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特許7623551アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤およびその製造方法
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  • 特許-アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-20
(45)【発行日】2025-01-28
(54)【発明の名称】アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20250121BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20250121BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 36/886 20060101ALI20250121BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20250121BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250121BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20250121BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/99
A61Q19/00
A61K36/886
A61K35/747
A61P17/00
A61P17/16
A61P17/00 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024549194
(86)(22)【出願日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 JP2024015847
【審査請求日】2024-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2023070742
(32)【優先日】2023-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023218768
(32)【優先日】2023-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE BP-03877
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208086
【氏名又は名称】大洋香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 宗隆
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 良知
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113398045(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113855603(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0079514(KR,A)
【文献】RO, Hyang Seon, et al.,Enhancement of the Anti-Skin Wrinkling Effects of Aloe arborescens Miller Extracts Associated with L,Evidence-based Complementary and Alternative Medicine,Vol. 2020,Article ID 2743594 (2020).
【文献】JIANG, Meixiu, et al.,Evaluation of the antioxidative, antibacterial, and anti-inflammatory effects of the Aloe fermentati,Mediators of Inflammation,Vol. 2016,2945650/1-2945650/8 (2016).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
A61K 35/00 - 35/768
A61K 36/00 - 36/9068
A61P 1/00 - 43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤であって、
前記乳酸菌が、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(受託番号:NITEP―03877)である、皮膚外用剤。
【請求項2】
ヒアルロン酸産生促進活性を有する、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
皮膚の乾燥を予防及び/または改善するための、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
皮膚常在菌叢のバランスを改善するための、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
アロエベラの葉の液汁から生産される乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤の製造方法で、
前記乳酸菌発酵物を生産する工程は、
前記液汁をラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(受託番号:NITEP―03877)により発酵させる発酵工程を含む、皮膚外用剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本出願は、日本国において、2023年4月24日に出願された特願2023-070742号および2023年12月26日に出願された特願2023-218768号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願に記載された内容はすべて参照によりそのまま本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤およびその製造方法、などに関する。
【背景技術】
【0003】
乳酸菌発酵物は、皮膚のしわ及び/又はたるみの改善効果を示すことから、化粧水や基礎化粧品等において一般的に配合されている。その中でも、植物のアロエを用いたものとして、種々の乳酸菌によるアロエ発酵生成物を用いた保湿剤(特許文献1)や、アロエ乳酸菌発酵物を含んだ洗浄用化粧料(特許文献2)が報告されている。しかし、これらは、乳酸菌ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)について、標準株等の既存株を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3795011号公報
