(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】撹拌装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/805 20220101AFI20250123BHJP
B01F 23/43 20220101ALI20250123BHJP
B01F 23/53 20220101ALI20250123BHJP
【FI】
B01F27/805
B01F23/43
B01F23/53
(21)【出願番号】P 2024100963
(22)【出願日】2024-06-24
【審査請求日】2024-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592205148
【氏名又は名称】みづほ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】田邉 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 遼一
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-170924(JP,A)
【文献】特開2012-170923(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116474598(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0032248(US,A1)
【文献】特開2020-175354(JP,A)
【文献】実公昭47-021225(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
B01F 23/43
B01F 23/53
G01N 1/00 - 1/44
A61K 8/00 - 8/99
A21C 1/00 - 1/14
A23L 5/00 - 5/49
C12M 1/00 - 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は液体と固形物の混合体とを撹拌する撹拌装置であって、
天面が開放された撹拌槽と、
前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、
前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる撹拌槽駆動部と、
前記蓋部は、前記撹拌槽に支持されて上限位置と中間位置の間でのみ昇降し、前記蓋部が下限位置に降下することを防止する蓋部中間位置停止部と、
上昇中の前記撹拌槽と前記蓋部との間における異物の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、を備え
、
下限位置へは、前記蓋部は降下せず、前記撹拌槽が降下して天面が開放され、
前記撹拌槽は、下限位置からの上昇に伴い、中間位置にて降下が防止されている前記蓋部に接近して接触し、さらに、前記蓋部を押上げて上限位置まで上昇することを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記挟み込み検出部は、前記撹拌槽が下限位置から中間位置に上昇して前記蓋部に接近したときの異物の挟み込みを検出することを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記挟み込み検出部は、前記撹拌槽が中間位置から上限位置へと前記蓋部を支持しながら上昇するときの異物の挟み込みを検出することを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記挟み込み検出部は、昇降中の前記撹拌槽に所定値以上の負荷がかかったことを検出することを特徴とする請求項1―3のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記前記挟み込み検出部が所定値以上の負荷を検出した場合、前記撹拌槽の昇降を緊急停止させる緊急停止部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体又は液体と固形物の混合体を撹拌する撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品、食品、化学品、又は医薬品における液体又は液体と固形物の混合体を材料として微細化し撹拌するために撹拌装置が用いられている。撹拌装置は、回転軸に設けられた回転羽根が回転して材料を撹拌する略円筒状の撹拌槽と当該回転軸を回転させるための駆動部等からなっている。
【0003】
