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特許7624136結晶、結晶性酸化物半導体、結晶性酸化物半導体を含む半導体膜、結晶および/または半導体膜を含む半導体装置および半導体装置を含むシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】結晶、結晶性酸化物半導体、結晶性酸化物半導体を含む半導体膜、結晶および/または半導体膜を含む半導体装置および半導体装置を含むシステム
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20250101AFI20250123BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20250123BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C01G45/00
C23C16/40
H01C7/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021512139
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014693
(87)【国際公開番号】W WO2020204006
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019068480
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(72)【発明者】
【氏名】松田 時宜
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勲
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/013136(WO,A1)
【文献】特開2018-129500(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107652973(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105670622(CN,A)
【文献】特開2019-041106(JP,A)
【文献】特開2019-041107(JP,A)
【文献】国際公開第2018/052097(WO,A1)
【文献】特開2003-183075(JP,A)
【文献】HUANG, Rong et al.,Journal of Applied Physics,2007年,101,063526,DOI: 10.1063/1.2713349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 45/00
C23C 16/40
H01C 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaとMnとを含み、コランダム構造を有する金属酸化物を主成分としてみ、Ga:Mnが原子比で100:0.5~100:10である結晶。
【請求項2】
コランダム構造の金属酸化物の金属成分中におけるGaの含有量が30原子%以上である、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
結晶がドーパントを含む、請求項1または2に記載の結晶。
【請求項4】
GaとMnとを含み、コランダム構造を有し、Ga:Mnが原子比で100:0.5~100:10である結晶性酸化物半導体。
【請求項5】
コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体の金属成分中におけるGaの含有量が、30原子%以上である、請求項4記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項6】
前記結晶性酸化物半導体がドーパントを含んでいる、請求項4または5に記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項7】
前記結晶性酸化物半導体中におけるMnの含有量が、前記ドーパントの含有量よりも少ない、請求項6記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項8】
キャリア密度が、1×1015/cm~1×1022/cmの範囲内にある、請求項6または7に記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項9】
キャリア密度が、1×1018/cm~1×1022/cmの範囲内にある、請求項6または7に記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項10】
膜形状を有する請求項4~9のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項11】
前記結晶性酸化物半導体が、m面を主面として有する、請求項10記載の結晶性酸化物半導体。
【請求項12】
結晶性酸化物半導体膜を少なくとも備える半導体装置であって、前記結晶性酸化物半導体膜が、請求項1~3のいずれかに記載の結晶および/または請求項4~11のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体を含む半導体装置。
【請求項13】
前記結晶性酸化物半導体膜の第1面側に配置された第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極は前記第2の電極から離間して配置されている、請求項12記載の半導体装置。
【請求項14】
前記結晶性酸化物半導体膜の1面側に配置された第1の電極と、前記結晶性酸化物半導体膜の第2面側に配置された第2の電極とを有し、前記第2面は前記第1面と反対側に位置する請求項12記載の半導体装置。
【請求項15】
ダイオードまたはトランジスタである請求項12~14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
MOSFETである請求項12~15のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項17】
パワーデバイスである、請求項12~16のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項18】
サーミスタである請求項12~14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項19】
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、請求項12~18のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーミスタやパワーデバイス等の半導体装置に有用な結晶、パワーデバイス等の半導体装置に有用な結晶性酸化物半導体に関する。また、本発明は結晶および/または結晶性酸化物半導体を有する半導体装置に関する。さらに、本発明は半導体装置を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧、低損失および高耐熱を実現できる次世代のスイッチング素子として、バンドギャップの大きな酸化ガリウム(Ga)を用いた半導体装置が注目されており、インバータなどの電力用半導体装置への適用が期待されている。しかも、広いバンドギャップからLEDやセンサー等の受発光装置としての応用も期待されている。当該酸化ガリウムは、インジウムやアルミニウムをそれぞれ、あるいは組み合わせて混晶とすることによりバンドギャップ制御することが可能であり、InAlGaO系半導体として極めて魅力的な材料系統を構成している。ここでInAlGaO系半導体とはInAlGa(0≦X≦2、0≦Y≦2、0≦Z≦2、X+Y+Z=1.5~2.5)を示し、酸化ガリウムを内包する同一材料系統として俯瞰することができる。
【0003】
