(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】電力供給システムおよび電力供給方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20250123BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
(21)【出願番号】P 2021014812
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】菅野 純弥
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 聡
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-010559(JP,A)
【文献】特開2003-250230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統に連係された分散形電源装置を含む需要家設備に電力供給経路を介して電力を供給する移動電源車と、
逆潮流防止装置と、を備え、
前記逆潮流防止装置は、
前記電力供給経路において前記
需要家設備と並列に接続されたスイッチと、
前記スイッチに直列に接続された逆潮流防止用の負荷と、
前記電力供給経路において
前記移動電源車側から
前記需要家設備側に流れる電流を監視し、当該電流が第1の閾値より大きい場合に前記スイッチをオフし、前記電流が前記第1の閾値より低い場合に、前記スイッチをオンする制御装置と、を備える
電力供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の
電力供給システムにおいて、
前記制御装置は、前記スイッチをオンしてから前記電流が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値を超えている状態が所定時間継続した場合に、前記スイッチをオフする
電力供給システム。
【請求項3】
請求項2に記載の
電力供給システムにおいて、
前記制御装置は、前記電流が前記第2の閾値より低くなったとき、検出信号を出力する
電力供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の
電力供給システムにおいて、
前記移動電源車は、前記需要家設備に電力を供給しているときに前記検出信号が前記制御装置から出力された場合に、前記分散形電源装置の単独運転を停止させる
電力供給システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電力供給システムにおいて、
前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧を上昇させて、前記分散形電源装置の前記単独運転を停止させる
電力供給システム。
【請求項6】
請求項4に記載の電力供給システムにおいて、
前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧の周波数を変動させて、前記分散形電源装置の前記単独運転を停止させる
電力供給システム。
【請求項7】
移動電源車と、配電系統に連係された分散形電源装置を含む需要家設備と前記移動電源車とを接続する電力供給経路に前記需要家設備と並列に接続可能な逆潮流防止用の負荷と、前記負荷の前記電力供給経路への接続を制御する制御装置とを備えた電力供給システムによる前記需要家設備への電力供給方法であって、
前記移動電源車が前記電力供給経路に電力を供給する第1ステップと、
前記制御装置が前記電力供給経路において前記移動電源車側から前記需要家設備側に流れる電流を監視する第2ステップと、
前記電流が第1の閾値より高い場合に、前記制御装置が、前記電力供給経路から前記負荷を解列させる第3ステップと、
前記電流が前記第1の閾値より低くなった場合に、前記制御装置が前記負荷を前記電力供給経路に接続させる第4ステップと、を含む
電力供給方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電力供給方法において、
前記第4ステップの後に、前記電流が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値を超えている状態が所定時間継続した場合に、前記制御装置が、前記電力供給経路から前記負荷を解列させる第5ステップを更に含む
電力供給方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電力供給方法において、
前記第4ステップの後に前記電流が前記第2の閾値より低くなったとき、前記制御装置が検出信号を出力する第6ステップと、
前記検出信号が前記制御装置から出力された場合に、前記移動電源車が前記分散形電源装置の単独運転を停止させる第7ステップと、を更に含む
