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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】がんの予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/765 20150101AFI20250123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 1/02 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 1/18 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 11/02 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 11/04 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 13/02 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 13/08 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 13/10 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 15/00 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 15/02 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 19/08 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20250123BHJP
   A61P 21/00 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
A61K35/765
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 G
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/02
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P15/02
A61P17/00
A61P19/08
A61P25/00
A61P27/02
A61P21/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022570612
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2021004323
(87)【国際公開番号】W WO2021235685
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/027,574
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522451160
【氏名又は名称】バイロキュア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VIROCURE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ、へン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン スク
(72)【発明者】
【氏名】キム、チャン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ホン ジェ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-511886(JP,A)
【文献】Molecular Therapy,2016年,Vol.24, No.1,pp.166-174
【文献】Cancers,2018年,Vol.10, 205,pp.1-18,doi:10.3390/cancers10060205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/76-35/768
A61P 35/00-35/04
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レオウイルス(Reovirus)を有効成分として含む、大腸癌、または腎臓癌の予防または治療用薬学的組成物であって、
前記レオウイルスは経口投与される、
組成物。
【請求項2】
抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、および抗CTLA-4抗体からなる群より選ばれた1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記レオウイルス、および、免疫チェックポイント阻害剤は、同時に(simultaneous)、別々に(separate)または順次に(sequential)投与されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬学的組成物は、CD8+ T細胞の腫瘍内浸透を増加させることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
レオウイルスと抗PD-1抗体とを有効成分とし、前記レオウイルスを経口投与することを特徴とする再発がんの予防用医薬組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、レオウイルスおよび抗PD-1抗体が、同時に、別々に、または逐次的に投与される、組成物。
【請求項7】
レオウイルス(Reovirus)を有効成分として含む組成物の、大腸癌、または腎臓癌の予防または治療薬剤を製造するための使用であって、
前記レオウイルスは経口投与される、
使用。
【請求項8】
レオウイルスおよび抗PD-1抗体を有効成分として含む組成物の、再発がんの予防用薬剤を製造するための使用であって、
前記レオウイルスは経口投与される、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの予防または治療用薬学的組成物、およびこれを用いたがんの予防または治療方法に関する。また、本発明は、前記薬学的組成物と免疫チェックポイント阻害剤のがんに対する併用治療用途に関する。
【0002】
本出願は、2020年05月20日に出願された米国仮出願第63/027,574号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
がんは、一般的に細胞が過度な速度で分裂し、機能に異常が生じる疾患、悪性腫瘍および新生物(neoplasm)と定義される。標準治療法は、影響を受けたがん組織を除去する手術、化学療法および放射線療法を含む。特定がんは、このような化学療法、放射線療法、およびその他の治療に反応しないか、または耐性を有することとなる。一部のヒト腫瘍が従来の化学/放射線療法に対して感受性を示すが、様々な固体腫瘍(例えば、大腸がん、脳腫瘍、乳房腫瘍、卵巣腫瘍およびその他の腫瘍)および血液腫瘍は、従来の治療処方に対して難治性になると知られている。最近では、従来のがん治療法とは異なって、免疫体系を用いてがんを治療しようとする免疫治療療法が注目を集めている。
【0004】
免疫抗がん療法は、がん自体を直接的に攻撃する従来の抗がん剤とは異なって、人工免疫タンパク質を体内に注入して免疫体系を刺激することによって、免疫細胞が選択的にがん細胞のみを攻撃するように誘導する方法であり、大きく、受動免疫治療と能動免疫治療に分けられる。受動免疫治療には、免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)、免疫細胞治療剤(immune cell therapy)、治療用抗体(therapeutic antibody)などがあり、そのうち、免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞の抑制に関与する免疫チェックポイントタンパク質(immune checkpoint protein)の活性化を遮断し、T細胞を活性化させて、がん細胞を攻撃する薬剤であり、CTLA-4、PD-1、PD-L1阻害剤などがある。2016年にPD-L1の抗体医薬品(Atezolizumab)が抗がん治療を目的としてFDAの承認を受けたが、免疫チェックポイント阻害剤の単独治療療法では制限的な治療効果を示すという限界点がある。また、能動免疫治療には、がん治療ワクチン(vaccine)、免疫調節剤(immune-modulating agents)などがあり、そのうち、がん治療ワクチンは、がん細胞またはがん細胞由来物質(substance)から製造し、これを人体に注入して、人体の自然防御システムを作動させる薬剤である。しかしながら、がん治療ワクチンは、生産過程が複雑であり、様々な種類のがんに適用するのに困難があり、個々の患者に合わせた治療療法であるから、患者に経済的負担を与えるという問題がある。
【0005】
したがって、がんを予防および治療の向上のために、より効果的な接近法、特に併用接近法の開発が重要である。
【0006】
大腸がんは、大腸にできたがん細胞からなる悪性腫瘍であり、排便習慣の変化、下痢、便秘、血便、腹痛、腹部膨張、疲労感、食欲不振または消化不良などの症状が現れる。大腸がんの治療のために、がん細胞の組織浸透程度によって治療方法を決定し、原発がんの大部分は、切除術と抗がん化学療法あるいは放射線治療を併行する。しかしながら、手術の副作用として、手術後の全身麻酔による肺合病症、吻合部漏出、出血または腸閉塞などが現れることがある。また、抗がん化学療法の副作用としては、白血球や血小板減少症、脱毛、吐き気、嘔吐、疲労などがあり、放射線治療の副作用は、骨盤痛、排便習慣の変化、排尿障害、肛門痛、下痢または脱毛などが知られている。
【0007】
また、大腸がんは、根治的切除術を施行しても、20~50%程度再発することとなるが、局所再発、遠隔転移および局所再発と遠隔転移を伴う再発の3つの形態で現れる。一般的に、局所再発と遠隔転移を伴う広範囲な再発が多いが、転移になる場合は、大腸がん4期であり、病気が最も進行した状態に分類し、予後が良くないと知られている。したがって、副作用の多い現在の治療法を補完しつつ、大腸がんを効果的に治療するための新しい治療方法の研究が必要である。
【0008】
一方、ウイルスは、生物療法剤中の1つであり、腫瘍細胞内遺伝的変異を用いて攻撃する標的治療剤の概念を有する。抗がんウイルスは、がん細胞で選択的に増殖し、腫瘍壊死と死滅を誘導する。
【0009】
抗がんウイルス(oncolytic virus)は、がんの治療に用いられるウイルスであり、これを用いた抗がん用法をOV療法(oncolytic viral therapy)という。野生型腫瘍溶解性ウイルス(Wild type oncolytic virus)を用いたがん治療の研究は、従来の治療遺伝子(Therapeutic gene)をウイルスに挿入して、治療遺伝子の発現による腫瘍殺傷効果を主に得ようとする遺伝子治療(Gene therapy)とは区別されるものであり、野生型腫瘍溶解性ウイルスの研究は、一部の野生型ウイルスが内在的に強力な腫瘍破壊能力を有するという事実が知られることから始めた。
