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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】硬化性組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20250123BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20250123BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
C08F2/44 A
C08L33/06
C08K3/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021061092
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157070
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 源基
(72)【発明者】
【氏名】寺内 隆二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悟志
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119131(JP,A)
【文献】特開2011-052130(JP,A)
【文献】特開2011-184644(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OH価が40mgKOH~160mgKOH/gであるアニオン性分散剤(A)と、
(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)と、
重合開始剤(D)と、
可塑剤(E)と、
熱伝導性フィラー(F)と、
を含み、
前記アニオン性分散剤(A)の含有量が、組成物の全質量に対して0.1質量%~1.0質量%であり、
前記アニオン性分散剤(A)が、カルボキシ基を含む化合物及びリン酸基を含む化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する、硬化性組成物。
【請求項2】
前記モノマー(B)が、下記式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化1】


式(1)中、Rは、炭素数1~50のアルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項3】
前記モノマー(B)が、下記式(2)で表される化合物を含む、請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【化2】


式(2)中、RB1は、炭素数1~5のアルキレン基を表し、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、nは4以上の整数を表す。
【請求項4】
前記アニオン性分散剤(A)の分子量が、1,000未満である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記可塑剤()が、アクリル系ポリマー又はトリメリット酸エステルを含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記熱伝導性フィラー(F)に対する前記アニオン性分散剤(A)の含有量の比(アニオン性分散剤(A)/熱伝導性フィラー(F))が、質量基準で0.001~0.015である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記熱伝導性フィラー(F)が、酸化亜鉛を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記熱伝導性フィラー(F)の含有量が、組成物の全質量に対して、70質量%~98質量%である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は硬化性組成物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、Personal Digital Assistant;PDA等の電子機器、light emitting diode;LED、Electronic Luminescent;EL等の照明及び表示機器等の性能向上は著しく、それは演算素子や発光素子の著しい性能向上によっている。この様に演算素子又は発光素子の性能向上に伴い発熱量も著しく増加し、電子機器、照明、表示機器における放熱をどの様に行うかが重要な課題になっている。熱対策として、演算素子又は発光素子の発生する熱をロスすること無く放熱体に伝え、放熱体を通じて放熱するために、発熱体と放熱体との間にTIM(ThermalInterface Materials;熱伝導性材料)を設ける対策が取れられている。TIMとして一般に用いられるものとして、放熱シート、熱伝導性グリース、ギャップフィラー等が知られているが、初期がペースト状で、塗布後硬化し固体となる、ギャップフィラーが注目されている。
【0003】
柔軟性、形状安定性、及び、熱伝導性に優れるギャップフィラーとして、例えば、特許文献1には、一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有する化合物(A)と、一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有する化合物(B)と、重合開始剤(C)と、分散剤(D)と、酸化亜鉛を含む、熱伝導性フィラー(E)と、を含む硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/149193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、硬化後の粉吹きの抑制に優れる硬化性組成物を提供することである。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、粉吹きの抑制に優れる硬化物を提供することである。
なお、本明細書において、「粉吹き」とは、硬化後の硬化性組成物の表面からの熱伝導性フィラー(F)の剥がれを意味し、「粉吹きの抑制」とは、硬化後の硬化性組成物の表面からの熱伝導性フィラー(F)の剥がれの抑制を意味する
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> OH価が40mgKOH~160mgKOH/gであるアニオン性分散剤(A)と、
(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)と、
重合開始剤(D)と、
可塑剤(E)と、
熱伝導性フィラー(F)と、
を含み、
前記アニオン性分散剤(A)の含有量が、組成物の全質量に対して0.1質量%~1.0質量%である、硬化性組成物。
<2> 前記モノマー(B)が、下記式(1)で表される化合物を含む、<1>に記載の硬化性組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
式(1)中、Rは、炭素数1~50のアルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
<3> 前記モノマー(B)が、下記式(2)で表される化合物を含む、<1>又は<2>に記載の硬化性組成物。
【0009】
【化2】
【0010】
式(2)中、RB1は、炭素数1~5のアルキレン基を表し、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、nは4以上の整数を表す。
【0011】
<4> 前記アニオン性分散剤(A)が、酸基及びその塩を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5> 前記酸基が、カルボキシ基又はリン酸基である、<4>に記載の硬化性組成物。
