(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ゲル状洗浄料、及びゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20250123BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20250123BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20250123BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20250123BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20250123BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20250123BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250123BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20250123BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20250123BHJP
C11D 3/382 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/99
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q19/10
C11D3/22
C11D3/382
(21)【出願番号】P 2023090080
(22)【出願日】2023-05-31
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151966
【氏名又は名称】株式会社桃谷順天館
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】久保 詩織
(72)【発明者】
【氏名】野口 安則
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509064(JP,A)
【文献】特開2010-043147(JP,A)
【文献】特開2021-102600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0097385(US,A1)
【文献】特開2000-355518(JP,A)
【文献】特開2020-169135(JP,A)
【文献】特開2021-020865(JP,A)
【文献】特表2023-507162(JP,A)
【文献】特開2002-087993(JP,A)
【文献】特開2008-050298(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105342873(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0026427(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0062839(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第115551460(CN,A)
【文献】特開2003-113036(JP,A)
【文献】特開2007-153879(JP,A)
【文献】特開2016-034931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0077186(US,A1)
【文献】Gold Hydrogel Eye Mask, Avon,Mintel GNPD [online],2019年03月,[検索日2024.7.9], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>,ID#:6328537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル基剤として水溶性高分子と、洗浄剤とを含有
し、肌に塗布するものであるゲル状洗浄料であって、
前記水溶性高分子は、マンナン及びカラギーナンと、ジェランガム
、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つとを含み、
前記洗浄剤は、ノニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含み、
環状の糖類
としてトレハロース、マルチトール、加水分解水添デンプン、及びグリコシルトレハロースからなる群から選択される少なくとも一つを含有
し、
前記水溶性高分子の含有量は、1~2.5質量%であり、
前記環状の糖類の含有量は、5~25質量%(固形分換算)であり、
前記洗浄剤の含有量は、1~15質量%(固形分換算)であるゲル状洗浄料。
【請求項2】
前記マンナンは、グルコマンナンであり、
前記カラギーナンは、イオタカラギーナンであり、
前記ジェランガムは、高アシル型ジェランガムである請求項1に記載のゲル状洗浄料。
【請求項3】
ゲル基剤として水溶性高分子を含有
し、肌に塗布するものであるゲル状組成物であって、
前記水溶性高分子は、マンナン及びカラギーナンと、ジェランガム
、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つとを含み、
環状の糖類
としてトレハロース、マルチトール、加水分解水添デンプン、及びグリコシルトレハロースからなる群から選択される少なくとも一つを含有
し、
前記水溶性高分子の含有量は、1~2.5質量%であり、
前記環状の糖類の含有量は、5~25質量%(固形分換算)であるゲル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル基剤として水溶性高分子と、洗浄剤とを含有するゲル状洗浄料に関する。また、本発明は、ゲル基剤として水溶性高分子を含有するゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル状洗浄料等においては、水溶性高分子がゲル基剤として使用されている。この種のゲル基剤としては、例えば、半固形状洗浄剤において、コンニャクマンナンとカラギーナンとが使用されている(特許文献1参照)。また、例えば、外用ゲル状組成物において、カラギーナン及び/又はマンナン、並びに単独で融点が80℃以上のゲルを形成し得る増粘多糖類が使用されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-43147号公報
