(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】運動用機器及びトレーニングシステム
(51)【国際特許分類】
A63B 21/005 20060101AFI20250123BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20250123BHJP
A63B 23/035 20060101ALI20250123BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20250123BHJP
G16Y 10/65 20200101ALI20250123BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20250123BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20250123BHJP
【FI】
A63B21/005
A63B69/00 C
A63B23/035 Z
A63B24/00
G16Y10/65
G16Y20/40
G16Y40/10
(21)【出願番号】P 2020168068
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-09-13
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】520385777
【氏名又は名称】川上 知英
(72)【発明者】
【氏名】川上 知英
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-296672(JP,A)
【文献】特表2019-520165(JP,A)
【文献】特開平04-024034(JP,A)
【文献】特開昭61-279262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 21/00 - 21/28
A63B 69/00
A63B 23/035
A63B 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体と、
揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体と、
前記ベース体と前記操作体との間に設けられ、前記操作体への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置と、
前記負荷発生装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、操作者が前記操作体に与える操作力と前記負荷発生装置が発生する前記負荷が一時的に釣り合うように前記負荷発生装置を制御し、釣り合い状態にあるときに前記負荷発生装置が発生する前記負荷を前記操作力として算出し、算出された最大操作力に基づいた負荷を発生させるように前記負荷発生装置を制御
し、前記操作体の移動速度が所定の範囲内に収まるように前記負荷発生装置に発生させる前記負荷を制御する、運動用機器。
【請求項3】
前記制御装置は、予め設定された複数の運動モードのいずれか一つが選択されたときに、前記操作体の前記移動速度が選択された運動モードに基づいた速度になるように前記負荷発生装置に発生させる前記負荷を制御する、請求項1に記載の運動用機器。
【請求項5】
ベース体と、
揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体と、
前記ベース体と前記操作体との間に設けられ、前記操作体への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置と、
前記負荷発生装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記操作体の移動速度が所定の範囲内に収まるように前記負荷発生装置に発生させる前記負荷を制御する、運動用機器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を電気的に制御することができる運動用機器及びトレーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式のトレーニングマシンが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトレーニングマシンでは油圧シリンダを利用しており、油圧シリンダの取り付け位置を手動で変更することで、負荷を変更可能に構成されている。しかし、負荷を変更する際の作業に課題がある。そこで本発明は、負荷を半自動又は自動的に制御することができる運動用機器及びトレーニングシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、ベース体と、揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体と、前記ベース体と前記操作体との間に設けられ、前記操作体への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置と、前記負荷発生装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記操作体に入力される操作力又は前記操作体が移動する速度に基づいた負荷を発生させるように前記負荷発生装置を制御する、運動用機器を提供する。この構成によれば、負荷を半自動又は自動的に制御することができる。
【0006】
前記制御装置は、予め設定された複数の運動モードのいずれか一つが選択されたときに、前記操作体に入力される操作力と選択された運動モードとに基づいた負荷を発生させるように前記負荷発生装置を制御してもよい。この構成によれば、操作者が選択した自分に適した運動モードでトレーニングをすることができる。
【0007】
上記の運動用機器は、前記操作体の位置又は速度を測定する第1センサと、をさらに備え、前記制御装置は、前記第1センサによって測定された第1測定値に基づき前記負荷発生装置に発生させる前記負荷を制御してもよい。この構成によれば、操作体が移動する速度に基づいた負荷を設定できるため、操作者に適したトレーニングをすることができる。
【0008】
