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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】液晶シール剤組成物、及び液晶素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20250123BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 L
C09K3/10 E
C09K3/10 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022044111
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2023137755
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】島 一嘉
(72)【発明者】
【氏名】石川 大樹
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192881(WO,A1)
【文献】特開2017-026736(JP,A)
【文献】国際公開第2011/007649(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132203(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/011220(WO,A1)
【文献】特開2017-203121(JP,A)
【文献】特開2007-156183(JP,A)
【文献】特開2011-081345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
G02F1/133-1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、熱硬化剤(C)と、酸価を有する湿潤分散剤(D)と、を含有し、
前記湿潤分散剤(D)の酸価が、20~150mgKOH/gである、液晶シール剤組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、熱硬化剤(C)と、アミン価を有する湿潤分散剤(D)と、を含有し、
前記湿潤分散剤(D)のアミン価が、20~100mgKOH/gである、液晶シール剤組成物。
【請求項3】
前記湿潤分散剤(D)の重量平均分子量が2000以上である、請求項1または2に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項4】
前記硬化性樹脂(A)が、熱硬化性及び光硬化性を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂(A)が、部分エステル化エポキシ樹脂(A1)、及び、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との組み合わせ(A2)より選択される1種以上を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項6】
前記熱硬化剤(C)が、アミン系硬化剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項7】
前記熱硬化剤(C)が、粉体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項8】
更に、フィラー(E)を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項9】
前記湿潤分散剤(D)の含有割合が、液晶シール剤組成物の全量に対し、0.1~10質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項10】
溶剤の含有割合が、液晶シール剤組成物の全量に対し、5質量%以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の液晶シール剤組成物の硬化物を備える、液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶シール剤組成物、及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの製造方法のひとつとして、液晶滴下工法が知られている。液晶滴下工法は、例えば、基材上にシール剤を塗布して枠を形成し、当該枠内に液晶を滴下し、対向する基材を貼り合わせた後、シール剤を硬化させ、液晶パネルを製造する方法である。
【0003】
例えば特許文献1には、接着性及び耐湿信頼性に優れた液晶滴下工法用シール剤として、硬化性樹脂と、粒径の異なるフィラーと、熱硬化剤と、ラジカル重合開始剤と、を含有する、特定の液晶滴下工法用シール剤が開示されている。
【0004】
一方、当該シール剤の塗布は、通常、塗布装置が用いられる。シール剤の残渣が付着した状態で塗布装置を使用するとノズル詰まりやシール切れなどの不具合を生じる恐れがあるため、当該塗布装置使用後は、シール剤が付着し得る部材(特にシリンジ、ノズル等)の洗浄を行う必要がある。
【0005】
特許文献2には、硬化性を低下させず、液安定性が良好で装置内に残ったシール剤が粘稠となりにくいシール剤樹脂組成物として、(A)エポキシ化合物と(B)アミン化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる硬化剤と、を含む、滴下シール剤組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、液晶の配向乱れを抑制し、且つ、優れた洗浄性を有する硬化性組成物として、硬化性化合物と、光開始剤と、熱硬化剤と、重合禁止剤とを含有し、前記熱硬化剤がウレア構造を有するアミン化合物のアダクト体である硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-015769号公報
【文献】特開2013-095795号公報
【文献】特開2019-182931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐液晶性を維持しながら、より洗浄性に優れた液晶シール剤組成物、及び、当該シール剤組成物を用いた液晶素子を提供することを目的とする。
【0009】
本発明に係る液晶シール剤組成物は、硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、熱硬化剤(C)と、酸価及び/又はアミン価を有する湿潤分散剤(D)と、を含有する。
【0010】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記湿潤分散剤(D)の酸価が、20~150mgKOH/gである。
【0011】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記湿潤分散剤(D)のアミン価が、20~100mgKOH/gである。
【0012】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記湿潤分散剤(D)の重量平均分子量が2000以上である。
【0013】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記硬化性樹脂(A)が、熱硬化性及び光硬化性を備える。
【0014】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記硬化性樹脂(A)が、部分エステル化エポキシ樹脂(A1)、及び、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との組み合わせ(A2)より選択される1種以上を含む。
【0015】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記熱硬化剤(C)が、アミン系硬化剤を含む。
【0016】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記熱硬化剤(C)が、粉体を含む。
【0017】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、更に、フィラー(E)を含有する。
【0018】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、前記湿潤分散剤(D)の含有割合が、液晶シール剤組成物の全量に対し、0.1~10質量%である。
【0019】
上記液晶シール剤組成物の一実施形態は、溶剤の含有割合が、液晶シール剤組成物の全量に対し、5質量%以下である。
【0020】
本発明に係る液晶素子は、前記液晶シール剤組成物の硬化物を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐液晶性を維持しながら、より洗浄性に優れた液晶シール剤組成物、及び、当該シール剤組成物を用いた液晶素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】液晶素子の一例を示す平面図である。
