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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】接着剤ディスペンサ及び接着剤塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/015 20060101AFI20250121BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20250121BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
B05C17/015
B05C5/00 A
B05C11/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024173947
(22)【出願日】2024-10-03
【審査請求日】2024-10-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592119890
【氏名又は名称】岩谷テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【弁理士】
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】細田 陽一
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332748(JP,A)
【文献】米国特許第05029738(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C17/00
B05C5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の接着剤(A)を建築面材の接着面に断続的に吐出し、間隔を隔てて該接着剤の液滴又は液溜を前記接着面に形成する接着剤ディスペンサ(1)において、
前記接着剤を収容可能な接着剤収容域(ε)を備えた接着剤容器(2)と、前記接着剤収容域に貯留した接着剤を吐出する吐出口(Na)を備えた接着剤吐出装置(10)と、前記接着剤収容域の前記接着剤を押圧して加圧し又は昇圧せしめる接着剤押圧手段(3-7)とを有し、
前記接着剤吐出装置は、前記接着剤収容域に流体連通するとともに、前記接着剤を前記接着面に吐出する前記吐出口として先端部を開口した可撓管(11)と、前記接着剤収容域と前記吐出口との間に位置する前記可撓管の中間部分を局所的に偏平化し、局所的な流路抵抗を該可撓管に与える可撓管挟圧装置(20)とを備え、
該可撓管挟圧装置の挟圧作用によって偏平化した前記可撓管の先端部は、前記接着剤を吐出する接着剤吐出ノズル(N)を構成することを特徴とする接着剤ディスペンサ。
【請求項2】
前記可撓管挟圧装置は、前記可撓管を挿通せしめ且つ該可撓管の外面を挟圧するためのニップ域を形成する一対のローラ(21)を有することを特徴とする請求項1に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項3】
前記可撓管挟圧装置は、前記ローラを夫々支承又は支持する一対の支軸(23)と、各支軸に係止又は係留された引張コイルスプリング(25)とを有し、該引張コイルスプリングは、前記ローラのニップ域に位置する前記可撓管の部分を前記ローラによって偏平化するための初期的な圧縮力を前記ローラに与えるとともに、前記可撓管の復元力及び該可撓管内の接着剤の圧力上昇に抗して初期的な前記可撓管の断面偏平形状を維持するように前記ニップ域の拡開を抑制し又は制限する反力又は抗力を前記支軸に付与することを特徴とする請求項2に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項4】
前記接着剤容器は、実質的に全長に亘って均一又は均等な真円形断面を有するシリンダ部分を有し、前記接着剤押圧手段は、前記シリンダ部分のシリンダ内に往復動可能に内装され、その前進運動により前記接着剤収容域の接着剤を押圧するピストン(6)と、
該ピストンに一体的に連結され、前記ピストンを往復動せしめるピストンロッド(7)と、
該ピストンロッドをシリンダ内に押込む駆動力を手指の把持力によって前記ピストンロッドに与える手動操作式の可動レバー(5)と、
前記シリンダ内に前進した前記ピストンロッドが前記可動レバーの解放後に後退するのを阻止し又は抑制するラチェット機構(3c-3g)と、
該ラチェット機構のフレーム部分(30)から一体的に下方に延びる握持可能なハンドル(4)と、
一回の前記可動レバーの操作によって生じる前記ピストンの前進運動の寸法(δ)を設定し又は規制するストローク規制装置(8)とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項5】
前記可動レバーの上端部は、前記フレーム部分の下部又は前記ハンドルの上部に配置された枢軸によって枢動可能に支持されており、前記ストローク規制装置は、前記ピストンのストローク(δ)を設定又は規制すべく、前記可動レバーの枢動角度範囲(θ)を制限するように構成されるとともに、該枢動角度範囲を可変設定可能な角度範囲調節機構(82,85)を備えることを特徴とする請求項4に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項6】
前記接着剤容器は、その先端開口部を閉塞するように先端部分に取付けられるフロントキャップ(9)を有し、前記接着剤収容域と連通する接着剤送出管(12)が、前記フロントキャップの径方向中心部を貫通しており、前記可撓管及び前記接着剤送出管を同心状に接続し、該接着剤送出管の管内流路と前記可撓管の管内流路とを流体連通せしめる管材継手部材(14)が、前記フロントキャップによって支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項7】
前記管材継手部材(14)は、前記可撓管の基端部の内径よりも僅かに大きい外径を有する円形断面の管状部分(14d)を有し、円形断面を有する前記可撓管の基端部は、該可撓管の基端開口を僅かに拡開して前記管状部分を該基端開口から可撓管内に嵌入することにより、該管状部分の外周面上に被着することを特徴とする請求項6に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項8】
前記可撓管は、外径10~18mm及び内径6~15mmの範囲内の所定の外径及び内径を有する柔軟な樹脂、ゴム又はエラストマー管からなり、前記可撓管挟圧装置は、[前記ニップ域の寸法(n)/圧縮前の可撓管の外径(d)]を前記可撓管の圧縮比として定義したとき、前記可撓管を圧縮比0.15~0.30の範囲内の所定の圧縮比で径方向に圧縮し、該可撓管を偏平化することを特徴とする請求項2又は3に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項9】