上記の運動用機器は、前記操作体に付与されるトルク又は圧力を測定する第2センサと、を更に備え、前記制御装置は、前記第2センサによって測定された第2測定値に基づき前記負荷発生装置に発生させる前記負荷を制御してもよい、この構成によれば、操作者の操作力に基づいた負荷を設定できるため、操作者に適したトレーニングをすることができる。
【0009】
前記制御装置は、前記操作力が入力されたときの前記操作体の前記速度が所定の範囲内に収まるように前記負荷発生装置に発生させる前記負荷を制御してもよい。この構成によれば、操作者に適したトレーニングをすることができる。
【0010】
前記制御装置は、操作者が前記操作体に与える操作力と前記負荷発生装置が発生する前記負荷が一時的に釣り合うように前記負荷発生装置を制御し、釣り合い状態にあるときに前記負荷発生装置が発生する前記負荷を前記操作力として算出してもよい。この構成によれば、操作者による最大の操作力を算出することができる。
【0011】
前記制御装置は、個人識別データが入力された場合、前記運動用機器の使用データと当該個人識別データとを関連付けて個人履歴データを作成し、当該個人履歴データを記録してもよい。この構成によれば、各人のトレーニングデータを個別に蓄積することができる。
【0012】
前記制御装置は、入力装置又は操作者が携帯する端末装置若しくは識別手段によって個人識別データが入力された場合、前記運動用機器の使用データと当該個人識別データとを関連付けて個人履歴データを作成し、当該個人履歴データを当該端末装置に送信してもよい。この構成によれば、個人が有するスマートフォン等の携帯端末にトレーニングデータを蓄積することができる。
【0013】
前記制御装置は、入力装置又は操作者が携帯する端末装置若しくは識別手段によって個人識別データが入力された場合、前記運動用機器の使用データを当該端末装置又は前記運動用機器とネットワークによって接続された管理サーバに送信してもよい。この構成によれば、運動用機器の制御装置にて個人履歴データを作成する作業負荷を低減することができる。つまり、個人が有するスマートフォン等の携帯端末や管理サーバで個人履歴データを作成可能になる。
【0014】
前記制御装置は、入力装置又は操作者が携帯する端末装置若しくは識別手段によって個人識別データが入力された場合、当該制御装置又は当該端末装置によって記録された前記個人履歴データの最新データに基づいて、前記負荷発生装置が発生する前記負荷を制御してもよい。この構成によれば、直近のトレーニングを参考にしたトレーニングを行うことができるので、操作者に適したトレーニングをすることができる。
【0015】
また、本発明は、1つの側面から、ベース体と、揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体と、前記ベース体と前記操作体との間に設けられ、前記操作体への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置と、前記操作体に入力される操作力又は前記操作体が移動する速度に基づいた前記負荷を発生するように前記負荷発生装置を制御する制御装置と、を有する運動用機器と、前記運動用機器とネットワークにて接続された管理サーバと、を備え、前記制御装置は、入力装置又は操作者が携帯する端末装置若しくは識別手段によって個人識別データが入力された場合、当該個人識別データと前記運動用機器の使用データとを関連付けて個人履歴データを作成し、当該個人履歴データを記録する又は当該個人履歴データを前記管理サーバ若しくは操作者が携帯する端末装置に送信する、トレーニングシステムを提供する。この構成によれば、この構成によれば、各人のトレーニングデータを個別に蓄積することができる。
【0016】
また、本発明は、他の側面から、ベース体と、揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体と、前記ベース体と前記操作体との間に設けられ、前記操作体への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置と、前記操作体に入力される操作力又は前記操作体が移動する速度に基づいた前記負荷を発生するように前記負荷発生装置を制御する制御装置と、を有する運動用機器と、前記運動用機器とネットワークにて接続された管理サーバと、を備え、前記制御装置は、入力装置又は操作者が携帯する端末装置若しくは識別手段によって個人識別データが入力された場合、当該個人識別データ及び前記運動用機器の使用データを前記管理サーバに送信し、前記管理サーバは、前記個人識別データと前記使用データとを関連付けて個人履歴データを作成し、当該個人履歴データを記録する又は当該個人履歴データを操作者が携帯する端末装置に送信する、トレーニングシステムを提供する。この構成によれば、この構成によれば、各人のトレーニングデータを個別に蓄積することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、負荷を半自動又は自動的に制御することができる運動用機器及びトレーニングシステムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る運動用機器を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る運動用機器を制御する制御系の概略構成図である。
【
図3】本発明に係る制御装置及び制御装置周辺機器の概略構成図である。
【
図4】本発明に係る入力装置に表示される画面の一例である。
【
図5】本発明に係る入力装置に表示される画面の一例である。
【
図6】本発明に係る入力装置に表示される画面の一例である。
【
図7】本発明に係るトレーニングシステムを示す概略図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る運動用機器を示す概略構成図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る負荷発生装置及び周辺装置を示す概略構成図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る運動用機器の変形例を示す概略構成図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る運動用機器の変形例を示す概略構成図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る負荷発生装置及び周辺装置の変形例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る第1実施形態及び第2実施形態の運動用機器を前述する図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等を記載される方向に限定するものではない。また、以下に説明する運動用機器は、本発明の一つの実施形態に過ぎない。したがって、本発明は以下の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0020】