撹拌槽は、通常の撹拌動作時、撹拌する材料投入時、又は撹拌槽内の洗浄時により作業者からみた撹拌槽の最適な位置は異なっている。例えば、通常の撹拌動作時は撹拌確認のため作業者の目の高さ、撹拌する材料投入時は作業者の腰の高さ、そして、撹拌槽内の洗浄時は内部の洗浄液を排出する都合上作業者の足元の位置が好ましいとされている。
【0004】
特許文献1には、撹拌槽の蓋体に設けられた覗き窓から撹拌槽内を確認する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特許第5264635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の撹拌槽上部の蓋体に設けられた覗き窓から撹拌槽内を確認することができるものの、撹拌槽上部に設けられる材料投入口が目線より上になり材料投入が難しく、撹拌槽内の洗浄を行う際には洗浄液の排水が困難という問題がある。
一方、各作業に適切な高さに撹拌槽を昇降させようとすると、指や衣類を可動部分に挟み込んでトラブルになる恐れがあるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、撹拌槽を適切な高さに昇降させるとともに、撹拌槽の上昇時に異物の挟み込みによるトラブルを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、液体又は液体と固形物の混合体とを撹拌する撹拌装置であって、
天面が開放された撹拌槽と、
前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、
前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる撹拌槽駆動部と、
前記蓋部は、前記撹拌槽に支持されて上限位置と中間位置の間でのみ昇降し、前記蓋部が下限位置に降下することを防止する蓋部中間位置停止部と、
上昇中の前記撹拌槽と前記蓋部との間における異物の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、を備え、
下限位置へは、前記蓋部は降下せず、前記撹拌槽が降下して天面が開放され、
前記撹拌槽は、下限位置からの上昇に伴い、中間位置にて降下が防止されている前記蓋部に接近して接触し、さらに、前記蓋部を押上げて上限位置まで上昇することを特徴とする撹拌装置を提供するものである。
【0009】
この構成により、撹拌槽を適切な高さに昇降させるとともに、撹拌槽の上昇時に異物を挟み込んだことによるトラブルを防止することができる。
【0010】
撹拌装置であって、前記挟み込み検出部は、前記撹拌槽が下限位置から中間位置に上昇して前記蓋部に接近したときの異物の挟み込みを検出する構成としてもよい。
【0011】
この構成により、撹拌槽と蓋部の間に異物を挟み込んだまま、下限位置から中間位置に上昇することを防止できる。
【0012】
撹拌装置であって、前記挟み込み検出部は、前記撹拌槽が中間位置から上限位置へと前記蓋部を支持しながら上昇するときの異物の挟み込みを検出する構成としてもよい。
【0013】
この構成により、撹拌槽と蓋部の間に異物を挟み込んだまま、中間位置から上限位置へと上昇することを防止できる。
【0014】
撹拌装置であって、前記挟み込み検出部は、上昇中の前記撹拌槽に所定値以上の負荷がかかったことを検出する構成としてもよい。
【0015】
この構成により、異物の挟み込みを確実に検出できる。
【0016】
撹拌装置であって、前記前記挟み込み検出部が所定値以上の負荷を検出した場合、前記撹拌槽の昇降を緊急停止させる緊急停止部を備えた構成としてもよい。
【0017】
この構成により、異物を挟み込みによるトラブルを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の撹拌装置により、撹拌槽を適切な高さに昇降させるとともに、撹拌槽の上昇時に異物を挟み込みによるトラブルを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が上限位置にある図である。
【
図2】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が中間位置にある図である。
【
図3】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置にある図である。
【
図4】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置で横転した図である。
【
図5】本発明の実施例1における撹拌装置の表示部の表示を説明する第1の図である。
【
図6】本発明の実施例1における撹拌装置の表示部の表示を説明する第2の図である。
【
図7】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽保持部を説明する図である。
