(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20250123BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20250123BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20250123BHJP
【FI】
B32B7/023
B29C45/14
G02B1/111
(21)【出願番号】P 2021054543
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】高橋 純平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】滝川 慶
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/020222(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020301(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020302(WO,A1)
【文献】特開2009-037064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 45/00-45/24;45/46-45/63;45/70-45/72;45/74-45/84
G02B 1/10-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、
前記未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を備え、
前記未硬化の光干渉層は、中空樹脂粒子を含み、
前記未硬化の光干渉層表面の算術平均粗さRaは、0.05μm以下である、積層フィルム。
【請求項2】
積算光量2000mJ/cm
2の活性エネルギー線が照射された前記光干渉層の表面を、19.6N/4cm
2で1万回摩耗した後、前記光干渉層に傷が視認されない、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記中空樹脂粒子の平均粒子径は、前記未硬化の光干渉層の厚みの40%以上125%以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、
前記中空樹脂粒子の含有量は、前記光干渉層形成組成物の固形分100質量部に対して、15質量部以上80質量部以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、
前記光干渉層形成組成物は、第1の層形成成分を含み、
前記第1の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第1反応性成分を含み、
前記第1反応性成分は、重量平均分子量が1万以下の第1オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第1モノマーの少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記第1オリゴマーおよび前記第1モノマーの合計の含有量は、前記光干渉層形成組成物の固形分100質量部に対して、5質量部以上55質量部以下である、請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
積算光量2000mJ/cm
2の活性エネルギー線が照射された前記積層フィルムを、0.001Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸した状態で55℃の温度下で4時間加熱処理した後、前記光干渉層の表面に外観の異常が視認されない、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記未硬化の光干渉層側から測定した、380nm以上780nm以下の波長領域における正反射光を含む視感反射率は、0.1%以上4.0%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記未硬化の光干渉層の厚さは、15nm以上200nm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記透明支持基材の厚さは、50μm以上600μm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記未硬化のハードコート層の厚さは、2μm以上30μm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記未硬化のハードコート層と前記未硬化の光干渉層との間に、さらに、少なくとも一つの未硬化の機能層を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記未硬化の光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度H
BCは、0.05GPa以上0.5GPa以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項15】
積算光量2000mJ/cm
2の活性エネルギー線が照射された前記積層フィルムの前記光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度H
ACは、0.25GPa以上0.7GPa以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項16】
前記未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を含み、
前記ハードコート層形成組成物は、第2の層形成成分を含み、
前記第2の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第2反応性成分を含み、
前記第2反応性成分は、重量平均分子量が1万以下の第2オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第2モノマーの少なくとも一方を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項17】
前記第2反応性成分は、さらに、重量平均分子量が1万超の第2ポリマーを含む、請求項16に記載の積層フィルム。
【請求項18】
前記第2オリゴマーおよび前記第2モノマーの合計の含有量は、前記ハードコート層形成組成物の固形分100質量部に対して、25質量部以上65質量部以下である、請求項16または17に記載の積層フィルム。
【請求項19】
硬化された請求項1~18のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む、成形体。
【請求項20】
透明支持基材の一方の面上に、未硬化のハードコート層を形成する工程と、
他の支持基材の一方の面上に、未硬化の光干渉層を形成する工程と、
前記未硬化のハードコート層の前記透明支持基材とは反対側の面と、前記未硬化の光干渉層の前記他の支持基材とは反対側の面とを貼り合わせて積層フィルムを得るラミネート工程と、を備え、
前記未硬化の光干渉層は、中空樹脂粒子を含み、
得られる前記積層フィルムの前記未硬化の光干渉層の表面の算術平均粗さRaは、0.05μm以下である、積層フィルムの製造方法。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載の積層フィルムの前記透明支持基材の他方の主面に加飾層を形成する加飾工程と、
前記加飾工程の後、前記積層フィルムに活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備える、成形体の製造方法。
【請求項22】
前記加飾工程の後、金型に前記光干渉層を対向させ、前記加飾層に向かって成形用樹脂を射出する射出成型工程を備える、請求項21に記載の成形体の製造方法。
【請求項23】
前記金型は、前記積層フィルムに立体形状を付与し、
前記加飾工程の後、前記射出成型工程の前に、前記積層フィルムを前記立体形状に沿った形状に成形するプレフォーム工程を備える、請求項22に記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、コンピュータ、テレビジョン、携帯電話、携帯情報端末機器(タブレットパソコン、モバイル機器および電子手帳等)に加え、デジタルメーター、インストルメントパネル、ナビゲーション、コンソールパネル、センタークラスターおよびヒーターコントロールパネル等の車載用表示パネル等、様々な分野で使用されている。このような製品は、多くの場合、保護材で覆われている。保護材は、通常、ハードコート層を有するフィルムを成形することにより得られる。
【0003】
ディスプレイの保護材には、視認側表面の反射率を低減させることを目的として、さらに低屈折率層が設けられる場合がある。特許文献1には、透明支持体上にハードコート層と低屈折率層(光干渉層)とを順に積層した積層フィルムが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光干渉層には、低屈折粒子として、通常、多孔質あるいは中空のシリカ粒子が配合される。近年、中空シリカ粒子に替えて、中空の樹脂粒子を用いることが提案されている。中空の樹脂粒子は、耐アルカリ性を有するとともに、樹脂組成物との親和性に優れるためである。しかし、中空樹脂粒子を用いる場合、得られる積層フィルムの光干渉層側の表面に凹凸が形成されることがある。表面の凹凸は、積層フィルムのヘイズを上昇させて、外観を白っぽくするとともに、耐摩耗性を低下させ易い。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、その目的は、耐摩耗性に優れるアフターキュア型の積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
透明支持基材と、
前記透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、
前記未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を備え、
前記未硬化の光干渉層は、中空樹脂粒子を含み、
前記未硬化の光干渉層表面の算術平均粗さRaは、0.05μm以下である、積層フィルム。
【0008】
[2]
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された前記光干渉層の表面を、19.6N/4cm2で1万回摩耗した後、前記光干渉層に傷が視認されない、上記[1]に記載の積層フィルム。
【0009】
[3]
前記中空樹脂粒子の平均粒子径は、前記未硬化の光干渉層の厚みの40%以上125%以下である、上記[1]または[2]に記載の積層フィルム。
【0010】
[4]
前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、
前記中空樹脂粒子の含有量は、前記光干渉層形成組成物の固形分100質量部に対して、15質量部以上80質量部以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0011】
[5]
前記未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物を含み、
前記光干渉層形成組成物は、第1の層形成成分を含み、
前記第1の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第1反応性成分を含み、
前記第1反応性成分は、重量平均分子量が1万以下の第1オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第1モノマーの少なくとも一方を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0012】
[6]
前記第1オリゴマーおよび前記第1モノマーの合計の含有量は、前記光干渉層形成組成物の固形分100質量部に対して、5質量部以上55質量部以下である、上記[5]に記載の積層フィルム。
【0013】
[7]
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された前記積層フィルムを、0.001Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸した状態で55℃の温度下で4時間加熱処理した後、前記光干渉層の表面に外観の異常が視認されない、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0014】
[8]
前記積層フィルムの160℃における延伸率は、50%以上である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0015】
[9]
前記未硬化の光干渉層側から測定した、380nm以上780nm以下の波長領域における正反射光を含む視感反射率は、0.1%以上4.0%以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0016】
[10]
前記未硬化の光干渉層の厚さは、15nm以上200nm以下である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0017】
[11]
前記透明支持基材の厚さは、50μm以上600μm以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0018】
[12]
前記未硬化のハードコート層の厚さは、2μm以上30μm以下である、上記[1]~[11]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0019】
[13]
前記未硬化のハードコート層と前記未硬化の光干渉層との間に、さらに、少なくとも一つの未硬化の機能層を有する、上記[1]~[12]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0020】
[14]
前記未硬化の光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度HBCは、0.05GPa以上0.5GPa以下である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0021】
[15]
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された前記積層フィルムの前記光干渉層側から、ナノインデンテーション法によって測定される硬度HACは、0.25GPa以上0.7GPa以下である、上記[1]~[14]のいずれかに記載の積層フィルム
【0022】
[16]
前記未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物を含み、
前記ハードコート層形成組成物は、第2の層形成成分を含み、
