IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本エイ・ティー・エム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-自動取引装置の不適切使用防止システム 図1
  • 特許-自動取引装置の不適切使用防止システム 図2
  • 特許-自動取引装置の不適切使用防止システム 図3
  • 特許-自動取引装置の不適切使用防止システム 図4
  • 特許-自動取引装置の不適切使用防止システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】自動取引装置の不適切使用防止システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20250123BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20250123BHJP
   G06Q 40/02 20230101ALI20250123BHJP
【FI】
G06Q50/26 300
G08B25/00 510M
G06Q40/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023126434
(22)【出願日】2023-08-02
(65)【公開番号】P2024173561
(43)【公開日】2024-12-12
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023091000
(32)【優先日】2023-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500351000
【氏名又は名称】SocioFuture株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102923
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雄二
(72)【発明者】
【氏名】井上 良
(72)【発明者】
【氏名】猿田 誠
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5399675(JP,B2)
【文献】特開2013-250790(JP,A)
【文献】特開2019-160223(JP,A)
【文献】特開平09-034960(JP,A)
【文献】特開2008-065578(JP,A)
【文献】特開2018-148524(JP,A)
【文献】特開2002-204492(JP,A)
【文献】国際公開第2023/039665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08B 23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動取引装置の利用者に対する業務案内の表示のためのデジタル・サイネージ用のディスプレイと、
このディスプレイに対して、業務案内の表示をするためのコンテンツを供給する表示制御装置と、
自動取引装置に近づく利用者を撮影するカメラと、
利用者の自動取引装置の使用開始前にカメラが撮影した画像を取得して、その画像を解析して、利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、表示制御装置に対して、ディスプレイに、業務案内の表示に代えてあらかじめ記憶装置に記憶された注意喚起メッセージの表示を要求し、上記の利用者に対して、超音波発信器による無変調の超音波ビームを送信する監視装置とを備えた
ことを特徴とする自動取引装置の不適切使用防止システム。
【請求項2】
自動取引装置の操作をする場所の直上に、上記の超音波発信器を取り付けて、その真下に向けて超音波ビームを送信することを特徴とする請求項に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
【請求項3】
利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、自動取引装置の操作をする場所に、10KHz以上の音波を発する発信器を取り付けて送信し、携帯電話の通話を妨げることを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
【請求項4】
音響信号発生器から指向性のある音響信号を自動取引装置の操作場所の直上から床に向けて発射し、もしくは相対する壁の間で超音波を反射させて、携帯電話の通話を妨げる限定された非通話領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犯罪に結びつくような自動取引装置の不適切使用を防止するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