電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆潮流防止装置、電力供給システム、および電力供給方法に関し、例えば、移動電源車から、分散形電源装置を備えた需要家への電力供給時の電力の逆潮流の発生を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、災害による大規模停電時や配電線の工事および点検時等において、ビルや一般家庭の需要家に電力を供給する臨時電源として、電源車(移動電源車)が知られている。移動電源車とは、トラックやトレーラなどの車両に原動機、発電機、および付帯設備を搭載した移動式の自家発電装置である。
【0003】
近年、移動電源車の接続先の需要家において、太陽光発電装置(Photovoltaic Apparatus)等の分散形電源装置が設置され、配電系統に連系されている場合がある。このような需要家に移動電源車から電力を供給する際に、その需要家側の需要を超えた電力が分散形電源装置から発生した場合、分散形電源装置側から移動電源車側に電力の逆潮流が発生する。
【0004】
電力の逆潮流が発生した場合、移動電源車の発電機が停止してしまう。移動電源車の発電機が一旦停止すると、発電機を再度復帰させるまでに時間を要し、発電機が復帰するまでの間に停電が発生してしまうため、移動電源車を使用する場合には、発電機を停止させないようにすることが非常に重要である。
【0005】
従来、移動電源車への電力の逆潮流を防止するための技術として、移動電源車の発電機に抵抗を接続する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、抵抗によって電力が常に消費されているので、移動電源車への逆潮流の発生が防止され、移動電源車の発電機が停止することを回避することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、移動電源車の発電機に抵抗を常時接続した場合、抵抗において常時、電力が消費されるため、発電機を駆動するための原動機の燃料が無駄に消費され、移動電源車の運転時間が短くなり、移動電源車の効率の低下を招く。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、移動電源車の発電機が停止することを防止しつつ、抵抗における電力消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係る逆潮流防止装置は、電力の送電側の装置と電力の受電側の装置とを接続する電力供給経路において前記受電側の装置と並列に接続されたスイッチと、前記スイッチに直列に接続された逆潮流防止用の負荷と、前記電力供給経路において前記送電側から前記受電側に流れる電流を監視し、当該電流が第1の閾値より大きい場合に前記スイッチをオフし、前記電流が前記第1の閾値より低い場合に、前記スイッチをオンする制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る逆潮流防止装置によれば、移動電源車の発電機が停止することを防止しつつ、抵抗におけるにおける電力消費を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電力供給システムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電力供給システムにおける移動電源車と逆潮流防止装置の具体的な構成を示す図である。
【
図3A】本発明の実施の形態に係る逆潮流防止装置の動作を説明するための図である。
【
図3B】本発明の実施の形態に係る逆潮流防止装置の動作を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電力供給システムによる電力供給に係る動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る逆潮流防止装置(3)は、電力の送電側の装置と電力の受電側の装置とを接続する電力供給経路(4)において前記受電側の装置と並列に接続されたスイッチ(31)と、前記スイッチに直列に接続された逆潮流防止用の負荷(32)と、前記電力供給経路において前記送電側から前記受電側に流れる電流(i)を監視し、当該電流が第1の閾値(ith1)より大きい場合に前記スイッチをオフし、前記電流が前記第1の閾値より低い場合に、前記スイッチをオンする制御装置(30)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載の逆潮流防止装置において、前記制御装置は、前記スイッチをオンしてから前記電流が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値(ith2)を超えている状態が所定時間(T1)継続した場合に、前記スイッチをオフしてもよい。
【0015】
〔3〕上記〔2〕に記載の逆潮流防止装置において、前記制御装置は、前記電流が前記第2の閾値より低くなったとき、検出信号(St)を出力してもよい。
【0016】
