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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ハンチントン病を治療する方法及び薬剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20250123BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K38/48 ZNA
A61P25/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022557663
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-01
(86)【国際出願番号】 CN2021082725
(87)【国際公開番号】W WO2021190563
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】202010213463.1
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李季男
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/114839(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/233604(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/107684(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0104969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスミノーゲンを含む、ハンチントン病を治療するための医薬組成物であって、該プラスミノーゲンが、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質分解活性を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記プラスミノーゲンが、前記ハンチントン病の被験者に対して、運動障害の改善または緩和、認知機能障害の改善、減量の遅延、損傷したニューロンの修復の促進、精神神経症状の改善、不安の緩和、海馬のGFAP発現の減少、海馬のアポトーシスの減少、小脳、海馬または線条体ニューロンのニッスル小体数の回復の促進、海馬、線条体または嗅結節への損傷の修復、海馬または線条体のBDNF発現の促進、及び線条体のミエリン再生の促進から選択される1つまたは複数の効果を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記プラスミノーゲンが1つ以上の他の薬剤または治療方法と組み合わせて使用される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンチントン病を治療するために、被験者に有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分または関連化合物、例えば、プラスミノーゲン、を投与することを含む、ハンチントン病の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
大舞踏病またはハンチントン舞踏病(Huntington’s chorea)としても知られるハンチントン病(Huntington’s disease,略してHD)は、常染色体優性神経変性疾患である。その原因遺伝子は、染色体4p16.3に位置するIT-15遺伝子(HTT遺伝子とも呼ばれる)であり、この遺伝子は、ハンチントン病患者ではシトシン-アデニン-グアニン(CAG)トリヌクレオチド反復配列の異常な増幅を示し、そのコピー数が40を超えると、完全な浸透度を有する。一般に、この疾患は中年期に発症し、主な症状としては、舞踏病様症状に代表される進行性のジスキネジア、認知機能の低下、および精神症状を含む。現在、テトラベナジンやオランザピンなどの第2世代抗精神病薬は舞踏病の症状を抑えるために使用されることが多く、抗うつ薬はうつ病などの精神症状を改善するために使用されることが多い。しかし、これらの薬剤は疾患の進行を遅らせることができない。現在、遺伝子治療による疾患の原因を探る研究も活発に行われているが、遺伝子治療の方法には多くの不確実性がある。したがって、より効果的な治療法を見つけるための別の方法をどのように見つけるか、この疾患の研究の焦点となっている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は研究によって、プラスミノーゲンがハンチントン病及びその関連症状を有意に改善でき、例えば、ハンチントン病被験者の運動障害を改善し、認知機能障害を改善し、体重減少を遅延し、損傷を受けていないニューロンを保護し、損傷したニューロンの修復を促進し、及び/または神経精神症状を改善することができ、ハンチントン病の効果的な治療法が提供できることを発見した。
【0004】
具体的には、本発明は下記のことに係る。
【0005】
1、一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の治療有効量の化合物をハンチントン病の被験者に投与することを含む、ハンチントン病を治療する方法に関する。
【0006】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物の、ハンチントン病を治療する薬剤の調製における使用に関する。
【0007】
一態様では、本願は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲンを直接活性化し得るか、またはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによって間接的にプラスミノーゲンを活性化し得る化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミンの活性を模倣する化合物、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化剤の発現をアップレギュレートすることができる化合物、プラスミノーゲン類縁体、プラスミン類縁体、tPAまたはuPA類縁体及び線維素溶解阻害剤の拮抗剤から選択される1つ以上の化合物を含む、ハンチントン病を治療する薬剤または医薬組成物に関する。
【0008】
2、前記プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、組換えヒトプラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンとプラスミンの1つ以上のkringleドメイン及びプロテアーゼドメインを含むプラスミノーゲン及びプラスミン変異体並びに類縁体、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)、ミニプラスミン(mini-plasmin)、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、マイクロプラスミン(micro-plasmin)、delta-プラスミノーゲン、delta-プラスミン(delta-plasmin)、プラスミノーゲン活性化剤、tPA、及びuPAから選択されるものである、項1に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0009】
3、前記線維素溶解阻害剤の拮抗剤が、PAI-1、補体C1インヒビター、α2抗プラスミンまたはα2マクログロブリンの阻害剤、例えば、抗体である、項1に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0010】
4、前記化合物が、前記ハンチントン病の被験者に対して、運動障害の改善または緩和、認知機能障害の改善、減量の遅延、損傷したニューロンの修復の促進、神経精神症状の改善、不安の緩和、海馬のGFAP発現の減少、海馬のアポトーシスの減少、小脳、海馬または線条体ニューロンのニッスル小体数の回復の促進、海馬、線条体または嗅結節への損傷の修復、海馬または線条体のBDNF発現の促進、及び線条体のミエリン再生の促進から選択される1つまたは複数の効果を有する、項1~3のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤または医薬組成物。
【0011】
5、前記化合物が1つ以上の他の薬剤または治療方法と組み合わせて使用される、項1~4のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤または医薬組成物。
【0012】
6、前記他の薬剤または治療方法が、抗ドーパミン作動薬、ドーパミン受容体阻害薬、抗精神病薬(例えば、ブチリルフェノン及びフェノチアジン系薬剤)、γ-アミノ酪酸トランスフェラーゼ阻害薬、細胞移植療法、及び遺伝子治療から選択される1つ以上である、項5に記載の方法、使用、薬剤または医薬組成物。
【0013】
7、前記化合物がプラスミノーゲンである、項1~6のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0014】
8、前記プラスミノーゲンが、ヒト全長プラスミノーゲンまたはその保存的置換変異体である、項1~7のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0015】
9、前記プラスミノーゲンが、配列2と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲンのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有する、項1~7のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0016】
10、前記プラスミノーゲンが、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をからなり、且つ依然としてプラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を有するタンパク質を含む、項1~7のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0017】
11、前記プラスミノーゲンがGlu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、delta-プラスミノーゲンまたはそれらの、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を保持した変異体から選択されるものである、項1~7のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0018】
12、前記プラスミノーゲンが、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列を含むか、または配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換変異体を含む、項1~7のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0019】
13、前記化合物が、鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬、点眼薬、点耳薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈を介して)、及び筋肉内に投与される、項1~12のいずれか一項に記載の方法、使用、薬剤、または医薬組成物。
【0020】
