(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】通信システム、データ送信装置、通信装置、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 76/15 20180101AFI20250123BHJP
H04W 4/42 20180101ALI20250123BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20250123BHJP
H04W 28/04 20090101ALI20250123BHJP
H04W 72/1273 20230101ALI20250123BHJP
B61L 25/06 20060101ALI20250123BHJP
B60L 15/42 20060101ALI20250123BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H04W76/15
H04W4/42
H04W4/44
H04W28/04 110
H04W72/1273
B61L25/06 Z
B60L15/42
H04L1/00 B
(21)【出願番号】P 2019224594
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 丞
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 憲吾
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-038242(JP,A)
【文献】特開2019-004418(JP,A)
【文献】特開2008-160204(JP,A)
【文献】特開2003-152627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0198715(US,A1)
【文献】国際公開第2014/045402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
B60L 15/42
B61L 3/12
B61L 25/06
H04L 1/00
H04L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一編成の中に複数の車両を有する移動体に対して、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置のデータを送信する通信システムであって、
前記複数の車両には、前記データ送信装置から送信されたデータを受信する受信部がそれぞれ設けられ、
それぞれの前記受信部で受信された互いに異なるデータは合成され、
前記データ送信装置は、前記移動体の前記経路の走行中に、前記複数の車両のそれぞれの前記受信部に対して、互いに異なるデータを送信する、通信システム。
【請求項2】
一編成の中に複数の車両を有する移動体に対して、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置のデータを送信する通信システムであって、
前記複数の車両には、前記データ送信装置から送信されたデータを受信する受信部がそれぞれ設けられ、
前記データ送信装置は、前記複数の車両のそれぞれの前記受信部に対して、互いに異なるデータを送信し、
前記データ送信装置は、一の車両の前記受信部に対して所定のデータを送信した後、他の車両の前記受信部に対し、前記所定のデータの再送分のデータを送信する、通信システム。
【請求項3】
前記データ送信装置は、送信対象となる全データを複数のデータグループに分けて、それぞれの前記データグループを互いに異なる車両の前記受信部へ送信する、請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記データ送信装置は、
前記移動体の前記受信部が設けられた車両数を取得し、
取得した前記車両数に応じて、前記複数の車両のそれぞれの前記受信部に対してどのようにデータを配分するかを調整する、請求項1~3の何れか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記データ送信装置は、
前記移動体の前記受信部間の距離を取得し、
取得した前記距離に応じて、前記複数の車両のぞれぞれの前記受信部に対してどのようにデータを配分するかを調整する、請求項1~4の何れか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記データ送信装置は、
前記移動体の速度を取得し、
