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特許7624218生物組織の酸素化血液量を測定するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】生物組織の酸素化血液量を測定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
A61B5/1455
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021510694
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 IL2019050959
(87)【国際公開番号】W WO2020044337
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】62/724,116
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】263498
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】510077842
【氏名又は名称】シェバ インパクト リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Sheba Impact Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コステニック,ジェナディ
(72)【発明者】
【氏名】オレンスタイン,アリエ
(72)【発明者】
【氏名】オロン―ハーマン,モア
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051304(JP,A)
【文献】特開2015-092888(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19838606(DE,A1)
【文献】特開2013-017769(JP,A)
【文献】特表2015-501194(JP,A)
【文献】特表2013-544588(JP,A)
【文献】特表2010-522603(JP,A)
【文献】特表平09-508291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0116814(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/145-5/1464
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物組織における酸素化をモニタリングするためのシステムにおいて、生物組織の1つの領域の収集された光反応を示すデータを受信して処理するように構成され作動可能である制御部であって、前記生体組織内のオキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンが吸光可能な波長範囲を照射する制御部を備え、
受信された前記データの処理が、前記領域からの収集された光反応における選択された2つの波長範囲を示すデータを比較して、前記生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定することを含み、
選択された前記2つの波長範囲は、前記生体組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンの吸光度よりも高くなる第一波長範囲と、前記生体組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンの吸光度よりも高くなる第二波長範囲と、を含む、または前記生体組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンの吸光度よりも高くなる第一波長範囲と、前記生体組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンの吸光度よりも高くなる第二波長範囲と、を含み、
選択された前記2つの波長範囲が、第1および第2の波長を有し、選択された当該第1および第2の各波長においてデオキシヘモグロビンの吸光強度とオキシヘモグロビンの吸光強度が互いに最大に差があるように、前記生体組織におけるデオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との対比において最大または最高の比率を提供し、
前記第1の波長が400nm±10%~420nm±10%、または450nm±10%~500nm±10%の前記第一波長範囲内にあり、前記第2の波長が420nm±10%~450nm±10%または600nm±10%~800nm±10%の前記第二波長範囲内にあり、
選択された前記2つの波長範囲を示すデータを比較することが、前記第一波長範囲と前記第二波長範囲との光反応強度を示すデータの間の比率または差の数値と、組織酸素化データの数値との対応関係を利用して、前記生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定することを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記データがモニター中の前記組織の表面に位置する第一組織部分を示すように前記第一波長範囲が選択され、前記データがモニター中の前記組織の深部における第二組織部分に位置する第二組織部分を示すように前記第二波長範囲が選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第一波長範囲および前記第二波長範囲が青色スペクトル帯内にあり、前記データがモニター中の前記組織の表面組織部分を示すように前記第一波長範囲および前記第二波長範囲が選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第一波長範囲が400nm±10%~420nm±10%であり、前記第二波長範囲が420nm±10%~450nm±10%である;あるいは、前記第二波長範囲が420nm±10%~450nm±10%であり、前記第一波長範囲が450nm±10%~500nm±10%である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部が、収集された光反応における選択された前記2つの波長範囲の2つの平均強度を対比した比率を算出することにより、前記データを処理するように構成され且つ作動可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御部がリアルタイムで前記生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定するように構成され且つ作動可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
選択された前記2つの波長範囲における収集された光反応を示す前記データが少なくとも2枚のピクセル化画像を含み;前記データの処理が、各画像において、前記領域の特定の範囲を示すピクセルを特定することと;特定の範囲のそれぞれについて前記少なくとも2枚のピクセル化画像のピクセル毎の比較を実行することと;ピクセル毎に前記生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定することと、組織酸素化/脱酸素化組織状態マッピングを示す処理画像を生成すること、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御部がモニター中の前記組織の処理画像を生成するように構成され、且つ作動可能であり、前記処理画像が前記生物組織の深部における酸素化組織状態に結びつけられた前記組織の表面における酸素化組織状態を示す、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記光反応を収集するように構成され且つ作動可能である検出部をさらに備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出部が、前記光反応を受信し、少なくとも2枚のそのピクセル化画像を生成するように構成され且つ作動可能である撮像部を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記撮像部が、前記光反応を受信し、少なくとも2枚のそのピクセル化スペクトル画像を生成するように構成され且つ作動可能であるスペクトル撮像部を備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記データが少なくとも2枚のピクセル化スペクトル画像を含み;前記データの処理が、前記少なくとも2枚のピクセル化スペクトル画像から、それぞれ照明および/または収集の前記2つの選択波長範囲に対応する少なくとも2枚の単色画像を抽出することと、前記少なくとも2枚の単色画像の特定の範囲のそれぞれについてのピクセル毎の比較を実行することと、スペクトル分解された組織酸素化/脱酸素化マッピングを示す処理画像を生成すること、を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記撮像部が少なくとも2つの撮像部を備え、各撮像部が異なる選択波長範囲内の少なくとも1種の電磁ビームを検出するように構成され且つ作動可能である、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
照明源および前記撮像部と接続された、前記組織からの正反射を除去するように構成され且つ作動可能である、少なくとも2つの交差偏光素子をさらに備える、請求項10~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記検出部が、前記2つの選択波長範囲において照明および/または収集が行われた前記生物組織からの同一領域の光反応を受信し、その領域の少なくとも2つの平均強度を生成するように構成され且つ作動可能である、非結像型光検出部を備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記2つの選択波長範囲の電磁ビームで前記生物組織を照明するように構成され且つ作動可能である照明源をさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御部が、前記照明源を制御し、照明の波長範囲を選択するように構成され且つ作動可能である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記照明源が少なくとも2つの光源を含み、各光源が異なる選択波長範囲において前記生物組織を照明するように構成され且つ作動可能である、請求項16または17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物組織の酸素化血液量を測定するための方法に関し、特に組織酸素化マッピングのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野の様々な状況下で、生物組織内の酸素化された血液の量を測定することは有用である。局所酸素運搬は組織機能の維持において重要な役割を担っている。毛細血管の機能障害によって引き起こされる局所的な微小循環の破壊に伴う、個々の組織または臓器における低酸素は、全体的(全身的)な末梢血酸素飽和度(SpO)測定からは確認することができない。種々の慢性病状、さらには急性病状(例えば、末梢血管疾患、真性糖尿病、高コレステロール血症、高血圧症、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患、腹部大動脈瘤、静脈不全、各種手術)が、局所組織酸素化の障害と関連している。
【0003】
例えば、フラップ手術などの形成外科では、組織部分を、その組織部分内の血流に関与している血管から少なくとも部分的に切除し、その組織を身体の異なる新たな場所に移動させ、しばしば、その新たな場所の近くの新生血管に連結する。新生血管への連結が成功し、且つ、存在する場合、元々の古い血管への連結が良好なままであり、治癒過程も順調に進んでいる場合、組織部分は動脈から酸素化血液の供給を十分に受け、脱酸素化血液が静脈によって運び去られ、組織部分は生存可能なものとなる。しかし、何かの問題が生じ、何らかの理由で組織部分が十分な酸素化血液量を含まない場合、例えば、動脈が十分な酸素化血液を供給しない、あるいは、静脈が十分な脱酸素化血液を運び去らない場合、その結果として、組織部分は生存不可となる。組織部分が十分な酸素化血液を含んでいないという事実が十分に早く検出できたならば、組織部分を救出するための手段を講じることができる。組織部分が十分な酸素化血液を含んでいないという事実が十分に早く検出されないと、壊死が起こり、その組織部分は切除しなければならなくなる。
【0004】
例えば、救急医療では、広範囲の身体部分が部分的切断を含む深刻な損傷を受けており、医療従事者が、どの身体部分が生存でき、どの身体部分が生存できないかを判断できない医療のために、患者が到着する場合がある。上記の患者を治療するためには、どの身体部分が十分な酸素化血液量を含んでいて生存可能であり、どの身体部分がそうではないかを迅速に判断できることが、有用となるであろう。生存可能であることが確認された身体部分は、その後、生存を確保するために最初に治療され、即時に生存可能とはならない部分については、血液供給の再接続または上記身体部分の切除により患者の生存率と回復速度を向上可能であるか否かを、医療従事者が判断できる。
【発明の概要】
【0005】
当該技術分野では、臨床医が末梢疾患および循環器疾患の高リスク患者を特定することを可能にする、上記機能障害の特定を可能にする非浸潤的な方法の提供が求められている。また、組織の酸素化血液量を定性的測定および/または定量的測定において有用となる方法が存在することも有益であろう。この目的のために、本発明は、組織酸素化に対する指標を与えるための新規方法を提供する。より具体的には、上記システムは、組織内に存在する酸素化/脱酸素化血液を測定するための、生物組織の測定用に構成される。本発明は、酸素化ヘモグロビンを脱酸素化ヘモグロビンと区別する固有波長のスペクトル解析に基づいて、組織毛細血管における酸素飽和度を測定するための方法を提供する。本方法は、様々な臨床用途の種々のシステムの基盤としての役割を果たし得る。