図2】液晶素子の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図3A】洗浄性評価方法を説明するための写真である。
図3B】洗浄性評価方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る硬化性組成物及び積層体について順に詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのうち少なくとも一方を表し、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート等もこれに準ずる。
また、数値範囲を示す「~」は特に断りがない限り、その下限値及び上限値を含むものとする。
【0024】
[液晶シール剤組成物]
本実施形態の液晶シール剤組成物(以下、本シール剤組成物ともいう)は、硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、熱硬化剤(C)と、酸価及び/又はアミン価を有する湿潤分散剤(D)と、を含有する。
本液晶シール剤組成物は、酸価及び/又はアミン価を有する湿潤分散剤(D)を含有することで、耐液晶性は維持しながら、洗浄時においては、有機溶媒に対するシール剤組成物中の各成分の溶解性又は分散性が向上し、塗布装置中の各部材への粘着が抑制されて洗浄性が向上する。
【0025】
本液晶シール剤組成物は、少なくとも、硬化性樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、熱硬化剤(C)と、湿潤分散剤(D)とを含有するものであり、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよいものである。以下、本液晶シール剤組成物に含まれ得る各成分について説明する。
【0026】
<硬化性樹脂(A)>
本実施形態において硬化性樹脂(A)は、熱硬化性及び光硬化性のうち少なくとも一方の硬化性を有する樹脂をいい、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性と光硬化性の両方を有する樹脂(以下、熱光硬化性樹脂ともいう)が挙げられる。硬化性樹脂(A)は1成分を単独で、又は2成分以上を組み合わせてもよい。本実施形態において硬化性樹脂(A)は、熱硬化性及び光硬化性を備えることが好ましい。熱硬化性及び光硬化性を備える硬化性樹脂(A)は、例えば、上記熱光硬化性樹脂や、上記熱硬化性樹脂と上記光硬化性樹脂とを組み合わせ等が挙げられる。
また、本シール剤組成物の溶剤使用量を抑制する点から、硬化性樹脂(A)のうちの少なくとも1成分は、25℃において液状であることが好ましい。
【0027】
熱硬化性樹脂は、1分子中に熱硬化性基を1個以上、好ましくは2個以上有する化合物が挙げられる。当該熱硬化性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基等が挙げられ、エポキシ基が好ましい。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、メチルグリシジル基、エポキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂として、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等も使用することができる。更にエポキシ樹脂として、各種の多官能エポキシ樹脂も使用することができ、例えば、三官能及び四官能エポキシ樹脂等が挙げられる。また、特開2012-077202号公報記載のエポキシ樹脂も好適に用いることができる。
【0028】
光硬化性樹脂は、1分子中に光硬化性基を1個以上有する化合物が挙げられる。光硬化性樹脂としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基を有するアクリル樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂の具体例としては、スチレン、酢酸ビニル、無水マレイン酸、無水コハク酸や、1分子中にメタクリル基及びアクリル基より選択される基を1個以上有するアクリル樹脂などが挙げられ、中でもアクリル樹脂が好ましい。
前記アクリル樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、1分子中にメタクリル基及びアクリル基より選択される基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
上記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等)、ポリオール(メタ)アクリレート(グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等)、アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート(例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0030】
上記脂環式(メタ)アクリレートを使用としては、例えば、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単環式(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等の2環式(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の3環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
また上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
本シール剤組成物においては、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂とを組み合わせとして、上記エポキシ樹脂と上記アクリル樹脂との組み合わせ(A2)が好ましい。熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂を組み合わせて用いる場合、その配合比は特に限定されないが、シーリング性や耐液晶性の点から、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂との質量比が、1:9~9:1であることが好ましく、2:8~8:2がより好ましい。
【0033】
熱光硬化性樹脂は、1分子中に1個以上の熱硬化性基と、1個以上の光硬化性基を有する化合物であればよい。熱硬化性基及び光硬化性基の具体例は前述の通りである。熱光硬化性樹脂は、1分子中に1個以上のエポキシ基と、1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましい。
熱光硬化性樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートのほか、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0034】
【化1】
一般式(1)中、
及びRは、各々独立に炭素-炭素結合間にエーテル結合を有していてもよいアルキレン基であり、
11はグリシジル基又はメチルグリシジル基であり、
12は(メタ)アクリロイル基を含む基であり、
は、m1+m2価の連結基であり、
m1は1~3の整数であり、
m2は1~3の整数であり、
、R、R11又はR12が複数ある場合、当該複数あるR、R、R11又はR12は同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
及びRとしては、炭素数1~6の直鎖アルキレン基、(ポリ)オキシアルキレン基(-(ORm3-;但しRは炭素数1~6の直鎖アルキレン基、m3は1~12の整数である)等が挙げられる。(ポリ)オキシアルキレン基としては、(ポリ)エチレンオキサイド、(ポリ)プロピレンオキサイドなどが挙げられる。
【0036】
12は合成の容易性などの点から、水酸基を有することが好ましく、下記化学式で表される構造がより好ましい。
【0037】
【化2】
式中の*は、Rとの結合手である。
【0038】
上記Qは、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを連結する2~6価の連結基である。シーリング性や耐液晶性の点から、Qはアリール基を有することが好ましく、フェニル基を有することがより好ましい。Qの具体例としては下記化学式で挙げられる構造などが挙げられる。なお、下記化学式中の*は各一般式(1)中のOとの結合手であり、一つの環が2個以上の結合手を有していてもよい。またQが2価の連結基の場合は炭素数1~6の直鎖アルキレン基などであってもよい。
【0039】
【化3】
【0040】
m1は1~3の整数であればよく、1~2が好ましく、1がより好ましい。
m2は1~3の整数であればよく、1~2が好ましく、1がより好ましい。
また、m1+m2は2~4が好ましく、2~3がより好ましく、2が更に好ましい。
