(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】CZ用るつぼ
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20250123BHJP
C30B 15/12 20060101ALI20250123BHJP
C03B 20/00 20060101ALI20250123BHJP
F27B 14/10 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C30B29/06 502B
C30B15/12
C03B20/00 H
F27B14/10
(21)【出願番号】P 2020129012
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】友国 和樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 吉謙
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017242(JP,A)
【文献】特開2012-066969(JP,A)
【文献】特開2011-088776(JP,A)
【文献】特開2017-095299(JP,A)
【文献】特開2009-298652(JP,A)
【文献】特開2011-121842(JP,A)
【文献】特開2007-269533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/12
C03B 20/00
F27B 14/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法により単結晶シリコンインゴットを育成するためのCZ用るつぼであって、
前記CZ用るつぼは、有底筒状の黒鉛るつぼと、該黒鉛るつぼの内部に配置された有底筒状の石英ガラスるつぼを含み、
前記CZ用るつぼの中心軸における前記黒鉛るつぼの底部の内面と、前記石英ガラスるつぼの底部の外面との間には、前記黒鉛るつぼの底部の内面と前記石英ガラスるつぼの底部の外面とが非接触となる隙間を有
し、
前記石英ガラスるつぼは、円筒状の直胴部と、該直胴部の下端に連続し第一の曲率半径R1を有する第1の湾曲部と、該第1の湾曲部に連続し第二の曲率半径R2を有する第2の湾曲部と、該第2の湾曲部に連続する底部を有するものであり、
前記第一の曲率半径R1と前記第二の曲率半径R2はR1<R2の関係にあり、
前記底部の外面が前記石英ガラスるつぼの中心軸に直交する平坦面形状を有するものであることを特徴とするCZ用るつぼ。
【請求項2】
前記CZ用るつぼの中心軸における前記中心軸方向の前記隙間の高さが0.5mm~5.0mmであることを特徴とする請求項1に記載のCZ用るつぼ。
【請求項3】
前記CZ用るつぼの中心軸に直交する方向の前記隙間の大きさが直径60mm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のCZ用るつぼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という。)により単結晶シリコンを引き上げるためのCZ用るつぼに関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶の製造方法として、CZ法が知られている。特に、半導体電子部品の材料となる単結晶シリコンの多くは、CZ法が、広く工業的に採用されている。CZ法は、石英ガラスるつぼ内に充填した多結晶シリコン等をヒータで溶解した後、このシリコンメルトの表面に種結晶を浸し、シリコンメルトに浸した種結晶と石英ガラスるつぼを回転させつつ種結晶を上方に引き上げることによって種結晶と同一の結晶方位をもつ単結晶を育成する方法である。
【0003】
図7は、上述のCZ法により単結晶を引き上げる際に用いられる引上げ装置を模式的に示した概念図である。
図7に示すように、単結晶引上げ装置10は、引上げ室12と、引上げ室12中に設けられたCZ用るつぼ13と、CZ用るつぼ13の周囲に配置されたヒータ14と、CZ用るつぼ13を回転・昇降させるるつぼ保持軸15及びその回転・昇降機構(図示せず)と、シリコンの種結晶16を保持するシードチャック17と、シードチャック17を引き上げるワイヤ18と、ワイヤ18を回転又は巻き取る巻取り機構(図示せず)を備えて構成されている。また、ヒータ14の外側周囲には断熱材19が配置されている。単結晶シリコン20は、原料のシリコンメルト11からワイヤ18によって引き上げられる。
【0004】