【0010】
様々な種類のウイルスによる自然感染によってがんが自然に治療されるという報告はずっと前からあり、本格的に野生型ウイルスによる腫瘍特異的殺傷機序に関する研究が始まって以来、野生型レオウイルス(Reovirus)を用いたがん治療の研究は、臨床3相適用にまで至った。その他、アデノウイルス、ポリオウイルス、単純ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルスなどが開発され、ウイルスの効能および安定性を高めるための方法が研究中にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、レオウイルス(Reovirus)の経口投与を通じて治療できることを確認しただけでなく、免疫チェックポイント阻害剤との併用が、がんの治療に顕著な相乗効果を発揮し、抗がん効果を増強させることができることを確認することによって、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含む再発がんの予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0014】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における当業者なら明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的を達成するために、本発明は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含む再発がんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含む、がんまたは再発がんの予防または治療方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含む組成物のがんまたは再発がんの予防または治療用途を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含む組成物のがんまたは再発がんの予防または治療薬剤を製造するための用途を提供する。
【0020】
本発明の一具現例において、前記がんは、子宮頸がん、肺がん、膵臓がん、非小細胞性肺がん、肝がん、結腸がん、大腸がん、骨がん、皮膚がん、頭部がん、頸部がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、脳腫瘍、血液がん、胃がん、肛門周囲がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜腫瘍、膣がん、外陰がん、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎臓骨盤がん、中枢神経系(CNS central nervoussystem)腫瘍、原発CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫および脳下垂体腺腫からなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の他の具現例において、前記薬学的組成物は、前記薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤をさらに含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1阻害剤、PD-1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群から選ばれた1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、前記レオウイルス、またはレオウイルスで処理された生物学的サンプル;および
免疫チェックポイント阻害剤は、同時に(simultaneous)、別々に(separate)または順次に(sequential)投与されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記レオウイルス;またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルは、経口投与されうるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、CD8+ T細胞の腫瘍内浸透を増加させることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、非経口投与されうるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と同時に(simultaneous)、別々に(separate)または順次に(sequential)投与されうるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記生物学的サンプルは、生体外で(ex vivo)生物学的サンプルに対してレオウイルスの有効量を適用して、がん細胞を死滅させるために製造されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記生物学的サンプルは、骨髄サンプル、脂肪由来幹細胞サンプルまたは血液サンプルであってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0030】
本発明者らは、レオウイルス単独のがん治療効果を確認しただけでなく、レオウイルスを経口投与しながら、免疫チェックポイント阻害剤と併用する場合、大腸がん、皮膚がん、腎臓がんなどに対して腫瘍体積の低減、腫瘍成長速度の抑制、生存率の増加のようながん治療効果が有意に上昇することを確認し、特にPD-1抗体およびCTLA-4抗体とレオウイルスを併用する場合、がんが完全寛解になるだけでなく、がんの再発も抑制することができることを確認した。したがって、本発明のレオウイルスを様々ながんの治療剤および治療補助剤として有用に使用できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】Azoxymethane(AOM)/Dextran Sulfate Sodium(DSS)誘導された大腸がん動物モデルの製作過程およびレオウイルス(RC402)とanti-PD-L1抗体の投与スケジュールを示す図である。
図2】大腸がん動物モデルの大腸がん関連疾患の重症度を測定するためのDisease Activity Index(DAI)判定基準を示す図である。
図3】正常対照群、AOM/DSS誘導大腸がん群(Vehicle)、レオウイルス経口投与群(RC402)、免疫チェックポイント阻害剤腹腔投与群(αPD-L1)およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群(RC402+αPD-L1)のDisease Activity Index(DAI)測定結果を示す図である。
図4】正常対照群、AOM/DSS誘導大腸がん群(Vehicle)、レオウイルス経口投与群(RC402)、免疫チェックポイント阻害剤腹腔投与群(αPD-L1)およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群(RC402+αPD-L1)の生存率の測定結果を示す図である。
図5】CT26大腸がん細胞移植を用いた大腸がん動物モデルにおけるレオウイルス(RC402)とanti-PD-L1抗体の投与スケジュールを示す図である。
図6図5の投与スケジュールによる、生存率の測定結果を示す図である。
図7】B16F10黒色腫細胞移植を用いた皮膚がん動物モデルにおけるレオウイルス(RC402)とanti-PD-L1抗体の投与スケジュールを示す図である。
図8図7の投与スケジュールによる、腫瘍体積を測定した結果を示す図である。
図9図7の投与スケジュールによる、生存率の測定結果を示す図である。
図10】RENCA腎臓がん細胞移植を用いた腎臓がん動物モデルにおけるレオウイルス単独投与スケジュールを示す図である。
図11図10の投与スケジュールによる、腫瘍体積および成長速度を測定した結果を示す図である。
図12】MC38結腸腺がん細胞移植を用いた大腸がん動物モデルにおけるレオウイルス単独投与スケジュールを示す図である。
図13図12の投与スケジュールによる、腫瘍体積および成長速度を測定した結果を示す図である。
図14】MC38移植大腸がん動物モデルにおいてレオウイルス(RC402)の投与による腫瘍内浸透したCD8+ T細胞の割合を示す図である。
図15】MC38移植大腸がん動物モデルから収得した腫瘍およびリンパ節においてレオウイルス(RC402)の投与によるCD8+ T細胞の浸透程度を免疫組織化学染色とDAPI染色後に蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。
図16】MC38移植大腸がん動物モデルから収得した腫瘍においてレオウイルス(RC402)の投与によるCD8+ T細胞の腫瘍内浸透を免疫組織化学染色とDAPI染色後に蛍光顕微鏡で観察した結果を示す図である。
図17】CT26大腸がん細胞移植を用いた大腸がん動物モデルにおけるレオウイルス(RC402)とanti-PD-1抗体および/またはanti-CTLA-4抗体の投与スケジュールを示す図である。
図18図17の投与スケジュールによる、腫瘍体積および成長速度を測定した結果を示す図である。
図19】CT26移植大腸がん動物モデルから収得した腫瘍においてレオウイルス(RC402)とanti-PD-1抗体および/またはanti-CTLA-4抗体の投与によるCD8+ T細胞の浸透程度を免疫組織化学染色とフローサイトメトリー分析結果で示す図である。
図20】CT26大腸がん再発の防止効果を確認するために、腫瘍の完全寛解後にCT26を再移植した結果を示す図である。
図21】完全寛解後にCT26再移植マウスの脾臓を採取して、脾臓内メモリーT細胞(CD44+ CD62+ CD8+)の割合をフローサイトメトリー分析結果で示す図である。
図22】MC38特異的抗原ペプチドがロードされた四量体合成MHC複合体を使用して、T細胞受容体を発現するCD8+ T細胞の割合をフローサイトメトリー分析結果で示す図である。
図23】MC38大腸がんモデルの腸間膜リンパ節および血液においてレオウイルス(RC402)の投与によるCD8+細胞のPD-1発現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、レオウイルス(Reovirus);またはレオウイルスで処理された生物学的サンプルを有効成分として含むがんまたは再発がんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本明細書において使用された用語、「レオウイルス」は、二本鎖のセグメント化したRNAゲノムを有するウイルスであり、レオウイルス科(Reoviridae)に分類される任意のウイルスを意味する。前記レオウイルスのビリオン(virion)は、直径が60~80nmであり、2つの同心性カプシド殻を保有している。このゲノムは、10~12個の不連続のセグメント(segment)である二本鎖RNAで構成され、16~27kbpの全ゲノムサイズを有し、それぞれのRNAセグメントは、サイズが異なっている。
