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  • 特許-両面離型フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】両面離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
B32B27/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020148314
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042749
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 公典
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/161422(WO,A1)
【文献】特開2002-331614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型層Aとポリエステル系フィルムと離型層Bとをこの順序で含み、
下記式(1)~(6)を満足すること特徴とする異方性導電膜形成用の両面離型フィルム。
RaA<0.1・・・(1)
RpA<2.0・・・(2)
RaB≧0.85×RaA・・・(3)
RpB≧0.85×RpA・・・(4)
1.5≦HA/HB≦100・・・(5)
0.15≦HA+HB≦7・・・(6)
但し、式(1)~(6)中、RaAは離型層Aの表面の中心面平均粗さ(μm)、RaBは離型層Bの表面の中心面平均粗さ(μm)、RpAは283μm×213μmの領域における離型層Aの表面の中心面最大突起高さ(μm)、RpBは283μm×213μmの領域における離型層Bの表面の中心面最大突起高さ(μm)、HAは離型層Aの表面の剥離力(N/25mm幅)、HBは離型層Bの表面の剥離力(N/25mm幅)をそれぞれ表す。
【請求項2】
前記離型層A及び前記離型層Bが付加反応型のシリコーン樹脂の硬化物を含む請求項1に記載の両面離型フィルム。
【請求項3】
前記離型層A及び前記離型層Bの少なくとも1層と前記ポリエステル系フィルムとの間に帯電防止層を含み、その帯電防止層を設けた側の離型層の表面の表面固有抵抗値が5×10~5×1012Ω/□である請求項1又は2に記載の両面離型フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル系フィルムは、平均粒径が0.1~2.0μmの無機粒子を含有する請求項1~3いずれか1項に記載の両面離型フィルム。
【請求項5】
前記無機粒子の含有量は、0.05~25質量%である請求項4に記載の両面離型フィルム。
【請求項6】
前記帯電防止層が、導電性ポリマー、酸化金属微粒子、及び第4級アンモニウム塩を付加した重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項3に記載の両面離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムの両面に離型層を有する両面離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
両面粘着テープの成形、セラミックコンデンサのグリーンシート成形、異方性導電膜の成形、回路基板用の絶縁樹脂シートの成形などの製造工程では、各々の原料を含む樹脂膜(以下、単に「樹脂膜」という場合がある)を離型性のあるフィルムの表面に成形し、巻き取りを行う工程があり、両面離型フィルムは製造工程の基材として広く用いられている。樹脂膜から得られる機能性シートは何れも、薄膜化へと技術革新が進みつつあり、離型フィルムも薄膜化された機能性シートの製造工程に適する改善が必要になってきている。
【0003】
例えば、2つの回路素子を接着すると共にその間の端子を電気的に接続するための材料として、接着性を有する異方性導電膜が広く用いられている。この異方性導電膜は、絶縁性接着剤中に導電性粒子を分散させたものからなり、接続すべき素子の端子間に異方性導電膜を挟み込み、熱圧着することにより、素子同士の接着と端子間の電気的接続とが同時に行われるようにしたものである。
【0004】
この異方性導電膜の製造方法は、通常、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂と硬化剤等を混ぜ合わせた絶縁接着剤中に導電性粒子を混合・分散した接着剤ワニスを、キャリアフィルム(セパレータ)上に塗布・乾燥して製造される。ワニスを塗布・乾燥した後は、キャリアフィルム毎巻き取られ、適当な幅にカットされて使用される。接着性を有する異方性導電膜は、常態では粘着性を有するため、キャリアフィルムには両面に離型層を設ける必要がある。更に、キャリアフィルムの巻内面側と巻外面側で、異方性導電膜を剥離するときの剥離強度に差を付ける必要がある。キャリアフィルムの両面とも同じ離型処理がされていると、異方性導電膜が巻き出すロールの方に持っていかれたり、キャリアフィルムと異方性導電膜との間に隙間が生じたりして、スムーズに引き出せない問題が発生するためである。
【0005】
一方、異方性導電膜の薄層化に伴い、ポリエステルフィルムの表面の凹凸が大き過ぎると、異方性導電膜が均一に成形されず導電不良といった不具合を生じる。このため、特許文献1には、両表面の剥離力が所定の範囲であり、両表面の離型層の中心線平均粗さRaを0.1~1.0μmとした異方性導電膜製造用の離型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4495880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、画像表示装置の薄型化等により、異方性導電膜等の樹脂膜の更なる薄層化が要求される傾向がある。このため、本発明者らの検討によると、より薄層化した樹脂膜を形成する場合、特許文献1に記載された中心線平均粗さRaの範囲の離型フィルムでは、全体的な凹凸が大き過ぎて、周辺より高い突起が生じ易くなり、高い突起を起点とした塗料のハジキによる樹脂膜の表面状態不良が生じることが判明した。また、より薄層化した樹脂膜を形成する場合、両表面の剥離力の制御を十分に行なわないと、ロールから巻き出す際に背面離型層が樹脂膜から剥離するときの剥離状態が悪化し易いことが判明した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、より薄層化した樹脂膜を形成する場合でも、得られる樹脂膜の表面状態と、巻き出す際の樹脂膜の剥離状態とを良好にすることができる両面離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリエステル系フィルムの全体的な凹凸の指標となる表面粗さRaだけでなく、所定範囲の領域での最大突起高さRpをも制御することで、上記目的が達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明には以下の内容が含まれる。
