IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アーステクニカの特許一覧

<>
  • 特許-ライナ取付構造及び破砕機 図1
  • 特許-ライナ取付構造及び破砕機 図2
  • 特許-ライナ取付構造及び破砕機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ライナ取付構造及び破砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 13/282 20060101AFI20250123BHJP
   B02C 13/28 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B02C13/282
B02C13/28 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020213699
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099729
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】白地 貴一
(72)【発明者】
【氏名】児島 徹也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚伸
(72)【発明者】
【氏名】田代 萌
(72)【発明者】
【氏名】古賀 章将
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-209896(JP,A)
【文献】実開平06-040429(JP,U)
【文献】特開平06-229407(JP,A)
【文献】特開2007-162794(JP,A)
【文献】特開2004-298661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0319256(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107138227(CN,A)
【文献】中国実用新案第212189354(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第106076503(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107233962(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111151340(CN,A)
【文献】中国実用新案第205700802(CN,U)
【文献】中国実用新案第209333915(CN,U)
【文献】韓国特許第10-2006-0072216(KR,B1)
【文献】韓国特許第10-2009-0008902(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 13/28~13/282
F16B 21/04
F16B 5/00~5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕機を構成する構成部品にライナを取り付けるためのライナ取付構造において、
前記ライナに形成される第1孔と前記構成部品に形成される第2孔を貫通するように配置されており、前記第1孔を通過不能な第1頭部と、前記第1頭部の軸方向の反対側に位置する第2頭部と、を有するピンと、
前記構成部品を挟んで前記ライナの反対側に配置されており、前記ピンの軸方向と平行に配置されるバネと、
第3孔が形成されており、前記軸方向を回転軸として回転させることで、前記第2頭部が前記第3孔を通過可能な開放状態と、前記第2頭部が前記第3孔を通過不能なロック状態と、が切り替わり、前記ロック状態では、前記バネから受ける付勢力により前記第2頭部を前記構成部品から離れる方向に押圧する押さえ部材と、
前記バネの少なくとも一部を覆っており、前記バネが一定距離を超えて縮んだ際に前記押さえ部材と接触することで前記バネの更なる縮みを抑制する受止め部を有するバネケースと、
を備えることを特徴とするライナ取付構造。
【請求項2】
破砕機を構成する構成部品にライナを取り付けるためのライナ取付構造において、
前記ライナに形成される第1孔と前記構成部品に形成される第2孔を貫通するように配置されており、前記第1孔を通過不能な第1頭部と、前記第1頭部の軸方向の反対側に位置する第2頭部と、を有するピンと、