〔4〕本発明の代表的な実施の形態に係る電力供給システム(1)は、上記〔3〕に記載の逆潮流防止装置と、前記受電側の装置としての需要家設備(5_1~5_n)に前記電力供給経路を介して電力を供給する前記送電側の装置としての移動電源車(2)と、を備え、前記需要家設備は、配電系統に連係された分散形電源装置(50)を含み、前記移動電源車は、前記需要家設備に電力を供給しているときに前記検出信号が前記制御装置から出力された場合に、前記分散形電源装置の単独運転を停止させることを特徴とする。
【0017】
〔5〕上記〔4〕に記載の電力供給システムにおいて、前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧を上昇させて、前記分散形電源装置の前記単独運転を停止させてもよい。
【0018】
〔6〕上記〔4〕に記載の電力供給システムにおいて、前記移動電源車は、前記電力供給経路に供給する電圧の周波数を変動させて、前記分散形電源装置の前記単独運転を停止させてもよい。
【0019】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、移動電源車(2)と、配電系統に連係された分散形電源装置(50)を含む需要家設備(5_1~5_n)と前記移動電源車とを接続する電力供給経路(4)に前記需要家設備と並列に接続可能な逆潮流防止用の負荷(32)と、前記負荷の前記電力供給経路への接続を制御する制御装置(30)とを備えた電力供給システム(1)による前記需要家設備への電力供給方法である。本電力供給方法は、前記移動電源車が前記電力供給経路に電力を供給する第1ステップ(S2)と、前記制御装置が前記電力供給経路において前記移動電源車側から前記需要家設備側に流れる電流(i)を監視する第2ステップ(S3)と、前記電流が第1の閾値より高い場合に、前記制御装置が、前記電力供給経路から前記負荷を解列させる第3ステップ(S5)と、前記電流が前記第1の閾値より低くなった場合に、前記制御装置が前記負荷を前記電力供給経路に接続させる第4ステップ(S6)と、を含むことを特徴とする。
【0020】
〔8〕上記〔7〕に記載の電力供給方法は、前記第4ステップの後に、前記電流が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値(ith2)を超えている状態が所定時間(T1)継続した場合に、前記制御装置が、前記電力供給経路から前記負荷を解列させる第5ステップ(S8,S9)を更に含んでもよい。
【0021】
〔9〕上記〔8〕に記載の電力供給方法は、前記第4ステップの後に前記電流が前記第2の閾値より低くなったとき、前記制御装置が検出信号(St)を出力する第6ステップ(S10)と、前記検出信号が前記制御装置から出力された場合に、前記移動電源車が前記分散形電源装置の単独運転を停止させる第7ステップ(S11)と、を更に含んでもよい。
【0022】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係る電力供給システムの構成を示す図である。
【0024】
図1に示す電力供給システム1は、自家発電した電力を外部に供給する移動可能なシステムであって、ビルや一般家庭等の需要家に電力を供給する。
図1に示すように、電力供給システム1は、例えば、移動電源車2と逆潮流防止装置3とを備えている。
【0025】
移動電源車2は、トラックやトレーラなどの車両に原動機、発電機、および付帯設備を搭載した移動式の自家発電装置である。移動電源車2は、自ら発電した電力を、電力供給経路4を介して、需要家に供給する。電力供給経路4は、電力の送電側の装置と電力の受電側の装置とを接続して電力伝送を実現するためのものであり、例えば、配電線や変圧器等によって実現されている。
【0026】
図1では、需要家が一般家庭である場合を例示しているが、これに限られず、需要家は、ビルや工場等であってもよい。
【0027】
受電側の装置としての需要家設備5は、例えば、需要家負荷51と、需要家負荷51に電力を供給する分散形電源装置50とを含む。需要家負荷51は、需要家の施設内に設置された電気機器等の電力によって動作可能な機器である。
【0028】
分散形電源装置50は、自家発電装置であって、自ら発電した電力を需要家負荷51に供給する。分散形電源装置50は、発電した電力を蓄電してもよい。分散形電源装置50は、配電系統に連係されており、分散形電源装置50において発電または蓄電した電力を配電系統に供給することが可能となっている。分散形電源装置50としては、太陽光発電装置や家庭用燃料電池等を例示することができる。
【0029】
本実施の形態では、一例として、分散形電源装置50が太陽光発電装置であるものとして説明する。例えば、分散形電源装置50としての太陽光発電装置は、太陽光発電用電力変換器(PCS)や高周波除去フィルタを介して配線系統に接続される。また、需要家負荷51は、変圧器を介して配線系統に接続されており、配電系統の3相電力が家庭の単相に降圧されて需要家負荷51に供給される。
【0030】