(第1実施形態)
(装置構成)
図1及び
図2に示す通り、第1実施形態に係る運動用機器1は、ベース体2と、揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体3と、ベース体2と操作体3との間に設けられ、操作体3への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置4と、負荷発生装置4を制御する制御装置5と、を備える。ここで、負荷とは、運動用機器1を使用する操作者Hが操作体3に与える操作力に対
操作体3には操作力と負荷が対抗するように作用する。これにより、操作者Hは筋力トレーニングを行うことができる。なお、
図1では操作者Hが手で操作体3を操作することによって上半身をトレーニングする形態を示しているが、脚で操作体3を操作することによって下半身をトレーニングする形態であってもよい。
【0021】
ベース体2は、フレーム6と、フレーム6の上部に設けられたシート7と、フレーム6の下部に設けられた複数本の脚8と、を有する。負荷発生装置4である電動モータ4がベース体2のフレーム6の下部に設けられる。なお、負荷発生装置4を電動モータ4と図示しない減速機を備えた構成としてもよい。電動モータ4には操作体3が機械的に接続される。操作体3はロッド部9と操作者Hが把持するハンドル部10とを有し、ロッド部9の第1端は電動モータ4の出力軸と機械的に接続され、ロッド部9の第2端にはハンドル部10が設けられる。操作体3のロッド部9は、フレーム6及びシート7を貫通しており、第1端はフレーム6の下部に位置し、第2端はフレーム6の上部に位置している。なお、操作体3のロッド部9は、フレーム6等を貫通することなく、フレーム6等の外側を通るように配置されてもよい。
【0022】
操作体3の可動範囲を制限するために、ストッパ部材11が電動モータ4と操作体3の間に設けられる。ストッパ部材11は第1ストッパ部12と第2ストッパ部13を有し、第1ストッパ部12は
図1の右方向(第1方向)への操作体3の移動を制限し、第2ストッパ部13は
図1の左方向(第2方向)への移動を制限する。これにより、操作体3がベース体2に対して搖動可能又は往復移動可能となり、操作者Hがシート7に座る又は寝転んだ姿勢で操作体3を前後方向に移動させる運動が可能となる。このとき電動モータ4が操作体3を移動させる際の負荷を発生し、制御装置5によって電動モータ4が発生する負荷が制御される。なお、運動用機器1の初期設定時又は使用前状態においては、操作体3は第1方向に傾倒しており、第1ストッパ部12と接することによって初期位置に位置決めされている。
【0023】
電動モータ4には第1センサ14であるエンコーダ14が設けられ、電動モータ4の回転角度/回動位置、つまり、操作体3の回動角度/回動位置を検出できる。電動モータ4の出力軸と操作体3との間には第2センサ15であるトルクセンサ15が設けられ、操作体3に付与されるトルクを検出できる。エンコーダ14及びトルクセンサ15は制御装置5に電気的に接続されており、制御装置5は両者から伝達される信号に基づいて電動モータ4が発生する負荷を制御する。
【0024】
図2及び
図3に示す通り、運動用機器1は、操作者Hに関する情報やどのような運動を行うかを表す運動モード等の情報を制御装置5へ入力するための入力装置16を備えてもよい。入力装置16を利用する以外に、操作者Hが携帯するスマートフォンやスマートウォッチ等の端末装置17から制御装置5に近距離無線通信などの通信機能を利用して入力してもよい。また、個人識別データが記録された磁気カード、ICチップカード又はICチップを備えたリストバンド等の操作者Hが携帯する識別手段18を使って制御装置5に個人識別データを入力し、その後に入力装置16を用いてどのような運動を行うかを表す運動モード等の情報を制御装置5へ入力してもよい。
【0025】
(制御装置及び周辺装置)
図3に基づいて、制御装置5及びその周辺装置に関して説明する。制御装置5は、いわゆるコンピュータであって、制御処理や演算処理等を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUによって実行される制御プログラムや演算プログラム等が記憶されたROM(Read Only Memory)と、処理データ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、入出力インターフェースとを中心に構成される。制御装置5は、速度算出部5aと、操作力/負荷算出部5bと、負荷制御部5cと、個人履歴データ作成部5dと、を有する。
【0026】
速度算出部5aは、エンコーダ14によって検出された操作体3の回動角度/回動位置(第1測定値)に基づいて、操作者Hによって操作される操作体3の回動角速度/回動速度(速度)を算出する。操作体3が移動する速度が正の値であれば操作者Hによる操作力が電動モータ4が発生する負荷を上回っている状態を表し、負の値であれば、操作者Hによる操作力が電動モータ4が発生する負荷を下回っている状態を表す。
【0027】
操作力/負荷算出部5bは、トルクセンサ15によって検出された操作体3に作用するトルク(第2測定値)に基づいて、操作者Hが操作体3に付与する操作力、又は、電動モータ4が発生する負荷を算出する。操作体3が移動する速度が概ねゼロである場合は、操作者Hによる操作力と電動モータ4が発生する負荷とがつり合い状態にあるため、検出されたトルクに基づいて操作力が算出される。操作体3が移動する速度が正又は負の値である場合は、操作力と負荷とがつり合い状態にないため、検出されたトルクに基づいて電動モータ4による負荷が算出される。操作力/負荷算出部5bは操作力又は負荷を算出する際には、速度算出部5aによって算出される操作体3の速度を参照してもよい。
