(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】線材固定具及び線材固定具を備えたフエンス
(51)【国際特許分類】
E04H 17/10 20060101AFI20250123BHJP
E04H 17/04 20060101ALI20250123BHJP
E04H 17/14 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
E04H17/10
E04H17/04 Z
E04H17/14 103Z
(21)【出願番号】P 2021073074
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000213792
【氏名又は名称】朝日スチール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100081879
【氏名又は名称】高橋 清
(72)【発明者】
【氏名】中 山 保 博
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027200(JP,A)
【文献】実開昭62-149554(JP,U)
【文献】実公昭48-045207(JP,Y1)
【文献】実開昭50-141938(JP,U)
【文献】特開平11-315647(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02229040(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱先端に装着されるキャップと、
前記キャップに設けられ、
前記支柱への装着時に前記支柱
の側面に沿って下方に延出する板片と、
一端部にフック部を有し、他端部にオネジ部が設けられたフックボルトとから成り、
前記板片には、その上部の水平方向左右端部に
、前記支柱への装着時に前記支柱
の側面から離れる方向に延出する突き出し部
が形成されると共に、前記支柱に貫設される貫通孔に連通する、前記フックボルトを貫通させるためのフック孔が穿設され、
前記フックボルトは、前記フック孔から前記貫通孔に貫通させて露出させた前記オネジ部をナットで緊締することにより前記支柱に固定されることで、前記フック部と前記板片との間に線材を挟持し、
前記ナットの緊締に伴って前記フックボルトに作用する軸回りの回動力が、前記フック部の先端部の両側面が前記突き出し部に当接することで規制されることを特徴とする線材固定具。
【請求項2】
前記突き出し部の下側基部と前記フック部の屈曲部とにより前記線材を固定する、
請求項1に記載の線材固定具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の線材固定具を備えたフエンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フエンスなどにおける線材固定具及び線材固定具を備えたフエンスに関する。
【背景技術】
【0002】
フエンスなどにおいて、フエンス上部に忍び返しとして有刺鉄線などの線材を張設することがしばしば行われる。
線材の装着は一般的に支柱に線材固定具を用いて行われ、線材固定具として座金とフックボルトを用いるのが一般的である。即ち、支柱に貫通孔を形成し、ここにフックボルトを相通し、座金とフックボルトのフック部との間に線材を挟み、フックボルトを支柱の反対側から締結することにより、固定している。
しかし、従来の上記構成の場合作業中に座金が回転してずれてしまい作業がやりにくい問題があり、線材が有刺鉄線の刺があるため、作業が更に難しくなる問題があった。
また線材固定具としてU字金具に線材を係止し、U字金具をボルトナットにより支柱に固定する方法もあるが、U字金具の穴位置と支柱の穴位置を合わせながらボルトを挿通する必要があるなど、作業性に問題があった。
更にフエンス上部では高所作業になるため、上記従来の固定具の作業性が大きな問題になり改良が求められていた。
本発明者らは上記従来技術に鑑みて種々の開発を試み、特に支柱上部での作業性の良い固定具の開発に取り組み、支柱の上部に設けられる支柱キャップを利用した線材固定具を開発するに至った。
なお支柱キャップには従来から、係止片を装着したものが知られている。しかし、これらの係止片はフエンスパネルを装着するためのものであったり(文献1)、主に通信ケーブルなどの線材を係止するものであり(文献2)、これらの係止片の構成では線材の固定はできず、忍び返しとして機能させることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-207693
【文献】意匠登録1538554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを目的とし、支柱上部での作業性の良い線材固定具及び線材固定具を備えたフエンスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の線材固定具は、支柱先端に装着されるキャップと、前記キャップに設けられ、前記支柱への装着時に前記支柱の側面に沿って下方に延出する板片と、一端部にフック部を有し、他端部にオネジ部が設けられたフックボルトとから成り、前記板片には、その上部の水平方向左右端部に、前記支柱への装着時に前記支柱の側面から離れる方向に延出する突き出し部が形成されると共に、前記支柱に貫設される貫通孔に連通する、前記フックボルトを貫通させるためのフック孔が穿設され、前記フックボルトは、前記フック孔から前記貫通孔に貫通させて露出させた前記オネジ部をナットで緊締することにより前記支柱に固定されることで、前記フック部と前記板片との間に線材を挟持し、前記ナットの緊締に伴って前記フックボルトに作用する軸回りの回動力が、前記フック部の先端部の両側面が前記突き出し部に当接することで規制されることを特徴とする。