前記構成部品を挟んで前記ライナの反対側に配置されており、前記ピンの軸方向と平行に配置されるバネと、
第3孔が形成されており、前記軸方向を回転軸として回転させることで、前記第2頭部が前記第3孔を通過可能な開放状態と、前記第2頭部が前記第3孔を通過不能なロック状態と、が切り替わり、前記ロック状態では、前記バネから受ける付勢力により前記第2頭部を前記構成部品から離れる方向に押圧する押さえ部材と、
前記バネの少なくとも一部を覆うバネケースと、
前記バネケースと、前記押さえ部材と、を軸方向にスライド可能に連結する連結部材と、
を備えることを特徴とするライナ取付構造。
【請求項3】
請求項に記載のライナ取付構造であって、
前記連結部材は、前記バネケースと前記押さえ部材の距離が所定値を超えないように規制することを特徴とするライナ取付構造。
【請求項4】
請求項に記載のライナ取付構造であって、
前記連結部材は、ボルト及びナットであり、
前記ボルトの頭部及び前記ナットにより、前記バネケースと前記押さえ部材の距離が所定値を超えないように規制されていることを特徴とするライナ取付構造。
【請求項5】
請求項1からまでの何れか一項に記載のライナ取付構造であって、
前記押さえ部材には、前記開放状態において前記第2頭部が収まらずに、前記ロック状態において前記第2頭部が収まる固定溝が形成されていることを特徴とするライナ取付構造。
【請求項6】
請求項1からまでの何れか一項に記載のライナ取付構造であって、
前記第1頭部を軸方向に垂直な平面で切った断面形状が矩形であり、
前記第1頭部は、前記ライナに形成された矩形状の凹部に位置することを特徴とするライナ取付構造。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか一項に記載のライナ取付構造と、
前記ライナと、
前記構成部品と、
を備えることを特徴とする破砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、破砕機を構成する構成部品にライナを取り付けるためのライナ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、投入された被処理物を破砕する破砕機の内部には、ライナが着脱可能に取り付けられている。特許文献1は、ライナの取付構造について開示する。
【0003】
特許文献1には、ボルト及びナットを用いて破砕機本体にライナを取り付ける構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭58-43953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ボルト及びナットを用いてライナを取り付ける構造では、破砕時の衝撃や着脱時等においてボルトが破損することがあり、その場合はライナの着脱が非常に困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、破砕機を構成する構成部品にライナを取り付けるためのライナ取付構造が提供される。即ち、このライナ取付構造は、ピンと、バネと、押さえ部材と、バネケースと、を備える。前記ピンは、前記ライナに形成される第1孔と前記構成部品に形成される第2孔を貫通するように配置されており、前記第1孔を通過不能な第1頭部と、前記第1頭部の軸方向の反対側に位置する第2頭部と、を有する。前記バネは、前記構成部品を挟んで前記ライナの反対側に配置されており、前記ピンの軸方向と平行に配置される。前記押さえ部材には、第3孔が形成されており、前記軸方向を回転軸として回転させることで、前記第2頭部が前記第3孔を通過可能な開放状態と、前記第2頭部が前記第3孔を通過不能なロック状態と、が切り替わる。前記ロック状態では、前記バネから受ける付勢力により前記第2頭部を前記構成部品から離れる方向に押圧する。前記バネの少なくとも一部を覆っており、前記バネが一定距離を超えて縮んだ際に前記押さえ部材と接触することで前記バネの更なる縮みを抑制する受止め部を有する。
【0008】
これにより、従来におけるボルトの破損に相当する不具合が生じないため、着脱作業が困難になる事態が発生しにくい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着脱作業が困難になる事態が発生しにくいライナ取付構造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る破砕機の全体的な構成の模式図。