前記第2の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第2反応性成分を含み、
前記第2反応性成分は、重量平均分子量が1万以下の第2オリゴマーおよび重量平均分子量が1万以下の第2モノマーの少なくとも一方を含む、上記[1]~[15]のいずれかに記載の積層フィルム。
【0023】
[17]
前記第2反応性成分は、さらに、重量平均分子量が1万超の第2ポリマーを含む、上記[16]に記載の積層フィルム。
【0024】
[18]
前記第2オリゴマーおよび前記第2モノマーの合計の含有量は、前記ハードコート層形成組成物の固形分100質量部に対して、25質量部以上65質量部以下である、上記[16]または[17]に記載の積層フィルム。
【0025】
[19]
硬化された上記[1]~[18]のいずれかに記載の積層フィルムを含む、成形体。
【0026】
[20]
透明支持基材の一方の面上に、未硬化のハードコート層を形成する工程と、
他の支持基材の一方の面上に、未硬化の光干渉層を形成する工程と、
前記未硬化のハードコート層の前記透明支持基材とは反対側の面と、前記未硬化の光干渉層の前記他の支持基材とは反対側の面とを貼り合わせて積層フィルムを得るラミネート工程と、を備え、
前記未硬化の光干渉層は、中空樹脂粒子を含み、
得られる前記積層フィルムの前記未硬化の光干渉層の表面の算術平均粗さRaは、0.05μm以下である、積層フィルムの製造方法。
【0027】
[21]
上記[1]~[18]のいずれかに記載の積層フィルムの前記透明支持基材の他方の主面に加飾層を形成する加飾工程と、
前記加飾工程の後、前記積層フィルムに活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備える、成形体の製造方法。
【0028】
[22]
前記加飾工程の後、金型に前記光干渉層を対向させ、前記加飾層に向かって成形用樹脂を射出する射出成型工程を備える、上記[21]に記載の成形体の製造方法。
【0029】
[23]
前記金型は、前記積層フィルムに立体形状を付与し、
前記加飾工程の後、前記射出成型工程の前に、前記積層フィルムを前記立体形状に沿った形状に成形するプレフォーム工程を備える、上記[22]に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、耐摩耗性に優れるアフターキュア型の積層フィルムおよび成形体、ならびにそれらの製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの製造方法におけるラミネート工程を説明する概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
ディスプレイの保護フィルムとして、従来、プレキュア型と称される積層フィルムが用いられている。特許文献1に示されるように、プレキュア型の積層フィルムにおいて、ハードコート層および光干渉層は硬化している。
【0033】
プレキュア型の積層フィルムに中空の樹脂粒子を用いる場合に、光干渉層の表面に凹凸が形成される理由は、光干渉層の形成過程における中空樹脂粒子の挙動にあると考えられる。プレキュア型の積層フィルムの光干渉層は、通常、硬化されたハードコート層上に中空樹脂粒子を含む樹脂組成物をコーティングし、その後、乾燥および硬化することにより形成される。樹脂組成物を乾燥させるために加熱すると、中空樹脂粒子自身の熱運動が活発になったり、同じような比重を持つ樹脂成分の流動性が高まったりして、中空樹脂粒子は未硬化の光干渉層内を移動し易い状況に置かれる。そして、樹脂組成物に含まれる揮発成分(代表的には、溶媒)が光干渉層表面から揮発し、光干渉層が薄くなる過程において、樹脂成分とともに移動した中空樹脂粒子は、光干渉層の外表面の近傍に存在する確率が高くなる。そのため、中空樹脂粒子は、光干渉層表面から露出し易くなる。その結果、ハードコート層上にコーティング法により形成された光干渉層の表面には、中空樹脂粒子に由来する凹凸が形成され易い。低屈折粒子として中空シリカ粒子を用いる場合、樹脂成分よりも十分に大きな比重を持つためか、光干渉層の表面に凹凸は形成され難い。ただし、中空シリカ粒子は、樹脂組成物との親和性に劣るため脱落し易く、耐摩耗性を低下させる。
【0034】
本実施形態は、中空樹脂粒子を含みながら、平滑な表面を有する光干渉層を備える積層フィルムを提案する。具体的には、未硬化の光干渉層表面の算術平均粗さRaが、0.05μm以下である。これにより、本実施形態に係る積層フィルムは、優れた耐摩耗性を示し、長期間にわたって良好な視認性が維持される。さらに、表面の凹凸に起因するヘイズが抑制されるため、外観が良好になる。
【0035】
A.積層フィルム
本実施形態に係る積層フィルムは、透明支持基材と、透明支持基材の少なくとも一方の面上に形成された未硬化のハードコート層と、未硬化のハードコート層上に形成された未硬化の光干渉層と、を有する。未硬化のハードコート層および未硬化の光干渉層を備え、立体形状への成形後に硬化される積層フィルムは、アフターキュア型と呼ばれる。
【0036】
アフターキュア型の積層フィルムを用いる場合、積層フィルムは未硬化状態であるため、立体形状への成形工程(代表的には、プレフォームや射出成型)におけるクラックや白化の発生が抑制される。そのため、成形品の外観が良好になる。さらに、クラックが生じ難いため、ハードコート層および光干渉層の機能は、より効果的に発揮される。
【0037】
ハードコート層および光干渉層の機能とは、例えば、優れたハードコート性能および反射防止性能である。ハードコート性能としては、例えば、高い硬度、耐摩耗性および耐薬品性が挙げられる。
【0038】
特にプレフォームの際、積層フィルムは延伸させられる。アフターキュア型の積層フィルムを用いる場合、延伸処理は未硬化の積層フィルムに対して施され、硬化後に過度な延伸処理は行われない。よって、各層を、架橋密度が高くなるような層形成組成物により形成することができる。つまり、硬化後の各層の硬度をより高くすることができるとともに、十分な機械的物性や耐薬品性が得られ易い。
【0039】
未硬化とは、完全硬化していない状態をいう。積層フィルムに含まれるハードコート層および光干渉層は、半硬化の状態であってもよい。
【0040】
硬化(完全硬化)とは、JIS K 5500(塗料用語)で規定されている「硬化乾燥」と同義である。すなわち、硬化は、a)試験片の中央を親指と人指し指とで強く挟んでみて、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面を指先で急速に繰り返してこすってみて、すり跡が付かない状態(dry hard)になることをいう。
【0041】
積算光量200mJ/cm2以上の活性エネルギー線を照射された積層フィルムは、完全硬化しているといえる。
【0042】
半硬化は、JIS K 5500(塗料用語)で規定されている「半硬化乾燥」と同義である。すなわち、半硬化は、塗った面の中央を指先でかるくこすってみて塗面にすり跡が付かない状態(dry to touch)になったときをいう。積算光量1mJ/cm2以上200mJ/cm2未満の活性エネルギー線を照射された積層フィルムは、半硬化しているといえる。
【0043】
ハードコート層および光干渉層が活性エネルギー線に暴露されていない、あるいは、1mJ/cm2未満の活性エネルギー線に暴露された状態は、未硬化であるといえる。
【0044】
(算術表面粗さ)
未硬化の光干渉層の表面の算術平均粗さRaは、0.05μm以下である。これにより、硬化された積層フィルムの耐摩耗性が向上する。算術平均粗さRaは、0.04μm以下が好ましく、0.03μm以下がより好ましい。
【0045】
算術表面粗さRaは、JIS B0601;2001の附属書JAに規定される、表面の凹凸形状(粗さ形状)を示すパラメータの1種である。算術表面粗さRaは、粗さ曲線の基準長さにおける、Z(x)の絶対値の平均値である。粗さ曲線は、測定断面曲線にカットオフ値位相補償帯域通過フィルタを適用して得られる。算術表面粗さRaは、例えばレーザ顕微鏡を用いて測定される。
【0046】
算術平均粗さRaは、硬化直前の積層フィルムに対して測定されるのが好ましい。硬化工程において、光干渉層の表面の平滑性はあまり変化しない。そのため、成形体の耐摩耗性は、硬化直前の光干渉層の表面の平滑性に影響される。算術平均粗さRaは、積層フィルムを加熱処理した後、および/または、後述するプレフォーム工程の後、硬化前に測定されてもよい。例えば、150℃以上190℃以下の雰囲気下で30秒以上60秒以下、加熱処理された積層フィルムの算術平均粗さRaが、0.05μm以下であればよい。
【0047】
硬化された積層フィルム(すなわち、成形体)の光干渉層の算術平均粗さが0.05μm以下である場合、硬化直前の積層フィルムの算術平均粗さRaもまた、0.05μm以下であるとみなすことができる。
【0048】
後述する視感反射率および硬化前の硬度もまた、上記の条件で加熱処理された後、硬化直前の積層フィルムを用いて測定されてもよい。また、静摩擦係数、耐摩耗性、耐アルカリ性および硬化後の硬度は、積層フィルムを、例えば、上記の条件で加熱処理した後に硬化された積層フィルムを用いて、測定されてもよい。
【0049】
(耐摩耗性)
本実施形態に係る積層フィルムによって、耐摩耗性に優れる成形体が得られる。例えば、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルムの、光干渉層の表面を、4cm2あたり垂直荷重19.6Nをかけながら10,000回摩耗する。この摩耗試験後の光干渉層には傷が視認されない。傷が視認されないということは、外観変化による視認性低下が抑制されるということである。
【0050】
「傷が視認されない」とは、目視によっては、傷が観察できないことを意味する。「傷」とは、例えば、表面の荒れである。目視によって傷が観察されない限り、倍率100倍の顕微鏡を用いて摩耗試験後のサンプルを観察した際、ごく僅かな傷が観察されてもよい。
【0051】
摩耗試験は、上記の条件のもと、既知の方法を用いて行われる。摩耗試験には、通常、綿布が固定された摩擦子が用いられる。この摩擦子によって、サンプルに4cm2あたり垂直荷重19.6Nがかけられる。
【0052】
耐摩耗性に優れる積層フィルムは、小さな静摩擦係数を有する。積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルムの光干渉層の静摩擦係数μACは、例えば、0.35以下である。静摩擦係数は、JIS K 7125に準じて測定される。静摩擦係数μACは、0.3以下であり、0.25以下であり、0.20以下であり得る。
【0053】
(耐アルカリ性)
積層フィルムは、優れた耐アルカリ性を有することが望ましい。例えば、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルムを、0.001Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸し、55℃の温度下で4時間加熱処理する。この浸漬試験後の光干渉層の表面に、外観の異常が視認されないことが好ましい。外観の異常が視認されないということは、外観変化による視認性低下が抑制されるということである。中空シリカ粒子を含まない、あるいは、中空シリカ粒子の使用が抑制された積層フィルムは、耐アルカリ性が向上し易い。
【0054】
「外観の異常が視認されない」とは、目視によっては、表面の異常が観察できないことを意味する。「異常」とは、例えば、塗膜の割れや剥がれ、リフティングなどである。リフティングとは、光干渉層の縮みや浮き上がりである。目視によって異常が観察されない限り、倍率100倍の顕微鏡を用いて浸漬試験後のサンプルを観察した際、ごく僅かな異常が観察されてもよい。
【0055】
さらに、上記の浸漬試験の前後で、硬化された積層フィルムの光学特性の変化によっても耐アルカリ性を評価できる。例えば、浸漬試験の前および後の硬化された積層フィルムのCIE1976色空間における色差△Eは、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。CIE1976色空間は、JIS Z 8781-4において規定されている。
【0056】
色差△Eは、下記式により算出される。
△E=[(△L*)2+(△a*)2+(△b*)2)]1/2
式中、△L*は浸漬試験前後でのL*の変化量、△a*は浸漬試験前後でのa*の変化量、△b*は浸漬試験前後でのb*の変化量を表す。L*は、L*a*b*色空間における明度を示す座標である。a*およびb*はそれぞれ、L*a*b*色空間における色度を示す座標である。
【0057】
(延伸率)
積層フィルムの160℃における延伸率E160は、50%以上が好ましい。この場合、積層フィルムは150℃以上190℃以下の成形温度において十分に延伸する。よって、積層フィルムを、クラックを生じることなく、複雑な立体形状に成形し易い。特に、プレフォーム工程において、積層フィルムの損傷が抑制され易くなる。そのため、ハードコート層および光干渉層の機能を備え、かつ、複雑な立体形状を有する成形体を得ることができる。積層フィルムは、要求される物性、形状等に応じて、例えば、プレフォームおよび射出成型等により立体形状に成形される。
【0058】
積層フィルムの延伸率E160は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。積層フィルムの延伸率E160は、400%未満であってよく、350%未満であってよく、300%未満であってよい。積層フィルムを硬化して得られる成形体の160℃における延伸率は、15%未満であり、5%以下であり得る。
【0059】
延伸率E160は、例えば、以下のようにして測定できる。
チャック間距離が150mmである引張り試験機、および、長さ200mm×幅10mmに切り出した評価サンプルを準備する。160℃雰囲気下、引張力5.0Kgf、引張速度300mm/分の条件にて、評価サンプルを長辺方向に10%延伸する。延伸された評価サンプルのクラックの有無を目視で確認する。
【0060】
クラックの発生が無い場合、新たなサンプルを切り出し、次は長辺方向に20%まで延伸させる。そして、同様に、クラックの有無を目視で確認する。この手順を、延伸率を10%ずつ増加させながら繰り返して、クラックが初めて確認されたときの延伸率を、積層フィルムの延伸率E160とする。
【0061】
(視感反射率)
光干渉層の表面は平滑であるものの、積層フィルムは優れた反射防止性能を有する。例えば、積層フィルムの光干渉層側から測定した、380nm以上780nm以下の波長領域における正反射光を含む視感反射率は、0.1%以上4.0%以下である。積層フィルムを硬化して得られる成形体もまた、優れた反射防止性を有する。よって、成形体には外光による映り込みが少なく、成形体は、良好な表示特性および良好な視認性を有している。成形体の上記視感反射率は、同様に、0.1%以上4.0%以下であり得る。
【0062】
積層フィルムおよび成形体の上記視感反射率は、0.1%以上3.0%以下が好ましく、0.1%以上2.5%以下がより好ましい。
【0063】
上記視感反射率は、正反射光を含むすべての反射光を測定して得られる。つまり、上記視感反射率は、いわゆるSCI(Specular Component Include)方式により測定される。この方法は、被測定物の表面状態による影響を受け難いため、未硬化の層の視感反射率を測定することができる。