【0035】
本発明において、前記レオウイルスは、自然発生の(naturally occurring)レオウイルスだけでなく、変形または組換えレオウイルスをも含む。前記レオウイルスは、自然から分離されることができ、ヒトにより人為的な変更が行われていない場合、「自然発生の」という。例えば、前記レオウイルスは、「フィールド供給源(field source)」、すなわち、このレオウイルスに感染したヒトに由来することができる。
【0036】
前記レオウイルスは、変形することができるが、活性ras経路を有する哺乳動物細胞を溶解的(lytically)に感染させることができる。また、前記レオウイルスは、増殖する細胞に投与する前に、化学的または生化学的に(例えば、キモトリプシンまたはトリプシンのようなプロテアーゼを用いて処理することによって)前処理されうる。プロテアーゼを用いる前処理によってウイルスの外膜またはカプシドが除去されて、前記ウイルスの感染性を増大させることができる。前記レオウイルスは、リポソームまたはミセルで被覆されることができ、例えば、新しい伝染性サブウイルス粒子を生成するために、ミセル形成濃度のアルキル硫酸洗剤(alkyl sulfate detergent)の存在下でビリオンをキモトリプシンで処理することができる。
【0037】
本発明において、前記レオウイルスは、野生型レオウイルスであるか、または、弱毒化レオウイルスであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記弱毒化レオウイルスは、野生型レオウイルスのS1遺伝子が欠乏したレオウイルスのゲノムにより検出可能なレオウイルスシグマ1カプシドタンパク質が欠乏した感染性の複製可能なレオウイルスビリオンを含む。このように、弱毒化レオウイルスは、検出可能なレオウイルスシグマ1カプシドタンパク質が欠乏した突然変異化レオウイルスが標的腫瘍細胞を生産的に感染させる能力を予期せずに維持しつつ、非悪性細胞に対する細胞変性効果(cytopathic effect)を好適に回避する驚くべき観察に由来したものである。前述したように、本開示の以前に、シグマ1が欠乏したレオウイルスの粒子は、非感染性であると理解された。
【0039】
特定の具現例において、前記弱毒化レオウイルスは、突然変異化レオウイルスのS4遺伝子を含んでもよい。レオウイルス野生型S4遺伝子は、宿主細胞のレオウイルスの複製感染中に、ビリオンプロセッシングに関与するレオウイルスカプシドシグマ3ポリペプチドをコード化する。
【0040】
特定の具現例において、前記弱毒化レオウイルスは、野生型S4遺伝子配列に比べてレオウイルスのシグマ3ポリペプチドをコード化するゲノム配列で1つまたは複数個の突然変異を含む突然変異化レオウイルスS4遺伝子を含んでもよい。
【0041】
弱毒化レオウイルスは、検出可能なシグマ1カプシドタンパク質が欠乏しているが、予想外に感染性がある。前述したように、シグマ1がウイルスの複製感染の初期段階で細胞表面のシアル酸残基を通じて細胞にレオウイルスの結合および付着に関連していることを示す。検出可能なシグマ1が欠乏しているにも関わらず、本明細書に記述された弱毒化レオウイルスは、宿主細胞の進入および細胞溶解性ウイルスの複製が可能である。また、弱毒化レオウイルスは、自然的に発生する非弱毒化レオウイルスによって非悪性細胞に対して示す細胞変性効果のレベルに比べて、非悪性細胞に対して1つ以上の細胞変性効果の減少した(すなわち、統計的有意性が減少した)レベルを誘導する驚くべき特性を示す。
【0042】
弱毒化レオウイルスは、レオウイルスとのメンバーを意味する任意のレオウイルスに由来することができ、様々な親和性を有するレオウイルスを含み、これは、様々な供給源から得ることができる。
【0043】
特定の具現例において、哺乳動物レオウイルスであってもよく、他の具現例では、ヒトレオウイルスであってもよい。他の具現例(例えば、ヒト疾患と関連性を有する動物モデルにおいて使用するための、または獣医学関連の適用のための)では、弱毒化レオウイルスが非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、ゴリラ、マカク、サルなど)、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ケルビルスマウス、ハムスター、ラビット、ギニアピッグなど)、イヌ、ネコ、一般家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ)などを含む、他の哺乳動物種の細胞に対する親和性を示す1つ以上のレオウイルスに由来することができ、または、選択的に、明確に区別される親和性を有するレオウイルス(例えば、鳥類レオウイルス)が使用できる。
【0044】
弱毒化レオウイルスは、分子生物学的接近法によるシグマ1欠乏および/またはシグマ1欠陥突然変異体の生成および同定を含み(また、特定の具現例において、追加的にまたは選択的に、シグマ3欠乏および/またはシグマ3欠陥突然変異体の生成および同定をも含む)、また、自然発生するシグマ1欠乏および/またはシグマ1欠陥突然変異体および/またはシグマ3突然変異体の分離、および/または化学的、物理的および/または遺伝的技術(例えば、生産的に感染した宿主細胞でのレオウイルス遺伝子の選択的組換え)によるそのようなシグマ1(および/またはシグマ3)突然変異体の人工的誘導を含む他の方法論によって由来することができる。
【0045】
弱毒化レオウイルスは、野生型レオウイルスS1遺伝子が欠乏していて、結果的に、検出可能なレオウイルスシグマ1カプシドタンパク質が欠乏した感染性の複製可能なレオウイルスビリオン(すなわち、ウイルスのゲノム、コアタンパク質およびタンパク質外殻を含むウイルス粒子)を含む。
【0046】
特定の具現例において、弱毒化レオウイルスは、野生型レオウイルスS4遺伝子が欠乏していて、突然変異化レオウイルスシグマ3カプシドタンパク質を発現する。関連技術において知られているように、感染性の複製可能なレオウイルスは、適切な条件下で十分な時間の間好適な宿主細胞への導入時に、宿主細胞に結合して内在化されうるものであり、その後に、宿主細胞から放出されるとき、ウイルスの複製周期を永続させるために、他の宿主細胞を生産的に感染させることができる完全な子孫レオウイルスのアセンブリーを許容する方式でレオウイルスのゲノムの複製およびレオウイルス構造タンパク質の生合成を指示する。
【0047】
がん治療のための弱毒化レオウイルスは、例えば、米国出願公開US2009/0214479号およびUS2009/0104162号明細書に記述されており、これらのそれぞれは、その全体が本明細書に参照として含まれる。
【0048】
前記ヒトレオウイルスは、下記のように3つの血清型で構成される:1型(Lang株またはT1L)、2型(Jones株、T2J)および3型(Dearing株、T3DまたはAbney株、T3A)。前記3種の血清型は、中和反応および血球凝集素阻害アッセイ(assay)に基づいて容易に同定することができる。
【0049】
本発明において、前記レオウイルスは、BHK(baby hamster kidney)細胞(例えば、BHK-21細胞)を用いて収得することができるが、これに限定されるものではない。本明細書において使用された用語、「BHK-21細胞」においてBHKとは、ベビーハムスターキドニー(Baby Hamster Kidney)の略字であり、BHK細胞は、本来ハムスター細胞のポリオーマ変換(polyoma transformation)により分離され、ワクチンに対するウイルス伝播およびウイルス媒介発現のための基質として使用できる。また、BHK細胞は、様々な組換えタンパク質の安定した発現のための宿主細胞株として有用である。BHK-21(BHK Strain 21)細胞株は、IA MacphersonとMGP Stokerにより1961年3月に5匹のunsexed、1日齢のハムスターの新生児ハムスター腎臓に由来した。前記ハムスターは、BHK-21細胞を生成するのに使用され、一般的に、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)と知られている。
【0050】
本明細書において使用された用語、「レオウイルスで処理された生物学的サンプル」において、「生物学的サンプル」は、個体、細胞株、組織培養物またはその他細胞の供給源から収得した任意の生物学的サンプル、例えば、成体幹細胞(脂肪由来幹細胞、骨髄幹細胞)または臍帯血幹細胞を対象とする。哺乳動物から組織生検および体液を収得する方法は、当業界においてよく知られている。例えば、脂肪由来幹細胞は、腫瘍溶解性ウイルスで前処理されて、がん患者に投与されうる。
【0051】
本発明において、前記生物学的サンプルは、生体外で(ex vivo)生物学的サンプルに対してレオウイルスの有効量を適用して、複数のがん細胞を死滅させるために製造されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0052】
本発明において、前記生物学的サンプルは、骨髄サンプル、脂肪由来幹細胞サンプルまたは血液サンプルであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明の薬学的組成物は、経口投与されうるが、これに限定されるものではない。経口投与は、繰り返し投与による副作用を最小化することができる。具体的には、同一量のウイルスを2~3回の連続的静脈投与の場合、サイトカインストーム(Cytokine storm)などの副作用によって致命的になることがある。それに対して、同量、それ以上のウイルスを繰り返し経口投与するとき、このような副作用が起こらないことがある。
【0054】
また、本発明の経口投与用薬学的組成物は、腸内投与のための腸溶コーティング(enteric coating)などの必要なく、ネイキッド(naked)形態そのまま服用が可能である。
【0055】
しかも、本発明の本発明の経口投与用薬学的組成物は、がん内へのウイルス伝達効率に優れていて、抗がん効果を最大化することができる。ウイルスのがん内への伝達効率が抗がん効果を決定する最も重要な要因と見なされる。抗がんウイルスの静脈投与を通したがん治療が試みられているが、このような投与方法は、血液内の抗ウイルス免疫システムによりウイルスが大部分除去され、これによって、がん内への伝達効率が大きく低下することが報告された。それに対して、経口投与の場合には、このような免疫システムによる抗ウイルス効果が相対的に低いため、ウイルス伝達効率が良いことが期待される。
【0056】
本発明において、前記経口投与用薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と併用投与されうる。80~90%の転移性大腸がんは、免疫チェックポイント阻害剤に反応しないMSS(Microsatellite stable)typeであり、その反応性を高め、最大化させる併用治療剤が切実に要求されている。レオウイルスは、このようながん腫を反応性を有するがん腫に転換させるプライミング(priming)効果に優れているので、本発明の薬学的組成物を免疫チェックポイント阻害剤と併用使用する場合、経口投与を通したウイルスの伝達率を最大化し、免疫チェックポイント阻害剤の反応性を画期的に高める相乗作用を通じてがん治療の画期的転換点になりうる。