【文献】特開2002-87993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、半固形状洗浄剤の物性面での脆弱性を克服したとされている。また、特許文献2においては、外用ゲル状組成物は強靭であるとされ、また、肌上で崩れたり、変形したりする等の虞がないとされている。これら特許文献1及び2は、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するものではなく、その物性変化を楽しめるものとは言い難い。また、低温から高温までの広い範囲における経時安定性に関して検討されておらず、経時的な温度安定性が十分であるとは言い難い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、容易に起泡し、泡質、濯ぎ性、洗いあがりのしっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたゲル状洗浄料を提供することを目的とする。また、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、しっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたゲル状組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明に係るゲル状洗浄料の特徴構成は、
ゲル基剤として水溶性高分子と、洗浄剤とを含有するゲル状洗浄料であって、
前記水溶性高分子は、マンナン及びカラギーナンと、ジェランガム、カンテン、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つとを含み、
環状の糖類を含有することにある。
【0007】
本構成のゲル状洗浄料によれば、上記特定の種類の水溶性高分子をゲル基剤とし、環状の糖類を含有することにより、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、容易に起泡し、泡質、濯ぎ性、洗いあがりのしっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたものとなる。
【0008】
本発明に係るゲル状洗浄料において、
前記環状の糖類は、単~五糖の少なくとも一つである糖、単糖が糖アルコールで修飾されてなる修飾糖、デンプン加水分解物、及びデンプン加水分解物の水素添加物からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0009】
本構成のゲル状洗浄料によれば、環状の糖類として上記特定の種類のものを選択することにより、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性をより高めることができる。
【0010】
本発明に係るゲル状洗浄料において、
前記マンナンは、グルコマンナンであり、
前記カラギーナンは、イオタカラギーナンであり、
前記ジェランガムは、高アシル型ジェランガムであることが好ましい。
【0011】
本構成のゲル状洗浄料によれば、マンナン、カラギーナン、及びジェランガムとして、夫々上記特定の種類のものを選択することにより、肌上での塗布時に発生する外力により、より容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、より容易に粘性液に変化することで、より肌に負担なく塗り広げられ、より容易に起泡し、より泡質、より濯ぎ性、より洗いあがりのしっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にもより優れたものとなる。
【0012】
本発明に係るゲル状洗浄料において、
前記環状の糖類は、単~五糖の少なくとも一つである糖、単糖が糖アルコールで修飾されてなる修飾糖、デンプン加水分解物、及びデンプン加水分解物の水素添加物からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記マンナンは、グルコマンナンであり、
前記カラギーナンは、イオタカラギーナンであり、
前記ジェランガムは、高アシル型ジェランガムであることが好ましい。
【0013】
本構成のゲル状洗浄料によれば、環状の糖類として上記特定の種類のものを選択し、さらにマンナン、カラギーナン、及びジェランガムとして、夫々上記特定の種類のものを選択することにより、肌上での塗布時に発生する外力により、より容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、より容易に粘性液に変化することで、より肌に負担なく塗り広げられ、より容易に起泡し、より泡質、より濯ぎ性、より洗いあがりのしっとり感等の使用感により優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にもより優れたものとなる。
【0014】
本発明に係るゲル状洗浄料において、
「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により水を含んで算出される自然由来指数が80%以上であることが好ましい。
【0015】
本構成のゲル状洗浄料によれば、自然由来指数が80%以上であることにより、自然環境への配慮に優れたものとなる。
【0016】
上記課題を解決するための別の本発明に係るゲル状組成物の特徴構成は、
ゲル基剤として水溶性高分子を含有するゲル状組成物であって、
前記水溶性高分子は、マンナン及びカラギーナンと、ジェランガム、カンテン、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つとを含み、
環状の糖類を含有することにある。
【0017】
本構成のゲル状組成物によれば、上記特定の種類の水溶性高分子をゲル基剤とし、環状の糖類を含有することにより、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、しっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたものとなる。
【0018】
本発明に係るゲル状組成物において、