振り込め詐欺とも呼ばれている特殊な詐欺行為を阻止するために、金融機関に設置されたATM等の自動取引装置に対して様々な監視機能を組み込む技術が紹介されている。例えば、携帯電話を使用しながらATMを操作している所定年齢以上の利用者を監視して警告をするシステム(特許文献1)や、携帯電話を使用する音声データを取得して、長時間の使用に警告をするシステム(特許文献2)や、ATMを操作している利用者の携帯電話の使用を画像認識する技術(特許文献3)等が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5399675号公報
【文献】特許6114146号公報
【文献】特許6959704号公報
【文献】特許4371268号公報
【文献】特開2005-33372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ATMは銀行等の金融機関の基幹システムに接続されており、セキュリティが高い高額な装置のため、ここに新たな機能を追加するには多くの手数と開発費がかかる。本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
<構成1>
自動取引装置の利用者に対する業務案内の表示のためのデジタル・サイネージ用のディスプレイと、
このディスプレイに対して、業務案内の表示をするためのコンテンツを供給する表示制御装置と、
自動取引装置に近づく利用者を撮影するカメラと、
利用者の自動取引装置の使用開始前にカメラが撮影した画像を取得して、その画像を解析して、利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、表示制御装置に対して、ディスプレイに、業務案内の表示に代えてあらかじめ記憶装置に記憶された注意喚起メッセージの表示を要求する監視装置を備えたことを特徴とする自動取引装置の不適切使用防止システム。
【0006】
<構成2>
自動取引装置の利用者に対する業務案内の表示のためのデジタル・サイネージ用のディスプレイと、
自動取引装置に近づく利用者を撮影するカメラとを設けて、
利用者の自動取引装置の使用開始前にカメラが撮影した画像を取得して、その画像を解析して、利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、ディスプレイに、業務案内の表示に代えてあらかじめ記憶装置に記憶された注意喚起メッセージの表示をすることを特徴とする自動取引装置の不適切使用防止方法。
<構成3>
自動取引装置の利用者に対する業務案内の表示のためのデジタル・サイネージ用のディスプレイと、
このディスプレイに対して、業務案内の表示をするためのコンテンツを供給する表示制御装置と、
自動取引装置に近づく利用者を撮影するカメラとが設けられたシステムにおいて、
利用者の自動取引装置の使用開始前にカメラが撮影した画像を取得して、その画像を解析して、利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、表示制御装置に対して、ディスプレイに、業務案内の表示に代えてあらかじめ記憶装置に記
憶された注意喚起メッセージの表示を要求する処理を実行するように監視装置のコンピュータを機能させるコンピュータプログラム。
【0007】
<構成4>
監視装置は、ネットワークを通じて接続されたサービスセンターの端末装置に対して判定結果を送信し、その端末装置の操作により、オートホンを鳴らして利用者に対し助言を可能にすることを特徴とする構成1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
<構成5>
利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、音声による注意喚起メッセージもしくはブザーや雑音発生器を音源にして変調をした超音波ビームを、上記の利用者に対して送信する、超音波スピーカーを備えたことを特徴とする構成1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
【0008】
<構成6>
自動取引装置の操作をする場所の直上に超音波スピーカーを取り付けて、その真下に向けて上記の超音波スピーカーから超音波ビームを送信することを特徴とする構成5に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
<構成7>
利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、上記の利用者に対して、超音波発信器による無変調の超音波ビームを送信することを特徴とする構成1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
<構成8>
自動取引装置の操作をする場所の直上に、上記の超音波発信器を取り付けて、その真下に向けて超音波ビームを送信することを特徴とする構成7に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
<構成9>
利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、自動取引装置の操作をする場所に、10KHz以上の音波を発する発信器を取り付けて送信し、携帯電話の通話を妨げることを特徴とする構成1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