図2】ライナ取付構造の組立図。
図3】破砕機のケーシングにライナを取り付ける流れを示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、破砕機1の全体的な構成の模式図である。
【0012】
図1に示す破砕機1は、例えば岩石等の原料(被処理物)に対し、打撃及び衝撃等を加えることにより破砕する機械である。破砕機1は、主として、ケーシング2と、伝達軸3と、ロータ4と、打撃板5と、衝突板6と、ライナ7と、を備える。
【0013】
ケーシング2は中空状に構成されており、ケーシング2の内部空間には、打撃及び衝撃等を加えるための部品(打撃板5及び衝突板6等)が配置されている。ケーシング2の上面には、原料を上から投入する開口である供給口2aが形成されている。ケーシング2の底面には、破砕された原料である破砕物を排出する開口である排出口2bが形成されている。ケーシング2の内部には、供給口2aから排出口2bに至る原料の経路が形成されている。
【0014】
伝達軸3は、ケーシング2の内部空間を貫通するように水平に配置されている。伝達軸3は、ケーシング2に回転可能に支持されている。伝達軸3は、図略の電動機等から駆動力が伝達されることにより回転する。
【0015】
ロータ4は、ケーシング2の内部空間の中央略下側に配置され、伝達軸3に固定されている。従って、ロータ4は、伝達軸3とともに一体的に回転することができる。ロータ4には複数の打撃板5が固定されている。衝突板6は、ロータ4の上方において、打撃板5と対向する位置に配置されている。この衝突板6は、打撃板5の打撃により飛ばされた原料がぶつかることで、原料に衝撃力を与え、原料をより効果的に破砕させる。
【0016】
ケーシング2の内壁面には、ケーシング2の保護部材としてのライナ7が複数並べて配置されている。ライナ7は、後述のライナ取付構造10によってケーシング2に着脱可能に取り付けられている。従って、原料との接触によりライナ7の摩耗が進行した場合に、当該ライナ7を交換することができる。本実施形態では、1つのライナ7が複数のライナ取付構造10によって取り付けられている。図1に示すライナ7の形状及びライナ7が設けられている範囲は一例であり、図1とは異なっていてもよい。
【0017】
次に、図2を参照して、ライナ取付構造10を構成する部品の構成について説明する。図2は、ライナ取付構造10の組立図である。また、図3には、組立後のライナ取付構造10が示されている。
【0018】
ライナ取付構造10は、ライナ7をケーシング2に着脱可能に取り付けるための構造である。
【0019】
図2に示すように、ライナ取付構造10は、押さえ部材20と、バネ30と、バネケース40と、ボルト51と、ナット52と、ピン60と、を備える。また、以下の説明では、バネ30及びピン60等の軸方向(長手方向)を単に軸方向と称することがある。また、軸方向で部材を見ることを平面視と称することがある。また、軸方向に垂直な平面で切った断面の形状を単に断面形状と称することがある。
【0020】
押さえ部材20は、バネ30の延伸を規制してバネ30の付勢力を発生させるための部材である。押さえ部材20は、平板状かつ細長状の本体部21に、第3孔22と、固定溝23と、ボルト孔24と、が形成された構成である。
【0021】
第3孔22は、本体部21の中央部に形成された貫通孔である。第3孔22は、ピン60(特に後述の第2頭部63)が通過できるように構成されている。第3孔22の深さ方向は軸方向に一致している。第3孔22の断面形状は、長方形である。第3孔22の断面形状は、長方形に限られず、細長状(言い換えれば、第1方向の長さが、それと垂直な第2方向の長さよりも長い形状)であってもよい。
【0022】
固定溝23は、本体部21の中央部に形成された非貫通状の溝である。固定溝23は、第2頭部63が収まるように構成されている。本明細書において、収まるとは、対象物の一部又は全部が溝や孔等に入り込むことをいう。固定溝23は、第3孔22と交差するように形成されている。詳細には、平面視における固定溝23の長手方向は、第3孔22の長手方向と直交する。
【0023】
ボルト孔24は、本体部21の長手方向の両端部にそれぞれ形成されている。ボルト孔24には、それぞれボルト51が挿入される。
【0024】