バンドギャップの大きな半導体材料を用いた半導体装置において、半導体特性を含む電気特性を高めるため、様々な試みがなされている。特許文4では、MBE法を用いたβ―Ga系半導体素子の製造において、イオン注入することによって、ドーピングを行っており、n型ドーパントの例として、ケイ素が記載されている。しかしながら、イオン注入によってドーピングを行った場合には、イオン注入後、高温(例えば、1000℃)でアニール処理を行わないとドナーとして使えないという問題があった。また、特許文献に記載の方法では、活性化アニール処理を行ったとしても、例えば、ケイ素をドーパントとして用いた場合には、結晶欠陥が多く、電気特性も悪く、例えば、移動度1cm/Vs以上得るのは困難であった。
【0004】
た、本出願人による特許文献5では、コランダム構造を有する酸化物半導体を主成分として含む結晶性酸化物半導体膜が、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム、またはニオブを含んでおり、スズをドーパントとして用いたものに比較して、電気特性に優れていたことが記載されている。さらに結晶や結晶性酸化物半導体膜の電気特性を高めるため、様々な研究が進められている(例えば、特許文献6)。
【0005】
また、従来、電子機器などの製品または電子機器を具備するシステムにおいて、電子機器の温度補償に温度センサーやガスセンサーが用いられており、温度センサーやガスセンサーには、半導体装置の一つとして、サーミスタが用いられている。前記サーミスタの種類には、負温度係数(Negative Temperature Coefficient;NTC)サーミスタと正温度係数(Positive Temperature Coefficient;PTC)サーミスタとがある。
【0006】
負温度係数(NTC)サーミスタは、温度が上がると抵抗が減少する現象を利用したサーミスタで、広範囲な温度で抵抗が指数関数的に減少するn型半導体の性質が強く、大部分のサーミスタがこれに該当する。正温度係数(PTC)サーミスタは、温度が上がり一定温度を越えると急激に抵抗が増加する現象を利用した特殊なサーミスタである。
【0007】
近年においては、電子機器の小型化や薄型化が進んでおり、電子機器に用いられている温度センサーやガスセンサー、さらにはこれらのセンサーに用いられるサーミスタ素子にも小型化や薄型化が要求されている。このような要求に対し、サーミスタ膜を用いたサーミスタ素子が検討されているが、機械的な強度が弱かったり、サーミスタ特性が十分でなかったりして満足のいくものではなかった。
【0008】
特許文献1には、常温真空粉末噴射法により形成されたNTCサーミスタ膜が記載されている。しかしながら、特許文献1記載のNTCサーミスタ膜は、機械的強度が弱く、薄膜化も困難であり、また、真空装置を用いて、複雑な工程を必要とするなどの問題があった。
【0009】
また、特許文献2には、エアロゾルデポジション法にて成膜されたサーミスタ膜が記載されている。しかしながら、サーミスタ膜をエアロゾルデポジション法で得ようとすると、小口径のノズルで勢いよくエアロゾルを基板に噴射して、サーミスタ原料粒子を衝突させなければサーミスタ特性の良い粒状が緻密な膜を得ることはできず、また、このような膜を得るにしても、膜の面積を広げることが困難であり、長時間かけて膜状にしても、密着性や表面平坦性も悪く、特許文献2に記載の方法により成膜されたサーミスタ膜は、数ミクロン以上の厚膜でなければサーミスタ特性が十分でないか、または膜としてまだまだ満足のいくものが得られなかったという問題があった。
【0010】
以上のとおり、従来では、サーミスタ膜を得ようとしても、サーミスタ原料微粒子を単に堆積させた場合には、膜の機械強度が弱く、サーミスタ特性も不十分であり、また、サーミスタ原料微粒子を基板に吹き付けて衝突させて緻密な膜を形成した場合でも数ミクロン以上の膜を形成しなければ十分なサーミスタ特性が得られず、このようなサーミスタ特性が得られる膜も密着性や表面平坦性が悪い等の問題があった。
【0011】
また、特許文献3には、薄膜サーミスタ素子が記載されているが、特許文献3記載の薄膜サーミスタ素子では、電極内に一定量の酸素および窒素を含有させなければサーミスタ膜との密着性を確保できず、また、縦型サーミスタ素子も実現困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2010-251757号公報
【文献】特開2015-115438号公報
【文献】特許第5509393号公報
【文献】WO2013/035841号公報
【文献】特許第6557899号公報
【文献】WO2018/052097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の第1の態様として、結晶品質に優れた結晶を提供することを目的の1つとする。第2の態様として、半導体特性に優れた結晶性酸化物半導体を提供することを目的の1つとする。さらに、第3の態様として、半導体特性に優れた半導体装置を提供することを目的の1つとする。また、本発明の態様の一つとして、サーミスタ特性を実現できる半導体膜として、サーミスタ膜および/またはサーミスタ膜を有する半導体装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、特定の条件下でミストCVD法を用いて、GaとMnとを含み、コランダム構造を有する結晶を得ることに成功し、さらに、上記目的の少なくとも1つを達成すべく鋭意検討した結果、特定の条件下でミストCVD法を用いて、GaとMnとを含み、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を成長することに成功し、このようにして得られた結晶性酸化物半導体が、電気特性に優れており、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。また、本発明者らは、上記目的の少なくとも1つを達成すべく鋭意検討した結果、特定の条件下でミストCVD法を用いて、GaとMnとを含み、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を成膜することに成功し、このようにして得られた膜が、200℃~250℃において高感度の優れたサーミスタ特性を実現できることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] GaとMnとを含み、コランダム構造を有する金属酸化物を含む結晶。
[2] コランダム構造の金属酸化物の金属成分中におけるGaの含有量が30原子%以上である、前記[1]記載の結晶。
[3] 結晶がドーパントを含む、前記[1]または[2]に記載の結晶。
[4] GaとMnとを含み、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体。
[5] コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体の金属成分中におけるGaの含有量が、30原子%以上である、前記[4]記載の結晶性酸化物半導体。
[6] 前記結晶性酸化物半導体がドーパントを含んでいる、前記[4]または[5]に記載の結晶性酸化物半導体。
[7] 前記結晶性酸化物半導体中におけるMnの含有量が、前記ドーパントの含有量よりも少ない前記[6]記載の結晶性酸化物半導体。
[8] キャリア密度が、1×1015/cm~1×1022/cmの範囲内にある、前記[6]または[7]に記載の結晶性酸化物半導体。
[9] キャリア密度が、1×1018/cm~1×1022/cmの範囲内にある、前記[6]または[7]に記載の結晶性酸化物半導体。
[10] 膜形状を有する前記[4]~[9]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体。
[11] 前記結晶性酸化物半導体が、m面を主面として有する、前記[10]記載の結晶性酸化物半導体。
[12] 結晶性酸化物半導体膜を少なくとも備える半導体装置であって、前記結晶性酸化物半導体膜が、前記[1]~[3]のいずれかに記載の結晶および/または前記[4]~[11]のいずれかに記載の結晶性酸化物半導体を含む半導体装置。
[13] 前記結晶性酸化物半導体膜の第1面側に配置された第1の電極と第2の電極とを有し、前記第1の電極は前記第2の電極から離間して配置されている、前記[12]記載の半導体装置。
[14] 前記結晶性酸化物半導体膜の前記第1面側に配置された第1の電極と、前記結晶性酸化物半導体膜の第2面側に配置された第2の電極とを有し、前記第2面は前記第1面と反対側に位置する前記[12]記載の半導体装置。
[15] ダイオードまたはトランジスタである前記[12]~[14]のいずれかに記載の半導体装置。