「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により水を含んで算出される自然由来指数が80%以上であることが好ましい。
【0019】
本構成のゲル状組成物によれば、自然由来指数が80%以上であることにより、自然環境への配慮に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のゲル状洗浄料、及びゲル状組成物の実施形態について、以下に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。なお、本明細書において数値範囲を示す表記「~」がある場合、その数値範囲には、「~」を挟む各数値が上限値及び下限値として含まれることを意味し、また、各上限値及び各下限値を適宜組み合わせて数値範囲としてもよい。
【0021】
[ゲル状洗浄料]
本実施形態のゲル状洗浄料は、ゲル基剤として水溶性高分子と、洗浄剤とを含有するゲル状洗浄料である。当該ゲル状洗浄料は、さらに環状の糖類を含有する。
【0022】
<水溶性高分子>
水溶性高分子は、ゲル状洗浄料のゲル基剤としての機能を有し、ゲル状洗浄料にゲル性状を付与するためのものである。この水溶性高分子は、マンナン及びカラギーナンと、ジェランガム、カンテン、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つとを含む。
【0023】
(マンナン)
マンナンは、マンノースを主な構成成分とする多糖類である。マンナンとしては、グルコマンナン、ガラクトマンナン等が挙げられる。グルコマンナンは、D-グルコースとD-マンノースとが略2:3の割合でβ1-4結合してなる多糖類である。グルコマンナンとしては、蒟蒻芋から抽出されたグルコマンナン等が挙げられる。ガラクトマンナンは、D-マンノースがβ1-4結合した主鎖と、D-ガラクトースがα1-6結合した側鎖とからなる構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンとしては、ローカストビーンガム(マンノース:ガラクトース比が約4:1)、グアガム(マンノース:ガラクトース比が約2:1)等が挙げられる。これらのうち、マンナンとしては、グルコマンナンが好ましい。マンナンとしてグルコマンナンを選択することにより、肌上での塗布時に発生する外力により、より容易にゲルが崩れ、粘性液へと変化し易くなり、よりうるおい感のある洗いあがりが得られる。マンナンは、上記多糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0024】
(カラギーナン)
カラギーナンは、アンヒドロガラクトースと、ガラクトースの硫酸エステルとを構成糖とする多糖類であり、紅藻類から抽出される。カラギーナンは、硫酸エステル含量によりカッパ(κ)カラギーナン、イオタ(ι)カラギーナン、ラムダ(λ)カラギーナンに分類される。これらのうち、カラギーナンとしては、イオタカラギーナン(イオタ型カラギーナン)が好ましい。カラギーナンとしてイオタカラギーナンを選択することにより、肌上での塗布時に発生する外力により、より容易にゲルが崩れ、粘性液へと変化し易くなる。また、凍結解凍による離漿をより抑えることができる。カラギーナンは、上記多糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0025】
(ジェランガム)
ジェランガムは、グルコースがα1-3結合してなる構造単位(構造単位a)、グルクロン酸がα1-4結合してなる構造単位(構造単位b)、グルコースがα1-4結合してなる構造単位(構造単位c)、及びラムノースがα1-4結合してなる構造単位(構造単位d)の4つの構造単位が直線状に結合してなり、かつ構造単位aのグルコースにアセチル基とグリセリル基とが結合してなる多糖類である。この多糖類は、シュードモナス・エロディア(Pseudomonas elodea)である微生物が菌体外に産出するヘテロ多糖類として得られるものであり、アシル基の含有量が高いことから、「高アシル基含有ジェランガム(高アシル型ジェランガム)」と呼ばれ、また、ネイティブジェランガムとも呼ばれる。一方、高アシル型ジェランガムにおける構造単位aのグルコースに結合しているアセチル基及びグリセリル基が除去されてなる多糖類は、アシル基を含有しないか又はアシル基の含有量が高アシル型ジェランガムよりも相対的に低く、「脱アシル型ジェランガム」と呼ばれる。本実施形態においては、ジェランガムは、高アシル型ジェランガム、及び脱アシル型ジェランガムの双方を包含するものである。これらのうち、ジェランガムとしては、高アシル型ジェランガムが好ましい。ジェランガムとして高アシル型ジェランガムを選択することにより、肌上での塗布時に発生する外力により、より容易にゲルが崩れ、粘性液へと変化し易くなる。また、高温下での品質の劣化をより抑えることができる。ジェランガムは、上記多糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0026】
(カンテン)
カンテンは、ガラクトースと3,6アンヒドロガラクトースとがβ1-4結合してなる多糖類であり、イオン基を有さないアガロースと、アガロースに硫酸基等のイオン基が付加されたアガロペクチンとを含む多糖類である。この多糖類は、テングサ、オゴノリ等の海藻から抽出される。カンテンは、海藻の種類等が異なる多糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。カンテンは、特に、溶解温度が低く、80℃以上で溶解が可能な即溶性タイプのものが好ましい。カンテンが80℃以上で溶解が可能なものであることにより、肌上での塗布時に発生する外力により、より容易にゲルが崩れ、粘性液へと変化し易くなる。また、溶解温度が低いため、ゲル状洗浄料の調製が容易となる。
【0027】
(スフィンゴモナス培養エキス)
スフィンゴモナス培養エキスは、スフィンゴモナス属のATCC 53159株が産生する発酵生成物からなる多糖類である。この多糖類は、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4つの糖が繰り返されてなる単位構造を有する主鎖に、側鎖として、上記単位構造に2つのラムノースが結合してなる多糖類である。この多糖類は、「デュータンガム」とも呼ばれる。スフィンゴモナス培養エキスは、単位構造数等が異なる多糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0028】