【文献】特開2022-164406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)の新規菌株であるTY-610株を見出した。そこで、当該株を用いて、アロエベラの葉の液汁の乳酸菌発酵物を有効成分とする、新規の皮膚外用剤、およびその製造方法を提供すること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る皮膚外用剤は、
アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有し、
前記乳酸菌は、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(受託番号:NITEP―03877)である。
(2)別の実施形態に係る皮膚外用剤において、好ましくは、ヒアルロン酸産生促進活性を有する。
(3)別の実施形態に係る皮膚外用剤において、好ましくは、皮膚の乾燥を予防及び/または改善する。
(4)別の実施形態に係る皮膚外用剤において、好ましくは、皮膚常在菌叢のバランスを改善する。
(5)上記目的を達成するための一実施形態に係るアロエベラの葉の液汁から生産される乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤の製造方法は、
乳酸菌発酵物を生産する工程において、
前記液汁をラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(受託番号:NITEP―03877)により発酵させる発酵工程と、を含む。
当該乳酸菌発酵物を生産する工程は、好ましくは、
前記液汁からアロインを除去するアロイン除去工程と、
前記アロイン除去工程後の前記液汁をラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(受託番号:NITEP―03877)により発酵させる発酵工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)の新規菌株であるTY-610株を用いることで、アロエベラの葉の液汁の乳酸菌発酵物を有効成分とする、新規の皮膚外用剤、およびその製造方法を提供すること、などができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ヒトでの皮膚モニター試験(試験例8)の測定部位を示す。
図2図2は、ヒトでの皮膚モニター試験(試験例9、ヒトモニター試験による角層の重層剥離の評価)の結果、得られた標本の顕微鏡写真を示す。図中の線は、100.0μmを示す。剥離した角層が単層に近づくと染色色素が薄く見える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の各実施形態について、説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
(アロエベラの葉)
本発明に用いられるアロエベラ(Aloe vera)の葉は、厚いクチクラ層で構成される外皮と、外皮の内側に存在する葉肉から構成される。本発明において「アロエベラの葉」は、例えば生のまま又は乾燥物でもよく、粉砕して用いることもできる。本発明におけるアロエベラの葉の原料としての使用量は、特に限定されないが、発酵工程の際に用いられる原料の全重量のうち、0.01%以上が好ましく、0.1%以上がより好ましく、1%以上が特に好ましい。
【0011】
(TY-610株)
本発明において、アロエベラの葉の乳酸菌発酵には、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(以降、単にTY-610株と記載することもある。)を用いる。TY-610株は、キャベツの漬物から単離された、ラクチプランチバチルス・プランタラムの新規菌株である。TY-610株は、標準株と異なる性質として、曳糸性が見られることから、粘質多糖を生産し、菌体外に放出していると考えられる。TY-610株は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2023年4月5日付で受託番号NITE P―03877として寄託されている。その後、TY-610株は、国際寄託当局である、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に対して、国内寄託(原寄託日:2023年4月5日)から、2024年3月13日にブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管請求され、受託番号NITEP-03877を付与されている。
【0012】
(乳酸菌発酵物)
本発明において、「乳酸菌発酵物」とは、アロエベラの葉を上記TY-610株で発酵させたものをいう。乳酸菌発酵物の形態は、特に限定されず、液体でも、パウダー状などの固体でも良く、本発明の使用形態によって任意に選択される。また、本発明に係る乳酸菌発酵物は、防腐剤・抗菌剤・キレート剤などの添加物を含有していてもよい。防腐剤・抗菌剤・キレート剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のヒドロキシ安息香酸及びその塩若しくはそのエステル;サリチル酸;安息香酸ナトリウム;フェノキシエタノール;1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等の1,2-ジオール;メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン等のイソチアゾリンオン誘導体;イミダゾリニウムウレア;デヒドロ酢酸及びその塩;フェノール類;トリクロサン等のハロゲン化ビスフェノール類、酸アミド類、四級アンモニウム塩類;トリクロロカルバニド、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ハロカルバン、ヘキサクロロフェン、ヒノキチオール;フェノール、イソプロピルフェノール、クレゾール、チモール、パラクロロフェノール、フェニルフェノール、フェニルフェノールナトリウム等のその他フェノール類;フェニルエチルアルコール、感光素類、抗菌性ゼオライト、銀イオン;EDTA、EDTA2Na、EDTA3Na、EDTA4Na等のエデト酸塩(エチレンジアミン四酢酸塩);HEDTA3Na等のヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩;ペンテト酸塩(ジエチレントリアミン五酢酸塩);フィチン酸;エチドロン酸等のホスホン酸及びそのナトリウム塩等の塩類;シュウ酸ナトリウム;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸等のポリポリアミノ酸類;ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸;クエン酸ナトリウム、クエン酸、アラニン、ジヒドロキシエチルグリシン、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸等が挙げられる。乳酸菌発酵物における添加物の含有量は、特に限定されないが、当該乳酸菌発酵物の全重量に対して、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましく、0.1%以下が特に好ましい。