取得した前記速度に応じて、前記複数の車両のぞれぞれの前記受信部に対してどのようにデータを配分するかを調整する、請求項1~5の何れか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記データ送信装置は、送信対象となる全データの総量に応じて、前記複数の車両のぞれぞれの前記受信部に対してどのようにデータを配分するかを調整する、請求項1~6の何れか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記データ送信装置の送信対象となるデータは、前記経路に設けられたケーブルの温度、電流、電圧、振動、及び部分放電の少なくとも一つの項目の情報を有する、請求項1~7の何れか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
一編成の中に複数の車両を有する移動体の経路に設けられ、前記移動体の前記経路の走行中に、前記移動体にデータを送信するデータ送信装置であって、
前記移動体の前記複数の車両のそれぞれに設けられた複数の受信部に対して、互いに異なるデータを送信
し、
一の車両の前記受信部に対して所定のデータを送信した後、他の車両の前記受信部に対し、前記所定のデータの再送分のデータを送信する、データ送信装置。
【請求項10】
一編成の中に複数の車両を有する移動体に設けられ、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置からのデータを前記移動体の前記経路の走行中に受信する通信装置であって、
前記複数の車両に設けられ、互いに異なるデータを受信する複数の受信部と、
それぞれの前記受信部で受信した互いに異なる前記データを合成するデータ合成部と、を備える、通信装置。
【請求項11】
一編成の中に複数の車両を有する移動体に対して、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置のデータを前記移動体の前記経路の走行中に送信する通信方法であって、
前記複数の車両に、前記データ送信装置から送信されたデータを受信する受信部がそれぞれ設けられた前記移動体
が情報を受信
し、それぞれの前記受信部で受信された互いに異なるデータを合成する受信ステップと、
前記情報に基づいて、前記複数の車両のそれぞれの前記受信部に対して、互いに異なるデータを送信する送信ステップと、を備える、通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、通信システム、データ送信装置、通信装置、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信システムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。この通信システムでは、移動体が通過する経路の地中のデータ送信装置からのデータを受け取るため、車両に受信装置を設けている。この車両は、データ送信装置上の経路を走行することで、受信装置にてデータ送信装置からのデータを受け取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような通信システムでは、経路の状況を把握するために、検査用の車両を用いて 特別な検査を行わなくてはいけなかった。更に、車両は、データ送信装置からのデータを漏れなく受信するために、速度を制限した状態で移動する必要があった。この点、他の車両も経路を通過する場合、これらの通過状況も考慮しなくてはならなくなる。また、作業者が経路の状況を確認しようとする場合、距離が長すぎて非常に手間がかかるという問題がある。また、車両に搭載する受信装置の性能を向上させて、受信速度を上げる場合、コストが増大するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、車両の速度を低減することなく、十分な容量のデータを簡易な構成でやりとりすることができる、通信システム、データ送信装置、通信装置、及び通信方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る通信システムは、一編成の中に複数の車両を有する移動体に対して、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置のデータを送信する通信システムであって、複数の車両には、データ送信装置から送信されたデータを受信する受信部がそれぞれ設けられ、データ送信装置は、複数の車両のそれぞれの受信部に対して、互いに異なるデータを送信する。
【0007】
本発明の一形態に係るデータ送信装置は、一編成の中に複数の車両を有する移動体の経路に設けられ、当該移動体にデータを送信するデータ送信装置であって、移動体の複数の車両のそれぞれに設けられた複数の受信部に対して、互いに異なるデータを送信する。
【0008】
本発明の一形態に係る通信装置は、一編成の中に複数の車両を有する移動体に設けられ、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置からのデータを受信する通信装置であって、複数の車両に設けられ、互いに異なるデータを受信する複数の受信部と、それぞれの受信部で受信した互いに異なるデータを合成するデータ合成部と、を備える。
