この場合、ガラスプレート19の膨出部19a2も省略し、外縁部19a1をX方向に沿って延びる直線状に形成することができる。
【0042】
図3及び
図7に示すように、樹脂部材52は、X方向に延在する帯板状の樹脂パーツである。X1側の樹脂部材52は、コーナー部C1に近接する位置から膨出部19a2の手前まで延在している。X2側の樹脂部材52は、コーナー部C2に近接する位置から膨出部19a2の手前まで延在している。樹脂部材52は、横壁30の支持面22c上に僅かな隙間をあけて配置される。各樹脂部材52は、例えば横壁30の支持面22cに形成された凹部や板片に対して位置決めされ又は係合する突起やフックを形成することができる。
【0043】
このようなガラスプレート19は、外縁部19a1の両端のコーナー部C1,C2が狭小な隙間Cを介して立壁22のコーナー壁部CW1,CW2に対向する。つまりコーナー壁部CW1,CW2は、それぞれコーナー部C1,C2を回り込むように互いに近接して配置される。この際、隙間Cにはベゼル部材のような樹脂パーツが介在していない。これにより電子機器10はディスプレイアセンブリ26を囲むベゼルの幅狭化を図っている。
【0044】
一方、Y2側のコーナー部C3,C4は、コーナー壁部CW3,CW4からある程度の距離をあけた位置に配置される。縁部11cには金属ブラケット14a等が配置されるため、ベゼルの幅狭化には限界があるからである。なお、ヒンジ14や金属ブラケット14aの構造等によっては、コーナー壁部CW3,CW4がコーナー部C3,C4を回り込むように近接配置される場合もあり得る。
【0045】
このように、本実施形態の電子機器10は、少なくともコーナー部C1,C2とコーナー壁部CW1,CW2が互いに近接した位置、例えば0.2mmの隙間Cをあけて対向する。このため、電子機器10は、特にコーナードロップと呼ばれるコーナー壁部CW1,CW2を下にした落下の衝撃を受けた際、立壁22のコーナー壁部CW1,CW2が第1筐体11の内側に向かって変形する懸念がある。そうすると、変形したコーナー壁部CW1,CW2が端面19bに衝突し、ガラスプレート19が破損又は損傷する懸念がある。特に筐体部材20は、アルミニウム合金等の金属製とすることができる。この場合、ガラスプレート19に金属製の立壁22が当接することで、ガラスプレート19の破損や損傷が一層懸念される。
【0046】
そこで、本実施形態の電子機器10は、
図4、
図5B及び
図7に示すように、コーナー壁部CW1,CW2に凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44を設けることができる。
【0047】
凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44は、コーナー壁部CW1,CW2がガラスプレート19に衝突することを抑制するための構造である。凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44は全てを同時に備えることが最も好ましい。これらは、いずれか1つ又は2つのみ、例えば凹状穴40のみを備えた構成とすることもできる。コーナー部C3,C4とコーナー壁部CW3,CW4とが互いに近接している場合等では、凹状穴40等はコーナー壁部CW3,CW4にも設けることができる。
【0048】
以下、
図4~
図7に示すように、X1側のコーナー壁部CW1の構成を代表的に説明する。X2側のコーナー壁部CW2は、
図4~
図7に示すコーナー壁部CW1と左右対称構造である以外は同一又は同様な構造とすることができる。そこで、コーナー壁部CW2についての詳細な説明は省略する。
【0049】
先ず、凹状穴40は、コーナー壁部CW1の内壁面22aに設けられた繰り抜き状の凹みである。凹状穴40は、ガラスプレート19のコーナー部C1から離れる方向、つまり内壁面22aから外壁面22bに向かう方向に凹んでいる。凹状穴40はコーナー部C1の外縁に沿って弓なりにカーブしている。凹状穴40は、コーナー壁部CW1が変形し、ガラスプレート19側に向かって移動した際、内壁面22aがコーナー部C1に衝突することを回避するための逃げ形状である。
【0050】
図7に示すように、立壁22の起立方向(Z1方向)を基準とした場合に、凹状穴40の上端40aは、ガラスプレート19の表面19dと同一以下の高さ位置にあることができる。ガラスプレート19の表面19dは、裏面19cの反対側の面であり、第1筐体11の正面11aの大部分を構成する面である。
図7に示す構成例では、上端40aは表面19dよりも高さHだけ低い位置(Z2側)にある。高さHは、例えばガラスプレート19の端面19bに設けた面取り部19d1のZ方向高さと同程度に設定することができる。本実施形態の高さHは、例えば0.1mmである。
【0051】
立壁22の起立方向を基準とした場合に、凹状穴40の下端40bは、ガラスプレート19の裏面19cよりも低い位置(Z2側)にあることができる。
図7に示す構成例では、裏面19cのZ方向高さは、凹状穴40のZ方向高さの中央付近にある。
【0052】