【0064】
積層フィルムの上記視感反射率は、具体的には、以下の方法により測定できる。
透明支持基材の、未硬化のハードコート層とは反対側の面に、黒色塗料(例えば、品名:CZ-805 BLACK(日弘ビックス社製))を、バーコーターを用い、乾燥膜厚が3μm以上6μm以下となるように塗布する。その後、室温環境下で5時間放置して乾燥させることにより、評価サンプルMを作成する。
【0065】
得られた評価サンプルMの光干渉層側から、分光色彩計(例えば、日本電色工業社製のSD7000)を用いて、380nm以上780nm以下の波長領域におけるSCI方式による視感反射率を測定する。
【0066】
成形体の上記視感反射率は、以下のようにして測定できる。
上記で作成された評価サンプルMに、積算光量200mJ/cm2以上(例えば、積算光量2000mJ/cm2)の活性エネルギー線を照射することにより、評価サンプルNを作成する。得られた評価サンプルNの光干渉層側から、上記と同様にして視感反射率を測定する。
【0067】
(硬度)
後工程における損傷が抑制され易い点で、積層フィルムの光干渉層側から測定されたナノインデンテーション法による硬度HBCは、0.05GPa以上が好ましい。硬度HBCが0.05GPa以上であると、スリット形成および裁断の際の凹みや損傷、複数の積層フィルムを積層した際に混入する異物による凹み、スキージ痕あるいは吸引痕等の不具合が抑制されて、歩留まりが向上し易くなる。
【0068】
未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との密着性が向上し易い点で、硬度HBCは0.5GPa以下が好ましい。硬度HBCが0.5GPa以下であると、未硬化のハードコート層上に未硬化の光干渉層を積層する際、両者は密着し易くなる。さらに、未硬化ハードコート層と未硬化の光干渉層とを貼り合わせにより積層する際、層間に空気が入り込むこと(エア噛み)が抑制される。硬度HBCは、具体的には、0.05GPa以上0.5GPa以下が好ましい。硬度HBCは、0.15GPa以上がより好ましい。硬度HBCは、0.4GPa以下がより好ましい。
【0069】
積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線が照射された積層フィルムの光干渉層側から測定されたナノインデンテーション法による硬度HACは、0.25GPa以上が好ましい。硬度HACは0.7GPa以下が好ましい。硬度HACは、具体的には、0.25GPa以上0.7GPa以下が好ましい。硬度HACは、0.3GPa以上が特に好ましい。硬度HACは、0.6GPa以下であってもよい。
【0070】
成形体の硬度HACは、積層フィルムの硬度HBCよりも大きい。本実施形態において、硬度HACが0.25GPa以上0.7GPa以下である場合、硬度HBCは0.1GPa以上0.5GPa以下を満たす。
【0071】
硬度HBCおよびHACは、積層フィルムあるいは成形体の光干渉層側から、ナノインデンテーション法により測定される値に基づいて算出される。硬度HBCおよびHACは、光干渉層の表面状態および透明支持基材の硬度が影響し難い条件で測定される。すなわち、硬度HBCおよびHACは、圧子を光干渉層側からハードコート層にまで押し込んで測定される。硬度HBCおよびHACは、未硬化あるいは硬化されたハードコート層の硬度を反映しているといえる。例えば、硬度HBCおよびHACは、光干渉層の表面から1000nm内部で測定される。
【0072】
ナノインデンテーション法による硬度は、ナノインデンテーション装置を用いて、例えば、連続剛性測定法(Continuous Stiffness Measurement)により求められる。連続剛性測定法では、サンプルに、準静的な試験荷重(直流(DC)荷重)に加えて微小荷重(交流(AC)荷重)が与えられる。これにより、サンプルにかかる力が微小に振動する。その結果として発生する変位の振動成分および変位と荷重との位相差から、深さに対するスティフネスを計算する。これにより、深さに対して、硬度の連続的なプロファイルが取得できる。
【0073】
ナノインデンテーション装置としては、NANOMECHANICS,INC.製のiMicro Nanoindenterが使用できる。連続剛性測定法には、例えば、Advanced Dynamic E and H.NMTメソッドが使用できる。荷重およびスティフネスの計算にはiMicro専用ソフトを用いればよい。サンプルには、圧子により最大荷重50mNに到達するまで荷重がかけられる。圧子としては、例えばバーコビッチ(verkovich)型のダイアモンド圧子が用いられる。測定およびスティフネスの計算にあたって、測定対象物(未硬化あるいは硬化されたハードコート層および光干渉層)のポアソン比および荷重等は、適切な値が設定される。
【0074】
ナノインデンテーション法により硬度HBCを測定した後、光干渉層の表面に、用いた圧子の形状に一致する押し跡が残っていない場合、測定された硬度HBCは、正確ではないと判断できる。上記の事象は、未硬化のハードコート層が過度に柔らかいために生じると考えられる。つまり、測定されたこの硬度は、未硬化のハードコート層ではなく、透明支持基材の影響を強く受けている。上記の場合、硬度HBCは0.05GPa未満であるとみなしてよい。
【0075】
以下、透明支持基材および各層について、さらに説明する。
[透明支持基材]
透明支持基材は、透明である限り特に限定されない。透明であるとは、具体的には、全光線透過率が80%以上であることをいう。透明支持基材の全光線透過率は、80%以上であって、90%以上が好ましい。全光線透過率は、JIS K 7361-1に準拠する方法により測定することができる。透明支持基材としては、当分野において公知のものが、特に制限されることなく用いられる。透明支持基材は、無色であってもよく、有色であってもよい。
【0076】
透明支持基材は、用途に応じて適宜選択される。透明支持基材としては、例えば、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリルフィルム;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレンフィルム;ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィンフィルム;ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミドフィルムが挙げられる。また、透明支持基材は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリオキシメチレン、エポキシ樹脂等の樹脂を含むフィルムであってよく、これらポリマーの混合物を含むフィルムであってもよい。
【0077】
透明支持基材は、複数のフィルムの積層体であってもよい。透明支持基材は、例えば、アクリル樹脂からなるフィルムと、ポリカーボネート樹脂からなるフィルムとの積層体であってよい。
【0078】
透明支持基材は、光学的に異方性を有していてもよく、等方性を有していてもよい。光学的に異方性を有する透明支持基材の複屈折の大きさは、特に限定されない。異方性を有する透明支持基材の位相差は、波長の1/4(λ/4)であってよく、波長の1/2(λ/2)であってよい。
【0079】
透明支持基材の厚さは特に限定されない。透明支持基材の厚さは、例えば、50μm以上600μm以下である。この場合、延伸後の積層フィルムの剛性が維持され易くなる。また、積層フィルムおよび成形体の反りが抑制され易い。さらに、透明支持基材および積層フィルムを、ロール状に容易に巻き取ることができるため、ロールtoロール加工を行うことができる。
【0080】
透明支持基材の厚さは、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。透明支持基材の厚さは、500μm以下が好ましく、480μm以下がより好ましく、450μm以下がさらに好ましく、400μm以下が特に好ましい。
【0081】
[未硬化の光干渉層]
未硬化の光干渉層は、活性エネルギー線硬化型の光干渉層形成組成物(以下、組成物Rと称す場合がある。)を含む。組成物Rは、活性エネルギー線により硬化する。活性エネルギー線の積算光量を調整することにより、光干渉層の硬度および/または延伸率を制御することができる。組成物Rは、ハードコート層形成組成物と同種の活性エネルギー線により硬化することが好ましい。活性エネルギー線は、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線である。組成物Rは、特に紫外線硬化型であることが好ましい。
【0082】
光干渉層は、低屈折率を有する層として機能する。硬化された光干渉層の屈折率は、例えば、1.20以上1.55以下であり、1.25以上1.50以下であってよく、1.30以上1.45以下であってよい。これにより、良好な反射防止性が発揮される。
【0083】
未硬化の光干渉層の厚さは、15nm以上200nm以下が好ましい。未硬化の光干渉層の厚さは、60nm以上がより好ましく、65nm以上が特に好ましい。未硬化の光干渉層の厚さは、180nm以下がより好ましい。未硬化の光干渉層の厚さがこの範囲であると、成形体に良好な反射防止性を付与できる。
【0084】
光干渉層は、未硬化の状態で未硬化のハードコート層と積層される。さらに、積層フィルムは、上記の通り、未硬化の状態で種々の加工に供される。そのため、光干渉層には、反射防止性能に加えて、ハードコート層と同様に、高い硬度を有すること、低タックであって汚染され難いこと、加工の際の損傷および外観変化が抑制されること、他の層との熱収縮性の違いによるカールが抑制されること等が求められる。特に、光干渉層には、優れた反射防止性能、低タックであって汚染され難いこと、加工の際の損傷(例えば、加飾工程における吸引跡等の凹み、スキージ痕)等が抑制されることが求められる。
【0085】
これらの要求は、未硬化の光干渉層の硬度、剛性、平滑性およびタック性等を制御することにより実現できる。未硬化の光干渉層の上記物性は、その厚みおよび光干渉層形成組成物の組成等によって調整可能である。
【0086】
《光干渉層形成組成物》
光干渉層形成組成物(組成物R)は、例えば、中空樹脂粒子とともに第1の層形成成分を含む。中空樹脂粒子は、光干渉層の強度を保持しつつ、その屈折率を下げることができる。
【0087】
〈中空樹脂粒子〉
中空樹脂粒子は、樹脂粒子の内部に気体が充填された空間(孔)を有する。空間は、1以上あればよく、複数であってもよい。屈折率は、気体の占有率に反比例して低下する。そのため、中空樹脂粒子は、中空を有さない粒子の屈折率に比べて、低い屈折率を有する。
【0088】
中空樹脂粒子の屈折率は、1.1以上1.5以下が好ましい。屈折率は、1.15以上がより好ましく、1.2以上が特に好ましい。屈折率は、1.45以下がより好ましく、1.4以下が特に好ましい。
【0089】
中空樹脂粒子の中空率は特に限定されず、屈折率等を考慮して適宜設定すればよい。中空率は、例えば、10%以上90%以下であってよい。中空率は、中空樹脂粒子のみかけの体積に占める、内部空間の総体積の割合である。中空率は、20%以上が好ましい。中空率は、80%以下が好ましい。
【0090】
中空樹脂粒子を構成する樹脂は特に限定されない。構成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ビニル樹脂が挙げられる。分散性の観点から、構成樹脂は、光干渉層に含まれる樹脂成分と同種であることが好ましい。
【0091】
中空樹脂粒子の表面には、活性エネルギー線硬化性の官能基が存在していてもよい。活性エネルギー線硬化性の官能基としては、例えば、(メタ)アクリル基が挙げられる。このような中空樹脂粒子は、例えば、アクリル酸により、中空樹脂粒子の表面を処理することにより得られる。
【0092】
光干渉層の膜厚は、中空樹脂粒子の平均粒子径等を考慮して設計される。具体的には、光干渉層は、中空樹脂粒子の平均粒子径より過度に薄くならないように設計される。これにより、光干渉層の表面から中空樹脂粒子が露出し難くなって、光干渉層表面を摩擦した際の、光干渉層からの中空樹脂粒子の脱落が抑制される。よって、耐摩耗性がより向上し易くなる。
【0093】
言い換えれば、耐摩耗性の観点から、中空樹脂粒子の平均粒子径は、光干渉層の膜厚より過度に大きくないことが望ましい。一方、屈折率の観点から、中空率は大きい方が望ましく、中空樹脂粒子の平均粒子径もまた、大きい方が望ましい。本実施形態で用いられる中空樹脂粒子の平均粒子径は、未硬化の光干渉層の厚みの40%以上125%以下であってよい。このような大きな粒子径を有する中空樹脂粒子を含んでいても、光干渉層は、高い平滑性を有する。中空樹脂粒子の平均粒子径は、未硬化の光干渉層の厚みの45%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。中空樹脂粒子の平均粒子径は、未硬化の光干渉層の厚みの110%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。
【0094】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、1次粒子径であって、レーザ回折・散乱法により得られた体積基準の粒度分布における50%平均粒子径(D50)である。
【0095】
中空樹脂粒子の平均粒子径は、具体的には、10nm以上150nm以下が好ましい。中空樹脂粒子の平均粒子径は、20nm以上がより好ましく、30nm以上が特に好ましい。中空樹脂粒子の平均粒子径は、120nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
【0096】
中空樹脂粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、15質量部以上80質量部以下が好ましい。これにより、光干渉層は、高い平滑性を有しながら、優れた反射防止性を発揮し易い。中空樹脂粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましい。中空樹脂粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、75質量部以下がより好ましく、70質量部以下が特に好ましい。
【0097】
〈その他の低屈折粒子〉
組成物Rは、中空樹脂粒子以外の低屈折粒子を含んでいてよい。ただし、耐摩耗性および耐アルカリ性の観点から、その含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。低屈折粒子としては、例えば、中空シリカ粒子が挙げられる。中空シリカ粒子は、例えば、ナノポーラス構造を有する。
【0098】
〈第1の層形成成分〉
第1の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第1反応性成分を含む。第1反応性成分は、第1モノマー、第1オリゴマーおよび第1ポリマーよりなる群から選択される少なくとも1種を含む。第1モノマーおよび第1オリゴマーの重量平均分子量は、1万以下であり、9000以下であってよい。第1ポリマーの重量平均分子量は、1万超であり、2万以上であってよい。第1ポリマーの重量平均分子量は、10万以下であってよい。
