(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】身長を測定するための方法、システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20250121BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
G06T7/00 660Z
A61B5/107 400
(21)【出願番号】P 2024044389
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023046728
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517079995
【氏名又は名称】株式会社アークシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘一
【審査官】菊池 伸郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-096988(JP,A)
【文献】特開2020-056644(JP,A)
【文献】国際公開第2023/041181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00-7/90
G06V 10/00-40/70
A61B 1/00-90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、対象の身長を決定するために、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップ
を含む方法であって、
頭頂部を表す前記位置を、前記対象の腰を表す位置と、前記対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記頭頂部位置決定ステップは、
前記対象の表面を表す三次元点群データが含む複数の点のうち、頭頂部位置候補である1以上の点を決定するステップであって、頭頂部位置候補である点は、
腰を表す前記位置から頭部を表す前記位置に向かうベクトルと、頭部を表す前記位置から当該点に向かうベクトルとがなす角度が所定の角度未満又は以下である
という条件を少なくとも満たす点である、ステップと、
頭頂部位置候補である前記1以上の点のうち、頭部を表す前記位置との間の距離が所定距離未満又は以下である最も遠い点を頭頂部の前記位置として決定するステップと
を更に含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、頭頂部位置候補である点は、
当該点から、腰を表す前記位置と頭部を表す前記位置とを通る直線まで延びる法線の長さが、所定の長さ未満又は以下である
という条件を更に満たす点である、方法。
【請求項4】
請求項1から3のうちの何れか一項に記載の方法であって、
コンピュータが、前記対象の複数の部分の各々を表す位置を決定する複数位置決定ステップ
を更に含み、
前記複数位置決定ステップは、
前記対象が撮像された二次元画像を取得するステップと、
前記二次元画像における前記対象の前記複数の部分の各々を表す二次元位置を決定するステップと、
取得した前記二次元画像に対応する、前記対象の表面を表す三次元点群データを取得するステップと、
前記二次元画像と前記三次元点群データとを合成することにより決定された、前記三次元点群データにおける前記対象の前記複数の部分の各々を表す三次元位置を、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置として決定する合成ステップと
を含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記対象の前記複数の部分は、頭部と、腰と、膝と、足首と、足の付け根とを含み、
前記方法は、
コンピュータが、前記複数位置決定ステップを繰り返して、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置を複数セット取得するステップと、
コンピュータが、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置の各セットに基づき、
腰を表す前記位置と頭頂部を表す前記位置との間の第1長さと、
前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、
膝を表す前記位置と足首を表す前記位置との間の第3長さと、
足首を表す前記位置と足底を表す位置との間の第4長さと
を決定するステップであって、前記第2長さと、前記第3長さとの合計に所定の比率を乗じることによって前記第4長さを決定するステップを含むステップと、
コンピュータが、前記第1長さの中央値と、前記第2長さの中央値と、前記第3長さの中央値と、前記第4長さの中央値との合計を、前記対象の身長として決定するステップと
を更に含む、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記対象はヒトであり、
前記所定の
比率は、前記対象であるヒトの年齢、性別及び人種のうちの少なくとも1つに応じて決定される、
方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、コンピュータが、前記合成ステップを実行する前に、前記二次元画像から前記対象以外の物体を除去するステップを更に含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
コンピュータが、前記対象の身長を決定するために、前記対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップを更に含み、
足底部を表す前記位置を、前記対象の足背を表す位置と、前記対象の足首を表す位置と、前記対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを更に特徴とする
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記足底部位置決定ステップは、
前記対象の膝を表す位置と前記対象の足首を表す位置とを通る直線とが垂直に交わる前記対象の足背を表す位置を通る平面を決定し、
前記直線と前記平面との交点を足底部の前記位置として決定するステップ
を含む、方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の方法であって、
コンピュータが、前記対象の複数の部分の各々を表す位置を決定する複数位置決定ステップ
を更に含み、
前記複数位置決定ステップは、
前記対象が撮像された二次元画像を取得するステップと、
前記二次元画像における前記対象の前記複数の部分の各々を表す二次元位置を決定するステップと、
取得した前記二次元画像に対応する、前記対象の表面を表す三次元点群データを取得するステップと、
前記二次元画像と前記三次元点群データとを合成することにより決定された、前記三次元点群データにおける前記対象の前記複数の部分の各々を表す三次元位置を、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置として決定する合成ステップと
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記対象の前記複数の部分は、頭部と、腰と、膝と、足首と、足背と、足の付け根を含み、
前記方法は、
コンピュータが、前記複数位置決定ステップを繰り返して、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置を複数セット取得するステップと、