本願の上記いずれか1つの実施形態において、前記プラスミノゲンが配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有し得る。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換され、かつ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質である。
【0021】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲンフラグメントを含み、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性、例えば、タンパク質加水分解活性を保持した変異体である。上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンである。
【0022】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、前述の方法で使用するプラスミノーゲンとを含む。いくつかの実施形態では、前記キットは、(i)前述の方法で使用するプラスミノーゲン、及び(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための部材(means)を含む、予防または治療キットであり得る。いくつかの実施形態では、前記部材は注射器またはバイアルである。いくつかの実施形態では、前記キットは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するためのラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記製品は、ラベルを含む容器と、(i)前述の方法で使用するためのプラスミノーゲンまたはプラスミノーゲンを含む医薬組成物とを含み、前記ラベルは、前述の方法のいずれかを実施するために前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記キットまたは製品は、他の薬剤を含む1つまたは複数の追加の部材または容器をさらに含む。
【0026】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所にて投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下投与によってプラスミノーゲンを投与することで治療する。前記方法のいくつかの実施形態では、前記プラスミノーゲンは、適切なポリペプチド担体または安定剤と組み合わせて投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重1キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm、0.001~800mg/cm、0.01~600mg/cm、0.1~400mg/cm、1~200mg/cm、1~100mg/cm、10~100mg/cm(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量で投与し、好ましくは一回以上繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0027】
本発明は、本発明の実施形態に属する技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、これらの組み合わせ後の技術構成は、上記の技術構成が別個に明確に開示されたのと同様に、本出願において明確に開示された。さらに、本発明はまた、各実施形態とそれらの要素との間の組み合わせを明確にカバーし、組み合わせ後の技術構成は、本明細書に明確に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスのオープンフィールド試験における総移動距離の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは実験中に一定の距離を移動し、溶媒対照群のマウスの総運動距離はブランク対照群よりも有意に長く、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は溶媒対照群よりも有意に短く、その差は統計的に有意であり(*P<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群の総運動距離は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的行動の回復を促進できることを示唆している。
図2図2は、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスのオープンフィールド試験の境界ゾーンにおける休憩時間率の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスは境界ゾーンで一定の休憩時間の割合を有し、溶媒対照群のマウスの境界ゾーンにおける休憩時間の割合はブランク対照群よりも有意に小さく、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合は溶媒対照群より有意に大きく、統計学的な差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンでの休憩時間の割合はブランク対照群の値に近かった。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの不安行動を軽減できることを示唆している。
図3図3は、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスのオープンフィールド試験の中央ゾーンの平均移動速度の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスが中央ゾーンで一定の移動速度を有し、溶媒対照群のマウスの中央ゾーンの平均移動速度はブランク対照群よりも有意に小さく、プラスミノーゲン群のマウスの中央ゾーンでの平均移動速度は溶媒対照群よりも有意に大きく、統計的差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群の中央ゾーンの移動速度は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的活動及び回避行動の回復を促進し、不安行動を緩和できることを示唆している。
図4図4は、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスのオープンフィールド試験の境界ゾーンの平均移動速度の統計結果を示す図である。その結果、ブランク対照群のマウスが境界ゾーンで一定の移動速度を有し、溶媒対照群のマウスの境界ゾーンの平均移動速度はブランク対照群よりも有意に大きく、プラスミノーゲン群のマウスの境界ゾーンでの平均移動速度は溶媒対照群よりも有意に小さく、統計的差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンの平均移動速度は、ブランク対照群に近かった。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的活動及び回避行動の回復を促進し、不安行動を緩和できることを示唆している。
図5図5A~Cは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスのオープンフィールド試験における移動軌跡の図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスは、中央ゾーンでの移動が少なく、境界ゾーンでの移動が多く、規則的な移動軌跡を持っていた;ブランク対照群と比較して、溶媒群のマウスの中央ゾーンの移動及び総移動距離は有意に増加し、移動軌跡は無秩序で不規則であった;プラスミノーゲン群のマウスの中央ゾーンの移動及び総移動距離は、溶媒群よりも有意に少なく、移動軌跡はブランク対照群に似ていた。これは、プラスミノーゲンが、ハンチントン病モデルマウスの自発的活動及び回避行動の回復を促進できることを示唆している。
図6図6は、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの7日目と0日目の体重比(パーセント)(%)の計算結果を示す図である。その結果、ブランク対照群の体重比が1より大きく、体重が増加する傾向を示した;溶媒対照群のマウスの体重比はブランク対照群よりも小さかった;プラスミノーゲン投与群のマウスの体重比は溶媒対照群より有意に高く、統計的差は有意に近かった(P=0.07)。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの体重増加を促進できることを示唆している。
図7図7A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの海馬GFAP免疫組織化学的結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量的分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬に一定量のGFAP発現があり、溶媒対照群のマウスの海馬におけるGFAPの発現がブランク対照群より有意に高く、統計的差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの海馬におけるGFAPの発現は溶媒対照群より有意に低く、統計学的差は極めて有意であり、ブランク対照群のマウスの海馬おけるGFAPの発現と比較して統計学的差はなかった。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬におけるGFAPの発現を低下させ、アストログリア細胞の増殖を阻害し、海馬損傷の回復を促進できることを示唆している。
図8図8A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの海馬におけるカスパーゼ-3の免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量的分析結果である。その結果、ブランク対照群の海馬は一定量のカスパーゼ-3(capase-3)を発現し(矢印でマーク)、溶媒対照群の海馬のカスパーゼ-3の発現が有意に増加し、プラスミノーゲン投与群の海馬におけるカスパーゼ-3の発現は、溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は有意に近かった(P=0.058)。この結果は、プラスミノーゲンがカスパーゼ-3の発現を低下させ、ハンチントン病モデルマウスの海馬細胞のアポトーシスを低下させることができることを示唆している。
図9図9A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの小脳のトルイジンブルー染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは小脳ニッスル小体数の解析結果である。その結果、ブランク対照群の小脳ニューロンに一定数のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群の小脳ニューロンにおけるニッスル小体の数は、ブランク対照群よりも有意に多く、プラスミノーゲン群のマウスの小脳ニューロンにおけるニッスル小体の数は、ブランク対照群とは有意な差はなかったが、溶媒対照群より有意に少なく、その差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの小脳ニューロンのニッスル小体数の回復を促進できることを示唆している。
図10図10A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの左海馬のタールバイオレット染色結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは海馬ニッスル小体の数の分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの左海馬ニューロンに一定量のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒群のマウスの左海馬ニューロンにあるニッスル小体の数はブランク対照群よりも有意に多く、プラスミノーゲン群のマウスの左海馬ニューロンのニッスル小体の数は、溶媒群より有意に低く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)。この結果は、プラスミノーゲンが左海馬ニューロンのニッスル小体の数の回復を促進できることを示唆している。