前記フロントキャップによって支持されたフロントカバー(28)又は装置カバー(100)を更に有し、該フロントカバー又は装置カバーは、偏平化した前記可撓管の先端部が貫通する長円形又は楕円形の開口部(29)を有し、前記吐出口として機能する前記可撓管の先端開口は、前記フロントカバー又は装置カバーの前方に配置されることを特徴とする請求項8に記載の接着剤ディスペンサ。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤ディスペンサを使用した接着剤塗布方法であって、
22.0~32.0の範囲内の粘度(Pa・s/23℃)を有する水溶性接着剤又は酢酸ビニル系接着剤を前記接着剤収容域に収容し、該接着剤の液滴又は液溜を前記接着面に形成することを特徴とする接着剤塗布方法。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着剤ディスペンサを使用した接着剤塗布方法であって、
一回の接着剤押圧手段の手動操作により、1.5g~10.0gの範囲内の所定量の前記接着剤を前記吐出口から吐出せしめることを特徴とする接着剤塗布方法。
【請求項12】
請求項6に記載された接着剤ディスペンサを使用した接着剤塗布方法であって、
前記接着剤を筒状樹脂フィルム内に封入してなるパッケージ形の接着剤ユニットを前記接着剤収容域に収容するとともに、該接着剤ユニットの先端部のフィルムを切断し又は破断してバッケージを局所的に開封し、前記接着剤送出管を前記フィルムの開封部分に挿入して該接着剤送出管を前記接着剤ユニット内に延入させるようにして、前記フロントキャップを前記接着剤容器の先端開口部に組み付け、前記接着剤を封入した前記接着剤ユニット内の領域と、前記可撓管の管内領域とを流体連通せしめることを特徴とする接着剤塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤ディスペンサ及び接着剤塗布方法に関するものであり、より詳細には、建築工事の建設現場において実質的に等量の接着剤を建築面材の接着面に間隔を隔てて均等に分布させるのに好適に使用することができ、接着剤の塗布量、塗布位置、塗布状態等の現場管理を容易にする接着剤ディスペンサ及び接着剤塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装材(壁材・天井材)として、石膏ボード、珪酸カルシウム板、木質系合板、木質系ボード等の建築板又は建築内外装面材(以下、「面材」という。)が広く実用に供されている。建築物等の建設現場において、面材の多くは、その接着面を接着剤によって下地面(被接着面)に接着する接着剤張り工法により壁面又は天井面等に固定される。一般に、接着剤張り工法では、職人又は職工等の作業従事者は、裏面(接着面)を上に向けた状態で面材を水平に仮置きした後、糊付け棒、刷毛、ローラー、チューブ状容器等を使用して接着剤を面材の上面(接着面)に点状(スポット状)又は断続的線状に塗布し、接着剤が乾燥硬化する前に面材の接着面を壁下地面又は天井下地面等(即ち、被接着面)に押し当てて積層する。点状(スポット状)又は断続的線状に面材の接着面に塗布された接着剤は、積層時の圧力(面圧)により面材間の間隙で広範囲に拡がる。面材は、接着剤の固化・硬化及び強度発現のための養生時間が経過した後、硬化後の接着剤の接着力によって壁面又は天井面に堅固に固定される。
【0003】
しかしながら、このような接着剤塗布方法では、塗布量、塗布位置、塗布状態等の一様性又は均等性を確保し難いことから、作業従事者等の経験又は技能によっては、接着層の不均一性や、局所的な塗布量の不足又は過剰、或いは、接着剤塗布量の不均等性等の施工不良が生じる可能性が想定され、これにより、局所的な接着力の低下等に起因した接着強度不足や、接着層の厚さの不均等性に起因した面材目地部の目違い又は不陸などの問題が生じることが懸念される。これに対し、塗布量等の均一性又は均等性等を確保すべく、秤量器等によって接着剤の規定量又は所要量を厳密に管理して接着剤を面材に塗布する作業形態を想定し得るが、このような現場作業は、作業性、作業効率、或いは、接着剤の硬化時間等を考慮すると、実現可能性に乏しい。このため、現状では、熟練工が自身の経験、勘及び技能等に依り目分量で接着剤を面材に塗布する接着剤塗布方法が一般に採用されている。しかし、建設業における近年の熟練工不足の問題等に鑑みると、作業の簡便性、容易性、確実性、迅速性等の作業性を改善する何らかの対策又は改善策が望まれる。
【0004】
また、近年、乾式耐火遮音間仕切壁(耐火構造且つ遮音構造の乾式間仕切壁)が多くの中高層建築物において施工されているが、壁体を構成する上張り面材を適切な分布及び塗布量の接着剤で下張り面材に接着することは、壁体の遮音性能、耐火性能、或いは、耐震性能を所望の如く確保する上で重要であると考えられる。例えば、上張り面材を下張り面材に接着する接着剤の塗布形態又は分布等(例えば、点状又は断続的線状等の塗布形態の相違、或いは、塗布間隔の相違など)が壁体のコインシデンス限界周波数等に影響し、従って、壁体の遮音性能に関連することが、近年の日本音響学会論文集の掲載論文等に記載されている。
【0005】
このような事情より、所期の遮音性能や耐火性能等を確保すべく、熟練工の経験、勘等に依存することなく、比較的経験が浅い作業者等であっても、接着剤の塗布量、塗布間隔等の現場管理を容易になし得るようにする比較的簡易な構成の器具等を開発することが望ましい。
【0006】
この点に関し、例えば、特開2004-216371号公報(特許文献1)には、トンネル工事用の内外装面材の接着面に点状又は断続的線状に接着剤を塗布する接着剤塗布装置が記載されている。この接着剤塗布装置は、面材を搬送するローラ式搬送装置と、電動式の接着剤押出し装置の圧力下に接着剤を押し出す多数の接着剤塗布ノズルとを有し、搬送装置で面材を搬送し且つ搬送中の面材の裏面に接着剤を塗布するように構成された比較的大型且つ複雑・重厚な機構を有する。しかしながら、建築内装工事等の現場作業においては、一般に、限られた空間において作業を実施せざるを得ないことが多く、しかも、多くの作業環境においては、大容量の電源等を容易に確保し難い状況が生じるので、この種の機械装置は、建築内装工事等の作業従事者が容易に使用し得る性質のものではない。
【0007】
また、実開平6-10496号公報(特許文献2)には、電動ポンプ等の圧送装置に連結された接着剤導入管と、接着剤導入管に連結された有孔管とから構成される接着剤塗布装置が記載されている。有孔管は、水平な仮置き状態の面材の裏面(上面)を走査するように移動するとともに、接着剤導入管によって圧力下に管内に供給される接着剤を接着剤排出孔から吐出し、これにより、接着剤を面材の接着面に線状に塗布する。しかしながら、電動ポンプ等の圧送装置を要する特許文献2の装置も又、大容量の電源等を確保し難く、しかも、限られた作業空間で実施されることが多い建築内装工事等の現場作業においては、作業従事者が容易に使用し難い性質の装置である。
【0008】