[16] MOSFETである前記[12]~[15]のいずれかに記載の半導体装置。
[17] パワーデバイスである、前記[12]~[16]のいずれかに記載の半導体装置。
[18] サーミスタである前記[12]~[14]のいずれかに記載の半導体装置。
[19] 半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、前記[12]~[18]のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の実施態様において、コランダム構造を有する結晶および/または結晶性酸化物半導体は、優れた電気特性を奏する。また、本発明の第2の実施態様において、結晶性酸化物半導体膜を有するサーミスタは、200℃~250℃において高感度の優れたサーミスタ特性を奏する。また、本発明の第2の実施態様において、コランダム構造を有する結晶および/または結晶性酸化物結晶性酸化物半導体は、高品質であり、前記サーミスタ等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施態様における、結晶性酸化物半導体膜の側面を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施態様における、半導体膜を含む半導体装置の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の第1の実施態様における、半導体膜を含む半導体装置の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の半導体装置の実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の概略断面図を示す。
図5】電源システムの一例を模式的に示す図である。
図6】システム装置の一例を模式的に示す図である。
図7】電源装置の電源回路図の一例を模式的に示す図である。
図8】実施例において、原料溶液中のMn量(%)と得られた結晶性酸化物半導体の移動度の関係を示すグラフである。
図9】実施例において、原料溶液中のMn量(%)と得られた結晶性酸化物半導体のキャリア密度の関係を示すグラフである。
図10】原料溶液中のMn量(%)を変えながら結晶成長させて、結晶性酸化物半導体に取り込まれたMn量との関係を示すSIMSデータである。
図11】本発明の第2の実施態様における、サーミスタの一例を示す概略構成図である。
図12】本発明の第2の実施態様における、サーミスタの一例を示す概略構成図である。
図13】本発明の第2の実施態様における、サーミスタの一例を示す概略構成図である。
図14】本発明の第2の実施態様における、サーミスタの一例を示す概略構成図である。
図15】本発明の第2の実施態様における、サーミスタの一例を示す概略構成図である。
図16】本発明の第2の実施態様における、サーミスタの一例が回路基板に実装された概略構成図である。
図17】実施例1で用いた成膜装置(ミストCVD装置)の概略構成図である。
図18】製法の一例を示す図である。
図19】製法の一例を示す図である。
図20】実施例1におけるXRDデータを示す図である。
図21】本発明の製品が用いられた燃料電池システムの好適な一態様を示す構成図である。
図22】実施例1~3におけるサーミスタ特性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の結晶は、ガリウム(Ga)とマンガン(Mn)とを含みコランダム構造を有する金属酸化物を含んでいれば特に限定されず、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。本発明においては、前記結晶が前記金属酸化物を主成分として含むのが好ましい。ここで、「主成分」とは、例えば前記結晶中の前記金属酸化物が、原子比で50%以上の割合で含まれていればそれでよい。本発明においては、前記結晶中の金属酸化物が原子比で70%以上であることが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。前記結晶中のGaの含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、コランダム構造を有する結晶の金属酸化物の金属成分中におけるGaの含有量は、30原子%以上であるのが好ましく、60原子%以上であるのがより好ましく、90原子%以上であるのが最も好ましい。また、前記結晶中のMnの含有量は、コランダム構造の金属酸化物中におけるGaの含有量に対して、0.1原子%以上であるのが好ましい。また、前記結晶は、GaおよびMnを含み、コランダム構造を含んでいれば特に限定されず、さらに、GaおよびMn以外の他の金属成分が1種または2種以上含まれている混晶であってもよい。他の金属成分としては、例えば、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ストロンチウム(Sr)、Mn以外の遷移金属などが挙げられ、より具体的には、Al、In、Sr、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)またはクロム(Cr)などが挙げられる。
【0019】
前記結晶は、ドーパントを含んでいてもよい。前記ドーパントを含ませることにより、電気特性をより良好なものとすることができる。前記ドーパントとしては、例えば、n型ドーパント、p型ドーパントなどが挙げられる。前記n型ドーパントとしては、例えば、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)などが挙げられる。前記p型ドーパントとしては、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などが挙げられる。本発明の実施態様においては、前記結晶は、結晶性酸化物半導体であってもよい。また、前記結晶が膜形状を有していてもよい。
【0020】
前記結晶性酸化物半導体は、GaとMnとを含み、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体であれば特に限定されず、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよい。前記結晶性酸化物半導体は、通常、前記ドーパントまたは/および酸素空孔を含む。前記ドーパントのキャリア密度は、特に限定されないが、例えば、約1×1014/cm~1×1022/cmであるのが好ましく、1×1015/cm~1×1022/cmであるのがより好ましい。前記結晶性酸化物半導体中のGaの含有量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、コランダム構造を有する結晶酸化物半導体の金属成分中におけるGaの含有量が、30原子%以上であるのが好ましく、60原子%以上であるのがより好ましく、90原子%以上であるのが最も好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体中のMnの含有量は、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体の金属酸化物中におけるGaの含有量に対して、0.1原子%以上であるのが好ましい。また、前記結晶性酸化物半導体は、GaとMnとを含み、コランダム構造を含んでさえいれば特に限定されないが、さらに、GaおよびMn以外の他の金属成分が1種または2種以上含まれている混晶であってもよい。他の金属成分としては、例えば、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ストロンチウム(Sr)、Mn以外の遷移金属などが挙げられ、より具体的には、Al、In、Sr、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)またはクロム(Cr)などが挙げられる。なお、本発明の実施態様において、前記結晶性酸化物半導体中におけるMnの含有量が、前記ドーパントの含有量よりも少ない方が好ましい。
【0021】