図11図11A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの線条体のタールバイオレット染色結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは線条体ニッスル小体の数の分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体ニューロンに一定量のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群のマウスの線条体ニューロンにあるニッスル小体の数はブランク対照群よりも有意に少なく、プラスミノーゲン群のマウスの線条体ニューロンのニッスル小体の数は、溶媒対照群より有意に多く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)。この結果は、プラスミノーゲンが線条体ニッスル小体の数の回復を促進できることを示している。
図12図12A~Iは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの海馬のH&E染色結果を示す図である。A、B、及びCはブランク対照群であり、D、E、及びFは溶媒対照群であり、G、H、及びIはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの海馬の全体的な形状は正常であり、構造が完全であった;溶媒対照群のマウスの海馬のCA1領域には、ニューロンの無秩序な配列、神経細胞の萎縮(細い矢印でマーク)、細胞の変性と壊死、及び周囲の脳組織のゆるみと浮腫(三角形でマーク)が現れ、CA3領域の複数箇所の神経細胞核は濃縮され、強く染色された(太い矢印でマーク);プラスミノーゲン投与群では、海馬の各領域の形状がある程度回復し、CA3及びDG領域の局所のいくつかの神経細胞核が濃縮され、強く染色された。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬損傷を修復できることを示唆している。
図13図13A~Cは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスにおける線条体のH&E染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体の形態学的構造は正常であり、溶媒群のマウスの線条体ニューロンは変性しており、一部の細胞核は空胞化し(矢印でマーク)、脳細胞の配置が乱れていた;プラスミノーゲン投与群のマウスは、ブランク対照群と同様に、線条体の全体的な構造が大幅に改善された。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体損傷を修復できることを示唆している。
図14図14A~Cは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスにおける嗅覚結節のH&E染色結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブランク対照群のマウスの脳の嗅覚結節は正常な形態及び構造を有し、溶媒群のマウスの嗅覚結節は、重度のグリア細胞浸潤(矢印でマーク)を有し、プラスミノーゲン投与群のマウスの嗅覚結節グリア細胞浸潤は、溶媒群より有意に少なかった。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの脳嗅結節損傷を改善できることを示唆している。
図15図15A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの海馬BDNF免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量的分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの右海馬に一定量のBDNF発現があり(矢印でマーク)、溶媒対照群のマウスの右海馬におけるBDNFの発現がブランク対照群よりやや高く、プラスミノーゲン群のマウスの右海馬におけるBDNFの発現は溶媒対照群より有意に高く、しかもその統計学的差は有意に近かった(P=0.07)。この結果は、損傷がBDNFの発現を刺激し、プラスミノーゲンがBDNFの発現をさらに促進し、それによってハンチントン病モデルマウスの海馬損傷の回復を促進できることを示唆している。
図16図16A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの線条体BDNFの免疫組織化学染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量的分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体に一定量のBDNF発現があり(矢印でマーク)、溶媒対照群のマウスの線条体におけるBDNFの発現がブランク対照群よりやや高く、プラスミノーゲン投与群のマウスの線条体におけるBDNFの発現は溶媒対照群より有意に高く、しかもその統計学的差は有意に近かった(P=0.1)。この結果は、損傷がBDNFの発現を刺激し、プラスミノーゲンがBDNFの発現をさらに促進し、それによってハンチントン病モデルマウスの線条体損傷の回復を促進できることを示唆している。
図17図17A~Dは、プラスミノーゲン投与7日後のハンチントン病モデルマウスの線条体におけるLFB染色の結果を示す図である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは平均光学密度の定量的分析結果である。その結果、ブランク対照群のマウスの線条体ミエリン構造は正常であり、溶媒群のマウスの線条体ミエリンタンパク質の量は減少し、空洞変性が見られ(矢印でマーク)、プラスミノーゲン投与群のマウスの線条体ミエリンタンパク質の量は溶媒群よりも有意に多く、統計的差は有意に近かった(P=0.09)。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体ミエリンタンパク質の形成を促進できることを示唆している。
【発明の詳細な説明】
【0029】
ハンチントン病(HD)は、mHttタンパク質毒性を主な発症メカニズムとする単一遺伝子の常染色体優性神経変性疾患であり、その主な症状は、典型的には舞踏病様症状によって現れる進行性ジスキネジア、認知機能低下、及び精神症状を含む。遺伝子変異によりCAGコピー数が異常に増加すると、変異Htt(mHtt)タンパク質のアミノ末端(N末端)ポリグルタミン鎖(polyQ)が伸長し、ラメラ構造を含む異常なコンフォメーションを形成し、これによってmHttタンパク質は正常な機能を失い、毒性効果を獲得する。
【0030】
ハンチントン病の「運動障害」は、主に不随意運動障害(最もよく見られるのは舞踏病である)と随意運動障害(運動失調や動きの鈍化などを含む)の2つを含む。進行性ジスキネジアは、手足、顔、及び体幹の突然の急速なズキズキまたはけいれんとして現れ、これらの動きは事前に知られておらず、制御不能であり、また制御不能なゆっくりとした動きとして現れることもある。検査では、舞踏様不随意運動と筋緊張低下が見られる。舞踏様不随意運動は、この疾患の最も顕著な特徴であり、そのほとんどは、痛みのない痙攣に似ているがより遅く、非定型的である短時間の制御不能なしかめっ面、うなずき、ならびに指の屈曲及び伸展運動として現れ始める。病気が進行すると、不随意運動が次第に悪化し、典型的な眉上げや頭の屈曲が起こり、物を見つめると頭が回転し、患者は不安定に歩き、歩き方は跳躍し、手の姿勢は絶えず変化し、体全体がダンスのように動く。疾患の後期段階では、患者は全身の不随意運動のために立つことも歩くこともできない。疾患が進行すると、随意運動の障害がますます明白になり、動きが不器用で、遅く、硬直し、複雑な随意運動を維持できなくなり、嚥下障害、発話のためらい、構音障害が現れる。また、異常な眼球運動も現れる。病気の進行した段階では、手足の不動の昏迷状態が発生する可能性がある。
【0031】
舞踏病ジスキネジアは、成人発症ハンチントン病の典型である。20歳未満で発症する若年型患者は、不動性ミオトニーを主な運動障害とし、ミオトニー、ミオクローヌス、後期にはオピストニアとして現れる。さらに、成人とは異なり、若年性ハンチントン病患者の約50%が全般てんかん発作を起こす。
【0032】
ハンチントン病の「認知機能障害」は、運動症状の何年も前に現れ、よりゆっくりと進行することがある。進行性認知症は、ハンチントン病患者のもう1つの特徴である。認知症は、初期には皮質下認知症の特徴があり、後期には皮質性認知症と皮質下性認知症の混合性認知症として現れる。
【0033】
認知障害は、ハンチントン病の初期段階で現れることがある。それは、日常生活や仕事における記憶力や計算能力の低下から始まり、患者は新しい情報を思い出すことには軽度の障害しかないが、想起には重大な欠陥がある。口頭での流暢さの低下、言葉を見つけるのに軽度の困難、及び構音障害などの発話の変化もある。口の流暢さの障害は、ハンチントン病における初期の認知障害の1つである。病気の中期及び後期では、患者は、まれな単語を思い出す必要がある命名テストを完了することができない。舞踏病様運動障害は、しばしば舌と唇に影響を与え、発音のリズムと敏捷性を乱し、発話の量、速度、リズム、及び長さを妨げる。したがって、構音とリズム障害は、この疾患の患者の顕著な特徴である。
【0034】
ハンチントン病の「神経精神医学的症状」は、うつ病、過敏症、無関心などの初期症状として、非常に早期に現れる可能性があり、より深刻な症状には、妄想または統合失調症のような症状が含まれる。
【0035】
線維素溶解系(Fibrinolytic system)は、線溶系とも呼ばれ、線維素溶解(線溶)の過程に関与する一連の化学物質からなる系であり、主にプラスミノーゲン(PLG)、プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、及び線維素溶解阻害剤を含む。プラスミノーゲン活性化因子には、組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)、及びウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)が含まれる。t-PAはセリンプロテアーゼであり、血管内皮細胞によって合成される。t-PAはプラスミノーゲンを活性化し、このプロセスは主にフィブリンで行われる。ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u-PA)は、尿細管上皮細胞と血管内皮細胞によって産生され、補因子としてフィブリンを必要とすることなくプラスミノーゲンを直接活性化することができる。プラスミノーゲン(PLG)は肝臓で合成される。血液が凝固すると、PLGはフィブリンネットに大量に吸着され、t-PAまたはu-PAの作用によりプラスミンに活性化されて線維素溶解を促進する。プラスミナーゼ(PL)はセリンプロテアーゼであり、フィブリンとフィブリノーゲンを分解し、様々な凝固因子V、VIII、X、VII、XI、IIなどを加水分解し、プラスミノーゲンをプラスミンに変換し、補体を加水分解するなどの作用がある。線維素溶解阻害剤には、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI)、及びα2-抗チプラスミン(α2-AP)が含まれる。PAIには主にPAI-1とPAI-2の2つの形態があり、t-PAに1:1の比率で特異的に結合することによってt-PAを不活性化すると同時にPLGを活性化することができる。α2-APは肝臓で合成され、PLと1:1の比率で結合して複合体を形成し、それによってPL活性を阻害する。FXIIIはα2-APをフィブリンと共有結合させ、それによってPLに対するフィブリンの感受性を弱める。インビボでの線維素溶解系の活性を阻害する物質としては、PAI-1、補体C1阻害剤、α2抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される「プラスミノーゲン活性化経路の成分」という用語は、
