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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】屋外用カメムシ忌避剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 63/30 20200101AFI20250121BHJP
   A01N 63/28 20200101ALI20250121BHJP
   A01N 63/20 20200101ALI20250121BHJP
   A01N 63/27 20200101ALI20250121BHJP
   A01N 63/22 20200101ALI20250121BHJP
   A01N 63/34 20200101ALI20250121BHJP
   A01N 63/36 20200101ALI20250121BHJP
   A01N 65/00 20090101ALI20250121BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20250121BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A01N63/30
A01N63/28
A01N63/20
A01N63/27
A01N63/22
A01N63/34
A01N63/36
A01N65/00 Z
A01N65/00 D
A01N59/00 B
A01P17/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024103000
(22)【出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-09-03
(31)【優先権主張番号】P 2023207316
(32)【優先日】2023-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512215923
【氏名又は名称】木村 将人
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 将人
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-544263(JP,A)
【文献】特開2009-024141(JP,A)
【文献】特開2001-278722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
JSTPlus/JMEDPlus/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機物、以下の13種の菌属の細菌と白色腐朽性担子菌との混合菌と、水とを含み、菌体の合計質量が全質量の3~30質量%である培養液と、フルボ酸と、木酢液と、亜鉛イオンと、水とを混合した混合液であって、
前記混合液の全質量を100質量%とした場合に、前記培養液の質量が5質量%乃至15質量%であり、フルボ酸の質量が0.0001質量%乃至0.01質量%であり、木酢液の質量が0.2質量%乃至10質量%であり、
前記混合液の全体重量1kgに対して亜鉛イオンを0.01ミリモル乃至10.0ミリモル含有することを特徴とする屋外用カメムシ忌避剤。
(1)ストレプトマイセス属(Streptomyces)
(2)スルフォロブス属(Sulfolobus)
(3)サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora)
(4)ノカルジア属(Nocardia)
(5)シュードモナス属(Pseudomonas)
(6)バシラス属(Bacillus)
(7)サイトファーガ属(Cytophaga)
(8)カンジダ属(Candida)
(9)セルロモナス属(Cellulomonas)
(10)クロストリジウム属(Clostridium)
(11)アスペルギルス属(Aspergillus)
(12)ペニシリウム属(Penicillium)
(13)クモノスカビ属(Rhizopus)
【請求項2】