【0011】
<1> 離型層Aとポリエステル系フィルムと離型層Bとをこの順序で含み、
下記式(1)~(6)を満足すること特徴とする両面離型フィルム。
RaA<0.1・・・(1)
RpA<2.0・・・(2)
RaB≧0.85×RaA・・・(3)
RpB≧0.85×RpA・・・(4)
1.5≦HA/HB≦100・・・(5)
0.15≦HA+HB≦7・・・(6)
但し、式(1)~(6)中、RaAは離型層Aの表面の中心面平均粗さ(μm)、RaBは離型層Bの表面の中心面平均粗さ(μm)、RpAは283μm×213μmの領域における離型層Aの表面の中心面最大突起高さ(μm)、RpBは283μm×213μmの領域における離型層Bの表面の中心面最大突起高さ(μm)、HAは離型層Aの表面の剥離力(N/25mm幅)、HBは離型層Bの表面の剥離力(N/25mm幅)をそれぞれ表す。
【0012】
<2> 前記離型層A及び前記離型層Bの少なくとも1層と前記ポリエステル系フィルムとの間に帯電防止層を含み、その帯電防止層を設けた側の離型層の表面の表面固有抵抗値が5×10~5×1012Ω/□である<1>に記載の両面離型フィルム。
【0013】
<3> 前記ポリエステル系フィルムは、平均粒径が0.1~2.0μmの無機粒子を含有する<1>又は<2>に記載の両面離型フィルム。
【0014】
<4> 前記無機粒子の含有量は、0.05~25質量%である<3>に記載の両面離型フィルム。
【0015】
<5> 前記帯電防止層が、導電性ポリマー、酸化金属微粒子、及び第4級アンモニウム塩を付加した重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む<1>~<4>いずれかに記載の両面離型フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の両面離型フィルムによれば、より薄層化した樹脂膜を形成する場合でも、得られる樹脂膜の表面状態と、巻き出す際の樹脂膜の剥離状態とを良好にすることができる両面離型フィルムを提供することができる。このため、例えば、各種の機能性シートの原料となる樹脂膜を成形する工程でキャリアフィルムとして、或いは巻取り時にセパレータとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の両面離型フィルムの例について、その概略構造を示す断面図であり、(a)は実施例1に相当するもの、(b)は実施例4に相当するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、説明の便宜上、フィルムの製膜方向を、機械軸方向、縦方向、長手方向、MD方向と称することがあり、製膜方向と厚み方向とに直交する方向を、幅方向、横方向、TD方向と称することがある。
【0019】
(両面離型フィルムの概略構造)
本発明の両面離型フィルムは、離型層Aとポリエステル系フィルムと離型層Bとをこの順序で含んでいる。「ポリエステル系フィルム」とは、単層で形成される場合は単層中に、又は複数層で形成される場合は全層中に、全樹脂成分の質量を基準としてポリエステル樹脂を50質量%以上含むものを指し、好ましくは、70質量%以上含むものを指す。
【0020】
本発明では、図1(a)~(b)に示すように、離型層A2Aの側に樹脂膜5が形成されることが想定されており、ポリエステル系フィルム1の背面側には離型層B2Bが設けられている。
【0021】
図1(b)に示すように、離型層A2Aとポリエステル系フィルム1の間には、帯電防止層3が介在していてもよく、また、離型層B2Bとの間に、又は離型層A2Aおよび離型層B2Bとポリエステル系フィルム1の間の両者に、帯電防止層3が介在していてもよい。但し、工程の簡易化と剥離時の帯電防止効果などの観点から、離型層A2Aとポリエステル系フィルム1の間にのみ帯電防止層3が介在していることが好ましい。
【0022】
ポリエステル系フィルムは、図1(a)に示す単層構造の他、例えば、微粒子含有層/微細空洞含有層/微粒子含有層の3層構造や、微粒子含有層/微細空洞含有層の2層構造であってもよい。また、ポリエステル系フィルムは、微粒子含有層又は微細空洞含有層に他の層が積層されているものでもよい。また、微細空洞含有層/微粒子含有層/微細空洞含有層の3層構造や、微細空洞含有層/微粒子含有層を繰り返した4層以上の構造であってもよい。何れの積層構造においても、更に他の層を有するものであってもよい。帯電防止層3以外の他の層としては、易接着層、易滑層、アンカー層、接着層、着色層などが挙げられる。
【0023】
(両面離型フィルムの特性)
本発明の両面離型フィルムは、下記式(1)~(6)を満足すること特徴とする。
RaA<0.1・・・(1)
RpA<2.0・・・(2)
RaB≧0.85×RaA・・・(3)
RpB≧0.85×RpA・・・(4)
1.5≦HA/HB≦100・・・(5)
0.15≦HA+HB≦7・・・(6)
但し、式(1)~(6)中、RaAは離型層Aの表面の中心面平均粗さ(μm)、RaBは離型層Bの表面の中心面平均粗さ(μm)、RpAは283μm×213μmの領域における離型層Aの表面の中心面最大突起高さ(μm)、RpBは283μm×213μmの領域における離型層Bの表面の中心面最大突起高さ(μm)、HAは離型層Aの表面の剥離力(N/25mm幅)、HBは離型層Bの表面の剥離力(N/25mm幅)をそれぞれ表す。
【0024】
式(1)と式(2)について、RaAが0.1μm以上かつRpAが2.0μm以上であると、両面離型フィルム(キャリアフィルム)に樹脂膜を成形した際、高い突起成分により、樹脂膜の塗布面にハジキが発生したり、樹脂膜への形状転写が起こり、樹脂膜層に厚みのバラツキが発生し、製品の表面欠点に起因する不良が発生し易くなる。このような観点から、RaAの上限は0.09μmであることが好ましく、0.07μmであることがより好ましく、RpAの上限は1.5μmであることが好ましく、1.0μmであることがより好ましい。
【0025】
RaAが0.1μm未満の離型層は、例えばポリエステル系フィルムの表面の中心面平均粗さが0.01から0.1μmのポリエステル系フィルムの表面に離型層を設けることにより得ることができる。RpAについても、例えばポリエステル系フィルムの表面の最大突起高さを調整することで制御することができる。
【0026】
RaAの下限は、特に限定されないが、製造工程におけるハンドリング性の観点から、0.01μmであることが好ましく、0.03μmであることがより好ましい。RpAの下限は、特に限定されないが、製造工程におけるハンドリング性の観点から、0.1μmであることが好ましく、0.2μmであることがより好ましい。
【0027】
式(3)と式(4)について、RaBが0.85×RaAを下回り、RpBが0.85×RpAを下回ると、製造工程におけるフィルムのハンドリング性に不具合を発生する可能性がある。このような観点から、式(3’)及び/又は式(4’)を満たすことが好ましい。