<構成10>
音響信号発生器から指向性のある音響信号を自動取引装置の操作場所の直上から床に向けて発射し、もしくは相対する壁の間で超音波を反射させて、携帯電話の通話を妨げる限定された非通話領域を形成することを特徴とする構成1に記載の自動取引装置の不適切使用防止システム。
【発明の効果】
【0009】
利用者が自動取引装置の操作を開始する前に携帯電話を使用した通話を検知してメッセージを表示し、未然に詐欺の被害を防止できる。自動取引装置の動作とは連動させないから、金融機関の基幹システムとの連携が不要で、開発や制御が容易になる。高度なセキュリティを要求されないので、ハードウェアは安価に構築できる。超音波スピーカー等を利用して実際に利用者が携帯電話で通話をするのを妨害できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の自動取引装置の不適切使用防止システムの概略構成図である。
図2】ディスプレイに表示されたメッセージの例説明図である。
図3】本発明のシステムの動作例フローチャートである。
図4】実施例3の不適切使用防止システムの概略構成図である。
図5】実施例3に使用する装置の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1に示した不適切使用防止システム12には、自動取引装置14の上方にディジタル・サイネージ用のディスプレイ20が取り付けられている。このディスプレイ20は、自動取引装置14の利用者16に対する広告等の業務案内を表示するためのものである。自動取引装置14は、金融機関やコンビニエンスストア等に設置されているもので、振り込み(送金)操作ができる装置である。業務案内を表示するための様々なコンテンツは、記憶装置32に記憶されている。表示制御装置24は、記憶装置32に記憶されたコンテンツ22を適時に選択して読み出してディスプレイ20に表示制御をする。
【0013】
ここで、本発明のシステムは、利用者16が、悪意を持った者から携帯電話で指示をされて振り込み操作をするようなおそれのある状態を検出する。カメラ26は、自動取引装置14に近付く利用者16を撮影するためのものである。本発明のシステムは、自動取引装置14とは全く独立したシステムとする。自動取引装置14の動作とは連動させないから、金融機関の基幹システムとの連携が不要で、開発や制御が容易になる。高度なセキュリティを要求されないので、ハードウェアは安価に構築できる。
【0014】
監視装置36は、まず、利用者16の自動取引装置14の使用開始前にカメラ26が撮影した画像を取得して、その画像を解析する。例えば、Al(人工知能)の学習処理により、利用者16が、携帯電話30の通話をしている状態かもしくは携帯電話30の通話の準備をしている状態を検出できる。この状態を検出したときに、監視装置36は、表示制御装置24に対して、注意喚起メッセージ34の表示を要求する。
【0015】
例えば、携帯電話に保存されたパスワードや振り込み先の情報を見ながら手続きをする利用者もある。そういった利用者と、これから携帯電話で通話を始めようとする利用者とは、携帯電話の持ち方が違う。撮影画像から利用者の頭とスマートフォン等の携帯電話とを検出して、携帯電話が利用者の頭の横に設定時間以上位置している時に通話状態と判定する。利用者の頭や携帯電話の画像認識は、AIの学習で精度を高めることができる。これで、携帯電話を所持する利用者全てに注意喚起のメッセージを表示するということはなくなる。
【0016】
表示制御装置24は、これまでディスプレイ20に表示させていた業務案内表示に代えて、記憶装置32に記憶された監視装置36の指定した注意喚起メッセージ34を選択して表示する。
【0017】
例えば、図2に示すように、「携帯電話で通話をしながらATMを操作するのはご遠慮ください。ご不明の点は備え付けの電話で、係員にお尋ねください。」といったメッセージ34を表示する。自動取引装置14の操作に関係の無い通話は、近辺の他の利用者の迷惑になる。携帯電話で操作方法を聞きながら自動取引装置14を操作するのは、振り込め詐欺に会うおそれがある。操作に不案内ならば備え付けのオートホン28を使用させるとよいから、このようなメッセージ34で利用者に注意を促す。
【0018】
利用者16の自動取引装置14の使用開始前に、カメラ26が撮影した画像を取得してメッセージを表示することが必要である。同時に音声によるメッセージを流してもよい。一般に、携帯電話30で他人に自動取引装置の操作を誘導される利用者16は、自動取引装置14を操作する前に必ず携帯電話30を用意する。自動取引装置14に近づきながら、あるいは自動取引装置14の前に立って携帯電話30を取り出して通話の準備をする。この動作を検出して注意喚起を促すとよい。
【0019】
利用者16による自動取引装置14の操作が始まってからでは、振り込み処理を阻止できないおそれがある。しかも、自動取引装置14の操作を開始すると、利用者16は自動取引装置14の操作画面に集中し、ディジタル・サイネージ用のディスプレイ20の方に目を向けない。従って、このシステムでは、利用者16が自動取引装置14の操作を開始する以前に、状態判定とメッセージの表示をする。