【0028】
負荷制御部5cは、速度算出部5aによって算出される操作体3の速度、又は、操作力/負荷算出部5bによって算出される操作力若しくは負荷等に基づいて、負荷指令を生成する。負荷制御部5cは生成された負荷指令をドライバ21へ伝達する。ドライバ21は、負荷指令に基づき駆動電流を算出し、駆動電流を電動モータ4へ供給する。電動モータ4は供給された駆動電流に基づいた負荷を発生させる。また、エンコーダ14やトルクセンサ15からの信号が制御装置5に伝達されることで、負荷制御部5cは新たな負荷指令を生成し、操作者Hによる操作力に対抗する負荷を適切に制御するように機能する。
【0029】
個人履歴データ作成部5dは、入力装置16によって操作者Hに関する個人識別データが入力された場合に、個人識別データと運動用機器1を使用した際の使用データ(算出された操作力、電動モータ4の負荷、操作体3の速度、選択された運動モード、の内の少なくとも一つ)を関連付けて個人履歴データを作成する。つまり、個人履歴データは操作者Hがどのような状態や条件で運動を行ったのかを表すデータである。個人履歴データが蓄積されることにより、操作者Hの筋力や持久力等の体力の現状値や経時変化、及び、操作者Hの運動習慣等を把握することができる。
【0030】
入力装置16は、個人識別データ等を制御装置5に入力するための装置であって、例えば、タッチパネル式のディスプレイやモニタである。入力装置16には、負荷の大きさを直接数値入力する場合と各種運動モードを選択する場合の選択肢が設定され、選択された選択肢に基づいて負荷制御部5cは電動モータ4が発生する負荷を制御する。例えば、
図3及び
図4に示すように、入力装置16には、[負荷数値入力]、[運動モード選択]、及び、[個人識別データ入力]のためのボタンが設定されている。
【0031】
なお、入力装置16の機能を操作者Hが携帯する端末装置17にインストールされたアプリケーションソフトに持たせてもよい。この場合、操作者Hが携帯する端末装置17と運動用機器1とが近距離無線通信などの通信機能によって接続される必要がある。また、個人識別データが記録された磁気カード、ICチップカード又はICチップを備えたリストバンド等の操作者が携帯する識別手段18を使って制御装置5に個人識別データを入力したうえで、入力装置16を用いて今回のトレーニング情報(前述した[負荷数値入力]、[運動モード選択]など)を制御装置5へ入力してもよい。表示装置22は、算出された操作力や負荷、操作体3の速度、運動モード等のデータを表示する。これらのデータは制御装置5から出力され、表示装置22に入力される。操作者Hは表示されるデータを確認することで、現時点の運動状況を把握することができる。なお、入力装置16と表示装置22は同一の装置であってもよく、例えば、タッチパネル式のディスプレイやモニタ等であってもよい。
【0032】
(運動用機器の使用・運用)
[負荷数値入力]ボタンが選択された場合の、制御装置5によって実行される制御について以下に説明する。[負荷数値入力]ボタンが選択された場合、入力装置16の画面が切り換わる。
図5に示すように、例えば、ウェイトトレーニングを行う際に使用するおもりの重量に相当する数値を入力する画面が表示される。この入力値に基づいた負荷を発生するように電動モータ4が制御される。制御装置5では、始めに、入力値に基づき負荷制御部5cが電動モータ4に発生させるべき負荷を算出し、負荷指令を生成する。次に、負荷制御部5cは生成された負荷指令をドライバ21へ出力する。次に、ドライバ21は、負荷指令に基づき駆動電流を算出し、駆動電流を電動モータ4へ供給する。最後に、電動モータ4が駆動電流に基づいた負荷を発生する。制御装置5は、トルクセンサ15からの信号に基づいたトルクフィードバック制御、及び、エンコーダ14からの信号に基づいた制御を併せて実行する。
【0033】
なお、初期設定時又は使用前状態においては、操作体3は第1ストッパ部12と接することによって初期位置に位置決めされている。初期位置への位置決めは、エンコーダ14からの信号に基づいた位置フィードバック制御によって実行される。例えば、制御装置5が位置フィードバック制御によって操作体3を第1ストッパ部12側(第1方向)へ移動させつつ、トルクセンサ15からの信号を検出する。トルクセンサ15によって検出されたトルクが所定値より大きいと、初期位置への位置決めが完了する。このとき、操作体3は第1ストッパ部12に対してトルク(予め設定された所定の負荷、又は、負荷制御部5cによって算出された負荷)を付与する状態となる。なお、操作体3の初期位置への位置決めについては、後述する[運動モード選択]ボタンが選択された場合も同様である。
【0034】
操作者Hが入力値に基づいた負荷以上の操作力を操作体3に与えることで、操作体3は第1ストッパ部12から、つまり初期位置から離間する方向(第2方
向)に移動する。このように、操作体3を任意に設定する負荷で押す動作により、操作者Hは筋力トレーニングを行うことができる。
【0035】
操作者Hの操作力が負荷を上回り操作体3が移動するときは、制御装置5にトルクセンサ15からの信号がフィードバックされ、負荷制御部5cはその信号に基づき負荷指令を新たに生成する。これにより、操作者Hによる操作力に対抗する負荷を一定に保ったまま、操作者Hが操作体3を移動させることができる。操作体3が初期位置から移動しているときは、トルクセンサ15は操作者Hによって入力された入力値に基づいた負荷を検出することになる。操作体3が初期位置から移動し、且つ、操作体3の移動する速度が概ねゼロであるときは、操作者Hによる操作力と電動モータ4が発生する負荷とが釣り合い状態にあるため、トルクセンサ15が検出するトルクは操作者Hによる操作力に概ね等しくなる。
【0036】
操作体3が第2ストッパ部13まで、つまり終了位置まで移動した際は、操作体3を押して移動させるという運動に関する一連の制御が終了し、初期位置へ操作体3を移動させるように制御される。また、第2ストッパ部13の位置を起点とした、操作体3を引っ張って移動させるという運動が可能なように制御を行ってもよい。なお、第2ストッパ部13まで移動した際の制御については、後述する[運動モード選択]ボタンが選択された場合も同様である。
【0037】