他方、建築内装工事等の現場作業において使用される液状材料施工用の工具として、コーキングガン(シーリングガン)が知られている。一般に、コーキングガンは、シーリング剤(コーキング剤)を壁面又は天井面の目地等に充填すべくシーリング工事において使用される。コーキングガンは、例えば、特開2004-100392号公報(特許文献3)に記載される如く、シーリング剤を収容する円筒形容器部分と、容器内に収容されたシーリング剤を加圧する手動操作式又は電動式(充電式)のシーリング剤押圧機構と、シーリング剤を連続的に吐出するシーリング剤射出ノズルとから構成される。コーキングガンは、主として、目地、間隙等の如く、線形且つ比較的狭小な空間に連続的にシーリング剤を充填することを意図したものであることから、比較的均等且つ持続的に容器内のシーリング剤を加圧して均等な流量のシーリング剤を吐出口から連続的に吐出するように構成されており、しかも、シーリング剤は、空気に触れた後においても比較的硬化又は固化し難い性質を有する。これに対し、建築面材の接着剤は、一般に、空気に触れた状態では比較的早期に硬化又は固化する性質を有するので、コーキングガンの構造は、このような面材接着用の接着剤を建築面材の接着面に断続的に吐出し、建築面剤の接着面に点状又は断続的線状に接着剤を塗布するための器具又は装置の構造としては、応用し難い事情がある。
【0009】
本発明者等は、手動操作式の機構で実質的に等量の接着剤を間欠的に流下又は滴下することでき、しかも、作業者等が片手で持つことができる程度の軽量性を有するコンパクトな構成の接着剤ディスペンサを特開2020-097001号公報(特許文献4)において提案している。この接着剤ディスペンサは、液状接着剤を貯留する接着剤容器と、容器下部から重力下に流下又は滴下するとともに、吐出口を選択的に開放又は閉鎖する弁体を備えた開閉弁装置と、開閉弁装置の開放又は閉鎖を手動操作するための開閉弁操作機構とを有し、実質的に水平に配置された建築面材の接着面に接着剤を断続的に流下又は滴下し、間隔を隔てて接着剤の液滴又は液溜を建築面材の接着面に形成し得るように構成されている。この構成の接着剤ディスペンサによれば、熟練工の経験、勘等に依存することなく、比較的経験が浅い作業者等であっても、接着剤の塗布量、塗布間隔等の現場管理を容易になし得るという点において、所期の目的を達成し得たものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-216371号公報
【文献】実開平6-10496号公報
【文献】特開2004-100392号公報
【文献】特開2020-097001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献4の接着剤ディスペンサにおいては、開閉操作される可動弁体が接着剤の流路内に配設され、可動弁体の位置の変化に相応して接着剤を吐出するように構成されているので、過渡的又は不規則な作業中断を要する形態の作業や、比較的長時間に及ぶ作業等においては、吐出口近傍の接着剤の粘性の変化や、接着剤の硬化状態又は固化状態の影響等により、弁体の円滑な作動を確保し難い情況が生じ得るという懸念があり、また、使用後の器具洗浄が必ずしも容易ではなく、これらの点において更に改善すべき余地が残されていた。
【0012】
また、特許文献4の接着剤ディスペンサでは、作業従事者が操作レバー又は操作杆を手指で押圧する押圧操作時間に相応して可動弁体が吐出口を開放し、作業従事者が操作レバー又は操作杆の手指圧力を解放すると、可動弁体が吐出口を閉鎖する構造を有するので、一回の吐出口開放によって吐出される接着剤の流量(吐出量)は、あくまで開閉弁操作機構の人為的操作の程度又は力加減に依存しており、このため、作業従事者の技能又は経験によっては、必ずしも常に適量の接着剤を接着面に塗布し得るとは限らないといった事情があり、従って、この点においても、更に改善すべき余地が残されていた。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、実質的に等量の接着剤を間欠的に吐出することでき、しかも、作業従事者等のユーザが片手で持つことができる程度の軽量性を有するコンパクトな構成を有し、更には、接着剤の流動路に可動弁体等の可動部を配設することなく接着剤の吐出量を制御することができる接着剤ディスペンサ及び接着剤塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成すべく、液状の接着剤(A)を建築面材の接着面に断続的に吐出し、間隔を隔てて該接着剤の液滴又は液溜を前記接着面に形成する接着剤ディスペンサ(1)において、
前記接着剤を収容可能な接着剤収容域(ε)を備えた接着剤容器(2)と、前記接着剤収容域に貯留した接着剤を吐出する吐出口(Na)を備えた接着剤吐出装置(10)と、前記接着剤収容域の前記接着剤を押圧して加圧し又は昇圧せしめる接着剤押圧手段(3-7)とを有し、
前記接着剤吐出装置は、前記接着剤収容域に流体連通するとともに、前記接着剤を前記接着面に吐出する前記吐出口として先端部を開口した可撓管(11)と、前記接着剤収容域と前記吐出口との間に位置する前記可撓管の中間部分を局所的に偏平化し、局所的な流路抵抗を該可撓管に与える可撓管挟圧装置(20)とを備え、
該可撓管挟圧装置の挟圧作用によって偏平化した前記可撓管の先端部は、前記接着剤を吐出する接着剤吐出ノズル(N)を構成することを特徴とする接着剤ディスペンサを提供する。
【0015】
本発明の上記構成によれば、接着剤ディスペンサは、接着剤収容域を有する接着剤容器と、開閉弁を備えない接着剤吐出装置と、接着剤収容域の接着剤を押圧する接着剤押圧手段とから構成される比較的簡素な構造を有する器具であり、作業従事者等のユーザが片手で保持し又は携帯し得る程度の軽量且つコンパクトな器具として設計し得る。また、本発明の接着剤ディスペンサにおいては、接着剤の収容域か吐出口に至る流路には、開閉弁等の可動弁体が配設されず、可動弁体の開放又は閉鎖等の操作は、必要とされず、接着剤の硬化・固化等に起因した可動弁体等の可動部の作動障害の考慮なども必要とされない。更に、接着剤の吐出量は、可撓管挟圧装置によって与えられる流路抵抗と、接着剤押圧手段によって接着剤に与えられる流体圧力とによって制御し得るので、本発明によれば、適切な可撓管挟圧装置及び接着剤押圧手段の圧力バランスの設定(従って、適当な流路抵抗及び流体加圧の設定)により、多数回に亘る接着剤押圧手段の操作により得られる各回の接着剤吐出量を実質的に均一又は均等な値に設定し且つ維持することができる。
【0016】
本発明の実証試験において、本発明者等は、本発明に従って接着剤ディスペンサ(試作器)を設計し且つ製作し、その容器内に液状接着剤(酢酸ビニル系接着剤)を収容して建築面材の接着面に所定間隔で接着剤の液滴又は液溜を塗布する本発明の実証試験を実施した。試験において、本発明者は、本発明の接着剤ディスペンサの一回の接着剤吐出量を3.0gに初期設定し、20回の接着剤の吐出を行い、間隔を隔てた20箇所の液滴又は液溜を面材の接着面に形成し、各液滴又は液溜の液量(重量)を計測し、接着剤吐出量の平均値、最小値及び最大値を測定した。この結果、面材の接着面に形成された各液滴又は液溜の液量(重量)は、平均値=3.04g、最小値=2.28g、最大値=3.83gであり、最小値及び最大値を除くと、各液滴又は液溜の液量は、2.54g~3.3gの範囲内の値であった。この結果、本発明の接着剤ディスペンサによれば、かなり均等な量の液滴又は液溜を継続的に反復形成し得ることが判明した。従って、本発明に係る上記接着剤ディスペンサは、極めて実用化に適した構成の器具であると考えられる。
【0017】