本発明の一つの態様において、結晶がGaとMnとを少なくとも含み、コランダム構造を有している。また、本発明の別の態様において、結晶性酸化物半導体が、Gaと、Mnと、ドーパントを含んでいる。前記結晶性酸化物半導体が膜形状を有する半導体膜であってもよい。また、さらに、別の態様として、前記結晶や前記結晶性酸化物半導体が混晶であってもよい。前記結晶性酸化物半導体が混晶の場合、1種または2種以上の金属酸化物との混晶が挙げられ、前記金属酸化物の好適な例としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化鉄などが挙げられる。本発明の半導体装置の態様において、前記結晶の主成分が、酸化ガリウムであるのが好ましい。なお、本発明の実施態様においては、酸化物半導体膜がα-Gaを含む場合、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムの原子比で30%以上の割合で含まれていればそれでよい。本発明の実施態様においては、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムの原子比が70%以上であることが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。また、前記結晶が混晶(例えば、酸化ガリウムとインジウムおよび/またはアルミニウムを含むコランダム構造を有する混晶)である場合においても、前記酸化物半導体膜の主成分が酸化ガリウムであるのが好ましい。一例として、酸化物半導体膜がα-(AlGa)を含む場合も、前記酸化物半導体膜の金属元素中のガリウムの割合が最も高く、30原子%以上の割合で含まれていればそれでよい。本発明の実施態様における結晶性酸化物半導体膜は、Mnと、前記ドーパントから選択される少なくとも1つを含み、前記結晶性酸化物半導体中におけるMnの含有量が、前記ドーパントの含有量よりも少ないのが好ましい。本発明の実施態様の一つとして、結晶性酸化物半導体のキャリア密度が、1×1018/cm~1×1022/cmの範囲内にあるのが好ましい。
【0022】
図1に本発明の実施態様における結晶の側面図を示す。前記結晶は膜形状を有していてもよい。また、前記結晶が結晶性酸化物半導体であってもよい。前記結晶性酸化物半導体2は、GaとMnとドーパントとを含み、コランダム構造を有する。前記結晶性酸化物半導体中のMnの含有量は、前記ドーパントの含有量よりも少ない。
【0023】
図2は、本発明の実施態様の一つとして、半導体装置の一態様を示す部分断面図である。半導体装置10は、少なくとも酸化ガリウムを含有する結晶を含む結晶性酸化物半導体2を有しており、結晶性酸化物半導体2は反転チャネル領域2aを含んでいる。さらに、半導体装置10は、第1の半導体領域1aと第2の半導体領域1bとを有している。本実施態様では、反転チャネル領域2aが、平面視で、第1の半導体領域1aと第2の半導体領域1bとの間に位置している。また、第1の半導体領域1aと第2の半導体領域1bは、結晶性酸化物半導体2上に配置されている。半導体装置10は、さらに基板9と、基板9上に配置された金属酸化物膜3とを有している。金属酸化物膜3は、酸化ガリウムを含み、主成分として酸化ガリウムを含んでいてもよい。金属酸化物膜3は、結晶性酸化物半導体2よりも高抵抗の膜であるのが好ましい。前記結晶性酸化物半導体2は膜形状を有していてもよい。図2の半導体装置はMOSFETであり、詳細には横型のMOSFETであり、結晶性酸化物半導体2がp型半導体膜であって、結晶性酸化物半導体2内に設けられており、かつ表面にリンを含む酸化膜2bが形成されている反転チャネル領域2aを有している。本実施態様において、第1の半導体領域1aはn+型半導体層(n+型ソース層)である。また、第2の半導体領域1bはn+型半導体層(n+型ドレイン層)である。本実施態様において、前記結晶性酸化物半導体2は膜形状を有している。半導体装置10は、結晶性酸化物半導体2の膜の第1面側に配置された第1の電極5bと第2の電極5cとを有し、前記第1の電極5bは前記第2の電極5cから離間して配置されている。本実施態様では、第1の電極5bはソース電極であり、第2の電極5cはドレイン電極で、さらに第3の電極5aを有している。なお、第3の電極5aはゲート電極である。本実施態様において、前記結晶性酸化物半導体2がコランダム構造を有しており、ガリウム(Ga)とマンガン(Mn)とドーパントを少なくとも含んでいてもよい。
【0024】
(SBD)
図3は、本発明の半導体装置の一態様を示す部分断面図であって、本発明に係るショットキーバリアダイオード(SBD)の一例を示している。半導体装置12は、結晶性酸化物半導体2としてn-型半導体層、n+型半導体層3、ショットキー電極11aおよびオーミック電極11bを備えている。本実施態様において、前記結晶性酸化物半導体2がコランダム構造を有しており、ガリウム(Ga)とマンガン(Mn)とドーパントを少なくとも含んでいる。また、前記結晶性酸化物半導体2のキャリア密度が1×1015/cm~1×1022/cmの範囲内にあるのが好ましい。
【0025】
ショットキー電極およびオーミック電極の材料は、公知の電極材料であってもよく、前記電極材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ-ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0026】
ショットキー電極およびオーミック電極の形成は、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法などの公知の手段により行うことができる。より具体的に例えば、ショットキー電極を形成する場合、Moからなる層とAlからなる層を積層させ、Moからなる層およびAlからなる層に対して、フォトリソグラフィの手法を利用したパターニングを施すことにより行うことができる。
【0027】
図3のSBDに逆バイアスが印加された場合には、空乏層(図示せず)がn型半導体層101aの中に広がるため、高耐圧のSBDとなる。また、順バイアスが印加された場合には、オーミック電極105bからショットキー電極105aへ電子が流れる。このようにして前記半導体構造を用いたSBDは、高耐圧・大電流用に優れており、スイッチング速度も速く、耐圧性・信頼性にも優れている。
【0028】
図4は、本発明の半導体装置の実施態様の一つであるジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)の概略断面図を示す。図4の半導体装置13は、結晶性酸化物半導体2の領域と、前記結晶性酸化物半導体2の領域上に設けられておりかつ前記結晶性酸化物半導体2の領域との間にショットキーバリアを形成可能な第1の電極11aとして、バリア電極と、バリア電極と結晶性酸化物半導体領域2との間に設けられておりかつ前記半導体2の領域との間にバリア電極のショットキーバリアのバリアハイトよりも大きなバリアハイトのショットキーバリアを形成可能なバリアハイト調整層とを含んでいる。なお、バリアハイト調整層14は結晶性酸化物半導体2の領域の第1面2a側設けられたトレンチ15に埋め込まれている。本発明の実施態様においては、複数のトレンチ15およびトレンチ15内に配置された複数のバリアハイト調整層が一定間隔ごとに設けられているのが好ましく、前記バリア電極の両端と前記半導体領域との間に、前記バリアハイト調整領域がそれぞれ設けられているのがより好ましい。このような好ましい態様により、熱安定性および密着性により優れ、リーク電流がより軽減され、さらに、より耐圧等の半導体特性に優れるようにJBSが構成されている。なお、図4の半導体装置13は、結晶性酸化物半導体2の領域の第2面2b側に第2の電極11bとしてオーミック電極を備えている。図4の半導体装置13は、前記トレンチ15の底面15aと側面15bとの間に円弧部15cを有しており、前記円弧部の曲率半径が100nm~500nmの範囲内であり、電界緩和効果に優れ、オン抵抗を低くすることができる。
【0029】
図4の半導体装置の各層の形成手段は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段であってもよい。例えば、真空蒸着法やCVD法、スパッタ法、各種コーティング技術等により成膜した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングする手段、または印刷技術などを用いて直接パターニングを行う手段などが挙げられる
【0030】