【0006】
本発明の広義の態様によれば、生物組織内の酸素化をモニタリングするためのシステムが提供される。上記システムは、2つの選択波長範囲内の2つの別々の波長において照明および/または収集が行われた生物組織の同一領域からの光反応を示すデータを受信し、各々の選択波長範囲を示すデータの比較によりデータ処理を行い、生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定するように構成され且つ作動可能である、制御部を備え、照明および/または収集の2つの波長範囲は、組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンよりも高くなる第一波長範囲と、組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンよりも高くなる第二波長範囲と、を含み(逆もまた同じ)、前記2つの波長範囲内の2つの波長は、特定された第一波長および第二波長のそれぞれの場合で、デオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との間の所定の比率条件を満たす第一波長と第二波長とを含む。
【0007】
このような所定の条件は、特定された第一波長および第二波長のそれぞれの場合で、デオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との間での比較的高い比率に相当する。これに関連して、上記のデオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との間の比較的高い比率が、実質的/近似的に最高/最大限の比率であることが好ましく、これら2つの波長のそれぞれの場合でのデオキシヘモグロビンおよびオキシヘモグロビンの吸光度特性(強度)が有意(最大限)に互いに異なるという条件に相当することに留意する必要がある。
【0008】
いくつかの実施形態では、第一波長範囲は、データがモニター中の組織領域の表面に位置する組織部分を示すように選択され、第二波長範囲は、データが上記組織領域の深部に位置する組織部分を示すように選択される。この場合、第一波長範囲および第二波長範囲は、異なるスペクトル帯に位置しており、青色スペクトル帯および赤色スペクトル帯である。第一波長は約400nm~約420nmの第一波長範囲内の415nm付近/周辺としてよく、第二波長は約600nm~約800nmの第二波長範囲内の650nm付近/周辺としてよい。別の可能な例では、第一波長は450~500nmの第一波長範囲内の470nm付近/周辺であり、第二波長は600~800nmの第二波長範囲内の650nm付近/周辺である。
【0009】
上記の実施形態の代わりまたは追加として用いられ得る、いくつかの他の実施形態では、第一波長範囲および第二波長範囲は実質的には同じスペクトル帯にあり、第一波長範囲および第二波長範囲は、測定データがモニター中の組織領域の表面組織部分を示すように選択される。第一波長は400~420nmの第一波長範囲内のおよそ415nm付近/周辺としてよく、第二波長は420~450nmの第二波長範囲内のおよそ435nm付近/周辺としてよい。これらの実施形態の別の可能な例は、420~450nmの第一波長範囲の435nm付近の第一波長と、450~500nmの波長範囲の470nm付近の第二波長の使用である。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記制御部は、2つの別々の選択波長範囲において照明および/または収集が行われた生物組織の同一領域からの光反応を示す2つの平均強度間の関係(例えば、比率)を算出することにより、データを処理するように構成され且つ作動可能である。この関係は生物組織の酸素化/脱酸素化状態を示す/説明するものである。選択波長において測定された光反応間のこのような関係(比率)が、個体特異的且つ/または測定位置(身体部分)特異的であり得る、ある特定の正常値となる場合があることを理解されたい。この正常値は、キャリブレーション法または予備的機械学習法で求める場合がある。すなわち、実際の測定/検出対象は、正常値からの関係(比率)の変化となる。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記制御部は、リアルタイムで生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定するように構成され且つ作動可能である。
【0012】
いくつかの実施形態では、組織は、異なる波長範囲(例えば、青色波長範囲および赤色波長範囲)を有する2種の電磁ビームを用いることで照明される。次いで、上記の異なる波長範囲に対応する2種の反射され後方散乱した光線が、検出部(結像型または非結像型)の使用により収集される。上記システムは、光反応を受信し、少なくとも2枚のそのピクセル化画像を生成するように構成され且つ作動可能である撮像部を備えていてもよい。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「撮像部」とは、ピクセル化デジタル画像データ(静止画または動画)を作成可能な任意のデバイスを指す。データは、少なくとも2枚のピクセル化画像を含み得る。本明細書で使用される場合、明確さのために、用語「画像」とは、肉眼で見える画像(例えば、印刷紙などの恒久的媒体上、または表示画面(LED、LCD、CRT)などの電子媒体上に表示されている場合)を指し、さらに、上記画像を表す画像データ(特に、電子データ)を指し、画像データには磁気媒体または電気媒体(例えば、フラッシュメモリ、磁気ディスク、磁気テープ)上に保存されたデータなどが含まれる。
【0014】
データの処理は、各画像において、上記領域の特定の範囲を示すピクセルを特定することと;特定の範囲のそれぞれについて上記の少なくとも2枚のピクセル化画像のピクセル毎の比較を実行することと;ピクセル毎に生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定することと、組織酸素化/脱酸素化状態を示すマップとしての処理画像を生成すること、を含み得る。本明細書で使用される場合、明確さのために、用語「ピクセル」とは、ピクセル化画像(表示された、またはデータとして保存されたピクセル化画像)を構成する要素を指し、また、文脈による指示がある場合は、ピクセルの値を指す。制御部は、組織の深部における組織部分の酸素化状態との比較において、組織表面における組織部分の酸素化状態を示す、組織領域の処理画像を生成するように構成され且つ作動可能であり得る。
【0015】
撮像部が用いられる場合、2種の反射され後方散乱した光線を示す画像データが上記のようにピクセル毎に比較され、組織内に存在する酸素化/脱酸素化血液が測定される。次いで、第一画像データと第二画像データのピクセル毎の比較を実行し、血液-酸素化組織状態マップデータを作成することで、画像が得られ得る。選択された適切な波長範囲の抽出により、フルカラーのマッピングが実行される。
【0016】
いくつかの実施形態では、撮像部は、光反応を受信し、少なくとも2枚のそのピクセル化スペクトル画像を生成するように構成され且つ作動可能であるスペクトル撮像部を備えている。よって、データは、少なくとも2枚のピクセル化スペクトル画像を含み得る。データの処理は、上記の少なくとも2枚のピクセル化スペクトル画像から、それぞれ照明および/または収集の選択波長範囲に対応する少なくとも2枚の単色画像を抽出することと、上記の少なくとも2枚の単色画像の特定の範囲のそれぞれについてのピクセル毎の比較を実行することと、スペクトル分解された組織酸素化/脱酸素化マッピングを示す処理画像を生成すること、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、撮像部は、少なくとも2つの撮像部を備え、各撮像部は異なる選択波長範囲内の少なくとも1種の電磁ビームを検出するように構成され且つ作動可能である。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記システムは、照明源および撮像部と接続された、組織からの正反射を除去するように構成され且つ作動可能である、少なくとも2つの交差偏光素子を備えている。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記システムは、非画像データを取得するように構成され且つ作動可能である非結像型光検出部を備えている。非結像型光検出部は、2つの別々の選択波長範囲において照明および/または収集が行われた生物組織からの同一領域の光反応を受信し、その領域の少なくとも2つの平均強度を生成するように構成され且つ作動可能である。よって、データは、2つの別々の波長範囲における少なくとも2つの平均強度を示す非画像データを含み得る。データの処理は、2つの平均強度間の比率を算出することを含み得る。光反応(例えば、拡散反射光)の強度の測定には、好適な任意の検出部または検出器の組み合わせを用いてよい。例えば、光電式検出器(例えば、光ダイオード、光トランジスタ、光電子増倍管、光アイソレータ(optiosolator)、および光集積回路)、光導電型検出器(例えば、フォトレジスタ、光導電型撮像管、電荷結合素子)、誘発放出型検出器(例えば、注入レーザーダイオード、量子カスケードレーザー)、放射再結合型検出器(発光ダイオード、有機発光ダイオード)、および光電子放出型(photoemissitivy)検出器(光電子放出型撮像管)などの、オプトエレクトロニクスコンポーネントを含む検出部を用いてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記システムは、2種の別々の波長範囲の電磁ビームで生物組織を照明するように構成され且つ作動可能である照明源を備えている。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記の方法は、微小循環機能を抑制または向上するように設計された治療の定量化およびモニタリングを可能にする。加えて、微小循環の機能性の評価、および局所的組織酸素化のモニタリングは、共に、組織活力を確認するための、並びに、治療のエンドポイントおよび治療後の組織生存力を決定するための、様々な外科的処置(例えば、形成外科、組織移植)の補助となる。これに関連して、全身の血行動態に関する変動要因により臓器潅流の大雑把な評価しか得られないため、局所組織酸素化の評価は非常に困難なものであることを理解されたい。全身的なSpOパラメータは、感度が低く、局所組織レベルでの安全な酸素化の非特異的な指標になる。
【0022】
生物組織の表面は任意の好適な表面である。いくつかの実施形態では、生物組織の領域は、生物組織の表面上に重ねられた二次元的マトリックスとしてもよい。いくつかの実施形態では、上記表面は皮膚であり、特にヒト皮膚である。いくつかの実施形態では、上記表面は腸管の内面である。いくつかの実施形態では、上記表面は脳の神経組織である。いくつかの実施形態では、上記表面は脳を覆う硬膜である。いくつかの実施形態では、上記表面は筋組織である。いくつかの実施形態では、上記表面は眼球の内側と向かい合う網膜の表面である。
【0023】
本発明の別の広義の態様によれば、生物組織内の酸素化のモニタリングで用いられる方法が提供される。上記方法は、1または複数の測定セッションで用いられる作動データを決定することで、生物組織の酸素化/脱酸素化組織状態を示すデータの収集を可能にすること、を含み、上記の決定は、上記の1または複数の測定セッションで用いられる2つの波長範囲内の2つの別々の波長(光反応の照明および/または収集用波長)を選択することで、上記の2つの波長に対する生物組織の領域の光反応を示すデータの作成を可能にすること、を含む。上記の2つの波長範囲は、組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンよりも高くなる第一波長範囲と、組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンよりも高くなる第二波長範囲と(逆もまた同じ)、を特定し、上記の特定された波長の各々の場合で、デオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との間の比率が比較的高い(好ましくは最も高い)条件を満たす、第一波長範囲および第二波長範囲からの第一波長および第二波長を選択すること、によって選択される。
【0024】
上記方法は、上記の作動データを用いて1または複数の測定セッションで得られた測定データであって、上記の2つの別々の選択波長範囲における生物組織の同一領域からの光反応を示す測定データの解析と;生物組織の酸素化/脱酸素化状態の判定と、をさらに含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記方法は、組織からの正反射を低減させながら、上記の1または複数の測定セッションを実行することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記方法は、異なる選択波長範囲を有する少なくとも2種の電磁ビームで生物組織を照明することを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記方法は、2つの別々の選択波長範囲における生物組織の同一領域からの光反応を示す画像データまたは非画像データを収集することを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記方法は、目的領域の酸素化/脱酸素化組織状態を表示することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本明細書で開示される発明の主題をより深く理解するため、また、それが実際にどのように実行され得るかを例示するため、以下に実施形態を記載するが、単なる非限定的な例であり、以下の貼付の図面を参照する。
図1図1は、ヘモグロビン(Hb)およびオキシヘモグロビン(HbO)の典型的な吸収スペクトルを示している。
図2A図2Aは、血流閉塞法の前およびその間の、時間の関数としての、予め選択された2つの波長の強度の変化を測定するために用いられた、光検出用デバイス(光検出器、オシロスコープ)の表示画面を模式的に示している。