RaB≧0.90×RaA・・・(3’)
RpB≧0.90×RpA・・・(4’)
但し、樹脂膜を形成後に巻き取られた際、B面側の突起成分が樹脂膜に転写するのを抑制する観点から、RaBの上限は0.1μmであることが好ましく、0.08μmであることがより好ましい。同様の観点から、RpBの上限は1.5μmであることが好ましく、1.0μmであることがより好ましい。
【0028】
RaB又はRpBについても、例えばポリエステル系フィルムの表面の中心面平均粗さ、又は最大突起高さを調整することで制御することができる。
【0029】
式(5)と式(6)については、両面離型フィルムが接着性を有する樹脂膜の成形用として、更にはテープとして巻き取るときのセパレータとして使用されるために、離型層A面側(重く剥離できる面)の剥離力HA(N/25mm)と離型層B面側(軽く剥離できる面)の剥離力HB(N/25mm)との関係が規定されている。式(5)は、離型層A面側と離型層B面側との剥離力比率を規定し、式(6)においては離型層両剥離面の剥離力レベルを規定している。
【0030】
式(5)のHA/HBの値(以下『剥離力比率』という)については、剥離力比率が1.5以上の場合、樹脂膜を引き出すときにスムーズに引き出せずリール側に残ってしまったりする不具合が生じにくくなる。一方、剥離力比率が100以下であると、離型層A面側、すなわち樹脂膜を引き出したときに樹脂膜が残っている面、の剥離力が重くなり過ぎず、樹脂膜を被着体に圧着した後に、キャリアフィルム(セパレータ)を剥離したときにきれいに剥離し易くなる。このような観点から、HA/HBの値は、4~70の範囲であることが好ましい。
【0031】
式(6)については、HA+HBが0.15以上であると、樹脂膜を形成した両面離型フィルムのハンドリング性が良くなり、樹脂膜が安定性した状態で繰り出すことができる。また、HA+HBが7以下であると、巻き出し時に余分な応力が生じにくく、巻き出し時の変形等を防止し易くなる。このような観点から、HA+HBの値は、0.2~4の範囲であることが好ましい。
【0032】
(ポリエステル)
本発明において、基材フィルムとして用いるポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。このポリエステルは実質的に線状で、フィルムに形成可能なものであるが、特に溶融成形によりフィルムに形成可能なポリエステルであることが好ましい。
【0033】
ポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0034】
また、ポリエステルを構成する脂肪族グリコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等の如き炭素数2~10のポリメチレングリコールあるいは1,4-シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0035】
本発明において、ポリエステルとしてはアルキレンテレフタレートおよび/又はアルキレン-2,6-ナフタレートを主たる構成成分とするものが好ましい。
【0036】
これらポリエステルの中、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートはもちろんのこと、例えば全ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸および/又は2,6-ナフタレンジカルボン酸であり、全グリコール成分の80モル%以上がエチレングリコールである共重合体が好ましい。その際全酸成分の20モル%以下はテレフタル酸および/又は2,6-ナフタレンジカルボン酸以外の上記芳香族ジカルボン酸であることができ、また例えばアジピン酸、セバチン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等であることができる。
【0037】
また全グリコール成分の20モル%以下はエチレングリコール以外の上記グリコールであることができ、また例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の如き芳香族ジオール;1,4-ジヒドロキシジメチルベンゼンの如き芳香環を有する脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の如きポリアルキレングリコール(ポリオキシアルキレングリコール)等であることもできる。
【0038】
また、本発明におけるポリエステルには、例えばヒドロキシ安息香酸の如き芳香族オキシ酸、ω-ヒドロキシカプロン酸の如き脂肪族オキシ酸等のオキシカルボン酸に由来する成分を、ジカルボン酸成分及びオキシカルボン酸成分の総量に対し20モル%以下で共重合あるいは結合するものも包含される。
【0039】
さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量、例えば全酸成分に対し2モル%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸又はポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエリスリトール等を共重合したものも包含される。
【0040】
上記ポリエステルは、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。上記ポリエステルとしては、o-クロロフェノール中の溶液として35℃で測定して求めた固有粘度が0.4~0.9dl/gのものが好ましく、0.5~0.7dl/gのものがさらに好ましく、0.55~0.65dl/gのものが特に好ましい。
【0041】
(ポリエステル系フィルム)
両面離型フィルムの基材となるポリエステル系フィルムは、離型層Aと離型層Bを形成した後の両面離型フィルムの表面形状に近い表面形状を有することが好ましい。
【0042】
このため、ポリエステル系フィルムの中心面平均粗さは0.01~0.10μmであることが好ましい。表面粗さが0.1μmを超えると離型層表面の表面粗さRaAが0.1μm未満とすることが困難になる。また、表面粗さが0.01μmを下回ると、離型層表面の表面粗さはさらにポリエステル表面粗さ以上に表面粗さが下回るため、フィルムのハンドリング性が悪化し易くなる。尚、製膜条件によっては、RaA=RaBになるとは限らないため、RaBの範囲としては、0.85×RaA以上が好ましい。
【0043】
また、ポリエステル系フィルムの最大突起であるRpAは、2.0μm未満であることが好ましい。RpAが2.0μmを超えると樹脂膜塗布面にハジキが発生したり、樹脂膜への形状転写が起こり樹脂膜均一性の不良原因となる。フィルムの両面は製膜条件によっては、RpA=RpBになるとは限らないため、RpBは、0.85×RpA以上であることが好ましい。RpBが0.85×RpA未満になると平滑になり、ハンドリング性や巻特性に問題を発生する可能性がある。