次に、傾斜部42は、コーナー壁部CW1の内壁面22aに設けられた傾斜面である。傾斜部42は、コーナー壁部CW1の根本側(Z2側)に向かって次第にディスプレイパネル18側(プレート部21側)へと傾斜している。傾斜部42はコーナー壁部CW1に沿ってカーブする内壁面22aに沿ってカーブしている。傾斜部42は、コーナー壁部CW1の根本部分に設けられた勾配である。傾斜部42はコーナー壁部CW1の内周を回り込むバンク形状を成している。傾斜部42は、電子機器10のコーナードロップ時にコーナー壁部CW1がガラスプレート19側に変形することを抑制するための補強形状である。
【0053】
傾斜部42の長さは、コーナー壁部CW1と隣接する横壁30及び縦壁32まで及ぶことができる。
図4及び
図5Aに示す構成例の傾斜部42は、一端部42aが横壁30の内壁面22aまで達し、他端部42bが縦壁31の内壁面22aまで達している。
【0054】
コーナー壁部CW1は、傾斜部42を有することにより高い剛性を有する。特にコーナー壁部CW1は、凹状穴40を設けながらも傾斜部42によって十分な強度が担保することができる。
図4及び
図7に示すように、凹状穴40は、一部が傾斜部42を繰り抜くように形成されている。換言すれば、傾斜部42の上端は、凹状穴40の下端40bよりも上方(Z1側)に設定することができる。
【0055】
次に、厚肉部44は、コーナー壁部CW1の板厚t1を、隣接する横壁30及び縦壁32の板厚t2よりも大きくしたものである(
図5B参照)。つまりコーナー壁部CW1は、外周側面18cに沿って延在する直線壁部(壁30,32,33)よりも大きな肉厚を有することができる。厚肉部44は、コーナー壁部CW1の板厚自体を増大させることで、電子機器10のコーナードロップ時にコーナー壁部CW1がガラスプレート19側に変形することを抑制するための補強形状である。
【0056】
図5Bに示すように、コーナー壁部CW1の内壁面22a及び外壁面22bは、それぞれ円弧形状(四半円形状)を有する。コーナー壁部CW1は、直線壁部(壁30,32)との境界B1,B2からコーナーの中間Mに向かって次第に板厚が増加している。これによりコーナー壁部CW1は、中間M付近の板厚が最大となるように板厚が変化している。境界B1は内壁面22a側の境界を示す。境界B2は外壁面22b側の境界を示す。
【0057】
このような厚肉部44は、コーナー壁部CW1の中間Mを中心として、横壁30側に延びた部分と、縦壁32側に延びた部分とを均等な対称構造とすることが好ましい。これによりコーナードロップ時に厚肉部44の各所で意図しない応力集中が生じることを抑え、コーナー壁部CW1の変形をより効果的に抑えることができる。
【0058】
図6中に1点鎖線で示す仮想円22a1は、コーナー壁部CW1の内壁面22aを通過する円の軌跡を延長したものである。仮想円22b1は、コーナー壁部CW1の外壁面22bを通過する円の軌跡を延長したものである。仮想円40cは、凹状穴40の奥部を通過する円の軌跡を延長したものである。
図6中の中心点O1は仮想円22a1の中心を示す。中心点O2は仮想円22b1,40cの中心を示す。
図6中の半径r1,r2,r3は、それぞれ仮想円22a1,22b1,40cの半径を示す。
【0059】
図6に示すように、内壁面22aを描く仮想円22a1の中心O1は、外壁面22bを描く仮想円22b1の中心O2よりも筐体部材20の内側にオフセットした位置にある。より具体的には、中心O1,O2は、コーナー壁部CW1の中間Mを通る45度線上にあり、中心O2が中心O1よりも内壁面22aに近い位置にある。なお、本実施形態の場合、仮想円22a1の半径r1は仮想円22b1の半径r2よりも僅かに小さいか又は同一とすることができる。仮想円40cの半径r3は、ガラスプレート19のコーナー部C1の半径と同一とすることができる。
【0060】
これによりコーナー壁部CW1では、内壁面22aと直線壁部(壁30,32)との境界B1と、外壁面22bと直線壁部(壁30,32)との境界B2とが、X方向又はY方向に位置ずれする(
図6参照)。その結果、コーナー壁部CW1は、壁30,32との境界B1,B2から中間Mに向かって均等に肉厚が増大する厚肉部44を形成することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、縁部に立壁22を有する筐体部材20と、背面18bが筐体部材20の内面20aで支持されたディスプレイパネル18と、ディスプレイパネル18の表示面18aを覆い、外周側面18cから張り出した外縁部19aの端面19bが立壁22に対向するガラスプレート19とを備えることができる。立壁22は、ガラスプレート19のコーナー部C1,C2を回り込むように配置され、コーナー部C1,C2に対向する内壁面22aを有するコーナー壁部CW1,CW2を有する。コーナー壁部CW1,CW2の内壁面22aには、コーナー部C1,C2から離れる方向に凹んだ凹状穴40が設けられている。
【0062】