図2B図2Bは、血流閉塞法の前およびその間の、時間の関数としての、予め選択された2つの波長の強度の変化を測定するために用いられた、光検出用デバイス(光検出器、オシロスコープ)の表示画面を模式的に示している。
図2C図2C図2Eは実験結果をより具体的に示しており、図2Cは、正常状態(すなわち血管閉塞なし)のヒトの腕で測定された、2つの波長λ1およびλ2の場合で測定された光反応の生データを示している。
図2D図2Dは、閉塞モード開始時のヒトの腕で測定された各光反応を示している。
図2E図2Eは、2分間の閉塞モードの間の各光反応の変化を示している。
図3図3は、生物組織の酸素化状態のモニタリングを実現するデータ処理用システム(制御部)を例示するブロック図である。
図4図4は、本発明のいくつかの実施形態に係る生物組織内の酸素化をモニタリングするためのシステムを例示する写真である。
図5A図5Aは、血流閉塞法の前およびその間の、標準的なTC-PO2システム(ペリメド社(PERIMED))と本発明の方法とを用いた組織酸素飽和度(StO)モニタリングの、グラフによる例示である。
図5B図5Bは、血流閉塞法の前およびその間の、従来のパルスオキシメータと本発明の方法とを用いた組織酸素飽和度(StO)モニタリングの、3つのグラフによる例示である。
図5C図5Cは、血流閉塞法の前およびその間の、従来のパルスオキシメータと本発明の方法とを用いた組織酸素飽和度(StO)モニタリングの、3つのグラフによる例示である。
図5D図5Dは、血流閉塞法の前およびその間の、従来のパルスオキシメータと本発明の方法とを用いた組織酸素飽和度(StO)モニタリングの、3つのグラフによる例示である。
図6図6は、本明細書における教示による血液酸素化センサによって求められた組織内の酸素化血液量と、血液酸素化を求めるための市販の先行技術装置によって求められた組織内の酸素化血液量と、を比較しているグラフであって、酸素化血液量は肺洗浄法の間に測定され、上記装置は熱傷による肺不全を患う重度熱傷患者の腕に設置された、グラフを表している。
図7図7A図7Eは、本発明のいくつかの実施形態において生物組織内の酸素化をモニタリングするための可能な光学結像機構を示す略ブロック図である。
図8図8は、生物組織内の酸素化をモニタリングするための方法を例示するフローチャートである。
図9図9A~9Cは、3つの異なる締付け様式(通常(図9A)、2分間の虚血(図9B)、および血流再開後(図9C))下にある指の、本発明の方法を用いることで取得された3枚の画像である。
図10図10は、本発明のいくつかの実施形態において生物組織内の酸素化をモニタリングするための可能な光学機構を示す略ブロック図である。
図11図11は、スペクトルイメージングカメラと機能的に接続されたコンピュータプロセッサを備えている、一実施形態のデバイスを模式的に示している。
図12図12A図12Dは、マウスにおける移植皮弁の酸素化を判定するために用いられた、本明細書における教示を示している。
図13図13A図13Bは、前頭部から鼻部への転位により作製された皮弁の酸素化を判定するために用いられた、本明細書における教示を示している。
図14図14A図14Bは、鼻部再建中の組織の酸素化を判定するために用いられた、本明細書における教示を示している。
図15図15A図15Dは、脳機能のリアルタイムモニタリングために用いられた、本明細書における教示を示している。
図16図16A図16Cは、光熱療法を用いたがん治療をモニタリングするために用いられた、本明細書における教示を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別途定義がない限り、本明細書で使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、本明細書が、定義も含めて、優先されるものとする。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「包含する(including)」、「有する(having)」、およびその文法的変形語は、記載された特徴、整数、工程、または構成要素を特定しているものと解釈されるが、1または複数のさらなる特徴、整数、工程、構成要素、またはその群の追加を排除するものではない。これらの用語は、用語「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0032】
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、文脈によって特に明示されない限り、「少なくとも1つ」または「1または複数の」を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、数値の前に用語「約」がある場合、用語「約」は+/-10%を表すことが意図される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「Aおよび/またはB」という形式の句は、(A)、(B)、または(AおよびB)からなる群からの選択を意味する。本明細書で使用される場合、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」という形式の句は、(A)、(B)、(C)、(AおよびB)、(AおよびC)、(BおよびC)、または(AおよびBおよびC)からなる群からの選択を意味する。
【0035】
本明細書に記載の方法および/またはシステムの実施形態は、用手的、自動的、またはその組み合わせで、選択された作業を実行または完了させることを含み得る。本明細書に記載のいくつかの方法および/またはシステムは、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはその組み合わせを含む構成要素を用いて実施される。いくつかの実施形態では、いくつかの構成要素は、汎用コンピュータ、汎用デジタルプロセッサ、または汎用オシロスコープなどの汎用の構成要素である。いくつかの実施形態では、いくつかの構成要素は、回路、集積回路、またはソフトウェアなどの専用または特別仕様の構成要素である。
【0036】
明確さのために別々の実施形態に関連付けられて説明されている、本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供される場合もあることは理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連付けられて説明されている本発明の種々の特徴は、別々に、もしくは任意の好適な部分組合せにおいて、または、好適な場合、本発明の任意の他の記載の実施形態において、提供される場合もある。種々の実施形態に関連付けられて説明されているある特定の特徴は、実施形態がそれらの構成要素なしで動作不能でない限り、それらの実施形態の必須の特徴とは見なされない。
【0037】
図1を参照すると、オキシヘモグロビン(HbO)および(デオキシ)ヘモグロビン(Hb)の典型的な吸光度スペクトルが示されている。本発明者らは、組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンよりも高くなる第一波長、且つ組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンよりも高くなる第二波長(逆もまた同じ)、となるように、また、2つの波長が、特定された第一波長および第二波長の各々の場合で、デオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との間の比率が比較的高い(実質的/近似的に最も高い)という条件を満たす第一波長および第二波長を含むように、照明および/または収集の、2つの異なる波長を選択することにより、およびいくつかの実施形態では異なる波長範囲の2つの波長を選択することにより、特別な対比がもたらされることを見出した。このユニークな、2つの異なる波長の選択は、オキシヘモグロビン(HbO)の吸光度と(デオキシ)ヘモグロビン(Hb)の吸光度との間の変化の検出を可能にする。重要なこととして、このユニークな、2つの異なる波長の選択は、生物組織状態の判定および生物組織状態における変化の測定を可能にする。
【0038】
この方法が、StO2ヘモグロビン測定が心臓パルス信号に依存するパルスオキシメータ法とは完全に異なることは理解されよう。この特別な対比は、モニター中の組織の表面組織部分を示すデータを取得することを可能にし、いくつかの実施形態では、モニター中の組織の表面に位置する第一組織部分を示すデータと、モニター中の組織の深部に位置する第二組織部分を示すデータとを取得することを可能にする。
【0039】
本発明の方法の利点として、蛍光法(高価であり、アレルギー誘発性であり得る物質を患者に注射することを必要とし、時間がかかる)の使用を必要とせず、さらに、アレルギー誘発性であり得る、患者への物質の注射(例えば、造影剤)を必要としないという点にも注目されたい。
【0040】
よって、本発明のこの新規の方法によって、患者に物質を注射することなしに、組織酸素化マップが得られる。画像では動脈と静脈が明確に区別される。例えば、より高い酸素化血液量(Ioxy)値を有するピクセルが、動脈識別と関連付けられる。これらは赤色に表示され得る(当該ピクセルに対応する表面の下層の組織内の酸素化血液が多いことを定性的に示す)。静脈識別と関連付けられた、中間のIoxy値を有するピクセルは、青色に表示され得る(当該ピクセルに対応する網膜表面の下層の組織内の酸素化血液が少ないことを定性的に表す)。血液を欠く神経組織および結合組織の識別と関連付けられた低Ioxy値を有するピクセルは、白色に表示され得る(当該ピクセルに対応する網膜表面の下層の組織内に血液がないことを定性的に表す)。
【0041】
よって、いくつかの実施形態では、第一波長範囲は、データが生物組織の表面付近の組織部分の組織状態を示すように選択され、一方、第二波長範囲は、モニター中の生物組織の深部の組織部分の組織状態を示すデータを与える。この新規方法を用いることにより、当該体積の生物組織が、生存可能と見なされる十分/不十分な酸素化血液を含んでいるかどうかを示す、組織状態の表示が実現される。さらに、本方法は、移植において組織生存力を評価することを可能にする予測手段を提供する。
【0042】
例えば、上記の原理に従って、(青色光の)第一波長の低い方の範囲は、400nmまたは405nmまたは410nmまたは412nmとすることができる。第一波長の高い方の範囲は、418nmまたは420nmとすることができる。あるいは、(青色光の)第一波長の低い方の範囲は、450nmまたは460nm、または465nmまたは468nmとすることができる。第一波長の高い方の範囲は、472nmまたは475nmまたは480nmまたは500nmとすることができる。
【0043】
例えば、上記の原理に従って、(赤色光の)第二波長の低い方の範囲は、600nmまたは630nmまたは640nmとすることができる。第一波長の高い方の範囲は、660nmまたは670nmまたは800nmとすることができる。
【0044】
特定の非限定的な例において、第一波長および第二波長は、415nmおよび650nm(狭い特定の範囲であり、広い範囲ではない)に指定され、この場合、酸素化Hbと脱酸素化Hbとの間の比率が最大となる。
【0045】
当該領域の下層にある当該体積の生物組織内の酸素化血液量を、定性的に求めてもよい。酸素化血液は、比較的高い(酸素化血液の比率が大きい)場合は十分であると認定され、あるいは、酸素化血液は、比較的低い(酸素化血液の比率が小さい)場合は不十分であると認定され得る。以下、第一波長範囲による照明および/または収集が行われた目的生物組織の表面の少なくとも1つの領域からの光反応(すなわち、後方散乱したもの)の強度(ピクセル毎または測定領域の平均)を「第一強度(Ifirst)」と呼ぶ。上記で定義されたように、用語「第一強度」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの領域を第一波長範囲内の波長を有する光で照明した結果としての、第一波長範囲(例えば青色光)において生物組織の表面の少なくとも1つの領域から拡散反射(散乱)された光の測定強度であり、第一波長範囲は上記定義の通りである。第二波長範囲による照明および/または収集が行われた場合の目的生物組織の表面の同一領域から拡散反射(すなわち後方散乱)された光の強度(ピクセル毎または測定領域の平均)を「第二強度(Ifirst)」と呼ぶ。上記で定義されたように、用語「第二強度」は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの領域を第二波長範囲内の波長を有する光で照明した結果としての、第二波長範囲(例えば赤色光)において生物組織の表面の少なくとも1つの領域から拡散反射された光の測定強度であり、第二波長範囲は上記定義の通りである。低い第一強度を伴う高い第二強度は、生物組織の表面のある領域の下層に存在するある体積の生物組織が比較的多くの酸素化血液を含有していることを示し、一方、高い第一強度を伴う低い第二強度は、当該領域の下層に存在するある体積の生物組織が比較的少ない酸素化血液を含有していることを示す、ということが分かった。
【0046】
これに関連して、図2A図2Eを参照すると、光検出器/オシロスコープデバイスを用いた血流閉塞法の前およびその間の、時間の関数としての、予め選択された2つの波長の強度における変化の測定の、特定の非限定的な例が例示されている。
【0047】
図2Aおよび図2Bの、トレース20およびトレース22は、第一波長および第二波長の場合の、測定シグナル(光反応強度)の時間変化(time evolution)に該当する。
【0048】
図2C図2Eは、正常状態(すなわち血管閉塞なし)のヒトの腕で測定された、2つの波長λ1およびλ2の場合で測定された光反応(図2C)、閉塞モード開始時のヒトの腕で測定された各光反応(図2D)、並びに、2分間の閉塞モードの間の各光反応の変化(図2E)の、より具体的な生データを示している。
【0049】