【0013】
(皮膚外用剤の形態)
本発明による皮膚外用剤は、アンプル、カプセル、粉末、顆粒、液体、ゲル、気泡、エマルジョン、シート、ミスト、スプレー剤等利用上の適当な形態の1)医薬品類、2)医薬部外品類、3)局所用又は全身用の皮膚外用剤類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料、固形石鹸、液体ソープ、ハンドウォッシュ等の洗顔料や皮膚洗浄料、マッサージ用剤、クレンジング用剤、除毛剤、脱毛剤、髭剃り処理料、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、シェービングクリーム、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメークアップ化粧料、香水類、美爪剤、美爪エナメル、美爪エナメル除去剤、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、貼付剤、エアゾール剤等)、4)頭皮・頭髪に適用する薬用又は/及び化粧用の製剤類(例えば、シャンプー剤、リンス剤、ヘアートリートメント剤、プレヘアートリートメント剤、パーマネント液、染毛料、整髪料、ヘアートニック剤、育毛・養毛料、パップ剤、プラスター剤、テープ剤、シート剤、エアゾール剤等)、5)浴湯に投じて使用する浴用剤、6)その他、腋臭防止剤や消臭剤、制汗剤、衛生用品、衛生綿類、ウエットティシュ等が挙げられる。
【0014】
(皮膚外用剤の構成成分)
また、このような剤の製造には、必要に応じて、本発明の効果を損ねない範囲で以下に例示する成分や添加剤を任意に選択・併用することができる。これらの処方系中への配合量は、特に規定するものではないが、通常、0.0001~50%程度が好ましいと考えられる。
【0015】
(1)各種油脂類
アボカド油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、牛脂脂肪酸、ククイナッツ油、サフラワー油、シア脂、液状シア脂、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、卵黄油、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、牛脂、豚脂、スクワレン、スクワラン、プリスタン又はこれら油脂類の水素添加物(硬化油等)等。
【0016】
(2)ロウ類
ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ、ライスワックス等。
【0017】
(3)鉱物油
流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、オゾケライド、セレシン、マイクロクリスタンワックス等。
【0018】
(4)脂肪酸類
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール油、ラノリン脂肪酸等の天然脂肪酸、イソノナン酸、カプロン酸、2-エチルブタン酸、イソペンタン酸、2-メチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソペンタン酸等の合成脂肪酸。
【0019】
(5)アルコール類
エタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、フェノキシエタノール等の天然アルコール、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール等の合成アルコール。
【0020】
(6)多価アルコール類
酸化エチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、酸化プロピレン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、マルチトール等。
【0021】
(7)エステル類
ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、酢酸ラノリン、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール等。
【0022】
(8)金属セッケン類
ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛等。
【0023】
(9)ガム質、糖類又は水溶性高分子化合物
アラビアゴム、ベンゾインゴム、ダンマルゴム、グアヤク脂、アイルランド苔、カラヤゴム、トラガントゴム、キャロブゴム、クインシード、寒天、カゼイン、乳糖、果糖、ショ糖又はそのエステル、トレハロース又はその誘導体、デキストリン、ゼラチン、ペクチン、デンプン、カラギーナン、カルボキシメチルキチン又はキトサン、エチレンオキサイド等のアルキレン(C2~C4)オキサイドが付加されたヒドロキシアルキル(C2~C4)キチン又はキトサン、低分子キチン又はキトサン、キトサン塩、硫酸化キチン又はキトサン、リン酸化キチン又はキトサン、アルギン酸又はその塩、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、ヘパリン、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド又はその架橋重合物、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン等。
【0024】
(10)界面活性剤
アニオン界面活性剤(アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩)、カチオン界面活性剤(アルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩)、両性界面活性剤:カルボン酸型両性界面活性剤(アミノ型、ベタイン型)、硫酸エステル型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(エーテル型非イオン界面活性剤、エーテルエステル型非イオン界面活性剤、エステル型非イオン界面活性剤、ブロックポリマー型非イオン界面活性剤、含窒素型非イオン界面活性剤)、その他の界面活性剤(天然界面活性剤、タンパク質加水分解物の誘導体、高分子界面活性剤、チタン・ケイ素を含む界面活性剤、フッ化炭素系界面活性剤)等。
【0025】
(11)各種ビタミン類