操作者Hによって入力された入力値が大きい場合には、操作者Hの操作力よりも負荷の方が大きいため、操作体3はその場から移動しない。このとき、操作体3は初期位置から移動していないため、トルクセンサ15は入力値に基づいた負荷を検出することになる。
【0038】
[運動モード選択]ボタンが選択された場合の、制御装置5によって実行される制御について以下に説明する。[運動モード選択]ボタンが選択された場合、入力装置16の画面が切り換わる。
図6に示すように、例えば、[しっかり運動モード]、[適度に運動モード]、及び、[軽めに運動モード]の各ボタンが画面に表示される。
【0039】
[しっかり運動モード]を選択すると、例えば、操作者Hが発揮できる最大の操作力の70~100%の範囲の負荷を電動モータ4が発生するように制御される。[適度に運動モード]を選択すると、例えば、操作者Hが発揮できる最大の操作力の40~70%の範囲の負荷を電動モータ4が発生するように制御される。[軽めに運動モード]を選択すると、例えば、操作者Hが発揮できる最大の操作力の1~40%の範囲の負荷を電動モータ4が発生するように制御される。このように操作者Hの最大操作力と選択された運動モードに基づいて、電動モータ4が発生する負荷が制御される。なお、各運動モードにおける最大操作力に対する負荷の割合は、上述した割合に限るものではなく、運動モード毎に任意に設定できる。[負荷数値入力]ボタンが選択された場合と異なり、[運動モード選択]ボタンが選択された場合は、操作者Hが操作体3に付与する操作力に基づいて電動モータ4が発生する負荷が制御されることになる。なお、[運動モード選択]ボタンが選択された後に、自己の最大操作力の何%の負荷で運動するかを直接入力する選択肢を備えてもよい。
【0040】
各運動モードが選択されたときの制御フローをステップ毎に説明する。ステップS0では、前述の通り、操作体3が初期位置に移動するよう制御される。ステップS1では、電動モータ4が予め設定された初期負荷を発生するように制御される。例えば、初期負荷は小さな値が設定されている。
【0041】
ステップS2では、速度算出部5aによって、操作体3が移動する速度が算出される。操作体3に対して操作者Hが操作力を付与したとき、操作力が電動モータ4が発生する負荷を上回った場合は正の速度で移動するものと定義し、操作力が電動モータ4が発生する負荷を下回った場合は負の速度で移動するものと定義する。つまり、操作者Hが負荷に打ち勝った場合では操作体3は正の速度で移動することになり、操作者Hが負荷に打ち負けた場合では操作体3は負の速度で移動することになる。
【0042】
ステップS3では、速度算出部5aの算出結果に基づいて電動モータ4が発生すべき負荷を負荷制御部5cが制御する。具体的には、操作体3が移動する速度が正の速度の場合は、電動モータ4が発生する負荷が現状値よりも大きくなるように予め定めた規則に基づいて負荷制御部5cが負荷指令を生成し、操作体3が移動する速度が負の速度の場合は、電動モータ4が発生する負荷が現状値よりも小さくなるように予め定めた規則に基づいて負荷制御部5cが負荷指令を生成する。つまり、操作体3が正の速度で移動している場合は負荷が大きくなるように制御されるため操作体3の速度がゼロに近付く又は負の速度になり、操作体3が負の速度で移動している場合は負荷が小さくなるように制御されるため操作体3の速度がゼロに近付く又は正の速度になる。
【0043】
ステップS4では、ステップS2~ステップS3における制御が所定の時間又は所定の回数繰り返され、操作者Hが発揮できる最大の操作力を検出する。具体的には、操作体3が移動する速度がゼロに近付くまで、換言すれば操作者Hによる操作力と電動モータ4の発生する負荷が釣り合うまで、電動モータ4の負荷が調整され、一時的に釣り合った状態で電動モータ4が発生している負荷を操作者Hが発揮できる最大の操作力(最大操作力)として検出される。なお、最大操作力は電動モータ4と操作体3との間に設けられたトルクセンサ15で検出してもよく、電動モータ4の電流値と電動モータ4の性能曲線とに基づいて算出してもよい。
【0044】
ステップS5では、ステップS4にて検出された最大操作力と選択された運動モードとに基づいて、電動モータ4が発生する負荷が制御される。つまり、操作者Hは現時点(運動用機器を使用する時点)での自己の最大操作力を基準とした負荷で運動することが可能なため、常に適切な負荷で運動することが可能となる。なお、操作体3が第2ストッパ部13の位置まで移動すると、一連の制御が終了するが、その後の制御は前述の通りである。
【0045】
また、[運動モード選択]ボタンが選択された場合に、操作力が入力されたときに操作体3が移動する速度に基づいて電動モータ4が発生する負荷が制御されてもよく、操作者Hの操作力と操作体3が移動する速度に基づいて電動モータ4が発生する負荷が制御されてもよい。この場合、[しっかり運動モード]を選択すると、操作体3が第1速度で移動するように電動モータ4が発生する負荷が制御される。[適度に運動モード]を選択すると、操作体3が第1速度よりも速い第2速度で移動するように電動モータ4が発生する負荷が制御される。[軽めに運動モード]を選択すると、操作体3が第2速度よりも速い第3速度で移動するように電動モータ4が発生する負荷が制御される。つまり、操作体3が移動する速度が所定の範囲内の速度になるように電動モータ4が発生する負荷を制御することにより、[しっかり運動モード]では大きな負荷で、[適度に運動モード]では適度な負荷で、[軽めに運動モード]では小さな負荷で、運動することができる。
【0046】
この場合の制御フローは、前述のフローの通り最大操作力に基づいた制御としてもよく、最大操作力を検出することなく操作体3が移動する速度のみに基づいて制御されてもよい。いずれにしても、操作体3が移動する速度が所定の範囲内に収まるように電動モータ4の負荷が制御されればよい。
【0047】
[個人識別データ入力]ボタンが選択された場合の、制御装置5によって実行される制御について以下に説明する。[個人識別データ入力]ボタンが選択されると、IDデータとパスワードを入力する画面が表示される。初めてIDデータを入力する際には、所定のアンケートへの回答及びパスワードの設定等を行うことになる。IDデータ及びパスワード(個人識別データ)の入力を行った後に運動用機器1を使用すると、個人識別データと運動用機器1を使用したときの使用データ(制御装置5によって算出された最大操作力、電動モータ4が発生する負荷、操作体3が移動する速度、選択した運動モード、の内の少なくとも一つ)とが関連付けられた個人履歴データが制御装置5によって作成される。