【0099】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから、標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出できる。
【0100】
耐摩耗性が向上し易い点で、第1反応性成分は、第1モノマーおよび第1オリゴマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。第1モノマーおよび第1オリゴマーの合計の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。第1モノマーおよび第1オリゴマーの合計の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、60質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、50質量部以下が特に好ましい。一態様において、第1モノマーおよび第1オリゴマーの合計の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、5質量部以上55質量部以下である。
【0101】
第1モノマーおよび第1オリゴマーのアクリル当量は特に限定されない。反応性の点で、第1モノマーおよび第1オリゴマーのアクリル当量は、100g/eq.以上が好ましく、110g/eq.以上がより好ましく、115g/eq.以上が特に好ましい。第1モノマーおよび第1オリゴマーのアクリル当量は、200g/eq.以下であってよく、180g/eq.以下であってよく、160g/eq.以下であってよい。
【0102】
第1ポリマーの含有量は、例えば、組成物Rの固形分100質量部に対して、20質量部以下である。第1ポリマーの含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましい。第1ポリマーの含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、15質量部以下が好ましい。
【0103】
透明支持基材およびハードコート層との密着性や、透明性の観点から、第1反応性成分は、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、アクリル(メタ)アクリレートモノマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーおよびアクリル(メタ)アクリレートポリマー等のアクリル(メタ)アクリレート化合物;ウレタン(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートポリマー等のウレタン(メタ)アクリレート化合物;シリコン(メタ)アクリレートモノマー、シリコン(メタ)アクリレートオリゴマーおよびシリコン(メタ)アクリレートポリマー等のシリコン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタクリレートを表わす。
【0104】
(メタ)アクリレート化合物の原料である(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸イソステアリル、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(PETA)、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0105】
アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、上記の(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種の重合物が挙げられる。
【0106】
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーは、例えばポリカーボネートジオールと、分子中に水酸基と不飽和二重結合基とを含有する(メタ)アクリレート化合物と、ポリイソシアネートと、を反応させることによって調製することもできる。
【0107】
ウレタン(メタ)アクリレートポリマーとしては、例えば、上記のウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーの少なくとも1種の重合物が挙げられる。
【0108】
シリコン(メタ)アクリレート化合物は、シロキサン結合を有する(メタ)アクリレート化合物である。特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、シリコン(メタ)アクリレート化合物により、未硬化のハードコート層のレベリング性の向上およびタックの低減が可能となる。
【0109】
第1の層形成成分は、1分子中に含まれる重合性官能基が2未満の非反応性成分を含んでもよい。
【0110】
耐摩耗性や防汚性の向上、屈折率低下などの観点から、第1反応性成分(代表的には、(メタ)アクリレート化合物)は、フッ素原子を含んでいてもよい。第1の層形成成分は、1分子中に含まれる重合性官能基が2未満の非反応性成分を含んでもよい。
【0111】
<無機酸化物微粒子>
組成物Rは、無機酸化物微粒子を含んでもよい。無機酸化物微粒子により、未硬化の光干渉層の体積収縮が抑制されるとともに、剛性が高まり易くなる。そのため、未硬化の光干渉層の製造工程中の外観変化が抑制され易い。さらに、硬化された光干渉層の外観変化やカールの発生も抑制される。加えて、硬化された光干渉層のタック性が低減するとともに耐摩耗性が高まり易い。
【0112】
無機酸化物微粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。無機酸化物微粒子の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。
【0113】
無機酸化物微粒子は特に限定されない。無機酸化物微粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)粒子(ただし、中空のものを除く)、アルミナ粒子、チタニア粒子、酸化スズ粒子、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粒子、酸化亜鉛粒子が挙げられる。無機酸化物微粒子の表面は、不飽和二重結合を含む官能基によって修飾されていてよい。官能基としては、(メタ)アクリロイル基が望ましい。なかでも、コストおよび塗料安定性の観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子が好ましく、特に、表面が官能基により修飾されたシリカ粒子、アルミナ粒子が好ましい。無機酸化物微粒子の形態はゾルであってよい。
【0114】
無機酸化物微粒子の平均粒子径は特に限定されない。透明性および組成物の性状安定性の観点から、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5nm以上100nm以下が好ましい。無機酸化物微粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡によって得られる断面の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される値である。他の粒状物の平均粒子径も、同様の方法により求められる。
【0115】
<光重合開始剤>
組成物Rは、光重合開始剤を含むのが好ましい。これにより、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分の重合が進行し易くなる。
【0116】
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系重合開始剤が挙げられる。
【0117】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンが挙げられる。
【0118】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0119】
チタノセン系光重合開始剤として、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0120】
オキシムエステル系重合開始剤として、例えば、1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルが挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0121】
なかでも、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0122】
光重合開始剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。光重合開始剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
【0123】
<溶媒>
組成物Rは、溶媒を含んでもよい。溶媒は特に限定されず、組成物に含まれる成分、透明支持基材の種類および塗布方法等を考慮して、適宜選択される。
【0124】
溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましい。
【0125】
〈その他〉
組成物Rは、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、表面改質剤、レベリング剤および光安定剤が挙げられる。
【0126】
各添加剤の含有量は特に限定されず、所望の効果に応じて適宜設定すればよい。各添加剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、例えば、1質量部以上であってよく、3質量部以上であってよく、5質量部以上であってよい。各添加剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、20質量部以下であってよく、15質量部以下であってよい。
【0127】
なかでも、紫外線吸収剤および/または光安定剤が含まれることが好ましい。これらの添加剤は、積層フィルムの紫外線による光劣化を抑制する。さらに、これらの添加剤は、積層フィルムを製造する工程および/または当該積層フィルムを用いた成形体を製造する工程における、積層フィルムの劣化も抑制し得る。上記の工程では、積層フィルムやその材料が加熱されるため、これらを劣化させるラジカルおよび活性酸素が発生する。しかし、紫外線吸収剤および/または光安定剤は、このラジカルおよび活性酸素を捕捉したり分解したりする。このように積層フィルム等の劣化が抑制されることにより、積層フィルムが延伸される際のクラックの発生は、さらに抑制され易くなる。
【0128】
紫外線吸収剤および光安定剤の含有量はそれぞれ、組成物Rの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。紫外線吸収剤および光安定剤の含有量は、組成物Rの固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0129】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラジカル重合性化合物、無機系化合物、および、紫外線吸収性を有する重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0130】
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’ジメトキシベンゾフェノン(例えば、BASF社製「UVINUL3049」)、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン(例えば、BASF社製「UVINUL3050」)、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-ベンゾイルー2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ステアリルオキシベンゾフェノン、4,6-ジベンゾイルレゾルチノールが挙げられる。
【0131】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル-3-〔3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物(例えば、BASF社製「TINUVIN1130」)、イソオクチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(例えば、BASF社製「TINUVIN384」)、2-(3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(例えば、BASF社製「TINUVIN571」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(例えば、BASF社製「TINUVIN900」)が挙げられる。
【0132】
その他、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、BASF社製の、TINUVIN384-2、TINUVIN326、TINUVIN327、TINUVIN109、TINUVIN970、TINUVIN328、TINUVIN171、TINUVIN970、TINUVIN PS、TINUVIN P、TINUVIN99-2、TINVIN928(いずれも商品名)が使用できる。
【0133】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビスブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(例えば、BASF社製「TINUVIN460」)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4、6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン(例えば、BASF社製「TINUVIN479」)が挙げられる。
【0134】
その他、トリアジン系紫外線吸収剤として、BASF社製の、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN477、TINUVIN1600(いずれも商品名)が使用できる。
【0135】
マロン酸エステル系紫外線吸収剤として、クラリアント社製の、HOSTAVIN PR25、HOSTAVIN B-CAP、HOSTAVIN VSU(いずれも商品名、)が使用できる。
【0136】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤として、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(例えば、BASF社製「UVINUL3035」)、(2-エチルヘキシル)-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート(例えば、BASF社製「UVINUL3039」)、1,3-ビス((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)-2,2-ビス-(((2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ)メチル)プロパン(例えば、BASF社製「UVINUL3030)が挙げられる。