また、本実施態様においては、結晶性酸化物のエッチングを行ってトレンチを形成してもよい。エッチング方法は、結晶性酸化物をエッチングすることを少なくとも含み、前記のエッチングを、前記結晶性酸化物に対して1Pa以上10Pa以下の圧力下にて行う。また、本実施態様の結晶性酸化物半導体層のトレンチ形成方法は、結晶性酸化物半導体層をエッチングして前記結晶性酸化物半導体層に少なくとも1つのトレンチを形成することを含み、前記のエッチングを、前記結晶性酸化物半導体層に対して1Pa以上10Pa以下の圧力下にて行うことを特長とする。
【0031】
本実施態様においては、従来の種々のエッチャントやエッチング手段を適宜用いることができ、前記エッチングが、ドライエッチングであってもよいし、ウェットエッチングであってもよいが、前記エッチングを、プラズマ化したエッチングガスを用いて行うのが好ましく、ICP-RIE装置を用いるのがより好ましい。また、本発明においては、前記圧力が2Pa以上であるのが好ましく、5Pa以上であるのが最も好ましい。また、本実施態様においては、前記エッチングを、少なくともハロゲンを用いて行うのが好ましく、塩素を用いるのがより好ましい。た、本実施態様においては、前記エッチングを不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましく、Ar雰囲気下で行うのがより好ましい。また、本発明においては、前記エッチングをハロゲンガスの雰囲気下で行うのも好ましく、塩素ガス雰囲気下で行うのがパワーデバイス等の半導体装置により適したトレンチをより容易に形成することができるのでより好ましい。また、本発明においては、前記エッチングガスのプラズマのバイアスが50W以上であるのも好ましい。また、本実施態様においては、前記結晶性酸化物が少なくともガリウムを含むのが好ましい。また、本実施態様においては、前記結晶性酸化物がコランダム構造を有するのが好ましく、準安定相の結晶構造を有するのがより好ましい。また、本実施態様においては、前記結晶性酸化物が層状であるのが好ましい。また、本発明においては、前記結晶性酸化物が結晶性酸化物半導体であるのが好ましい。
【0032】
上記好ましい方法によれば、例えば、少なくとも1つのトレンチを含む結晶性酸化物半導体層と、前記結晶性酸化物半導体層と電気的に接続されている少なくとも1つの電極とを含み、前記トレンチの底面と側面との間に少なくとも1つの円弧部を有しており、前記円弧部の曲率半径が100nm~500nmの範囲内であり、前記側面と前記結晶性酸化物半導体層の第1面とのなす角が90°以上である半導体装置が容易に得られる。
【0033】
「曲率半径」は、前記トレンチ断面において、前記円弧部の曲線に対する接触円の半径をいう。「円弧部」は、真円の一部だけでなく、楕円の一部も含み、全体として円弧状をしていればよく、例えば、多角形の角部分が丸くなったような形状の一部であってもよい。つまり、前記円弧部は、前記トレンチ断面において、曲線の形状を有する部分であればよく、前記側面と前記底面との間の少なくとも一部に設けられていればそれでよい。例えば、円弧部の例を図に示す。図に記載の結晶性酸化物半導体は、率半径を有する2つの円弧部15cを備えている。2つの円弧部15cはともに曲率半径が、100nm~500nmの範囲内である。本発明においては、このような曲率半径の範囲とすることにより、優れた電界緩和効果を実現することができ、オン抵抗も下げることができる。また、本発明の実施態様において、前記トレンチは、前記トレンチの底面7bと側面7aとの間の全部に円弧部を有していてもよい。
【0034】
前記トレンチは、前記結晶性酸化物半導体層に形成されており、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。前記トレンチの深さ等も特に限定されないが、本発明においては、前記トレンチ断面における前記トレンチの深さが通常200nm以上であり、好ましくは500nm以上であり、より好ましくは1μm以上である。なお、前記トレンチの深さの上限は特に限定されないが、好ましくは100μmであり、より好ましくは10μmである。また、前記トレンチ断面における前記トレンチの幅も特に限定されないが、通常200nm以上であり、好ましくは500nm以上である。なお、前記トレンチの幅の上限は特に限定されないが、好ましくは100μmであり、より好ましくは10μmである。このような好ましい範囲のトレンチによれば、パワーデバイス等の半導体装置としてより優れた半導体特性を発揮することができる。また、前記トレンチ断面においては、別の実施態様の一つとして、前記トレンチの幅が底面に向かって狭くなっているものが好適な例として挙げられ、このような好適な例によれば、良好な界面が形成できて、より良好な電気特性が得られるので好ましい。また、前記トレンチの側面がテーパ状であり、前記側面が前記結晶性酸化物半導体層の第1面に対してテーパ角を有しているのも好ましい。
【0035】
図5は、電源装置の電源回路図の一例を模式的に示す図である。
本発明の実施態様における半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の方法を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、公知の方法を用いて、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。図5は、複数の前記電源装置171、172と制御回路173を用いて構成された電源システム170を示す。前記電源システム170は、図6に示すように、電子回路181と電源システム182とを組み合わせてシステム装置180に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を図7に示す。図7は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ192(MOSFETA~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランス193で絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFETで整流後、DCL195(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器197で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路196でインバータ192及び整流MOSFET194を制御する。
【0036】
本発明の第2の実施態様において、結晶性酸化物半導体は、サーミスタに用いられるサーミスタ膜であって、前記結晶または前記結晶性酸化物半導体を主成分として含んでいれば特に限定されない。ここで、「主成分」とは、例えば前記サーミスタ膜中の前記結晶または前記結晶性酸化物半導体が、原子比50%以上の割合で含まれていればそれでよい。本発明においては、前記膜中の前記結晶性酸化物半導体の原子比70%以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。また、前記サーミスタ膜の膜厚は特に限定されないが、10μm以下が好ましく、0.001μm~10μmであるのがより好ましい。
【0037】
前記サーミスタ膜は、種々のサーミスタに好適に用いられる。本発明においては、前記サーミスタが、サーミスタ膜と、サーミスタ膜の第1面側に配置される第1の電極と、第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2の電極と、を有するサーミスタであるのが好ましい。
【0038】
以下、前記サーミスタの好適な実施態様について説明するが、本発明はこれら実施態様に制限されることはない。
【0039】
本発明のサーミスタの好適な実施態様の一つは、前記サーミスタ膜と電極とを少なくとも備えることを特長とする。前記サーミスタは、GaとMnとを含み、コランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を主成分とするサーミスタ膜の第1面側に配置されている第1電極と、前記サーミスタ膜の第1面の反対側に位置している第2面側に配置されている第2電極と、を有するのが好ましい。
【0040】
本発明においては、前記サーミスタが縦型デバイスであるのが好ましい。このような好ましいサーミスタ素子である場合には、低抵抗かつ放熱性においてより優れたものになる。