単結晶引上げ装置10内に配置されるCZ用るつぼ13は、シリコンメルト11を収容する有底筒状の石英ガラスるつぼと、石英ガラスるつぼを内部に収容する有底筒状の黒鉛るつぼ(「カーボンサセプター」と呼ばれることもある)から構成される(例えば、特許文献1,2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-17245号公報
【文献】特開2013-139356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
石英ガラスるつぼは、黒鉛るつぼの内部に収容可能な寸法で作製されるが、それぞれの作製誤差等により、石英ガラスるつぼの外面と黒鉛るつぼの内面とが完全に接触するように作製することは困難である。本発明者が鋭意調査を行ったところ、石英ガラスるつぼの外面は黒鉛るつぼの内面の形状に沿うように、凸状の曲面形状とされているが、石英ガラスるつぼの外面と黒鉛るつぼの内面の形状の製造誤差等の個体差によっては、
図8に示すように、石英ガラスるつぼ13Aを黒鉛るつぼ13Bの内部に設置してCZ用るつぼ13としたときに、石英ガラスるつぼ13Aの外面の底部と黒鉛るつぼ13Bの内面とが中心軸において点接触し、石英ガラスるつぼ13Aが不安定となることがわかった。石英ガラスるつぼ13Aが黒鉛るつぼ13B内で揺れると、石英ガラスるつぼ13Aを黒鉛るつぼ13Bの内部で破損する恐れがある。また、単結晶製造時には、シリコンメルトが揺れ、単結晶シリコンの引上げが困難となる湯面振動を引き起こすだけでなく、単結晶シリコンの引上げ時に石英ガラスるつぼ13Aが偏心状態となり、シリコンインゴットへの均一な熱供給が不可能となるため、シリコンインゴットの品質劣化にも繋がる。
【0007】
上記のような問題に対し、石英ガラスるつぼ13Aと黒鉛るつぼ13Bの相性の良いものを選択して組み合わせることで、安定性の良いCZ用るつぼとすることが考えられる。しかしながら、相性の良い石英ガラスるつぼ13Aと黒鉛るつぼ13Bの組合せを試行錯誤的に探すほかないため、非常に効率が悪いばかりでなく、必ずしも好ましい組合せが得られるわけではなかった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、CZ法により単結晶シリコンインゴットを育成するための有底筒状の石英ガラスるつぼが有底筒状の黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、石英ガラスるつぼが安定して自立できるものとなるCZ用るつぼを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、CZ法により単結晶シリコンインゴットを育成するためのCZ用るつぼであって、前記CZ用るつぼは、有底筒状の黒鉛るつぼと、該黒鉛るつぼの内部に配置された有底筒状の石英ガラスるつぼを含み、前記CZ用るつぼの中心軸における前記黒鉛るつぼの底部の内面と、前記石英ガラスるつぼの底部の外面との間には、前記黒鉛るつぼの底部の内面と前記石英ガラスるつぼの底部の外面とが非接触となる隙間を有するCZ用るつぼを提供する。
【0010】
このようなCZ用るつぼによれば、石英ガラスるつぼが黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、点接触とはならず石英ガラスるつぼが安定して自立可能なものとなる。
【0011】
このとき、前記CZ用るつぼの中心軸における前記中心軸方向の前記隙間の高さが0.5mm~5.0mmであるCZ用るつぼとすることができる。
【0012】
これにより、石英ガラスるつぼがより安定して自立可能なものとなる。また、石英ガラスるつぼの変形を有効に抑制可能なものとなる。
【0013】
このとき、前記CZ用るつぼの中心軸に直交する方向の前記隙間の大きさが直径60mm以上であるCZ用るつぼとすることができる。
【0014】
これにより、石英ガラスるつぼがさらに安定して自立可能なものとなり、石英ガラスるつぼの設置が容易なものとなる。
【0015】
このとき、前記石英ガラスるつぼは、円筒状の直胴部と、該直胴部の下端に連続し第一の曲率半径R1を有する第1の湾曲部と、該第1の湾曲部に連続し第二の曲率半径R2を有する第2の湾曲部と、該第2の湾曲部に連続する底部を有するものであり、前記第一の曲率半径R1と前記第二の曲率半径R2はR1<R2の関係にあり、前記底部の外面が前記石英ガラスるつぼの中心軸に直交する平坦面形状を有するものであるCZ用るつぼとすることができる。
【0016】