(ウェランガム)
ウェランガムは、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースの4つの糖が繰り返される単位構造を有する主鎖に、側鎖として、上記単位構造に1つのマンノース又はラムノースが結合してなる多糖類である。この多糖類は、スフィンゴモナス属細菌(Sphingomonas sp.)の培養液から得られる。ウェランガムは、単位構造数、側鎖の種類等が異なる多糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0029】
(水溶性高分子の含有量)
ゲル状洗浄料における水溶性高分子の総含有量は、1~2.5質量%が好ましい。マンナン(質量a)に対するカラギーナン(質量b)の質量比(b/a)は、0.20~3.20が好ましい。マンナン(質量a)に対するジェランガム、カンテン、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つ(質量c)の質量比は、0.1~1.7が好ましい。水溶性高分子の含有量を上記の適切な範囲とすることにより、温度安定性をより高めることができる。また、使用感をより高めることができる。
【0030】
<環状の糖類>
環状の糖類は、水溶性高分子を含有するゲル状洗浄料の温度安定性に寄与するものである。この環状の糖類は、単~五糖の少なくとも一つである糖、単糖が糖アルコールで修飾されてなる修飾糖、デンプン加水分解物、及びデンプン加水分解物の水素添加物からなる群から選択される少なくとも一つである。当該糖類が有する環状構造の員環数としては、五(五員環)、六(六員環)等が挙げられる。
【0031】
(単糖~五糖の少なくとも一つである糖)
単糖としては、グルコース(ブドウ糖)、ガラクトース等の六員環の単糖、フルクトース(果糖)等の五員環の単糖等が挙げられる。
二糖としては、六員環の単糖と五員環の単糖とが結合してなるスクロース(ショ糖)、二つの六員環の単糖が結合してなるマルトース(麦芽糖)、ラクトース、トレハロース、等が挙げられる。
三糖としては、三つの六員環の単糖が結合してなるマルトトリオース、グリコシルトレハロース等が挙げられる。
四糖としては、四つの六員環の単糖が結合してなるマルトシルトレハロース等が挙げられる。
五糖としては、五つの六員環の単糖が結合してなるマルトトリオシルトレハロース等が挙げられる。
【0032】
(単糖が糖アルコールで修飾されてなる修飾糖)
単糖が糖アルコールで修飾されてなる修飾糖としては、六員環の単糖が糖アルコールで修飾されてなるマルチトール、イソマルト、ラクチトール等が挙げられる。
【0033】
(デンプン加水分解物)
デンプン加水分解物は、デンプンが加水分解されてなる糖類である。デンプン加水分解物としては、重合度が3~6である水あめ、重合度が6~10であるマルトデキストリン等が挙げられる。
【0034】
(デンプン加水分解物の水素添加物)
デンプン加水分解物の水素添加物(加水分解水添デンプン)は、上記デンプン加水分解物に水素原子を付加してなる糖類である。加水分解水添デンプンとしては、加水分解水添デンプン、グリコシルトレハロース、及び水(加水分解水添デンプン/グリコシルトレハロース/水)からなる混合物等が挙げられる。
【0035】
環状の糖類は、上記糖類を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0036】
(環状の糖類の含有量)
ゲル状洗浄料における環状の糖類の含有量は、5~25質量%(固形物換算)が好ましい。環状の糖類の含有量を上記の適切な範囲とすることにより、温度安定性をより高めることができる。また、使用感をより高めることができる。
【0037】
<洗浄剤>
洗浄剤としては、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤の何れも使用可能である。
【0038】
アニオン性界面活性剤としては、高級アルキル硫酸エステル塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(POE(ポリオキシエチレン)ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等)、N-アシルサルコシン酸(ラウロイルサルコシンナトリウム等)、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等)、リン酸エステル塩(POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸等)、スルホコハク酸塩(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドPOEスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等)、N-アシルグルタミン酸塩(N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等)、アシルグリシン塩(ココイルグリシン塩、ラウロイルグリシン塩等)、硫酸化油(ロート油等)、アシルアラニン塩(ラウロイルメチルアラニン塩等)、POEアルキルエーテルカルボン酸、POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0039】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等)、アルキルピリジニウム塩(塩化セチルピリジニウム等)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N′-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤としては、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、ベタイン系界面活性剤(コカミドプロピルベタイン、ラウラミドアミドプロピルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン、ラウリルベタイン、ココベタイン等のアルキルベタイン、アルキルスルホベタイン等)、ココアンホ酢酸ナトリウム(Na)、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン等が挙げられる。
【0041】