また、本発明のサーミスタは、前記サーミスタ膜の第1面側に配置される第1電極と、サーミスタ膜の第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2電極と、を有することが好ましい。図11は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子100は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面側に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2電極52と、を有する。第1電極51と第2電極52とは、それぞれ縦方向に導通するように構成されている。さらに、第1電極51に接触して配置される基体54を有していてもよい。基体54は導電性を有する金属膜を含んでいてもよい。導電性の金属膜を基体表面に設けることで、回路基板に実装しやすくなるという利点がある。また、基体54は特に限定されないが、例えばコランダム構造を有する結晶基板であってもよい。基体を結晶基板とし、結晶成長させてサーミスタ膜を成膜することで、表面がより平坦なサーミスタ膜を得ることができるという利点がある。図12は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子200は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面側に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面側に配置される第2電極52と、を有する。本態様のサーミスタ素子200は、第1電極51とサーミスタ膜50の間に位置する層53を有していてもよい。層53は結晶膜であってもよい。図13は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子300は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面上に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面上に配置される第2電極52と、を有する。図13で示すように、第2電極を複数設けることも可能である。図14は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子400は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面上に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面上に配置される第2電極52と、を有する。図15は、本発明のサーミスタの好適な態様を示す概略構成図である。サーミスタ素子500は、サーミスタ膜50と、サーミスタ膜50の第1面上に配置される第1電極51と、サーミスタ膜50の第1面の反対側に位置する第2面上に配置される第2電極52と、を有する。第1電極51に接触して配置される基体54が、例えばサファイア基板である場合、第1電極51と電気的に接続された上面電極を第2電極52と同じ側に配置することも可能である。また、図16で示すように、電子機器1000の回路基板70上にある第1電極71上にサーミスタ素子100の第1電極51を導電性の基体54を介して半田付けなどで電気的に実装し、サーミスタ素子300の上面に位置する第2電極と、回路基板の第2電極72電極とをワイヤーボンディング60などにより電気的に接続することができる。このようにして、縦型デバイスとして用いることが可能である。
【0041】
(サーミスタ膜)
本発明のサーミスタ膜について、より詳細に説明する。前記サーミスタ膜は、NTCサーミスタ膜であってもよいし、PTCサーミスタ膜であってもよい。また、本発明のサーミスタ膜は、コランダム構造以外の結晶構造をさらに有していてもよい。前記サーミスタ膜は、例えば、以下に述べる好ましい態様により得ることができる。
【0042】
前記好ましい態様について説明する。本発明では、前記のサーミスタ膜の形成を、ミストCVD法により行うのが好ましく、サーミスタ膜の原料溶液を霧化し(霧化工程)、液滴を浮遊させて霧化液滴を得て、得られた霧化液滴(ミストを含む)に対し、キャリアガスを供給して基体まで搬送し(搬送工程)、ついで前記霧化液滴を前記基体上で熱反応させること(成膜工程)により行うのがより好ましい。なお、前記結晶または前記結晶性酸化物半導体についても、前記のサーミスタ膜の形成方法と同様にして形成することができる。
【0043】
(基体)
前記基体は、特に限定されず、結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。本発明においては、前記基体が導電性材料または結晶を含んでいるのが好ましい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましい。本発明においては、前記基板が、表面の一部または全部に結晶を有するものであるのが好ましく、結晶成長側の主面の全部または一部に結晶を有している結晶基板であるのがより好ましく、結晶成長側の主面の全部に結晶を有している結晶基板であるのが最も好ましい。前記結晶は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、三方晶系または六方晶系の結晶であるのが好ましく、コランダム構造を有している結晶であるのがより好ましい。なお、本発明の実施態様においては、例えば前記結晶基板がコランダム構造を有する場合には、前記主面は、c面、a面またはm面であるのが、よりサーミスタ特性を向上させることができるので好ましい。また、本発明の実施態様の一つとして、前記主面がm面であるのが、より電気特性を向上させることができるので好ましい。さらに、前記結晶基板は、オフ角を有していてもよく、前記オフ角としては、例えば、0.1°~12.0°のオフ角などが挙げられる。ここで、「オフ角」とは、基板表面と結晶成長面とのなす角度をいう。前記基板形状は、板状であって、前記結晶性酸化物半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいが、本発明においては、前記基体が、例えばニッケル箔や貴金属箔等のような導電性を有する金属膜が表面に形成されているのも好ましい。また、本発明においては、前記基板は導電性基板であるのも好ましい。前記導電性基板としては、例えば、周期律表第3族~第15族に属する1種または2種以上の金属が挙げられ、好適には1種または2種以上の遷移金属が挙げられ、より好適には周期律表第7族~第11族の1種または2種以上の金属が挙げられる。前記基板の形状は、特に限定されず、略円形状(例えば、円形、楕円形など)であってもよいし、多角形状(例えば、3角形、正方形、長方形、5角形、6角形、7角形、8角形、9角形など)であってもよく、様々な形状を好適に用いることができる。本発明においては、前記基板の形状を好ましい形状にすることにより、基板上に形成される膜の形状を設定することができる。また、本発明においては、大面積の基板を用いることもでき、このような大面積の基板を用いることによって、結晶性酸化物半導体の面積を大きくすることができる。前記結晶基板の基板材料は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されず、公知のものであってよい。前記のコランダム構造を有する基板材料は、例えば、α―Al(サファイア基板)またはα―Gaが好適に挙げられ、c面サファイア基板、a面サファイア基板、m面サファイア基板またはα酸化ガリウム基板(c面、a面又はm面)などがより好適な例として挙げられる。
【0044】
また、本発明においては、前記基体が平坦面を有するのが好ましいが、前記基体が表面の一部または全部に凹凸形状を有していてもよく、前記基体が結晶性基体である場合には、前記膜の結晶成長の品質をより良好なものとすることができるので好ましい。前記の凹凸形状を有する基体は、表面の一部または全部に凹部または凸部からなる凹凸部が形成されていればそれでよく、前記凹凸部は、凸部または凹部からなるものであれば特に限定されず、凸部からなる凹凸部であってもよいし、凹部からなる凹凸部であってもよいし、凸部および凹部からなる凹凸部であってもよい。また、前記凹凸部は、規則的な凸部または凹部から形成されていてもよいし、不規則な凸部または凹部から形成されていてもよい。本発明においては、前記凹凸部が周期的に形成されているのが好ましく、周期的かつ規則的にパターン化されているのがより好ましい。前記凹凸部の形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、ドット状、メッシュ状またはランダム状などが挙げられるが、本発明においては、ドット状またはストライプ状が好ましく、ドット状がより好ましい。また、凹凸部が周期的かつ規則的にパターン化されている場合には、前記凹凸部のパターン形状が、三角形、四角形(例えば正方形、長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形状、円状、楕円状などの形状であるのが好ましい。なお、ドット状に凹凸部を形成する場合には、ドットの格子形状を、例えば正方格子、斜方格子、三角格子、六角格子などの格子形状にするのが好ましく、三角格子の格子形状にするのがより好ましい。前記凹凸部の凹部または凸部の断面形状としては、特に限定されないが、例えば、コの字型、U字型、逆U字型、波型、または三角形、四角形(例えば正方形、長方形若しくは台形等)、五角形若しくは六角形等の多角形等が挙げられる。