【0020】
即ち、撮影した画像の判定処理は必ず自動取引装置14の操作開始前に行う。自動取引装置14とは独立したシステムであれば、画像解析のみで判定をするから、設置も管理も容易である。処理速度も早くできる。メッセージの表示は自動取引装置14の操作開始後まで継続してもよい。
【0021】
画像解析により、利用者16の特性(年齢や性別)を判定して、メッセージの種類を区別してもよい。オートホンを使用しているときはメッセージの表示の必要が無い。外見上は携帯電話で通話をしているときと区別し難い。この区別をするために、画像認識できる程度のマークをオートホンに付しておくとよい。
【0022】
自動取引装置14の使用開始後も利用者の撮影を継続して、例えば、異常な操作や長時間の使用を検出することができる。こうした検出結果に対しては、それぞれ別々のメッセージを用意するとよい。ディスプレイ20への注目を促すために音声やチャイム等の音を発するのもよい。
【0023】
カメラ26もスピーカ42もディスプレイ20と一体化できるから、設置も移動も容易である。なお、犯罪の防止につながるとはいえ、顧客サービス向上を目的とするものであるから、警告のようなメッセージは避けることが好ましい。このシステムは係員が不在の店舗等にも設置することができる。自動取引装置の操作が不案内な利用者へのサービスの一環として採用することができる。
【0024】
例えば、上記のようなメッセージを表示しても、メッセージの表示していなくても、監視装置は、ネットワーク40(図1)を通じて接続され、リモートで案内をするサービスセンター38のオペレーター用端末装置に対して判定結果を送信し、例えば、コールボタンを有効にして、オペレータの判断でコールボタンを操作して、自動取引装置のオートホン28を鳴らして、利用者に対し助言ができるようにしてもよい。このシステムでは、複数の自動取引装置の上方に必要数のディスプレイを設置して、表示制御装置24や監視装置36を共用して複数台のディスプレイをまとめて制御することもできる。
【実施例2】
【0025】
次に図1図3を参照しながら本発明のシステムで使用するコンピュータプログラムの動作例を説明する。
ステップS11では、業務案内用のコンテンツ22の表示制御がされる。この処理は表示制御装置24が、記憶装置32に記憶されたコンテンツ22を読みとって継続的に実行する。ステップS12はステップS11と同時進行する処理である。カメラ26が自動取引装置の前方を継続的に撮影する。ステップS13では、監視装置36が、撮影した画像の画像解析をする。
【0026】
ステップS14では、監視装置36が、利用者16を検出したかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS15の処理に移行し、ノーのときはステップS11の処理に戻る。ステップS15では、監視装置36が、携帯電話を検出したか携帯電話での通話の準備をしたかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS16の処理に移行し、ノーのときはステップS11の処理に戻る。
【0027】
ステップS16では、監視装置36が利用者の特性判定をする。ステップS17では、判定結果に応じたメッセージ34の選択をする。ステップS18では、表示制御装置24が業務案内表示の停止をする。ステップS19では、表示制御装置24が選択したメッセージ34の表示をする。ステップS20では、判定結果をサービスセンターへ通知する。
【0028】
すべての判定結果を記憶装置32に記憶しておくとよいし、 サービスセンターの端末装置へ送信するのは全ての判定結果ではなくて、助言サポートが必要な利用者に関係するものだけでもよい。利用者が自動取引装置の使用を開始した後も監視を続けて、必要に応じて注意喚起のためのメッセージを表示してもよい。
【実施例3】
【0029】
超音波スピーカーは、例えば、特許文献4や特許文献5に記載されているように、情報を届けたい相手だけに対して声をかけることができるツールである。従って、利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、超音波スピーカーを用いれば、注意を喚起する音声によるメッセージをこの利用者だけに送信することができる。
【0030】
図4には、利用者16の頭上に超音波スピーカーを取り付けた例を示した。この図に示すように、自動取引装置14の操作場所の直上の天井等に超音波スピーカー50を取り付けてその真下に超音波ビームを発する。例えば、上記の注意喚起メッセージを音源にして変調した指向性の強い超音波ビームを発するとよい。超音波ビームは床面と天井とで反射して自動取引装置14の操作場所の周辺に集中的に照射される。利用者16の耳に対しては陰が出来にくく確実にメッセージを届けられる。しかも、不要反射により第三者にそのメッセージが届いてしまうのを防ぐことができる。
【0031】