ノニオン性(非イオン性)界面活性剤としては、親油性のノニオン性界面活性剤、親水性のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
親油性のノニオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等)、グリセリン脂肪酸エステル類(モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α′-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
親水性のノニオン性界面活性剤としては、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンテトラオレエート等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(POEジステアレート、POEモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等)、POEアルキルエーテル類(POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等)、プルロニック(登録商標)類、POE・POP(ポリオキシプロピレン)アルキルエーテル類(POE・POPセチルエーテル、POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等)、テトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類(テトロニック等)、POEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等)、POEミツロウ・ラノリン誘導体(POEソルビットミツロウ等)、アルカノールアミド(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド、コカミドメチルモノエタノールアミド等)、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ラウリン酸ジエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸、ポリグリセリル-4ラウリルエーテル等のポリグリセリンアルキルエーテル等、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、ドデシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、パルミチルグルコシド、ヤシ油由来のアルキルグルコシド(ヤシ油アルキルグルコシド)、(カプリリル/カプリル)グルコシド等のアルキルグルコシド等が挙げられる。
【0042】
これらのうち、洗浄剤は、ノニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、ラウリルグルコシド、ヤシ油由来のアルキルグルコシド(ヤシ油アルキルグルコシド)、ポリグリセリル-4ラウリルエーテルが好ましく、両性界面活性剤としては、コカミドプロピルベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、イソステアラミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン、ラウリルベタイン、ココベタイン等のアルキルベタインが好ましい。洗浄剤として適切な種類を選択することにより、ゲルの架橋に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。このようにゲルの架橋に悪影響を及ぼすことをより抑制するという観点から、洗浄剤は、両性界面活性剤であることが好ましい。洗浄剤は、上記化合物を単独で使用することができるが、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0043】
当該ゲル状洗浄料における洗浄剤の含有量は、1~15質量%(固形分換算)が好ましい。洗浄剤の含有量として上記適切な範囲を選択することにより、ゲルの架橋に悪影響を及ぼすことなく、洗浄性を高めることができる。また、使用感を高めることができる。
【0044】
<水>
当該ゲル状洗浄料における水の含有量は、60~85質量%が好ましい。水の含有量を上記範囲とすることにより、当該ゲル状洗浄料のゲル化の程度を適切なものとすることができ、また、温度安定性をより高めることができる。また、使用感をより高めることができる。
【0045】
<その他の成分>
ゲル状洗浄料には、上記水溶性高分子、環状の糖類、洗浄剤の他、フェノキシエタノール、ペンチレングリコール、ブチレングリコールといった有機溶媒、上記水溶性高分子以外の水溶性高分子、β-カロチン、アスタキサンチン、ルテイン等の色素類、セラミド等のスフィンゴリン脂質類、フラボン、フラボノール、イソフラボン、アントシアン等のフラボノイド類、フェルラ酸等のポリフェノール類、油性のビタミン類、アミノ酸類、植物エキス類、精油、pH調整剤、防腐剤等の従来公知の任意の添加剤を添加してもよい。
【0046】
<ゲル状洗浄料の自然由来指数>
当該ゲル状洗浄料は、「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により水を含んで算出される自然由来指数(以下、単に「自然由来指数」と称する)が80%以上であり、100%が好ましい。当該ゲル状洗浄料の自然由来指数が80%以上であることによって、自然環境への配慮に優れたものとなる。具体的には、自然由来指数は、ゲル状洗浄料に含まれる全ての成分に基づいて算出される数値である。ゲル状洗浄料の自然由来指数を80%以上とするには、ゲル状洗浄料における水(自然由来指数は100%)以外の成分の種類、及び全ての成分の含有量を、自然由来指数が80%以上となるように設定すればよい。
【0047】
<ゲル状洗浄料の調製>
ゲル状洗浄料は、上記水溶性高分子、環状の糖類、洗浄剤、及び水の他、任意の添加物を混合し、従来公知の攪拌装置を用い、全成分を加熱しながら撹拌して溶解させ、その後、冷却しながら攪拌することによって得ることができる。
【0048】
当該ゲル状洗浄料は、上記特定の種類の水溶性高分子をゲル基剤とし、環状の糖類を含有することにより、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、容易に起泡し、泡質、濯ぎ性、洗いあがりのしっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたものとなる。