【0045】
(原料溶液)
前記原料溶液は、結晶および/または結晶性酸化物半導体(以下、膜ともいう)は膜の原料溶液であって、霧化および/または液滴化が可能なものであれば、特に限定されず、無機材料を含んでいても、有機材料を含んでいてもよい。本発明においては、前記原料溶液は、通常、前記結晶性酸化物の金属を含む。前記金属は、金属単体であっても、金属化合物であってもよく、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。前記原料溶液中の前記金属の含有量は、特に限定されないが、好ましくは、0.001重量%~80重量%であり、より好ましくは0.01重量%~80重量%である。
【0046】
本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0047】
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましく、水であるのが最も好ましい。前記水としては、より具体的には、例えば、純水、超純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水、海水などが挙げられるが、本発明においては、超純水が好ましい。
【0048】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合してもよい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
前記原料溶液には、前記ドーパントが含まれていてもよい。前記原料溶液にドーパントを含ませることにより、得られる膜の特性を制御することができる。
【0049】
(霧化工程)
前記霧化工程は、前記原料溶液を霧化液滴にする。前記霧化工程は、前記原料溶液を霧化できさえすれば特に限定されず、公知の霧化手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化液滴化手段であるのが好ましい。前記霧化液滴は、初速度がゼロで、空中に浮遊するものが好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮かびガスとして搬送することが可能なミストであるのがより好ましい。霧化液滴の液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは1~10μmである。
【0050】
(搬送工程)
前記搬送工程では、前記霧化工程で得られた霧化液滴に対してキャリアガスを供給し、前記霧化液滴をキャリアガスでもって前記基体まで搬送する。キャリアガスの種類としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。本発明においては、前記キャリアガスが、酸素又は不活性ガスであるのがより好ましい。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、キャリアガス濃度を変化させた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、0.1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~10L/分であるのが好ましく、0.1~5L/分であるのがより好ましい。
【0051】
(成膜工程)
成膜工程では、前記霧化液滴を熱反応させて、前記基体上に前記膜を成膜する。前記熱反応は、熱でもって前記霧化液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行う。また、熱反応は、真空下、非真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、本発明においては、前記熱反応が非真空下で行われるのが好ましく、窒素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのがより好ましい。また、前記熱反応は、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。また、得られる膜の膜厚も、成膜時間を調整することにより、容易に調整することができる。なお、本発明においては、前記膜が、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。
【0052】
また、本発明においては、前記成膜工程の後、アニール処理を行うのも好ましい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、300℃~1100℃であり、好ましくは500℃~1000℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよい。
【0053】
上記のようにして得られた膜は、良質でかつ密着性等の表面特性に優れており、そのままで、または剥離や加工等の処理が施された後、公知の手段を用いて、例えば、電極と積層されてサーミスタに用いられる。
【0054】
前記サーミスタの好適な製造方法は、第1電極を形成すること、該第1電極に少なくとも一部が接触するように、ミストCVD法によって前記膜を形成すること、前記膜に少なくとも一部が接触するように、第2電極を形成すること、を含む。図18は製法の一例を示す。基体54上に第1電極51を形成し、さらに、第1電極51上に少なくとも一部が接触するように、ミストCVD法によって半導体膜を成長させてサーミスタ膜50とする。さらに、第2電極52を形成する。図19は集合的な製法の一例を示す。大判の基体540上に第1電極層510を形成する。第1電極層510に少なくとも一部が接触するように、ミストCVD法によってサーミスタ膜5000を形成して集合体を得た後、縦横にダイシングして複数のサーミスタ素子を得る。個々のサーミスタ素子上に第2電極52を形成してもよい。
【0055】
また、前記サーミスタは、温度センサーまたは温度制御装置等に常法にもとづき用いられ、前記サーミスタが搭載された温度センサーまたは温度制御装置等は、さらに、公知の手段を用いて、電子機器等の製品またはシステムに適用される。なお、前記製品としては、例えば、200℃以上の温度センサーや温度制御装置等が用いられる製品などが挙げられる。また、本発明においては、前記製品とCPUとを少なくとも備えるシステムにも、好適に用いることができる。なお、前記製品としては、特に限定されず、例えば、携帯端末、業務用機器、調理機器、製造機器、ガス処理器、CPU搭載機器、携帯電話等の基地局や5G無線用デバイス、車用センサーデバイス、新規デバイス(例えば、IoTやAI等)用温度補償素子などが挙げられる。
【0056】