好ましくは、上記可撓管挟圧装置は、一対のローラ(21)を有し、対をなすローラは、可撓管を挿通せしめ且つ可撓管の外面を挟圧するニップ域を形成する。ローラによって偏平化した可撓管部分は、流路抵抗を局所的に増大するオリフィスを形成する。このオリィスは、接着剤収容域の内圧上昇時を除き、接着剤の流動又は流通を規制又は制限し、従って、吐出口からの意図せぬ接着剤流出を阻止し、他方、接着剤収容域の内圧上昇時に接着剤の液圧を解放すべく接着剤を流通させ、吐出口から接着剤を吐出せしめるように作用又は機能する。
【0018】
上記ニップ域の寸法(n)は、例えば、1.0mm~5.0mmの範囲内、好ましくは、1.5mm~4.0mmの範囲内、更に好ましくは、2.0mm~3.0mmの範囲内の値に設定し得る。
【0019】
本発明の好適な実施形態によれば、上記可撓管挟圧装置は、上記ローラを夫々支承又は支持する一対の支軸(23)と、各支軸に係止又は係留された引張コイルスプリング(25)とを有し、この引張コイルスプリングは、ローラのニップ域に位置する可撓管部分を一対のローラによって偏平化するための初期的な圧縮力をローラ対に与えるとともに、可撓管の復元力及び可撓管内の接着剤の圧力上昇に抗して初期的な可撓管の断面偏平形状を維持するようにニップ域の拡開を抑制し又は制限する抗力又は反力を支軸に付与する。
【0020】
好ましくは、上記接着剤容器は、実質的に全長に亘って均一又は均等な真円形断面を有するシリンダ部分を有し、上記接着剤押圧手段は、シリンダ部分のシリンダ内に往復動可能に内装され、その前進運動により上記接着剤収容域の接着剤を押圧するピストン(6)と、このピストンに一体的に連結され、ピストンを往復動せしめるピストンロッド(7)と、このピストンロッドをシリンダ内に押込む駆動力を手指の把持力又は握持力によってピストンロッドに与える手動操作式の可動レバー(5)と、シリンダ内に前進したピストンロッドが可動レバーの解放後に後退するのを阻止し又は抑制するラチェット機構(3c-3g))と、ラチェット機構のフレーム部分(30)から一体的に下方に延びる把持又は握持可能なハンドル(4)と、一回のレバー操作によって生じるピストンの前進運動の寸法を設定し又は規制するストローク規制装置(8)とを有する。
【0021】
更に好ましくは、上記可動レバーの上端部は、上記フレーム部分(30)の下部又はハンドルの上部に配置された枢軸によって枢動可能に支持されており、ストローク規制装置は、ピストンのストローク(δ)を設定又は規制すべく、可動レバーの枢動角度範囲(θ)を制限し又は限定し得るように構成されるとともに、枢動角度範囲を任意に拡大し又は縮小し得る可変設定可能な角度範囲調節機構(82,85)を備える。
【0022】
本発明の好適な実施形態において、上記接着剤容器は、その先端開口部を閉塞するように先端部分に取付けられるフロントキャップ(9)を有し、管材継手部材(14)がフロントキャップによって支持される。上記接着剤収容域と連通する接着剤送出管(12)が、フロントキャップの径方向中心部を貫通する。管材継手部材は、可撓管及び接着剤送出管を同心状に接続し、接着剤送出管の管内流路と前記可撓管の管内流路とを流体連通せしめる。好ましくは、管材継手部材は、可撓管の基端部の内径よりも僅かに大きい外径を有する真円形断面の管状部分(14d)を備える。可撓管の基端部は、真円形断面を有する可撓管の基端開口を僅かに拡開して前記管状部分を該基端開口から可撓管内に嵌入することにより、管状部分の外周面上に被着する。
【0023】
上記可撓管は、例えば、外径10~18mm及び内径6~15mmの範囲内の所定の外径及び内径を有する柔軟な樹脂、ゴム又はエラストマー製の管体からなる。可撓管の管壁の肉厚は、例えば、1.0mm~3.0mmの範囲内の値に設定される。[ニップ域の寸法(n)/圧縮前の可撓管の外径(d)]を可撓管の圧縮比として定義すると、上記可撓管挟圧装置は、好ましくは、可撓管を圧縮比0.14~0.30、更に好ましくは、0.16~0.25の範囲内の所定の圧縮比で径方向に圧縮し、可撓管を偏平化する。
【0024】
好適には、本発明に係る接着剤ディスペンサは、上記フロントキャップによって支持されたフロントカバー(28)を更に有する。フロントカバーには、偏平化した可撓管の先端部が貫通する長円形又は楕円形の開口部(29)が形成される。ノズルの吐出口として機能する可撓管の先端開口は、フロントカバーの前方に配置される。
【0025】
他の観点より、本発明は、上記構成の接着剤ディスペンサを使用した接着剤塗布方法であって、22.0~32.0の範囲内の粘度(Pa・s/23℃)を有する水溶性接着剤又は酢酸ビニル系接着剤を上記接着剤収容域に収容し、接着剤の液滴又は液溜を建築面材の接着面に形成することを特徴とする接着剤塗布方法を提供する。
【0026】
本発明は又、上記構成の接着剤ディスペンサを使用した接着剤塗布方法であって、一回の接着剤押圧手段の手動操作により、1.5g~10.0gの範囲内の所定量の接着剤を上記吐出口から吐出せしめることを特徴とする接着剤塗布方法を提供する。接着剤として、壁・天井に建築用ボード類を張り付けるのに一般に使用される酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤(JIS A 5538:JIS K6804)を好適に使用し得る。
【0027】
本発明に係る接着剤ディスペンサを使用するにあたって、作業従事者等のユーザは、接着剤を筒状樹脂フィルム内に封入してなる市販のパッケージ形接着剤ユニットを好ましく使用し得る。このような接着剤ユニットを使用する場合、ユーザは、接着剤ユニットの先端部のフィルムを切断し又は破断してパッケージ先端部を局所的に開封するとともに、開封端と反対の側を上記接着剤収容域(ε)に挿入して接着剤ユニットを概ね全体的に接着剤収容域に収容し、しかる後、上記接着剤送出管(12)をフィルムの開封部分に挿入して接着剤送出管を接着剤ユニット内に延入させるようにして、上記フロントキャップ(9)を上記接着剤容器の先端開口部に組み付け、これにより、接着剤を封入した接着剤ユニット内の領域と、上記可撓管の管内領域とを流体連通せしめ、かくして、接着剤ディスペンサを使用開始可能な状態にセッティングすることができる。使用において、ユーザは、このようにしてセッティングした接着剤ディスペンサのハンドルを握持し、ノズル先端部を建築面材の接着面の適所に差し向け、可動レバーを手指で把持して作動し、これにより、接着剤を接着面に吐出せしめ、これを反復実施することにより、接着面に分散した接着剤の液滴又は液溜を形成し、かくして、建築面材の接着面に対して接着剤を所望の間隔で点状又は断続的線状に塗布することができる。比較的長時間に亘って作業を中断する場合には、吐出口を適当な養生材、キャップ等によって適切に養生し又は保護しさえすれば良く、接着剤は容易に硬化又は固化せず、数時間後又は数日後に直ちに作業を再開することができる。また、作業の完了後には、ユーザは、容器及び可撓管等の接着剤流路を水洗することにより、接着剤ディスペンサを比較的容易に清掃することができ、所望により、可撓管及び/又は接着剤送出管を交換することができる。従って、本発明に係る接着剤塗布方法は、比較的少量の建築面材の施工を日々繰り返し実施する必要がある建築工事の施工において、極めて好適に使用し得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、実質的に等量の接着剤を間欠的に吐出することでき、しかも、作業従事者等のユーザが片手で保持し又は携帯し得る程度の軽量性を有するコンパクトな構成を有し、更には、接着剤の流動路に可動弁体等の可動部を配設することなく接着剤の吐出量を制御することができる接着剤ディスペンサを提供することができる。