【0009】
本発明の一形態に係る通信方法は、一編成の中に複数の車両を有する移動体に対して、当該移動体の経路に設けられたデータ送信装置のデータを送信する通信方法であって、複数の車両に、データ送信装置から送信されたデータを受信する受信部がそれぞれ設けられた移動体から情報を受信する受信ステップと、情報に基づいて、複数の車両のそれぞれの受信部に対して、互いに異なるデータを送信する送信ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態によれば、移動体の速度を低減することなく、十分な容量のデータを簡易な構成でやりとりすることができる、通信システム、データ送信装置、通信装置、及び通信方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るデータ送信装置、通信装置、及び通信システムを示す概略構成図である。
【
図2】通信システムのブロック構成を示すブロック構成図である。
【
図3】データ送信装置によるデータの送信状況を示す表である。
【
図4】各車両の受信部に対して、データ送信装置がどのようにデータを送信するかを示す模式図である。
【
図5】データ調整部によって調整されたデータの送信態様の他の例を示す模式図である。
【
図6】データ調整部によって調整されたデータの送信態様の他の例を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る通信方法を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に係る通信方法を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る通信方法を示すフローチャートである。
【
図10】移動体の進行態様と、通信領域との位置関係を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るデータ送信装置100、通信装置150、及び通信システム200を示す概略構成図である。通信システム200は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1に対して、当該移動体1の経路3に設けられたデータ送信装置100のデータを送信するシステムである。また、データ送信装置100は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1の経路3に設けられ、当該移動体1にデータを送信する装置である。通信装置150は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1に設けられ、当該移動体1の経路3に設けられたデータ送信装置100からのデータを受信する装置である。
【0014】
本実施形態では、移動体1として、新幹線などの電車を例示している。運転席が設けられた車両2(先頭車両)に対して、複数の車両2を順次連結することによって、一編成の電車が構成される。この場合、電車を走行させるレールが経路3となる。
【0015】
通信装置150は、複数の受信部10を有する。複数の車両2には、データ送信装置100から送信されたデータを受信する受信部10がそれぞれ設けられる。なお、本実施形態では、説明を容易とするために先頭の車両2から順に、三つの受信部10が設けられているものとする。以降の説明では、先頭の車両2を「車両2A」と称し、当該車両2Aに設けられている受信部10を「受信部10A」と称する場合がある。また、先頭から二番目の車両2を「車両2B」と称し、当該車両2Bに設けられている受信部10を「受信部10B」と称する場合がある。また、先頭から三番目の車両2を「車両2C」と称し、当該車両2Cに設けられている受信部10を「受信部10C」と称する場合がある。
【0016】
なお、移動体1は、複数の車両2を有するものであれば、電車に限定されるものではなく、例えば、先頭車両に対して、複数の貨物用車両が連結されたトラックなどの輸送車であってもよい。この場合、輸送車を走行させる道路が経路3となる。
【0017】
データ送信装置100は、経路3の所定の位置に設けられる。ここでは、データ送信装置100は、レール下の地中に設けられている。なお、データ送信装置100が経路3のどの位置に設けられるかは特に限定されず、レール近くの柱などの構造物に取り付けられてもよい。データ送信装置100には、通信可能な領域である通信領域DEが設定されている。データ送信装置100は、移動体1と共に移動してきた受信部10のうち、通信領域DEに入って来たものに対して、データを送信することができる。本実施形態では、移動体1の移動に伴って、受信部10A、受信部10B、受信部10Cの順で通信領域DEに入って行き、受信部10A、受信部10B、受信部10Cの順で通信領域DEから出て行く。従って、データ送信装置100は、受信部10A、受信部10B、受信部10Cの順でデータを送信する。