請求項1に記載の屋外用カメムシ忌避剤を水で20倍乃至50倍に希釈して散布することを特徴とする屋外用カメムシ忌避剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用カメムシの忌避剤及びその使用方法に係り、より詳しくは、田畑等に散布してカメムシが栽培作物に近寄らないようにして農作物へ被害を未然に防止する屋外用カメムシ忌避剤及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメムシ目に属する昆虫(以下単に「カメムシ」と記す)は、多種類いることが知られており、それらの中には、性質が大きく異なるものも含まれている(例えば非特許文献1を参照)。しかし、カメムシ全体としては、以下のような共通の特性を有している。
【0003】
多くのカメムシは、刺激されると、例えばヘキサナールやトランス-2-ヘキセナールのような強烈な不快臭を出す不快害虫である。そして、これらの不快臭となる悪臭物質は、カメムシの警戒信号物質、集合フェロモン、性フェロモン等としての性質を示す(例えば非特許文献2を参照)。しかしながら、カメムシは種類が多いこと、異なったカメムシは異なった悪臭物質を発生すること、及び1種類のカメムシが複数の悪臭物質を放出することがあるので多種多様な悪臭物質があり、その詳細、作用、及び本質は解明されていない。
【0004】
また、カメムシは、細長い管状の口器を有し、豆類、ナス科植物、ジャガイモ、サツマイモ、稲、トマト、果実等の多岐な農産物の養分の液汁を吸って農産物に大きな被害を与え、しかもカメムシは噛跡が小さいために、作物にカメムシがついたことに気づかないことがあって被害が拡大しやすく、更に、生産物にカメムシの不快臭が付着すると生産物の商品価値が低下することがあるなど、農産物に大きな損害を与える害虫である。
【0005】
カメムシは、一般的に、4~5月ごろに森林、草原、田畑などで産卵し、約1か月で成虫になるので6月頃から急激に増殖し、また一匹のオスの放出する性フェロモンに多数のメスが誘引されるようなケースもあって、場合によっては爆発的に増殖し、その後、秋まで活発に活動し、冬は半冬眠するか暖所(例えば人家の隅など)に移動して強烈な不快臭を出す不快害虫となる。
【0006】
カメムシが農産物に取り付いてしまった場合は、例えばベニカ(商品名、住友化学園芸株式会社)のような農薬(殺虫剤)が有効である。しかし、農薬を用いることは経済的な負担を生じ、環境に好ましくなく、また農薬を使用できない農産物もある。そのうえ、カメムシを無理に駆除しようとすると悪臭を発生させてしまい、生産物の価値が下がり販売できなくなるという可能性もある。
このために、カメムシ忌避剤を開発する研究がなされているが(例えば特許文献1、2を参照)、実用的な忌避剤はまだ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開第2023-77406号公報
【文献】特開第2001-278722号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】山下俊和ら、カメムシ類の悪臭成分に関する研究、農学研究 1979年、58 pp13-18
【文献】安田哲也、「カメムシ類のフェロモン」、植物防疫、2004年、58:7、pp14-18
【文献】「ゲル濾過法によるフルボ酸の分画とそのキレート能について」、山田秀和、米林甲陽、服部共生、森田修二、昭和47年度日本土壌肥料学会大阪大会要旨集(1975年7月26日受理)。https://core.ac.uk./download/pdf/235429797.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カメムシが忌避する物質を農作地に散布してカメムシが農作物に取り付くのを防止することによってカメムシによる農作物への被害を未然に防止する屋外用カメムシ忌避剤及びその使用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するための本発明の屋外用かめむし忌避剤は、発酵分解可能な有機物を、以下の13種の菌属の細菌と白色腐朽性担子菌との混合菌と、水とを用いて発酵させ、菌体の合計質量が全質量の3~30質量%になるように培養して有機物を分解させた培養液と、フルボ酸と、木酢液と、亜鉛イオンと、水とを混合した混合液であって、
混合液の全質量を100質量%とした場合に、前記培養液の質量が5~15質量%であり、フルボ酸の質量が0.0001~0.01質量%であり、木酢液の質量が0.2質量%~10質量%であり、前記混合液の全体重量1kgに対して亜鉛イオンを0.01~10.0ミリモル含有することを特徴とする。