ビタミンA群:レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群:チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群:ビタミンC酸又はその誘導体、ビタミンD群:エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群:ビタミンE又はその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)、その他、必須脂肪酸(ビタミンF)、カルニチン、フェルラ酸、γ-オリザノール、オロット酸、ビタミンP類(ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン)、ビタミンU等。
【0026】
(12)各種アミノ酸類
バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等や、それらの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、或いはピロリドンカルボン酸のごときアミノ酸誘導体等。
【0027】
(13)植物又は動物系原料由来の種々の添加物
これらは、添加しようとする製品種別、形態に応じて常法的に行われる加工(例えば、粉砕、製粉、洗浄、加水分解、醗酵、精製、圧搾、抽出、分画、ろ過、乾燥、粉末化、造粒、溶解、滅菌、pH調整、脱臭、脱色等を任意に選択、組み合わせた処理)を行い、各種の素材から任意に選択して供すれば良い。
【0028】
当該皮膚外用剤における乳酸菌発酵物の含有量の上限は、特に限定されるものではなく、例えば、皮膚外用剤の全重量の50質量%であってもよく、10質量%であってもよく、5質量%であってもよく、1質量%であってもよい。また、当該皮膚外用剤における乳酸菌発酵物の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、皮膚外用剤の全重量の0.001質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましく、0.1質量%が特に好ましい。
【0029】
(ヒアルロン酸産生促進活性)
本発明において、「ヒアルロン酸産生促進」とは皮膚においてヒアルロン酸産生を促進させることをいい、「ヒアルロン酸産生促進活性」とは上記のヒアルロン酸産生促進を引き起こす活性をいう。
【0030】
(皮膚常在菌叢のバランス改善)
本発明において、「皮膚常在菌」とは、ヒトの表皮、頭皮、粘膜等に存在する微生物のうち、多くの人が保有するものをいう。ヒトの皮膚常在菌は、善玉菌と悪玉菌との二種類に大別される。善玉菌とは、皮膚に有用な働きをするものをいう。善玉菌としては、例えば、表皮ブドウ球菌が挙げられる。表皮ブドウ球菌は、皮脂を脂肪酸とグリセリンとに分解することで、皮膚を弱酸性に保っている。一方、悪玉菌とは、皮膚に有害な働きをするものをいう。悪玉菌としては、例えば、黄色ブドウ球菌が挙げられる。黄色ブドウ球菌は、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の原因となる。本発明において、「皮膚常在菌叢のバランス改善」は、上記の皮膚常在菌のうち、善玉菌の増殖を阻害せず、もしくは促進すること、及び/または悪玉菌の増殖を阻害することであるが、好ましくは、表皮ブドウ球菌の増殖を促進すること、及び/または黄色ブドウ球菌の増殖を抑制すること、である。
【0031】
(皮膚の乾燥)
本発明において、「皮膚の乾燥」は、皮膚の角層から水分が失われる状態である。角層から水分が失われると、皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激の侵入が容易となる。外部刺激の侵入に伴い、炎症性サイトカインが産生されると、炎症が誘発され、かゆみや赤みをもたらす。患部をかきむしる等すると湿疹ができ、皮膚のターンオーバーの期間が短くなる。それに伴い、保湿機能等が未熟な角層細胞が増加することで、さらに皮膚が乾燥しやすくなる。炎症性サイトカインとしては、例えば、表皮バリア機能の低下を伴い肌荒れの一因となるIL-1α、赤みを誘発するIL-6などが挙げられる。本発明において、「皮膚の乾燥を予防及び/または改善する」とは、上述した炎症性サイトカインの産生を抑制することをいう。産生を抑制する炎症性サイトカインの種類は特に限定されないが、好ましくは、IL-1α及び/またはIL-6である。
【0032】
本発明の他の側面では、皮膚外用剤の製造方法を提供する。
【0033】
(アロイン除去工程)
アロインは、アロエベラ葉の外皮層に含まれ、苦みおよび瀉下活性を有する薬効成分である。アロインは、通常、化粧品の製造工程においては除去される。本発明において、皮膚外用剤の製造方法は、好ましくはアロイン除去工程を含む。当該アロイン除去工程は、アロインを除去可能であれば限定されず、活性炭への吸着などの公知の方法を任意に用いることができる。
【0034】
(発酵工程)
以下、本発明における発酵工程について、詳細に説明する。
【0035】
本発明において、発酵工程は、アロイン除去工程後のアロエベラの葉の液汁成分と、TY-610株とを混合して行われる。アロイン除去工程後のアロエベラの葉の液汁成分は、後述の実施例においてはパウダー状だが、これに限定されず、例えば液体でもよい。当該液汁成分は、発酵媒体に懸濁または添加されたのちに発酵工程に供される。発酵媒体は、当該液汁成分に対して適当な量となるよう、水または水と低級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノールなど)もしくはグリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリンなど)との混液等が用いられる。発酵媒体中にはグルコース、フルクトース、スクロース、砂糖、グラニュ糖、上白糖などの糖類を添加してもよい。また、発酵媒体中には酵母エキスを添加してもよい。
【0036】
当該液汁成分の懸濁液は、発酵工程に供する前に、殺菌を行って発酵の障害となる雑菌を除去される。この場合、殺菌除去方法としては、発酵素材を予め殺菌用エタノール等で洗浄殺菌した上無菌水等の無菌媒体に懸濁する方法を用いてもよく、又発酵素材を媒体に懸濁した後、懸濁液を加熱殺菌する方法を用いてもよい。加熱殺菌法としては、懸濁液を120~130℃で10~20分間加熱するオートクレーブ殺菌法や、懸濁液を80~90℃に60~120分間保持することを1日1回2~3日間繰り返す間断殺菌法が、一般に用いられる。
【0037】
発酵は、加熱殺菌後の発酵媒体に、TY-610株を含む培地を添加して行う。発酵に要する時間は、特に限定されないが、12~36時間が好ましく、15~30時間がより好ましく、18~24時間が特に好ましい。また、発酵時の温度条件は、15~37℃が好ましく、20~35℃がより好ましく、25~32℃が特に好ましい。発酵終了後、TY-610株の菌体を除去するが、菌体の除去方法は、特に限定されず、公知の方法、例えば遠心分離、濾過などを用いることができる。乳酸菌発酵物の糖度(Brix)は、特に限定されないが、0.1~20°が好ましく、0.5~15°がより好ましく、1~10°が特に好ましい。