コンピュータが、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置の各セットに基づき、
腰を表す前記位置と頭頂部を表す前記位置との間の第1長さと、
前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、
膝を表す前記位置と足首を表す前記位置との間の第3長さと、
足首を表す前記位置と足底を表す前記位置との間の第4長さと
を決定するステップと、
コンピュータが、前記第1長さの中央値と、前記第2長さの中央値と、前記第3長さの中央値と、前記第4長さの中央値との合計を、前記対象の身長として決定するステップと
を更に含む、
方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、コンピュータが、前記合成ステップを実行する前に、前記二次元画像から前記対象以外の物体を除去するステップを更に含む方法。
【請求項13】
コンピュータが、対象の身長を決定するために、前記対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップ
を含む方法であって、
足底部を表す前記位置を、前記対象の足背を表す位置と、前記対象の足首を表す位置と、前記対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とする方法。
【請求項14】
コンピュータが、対象の身長を決定するために、
前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、
膝を表す前記位置と前記対象の足首を表す位置との間の第3長さと、
足首を表す前記位置と前記対象の足底を表す位置との間の第4長さと
を少なくとも決定するステップ
を含む方法であって、
前記第2長さと、前記第3長さとの合計に所定の比率を乗じることによって前記第4長さを決定することを特徴とする方法。
【請求項15】
対象の身長を決定するために、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップ
を実行するように構成されたシステムであって、
頭頂部を表す前記位置を、前記対象の腰を表す位置と、前記対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とするシステム。
【請求項16】
対象の身長を決定するために、前記対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップ
を実行するように構成されたシステムであって、
足底部を表す前記位置を、前記対象の足背を表す位置と、前記対象の足首を表す位置と、前記対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とするシステム
。
【請求項17】
対象の身長を決定するために、
前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、
膝を表す前記位置と前記対象の足首を表す位置との間の第3長さと、
足首を表す前記位置と前記対象の足底を表す位置との間の第4長さと
を少なくとも決定するステップ
を実行するシステムであって、
前記第2長さと、前記第3長さとの合計に所定の比率を乗じることによって前記第4長さを決定することを特徴とするシステム。
【請求項18】
対象の身長を決定するために、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップ
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
頭頂部を表す前記位置を、前記対象の腰を表す位置と、前記対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とするプログラム。
【請求項19】
対象の身長を決定するために、前記対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップ
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
足底部を表す前記位置を、前記対象の足背を表す位置と、前記対象の足首を表す位置と、前記対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とするプログラム。
【請求項20】
対象の身長を決定するために、
前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、
膝を表す前記位置と前記対象の足首を表す位置との間の第3長さと、
足首を表す前記位置と前記対象の足底を表す位置との間の第4長さと
を少なくとも決定するステップ
をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記第2長さと、前記第3長さとの合計に所定の比率を乗じることによって前記第4長さを決定することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば乳幼児の身長測定をすることに関する。
【背景技術】
【0002】
子供の栄養状態(貧困状態にほぼ等しい。)と身長には、関連性があることが認識されている。そのため、例えばユニセフは、各国の子供(乳幼児を含む。)の栄養状態を把握するために、子供の正確な身長測定データを取得することを試みている。
【0003】
しかしながら、従来の大人も使用するような身長計で乳幼児の身長を測定することには困難性がある。それ以外の従来の手法では、正確な身長を測定するためには熟練が必要であり、また、身長の測定にあたって対象となる乳幼児にも負荷がかかっていた。そのため、特に発展途上国では、環境的な要素もあり、乳幼児の正確な身長を測定することが困難であった。
【0004】
これに関し、身体が寝位の状態において、身長を計測できる身体計測方法等が存在する(特許文献1)。この身体計測方法等は、身長を計測する過程で、頭頂及び足底を含む少なくとも2点以上を測定点として設定する(段落[0027])。しかしながら、特許文献1には、頭頂及び足底を自動的に決定する具体的手法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は以上に鑑みてなされたものであり、その課題の1つは、対象例えば乳幼児の身長を測定するための改善された方法等を提供することである。
【0007】
なお、言うまでもなく、対象の身長を測定することは対象の身長を決定することであるし、逆もまた真である。また、対象の身長を測定ないし決定するための方法等に含まれる構成要素が対象の身長を測定ないし決定することに関して改善されれば、当該方法は改善されていることになる。換言すれば、上記課題は、対象の身長を測定ないし決定するための方法等に含まれる改善された構成要素を提供することともいえる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、コンピュータが、対象の身長を決定するために、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップを含む方法であって、頭頂部を表す前記位置を、前記対象の腰を表す位置と、前記対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とする方法が提供される。
【0009】
なお、対象の身長を決定するための、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する上記頭頂部位置決定ステップによれば、対象の身長を測定ないし決定するための方法は改善されることになる。換言すれば、対象の身長を決定するための、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する上記頭頂部位置決定ステップは、対象の身長を測定ないし決定するための方法に含まれる改善された構成要素であり、よって、上記方法は、本開示の課題を解決するものであることに留意されたい。