1、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン(micro-plasminogen)、delta-プラスミノーゲン、それらの変異体または類縁体;
2、プラスミン及びそれらの変異体または類縁体;及び
3、プラスミノーゲン活性化剤、例えば、tPA及びuPA、ならびにtPAまたはuPAの1つ以上のドメイン(1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメインなど)を含むtPAまたはuPA変異体及び類縁体をカバーする。
【0037】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換されてかつ依然としてプラスミノーゲン活性、プラスミン活性、tPAまたはuPA活性を有するタンパク質を含む。例えば、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」は、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個の保存的アミノ酸によって置換されて得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0038】
本発明の「プラスミノゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質をカバーする。例えば、本発明の「プラスミノーゲン変異体」は、配列2、6、8、10または12に基づいて、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を追加、削除、及び/または置換し、且つ依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を有するタンパク質であり得る。具体的には、本発明のプラスミノーゲン変異体は、すべての天然に存在するヒトの遺伝的変異体及びこれらのタンパク質の他の哺乳動物型、並びに、例えば、1~100、1~90、1~80、1~70、1~60、1~50、1~45、1~40、1~35、1~30、1~25、1~20、1~15、1~10、1~5、1~4、1~3、1~2、1個のアミノ酸を保存的置換によって得られるこれらのタンパク質の突然変異体を含む。
【0039】
本発明のプラスミノーゲンは、霊長類動物またはげ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性、例えば、リジン結合活性またはタンパク質加水分解活性を保持した変異体、例えば、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲン、例えば、配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンであり得る。
【0040】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「類縁体」はそれぞれ、プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果を与える化合物を含む。
【0041】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン、プラスミン、tPA及びuPAの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。例えば、プラスミノーゲンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミノーゲンドメイン(例えば、1つ以上のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むプラスミノーゲン変異体及び類縁体、例えば、ミニプラスミノーゲン(mini-plasminogen)をカバーする。プラスミンの「変異体」及び「類縁体」は、1つ以上のプラスミンドメイン(例えば、1つまたは複数のkringleドメイン及びタンパク質加水分解ドメイン)を含むミニプラスミン(mini-plasmin)やδ-プラスミン(delta-plasmin)などのプラスミンの「変異体」及び「類縁体」をカバーする。
【0042】
上記プラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの「変異体」または「類縁体」がそれぞれプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAの活性を有するかどうか、またはそれらがプラスミノーゲン、プラスミン、tPAまたはuPAと実質的に同様の効果をそれぞれ与えるかどうかは、当技術分野で知られている方法、例えば、ザイモグラフィー(enzymography)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)及びFACS(蛍光活性化細胞ソーティング法)を使用して、活性化されたプラスミン活性のレベルによって測定できる。例えば、次の文献に記載されている方法を参照して測定することができる。Ny,A.,Leonardsson,G.,Hagglund,A.C,Hagglof,P.,Ploplis,V.A.,Carmeliet,P. and Ny,T. (1999). Ovulation inplasminogen-deficient mice. Endocrinology 140,5030-5035;Silverstein RL, Leung LL, Harpel PC, Nachman RL (November 1984). “Complex formation of platelet thrombospondin with plasminogen. Modulation of activation by tissue activator”. J. Clin. Invest. 74 (5): 1625-33;Gravanis I, Tsirka SE (February 2008). “Tissue-type plasminogen activator as a therapeutic target in stroke”. Expert Opinion on Therapeutic Targets. 12 (2): 159-70;Geiger M, Huber K, Wojta J, Stingl L, Espana F, Griffin JH, Binder BR (Aug 1989). “Complex formation between urokinase and plasma protein C inhibitor in vitro and in vivo”. Blood. 74 (2): 722-8。
【0043】
本発明の一部の実施形態において、本発明の「プラスミノーゲン活性化経路の成分」はプラスミノーゲンである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト全長プラスミノーゲン、またはそのプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した保存的突然変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、または依然としてプラスミノーゲン活性(例えば、そのリジン結合活性またはタンパク質加水分解活性)を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、または依然としてプラスミノーゲン活性を保持した保存的突然変異体若しくはそのフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるようなアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるアミノ酸配列の保存的置換配列を含む。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸は配列2、6、8、10または12に示される。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、配列2、6、8、10または12に示されるプラスミノーゲンの保存的置換変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンまたはその保存的変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2に示されるヒト天然プラスミノーゲンまたはその保存的変異体である。
【0044】
「プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる化合物」とは、プラスミノーゲンを直接活性化できる、若しくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することによってプラスミノーゲンを間接に活性化できる任意の化合物を指し、例えば、tPA、uPA、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、及びスタフィロキナーゼが挙げられる。
【0045】
本発明の「線維素溶解阻害剤の拮抗薬」は、線維素溶解阻害剤の作用に拮抗し、その作用を弱め、遮断し、阻止する化合物である。前記線維素溶解阻害剤は、例えば、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミン、及びα2-マクログロブリンである。前記拮抗剤は、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの抗体、または、例えばPAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの発現を遮断またはダウンレギュレートするアンチセンスRNAもしくはミニRNA、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの結合部位を占めるが、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンまたはα2-マクログロブリンの機能を持たない化合物、または、PAI-1、補体C1阻害剤、α2-抗プラスミンもしくはα2-マクログロブリンの結合ドメイン及び/または活性ドメインをブロックする化合物である。
【0046】
プラスミンはプラスミノゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMPs)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である。プラスミンはプラスミノゲンが二種類の生理性のPAs:組織型プラスミノゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAsの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳格な調節を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性化剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある。
【0047】
プラスミノゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである。プラスミノゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である。プラスミノゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌され及び分解していない形のプラスミノゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノゲンと比較して、リジン-プラスミノゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPAまたはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって連結された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす。プラスミノゲンのアミノ基末端部分は五つの相同三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたプラスミノーゲンは38kDaのフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンギオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノゲンから生成される。
【0048】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理性血栓の形成を予防するキーポイントである。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらの成分はラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している。間接的に、プラスミンはさらにMMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含むいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解する。そのため、プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子であることを提唱することがある。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する。インビトロで、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0049】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0050】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドを含む天然ヒト由来プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)として計算すれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンはC末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)という七つのドメインを含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、PApは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0051】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのヒトプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。生体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの76-77番目のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。Delta-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有しない(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)。δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許出願において、マイクロプラスミノーゲンの配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0052】
全長プラスミノーゲンの構造は、Aisinaらの論文にも記載されている(Aisina R B,Mukhametova L I.Structure and function of plasminogen/plasmin system[J].Russian Journal of Bioorganic Chemistry,2014,40(6):590-605)。Aisinaらの前記文章によれば、プラスミノーゲンにはKringle 1、2、3、4、5ドメインとセリンプロテアーゼドメイン(プロテアーゼドメイン(protease domain、PD)とも呼ばれる)が含まれ、Kringlesは、プラスミノーゲンが低分子量及び高分子量のリガンドに結合する役割(すなわち、リジン結合活性)を担っており、その結果、プラスミノーゲンがよりオープンな構成に変換され、より活性化しやすくなり、プロテアーゼドメイン(PD)は、残基Val562-Asn791であり、tPAとUPAはプラスミノーゲンのArg561-Val562位活性化結合を特異的に切断し、それによってプラスミノーゲンがプラスミンを形成できる。したがって、プロテアーゼドメイン(PD)は、プラスミノーゲンのタンパク質加水分解活性を付与する領域である。
【0053】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0054】
本願において、前記プラスミノーゲンの「不足」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、前記被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。前記プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0055】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションをとるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションに維持する重要なエピトープを含み、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び凝結因子XII(ハーゲマン因子)などを含む。
【0056】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とは、基質のターゲット配列中のリジンに結合する活性(リジン結合活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解機能を発揮する活性(タンパク質加水分解活性)フラグメント、またはタンパク質加水分解活性とリジン結合活性との両方を有するフラグメントを指す。本発明のプラスミノーゲンに関する技術構成は、プラスミノーゲンをプラスミノーゲン活性フラグメントに置き換える技術構成を包含する。いくつかの実施形態では、本発明に係るプラスミノーゲン活性フラグメントは、プラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むか、またはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインからなる。一部の実施形態では、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、配列14を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、または配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。一部の実施形態において、本発明のプラスミノーゲン活性フラグメントは、Kringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインもしくはその保存的置換変異体を含むか、またはKringle 1、Kringle 2、Kringle 3、Kringle 4、及びKringle 5から選択される1つ以上のドメインまたはその保存的置換変異体からなる。いくつかの実施形態では、本発明に係るプラスミノーゲンは、上記のプラスミノーゲンの活性フラグメントを含むタンパク質を含む。
【0057】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は、組織プラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合体に対する測定(PAP)を含む。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてPLMとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0058】
「オーソログまたはオルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含み、直系遺伝子ともいう。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンのオーソログまたはオルソログを含む。
【0059】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの所定のアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、アルカリ性、疎水性など)のアミノ酸で親タンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性のアルカリ性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然または親タンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0060】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になるまで精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造され、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0061】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するあるいは有しない)を含む融合物;等々である。
【0062】
参照ペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的としたアライメントは本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、該パラメータが比較対象の配列のフルサイズに対して最大アライメントの要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0063】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのある%のアミノ酸配列同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0064】
ここで、Xは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0065】
本文において使用されているように、用語の「治療」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状の発生、発症を完全または一部予防すること、あるいは疾患及び/またはその症状を一部または完全軽減すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状の減退または消失を引き起こすこと。