また、それでも、周辺の環境によって、意図しない方向に超音波ビームが反射してその声が第三者に届いてしまうことがあり得る。その場合は、利用者に音声メッセージを送るのではなくて、携帯電話による通話を妨害できるような、雑音を送るとよい。例えば、超音波発信器に入力する音源にブザーや雑音発生器を使用するとよい。
【0032】
さらに、変調器を接続しない超音波発信器のみにより、利用者の耳には聞き取ることができない周波数の超音波ビームを送信してもよい。携帯電話のマイクは、音圧が高ければ、無変調の超音波に対しても反応する。また、無変調であっても超音波発信器自体に生じるノイズが同時に携帯電話のマイクに入力する。連続して高い音圧の超音波が入力すると、携帯電話の通話が妨げられる。
【0033】
図5の(a)は超音波スピーカーのブロック図で、音源52を変調器54に入力する。超音波発信器56は変調された超音波ビーム58を送信する。これに対して。(b)に示した装置は超音波発信器56を電源60で駆動し、そのスイッチをオンオフするだけの構造である。利用者が、携帯電話の通話をしている状態か、もしくは携帯電話の通話の準備をしている状態を検出したとき、監視装置36が電源60のスイッチをオンすればよい。よく知られているように、複数の超音波発信器56を並べて使用すれば、指向性や音圧を高めることができる。
【0034】
即ち、携帯電話に対して超音波発信器から無変調の超音波ビームを送信すれば、携帯電話を使用する自動取引装置の利用者の通話を妨害することができる。これによれば、人の耳に聞こえるような音が周辺に届くことがなく、特定の携帯電話の通話のみを妨害することができる。
【0035】
なお、この場合、携帯電話の通話が突然出来なくなった理由が利用者にはわからない。しかし、ディスプレイに注意喚起メッセージとともに、携帯電話の通話を機能を抑制している旨が示されれば納得出来る。これで、自動取引装置の不適切使用を確実に混乱無く防止できる。
【0036】
しかも、上記のいずれの場合も携帯電話の使用を妨害するための妨害電波で懸念されるような弊害もない。携帯電話をメモ代わりに使用して自動取引装置を利用するような行為には何の影響もない。
【0037】
なお、広く市販されている超音波スピーカーに使用されている超音波発信機の発振周波数は40KHz前後である。しかし、10KHzから20KHz程度の可聴範囲の上限に近い周波数帯域でも、比較的指向性の強い音波を発信できる。従って、これでも、利用者の頭上から、真下に向かって発信をして、周辺への影響を最小にしながら携帯電話の通話を妨害出来る。
【0038】
実証実験では、発信周波数が40KHzの超音波スピーカを使用した。この超音波スピーカには超音波帯域用トランスジューサが50個並列接続されている。高い指向性を持ち、入力端子にマイクを接続すると10m先の人にも声をかけることができる能力がある。この超音波スピーカを携帯電話の直上1.5メートルに、真下を向けて配置した。
【0039】
マイク等の音源は接続せずに無変調で電源を投入して、通話中の携帯電話の通話音量の変化を調べた。超音波の送信を開始すると、受信側の携帯電話に大きな雑音が混入し、通話が妨げられた。変調処理が不要ならば、音源も変調器も不要で、電源のオンオフだけで制御できるから、きわめて簡単な音響信号発生器を実現できる。そのため、低コストなだけでなく、消費電力も少なく、安定な動作を期待できるという効果がある。
【0040】
こうした指向性のある音響信号を自動取引装置の操作場所の直上から床に向けて発射すれば、限定された非通話領域を形成することができる。また、自動取引装置の左右に壁があったら、相対するそれらの壁の間で超音波を水平方向に反射させて、限定された非通話領域を形成することができる。
【0041】
通常、音響信号発生器は、発信回路と送信器により構成される。高い音域では送信機に圧電素子等を使用する。発振回路は10KHz以上50KHz以下の正弦波や矩形波を基本波として発生する回路が好ましい。10KHz~20KHzの範囲は可聴範囲の上限付近だから、小出力でも携帯電話のマイクが反応して通話を妨害できる。20KHzを越えると人の耳には聞こえない範囲だから、携帯電話のマイクも基本波に反応しない。しかし、高い音圧でかつ基本波以外の雑音成分が含まれると携帯電話の通話を妨げることができる。50KHzを越えると携帯電話は反応しない。
【0042】
上記のような音響信号発信回路は、周囲の電子機器に影響を及ぼすような電波を発しない。また、可聴周波数の上限付近以上の音波であれば、指向性が強く、周囲に広がらない。さらに、壁等で反射させれば、狭い領域に音響信号を閉じ込めることができる。しかも、可聴周波数の上限付近以上の音波であれば、周囲の人の耳に不快な音にならない。携帯電話の通話以外の行為には影響がないといった効果が得られる。
【符号の説明】
【0043】
12 不適切使用防止システム
14 自動取引装置
16 利用者
20 ディスプレイ
22 コンテンツ
24 表示制御装置
26 カメラ
28 オートホン
30 携帯電話
32 記憶装置
34 メッセージ
36 監視装置
38 サービスセンター
40 ネットワーク
42 スピーカ
50 超音波スピーカー
52 音源
54 変調器
56 超音波発信器
58 超音波ビーム
60 電源
図1
図2
図3
図4
図5