これにより、石英ガラスるつぼの底部を平坦面とする場合であっても、石英ガラスるつぼの内面の形状にほとんど影響を与えず、CZ法による単結晶シリコンインゴットの育成時の、シリコンメルトの対流状態に与える影響がより小さなものとなる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の単結晶シリコン引き上げ用のCZ用るつぼによれば、石英ガラスるつぼが黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、石英ガラスるつぼが安定して自立可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明に係るCZ用るつぼに使用する石英ガラスるつぼの底部の形状(断面)の例を示す。
【
図3】本発明に係るCZ用るつぼに使用する石英ガラスるつぼの好適例を示す。
【
図4】本発明に係るCZ用るつぼに使用する石英ガラスるつぼの他の好適例を示す。
【
図5】石英ガラスるつぼと黒鉛るつぼの間の隙間の隙間測定冶具の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
上述のように、CZ法により単結晶シリコンインゴットを育成するための有底筒状の石英ガラスるつぼが有底筒状の黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、石英ガラスるつぼが安定して自立できるものとなるCZ用るつぼが求められていた。
【0021】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、CZ法により単結晶シリコンインゴットを育成するためのCZ用るつぼであって、前記CZ用るつぼは、有底筒状の黒鉛るつぼと、該黒鉛るつぼの内部に配置された有底筒状の石英ガラスるつぼを含み、前記CZ用るつぼの中心軸における前記黒鉛るつぼの底部の内面と、前記石英ガラスるつぼの底部の外面との間には、前記黒鉛るつぼの底部の内面と前記石英ガラスるつぼの底部の外面とが非接触となる隙間を有するCZ用るつぼにより、石英ガラスるつぼが黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、石英ガラスるつぼが安定して自立できるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
以下、図面を参照して説明する。
【0023】
まず、CZ法により単結晶シリコンインゴットを育成するためのCZ用るつぼにおいて、有底筒状の石英ガラスるつぼが有底筒状の黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、石英ガラスるつぼが黒鉛るつぼ内部でがたつき、安定しないものとなる原因について、調査を行ったところ、上述のように、石英ガラスるつぼを製造するときの底部の外面形状の製造誤差等の個体差により、石英ガラスるつぼの底部の外面と黒鉛るつぼの底部の内面とが中心軸において点接触するために、石英ガラスるつぼが不安定となることがわかった。そして、CZ用るつぼの中心軸における黒鉛るつぼの底部の内面と、石英ガラスるつぼの底部の外面との間に、黒鉛るつぼの底部の内面と石英ガラスるつぼの底部の外面とが非接触となる隙間を有するものとすることで、上記のような問題が解決できることを見出した。
【0024】
図1に、本発明に係るCZ用るつぼの一例を示す。このCZ用るつぼ1は、有底筒状の黒鉛るつぼ1Bと、黒鉛るつぼの内部に配置された有底筒状の石英ガラスるつぼ1Aを有している。そして、石英ガラスるつぼ1Aが黒鉛るつぼ1B内に設置されたときに、底部5の拡大図に示すように、CZ用るつぼ1の中心軸6における黒鉛るつぼ1Bの底部の内面と、石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面との間に、黒鉛るつぼ1Bの底部の内面と石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面とが非接触となる隙間7を有している。このようなCZ用るつぼ1は、石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面と黒鉛るつぼ1Bの底部の内面とが点接触(
図8)することが回避され、好ましくは、石英ガラスるつぼ1Aの底部の外縁と黒鉛るつぼ1Bの内面とが面接触状態となっているため、石英ガラスるつぼ1Aが黒鉛るつぼ1Bの内部に配置されたときに、安定して自立できるものとなる。
【0025】
このようなCZ用るつぼ1とすることができる限り、石英ガラスるつぼ1Aや黒鉛るつぼ1Bの形状は特に限定されない。
図2に、石英ガラスるつぼ1Aの底部5の形状(断面)の例を示す。
図2に示すように、底部5の断面形状は、(A)凸状、(B)平坦状、(C)凹状のいずれであってもよい。
【0026】
図3に、底部の形状を
図2(B)に示した平坦状の断面形状とした場合の石英ガラスるつぼ1Aを示す。石英ガラスるつぼ1Aの底部5の外面の形状を、石英ガラスるつぼ1Aの中心軸6に直交する平坦面(以下、単に「平坦面」という)5Aとすることで、確実に安定して隙間7を有するCZ用るつぼ1とすることができる。