この非限定例では、第一強度および第二強度の両方が、1または複数の光検出器(例えば、60Hz)を用いて繰り返し測定され、オシロスコープにインプットされ、このオシロスコープが、第一強度値および第二強度値を、オシロスコープ画面上のトレースとして、時間の関数として表示する。外付けのシグナル増幅器または増幅器をオシロスコープの一部としてもよく、それを用いて、第一強度トレース20および第二強度トレース22の両方を、比較を可能にする類似の値でオシロスコープ画面上に同時に表示させてもよい。
【0050】
第一強度および第二強度のトレース20とトレース22との間の距離(Y軸上の差異)が図2Aのように実質的に一定のままである限り、その比較によって、生物組織の表面の当該領域の下層に存在する当該体積の生物組織が、生存可能と見なされるのに十分な酸素化血液を含んでいる(例えば、健常である)という結論を裏付ける証拠が得られる。図2Bのように、第二強度のトレース22の強度値が徐々に低くなり、一方で、第一強度のトレース20の強度値が徐々に高くなることに注目した場合、この比較からは、生物組織の表面の当該領域の下層に存在する当該体積の生物組織が、生存可能と見なされるには不十分な酸素化血液しか含んでいない(例えば、前壊死状態または壊死状態)、という結論を裏付ける証拠が得られる。
【0051】
例えば、比較を実行するためのコンパレータを備えた血液酸素化モニタを用いて経時的に組織の酸素化血液量をモニタリングする場合、1または複数の光検出器を用いて第二強度および第一強度の両方が繰り返し測定される(例えば、1Hz)。第二強度値>第一強度値である間、生物組織の表面の当該領域の下層に存在する当該体積の生物組織が生存可能と見なされるのに十分な酸素化血液を含んでいる、という結論を裏付ける証拠が上記比較により得られた、という表示をコンパレータは出力する。第二強度値<第一強度値である場合、生物組織の表面の当該領域の下層に存在する当該体積の生物組織が生存可能と見なされるのに十分な酸素化血液を含んでいる、という結論を裏付ける証拠が上記比較により得られた、という表示をコンパレータは出力し、生物組織内の酸素化のモニタリングを可能にする組織状態の表示が実現される。
【0052】
図3を参照すると、本発明のシステムの主要素子を例示しているブロック図が示されている。システム100は生物組織内の酸素化のモニタリングを目的とする。システム100は、2つの選択波長範囲内の少なくとも2つの別個の波長λおよびλにおいて照明および/または収集が行われた生物組織の同一領域Rからの光反応を示すデータを受信し、各選択波長範囲を示すデータの比較によりデータ処理を行い、生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定するように構成され且つ作動可能である、制御部202を備えている。照明および/または収集の2つの波長範囲は、組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンよりも高くなる第一波長範囲λと、組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンよりも高くなる第二波長範囲λと(逆もまた同じ)、を含み、2つの波長範囲内の2つの波長は第一波長および第二波長を含み、その各々は、デオキシヘモグロビンによるこの波長の吸光度とオキシヘモグロビンによるこの波長の吸光度との間の比率が比較的高い(最高/最大限または実質的/近似的に最高/最大限の比率であることが好ましい)という条件を満たす。本発明の方法によるいくつかの実施形態(組織内の異なる深部に透過する第一波長および第二波長の適切な選択)では、制御部202は、組織の深部における酸素化状態との比較において、組織の表面付近における酸素化状態を示す、組織の処理画像を生成するように構成され且つ作動可能である。
【0053】
いくつかの実施形態では、当該領域の下層にある当該体積の生物組織内の酸素化血液状態を、定量的に求める。第一強度および第二強度は、所与の組織において、一緒になって組織酸素化の数値と相関している可能性があることが分かった。以下に記載するように、第一強度の第二強度との比較により、数値は求められ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、制御部202は、2つの別々の選択波長範囲において照明および/または収集が行われた生物組織の同一領域からの光反応を示す2つの平均強度間の比率を算出することにより、データを処理するように構成され且つ作動可能である。
【0055】
例えば、組織の状態は以下の通りに算出され得る:
式中、AおよびBは、独立して、0以外の1を含む任意の好適な正の数であり;xおよびyは、独立して、1を含む任意の好適な数であり;mおよびnは、独立して、0を含む任意の好適な数である。
【0056】
例えば、組織の状態は以下の通りに算出され得る:
【0057】
いくつかの実施形態では、制御部202は、比較を実行するためのコンピュータプロセッサ、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、タブレット、スマートフォン、デジタルカメラ、医療機器コントローラなどのプロセッサデバイス内に存在するもののようなコンピュータプロセッサ、を備えている。本明細書で使用される場合、コンピュータプロセッサは、数学的機能およびデータ処理を実行するようにプログラムすることのできる、電子デバイスである。本明細書で使用される場合、プロセッサは、インプットとして2つの電子信号を受信した後、それら2つの電子信号の比較を構成する電子信号を出力するように構成された、電子デバイスである。プロセッサという用語の非限定的な例としては、コンパレータ、除算回路(division circuit)、オシロスコープ、およびコンピュータプロセッサが挙げられる。プロセッサという用語の非限定的な例としては、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FGPA)、特定用途向け集積回路(ASIC)や、さらに、コンピュータ、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォン、およびタブレットなどのデバイスが挙げられる。本明細書における教示を実行するために、このようなコンピュータプロセッサは、通常、本明細書に記載の機能および方法を実行するように、例えばソフトウェア命令を用いてプログラムされる。
【0058】
制御部202は、デジタルビデオカメラの一部、または血液酸素化モニタの一部であってもよい。制御部202がデジタルビデオカメラの一部であるいくつかの実施形態では、本発明のシステムは、それにより、生物組織の表面の下層に存在する組織の血液酸素化のリアルタイム動画として一連の画像を表示し、そのアウトプットが血液酸素化組織状態マップとなる。システムが血液酸素化組織状態モニタであるいくつかの実施形態では、制御部202は、皮弁が生存可能と見なされるのに十分な酸素化血液量を有することの証拠を示す場合があり、皮弁が生存可能と見なすには不十分な酸素化血液量しか有していない場合は、別の「警告」シグナルをアウトプットする。
【0059】
いくつかの実施形態では、制御部202は、比較実行用のコンピュータプロセッサを備えていないが、オシロスコープ、デジタルコンパレータおよびアナログコンパレータ、デジタル除算回路、およびアナログ除算回路などの、比較の実行に好適な別のプロセッサを備えている。
【0060】
制御部202は、検出部104(例えば、オプトエレクトロニクスコンポーネント、デジタルカメラ)と、直接的または間接的(例えば、検出部104がデータを取得しストレージコンポーネント上にデータを保存し、その後、データがストレージコンポーネントから回収され制御部202に供給される)にデータ通信している。検出部204が対象からある特定の距離に配置された場合、制御部202に受信される生データは、例えば、目的の広範囲の種々の目的波長の多数のピクセルの強度となり得る。検出部204が対象と接して配置された場合、収集された生データは、最も小さい範囲の場合の、種々の目的波長の強度となり得る。標準の撮像部104A(光反応を受信し、少なくとも2枚のそのピクセル化画像を生成するように構成され且つ作動可能である)が用いられる場合、撮像部が画像データを収集すると、制御部202が、少なくとも2枚の画像のピクセル毎の比較を実行し、ピクセル毎に生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定し、組織酸素化/脱酸素化マッピングを示す処理画像を生成し得る。スペクトル撮像部(光反応を受信し、少なくとも2枚のそのピクセル化スペクトル画像を生成するように構成され且つ作動可能である)が用いられる場合、撮像部が画像データを収集すると、制御部202が、少なくとも2枚のピクセル化画像からそれぞれ照明および/または収集の波長範囲に対応する単色画像データを抽出し、少なくとも2枚の単色画像のピクセル毎の比較を実行し、ピクセル毎に生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定し、スペクトル分解され組織酸素化/脱酸素化マッピングを示す処理画像を生成し得る。本明細書で使用される場合、用語「単色画像データ」とは、ピクセル化画像を表すデジタルデータを指し、ピクセル化画像において、各ピクセルの値は光量のみを表す単一の強度値であり、すなわち、強度情報のみを含む。非結像型光検出部104B(光反応を受信し、その領域の少なくとも2つの平均強度を生成するように構成され且つ作動可能である)が用いられる場合、制御部202が、光検出部から、第一波長範囲および第二波長範囲において生物組織の表面の少なくとも1つの領域から拡散反射された光の第一平均強度および第二平均強度を、それぞれ第一波長範囲および 波長範囲の波長を有する光で少なくとも1つの領域に照明および/または収集を行った結果として、受信し得る。
【0061】
通常、制御部202は、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、または、いかなる種類の集積回路であってもよい。制御部202は、通常、演算/電子ユーティリティとして構成され、とりわけ、データインプットモジュール/ユーティリティ202Aおよびデータアウトプットモジュール/ユーティリティ202B、記憶ユーティリティ202C(すなわち、不揮発性のコンピュータ可読媒体)、並びにアナライザ/データ処理ユーティリティ202Dなどのユーティリティを含む。よって、制御部202のユーティリティは、好適な回路構成によって、且つ/あるいは、生物組織の同一領域の少なくとも2枚のピクセル化画像を示すデータを受信し、当該データを処理することで、スペクトル分解された組織酸素化/脱酸素化マッピングを示す処理画像を生成するように構成されたコンピュータ可読コードを含む、ソフトウェアコンポーネントおよび/またはハードウェアコンポーネントによって、実行され得る。本発明の特徴には、種々のコンピュータハードウェアコンポーネントを備えた汎用または専用のコンピュータシステムが含まれ得る。本発明の範囲に含まれる特徴には、コンピュータが実行可能な命令、コンピュータ可読の命令、もしくはデータ構造を実行するための、またはそれを保存するための、コンピュータ可読媒体も含まれる。このようなコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータシステムがアクセス可能な、任意の利用可能な媒体であってよい。例として、限定はされないが、このようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EPROM、フラッシュディスク、CD-ROM、または、他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージ、もしくは他の磁気ストレージデバイスなどの物理的記憶媒体を含むこともあれば、あるいは、コンピュータが実行可能な命令、コンピュータ可読の命令、またはデータ構造の形態で所望のプログラムコード手段を運搬または保存するために使用でき、且つ、汎用または専用のコンピュータシステムによってアクセスされ得る、任意の他の媒体を含むこともある。コンピュータ可読媒体は、広域ネットワーク(WAN)(例えばインターネット)などのネットワークを通じてコンピュータシステムにダウンロード可能なコンピュータプログラムまたはコンピュータアプリケーションを含み得る。
【0062】
本明細書および下記の特許請求の範囲において、「制御部」は、協働して電子データ上のオペレーションを実行する、1または複数のソフトウェアモジュール、1または複数のハードウェアモジュール、またはその組み合わせと定義される。例えば、制御部の定義には、パーソナルコンピュータのハードウェアコンポーネントだけでなく、パーソナルコンピュータのオペレーティングシステムといったソフトウェアモジュールも包含される。モジュール同士の物理的な配置は重要とはならない。コンピュータシステムは、コンピュータネットワークを介して連結された1または複数のコンピュータを含んでいてもよい。同様に、コンピュータシステムは、内部モジュール(メモリおよびプロセッサなど)が協働して電子データ上のオペレーションを実行する、単一の物理的デバイスを含んでいてもよい。制御部202は、コンピュータプログラムを実行する内蔵の、または外付けのプロセッサから構成されてもよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読のプログラムコードが内蔵された1または複数のコンピュータ可読媒体に内蔵させてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読の信号媒体としてもよいし、あるいはコンピュータ可読の記憶媒体としてもよい。本発明の各態様においてオペレーションを実行するためのコンピュータプログラムコードは、1または複数のプログラミング言語の任意に組み合わせで書かれていてもよい。プログラムコードは、ユーザーのコンピュータ上で全体が実行されてもよいし、独立型ソフトウェアパッケージとしてユーザーのコンピュータ上で部分的に実行されてもよいし、ユーザーのコンピュータ上で部分的に実行され、遠隔コンピュータ上で部分的に実行されてもよいし、あるいは、遠隔コンピュータまたはサーバ上で全体が実行されてもよい。後者の場合、遠隔コンピュータは、構内ネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)を包含する任意の種類のネットワークを通じてユーザーのコンピュータに接続されていてよく、あるいは、上記の接続は外部コンピュータに(例えば、インターネットサービスプロバイダを利用するインターネットを通じて)なされていてもよい。これらのコンピュータプログラムの命令が、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに与えられることで、コンピュータまたは他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図の1または複数のブロックにおいて特定される機能/アクションを実行するための手段を生み出すように、機械が作製され得る。プロセッサの特定の機能は、特定の機能またはアクションを実行する専用ハードウェアをベースとしたシステム、または専用ハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせに実行させることができる。いくつかの実施形態では、実装形態は、入力デバイス(例えば、命令および/またはパラメータの入力を可能にする)および出力デバイス(例えば、オペレーションのパラメータおよび結果の報告を可能にする)のうちの1または複数を通常備えた、ユーザーインターフェースを含む。