【0049】
[ゲル状組成物]
本実施形態のゲル状組成物は、ゲル基剤として水溶性高分子を含有するゲル状組成物であって、水溶性高分子は、マンナン及びカラギーナンと、ジェランガム、カンテン、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムからなる群から選択される少なくとも一つとを含み、環状の糖類を含有することにある。
【0050】
<水溶性高分子>
当該ゲル状組成物においては、上述したゲル状洗浄料において使用される上述した水溶性高分子と同様の水溶性高分子をゲル基剤として含有する。具体的には、上述した水溶性高分子をゲル状組成物にゲル状の性状を付与するためのゲル基剤として含有する。当該ゲル状組成物における水溶性高分子の構成、及びゲル状組成物における含有量は、上述したゲル状洗浄料における水溶性高分子の構成、及びゲル状洗浄料における含有量と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0051】
<環状の糖類>
当該ゲル状組成物においては、上述したゲル状洗浄料において使用される上述した環状の糖類と同様の糖類を含有する。当該ゲル状組成物における環状の糖類の構成、及びゲル状組成物における含有量は、上述したゲル状洗浄料における環状の糖類の構成、及びゲル状洗浄料における含有量と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0052】
<水>
当該ゲル状組成物における水の含有量は、60~85質量%が好ましい。水の含有量を上記範囲とすることにより、当該ゲル状組成物のゲル化の程度を適切なものとすることができ、また、温度安定性をより高めることができる。また、使用感をより高めることができる。
【0053】
<その他の成分>
ゲル状組成物には、上記水溶性高分子、環状の糖類の他、上述した洗浄剤、フェノキシエタノール、ペンチレングリコール、ブチレングリコールといった有機溶媒、上記水溶性高分子以外の水溶性高分子、β-カロチン、アスタキサンチン、ルテイン等の色素類、セラミド等のスフィンゴリン脂質類、フラボン、フラボノール、イソフラボン、アントシアン等のフラボノイド類、フェルラ酸等のポリフェノール類、油性のビタミン類、アミノ酸類、植物エキス類、精油、pH調整剤、防腐剤等の従来公知の任意の添加剤を添加してもよい。
【0054】
<ゲル状組成物の自然由来指数>
当該ゲル状組成物は、自然由来指数が80%以上であり、100%が好ましい。当該ゲル状組成物の自然由来指数が80%以上であることによって、自然環境への配慮に優れたものとなる。なお、上述したように、本発明において、ゲル状組成物の自然由来指数は、水を含んで算出される数値である。具体的には、自然由来指数は、ゲル状組成物に含まれる全ての成分に基づいて算出される数値である。ゲル状組成物の自然由来指数を80%以上とするには、ゲル状組成物における水(自然由来指数は100%)以外の成分の種類、及び全ての成分の含有量を、自然由来指数が80%以上となるように設定すればよい。
【0055】
<ゲル状組成物の調製>
ゲル状組成物は、上記水溶性高分子、環状の糖類、及び水の他、任意の添加物を混合し、従来公知の攪拌装置を用い、全成分を加熱しながら撹拌して溶解させ、その後、冷却しながら攪拌することによって得ることができる。
【0056】
<ゲル状組成物の用途>
ゲル状組成物の用途は、化粧料(例えば、美容ジェル剤、パック剤等)等の用途が挙げられる。
【0057】
当該ゲル状組成物によれば、上記特定の種類の水溶性高分子をゲル基剤とし、環状の糖類を含有することにより、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、しっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を示しつつ本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0059】
[実施例1~32、比較例1~13]
表1~7、9の配合に従い、本発明のゲル状洗浄料(実施例1~32)を調製し、温度安定性(50℃×1ヵ月、5℃×1ヵ月、凍結解凍)、及び使用感((物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ))、起泡性、泡質、濯ぎ性、洗いあがりの保湿感)を評価した。また、比較のため、表1、2、5、8の配合に従い、本発明の範囲外となるゲル状洗浄料(比較例1~13)を調製し、同様の評価を実施した。なお、表1~9に、実施例1~32、及び比較例1~13のゲル状洗浄料の自然由来指数(小数点第1位を四捨五入)を示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
[評価]
実施例1~32、及び比較例1~13のゲル状洗浄料について、下記の評価方法に従い、温度安定性(50℃×1ヵ月、5℃×1ヵ月、凍結解凍)、及び使用感(物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ)、起泡性、泡質、濯ぎ性、洗いあがりの保湿感)を評価した。
【0070】
<温度安定性>
実施例1~32、及び比較例1~13のゲル状洗浄料を50℃、5℃の温度条件下に夫々保存し、1ヵ月経過後、下記の判定基準に基づき、50℃で1ヵ月保存後(50℃×1ヵ月)、及び5℃で1ヵ月保存後(5℃×1ヵ月)の温度安定性を、下記の判定基準で評価した。また、実施例1~32、及び比較例1~13のゲル状洗浄料を凍結させ、室温で放置して解凍したとき(凍結解凍(1回))の保存安定性を、同様にして評価した。なお、凍結解凍(1回)の保存安定性は、1回目に(初めて)凍結させた後、解凍したときの保存安定性を評価したものであり、2回以上繰り返して凍結した後、解凍したときの保存安定性ではない。
・判定基準
A:離漿、及び粘度低下等の物性変化が認められない(優良)
B:僅かに離漿が認められるものの、粘度変化等の物性変化が認められない(良好)
C:離漿、及び粘度低下等の物性変化が認められる(不良)
【0071】
<使用感>
実施例1~32、及び比較例1~13のゲル状洗浄料について、10名の被験者を対象とし、何れのゲル状洗浄料を使用しているか判別できないようにブラインドで使用してもらい評価した。具体的には、下記の評価方法及び判定基準に従って評価した。
【0072】