【0041】
熱光硬化性樹脂は、シーリング性や耐液晶性の点から、中でも、2個のエポキシ基を有する化合物の一方のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させて得られる部分エステル化エポキシ樹脂(A1)が好ましい。
【0042】
上記2個のエポキシ基を有する化合物としては、ジグリシジルエーテル類が好ましい。ジグリシジルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノール型ジグリシジルエーテル類、ビフェノール型ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール型ジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0043】
部分エステル化エポキシ樹脂(A1)は、例えば国際公開第2012-77720号明細書などの合成方法を参照して合成することができる。
【0044】
<光重合開始剤(B)>
光重合開始剤(B)は、光の照射により、硬化性樹脂(A)が有する光硬化性基の反応を促進するものの中から適宜選択することができ、光開始性化合物、及び、光増感化合物を含むものとする。ここで、光開始性化合物とは、紫外線、可視光線等の光を吸収して、又は、光増感化合物が吸収したエネルギーを受容して、ラジカルを発生する化合物をいい、光増感化合物は、光を吸収して得たエネルギーを光開始性化合物などに供与する化合物をいう。光増感化合物は、例えば波長が380nm以上の光を吸収する可視光増感化合物であってもよい。
【0045】
上記光開始性化合物は、自己開裂型であってもよく、水素引き抜き型(電子供与型)であってもよい。アウトガスの発生を抑制する点からは、水素引き抜き型の光開始性化合物を用いることが好ましい。
水素引き抜き型の光開始性化合物としては、反応性などの点から、ベンゾイル基[C-C(=O)-]を有する化合物が好ましい。当該ベンゾイル基は、芳香環に更に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、特に限定されず、アルキル基、アリール基、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、カルボキシアルキル基、オキシアルキル基、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
このような光開始性化合物としては、例えば、光開始剤として公知のベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、アントラキノン類、等が挙げられる。
光開始性化合物としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸、4-ヒドロキシベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、アセトフェノン、アルコキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン等のほか、後述する一般式(2)で表されジアルキルアミノベンゾイル基を有する化合物が好ましい。
【0046】
上記光増感化合物としては、置換基として、キサントン、チオキサントン、アントラキノン、クマリン等の光増感部を有する化合物であることが好ましく、反応性などの点から、チオキサントンを有するチオキサントン類が好ましい。
チオキサントン類の具体例としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等のほか、後述する一般式(2)で表され9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基を有する化合物が好ましい。
【0047】
本実施形態において光重合開始剤(B)は、アルキレンオキサイドを有する化合物を用いることが好ましく、下記一般式(2)で表される化合物を用いることがより好ましい。
なお、一般式(2)において、置換基が9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基を有する場合、光開始剤は前記光増感化合物として作用する。また、一般式(2)において、置換基がジアルキルアミノベンゾイル基を有する場合、光開始剤は前記光開始性化合物として作用する。
【0048】
【化4】
一般式(2)中、Qは、置換基を有してもよく炭素鎖中に酸素原子を有してもよいアルキレン基、R21、R22、R23、及びR24は、それぞれ独立して、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、シリル基、アセタール基又は-CO-NH-Zであり、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、R21、R22、R23、及びR24、並びにQが有する置換基のうち少なくとも1つは、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、またはジアルキルアミノベンゾイル基である。
【0049】
におけるアルキレン基は、炭素数が1~20、好ましくは2~20、より好ましくは2~10の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の直鎖アルキレン基;メチルエチレン基、メチルプロピレン基、メチルへキシレン基、エチルブチレン基などの分岐のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基は、水素原子が置換されていてもよい。水素原子を置換する置換基としては、ハロゲン原子、水酸基などのほか、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基であってもよい。
また、Qにおけるアルキレン基は、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよく、オキシアルキレン基、又は、アルキレンオキシド基となっていてもよい。この場合、Qは、[-Q-(O-Q-]で表される置換基であることが好ましい。当該置換基においてpは1~50の整数であり、2~42が好ましく、4~24がより好ましい。当該置換基においてQは、炭素数1~8のアルキレン基が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。また、Qは更に置換基を有していてもよい。Qにおける置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、下記一般式(2a)又は(2b)で表される基などが挙げられる。
【0050】
【化5】
一般式(2a)及び(2b)中、R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、シリル基、アセタール基又は-CO-NH-Zであり、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。
【0051】
21~R28のアルキル基は、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、t-ブチル基などが挙げられる。アルキル基は置換基として、ハロゲン原子、水酸基を有してもよい。
【0052】
21~R28のアリール基は、炭素数6~20の単環又は多環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などが挙げられる。アリール基は、置換基として、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、アシル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、又はシリル基などを有してもよい。当該置換基としてのアルキル基、及びアルコキシ基、アシル基、及びアルコキシカルボニル基のアルキル鎖は、前記R21~R28のアルキル基と同様のものとすることができる。
【0053】
21~R28のヘテロアリール基は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子より選択される1以上のヘテロ原子を含む、原子数が5~20の単環又は多環の複素環であり、例えばイミダゾリル基、キサンテニル基、チオキサンテニル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、イソチオクロメニル基、フェノキサチイニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β-カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基等が挙げられる。ヘテロアリール基は、前記アリール基と同様の置換基を有してもよい。
【0054】
21~R28のアラルキル基は、アルキル基にアリール基が置換した構造であり、当該アルキル基及びアリール基は、前記のアルキル基、及びアリール基と同様のものとすることができる。アルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0055】