【0018】
次に、
図2を参照して、通信システム200のブロック構成について説明する。
図2は、通信システム200のブロック構成を示すブロック構成図である。
図2に示すように、通信システム200は、前述のデータ送信装置100と、前述の通信装置150と、を備える。
【0019】
データ送信装置100は、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対して、互いに異なるデータを送信する装置である。データ送信装置100は、通信部21と、パラメータ取得部22と、データ調整部23と、記憶部24と、を備える。
【0020】
通信部21は、通信装置150との間で通信を行うことによって、通信装置150へ情報を送信すると共に、通信装置150からの情報を受信する。通信部21は、データ調整部23によって設定された送信態様にて、データを送信する。
【0021】
パラメータ取得部22は、データ送信に影響を及ぼすパラメータの情報を取得する。パラメータ取得部22は、通信部21にて受信した通信装置150の情報から、当該パラメータの情報を取得する。具体的に、パラメータ取得部22は、パラメータとして、移動体1の受信部10が設けられた車両数、移動体1の受信部10間の距離、及び移動体1の速度を取得する。また、パラメータ取得部22は、記憶部24に記憶されたデータを読み出すことにより、送信対象となる全データの総量をパラメータとして取得する。
【0022】
データ調整部23は、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整する。ここで、データ送信装置100が一の受信部10に対して複数のデータを送付したとしても、全てのデータについてのデータ送信が成功するわけではなく、一部のデータについてはデータ送信が失敗する。従って、データ送信装置100は、データ送信が失敗したデータについては、再送を行う。例えば、
図3の表に示すように、「データ1」から「データn」の合計n個のデータが送信されたものとする。これに対し、「Ack」と示されたものは送信が成功したデータであり、「No Ack」と示されたものは送信が失敗したデータである。従って、データ送信装置100は、「No Ack」に対応するデータ(例えばデータX、データn-1、データn)を、後に再送する。また、送信が失敗した複数のデータについて最送した場合も、全てのデータについての送信が成功するわけではないため、送信に再度失敗したデータについて、更に再送を行う必要がある。このように、繰り返しの再送を行うことで、再送分のデータの数を徐々に減らしてゆき、最終的に全てのデータの送信を完了する。
【0023】
これに対し、データ調整部23は、どのタイミングでデータの再送を行うか、調整する。データ調整部23は、送信を失敗したものとは異なる受信部10に対してデータを再送してもよい。この場合、通信部21は、一の車両2の受信部10に対して所定のデータを送信した後、他の車両2の受信部10に対し、所定のデータの再送分のデータを送信する。
【0024】
図4を参照して、データ調整部23によって調整されたデータの送信態様について説明する。
図4は、各車両2A,2B,2Cの受信部10A,10B,10Cに対して、データ送信装置100がどのようにデータを送信するかを示す模式図である。「車両2A・受信部10A」に対応する棒グラフは、車両2Aの受信部10Aに対して送信されるデータの内容を示す。なお、当該棒グラフは、上から下に向かって時間が進行するものとする。なお、本明細書では、複数のデータの集合を「データグループ」と称する。
【0025】
図4に示す例においては、データ調整部23は、全データを分けることなく、各データに対応する番号に応じて順次送信し、全てのデータの一回目の送信が終了したら、送信が失敗したデータについて、再送を行う設定としている。なお、ここでは、データを複数グループに分けていないため、全データが「データグループ1」に属するものとして説明する。また、データデータグループ1において送信が失敗したデータの集合を「再送データグループ1」とする。
【0026】
このような設定により、データ送信装置100は、受信部10Aに対してデータグループ1のデータを順次送信する。ここで、受信部10Aが受信可能なデータ容量は、データグループ1の全容量より少ない。よって、データ送信装置100は、送信可能な数のデータ(ここでは、全体の66%のデータ)を車両2Aの受信部10Aに送信する。次に、データ送信装置100は、残りのデータ(全体の34%のデータ)を車両2Bの受信部10Bに送信する。ここで、車両2Bの受信部10Bには、受信可能なデータ容量に余力がある。従って、データ送信装置100は、再送データグループ1について、1回目の再送を行う。なお、車両2Bの受信部10Bの残りのデータ容量は、1回目の再送データグループ1のデータ容量よりも少ない。よって、データ送信装置100は、残りの1回目の再送データグループ1のデータを車両2Cの受信部10Cに送信する。データ送信装置100は、1回目の再送で失敗した複数のデータによる再送データグループ1について、車両2Cの受信部10Cに対して二回目の再送を行う。データ送信装置100は、当該再送グループ1の再送を複数回(n回)繰り返すことで、全てのデータの送信を完了する。なお、以降の説明において、「再送グループを再送する」と称した場合は、特に説明の無い場合、再送を複数回繰り返すことで、全てのデータの送信を完了させることを意味するものとする。