【0010】
一実施形態において、前記頭頂部位置決定ステップは、前記対象の表面を表す三次元点群データが含む複数の点のうち、頭頂部位置候補である1以上の点を決定するステップであって、頭頂部位置候補である点は、腰を表す前記位置から頭部を表す前記位置に向かうベクトルと、頭部を表す前記位置から当該点に向かうベクトルとがなす角度が所定の角度未満又は以下であるという条件を少なくとも満たす点である、ステップと、頭頂部位置候補である前記1以上の点のうち、頭部を表す前記位置との間の距離が所定距離未満又は以下である最も遠い点を頭頂部の前記位置として決定するステップとを更に含むことができる。
【0011】
一実施形態において、頭頂部位置候補である点は、当該点から、腰を表す前記位置と頭部を表す前記位置とを通る直線まで延びる法線の長さが、所定の長さ未満又は以下である
という条件を更に満たす点であってよい。
【0012】
一実施形態において、前記方法は、コンピュータが、前記対象の複数の部分の各々を表す位置を決定する複数位置決定ステップを更に含み、前記複数位置決定ステップは、前記対象が撮像された二次元画像を取得するステップと、前記二次元画像における前記対象の前記複数の部分の各々を表す二次元位置を決定するステップと、取得した前記二次元画像に対応する、前記対象の表面を表す三次元点群データを取得するステップと、前記二次元画像と前記三次元点群データとを合成することにより決定された、前記三次元点群データにおける前記対象の前記複数の部分の各々を表す三次元位置を、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置として決定する合成ステップとを含むことができる。
【0013】
一実施形態において、前記対象の前記複数の部分は、頭部と、腰と、膝と、足首と、足の付け根とを含み、前記方法は、コンピュータが、前記複数位置決定ステップを繰り返して、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置を複数セット取得するステップと、コンピュータが、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置の各セットに基づき、腰を表す前記位置と頭頂部を表す前記位置との間の第1長さと、前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、膝を表す前記位置と足首を表す前記位置との間の第3長さと、足首を表す前記位置と足底を表す位置との間の第4長さとを決定するステップであって、前記第2長さと、前記第3長さとの合計に所定の比率を乗じることによって前記第4長さを決定するステップを含むステップと、コンピュータが、前記第1長さの中央値と、前記第2長さの中央値と、前記第3長さの中央値と、前記第4長さの中央値との合計を、前記対象の身長として決定するステップとを更に含むことができる。
【0014】
一実施形態において、前記対象はヒトであり、前記所定の割合は、前記対象であるヒトの年齢、性別及び人種のうちの少なくとも1つに応じて決定されてよい。
【0015】
一実施形態において、前記方法は、コンピュータが、前記合成ステップを実行する前に、前記二次元画像から前記対象以外の物体を除去するステップを更に含むことができる。
【0016】
一実施形態において、前記方法は、コンピュータが、前記対象の身長を決定するために、前記対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップを更に含み、足底部を表す前記位置を、前記対象の足背を表す位置と、前記対象の足首を表す位置と、前記対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを更に特徴としてよい。
【0017】
一実施形態において、前記足底部位置決定ステップは、前記対象の膝を表す位置と前記対象の足首を表す位置とを通る直線とが垂直に交わる前記対象の足背を表す位置を通る平面を決定し、前記直線と前記平面との交点を足底部の前記位置として決定するステップを含むことができる。
【0018】
一実施形態において、前記方法は、コンピュータが、前記対象の複数の部分の各々を表す位置を決定する複数位置決定ステップを更に含み、前記複数位置決定ステップは、前記対象が撮像された二次元画像を取得するステップと、前記二次元画像における前記対象の前記複数の部分の各々を表す二次元位置を決定するステップと、取得した前記二次元画像に対応する、前記対象の表面を表す三次元点群データを取得するステップと、前記二次元画像と前記三次元点群データとを合成することにより決定された、前記三次元点群データにおける前記対象の前記複数の部分の各々を表す三次元位置を、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置として決定する合成ステップとを含むことができる。
【0019】
一実施形態において、前記対象の前記複数の部分は、頭部と、腰と、膝と、足首と、足背と、足の付け根とを含み、前記方法は、コンピュータが、前記複数位置決定ステップを繰り返して、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置を複数セット取得するステップと、コンピュータが、前記対象の前記複数の部分の各々を表す前記位置の各セットに基づき、腰を表す前記位置と頭頂部を表す前記位置との間の第1長さと、前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、膝を表す前記位置と足首を表す前記位置との間の第3長さと、足首を表す前記位置と足底を表す前記位置との間の第4長さとを決定するステップと、コンピュータが、前記第1長さの中央値と、前記第2長さの中央値と、前記第3長さの中央値と、前記第4長さの中央値との合計を、前記対象の身長として決定するステップとを更に含むことができる。
【0020】
一実施形態において、前記方法は、コンピュータが、前記合成ステップを実行する前に、前記二次元画像から前記対象以外の物体を除去するステップを更に含むことができる。
【0021】
本開示の一実施形態によれば、コンピュータが、対象の身長を決定するために、前記対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップを含む方法であって、足底部を表す前記位置を、前記対象の足背を表す位置と、前記対象の足首を表す位置と、前記対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とする方法が提供される。
【0022】
なお、対象の身長を決定するための、前記対象の足底部を表す位置を決定する上記足底部位置決定ステップによれば、対象の身長を測定ないし決定するための方法は改善されることになる。換言すれば、対象の身長を決定するための、前記対象の足底部を表す位置を決定する上記足底部位置決定ステップは、対象の身長を測定ないし決定するための方法に含まれる改善された構成要素であり、よって、上記方法は、本開示の課題を解決するものであることに留意されたい。
【0023】
本開示の一実施形態によれば、コンピュータが、対象の身長を決定するために、前記対象の足の付け根を表す位置と前記対象の膝を表す位置との間の第2長さと、膝を表す前記位置と前記対象の足首を表す位置との間の第3長さと、足首を表す前記位置と前記対象の足底を表す位置との間の第4長さとを少なくとも決定するステップを含む方法であって、前記第2長さと、前記第3長さとの合計に所定の比率を乗じることによって前記第4長さを決定することを特徴とする方法が提供される。