【0137】
ラジカル重合性紫外線吸収剤として、例えば、2-ヒドロキシ-4-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-アクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-メタクリロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-エトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(メタクリロキシ-ジエトキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(アクリロキシ-トリエトキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(例えば、大塚化学株式会社製「RUVA-93」)、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチル-3-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリリルオキシプロピル-3-tert-ブチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、3-メタクリロイル-2-ヒドロキシプロピル-3-〔3’-(2’’-ベンゾトリアゾリル)-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチル〕フェニルプロピオネート(例えば、日本チバガイギー株式会社製「CGL-104」)が挙げられる。
【0138】
無機系紫外線吸収剤として、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化銅、酸化錫、酸化チタンが挙げられる。
【0139】
紫外線吸収性を有する重合体として、株式会社日本触媒製の、UV-G101、UV-G301、UV-G137、UV-G12、UV-G13(いずれも商品名)が使用できる。
【0140】
(光安定剤)
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物および光安定性を有する重合体の少なくとも1種が挙げられる。光安定性を有する重合体は、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンを基本骨格として有するアクリル樹脂である。
【0141】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-セバケートの混合物(例えば、BASF社製「TINUVIN292」)、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートが挙げられる。
【0142】
その他、ヒンダードアミン系光安定剤として、BASF社製の、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN152、TINUVIN249、TINUVIN292、TINUVIN5100(いずれも商品名)が使用できる。
【0143】
ヒンダードアミン系光安定剤は、ラジカル重合性のヒンダードアミン系化合物を含む。ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,-テトラメチル-4-イミノピペリジルメタクリレート、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、4-シアノ-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートが挙げられる。
【0144】
光安定性を有する重合体として、株式会社日本触媒の、ユーダブルE-133、ユーダブルE-135、ユーダブルS-2000、ユーダブルS-2834、ユーダブルS-2840、ユーダブルS-2818、ユーダブルS-2860(いずれも商品名)が使用できる。
【0145】
[未硬化のハードコート層]
未硬化のハードコート層は、活性エネルギー線硬化型のハードコート層形成組成物(以下、組成物HCと称す場合がある。)を含む。組成物HCは、活性エネルギー線により硬化する。活性エネルギー線の積算光量を調整することにより、ハードコート層の硬度および/または延伸率を制御することができる。活性エネルギー線は、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線である。組成物HCは、特に紫外線硬化型であることが好ましい。組成物HCは、組成物Rと同種の活性エネルギー線により硬化することが好ましい。
【0146】
未硬化のハードコート層の厚さは特に限定されない。未硬化のハードコート層の厚さは、例えば、2μm以上30μm以下である。未硬化のハードコート層とは、乾燥後であって、かつ、未硬化のハードコート層である(以下、単に未硬化のハードコート層と称する。)。未硬化のハードコート層がこのような厚さを有することにより、硬化後の反りが抑制され易い。また、優れたハードコート性能を有するハードコート層が得られる。
【0147】
未硬化のハードコート層の厚さは、3μm以上がより好ましい。未硬化のハードコート層の厚さは、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0148】
ハードコート層もまた、未硬化の状態で未硬化の光干渉層と積層される。さらに、積層フィルムは、未硬化の状態で種々の加工に供される。そのため、未硬化のハードコート層には、高い硬度を有すること、低タックであって汚染され難いこと、加工の際の損傷および外観変化(例えば、プレフォーム工程における発泡、クラック)が抑制されること、他の層との熱収縮性の違いによるカールが抑制されること等が求められる。
【0149】
これらの要求は、未硬化のハードコート層の硬度、剛性、平滑性およびタック性等を制御することにより実現できる。未硬化のハードコート層の上記物性は、その厚みおよびハードコート層形成組成物の組成等によって調整可能である。
【0150】
《ハードコート層形成組成物》
ハードコート層形成組成物(組成物HC)は、第2の層形成成分を含む。
【0151】
〈第2の層形成成分〉
第2の層形成成分は、1分子中に重合性官能基を2つ以上有する第2反応性成分を含む。第2反応性成分は、第2モノマーおよび第2オリゴマーの少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、第2の層形成成分の架橋密度が高まって、硬化されたハードコート層の硬度が向上し易くなる。第2モノマーおよび第2オリゴマーの重量平均分子量は、1万以下であり、9000以下であってよい。
【0152】
第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、25質量部以上65質量部以下が好ましい。第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量が、組成物HCの固形分100質量部に対して、25質量部以上であると、硬度HBCが0.5GPa以下に制御され易くなる。そのため、未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層とが密着し易くなる。さらに、未硬化ハードコート層と未硬化の光干渉層とをラミネートする際、層間に空気が入り込むこと(エア噛み)が抑制され易くなる。第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、28質量部以上がより好ましく、30質量部以上が特に好ましい。
【0153】
第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量が、組成物HCの固形分100質量部に対して、65質量部以下であると、硬度HBCが0.05GPa以上に制御され易くなる。そのため、スリット形成および裁断の際の凹みや損傷、複数の積層フィルムを積層した際に混入する異物による凹み、スキージ痕あるいは吸引痕等の不具合が抑制されて、歩留まりが向上し易くなる。第2オリゴマーおよび第2モノマーの合計の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、62質量部以下がより好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
【0154】
組成物HCの固形分は、溶媒を除く組成物HCの全成分である。光干渉層形成組成物の固形分も同様である。
【0155】
未硬化のハードコート層のタック性を抑制できる点で、第2反応性成分は、第2モノマーおよび/または第2オリゴマーとともに、重量平均分子量が1万超の第2ポリマーを含むことが好ましい。第2ポリマーの重量平均分子量は、1万超であり、2万以上であってよい。第2ポリマーの重量平均分子量は、10万以下であってよい。
【0156】
第2ポリマーの含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、30質量部以上70質量部以下が好ましい。第2ポリマーの含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、32質量部以上がより好ましく、35質量部以上が特に好ましい。第2ポリマーの含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、68質量部以下がより好ましく、65質量部以下が特に好ましい。
【0157】
好ましい第2反応性成分としては、第1反応性成分として例示されたものと同様の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。未硬化の光干渉層との密着性および透明性の観点から、第2反応性成分は、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0158】
<無機酸化物微粒子>
組成物HCは、無機酸化物微粒子を含んでもよい。無機酸化物微粒子としては、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。無機酸化物微粒子の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、7質量部以上が特に好ましい。無機酸化物微粒子の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましく、15質量部以下が特に好ましい。
【0159】
<光重合開始剤>
組成物HCは、光重合開始剤を含むのが好ましい。これにより、活性エネルギー線硬化型の樹脂成分の重合が進行し易くなる。光重合開始剤として、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。
【0160】
なかでも、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0161】
光重合開始剤の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0162】
<溶媒>
組成物HCは、溶媒を含んでもよい。溶媒は特に限定されず、組成物に含まれる成分、透明支持基材の種類および塗布方法等を考慮して、適宜選択される。溶媒としては、組成物Rに関して例示されたものが同様に挙げられる。なかでも、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましい。
【0163】
〈その他〉
組成物HCは、必要に応じて、種々の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、表面改質剤、レベリング剤および光安定剤が挙げられる。
【0164】
各添加剤の含有量は特に限定されず、所望の効果に応じて適宜設定すればよい。各添加剤の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、例えば、1質量部以上であってよく、3質量部以上であってよく、5質量部以上であってよい。各添加剤の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、20質量部以下であってよく、15質量部以下であってよい。
【0165】
なかでも、上記と同様の観点から、紫外線吸収剤および/または光安定剤が含まれることが好ましい。紫外線吸収剤および光安定剤の含有量はそれぞれ、組成物HCの固形分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。紫外線吸収剤および光安定剤の含有量は、組成物HCの固形分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。
【0166】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラジカル重合性化合物、無機系化合物、および、紫外線吸収性を有する重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。各化合物および重合体の具体例としては、組成物Rに関して挙げられたものが同様に挙げられる。
【0167】
(光安定剤)
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物および光安定性を有する重合体の少なくとも1種が挙げられる。光安定性を有する重合体は、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンを基本骨格として有するアクリル樹脂である。上記化合物および重合体の具体例としては、組成物Rに関して挙げられたものが同様に挙げられる。
【0168】
組成物HCおよび組成物Rに含まれる層形成成分は、同じであってよく、異なっていてもよい。なかでも、両者の層形成成分は、同一あるいは同種であることが好ましい。未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との密着性が向上し、層間の剥離が生じ難くなるためである。
【0169】
[未硬化の機能層]
積層フィルムは、未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との間に、さらに、少なくとも1つの未硬化の機能層を有していてもよい。機能層により、積層フィルムの光学的機能が補強されたり、新たな光学的機能が付与されたりする。
【0170】
機能層は、上記の光干渉層とは異なる光学的特性を有する、他の光干渉層であってよい。機能層は、上記の光干渉層とは異なる特性を有する、他の2以上の光干渉層の組み合わせであってよい。
【0171】