【0044】
また、ポリエステル系フィルムは、離型層Aと離型層Bを形成した後の両面離型フィルムの光学特性に近い光学特性を有することが好ましい。
【0045】
このため、ポリエステル系フィルムの全光線透明率は0~50%であることが好ましく、かつヘーズ値が70%以上であることが好ましい。この範囲内であると、両面離型フィルムの全光線透明率とヘーズ値が式(7)と(8)の値をとり易くなり、キャリアフィルム上に成形した樹脂膜の厚み斑が観察し易くなる。また、樹脂膜を被着体に貼りつけ、その後両面離型フィルムを剥がす工程において、確実に離型フィルが剥がされていることを確認する観点からも、ポリエステル系フィルムの全光線透明率は10~30%であることが好ましく、かつヘーズ値が80%以上であることが好ましい。
【0046】
(添加剤)
かかるポリエステル系フィルムの中心面平均粗さ、全光線透過率、及びヘーズ値を前述の範囲を同時に満たすためには、原料のポリエステル中にフィラーや顔料を含有させる方法(練り込み法)やポリエステル系フィルムの表面にフィラーや顔料を含有させた樹脂塗料を塗布する方法や、サンドブラスト法、エンボス法、エッチング法などで表面に凹凸を形成する方法などがある。
【0047】
本発明においては、上記の何れの方法を採用してもよいが、本発明の両面離型フィルムはコストや品質を考慮すると、原料のポリエステル中にあらかじめ、フィラー、顔料等を含有させる練り込み法が好ましい。
【0048】
ポリエステル中に含有させるフィラーや顔料としては、酸化チタン、酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク等のような無機フィラー、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等のような有機フィラー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンターポリマー、オレフィン系アイオノマー等のような他の樹脂フィラーが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上用いてもよい。特に、RpAを式(2)の範囲内に制御する観点から、無機フィラー(無機粒子)を使用することが好ましい。また必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤などを含有することもできる。
【0049】
ポリエステル中に含有させるフィラーや顔料は、特にRpAを式(2)の範囲内に制御する上で、平均粒径が0.1~2.0μmであることが好ましく、0.1~1.0μmがより好ましい。
【0050】
また、フィラーや顔料の含有量は、ポリエステル系フィルムの全体を基準とする場合、0.05~25質量%の範囲であることが好ましく、0.1~22.0質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。また、微粒子含有層を表面層として設ける場合には、微粒子含有層中に、0.01~15質量%含有させることが好ましい。微細空洞含有層を中間層として設ける場合には、フィラーや顔料を含まなくてもよいが、表面凹凸の制御の観点から、微細空洞含有層中に、0.01~10.0質量%含有させることが好ましい。
【0051】
また、空洞形成剤となる非相溶の熱可塑性樹脂としては、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に制限されるものではない。ここで、「非相溶」とは、ポリエステルの溶融押出時の温度において、分子レベルでの相溶が生じない状態をいう。
【0052】
非相溶の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特にポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種又は2種以上用いてもよい。
【0053】
非相溶の熱可塑性樹脂が微細空洞含有層に含まれる場合、非相溶の熱可塑性樹脂の総量として、微細空洞含有層中に0.1~40質量%含有することが好ましく、1~25質量%含有することがより好ましい。
【0054】
(ポリエステル系フィルムの厚み等)
本発明に用いるポリエステル系フィルムは、単層又は複数層からなる二軸配向フィルムであることが好ましく、延伸配向により形成された微細空洞含有層を有することが好ましい。
【0055】
ポリエステル系フィルムの全体の厚さは、適度なハンドリング性を確保するなど観点から、10~300μmが好ましく、より好ましくは25~200μmである。
【0056】
ポリエステル系フィルムを、微粒子含有層/微細空洞含有層/微粒子含有層の3層構造とする場合、ポリエステル系フィルムの表面形状と光学特性を良好に制御する観点から、各々の微粒子含有層の厚みは全体の3~25%であることが好ましく、5~15%であることがより好ましい。微粒子含有層/微細空洞含有層の2層構造とする場合、同様の観点から、微粒子含有層の厚みは全体の3~25%であることが好ましく、5~15%であることがより好ましい。
【0057】
(ポリエステル系フィルムの製法)
二軸配向ポリエステルの製造法は、従来から知られている製造方法で得ることができる。
【0058】
例えば、融点(Tm:℃)~(Tm+70)℃の温度でポリエステルを溶融押出して未延伸フィルムを得、この未延伸フィルムを一軸方向(縦方向又は横方向)に(Tg-10)~(Tg+70)℃の温度(但し、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向にTg~(Tg+70)℃の温度で2.5倍以上、好ましくは3倍以上の倍率で延伸するのが好ましい。さらに必要に応じて縦方向および/又は横方向に再度延伸してもよい。このようにして全延伸倍率は、面積延伸倍率として9倍以上が好ましく、12~35倍がさらに好ましく、15~30倍が特に好ましい。さらにまた、二軸配向フィルムは、(Tg+70)℃~(Tm-10)℃の温度で熱固定することができ、例えば180~250℃で熱固定するのが好ましい。熱固定時間は1~60秒が好ましい。
【0059】
2層以上の層からなる二軸配向ポリエステルを製造する場合、各層の原料を溶融後に共押出して積層未延伸フィルムを得た後、同様の工程を実施することで製造することができる。
【0060】
微粒子含有層/微細空洞含有層/微粒子含有層の3層構造の二軸配向ポリエステルを製造する場合も、微細空洞含有層の原料に空洞形成剤を含有させておき、積層未延伸フィルムを延伸することで、微細空洞を形成することができる。
【0061】
(離型層)
本発明における離型層Aおよび離型層B(以下併せて『離型層』と略記することがある)は、その特性が前記式(1)~(6)を満足するものであれば特に限定されないが、例えばシリコーン樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂、フッ素オイル、各種ワックスその他にポリエステル樹脂、アルキッド、ポリウレタン、アクリル、メラミン、ポリビニルアセタール等の有機樹脂をシリコーンやフッ素などで変性したもの、或いはシリコーンオイル、フッ素オイルや各種ワックスを有機樹脂中に添加した成分の塗液を用いても良い。