【
図8】本発明の実施例1における撹拌装置の中間位置ストッパを説明する図である。
【
図9】本発明の実施例1における撹拌装置の上限位置ストッパを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1の撹拌装置について、
図1―
図9を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が上限位置にある図である。
図2は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が中間位置にある図である。
図3は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置にある図である。
図4は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置で横転した図である。
図5は、本発明の実施例1における撹拌装置の表示部の表示を説明する第1の図である。
図6は、本発明の実施例1における撹拌装置の表示部の表示を説明する第2の図である。
図7は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽保持部を説明する図である。なお、
図7においては、撹拌羽根を省略している。
図8は、本発明の実施例1における撹拌装置の中間位置ストッパを説明する図である。
図9は、本発明の実施例1における撹拌装置の上限位置ストッパを説明する図である。
【0021】
実施例1における撹拌装置100は、内部が視認可能な窓部11を側面及び底面に有し、天面が開放された略円筒状の撹拌槽10と、撹拌槽10の側壁上面と密着可能なOリングからなる密着部(図示せず)を一方の面に有した略円形状の蓋部20と、蓋部20の一方の面の密着部より内側に設けた回転又は回動する撹拌羽根23と、蓋部20の他方の面に有した材料投入部21と、撹拌槽10を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる駆動部(図示せず)と、を備えている。撹拌槽10内で撹拌羽根により撹拌された材料は、実施例1においては、後述のように下限位置にて撹拌槽10を横向けに傾斜させてタンク等に排出させる(
図4参照)が、撹拌槽10の底部に設けられた図示しないホースを介して所定のタンクへと導くようにしてもよい。
【0022】
実施例1における撹拌槽10は天面が開放された略円筒形の透明ガラスで構成され、背面及び底面の一部を保護金属で支持する構造を有している。したがって、撹拌槽10の外面のうち保護金属で保護されていない側面のうち正面と底面の大部分が窓部11として機能する。また、撹拌槽10の透明ガラスは、二重ガラスで構成されており、ガラス間に温水を注入して撹拌槽10内の温度を上昇又は維持することができるとともに、冷水を注入して撹拌槽10内の温度を下降又は維持することができる。
【0023】
なお、実施例1においては、窓部11を撹拌槽10の側面及び底面に有する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、側面及び上面に窓部11を有する構成としてもよい。また、実施例1においては、撹拌槽10を天面が開放された略円筒形の透明ガラスで構成するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、天面が開放された略多角柱の透明ガラスで構成してもよいし、多少着色されたガラスで構成してもよい。さらに、ガラスで構成しなくてもよく、合成樹脂やステンレスで構成してもよい。撹拌槽10をステンレスで構成した場合は、蓋部11に内部が視認できる窓部を設けてもよい。
【0024】
また、上限位置から中間位置においては、蓋部20の密着部が撹拌槽10と密着しているため撹拌羽根23を回転又は回動させて撹拌槽10内を撹拌することができるし、撹拌槽10内は真空引きすることができる。但し、蓋部20の密着部が撹拌槽10と密着するには、密着部を構成するOリングが変形するくらい撹拌槽10を蓋部20の密着部に押し付ける必要がある。このため、後述のように、撹拌槽10が上昇して蓋部20の密着部に接触した後、さらに撹拌槽10が上昇して蓋部20を押上げることで撹拌槽10と蓋部20を確実に密着させることができる。
【0025】
なお、実施例1においては、上限位置から中間位置においては、蓋部20が撹拌槽10と密着する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上限位置及び中間位置においてのみ、蓋部20が撹拌槽10と密着する構成としてもよく、少なくとも上限位置及び中間位置においては蓋部20の密着部が撹拌槽10の側壁上面に密着するように構成すればよい。