【0027】
また、
図4に、底部の形状を
図2(C)に示した凹状の断面形状とした場合の石英ガラスるつぼ1Aを示す。石英ガラスるつぼ1Aの底部5の外面の形状を、
図4に示すように、上述の平坦面5Aから凹んだ凹状面(以下、単に「凹状面」という)5Bとすることによっても、隙間7を有するCZ用るつぼとすることができる。この場合は、中心軸6に対称な形状、言い換えると、石英ガラスるつぼ1Aを、底部5の外面側から中心軸6方向に見たときに、凹部の縁が中心軸6を中心とした円形となるような構造とすることが、最も安定する点で好ましい。
【0028】
また、石英ガラスるつぼ1Aとして、さらに、円筒状の直胴部2の下端に連続し第一の曲率半径R1を有する第1の湾曲部3と、該第1の湾曲部3に連続し第二の曲率半径R2を有する第2の湾曲部4とを有し、R1<R2の関係を満たすものとすることが、より好ましい。このような形状の石英ガラスるつぼ1Aは、平坦面5Aや凹状面5Bを形成する場合であっても、石英ガラスるつぼ1Aの内面の形状にほとんど影響を与えない。したがって、CZ法による単結晶シリコンインゴットの育成時の、シリコンメルトの対流状態にもほとんど影響を及ぼさない。
【0029】
なお、第一の曲率半径R1及び第二の曲率半径R2は特に限定されないが、100mm≦R1≦200mm、800mm≦R2≦900mmとすることが好ましい。このようなものであれば、より安定して、シリコンメルトの対流状態の変化や乱れを抑制可能なものとなる。
【0030】
石英ガラスるつぼ1Aの口径は特に限定されないが、本発明では、特に大口径のものとすることが好ましい。例えば、32インチ(約800mm)以上の口径のものとすることができる。
【0031】
なお、黒鉛るつぼ1Bの底部の内面と石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面とが非接触となる隙間7を有するものとするためには、上記のように石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面形状を調整する方法に限られず、黒鉛るつぼ1Bの内面形状を調整することももちろん可能である。単結晶シリコンインゴットを育成するときの熱的な条件への影響が小さい点で、石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面の形状の設定により、隙間7を有するCZ用るつぼ1とすることが好ましい。
【0032】
隙間7の大きさについて、CZ用るつぼ1の中心軸6における中心軸方向の隙間7の高さ(
図1のH)は、0.5mm~5.0mmとすることが好ましい。隙間7の高さHの測定誤差(測定下限)を考慮すると、0.5mm以上とすると安定して隙間7が確保できる。また、単結晶シリコンインゴット育成時に、隙間7に閉じ込められたガスが膨張し隙間7の圧力が上昇する恐れがあるが、Hが5.0mm以下の範囲であれば、隙間7に閉じ込められたガスの膨張の影響を小さくでき、石英ガラスるつぼ1Aの変形を有効に抑制できるCZ用るつぼ1となる。
【0033】
また、中心軸6に直交する方向の隙間の大きさ(
図1のW)は、直径60mm以上とすることが好ましい。このような大きさWとすることで、石英ガラスるつぼ1Aがさらに安定して黒鉛るつぼ1B内に設置され、ガタツキがより抑制されたCZ用るつぼ1となる。また、石英ガラスるつぼの設置が容易になる。
【0034】
ここで、隙間7のサイズ(高さH、大きさW)の見積り方法について説明する。例えば、実際に組み合わせる石英ガラスるつぼ1Aの外面形状と、黒鉛るつぼ1Bの内面形状とを、三次元形状測定機などにより測定し、それぞれのデータを解析することで、隙間7の大きさを見積もることが可能である。
【0035】
また、石英ガラスるつぼ1Aの底部に対し、
図5に示すような隙間測定冶具30と、
図6に示すようなテーパーゲージを用いれば、CZ用るつぼ1の中心軸6における黒鉛るつぼ1Bの底部の内面と、石英ガラスるつぼ1Aの底部の外面との間の隙間7を簡便かつ確実に測定することができる。具体的には、
図5において、曲面が形成されている部分(断面形状部31;ゲージ付き)が、黒鉛るつぼ1Bの内面の断面形状を反映した形状となっている。この断面形状部31を石英ガラスるつぼ1Aの底部5の外面にあてがうことで、隙間測定冶具30の断面形状部31と石英ガラスるつぼ1Aの底部との間に隙間が生じる。この隙間のサイズを測定すれば、隙間の高さHや大きさWの値が容易に取得できる。このとき、