好ましい機能層は、例えば、高屈折率を有する光干渉層および中屈折率を有する光干渉層の少なくとも一方である。高屈折率層の屈折率は、1.55超2.00以下であってよい。中屈折率層の屈折率は特に限定されず、光干渉層(低屈折率層)と高屈折率層との間であればよい。中屈折率層の屈折率は、例えば、1.55以上1.75以下であってよい。
【0172】
他の光干渉層の厚さは特に限定されない。他の光干渉層の1層当たりの厚さは、10nm以上300nm以下であってよい。光干渉層の1層当たりの厚さは、15nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、40nm以上が特に好ましい。光干渉層の1層当たりの厚さは、200nm以下が好ましく、180nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。
【0173】
機能層を形成する機能層形成組成物は、上記の組成物HCまたは組成物Rに含まれる成分と同様のものを含み得る。他の光干渉層を形成する機能層形成組成物は、組成物Rに含まれる成分と同様のものを含み得る。他の光干渉層を形成する機能層形成組成物は、高屈折粒子を含んでいてもよい。複数の機能層に含まれる成分は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0174】
高屈折率層および中屈折率層は、活性エネルギー線硬化型以外の樹脂成分を含んでもよい。他の樹脂成分としては、例えば、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ系樹脂、フェノ-ル系樹脂、メラミン系樹脂ウレタン系樹脂およびシリコン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリイソシアネートが挙げられる。
【0175】
[保護フィルム]
積層フィルムは、未硬化の光干渉層の、未硬化のハードコート層とは反対側の面に、保護フィルムを有していてもよい。これにより、積層フィルムをロール状に巻き取ったり、ロールから巻き出したりする際、損傷が抑制され易い。
【0176】
保護フィルムは、光干渉層および積層フィルムを保護するとともに、組成物Rをフィルム状に成形するための離型紙として機能する。この場合、保護フィルムは、後述する「他の支持基材」に相当する。保護フィルムは、塗布面に粘着層を有してもよい。
【0177】
当分野において公知である保護フィルムが、特に制限されることなく用いられる。保護フィルムは、無色であってもよく、有色であってもよい。保護フィルムは、透明であってもよい。
【0178】
保護フィルムの厚さは、特に限定されない。保護フィルムの厚さは、20μm以上100μm以下であってよい。これにより、未硬化の光干渉層の保護効果が高まり易い。保護フィルムの厚さは、25μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、33μm以上がさらに好ましく、35μm以上が特に好ましい。保護フィルムの厚さは、85μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、65μm以下が特に好ましい。保護フィルムの厚さは、粘着層の厚さを含まない値である。
【0179】
保護フィルムは、例えば樹脂製である。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム(無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)を含む)等のポリオレフィンフィルム;これらを変性した変性ポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリ乳酸等のポリエステルフィルム;ポリスチレンフィルム、AS樹脂フィルムおよびABS樹脂フィルム等のポリスチレン系樹脂フィルム;ナイロンフィルム;ポリアミドフィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;ポリ塩化ビニリデンフィルム;ポリメチルペンテンフィルムが挙げられる。なかでも、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、変性ポリオレフィンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、OPPフィルムおよびCPPフィルムから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0180】
樹脂フィルムには、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。樹脂フィルムの表面は、コロナ処理あるいは低温プラズマ処理が施されていてもよい。
【0181】
図1は、本実施形態に係る積層フィルムを模式的に示す断面図である。積層フィルム10は、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された未硬化のハードコート層12と、未硬化のハードコート層12上に形成された未硬化の光干渉層13と、を備える。
【0182】
B.成形体
本実施形態に係る成形体は、上記積層フィルムの硬化物を含む。成形体は、透明支持基材と、硬化されたハードコート層と、硬化された光干渉層と、を有する。成形体は、硬化されたハードコート層と硬化された光干渉層との間に、さらに、少なくとも1つの硬化された機能層を有していてもよい。成形体は、さらに、保護フィルムを有していてもよいし、有していなくてもよい。保護フィルムは、使用目的に応じて、使用される。
【0183】
成形体は、例えば、立体形状に成形された積層フィルムに、積算光量200mJ/cm2以上の活性エネルギー線を照射して、未硬化のハードコート層および未硬化の光干渉層を完全に硬化させることにより得られる。
【0184】
成形体は、ディスプレイおよびその周辺に配置される各種センサーの保護材として特に好適である。ディスプレイとして、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイが挙げられる。成形体は、特に、車載用のタッチパネルディスプレイおよびその周辺の保護材として適している。成形体は、光干渉層がハードコート層より外側になるように配置される。
【0185】
[加飾層]
成形体は、さらに加飾層を備えていてもよい。加飾層は、模様、文字または金属光沢等の装飾を成形体に与える層である。加飾層により、成形体の意匠性が高まる。
【0186】
成形体は、例えば、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層および光干渉層と、透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層と、を備える。加飾層は、透明支持基材の他方の主面の一部に設けられてもよい。成形体がディスプレイの保護材である場合、加飾層は、例えば、ディスプレイを囲むベゼル部分に設けられる。
【0187】
加飾層としては、例えば、印刷層および蒸着層の少なくとも1つが挙げられる。印刷層および蒸着層はそれぞれ、1以上の層であり、複数の層を備えていてもよい。加飾層の厚さは特に限定されず、意匠性等に応じて、適宜設定される。
【0188】
印刷層には、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、砂目模様、幾何学模様、文字、全面ベタが描かれる。印刷層は、例えば、バインダー樹脂と着色剤とを含む着色インキにより形成される。バインダー樹脂は特に限定されない。バインダー樹脂としては、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体等のポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0189】
着色剤は特に限定されず、公知の顔料または染料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン等の有機顔料またはチタンニッケルアンチモン酸化物等の無機顔料が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドン等の有機顔料または弁柄等の無機顔料が挙げられる。青色顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー等の有機顔料またはコバルトブルー等の無機顔料が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。白色顔料としては、例えば、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。
【0190】
蒸着層は、例えば、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、スズ、銀、チタニウム、鉛、亜鉛等の群から選ばれる少なくとも一つの金属、またはこれらの合金もしくは化合物により形成される。
【0191】
[成形樹脂層]
成形体は、さらに成形樹脂層を備えていてもよい。成形樹脂層は、透明支持基材とともにハードコート層および光干渉層を支持する。成形体は、例えば、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層および光干渉層と、透明支持基材の他方の主面に配置された成形樹脂層と、を備える。成形樹脂層の形状は制限されない。そのため、成形体のデザインの自由度が高まる。
【0192】
成形体は、透明支持基材と、透明支持基材の一方の主面に配置されたハードコート層および光干渉層と、透明支持基材の他方の主面に配置された加飾層と、成形樹脂層と、を備えていてもよい。この場合、加飾層は、透明支持基材と成形樹脂層とで挟まれるように配置される。
【0193】
成形樹脂層を形成する樹脂(成形用樹脂)は特に限定されない。成形樹脂層は、例えば、熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、いわゆるエンジニアリングプラスチックが挙げられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーが挙げられる。
【0194】
図2は、本実施形態に係る成形体を模式的に示す断面図である。成形体20は、透明支持基材11と、その一方の主面に配置された硬化されたハードコート層22と、ハードコート層22上に形成された硬化された光干渉層23と、加飾層24と、成形樹脂層25と、を備える。加飾層24は、透明支持基材11の他方の主面の一部を覆うように配置されている。成形樹脂層25は、透明支持基材11の他方の主面全体および加飾層24の全体を覆うように配置されている。
【0195】
C.積層フィルムの製造方法
本実施形態に係る積層フィルムは、透明支持基材の一方の面上に、未硬化のハードコート層を形成する工程と、他の支持基材の一方の面上に、未硬化の光干渉層を形成する工程と、未硬化のハードコート層の透明支持基材とは反対側の面と、未硬化の光干渉層の他の支持基材とは反対側の面とを貼り合わせて積層フィルムを得るラミネート工程と、を備える方法により製造される。未硬化の光干渉層は、中空樹脂粒子を含む。得られる積層フィルムの未硬化の光干渉層の表面の算術平均粗さRaは、0.05μm以下である。
図3は、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法を示すフローチャートである。
【0196】
未硬化の光干渉層を形成する工程において、光干渉層の外表面には、中空樹脂粒子に由来する凹凸が形成され得る一方、光干渉層の他の支持基材側の表面(内表面)は、平滑である。そして、凹凸のある外表面と未硬化のハードコート層とを貼り合わせ、他の支持基材を剥離すると、平滑な光干渉層の内表面が表出する。これにより、平滑な光干渉層を備える積層フィルムが得られる。未硬化の光干渉層の表面の算術平均粗さRaは、他の支持基材が剥離された状態で測定される。
【0197】
加えて、ラミネート法によれば、未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との密着性が高くなる一方、混相が抑制され易い。そのため、優れた反射防止性能が発揮される。ラミネート法は、アフターキュア型の積層フィルムを製造するのに適した方法である。
【0198】
(1-1)未硬化のハードコート層を形成する工程(S11)
未硬化のハードコート層を形成する方法は特に限定されない。未硬化のハードコート層は、透明支持基材の一方の面上に、例えば、上記の組成物HCを塗布することにより形成される。
【0199】
組成物HCは、当業者において通常行われる手法によって調製することができる。例えば、ペイントシェーカー、ミキサー等の通常用いられる混合装置を用いて、上記各成分を混合することによって調製することができる。
【0200】
組成物HCの塗布方法は、特に限定されず、当業者において通常行われる手法によって行われる。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、バーコート法(例えば、ワイヤーバーコート法)、ダイコート法、インクジェット法およびグラビアコート法が挙げられる。
【0201】
組成物HCの塗布量は特に限定されない。組成物HCは、例えば、乾燥後であって、未硬化のハードコート層の厚さが2μm以上30μm以下になるように、塗布される。
【0202】
塗布後、乾燥工程を行ってもよい。乾燥条件は特に限定されず、組成物HCに含まれる溶剤の少なくとも一部が除去されるように、適宜設定される。乾燥方法としては、例えば、風乾(自然乾燥)、加熱乾燥、真空乾燥が挙げられる。なかでも、加熱乾燥が好ましい。加熱によって、乾燥とともに、未硬化のハードコート層がレベリングされ得る。乾燥は、透明支持基材上に未硬化のハードコート層が形成されてから、未硬化のハードコート層がラミネート工程に供されるまでの間に行われる。例えば、未硬化のハードコート層を備える透明支持基材がラミネート加工機に搬入される前に、未硬化のハードコート層が乾燥される。
【0203】
未硬化のハードコート層が形成された後、透明支持基材は、ロール状に巻き取られてもよい。これにより、ラミネート工程まで、ロールtoロール処理が可能となる。さらに、未硬化のハードコート層の表面に保護用のフィルムを貼り合わせた後、透明支持基材を巻き取ってもよい。保護用のフィルムと未硬化のハードコート層とは、粘着層を介して貼り合わされてもよい。
【0204】
(1-2)未硬化の光干渉層を形成する工程(S12)
未硬化の光干渉層を形成する方法は特に限定されない。未硬化の光干渉層は、他の支持基材(代表的には、上記の保護フィルム)の一方の面上に、例えば、上記の組成物Rを塗布することにより形成される。組成物Rの調製および塗布は、組成物HCと同様に、当業者において通常行われる手法によって行われる。
【0205】
組成物Rの塗布量は特に限定されない。組成物Rは、例えば、乾燥後であって、未硬化の光干渉層の厚さが15nm以上200nm以下になるように、塗布される。
【0206】
塗布後、乾燥工程を行ってもよい。乾燥条件は特に限定されず、組成物Rに含まれる溶剤の少なくとも一部が除去されるように、適宜設定される。乾燥方法としては、ハードコート層の乾燥と同様の方法が挙げられる。なかでも、加熱乾燥が好ましい。加熱によって、形成される未硬化の光干渉層の外表面には、中空樹脂粒子由来の凹凸が形成され得る。