【0048】
制御装置5の個人履歴データ作成部5dによって作成された個人履歴データは、
図3に示すように、記憶装置23に記録される。記憶装置23は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。なお、制御装置5が記憶装置23を備える構成であってもよい。また、制御装置5の個人履歴データ作成部5dによって作成された個人履歴データは、
図7に示すように、操作者3が携帯するスマートフォンやスマートウォッチ等の端末装置17又は運動用機器1とネットワーク24によって接続された管理サーバ25に送信された後に、端末装置17又は管理サーバ25に記録されてもよい。なお、管理サーバ25はクラウドサーバであってもよい。つまり、操作者Hが運動用機器1を使ってどんなトレーニングをしたのかを示すデータが個人履歴データとして蓄積されていくことになる。これにより、操作者Hの持久力や筋力等を表す運動データの履歴が把握できるため、計画的に運動を行うことができる、又は、運動能力の向上を確認することができる。
【0049】
また、2回目以降に(初回時を除いて)個人識別データが入力された場合には、操作者Hがどのような負荷や運動モード等でトレーニングを行うべきかを制御装置5がレコメンドしてもよい。つまり、制御装置5は、入力装置16又は操作者Hが携帯する端末装置17によって個人識別データが入力された場合であって、その入力が2回目以降の場合、制御装置5、端末装置17、又は管理サーバ25によって記録された個人履歴データの最新データに基づいて、電動モータ4が発生する負荷を制御してもよい。個人履歴データの最新データとは前回の運動用機器1を使用したときの使用データに基づくデータである。したがって、最新データに基づく今回のトレーニングに関するレコメンドは、操作者Hにとって合理的なトレーニングを提案するものである。
【0050】
(トレーニングシステム)
図7に示すように、運動用機器1が操作者Hが携帯する端末装置17と近距離無線通信などの通信機能によって接続されている場合、又は、運動用機器1がネットワーク24によって管理サーバ25と接続されている場合は、管理サーバ25や端末装置17において個人履歴データが作成されてもよい。その場合は、制御装置5は、入力装置16、端末装置17、又は、識別手段18によって個人識別データが入力されると、運動用機器1を使用したときの使用データ(制御装置5によって算出された最大操作力、電動モータ4が発生する負荷、操作体3が移動する速度、選択した運動モード等)を端末装置17又は管理サーバ25に送信する。その際、制御装置5は個人識別データを端末装置17又は管理サーバ25に必要に応じて送信する。その後、端末装置17又は管理サーバ25が、個人識別データと運動用機器1の使用データとが関連付けられた個人履歴データを作成し、作成された個人履歴データを記録する。また、管理サーバ25が作成した個人履歴データを端末装置17に送信してもよい。
【0051】
このように、運動用機器1と管理サーバ25とを備えたトレーニングシステム26を構築することにより、フィットネスクラブ等で複数の運動用機器1を使用する場合に、クラブ会員の各個人履歴データを管理サーバ25で一括管理できる、又は、各クラブ会員の所有する端末装置17で個別管理できる。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態では、
図8及び
図9に示す通り、負荷発生装置27は電磁リリーフ弁28と液圧シリンダ29とを有している。それ以外の装置構成及び制御装置等は第1実施形態から特に変更はないので、変更点を中心に説明する。
【0053】
(装置構成)
図8及び
図9に示す通り、第2実施形態に係る運動用機器30は、ベース体31と、揺動可能又は往復移動可能に設けられた操作体32と、ベース体31と操作体32との間に設けられ、操作体32への所定方向の操作に対して反対方向の負荷を発生させる負荷発生装置27と、負荷発生装置27を制御する制御装置33と、を備える。
【0054】
操作体32は、ハンドル部34、ロッド部35及びシャフト部36を有し、ロッド部35の第1端にはシャフト部36が設けられ、第2端にはハンドル部34が設けられる。ベース体31の一部であるフレーム37の操作体支持部(軸受部)が操作体32のシャフト部36を回転可能に支持することで、操作体32はベース体31に対して搖動又は往復移動可能に設けられる。操作体32とフレーム37との接続箇所である操作体支持部(軸受部)は、フレーム37の側面に設けられてもよく、フレーム37の中央に設けられてもよい。操作体32とフレーム37の間には液圧シリンダ29が設けられる。液圧シリンダ29のロッド部39は操作体32のロッド部35とピンを介して接続され、液圧シリンダ29のシリンダ部40はフレーム37とピンを介して接続される。操作体32がベース体31に対して搖動又は往復移動するときに、液圧シリンダ29は伸長又は収縮することで操作体32の前後方向の動きに追従する。
【0055】
つまり、操作者がシート38に座る又は寝転んだ姿勢で操作体32を前後方向に移動させる運動を行うときは、液圧シリンダ29が伸縮し、液圧シリンダ29から作動液が排出される、又は、液圧シリンダ29に作動液が供給される。作動液の排出圧は後述する電磁リリーフ弁28によって圧力制御される。制御装置33が電磁リリーフ弁28のリリーフ圧、つまり、作動液の排出圧を制御することにより、液圧シリンダ29と電磁リリーフ弁28を有する負荷発生装置27が操作体32を移動させる際の負荷を発生することできる。
【0056】
第2実施形態では、特にストッパ部材を別途設ける必要はない。液圧シリンダ29がストロークする範囲内でのみ、操作体32が移動できるためである。液圧シリンダ29のロッド部39が最も伸長している位置が初期位置として設定され、液圧シリンダ29のロッド部39が最も収縮している位置が終了位置として設定される。操作者は初期位置に位置決めされた操作体32に操作力を付与することで運動を開始し、操作体32が終了位置に到達することで一連の運動が終了する。また、終了位置を起点とした、操作体32を引っ張って移動させるという運動が可能なように構成されてもよい。
【0057】
(負荷発生装置及び周辺装置)