【0024】
なお、対象の身長を決定するための、上記第2長さと上記第3長さと上記第4長さとを少なくとも決定する上記ステップによれば、対象の身長を測定ないし決定するための方法は改善されることになる。換言すれば、対象の身長を決定するための、上記第2長さと上記第3長さと上記第4長さとを少なくとも決定する上記ステップは、対象の身長を測定ないし決定するための方法に含まれる改善された構成要素であり、よって、上記方法は、本開示の課題を解決するものであることに留意されたい。
【0025】
本開示の一実施形態によれば、対象の身長を決定するために、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップを実行するように構成されたシステムであって、頭頂部を表す前記位置を、前記対象の腰を表す位置と、前記対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とするシステムが提供される。
【0026】
本開示の一実施形態によれば、対象の身長を決定するために、前記対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、頭頂部を表す前記位置を、前記対象の腰を表す位置と、前記対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0027】
本開示の実施形態によれば、非接触で対象例えば乳幼児の身長を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】対象の身長を測定するための例示処理100のフローチャート。
【
図3】対象の頭頂部を表す位置を決定するための例示処理の一部300のフローチャート。
【
図3B】対象の頭頂部を表す位置を決定するための例示処理の一部300Bのフローチャート。
【
図4】対象の頭頂部を表す位置を決定するための例示処理の別の一部400のフローチャート。
【
図5】例示処理300、300B及び400に関連した図。
【
図5B】例示処理300B及び400に関連した図。
【
図6】対象の足底部を表す位置を決定するための例示処理600のフローチャート。
【
図8】対象の複数の部分の各々を表す位置及び位置間の長さを決定するための例示処理の一部800のフローチャート。
【
図9】対象の複数の部分の各々を表す位置及び位置間の長さを決定するための例示処理の別の一部900のフローチャート。
【
図9B】対象の複数の部分の各々を表す位置及び位置間の長さを決定するための例示処理の別の一部900Bのフローチャート。
【
図10】対象の身長を決定するための例示処理1000のフローチャート。
【
図11】例示処理900、900B及び1000に関連した図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、特段の説明がない限り、『より小さい』又は『未満』は『以下』であってよい。また、以下、特段の説明がない限り、『より大きい』は『以上』であってよい。
【0030】
また、以下、例示処理に含まれる各ステップは、コンピュータが実行するものであってよい。また、例示処理に含まれる各ステップは以下に説明するものに限定されず、一部のステップ同士は並列に実行されてもよい。
【0031】
1 本開示の実施形態
1-1 対象の身長を測定するための例示処理
図1は、本開示の一実施形態に係る、対象の身長を測定するための例示処理100のフローチャートである。
図2は、例示処理100に関連した図である。
【0032】
なお、本実施形態により身長を測定する対象の一例は乳幼児(特に、まだ立ち上がれない乳児。)であるが、これに限定されるわけではない。本開示は、例えば障害により直立姿勢が難しい人間(大人を含む。)や、人間と同様の骨格を有する他の動物例えば類人猿に対しても有用であろう。
【0033】
110は、対象の頭頂部を表す位置を決定するステップを示している。ステップ110は、対象の頭頂部を表す位置を、対象の腰を表す位置と、対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特に特徴とするものである。なお、『腰を表す位置』は、腰を代表する一点と定義することができ、例えば、『腰』という用語に対応する対象の領域の重心であってよいが、これに限定されるわけではない。同様に、『頭部を表す位置』は、頭部を代表する一点と定義することができ、例えば、『頭部』という用語に対応する対象の領域の重心であってよいが、これに限定されるわけではない。例えば、対象を撮像した二次元画像から、当該二次元画像における対象の部分(身体の部位(腰等)や関節等であるが、これに限定されるわけではない。)を代表する位置を出力する既知のライブラリ(例えば、ネクストシステム社のVision Pose)が存在するところ、そのようなライブラリが腰を代表する一点及び頭部を代表する一点として出力する二次元位置、又は、該二次元位置を任意の手法により三次元にマッピングした三次元位置を『腰を表す位置』及び『頭部を表す位置』としてよい。
【0034】
120は、対象の足底部を表す位置を決定するステップを示している。ステップ120は、対象の足底部を表す位置を、対象の足背を表す位置と、対象の足首を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特に特徴とするものである。なお、『足背を表す位置』は、足背を代表する一点と定義することができ、例えば、『足背』という用語に対応する対象の領域の重心であってよいが、これに限定されるわけではない。同様に、『足首を表す位置』は、足首を代表する一点と定義することができ、例えば、『足首』という用語に対応する対象の領域の重心であってよいが、これに限定されるわけではない。例えば、対象を撮像した二次元画像から、当該二次元画像における対象の部分を代表する位置を出力する既知のライブラリが存在するところ、そのようなライブラリが足背を代表する一点及び足首を代表する一点として出力する二次元位置、又は、該二次元位置を任意の手法により三次元にマッピングした三次元位置を『足背を表す位置』及び『足首を表す位置』としてよい。
【0035】
以下、ステップ110及び120の特徴について説明する。
背景技術として上述したように、頭頂及び足底を含む少なくとも2点以上を測定点とすることにより、身長を計測する方法が存在する。また、対象を撮像した二次元画像から、当該二次元画像における対象の部分を代表する位置を出力する既知のライブラリが存在する。ところで、乳幼児ついては、
図2で示すように仰向けの状態で身長を測定したいというニーズが存在する。しかしながら、乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像から、足底を表す位置を安定して決定することには困難性がある。これは、
図2で示すように乳幼児を仰向けの状態で撮像した場合、撮像した二次元画像において足底が隠れるときがあるためである(特に、膝を立てて足底を床につけている場合。)。そのため、足底以外の部分を表す位置から足底を表す位置が決定できれば有用である。また、頭部が隠れていない場合であっても、乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像から、頭頂部を表す位置を安定して決定することにも困難性がある。事実、現状、対象の頭頂部については、対象を撮像した二次元画像から代表する位置を出力するライブラリは存在しない。従って、頭頂部以外の部分を表す位置から頭頂部を表す位置を決定することができれば有用である。
【0036】