また、本実施の形態では、移動電源車2が、電力供給経路4を介して複数の需要家設備5_1~5_n(nは2以上の整数)に電力を供給するものとして説明するが、移動電源車2から電力供給を受ける需要家設備5は1つであってもよい。また、移動電源車2から電力供給を受ける需要家設備5_1~5_nの少なくとも一つが分散形電源装置50を備えていればよく、全ての需要家設備5_1~5_nが分散形電源装置50を備えていなくてもよい。
【0031】
分散形電源装置50は、単独運転防止機能を備えている。
【0032】
ここで、単独運転とは、事故等によって配電系統が電力会社の発電設備から切り離されている状態において、太陽光発電装置等の分散形電源装置が、単独で、配電系統に電力を供給する動作を言う。
【0033】
一般に、配電系統が電力会社の発電設備から切り離されたとき、分散形電源装置が単独運転状態となると、分散形電源装置の出力と負荷のバランスが崩れ、配電系統の電圧および周波数が変動し、配電系統による電力の安定供給に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、分散形電源装置50は、配電線を含む電力供給経路4の電圧および周波数を監視し、電圧および周波数の少なくとも一方が変動した場合に、配電系統(電力供給経路4)への電力の出力を停止する。例えば、分散形電源装置50は、電力供給経路4の電圧および周波数の少なくとも一方の変動量が予め設定された許容変動量を超えた場合に、配電系統(電力供給経路4)への電力の出力を停止する。
【0034】
なお、本実施の形態では、移動電源車2が、電力供給経路4を介して複数の需要家設備5_1~5_n(nは2以上の整数)に電力を供給するものとして説明するが、移動電源車2から電力供給を受ける需要家設備5は1つであってもよい。また、移動電源車2から電力供給を受ける需要家設備5_1~5_nの少なくとも一つが分散形電源装置50を備えていればよく、全ての需要家設備5_1~5_nが分散形電源装置50を備えていなくてもよい。
【0035】
逆潮流防止装置3は、移動電源車2から需要家設備5_1~5_nに電力を供給する際に、分散形電源装置50によって発電または蓄電した電力が需要家設備5_1~5_n側から移動電源車2側に供給されること(逆潮流)を防止するための装置である。逆潮流防止装置3の詳細については後述する。
【0036】
電力供給システム1は、例えば、災害による大規模停電時や配電線の工事および点検時のように、三相3線式で交流電力を供給する送電設備(例えば、変電所の変圧器や柱上変圧器等)と電力供給経路4(配電線等)との接続が遮断された状態において、移動電源車2によって発電した電力を、電力供給経路4を介して各需要家設備5_1~5_nに供給する。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態に係る電力供給システム1における移動電源車2と逆潮流防止装置3の具体的な構成を示す図である。
【0038】
図2に示すように、移動電源車2は、例えば、発電制御装置20、原動機21、発電機22、遮断器23を有している。原動機21によって発生した動力(機械的エネルギー)が発電機22に伝えられ、発電機22がその動力によって発電する。発電機22によって発電された電力は、遮断器23を介して電力供給経路4に出力される。
【0039】
遮断器23は、発電機22と電力供給経路4との間の接続と遮断を切り替える装置である。発電制御装置20は、移動電源車2の各装置を制御して、移動電源車2の動作を統括的に制御する装置である。
【0040】
発電制御装置20は、例えば、各種のメモリおよび当該メモリに記憶されたプログラムにしたがって各種演算を実行するプロセッサを含むプログラム処理装置と、プログラム処理装置によって制御される各種周辺回路と、ユーザからの操作を入力する操作パネル等のユーザインタフェースを含んで構成されている。
【0041】
発電制御装置20は、例えば、ユーザインタフェースを介して入力された指示に応じて、原動機21および発電機22を制御して発電を実行させるとともに、遮断器23の開閉を制御して、移動電源車2からの電力の出力と停止を切り替える。
【0042】
また、詳細は後述するが、発電制御装置20は、逆潮流防止装置3から検出信号Stが出力された場合に、発電機22を制御して各需要家設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50の単独運転を停止させる。
【0043】
図2に示すように、逆潮流防止装置3は、制御装置30、スイッチ31、および負荷32を有している。
【0044】
スイッチ31は、電力の送電側の装置(移動電源車2)と電力の受電側の装置(需要家設備5_1~5_n)とを接続する電力供給経路4への負荷32の接続と遮断(開放)を切り替える装置である。スイッチ31は、例えば、リレーである。スイッチ31は、電力供給経路4において、受電側の装置である需要家設備5_1~5_nと並列に接続されている。
【0045】
負荷32は、電力供給経路4に接続可能な逆潮流防止用の装置である。負荷32は、スイッチ31に直列に接続されている。負荷32は、スイッチ31がオンしているとき、電力供給経路4から供給された電力を消費することにより、逆潮流が発生することを防止する。