【0029】
また、本発明に係る接着剤塗布方法によれば、このような接着剤ディスペンサを使用して面材の裏面に接着剤を比較的容易に点状又は断続的線状に分散塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1(A)及び図1(B)は、本発明の好適な実施例に係る接着剤ディスペンサの構造を示す側面図及び部分拡大縦断面図である。
図2図2は、接着剤容器内に接着剤を収容した状態で示す接着剤ディスペンサの部分拡大縦断面図である。
図3図3(A)は、接着剤吐出装置を除く接着剤ディスペンサの構造を示す分解斜視図であり、図3(B)は、ピストンの正面図であり、図3(C)は、ストローク規制装置の斜視図であり、図3(D)は、ストローク規制装置の分解斜視図である。
図4図4は、接着剤吐出装置の構造を示す分解斜視図である。
図5図5(A)、図5(B)及び図5(C)は、接着剤ユニットを接着剤容器に装填する過程を概略的且つ段階的に示す接着剤ディスペンサの部分縦断面図である。
図6図6は、接着剤ディスペンサの容器内に装填可能な接着剤ユニットを概略的に示す斜視図である。
図7図7は、建築内外装工事用面材の接着面に点状に分散塗布された接着剤の態様を概略的に示す斜視図である。
図8図8(A)は、接着剤吐出装置の変形例を第2実施例として示す接着剤吐出装置の縦断面図であり、図8(B)及び図8(C)は、図8(A)に示す接着剤吐出装置の正面図及び側面図であり、図8(D)及び図8(E)は、図8(A)に示す接着剤吐出装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0032】
図1図4は、本発明の好適な実施例に係る接着剤ディスペンサの構造を示す側面図、部分拡大縦断面図及び分解斜視図である。
【0033】
図1図4に示す如く、接着剤ディスペンサ1は、接着剤ユニットPを収容可能な接着剤収容域εを備えた接着剤容器2(以下、「容器2」いう。)と、容器2の基端部に連結されたラチェット機構3と、ラチェット機構3のフレーム部分30から一体的に下方に延びるハンドル4と、フレーム部分30及びハンドル4の連結部分に枢支された枢動可能な手動操作式の可動レバー(作動杆)5と、容器2の接着剤収容域εに往復動可能に内装され且つ容器2内に収容された接着剤A(図2)を押圧するピストン6と、先端部をピストン6に一体的に連結され且つラチェット機構3を貫通するピストンロッド7と、可動レバー5の枢動角度範囲を制限し、一回のレバー操作によって生じるピストン6の前進運動の寸法(ストローク)を規制するストローク規制装置8と、容器2の先端開口部に取付けられるフロントキャップ9と、フロントキャップ9の先端部に取付けられた接着剤吐出装置10(以下、「吐出装置10」いう。)とから構成される。
【0034】
ラチェット機構3、ハンドル4、可動レバー5、ピストン6及びピストンロッド7は、接着剤容器2の接着剤収容域εに収容した接着剤Aを押圧して接着剤Aを加圧し又は昇圧せしめる手動操作式の接着剤押圧手段を構成する。吐出装置10は、ピストン6によって押圧された接着剤Aの圧力上昇に相応して接着剤A(図2)をノズルNの吐出口Naから吐出するように構成される。容器2、ラチェット機構3、ハンドル4、レバー5、ピストン6、ピストンロッド7、ストローク規制装置8及びフロントキャップ9は、鋼製部品、ステンレス合金製部品等の金属製部品の組立体、或いは、金属製の一体成形品からなる。接着剤Aとして、建築物の壁又は天井等に施工される石膏ボード等の石膏系面材や、ロックウール化粧吸音板等の建築内外装工事用面材を張り合わせる際、ステープルやビス類などを併用して面材同士を圧着するのに使用される汎用の酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤(JIS A 5538,JIS K 6804)を好適に使用し得る。
【0035】
図6には、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤を樹脂フィルムの袋内に封入してなる接着剤ユニットPが例示されている。この形態の接着剤ユニットPは、石膏ボード等の建築内装工事用面材の施工において多くの建築内外装工事の建設現場において汎用的に使用されている。また、図7には、この種の接着剤ユニットPより接着剤Aを押し出して建築内外装工事用の面材の接着面に点状に分散塗布した状態が例示されている。
【0036】
図6に示す如く、本例の接着剤ユニットPとして、両端部を封止した筒状の樹脂フィルムF内に重量約1kgの酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤Aを封入してなるパッケージ形の袋入り接着剤を好適に使用し得る。この形式の袋入り接着剤は、壁面・天井面に建築用ボード類を張り付けるのに汎用的に使用されており、市場において容易に入手し得る。
【0037】
従来、接着剤ユニットPのユーザ(建築内外装工事の作業従事者等)は、図6に仮想の切断線(二点鎖線)Sで例示するように袋体の尖塔形端部Paの樹脂フィルムFを鋏又はカッター等の工具で切断して開封した後、手指で袋を握持し、袋体を圧縮して袋内の接着剤Aを加圧し又は昇圧せしめ、これにより、尖塔形端部Paの開封端開口より圧力下に接着剤Aを面材Wの接着面Waに押し出し、かかる一連の作業を反復実施することにより、図7に示す如く、適量の接着剤Aを点状(又は断続的線状)に面材Wの接着面Waに分散塗布していた。
【0038】
このような従来の接着剤分散塗布方法は、熟練工が自身の経験、勘及び技能等に依り目分量で接着剤を面材に塗布する接着剤塗布方法であり、これは、長年に亘って採用されてきた施工法であるが、建設業における近年の熟練工不足の問題等に鑑みると、作業性を改善し、比較的経験が浅い作業従事者等によっても所望の作業を比較的容易に実施し得るようにする対策が望まれる。本発明はこのような観点より創作されたものであり、本発明によれば、ユーザは、例えば、接着剤ユニットPを接着剤ディスペンサ1の容器2内に収納し、吐出装置10のノズルNを面材Wの接着面Waの適所に差し向けた後、押圧機構3のハンドル4を握持し、可動レバー5を手指でハンドル4の側に枢動させるだけで良く、従って、比較的経験が浅い作業従事者等であっても、適量の接着剤を面材の接着面に分散塗布する規則的な作業を確実且つ容易に実行し得る。
【0039】
以下、接着剤ディスペンサ1の構造及び機能について全体的に説明する。
【0040】