(物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ))
実施例1~32、及び比較例1~13のゲル状洗浄料を用い、各ゲル状洗浄料を手のひらに4gを取り、手のひらに伸ばした際のゲル状洗浄料の物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ)について、下記の評価基準により評価した。結果を表1~9に示す。
・判定基準
A:ゲル状から直ちに粘性液状に変化し、物性変化が顕著に認められる(優良)
B:ゲル状から粘性液状に変化し、物性変化が認められる(良好)
C:ゲル状から粘性液状に変化したが、粘性液状内にゲル状物が残っており、物性変化が劣る(不良)
【0073】
(起泡性)
上記物性変化の評価において手のひらに伸ばした各ゲル状洗浄料に水を加え、起泡させた際の起泡のし易さ(泡量の多さ)について、下記の評価基準により評価した。結果を表1~9に示す。
・判定基準
A:泡量が非常に多い(優良)
B:起量が多い(良好)
C:泡量が少ない(不良)
【0074】
(泡質)
上記起泡性の評価において起泡させた際の泡質(クリーミーさ)について、下記の評価基準により評価した。結果を表1~9に示す。
・判定基準
A:非常にクリーミーな泡質である(優良)
B:クリーミーな泡質である(良好)
C:クリーミーとは言えない泡質である(不良)
【0075】
(濯ぎ性)
上記泡質の評価を行った後、得られた泡を用いて洗顔し、その後、流水にて洗い流す際の濯ぎ易さについて、下記の評価基準により評価した。結果を表1~9に示す。
・判定基準
A:非常に濯ぎ易い(優良)
B:濯ぎ易い(良好)
C:ぬめり等がいつまでも残り、濯ぎ難い(不良)
【0076】
(洗いあがりの保湿感)
上記濯ぎ性の評価において濯いだ後、タオルドライをした後(タオルを押し当てて乾燥させた後)の肌の保湿感について、下記の評価基準により評価した。結果を表1~9に示す。
・判定基準
A:非常にしっとりしている(優良)
B:しっとりしている(良好)
C:しっとりしていない(不良)
【0077】
表1の実施例1~3に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類としてマルチトール(二糖)を用いることにより、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」又は「B」となり、使用感の評価が「A」又は「B」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、カラギーナン及び環状の糖類の含有量が大きくなるに従って、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」又は「B」となり、温度安定性が優れることが示された。これに対し、比較例1に示すように、糖類を用いない場合には、50℃及び凍結解凍での温度安定性に劣り、使用感においても洗いあがりの保湿感に劣ることが示された。
【0078】
表2には、参考のため、表1の実施例3の結果を転記して示す。表2の実施例4に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類としてトレハロースを用いることにより、環状の糖類としてマルチトールを用いる(実施例3)と同様に、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が「A」又は「B」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」となり、温度安定性に優れることが示された。これに対し、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムを用いる一方、環状の糖類に代えて、それ以外の環状構造を有さない糖アルコール、グリセリン、ポリグリセリンを用いる場合(比較例2~4)には、凍結解凍での温度安定性に劣り、グリセリン、ポリグリセリンを用いたものは、50℃での安定性にも劣ることが示された。
【0079】
表3の実施例5~9に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合において、各水溶性高分子の配合量が適切な範囲であると、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が「A」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」となり、温度安定性に優れることが示された。
【0080】
表4の実施例10~14に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合において、各水溶性高分子の配合量が適切な範囲であると、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が「A」又は「B」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」となり、温度安定性に優れることが示された。
【0081】
表5の実施例15~17に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、スフィンゴモナス培養液とを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合においても、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合と同様に、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が「A」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」となり、温度安定性に優れることが示された。これに対し、マンナン及び/又はカラギーナンを配合しない比較例5~9は、少なくとも物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ)、泡質において使用感に劣ることが示された。
【0082】