【0046】
負荷32は、例えば、抵抗33と、電力供給経路4から抵抗33に電力を供給するPCS(Power Conditioning Subsystem)34とを含む。PCS34は、例えば、スイッチ31がオンしているとき、電力供給経路4からの交流電圧を直流電圧に変換して抵抗33に供給する。
【0047】
制御装置30は、電力供給経路4において送電側から受電側に流れる電流を監視するとともに、スイッチ31およびPCS34を制御する。制御装置30は、例えば、各種のメモリおよび当該メモリに記憶されたプログラムにしたがって各種演算を実行するプロセッサを含むプログラム処理装置と、電流を検出する電流センサと、上記プログラム処理装置によって制御される各種の周辺回路とを含んで構成されている。
【0048】
制御装置30は、電力供給経路4において送電側の移動電源車2から受電側の需要家設備5_1~5_nに向かって流れる電流iを監視し、電流iに応じて逆潮流の発生を防止する。
【0049】
図3Aおよび
図3Bは、逆潮流防止装置3の動作を説明するための図である。
【0050】
図3Aおよび
図3Bにおいて、横軸は時間を表し、縦軸は電流を表している。また、参照符号301,301aは、電力供給経路4において送電側の移動電源車2から受電側の需要家設備5_1~5_nに向かって流れる電流iの時間的な変化を表している。
【0051】
制御装置30は、電力供給経路4において送電側の移動電源車2から受電側の需要家設備5_1~5_nに向かって流れる電流iが第1の閾値ith1より大きい場合に、スイッチ31をオフする。
例えば、
図3Aにおいて、時刻t0から時刻t1までの期間では電流iが第1の閾値ith1よりも大きい。したがって、制御装置30は、スイッチ31をオフして、負荷32(抵抗33)を電力供給経路4から解列させる。このとき、制御装置30は、PCS34の動作を停止させてもよい。
【0052】
ここで、第1の閾値ith1は、例えば、予め制御装置30内のメモリに記憶されていてもよいし、電力供給システム1の起動後に、ユーザが所望の値を設定してもよい。
【0053】
一方、電流iが第1の閾値ith1より低い場合には、制御装置30は、スイッチ31をオンする。例えば、
図3Aにおいて、時刻t1において電流iが第1の閾値ith1となったとき、制御装置30は、スイッチ31をオンして、電力供給経路4に負荷32を接続する。このとき、制御装置30は、PCS34を動作させて、電力供給経路4からの交流電圧を直流電圧に変換して抵抗33に供給する。これにより、移動電源車2から、需要家設備5_1~5_nのみならず、負荷32にも電力が供給されるので、電流iが上昇する。
【0054】
スイッチをオンしてから電流iが第1の閾値ith1よりも低い第2の閾値ith2(<ith1)を超えている状態が所定時間T1継続した場合に、制御装置30は、スイッチ31をオフする。例えば、
図3Aに示すように、時刻t1においてスイッチ31がオンした後に、電流iが第1の閾値ith1を超える。その後、電流iが第2の閾値ith2を超えている状態が所定時間T1経過した時刻t2において、制御装置30がスイッチ31をオフする。
【0055】
すなわち、スイッチ31をオンした後に電流iが減少しない場合には、需要家設備5_1~5_n側において、分散形電源装置50による発電電力よりも需要家負荷51の消費電力の方が大きいため、逆潮流が発生しないと考えることができる。そこで、この場合には、上述したように、スイッチ31をオフさせて、移動電源車2から抵抗33への電力供給を停止させる。
【0056】
また、制御装置30は、電流iが第2の閾値ith2より低くなったとき、検出信号Stを出力する。例えば、
図3Bに示すように、時刻t1においてスイッチ31がオンして負荷32への電力供給が開始されたにもかかわらず、電流iが更に低下し、第2の閾値ith2より低くなった時刻t2において、制御装置30は、検出信号Stを出力する。
【0057】
制御装置30から出力された検出信号Stは、移動電源車2に入力される。移動電源車2において、発電制御装置20は、需要家設備5_1~5_nに電力を供給しているときに、逆潮流防止装置3の制御装置30から検出信号Stが出力された場合に、分散形電源装置50の単独運転を停止させる。
【0058】
上述したように、各需要家設備5_1~5_nに設置されている分散形電源装置50は、単独運転防止機能を備えている。具体的には、分散形電源装置50は、配電系統(電力供給経路4)の電圧および周波数を監視し、電圧および周波数の少なくとも一方が変動した場合に、配電系統(電力供給経路4)への電力の出力を停止する。
【0059】