【0038】
菌体除去後の乳酸菌発酵物には、防腐剤を加えてもよい。ここで、防腐剤は、上述した皮膚外用剤に添加される防腐剤であれば特に限定されない。しかし、このような防腐剤は、例えば皮膚外用剤に添加したときに皮膚刺激やべたつきを生じさせる可能性があるため、できるだけ使用量の低減が望まれている。したがって、防腐剤を添加する場合の下限濃度には制限がなく、0質量%を超えればよい。上限濃度は1質量%であり、0.5質量%が好ましく、0.1質量%がさらに好ましい。これらの低濃度で防腐作用を有する防腐剤としては、例えば、パラベン類や安息香酸及びその塩などが好ましく、さらに好ましくは安息香酸ナトリウム、である。
【0039】
懸濁液とTY-610株を含む培地とを含む混合液(以下、単に混合液と記載。)の発酵前のpHは、約4~5が好ましく、約4.5~5がより好ましく、約4.7が特に好ましい。発酵後のpHは、約3~4が好ましく、約3.5~4がより好ましく、約3.7が特に好ましい。また、混合液の発酵前の酸度は、乳酸換算%で約0.2~0.3が好ましく、約0.21がより好ましい。混合液の発酵後の酸度は、乳酸換算%で約0.7~0.8が好ましく、約0.76がより好ましい。
【0040】
上記の発酵工程で生産された乳酸菌発酵物を、皮膚外用剤の形態で提供する場合は、例えば、当該乳酸菌発酵物に加えて、薬学的又は化粧品学的に許容される担体(水、油性成分等)と共に提供することができる。さらに、必要に応じて、例えば、上述した通常使用しうる成分や添加物を加え、常法により所望の形態に調製すればよい。
【0041】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例
【0042】
以下、試験例で挙げる実験で用いた実験材料は次の通りである。
・ヒト表皮角化細胞:正常ヒト表皮角化細胞、クラボウ、KK-4009、凍結NHEK(NB)新生児由来、KURABO
・角化細胞培養用培地(1):HuMedia-KG2特注GC別添培地、クラボウ、KK-2170S。当該特注GC別添培地に、カルシウム(最終濃度0.06mM)添加した培地。
・角化細胞培養用培地(2):当該培地(1)からBPE(Bovine Pituitary Extract、ウシ脳下垂体抽出物)及びEGF(上皮成長因子)を除いた培地
・表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の標準菌(ATCC12228)
・NB培地:Nutrient Broth No.2液体培地(Oxoid Limited、CM0067B)
【0043】
(乳酸菌発酵物の作製)
以下工程により、以下試験例で用いた乳酸菌発酵物(発酵過程を経たアロエベラの液汁成分(アロエパウダー))を作製した。
【0044】
なお、以下試験例で用いた未発酵物は、アロエパウダー(アロイン除去工程を経たアロエベラの葉の液汁成分、Organic SQ Freeze Dried Aloe Vera Leaf Powder 100X(Aroe Laboratories,Inc.製)である。
【0045】
1.TY-610株の前培養
TY-610株を以下表1記載の組成の培地に1×10cfu/mLとなるように接種し、30℃で18時間培養した。
【0046】
【表1】
【0047】
2.アロイン除去工程を経たアロエベラの葉の液汁成分(アロエパウダー)の準備
アロイン除去工程を経たアロエベラの葉の液汁成分として、アロエパウダーであるOrganic SQ Freeze Dried Aloe Vera Leaf Powder 100X(Aroe Laboratories,Inc.製)を用いた。なお、以下試験例で示す未発酵物は、このアロエパウダーである。
【0048】
3.アロエパウダーの発酵工程
上記のアロエパウダー6.0kg(混合液全重量の約1%)を、以下表2記載の組成の発酵媒体に懸濁し、計594.0kgの懸濁液を得た。
【0049】
【表2】
【0050】
当該懸濁液の糖度(Brix)は、2.0°であった。
【0051】
当該懸濁液を90℃で1分間、加熱殺菌を行った。当該加熱殺菌後の懸濁液を約30℃まで冷却した。当該冷却後の懸濁液へ、TY-610株を含む前培養培地を、6.0kg添加した。
【0052】
当該添加後の懸濁液に対して、30℃の条件下で、18時間、発酵工程を行った。なお、当該発酵工程後の懸濁液の糖度(Brix)は、1.9°であった。
【0053】
4.TY-610株の除去
以下記載のように、当該発酵工程を経た懸濁液から、TY-610株を除去した。発酵工程後の乳酸菌発酵物を連続式遠心分離機にて遠心分離(8,200×g)を行い、上清を回収した。当該上清をプリコート法(precoating)により濾過し、濾液を得た。
【0054】
(試験例1)ヒアルロン酸産生促進活性評価
本試験例では、ヒト表皮角化細胞に対し、未発酵物または乳酸菌発酵物を添加し、ヒアルロン酸産生量の変化を評価(定量)した。
【0055】
(ヒト表皮角化細胞の準備)
ヒト表皮角化細胞を、5×10cells/mLで24well培養プレートに播種した。当該播種した細胞を、角化細胞培養用培地(1)中で、5%CO、37℃の条件で24時間、75%コンフルエント状態になるまで培養した。当該培養により、本試験例1で用いる細胞を準備した。
【0056】
(表皮角化細胞への試料の添加)
当該準備した細胞を、以下表3に記載の条件にて、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。当該培養後、上清を回収した。当該回収した上清の中のヒアルロン酸を、QnE Hyaluronic Acid (HA) ELISA Assay Kit(BTP社製、BTP-96200)によって測定した。当該測定した結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表3に示す測定した結果は、各群(n=3)の測定した平均値からコントロール群を100として示した値(相対値)である。表3で記載の*はn=3のDunnett検定で、コントロール群と比較してp<0.05の有意差を示す。表3で記載の†はn=3のDunnett検定で、終濃度0.1%の未発酵物添加群と比較してp<0.05の有意差を示す。表3等で示すように、所定量の乳酸菌発酵物の添加により、Control群などと比べ、ヒアルロン酸産生量の増加が見られた。
【0059】
(試験例2)乾燥刺激評価試験
本試験例では、ヒト表皮角化細胞に対し、乳酸菌発酵物を添加し、乾燥刺激によるIL-1α産生量およびIL-6産生量の変化を評価した。
【0060】
(ヒト表皮角化細胞の準備)
ヒト表皮角化細胞を、5×10cells/mLで24well培養プレートに播種した。当該播種した細胞を、角化細胞培養用培地(1)中で、5%CO、37℃の条件で24時間、75%コンフルエント状態になるまで培養した。当該培養により、本試験例2で用いる細胞を準備した。