【0057】
本明細書において使用された用語、「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫抗がん剤とも称される、1つ以上の免疫チェックポイントタンパク質を全体的にまたは部分的に抑制、妨害または調節する物質を意味する。免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化または機能を調節する。多数の免疫チェックポイントタンパク質、例えば、PD-1、PD-L1およびCTLA-4などが公知となっている(Nature Reviews Cancer 12:252-264,2012)。これらのタンパク質は、T細胞反応の共刺激性または阻害性相互作用に関与する。免疫チェックポイント阻害剤は、抗体を含み、抗体に由来することができる。
【0058】
本発明において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1(Programmed cell death protein 1)に特異的に結合する薬物であってもよいが、これに限定されるものではない。一特定例において、前記PD-1に特異的に結合する薬物は、抗PD-1抗体であってもよく、前記抗PD-1抗体の例としては、ニボルマブ(nivolumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、セミプリマブ(cemiplimab)、スパルタリズマブ(spartalizumab)、カムレリズマブ(camrelizumab)、シンチリマブ(sintilimab)、チスレリズマブ(tislelizumab)、トリパリマブ(toripalimab)、ドスタルリマブ(dostarlimab)、INCMGA00012、AMP-224およびAMP-514からなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0059】
本発明において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1(Programmed death-ligand 1)に特異的に結合する薬物であってもよいが、これに限定されるものではない。一特定例において、前記PD-L1に特異的に結合する薬物は、抗PD-L1抗体であってもよく、前記抗PD-L1抗体の例としては、アテゾリズマブ(atezolizumab)、アベルマブ(avelumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、エンバフォリマブ(envafolimab)、コシベリマブ(cosibelimab)、AUNP12、CA-170およびBMS-986189からなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。
【0060】
本発明において、前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4)に特異的に結合する薬物であってもよいが、これに限定されるものではない。一特定例において、前記CTLA-4に特異的に結合する薬物は、抗CTLA-4抗体であってもよく、前記抗CTLA-4抗体の例としては、イピリムマブ(ipilimumab)、トレメリムマブなどであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0061】
本明細書において使用された用語、「抗体(antibody)」は、PD-1、PD-L1、CTLA4などの免疫チェックポイントタンパク質に対して特異的に結合して、免疫チェックポイントに対する阻害活性を示す物質である。前記抗体の範囲には、完全な形態の抗体だけでなく、抗体分子の抗原結合部位も含まれる。また、前記抗体には、単クローン抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体などを含み、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明において使用される用語「がん」は、細胞の死滅調節に関連した疾患であり、正常な細胞自殺死(apoptosis)の均衡がこわれる場合、細胞が過多増殖することによって発生する疾患を意味する。このような異常過多増殖細胞は、場合によって周囲組織および臓器に侵入して、腫塊を形成することができ、体内の正常構造の破壊や変形を誘発できるが、このような状態を総称して、腫瘍(tumor)と称する。
【0063】
一般的に、腫瘍は、良性腫瘍(benign tumor)と悪性腫瘍(malignant tumor)に区分することができる。悪性腫瘍は、良性腫瘍に比べて成長速度が非常に速く、周囲組織に浸潤して転移(metastasis)が起こり、生命を威嚇することとなる。このような悪性腫瘍を通常「がん(cancer)」と称する。
【0064】
本発明において、前記がんは、子宮頸がん、肺がん、膵臓がん、非小細胞性肺がん、肝がん、結腸がん、大腸がん、骨がん、皮膚がん、頭部がん、頸部がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、脳腫瘍、血液がん、胃がん、肛門周囲がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜腫瘍、膣がん、外陰がん、ホジキン病(Hodgkin’s disease)、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎臓骨盤がん、中枢神経系(CNS central nervoussystem)腫瘍、原発CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫および脳下垂体腺腫からなる群から選ばれる1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明において「相乗作用(synergy)」という用語は、文献に記載されたように、各成分が併用投与されるときに発生する効果が、単一成分として単独で投与されるときに発生する効果の合計より大きいことを意味する(Chou and Talalay,Adv.Enzyme.Regul.,22:27-55,1984)。
【0066】
本発明において「併用投与(administered in combination)」という用語は、異なる成分が対象に共に投与されることを意味する。異なる成分が共に投与されるというのは、所望の治療効果を得るために、各成分が同じ時間にまたは任意の順序でまたは異なる時間に順次に投与されうることを意味する。
【0067】
本発明において、前記薬学的組成物は、レオウイルスおよびPD-L1阻害剤を有効成分として含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。また、本発明において、レオウイルスを含む薬学的組成物は、PD-L1阻害剤と併用投与されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0068】
本発明において、前記薬学的組成物は、レオウイルスおよびPD-1阻害剤を有効成分として含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。また、本発明において、レオウイルスを含む薬学的組成物は、PD-1阻害剤と併用投与されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明において、前記薬学的組成物は、レオウイルス、PD-1阻害剤およびCTLA-4阻害剤を有効成分として含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。また、本発明において、レオウイルスを含む薬学的組成物は、PD-L1阻害剤およびCTLA-4阻害剤と併用投与されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明において、前記経口投与用薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と同時に(simultaneous)、別々に(separate)または順次に(sequential)投与されうる。
【0071】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、個体に様々な経路で投与されうる。投与のすべての方式は、予想可能であるが、例えば、経口投与、鼻腔内投与、腫瘍内投与、経気管支投与、動脈注射、静脈注射、皮下注射、筋肉注射または腹腔内注射により投与されうる。1日投与量は、1日1回~数回に分けて投与することができる。
【0072】
本発明において、前記レオウイルスは、がん治療用外来遺伝子(heterologous gene)を含んでもよいが、これに限定されるものではない。前記「外来遺伝子(heterologous gene)」という用語は、ウイルスゲノム(viral genome)で発見されない任意の遺伝子を受け入れるという意味として使用される。外来遺伝子は、野生型遺伝子の対立形質変異体(allelic variant)であるか、または、突然変異遺伝子であってもよい。前記がん治療用外来遺伝子は、レオウイルス遺伝子内複製必要遺伝子部位(essential region)または複製不必要遺伝子部位(non-essential region)に挿入されて、抗がん活性を増加させることができる。
【0073】
外来遺伝子は、生体内条件の細胞において前記外来遺伝子を発現させる調節配列(control sequence)に作動可能に連結されうる。したがって、本発明のウイルスは、外来遺伝子が発現することができる生体内条件の細胞に外来遺伝子/遺伝子を伝達するように使用できる。前記遺伝子は、通常、ウイルスの腫瘍破壊特性を増加させることができるタンパク質をコード化する。前記遺伝子は、それ自体が細胞毒素(cytotoxin)であるか、抗腫瘍免疫反応を促進/向上させることができるタンパク質をコード化することができる。
【0074】
外来遺伝子は、複製可能な腫瘍溶解性ウイルスや従来の複製不能ウイルスベクターに挿入してがんを治療するすべての遺伝子を含む。
【0075】
本明細書において使用された用語、「治療用遺伝子」は、この遺伝子の発現が好ましい結果、例えば、抗がん効果に影響を与えるすべての広範囲な遺伝子を説明するものと見なされる。本発明のレオウイルスは、治療遺伝子をコードする1種以上の目的とする配列を含んでもよい。治療遺伝子は、患者、特に疾患または疾病状態を病んでいる患者またはこのような疾患または疾病状態から保護されるべき患者に適切に投与するとき、薬理学的または予防的活性を有することができる。
【0076】