21~R28のアシル基は、Z-C(=O)-(式中、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。)で表される置換基である。Zにおけるアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基はR21~R28と同様のものとすることができる。アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基等が挙げられる。
【0056】
21~R28のシリル基は、-Si(Z(式中、Zは、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基である。)Zにおけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びヘテロアリール基はR21~R28と同様のものとすることができる。シリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、モノメチルジメトキシシリル基、ジエチルモノエトキシシリル基、モノメチルジエトキシシリル基等が挙げられる。
【0057】
21~R28のアセタール基は、-C(Z)(Z)(OZ)(式中、Z及びZは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であり、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である)で示される基である。Z~Zのアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基はR21~R28と同様のものとすることができる。アセタール基の具体例としては、-CHOCH、-CH(CH)OCH、-CH(CH)OC等が挙げられる。
【0058】
21~R28の置換基-CO-NH-Z(式中、Zは、アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である)において、Zのアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、R21~R28と同様のものとすることができる。当該置換基の具体例としては、フェニルアミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基等が挙げられる。
【0059】
21~R28のジアルキルアミノベンゾイル基は、ジアルキルアミノ基で置換されたベンゾイル基である。ジアルキルアミノ基中の2つのアルキル基は、それぞれ独立に、前記アルキル基と同様のアルキル基とすることができる。ジアルキルアミノベンゾイル基の具体例としては、ジアルキルアミノベンゾイル基として、2-ジアルキルアミノベンゾイル基、3-ジアルキルアミノベンゾイル基、4-ジアルキルアミノベンゾイル基が挙げられる。ジアルキルアミノベンゾイル基として、ジメチルアミノベンゾイル基、ジエチルアミノベンゾイル基、ジプロピルアミノベンゾイル基、ジブチルアミノベンゾイル基、ジヘキシルアミノベンゾイル基、ジオクチルアミノベンゾイル基、メチルエチルアミノベンゾイル基、メチルプロピルアミノベンゾイル基、メチルブチルアミノベンゾイル基、メチルヘキシルアミノベンゾイル基、エチルプロピルアミノベンゾイル基、エチルブチルアミノベンゾイル基、エチルヘキシルアミノベンゾイル基、ブチルオクチルアミノベンゾイル基、ヘキシルオクチルアミノベンゾイル基等が挙げられ、光硬化性の点からジメチルアミノベンゾイル基が好ましく、4-ジメチルアミノベンゾイル基がより好ましい。
【0060】
また、R21~R28の9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基の具体例としては、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基として、9-オキソ-9H-チオキサンテン-1-イル基、9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル基、9-オキソ-9H-チオキサンテン-3-イル基、9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル基が挙げられる。
【0061】
一般式(2)で表される化合物は、分子内に1個以上のジアルキルアミノベンゾイル基又は9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基を有する。分子内に2個以上有する場合は、ジアルキルアミノベンゾイル基と9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基の両方を有していてもよいが、どちらか一方のみを有することが好ましい。
【0062】
一般式(2)で表される化合物は、中でもR21及びR23が、同一であって、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基又はジアルキルアミノベンゾイル基であり、R22及びR24が、それぞれ独立して、9-オキソ-9H-チオキサンテン-イル基、ジアルキルアミノベンゾイル基、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、アシル基、シリル基、アセタール基又は-CO-NH-Zであり、Qが、-Q-(O-Q-であることが特に好ましい。
【0063】
一般式(2)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば特開2014-227344号公報などを参考に製造することができる。
【0064】
光重合開始剤(B)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に本実施形態においては、硬化性等の点から上記光開始性化合物と上記光増感化合物とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0065】
光重合開始剤(B)として、光開始性化合物と可視光増感性化合物とを組み合わせて用いる場合、そのモル比(光開始性化合物/可視光増感性化合物)は、安定で十分なラジカルを供給する観点から、好ましくは1/5~5/1、より好ましくは1/3~3/1、さらに好ましくは1/2~2/1である。
【0066】
本シール剤組成物において、光重合開始剤(B)の含有割合は、シーリング性や耐液晶性などの点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0067】
<熱硬化剤(C)>
熱硬化剤(C)は、前記硬化性樹脂(A)が有する熱硬化性基に応じて適宜選択することができる。例えば、硬化性樹脂(A)がエポキシ基を有する場合、硬化剤としては、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、酸無水物系化合物、有機ホスフィン酸系化合物、フェノール系化合物、ヒドラジド化合物、カルバジド化合物;イミダゾールをエポキシ樹脂にアダクトさせた化合物;多価アミン化合物をエポキシ樹脂、イソシアネート化合物、及び尿素からなる群から選択される少なくとも1種の化合物にアダクトさせた化合物;2種以上のヒドラジド化合物の混合結晶;1種以上の多価アミン化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶並びに1種以上のイミダゾール化合物と1種以上のヒドラジド化合物との混合結晶、カルボン酸化合物とアミン化合物との混合生成物などが挙げられる。
【0068】
アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミン類、ポリエーテルアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類などが挙げられる。
脂肪族アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等が挙げられる。
ポリエーテルアミン類としては、例えば、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が挙げられる。
脂環式アミン類としては、例えば、イソホロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族アミン類としては、フェニレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-アミノフェノールなどが挙げられる。
【0069】
また、アミン類は、アミンアダクトであってもよい。アミンアダクトとしては、例えば、エポキシ樹脂にイミダゾール類、又はアミン類をアダクトさせたもの、イソシアネートにアミン類、又はヒドラジンをアダクトさせたもの、尿素にアミン類をアダクトさせたもの等が挙げられる。
【0070】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンなどが挙げられる。