【0062】
なかでも好ましくは硬化型シリコーン樹脂が耐熱性の点で好ましく、硬化型シリコーン樹脂としては、例えば縮合反応型のもの、付加反応型のもの、紫外線もしくは電子線硬化型のもの等いずれの反応型のものも用いることができる。これらの硬化型シリコーン樹脂は一種を単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0063】
各種シリコーン樹脂の硬化反応は、次のように示すことができる。
【0064】
【化1】
【0065】
上記縮合反応型のシリコーン樹脂としては、例えば末端-OH基を持つポリジメチルシロキサンと末端に-H基を持つポリジメチルシロキサン(ハイドロジェンシラン)を有機錫触媒(例えば有機錫アシレート触媒)を用いて縮合反応させ、三次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0066】
付加反応型のシリコーン樹脂としては、例えば末端にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンと架橋剤であるハイドロジェンシランとを白金触媒を用いて反応させ、三次元架橋構進をつくるものが拳げられる。
【0067】
紫外線硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、アクリル基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これによりエポキシ環を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が拳げられる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いずともラジカルによる架橋反応が起こる。
【0068】
硬化型シリコーン樹脂としては、その重合度が50~20万程度、好ましくは千~10万程度のものが好ましく、これらの具体例としては信越化学工業(株)製のKS-718、-774、-775、-778、-779H、-830、-835、-837、-838、-839、-841、-843、-847、-847H、X-62-2418、-2422、-2125、-2492、-2494、-470、-2366、-630、X-92-140、-128、KS-723A・B、-705F、-708A、-883、-709、-719、東芝シリコーン(株)のTPR-6701、-6702、-6703、-3704、-6705、-6722、-6721、-6700、XSR-7029、YSR-3022、YR-3286、ダウコーニング(株)製のDK-Q3-202、-203、-204、-210、-240、-3003、-205、-3057、SFXF-2560、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSD-7226、-7320、-7229、BY24-900、-171、-312、-374、SRX-375、SYL-OFF23、SRX-244、SEX-290、アイ・シー・アイ・ジャパン(株)製のSILCOLEASE425等を拳げることができる。また、特開昭47-34447号公報、特公昭52-40918号公報等に記載のシリコーン樹脂も用いることができる。
【0069】
前記硬化型シリコーン樹脂塗膜をフィルムの表面に形成させる場合のコーティング方法としてはバーコート法、ドクターブレード法、リバースロールコート法またはグラビアロールコート法等の従来から知られている方法が利用できる。
【0070】
塗膜の乾燥及び硬化(熱硬化、紫外線硬化等)は、それぞれ個別又は同時に行なうことができる。同時に行なうときには100℃以上で行なうことが好ましい乾燥及び硬化の条件としては100℃以上で30秒以上が好ましい。乾燥温度が100℃未満及び硬化時間が30秒未満では塗膜の硬化が不完全であり、塗膜、が脱落しやすくなるため好ましくない。
【0071】
離型層の厚みは特に限定されないが、0.005~0.5μmの範囲が好ましく、0.05~0.5μmの範囲がより好ましい。厚みが0.005μm以上であると、十分な離型性が得られ易く、0.5μm以下であるとキュアリングの時間が短縮でき生産上都合がよい。
【0072】
また、本発明における離型層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下の様態で離型層を形成することもできる。すなわち、下記の一般式(1)で示されるトリアルコキシシランと、下記の一般式(2)で示されるテトラアルコキシシランを加水分解することにより水へ溶解させた水性コーティング組成物を、ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に塗布し、次いで乾燥させることで、離型フィルムを製造できる。
【0073】
塗布は、通常の塗布工程、すなわちポリエステル系フィルムに、該フィルムの製造工程と切離して塗布する工程で行ってもよい。しかし、この工程では、芥、塵埃などを巻込み易いため、クリーンな雰囲気での塗工が望ましい。かかる観点よりポリエステル系フィルムの製造工程での塗工が好ましい。特に、この工程中で結晶配向が完了する前のポリエステル系フィルムに水性コーティング組成物として塗布することが芥好ましい。
【0074】
-Si(-OR (1)
(式中、Rは炭素数1~5のアルキル基、Rは炭素数1~2のアルキル基を表す。)
Si(-OR (2)
(式中、Rは炭素数1~2のアルキル基を表す。)
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステル系フィルムとは、ポリエステルを熱溶融してそのままフィルム状となした未延伸フィルム:未延伸フィルムを縦方向(長手方向)または横方向(幅方向)の何れか一方に配向せしめた一軸延伸フィルム;さらには縦方向及び横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたフィルム(最終的に縦方向または横方向に再延伸せしめて配向結晶可を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0075】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えば、キスコート法、バースコート法、ダイコート法、リバースコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤバーコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独又は組み合わせて適用するとよい。
【0076】