図1及び図3に示す如く、接着剤ディスペンサ1を構成する容器2は、全長に亘って均一な真円形断面を有する金属製管材からなる。容器2の先端部には、フロントキャップ9の内螺子等と螺合する外螺子等の連結手段が設けられる。容器2の先端(前端)とフロントキャップ9の段部9cとの間には、環状のゴム製パッキン90が介挿される。容器2の基端部(後端部)にも又、リアカバー又はエンドキャップ3aの内螺子等と螺合する外螺子等の連結手段が設けられる。リアカバー又はエンドキャップ3aは、ラチェット機構3のフレーム部分30と一体化しており、ラチェット機構3の一部を構成する。容器2の内径は、例えば、50mm~80mmの範囲内の寸法、例えば、70mmに設定され、容器2の全長は、200~400mmの範囲内の寸法、例えば、300mmに設定される。
【0041】
可動レバー5によって作動されるピストン6及びピストンロッド7が、容器2の中心軸線X-Xと同心状に整列配置される。図3(B)に示す如く、ピストン6は、容器2の内径と実質的に同一の外径を有する正面視真円形の輪郭を有し、容器2の内周面に摺接する。ピストン6は、ピストンワッシャ(又はピストン受板)6aを介してピストンロッド7の先端部に一体的に連結され、ピストンロッド7の前進(矢印α方向)又は後退(矢印β方向)に従って前進又は後退する。本例の接着剤ディスペンサ1においては、接着剤Aを樹脂フィルムFの袋体内に封入してなる接着剤ユニットPが使用されるので、図3(B)に示す如く、ピストン6の往復動を容易にする複数の空気連通孔6b(直径約6mm)がピストン6に穿孔される。
【0042】
ラチェット機構3のフレーム部分30は、ピストンロッド7が貫通する貫通孔(図示せず)と、ラチェット3c及びチラェットスプリング3dを配設した中空部3bとを有する。ラチェット機構3は、フレーム部分30の外面(後面又は背面)に隣接して配置されたバックレバー3fを有し、バックレバースプリング3gがバックレバー3fとフレーム部分30との間に介装される。ピストンロッド7は、バックレバースプリング3g及びバックレバー3fを貫通して後方に延びて直角に屈曲し、ユーザが握持可能な操作部7aを形成する。
【0043】
可動レバー5は、ラチェット機構3のフレーム部分30とハンドル4の上端部との接続部分に配置された枢支ピン5aによって枢動可能に支持されるとともに、図示しない付勢手段によってハンドル4から離間する方向に付勢されたトリガー型レバーである。枢支ピン5aの軸芯を中心に可動レバー5をハンドル4の側に手指で枢動又は揺動させると、可動レバー5の上端部に配設された送りピン5bがラチェットスプリング3dの弾発力に抗してラチェット3cを前方に押圧する。この結果、ラチェット3cは前方に変位し、ラチェット5aに摩擦係合したピストンロッド7を前進させる。ピストンロッド7は、バックレバー3fの制動作用により、その前進位置を保持する。
【0044】
手指による可動レバー5の枢動操作(トリガー操作)を複数回に亘って反復実施し、ピストン6を段階的に前進させた後、ピストン6を後退(矢印β方向に移動)させるには、バックレバースプリング3gの弾発力に抗してバックレバー3fを前方に押圧し、スライドバー3eをバックレバー3fによって押圧してラチェット3cのラチェット作用を解除し、しかる後、ピストンロッド7の操作部7aを握持してピストンロッド7を手動で後方(矢印β方向)に引っ張り、ピストン6を後退させれば良い。
【0045】
押圧装置3は、レバー5の回動角度範囲を規制又は制限し、一回のレバー操作によって生じるピストン7のストローク(前進距離)δを一定の寸法値に設定するためのストローク規制装置8を備える。ストローク規制装置8は、ハンドル4の側のレバー5に一体的に取付けられ且つレバー5とともに変位する可動管部分81と、可動管部分81の中空部に延入する螺子部82を備えた保持具83と、保持具83をハンドル4に固定又は係留するピン等の固定具又は係留具84と、可動管部分81に延入可能な螺子部82の寸法を可変設定するように螺子部82に螺着した六角ナット85とを有する。ストローク規制装置8は、ハンドル4の縁部から全体的に概ね水平又は若干上方に傾斜してレバー5の側に延びる。枢動可能なレバー5の角度範囲θは、六角ナット85の位置によって設定される。ユーザがハンドル4を握持し、手指でレバー5をハンドル4の側に枢動させると、螺子部82は、可動管部分81の中空部内に挿入され、六角ナット85が、可動管部分81の先端面に当接又は衝合し、更なるレバー5の枢動を制限する。従って、一回のレバー5の枢動操作によって前進するピストン6のストローク(前進距離)δは、可動管部分81の中空部内に挿入可能な螺子部82の寸法に相応した一定の数値(寸法)によって予め設定される。即ち、ユーザ(作業従事者等)は、一回のレバー5の枢動操作に相応してピストン6を所定ストロークδだけ前進させることができるので、レバー5の枢動操作を反復実施することにより、所定ストロークδのピストン6の前進運動を間欠的に反復実施することができる。
【0046】
なお、ラチェット3c、チラェットスプリング3d、バックレバー3f、バックレバースプリング3g及びスライドバー3e等より構成されるラチェット機構3の構造及び機能は、例えば、特許文献3に詳細に記載された汎用のコーキングガンのラチェット機構と実質的に同一又は同様の構成のものであり、従って、ラチェット機構3の構造及び機能は、既知のものであるので、ラチェット機構3の詳細に関する更なる詳細な説明については、省略する。
【0047】
次に、本発明に従って接着剤ディスペンサ1の先端部に配設された吐出装置10の構造及び機能について説明する。
【0048】
図1及び図2に示す如く、容器2の先端の外螺子等には、フロントキャップ9の拡径部9aに形成された内螺子等が螺着し、前方に向かって内径を漸減してなるフロントキャップ9の縮径部9bが、拡径部9aの段部9cから前方に延出する。縮径部9bの前端部は、円板部分9dによって閉塞する。円板部分9dの中心には円形開口9eが穿設されるとともに、連結部9fの基端部が一体的に連結される。
【0049】
吐出装置10を構成する接着剤送出管12(以下、「送出管12」という。)が円形開口9e貫通するとともに、送出管12の外螺子が連結部9fの内螺子に螺合する。吐出装置10は、連結部9fによって支持され、フロントキャップ9の前方に延びる。送出管12は、例えば、内径約13mm及び外径約18mmの樹脂管(例えば、硬質ポリ塩化ビニル管)又は金属管等から構成され、外螺子を備えた送出管12の外端部12a(図4)は、金属製部品からなる。円形開口9e、連結部9f及び送出管12は、中心軸線X-Xを中心に同心状に配列され、接着剤Aを送出可能な接着剤送出路Gがフロントキャップ9を貫通し、接着剤収容域εと連通する。接着剤送出路Gの流路中心は、中心軸線X-Xと一致する。
【0050】
図4に示す如く、吐出装置10は、連結部9fの外螺子に螺着可能な内螺子を備えた六角ナット13と、可撓管11の基端部を嵌着可能なノズル嵌着具14と、可撓管11の基端部をノズル嵌着具14に固定するための係留具15と、上下一対の外装ローラ21を有する挟圧ローラ装置20と、可撓管11の先端部を挿通可能なノズル挿通孔29を備えたフロントカバー28とを備える。
【0051】