更に本発明は、前記突き出し部の下側基部と前記フック部の屈曲部とにより前記線材を固定する、ことを特徴とする。
また、本発明のフェンスは上記固定具を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の線材固定具によれば、支柱先端にキャップを装着することにより固定具の装着が行え、作業中に固定具を保持する必要がない。また、フックボルトのフック部が突き出し部に回動方向係止されるため、フックボルトの締結作業が容易に行える。更に線材は突き出し部の下側基部とフック部の屈曲部とにより固定されるため、簡単で安定した固定が得られる、などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】本発明の一実施形態の固定状態を示す説明図。
【
図5】本発明の一実施形態において有刺鉄線を固定した状態の斜視図。
【
図7】本発明の一実施形態において線材を固定した状態の斜視図。
【
図8】本発明のフエンスの一実施形態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
最初に本発明のフエンス全体の構成を
図8に示す。
このフエンス99は支柱10、10を有し、支柱10、10間にフエンスパネル98が装着され、フエンスを構成している。支柱10,10は上方に伸び、フエンスパネル98の上方で有刺鉄線97を装着して忍び返しを形成している。
有刺鉄線97はこの実施形態では3本装着されており、最上方の有刺鉄線97は支柱10の頂部に装着されたキャップ1を含む固定具Aにより固定されている。
なお、
図8の矢印に示すように、フエンス99の正面に向かってフエンスの横方向を水平方向Hとし、正面に向かって左を左方向、右を右方向とする。同様に垂直方向Vの上方向、下方向とする。更にフエンス99の表面と裏面の方向を面方向Fとし、フエンス99正面に向かって手前側を表方向、裏側を裏方向とする。他の図においても同様である。
【0009】
図1乃至
図4に固定具Aの詳細を示す。
キャップ1はその周囲にキャップ縁部20が形成されて筒形状をなしており、支柱10の頂部に覆設されるように構成されている。キャップ1には板片2がキャップ縁部20に連続して一体的に形成されている。板片2はキャップ1から支柱10の側面に沿って垂直方向V下方に伸びている。板片2は支柱10に沿った座板4とこの座板4の水平方向H左右端部をほぼ直角に曲げ起こして形成された側板3、3を有している。また座板4にはフックボルト6を貫通するためのフック孔5が形成されている
【0010】
側板3、3は前記したように座板4の水平方向H左右端部に設けられており、側板3の上方は面方向F表方向、即ち支柱10の側面から離れる方向に突き出した突き出し部30になっている。この突き出し部30により図
4に示すようにフックボルト6のフック部60を係止してナット7による締結作業を容易に行えるように構成している。
図3に示すように突き出し部30の下側は面方向F裏方向に傾斜する傾斜縁31になっており、屈曲部32において下方に屈曲して直線縁33となるように構成されている。したがって、この屈曲部3 2が突き出し部30の下側基部になっている。
座板4 にはフックボルト6を貫通するためのフック孔5が形成されている。フック孔5は座板4の下方に形成され、突き出し部30の下端近傍に位置するようになっており、
図2に示すようにフック孔5の上端縁50が前記屈曲部32の少し下側に位置するように構成されている。
【0011】
フックボルト6は
図1に示すように、先端部において屈曲部62部分で面方向F裏方向に90度以上屈曲し、フック部60を形成している。この屈曲によりフック部60の内面側には屈曲部62に連続して傾斜面61が形成される。
フックボルト6は支柱10に設けられた貫通孔11と板片2のフック孔5を貫通して有刺鉄線97を係止し、ナット7を装着して有刺鉄線97を固定するように構成されている。
【0012】
図4と
図5に有刺鉄線97を締結した状態の構成を示す。フック孔5から面方向F表側に突出したフックボルト6のフック部60は、有刺鉄線97を係止して、ナット7締め付けることにより傾斜面61と屈曲部62及び傾斜縁31と屈曲部32の間に有刺鉄線97を固定するように構成されている。
【0013】
以上の構成において、キャップ1を支柱10上端に被せることにより固定具Aの装着も同時に行え、従来のように作業中に固定部Aを保持しておく必要もない。また従来のように作業中に座金が回転したりずれたりすることもない。その後フック孔5と支柱10の貫通孔11にフックボルト6を挿通し、フック部60に有刺鉄線97を係止して、ナット7によりフックボルト6を締結すれば、有刺鉄線97は傾斜面61と屈曲部62により面方向F裏面方向に押圧され板片2の座板4に押し付けられる。そして、ナット7を更に回すと、フック部60は突き出し部30に当接して回動を抑えられ、ナット7の締め付け作業が容易かつ確実に行われる。ナット7を更に締め付けると、
図4に示すように有刺鉄線97は傾斜面61,屈曲部62と傾斜縁31、屈曲部32により確実に固定される。
以上により、作業の効率化と安定した固定を得ることが可能になる。
【0014】
図6に他の実施例を示す。この実施例では支柱10’として角柱を用いており、キャップ1’も角形状となっている。他の構成は同じである。
図7は有刺鉄線97に変えて単なる線材96を固定する実施例を示している。
【符号の説明】
【0015】
1:キャップ、2:板片、3:側板、4:座板、5:フック孔、6:フックボルト、7:ナット、10:支柱、11:貫通孔、20:キャップ縁部、30:突き出し部、31:傾斜縁、32:屈曲部、33:直線縁、50:上端縁、60:フック部、61:傾斜面、62:屈曲部、96:線材、97:有刺鉄線、98:フエンスパネル、99:フエンス、H:水平方向、V:垂直方向、F:面方向。