【0027】
また、データ調整部23は、送信対象となる全データを複数のデータグループに分けて、それぞれのデータグループを互いに異なる受信部10へ送信するように設定してよい。この場合、通信部21は、複数に分けられたデータグループを互いに異なる車両2の受信部10へ送信する。データ調整部23は、送信を失敗したものと同じ受信部10に対してデータを再送するように設定してよい。
【0028】
図5を参照して、データ調整部23によって調整されたデータの送信態様の他の例について説明する。
図5に示す例においては、データ調整部23は、受信部10A,10B,10Cの数に応じて、送信対象となる全データを三つのデータグループ1,2,3に分ける。また、データ調整部23は、データグループ1,2,3を送信しても、各受信部10A,10B,10Cのでーた容量が残るようにし、残った分の容量に対し、再送データグループ1,2,3を再送する。
【0029】
このような設定により、データ送信装置100は、受信部10Aに対してデータグループ1のデータを送信する。そして、データ送信装置100は、受信部10Aに対して再送データグループ1を再送する。次に、データ送信装置100は、受信部10Bに対してデータグループ2のデータを送信する。そして、データ送信装置100は、受信部10Bに対して再送データグループ2を再送する。次に、データ送信装置100は、受信部10Cに対してデータグループ3のデータを送信する。そして、データ送信装置100は、受信部10Cに対して再送データグループ3を再送する。
【0030】
データ調整部23は、一編成の移動体1が有する全ての受信部10の容量だけでは、送信対象となるデータを全て送信することができない場合、全データを複数のデータグループに分けて、複数編成の移動体1の受信部10に対して、それぞれのデータグループを送信してよい。なお、データ調整部23は、送信を失敗したものと同じ編成の受信部10に対してデータを再送するように設定してよい。
【0031】
図6を参照して、データ調整部23によって調整されたデータの送信態様の他の例について説明する。
図6に示す例においては、データ調整部23は、送信対象となる全データの容量、及び一編成あたりの移動体1の全受信部10の合計のデータ容量に応じて、送信対象となる全データを三つのデータグループ1,2,3に分ける。また、データ調整部23は、データグループ1,2,3を送信しても、編成1,2,3のデータ容量が残るようにし、残った分の容量に対し、再送データグループ1,2,3を再送する。なお、各編成1,2,3の複数の受信部10に対するデータの送信態様は、
図4及び
図5に示す例と同趣旨である。
【0032】
データ調整部23は、パラメータ取得部22で取得した車両数に応じて、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整する。本実施形態では、移動体1は三つの受信部10A,10B,10Cを有している。従って、データ調整部23は、三つの受信部10A,10B,10Cに対して、どのようにデータを配分するかを調整する。データ調整部23は、パラメータ取得部22で取得した受信部10間の距離に応じて、複数の車両2のぞれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整する。すなわち、受信部10間の距離が長いほど、受信部10が通信領域DEに入ってきた後、次の受信部10が通信領域DEに入ってくるまでの時間が長くなる。データ調整部23は、パラメータ取得部22で取得した移動体1の速度に応じて、複数の車両2のぞれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整する。移動体1の速度が速いほど、一つあたりの受信部10が通信領域DEに滞在する時間が長くなる。データ調整部23は、送信対象となる全データの総量に応じて、複数の車両2のぞれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整する。
【0033】
記憶部24は、各種情報を記憶する部分である。記憶部24は、データ送信装置100の送信対象となるデータを記憶する。送信対象となるデータは、経路3に設けられたケーブルの温度、電流、電圧、振動、及び部分放電の少なくとも一つの項目の情報を有する。これらの情報は、所定の期間(例えば1日ごと)で更新される。なお、経路3には、上述の項目の情報を検出するセンサ(不図示)が設けられている。センサは、取得した検出結果を記憶部24に送信する。これにより、記憶部24は、最新の情報を記憶する。