【0026】
蓋部20は、撹拌槽10の側壁の上面に密着させることができるように、その一方の面(撹拌槽10の天面に接触する面)にゴム製のOリングからなる密着部が蓋部20の周縁全周にわたって設けられている。そして、上限位置から中間位置においては、蓋部20の密着部に撹拌槽10の側壁上面が押し付けられて密着し、蓋部20の一方の面(撹拌槽10の天面に接触する面)に設けられた撹拌羽根23が撹拌槽10内で回転又は回動して投入された材料を撹拌することができる。
【0027】
このように、蓋部20と撹拌槽10とは密着することができるように構成され、密着したまま中間位置から上限位置まで上昇する場合がある。そのため、衣服等が何らかの原因で上昇前に蓋部20と撹拌槽10との間に挟まれてそのまま上昇すると事故につながる恐れがある。そのため、後述のように、蓋部20と撹拌槽10との間に異物が挟み込まれたことを検出する図示しない挟み込み検出部と、挟み込み検出部が異物の挟み込みを検出した場合に撹拌槽10を緊急停止させる図示しない緊急停止部とを備えている。これにより、異物を挟み込んだまま撹拌槽10が上昇することが停止されてトラブルを未然に防止できる。
【0028】
撹拌羽根23を回転又は回動させる回転駆動部22が、蓋部20の他方の面に設けられている。そして、回転駆動部22は、蓋部20と一体になって後述するように、昇降する。
【0029】
撹拌槽10は撹拌槽保持部50(
図7参照)に保持され、この撹拌槽保持部50がレール保持部43に固定されて上下に延びたレール40に沿って、図示しないモータと台形ネジとからなる駆動部が駆動することで昇降することができる。作業員Hは、
図5に示す表示部30に「連続操作」と表示された囲みの中の「上限」と表示されたタッチパネルをタッチすることで上限位置へと撹拌槽10は昇降する。また、同様に「中間」をタッチすることで撹拌槽10は中間位置へと昇降する。さらに、「下限」をタッチすることで下限位置へと撹拌槽10は降下する。
図1に示す撹拌槽10の天面の位置は、床面から1533mmに設定された上限位置であり、作業員Hが窓部11を介して撹拌槽10内を視認して撹拌状態を確認することができる位置としている。また、この上限位置で、撹拌槽10の底部の窓部11からも撹拌槽10内の撹拌状態を確認することができる。
【0030】
なお、実施例1においては、上限位置を床面から撹拌槽10の天面までの距離を1533mmとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、1534mm以上としてもよいし1532mm以下としてもよく、作業員Hが窓部11から撹拌槽10内を視認しやすい位置に設定すればよい。上限位置を変更するには、
図5の「昇降上限位置」を変更するか、後述するように、上限位置ストッパ42(
図9参照)の位置を調整すればよい。
【0031】
図2に示す撹拌槽10の天面の位置は、床面から962mmに設定された中間位置である。この中間位置では、作業員Hが材料投入部21に材料を投入しやすい位置に設定されている。なお、撹拌槽10内は真空引きされている場合があるが、その場合は、材料投入部21のホッパに材料を投入した後、コックを回して撹拌槽10内との境の扉を開ければ、真空により材料が引き込まれる。この後、真空状態を維持するためにコックを逆に回して撹拌槽10内との境の扉を閉めれば撹拌槽10内の真空引き状態が維持される。
【0032】
なお、実施例1においては、中間位置を床面から撹拌槽10の天面までの距離を962mmとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、963mm以上としてもよいし961mm以下としてもよく、作業員Hが材料投入部21に材料を投入しやすい位置に設定すればよい。中間位置を変更するには、
図5の「昇降中間位置」を変更すればよい。
【0033】
図3に示す撹拌槽10の天面の位置は、床面から622mmに設定された下限位置である。この下限位置では、撹拌槽10の天面は開放されて撹拌槽10内を目視することができる。つまり、蓋部20は駆動部22とともに、中間位置ストッパ41(
図8参照)により中間位置に留められ、下限位置に下降することはない。これにより、撹拌槽10の天面は蓋部20の密着を解除されて開放される。
【0034】
なお、実施例1においては、下限位置を床面から撹拌槽10の天面までの距離を622mmとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、623mm以上としてもよいし621mm以下としてもよく、作業員Hが撹拌槽10内を目視や洗浄しやすい位置に設定すればよい。下限位置を変更するには、
図5の「昇降下限位置」を変更すればよい。
【0035】
また、