そこで、移動電源車2の発電制御装置20は、発電機22を制御して、発電機22の出力電圧の大きさ、および周波数の少なくとも一方を変動させて、分散形電源装置50の単独運転を停止させる。例えば、発電制御装置20は、制御装置30から検出信号Stが出力されたとき、発電機22から電力供給経路4に供給する電圧を上昇させる。これにより、分散形電源装置50は、電力供給経路4の電圧の変動量が予め設定された許容変動量を超えたと判定し、単独運転を停止する。また、発電制御装置20は、制御装置30から検出信号Stが出力されたとき、発電機22から電力供給経路4に供給する電圧の周波数を変動させる(周波数を上げる、または下げる)。これにより、分散形電源装置50は、電力供給経路4の周波数の変動量が予め設定された許容変動量を超えたと判定し、単独運転を停止する。
【0060】
各需要家設備5_1~5_nの分散形電源装置50による単独運転が停止されることにより、逆潮流の発生を防止することができる。
【0061】
次に、電力供給システム1による動作の流れについて説明する。
図4は、電力供給システム1による電力供給に係る動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【0062】
例えば、ユーザによる入力操作に応じて、移動電源車2から電力供給経路4に電力を供給するとき、逆潮流防止装置3の制御装置30がスイッチ31をオフする(ステップS1)。これにより、逆潮流防止装置3の負荷32(抵抗33)が電力供給経路4から解列される。
【0063】
次に、移動電源車2が電力供給を開始する(ステップS2)。具体的には、移動電源車2において、発電制御装置20が、原動機21および発電機22を起動させるとともに、遮断器23をオンさせて、電力供給経路4への電力供給を開始する。これにより、移動電源車2から電力供給経路4を介して各需要家設備5_1~5_nに電力が供給される。
【0064】
移動電源車2が電力を供給しているとき、逆潮流防止装置3の制御装置30が、移動電源車2側から各需要家設備5_1~5_n側に流れる電流iを監視する(ステップS3)。
【0065】
逆潮流防止装置3の制御装置30は、電流iを監視しているとき、電流iが第1の閾値ith1以下であるか否かを判定する(ステップS4)。電流iが第1の閾値ith1よりも大きいとき(ステップS4:NO)、制御装置30は、引き続き、スイッチ31をオフさせる(ステップS5)。
【0066】
一方、電流iが第1の閾値ith1以下である場合(ステップS4:YES)には、制御装置30は、スイッチ31をオンさせる(ステップS6)。これにより、逆潮流防止装置3の負荷32がスイッチ31を介して電力供給経路4に接続されるので、移動電源車2の電力が負荷32にも供給され、電流iが増加する。
【0067】
次に、逆潮流防止装置3の制御装置30は、電流iが第2の閾値ith2(<ith1)以下であるか否かを判定する(ステップS7)。電流iが第2の閾値ith2よりも大きい場合には、ステップS6でスイッチ31をオンしてから所定時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS8)。所定時間T1が経過していない場合には(ステップS8:NO)、制御装置30は、ステップS7に戻る。
【0068】
一方、所定時間T1が経過した場合には(ステップS8:YES)、逆潮流が発生しないと考えられるので、制御装置30は、スイッチ31をオフする(ステップS9)。これにより、再び、逆潮流防止装置3の負荷32(抵抗33)が電力供給経路4から解列される。
【0069】
一方、ステップS7において、電流iが第2の閾値ith2以下である場合には(ステップS7:YES)、逆潮流防止装置3の制御装置30が検出信号Stを出力する(ステップS10)。
【0070】
移動電源車2の発電制御装置20は、逆潮流防止装置3から出力された検出信号Stに応じて、各需要家設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50の単独運転を停止させる(ステップS11)。具体的には、上述したように、移動電源車2において、発電制御装置20は、分散形電源装置50に予め設定されている単独運転停止機能に係る電圧および周波数の少なくとも一方の許容変動量を超えるように、発電機22の出力電圧の大きさおよび周波数の少なくも一方を変動させる。
【0071】
これにより、各需要家設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50の単独運転が停止され、分散形電源装置50から電力供給経路4への電力供給が停止する(ステップS12)。
【0072】
ステップS5、ステップS9、またはステップS12の後、移動電源車2において、発電制御装置20は、移動電源車2による電力供給の停止が指示されたか否かを判定する(ステップS13)。例えば、ユーザによる入力操作によって電力供給の停止が指示された場合には、発電制御装置20は、遮断器23をオフさせるとともに、原動機21および発電機22の動作を停止させて、電力供給経路4への電力供給を停止する。
【0073】
一方、移動電源車2による電力供給の停止が指示されていない場合には、発電制御装置20は、移動電源車2からの電力供給を継続する(ステップS2)。
【0074】