【0061】
(表皮角化細胞への試料の添加)
当該準備した細胞を、以下表4に記載の条件にて、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、上清を除去した。この除去後、次の行為を行った。
・表4記載のControl群以外の群に対して、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。
・表4記載のControl群に対して、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加後、24well培養プレートの上蓋を開けない状態で、5分間、25℃での静置を行った。このControl群に対して、当該静置後、そのまま以下5%CO、37℃の条件で24時間培養した。
【0062】
当該乾燥刺激を行った群は、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該乾燥刺激を行った群及びControl群について、この培養後、当該回収した上清の中のIL-1α産生量及びIL-6産生量を測定した。ヒトIL1-alpha ELISA Kit(PGI製、KE00123)を用いてIL-1α産生量を測定した。ヒトIL-6 Quantikine ELISA Kit(R&D製、D6050)を用いてIL-6産生量を測定した。当該測定した結果を、表4に示す。表4に示す測定した結果は、各群(n=3)の測定した平均値からコントロール群を100とした場合で示した値(の相対値)を示す。表4で示す*は、n=3のDunnett検定で、未添加群と比較してp<0.05の有意差を示す。表4等で示すように、乳酸菌発酵物の添加により、未添加群に比べ、IL-1α産生量の低下及びIL-6産生量の低下が確認された。
【0063】
【表4】
【0064】
(試験例3)炎症状態の細胞に対する乾燥刺激評価試験
本試験例では、炎症状態の細胞に対し、乳酸菌発酵物を添加し、乾燥刺激によるIL-1α産生量の変化を評価した。
【0065】
(表皮角化細胞の準備)
ヒト表皮角化細胞を、5×10cells/mLで24well培養プレートに播種した。当該播種した細胞を、角化細胞培養用培地(1)中で、5%CO、37℃の条件で24時間、75%コンフルエント状態になるまで培養した。当該培養により、本試験例3で用いる細胞を準備した。
【0066】
(炎症状態の細胞及び炎症状態でない細胞の準備)
当該準備した細胞を用いて、以下のように、炎症状態の細胞及び炎症状態でない細胞を準備した。
【0067】
炎症状態の細胞については、次の2種類を準備した。以下表5で示す群1及び群5で、炎症状態の細胞その1を用いた。以下表5で示す群2及び群6で、炎症状態の細胞その2を用いた。
・炎症状態の細胞その1:
TNF-α(最終濃度20ng/mL)及びINF-γ(最終濃度20ng/mL)を含有した角化細胞培養用培地(2)へ、播種した。当該播種した細胞を5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、細胞を回収した。当該回収した細胞を炎症状態の細胞その1とした。
・炎症状態の細胞その2:
TNF-α(最終濃度20ng/mL)を含有した角化細胞培養用培地(2)へ、播種した。当該播種した細胞を5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、細胞を回収した。当該回収した細胞を炎症状態の細胞その2とした。
【0068】
炎症状態でない細胞を次のように準備した。精製水(30μL)を含有した角化細胞培養用培地(2)へ、播種した。当該播種した細胞を5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、細胞を回収した。当該回収した細胞を炎症状態でない細胞とした。以下表5で示す群3、群4、群7及び群8で、炎症状態でない細胞を用いた。
【0069】
(炎症状態の細胞又は炎症状態でない細胞への試料の添加)
以下表5に記載の条件(細胞への試料の添加)にて、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、上清を除去した。この除去後、次の行為を行った。
・表5記載の群1、群2、群3、群5、群6及び群7に対して、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。
・表5記載の群4及び群8に対して、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加後、24well培養プレートの上蓋を開けない状態で、5分間、25℃での静置を行った。この群4及び群8に対して、当該静置後、そのまま以下5%CO、37℃の条件で24時間培養した。
【0070】
当該乾燥刺激を行った後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加後、5%CO、37℃の条件24時間培養した。当該乾燥刺激を行った群、群4及び群8について、この培養後、当該回収した上清の中のIL-1α産生量を測定した。ヒトAuthentiKineTM IL-1 alpha ELISA Kit (PGI製、KE00268)を用いてIL-1α産生量を測定した。当該測定した結果を、表5に示す。表5に示す測定した結果は、各群(n=3)の測定した平均値から群8(Control群)を100とした場合で示した値(相対値)を示す。表5で示す*などは、n=3のStudentのt検定で、以下を示す。表5などに示すように、乳酸菌発酵物の添加により、IL-1α産生量の低下が確認できた。
・*:群1と群5との比較で、群5と比較してp<0.05の有意差を示す。
・**:群2と群6との比較で、群6と比較してp<0.05の有意差を示す。
・***:群3と群7との比較で、群7と比較してp<0.05の有意差を示す。
・****:群4と群8との比較で、群8と比較してp<0.05の有意差を示す。
【0071】
【表5】
【0072】
(試験例4)表皮ブドウ球菌の増殖試験
本試験例では、培養した表皮ブドウ球菌に、乳酸菌発酵物を添加し、表皮ブドウ球菌の増殖に対する影響を評価した。
【0073】
(表皮ブドウ球菌の培養)
表6に記載の条件で、表皮ブドウ球菌の培養(37℃で20時間の培養)を行った。当該培養後の表皮ブドウ球菌数(培地中に含まれる表皮ブドウ球菌の濃度、CFU/mL)を次の式1に記載のように算出した。
【0074】
X=(C/S)×10×N・・・・・(式1)
20時間培養した培養液中に含まれている表皮ブドウ球菌の濃度をX(CFU/mL)とする。培養液を1/Cに希釈したため、希釈後の培養液中での表皮ブドウ球菌の濃度は、X/C(CFU/mL)と表される。当該希釈後の表皮ブドウ球菌培養液をS(μL)、すなわちS×10-3mLプレートに播種したため、当該播種した培養液中の表皮ブドウ球菌の数は、(X/C)×S×10-3(CFU)と表される。播種後のプレート上にN個のコロニーが得られたとすると、(X/C)×S×10-3=Nとなる。