バネ30は、圧縮バネ(押しバネ)であり、線材が間隔を空けてコイル状に巻かれている。バネ30の軸方向は、ピン60の軸方向と一致する。ライナ取付構造10の組立後(図3)において、バネ30の軸方向の一端は、押さえ部材20に接触する。そして、押さえ部材20をバネ30に向けて押圧することで、バネ30は付勢力(反発力)を発生させる。なお、本実施形態では、ライナ取付構造10は1つのバネ30を有するが、並べて配置された複数のバネを有していてもよい。複数のバネを有する構成では、一部のバネ30の軸方向は、ピン60の軸方向と一致せず平行となる場合がある。
【0025】
バネケース40は、バネ30の少なくとも一部を覆う。具体的には、バネケース40は、バネ30の周方向の一部と、軸方向の他端(押さえ部材20とは反対側の端)を覆う。図2に示すように、バネケース40は、連結部41と、接続部43と、底面部44と、を備える。
【0026】
連結部41は、間隔を空けて一対で設けられており、それぞれにボルト孔42が形成されている。2つのボルト孔42の間隔は、2つのボルト孔24の間隔と同じである。ボルト孔24とボルト孔42の位置を揃えてボルト51を挿入してナット52を取り付けることで、押さえ部材20とバネケース40を連結することができる。このとき、押さえ部材20とバネケース40が離間した状態となるようにナット52が取り付けられる。つまり、ライナ取付構造10の組立後において、押さえ部材20とバネケース40は、軸方向に相対移動することが可能(即ちスライド可能)である。なお、押さえ部材20とバネケース40は、ボルト51の頭部とナット52によって挟まれているので、押さえ部材20とバネケース40の距離が所定値を超えないように規制されている。
【0027】
接続部43は、連結部41と底面部44を接続する。これにより、押さえ部材20と底面部44の距離が一定距離以下になることが防止される。その結果、バネ30が許容圧縮長さよりも短くなることを防止できる。
【0028】
底面部44は、平面視でバネ30と重なる位置に形成されている。底面部44には、貫通孔45が形成されている。貫通孔45は、バネ30よりも小径である。貫通孔45は、バネ30が通過不能であるとともに、ピン60が通過可能である。詳細には、貫通孔45は、ピン60のうち後述の本体部61及び第1頭部62が通過可能な形状となるように構成されている。バネ30の軸方向の他端は底面部44に接触している。従って、バネケース40に対して押さえ部材20を近づけるように押圧することで、バネ30が圧縮されて、バネ30は付勢力を発生させる。
【0029】
ピン60は、細長状の本体部61を備える。本実施形態の本体部61は、断面形状が矩形であるが円形であってもよい。本体部61の軸方向の両端には、それぞれ第1頭部62と、第2頭部63と、が形成されている。第1頭部62は、押さえ部材20から遠い方の端に形成されている。第1頭部62は、断面形状が矩形である。第1頭部62は、図3に示すように、ライナ7の凹部7aに収まるように位置する。第2頭部63は、押さえ部材20に近い方の端に形成されている。第2頭部63は、断面形状が長方形である。長手方向同士を揃えることで第2頭部63は第3孔22を通過可能であるとともに、長手方向同士を異ならせることで第2頭部63は第3孔22を通過できない。また、第2頭部63の短手方向の長さは、固定溝23の短手方向の長さと一致するか、固定溝23の短手方向の長さの方が若干大きい。言い換えれば、第2頭部63は、長手方向の向きを揃えることで、固定溝23に収まることができる。
【0030】
次に、図3を参照して、ライナ7をケーシング2に取り付ける工程について説明する。
【0031】
ライナ7の取付け前には、予めライナ取付構造10を組み立てておく。つまり、押さえ部材20とバネケース40の間にバネ30を位置させて、ボルト51をナット52に取り付ける。これにより、押さえ部材20、バネ30、及びバネケース40が一体的に構成される。なお、上述したように、ライナ7の取付時及び取外し時において、ボルト51及びナット52を取り外す必要はない。
【0032】
また、図3に示すように、ライナ7の内側(ロータ4側)の面には、凹部7aが形成されている。凹部7aは、例えば断面が矩形状であり、第1頭部62を収めることが可能であるとともに、凹部7aに収まった状態の第1頭部62の回転を規制する形状である。具体的には、凹部7aの長辺(一辺)は、第1頭部62の断面形状の矩形の長辺(一辺)の長さよりも長く、かつ、この矩形の対角線の長さよりも短い。