以上、本実施の形態に係る逆潮流防止装置3は、上述したように、電力供給経路4において受電側の装置(需要家設備5_1~5_n)と並列に接続されたスイッチ31と、スイッチ31に直列に接続された逆潮流防止用の負荷32と、制御装置30とを備えている。制御装置30は、上述したように、電力供給経路4において送電側から受電側に流れる電流iを監視し、電流iが第1の閾値ith1より大きい場合にスイッチ31をオフし、電流iが第1の閾値ith1より低い場合に、スイッチ31をオンする。
【0075】
これによれば、逆潮流防止装置3によって、電力供給経路4において送電側から受電側に流れる電流iが所定の大きさより低下した場合に、移動電源車2の発電機22に抵抗33が接続されるので、移動電源車2から需要家設備5_1~5_nに電力を供給しているときに需要家負荷51による消費電力が低下した場合であっても、逆潮流が発生することを防止することができる。また、抵抗33を常時接続する場合に比べて、抵抗33による電力消費を抑えることができる。すなわち、本実施の形態に係る逆潮流防止装置3によれば、逆潮流の発生に伴う移動電源車の発電機の停止を防止しつつ、抵抗における電力消費を抑えることが可能となる。
【0076】
また、逆潮流防止装置3において、上述したように、制御装置30は、スイッチ31をオンしてから電流iが第1の閾値ith1よりも低い第2の閾値ith2を超えている状態が所定時間T1継続した場合に、スイッチ31をオフする。
これによれば、電流iが第1の閾値ith1よりも低下した場合であっても、逆潮流が発生しない可能性が高い場合に、抵抗33を電力供給経路4から解列させるので、より確実に逆潮流を防止しつつ、抵抗33による電力消費を抑えることが可能となる。
【0077】
また、逆潮流防止装置3において、上述したように、制御装置30は、スイッチ31をオンしてから電流iが第2の閾値ith2より低くなったとき、検出信号Stを出力する。
これによれば、移動電源車2から需要家設備5_1~5_nに電力を供給しているときに逆潮流が発生する可能性が高いことを外部に通知することが可能となる。
【0078】
更に、本実施の形態に係る逆潮流防止装置3と、移動電源車2とを備えた電力供給システム1において、移動電源車2は、需要家設備5_1~5_2に電力を供給しているときに、逆潮流防止装置3の制御装置30から検出信号Stが出力された場合に、需要設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50の単独運転を停止させる。
これによれば、抵抗33を電力供給経路4に接続してもなお、逆潮流防止装置3の抵抗33の容量限界(定格の消費電力を超えること)によって逆潮流が発生するおそれがある場合には、分散形電源装置50からの電力供給を停止させるので、逆潮流が発生することを確実に防止することができる。
【0079】
また、電力供給システム1において、上述したように、移動電源車2は、逆潮流防止装置3の制御装置30から検出信号Stが出力された場合に、電力供給経路4に供給する電圧を上昇させる。これによれば、各需要家設備5_1~5_nにおける分散形電源装置50に対して特別な指示信号を送信することなく、分散形電源装置50の単独運転を容易に停止させることが可能となる。
【0080】
また、電力供給システム1において、上述したように、移動電源車2は、逆潮流防止装置3の制御装置30から検出信号Stが出力された場合に、電力供給経路4に供給する電圧の周波数を変動させる。これによれば、電力供給経路4に供給する電圧を上昇させる場合と同様に、分散形電源装置50の単独運転を容易に停止させることが可能となる。
【0081】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0082】
例えば、上記実施の形態において、負荷32として抵抗33を用いる場合を例示したが、これに限られず、電力を吸収することができるものであればよい。例えば、負荷32として二次電池(蓄電池)を用いてもよい。これによれば、二次電池に電力を蓄えることができるので、電力の無駄な消費を抑えることが可能となる。
【0083】
また、上記実施の形態において、電力の送電側の装置が移動電源車2である場合について説明したが、電力の送電側の装置は、需要家設備5_1~5_nに電力を供給可能な装置であればよく、移動電源車2に限定されない。
【0084】
また、逆潮流防止装置3の制御装置30は、負荷32に流れる電流を監視してもよい。これによれば、制御装置30は、負荷32に流れる電流と電流iとから、需要家設備5_1~5_nに流れる電流を算出することにより、需要家への電力供給状態をより正確に監視することが可能となる。
【0085】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1…電力供給システム、2…移動電源車、3…逆潮流防止装置、4…電力供給経路、5_1~5_n…需要家設備、20…発電制御装置、21…原動機、22…発電機、23…遮断器、30…制御装置、31…スイッチ、32…負荷、33…抵抗、34…PCS、50…分散形電源装置、51…需要家負荷、St…検出信号。