【0075】
当該算出した結果を表6に示す。表6中の*はn=3のStudentのt検定で、0.10%の未発酵物添加群(群2)の当該球菌数と、0.10%の乳酸菌発酵物添加群(群1)の当該球菌数と比較して、p<0.05の有意差を示した。表6に示すように未発酵物の添加(群2)と比べ、乳酸菌発酵物の添加(群1)により、当該表皮ブドウ球菌数が多いことが確認された。
【0076】
【表6】
【0077】
(試験例5)黄色ブドウ球菌の増殖試験
表7に記載の条件で、黄色ブドウ球菌の培養(37℃で20時間の培養)を行った。当該培養後の黄色ブドウ球菌数(培地中に含まれる黄色ブドウ球菌の濃度、CFU/mL)を次の式2に記載のように算出した。
【0078】
X=(C/S)×10×N・・・・・(式2)
20時間培養した培養液中に含まれている黄色ブドウ球菌の濃度をX(CFU/mL)とする。培養液を1/Cに希釈したため、希釈後の培養液中での黄色ブドウ球菌の濃度は、X/C(CFU/mL)と表される。当該希釈後の黄色ブドウ球菌培養液をS(μL)、すなわちS×10-3mLプレートに播種したため、当該播種した培養液中の黄色ブドウ球菌の数は、(X/C)×S×10-3(CFU)と表される。播種後のプレート上にN個のコロニーが得られたとすると、(X/C)×S×10-3=Nとなる。
【0079】
当該算出した結果を表7に示す。表7中の*はn=3のStudentのt検定で、乳酸菌発酵物の未添加群(群2)の当該球菌数と、0.10%の乳酸菌発酵物添加群(群1)の当該球菌数と比較して、p<0.05の有意差を示した。表7に示すように当該未添加群(群2)と比べ、乳酸菌発酵物の添加(群1)により、当該黄色ブドウ球菌数が少ないことが確認された。表6で示す結果(乳酸菌発酵物の添加による表皮ブドウ球菌数が増加したことを示す結果)及びこの表7で示す結果(乳酸菌発酵物の添加による黄色ブドウ球菌数が減少したことを示す結果)から、所定の乳酸菌発酵物の添加により、皮膚常在菌叢のバランスを改善することが可能と考えられる。
【0080】
【表7】
【0081】
(試験例6)乾燥刺激評価試験
本試験例では、ヒト表皮角化細胞に対し、乳酸菌発酵物を添加し、乾燥刺激によるIL-1αレセプターアンタゴニスト(IL-1RA)産生量を評価した。
【0082】
(ヒト表皮角化細胞の準備)
ヒト表皮角化細胞を、5×10cells/mLで24well培養プレートに播種した。当該播種した細胞を、角化細胞培養用培地(1)中で、5%CO、37℃の条件で24時間、75%コンフルエント状態になるまで培養した。当該培養により、本試験例6で用いる細胞を準備した。
【0083】
(表皮角化細胞への試料の添加)
当該準備した細胞を、以下表8に記載の条件にて、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。当該培養後、上清を除去した。この除去後、次の行為を行った。
【0084】
・7回の乾燥刺激:群1及び群5において、以下の行為を行った。
24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
【0085】
・5回の乾燥刺激:群2及び群6において、以下の行為を行った。
24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
【0086】
・3回の乾燥刺激:群3及び群7において、以下の行為を行った。
24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
この除去後、24well培養プレートの上蓋を開けた状態で、5分間乾燥刺激(25℃での静置)を行った。当該刺激後、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加した後、5%CO、37℃の条件で24時間培養した。この培養後、上清を除去した。
【0087】
・乾燥刺激なし:群4及び群8において、以下の行為を行った。
角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加後、24well培養プレートの上蓋を開けない状態で、5分間、25℃での静置を行った。このControl群に対して、当該静置後、そのまま以下5%CO、37℃の条件24時間培養した。
【0088】
当該乾燥刺激を行った群は、角化細胞培養用培地(2)を各ウェルへ各1mL添加した。当該添加後、5%CO、37℃の条件24時間培養した。当該乾燥刺激を行った群及び当該乾燥刺激なしについて、この24時間培養後、当該回収した上清の中のIL-1RA産生量を測定した。IL-1ra/IL-1F3, Human, ELISA Kit(R&Dシステムズ、DRA00B)を用いてIL-1RA産生量を測定した。当該測定した結果を表8に示す。表8に示す測定した結果は、各群(n=3)の測定した平均値から群8(コントロール群)を100とした場合として示した値(相対値)を示す。表8で示す*は、n=3のStudentのt検定で、群5と比較してp<0.05の有意差を示す。表8で示す**は、n=3のStudentのt検定で、群6と比較してp<0.05の有意差を示す。表8で示す***は、n=3のStudentのt検定で、群7と比較してp<0.05の有意差を示す。表8に示すように、乳酸菌発酵物の添加により、IL-1RA産生量の低下が確認できた。
【0089】
【表8】
【0090】
(試験例7)ヒトモニター試験による肌状態改善作用の評価
2023年1月から2023年3月の期間で、20歳から69歳の健康な男女12名(平均年齢44.6歳(男性の平均年齢:42.2歳、女性の平均年齢:45.4歳))を被験者として、このモニター試験を行った。
【0091】
(試験方法)
表9で示す組成のローション(表9ローション)を被験者の顔の左半分に所定期間にて塗布し、表10に示すローション(表10ローション)を被験者の顔の右半分に所定期間にて塗布した。この所定期間は、1日2回ずつ(朝晩)4週間である。4週間後には、被験者1人あたり、表9ローションが42mg及び表10ローションが42mgの量が塗布された。そして、これらのローションの塗布前の0日と、ローションを塗布してから4週間目に、測定(皮膚の水分量測定及び皮膚の水分蒸散量の測定)を行った。Corneometer(CM825、Courage+Khazaka社製)を用いて、当該皮膚の水分量測定及び当該皮膚の水分蒸散量(TEWL)を測定した。皮膚水分分布・形態測定装置「MoistureMapMM100(Courage+Khazaka社製)」を用いて、当該皮膚のキメ密度を測定した。
【0092】
【表9】
【0093】
【表10】
【0094】
(測定結果)
以下示す結果は、当該12名の平均値(当該測定の平均値)を算出し、当該算出後0日(当該塗布前)の値を100とした場合の値(相対値)を示す。
当該皮膚の水分量測定は、当該4週間後において、表10ローション塗布群は103.36であったが、表9ローション塗布群は110.62(0日の表9ローション塗布群の値と比べp<0.01(Wilcoxon検定))であった。