(1)ストレプトマイセス属(Streptomyces)
(2)スルフォロブス属(Sulfolobus)
(3)サッカロポリスポラ属(Saccharopolyspora)
(4)ノカルジア属(Nocardia)
(5)シュードモナス属(Pseudomonas)
(6)バシラス属(Bacillus)
(7)サイトファーガ属(Cytophaga)
(8)カンジダ属(Candida)
(9)セルロモナス属(Cellulomonas)
(10)クロストリジウム属(Clostridium)
(11)アスペルギルス属(Aspergillus)
(12)ペニシリウム属(Penicillium)
(13)クモノスカビ属(Rhizopus)
【0011】
また、本発明の屋外用カメムシ忌避剤の使用方法は、前記屋外用カメムシ忌避剤を水で20倍~50倍に希釈して散布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカメムシ忌避剤は、栽培中の農作物に散布することによって、農作物からカメムシを退散させ、カメムシによる農産物の被害を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の屋外用カメムシ忌避剤は、発酵分解可能な有機物を発酵させて培養した培養液に、フルボ酸と、木酢液と、亜鉛イオンと、水とを混合した混合液である。
【0014】
原料として用いる有機物は、発酵分解が可能な有機物であれば特に制限されない。好ましい実例として、例えば農産物処理の廃棄物、水産物処理の廃棄物、食品廃棄物等を挙げることができるが、これらに限られるものではない。
【0015】
[培養に用いる細菌について]
本発明のカメムシ忌避剤の製造に用いる細菌は、以下の13種の菌属に属する細菌と白色腐朽性担子菌とからなり、前記菌属が、(1)ストレプトマイセス属、2)スルフォロブス属、(3)サッカロポリスポラ属、(4)ノカルジア属、(5)シュードモナス属、(6)バシラス属、(7)サイトファーガ属、(8)カンジダ属、(9)セルロモナス属、(10)クロストリジウム属、(11)アスペルギルス属、(12)ペニシリウム属、(13)クモノスカビ属である。
【0016】
培養液の作成に用いる細菌は、前記の13種の菌属に属する全ての細菌と白色腐朽性担子菌との全てを含んでいる必要がある。13種の菌属に属する全ての細菌と、白色腐朽性担子菌との全ての細菌を含むことにより、細菌相互の分解、発酵作用を増大させることができる。
【0017】
[培養液について]
本発明の培養液は、前記13種の菌属に属する細菌と白色腐朽性担子菌とが混合され、培地に発酵分解可能な有機物と水とを加えて培養される。これらの細菌は、菌体の合計質量が培養液の全質量に対して、3~30質量%になるように培養されることが好ましい。菌体の質量が培養液の質量に対して3質量%未満では、カメムシ忌避剤に用いた場合にカメムシに対する十分な忌避作用が得られず、一方、30質量%を超えるように培養するのは困難な場合が多く、また菌の活性が低下又は変化することがあるので好ましくない。
【0018】
培養の終了後、培養液を菌体が通過する目開きのろ過材を用いてろ過して培養の残滓、生成した沈殿物、ごみ等を除いて菌体を含む培養液を得る。ここで、有機物に含まれていたカドミウム、水銀、砒素の中の1種または2種以上を含む水溶性の重金属成分は、培養中に非水溶性の固体に変化して沈殿するので、固体を濾過して除くと、重金属成分が非水溶性になって除去される。
【0019】
[フルボ酸について]
フルボ酸は、土壌又は石炭質から希アルカリでフミン酸を抽出除去した後に無機酸で抽出したとき、酸性の上澄み液に黄色ないし橙黄色を与える物質であって、乾固すると無定型の粉末を与える。得られた粉末は、水、エタノールに可溶の無定型の酸性物質である。
フルボ酸は、単一の化学構造式を有するものではなく、組成、分子量も一定したものではなく、原料及び採取条件により組成、分子量が変化する。また実用的には水溶液として供給されたものが利用されることも多い。本発明においては、フルボ酸は、非特許文献3に記載された方法で製造した精製フルボ酸を使用することが好ましい。
【0020】
[木酢液について]