頭頂部を表す位置については、例えば後述するように、頭部を表す位置から頭頂部方向を探索するという手法により決定できそうである。しかしながら、このような手法で頭頂部を表す位置を決定しようとした場合、頭頂部方向をどのように決定するかという点が問題となる。例えば、頭頂部方向を決定するために、頭部を基準として頭頂部とは反対方向にある胸を表す位置を利用することが考えられる。しかしながら、乳幼児を撮像することを考えた場合、乳幼児は不意に腕を動かしたり、胸の前で手を組んだりすることがあり、これにより、胸を表す位置は、乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像から正しく決定できない場合がある。一方で、本開示の発明者独自の知見として、腰を表す位置であれば、乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像に少なくとも基づき、比較的安定して正しく決定できることが判明した。即ち、対象の頭頂部を表す位置を、対象の腰を表す位置と、対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定するという特徴は、上述した本開示の発明者独自の知見に基づくものである。
【0037】
足底を表す位置については、例えば後述するように、足底との位置関係が一定である部分を表す位置に基づき決定できそうである。出願人独自の知見として、このような部分のうち、足背を表す位置、足首を表す位置及び膝を表す位置であれば、乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像に少なくとも基づき、比較的安定して正しく決定できることが判明した。即ち、対象の足底部を表す位置を、対象の足背を表す位置と、対象の足首を表す位置と、対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定するという特徴は、上述した本開示の発明者独自の知見に基づくものである。
【0038】
130は、頭頂部を表す位置及び足底部を表す位置に少なくとも基づき、対象の身長を決定するステップを示している。
【0039】
例示処理100によれば、ステップ110は、対象の身長を決定するために、対象の頭頂部を表す位置を決定する頭頂部位置決定ステップであり、ステップ120は、対象の身長を決定するために、対象の足底部を表す位置を決定する足底部位置決定ステップの一例である。このことは、後述するステップ920(
図9及び9B)及びステップ930(
図9)についても同様である。
【0040】
1-2 対象の頭頂部を表す位置を決定するための第1例示処理
図3及び4は、ステップ110(
図1)の具体例である、対象の頭頂部を表す位置を決定するための例示処理300及び400のフローチャートである。
図5は例示処理300及び400(及び後述する300B)に関連した図である。なお、例示処理300及び400はステップ110の一例にすぎず、ステップ110における具体的な処理は、これに限定されるわけではない。
【0041】
310は、対象の腰を表す位置510(
図5)から、対象の頭部を表す位置520(
図5)に向かう第1ベクトル530(
図5)を決定するステップを示している。
【0042】
320は、対象の表面を表す三次元点群データが含む複数の点のうちの1つ540(
図5)を選択するステップを示している。三次元点群データが含む各点は、原則的に、対象の表面の一点に対応する。三次元点群データは、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサを用いて取得したものであってよいが、これに限定されるわけではない。
【0043】
330は、対象の頭部を表す位置520から、ステップ320において選択した1点540に向かう第2ベクトル550(
図5)を決定するステップを示している。
【0044】
340は、第1ベクトル530と第2ベクトル550とがなす角560(
図5)を決定するステップを示している。
【0045】
350は、角度560が所定角度未満であるかを判定するステップを示している。角度560が所定角度未満である場合、処理はステップ360に進み、そうでない場合、処理はステップ370に進む。所定角度の一例は45°であるが、これに限定されるわけではない。
【0046】
360は、選択した一点を頭頂部位置候補とするステップを示している。ステップ360は、頭頂部位置候補に対応する集合に選択した一点を追加するステップであってよいが、これに限定されるわけではない。頭頂部位置候補に対応する集合は、例示処理300の実行前に空集合として初期化されていてよい。
【0047】
従って、例示処理300によれば、ステップ320において選択した1点540のうちの頭頂部位置候補である点は、対象の腰を表す位置510から、対象の頭部を表す位置520に向かう第1ベクトル530と、対象の頭部を表す位置520から当該点に向かう第2ベクトル550とがなす角度が所定の角度未満であるという条件を満たす点である。
【0048】
370は、三次元点群データから点を全て選択したかを判定するステップを示している。点を全て選択したと判定した場合、処理はステップ410(
図4)に進み、そうでない場合、処理はステップ320に戻り、ループを構成する。
【0049】
410は、頭頂部位置候補である1以上の点のうちの1つを選択するステップを示している。
【0050】
420は、対象の頭部を表す位置520と、ステップ410において選択した一点との間の距離を決定するステップを示している。
【0051】
430は、ステップ420において決定した距離が、所定距離未満であるかを判定するステップを示している。対象の表面を表す三次元点群データには、誤って、対象の表面を表さない、対象の表面から離れた点が含まれている場合がある。ステップ430は、このような対象の表面を表さない点を除外するためのものである。ステップ420において決定した距離が、所定距離未満である場合、ステップ440に進み、そうでない場合、処理はステップ460に進む。
【0052】
440は、ステップ420において決定された距離が、過去にステップ420において決定され、ステップ430において所定距離未満であると判定された距離の最大値として記憶されている値(以下、『過去の最大値』という。)より大きいかを判定するステップを示している。最初にステップ440が実行されるとき、過去の最大値としてゼロが記憶されていてよい。ステップ420において決定した距離が、過去の最大値より大きい場合、処理はステップ450に進み、そうでない場合、処理はステップ460に進む。
【0053】
450は、過去の最大値を、直前にステップ420において決定した距離に更新し、直前にステップ410において選択した一点を暫定頭頂部位置とするステップを示している。
【0054】
460は、頭頂部位置候補である1以上の点の全てを選択したかを判定するステップを示している。頭頂部位置候補である1以上の点の全てを選択したと判定した場合、処理はステップ470に進み、そうでない場合、処理はステップ410に戻りループを構成する。
【0055】
470は、暫定頭頂部位置を、頭頂部を表す位置として決定するステップを示している。
【0056】
なお、言うまでもなく、第1例示処理は、頭頂部を表す位置を、対象の腰を表す位置と、対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴としており、頭頂部以外の部分を表す位置から頭頂部を表す位置を決定する処理である。よって、対象の身長を決定するために第1例示処理を実行した場合、対象の身長を測定ないし決定するための方法が含むそれ以外の構成要素が従来と同一であったとしても、例えば乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像から頭頂部を表す位置を安定して決定することの困難性が解決されるという意味で、当該方法は改善されることになる。換言すれば、第1例示処理は、対象の身長を測定ないし決定するための方法等に含まれる改善された構成要素である。よって、対象の身長を決定するために第1例示処理を実行すること、ひいては、対象の身長を決定するために、頭頂部を表す位置を、対象の腰を表す位置と、対象の頭部を表す位置とに少なくとも基づき決定することは、それ単体で、本開示の課題を解決するものであることに留意されたい。