酸無水物系化合物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物等が挙げられる。
有機ホスフィン酸系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、ジフェニルホスフィン等が挙げられる。
また、フェノール系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、フェノールノボラック等が挙げられる。
【0071】
ヒドラジド化合物としては、例えば、VDH、VDH-J〔1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン〕、MDH(マロン酸ジヒドラジド)、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)、UDH、UDH-J(7,11-オクタデカジエン-1,18-ジカルボヒドラジド)、LDH(オクタデカン-1,18-ジカルボン酸ジヒドラジド)等が挙げられる。
【0072】
上記カルボン酸化合物とアミン化合物との混合生成物としては、下記式(I)で表されるカルボン酸化合物と、下記式(II)、式(III)及び式(IV)で表されるアミン化合物及びアゾール環構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の混合生成物が挙げられる。
41-[COOH]x (I)
式(I)中、xは1又は2であり、R41は、C1~C24の直鎖状若しくは分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基(分岐鎖はヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0073】
42-[NH (II)
式(II)中、R42は、C1~C24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、1つ以上のNH基で非連続的に中断された直鎖若しくは分岐鎖のC2~C12のアルキレン基(N原子に結合するH原子は、アミノ基又はC1~C12のアルキルアミノ基で置換されていてもよい)、C6~C14のアリーレン基、C1~C4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基-C6~C14のアリーレン基、又はC1~C4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基-C6~C14のアリーレン基-C1~C4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基である。
【0074】
【化6】
式(III)中、R43は、それぞれ独立して、単結合であるか、又は前記R42と同様である。
【0075】
【化7】
式(IV)中、R42及びR43は、前記式(II)及び式(III)におけるものと同様である。
【0076】
本実施形態において熱硬化剤(C)は、上記アミンアダクトが好ましく、中でも下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0077】
【化8】
一般式(3)中、R31は、単結合、もしくは、置換基を有していてもよく、炭素鎖中にイミノ基(-NH-)または酸素原子を有していてもよい、直鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はこれらの組み合わせの基である。Aはn11価の有機基であり、n11は1~4の整数である。n11が2以上のとき、複数あるR31は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
31における直鎖アルキレン基は、炭素数が1~12のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、炭素数が3~12のシクロアルキレン基が好ましく、例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、などが挙げられる。また、アリーレン基としては、炭素数が6~14のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
これらの組み合わせとは、例えば、-直鎖アルキレン基-シクロアルキレン基-直鎖アルキレン基-や、-直鎖アルキレン基-アリーレン基-直鎖アルキレン基-などと連結した構造などを表す。
31が有していてもよい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられ、当該アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基は、炭素鎖中に酸素原子を有してもよい。上記アルキル基は、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、t-ブチル基などが挙げられる。上記シクロアルキル基は、炭素数3~12のシクロアルキル基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、上記アリール基は、炭素数6~20の単環又は多環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などが挙げられる。アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基はさらに置換基として、ハロゲン原子、水酸基を有してもよい。
【0079】
n11が1の場合、Aは1価の有機基であり、当該1価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニルアルキレン基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基であることが好ましい。当該アルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、前記R31で例示したものと同様のものとすることができる。またこれらが有してもよい置換基としては、前記R31で例示した置換基と同様のものとすることができる。
アルキルオキシカルボニルアルキレン基、及び(メタ)アクリロイルオキシアルキル基が有するアルキル基は、炭素数1~8の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、t-ブチル基などが挙げられる。アルキル基は置換基として、ハロゲン原子、水酸基を有してもよい。また、アルキルオキシカルボニルアルキレン基が有するアルキレン基は、炭素数が1~12のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
【0080】
n11が2の場合、Aは2価の有機基であり、当該2価の有機基としては、置換基を有してもよいアルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基であることが好ましい。アルキレン基は上記。当該アルキレン基、シクロアルキレン基、及びアリーレン基、並びにこれらが有してもよい置換基は、前記R31において例示したものと同様のものとすることができる。
【0081】
n11が3の場合、Aは3価の有機基であり、下記一般式(4)~(6)のいずれかで表される構造を有することが好ましい。
【0082】
【化9】
一般式(4)中、R32は各々独立に、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基である。
【0083】
【化10】
一般式(5)中、R33は各々独立に、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基である。
【0084】
【化11】
一般式(6)中、R34は各々独立に、置換基を有してもよい直鎖又は分岐のアルキレン基であり、R35は、CH≡基(メチン基)である。
【0085】
上記R32~R34における直鎖アルキレン基は、前記R31において例示したものと同様のものとすることができる。また、R32~R34における分岐のアルキレン基は、前記直鎖アルキレン基に、炭素数1~5のアルキル基が置換した構造などがあげられ、炭素鎖中に酸素原子を有してもよい。その他の有してもよい置換基としては、前記R31において例示したものと同様のものとすることができる。
【0086】
また、nが4の場合、Aは4価の有機基であり、下記一般式(7)で表される構造を有することが好ましい。
【0087】
【化12】
一般式(7)中、X11は、シクロアルキル-アルキレン-シクロアルキル基、アリール-アルキレン-アリール基から誘導される4価の残基であるか、Si(ケイ素)原子である。
【0088】
11における、シクロアルキル-アルキレン-シクロアルキル基は、2個のシクロアルキル基がアルキレン基により接続された複合的な基であり、更に置換基を有してもよく、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよい。2個のシクロアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。各々のシクロアルキル基、及びアルキレン基、及び有していてもよい置換基の具体例は、前記R11で例示したものと同様のものとすることができる。