図4に示すように、下限位置においては、撹拌槽10を横向けに傾斜させることができ、撹拌槽10内を洗浄してカス等を排出することができる。また、洗浄水を撹拌槽10内に入れて洗浄することもできる。
【0036】
下限位置にある撹拌槽10を中間位置に上昇させる場合、表示部30のタッチパネルに「連続操作」と表示された囲みの中の「中間」(
図5参照)という表示されたところをタッチすることで、撹拌槽10は上昇し中間位置に達する。そして中間位置で一旦停止させることができる。このとき、撹拌槽10の上昇中に蓋部20との距離が所定範囲内になったときに上昇速度を減速させる。これにより、撹拌槽10がガラスで構成されている場合に勢いよく蓋部20に衝突してガラスが割れることを防止することができる。
【0037】
上昇速度を減速させるた
めの所定範囲は、実施例1においては20mmに設定しているが、
図5に示す「蓋接触付近速度変更距離」の値を設定することで変更できる。また、減速時の速度は「蓋接触時上昇速度」の値を設定することで設定できる。
【0038】
また、上昇する撹拌槽10と蓋部20との間に指や衣類を挟んで怪我をしたり、衣類を破損したりしないように、所定値以上の負荷を検出した場合に挟み込みを検出する図示しない挟み込み検出部と、挟み込み検出部が異物の挟み込みを検出した場合に撹拌槽20を緊急停止させるように制御する緊急停止部を備えている。実施例1においては、所定値以上の負荷を検出するために挟み込み検出部が撹拌槽10の上昇時におけるトルクの値を監視している。そして、予め定められた所定値以上のトルクを検出することで異物の挟み込みを検出する。このトルクの所定値は、
図5の「蓋接触下トルクリミット」の値を設定することで設定することができる。
【0039】
また、前述したように、蓋部20と撹拌槽10とが密着したまま中間位置から上限位置まで上昇する場合にも同様に挟み込み検出部が機能する。中間位置から上限位置へ撹拌槽10が上昇するときのトルクの所定値は、撹拌槽10が下限位置から中間位置に上昇するときの所定値と同じでもよいし、別々に設定するようにしてもよい。
【0040】
仮に、上昇する撹拌槽10と蓋部20との間に指や衣類などの異物を挟んだ場合、
図6に示すように、「Torque Limit ON」の表示とともに、緊急停止部により撹拌槽10の上昇が停止されて、怪我をしたり衣類を破損したりするトラブルを未然に防止する。
【0041】
また、撹拌槽10が蓋部20に接触した後、撹拌槽10をさらに上昇させて蓋部20を10mm程度押上げる。このときの上昇速度は、
図5に示す「蓋接触時上昇速度」の値を設定することで設定できる。接触した後、さらに押し上げることで、撹拌槽10の側壁上面と蓋部20の密着部とを密着させることができる。撹拌槽10と蓋部20とを密着させることで、中間位置でも撹拌羽根23が撹拌槽10内に収納されるため回転又は回動させて撹拌することができる。また、真空引きすることもできる。
【0042】
なお、実施例1においては、撹拌槽10が蓋部20に接触した後、撹拌槽10をさらに上昇させて蓋部20を10mm程度押上げるように構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、20mm程度押し上げるようにしてもよいし、5mm程度であってもよい。少なくとも蓋部20の密着部と撹拌槽10の側壁上面とが密着するようにすればよい。
【0043】
中間位置から上限位置に上昇させる場合、表示部30のタッチパネルに「連続操作」と表示された囲みの中の「上限」(
図5参照)と表示されたところをタッチすることで、撹拌槽10は上昇し上限位置に達する。このとき、撹拌槽10の上昇に伴い、撹拌槽10は蓋部20と密着したまま、蓋部20や回転駆動部22を保持している回転駆動部保持部60を撹拌槽保持部50が押上げて、撹拌槽10、蓋部20、及び回転駆動部22が一体となって上限位置まで上昇する(
図8参照)。つまり、撹拌槽駆動部が駆動するのは、撹拌槽10を保持した撹拌槽保持部50のみであって、蓋部20や回転駆動部22を保持した回転駆動部保持部60は、撹拌槽10を保持した撹拌槽保持部50により押し上げられる。これにより、撹拌槽10と蓋部20とは密着状態を維持することができる。
【0044】
撹拌槽10の昇降速度は、表示部30のタッチパネルに「昇降運転速度(通常)」と表示された値を変更することにより変更できる。具体的には、「昇降運転速度(通常)」をタッチするとテンキーがポップアップされるので数字を入力する。
【0045】
次に、蓋部20及び回転駆動部22の上限位置及び中間位置での位置決めについて
図7-
図9を参照して詳細に説明する。
図7においては、撹拌羽根部23の記載を省略している。ここで、
図8及び
図9は、背面側からみた図である。前述したように、台形ネジとモータからなる図示しない撹拌槽駆動部が昇降させるのは、撹拌槽10を保持した撹拌槽保持部50である。これにより、撹拌槽保持部50が保持している撹拌槽10を昇降させることができる。また、蓋部20及び回転駆動部22は回転駆動部保持部60が保持している。