表6の実施例18~21に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、カンテンとを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合においても、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合と同様に、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が「A」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」となり、温度安定性に優れることが示された。
【0083】
表7の実施例22と実施例23との比較より、マンナンとしてガラクトマンナンを用いた場合よりもグルコマンナンを用いた場合の方が、温度安定性及び使用感に優れることが示された。実施例22と実施例24との比較より、ジェランガムとして脱アシル型ジェランガムを用いた場合よりも高アシル型ジェランガムを用いた場合の方が、温度安定性及び使用感に優れることが示された。実施例22と実施例25との比較より、カラギーナンとしてカッパ型カラギーナンを用いた場合よりもイオタ型カラギーナンを用いた場合の方が、温度安定性及び使用感に優れることが示された。実施例26~27に示すように、ジェランガムに代えてスフィンゴモナス培養液、ウェランガムを用いた場合においても、温度安定性及び使用感に優れることが示された。
【0084】
表8の比較例10~13に示すように、水溶性高分子としてマンナン及びカラギーナンの少なくとも一方を用いない場合、又は、マンナン及びカラギーナンを用いても、ジェランガム、カンテン、スフィンゴモナス培養エキス、及びウェランガムの何れも用いない場合には、凍結解凍等の温度安定性及び使用感において劣ることが示された。
【0085】
表9の実施例28~32に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類(マルチトール)を用いる場合において、洗浄剤としてラウラミドプロピルベタイン以外の洗浄剤を配合した場合においても、50℃及び5℃での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が「A」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。また、凍結解凍(1回)という5℃よりも苛酷な低温条件においても温度安定性が「A」となり、温度安定性に優れることが示された。
【0086】
[実施例33]
下記表10の配合に従うこと以外は実施例1と同様にして、本発明のゲル状組成物としてパック剤(実施例33)を調製し、上記実施例1~32及び比較例1~13と同様にして、温度安定性(50℃×1ヵ月、5℃×1ヵ月、凍結解凍)を評価した。また、使用感として、物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ)、塗布のし易さ、濯ぎ性、洗いあがりの保湿感を評価した。なお、表10において、「加水分解水添デンプン(27)/グリコシルトレハロース(47)/水(26)からなる混合物」は、加水分解水添デンプン27質量%、グリコシルトレハロース47質量%、及び水26質量%からなる混合物である。また、表10に、実施例33のパック剤の自然由来指数(小数点第1位を四捨五入)を示す。
【0087】
【0088】
[評価]
実施例33のパック剤について、上述した評価方法に従い、温度安定性(50℃×1ヵ月、5℃×1ヵ月、凍結解凍)を評価した。使用感の評価については、下記の評価方法に従って評価した。
【0089】
<使用感>
実施例33のパック剤について、10名の被験者を対象とし、何れのゲル状洗浄料を使用しているか判別できないようにブラインドで使用してもらい評価した。具体的には、下記の評価方法及び判定基準に従って評価した。
【0090】
(物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ))
実施例33のパック剤を用い、当該パック剤を手のひらに4gを取り、手のひらに伸ばした時のパック剤の物性変化(ゲル状から粘性液への変化のし易さ)について、下記の評価基準により評価した。結果を表10に示す。
・判定基準
A:ゲル状から直ちに粘性液状に変化し、物性変化が顕著に認められる(優良)
B:ゲル状から粘性液状に変化し、物性変化が認められる(良好)
C:ゲル状から粘性液状に変化したが、粘性液状内にゲル状物が残っており、物性変化が劣る(不良)
【0091】
(塗布のし易さ)
上記物性変化の評価において手のひらに伸ばしたパック剤を用い、顔に塗布する際の塗布のし易さについて、下記の評価基準により評価した。結果を表10に示す。
・判定基準
A:非常に塗布し易い(優良)
B:塗布し易い(良好)
C:塗布し難い(不良)
【0092】
(濯ぎ性)
上記塗布のし易さの評価においてパック剤を顔に塗布してから3分後に、流水にて洗い流し、その際の濯ぎ易さについて、下記の評価基準により評価した。結果を表10に示す。
・判定基準
A:非常に濯ぎ易い(優良)
B:濯ぎ易い(良好)
C:ぬめり等がいつまでも残り、濯ぎ難い(不良)
【0093】
(洗いあがりの保湿感)
上記濯ぎ性の評価において濯いだ後、タオルドライをした後(タオルを押し当てて乾燥させた後)の肌の保湿感について、下記の評価基準により評価した。結果を表10に示す。
・判定基準
A:非常にしっとりしている(優良)
B:しっとりしている(良好)
C:しっとりしていない(不良)
【0094】
表10の実施例33に示すように、水溶性高分子としてマンナンと、カラギーナンと、ジェランガムとを用い、環状の糖類として、加水分解水添デンプン/グリコシルトレハロース/水からなる混合物を用いることにより、50℃、5℃、及び凍結解凍(1回)での温度安定性の評価が「A」となり、使用感の評価が何れも「A」となり、温度安定性及び使用感に優れることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のゲル状洗浄料は、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、容易に起泡し、泡質、濯ぎ性、洗いあがりのしっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたゲル状洗浄料として利用することができる。また、本発明のゲル状組成物は、肌上での塗布時に発生する外力により容易にゲルが崩れて粘性液へと変化するという物性変化が楽しめ、粘性液に変化することで、肌に負担なく塗り広げられ、しっとり感等の使用感に優れ、低温から高温までの広い範囲の温度帯での経時安定性にも優れたものであるため、高温地域、寒冷地域等においても好適に利用することができる。