このような薬理学的または予防的活性は、前記疾患または前記状態の過程または症状への有益な効果と関連したものと予想されることを意味する。前記目的とする配列は、これが導入される標的細胞と同種または異種であってもよく、ポリペプチド、特に治療的または予防的特性を与える治療的または予防的ポリペプチドの全部または一部をコードする。ポリペプチドは、サイズ、およびグリコシル化したか否かに関係なく、ポリヌクレオチドの任意の翻訳(translational)生成物と理解され、ペプチドおよびタンパク質を含む。治療的ポリペプチドは、動物またはヒト有機体内欠損または欠乏タンパク質を補償できるポリペプチドまたは毒性効果を通じて作用して、身体から有害な細胞を制限または除去するものを含む。これらは、また、体液性または細胞性反応、またはその両方を誘発するために、内因性抗原として作用する免疫付与ポリペプチドであってもよく、例えば、薬剤感受性遺伝子(drug-sensitizing gene)、プロアポトティック遺伝子(proapoptotic gene)、細胞増殖抑制性遺伝子(cytostatic gene)、細胞毒性遺伝子(cytotoxic gene)、腫瘍抑制遺伝子(tumor suppressor gene)、抗原性遺伝子(antigenic gene)、抗新生血管生成遺伝子、サイトカイン遺伝子などが含まれ、これに限定されるものではない。
【0077】
本発明の有効成分は、個体に薬学的に有効な量で投与される。
【0078】
本明細書において使用された用語、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィットまたはリスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、これは、個体の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性 、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。
【0079】
ウイルスの有効量は、疾患を緩和(alleviate)、向上(improve)、軽減(mitigate)、改善(ameliorate)、安定化、疾患の拡散抑制、疾患の進行を抑制または遅延させ、疾患を治癒するために十分な時間の間要求される用量である。例えば、有効量は、がん細胞の数を減少または破壊させ、あるいは、ウイルスに慢性的に感染した細胞の数を減少または破壊させ、あるいは、このような細胞の成長および/または増殖を抑制させる効果を達成するのに十分な量になりうる。
【0080】
前記有効量は、ウイルスの薬物動態学的特性、投与方法、年齢、患者の健康状態および体重、疾患状態の特性および範囲、治療回数および最近の治療形態のような数多くの因子によって変わることができ、例えば、ウイルスの病毒性および力価によって変わることもできる。当業者なら前記因子に基づいて適正量を調節することができる。ウイルスは、初めに患者の臨床的反応に依存し、必要に応じて適正量で投与されうる。ウイルスの有効量は、経験的に決定することができ、安全に投与されうるウイルスの最大量および好ましい結果を誘発するウイルスの最小量によって決定することができる。
【0081】
投与されるウイルスの濃度は、投与されるべきウイルス菌株の病毒性および標的となる細胞の特徴によって変わることができる。
【0082】
本発明において、前記レオウイルスは、10~1015 PFUで含まれ得る。また、前記レオウイルスは、10~1015 TCID50、10~1014 TCID50、10~1013 TCID50、10~1012 TCID50、10~1012 TCID50、10~1011 TCID50、10~1010 TCID50、10~1010 TCID50、または10~1010 TCID50で含まれ得る。
【0083】
有効量のウイルスは、最初治療療法の効果によって繰り返し投与されうる。一般的に、投与は、すべての反応をモニタリングする中に、周期的に投与される。当業者なら投与スケジュールおよび選択された経路によって前記表示されたものより低いかまたは高い用量が投与されうることを容易に把握することができる。
【0084】
本発明の一実施例において、大腸がん動物モデルにおいてレオウイルス単独または抗PD-L1抗体との併用投与時に、大腸がん関連疾患の重症度が有意に緩和されることを確認した(図2および図3)。
【0085】
本発明の他の実施例において、大腸がん動物モデルにおいてレオウイルス単独または抗PD-L1抗体との併用投与時に、大腸がん動物モデルの生存率が有意に増加することを確認した(図4)。
【0086】
本発明の他の実施例において、大腸がん動物モデルにおいてレオウイルス単独または抗PD-L1抗体との併用投与時に、大腸がん動物モデルの生存率が有意に増加することを確認した(図6)。
【0087】
本発明のさらに他の実施例において、皮膚がん動物モデルにおいてレオウイルスと抗PD-L1抗体の併用投与による皮膚がんの体積減少効果が有意に増加することを確認した(図8)。
【0088】
本発明のさらに他の実施例において、皮膚がん動物モデルにおいてレオウイルスと抗PD-L1抗体の併用投与による皮膚がん動物モデルの生存率が有意に増加することを確認した(図9)。
【0089】
本発明のさらに他の実施例において、腎臓がん動物モデルにおいてレオウイルスと抗PD-L1抗体の併用投与による腎臓がんの体積減少効果および腎臓がんの成長速度減少効果が有意に増加することを確認した(図11)。
【0090】
本発明のさらに他の実施例において、大腸がん動物モデルにレオウイルスを単独で経口投与した結果、大腸がんの体積減少効果および大腸がんの成長速度減少効果が有意に増加することを確認した(図13)。
【0091】
本発明のさらに他の実施例において、大腸がん動物モデルにレオウイルスを単独で経口投与した結果、腫瘍内浸透したCD8+ T細胞の割合が有意に増加することを確認した(図14図16)。
【0092】
本発明のさらに他の実施例において、大腸がん動物モデルにレオウイルスおよび抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体を併用投与した結果、大腸がんの体積減少効果および大腸がんの成長速度減少効果が有意に増加することを確認した(図18)。
【0093】
本発明のさらに他の実施例において、大腸がん動物モデルにレオウイルスおよび抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体を併用投与した結果、腫瘍内浸透したCD8+ T細胞の割合が有意に増加することを確認した(図19)。
【0094】
本発明のさらに他の実施例において、レオウイルス、抗PD-1抗体、および抗CTLA-4抗体を用いた大腸がんの完全寛解後にCT26を再移植した結果、CT26大腸がんが再発しないことを確認した(図20)。
【0095】
本発明のさらに他の実施例において、レオウイルス、抗PD-1抗体、および抗CTLA-4抗体を用いた大腸がんの完全寛解後にCT26を再移植した結果、脾臓内メモリーT細胞の割合(CD44+ CD62+ CD8+)およびCD8+ T細胞の割合が有意に増加したことを確認した(図21)。
【0096】
本発明のさらに他の実施例において、大腸がんモデルの腸間膜リンパ節においてレオウイルスの投与によるCD8+細胞のPD-1発現が増加したことを確認した(図23)。
【0097】
前記結果によって、本発明の薬学的組成物をがんまたは再発がんの予防および治療に使用できると期待される。
【0098】
本発明による薬学的組成物は、前記レオウイルス;レオウイルスで処理された生物学的サンプルと免疫チェックポイント阻害剤が単一組成物(single composition)の形態で製剤化されることができ、または個々の組成物(separate composition)の形態で製剤化されることができる。好ましくは、個々の組成物の形態で製剤化されることができる。これらを製剤化する方法は、当業界において汎用の技術を用いることができる。
【0099】
本発明の前記レオウイルス;レオウイルスで処理された生物学的サンプルまたは免疫チェックポイント阻害剤の総有効量は、単一投与量(single dose)で投与されるか、または、多重投与量(multiple dose)が長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与されうる。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度および/または目的によって成分(本発明のPD-L1阻害剤、PD-1阻害剤、および/またはCTLA-4阻害剤)の含有量を異ならせることができるが、通常、1回投与時に、0.01μg~10000mg、好ましくは、0.1μg~1000mgの有効用量で1日に数回繰り返し投与されうる。しかしながら、前記薬学的組成物の用量は、製剤化方法、投与経路および治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食事および排泄率など様々な要因を考慮して、患者に対する有効投与量が決定されるので、このような点を考慮して、当該分野における通常の知識を有する者なら、本発明の組成物の適切な有効投与量を決定することができる。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路および投与方法が特に限定されない。
【0100】
本発明による薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤および希釈剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルム-コーティング物質、および制御放出添加剤からなる群から選ばれた1つ以上であってもよい。
【0101】
本発明による薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、またはエアロゾルなどの外用剤などの形態で剤形化して使用でき、前記外用剤は、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの剤形を有していてもよい。
【0102】
本発明による薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0103】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0104】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤としてトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、 D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、ヨウ素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェルなど賦形剤;ゼラチン、アラビアガム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用でき、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トウモロコシデンプン、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、L-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアガム、アミロベクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、D-ソルビトール液、硬質無水ケイ酸など崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000、PEG6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、DL-ロイシン、硬質無水ケイ酸などの滑沢剤;が使用できる。