【0046】
また、撹拌槽10と撹拌槽保持部50が中間位置及び下限位置にあるとき、回転駆動部保持部60はレール保持部43に固定された中間位置ストッパ41に回転駆動部保持部60下部の中間位置ストッパブロック61が接触して中間位置に停止し、これ以上、下降することができない。
【0047】
撹拌槽保持部50が下限位置から中間位置に上昇すると、撹拌槽保持部50の押上げ部51が回転駆動部保持部60の押上げ部対応ブロック63を少し押し上げることとなる。そして、撹拌槽10の側壁上面は蓋部20の密着部に密着する。次に、撹拌槽保持部50が中間位置から上限位置に上昇するとき、撹拌槽保持部50の押上げ部51が回転駆動部保持部60の押上げ部対応ブロック63を押し上げることで、撹拌槽10、蓋部20、及び回転駆動部22が一体となって上昇する。撹拌槽10が上限位置まで上昇すると、回転駆動部保持部60に固定された上限位置ストッパブロック62が上限ストッパ42と接触して停止する。そして、撹拌槽10はこれ以上上昇することはできない。
【0048】
撹拌槽保持部50が上限位置から下降するとき、撹拌槽10と蓋部20は密着したまま、撹拌槽保持部50が保持している撹拌槽10も下降を始める。つまり、撹拌槽保持部50の押上げ力が解除された回転駆動部保持部60は、撹拌槽保持部50とともに下降し、同時に蓋部10及び回転駆動部22も一緒に下降する。撹拌槽保持部50が中間位置まで下降して停止すると、レール保持部43に支持される中間位置ストッパ41に、回転駆動部保持部60に固定された中間位置ストッパブロック61が接触して、これ以上、下降することができなくなる。
【0049】
撹拌槽保持部50が中間位置からさらに下降すると、蓋部20と撹拌槽10の側壁上面の密着が解除されて蓋部20及び回転駆動部22は中間位置に留まったまま、撹拌槽10と撹拌槽保持部50のみが下限位置まで下降することで、撹拌槽10と蓋部20の密着は解除される。撹拌槽10が下限位置まで下降して蓋部20と分離されることで、撹拌槽10内の洗浄を容易に行うことができる。そして、撹拌羽根23は撹拌槽10から露出しているため撹拌羽根23の洗浄も容易である。
【0050】
このように、実施例1においては、
液体又は液体と固形物の混合体とを撹拌する撹拌装置であって、
天面が開放された撹拌槽と、
前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、
前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる撹拌槽駆動部と、
前記蓋部は、前記撹拌槽に支持されて上限位置と中間位置の間でのみ昇降し、前記蓋部が下限位置に降下することを防止する蓋部中間位置停止部と、
上昇中の前記撹拌槽と前記蓋部との間における異物の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、を備えたことを特徴とする撹拌装置により、撹拌槽を適切な高さに昇降させるとともに、撹拌槽の上昇時に異物を挟み込みによるトラブルを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明における撹拌装置により、液体又は液体と固形物の混合体を撹拌する分野に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10:撹拌槽 11:窓部 20:蓋部 21:材料投入部 22:回転駆動部 23:撹拌羽根 30:表示部 40:レール 41:中間位置ストッパ 42:上限位置ストッパ 43:レール保持部 50:撹拌槽保持部 51:押上げ部 60:回転駆動部保持部 61:中間位置ストッパブロック 62:上限位置ストッパブロック 63:押上げ部対応ブロック 100:撹拌装置
【要約】 (修正有)
【課題】撹拌槽を適切な高さに昇降させるとともに、撹拌槽の上昇時に異物を挟み込みによるトラブルを防止することを課題とする。
【解決手段】液体又は液体と固形物の混合体とを撹拌する撹拌装置であって、天面が開放された撹拌槽10と、前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部20と、前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる撹拌槽駆動部と、前記蓋部は、前記撹拌槽に支持されて上限位置と中間位置の間でのみ昇降し、前記蓋部が下限位置に降下することを防止する蓋部中間位置停止部と、上昇中の前記撹拌槽と前記蓋部との間における異物の挟み込みを検出する挟み込み検出部と、を備えたことを特徴とする撹拌装置100とした。
【選択図】
図1