【0057】
1-3 対象の頭頂部を表す位置を決定するための第2例示処理
図3Bは、ステップ110(
図1)の具体例である、対象の頭頂部を表す位置を決定するための例示処理の一部300B(以下、『例示処理300B』という。)のフローチャートである。例示処理300Bにおいて、ステップ350に至るまでのステップ及びステップ370に至った後のステップは、例示処理300及び400と同様であってよい。
図5Bは例示処理300B及び400に関連した図である。なお、例示処理300Bはステップ110の一例にすぎず、ステップ110における具体的な処理は、これに限定されるわけではない。
【0058】
例示処理300Bのステップ350は、例示処理300のステップ350と基本的に同様であってよいが、角度560が所定角度未満である場合に、ステップ360ではなくステップ352に進む点は相違する。
【0059】
352は、ステップ320において選択した1点540から、第1ベクトル530まで延びた法線570の長さを決定するステップを示している。なお、法線570は、ステップ320において選択した1点540から、対象の腰を表す位置510(
図5B)と対象の頭部を表す位置520(
図5B)とを通る直線まで延びる法線と等価である。
【0060】
354は、法線570の長さが所定長さ未満であるかを判定するステップを示している。法線570の長さが所定長さ未満である場合、処理はステップ360に進み、そうでない場合、処理はステップ370に進む。所定長さの一例は1cmであるが、これに限定されるわけではない。
【0061】
従って、例示処理300Bによれば、ステップ320において選択した1点540のうちの頭頂部位置候補である点は、
対象の腰を表す位置510から、対象の頭部を表す位置520に向かう第1ベクトル530と、対象の頭部を表す位置520から当該点に向かう第2ベクトル550とがなす角度が所定の角度未満であるという条件を満たし、且つ、
当該点から、第1ベクトル530又は対象の腰を表す位置510と対象の頭部を表す位置520とを通る直線まで延びた法線の長さが所定の長さ未満であるという条件を満たす
点である。
【0062】
例示処理300Bのステップ360及び370は、例示処理300のステップ360及び370と同様であってよい。
【0063】
例示処理300B(特にステップ352及び354を参照。)によれば、頭頂部でない点が頭頂部位置候補である点に含まれる可能性を、例示処理300に比して低減させることができる。
【0064】
即ち、例示処理300のような直線距離(対象の頭部を表す位置520と、ステップ410において選択した一点との間の距離)と角度(第1ベクトル530と第2ベクトル550とがなす角560)とを用いた判定だけの場合、理想とする頭頂部位置から外れた点が、最終的な頭頂部を表す位置として決定されることがある。理想とする頭頂部位置は、第1ベクトル530付近の点であるところ、第1ベクトル530から離れた点の方が、対象の頭部を表す位置520からの距離が大きいことが多いためである。
【0065】
例示処理300Bによれば、第1ベクトル530からの法線の距離について更に判定を行うため、最終的な頭頂部を表す位置から、第1ベクトル530から離れた点を除外することができる。
【0066】
1-4 対象の足底部を表す位置を決定するための例示処理
図6は、ステップ120の具体例である、対象の足底部を表す位置を決定する例示処理600のフローチャートである。
図7は例示処理600に関連した図である。なお、例示処理600はステップ120の一例にすぎず、ステップ120における具体的な処理は、これに限定されるわけではない。
【0067】
610は、無数に存在する対象の足背を表す位置710(
図7)を通る平面から、対象の膝を表す位置715(
図7)と足首を表す位置720(
図7)とを通る直線740(
図7)と直角に交わる平面730(
図7)を決定するステップを示している。なお、直線及び平面は、三次元空間において定義されるものであってよい。
【0068】
620は、ステップ610において決定した平面730と直線740の交点750(
図7)を、足底を表す位置として決定するステップを示している。
【0069】
なお、言うまでもなく、対象の足底部を表す位置を決定するための上記例示処理は、足底部を表す位置を、対象の足首を表す位置と、対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することを特徴としており、足底部以外の部分を表す位置から足底部を表す位置を決定する処理である。よって、対象の身長を決定するために上記例示処理を実行した場合、対象の身長を測定ないし決定するための方法が含むそれ以外の構成要素が従来と同一であったとしても、例えば乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像から足底部を表す位置を安定して決定することの困難性が解決されるという意味で、当該方法は改善されることになる。換言すれば、上記例示処理は、対象の身長を測定ないし決定するための方法等に含まれる改善された構成要素である。よって、対象の身長を決定するために上記例示処理を実行すること、ひいては、対象の身長を決定するために、足底部を表す位置を、対象の足首を表す位置と、対象の膝を表す位置とに少なくとも基づき決定することは、それ単体で、本開示の課題を解決するものであることに留意されたい。
【0070】
1-5 対象の身長を測定するためのより全体的な第1例示処理
図8~10は、本開示の一実施形態に係る、対象の身長を測定するためのより全体的な例示処理800~1000のフローチャートである。例示処理800~1000は、上述した例示処理100を含むものである。
【0071】
1-5-1 対象の複数の部分の各々を表す位置を決定するための例示処理
例示処理800(
図8)及び900(
図9)は、対象の複数の部分の各々を表す位置を決定するための処理である。ここで、『複数の部分』は、頭部と、腰と、膝と、足首と、足背とを含むことができる。また、『複数の部分』は、足の付け根を更に含むことができる。なお、『足首』、『足背』、『足の付け根』及び『膝』は、何れか一方の足に関連するものであってよい。
図11は、例示処理900及び後述する例示処理1000(及び後述する900B)に関連した図である。
【0072】
図8を参照すると、810は、対象が撮像された二次元画像を取得するステップを示している。二次元画像の取得は、一般的なデジタル・カメラを用いて実施されてよい。また、二次元画像は、カラー画像であってよいが、これに限定されるわけではない。
【0073】
820は、ステップ810において取得された二次元画像において、対象の複数の部分の各々を表す二次元位置を決定するステップを示している。ステップ820は、対象を撮像した二次元画像から、当該二次元画像における対象の部分を代表する位置を出力する既知のライブラリを用いて実施されてよい。
【0074】
830は、ステップ810において取得された二次元画像から、対象以外の物体を除去するステップを示している。ステップ830は、ステップ810において取得された二次元画像において、対象以外の部分を所定の色で塗りつぶすステップであってよい。また、ステップ810は、二次元画像において対象とそれ以外とを区別するように訓練された所定のAIモデルや、Apple社のARKitを用いて実施することができる。
【0075】
840は、ステップ830により得られた対象以外が除去された二次元画像に、ステップ820において決定された対象の複数の部分の各々を表す位置を合成するステップを示している。