図9に基づいて、電磁リリーフ弁28と液圧シリンダ29とを有する負荷発生装置27について説明する。
図8では、液圧シリンダ29のロッド部39は操作体32のロッド部35とピンによって連結され、液圧シリンダ29のシリンダ部40はフレーム37とピンによって連結されているが、
図9では、説明を簡略化するため、液圧シリンダ29のシリンダ部40は固定され、液圧シリンダ29のロッド部39がハンドル部41によって移動するものとする。つまり、操作体32の移動により、液圧シリンダ29が伸縮することを便宜的に表現している。
【0058】
液圧シリンダ29はシリンダ部40とロッド部39とピストン部42とを有する。更に、液圧シリンダ29は、シリンダ部40の内周面とピストン部42の第1面によって区画されたヘッド室43と、シリンダ部40の内周面とピストン部42の第2面によって区画されたロッド室44とを、その内部に有する。ピストン部42の第2面にはロッド部39が接続されている。
ヘッド室43の容積が最大でロッド室44の容積が最小のときを第1位置とし、ヘッド室43の容積が最小でロッド室44の容積が最大のときを第2位置とする。
【0059】
操作体32の動きに伴い、第1位置から第2位置に向かって液圧シリンダ29のピストン部42が移動するときは、ヘッド室43の容積は減少し、ロッド室44の容積は増加する。ヘッド室43の容積が減少することにより、ヘッド室43から作動液が排出される。排出された作動液は第1排出路45を経由してタンク46に導かれる。第1排出路45上には、ヘッド室43への作動液の逆流を防止する第1チェック弁47及び作動液の排出圧を制御する電磁リリーフ弁28が設けられる。なお、第1チェック弁47の下流に電磁リリーフ弁28が設けられる。ロッド室44の容積が増加することにより、タンク46から作動液が第1供給路48を経由して供給される。第1供給路48にはタンク46への作動液の逆流を防止する第2チェック弁49が設けられる。
【0060】
また、操作体32の動きに伴い、第2位置から第1位置に向かって液圧シリンダ29のピストン部42が移動するときは、ヘッド室43の容積は増加し、ロッド室44の容積は減少する。ロッド室44の容積が減少することにより、ロッド室44から作動液が排出される。排出された作動液は第2排出路50を経由してタンク46に導かれる。第2排出路50は第1排出路45と合流する。合流箇所は、電磁リリーフ弁28の上流であって、第1チェック弁47の下流に設けられる。第2排出路50上には、ロッド室44への作動液の逆流を防止する第3チェック弁51が設けられる。ヘッド室43の容積が増加することにより、タンク46から作動液が第2供給路52を経由して供給される。第2供給路52にはタンク46への作動液の逆流を防止する第4チェック弁53が設けられる。
【0061】
このように構成されることにより、操作体32を第1位置から第2位置に向かって移動させるとき、ヘッド室43から作動液がタンク46に排出されるとともに、タンク46からロッド室44に作動液が供給されることになる。また、操作体32を第2位置から第1位置に向かって移動させるとき、ロッド室44から作動液がタンク46に排出されるとともに、タンク46からヘッド室43に作動液が供給されることになる。
【0062】
液圧シリンダ29には第1センサ54であるストロークセンサ54が設けられ、ピストン部42やロッド部39の位置、つまり、操作体32の位置を検出できる。第1排出路45上には第2センサ55である圧力センサ55が設けられる。圧力センサ55は電磁リリーフ弁28の上流であって、第1チェック弁47及び第3チェック弁51の下流に設けられる。圧力センサ55はヘッド室43又はロッド室44から排出される作動液の液圧を検出できる。ストロークセンサ54及び圧力センサ55は制御装置33に電気的に接続されており、制御装置33は両センサから伝達される信号に基づいて電磁リリーフ弁28の設定リリーフ圧、つまり、作動液の排出圧を制御する。
【0063】
(制御装置)
制御装置33の速度算出部は、ストロークセンサ54によって検出された操作体32の位置(第1測定値)に基づいて、操作者によって操作される操作体32が移動する速度を算出する。操作体32が移動する速度が正の値であれば、操作者による操作力が負荷発生装置27が発生する負荷を上回る、つまり、操作者が操作体32を介して液圧シリンダ29に発生させる液圧が電磁リリーフ弁28の設定リリーフ圧を上回っている状態を表す。操作体32が移動する速度がゼロであれば、操作者による操作力が負荷発生装置27が発生する負荷を下回る、つまり、操作者が操作体32を介して液圧シリンダ29に発生させる液圧が電磁リリーフ弁28の設定リリーフ圧を下回っている状態を表す。
【0064】
制御装置33の操作力/負荷算出部は、圧力センサ55によって検出されたヘッド室43又はロッド室44の液圧(第2測定値)に基づいて、操作者が操作体32に付与する操作力、又は、電磁リリーフ弁28の現在リリーフ圧を算出する。操作体32が移動する速度が概ねゼロである場合は、操作者による操作力と負荷発生装置27が発生する負荷とがつり合い状態にあるため、検出されたヘッド室43又はロッド室44の液圧に基づいて操作力が算出される。操作体32が移動する速度が正である場合は、操作力と負荷発生装置27が発生する負荷とがつり合い状態にないため、検出されたヘッド室43又はロッド室44の液圧に基づいて電磁リリーフ弁28の現在リリーフ圧が算出される。
【0065】
制御装置33の負荷制御部は、速度算出部によって算出される操作体32の速度、又は、操作力/負荷算出部によって算出される操作力若しくは現在リリーフ圧等に基づいて、負荷指令を生成する。負荷制御部は生成された負荷指令を電磁リリーフ弁28に伝達する。電磁リリーフ弁28は伝達された負荷指令に基づいて設定リリーフ圧が設定される。また、ストロークセンサ54や圧力センサ55からの信号が制御装置33に伝達されることで、負荷制御部は新たな負荷指令を生成し、操作者による操作力に対抗する負荷を適切に制御するように機能する。
【0066】
(運動用機器の使用・運用)
[負荷数値入力]、[運動モード選択]、及び、[個人識別データ入力]ボタンが選択された場合の、制御装置33によって実行される制御については、第1実施形態にて説明した内容に準ずるため、説明を省略する。
【0067】
なお、第2実施形態の負荷発生装置27は電磁リリーフ弁28と液圧シリンダ29とを有する構成であるため、第1実施形態の負荷発生装置4である電動モータ4とは異なり、負荷発生装置27によって操作体32を移動させることはできない。したがって、この点に関する制御が第1実施形態とは異なる。