【0105】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエテール類、ラノリンエテール類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用できる。
【0106】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用でき、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用できる。
【0107】
本発明による乳剤には、精製水が使用でき、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用できる。
【0108】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910など懸濁化剤が使用でき、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用できる。
【0109】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピイジー(PEG)、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヨウ素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、窒素ガス(N)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ソジウムビサルファイト0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含んでもよい。
【0110】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウイテプゾール、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポル、マスポル-15、ネオスポスタル-エン、パラマウンド-B、スポシール(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が使用できる。
【0111】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0112】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0113】
本発明において、本発明の薬学的組成物は、有効成分以外に、アルブミンおよびバッファーを含んでもよい。
【0114】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、 薬物に対する感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。
【0115】
本発明による組成物は、個別治療剤で投与したり、他の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次にまたは同時に投与することができ、単一または多重投与されうる。上記した要素を全部考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野における当業者により容易に決定することができる。
【0116】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与されうる。投与のすべての方式は、予想可能であるが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼内投与、耳への投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を通した噴霧、皮膚投与、経皮投与などにより投与されうる。
【0117】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度などの様々な関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。
【0118】
本発明において「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどの哺乳類であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0119】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0120】
本発明において「予防」とは、目的とする疾患の発病を抑制したり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的とする疾患とそれによる代謝異常症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的とする疾患に関連したパラメーター、例えば、症状の程度を減少させるすべての行為を意味する。
【0121】
本明細書で言及されたすべての文献は、その内容が本明細書に記載されたように本明細書に参照で含まれる。本発明またはその好ましい態様の要素を導入するとき、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」および「前記(said)」は、1つ以上の要素があることを意味するものと意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」は、包括的なものと意図され、羅列された要素以外のさらなる要素がありえることを意味する。たとえ本発明が特定様態また態様に関して説明されたが、これらの様態の詳細事項を限定するものと解されるべきものではない。
【0122】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0123】
実施例1.Azoxymethane(AOM)/Dextran Sulfate Sodium(DSS)誘導された大腸がん動物モデルの製作
実験に使用された動物は、7~8週齢の雌BALB/Cマウスであり、ナラバイオテック(Nara Biotech.,Seoul,South Korea)から購入した。マウスは、バイロキュア研究所の動物実験室で7日間の適応期間後に実験を進め、適応期間中に水と飼料を制限しなかった。実験動物に標準化された環境を提供し、12時間間隔で昼と夜を維持し、室内温度(23±2℃)を適正レベルに維持させた。図1に示されたように、マウスに発がん物質であるAzoxymethane(AOM)(Merk,Cat#.25843-45-2)を12mg/kgの濃度で単回腹腔注入し、1週間後に一般飲用水を2.5%(W/V)のDextran Sulfate Sodium(DSS)に変えて1週間供給し、以後、2週間休止期を与え、AOM処理を除く1週間のDSS処理および2週間の休止期を4回繰り返すことによって、大腸炎関連大腸がん(Colitis associated Colon Rectal Cancer)を誘導した。
【0124】
実施例2.レオウイルスを含む組成物の経口投与および免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-L1抗体)の全身投与
実験に使用されたマウスを正常対照群、AOM/DSS誘導大腸がん群、レオウイルス経口投与群、免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-L1抗体)腹腔投与群、およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群に分けて実験を進めた。前記大腸がん動物モデルにレオウイルスを投与する方式は、経口投与方法(Oral administration)を使用し、抗体投与方式は、腹腔内直接投与方法(Intraperitoneal injection)を使用して進めた。
レオウイルス(type 3,Dearing)は、1×10 TCID50/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1xPBS)で図1に示されるように5日間連続して経口投与し、anti-PD-L1抗体(BioXcell,Cat# BE0101)は、5mg/kgで隔日で3回腹腔内に投与した。このような投与は、図1のように計4回にわたって繰り返し施行した。
【0125】
実施例3.AOM/DSS誘導大腸がん動物モデルを用いたレオウイルスを含む経口投与用組成物の治療効果の分析
AOM最初処理後に39日目から重さ測定、便と肛門状態、生存率およびがんの形成と成長に対する観察を通じて大腸がんの発病有無と症状の程度を観察しつつ実験を進めた。
統計学的分析は、GraphPad Prism 6を使用して行った。One-way ANOVA検定法中、Dunnett’s multiple comparison testを用いて正常対照群、AOM/DSS誘導大腸がん群、レオウイルス経口投与群、免疫チェックポイント阻害剤腹腔投与群およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群の間の差異を比較した。0.05未満のp値を有する差異を統計的に有意的なものと見なした。データは、平均およびSEMで示した。
【0126】
3-1.Disease Activity Index(DAI)測定による肉眼的評価
実施例2のレオウイルスを含む組成物の経口投与およびanti-PD-L1抗体の腹腔内処理された大腸がん動物モデルマウスの大腸がん関連疾患の重症度を測定するために、体重変化、便の固まりおよび便や肛門で肉眼的に観察される血便の有無を図2に記載された基準の疾患活動性指標(DAI)の等級によって確認して、疾患活動性指標を測定した。
図3に示されたように、AOM/DSSを投与したマウスでは、投与後に4日目から軟便および肉眼的血便が見始め、7日目にすべてのマウスで下痢と血便を観察することができた。一方、レオウイルスの経口投与およびanti-PD-L1抗体の腹腔内併用投与群では、下痢および血便の程度が統計的に有意に大きく改善されることを確認した。
このような結果は、レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-L1抗体)の併用投与が、大腸がんに対して優れた抗がん効果を示すことを示す。
【0127】
3-2.生存率の測定による評価
大腸がん動物モデルは、大腸での持続的炎症およびこれによるがんの形成を通じて死亡に至る。
図4に示されたように、本大腸がん動物モデルにおいて病の進行につれてAOM/DSS誘導大腸がん群および単独投与群(ウイルスまたは抗体投与群)において死亡事例が現れたが、併用投与群では、死亡事例が現れなかった。
このような結果は、レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-L1抗体)の併用投与が、大腸がんで生存率を大きく改善させることができることを示す。
【0128】
3-3.がんの生成および成長測定による評価