【0034】
次に、通信装置150のブロック構成について説明する。通信装置150は、上述の受信部10と、パラメータ送信部11と、記憶部12と、データ合成部13と、を備える。なお、記憶部12、及びデータ合成部13は、移動体1が有する複数の車両2のうちの何れかに設けられていればよく、例えば先頭の車両2に設けられてよい。
【0035】
記憶部12は、データ送信装置100に対して送信するための、移動体1に関するパラメータを記憶する。受信部10A,10B,10Cは、記憶部12に記憶されたパラメータをデータ送信装置100へ送信する機能を有する。なお、パラメータ送信部11が送信するパラメータは、上述のパラメータ取得部22が取得するパラメータのうちの移動体1に関するものである。
【0036】
データ合成部13は、それぞれの受信部10で受信した互いに異なるデータを合成する。例えば、
図4に示す例では、データ合成部13は、受信部10Aにて受信したデータグループ1(送信が成功したデータ)と、受信部10Bにて受信したデータグループ1(送信が成功したデータ)と、受信部10Bにて受信した再送データグループ1、及び受信部10Cにて受信した再送データグループ1を合成する。
図5に示す例では、データ合成部13は、受信部10A,10B,10Cで受信したデータグループ1,2,3(送信が成功したデータ)と、受信部10A,10B,10Cで受信した再送データグループ1,2,3と、を合成する。なお、
図6に示す例の場合、編成1,2,3の何れかのデータ合成部13が、各編成1,2,3で取得したデータグループ1,2,3及び再送データグループ1,2,3を合成する。
【0037】
次に、
図7~
図9を参照して、本発明の実施形態に係る通信方法について説明する。
図7~
図9は、本発明の実施形態に係る通信方法を示すフローチャートである。ここでは、データ送信装置100が、
図4に示す送信態様にて、車両2Aの受信部10A、車両2Bの受信部10B、及び車両2Cの受信部10Cへデータを送信する場合のフローチャートの一例について説明する。この通信方法は、一編成の中に複数の車両2A,2B,2Cを有する移動体1の受信部10A,10B,10Cに対して、当該移動体1の経路に設けられたデータ送信装置100のデータを送信する方法である。
【0038】
図7に示すように、まず、データ送信装置100が、データの送信先を探索する。データ送信装置100は、周囲に対して通信の確立を宣言する信号を一定の時間間隔で送信する(ステップS100)。通信領域DEの範囲内に受信部10Aが到達していない場合、信号は受信されないが(破線で示す矢印)、通信領域DEの範囲に受信部10Aが到達したら、信号が受信部10Aに受信される(実線で示す矢印)。これにより、データ送信装置100は、通信領域DEの範囲内に受信部10Aが存在することを把握する。次に、データ送信装置100は、受信部10Aとの間で通信を確立する。ここでは、データ送信装置100は、受信部10Aからの接続要求信号を受信し(ステップS110)、接続が実行されたことを示す応答信号を受信部10Aへ送信する(ステップS120)。これによって、データ送信装置100と受信部10Aとの間の通信が確立する。
【0039】
次に、データ送信装置100は、データ送信計画を行う。ここでは、データ送信装置100は、複数の車両2A,2B,2Cに、データ送信装置100から送信されたデータを受信する受信部10A,10B,10Cがそれぞれ設けられた移動体1から情報を受信する受信ステップを実行する。具体的に、データ送信装置100は、受信部10Aからパラメータの情報と共に、データのリクエスト信号を受信する(ステップS130)。これにより、データ送信装置100は、データ送信計画を実行する(ステップS140)。ステップS140では、データ送信装置100のデータ調整部23は、受信したパラメータ、及び送信対象となるデータ容量に基づいて、
図4で説明したようなデータの送信態様の調整を行う。これにより、データ送信装置100は、データをどのように送信するかの計画を行う。その後、データ送信装置100は、データ送信計画が完了したことを示す信号を受信部10Aへ送信する(ステップS150)。
【0040】
次に、データ送信装置100は、受信部10Aに対し、データグループ1の一部についてのデータ送信を行う。データ送信装置100は、受信部10Aへのデータ送信(ステップS160)を決められた回数だけ繰り返し行う。これにより、データ送信装置100の受信部10Aに対するデータ送信が完了する。
【0041】
次に、データ送信装置100は、受信部10Bの探索及び通信確立を行う。データ送信装置100は、ステップS100と同様に、周囲に対して通信の確立を宣言する信号を一定の時間間隔で送信し(ステップS170)通信領域DEの範囲内に存在する受信部10Bが存在することを把握する。次に、データ送信装置100は、受信部10Bからの接続要求信号を受信し(ステップS180)、接続が実行されたことを示す応答信号を受信部10Bへ送信する(ステップS190)。これによって、データ送信装置100と受信部10Bとの間の通信が確立する。