【0068】
例としては、操作体32の初期位置への位置決めは操作者が自ら行う必要がある。また、最大操作力を算出する際に、操作体32の移動する速度を調整するために負荷発生装置27の発生する負荷を制御するが、操作体32の速度が負の速度になるようには調整できない。したがって、この場合は操作体32の速度がゼロに近付くように、負荷発生装置27の負荷を制御することになる。
【0069】
(第2実施形態の変形例)
(装置構成)
図10及び
図11は、第2実施形態の運動用機器の変形例を示す。同一の構成要素には同一の符号を付し、主に
図8との変更点を説明する。
【0070】
図10の形態では、ベース体31は、フレーム37、シート38、支柱56、及び、脚を有し、フレーム37に支柱56が設けられる。支柱56はフレーム37の側面又は上面から上方に延びるように設けられる。支柱56の操作体支持部(軸受部)が操作体32のシャフト部36を回転可能に支持することで、操作体32は支柱56、つまりベース体31に対して搖動又は往復移動可能に設けられる。操作体32と支柱56の間には液圧シリンダ29が設けられる。液圧シリンダ29の第1端は操作体32のロッド部39とピンを介して接続され、液圧シリンダ29の第2端は支柱56とピンを介して接続される。操作体32がベース体31に対して搖動又は往復移動するときに、液圧シリンダ29は伸長又は収縮することで操作体32の前後方向の動きに追従することができる。
【0071】
図11の形態では、
図10の形態とは異なる支柱57が使用される。詳細には、支柱57は柱部58と梁部59とを有し、柱部58がフレーム37の側面又は上面から上方に延びるように設けられ、柱部58の上部には水平方向に延びる梁部59が設けられる。液圧シリンダ29の第1端は梁部59に結合される。液圧シリンダ29は梁部59に対して任意の姿勢に保持可能に設けられる。つまり、操作者が操作体32を操作しやすいように、液圧シリンダ29の姿勢を調整可能であり、図示しない調整板とネジ等によって調整する。また、梁部59と液圧シリンダ29とは単純にピンによって結合されていてもよい。液圧シリンダ29の第2端には操作体32が設けられ、液圧シリンダ29のロッド部39と操作体32のロッド部35は共通化されている。操作体32が液圧シリンダ29を介して支柱57に支持されるため、操作体32がベース体31に対して往復移動するときに、液圧シリンダ29は伸長又は収縮することで操作体32の前後/上下方向の動きに追従することができる。
【0072】
(負荷発生装置及び周辺装置)
図12に基づいて、第2実施形態の負荷発生装置の変形例について説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、主に
図9との変更点を説明する。
【0073】
図12の液圧シリンダ29においては、ヘッド室43は液圧回路の一部の構成要素であって、ピストン部42が移動することによって、第1排出路45及び第1チェック弁47を通じてヘッド室43から作動液が排出される、又は、第1供給路60及び第2チェック弁61を通じてヘッド室43に作動液が供給される。一方で、ロッド室44は液圧回路から切り離されており、外部(大気)と連通している。そのため、ロッド室44の容積が増減してもロッド室44が抵抗力を生じることはなく、ロッド室44はピストン部42が移動することを妨げない。
【0074】
ヘッド室43にはコイルばね等の弾性部材62が設けられる。弾性部材62の両端部がそれぞれピストン部42及びシリンダ部40に固定されていてもよいが、両端部の一方のみがピストン部42又はシリンダ部40に固定されていてもよい。このように構成されることにより、操作者が操作体32を第1位置から第2位置に向けて移動させる途中で、又は、操作者が操作体32を第2位置まで移動させた際に、操作者が操作体32から手を放すと、弾性部材62によって操作体32が自動的に第1位置に戻される。なお、コイルばね等の弾性部材62を設ける代わりに、操作体32のハンドル部34やロッド部35を重くしてもよい。このように構成されることにより、操作者が操作体32を第1位置から第2位置に向けて移動させる途中で、又は、操作者が操作体32を第2位置まで移動させた際に、操作者が操作体32から手を放すと、操作体32の自重によって操作体32が自動的に第1位置に戻される。その際、タンク46からヘッド室43に第1供給路60を通じて作動液が供給される。ここで、ヘッド室43の容積が最大でロッド室44の容積が最小のときを第1位置とし、ヘッド室43の容積が最小でロッド室44の容積が最大のときを第2位置とする。
【0075】
(第1、第2実施形態の共通の変形例)
第1及び第2実施形態においては、運動用機器1、30、301、302が一つの操作体3、32と一つの負荷発生装置4、27、271を有する実施例について説明したが、運動用機器1、30、301、302は操作体3、32と負荷発生装置4、27、271をそれぞれ二つ有してもよい。このように構成されることで、片手毎に独立の運動を行うことができる。例えば、ボートを漕ぐときの動作を模擬した運動を行うことができるように運動用機器1、30、301、302を構成してもよい。従来のウェイト式等の運動用機器では一方向の負荷を調整することしかできなかったため、このような動作に関するトレーニングを実現できなかった。しかし、本発明の運動用機器1、30、301、302では、二方向の負荷を調整することができるため、様々な動作に関するトレーニングが可能になる。
【符号の説明】
【0076】
1 運動用機器
2 ベース体
3 操作体
4 電動モータ(負荷発生装置)
5 制御装置
5a 速度算出部
5b 操作力/負荷算出部
5c 負荷制御部
5d 個人履歴データ作成部
11 ストッパ部材
14 エンコーダ(第1センサ)
15 トルクセンサ(第2センサ)
16 入力装置
17 端末装置
18 識別装置
22 表示装置
23 記憶装置
24 ネットワーク
25 管理サーバ
26 トレーニングシステム
27 負荷発生装置
28 電磁リリーフ弁
29 液圧シリンダ
30 運動用機器
31 ベース体
32 操作体
33 制御装置
54 ストロークセンサ(第1センサ)
55 圧力センサ(第2センサ)
271 負荷発生装置
301、302 運動用機器
H 操作者