【0066】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0067】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)の量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン活性化経路の成分またはその関連化合物(例えば、プラスミノーゲン)、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0068】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットによって小さい不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンとN保護を受けている単一のアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と連結する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、その後それを切除する。
【0069】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に連結させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0070】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において遊離体または宿主染色体DNAの組み込む部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0071】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンするための原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合部位配列などを有してもよい。
【0072】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターには特にアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素由来のプロモーターを含む。
【0073】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えばインビトロ細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明の抗-Tau抗体(例えばかかる目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)の発現及び生成に用いることができる。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報サイト、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなど由来のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0074】
一旦(化学または組み換え的に)合成されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的生成物以外の大分子などである。
【0075】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲンと必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(約10個より少ない残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性化剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましい凍結乾燥された抗VEGF抗体製剤は、WO97/04801に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、降圧薬、抗不整脈薬、糖尿病薬などが挙げられる。
【0077】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0078】
インビトロで投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0079】
本発明のプラスミノーゲンは徐放製剤を調製できる。徐放製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。徐放性マトリックスの実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成することであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0080】
投与及び使用量
異なる方式、例えば鼻吸入、エアロゾル吸入、点鼻薬や点眼薬、静脈内、腹腔内、皮下、頭蓋内、髄腔内、動脈内(例えば、頸動脈を介して)、筋肉内、及び直腸内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0081】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0082】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明のプラスミノーゲンを含有する医薬組成物の用量の範囲は被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日0.01~100mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性をリアルタイムに評価する必要がある。
【0083】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は、糖尿病によって引き起こされる心血管疾患及びその関連障害の治療に使用できる本発明のプラスミノーゲンまたはプラスミンを含む製品または薬物キットに係るものである。前記製品は好ましくひとつの容器、ラベルまたはプロトコールを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤はプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明に記載の糖尿病によって引き起こされる心血管疾患及びその関連病症の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びグルコース溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示することを含む。
【実施例
【0084】
以下の実施例で使用されるヒトプラスミノーゲンは、ヒトドナーの血漿に由来し、以下の文書:KennethC Robbins,Louis Summaria,David Elwyn et al.Further Studies on the Purification and Characterization of Human Plasminogen and Plasmin.Journal of Biological Chemistry,1965,240(1):541-550;Summaria L,Spitz F,Arzadon L et al.Isolation and characterization of the affinity chromatography forms of human Glu- and Lys-plasminogens and plasmins.J Biol Chem.1976 Jun 25;251(12):3693-9;HAGAN JJ,ABLONDI FB,DE RENZO EC.Purification and biochemical properties of human plasminogen.J Biol Chem.1960 Apr;235:1005-10に記載された方法に基づき、プロセスを最適化し、ヒトドナー血漿から精製して得られた。プラスミノーゲン単体の純度は98%を上回った。
【実施例1】
【0085】
実施例1は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的活動及び回避行動を改善することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にオープンフィールド試験を行った。
3-NPは、ミトコンドリアのコハク酸デヒドロゲナーゼを不可逆的に阻害する天然のマイコトキシンであり、血液脳関門を通過して神経毒性を引き起こし、神経細胞死を引き起こし、ヒトのHD症状を模倣する[1]
オープンフィールド実験
実験時、オープンフィールド(40×40×40cm)の底面中央にマウスを置き、撮影と計時を同時に行い、持続して5分間観察し、各マウスは3回の実験を行った。Smart Systemは、実験動物の行動を評価するための完全な使いやすいビデオ追跡システムである。移動軌跡、アクティビティ、特定の動作(回転、ストレッチ、摂食など)及びイベントを記録し、さまざまな分析パラメーターの計算を実行できる。この実験では、Smart3.0システムを使用して、マウスの動きを記録及び分析した。パラメーターは、総移動距離、境界ゾーン休憩時間率、中央ゾーンの平均移動速度及び境界ゾーンの平均移動速度を含む。各実験後、匂いの好みを防ぐために70%のアルコールを使用してボックスを拭いた[1]
オープンフィールド実験の設計原理は、マウスの回避に基づいている。これは、マウスが開けた場所、未知の場所、潜在的に危険な場所を恐れているため、「壁に張り付く」性質を持っていることを指す。回避は、フィールドの周辺領域(4つのコーナーと4つの側面)でのマウスの活動によって評価された。回避を反映した周囲での活動時間から判断すると、時間が短縮することは、マウスがより「冒険的」な傾向にあることを示し、中央ゾーンでの活動時間が大幅に長くなることは、回避と不安(うつ病)のレベルが低いことを示す。
総運動距離
総移動距離は、指定された試験時間内の移動軌跡の長さを指す。その結果、ブランク対照群のマウスは実験中に一定の距離を移動し、溶媒対照群のマウスの総運動距離はブランク対照群よりも有意に長く、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は溶媒対照群よりも有意に短く、その差は統計的に有意であり(*P<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群のマウスの総運動距離は、ブランク対照群に近かった(図1)。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的活動の行動の回復を促進できることを示している。
境界ゾーン休憩時間率
境界ゾーンとは、オープンフィールドの周囲(四隅と四つの辺)のことである。境界ゾーン休憩時間率とは、境界ゾーンでの休憩時間と総休憩時間(境界ゾーン休憩時間と中心ゾーン休憩時間とを含む)との比である。その結果、ブランク対照群のマウスは境界ゾーンで一定の休憩時間の割合を有し、溶媒対照群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合はブランク対照群より有意に小さく、プラスミノーゲン投与群のマウスの境界ゾーンでの休憩時間の割合は溶媒対照群より有意に大きく、統計学的な差は非常に有意であり(***はP<0.001を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンでの休憩時間の割合はブランク対照群の値に近かった(図2)。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの不安行動を緩和できることを示している。
中央ゾーンの平均移動速度