【0063】
例えば、異なる波長の強度と組織酸素化の数値との間の対応関係の表が、データベースに保存されている場合がある。そのような表をメモリ202Cに保存してもよい。あるいは、ストレージをサーバから分離させてもよい(例えば、SANストレージ)。分離させる場合、ストレージの場所は1つの身体位置にあってもよいし、あるいは複数の位置にあって、任意の種類の有線または無線の情報通信基盤を通じて接続されていてもよい。データベースは、デジタルデータを保存するための任意の種類の方法またはプラットフォームに基づくものであり得る。データベースとしては、例えば、OracleサーバおよびMS SQLサーバなどの従来のSQLデータベース、ファイルシステム、ビッグデータ、NoSQL、インメモリデータベース装置、パラレルコンピューティング(例えば、Hadoopクラスタ)などを挙げることができる。メモリ202Cとしては、データベースの記憶媒体として構成されている場合、磁気ディスクまたは磁気テープ、オプティカルストレージ、半導体ストレージなどの、任意の標準的または特許保護された記憶媒体を挙げることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、システム100は、クラウドベースの構成に構成され、且つ/あるいは、インターネットベースのコンピューティングを利用し、そのため、処理ユーティリティ202Dの各部、および/またはメモリ202Cは、複数の別個の地理的(geographic)位置に存在していてもよい。テラヘルツ(THz)の応答信号を受信後、データ処理ユーティリティ202Dは、当該信号を処理することが可能となる。信号処理工程の結果は、表示コンポーネントに表示させてもよいし、且つ/あるいは、ストレージコンポーネントに保存してもよいし、且つ/あるいは、伝達コンポーネント、信号生成コンポーネント、およびこれらの組み合わせを介してデータ通信部に送信されてもよい。
【0065】
より具体的には、制御部202のデータ出力202Bは以下のアクションのうちの少なくとも1つを用いて出力され得る:
ヒトが見られるように一時的または永続的な画像(表示画面(例えば、LED、CRT、LCD)、またはプリンタなど)を生成する表示コンポーネントを用いて、処理の結果が表すものを表示すること、
ストレージコンポーネント上(例えば、磁気ディスク、フラッシュメモリ、ソリッドステートメモリ、コンピュータメモリ、レーザーディスク、フロッピーディスク、磁気テープなどの磁気媒体上)に結果を保存すること、
伝達コンポーネントを用いて(例えば、Wi-FiまたはBluetooth(登録商標)トランシーバなどのトランスミッタ、携帯電話トランスミッタ、調光型トランスミッタ、高周波トランスミッタを用いて無線で、あるいは、コンピュータ、サーバ、スマートフォン、電話、タブレットなどの遠隔デバイスに有線で繋げて)、結果を遠隔デバイスに伝達すること;並びに
信号生成コンポーネントを用いてヒトが知覚できる結果を示す信号を生成すること(例えば、ヒトが見ることのできる可視信号、ヒトが聞くことのできる可聴信号、ヒトが感じることのできる可触信号を生成することで、当該体積の生物組織が十分な酸素化血液を含んでいるという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合は警告解除信号を示し、且つ/あるいは、当該体積の生物組織が不十分な酸素化血液しか含んでいないという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合は警告信号を示す)。
【0066】
ヒトが知覚できる信号の例は以下のうちの1または複数とすることができる:可聴信号(すなわち、聞くことにより知覚されるもの)、例えば、当該体積の生物組織が十分な酸素化血液を含んでいるという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合の穏やかな音、および/または、当該体積の生物組織が不十分な酸素化血液しか含んでいないという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合の警告信号としての警告音;可視信号(すなわち、視覚により知覚されるもの)、例えば、当該体積の生物組織が十分な酸素化血液を含んでいるという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合の緑色光、および/または、当該体積の生物組織が不十分な酸素化血液しか含んでいないという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合の点滅赤色光);並びに、可触信号(すなわち、触覚により知覚されるもの)、例えば、当該体積の生物組織が十分な酸素化血液を含んでいるという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合の穏やかな振動、および/または、当該体積の生物組織が不十分な酸素化血液しか含んでいないという結論を裏付ける証拠が上記処理によって得られた場合の強く持続的な振動)。
【0067】
画像データの各ピクセルは、生物組織の表面の当該領域の特定範囲iに対応している。いくつかの実施形態では、制御部202が各画像の特定範囲iを特定する。より具体的には、制御部202は、第一画像データにおいて対応するピクセルP1(i)を特定し、第二画像データにおいて対応するピクセルP2(i)を特定するように構成される。制御部202は次いで、P1(i)の値をP2(i)の値と比較し、部位iに対応する血液酸素化組織状態マップデータにおけるピクセルP3(i)の場合のIoxy値を算出する。得られた血液酸素化組織状態マップデータは、生物組織の表面の下層に存在する組織内の酸素化血液状態の分布をピクセル化して表している。
【0068】
いくつかの実施形態では、血液酸素化組織状態マップデータは、目に見える単色モノクロ画像として表示され、すなわち、表示された血液酸素化組織状態マップデータは単一の色を含み、各ピクセルはそのピクセルのIoxy値に基づいた異なる強度または濃淡の色を有する。このような目に見える単色画像の典型的なものは、グレースケール(例えば、最低ピクセル値である黒色、最高ピクセル値である白色、および中間値である灰色の色合い)、セピア、および緑色である。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態では、比較の結果が血液酸素化組織状態マップデータを含む場合、出力用コンポーネントは、ヒトの目に見える画像を表示するように構成され、酸素化血液組織状態が良い組織部分は酸素化血液組織状態が悪い組織部分とは異なるように表示される。例えば、いくつかの実施形態では、プロセッサおよび出力用コンポーネントは、ある体積の生物組織が生存可能と見なされるのに十分な酸素化血液を含んでいるという結論を裏付ける証拠が比較により得られた場合に特定の出力、例えば警告解除信号、を発するように構成される。
【0070】
いくつかの実施形態では、血液酸素化組織状態マップデータは、目に見えるカラー化された単色画像として表示される。そのような実施形態では、各ピクセルは単一の強度値Ioxyだけを有するが、そのような強度値は各々、2以上の色の組み合わせとして表示され得る。例えば、1つのそのような実施形態において、0~255の強度値Ioxyを有する血液酸素化組織状態マップデータの各ピクセルは、目に見えるカラー化された単色画像において、赤色光の強度Ireddisplay=Ioxyおよび青色光の強度Ibluedisplay=255-Ioxyを有するピクセルによって表示される。
【0071】
この例示的な実施形態の表示画像において、強度値が高いピクセルは赤色として表示され、強度値が低いピクセルは青色として表示され、強度値が中間のピクセルは種々の色合いの紫として表示される。例えば、異なるそのような実施形態において、0~255の強度値Ioxyを有する血液酸素化組織状態マップデータの各ピクセルは、目に見えるカラー化された単色画像において、0~100のIoxy値が徐々に色合いが明るくなる青色となり、101~149のIoxy値が徐々に色合いが明るくなる緑色となり、150~255のIoxy値が徐々に色合いが明るくなる赤色となる、ピクセルによって表示される。
【0072】
いくつかの実施形態では、結果の出力の1または複数はリアルタイムで実行される。例えば、いくつかの実施形態では、患者に対し手術中の外科医が患者の様々な部分の相対酸素化血液量を判定することを補助するためなどに、電子ディスプレイ画面上への代表的な処理の結果である画像の表示がリアルタイムで実行される。
【0073】
さらにまたはあるいは、制御部202は、生成された血液酸素化組織状態マップデータを連続的に出力し:例えば、デジタルビデオカメラを用いて一連の画像データが連続的に取得され、そこからプロセッサによって対応する一連の血液酸素化組織状態マップデータが連続的に生成された場合、得られた一連の血液酸素化組織状態マップデータが画面上に連続的に表示され、手術(例えば、脳手術)中の医療従事者を補助し、特定の刺激を患者に与えた場合に活性化される大脳皮質の領域を特定し得る。
【0074】
例えば、いくつかの実施形態では、処理が実行された直後に、警告解除信号または警告信号が発せられる。
【0075】
例えば、いくつかの実施形態では、制御部202は、リアルタイムで結果を局所的に記憶してもよく、且つ/あるいは、リアルタイムでストレージに対し(例えば、電子医療ファイルに)結果を無線伝達し、且つ/あるいは、警報を作動させ(例えば、看護師室に対して)、下層の組織が生存不可であることの証拠を医療従事者に示す。いくつかの実施形態では、制御部202はリアルタイムで信号を作動し、医療従事者に結果についての警告を行う。いくつかの実施形態では、信号はリアルタイムで発せられない。それにより、ストレージコンポーネントに保存された血液酸素化組織状態マップデータは、とりわけ、転送、保存、記録、表示、研究、および自動分析用に、回収可能となる。ストレージコンポーネントは任意の好適なデータストレージコンポーネントである。いくつかの実施形態では、ストレージコンポーネントは、光ストレージコンポーネント(例えば、レーザーディスク、CD、DVD)、磁気ストレージコンポーネント(例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、磁気テープ、フロッピーディスク)、光磁気ストレージコンポーネント(例えば、ミニディスク)、および電子ストレージコンポーネント(例えば、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ)からなる群から選択される1または複数のストレージコンポーネントである。
【0076】
メモリ202Cはデータ処理ユーティリティ202Dによって実行可能な命令を含み得る。命令は、データ処理ユーティリティ202Dが、光反応を示すデータを受信し、当該データを処理し、生物組織の酸素化/脱酸素化状態を判定することと、データ出力ユーティリティ202Bを介して酸素化/脱酸素化組織状態に関する通知を出力することを可能にする働きをし得る。通知は、中央データベースに対し、外部装置による無線接続または有線接続を介して中継され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、システム100は検出部104を備えていてもよい。検出部104は、以下のデバイスの1つに組み込まれていてもよいし、それの一体部分であってもよい:生物組織の酸素化状態を判定するためのプローブ、血管造影を実行するためのデバイス、網膜血管造影を実行するためのデバイス、スペクトルイメージングカメラ、医療用デジタルカメラ、経口内視鏡(ingestible endoscope)、内視鏡、検眼鏡、眼底カメラ、軟性内視鏡、上部消化管内視鏡、腸鏡、胆膵管鏡、大腸内視鏡、S状結腸鏡、鼻鏡、気管支鏡、膀胱鏡、女性生殖器鏡(gynoscope)、子宮鏡、卵管鏡、羊水鏡、胃内視鏡、耳鏡、腹腔鏡、パンエンドスコープ、および胎児鏡。この場合、本発明は、遠隔からまたは接触状態で、大組織領域のヘモグロビン酸素化マッピング能を示す分析ソフトウェアを備えた撮像装置を提供する。いくつかの実施形態では、検出部104が第一強度および第二強度を求める。いくつかの実施形態では、第一強度を求める検出部および第二強度を求める検出部は異なる検出器であり、各検出器は異なる選択波長範囲内の少なくとも1つの電磁ビームを検出するように構成され且つ作動可能である。いくつかの実施形態では、各検出器は第一強度および第二強度を同時に求める。いくつかの実施形態では、各検出器は第一強度および第二強度を同時には求めない。
【0078】