木酢液は、木材を乾留する際に留出液として得られる熱分解液であり、カメムシに対して弱い忌避作用を有することが報告されている(特許文献2を参照)。しかし木酢液は、大量の木材を乾留しても小量しか得られないために高価であって、カメムシ忌避効果も弱いものであるから、家庭園芸などには利用可能であっても農業用には利用できないものである。これに対して本発明では、13種の菌属の細菌と白色腐朽性担子菌とによる培養液に少量の木酢液を加えることによって、カメムシに対する忌避作用を大幅に強化することができる。
【0021】
[亜鉛イオンについて]
細胞質不和合の関係にある糸状菌間では、共培養しても菌共生ウイルスの伝染(移転)が起こらないが、亜鉛イオン存在下で共培養すると、菌寄生ウイルスに感染しているウイルスから菌感染ウイルスに感染していない糸状菌へウイルスが移行(伝染)することから亜鉛イオンを用いるものである。このように亜鉛イオンによってウイルスが移行することによりカメムシの忌避力が大きくなる。
【0022】
[カメムシ忌避剤の組成]
本発明のカメムシ忌避剤は、以上の培養液と、フルボ酸と、木酢液と、亜鉛イオンと、水とを混合した混合液である。
本発明のカメムシ忌避剤は、以上の混合液全体の質量を100質量%とした場合に、培養液の質量が5質量%~15質量%であることが好ましい。前記培養液の質量が5質量%未満の場合は、カメムシ忌避剤の忌避作用が低下し、培養液の質量が15質量%を超えて加えても、加えた培養液の量の増加に比較して、カメムシ忌避剤の忌避作用の増加が対応しなくなるので好ましくない。
【0023】
また、本発明のカメムシ忌避剤は、以上の混合液全体の質量を100質量%とした場合に、フルボ酸の質量が、0.0001~0.01質量%であることが好ましい。フルボ酸の質量が0.0001質量%未満の場合は、カメムシ忌避剤の忌避作用が低下し、フルボ酸の質量が0.01質量%を超えて加えても、加えたフルボ酸の量の増加に対して、カメムシ忌避剤の忌避作用の増加が対応しなくなるので経済的に好ましくない。
【0024】
さらに、木酢液の含有量は、混合物全体の質量を100質量%とした場合に、0.2質量%~10.0質量%であることが好ましい。木酢液の質量が0.2質量%未満の場合は、カメムシ忌避剤の忌避作用が低下し、木酢液の質量が10.0質量%を超えて加えても、加えた成分の量の増加に対してカメムシ忌避剤の忌避作用の増加が対応しなくなるので経済的に好ましくない。
【0025】
さらに、亜鉛イオンの含有濃度は、0.1~10.0ミリモル濃度/カメムシ忌避剤であることが好ましい。亜鉛イオンの含有量が0.1ミリモル濃度未満ではカメムシ忌避剤の忌避作用が低下し、前記亜鉛イオンの含有量が10ミリモルを超えるように加えても、カメムシ忌避剤の忌避作用は増加しないので経済的に好ましくない。
【0026】
[実施例]
(1)培養液
本発明の13種の菌属の細菌と白色腐朽性担子菌との混合菌として、下記の14菌種を挙げることができる。付してある符号は上記13菌族に対応させてある。
1)ストレプトマイシン生産菌(Streptomyces griseus スト
レプトマイセス属)
2)スルフォロブス アシドカリダリウス(Sulfolobus acidoca
ldarius スルフォロブス属)
3)サッカロポリスポラ エリスラエア(Saccharopolyspora
erythraea サッカロポリスポラ属)
4)ノカルディア アステロイデス(Nocardia asteroides ノ
カルジア属)
5)シュードモナス フローレッセンス(Pseudomonas fluores
cens シュードモナス属)
6)枯草菌(Bacillus subtilis バシラス属)
7)サイトファーガ ハッチンソニ(Cytophaga hutchinsoni
サイトファーガ属)
8)カンジダ バーサチルス(Candida versatilis カンジダ属

9)セルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena
セルロモナス属)
10)クロストリジウム サーモセラム(Clostridium thermoce
llum クリストリジウム属)
11)アスペルギルス オリゼー(Aspergillus oryzae アスペル
ギルス属)
12)ペニシリウム クリソゲナム(Penicillium chrysogenu
m ペニシリウム属)
13)リゾプス オリゼー(Rhizopus oryzae クモノスカビ属)