【0042】
次に、データ送信装置100は、受信部10Bに対するデータ送信を行う。データ送信装置100は、受信部10Bからデータのリクエスト信号を受信する(ステップS200)。データ送信装置100は、受信部10Bに対し、データグループ1の残りについてのデータ送信を行う(ステップS210)と共に、再送データグループ1の再送を行う(ステップS220)。これにより、データ送信装置100の受信部10Bに対するデータ送信が完了する。
【0043】
次に、データ送信装置100は、受信部10Cの探索及び通信確立を行う。データ送信装置100は、ステップS100と同様に、周囲に対して通信の確立を宣言する信号を一定の時間間隔で送信し(ステップS230)通信領域DEの範囲内に存在する受信部10Cが存在することを把握する。次に、データ送信装置100は、受信部10Cからの接続要求信号を受信し(ステップS240)、接続が実行されたことを示す応答信号を受信部10Cへ送信する(ステップS250)。これによって、データ送信装置100と受信部10Cとの間の通信が確立する。
【0044】
次に、データ送信装置100は、受信部10Cに対するデータ送信を行う。データ送信装置100は、受信部10Cからデータのリクエスト信号を受信する(ステップS260)。データ送信装置100は、受信部10Cに対し、残りの再送データグループ1の再送を行う(ステップS270)。これにより、データ送信装置100の受信部10Cに対するデータ送信が完了する。以上のように、ステップS160,S210,S220,S270により、情報に基づいて、複数の車両2A,2B,2Cのそれぞれの受信部10A,10B,10Cに対して、互いに異なるデータを送信するステップが実行される。
【0045】
次に、通信装置150が、互いに異なる受信部10A,10B,10Cで受信した互いに異なるデータを合成するデータ合成ステップが実行される(ステップS280)。ここでは、データ合成部13が、ステップS160,S210,S220,S270で受信部10A,10B,10Cが受信したデータを合成する。以上により、
図7~
図9に示すフローチャートが終了する。
【0046】
次に、本実施形態に係る通信システム200の作用・効果について説明する。
【0047】
本実施形態に係る通信システム200は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1に対して、当該移動体1の経路3に設けられたデータ送信装置100のデータを送信する通信システム200であって、複数の車両2には、データ送信装置100から送信されたデータを受信する受信部10がそれぞれ設けられ、データ送信装置100は、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対して、互いに異なるデータを送信する。
【0048】
この通信システム200において、複数の車両2には、データ送信装置100から送信されたデータを受信する受信部10がそれぞれ設けられている。そして、データ送信装置100は、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対して、互いに異なるデータを送信する。この場合、データ送信装置100は、車両の速度が速くて一つの受信部10に全てのデータを送ることができない状態であっても、複数の受信部10に送られたデータの組み合わせによって、結果的に全てのデータが送れていればよい。このように、移動体は、特別な検査のための低速運転などを行う必要はなく、通常運転時にもデータを取得することができる。また、車両に設ける受信部10も、容量の大きい高価なものを用いる必要はない。以上より、移動体1の速度を低減することなく、十分な容量のデータを簡易な構成でやりとりすることができる。
【0049】
データ送信装置100は、一の車両2の受信部10に対して所定のデータを送信した後、他の車両2の受信部10に対し、所定のデータの再送分のデータを送信してよいこの場合、一つの受信部10に対して送信が失敗したデータが存在していても、他の受信部10が再送分のデータを受信できる。例えば、送信の失敗が生じても一つの受信部10で全てのデータを受信しなくてはならない場合、受信部10の性能を高くしたり、通信の性能を高くするなどのコストが高くなる対応をしたり、移動体1の速度を低減させる必要が生じるが、本実施形態のデータ送信装置100では、それらの対策を取る必要無く、全てのデータを容易に送信することができる。
【0050】