また、X11における、アリール-アルキレン-アリール基は、2個のアリール基がアルキレン基により接続された複合的な基であり、更に置換基を有してもよく、炭素鎖中に酸素原子を有していてもよい。2個のアリール基は同一であっても異なっていてもよい。各々のシクロアルキル基、及びアルキレン基、及び有していてもよい置換基の具体例は、前記R11で例示したものと同様のものとすることができる。
【0089】
一般式(3)で表される化合物の具体例としては、1,1’-[メチレンビス(シクロヘキサン-1,4-ジイル)]ビス[3-(12-アミノドデシル)ウレア]、1,1’-[メチレンビス(シクロヘキサン-1,4-ジイル)]ビス[3-(2-アミノエチル)ウレア]、1,1’-[メチレンビス(シクロヘキサン-1,4-ジイル)]ビス[3-(6-アミノヘキシル)ウレア]、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(12-アミノドデシル)ウレア]、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(2-アミノエチル)ウレア]、1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(6-アミノヘキシル)ウレア]、N,N’-ヘキサメチレン[カルボニルビス(アザンジイル)-2-アミノエチル]-[カルボニルビス(アザンジイル)-6-アミノヘキシル]などが挙げられる。
【0090】
一般式(3)で表されるアミン化合物の合成方法は特に限定されないが、例えば、アミノ基を2個以上有する化合物とイソシアネート化合物とを反応させることにより得ることができる。
例えば、上記モノイソシアネート化合物、上記ジイソシアネート化合物、上記トリイソシアネート化合物及び上記テトライソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物と、ヒドラジン又は多価アミン化合物とを反応させて得られたものであることが好ましい。ウレア構造を有するアミン化合物は、上記イソシアネート化合物と、上記ヒドラジン又は多価アミン化合物とを、上記イソシアネート化合物1モルに対して、上記ヒドラジン又は多価アミン化合物を好ましくは0.01モル~50モル、より好ましくは0.1モル~50モル、更に好ましくは0.1モル~30モル、特に好ましくは0.1モル~20モルとなるように、有機溶媒中又はニート(無溶媒)で、好ましくは-10℃~120℃、より好ましくは-5℃~100℃、更に好ましくは0℃~50℃、特に好ましくは5~30℃で制御して反応させて得られたものであることが好ましい。
【0091】
イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、分子内に1個のイソシアネート基を有するモノイソシアネート、分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを用いることができる。
【0092】
任意の組み合わせとしては、1種のモノイソシアネートを単独で用いても良く、2種以上のモノイソシアネートを組み合わせて使用しても良く、1種のポリイソシアネートを単独で用いても良く、2種以上のポリイソシアネートを組み合わせて使用してもよい。また、モノイソシアネートとポリイソシアネートを組み合わせて使用してもよい。
【0093】
モノイソシアネートは、イソシアン酸エチル、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸プロピル、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸tert-ブチル、イソシアン酸ドデシル、イソシアン酸シクロヘキシル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸(R)-(+)-α-メチルベンジル、イソシアン酸(S)-(-)-α-メチルベンジル、イソシアン酸(R)-(-)-1-(1-ナフチル)エチル、イソシアナト酢酸エチル、イソシアナト酢酸ブチル、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジル、(S)-(-)-2-イソシアナトプロピオン酸メチル、(S)-2-イソシアナト-3-フェニルプロピオン酸メチル、メタクリル酸2-イソシアナトエチル、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、6,7-メチレンジオキシ-(4-イソシアナトメチルクマリン)の中から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0094】
ジイソシアネートとしては、具体的には、プロパン-1,2-ジイソシアネート、2,3-ジメチルブタン-2,3-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-2,4-ジイソシアネート、オクタン-3,6-ジイソシアネート、3,3-ジニトロペンタン-1,5-ジイソシアネート、オクタン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-又は1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの中から選択される少なくとも1種のイソシアネート化合物であることが好ましい。熱硬化剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
アミンアダクトは合成してもよく、市販品を用いてもよい。アミンアダクトの具体例としては、例えば、(株)ADEKA製、アデカハードナーEHシリーズ(例えば、EH-5015S、EH-5030S、EH-4357S、EH-5057P等)、富士化成工業(株)製、フジキュアーシリーズ(例えば、FXR-1020、FXR-1030等)等が挙げられる。
【0096】
熱硬化剤(C)は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱硬化剤(C)は液状であってもよく、また粉体であってもよい。熱硬化剤(C)が粉体の場合、当該熱硬化剤(C)のメジアン径が0.1~6μmが好ましく、0.5~4μmがより好ましい。当該範囲であれば、後述する湿潤分散剤(D)との組み合わせにより、本シール剤組成物の洗浄性に優れている。
【0097】
本シール剤組成物において、前記熱硬化剤(C)の含有量は、シール性などの点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し1~40質量部が好ましく、2~35質量部がより好ましい。
【0098】
<湿潤分散剤(D)>
本シール剤組成物は、酸価及び/又はアミン価を有する湿潤分散剤(D)を含有する。当該湿潤分散剤(D)を含有することで、本シール剤組成物は、耐液晶性に優れながら、より洗浄性が向上する。湿潤分散剤(D)を用いることで洗浄性が向上する理由については未解明な部分もあるが、湿潤分散剤(D)が本シール剤組成物中の粉体状の熱硬化剤やフィラーなどの凝集を抑制するほか、湿潤分散剤(D)が塗布装置の部材表面に吸着して、粘稠化したシール剤が部材に貼り付くことを阻害するものと推定される。なお酸価及びアミン価を有しないノニオン系の分散剤では洗浄性の効果が見られなかった。
【0099】
本湿潤分散剤(D)は、酸価又はアミン価の少なくとも一方を有すればよく、酸価及びアミン価の両方を有していてもよい。
湿潤分散剤(D)が酸価を有する場合、当該湿潤分散剤(D)は、酸性基を有する。当該酸性基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホ基(-SOH)、リン酸基(-OP(=O)(OH))等が挙げられ、各水素原子は解離していてもよく、アルカリ金属イオン等に置換されて塩形成していてもよい。又リン酸基の一部のOHはエステル化、リン酸エステルとなっていてもよい。酸性基としては、カルボキシル基、又はリン酸エステルを含むリン酸基が好ましく、リン酸基がより好ましい。
湿潤分散剤(D)が酸価を有する場合、洗浄性の点から、当該酸価は20~150mgKOH/gが好ましく、30~140mgKOH/gがより好ましい。なお、酸価はJIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた値である。
【0100】
湿潤分散剤(D)がアミン価を有する場合、当該湿潤分散剤(D)は、アミノ基又はアンモニウム塩を有する。
湿潤分散剤(D)がアミン価を有する場合、洗浄性の点から、当該酸価は20~100mgKOH/gが好ましく、30~90mgKOH/gがより好ましい。なお、アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS-K7237に定義された方法により測定した値である。
【0101】
湿潤分散剤(D)は、洗浄性をより向上する点から、酸価及びアミン価の両方を有するものがより好ましい。酸価とアミン価を有する湿潤分散剤(D)の酸価及びアミン価は、各々上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0102】