いくつかの実施形態では、撮像部104Aは、生物組織の表面のピクセル化された単色画像データを取得するように構成され且つ作動可能であるカメラである。カメラはモノクロカメラであってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、システム100は、生物組織を2種の別々の波長範囲の電磁ビームで照明するように構成され且つ作動可能である照明源102を備えている。照明源102は、コヒーレント光もしくはインコヒーレント光、LEDなどの狭い波長範囲内の光、レーザー、または2つの波長範囲のうちの特定の一方の光で専ら照明するように構成された光学フィルタを備えた広帯域光源(例えば、キセノンランプ)で照明する光源を少なくとも1つ備える。例えば、照明源102は、専ら第一範囲内の波長を有する第一光で、または専ら第二範囲内の波長を有する第二光で、交互に生物組織の表面を照明するように構成される。照明源102は、単一の物理装置とすることもできるし、あるいは、複数の物理的に分離された装置とすることもでき、上記の複数の装置は、一緒になって動作可能なものであってもよいし、あるいは独立して動作可能なものであってもよい。制御部202は、本明細書における教示に基づいたシステム100の他のコンポーネントの電力供給用、およびその起動用に構成されてもよい。より具体的には、制御部202は、照明源102を制御(例えば起動)し、照明の波長範囲を選択するように構成され且つ作動可能であってもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、拡散反射光(2つの波長範囲の一方または両方の拡散反射光)は、光導波路を備えた検出部へと誘導される。例えば、組織の表面の少なくとも1つの領域は、照明源102によって発せられ、光導波路で表面付近に誘導された光で照明される。あるいは、いくつかの実施形態では、拡散反射光(2つの波長範囲の一方または両方の拡散反射光)は、光導波路を用いずに検出部104に到達する。第一波長範囲内の波長を有する光および第二波長範囲内の波長を有する光による少なくとも1つの領域の照明は、同時であっても同時でなくてもよい。
【0081】
いくつかのそのような実施形態において、システム100は、第一状態において検出部に第一波長のみの伝達を行い、第一状態において当該検出部は第一波長範囲のデータのみを決定するように構成されており、第二状態においては当該検出部に第二波長範囲のみの伝達を行い、第二状態において当該検出部は第二光のデータのみを決定するように構成されている、少なくとも1つの光学フィルタ(例えば交換可能)をさらに備える。いくつかのそのような実施形態において、検出部は、第一波長範囲のみを検出するように構成された第一検出部、および第二波長範囲のみを検出するように構成された第二検出部を備える。
【0082】
いくつかの実施形態では、システム100は、例えば鏡面反射光の検出を防ぐことにより、拡散反射光のみを光検出器に検出させるコンポーネントを備えている。拡散反射光のみを検出させるようにするためのコンポーネントは当業者に周知である。いくつかの実施形態では、検出部104は、偏光フィルタ、例えば偏光照明器に対して交差偏光された偏光フィルタ、と機能的に接続されている。いくつかの実施形態では、システム100は、照明源102および検出部104と接続された、組織からの正反射を除去するように構成され且つ作動可能である、少なくとも2つの交差偏光素子を備えている。
【0083】
図4を参照すると、本発明のシステム200の一例が示されている。この特定且つ非限定的な例において、制御部202は、この例におけるRGBセンサである検出部204と、および照明源302と、データ通信している。この特定且つ非限定的な例において、照明源302は、3つの青色LEDおよび3つの白色LEDを備えている。
【0084】
図5A図5Dを参照すると、本発明の教示を用いて実施された臨床研究が示されている。臨床試験は、標準的なパルスオキシメータおよびtcpO2デバイスによる指における全身StO2モニタリングと比較した、本発明の方法の検証を目的とした。本試験では、指および腕の皮膚のStO2を同時に減少させる空気カフを用いて、血管閉塞を実施した。図5Aを参照して、膨張式カフを膨張させることで、前腕への酸素化血液の流れを減少させ、3分後、当該膨張式スリーブを収縮させた。図5Aは、標準的TC-PO2システム(ペリメド社)と、本発明のシステムを用いて実施された同時測定との間の相関を示しいている。これらの2つのデバイスは患者の左腕に配置された。血圧カフ膨張による血行抑制の前、間、および後に測定を行った。図5Aでは、カフの膨張による腕への血流の減少が、腕の酸素化血液の量に測定可能な減少をもたらしたことが分かる。重要なこととして、本明細書における教示(下側グラフ)とtcpO2(上側グラフ)を用いて達成された測定の絶対値間の密接な相関は、本明細書における教示を較正(例えば、tcpO2センサに対して較正)することで、生物組織内の酸素化状態の定量的測定を達成できることを示している。
【0085】
図5B図5Dは、空気カフ膨張によってなされた血管閉塞中の、3人の健常人における組織酸素化のモニタリングを示している。本発明の教示および標準的なパルスオキシメータ(指プローブ)を用いた同時測定を比較した。より具体的には、図5Bは、血圧(BP)カフによる血行閉鎖処置中の、本発明のシステムを用いた腕の皮膚における組織酸素化の、およびパルスオキシメータを用いた指における組織酸素化の、非較正測定値を示している。脈拍がない(inattentive)場合、パルスオキシメータからのシグナルは確認されない。図5Cおよび図5Dは、BPカフによる血行閉鎖処置中の、本発明のシステムを用いた腕の皮膚における組織酸素化状態の、およびパルスオキシメータを用いた指における組織酸素化状態の、較正測定値を示している。脈拍がない(inattentive)場合、パルスオキシメータからのシグナルは確認されない。測定開始時および測定終了時の両データの間に良好な相関が示された。図5B図5Dを参照すると、脈拍がない間、パルスオキシメータは酸素化血液量を求めることができなかったが(曲線51、52、54)、本明細書における教示に基づいた組織酸素化センサは中断なく動作し続けた(曲線50、56、58)ことが分かる。全身の組織酸素飽和度と局所の組織酸素飽和度との間の動態の違いが明確に示されている。
【0086】
有意な相関を示す信頼性と再現性がある結果が、肺不全を患う志願者および患者に対する臨床試験における、本発明のシステムの測定と標準的なパルスオキシメータの測定との間で確認された。熱傷ユニットに収容された患者は通常、肺不全および急性呼吸不全を呈しており、人工呼吸を受ける。患者は液体吸引(肺から粘液を除去する方法)による肺洗浄を必要とする。この処置の間、患者は肺損傷の程度に応じて、呼吸装置および全身StOから徐々に離されていく。肺洗浄処置中、標準的パルスオキシメータによる全身StO記録と同時に、本発明のシステムを用いて、患者においていくつかの測定が行われた。本発明のシステムの検出部が患者の脚の皮膚に取り付けられた。熱傷ユニットの患者における組織酸素化のモニタリングが、肺洗浄の処置中に、本発明のシステムおよびパルスオキシメータを用いて、行われた。
【0087】
これに関連して、図6を参照すると、肺洗浄処置中の、508における本発明の組織酸素化センサを利用したシステムおよび510におけるパルスオキシメータを用いた、熱傷ユニットにおける患者の組織酸素化のモニタリングが示されている。本発明の組織酸素化センサおよびパルスオキシメータは、肺不全を呈する重度熱傷被害者の腕に配置された。この図には、肺洗浄処置中の、本発明のシステム(b)およびパルスオキシメータ(a)を用いた、熱傷病棟の患者における組織酸素化の測定が示されている。より具体的には、トレース「a」は、パルスオキシメータにより求められた血液酸素化の値に対応しており、トレース「b」は本発明の教示に基づいた測定の絶対値に対応している。見て分かるように、測定開始時および測定終了時の両データの間に良好な相関が示されている。このことは、本発明の教示に較正(例えば、パルスオキシメータに対する較正)を行うことで、組織内の血液酸素化状態の定量的測定が可能であることを示している。重要なこととして、熱傷被害者に対する酸素供給が停止され、被害者が通常の空気を呼吸しており、被害者の酸素化血液量が減少した際に、追跡は開始された。両方のセンサが、被害者が呼吸のための酸素供給を再度受けた300秒の時点で、酸素化血液量の即時の増加を示した。
【0088】
図7Aを参照すると、本発明のシステム300の可能な光学系構成が表されている。制御部202は検出部104および照明源402とデータ通信している。この特定且つ非限定的な例において、照明源402は、2つの狭帯域光源(例えばLEDまたはレーザー)を備える。各LEDは異なる選択波長λおよびλで物体を照明する。検出部104(例えばデジタルカメラ)は測定/モニター中の組織の光反応を収集するために使用される。この非限定例において、検出部104は、第一波長光検出器および第二波長光検出器の両方として機能する単一の光検出器(例えば、光センサ、モノクロデジタルカメラ、モノクロデジタルビデオカメラ)を備える。異なる波長λおよびλの照明と収集を分割するために異なるビームスプリッタ610および620がシステム300で使用される。
【0089】
あるいはまたはさらに、第一および第二の別個であるがスペクトル的に近い波長範囲(例えば、両方青色スペクトル)の第一波長および第二波長により2つ以上の測定セッションを行うために、同一の光源(例えば、LEDまたはレーザー)を用いることができる(例えば、1または複数の適切なスペクトルフィルタを備えていてもよい)ことは理解されよう。この場合、2つの異なる波長を用いた測定/撮像は時間的に隔てられたセッションに組み込まれてもよい。以下、この実施形態をさらに詳細に説明する。
【0090】
図7Bを参照すると、本発明のシステム400の可能な光学系構成が表されている。制御部202は検出部304および照明源502とデータ通信している。この特定且つ非限定的な例において、照明源502は、1つの光源(例えばLED)を備える。検出部104(例えばデジタルカメラ)は光反応を収集するための2つの検出器を備える。各検出器は2つの選択された別々の波長λおよびλにおいて光反応を収集するように構成され且つ作動可能である。異なる波長λおよびλの収集を分割するためにビームスプリッタ610がシステム400で使用される。
【0091】
図7Cを参照すると、本発明のシステム500の可能な光学系構成が表されている。制御部202は検出部404および照明源502とデータ通信している。この特定且つ非限定的な例において、照明源502は、2つの光源(例えばLED)を備える。各LEDは異なる選択波長λおよびλで物体を照明する。検出部404(例えばデジタルカメラ)は光反応を収集するための2つの検出器を備える。各検出器は2つの選択された別々の波長λおよびλにおいて光反応を収集するように構成され且つ作動可能である。異なる波長λおよびλの収集を分割するためにビームスプリッタ620がシステム500で使用される。
【0092】
図7Dを参照すると、本発明のシステム600の可能な光学系構成が表されている。システム600のいくつかの実施形態では、照明源36は、第一波長範囲内の波長および第二波長範囲内の波長の両方を有する光を放出するための広帯域コンポーネント光源(例えば、キセノンランプ)を備える。光源によって放出された光は、第一波長範囲内の波長を有する光のみを透過させる第一光学フィルタ46aおよび第二波長範囲内の波長を有する光のみを透過させる第二光学フィルタ46bを備えた、交換可能な光学フィルタ44を介して、生物組織の表面40に向けられる。光学フィルタ46aおよび光学フィルタ46bは回転板48上に取り付けられる。制御部38が電動モーター50を起動して板48を回転させることで、光学フィルタ46aおよび光学フィルタ46bが広帯域コンポーネント光源からの光に交互にフィルタをかけ、それにより、第一範囲内の波長を有する光のみまたは第二範囲内の波長を有する光のみで生物組織40の表面を交互に照明してもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、照明源102は、それぞれが異なる選択波長範囲において生物組織を照明するように構成され且つ作動可能である、少なくとも2つの光源を含んでいてもよい。あるいは、組織は、異なる波長範囲を有する2つの光線を用いることで照明されてもよい。あるいは、組織は、選択波長範囲の透過を可能にする2つの異なるフィルタを有する広帯域光源を用いることで照明される。例えば、照明源は、例えば回転板上に取り付けられた、第一波長範囲内の波長を有する光のみを透過させる光学フィルタおよび第二波長範囲内の波長を有する光のみを透過させる異なる光学フィルタを含む、機能的に接続された交換可能光学フィルタを有する、広帯域コンポーネント光源(例えば、キセノンランプ)を備える。
【0094】
図7Eを参照すると、本発明のシステム650の可能な光学系構成が表されている。システム650は、2つの光学的光導波路(光ファイバーケーブル):生物組織の表面40からの光反応を光検出器34に誘導するための光学的光導波路54および生物組織の表面40を照明するための照明源36からの照明光を誘導するための光学的光導波路56、を備える。
【0095】
図8を参照すると、本発明の方法を例示しているフローチャート700が示されている。
【0096】
方法700は、702において、生物組織の酸素化/脱酸素化組織状態を示すデータの収集を可能にするための、1または複数の測定セッションで使用される作動データ(すなわち、照明および/または収集の波長)を決定することを含む。これは、2つの波長に対する生物組織のある領域の光反応を示すデータの生成を可能にするための、2つの波長範囲内の2つの別々の波長を選択することによって、行われる。これらの2つの波長範囲は、組織内のデオキシヘモグロビンの吸光度がオキシヘモグロビンよりも高くなる第一波長範囲と、組織内のオキシヘモグロビンの吸光度がデオキシヘモグロビンよりも高くなる第二波長範囲と(逆もまた同じ)、を含み、上記2つの波長範囲内の2つの波長は、上記の特定された波長範囲の場合で、デオキシヘモグロビンの吸光度とオキシヘモグロビンの吸光度との間の比率が比較的高い(実質的/近似的に最も高い比率であることが好ましく)条件を満たす、第一波長範囲および第二波長範囲を含む。上記方法は、工程704および工程706において、上記の2つの波長を用いて1または複数の測定セッションで測定された光反応データの解析を実行する。測定データは、測定/撮像部それ自体であってもよい測定データ提供デバイスから(オンラインモード)、または測定データが既に されたストレージデバイスから(オフラインモード)、受信される。すなわち、2つの別々の選択波長範囲における生物組織の同一領域からの光反応を示す測定データが受信および処理され、生物組織の酸素化/脱酸素化組織状態が判定される。
【0097】