【0207】
乾燥は、他の支持基材上に未硬化の光干渉層が形成されてから、未硬化の光干渉層がラミネート工程に供されるまでの間に行われる。例えば、未硬化の光干渉層を備える他の支持基材がラミネート加工機に搬入される前に、未硬化の光干渉層が乾燥される。
【0208】
未硬化の光干渉層が形成された後、他の支持基材は、ロール状に巻き取られてもよい。これにより、ラミネート工程まで、ロールtoロール処理が可能となる。さらに、未硬化の光干渉層の表面に保護用のフィルムを貼り合わせた後、他の支持基材を巻き取ってもよい。保護用のフィルムと未硬化の光干渉層とは、粘着層を介して貼り合わされてもよい。
【0209】
(1-3)ラミネート工程(S13)
他の支持基材上に形成された未硬化の光干渉層と、透明支持基材上に形成された未硬化のハードコート層とが貼り合わされる。これにより、積層フィルムが得られる。
【0210】
未硬化の光干渉層が形成された他の支持基材が巻き取られている場合、未硬化のハードコート層を備える透明支持基材をラミネート機に搬入するとともに、巻き取られていた他の支持基材を、巻き出しながらラミネート機に搬入する。
【0211】
未硬化のハードコート層が形成された透明支持基材が巻き取られている場合、未硬化の光干渉層を備える他の支持基材をラミネート機に搬入するとともに、巻き取られていた透明支持基材を、巻き出しながらラミネート機に搬入する。
【0212】
貼り合わせは、圧力をかけながら行われるのが好ましい。圧力は、例えば、0.1N/cm以上50N/cm以下であればよい。圧力は、0.5N/cm以上が好ましい。圧力は、30N/cm以下が好ましい。
【0213】
貼り合わせの際の各層の温度は、特に限定されない。各層はいずれも未硬化であるため、低温で貼り合わせることができる。一方、ラミネート法では混相の発生が抑制され易いため、貼り合わせの際に各層を加温してもよい。貼り合わせの際の各層の温度は、0℃以上100℃以下であってよい。
【0214】
ラミネート工程の後、積層フィルムはロール状に巻き取られてもよい。この場合、他の支持基材は剥離されていないことが好ましい。
【0215】
得られた積層フィルムは、レベリングのために加熱されてもよい。加熱は、例えば、150℃以上190℃以下の雰囲気下で30秒以上60秒以下の間、行われる。加熱の前に、他の支持基材は剥離されてもよい。レベリングは、プレフォーム工程において加えられる熱を利用して行われてもよい。
【0216】
未硬化のハードコート層と未硬化の光干渉層との間に、未硬化の機能層を備える積層フィルムは、例えば、以下の工程により製造される。
まず、他の未硬化の機能層を、新たな支持基材上に形成する。次いで、未硬化のハードコート層の透明支持基材とは反対側の面と、未硬化の機能層の新たな支持基材とは反対側の面とを貼り合わせる。新たな支持基材を剥離した後、露出した未硬化の機能層に、他の支持基材で支持された未硬化の光干渉層を貼り合わせる。必要に応じて、光干渉層を貼り合わせる前に、未硬化の機能層を未硬化のハードコート層、あるいはこれに積層された未硬化の機能層に貼り合わせる工程を繰り返す。
【0217】
これにより、透明支持基材と、未硬化のハードコート層と、少なくとも1つの未硬化の機能層と、光干渉層と、他の支持基材と、をこの順に含む積層フィルムが得られる。他の支持基材は、剥離されてもよく、剥離されなくてもよい。
【0218】
図4は、本実施形態に係る積層フィルムの製造方法におけるラミネート工程を説明する概略図である。透明支持基材11の一方の面上に、未硬化のハードコート層12が形成されている。この積層体は、未硬化のハードコート層の形成工程で得られる。この積層体は、
図4の左方向から右方向に向かって、平坦な状態で搬送される。
【0219】
一方、他の支持基材14の一方の面上に、未硬化の光干渉層13が積層されている。この積層体は、未硬化の光干渉層の形成工程で得られる。この積層体は、
図4の左方向から右方向に向かって、平坦な状態で搬送される。
【0220】
これら積層体を搬送しながら、未硬化のハードコート層12の透明支持基材11とは反対側の面と、未硬化の光干渉層13の他の支持基材14とは反対側の面とを、一対のローラ30により圧力をかけながら。貼り合わせる。これにより、透明支持基材11と、未硬化のハードコート層12と、光干渉層13と、他の支持基材14と、をこの順に含む積層フィルムが得られる。
【0221】
図示例における各種寸法は、一態様に過ぎない。各層および各基材の厚みおよび大きさ、ローラの位置および大きさ等は、適宜設定すればよい。
【0222】
D.成形体の製造方法
本実施形態に係る成形体は、上記の積層フィルムを所望の形状(好ましくは、立体形状)に成形する工程と、その後、積層フィルムに活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備える方法により製造される。
【0223】
一態様によれば、本実施形態に係る成形体は、上記の積層フィルムの透明支持基材の他方の主面に加飾層を形成する加飾工程と、加飾工程の後、積層フィルムに活性エネルギー線を照射する硬化工程と、を備える方法により製造される。
【0224】
加飾工程の後、必要に応じて、射出成型工程、あるいは、プレフォーム工程および射出成型工程が行われる。プレフォーム工程では、積層フィルムが熱成形にて所望の立体形状に沿った形状に賦形される。
【0225】
プレフォーム工程が行われる場合、硬化工程は、複数回行われてもよい。例えば、プレフォーム工程の後に、積層フィルムの一部を硬化させるように活性エネルギー線を照射する、半硬化工程が行われてもよい。この場合、射出成型工程の後、積層フィルムの残部を硬化させるように活性エネルギー線を照射する、本硬化工程が行われる。本硬化工程では、積算光量200mJ/cm2以上の活性エネルギー線が照射される。
【0226】
すなわち、成形体は、例えば、加飾工程(S21)、プレフォーム工程(S22)、硬化工程(S23)および射出成型工程(S24)をこの順で備える方法により製造される。
図5は、本実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0227】
成形体はまた、例えば、加飾工程(S21)、プレフォーム工程(S22)、半硬化工程(S23-1)、射出成型工程(S24)および本硬化工程(S23-2)をこの順で備える方法により製造される。
図6は、本実施形態に係る他の成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【0228】
積層フィルムがロール状に巻き取られている場合、加飾工程の前に、積層フィルムをロールから巻き出して、スリットを形成したり、所望の形状および大きさに裁断したりする工程を行ってもよい。
以下、各工程について説明する。
【0229】
(2-1)加飾工程(S21)
積層フィルムの透明支持基材の他方の主面に、加飾層(代表的には、印刷層および蒸着層)を形成する。
【0230】
印刷層の形成方法は特に限定されない。印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロールコート法およびスプレーコート法が挙げられる。蒸着層の形成方法も特に限定されない。蒸着層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法および鍍金法が挙げられる。
【0231】
(2-2)プレフォーム工程(S22)
積層フィルムを、所望の立体形状に沿った形状にプレフォームする。積層フィルムを、予め立体形状に近い形状に賦形することにより、射出成型(代表的には、インサートモールドラミネーション(IML)成型)が可能となる。IML成型では、積層フィルムが金型に挿入され、積層フィルムに向かって成形用樹脂が射出される。プレフォーム工程の後、積層フィルムの不要な部分を除去するトリミング工程を行ってもよい。
【0232】
プレフォームの方法は特に限定されない。プレフォームは、例えば、真空成型法、圧空成型法、真空圧空成型法により実行される。プレフォームでは、金型と積層フィルムとが同じ処理室に設置される。積層フィルムは、透明支持基材が金型に対向するように設置される。積層フィルムを加熱して、処理室を真空状態および/または加圧状態にする。これにより、積層フィルムは金型に沿って変形する。次いで、積層フィルムを冷却して、金型から取り外す。プレフォームの際、積層フィルムを、90℃以上190℃以下で、20秒以上5分以内で、加熱してもよい。
【0233】
(2-3)半硬化工程(S23-1)
積層フィルムの一部が硬化するように、活性エネルギー線を照射する。これにより、半硬化状態の積層フィルムが得られる。半硬化工程により、射出成型工程における積層フィルムの金型への貼り付きが抑制されるとともに、積層フィルムが、射出成型工程に必要な延伸率に調整されて、射出成型工程におけるクラックの発生を抑制することができる。活性エネルギー線の積算光量は、例えば、1mJ/cm2以上200mJ/cm2未満である。半硬化工程の後、積層フィルムの不要な部分を除去するトリミング工程を行ってもよい。
【0234】
活性エネルギー線の種類は特に限定されない。活性エネルギー線は、層形成組成物に含まれる樹脂成分の種類に応じて適宜選択される。活性エネルギー線は特に限定されず、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線であってよい。なかでも、380nm以下の波長を有する紫外線が好ましい。紫外線は、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯を用いて照射される。
【0235】
(2-4)射出成型工程(S24)
射出成型では、例えば、金型に光干渉層を対向させるとともに、透明支持基材に向かって成形用樹脂が射出される。これにより、積層フィルムが金型の形状に賦形されるとともに、透明支持基材の他方の主面に成形樹脂層が形成される。
【0236】
(2-5)硬化工程(S23)、本硬化工程(S23-2)
積層フィルムに活性エネルギー線を照射して、積層フィルムを完全硬化させる。これにより、成形体が得られる。積層フィルムを完全硬化させる工程で用いられる活性エネルギー線の積算光量は、200mJ/cm2以上である。活性エネルギー線の積算光量は、5000mJ/cm2以下であってよく、3000mJ/cm2以下であってよい。活性エネルギー線は、半硬化工程と同種であってよく、異なっていてもよい。
【0237】
以上、上記態様は一例であり、所望により公知の処理、加工工程等を導入してもよい。
【実施例】
【0238】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。以下、第2ポリマーおよび第1ポリマーを反応性ポリマーと総称する場合がある。同様に、第2モノマーおよび第1モノマーを反応性モノマーと総称し、第2オリゴマーおよび第1オリゴマーを反応性オリゴマーと総称する場合がある。
【0239】
実施例および比較例において使用された各成分は、以下のとおりである。
(反応性ポリマー)
アクリルポリマーA:Mw70,000
アクリルポリマーB:Mw20,000
【0240】
アクリルポリマーAおよびBは、以下のようにして調製した。
[アクリルポリマーAの調製]
2,3-エポキシプロピルメタクリレート30.0部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.5部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40.0部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、上記反応容器に、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン25.0部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエン59.0部を添加して、前駆体A1を得た。
【0241】
上記と同じ形の別の反応容器に、前駆体A1を226.5部、アクリル酸を15.66部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.43部、トルエンを56部、それぞれ仕込み、空気を吹き込んで攪拌しながら、90℃まで加熱した。90℃の温度条件下、この反応容器に、さらに、トルエン3.0部とテトラブチルアンモニウムブロマイド0.81部との混合溶液を添加し、1時間反応させた。続いて、105℃まで加熱し、反応液中の固形分の酸価が8以下になるまで、105℃の温度条件下で反応を行った。その後、上記反応溶液にハイドロキノンモノメチルエーテル0.43部とトルエン3.0部との混合溶液を添加し、温度を75℃にした。続いて、カレンズMOI(昭和電工製)10.1部とトルエン5.0部とジブチルチンジラウレート0.043部との混合溶液を添加して、70℃の温度条件下で2時間反応させた。その後、60℃以下に冷却して、メタノール2.0部とトルエン10.0部との混合溶液を添加した。これにより、重量平均分子量70,000のアクリルポリマーAを得た。
【0242】
酸価の測定は、JIS K5601-2-1に準じて、上記反応溶液を0.1Nの水酸化カリウム(KOH)溶液で滴定して、下式 酸価={(KOH溶液の滴下量[ml])×(KOH溶液のモル濃度[mol/L]}/(固形分の質量[g])に従って算出した。以下、同じである。
【0243】
[アクリルポリマーBの調製]
2,3-エポキシプロピルメタクリレート30.0部、メチルメタクリレート70部、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.0部からなる混合物を調製した。別途、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた500ml反応容器に、トルエン40.0部を投入し、110℃に加温した。この反応容器内を撹拌させながら、上記混合物を、窒素雰囲気下で2時間かけて等速で滴下した。滴下終了後、110℃の温度条件下で1時間反応を行った。その後、上記反応容器に、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン25.0部との混合溶液を、1時間かけて滴下した。次いで、反応容器内を145℃まで加熱して、さらに2時間反応させた。続いて、反応容器内を110℃以下に冷却し、さらにトルエン59.0部を添加して、前駆体B1を得た。
【0244】
上記と同じ形の別の反応容器に、前駆体B1を306.5部、アクリル酸を15.66部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.43部、トルエンを56部、それぞれ仕込み、空気を吹き込んで攪拌しながら、90℃まで加熱した。90℃の温度条件下、この反応容器に、さらに、トルエン3.0部とテトラブチルアンモニウムブロマイド0.81部との混合溶液を添加し、1時間反応させた。続いて、105℃まで加熱し、反応液中の固形分の酸価が8以下になるまで、105℃の温度条件下で反応を行った。その後、上記反応溶液にハイドロキノンモノメチルエーテル0.43部とトルエン3.0部との混合溶液を添加し、温度を75℃にした。続いて、カレンズMOI(昭和電工製)10.1部とトルエン5.0部とジブチルチンジラウレート0.043部との混合溶液を添加して、70℃の温度条件下で2時間反応させた。その後、60℃以下に冷却して、メタノール2.0部とトルエン10.0部との混合溶液を添加した。これにより、重量平均分子量20,000のアクリルポリマーBを得た。