中央ゾーンとは、オープンフィールドの中央20x20cmエリアを指す。中央ゾーンの平均移動速度とは、中央ゾーンでの総移動距離と中央ゾーンでの総滞在時間(移動時間と休憩時間を含む)の比をいう。その結果、ブランク対照群のマウスが中央ゾーンで一定の移動速度を有し、溶媒対照群のマウスの中央ゾーンの平均移動速度はブランク対照群よりも有意に小さく、プラスミノーゲン群のマウスの中央ゾーンでの平均移動速度は溶媒対照群よりも有意に大きく、統計的差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群の中央ゾーンの移動速度は、ブランク対照群に近かった(図3)。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的活動を促進し、不安行動を緩和できることを示している。
境界ゾーンの平均移動速度
境界ゾーンの平均移動速度とは、境界ゾーンでの総移動距離と境界ゾーンでの総滞在時間の比をいう。その結果、ブランク対照群のマウスが境界ゾーンで一定の移動速度を有し、溶媒対照群のマウスの境界ゾーンの平均移動速度はブランク対照群よりも有意に大きく、プラスミノーゲン群のマウスの境界ゾーンでの平均移動速度は溶媒対照群よりも有意に小さく、統計的差は有意であり(*はP<0.05を表す)、プラスミノーゲン投与群の境界ゾーンの平均移動速度は、ブランク対照群に近かった(図4)。これは、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの自発的活動を促進し、不安行動を緩和できることを示唆している。
移動軌跡
その結果、ブランク対照群(図5A)のマウスは、中央ゾーンでの移動が少なく、境界ゾーンでの移動が多く、規則的な移動軌跡を持っていた;ブランク対照群と比較して、溶媒群(図5B)のマウスの中央ゾーンの移動及び総移動距離は有意に増加し、移動軌跡は無秩序で不規則であった;プラスミノーゲン群(図5C)のマウスの中央ゾーンの移動及び総移動距離は、溶媒群よりも有意に少なく、移動軌跡はブランク対照群に似ていた。これは、プラスミノーゲンが、ハンチントン病モデルマウスの自発的活動及び回避行動の回復を促進できることを示唆している。
【実施例2】
【0086】
実施例2は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの体重減少を遅らせることに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスの体重を測定し、7日目と0日目の体重比(%)を算出した。
体重減少は、ハンチントン病によくみられる非神経学的表現型であり、通常は進行性であり、栄養失調または悪液質を引き起こす可能性がある[5]
その結果、ブランク対照群の体重比が1より大きく、体重が増加する傾向を示した;溶媒対照群のマウスの体重比はブランク対照群よりも小さかった;プラスミノーゲン投与群のマウスの体重比(%)は溶媒対照群より有意に高く、統計的差は有意に近かった(P=0.07)(図6)。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの体重増加を促進できることを示唆している。
【実施例3】
【0087】
実施例3は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬におけるGFAPの発現を低下させることに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、海馬を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した海馬組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗GFAP抗体(ab7260,Abcam)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
グリア線維性酸性タンパク質(Glial fibrillary acidic protein,GFAP)は、アストロサイトの特徴的な中間径フィラメントタンパク質であり、細胞骨格の形成に関与し、その引張強度を維持する。アストロサイトは、中枢神経系の主要なグリア細胞の1つである。研究では、ハンチントン病は、アストログリアの過形成及びその活性増加を伴い、GFAP発現のアップレギュレーション及び細胞肥大として現れると報告されている[6-7]
その結果、ブランク対照群(図7A)のマウスの海馬に一定量のGFAP発現があり、溶媒対照群(図7B)のマウスの海馬におけるGFAPの発現がブランク対照群より有意に高く、統計的差は極めて有意であり(***はP<0.001を表す)(図7D)、プラスミノーゲン群(図7C)のマウスの海馬におけるGFAPの発現は溶媒対照群より有意に低く、統計的差は極めて有意であり、ブランク対照群のマウスの海馬おけるGFAPの発現と比較して統計学的差はなかった。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬におけるGFAPの発現を低下させ、アストログリア細胞の増殖を阻害し、神経保護効果を有することを示している。
【実施例4】
【0088】
実施例4は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬細胞のアポトーシスを低下させることに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、海馬を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した海馬組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗カスパーゼ-3抗体(BA2142,Boster Biological Technology)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
カスパーゼ(Caspase)ファミリーは、アポトーシスを仲介するプロセスで非常に重要な役割を果たし、その中で、カスパーゼ-3は、アポトーシスシグナル伝達の多くの経路で機能する重要な実行分子である。3-NPハンチントンモデルでは、ニューロンのアポトーシスが増加し、カスパーゼ-3の発現がアップレギュレートされた。
その結果、ブランク対照群(図8A)の海馬は一定量のカスパーゼ-3を発現し(矢印でマーク)、溶媒対照群(図8B)の海馬のカスパーゼ-3の発現が有意に増加し、プラスミノーゲン投与群(図8C)の海馬におけるカスパーゼ-3の発現は、溶媒対照群よりも有意に低く、統計的差は有意に近かった(P=0.058)(図8D)。この結果は、プラスミノーゲンがカスパーゼ-3の発現を低下させ、ハンチントン病モデルマウスの海馬細胞のアポトーシスを低下させることができることを示唆している。
【実施例5】
【0089】
実施例5は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの小脳ニューロンのニッスル小体数の回復を促進することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、小脳を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した小脳組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから0.5%トルイジンブルー染色液で染色した。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させた。光学顕微鏡下で観察し、写真を撮った。
ニッスル小体は神経細胞の特徴的な構造の一つであり、神経細胞の構造タンパク質及び機能タンパク質の合成部位であり、その数と分布は神経細胞の機能状態と密接に関係している。ニッスル体の主な化学成分はリボ核酸とタンパク質であり、核外クロマチンと呼ばれ、トルイジンブルー、チオニン、タールバイオレットなどの塩基性色素と親和性があり、その中でもトルイジンブルー染色がニッスル小体の表示に最も一般的に使用される伝統的な方法である[8]。神経障害が発生すると、ニッスル小体の状態が異常になることがある。
その結果、ブランク対照群(図9A)の小脳ニューロンに一定数のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒対照群(図9B)の小脳ニューロンにおけるニッスル小体の数は、ブランク対照群よりも有意に多く、プラスミノーゲン群(図9C)のマウスの小脳ニューロンにおけるニッスル小体の数は、ブランク対照群とは有意な差はなかったが、溶媒対照群より有意に少なく、その差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(図9D)。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの小脳ニューロンのニッスル小体数の回復を促進できることを示唆している。
【実施例6】
【0090】
実施例6は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬ニューロンのニッスル小体数の回復を促進することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、海馬を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した海馬組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから0.4%タールバイオレット染色液(製造元:Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.、バッチ番号:20181019)(pH=3)で染色した。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察し、写真を撮った。
タールバイオレット染色は、タールバイオレットをコア染料として使用するもので、タールバイオレットには感光効果があり、ニッスル小体の変化をよく表現できる。
その結果、ブランク対照群(図10A)のマウスの左海馬ニューロンに一定量のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒群(図10B)のマウスの左海馬ニューロンにあるニッスル小体の数はブランク対照群よりも有意に多く、プラスミノーゲン群(図10C)のマウスの左海馬ニューロンのニッスル小体の数は、溶媒群より有意に低く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(図10D)。この結果は、プラスミノーゲンが海馬ニューロンのニッスル小体の数の回復を促進できることを示している。
【実施例7】
【0091】
実施例7は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体ニッスル小体の数の回復を促進することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、線条体を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した線条体組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから0.4%タールバイオレット染色液(pH=3)で染色した。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察し、写真を撮った。
その結果、ブランク対照群(図11A)のマウスの線条体ニューロンに一定量のニッスル小体が存在し(矢印でマーク)、溶媒群(図11B)のマウスの線条体ニューロンにあるニッスル小体の数はブランク対照群よりも有意に少なく、プラスミノーゲン群(図11C)のマウスの線条体ニューロンのニッスル小体の数は、溶媒群より有意に多く、しかもその差は統計学的に有意であった(*はP<0.05を表す)(図11D)。この結果は、プラスミノーゲンが線条体ニッスル小体の数の回復を促進できることを示している。
【実施例8】
【0092】