当該皮膚の水分蒸散量(TEWL)の測定を行った。当該4週間後において、表10ローション塗布群は102.35であったが、表9ローション塗布群は109.80(0日の表9ローション塗布群の値と比べp<0.05(Wilcoxon検定))であった。
当該皮膚のキメ密度を測定した。当該4週間後において、表10ローション塗布群は92.47であったが、表9ローション塗布群は106.47(4週間後の表10ローション塗布群の値と比べp<0.05(Wilcoxon検定))であった。
これらの測定結果から、乳酸菌発酵物を含有しないローション(表10記載のローション)を皮膚へ塗布することに比べ、乳酸菌発酵物を含有するローション(表9記載のローション)を皮膚へ塗布することにより、皮膚の水分量の維持等が確認された。
【0095】
(試験例8)ヒトモニター試験によるほうれい線の長さの評価
2023年1月下旬から2023年3月上旬の期間で、20歳から69歳の健康な男女12名(試験前のアンケートで「季節により肌の調子が変化しやすい及び/又は肌荒れや乾燥が気になる」と答えた方、平均年齢44.6歳(男性の平均年齢:42.2歳、女性の平均年齢:45.4歳))を被験者として、このモニター試験を行った。
【0096】
表9で示す組成のローション(表9ローション)を被験者の顔の左半分に所定期間にて塗布し、表10に示すローション(表10ローション)を被験者の顔の右半分に所定期間にて塗布した。この所定期間は、1日2回ずつ(朝晩)4週間である。4週間後には、被験者1人あたり、表9ローションが14g及び表10ローションが14gの量を塗布された。そして、これらのローションの塗布前の0日と、ローションを塗布してから4週間目に、測定(ほうれい線の測定)を行った。Antera3DTM (Miravex、Dublin、Ireland)を用いて当該測定(ほうれい線の測定)を行った。なお、図1に、測定部位(ほうれい線)を示す。
【0097】
(測定結果)
以下示す結果は、当該12名の平均値(当該測定の平均値)を算出し、当該算出後0日(当該塗布前)の値を100とした場合の値(相対値)を示す。当該値は、当該4週間後において、表10ローション塗布群は101.8であったが、表9ローション塗布群は100.2であった。
【0098】
なお、当該12名のうち、医師の診察で花粉症の診断を受けた6名(この6名は、花粉症予防又は/治療用の薬を投与しなかった)を選択した結果も次に記載する。以下示す結果は、当該6名の平均値(当該測定の平均値)を算出し、当該算出後0日(当該塗布前)の値を100とした場合の値(相対値)を示す。当該値は、当該4週間後において、表10ローション塗布群は103.5であったが、表9ローション塗布群は100.0(当該4週間後の表10ローション塗布群の値と比較してのPaired t-testで、p<0.05)であった。
【0099】
(試験例9)ヒトモニター試験による角層の重層剥離の評価
文献(日本香粧品学会誌、Vol.38、No.2、p87-91、2014、画像解析を用いた重層剥離の評価検討)に記載の方法を参考にして、当該評価を行った。2023年1月下旬から2023年3月上旬の期間で、20歳から69歳の健康な男女12名(試験前のアンケートで「季節により肌の調子が変化しやすい」と答えた方、平均年齢44.6歳(男性の平均年齢:42.2歳、女性の平均年齢:45.4歳))を被験者として、このモニター試験を行った。
【0100】
表9で示す組成のローション(表9ローション)を被験者の顔の左半分に所定期間にて塗布し、表10に示すローション(表10ローション)を被験者の顔の右半分に所定期間にて塗布した。この所定期間は、1日2回ずつ(朝晩)4週間である。4週間後には、被験者1人あたり、表9ローションが14g及び表10ローションが14gの量を塗布された。
【0101】
(テープストリッピング法による解析)
頬部の角層を次のように採取した。角質チェッカーAST-01(日本アッシュ株式会社)を使用し、塗布前(0日)、塗布後4週間に左右1枚ずつ2回採取し、被験者一人につき、合計4枚採取した。
【0102】
角層の染色を次のように行った。先ず、角層が転写された角質チェッカーを、水浴で軽く洗浄した。当該洗浄後、当該チェッカーを、ゲンチアナバイオレット(関東化学)1%とブリリアントグリーン(Merck)0.5%を溶解させた染色液の中に10分浸した。当該浸した後、チェッカーを、水浴ですすいでから、風乾させた。
【0103】
当該風乾後(角層が乾いた後)、角層を角質チェッカー用の台紙に張り付けた。デジタルマイクロスコープ VHX-5000 (Keyence)を用いて、台紙に張り付けられた角層(角層細胞)を撮影した。撮影の色調整をR583、G265、B452に、サイズを標準の「1600×1200」に、それぞれ設定し、角層画像を撮影した。角層のサイズおよび重層剥離の度合いを評価するため、それぞれの基準となるスケールを用意し、目視にて、当該角層画像を評価した。図2は、12名のうち、ランダムに選択した1名(50代男性)の標本の顕微鏡写真である。
【0104】
(測定結果)
図2の顕微鏡写真に示すように、4週間後の写真において、表10ローション塗布群に比べ、表9ローション塗布群の方が、重層の剥離がされない傾向であったことを確認した。
【0105】
角質細胞の剥離は、表皮の角質細胞間の接着機構が弱まって、古い角質細胞が皮膚表面からはがれ落ちることを意味し、角質細胞同士を接着しているデスモソームというタンパク質を分解することにより、剥離が促進される(J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.、角層の接着剥離の機構とスキンケアに対する役割、p16-p26)。しかし、このタンパク質分解酵素の活性が低下すると、デスモソームの分解が阻害され、角質がスムーズに剥離できなくなり、重層化が起こる。これによって、肌のくすみや肌あれ、キメの乱れなどの肌トラブルを引き起こすと考えられている。したがって、皮膚の角質細胞の剥離が促進され、重層化が抑制されることにより、肌のくすみが改善してなめらかになると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、皮膚外用剤およびその製造方法などに利用可能である。

【要約】
【課題】
ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)の新規菌株であるTY-610株を用いることで、アロエベラの葉の液汁の乳酸菌発酵物を有効成分とする、新規の皮膚外用剤、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、アロエベラの葉の乳酸菌発酵物を含有する皮膚外用剤であって、
前記乳酸菌が、ラクチプランチバチルス・プランタラム(Lactiplantibacillus plantarum)TY-610株(受託番号:NITEP―03877)である、皮膚外用剤およびその製造方法に関する。
【選択図】なし
図1
図2