湿潤分散剤(D)は、例えば、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩等のアニオン界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩などのカチオン界面活性剤;アルキルカルボキシベタイン、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤などの界面活性剤を用いてもよい。一方、耐液晶性や洗浄性をより向上する点からは、重量平均分子量が2000以上の湿潤分散剤が好ましく、重量平均分子量が2000以上200000以下の湿潤分散剤がより好ましい。
【0103】
当該湿潤分散剤の主鎖骨格としては、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。当該主鎖骨格の側鎖や末端に前記酸性基やアミノ基が配置されていることが好ましい。
【0104】
湿潤分散剤(D)は合成してもよく、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社製、DISPERBYK-102、-106、-111、-140、-145、-180;BYK-2096、-2155、-9076、-9077、花王社製、ホモゲノールL-95等が挙げられる。
【0105】
湿潤分散剤(D)の含有割合は、耐液晶性と洗浄性を両立する点から、液晶シール剤組成物の全量に対し、0.1~10質量%が好ましい。洗浄性の点からは、湿潤分散剤(D)の含有割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましい。また、耐液晶性の点からは、湿潤分散剤(D)の含有割合は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0106】
<任意成分>
本液晶シール剤組成物は、本発明の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、フィラー、重合禁止剤、シランカップリング剤、遮光性材料、チキソ付与剤、エラストマー、反応性希釈剤、連鎖移動剤、硬化促進剤、イオントラップ剤、イオン交換剤、レベリング剤、顔料、染料、可塑剤、消泡剤等が挙げられる。
【0107】
(フィラー(E))
本シール剤組成物は、シール剤の粘度の調整、硬化後の強度向上、線膨張性の抑制等の観点から、フィラー(E)を含有してもよい。フィラー(E)は、液晶シール剤用途に用いられる公知の無機フィラー及び有機フィラーの中から適宜選択して用いることができる。無機フィラーは、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素が挙げられる。有機フィラーは、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、これらを構成するモノマーと他のモノマーとを共重合させて得られる共重合体、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ゴム微粒子や、高いガラス転移温度を有する共重合体を含むシェルと低いガラス転移温度を有する共重合体のコアとから構成されるコアシェル粒子等が挙げられる。
フィラーは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、無機フィラーと有機フィラーを組み合わせて用いることが好ましい。
フィラーの含有割合は、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、2質量部以上40質量部以下であることが好ましく、5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0108】
(重合禁止剤)
本シール剤組成物は保存安定性や洗浄性を向上する点から、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤は硬化性樹脂(A)の硬化反応を抑制するものの中から適宜選択して用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、キノン系、フェノチアジン系、ニトロソアミン系の重合禁止剤などが挙げられ、中でもヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物は、フェノールの2位と6位にかさ高い構造を有する化合物であり、例えば、2,6-t-ブチルフェノール、2,6-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-t-ブチルフェノールなどが挙げられる。
重合禁止剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本シール剤組成物において重合禁止剤を用いる場合、その含有割合は、保存安定性と使用時の硬化性を両立する点から、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.0001~0.5質量部が好ましく、0.0005~0.3質量部がより好ましい。
【0109】
(シランカップリング剤)
本シール剤組成物は、基材との接着性をより向上させる点から、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シランカップリング剤を用いる場合、その含有割合は、前記硬化性樹脂(A)100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0110】
(遮光性材料)
本シール剤組成物は、液晶素子のシール近傍における光漏れやコントラスト向上のため、遮光性材料を含有してもよい。ここで遮光性とは、遮光性材料を含有する本シール剤組成物の硬化物が3~5のOD(光学濃度)値を有するものをいう。遮光性材料は、液晶に対する汚染性が小さいものを使用することが好ましい。例えば、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。
遮光性材料は、硬化性樹脂(A)100質量部に対し、50質量部以下で使用することができ、5~40質量部が好ましく、10~30質量部がより好ましい。
【0111】
(チキソ付与剤)
本シール剤組成物は、塗工性改善等を目的として、チキソ付与剤を含有してもよい。チキソ付与剤は、例えば、ヒュームドシリカ等の微粒子シリカ、微粒子アルミナ、脂肪族アマイド等の非球状の粒子が挙げられる。チキソ付与剤は、貼り合わせ後のシール剤界面の凹凸を抑制する点から、硬化性樹脂(A)100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、塗工性改善の点から、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。
【0112】
<液晶シール剤組成物の用途>
本シール剤組成物は、耐液晶性に優れることから、液晶と接触するシール剤として好適に用いることができ、特に、未硬化の状態で液晶と接触する液晶滴下工法用シール剤として好適に用いることができる。
【0113】
[液晶素子]
本発明に係る液晶素子は、上記本液晶シール剤組成物の硬化物を備えることを特徴とする。本液晶素子は、当該硬化物が耐液晶性に優れ、液晶の乱れ等が抑制される。
【0114】
本液晶素子の一例について、図1を参照して説明する。図1は本液晶素子100の一例を示す平面図である。
図1に示すように、本液晶素子100は、対向して配置された2つの基材(第1の基材10及び第2の基材40)と、2つの基材の間に枠状に配置された封止部材22と、2つの基材と前記封止部材22により形成された空間内に充填された液晶30とを備える。
本液晶素子は前記封止部材22が、前記本液晶シール剤組成物の硬化物であるため耐液晶性に優れている。
【0115】
第1の基材10及び第2の基材40は、通常、可視光に対して透明な基材であればよく、一般的な液晶素子に用いられる透明基板の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板などの可撓性のないリジット材;透明樹脂フィルム、フレキシブルガラスなどの可撓性やフレキシブル性を有するフレキシブル材などが挙げられる。
基材の厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上1mm以下程度のものを用いることができる。
基材の液晶と接する面には、液晶素子の駆動方式に応じて、液晶を配向させるための配向膜を有していてもよい。配向膜を有する場合、当該配向膜は、ラビング処理された配向膜、光配向膜、賦形された配向膜のいずれであってもよい。
基材はさらに、透明電極層やカラーフィルタ等、液晶素子に用いられる公知の構成を適宜備えていてもよい。
また液晶30は、特に限定されず、液晶素子に用いられる公知の液晶の中から、液晶の駆動方式などに応じて適宜選択すればよい。
【0116】
<液晶素子の製造方法>