【0076】
850は、ステップ810において取得された二次元画像に対応する三次元点群データを取得するステップを示している。三次元点群データの取得は、LiDARセンサを用いて実施されてよい。なお、『二次元画像に対応する三次元点群データ』とは、当該二次元画像が取得されたのと同一の条件(例えば、撮像/スキャンの位置や撮像/スキャンの向き、撮像/スキャンの画角であるが、これらに限定されるわけではない。)で取得された三次元点群データのことである。デジタル・カメラ及びLiDARセンサの双方を含むコンピュータ、例えばApple社のiPhone 14 Proを用いて二次元画像及び三次元点群データを取得する場合、同一の時点で取得された二次元画像と三次元点群データとであれば、対応しているであろう。
【0077】
図9を参照すると、910は、ステップ840により得られた二次元画像と、ステップ850において取得された三次元点群データを合成することにより、対象の複数の部分の各々を表す三次元位置を決定するステップを示している。即ち、ステップ910においては、ステップ820において決定された、対象の複数の部分の各々を表す二次元位置が、三次元位置へとマッピングされることになる。三次元位置は、三次元点群データが用いる座標系における座標の情報であってよい。本実施形態において、対象の複数の部分の各々を表す二次元位置は、三次元点群データが含む一点、即ち、三次元座標系における各部分を表す位置と完全には一致しないが、当該位置に関連又は近接する対象の表面の一点にマッピングされれば足りる。しかしながら、対象の複数の部分の各々を表す二次元位置は、三次元点群データが点を含まない、対象の内部の三次元位置にマッピングされてもよいことは言うまでもない。なお、ステップ910は、二次元画像がカラー画像である場合、二次元画像の色情報を三次元点群データに合成するステップを含んでいてよい。例えば、ステップ910は、二次元画像の各画素の色を、三次元点群データが含む対応する点に割り当てるステップを含んでいてよい。
【0078】
920は、ステップ910において決定された対象の複数の部分の各々を表す位置に基づき、対象の頭頂部を表す位置を決定するステップを示している。ステップ920は、ステップ110(
図1)と同一のステップであってよい。
【0079】
930は、ステップ910において決定された対象の複数の部分の各々を表す位置に基づき、対象の足底部を表す位置を決定するステップを示している。ステップ930は、ステップ120(
図1)と同一のステップであってよい。
【0080】
940は、ステップ910において決定された対象の複数の部分の各々を表す位置、ステップ920において決定された対象の頭頂部を表す位置、及び、ステップ930において決定された対象の足底部を表す位置に基づき、位置間の長さを決定するステップを示している。ステップ940において決定される長さは、
対象の腰を表す位置と頭頂部を表す位置との間の第1長さ1110(
図11)、
対象の足の付け根を表す位置と膝を表す位置との間の第2長さ1120(
図11)、
対象の膝を表す位置と足首を表す位置との間の第3長さ1130(
図11)、
対象の足首を表す位置と足底を表す位置との間の第4長さ1140(
図11)
であってよいが、これらに限定されるわけではない。
【0081】
950は、所定条件が満たされたかを判定するステップを示している。所定条件は任意であり、例えばステップ940を所定回数繰り返したという条件であってよいが、これに限定されるわけではない。所定条件が満たされたと判定された場合、処理はステップ1010(
図10)に進み、そうでない場合、処理はステップ910に戻りループを構成する。当該ループが複数回繰り返されることにより、位置間の長さ、例えば、上述した第1長さ1110、第2長さ1120、第3長さ1130及び第4長さ1140の複数のセットが得られることが理解されよう。
【0082】
1-5-2 対象の身長を決定するための例示処理
例示処理1000(
図10)は、対象の身長を決定するための処理であって、ステップ130(
図1)の具体例に相当する。なお、例示処理1000はステップ130の一例にすぎず、ステップ130における具体的な処理は、これに限定されるわけではない。
【0083】
1010は、複数セットが得られた位置間の各長さ、例えば、上述した第1長さ1110、第2長さ1120、第3長さ1130及び第4長さ1140の各々について、中央値を決定するステップを示している。
【0084】
1020は、ステップ1010において計算された中央値の合計として、対象の身長を決定するステップを示している。ステップ1020は、例えば、第1長さ1110の中央値、第2長さ1120の中央値、第3長さ1130の中央値及び第4長さ1140中央値の合計として、対象の身長を決定するステップであってよい。
【0085】
なお、本実施形態において、各長さの中央値の合計を対象の身長として決定しているのは、誤差の低減を目的とするものである。即ち、各セットについて決定される長さには、対象の複数の部分の各々を表す位置が誤って決定されることによる異常値が含まれている可能性がある。各セットについて決定される長さの中央値を用いることによって、このような異常値を可能な限り排除することが可能である。
【0086】
1-6 対象の身長を測定するためのより全体的な第2例示処理
図9Bは、本開示の一実施形態に係る、対象の身長を測定するためのより全体的な例示処理の一部900B(以下、『例示処理900B』という。)のフローチャートである。例示処理900Bのステップ900に至るまでのステップ及びステップ950に至った後のステップは、例示処理800及び1000と同様であってよい。
【0087】
例示処理900Bのステップ910は、例示処理900のステップ910と同様であってよい。
【0088】
例示処理900Bのステップ920は、例示処理900のステップ920と基本的に同様であってよいが、ステップ940ではなくステップ942に進む点は相違する。
【0089】
942は、ステップ910において決定された対象の複数の部分の各々を表す位置及びステップ920において決定された対象の頭頂部を表す位置に基づき、位置間の長さを決定するステップを示している。ステップ942において決定される長さは、
対象の腰を表す位置と頭頂部を表す位置との間の第1長さ1110(
図11)、
対象の足の付け根を表す位置と膝を表す位置との間の第2長さ1120(
図11)、
対象の膝を表す位置と足首を表す位置との間の第3長さ1130(
図11)
であってよいが、これらに限定されるわけではない。
【0090】
944は、ステップ942において決定された位置間の長さに基づき、別の位置間の長さを決定するステップを示している。ステップ944は、
対象の足の付け根を表す位置と膝を表す位置との間の第2長さ1120と、
対象の膝を表す位置と足首を表す位置との間の第3長さ1130と
の合計に所定の比率をかけた長さを、対象の足首を表す位置と足底を表す位置との間の第4長さ1140(
図11)として決定するステップを含んでいてよいが、これに限定されるわけではない。所定の比率の一例は8%であるが、これに限定されるわけではない。なお、身長を測定する対象がヒトである場合、上記所定の比率は、対象であるヒトの属性、例えば、年齢、性別及び人種のうちの少なくとも1つに応じて決定されてよい。ちなみに、上記8%の比率は、身長を測定する対象が乳幼児(ヒト)である場合の一例である。また、そのような所定の比率は、実験により事前に取得し、例示処理900Bを実行するコンピュータのメモリに記憶しておくことができることは言うまでもない。
【0091】
例示処理900Bのステップ950は、例示処理900のステップ950と同様であってよい。
【0092】