いくつかの実施形態では、704における処理は、704Aにおける各選択波長範囲を示すデータの比較を含む。非画像データが受信された場合、比較は、2つの別々の選択波長範囲における生物組織の同一領域からの光反応を示す2つの平均強度間の比率を算出することにより、実行され得る。あるいは、画像データが受信された場合、比較は、各画像において、当該領域の特定範囲を示すピクセルを特定し;それぞれの特定範囲の場合で少なくとも2枚のピクセル化画像のピクセル毎の比較を実行することにより、実行され得る。あるいは、スペクトル画像データが受信された場合、比較は、少なくとも2枚のピクセル化画像から、それぞれ照明および/または収集の選択波長範囲に対応する少なくとも2枚の単色画像を抽出し;少なくとも2枚の単色画像の特定範囲のそれぞれのピクセル毎の比較を実行することによって、実行され得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、方法700は、708において、組織酸素化/脱酸素化マッピングを示す処理画像を生成することを含む。組織の処理画像は、組織の深部における酸素化状態との比較において、組織の表面における酸素化状態を示す。いくつかの実施形態では、方法700は、708において、モニター中の組織の表面付近に両方位置する第一組織部分および第二組織部分の酸素化状態を示す処理画像を生成することを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、方法700は、710において、異なる選択波長範囲λおよびλを有する少なくとも2種の電磁ビームで生物組織を照明することを含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、方法700は、712において、2つの別々の選択波長範囲における生物組織の同一領域からの光反応を示す画像データまたは非画像データを収集することを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、方法700は、714において、目的領域の酸素化/脱酸素化状態を表示することを含む。
【0102】
いくつかのそのような実施形態において、上記方法は、第一波長範囲における生物組織の表面の少なくとも1つの領域から拡散反射された光の強度の測定時に、第一波長範囲内の波長を有する光で少なくとも1つの領域を照明すること;および、第二波長範囲における生物組織の表面の少なくとも1つの領域から拡散反射された光の強度の測定時に、第二波長範囲内の波長を有する光で少なくとも1つの領域を照明すること、をさらに含む。
【0103】
例えば、いくつかの実施形態では、上記方法は、組織の部分が十分な酸素化血液を受け取っているかどうかを医療従事者が判定することを補助するために用いられる、ペン様の組織酸素化プローブの一部である、制御部202により実行される。医療従事者はプローブを組織(例えば移植皮弁)の表面と接触させ、本発明のシステムを起動する。上記システムは、皮弁が生存可能と見なされるのに十分な酸素化血液量を有しているという証拠を、上記処理が与えるかどうかを報告する。
【0104】
モニタリングは任意の好適な期間、繰り返し実行されてもよい。例えば、本明細書における教示が手術中の組織の血液酸素化状態をビデオ撮影するために実施される場合、その期間は医療従事者が有用と見なす限りの期間であり、典型的には手術の期間である。例えば、本明細書における教示が回復期の患者の組織皮弁の血液酸素化状態を連続モニタリングするために実施される場合、その期間は医療従事者が有用と見なす限りの期間であり、典型的には皮弁への血液供給が十分でありモニタリングの必要性はもはやないと医療従事者がみなすまでの数日の期間である。特に、本発明の教示には、従来はパルスオキシメーター法で与えられる全身血行状態とは独立して、組織の表面における組織酸素化状態のモニタリングが定量的且つ連続的に与えられ得る。
【0105】
繰り返し率は、医療従事者にとって何が有用かによって特定の実施形態のそれぞれの場合で決定される、任意の好適な率である。集められ処理されるデータの量は非常に少ないため、上記率は100Hzとすることができ、あるいは、これが有用であると分かった場合にはさらに高頻度にすることができる。いくつかの実施形態では、より遅い率で十分であり、例えば、本明細書における教示が回復期の患者の組織皮弁の血液酸素化をモニタリングするために実施されるいくつかの実施形態では、繰り返し率は通常は1Hzより速くはならず、例えば、1分に1回であり、あるいは5分毎に1回であることすらある。
【0106】
図9A図9Cを参照すると、3つの異なる締付け様式(通常(図9A)、2分間の虚血(図9B)、および血流再開後(図9C))下にある指の、本発明の方法を用いることで取得された3枚の画像が示されている。図9Aは正常な指の状態下の、指締付けによる組織虚血モデルを示している。この特定且つ非限定的な例では、指は広帯域光源(コールドホワイト)を用いて照明され、青色光(λ1)および赤色(λ2)波長範囲で同時に取得がなされた。画像処理は、16色LUTを用いたグレースケール画像の疑似カラー画像への変換を含む。
【実施例
【0107】
実施例1A
組織の皮弁の酸素化血液組織状態をモニターするために、システムは、図10に模式的に示されている酸素化センサ82を2つ含む。各酸素化センサ82は密閉型防水センサ本体84を有し、接触面86は少なくとも405nm~670nmの範囲の光波長に対して透過的である0.5mm半径の照明窓64を有する。
【0108】
センサ本体84の内側には以下が含まれる:
a.酸素化センサの他のコンポーネントに電力を供給するための電源66(バッテリ);
b.第一照明器42aとしての、405nm~420nmの波長を有する光を発し、発せられた光を照明窓64を通じて射出するように構成されたLED;
c.第二照明器42bとしての、630nm~670nmの波長を有する光を発し、発せられた光を照明窓64を通じて射出するように構成されたLED;
d.第一(青色)および第二(赤色)検出器として、少なくとも405nm~670nmの範囲の光の強度を決定するように構成された単一光検出器34;
e.Bluetooth(登録商標)無線トランシーバ68;並びに
f.酸素化センサの他のコンポーネントと機能的に関連付けられたプリント回路基板上のコンピュータプロセッサ、タイマー、およびソリッドステートメモリを含み、以下を実行するように構成されたコントローラ38:
i.トランシーバ68を介して使用者により送られた起動命令を受信すること;
ii.命令の受信後、第一照明器42aおよび第二照明器42bを交互に起動し、表面86が接している生物組織の表面の一領域を、トランシーバ68を介して使用者から受信した速度および時間の条件で照明すること;
iii.第一強度(第一照明器42aが起動されたときに生物組織の表面から拡散的に散乱された光の強度)および第二強度(第一照明器42bが起動されたときに生物組織の表面から拡散的に散乱された光の強度)を、光検出器34から、コントローラ38のメモリ上に、受信し保存すること;
iv. Ioxy=第二強度/第一強度の算出により、受信した第一強度および第二強度を比較すること;並びに
v.酸素化センサ82が無線トランシーバ68を介して無線通信している遠隔デバイスに、無線トランシーバ68を介して、使用者により選択された速度で、算出されたIoxyを伝達すること。酸素化センサ68はレンズを備えていない。
【0109】
簡便な使用のために、提供された2つの酸素化センサ82の1つ目は、接触面86の枠に塗られた接着剤によりヒト対象の耳たぶに張り付けられる。提供された2つの酸素化センサ82の2つ目は、接触面86の枠に塗られた接着剤により、フラップ手術の際に形成されたヒト対象の組織の皮弁に張り付けられる。
【0110】
マスターとしてのBluetooth(登録商標)が使用可能なスマートフォンと、スレーブとしての2つの酸素化センサ86とを含む、Bluetooth(登録商標)ピコネットが形成され、スマートフォンは本明細書における教示を実行するように必要に応じてプログラムされる。1秒に1回の速度で、スマートフォンは、耳たぶセンサ86からはIoxy(基準)を、皮弁センサ86からはIoxy(皮弁)を受信する。
【0111】
ピコネット形成後の最初の1分間について、スマートフォンが、皮弁がフラップ手術時に維持且つ/または新たに作製された血液供給から十分な酸素化血液を受け取っていることを示す基準値として比率OxContent(0)=Ioxy(皮弁)/Ioxy(基準)を算出する。
【0112】
その後、2つの酸素化センサが2つのIoxy値を伝達し、スマートフォンが対応するOxContent(t)値を算出する。OxContent(t)がOxContent(0)の80%以内のままである間は、スマートフォンはスマートフォンメモリへのOxContent(0)の保存のみを行う。OxContent(t)がOxContent(0)の80%を下回った場合、スマートフォンは常駐医師にアラームを送信し、その後、常駐医師は皮弁がまだ生存可能であるかどうかの検討を選択することができる。
【0113】
本発明の実施に好適な光学系を模式的に例示している図7A図7Cに戻って、第一および第二の異なる波長は比較的近いものであってもよいことに留意されたい。また、光源はレーザーを利用するものであってもよい。言い換えれば、例えば図6Aの構成を考えると、LED λおよびLED λと標識された素子は、2つの異なるレーザー、あるいは、同一レーザーの、それぞれ2つの連続的な作用を構成し得る。従って、制御部(図6Aの202)は、適時に分離された撮像セッションに対応する/そこで収集された第一画像データおよび第二画像データを処理するように構成され且つ作動可能であり得る。これは、例えば、第一時間枠において第一波長(例えば第一照明源を用いて)で組織を照明すること、および第二時間枠において第二波長(例えば第二照明源を用いて)で組織を照明すること、によって、実行され得る。異なる照明波長を使用しながら、交互のデータで動作すること(すなわち、適時に分離した測定/撮像セッションで撮像セッションを実行する)は、例えば交差偏光子で置き換えられ得る、スペクトル選択性フィルタ610、620を不要にする。すなわち、図中の参照番号610、620は偏光子を構成していてもよい。あるいは、それぞれ第一および第二の時間枠内に作動される異なる第一および第二のスペクトルフィルタを有する同一の照明源が使用され得る。このような交互測定モードを使用することのさらなる利点は、収集された信号間の干渉なしに、異なるが近い波長の照明を実行できることである。交差偏光子610、620は、使用される場合、組織表面からの正反射を除去するように構成され得るため、高いSB比を与えるであろう。また、偏光を発するレーザーユニットが使用されてもよく、この構成が交差偏光方式と併用された場合により高いエネルギー効率を与えることも、注目されるべきである。さらに、異なるが近い波長を使用することで、色収差を補正する必要がなくなるため有利である。
【0114】
より具体的には、異なるがスペクトル的に近い第1波長および第2波長を有する照明を利用するこのような実施形態では、波長は約415nm(415±5nm)および約430~440nm(例えば435nm)であり得る。なお、後方散乱光の信号は実際には組織内の同じ深部からのものであるため、撮像システムには深部の違いを補正するための光学系は必要なく、異なる波長での測定を交互に行うことが単純化されるであろう。このような実施形態用のダイオードレーザーは、容易に入手可能であり、また、エネルギー消費を減らし、安全性を高めるために、短パルスを与えるようにも制御され得る。このように、スペクトル的に近接したこのような光源の使用は、容易に入手可能であり、大血管の酸素化情報とは別々に独立して組織酸素化をモニターすることを可能にし得る。青色光は組織の表面からと、組織の表面のすぐ近くで主に反射および散乱するのに対し、大血管は組織の深部に存在するため、このようにして収集された組織酸素化情報が、大血管の酸素化情報とは無関係であることは、強調されるべきである。
【0115】
実施例1B
実施例1Aと同じく、モニターされる表面は以下である:
移植組織(例えば、親指として移植された足の親指);
鼻部を再建するために用いられた前頭部由来の皮弁;
腹部組織から再建された乳房;
乳房縮小術後の乳房;および
事故に遭った患者の一部であって、生存可能であるかどうかが不明な一部。
【0116】
実施例1C
実施例1Aに記載されたものと同様の組織酸素化センサが使用された。センサの本体は直径2cmのプラスチック製の円板であった。RGB光センサ(S9706、浜松ホトニクス株式会社製、静岡、日本)が円板の中央に配置された。この光センサは、650nmの赤色光の強度および413nmの青色光の強度を検出することが分かった。円の中には、光センサの周りに、8個のLEDがセンサの照明源として配置された:4個の温白色LED(ASMT-UWB-1-NX3J2、ブロードコム社製、アービン、カリフォルニア、米国)および4個の青色LED(413nm光を発することが分かっていた、OCU-400 411 OS、Osaオプトライト社(Osa Opto Light GmbH)、ベルリン、ドイツ)。
【0117】
標準的な膨張式カフが患者の上腕に配置された。組織酸素化センサおよび標準的な市販tcpO2センサ(ペリメド社(Perimed AB)、イェルフェッラ、スウェーデン)が患者の前腕の裏側に互いに近くに配置され、これら2つのセンサの出力端子はラップトップコンピュータに配向され、2つのセンサから受信したデータが受信および解析された:tcpO2センサからは、血液酸素化の測定値がmmHg単位で表示され、組織酸素化センサからは第二強度/第一強度として表示された。この実験の結果が上記の図5Aに示されている。
【0118】
なお、本発明の組織酸化センサと標準的なパルスオキシメータとの間では、同様の相関性の高い測定結果が得られており、これらの結果は上述の図5B図5Dおよび図6に示されている。これらの図は、標準的なパルスオキシメータで測定した血液酸素化の値と、本発明の組織酸化センサを用いた測定の絶対値との間の密接な相関関係を示している。
【0119】
実施例2A