液晶素子の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、液晶素子100の製造方法の一例を示す模式的な工程図であり、図2の(a)~(e)は、後述する各工程(a)~(e)における液晶素子100の断面図である。図2の(e)は、図1の切断線IIE-IIEにおける断面図に相当する。
図2の例に示すように、第1の基材10上に、前記液晶シール剤組成物20を枠状のパターンに塗布する工程(a)と、当該枠内に液晶30を滴下する工程(b)と、前記第1の基材10の前記液晶シール剤組成物20の枠が形成された面側に、第2の基材40を貼り合わせる工程(c)と、前記液晶シール剤組成物20に光照射する工程(d)と、前記液晶シール剤組成物20を加熱する工程(e)を有する。
【0117】
工程(a)における液晶シール剤組成物20の塗布方法は特に限定されず、公知の印刷法や、塗布方法の中から適宜選択すればよい。なお、図1の例では、第1の基材10の淵に液晶シール剤組成物20を塗布しているが、用途等に応じて、第1の基材10の内側に形成してもよく、複数の枠状パターンを形成した後、第1の基材を切断してもよい。
【0118】
工程(b)における液晶30の滴下方法は特に限定されず、公知の方法の中から適宜選択すればよい。未硬化の液晶シール剤組成物20と液晶30が接触するが、本液晶シール剤組成物を用いた場合には、当該液晶シール剤組成物の液晶等への溶出が抑制され、液晶の配向乱れが抑制される。
【0119】
次いで、工程(c)において第1の基材10と第2の基材40を、液晶シール剤組成物を介して貼り合わせ、液晶30を封入する。
その後、工程(d)において光照射を行い、未硬化の液晶シール剤組成物20を硬化し、光硬化物21を得る。
その後、工程(e)において加熱を行い、光硬化物21となったシール剤組成物をさらに硬化し、封止部材22を得る。
工程(d)及び(e)における硬化条件は、シール剤組成物の組成に応じて適宜調整すればよい。例えば、紫外光を1,000mJ/cm照射し、次いで100~120℃程度で1時間ほど加熱することにより、液晶シール剤組成物20の硬化物である封止部材22が形成される。
本発明の液晶素子は前記封止部材22が、前記本発明の液晶シール剤組成物の硬化物であるため、液晶の配向乱れが抑制されている。
【0120】
第1の基材10及び第2の基材40は、通常、可視光に対して透明な基材であればよく、一般的な液晶パネルに用いられる透明基板の中から適宜選択して用いることができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板などの可撓性のないリジット材;透明樹脂フィルム、フレキシブルガラスなどの可撓性やフレキシブル性を有するフレキシブル材などが挙げられる。
基材の厚みは特に限定されないが、例えば、50μm以上1mm以下程度のものを用いることができる。
基材の液晶と接する面には、通常、液晶を配向させるための配向膜を有している。本発明において配向膜は、特に限定されず、ラビング処理された配向膜、光配向膜、賦形された配向膜のいずれであってもよい。
基材はさらに、透明電極層やカラーフィルタ等、液晶素子に用いられる公知の構成を適宜備えていてもよい。
また液晶30は、特に限定されず、液晶素子に用いられる公知の液晶の中から、液晶の駆動方式などに応じて適宜選択すればよい。
【実施例
【0121】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
[原料]
<硬化性樹脂(A)>
【化13】
【0123】
<光重合開始剤(B)>
【化14】
【0124】
<熱硬化剤(C)>
【化15】
【0125】
<湿潤分散剤(D)>
・(d1)DISPERBYK-145:リン酸基とアミノ基を有するポリエーテル系高分子分散剤、酸価76mg/KOH、アミン価71mg/KOH
・(d2)BYK-9076:リン酸基とアルキルアンモニウム塩を有するポリエーテル系高分子分散剤、酸価38mg/KOH、アミン価44mg/KOH、重量平均分子量10,000
・(d3)DISPERBYK-111:リン酸基を有するポリエステル系高分子分散剤、酸価129mg/KOH、重量平均分子量2,200
・(d4)BYK-9077:アミノ基を有するウレタン系高分子分散剤、アミン価48mg/KOH
・(d5)DISPERBYK-192:スチレンを含むノニオン型アクリル分散剤
【0126】
<フィラー(E)>
・(e1)KE-C50HG:シリカフィラー、株式会社日本触媒製
・(e2)F-351:コアシェル型アクリル樹脂フィラー、アイカ工業株式会社製
【0127】
・(f1)チキソ付与剤:TG-308F、非晶質シリカ、キャボットジャパン株式会社製
・(f2)重合禁止剤:ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)
【0128】
[実施例1:液晶シール剤組成物の製造]
硬化性樹脂(a1)100質量部と、光重合開始剤(b1)2質量部と、光重合開始剤(b2)2質量部と、熱硬化剤(c1)10質量部と、湿潤分散剤(d1)1.3質量部と、フィラー(e1)10質量部と、フィラー(e2)7.5質量部と、チキソ付与剤(f1)1質量部と、重合禁止剤(f2)0.15質量部とを配合し、十分に混練してシール剤組成物を得た。
【0129】
[実施例2~6:液晶シール剤組成物の製造]
実施例1において、各成分及び配合量を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2~6の液晶シール剤組成物を得た。
【0130】
[比較例1~2:液晶シール剤組成物の製造]
実施例1において、各成分を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1~2の液晶シール剤組成物を得た。
【0131】
[評価]
<洗浄性評価>
洗浄性評価について図3A図3Bを参照して説明する。液晶シール剤組成物51の0.2mLを図3Aに示すように、シリンジヘッド52に充填した。当該シリンジヘッド52を、上面を上にしたまま容器55内のアセトン53に浸漬した。当該容器55を超音波洗浄機(IUC-4811N、東京超音波技研社製)の槽54内に静置した。その後、出力700W、周波数28kHzの条件で超音波をかけ始めてから、シール剤が完全に除去されるまでの時間を計測した。結果を表1に示す。
(洗浄性評価基準)
◎(優):20分以内に完全に除去された。
〇(良):20分超過40分以内に完全に除去された。
△(可):40分経過後にわずかに残渣が観察された。
×(不可):40分経過後でも、シリンジヘッドにシール剤が詰まっていた。
【0132】
<耐液晶性評価>
まず、下記2つの試料(試料1及び試料2)を作成した。
試料1:アンプル瓶に液晶シール剤組成物0.1gを入れ、液晶(MLC-6609・メルク社製)1gを加える。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し0.2μmフィルターによりろ過し、評価用の試料とした。
試料2:まず、液晶シール剤組成物を5mmΦ、厚さ0.5mmの型に注型し、紫外線照射(UV照射装置:UVX-01224S1、ウシオ電機社製、積算光量3000mJ/cm)を行った。次いで、アンプル瓶に紫外線照射後の液晶シール剤組成物0.1gを入れ、液晶(MLC-6609・メルク社製)1gを加える。この瓶を120℃オーブンに1時間投入し、その後室温で静置して室温(25℃)に戻ってから液晶部分を取り出し0.2μmフィルターによりろ過し、評価用の試料とした。
上記試料1及び試料2の液晶について、下記NI点(Nematic-Isotropic転移温度)測定と、比抵抗値測定を行った。結果を表1に示す。
【0133】
(NI点測定)
NI点は示差走査型熱量計(DSC、パーキンエルマー社製、Pyris6)を用い、測定用セル内に液晶を充填し、昇温レート5℃/分で60~110℃の範囲で測定を行った。なお、液晶シール剤組成物を添加しない液晶(MLC-6609、メルク社製)のNI点は93.8℃であり、この点に近いほど、液晶シール剤組成物の耐液晶性に優れていると評価できる。
【0134】
(比抵抗値測定)
比抵抗値は、液晶比抵抗測定システムSR-6517型(株式会社東陽テクニカ製)を用い、測定用セル内に液晶を充填し、室温(25℃)、印加電圧10V、120秒の条件で測定を行った。比抵抗値が高いほど耐液晶性に優れていると評価できる。
【0135】
【表1】
【0136】
表1に示されるように湿潤分散剤(D)を含有しない比較例1の液晶シール剤組成物は、耐液晶性は良好であるが、洗浄性が悪かった。ノニオン系の分散剤を用いた比較例2の液晶シール剤組成物では洗浄性が改善されなかった。
酸価及び/又はアミン価を有する湿潤分散剤(D)を含有する実施例1~6の液晶シール剤組成物は、耐液晶性は維持しながら、洗浄性が格段に向上していることが示された。
このように、本発明によれば、耐液晶性を維持しながら、より洗浄性に優れた液晶シール剤組成物、及び、当該シール剤組成物を用い、表示性能に優れた液晶素子が得られる。
【符号の説明】
【0137】
10:第1の基材、 20:シール剤組成物、 21:光硬化物、
22:封止部材、 30:液晶、 40:第2の基材、
51:シール剤組成物、 52:シリンジヘッド、 53:アセトン、
54:槽、 55:容器、 56:水、
100:液晶素子
図1
図2
図3A
図3B