本大腸がん動物モデルにおいて病の進行につれて単独投与群(ウイルスまたは抗体投与群)において部分的ながんの形成抑制または微々たる効果が予想される。一方、併用投与群では、このような炎症によるがんの形成が大きく抑制されることが予想される。
したがって、レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-L1抗体)の併用投与は、大腸がんでがんの形成および成長を大きく抑制すると期待される。
【0129】
実施例4.大腸がん細胞株(CT26)の大腸壁内手術的移植を通した大腸がん動物モデルの製作
実験に使用された動物は、7~8週齢の雌BALB/Cマウスであり、ナラバイオテック(Nara Biotech.,Seoul,South Korea)から購入した。マウスは、バイロキュア研究所の動物実験室で7日間の適応期間後に実験を進め、適応期間中に水と飼料を制限しなかった。実験動物に標準化された環境を提供し、12時間間隔で昼と夜を維持し、室内温度(23±2℃)を適正レベルに維持させた。マウスに大腸がん細胞株(CT26 cells、1×10cells/10μL PBS)を大腸壁に注入して移植した。移植2週後にがんが形成されることを確認して、大腸がん動物モデルを確立した。
【0130】
実施例5.レオウイルスを含む組成物の経口投与および免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-L1抗体)の全身投与
実験に使用されたマウスは、正常対照群、CT26細胞移植大腸がん群、レオウイルス経口投与群、およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群に分けて実験を進めた。前記大腸がん動物モデルにレオウイルスを投与する方式は、経口投与方法(Oral administration)を使用し、抗体投与方式は、腹腔内直接投与方法(Intraperitoneal injection)を使用して進めた。
CT26細胞移植後4日後にレオウイルス(type 3,Dearing)を1×10/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBS)で3週間連続して経口投与し、anti-PD-L1抗体(BioXcell,Cat# BE0101)は、2.5mg/kgで3日ごとに3回腹腔内に投与した(図5)。
本大腸がん動物モデルにおいて病の進行につれて図6に示されたようにCT26細胞移植大腸がん群に比べて治療群(ウイルス単独またはanti-PD-L1抗体併用投与)において生存率が改善されることを観察した。
このような結果は、レオウイルスを含む組成物(経口投与)の単独または免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-L1抗体)の併用投与が、大腸がんで生存率を大きく改善させることができることを示す。
【0131】
実施例6.黒色腫細胞株(B16F10)の移植を通した皮膚がん動物モデルの製作
実験に使用された動物は、5~8週齢の雌C57BL/6マウスであり、ナラバイオテック(Nara Biotech.,Seoul,South Korea)から購入した。マウスは、バイロキュア研究所の動物実験室で7日間の適応期間後に実験を進め、適応期間中に水と飼料を制限しなかった。実験動物に標準化された環境を提供し、12時間間隔で昼と夜を維持し、室内温度(23±2℃)を適正レベルに維持させた。マウスに黒色腫細胞株(B16F10 cells、1×10 cells/50μL PBS)を脇腹に皮下注射した。
【0132】
実施例7.レオウイルスを含む組成物の経口投与および免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-L1抗体)の全身投与
抗がん効果試験には、vehicle、0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBSを投薬した対照群、レオウイルス経口投与群、免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-L1抗体)腹腔投与群、およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群に分けて実験を進めた。前記大腸がん動物モデルにレオウイルスを投与する方式は、経口投与方法(Oral administration)を使用し、抗体投与方式は、腹腔内直接投与方法(Intraperitoneal injection)を使用して進めた。
図7に示されたように、B16F10細胞移植後1週間後にレオウイルス(type 3,Dearing)を1×10 TCID50/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBS)で1、2、3、6、7、8日の6回経口投与し、anti-PD-L1抗体(BioXcell,Cat# BE0101)は、5mg/kgで隔日で3回腹腔内に投与した。
【0133】
実施例8.皮膚がん動物モデルにおけるレオウイルスを含む経口投与用組成物の治療効果の分析
8-1.がんの成長測定による評価
図8に示されたように、本皮膚がん動物モデルにおいて無処理対照群は、マウスに腫瘍が生成された後、持続的に成長することを確認できた。病の進行につれて単独投与群(ウイルスまたは抗体投与群)において、対照群に比べて、がんの成長遅延効果が観察された。一方、併用投与群では、がんの成長が大きく抑制された。
したがって、レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-L1抗体)の併用投与は、皮膚がんの予防または治療に有用に使用されると期待される。
【0134】
8-2.生存率測定による評価
図9に示されたように、本皮膚がん動物モデルにおいて病の進行につれて対照群および単独投与群(ウイルスまたは抗体投与群)に比べて、併用投与群では、生存率が大きく向上した。
したがって、レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-L1抗体)の併用投与は、皮膚がんで生存率を大きく改善させると期待される。
【0135】
実施例9.腎臓がんマウスモデルにおける単独投与の抗がん効果
実験に使用された動物は、5~8週齢の雄BALB/Cマウスであり、ナラバイオテック(Nara Biotech.,Seoul,South Korea)から購入した。マウスに腎臓がん細胞株(RENCA cells、2×10 cells/50μL PBS)を脇腹に皮下注射した。
RENCA細胞移植1週間後にレオウイルス(type 3,Dearing)を1×10 TCID50/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBS)で1回/日で10日間経口投与した(図10)。
図11に示されたように、本腎臓がん動物モデルにおいて無処理対照群は、マウスに腫瘍が生成された後、持続的に成長することを確認できた。また、病の進行につれてレオウイルス経口投与群において、対照群に比べて、がんの成長遅延効果が観察された。
【0136】
実施例10.大腸がん細胞移植された大腸がん動物モデルにおけるレオウイルス経口投与による腫瘍内免疫細胞浸透増加の誘導
本実施例では、レオウイルス経口投与により抗がん免疫細胞CD8+ T細胞の腫瘍内浸透増加が誘導されるか否かをin vivoで確認した。
【0137】
10-1.腫瘍マウスモデルの構築
C57BL6結腸腺がん細胞に由来するMC38細胞株を50μl PBS中に1.0×10細胞数の濃度で再懸濁させ、6週齢の雄C57BL6マウスの脇腹に皮下注射した。MC38細胞移植後1週間後にレオウイルス(type 3,Dearing)を1×10 TCID50/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBS)で1回/日で10日間経口投与した(図12)。
図13に示されたように、本大腸がん動物モデルにおいて無処理対照群は、マウスに腫瘍が生成された後、持続的に成長することを確認できた。また、病の進行につれてレオウイルス経口投与群において、対照群に比べて、がんの成長遅延効果が観察された。
【0138】
10-2.腫瘍内免疫細胞浸透の評価
投薬3日、10日後にマウスから腫瘍を採取して、PBSで洗浄して、2~4mmのサイズに切った後、0.1~0.5% type I collagenase(Gibco,Cat No.P2031)を含むPBS 1mlを追加して、37℃で30分~1時間処理した。そこへFACSバッファー(0.1%BSA+0.01%sodium azide in PBS)10mlを追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して、上澄み液を捨てた後、沈殿物を7ml FACSバッファーで回収して、70μm cell strainerでろ過した。ろ過した単一細胞をFACSバッファー10mlを追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して、沈殿物を回収した。上澄み液を捨てた後、ACK lysisバッファー(Lonza cat no.10-548E)1~2mlを入れ、常温で1分間放置した後、FACSバッファー10mlを追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して回収した。適正量のFACSバッファーで再懸濁した後、CD8単クローン抗体(BD Biosciences,Cat no.563234)で染色して、CD8+ T細胞の増加程度を確認し、これは、FACSDiVaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
図14に示されたように、投薬10日後に腫瘍内に浸透したCD8+ T細胞の量が、レオウイルス経口投与群において5倍以上増加することを確認できた。
すなわち、免疫抗がん剤の腫瘍抑制効果の代表的なバイオマーカーである腫瘍内に浸透したCD8+ T細胞の増加を通じて、レオウイルスを含む経口投与用組成物が、抗がん免疫活性化を通じてがんの治療に作用すると期待される。
【0139】
10-3.腫瘍およびリンパ節内免疫細胞浸透の評価
投薬3日、および10日後にマウスから腫瘍とリンパ節を採取して、アセトンで固定した後、OCT溶液(Sakura Finetek,Cat No.4583)に入れ、-80℃超低温冷凍庫で保管して、冷凍組織ブロックを製造した。冷凍組織ブロックをCryostat(Leica Biosystems,CM3050S)で5~10μmの厚さに切って、スライドガラスを製作した。組織切片スライドをCoplin Jarを使用してPBSで洗浄した後、200μl Superblock(ThermoFisher Scientific,Cat no.37515)で覆って、10分間室温に放置して処理した。その後、PBSに希釈した蛍光ラベルされたCD8単クローン抗体(Biolegend,Cat no.100723)、CD31単クローン抗体(Biolegend,Cat no.102416)で室温で1~2時間光を遮断した状態で染色した後、3回PBSで洗浄した後、ProLong Diamond Antifade Mountant(Thermofisher Scientific,Cat no.P36965)を塗布した後、Coverslipで覆った。その後、蛍光顕微鏡で染色程度を観察した。核染色は、DAPI solution(BD Biosciences,Cat no.564907)で1分間進めた。