図11には、本明細書における教示に基づいたシステム98の実施形態が模式的に示されており、要点としては、コンピュータプロセッサ76は市販のラップトップコンピュータ100のコンポーネントであった。入力ポート12を介して、コンピュータプロセッサ76は、スペクトルイメージングカメラ102および広帯域照明源36(ハロゲンランプ照明源および交差偏光フィルタセットを取り付けられたASI(ミグダルハエメク、イスラエル)製の市販のSD-300スペクトルイメージングカメラ)と機能的に接続された。プロセッサ76はまた、エビデンス出力ポート14を介して、各出力コンポーネント(表示コンポーネントとしての表示画面104aおよびプリンタ104b、ストレージコンポーネントとしてのストレージコンポーネントとしての外付けハードディスク104c、並びに伝達用コンポーネントとしてのBluetooth(登録商標)トランシーバ104d)と機能的に接続された。
【0120】
カメラ102と接続された画像処理ソフトウェアは、コンピュータ100上で、本明細書における教示に基づいた第一ピクセル化単色画像データ(青色画像データ)および第二ピクセル化単色画像データ(赤色画像データ)を、カメラ102から受け取った取得スペクトル画像から自動的に抽出し、その後、ピクセル毎の除算(各ピクセルについて、Ioxy=第二強度/第一強度)を用いて本明細書における教示に基づいた組織酸素化マップデータとしての第三ピクセル化単色画像データを自動的に生成することを、実行するようにプログラムされた。
【0121】
図11に記載の構成を用いて、身体部分の表面のスペクトル画像が得られ、自動的に身体部分の血液酸素化組織状態マップデータが生成され、身体部分の表面下の組織における酸素化の状態が示される。
【0122】
具体的には、患者が指の付け根に鉗子を配置した後、30秒毎に1回、上記のように、カメラ102を用いて指のスペクトル画像を取得し、取得されたスペクトル画像をプロセッサ76に供給することにより、血液酸素化組織状態マップとしての第三ピクセル化単色画像データが生成された。対応する血液酸素化組織状態マップデータが生成され、ハードディスク104c上に保存され、カラー化版が画面104a上に表示され、所望により、プリンタ104bを用いて紙に印刷された。必要な場合、血液酸素化組織状態マップデータがトランシーバ104dを用いてスマートフォンに転送された。
【0123】
表示された血液酸素化組織状態マップが、デジタル写真の技術分野において公知の16色LUT(Lookup Table)を実行する無料公開のソフトウェアを用いて疑似カラーにカラー化され、最も高い値を有するピクセルが暗赤色として表示され(当該ピクセルに対応する皮膚の下層に存在する組織内の酸素化血液が多いことを定性的に示す)、最も低い値を有するピクセルが濃青色として表示された(当該ピクセルに対応する皮膚の下層に存在する組織内の酸素化血液が少ないことを定性的に示す)。中間の強度値は、暗赤色からオレンジ色に進行し、オレンジ色から黄色に進行し、黄色から緑色に進行し、緑色から青色に進行し、最終的に濃青色に進行する、14種類の異なる色のうちの1色を割り当てられた。
【0124】
表示されたカラー化血液酸素化組織状態マップから、どのように指の酸素化血液量が徐々に減少していったかが分かった。3分後、鉗子が指から取り除かれ、表示されたカラー化血液酸素化組織状態マップから、どのように指の酸素化血液量が徐々に増加し正常へと戻っていったかが分かった。
【0125】
実施例2B
本システムを用いて、ヒト網膜の青色画像データおよび赤色画像データが同時に取得された。1組の同時取得された画像、第一カメラからの青色画像データおよび第二カメラからの赤色画像データが、プロセッサとしての適切に構成された(画像処理ソフトウェアを用いて)汎用ラップトップコンピュータに入力され、青色画像データによる赤色画像データのピクセル毎の除算(各ピクセルについて、Ioxy=第二強度/第一強度)が実行され、網膜の血液酸素化組織状態マップデータを構成する第三ピクセル化単色画像データが生成された。コンピュータは、コンピュータ画面上にグレースケール画像としてデータを表示することにより、および、コンピュータハードディスク上にデータを保存することにより、第三ピクセル化単色画像データを出力した。
【0126】
表示されたグレースケール画像が処理され、動脈、静脈、および網膜に明確に対応している画像の各部分と関連付けられた強度値が確認された。カラー化された第三画像が、デジタル写真の技術分野において公知の16色LUT(Lookup Table)を実行する無料公開のソフトウェアを用いて疑似カラーに生成され、動脈の特定と関連付けられた高いIoxy値を有するピクセルは赤色として表示され(当該ピクセルに対応する網膜表面の下層に存在する組織内の酸素化血液が多いことを定性的に示す)、静脈の特定と関連付けられた中間のIoxy値を有するピクセルは青色として表示され(当該ピクセルに対応する網膜表面の下層に存在する組織内の酸素化血液が少ないことを定性的に示す)、血液がない神経組織および結合組織の特定と関連付けられた低いIoxy値を有するピクセルは白色として表示された(当該ピクセルに対応する網膜表面の下層に存在する組織内の血液の欠如を定性的に示す)。
【0127】
得られた血管造影画像は、例外的に高い解像度を示しただけでなく、最も小さい動脈および静脈さえも示し、その画像を検討することで動脈と静脈の区別を明確に付けることを可能にした。
【0128】
実施例2C
いくつかの実施形態では、光導波路(例えば、内視鏡の一部である光導波路)が撮像カメラ(例えばスペクトルカメラ)の対物レンズに接続され、光導波路が生物組織の表面から反射された光を対物レンズに誘導し、検出がなされる。いくつかのそのような実施形態では、内視鏡の先端は照明源(例えば白色光源)を備える。別のそのような実施形態では、光導波路が照明源(例えば、白色光源、キセノンランプ)と機能的に接続されることで、照明源が照明源からの光を、生物組織の表面を照明するように誘導する。
【0129】
実施例2D
医師により、糖尿病の結果としての足部潰瘍を有する対象の看護が行われる。上記と類似または同一の方法で、足部潰瘍の青色画像データおよび赤色画像データが取得され、足部潰瘍の血液酸素化組織状態マップデータが生成される。医師により、血管拡張剤による患者の治療が処方される。患者が血管拡張剤を摂取した1週間後、足部潰瘍の青色画像データおよび赤色画像データが取得され、治療後の足部潰瘍の血液酸素化組織状態マップデータが上記の通りに生成される。医師により、2つの血液酸素化組織状態マップデータが視覚的に表示および比較されて、上記の血管拡張剤による治療が潰瘍の治療において有効であったかどうか確認される。
【0130】
実施例2E
本明細書における教示を用いて、いくつかの外科的処置の後の皮弁の生存能がモニターされる。外科的処置においては、組織皮弁(フラップ手術の際に形成された皮弁)または移植片を有する対象がモニターされ、患者は院内患者であった。上記と類似または同一の方法で、青色画像データおよび赤色画像データが取得され、皮弁および周辺組織の血液酸素化組織状態マップデータが必要に応じて生成され、ここで、青色画像データ波長は405nm~420nmであり、赤色画像データ波長は630nm~670nmであり、P3(i)=P1(i)/P2(i)であった。生成された血液酸素化組織状態マップデータは、デジタルメモリ(例えばソリッドステートハードディスク)への保存により出力された。生成された血液酸素化組織状態マップデータが、表示および検討されて、皮弁/移植片が生存可能であるために十分な血液供給を受けているかどうか、あるいは外科的処置を必要としているかどうかが確認された。第一の例では、実験的手術における一般的なげっ歯類皮弁モデルを用いて、部分的な組織切開によりマウスに背部を基部とする筋膜皮弁が作製された。図12A(RGB画像)および図12B(スペクトル画像から生成された血液酸素化組織状態マップ)は、術後1時間後の皮弁のものである。図12C(RGB画像)および図12D(スペクトル画像から生成された血液酸素化組織状態マップ)は、術後72時間の同一皮弁のものであり、皮弁の底部への血液供給が不十分なことによる壊死が示されている。
【0131】
第二の例では、前頭部から鼻部への転位の結果が、患者においてモニタリングされた。このような手術では、前頭部からの皮弁が、前頭部の動脈から血液を受け取ったまま、鼻部に移される。皮弁が鼻部の上記領域の組織からの十分な血液供給を発達させた後、前頭部動脈を皮弁から切断することができる。
【0132】
図13Aは、手術3日後の皮弁のスペクトル画像から生成された血液酸素化組織状態マップを示している。画像の右側上部には、前頭部動脈からの皮弁への血流を止めるために用いられた手術用クランプが見える。皮弁の暗色(黒色の矢印で示されている)は、皮弁が鼻部領域から不十分な酸素化血液しか受け取っておらず、生存するために前頭部動脈からの血液に依存していることを示している。
【0133】
図13Bは、手術10日後の皮弁のスペクトル画像から生成された類似の血液酸素化組織状態マップを示している。皮弁の白色は、鼻部領域から皮弁への血液供給が皮弁の生存を確保するのに十分であり、前頭部動脈を皮弁から安全に切断できることを示している。
【0134】
第三の例では、鼻部再建手術が行われた14日後の当該鼻部再建手術の結果が、本明細書における教示の実施形態を用いて評価された。図14Aは患者の顔面の完全な画像を示している。図14Bはスペクトル画像から生成された血液酸素化組織状態マップを示している。図14Bの血液酸素化組織状態マップの再建鼻部の暗色は、再建鼻部が生存可能であるために十分な血液供給を受けていることを示している。上記の実験が繰り返され、青色画像データは460nm~480nmの波長の場合であり、赤色画像データは630nm~670nmの波長の場合である。得られた結果は上記の結果と実質的に同じである。
【0135】
実施例2F
上記と類似または同一の方法で、自動車事故を起こしたヒトの損傷した四肢および臓器の青色画像データおよび赤色画像データが取得され、対応する血液酸素化組織状態マップデータが生成された。血液酸素化組織状態マップデータは、画面上に表示(所望によりカラー化)して、且つ、所望によりハードディスクなどに保存して、出力された。治療医により、表示された血液酸素化組織状態マップデータが検討され、どの組織が手術などにより救出可能であり、どの組織が切除の必要があるかが判定された。
【0136】
実施例2G
刺激時の脳機能のリアルタイムモニタリングのために、本明細書における教示を用いた。上記のものと同様の撮像システムであって、デジタルカメラがビデオカメラであり、付随のプロセッサが、リアルタイムで、本明細書における教示に従って所望の速度(例えば、1Hz、20Hz、60Hz)で各カメラから赤色画像データ(630nm~670nmの波長)および青色画像データ(405nm~420nmの波長)の一組を連続的に同時取得し、ピクセル毎の除算(Ioxy=第二強度/第一強度)を用いて対応する血液酸素化組織状態マップデータを生成し、その後、ディスクに保存することにより、且つ、画像が取得された生物組織の表面のリアルタイム動画血液酸素化組織状態マップを表示することにより、生成された血液酸素化組織状態マップデータを出力するように構成された、撮像システムが提供された。
【0137】
対象に対する脳手術中、対象の脳の右半球の露出された皮質表面の画像データ対が取得され、大脳皮質の表面の血液酸素化組織状態マップのリアルタイム動画が、手術を行っている外科医が見ることのできる画面上に表示された。外科医が対象の末端(例えば、左手)を刺激した場合に、刺激の結果として酸素化血液量が多くなった皮質表面の部分は、その皮質表面部分が刺激された末端に関連していることを示した。
【0138】
図15Aは、ヒト対象の脳の右半球の一部のRGB画像を示している。図15B図15C、および図15Dは、本明細書における教示に従って生成された皮質表面の一部の血液酸素化組織状態マップを示しており、左手に対して、図15Bは刺激なしの場合であり、図15Cは低刺激の場合であり、図15Dは高刺激の場合である。図15Cおよび図15Dには、刺激の結果として酸素化血液量の増加を示した脳の一部が示されている。上記の実験が繰り返され、青色画像データは460nm~480nmの波長の場合であり、赤色画像データは630nm~670nmの波長の場合である。得られた結果は上記の結果と実質的に同じとなった。
【0139】
実施例2H
光熱療法を用いたがん治療をモニタリングするために、本明細書における教示が用いられた。ヌードマウスにヒト結腸癌H29を皮下接種した。3週間後、腫瘍を露出させ、実質的にはKostenich Gら「Photothermic treatment of pigmented B16 melanoma using a broadband pulsed light delivery system」、Cancer Letters、157巻、2号、(頁161)、(2000年)に記載の通りに、ESCメディカルシステムズ社(ESC Medical Systems)(ヨクネアム、イスラエル)製のIPL(高強度パルス光)デバイスを用いた光熱療法を行った。処置中、スペクトルイメージングカメラを用いて、腫瘍のフルスペクトル画像データが取得された。波長460nm~480nmの青色画像データおよび波長630nm~670nmの赤色画像データがフルスペクトル画像デーから抽出された。ピクセル毎の除算(P3(i)=P1(i)/P2(i)によって、本明細書に記載の血液酸素化組織状態マップが生成された。図16Aは光熱療法前の腫瘍の生成された血液酸素化組織状態マップを示している。腫瘍が未損傷であることが分かる。図16Bは、40J/cmに相当する多数の光パルスを受けた後の腫瘍の、生成された血液酸素化組織状態マップを示している。腫瘍底部の酸素化血液の減少は、光照射によって引き起こされた血管閉塞および虚血を示している。図16Cは、80J/cmに相当する多数の光パルスを受けた後の腫瘍の、生成された血液酸素化組織状態マップを示している。腫瘍全体に渡る酸素化血液の完全な欠如は、実質的にすべての腫瘍血管が光の照射によって閉塞され、腫瘍細胞の死滅が起こったことを示している。上記の実験が繰り返され、波長405nm~420nmの青色画像データおよび波長630nm~670nmの赤色画像データがフルスペクトル画像デーから抽出された。得られた結果は上記の結果と実質的に同じとなった。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A-12D】
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図16C