【0245】
(反応性オリゴマー)
KRM-8452:ダイセル オルネクス社製、多官能ウレタンアクリレートオリゴマー、Mw3,884、アクリル当量120g/eq
【0246】
(反応性モノマー)
アロニックスM-402:東亜合成社製、DPHA
【0247】
(無機酸化物微粒子)
OSCAL 1842:日揮触媒化成工業社製、反応性シリカオルガノゾル、粒子径10nm
【0248】
(中空樹脂粒子)
中空樹脂粒子A:中空アクリル粒子、平均粒子径80nm、屈折率1.28
中空樹脂粒子B:中空アクリル粒子、平均粒子径80nm、屈折率1.28、ラジカル重合性基含有
中空樹脂粒子C:中空アクリル粒子、平均粒子径80nm、屈折率1.31、ラジカル重合性基含有
【0249】
(中空シリカ粒子)
スルーリア4320:日揮触媒社製、平均粒子径55nm
【0250】
(高屈折粒子)
NANON5 ZR-010:ソーラー社製、酸化ジルコニウム、平均粒子径20nm
【0251】
(光重合開始剤)
Omnirad 127:IGM RESINS社製、α-ヒドロキシアセトフェノン
Omnirad 184:IGM RESINS社製、α-ヒドロキシアルキルフェノン
【0252】
(表面調整剤)
オプツールDAC-HP:ダイキン工業社製
(表面改質剤)
メガファックRS-57:DIC社製
(光安定剤)
TINUVIN292:BASFジャパン社製
【0253】
(透明支持基材)
TB1:品名AW-10U、ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー社製、PMMAおよびPCからなる2層(PMMA/PC)フィルム、厚さ300μm
【0254】
(保護フィルム)
トレファン#40-2500、東レ社製、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、厚さ40μm
【0255】
[組成物LR1の調製]
アクリルポリマーB(反応性ポリマー)1.8部、アロニックスM-402(反応性モノマー)16.8部、オプツール DAC-HP(表面調整剤)11.2部、メガファックRS-57(表面改質剤)12.3部、TINUVIN292(光安定剤)3.0部、および、Omnirad127(光重合開始剤)3.4部を混合した。さらに、中空樹脂粒子A(中空樹脂粒子)51.5部を配合した。この混合物をプロピレングリコールモノメチルエーテルにより希釈して、固形分濃度3%の乳白色の組成物LR1を調整した。組成物LR1により形成される層の屈折率は、1.20以上1.55以下であった。
【0256】
[組成物LR2-LR7の調製]
表1Aに示す配合にしたこと以外は、組成物LR1と同様にして、固形分濃度3%の、乳白色の組成物LR2-LR7を調整した。組成物LR2からLR7により形成される層の屈折率は、いずれも1.20以上1.55以下であった。
【0257】
[機能層形成組成物HR1の調整]
表1Bに示す配合にしたこと以外は、組成物LR1と同様にして、固形分濃度3%の乳白色の機能層形成組成物HR1を調整した。組成物HR1により形成される層の屈折率は、1.55超2.00以下であった。
【0258】
[組成物HC1の調製]
表1Cに示すように、アクリルポリマーA(反応性ポリマー)31.0部、KRM-8452(反応性オリゴマー)35.2部、アロニックスM-402(反応性モノマー)20.7部、TINUVIN292(光安定剤)3.0部、OSCAL 1842(無機酸化物微粒子)4.0部、および、Omnirad184(光重合開始)6.1部を混合した。この混合物をメチルイソブチルケトンにより希釈して、固形分濃度35%の透明な組成物HC1を調整した。
【0259】
[実施例1]
(1)積層フィルムの製造
(1-1)未硬化の光干渉層の形成
トレファン#40-2500(保護フィルム)に、組成物LR1を、グラビアコーターにより、乾燥後の厚さが120nmになるよう塗布した。その後、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させて、未硬化の光干渉層を形成した。未硬化の光干渉層が形成された保護フィルムを、ロール状に巻き取った。
以下、組成物LR1-LR7により形成された光干渉層を「LR層」と表記する場合がある。
【0260】
(1-2)未硬化のハードコート層の形成
透明支持基材TB1のPMMAの面に、グラビアコーターにより、組成物HC1を乾燥後の厚さが12μmになるよう塗布した。その後、80℃で1分間乾燥させて溶媒を揮発させて、未硬化のハードコート層を形成した。
以下、組成物HC1により形成されたハードコート層を「HC層」と表記する場合がある。
【0261】
(1-3)未硬化のHC層とLR層との積層
ロール状に巻き取られた保護フィルムを巻き出しながら、透明支持基材TB1で支持された未硬化のHC層表面と、保護フィルムで支持された未硬化のLR層表面とを貼り合わせた。これにより、透明支持基材と、未硬化のHC層と、未硬化のLR層と、保護フィルムと、をこの順で有する積層フィルムを製造した。最後に、保護フィルムが内側になるように、積層フィルムをロール状に巻き取った。
【0262】
(2)成形体の製造
(2-1)加飾層の形成
まず、積層フィルムをロールから巻き出して、所望の形状および大きさに裁断した。裁断された積層フィルムの透明支持基材の、未硬化のHC層とは反対側の面に、スクリーン印刷により加飾(印刷)層を形成し、乾燥温度80℃で10分間乾燥させた。この加飾工程を5回繰り返し、その後、90℃で1時間乾燥させた。印刷層の形成には、黒色塗料(RIMインキ 極黒、十条ケミカル社製)を用いた。
【0263】
(2-2)保護フィルムの剥離
次いで、保護フィルムを未硬化のLR層から5.0mm/秒の速度で剥離した。その後、得られた積層フィルムに対して、160℃下で30秒間の加熱処理を行った。
【0264】
(2-3)プレフォーム
印刷層を備える積層フィルムを190℃で30秒間加熱し、最大深さが6mmの立体形状の型を用いて、真空圧空成型法によりプレフォームを実施した。
【0265】
(2-4)硬化
プレフォームされた積層フィルムに、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射した。続いて、トリミングを実施した。
【0266】
(2-5)射出成型
最後に、射出成型を行って、透明支持基材の印刷層側に成形樹脂層(ポリカーボネート)を備える成形体を得た。なお、実施例において、特に言及のない限り、活性エネルギー線として、紫外線を使用している。
【0267】
[評価]
積層フィルムおよび成形体に対して、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
(a)厚さ
積層フィルムから、10mm×10mmの評価サンプルを切り出した。評価サンプルの断面を、ミクロト-ム(LEICA RM2265)にて析出させた。析出させた断面を、レーザ顕微鏡(VK8700、KEYENCE社製)または透過型電子顕微鏡(JEM2100、日本電子社製)にて観察し、HC層およびLR層の各10点の厚みを測定した。その平均値をそれぞれ、HC層およびLR層の厚さとした。
【0268】
(b)視感反射率
積層フィルムの透明支持基材における、未硬化のHC層とは反対側の面に対し、黒色塗料(品名:CZ-805 BLACK(日弘ビックス社製)を、バーコーターを用い、乾燥膜厚が3μm以上6μm以下となるように塗布した。次いで、黒色塗料を塗布した積層フィルムを、室温環境下で5時間放置し、乾燥を行うことにより、未硬化の評価サンプルを作製した。
【0269】
評価サンプルの光干渉層側から、SCI方式による視感反射率を測定し、評価した。測定には、日本電色工業社製のSD7000を用い、測定波長領域を380nm以上780nm以下とした。
【0270】
(c)延伸率
積層フィルムから長さ200mm×幅10mmの試験片を切り出した。この試験片を、チャック間距離が150mmである引張り試験機にセットして、160℃雰囲気下、引張力5.0Kgf、引張速度300mm/分の条件にて、評価サンプルを長辺方向に10%延伸した。延伸後の評価サンプルのクラックの有無を、目視で確認した。
【0271】
クラックの発生が無ければ、新たな評価サンプルを切り出し、次は長辺方向に20%延伸させた。そして、同様にして、クラックの有無を目視で確認した。延伸率を10%ずつ大きくしながらこの手順を繰り返した。クラックが初めて確認されたときの延伸率を、積層フィルムの延伸率とした。同じ積層フィルムから切り出した評価サンプルに対して上記の評価を3回行い、各回で得られた延伸率の平均値を、積層フィルムの延伸率E160とした。
【0272】
(d)算術平均粗さ
積層フィルムから長さ200mm×幅10mmの試験片を切り出した。JIS B0601;2001の規定に準拠して、この試験片の算術平均粗さを求め、評価した。表面粗さの測定には、評価型表面粗さ測定機(レーザ顕微鏡、株式会社ミツトヨ製、SURFTEST SJ-201P)を用いて、カットオフ波長2.5mm以上、走査速度0.5mm/秒とした。
【0273】
(e)硬度
積層フィルムの未硬化のLR層側と、成形体のLR層側とから、それぞれ硬度HBCおよび硬度HACを測定した。
硬度は、NANOMECHANICS,INC.製のiMicro Nanoindenterを用いて、連続剛性測定法(使用メソッド:Advanced Dynamic E and H.NMT)により測定した。
【0274】
具体的には、評価サンプルの表面に、準静的な試験荷重に微小なAC荷重を重畳して与えた。荷重は、最大荷重50mNに到達するまで与えた。圧子として、バーコビッチ型のダイアモンド圧子(先端曲率半径20nm)を使用した。発生する変位の振動成分および変位と荷重との位相差から、深さに対する連続的なスティフネスを計算して、深さに対する硬度のプロファイルを取得した。このプロファイルの深さ1000nmにおける硬度を算出した。
【0275】
荷重およびスティフネスの計算にはiMicro専用ソフトを用いた。スティフネスの計算にあたって、コーティング層のポアソン比を0.35とした。荷重は、ひずみ速度(∂P/∂t)/Pが0.2となるように制御した。
【0276】
(f)鉛筆硬度
成形体のLR層の鉛筆硬度を評価した。
測定は、JIS K5600-5-4(1999)、ひっかき硬度(鉛筆法)に従って行った。
【0277】
(g)耐摩耗性
成形体のLR層の表面を、積層フィルム表面4cm2あたり垂直荷重19.6Nをかけながら、綿布を固定した摩擦子により10,000回摩擦した。その後、成形体のLR層の表面を目視により観察した。評価基準は次のとおりである。
良:10,000回の摩擦後にも傷は視認されなかった
不良:10,000回の摩擦後、傷が視認された
【0278】
(h)耐アルカリ性
成形体から、10cm×10cmの評価サンプルを切り出した。評価サンプル全体を0.001Nの水酸化ナトリウム水溶液に浸し、55℃の温度下で4時間加熱処理した。その後、室温まで冷却し、水洗いを行った。得られた評価サンプルのLR層の外観を目視で評価するとともに、JIS Z 8781-4に準じて測色し、色差△Eを算出した。
評価基準は以下のとおりである。
良:外観異常無し、かつ、色差△Eが1.5以下
不良:外観異常が認められるか、あるいは、色差△Eが1.5超
【0279】
[比較例1]
実施例1と同様にして、未硬化のHC層を透明支持基材TB1上に形成した。次いで、HC層に積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射し、HC層を硬化させた。
硬化されたHC層に組成物LR1を塗布した。続いて、組成物LR1を乾燥させて、乾燥厚さ120nmのLR層を形成した。最後に、積算光量2000mJ/cm2の活性エネルギー線を照射して、プレキュア型の積層フィルムを得た。この積層フィルムを用いて、実施例1と同様にして成形体を作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0280】
[実施例2-5、7、比較例2]
実施例1と同様にして、表1Aから表1Cに示す配合で調製された組成物を用いて、表2に示す構成を有する積層フィルムおよび成形体を作成した。得られた積層フィルムおよび成形体を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0281】
[実施例6]
実施例1の(1-1)および(1-2)と同様にして、未硬化のハードコート層および未硬化の光干渉層をそれぞれ形成した。
別途、未硬化の光干渉層の形成工程(1-1)と同様にして、表1Bに示された組成を有する未硬化の機能層(HR層)が形成された保護フィルムを得た。未硬化のHR層が形成された保護フィルムを、ロール状に巻き取った。この保護フィルムを巻き出しながら、保護フィルムで支持された未硬化のHR層表面と、透明支持基材で支持された未硬化のHC層表面とを貼り合わせた。
【0282】
次いで、保護フィルムを剥離して、未硬化のHR層を露出させた。このHR層に、(1-1)で作成された未硬化のLR層を巻き出しながら貼り合わせた。これにより、未硬化のHC層、HR層およびLR層をこの順で備える積層フィルムおよび成形体を作成した。得られた積層フィルムおよび成形体を、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
表2からわかるように、本実施形態に係る積層フィルムは高い平滑性を有しており、耐摩耗性に優れる。加えて、積層フィルムが高い延伸率(50%以上、具体的には70%以上)を有するにもかかわらず、これから得られる成形体は、優れたハードコート性能(例えば、高い硬度)および優れた反射防止性を有する。さらに、本実施形態に係る積層フィルムは、プレフォーム工程において、深い立体形状の型への追従性に優れていた。
【0288】
一方、比較例1の積層フィルムは、平滑性に劣り、耐摩耗性も低い。これは、組成物LR1の乾燥および硬化工程中に、中空樹脂粒子が外表面の近傍に存在し易くなったためであると考えられる。加えて、比較例1の積層フィルムは硬化されているため、延伸率が低く、立体成形においてクラックが発生し易い。
【0289】
比較例2の積層フィルムは、中空シリカ粒子を用いているため、平滑性に優れる。しかし、中空シリカ粒子は光干渉層の樹脂成分との密着性に劣るため、摩耗時に脱離し易く、かつ、脱離した中空シリカ粒子は、その硬さから光干渉層の樹脂成分を傷つけ易い。よって、耐摩耗性が低下している。さらに、中空シリカ粒子は、アルカリに溶解し易いため、耐アルカリ性に劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0290】
本発明によれば、耐摩耗性に優れる積層フィルムを提供することができる。そのため、この積層フィルムは、特にディスプレイの保護材を製造するために好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0291】
10 積層フィルム
11 透明支持基材
12 未硬化のハードコート層
13 未硬化の光干渉層
14 他の支持基材
20 成形体
22 硬化されたハードコート層
23 硬化された光干渉層
24 加飾層
25 成形樹脂層
30 ローラ