【0033】
凹部7aの底部には、第1孔7bが形成されている。第1孔7bは貫通孔であり、本体部61が通過可能な大きさであって、かつ、第1頭部62が通過不能な大きさである。また、ケーシング2にも、第1孔7bと対応する位置に第2孔2cが形成されている。第2孔2cは貫通孔であり、本体部61が通過可能な大きさである。なお、第1頭部62でピン60の回転を規制する構成に代えて、第1孔7b又は第2孔2cでピン60の回転を規制してもよい。
【0034】
ライナ7を取り付ける際には、ライナ7をケーシング2に合わせた後に(詳細には第2孔2cと第1孔7bの位置を合わせた後に)、ライナ7側から、第2頭部63を先端としてピン60を挿入し、第1頭部62を凹部7aに収める。
【0035】
次に、押さえ部材20、バネ30、及びバネケース40をケーシング2側にセットする。具体的には、ケーシング2から突出するピン60が、バネケース40の貫通孔45と、バネ30の内部と、を通過するようにする。このとき、平面視において、第2頭部63と第3孔22の長手方向を一致させるものとする。
【0036】
次に、図3の中央に示すように、作業者は、押さえ部材20をケーシング2に向けて押圧する。これにより、バネ30が縮む。また、第2頭部63と第3孔22の長手方向が一致しているため、第2頭部63が第3孔22を通過する(開放状態)。
【0037】
次に、バネ30を縮めた状態において、作業者は、押さえ部材20を軸方向を回転軸として90°回転させる。バネケース40は、押さえ部材20と一体的に回転する。押さえ部材20が90°回転することにより、第2頭部63と第3孔22の長手方向が一致しなくなる。そのため、第2頭部63は第3孔22を通過できなくなる(ロック状態)。更に、第2頭部63が固定溝23に収まるので、押さえ部材20の回転が規制される。
【0038】
これにより、バネ30が縮んだ状態が維持される。そのため、バネ30の付勢力により、押さえ部材20を介してピン60は、ケーシング2等から離れる方向に付勢される。従って、第1頭部62がライナ7をケーシング2に押し付けることになるので、ライナ7がケーシング2に取り付けられる。
【0039】
ここで、要求されるバネ30の付勢力が大きいことにより、作業者が手でバネ30を縮めて第2頭部63に押さえ部材20を通過させることができない場合は、ナット52を締め付けてバネ30を縮めることで、第2頭部63に押さえ部材20を通過させた後に、第2頭部63と押さえ部材20が接触するまでナット52を緩めることもできる。これにより、要求されるバネ30の付勢力が大きい場合でも、無理なくライナ7を取り付ける作業を行うことができる。
【0040】
なお、ライナ7の取り外す工程は、ライナ7の取り付ける工程を逆の順番に行うだけである。つまり、押さえ部材20を押圧して押さえ部材20を反対方向に90°回転させることで、ライナ取付構造10及びライナ7を取り外すことができる。
【0041】
なお、ライナを着脱するための締結手段として、従来ではコッタ式の締結手段が用いられることがある。コッタ式の締結手段を用いる場合、例えば破砕機のケーシングに開口部を形成し、ライナの一部をケーシングの開口部から外側に突出させる。ライナの突出部には、コッタと称される楔が挿入される。これにより、ライナがケーシングに固定される。ライナの突出部は比較的大型にする必要がある。これに対し、本実施形態のライナ取付構造10は、コッタ式の締結手段と比較して、ケーシング2から突出する部分が小さくなり易いので、コンパクトなライナ取付構造10を実現できる。また、コッタ式の締結手段では、コッタを突出部に挿入する際にハンマ等で打ち込む必要があるため、そのための作業スペースが必要となる。この点、本実施形態では、押さえ部材20の回転操作によりライナ7を着脱できるため、コッタ式の締結手段と比較して、作業スペースが小さい。
【0042】
本実施形態のライナ取付構造10は、ピン60と、バネ30と、押さえ部材20と、を備える。ピン60は、ライナ7に形成される第1孔7bとケーシング2に形成される第2孔2cを貫通するように配置されており、第1孔7bを通過不能な第1頭部62と、第1頭部62の軸方向の反対側に位置する第2頭部63と、を有する。バネ30は、ケーシング2を挟んでライナ7の反対側に配置されており、ピン60の軸方向と平行に配置される。押さえ部材20は、第3孔22が形成されており、軸方向を回転軸として回転させることで、第2頭部63が第3孔22を通過可能な開放状態と、第2頭部63が第3孔22を通過不能なロック状態と、が切り替わり、ロック状態では、バネ30から受ける付勢力により第2頭部63をケーシング2から離れる方向に押圧する。