水性コーティング組成物を塗布された、結晶配向完了する前のポリエステル系フィルムは、乾燥され、延伸、熱固定等の工程に導かれる。例えば水性コーティング組成物を塗布した縦一軸延伸ポリエステル系フィルムは、ステンターに導かれて横延伸及び熱固定される。この間、水性コーティング組成物は乾燥され熱架橋される。
【0077】
ポリエステル系フィルムの配向結晶化条件、例えば延伸等の条件は、従来から当業界に蓄積された条件で行うことができるが、熱固定温度は、フィルムの融解サブピーク温度(Tsm)が好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは210℃以上になるように調整することが好ましい。ここで融解サブピーク温度(Tsm)とは、示差走査熱量計測定(DSC)によるポリエステルの結晶融解前に現れる微小な吸熱ピークであり、この融解サブピーク(Tsm)はフィルムの熱固定温度に相当する温度に微小ピークとして観測され、熱固定処理で形成された結晶構造のうち不完全な部分(擬結晶)が融解するために生じるものである。Tsmが180℃を下回ると、本発明における離型層を硬化させるために必要な熱量が大きいため、塗膜硬化に充分な熱量が供給されず、架橋不足となり、所望の離型性が発現しないことがある
また、樹脂膜に用いる樹脂や樹脂の硬化度、更には膜厚によって樹脂膜の粘接着力は異なるので、式(6)を満足する範囲に調製することが必要である。剥離力のコントロールとしては、前述の離型剤の組み合せや硬化触媒量や塗布厚みによる調整の他に、シリコーン系離型剤については次の4つの方法の少なくとも1つ以上を用いることもできる。
【0078】
(1)ポリジメチルシロキサンポリマー中に下記のD単位、T単位及び/又はQ単位の構造を有するシリコーンレジンを配合して離型層中のメチル基の濃度を調整し表面張力を増加させたもの。尚、このシリコーンレジンの配合割合は固形分濃度で20~60質量%であることが好ましい。配合割合が20質量%よりも少ないと離型層の濡れ性が不良となることがあり、60質量%を超えると離型層が硬くなりすぎて耐削れ性が不良となることがあるため好ましくない。
【0079】
【化2】
【0080】
但し、D単位およびT単位においてRはメチル基等のアルキル基またはフェニル基等の芳香族炭化水素基を示す。
【0081】
(2)ポリジメチルシロキサンポリマー中にシリカフィラーを配合することにより離型層中の-Si-OH基の濃度が高くなるよう調整して表面張力を増加させたもの。尚、このシリカフィラーは平均粒径が1μm以下のものが好ましい。平均粒径が1μm以下であると加工工程でフィルムを走行させる際に離型層の削れが発生しにくいため好ましい。また、シリカフィラーの配合割合は固形分濃度で0.1~1質量%であることが好ましい。配合割合が0.1質量%以上であると所望の濡れ性が得られ易く、1質量%以下であるとシリカフィラーが離型層から削れにくくなるため好ましい。
【0082】
(3)ポリジメチルシロキサンポリマー中のメチル基の一部を嵩高いフェニル基で置換した変性ポリジメチルシロキサン。フェニル基の立体障害により、例えばポリマー中の-Si-O-Si-結合の回りの回転運動が抑制され、その結果離型層の表面のメチル基の濃が減少するため表面張カを増加させることができる。尚、このフェニル基の置換割合は20~60モル%であることが好ましい。この置換割合が20モル%以上であると所望の離型性が得られ易く、60モル%以下であると離型層と各種粘着剤や各種シートとの離型性が良好となる。
【0083】
(4)シラノール基やメトキシ基等の反応活性基を比較的高濃度で有するポリジメチルシロキサンポリマーと、分子内に水酸基を有する有機樹脂(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等)とを反応させて得られる変性ポリジメチルシロキサン。この変性ポリジメチルシロキサン中のジメチルシロキサン成分の割合は10~30質量%であることが好ましい。この割合が10質量%以上であると離型性が良好となり、30質量%以下であると所望の離型性が得られ易くなる。
【0084】
(帯電防止層)
一般的に、樹脂膜が形成された離型フィルムが、工程内のロールとの接触する際に静電気が発生し易く、このことは、電気電子材料としては致命的なダメージを与えることになる。
具体的には、工程の搬送ロールと離型フィルムの摩擦または接触剥離過程で発生した静電気により、帯電模様が発生したり、剥離耐電により貼り付けや積層工程での位置ずれが発生する。
【0085】
そこで本発明においては、ポリエステル系フィルムの両面に離型層を設ける前に、少なくとも一方の面に帯電防止層を設けることができる。これにより、繰り出しや走行の際に帯電が少なく、また更に巻き出して樹脂膜として使用する際にも、帯電障害を生じにくくなる。
【0086】
本発明における帯電防止層としては、離型層を設けた後の表面固有抵抗値が5×10~5×1012Ω/□であることが好ましく、5×10~5×1010Ω/□であることが更に好ましい。
【0087】
帯電防止層は、特に限定されないが、酸化金属微粒子、導電性ポリマー、及び第4級アンモニウム塩を付加した重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。帯電防止層を形成する手段については特に限定されず、塗布法、真空蒸着法、貼り合せなど、既知の方法を使用することができるが、帯電防止剤を含む塗液を塗布により設けることがコストの観点より好ましい。
【0088】
酸化金属微粒子としては、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、ZnO、CeO、Sb、SnO、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫、In、Al、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等を挙げることができる。微粒子とは、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものを指し、好ましくは、平均粒径が0.1nm~0.1μmのものである。また、本発明の好ましい態様によれば、上記導電性微粒子の一次粒径は30~70nm程度が好ましく、二次粒径は200nm以下程度が好ましい。
【0089】
導電性ポリマーとしては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)が挙げられる。更に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフト又はブロック共重合した高分子である導電性複合体等を挙げることができる。
【0090】
第4級アンモニウム塩を付加した重合体としては、第4級アンモニウム基を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物を使用できる。
【0091】