六角ナット13の基端側半部は、連結部9fの外螺子に螺着する。六角ナット13の先端側半部には、ノズル嵌着具14の外螺子部14aが螺入する。図4に示す如く、ノズル嵌着具14の本体部分14bは、段差部14cを介して比較的小径の縮径管部14dに連続する。可撓管11は、可撓性又は柔軟性を有する樹脂、ゴム又はエラストマー製の可撓管、例えば、内径9mm及び外径12mmのシリコンチューブからなる。ノズル嵌着具14の縮径管部14dは、可撓管11の内径よりも僅かに大きい外径を有する。可撓管11の基端部は、可撓管11の基端開口を僅かに拡開して縮径管部14を可撓管11内に嵌入することにより、縮径管部14dの外周面上に被着し、可撓管11及びノズル装着具14の管内流路は、接着剤送出路Gと流体連通し、かくして、可撓管11の管内流路は容器2の接着剤収容域εと流体連通する。可撓管11の基端部は、係留具15によって縮径管部14dの外周面に固定され、ノズル嵌着具14に一体的に連結される。なお、本例において、縮径管部14dの流路径は、送出管12の流路径よりも若干小さい寸法に設定されるが、縮径管部14d及び送出管12の流路径を同一の寸法に設定し、或いは、送出管12の流路径を縮径管部14dの流路径よりも小さい値に設定することも可能である。
【0052】
図1図2及び図4に示す如く、吐出装置10を構成する挟圧ローラ装置20は、ノズル嵌着具14の前方に配置された上下一対の外装ローラ21と、各ローラ21を回転可能に支承する上下一対の内装ローラ22と、各内装ローラ22を回転可能に支承する上下一対の支軸23とを備える。ローラ21、22及び支軸23は、支軸23の中心軸線を中心に同心状に配置される。支軸23の各端部は、左右一対の支持板17の縦長スロット17aを貫通して各支持板17の外側に延出する。各支持板17を支持する左右一対の支持板16が各支持板17に隣接して配置される。各支持板16は、貫通孔16aを貫通して六角ナット13のビス孔13aに螺入するビス18aによって六角ナット13の側面に固定される。ビス18bが支持板16及びスペーサ19の貫通孔16b、19aを貫通して支持板17のビス孔17bに螺入し、支持板16に対して支持板17を固定する。
【0053】
各支持板17の外側面には、中心軸線を鉛直方向に配向した引張コイルスプリング25が配置される。引張コイルスプリング25の上下のフックは、各支持板17の外側に延出する上下一対の支軸23の外端部に係止され、スプリングリテーナ25aによって各支軸23の外端部に係留される。引張コイルスプリング25の張力は、上下の支軸23(従って、上下の外装ローラ21)を上下方向に接近させるように作用する。可撓管11は、上下の外装ローラ21の圧力下にローラ21間のニップ域を貫通して偏平化される。初期の真円形断面に復元しようとする可撓管11の復元力が、初期的な張力として引張コイルスプリング25に作用する。スプリング25は、可撓管11の復元力及び可撓管11の内圧(接着剤A(図2)の液圧)に抗して可撓管11の偏平断面を維持する圧縮力を可撓管11に付与する。
【0054】
本例において、可撓管11の外径d=12mm(図2)に対し、外装ローラ21の間に形成されるニップ域の寸法n(図2)は、2.0mm~3.0mmの範囲内の数値、例えば、2.4mmに設定され、従って、ニップ域における可撓管の圧縮比n/dは、0.16~0.25、例えば、0.2に設定される。なお、厳密には、可撓管の管壁の厚さがニップ域において僅かに低減するので、可撓管11の管内流路の偏平化部分の流路寸法は、この圧縮比により得られる流路寸法よりも僅かに増大するが、可撓管11の管内流路は、概ねこの圧縮比に相応して偏平化する。
【0055】
上下の外装ローラ21のニップ域の前方(先端側)において可撓管11は僅かに初期の真円形断面に復元しようとするが、概ね偏平化した状態を維持し、フロントカバー28のノズル挿通孔29を貫通する。偏平化した可撓管11の先端部分は、接着剤吐出用のノズルNを構成し、可撓管11の先端開口は、ノズル11の吐出口Naをフロントカバー28の前方に形成する。なお、フロントカバー28は、ビス孔28a(図4)に螺入するビス28b(図1)によって左右の支持板17に固定される。なお、スペーサ19、ローラ21、22及びフロントカバー28は、比較的硬質な樹脂の一体成形品からなり、吐出装置10を構成する他の部品又は部材は、金属製部材又は部品からなる。
【0056】
次に、接着剤ディスペンサ1の使用方法について説明する。
【0057】
図5には、接着剤ユニットPaを容器2に装填する過程が概略的且つ段階的に示されている。作業従事者等のユーザは、容器2のフロントキャップ9を取り外すとともに、図6に切断線(二点鎖線)Sで例示するように尖塔形端部Paの樹脂フィルムFを鋏又はカッター等の工具で切断して開封部Pbを形成した後、図5(A)に示す如く、接着剤ユニットPの底部Pcを容器2の先端開口部から接着剤収容域εに挿入して接着剤ユニットPを概ね全体的に接着剤収容域εに装填する。しかる後、ユーザは、図5(B)に示すように、送出管12を接着剤ユニットPの開封部Pbに挿入して送出管12の基端部(後端部)を接着剤ユニットP内に延入せしめ、図5(C)及び図2に示すように、フロントキャップ9を容器2の先端開口部に一体的に組み付け、これにより、接着剤ユニットP内の接着剤Aと可撓管11の管内領域とを流体連通させる。かくして、接着剤ディスペンサ1は、使用可能な状態にセッティングされる。
【0058】
使用において、ユーザは、このようにしてセッティングした接着剤ディスペンサ1のハンドル4(図1)を握持し、ノズルNを面材Wの接着面Wa(図7)の適所に差し向け、可動レバー5を手指で把持して作動し、ピストンロッド7及びピストンロッド6を前進(矢印α方向に移動)させる。可動レバー5の枢動角度θは、前述の如く、ストローク規制装置8によって制限されるので、一回の可動レバー5の操作によって生じるピストン6のストロークδは、一定の値に制御される。
【0059】
図2に示す如く、ピストン6の前進運動(α方向の移動)により、接着剤ユニットPの前方に押圧され、接着剤Aを収容した袋体は、全体的に圧縮され、この結果、接着剤ユニットPの前端部のフィルムFは、ゴム製パッキン90に密着し、接着剤ユニットP内の接着剤Aは、接着剤Aの圧力上昇により開封部Pbから流出し、縮径部9b内に充満する。接着剤ユニットP内の接着剤Aは、矢印ηで示す如く送出管12の接着剤送出路G内に流入し、可撓管挟圧装置20の上流側の流路の圧力を上昇させる。ローラ21のニップ域によって形成されるオリフィスの流路抵抗は、上流側の流路の圧力上昇に相応して接着剤AをノズルN側に流出せしめ、ノズルNは、吐出口Naから接着剤Aを吐出する。なお、実証試験においては、接着材Aがオリィスを流通する際、図2の部分拡大図に矢印で示す如く、上下の外装ローラ21が僅かに回転する現象が観察された。
【0060】
ピストン6のストロークδ(図1)は、ストローク規制装置8によって所定寸法に制限されるので、接着剤Aの圧力上昇は制限され、圧力がピーク値を超えると、吐出口Naによる接着剤Aの吐出に伴って徐々に低下して初期値(大気圧)に降圧し、吐出口Naからの接着剤Aの吐出は停止する。従って、一回のレバー操作によって面材Wの接着面Waに吐出する接着剤Aの吐出量は、ストローク規制装置8によって設定されるピストン6のストロークδによって定まるので、ユーザは、比較的簡易なレバー操作により、一定量の接着剤Aの液滴又は液溜を接着面Aに形成することができる。ユーザは、ノズルNの位置を順次移動しながら、上記レバー操作を繰り返し実施し、これにより、図7に示す如く、適量の接着剤Aを点状(又は断続的線状)に面材Wの接着面Waに分散塗布すれば良い。
【0061】