本発明において、白色腐朽性担子菌としては、白色腐朽菌を用いる。
【0027】
上記13種の菌属の細菌と白色腐朽性担子菌のそれぞれを、1×10cfu/cmの濃度で同量ずつ混合して前培養し、前培養液を菌体の合計質量が10質量%になるまで培養することにより混合菌の培養液を製造した。この培養液を菌体が通過する目開きのろ過材を用いて濾過して培養液を得た。
【0028】
(2)木酢液
木材乾留装置に原木(スギ、ブナ、サクラ及びナラ材)150Kgを仕込み、釜内温度300℃以上に加熱し、留出液を集めて静置し、沈降するタールを除いて上澄液として木酢液20kgを得た。
【0029】
(4)カメムシ忌避剤
培養液10kgと、特許文献3に記載された方法に従って製造したフルボ酸5.0kgと、木酢液5.0kgと、塩化亜鉛2.76g(0.02モル)に、水を加えて本発明のカメムシ忌避剤200kgを製造した。この場合、カメムシ忌避剤の製造に使用する水は、酸化剤を含まない水が好ましい。
【0030】
本発明では、以上のようにして製造したカメムシ忌避剤を、水で20倍~50倍に希釈した後、農作地に散布してカメムシ忌避剤に用いる。希釈率が20倍未満の場合には高濃度のため取り扱いが困難となる。希釈率が50倍を超えると、充分な忌避効果を発揮しなくなる。
【0031】
[試験例]
(1)試験装置について
一辺が30cmの立方体の2個のプラスチックボックスを、直径7cmの円筒ボックスを挟んで一列になるように配列させて設置し、それらを直径1cm、長さ30cmのパイプで連結して連通させた。円筒ボックスには直径8.5cmのろ紙を敷いた直径9cmのガラス製シャーレを置き、一方に検体0.5mLをろ紙上に滴下して試料側とし、他方には同量の水を滴下し対照側とした。その後、中央の円筒ボックスに10頭のホソハリカメムシを投入し、食料と水を供給しながら室温下明暗それぞれ12時間の条件下で3日間飼育後のカメムシの移動頭数を調べた。移動頭数は試料側ボックス、対照側ボックス、その他場所の3種類に分け、それぞれに存在したカメムシの頭数を数えた。試験は10回繰り返した。中央のカメムシ投入ボックスから検体側へのカメムシの移動は、検体のカメムシに対する誘引作用であり、対照側への移動は植物熱分解液のカメムシに対する忌避作用であると判断した。
測定に使用した試料を以下に示し、試験結果を表1に示す。
なお、亜鉛イオンを含まない試料は、予備試験においてカメムシに対する忌避作用を示さなかったので試験から除外した。
【0032】
(2)測定に使用した試料について
試料番号1 実施例に記載のカメムシ忌避剤
培養液10質量部と、フルボ酸0.005質量部と、木酢液5質量部と、
塩化亜鉛2.76gと、水とを加えて100質量部とした。
試料番号2 培養液10質量部と、フルボ酸0.005質量部と、塩化亜鉛2.76g
と、水とを加えて100質量部とした。この試料はリンゴ腐らん病消毒液
として用いられている。
試料番号3 培養液10質量部と木酢液10質量部と、塩化亜鉛2.76gと、水とを
加えて100質量部とした。
試料番号4 木酢液10質量部と、塩化亜鉛2.76gと、水とを加えて100質量部
とした。
試料番号5 培養液10質量部とフルボ酸0.005質量部と、塩化亜鉛2.76g
と、水とを加えて100質量部とした。
試料番号6 水
【0033】
(3)[試験結果]
【表1】
【0034】
表1に示すように、本発明のカメムシ忌避剤(試料番号1)は、リンゴ腐らん病消毒液(試料番号2)及び木酢液(試料番号4)よりも強いカメムシに対する忌避作用を示した。培養液と木酢液の混合液(試料番号3)もカメムシに対して強いカメムシに対する忌避作用を示したが、本発明のカメムシ忌避剤(試料番号1)には及ばなかった。木酢液とフルボ酸の混合液(試料番号5)はフルボ酸(試料番号4)と同等のカメムシに対する忌避作用しか示さなかった。
【要約】
【課題】本発明は、カメムシの忌避物質を提供し、カメムシが農作物に取り付くのを防止して、カメムシによる農業の被害を予防することを課題とする。
【解決手段】屋外用カメムシの忌避剤であって、培養液が少なくとも14の菌属に属する細菌群の培養液を含む水溶液であって、細菌群の菌体の合計質量を100質量%とした場合に、細菌群の菌体の質量が培養液の質量の3~30質量%になるように培養された培養液とフルボ酸と木酢液と亜鉛イオンとを有効成分とする水溶液をであることを特徴とするカメムシ忌避剤を提供する。
【選択図】 なし