例示処理900Bによれば、対象の足底を表す位置を決定することなく、対象の足首を表す位置と足底を表す位置との第4長さ1140を決定することができる。上述したように、乳幼児を仰向けの状態で撮像した場合、撮像した二次元画像において足底が隠れるときがある(特に、膝を立てて足底を床につけている場合。)。例示処理900B(特にステップ944を参照。)は、そのような場合に対処するための、例示処理900(特にステップ930を参照。)とは別の解決策を提供するものである。
【0093】
例示処理900Bの本質は、対象の足の付け根を表す位置と膝を表す位置との間の第2長さ1120と、対象の膝を表す位置と足首を表す位置との間の第3長さ1130との合計に所定の比率を乗ずることによって、対象の足底を表す位置を決定することなく、対象の足首を表す位置と足底を表す位置との間の第4長さ1140を決定するというものである。換言すれば、対象の身長を決定するために、対象の足の付け根を表す位置と膝を表す位置との間の第2長さ1120と、対象の膝を表す位置と足首を表す位置との間の第3長さ1130と、対象の足首を表す位置と足底を表す位置との間の第4長さ1140とを少なくとも決定する処理であって、第2長さ1120と第3長さ1130との合計に所定の比率を乗ずることによって第4長さ1140を決定するという処理を実行した場合、対象の身長を測定ないし決定するための方法が含むそれ以外の構成要素が従来と同一であったとしても、例えば乳幼児を仰向けの状態で撮像した二次元画像から足底部を表す位置を安定して決定することの困難性が解決されるという意味で、当該方法は改善されることになる。換言すれば、当該処理は、対象の身長を測定ないし決定するための方法等に含まれる改善された構成要素である。よって、対象の身長を決定するために当該処理を実行すること、ひいては、第2長さ1120と第3長さ1130との合計に所定の比率を乗ずることによって第4長さ1140を決定することは、それ単体で、本開示の課題を解決するものであることに留意されたい。
【0094】
2 本開示の別実施形態
本開示の別実施形態は、上述した例示処理の少なくとも一部を実行するシステムである。特に、このようなシステムは、デジタル・カメラ及びLiDARセンサの双方を含むコンピュータ、例えばApple社のiPhone 14 Pro上で構築されることが好ましい。
【0095】
本開示のまた別の実施形態は、コンピュータに、上述した例示処理のうちの少なくとも一部を実行させるプログラム、又は、当該プログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体、非一時的コンピュータ可読媒体若しくはコンピュータ判読可能な貯蔵媒体である。このようなコンピュータは、デジタル・カメラ及びLiDARセンサの双方を含むコンピュータ、例えばApple社のiPhone 14 Proであることが好ましい
【0096】
3 コンピュータ
以下、本開示の一実施形態を実施するために用いることができるコンピュータのハードウエア構成の一例について説明する。
【0097】
図12は、コンピュータのハードウエア構成の一例を表している。同図に示すように、コンピュータ1200は、ハードウエア資源として、主に、プロセッサ1210と、主記憶装置1220と、補助記憶装置1230と、入出力インターフェース1240と、通信インターフェース1250とを備えており、これらはアドレスバス、データバス、コントロールバス等を含むバスライン1260を介して相互に接続されている。なお、バスライン1260と各ハードウエア資源との間には適宜インターフェース回路(図示せず)が介在している場合もある。なお、これら構成要素の一部(例えば、通信インターフェース1250)は、コンピュータ1200に含まれない場合もある。
【0098】
プロセッサ1210は、CPUやマイクロプロセッサ等のコンピュータ全体又は少なくとも一部の制御を行うものである。なお、1つのコンピュータは複数のプロセッサ1210を含む場合がある。このような場合、以上の説明における「プロセッサ」は、複数のプロセッサ1210の総称であってもよい。
【0099】
主記憶装置1220は、プロセッサ1210に対して作業領域を提供する、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリである。
【0100】
補助記憶装置1230は、ソフトウエアであるプログラム等やデータ等を格納する、HDDやSSD、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。当該プログラムやデータ等は、任意の時点で補助記憶装置1230からバスライン1260を介して主記憶装置1220へとロードされる。補助記憶装置1230は、コンピュータ可読記憶媒体、非一時的コンピュータ可読媒体、又は、コンピュータ判読可能な貯蔵媒体と呼ばれることがある。なお、プログラムは、プロセッサに所望の処理を実行させる命令を含むものである。
【0101】
入出力インターフェース1240は、情報を提示すること及び情報の入力を受けることの一方又は双方を行うものであり、デジタル・カメラ、LiDARセンサ、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチパネル・ディスプレイ、マイク、スピーカ、各種センサ等である。
【0102】
通信インターフェース1250は、インターネットやローカル・エリア・ネットワーク(LAN)の等うちの1以上から構成されたネットワーク1255と接続されるものであり、ネットワーク1255を介してデータを送受する。通信インターフェース1250とネットワーク1255とは、有線又は無線で接続されうる。通信インターフェース1250は、ネットワークに係る情報、例えば、Wi-Fiのアクセスポイントに係る情報、通信キャリアの基地局に関する情報等も取得することがある。
【0103】
上に例示したハードウエア資源とソフトウエアとの協働により、コンピュータ1200は、所望の手段として機能し、所望のステップを実行し、所望の機能を実現させることできることは、当業者には明らかであろう。
【0104】
4 むすび
以上、本開示の実施形態の幾つかの例を説明してきたが、これらは例示にすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。説明した実施形態についても、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変更、追加、改良などを適宜行うことができることが理解されるべきである。本開示の技術的範囲は、上述した実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定されるべきである
【符号の説明】
【0105】
100…対象の身長を測定するための例示処理
300、300B、400…対象の頭頂部を表す位置を決定するための例示処理
510…対象の腰を表す位置
520…対象の頭部を表す位置
530…対象の腰を表す位置から対象の頭部を表す位置に向かう第1ベクトル
540…選択した点
550…対象の腰を表す位置から選択した点に向かう第2ベクトル
560…第1ベクトルと第2ベクトルとがなす角度
570…選択した点から第1ベクトルまで延びた法線
600…対象の足底部を表す位置を決定するための例示処理
710…対象の足背を表す位置
715…対象の膝を表す位置
720…対象の足首を表す位置
730…平面
740…直線
750…対象の足底を表す位置
800、900、900B…対象の複数の部分の各々を表す位置及び位置間の長さを決定するための例示処理
1000…対象の身長を決定するための例示処理
1110…対象の腰を表す位置と頭頂部を表す位置との間の長さ
1120…対象の足の付け根を表す位置と膝を表す位置との間の長さ
1130…対象の膝を表す位置と足首を表す位置との間の長さ
1140…対象の足首を表す位置と足底を表す位置との長さ
1255…ネットワーク
1260…バスライン