【0043】
これにより、従来におけるボルトの破損に相当する不具合が生じないため、着脱作業が困難になる事態が発生しにくい。
【0044】
本実施形態のライナ取付構造10は、バネ30の少なくとも一部を覆うバネケース40を備える。
【0045】
例えばバネケース40が押さえ部材20に取付可能であり、更にバネ30の長手方向の両端をバネケース40と押さえ部材20で押さえることにより、バネ30が所定の長さ(許容圧縮長さ)よりも短くなることを防止できる。
【0046】
本実施形態のライナ取付構造10は、バネケース40と、押さえ部材20と、を軸方向にスライド可能に連結するボルト51及びナット52を備える。
【0047】
これにより、バネ30の変形(圧縮)を確保しつつ、バネケース40と押さえ部材20を連結できる。
【0048】
本実施形態のライナ取付構造10において、ボルト51及びナット52、バネケース40と押さえ部材20の距離が所定値を超えないように規制する。
【0049】
これにより、ピン60が破損したり外れたりした場合でも、バネ30がバネケース40内に留まらせることができ、押さえ部材20が外れて飛んでいくことも規制できる。
【0050】
本実施形態のライナ取付構造10において、連結部材は、ボルト51及びナット52である。ボルト51の頭部及びナット52により、バネケース40と押さえ部材20の距離が所定値を超えないように規制されている。
【0051】
これにより、ナット52を緩めたり締め付けたりすることでバネ30の長さを調整できるので、取付作業を補助することができる。
【0052】
本実施形態のライナ取付構造10において、押さえ部材20には、開放状態において第2頭部63が収まらずに、ロック状態において第2頭部63が収まる固定溝23が形成されている。
【0053】
これにより、ロック状態において押さえ部材20が回転しにくいので、ライナ7を強固に取り付けることができる。
【0054】
本実施形態のライナ取付構造10において、第1頭部62を軸方向に垂直な平面で切った断面形状が矩形である。第1頭部62は、ライナ7に形成された矩形状の凹部7aに位置する。
【0055】
これにより、簡単な構造でピンの回転を防止できる。
【0056】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0057】
上記実施形態では、ライナ取付構造10を用いてライナ7をケーシング2に取り付ける例を説明したが、同様のライナ取付構造10を用いてライナを破砕機1の別の構成部品に取り付けることもできる。別の構成部品としては、例えばロータ4に取り付けられるロータライナがある。
【0058】
上記実施形態では、押さえ部材20を90°回転させるが、第3孔22及び第1頭部62の形状等によっては、回転角度が90°以外であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、押さえ部材20とバネケース40がボルト51及びナット52で連結されているが、別の部品で連結されていてもよい。別の部品としては、例えばピンを挙げることができる。この場合、バネ30の付勢力を調整することはできないが、構成をシンプルにすることができる。
【0060】
バネケース40は必須の構成要素ではなく省略することもできる。この場合、バネ30が押さえ部材20とケーシング2に挟まれて縮むこととなる。
【0061】
上記実施形態では、ロータ4で打撃板5を回転させるタイプの破砕機1に本発明を適用する例を示したが、ライナが着脱可能に取り付けられる構成であれば、様々な破砕機に本発明を適用することができる。
【0062】
ライナ取付構造10を構成する各部材を溶接にて一体化してもよい。例えば、押さえ部材20とバネ30を溶接により一体化してもよい。あるいは、バネ30とバネケース40を溶接により一体化してもよい。また、押さえ部材20とバネ30を溶接により一体化しつつ、更に、バネ30とバネケース40を溶接により一体化してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 破砕機
2 ケーシング(構成部品)
7 ライナ
10 ライナ取付構造
20 押さえ部材
30 バネ
40 バネケース
51 ボルト
52 ナット
60 ピン
図1
図2
図3