また、帯電防止層には、得られる塗膜の強度を向上させる目的で、さらにアルコキシシランまたはアシロキシシランを添加してもよい。これらのシラン化合物は、加水分解され、その後の縮合反応された反応生成物の形態で塗膜中に存在する。
【0092】
これらのシラン化合物としては、例えばメチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコキシ基以外の反応性官能基を有するトリアルコキシシランがあげられる。
【0093】
帯電防止層には、外観向上のために界面活性剤を用いてもかまわない。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキル4級アンモニウム、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を用いることができる。
【0094】
帯電防止層には、本発明の目的を阻害しない範囲で必要に応じて、滑剤、色素、紫外線吸収剤、架橋剤、シランカップリング剤、等を混合しても良い。
【0095】
基材フィルム表面に帯電防止層を塗布積層する方法としては、グラビアロールコーティング法、リバースロールコーティング法、ナイフコータ法、ディップコート法、スピンコート法などがあるが、導電性組成物に適したコート法は特に制限はない。また、フィルムの製造工程で塗布層を設けるインラインコート方式、フィルム製造後に塗布層を設けるオフラインコート方式により設けることができる。
【0096】
帯電防止層を形成する乾燥温度としては、通常60℃以上150℃以下であり、好ましくは90℃以上140℃以下である。この温度が60℃以上であると、短時間の処理でよく、生産性向上の観点から好ましい。一方、この温度が150℃以下であると、フィルムの平面性が保たれて好ましい。
【0097】
帯電防止層の膜厚は、0.005μm以上5μm以下が好ましい。より好ましくは、0.01μm以上1μm以下であり、さらに好ましくは、0.01μm以上0.2μm以下である。帯電防止層の膜厚が0.005μm以上であると、帯電防止効果が得られ好ましい。一方、5μm以下であると、離型性を損なうおそれがなく好ましい。
【0098】
(両面離型フィルムの用途)
本発明の両面離型フィルムは、例えば、両面粘着テープの成形、セラミックコンデンサのグリーンシート成形、異方性導電膜の成形、回路基板用の絶縁樹脂シートの成形などの製造工程に用いることができる。具体的には、例えば、各種の機能性シートの原料となる樹脂膜を成形する工程でキャリアフィルムとして、或いは巻取り時にセパレータとして使用することができる。
【0099】
例えば、異方性導電膜の場合、例えば、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂とカップリング剤、硬化剤、硬化促進剤を混ぜ合わせた絶縁接着剤中に導電性粒子を混合・分散した接着剤ワニスをキャリアフィルム(セパレータ)上に塗布・乾燥して製造することができる。
【実施例
【0100】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。以下、特に断りのない限り、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」を意味する。
【0101】
(a)フィルム、各層の厚み
ミクロトームを用いてフィルムを切削し、フィルム表面に垂直な断面を得た。この断面に白金・パラジウム合金をスパッタリングによって被覆したものを観察サンプルとした。走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S-510型)を用いてフィルム断面を観察し、フィルム全厚みが一視野となる適当な倍率で写真撮影した。この像より、スケールを用いて各層の厚みを測定した。独立に作成した3点の断面サンプルについて測定を行い、この平均値をもって積層フィルムの層厚みとした。
【0102】
(b)固有粘度(IV)
ポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、OCPに溶解した。自動粘度測定器(株式会社離合性 VMC-252)にて、ポリエステル樹脂の固有粘度(極限粘度)を算出した。
【0103】
(c)平均粒径
走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S-4700)を用いて、1万倍~10万倍の倍率で粒子を測定し、粒子1000個の粒径(長径と短径の平均値)を読み取り、1000個の平均粒径を算出する。
【0104】
(1)中心面表面粗さ(Ra)、中心面最大突起高さ(Rp)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View7300)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)および中心面最大突起高さ(Rp)を求めた。その際、測定箇所を変えて3回測定を行ない、その平均値をそれぞれ求めた。
【0105】
(2)剥離力
フィルムの離型層面にポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニット-31B)を貼り合わせ、5kgの圧着ローラーで圧着した後、離型層と粘着テープとの180°で剥離力(HA,HB)を引張り試験機にて測定した。
【0106】
(3)残留接着率
ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、ニット-31B)をJIS G4305に規定する冷間圧延ステンレス板(SUS304)に、5kgの圧着ローラーで圧着し30秒間維持して貼り付けた後、180°で剥離力を測定し、基礎接着力(f0)とした。
【0107】
次に新しい前記ポリエステル粘着テープをサンプルフィルムの離型層面に5kgの圧着ローラーで圧着し30秒間維持した後ポリエステル粘着テープを剥がした。そして、この剥がしたポリエステル粘着テープを、同じ条件で前記ステンレス板に貼り、該貼合部の剥離力を測定し残留接着力(f)とした。得られた基礎接着力(f0)と残留接着カ(f)とから下記式を用いて残留接着率を求めた。
【0108】
残留接着率(%)=(f/f0)×100
【0109】
(4)表面固有抵抗値
株式会社エーディーシー社製の固有抵抗測定器(型番5451)を使用し、JISK6271(2008)に記載の二重リング法により、測定温度23℃、測定湿度65%RH及び45%RHの条件で印可電圧500Vで1分後の表面固有抵抗値を測定した。測定は帯電防止層の離型層面上を測定して行った。
【0110】
(5)樹脂膜の表面状態(塗工性)
ロール状に巻いた両面離型フィルム(フィルム幅:1.2m、長さ:500m)からフィルムを巻き出し、離型層A面の上に下記組成の樹脂塗料を塗布し、次いで120℃で5分間加熱して溶剤を揮発させ、厚み0.5μmの樹脂膜を形成させた後、表面状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0111】