図8には、前述のフロントカバー28に代えて吐出装置10を全体的に覆う装置カバーを備えた接着剤吐出装置の変形例が第2実施例として示されている。図8(A)は、第2実施例に係る接着剤吐出装置の縦断面図であり、図8(B)及び図8(C)は、図8(A)に示す接着剤吐出装置の正面図及び側面図であり、図8(D)及び図8(E)は、図8(A)に示す接着剤吐出装置の斜視図である。
【0062】
図8を参照して第2実施例に係る接着剤吐出装置10の構造について説明する。なお、各図において、前述の実施例における各構成要素又は構成部材と実質的に同一又は同等の構成要素又は構成部材については、同一の参照符号が付されており、これら構成要素又は構成部材の説明に関しては、前述の説明を援用し、重複する説明を省略する。
【0063】
本例の吐出装置10は、ノズル挿通孔29を備え且つ局所的に吐出装置10の前端部を構成する前述のフロントカバー28(図4)に代えて、ノズル挿通孔29を備え且つ吐出装置10を全体的に覆う装置カバー100を備える。装置カバー100は、ノズル挿通孔29を備えたフロントカバー28’と、吐出装置10を全体的に収容するように構成された円筒状のサイドカバー101とから構成される。装置カバー100は、ノズルNから吐出した接着剤Aの一部が作業従事者の手指等を介して吐出装置10の構成要素又は構成部品に付着し、この結果として、接着剤Aが吐出装置10の外面又は隙間等において固化又は硬化する可能性を未然に阻止すべく、吐出装置10を全体的に覆うためのものである。
【0064】
中央部が前方に若干隆起した円盤状の形態を有するフロントカバー28’は、真円形輪郭の前端面26と、前端面26の外周部に連接して径方向外方に延びる円錐台形態の連続部27aと、連続部27aの外縁より後方に延びる円環状部分27bとから構成される。円環状部分27bは、サイドカバー101の前端開口に挿入される。ビス、螺子、ボルト等の係留具105が、サイドカバー101の前端部分に穿設された貫通孔(図示せず)を介して円環状部分27bの雌螺子孔(図示せず)に螺入し、円環状部分27b及びサイドカバー101は、左右一対の係留具105の締め付けにより一体的に連結される。
【0065】
サイドカバー101の後端部には、上下一対の溝103が形成されており、溝103は、中心軸線X-Xと平行に延びてサイドカバー101の後端縁において開放する。溝103に対応する位置には、雌螺子孔を有する雌螺子部材104が配設され、雌螺子部材104はノズル嵌着具14に一体的に支持されている。ビス、螺子、ボルト等の係留具102が溝103を貫通し、雌螺子部材104の雌螺子孔に螺入し、締め付けられる。かくして、円環状部分27bは、雌螺子部材104に対する上下一対の係留具102の締結により、ノズル嵌着具14によって一体的に支持される。
【0066】
使用において、装置カバー100は、吐出した接着剤の一部が吐出装置10に付着したり、吐出装置10が何らかの原因で汚染又は汚濁するのを防止するように吐出装置10を全体的に覆う。容易に理解し得るように、係留具102を弛緩し、サイドカバー101を中心軸線X-X方向且つ外方にスライドさせることにより、装置カバー100を吐出装置10から容易に取外し、清掃又は洗浄することができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態又は実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0068】
例えば、上記実施例では、接着剤を筒状樹脂フィルム内に封入してなるパッケージ形の接着剤ユニットを使用し、これを接着剤収容域に収容しているが、所望により、接着剤容器内に収容可能且つ再利用可能な筒状の内装樹脂容器を予め用意し、接着剤をこの容器内に充填してこれを接着剤容器内に収納するように装置構成を設計変更し、或いは、接着剤収容域に直に接着剤を収容し得るように接着剤容器、フロントキャップ、ピストン等の構造を設計変更することも可能である。
【0069】
また、上記実施例では、接着剤押圧手段として、コーキングガンの手動操作式押圧機構の構造を応用したが、ピストンのストロークを設定可能な他の構造のシリンダ装置を接着剤押圧手段として使用しても良く、例えば、所望により、充電池作動式の駆動装置を押圧機構の駆動源として採用することも可能である。
【0070】
更には、液滴又は液溜の間隔を目視確認するためのゲージを接着剤吐出ノズルの位置決め指標として接着剤容器又は接着剤吐出装置等に配設し、直前に形成した接着面の液滴又は液溜と、次の形成すべき液滴又は液溜の中心の位置との間の距離をゲージによって目視確認するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、建築工事の建設現場において面材に接着剤を点状(スポット状)又は断続的線状に塗布するのに使用される建築工事用の接着剤ディスペンサ及び接着剤塗布方法に適用される。本発明に係る接着剤ディスペンサは、実質的に等量の接着剤を建築面材の接着面に間隔を隔てて均等に分布させるのに使用され、接着剤の塗布量、塗布位置、塗布状態等の現場管理を容易にするとともに、作業従事者等のユーザが片手で支持し又は携帯し得る程度の軽量性を有するコンパクトな構造に設計することができ、しかも、実質的に等量の接着剤を間欠的且つ規則的に吐出することができ、更には、接着剤の流路に可動弁体等の可動部を配設することなく接着剤の吐出量を制御することができ、加えて、このような本発明の接着剤ディスペンサを用いた作業は、作業効率上も極めて有利であり、その実用的効果又は実務的効果は、顕著である。
【符号の説明】
【0072】
1 接着剤ディスペンサ
2 接着剤容器
3 ラチェット機構
4 ハンドル
5 可動レバー(作動杆)
6 ピストン
7 ピストンロッド
8 ストローク規制装置
9 フロントキャップ
10 接着剤吐出装置
11 可撓管
12 接着剤送出管
13 六角ナット
14 ノズル嵌着具
15 係留具
16、17 支持板
20 挟圧ローラ装置
21 外装ローラ
22 内装ローラ
23 支軸
25 引張コイルスプリング
28、28’ フロントカバー
29 ノズル挿通孔
30 ラチェット機構のフレーム部分
81 可動管部分
82 螺子部
83 保持具
84 固定具又は係留具
85 六角ナット
100 装置カバー
101 サイドカバー
N ノズル
Na 吐出口
P 接着剤ユニット
W 面材
Wa 接着面
ε 接着剤収容域
δ ピストン・ストローク(一回の前進距離)
θ 枢動角度の角度範囲
【要約】
【課題】接着剤の流動路に可動弁体等の可動部を配設することなく接着剤の吐出量を制御し得る軽量且つコンパクトな接着剤ディスペンサを提供する。
【解決手段】接着剤ディスペンサ(1)は、接着剤を収容可能な接着剤容器(2)と、接着剤の吐出を制限し又は規制する接着剤吐出装置(10)と、容器内の接着剤を押圧する接着剤押圧手段(3-7)とを有する。接着剤吐出装置は、吐出口として先端部を開口した可撓管(11)と、可撓管を局所的に偏平化する可撓管挟圧装置(20)とを備える。可撓管挟圧装置の挟圧作用によって偏平化した可撓管の先端部は、接着剤吐出ノズル(N)を構成する。
【選択図】図1
図1
図2
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図8