図6に示すような円錐テーパーゲージを隙間に挿入し、円錐テーパーゲージの円錐面を、断面形状部31と石英ガラスるつぼ1Aの外面に接触させて、円錐テーパーゲージの円錐面と断面形状部及び石英ガラスるつぼ1Aの外面との接触位置から、隙間7の高さHを測定することできる。このようにして測定を行えば、熟練を要することなく、極めて簡便かつ正確に、隙間7の高さと直径を測定することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0037】
比較例、実施例として、下記に示すCZ用るつぼを準備し、黒鉛るつぼ内で石英ガラスるつぼががたつくことなく自立するかを評価した。次に、実際にCZ法による単結晶シリコンインゴットの育成を行い、石英ガラスるつぼの変形、結晶化の乱れの程度(単結晶化率)を評価した。この単結晶化率は、投入原料の重量に対する、製品となった単結晶の重量の比率として計算した結果である。なお、比較例1の単結晶化率を基準の1.0とした。
【0038】
(比較例1)
石英ガラスるつぼとして、口径32インチ(約800mm)の直胴部に続く、曲率半径R1=180mmの第1の湾曲部及び曲率半径R2=815mmの第2の湾曲部を有し、底部形状が凸状面のものを用い、中心軸において石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼの間に隙間が存在しない(H=0、W=0)、CZ用るつぼを準備した。
【0039】
(実施例1)
石英ガラスるつぼとして、口径32インチ(約800mm)の直胴部に続く、曲率半径R1=180mmの第1の湾曲部及び曲率半径R2=815mmの第2の湾曲部を有し、底部形状が平坦面のものを用い、石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさがH=10.0mm、W=255mmの、CZ用るつぼを準備した。
【0040】
(実施例2)
石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさをH=0.5mm、W=60mmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件としたCZ用るつぼを準備した。
【0041】
(実施例3)
石英ガラスるつぼとして、口径32インチ(約800mm)の直胴部に続く、曲率半径R1=180mmの第1の湾曲部及び曲率半径R2=815mmの第2の湾曲部を有し、底部形状が凹状面のものを用い、石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさがH=3.0mm、W=70mmの、CZ用るつぼを準備した。
【0042】
(実施例4)
石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさをH=3.0mm、W=140mmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件としたCZ用るつぼを準備した。
【0043】
(実施例5)
石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさをH=3.0mm、W=440mmとしたこと以外は、比較例1と同じ条件としたCZ用るつぼを準備した。
【0044】
(実施例6)
石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさをH=1.0mm、W=30mmとしたこと以外は、実施例3と同じ条件としたCZ用るつぼを準備した。
【0045】
(実施例7)
石英ガラスるつぼの底部と黒鉛るつぼとの間の隙間の大きさをH=5.0mm、W=180mmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件としたCZ用るつぼを準備した。
【0046】
表1に示すとおり、実施例のように、黒鉛るつぼの底部の内面と石英ガラスるつぼの底部の外面との間に隙間を有するCZ用るつぼであれば、石英ガラスるつぼが黒鉛るつぼの内部に配置されたときに、石英ガラスるつぼが安定して自立できるものとなることがわかる。
【0047】
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
1…CZ用るつぼ(本発明例)、 1A…石英ガラスるつぼ、 1B…黒鉛るつぼ、
2…直胴部、 3…第1の湾曲部、 4…第2の湾曲部、 5…底部、
5A…平坦面、 5B…凹状面、 6…中心軸、 7…隙間、
10…単結晶引上げ装置、 11…シリコンメルト、 12…引上げ室、
13…CZ用るつぼ(従来例)、13A…石英ガラスるつぼ、 13B…黒鉛るつぼ、
14…ヒータ、 15…るつぼ保持軸、 16…種結晶、
17…シードチャック、 18…ワイヤ、 19…断熱材、 20…単結晶シリコン、
30…隙間測定冶具、 31…断面形状部。
H…中心軸方向の隙間の高さ、 W…中心軸直交方向の隙間の直径。