○:樹脂膜表面にハジキが全く見られない(樹脂膜表面状態良好)。
【0112】
×:樹脂膜表面にハジキが見られる(樹脂膜表面状態不良)。
<樹脂塗料>
下記組成の粘着性樹脂組成物を固形分濃度が5%になるように調整した樹脂塗料を得た。
【0113】
液状エポキシ樹脂(エピコート828、三菱ケミカル社製) 1質量部
フェノキシ樹脂 (PKHH、Gabriel Phenoxies社性) 2質量部
硬化剤 (アミキュアPN-23、味の素ファインテクノ社製) 0.3質量部
溶剤(MEK/トルエン=1/1) 57質量部
(6)樹脂膜の剥離状態
上記樹脂塗料を離型層A面に塗布後し、次いで120℃で5分間加熱して溶剤を揮発させ、厚み0.5μmの樹脂膜を形成した。その後、樹脂膜の上に離型層Bが接触するように重ね、2kg/cmの圧力をかけて50℃で17時間エージングした。エージング後、離型層Bを剥離し、離型層B面を観察し、下記の基準で評価した。
○:離型層B面に樹脂が残らない(樹脂膜剥離状態良好)。
×:離型層B面に樹脂が残る(樹脂膜剥離状態不良)。
【0114】
[実施例1]
テレフタル酸及びエチレングリコールからつくられたポリエステル(固有粘度:0.63dl/g、Tg:79℃、Tm:253℃)90質量%と、シリカ(平均粒径:1.7μm)10質量%からなる組成物を、20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押出して未延伸フィルムとし、次に機械軸方向に3.6倍延伸した後、引き続き横方向に3.9倍延伸し、厚さ50μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0115】
このフィルムの片面に下記組成の離型塗料A(離型層A用)、更に反対面に離型塗料B(離型層B用)を順次塗布し、両面離型フィルムを得た。離型塗料の硬化条件は150℃×30秒、離型層の厚みは両面に共に0.2μmになるように塗布した。この両面離型フィルムの特性を表1に示す。
【0116】
<離型塗料A>
BY24-400(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)) 100質量部
溶剤(トルエン/MEK=1/1) 1400質量部
SRX-212(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)) 2質量部
<離型塗料B>
KS-847H(信越化学工業(株)) 100質量部
溶剤(トルエン/MEK=1/1) 1400質量部
PL-50T(信越化学工業(株)) 2質量部
[実施例2]
離型塗料Aの代わりに離型塗料C(離型層A用)を用いた以外は実施例1と同様の方法で両面離型フィルムを作製した。この両面離型フィルムの特性を表1に示す。尚、離型塗料Cは下記の組成のものである。
【0117】
<離型塗料C>
KS-847H(信越化学工業(株)) 100質量部
KS-3800(信越化学工業(株)) 25質量部
溶剤(MEK/トルエン=1/1) 1400質量部
PL-50T(信越化学工業(株)) 2質量部
[実施例3]
離型塗料Aの代わりに離型塗料D(離型層A用)を用いた以外は実施例1と同様の方法で両面離型フィルムを作製した。この両面離型フィルムの特性を表1に示す。尚、離型塗料Dは下記の組成のものである。
【0118】
<離型塗料D>
KS-847H(信越化学工業(株)) 100質量部
KS-3800(信越化学工業(株)) 50質量部
溶剤(MEK/トルエン=1/1) 1400質量部
PL-50T(信越化学工業(株)) 2質量部
[実施例4]
実施例1において離型塗料Aを塗布する前に下記に示す帯電防止層を膜厚0.1μmで設け、次に離型塗料Bを設けたこと以外は実施例1同様にして両面離型フィルムを得た。この両面離型フィルムの特性を表1に示す。
【0119】
<帯電防止塗料>
コルコートSP-2014(コルコート株式会社、アンチモンドープ酸化錫の7質量%水分散体) 100質量部
テトラエチルシリケート(和光純薬) 10質量部
水 100質量部
界面活性剤(花王社製、エマルゲン1108) 20質量部
[実施例5]
実施例1において、シリカ(平均粒径:1.7μm)10質量%の代わりに、平均粒径が0.5μmの炭酸カルシウム粒子20質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0120】
[実施例6]
実施例5において、離型塗料Aを塗布する前に実施例4で用いた帯電防止層を膜厚0.1μmで設けたこと以外は、実施例5同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0121】
[実施例7]
実施例1において、シリカ(平均粒径:1.7μm)10質量%の代わりに、平均粒径が0.3μmのシリカ粒子15質量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0122】
[実施例8]
実施例7において、離型塗料Aを塗布する前に実施例4で用いた帯電防止層を膜厚0.1μmで設けたこと以外は実施例7同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0123】
[比較例1]
離型塗料Aの代わりに離型塗料B(離型層A用)を用いた以外は実施例1と同様に両面離型フィルムを作製した。この両面離型フィルムの性能を表1に示す。
【0124】
[比較例2]
実施例1において、シリカ(平均粒径:1.7μm)10質量%の代わりに、平均粒径が3.0μmの酸化チタン粒子10質量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0125】
[比較例3]
実施例1において、シリカ(平均粒径:1.7μm)10質量%の代わりに、平均粒径が6.0μmの酸化チタン粒子0.03質量%を用いた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1における測定面は、A面が離型層Aの表面、B面が離型層Bの表面であることを示す。
【0128】
表1から明らかなように、式(1)~(6)を満足する実施例1~8では、より薄層化した樹脂膜を形成する場合でも、得られる樹脂膜の表面状態と剥離状態を良好にすることができた。
【0129】
これに対して、式(5)~(6)を満足しない比較例1では、得られる樹脂膜の剥離状態が劣るものであった。また、式(1)~(2)を満足しない比較例2、及び式(2)を満足しない比較例3では、得られる樹脂膜の表面状態が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の両面離型フィルムは、例えば粘着性を有する樹脂膜を成形する工程でキャリアフィルムとして使用でき、また巻取り時や樹脂膜の使用時にセパレータとして使用できる。
【符号の説明】
【0131】
1 ポリエステル系フィルム
2A 離型層A
2B 離型層B
3 帯電防止層
5 樹脂膜
図1