前記温度センサーを用いた好適な態様を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図21は、前記製品と、CPU(制御器)とを備える発電システムの一例を示すブロック図である。前記発電システム30は、例えば、燃料電池システム32を含み、燃料電池システム32は、都市ガス等の原料ガスを水蒸気改質、水性シフト反応および選択酸化反応させて水素が主成分である燃料ガスを生成する燃料処理器33と、燃料処理器33から供給される燃料ガスと酸化剤ガスとを化学反応させて発電を行うスタック(燃料電池スタック)34と、スタック34の発電により得られた出力直流電力を交流電力に交換するインバータ35と、燃料電池システム32の起動、発電、終了、停止の一連の動作を制御する制御器(CPU)36と、酸化剤ガスで酸素を含んでいる空気をスタック34に供給する送風機37と、スタック34が発電する際に発生した熱を回収し、温水として貯水タンクに蓄える熱交換機38とを備えており、200℃~250℃における温度制御装置が内部に設けられている。なお、図21において、燃料電池システム32は、例えば家庭内に設置されている分電盤39を介し商用交流と接続されている。また、分電盤39と燃料電池システムとの間には、家電製品や工業用製品などの負荷40が接続されている。そして、スタック34により発電が開始されると、インバータ35を介して負荷40に電気が供給され、負荷40が作動し、さらに、スタック34の発電による熱も活用し、貯水タンク31に温水として効率的に蓄えられるように構成されている。そして、貯水タンク31にはセンサー41として温度センサーが設けられており、貯水タンク31の温度を制御している。なお、図示しないが、燃料処理器33にもガスセンサーが設けられており、燃料ガスの発生を制御している。
以上のように、前記サーミスタ膜は、温度制御装置や温度センサーが用いられ得るあらゆるシステムにおいて有用である。
【0057】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
1.成膜装置
図17を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置1を説明する。ミストCVD装置1は、キャリアガスを供給するキャリアガス源2aと、キャリアガス源2aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁3aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)源2bと、キャリアガス(希釈)源2bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁3bと、原料溶液4aが収容されるミスト発生源4と、水5aが入れられる容器5と、容器5の底面に取り付けられた超音波振動子6と、成膜室7と、ミスト発生源4から成膜室7までをつなぐ供給管9と、成膜室7内に設置されたホットプレート8と、熱反応後のミスト、液滴および排気ガスを排気する排気口とを備えている。なお、ホットプレート8上には、基板10が設置されている。
【0059】
2.原料溶液の調製
水にマンガンアセチルアセトナートとガリウムアセチルアセトナートとを、得られる膜のGa:Mnが原子比で100:2となるように混合し、これを原料溶液とした。
【0060】
3.成膜準備
上記2.で得られた原料溶液4aをミスト発生源4内に収容した。次に、基板10として、サファイア基板をホットプレート8上に設置し、ホットプレート8を作動させて900℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁3a、3bをそれぞれ開いて、キャリアガス源であるキャリアガス供給手段2a、2bからキャリアガスを成膜室7内に供給し、成膜室7の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3L/分に調節した。キャリアガスとして窒素を用いた。なお、キャリアガス(希釈)の流量も0.5L/分とした。
【0061】
4.成膜
次に、超音波振動子6を2.4MHzで振動させ、その振動を、水5aを通じて原料溶液4aに伝播させることによって、原料溶液4aを霧化させてミスト4bを生成させた。このミスト4bが、キャリアガスによって、供給管9内を通って、成膜室7内に導入され、大気圧下、500℃にて、基板10近傍でミストが熱反応して、基板10上に膜厚0.5μmの膜が形成された。なお、成膜時間は60分間であった。得られた膜は、剥離等が生じることなく、密着性に優れた膜であり、機械的強度も十分であった。XRDの結果を図20に示す。図20から、得られた膜がα-Gaを含んでおり、コランダム構造を有することがわかる。また、抵抗値を測定し、サーミスタ特性を評価した。評価結果を図22に示す。図22から良好なNTCサーミスタ特性を有することがわかる。なお、200℃~250℃においてB定数は10337であった。
【0062】
(実施例2~3)
膜組成比を下記表1のとおりとしたこと以外は、実施例1と同様に実施例2および実施例3としてそれぞれのサーミスタ膜を得た。なお、実施例2~3として得られたそれぞれの膜は、実施例1と同様、剥離等が生じることなく、密着性に優れた膜であり、機械的強度も十分であった。また、抵抗値を測定し、サーミスタ特性を評価したところ、実施例1のサーミスタ膜と同様、良好なNTCサーミスタ特性を有していた(図22、表1)。
【0063】
【表1】
【0064】
(実施例4~14)
実施例1と同じ成膜装置を用いて、水に臭化ガリウム(0.1mol)と塩化マンガンをGa原子のmol比で、Mn0%を比較例とし、Mn1%、Mn10%と変えて、さらに、基板の設定温度条件を600℃、630℃、660℃、690℃と変え、ドーパントとしてゲルマニウムを用いて、それぞれの条件でコランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を得た。結果を図8および9に示す。Mnを含まない結晶性酸化物半導体(Mn0%)と比較して、Mnを含む結晶性酸化物半導体では、移動度が高くなり、電気特性が向上していることが分かる。なお、塩化マンガンのGa原子のmol比で、0%をMn0%、1%をMn1%、10%をMn10%として示している。なお、図8の横軸は、成膜時の基板の設定温度(℃)で、縦軸が移動度(cm/Vs)を示す。さらに、図9に示すとおり、Mnを含まない結晶性酸化物半導体(Mn0%)と比較して、Mnを含む結晶性酸化物半導体では、キャリア密度も高くなった。なお、ドーパントとしてスズを用いて同様にコランダム構造を有する結晶性酸化物半導体を得た場合にも、上記実施例4~14と同様に、Mnを含む場合により電気特性(移動度、キャリア密度等)の良好な半導体膜が得られることが分かった
【0065】
図10は、原料溶液中のMn量(%)を変えながら結晶成長させて、結晶性酸化物半導体中に取り込まれたMn濃度(Atoms/cm)との関係を示すSIMSデータである。前記実施例において、結晶性酸化物半導体中におけるMnの含有量は、前記ドーパントの含有量よりも少なかった。また、本発明の実施態様において、前記結晶性酸化物半導体中におけるMnの含有量は、前記ドーパントの含有量よりも少ないことが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の実施態様における結晶、結晶性酸化物半導体は、半導体素子やサーミスタ素子に有用であり、高出力の半導体装置や電子機器の温度補償に温度センサーやガスセンサーに用いることができる。また、半導体装置を有する様々なシステムに用いることができ、前記温度センサーやガスセンサーは、電子機器などの製品または電子機器を具備するシステムにおいて有用である。
【符号の説明】
【0067】
1a 第1の半導体領域
1b 第2の半導体領域
2 結晶性酸化物半導体
2a 反転チャネル領域
2b 酸化膜
2c 結晶性酸化物半導体の第2面
3 金属酸化物層
4a 絶縁膜
4b 絶縁膜
5a 第3の電極
5b 第1の電極
5c 第2の電極
6 第3の半導体領域
9 基板
10 半導体装置
11a第1の電極
11b第2の電極
12 半導体装置
13 半導体装置
14 バリアハイト調整層
15 トレンチ
15a トレンチ底面
15b トレンチ側面
19 成膜装置
22a キャリアガス源
22b キャリアガス(希釈)源
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
24b 原料微粒子
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27a 供給管
27b 成膜室
28 ホットプレート
30 発電システム
31 貯水タンク
32 燃料電池システム
33 燃料処理器
34 スタック
35 インバータ
36 制御器
37 送風機
38 熱交換機
39 分電盤
40 負荷
41 センサー
50 サーミスタ膜
51 第1電極
52 第2電極
70 回路基板
100 サーミスタ素子
200 サーミスタ素子
300 サーミスタ素子
400 サーミスタ素子
500 サーミスタ素子
5000サーミスタ膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22