本実施形態の筐体部材20は、ディスプレイパネル18と、外縁部19aが外周側面18cから張り出すように設けられるガラスプレート19とを有するディスプレイアセンブリ26を支持するために用いることができる。筐体部材20は、ディスプレイパネル18の背面18bを支持するためのプレート部21と、プレート部21の縁部から起立した立壁22とを備える。立壁22は、その内壁面22aに凹状穴40が設けられたコーナー壁部CW1,CW2を有する。
【0063】
このような電子機器10及び筐体部材20は、例えばコーナードロップ等の外力でコーナー壁部CW1,CW2が第1筐体11の内側に向かって変形する可能性がある。この場合にも、電子機器10は、コーナー壁部CW1,CW2の内壁面22aに設けた凹状穴40でガラスプレート19の端面19bを逃げることができる。その結果、電子機器10は、立壁22がガラスプレート19の端面19bに衝突することを抑制できる。これにより電子機器10は、落下等の衝撃でガラスプレート19が破損又は損傷することを抑制できる。
【0064】
ここで
図7に示すように、コーナー壁部CW1(CW2)に外力Fが付与された場合を考えてみる。この場合、立壁22は、図中に矢印で示す方向(移動方向)Dに向かって変形することが想定される。立壁22は、起立方向での上部(Z1側の先端部)が最も剛性が弱いためである。そうすると、立壁22は、凹状穴40が端面19bを飲み込むようにガラスプレート19側に移動する。その結果、内壁面22aが端面19bに衝突することが回避される。
【0065】
そこで、凹状穴40の上端40aは、Z方向でガラスプレート19の表面19dと同一以下の高さ位置にあると、端面19bとの干渉を効果的に回避できる。また、凹状穴40の下端40bは、Z方向でガラスプレート19の裏面19cよりも低い位置にあると、端面19bとの干渉を効果的に回避できる。
【0066】
特に、電子機器10は、筐体11,12間を360度まで回転させてタブレット型PCとして利用される場合がある。この場合、電子機器10は、一般的なクラムシェル型PCよりも高い位置、例えば起立したユーザの腰より上で使用される場合がある。しかしながら、電子機器10は、このような高さから落下した場合でも、凹状穴40によってガラスプレート19の破損等を抑制することができる。
【0067】
電子機器10及び筐体部材20は、コーナー壁部CW1,CW2の内壁面22aに傾斜部42を有することもできる。電子機器10及び筐体部材20は、隣接する直線壁部である横壁30及び縦壁32,33の板厚t2よりもコーナー壁部CW1,CW2の板厚t1を大きくした厚肉部44を有することもできる。そうすると立壁22は、コーナー壁部CW1,CW2自体の強度が向上する。その結果、電子機器10は、落下等の衝撃でコーナー壁部CW1,CW2が変形すること自体を抑制でき、ガラスプレート19の破損等を抑制できる。
【0068】
ここで電子機器10の落下実験の結果を説明する。この落下実験は、コーナー壁部CW1,CW2に凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44を有する電子機器10(実施例)と、凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44を有さない電子機器(比較例)とを用いた。落下実験では、実施例の電子機器10及び比較例の電子機器について、それぞれ高さ650mm、700mm、750mmから床面上に自由落下させた。
【0069】
実験の結果、比較例の電子機器は、650mmではガラスプレート19が破損しなかったが、700mm及び750mmではガラスプレート19が破損した。一方、実施例の電子機器10は、650mm、700mm、及び750mmのいずれでもガラスプレート19が破損しなかった。これにより凹状穴40、傾斜部42、及び厚肉部44が落下時のガラスプレート19の破損抑制に効果があることが確認できた。
【0070】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
10 電子機器
11 第1筐体
12 第2筐体
14 ヒンジ
18 ディスプレイパネル
19 ガラスプレート
19a,19a1 外縁部
19b 端面
20 筐体部材
22 立壁
22a 内壁面
26 ディスプレイアセンブリ
40 凹状穴
42 傾斜部
44 厚肉部
C1~C4 コーナー部
CW1~CW4 コーナー壁部
【要約】
【課題】ガラスプレートの破損や損傷を抑制することができる電子機器及び筐体部材を提供する。
【解決手段】電子機器は、縁部に立壁を有する筐体部材と、表示面を有し、前記表示面とは反対側の背面が前記筐体部材の内面で支持されたディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルの表示面を覆い、前記ディスプレイパネルの外周側面から張り出した外縁部の端面が前記立壁に対向するガラスプレートと、を備え、前記ガラスプレートの外縁部は、コーナー部を有し、前記立壁は、前記コーナー部を回り込むように配置され、前記コーナー部に対向する内壁面を有するコーナー壁部を有し、前記コーナー壁部の内壁面には、前記コーナー部から離れる方向に凹んだ凹状穴が設けられている。
【選択図】
図4