図15に示されたように、投薬後、腸間膜リンパ節内に浸透したCD8+ T細胞の量が、レオウイルス経口投与群では増加する傾向を示し、特に10日目の増加程度が顕著に大きいことを確認できた。
また、図16に示されたように、投薬10日後に腫瘍内に浸透したCD8+ T細胞の量が、レオウイルス経口投与群においてフローサイトメトリー分析結果と同一に顕著に増加することを確認できた。
腫瘍内に浸透したCD8+ T細胞の増加は、免疫抗がん剤の腫瘍抑制効果の代表的なバイオマーカーであるから、レオウイルスを含む経口投与用組成物が抗がん免疫活性化を通じてがんの治療に作用すると期待される。
【0140】
実施例11.大腸がん動物モデルにおける治療効果
実験に使用された動物は、5~8週齢の雄BALB/Cマウスであり、ナラバイオテック(Nara Biotech.,Seoul,South Korea)から購入した。マウスは、バイロキュア研究所の動物実験室で7日間の適応期間後に実験を進め、適応期間中に水と飼料を制限しなかった。実験動物に標準化された環境を提供し、12時間間隔で昼と夜を維持し、室内温度(23±2℃)を適正レベルに維持させた。マウスに大腸がん細胞株(CT26 cells、2×10 cells/50μL PBS)を脇腹に皮下注射した。
【0141】
11-1.大腸がん動物モデルにおけるレオウイルスを含む経口投与用組成物の治療効果の分析
抗がん効果試験には、vehicle、0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBSを投薬した対照群、レオウイルス経口投与群、免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-1抗体)腹腔投与群、およびレオウイルス/免疫チェックポイント阻害剤の併用投与群(anti-PD-1抗体単独またはanti-CTLA-4抗体併用)に分けて実験を進めた。前記大腸がん動物モデルにレオウイルスを投与する方式は、経口投与方法(Oral administration)を使用し、抗体投与方式は、腹腔内直接投与方法(Intraperitoneal injection)を使用して進めた。
CT26細胞移植後1週間後にレオウイルス(type 3,Dearing)を1×10 TCID50/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBS)で1回/日で12日間経口投与した。anti-PD-1抗体(BioXcell,Cat# BE0033-2)は、8mg/kgでanti-CTLA4抗体(BioXcell,Cat# BE0164)は、4mg/kgで3日間隔で4回腹腔内に投与した(図17)。
【0142】
11-2.がんの成長測定による評価
図18に示されたように、本大腸がん動物モデルにおいて無処理対照群は、マウスに腫瘍が生成された後、腫瘍の体積が持続的に成長することを確認できた。しかしながら、病が進行されるにつれて、単独投与群(ウイルスまたは抗体投与群)では、対照群に比べてがんの成長遅延効果が観察された。
一方、併用投与群、特に2種の免疫チェックポイント阻害剤を同時併用した処理群(RC402+aPD-1+aCTLA-4)では、がんの成長が84.6%抑制され、完全寛解(Complete Response,CR)になった個体が発生した。
【0143】
11-3腫瘍内免疫細胞浸透の評価
投薬13日後、マウスから腫瘍を採取して、フローサイトメトリーまたは組織免疫化学染色法を用いてCD8+ T細胞の浸透程度を比較評価した。
図19に示されたように、対照群または抗体単独処理群に比べて、ウイルス単独または併用投与群において、CD8+ T細胞の腫瘍浸透程度は、がん成長抑制程度と相関関係をもって増加することを確認し、特に2種の免疫チェックポイント阻害剤を同時併用した処理群におけるCD8+ T細胞の腫瘍浸透程度が有意に増加したことを確認できた。
【0144】
実施例12.治療後にがん再発防止のための長期的な抗がん免疫誘導
12-1.がんの成長測定による評価
レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(anti-PD-1抗体の併用投与を通じて腫瘍の完全寛解となったマウスにCT26を再移植した。対照群としては、新しいBALB/Cマウスを使用した。
図20に示されたように、対照群では、CT26大腸がん細胞株が正常に成長するのに対し、完全寛解後にCT26大腸がんを再移植する場合には、腫瘍が成長しないことを確認した。これは、抗がん免疫効果が持続することを意味する。
したがって、レオウイルスを含む組成物(経口投与)と免疫チェックポイント阻害剤(例えば、anti-PD-1抗体、anti-CTLA4抗体)の併用投与が、臨床的に長期的な抗がん免疫を活性化できると期待される。
【0145】
12-2.脾臓内免疫細胞分析
完全寛解に到達したマウスから脾臓を採取して、10mlを追加して破砕して、70μm cell strainerでろ過した。300~400gで5分間遠心分離して回収した。上澄み液を捨てた後、ACK lysisバッファー(Lonza cat no.10-548E)1~2mlを入れ、常温で1分間放置した後、FACSバッファー10mlを追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して回収した。適正量のFACSバッファーで再懸濁した後、CD8単クローン抗体(BD Biosciences,Cat no.563234)、CD44抗体(Biosciences,Cat no.560569)、CD62抗体(BD Biosciences,Cat no.553150)で染色して、FACSDiVaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
図21に示されたように、CT26大腸がん細胞株が移植されたマウス脾臓内にメモリーT cell(CD44+Cd62+CD8+)の割合が増加することを確認できた。したがって、長期的抗がん免疫にメモリーT cellが関与していると判断された。
すなわち、CD8+ T細胞の増加を通じて、免疫抗がん剤の腫瘍抑制効果が再発防止など長期的な抗がん免疫を活性化できると期待される。
【0146】
実施例13.レオウイルス経口投与による免疫反応
MC38細胞株を50μl PBS中に1.0×10細胞数の濃度で再懸濁させ、6週齢の雄C57BL6マウスの脇腹に皮下注射した。MC38細胞株移植後1週間後にレオウイルス(type 3,Dearing)を1×10 TCID50/100μL PBS(Reovirus/0.1%(w/v)Human serum albumin(HAS)in 1x PBS)で1回/日で10日間経口投与した。
【0147】
13-1.腫瘍抗原特異的CD8+ T細胞増加
投薬10日後にマウスから腸間膜リンパ節を採取して、MC38特異抗原ペプチドKSPWFTTLがロードされた四量体(tetramer)合成MHC複合体(MBL,Cat No.TS-M507)を使用してこれと特異的に結合するT細胞受容体(T-cell receptor,TCRs)を発現するCD8+ T細胞の変化をフローサイトメトリーを用いて分析した。
マウスから採取した腸間膜リンパ節をPBSで洗浄して軽く破砕して、70μm cell strainerでろ過した。ろ過した単一細胞をFACSバッファー10mlに追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して回収した。適正量のFACSバッファーで2×10 cells/mlの濃度で細胞を再懸濁した。この中から50μlを10μlのClear Back溶液を保管した試験管に移して5分間室温に待機させた。そこへ10μlのT-Select MHC 四量体を追加して軽く混ぜて、30分~60分間冷蔵したり、室温で遮光条件で反応させた。CD8に対する単クローン抗体(BD Biosciences,Cat no.563234)を追加して、冷蔵温度で30分間遮光した条件でさらに反応させた。400gで5分間遠心分離して、上澄み液を除去した後、沈殿物を0.5%パラホルムアルデヒドやホルマリンを含むリン酸緩衝溶液に再懸濁した。遮光された冷蔵条件で1時間~24時間待機した後、FACSDiVaソフトウェア(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーを用いて分析した。MHC 四量体とCD8+ T細胞の頻度は、全CD8+ T細胞に対する割合で表現した。
図22に示されたように、レオウイルスを含む経口投与用組成物投与群において、腫瘍抗原特異性があるCD8+ T細胞(KSP-tetramer+ CD8+)が有意に増加することを確認できた。
【0148】
13-2.リンパ節のCD8+ T細胞でPD-1発現の増加
腸間膜リンパ節を採取して、PBSで洗浄して軽く破砕した後、70μm cell strainerでろ過した。ろ過した単一細胞をFACSバッファー10mlに追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して回収した。
血液をEDTA(またはヘパリン)でコートされたチューブに入れ、1:1の割合でPBSを混合して、Ficoll-Paque PLUSを入れた15mLチューブに移して遠心分離した後、マウスPBMC(peripheral blood mononuclear cell)を回収した。PBMCは、400gで遠心分離して、上澄み液を除去した後、上澄み液を捨てた後、ACK lysisバッファー(Lonza cat no.10-548E)1~2mlを入れ、常温で1分間放置した。その後、FACSバッファー10mlを追加して混合した後、300~400gで5分間遠心分離して回収した。リンパ節や血液から分離回収した免疫細胞を適正量のFACSバッファーで再懸濁した後、CD8単クローン抗体(BD Biosciences,Cat no.563234)とPD-1に対する単クローン抗体(Biosciences,Cat no.25-9985-80)で染色して、フローサイトメトリーを用いてPD-1を発現するCD8+ T細胞の増加程度を確認した。
図23に示されたように、血液から分離したPBMCでPD-1を発現するCD8+ T細胞の変化は観察されなかったが、腸管膜リンパ節では、変化が明らかであり、2.5倍以上CD8+ T細胞が増加することを確認できた。
【0149】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明者らは、レオウイルス単独のがん治療効果を確認しただけでなく、レオウイルスを経口投与しながら、免疫チェックポイント阻害剤と併用する場合、大腸がん、皮膚がん、腎臓がんなどに対して腫瘍体積の低減、腫瘍成長速度の抑制、生存率の増加のようながん治療効果が有意に上昇することを確認し、特にPD-1抗体およびCTLA-4抗体とレオウイルスを併用する場合、がんが完全寛解になるだけでなく、がんの再発も抑制することができることを確認した。したがって、本発明のレオウイルスを様々ながんの治療剤および治療補助剤として有用に使用でき、産業上の利用可能性がある。
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