実施例8は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬損傷を減少させることに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、海馬を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した海馬組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは4μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してからヘマトキシリンとエオジンで染色(HE染色)し、1%塩酸アルコールで分別した後、アンモニア水で青色に戻り、アルコール勾配で脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(図12A~C)のマウスの海馬の全体的な形状は正常であり、構造が完全であった;溶媒対照群(図12D~F)のマウスの海馬のCA1領域には、ニューロンの無秩序な配列、神経細胞の萎縮(細い矢印でマーク)、細胞の変性と壊死、及び周囲の脳組織のゆるみと浮腫(三角形でマーク)が現れ、CA3領域の複数箇所の神経細胞核は濃縮され、強く染色された(太い矢印でマーク);プラスミノーゲン投与群(図12G~I)では、海馬の各領域の形状がある程度回復し、CA3及びDG領域の局所のいくつかの神経細胞核が濃縮され、強く染色された。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬損傷を修復できることを示している。
【実施例9】
【0093】
実施例9は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体損傷を減少させることに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、線条体を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した線条体組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してからヘマトキシリンとエオジンで染色(HE染色)し、1%塩酸アルコールで分別した後、アンモニア水でブルイングさせ、アルコール勾配で脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(図13A)のマウスの線条体の形態学的構造は正常であり、溶媒群(図13B)のマウスの線条体ニューロンは変性しており、一部の細胞核は空胞化し(矢印でマーク)、脳細胞の配置が乱れていた;プラスミノーゲン投与群(図13C)のマウスは、ブランク対照群と同様に、線条体の全体的な構造が大幅に改善された。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体損傷を修復できることを示している。
【実施例10】
【0094】
実施例10は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの嗅覚結節損傷を改善することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、脳組織を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した脳組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してからヘマトキシリンとエオジンで染色(HE染色)し、1%塩酸アルコールで分別した後、アンモニア水でブルイングさせ、アルコール勾配で脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
ハンチントン病モデルマウスの嗅神経が損傷を受けており、ハンチントン患者は嗅覚障害を伴うことが研究で報告されている[9]
その結果、ブランク対照群(図14A)のマウスの脳の嗅覚結節は正常な形態及び構造を有し、溶媒群(図14B)のマウスの嗅覚結節は、重度のグリア細胞浸潤(矢印でマーク)を有し、プラスミノーゲン投与群(図14C)のマウスの嗅覚結節グリア細胞浸潤は、溶媒群より有意に少なかった。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの脳嗅結節損傷を改善できることを示している。
【実施例11】
【0095】
実施例11は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの海馬におけるBDNFの発現を促進することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、海馬を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した海馬組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗BNDF抗体(PB9075,Boster Biological Technology)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Vector laboratories,MP-7451)二次抗体を室温で30分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
BDNF、すなわち、脳由来神経栄養因子(brain derived neurotrophic factor)は、脳内で合成されるタンパク質であり、中枢神経系に広く分布しており、中枢神経系の発達中のニューロンの生存、分化、成長、発達に重要な役割を果たす。BDNFは、ニューロンが損傷を受けて死滅することを防ぎ、ニューロンの病理学的状態を改善し、損傷したニューロンの再生や分化などの生物学的効果を促進することができる[10]
その結果、ブランク対照群(図15A)のマウスの右海馬に一定量のBDNF発現があり(矢印でマーク)、溶媒群(図15B)のマウスの右海馬におけるBDNFの発現がブランク対照群よりやや高く、プラスミノーゲン投与群(図15C)のマウスの右海馬におけるBDNFの発現は溶媒対照群より有意に高く、しかもその統計学的差は有意に近かった(P=0.07)(図15D)。この結果は、損傷がBDNFの発現を刺激し、プラスミノーゲンがBDNFの発現をさらに促進し、それによってハンチントン病モデルマウスの海馬損傷の回復を促進できることを示唆している。
【実施例12】
【0096】
実施例12は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体におけるBDNFの発現を促進することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、線条体を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した線条体組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。組織切片の厚さは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してから1回水で洗った。PAPマーカーで組織を丸で囲み、3%過酸化水素で15分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。5%正常ヤギ血清(Vector Laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングし、時間になったらヤギ血清を捨て、ウサギ抗BNDF抗体(PB9075,Boster Biological Technology)を滴下して4℃で一晩インキューベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Vector laboratories,MP-7451)二次抗体を室温で30分間インキュベートし、0.01M PBSで2回洗浄し、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、水で3回洗浄した後にヘマトキシリンで30秒対比染色して、流水で5分間すすいだ。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、ブランク対照群(図16A)のマウスの線条体に一定量のBDNF発現があり(矢印でマーク)、溶媒群(図16B)のマウスの線条体におけるBDNFの発現がブランク対照群よりやや高く、プラスミノーゲン投与群(図16C)のマウスの線条体におけるBDNFの発現は溶媒群より有意に高く、しかもその統計学的差は有意に近かった(P=0.1)(図16D)。この結果は、損傷がBDNFの発現を刺激し、プラスミノーゲンがBDNFの発現をさらに促進し、それによってハンチントン病モデルマウスの線条体損傷の回復を促進できることを示唆している。
【実施例13】
【0097】
実施例13は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体ミエリンの再生を促進することに関するものである。
6週齢のC57オスマウスを取り、モデリングの3日前にすべてのマウスの体重を測定し、簡単なオープンフィールド試験を実施し、5分間観察し、ランダムな動物の自発的な差異を除外し、最終的に23の実験動物を決定し、オープンフィールド試験におけるマウスの総移動距離に従ってマウスをランダムに2つの群に分け、ブランク対照群で6匹とし、モデル群で17匹とした。ブランク対照群のマウスには125μLのPBS溶液を腹腔内注射により投与し、モデル群のマウスには50mg/kg体重で3-ニトロプロピオン酸(3-Nitropropionic acid,3-NP)溶液を腹腔内注射により投与し、1日2回(12時間間隔で)、5日間連続して注射し、ハンチントンモデルを構築した[1]。3-NP溶液の調製:3-NP粉末(sigma、カタログ番号N5636)を10mg/mlの濃度になるようにPBS溶液で溶解した。モデリングが完了した翌日を投与0日目とし、すべてのマウスの体重を測定し、オープンフィールド試験を実施した。モデル群のマウスをオープンフィールドにおける総移動距離に応じてランダムに溶媒対照群(9匹)とプラスミノーゲン投与群(8匹)の2つの群に分けた。溶媒対照群のマウスに0.1ml/匹で溶媒(10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム溶液、pH7.4)を尾静脈注射により投与し、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1ml/匹でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、連続して7日間投与した。投与の7日目にマウスを殺処分し、線条体を採取して10%中性ホルムアルデヒド溶液で24~48時間固定した。固定した線条体組織をアルコール勾配で脱水させ、キシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋した。脊髄組織断面切片の厚さは4μmであり、切片を脱パラフィンさせ再水和してからミエリン染色液でLFB染色を行った。アルコール勾配で脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させた。光学顕微鏡下で観察し、写真を撮った。
LFB(luxol fast blue)染色は、fast blue染色を使用してミエリンを染色することであり、これは、皮質脊髄路の局在、ミエリン病変、及び損傷と再生修復の形態学的観察を研究するための効果的な方法である[11-12]
その結果、ブランク対照群(図17)のマウスの線条体ミエリン構造は正常であり、溶媒群(図17B)のマウスの線条体ミエリンタンパク質の量は減少し、空洞変性が見られ(矢印でマーク)、プラスミノーゲン投与群(図17C)のマウスの線条体ミエリンタンパク質の量は溶媒群よりも有意に多く、統計的差は有意に近かった(P=0.09)(図17D)。この結果は、プラスミノーゲンがハンチントン病モデルマウスの線条体ミエリンタンパク質の形成を促進できることを示唆している。

参考文献:
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