データ送信装置100は、送信対象となる全データを複数のデータグループに分けて、それぞれのデータグループを互いに異なる車両の受信部へ送信してよい。この場合、データ送信装置が送るデータの容量が多くても、複数の受信部10へ分配することで、結果として全てのデータを送信することができる。例えば、データの容量が大きくても一つの受信部10で全てのデータを受信しなくてはならない場合、受信部10の性能を高くしたり、通信の性能を高くするなどのコストが高くなる対応をしたり、移動体1の速度を低減させる必要が生じるが、本実施形態のデータ送信装置100では、それらの対策を取る必要無く、全てのデータを容易に送信することができる。
【0051】
データ送信装置100は、移動体1の受信部10が設けられた車両数を取得し、取得した車両数に応じて、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整してよい。この場合、データ送信装置100は、車両数に応じて、適切な送信態様にてデータを送信することができる。
【0052】
データ送信装置100は、移動体1の受信部10間の距離を取得し、取得した距離に応じて、複数の車両2のぞれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整してよい。この場合、データ送信装置100は、移動体1の受信部10間の距離に応じて、適切な送信態様にてデータを送信することができる。
【0053】
データ送信装置100は、移動体1の速度を取得し、取得した速度に応じて、複数の車両2のぞれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整してよい。この場合、データ送信装置100は、移動体1の速度に応じて、適切な送信態様にてデータを送信することができる。
【0054】
データ送信装置100は、送信対象となる全データの総量に応じて、複数の車両2のぞれぞれの受信部10に対するデータの送信態様を調整してよい。この場合、データ送信装置100は、全データの総量に応じて、適切な送信態様にてデータを送信することができる。
【0055】
データ送信装置100の送信対象となるデータは、経路3に設けられたケーブルの温度、電流、電圧、振動、及び部分放電の少なくとも一つの項目の情報を有してよい。これにより、移動体1の受信部10は、移動速度を落として特別な検査を行うことなく、通常運転を行いながら、ケーブルを検査することができる。
【0056】
本実施形態に係るデータ送信装置100は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1の経路3に設けられ、当該移動体1にデータを送信するデータ送信装置100であって、移動体1の複数の車両2のそれぞれに設けられた複数の受信部10に対して、互いに異なるデータを送信する。
【0057】
本実施形態に係る通信装置150は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1に設けられ、当該移動体1の経路3に設けられたデータ送信装置100からのデータを受信する通信装置150であって、複数の車両2に設けられ、互いに異なるデータを受信する複数の受信部10と、それぞれの受信部10で受信した互いに異なるデータを合成するデータ合成部13と、を備える。
【0058】
本実施形態に係る通信方法は、一編成の中に複数の車両2を有する移動体1に対して、当該移動体1の経路3に設けられたデータ送信装置100のデータを送信する通信方法であって、複数の車両2に、データ送信装置100から送信されたデータを受信する受信部10がそれぞれ設けられた移動体1から情報を受信する受信ステップと、情報に基づいて、複数の車両2のそれぞれの受信部10に対して、互いに異なるデータを送信する送信ステップと、を備える。
【0059】
以上のデータ送信装置100、通信装置150、及び通信方法によれば、上述の通信システムと同様な作用・効果を得ることができる。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0061】
上述の実施形態では、先頭の3車両だけに受信部10が設けられていた。しかし、受信部10の数は特に限定されるものではなく、全ての車両2に受信部10を設けることで車両2の数だけ受信部10を設けてよい。
【0062】
また、
図10に示すように、車両2の長さ及び通信領域DEの範囲の広さを考慮して、効率良く受信部10を配置するために、受信部10を設ける車両2間に、受信部10を設けない車両2を配置してもよい。
図10は、移動体1の進行態様と、通信領域DEとの位置関係を模式的に示した図である。
図10に示すように、受信部10Aが通信領域DEから外れるより先に、受信部10Bが通信領域DEに入ってしまう。この場合、通信領域DEに二つも受信部10A,10Bが存在するにも関わらず、一方の受信部にしかデータを送信できないため、他方の受信部の容量が無駄になってしまう。従って、受信部10Bを省略することが好ましい。
【符号の説明】
【0063】
1…移動体、2…車両、3…経路、10…受信部、13…データ合成部、100…データ送信装置、150…通信装置、200…通信システム。