<6> 前記アニオン性分散剤(A)の分子量が、1,000未満である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7> 前記可塑剤(F)が、アクリル系ポリマー又はトリメリット酸エステルを含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<8> 前記熱伝導性フィラー(F)に対する前記アニオン性分散剤(A)の含有量の比(アニオン性分散剤(A)/熱伝導性フィラー(F))が、質量基準で0.001~0.015である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<9> 前記熱伝導性フィラー(F)が、酸化亜鉛を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<10> 前記熱伝導性フィラー(F)の含有量が、組成物の全質量に対して、70質量%~98質量%である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一実施形態によれば、硬化後の粉吹きの抑制に優れる硬化性組成物が提供される。また、本開示の他の実施形態によれば、粉吹きの抑制に優れる硬化物を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る硬化性組成物及びその硬化物を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本開示中、数値範囲を現す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において組成物中の各成分は、組成物中に各成分が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「JIS」は、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称として用いる。
【0015】
(硬化性組成物)
本開示に係る硬化性組成物は、OH価が40mgKOH/g~160mgKOH/gであるアニオン性分散剤(A)と、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)と、重合開始剤(D)と、可塑剤(E)と、熱伝導性フィラー(F)と、を含み、前記アニオン性分散剤(A)の含有量が、組成物の全質量に対して0.1質量%~1.0質量%である。
本開示に係る硬化性組成物が上記構成を有することで、硬化後の粉吹きの抑制に優れる。
なお、本明細書において、「粉吹き」とは、硬化後の硬化性組成物の表面からの熱伝導性フィラー(F)の剥がれを意味し、「粉吹きの抑制」とは、硬化後の硬化性組成物の表面からの熱伝導性フィラー(F)の剥がれの抑制を意味する。
【0016】
ギャップフィラーに用いる硬化性組成物に含まれる、例えば、オレイン酸、セラキルアルコール等を分散剤は、フィラーに対する濡れ性が良好であり組成物の粘度低下に寄与する一方、フィラー以外の成分(例えば、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、可塑剤成分等)との相溶性に劣るため、硬化後の粉吹きが生じやすい。このため、ギャップフィラーに用いる硬化性組成物の粉吹きについて、更なる改良が求められている。
そこで、発明者が鋭意検討したところ、ギャップフィラーに用いる硬化性組成物において粉吹きを抑制し更に低い粘度を維持するには、分散剤は、フィラーに対する濡れ性、及び、フィラー以外の成分に対する相溶性の両方に優れる必要があることを見出し、本開示に係る硬化性組成物の構成に至った。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
【0017】
本開示に係る硬化性組成物に含まれるアニオン性分散剤(A)は、特定のOH価を有しているので、熱伝導性フィラー(F)との濡れ性が良好であり、また、特定の含有量の範囲でアニオン性分散剤(A)が組成物中に含まれているので、熱伝導性フィラー(F)と(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)との相溶性も向上し、硬化後の硬化性組成物の表面から熱伝導性フィラー(F)の剥がれ(粉吹き)の抑制に優れると推察している。
また、本開示に係る硬化性組成物は、アニオン性分散剤(A)が特定のOH価を有し、かつ、組成物中に特定量含まれているので、熱伝導性フィラーに対し最適な分散性を発揮するため、硬化性組成物の粘度を低く維持すること(以下、「低粘度維持性」ともいう。)にも優れると推察している。
以下、本開示に係る硬化性組成物の各構成について説明する。
【0018】
<アニオン性分散剤(A)>
本開示に係る硬化性組成物は、OH価が40mgKOH/g~160mgKOH/gであるアニオン性分散剤(A)(以下、単に「アニオン性分散剤(A)」ともいう場合がある。)を含み、アニオン性分散剤(A)の含有量が、組成物の全質量に対して0.1質量%~1.0質量%である。
上記範囲のOH価であるアニオン性分散剤(A)を、上記含有量の範囲で組成物中に含むことにより、硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度維持性に優れる。
【0019】
アニオン性分散剤(A)のOH価は、試料1g中に含有する酸基(例えば、遊離脂肪酸、酸基を有する樹脂など)を中和するのに必要とする水酸化カリウムの質量(mg)であり、JIS:K 0070-1992に記載の方法により求められる。
【0020】
アニオン性分散剤(A)のOH価としては、硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、50mgKOH/g~150mgKOH/gであることが好ましく、60mgKOH/g~140mgKOH/gであることがより好ましく、65mgKOH/g~135mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0021】
アニオン性分散剤(A)は、分散剤として用いるアニオン性基を含む化合物であって、OH価が40mgKOH/g~160mgKOH/gであれば、特に制限はされない。
アニオン性分散剤(A)に含まれるアニオン性基としては、例えば、酸基及びその塩が挙げられる。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、酸基としては、カルボキシ基又はリン酸基であることが好ましい。
酸基の塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましい。
硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、アニオン性分散剤(A)としては、酸基及びその塩を含む化合物であることが好ましく、カルボキシ基又はリン酸基及びその塩を含む化合物であることがより好ましい。
【0022】
リン酸基又はその塩を含む化合物としては、例えば、アルキルリン酸塩(例えば、ステアリルリン酸ナトリウム)、アルキルエーテルリン酸(例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、及びポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸)等が挙げられる。
硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、これらの中でも、アルキルエーテルリン酸及びその塩が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩がより好ましい。
【0023】
アルキルエーテルリン酸及びその塩並びにポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩としては、炭素数6~40のアルキル基を有することが好ましく、炭素数8~30のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数12~20の脂肪族炭化水素基を有することが更に好ましい。
【0024】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩におけるポリオキシアルキレン基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基又はこれらがランダムに結合した基が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン(POE)基であることが好ましい。
【0025】
リン酸基又はその塩を含む化合物としては、硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、炭素数6~40のアルキル基(好ましくは炭素数8~30のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~20の脂肪族炭化水素基)を有するアルキルエーテルリン酸及びその塩、又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩であることが好ましく、炭素数6~40のアルキル基(好ましくは炭素数8~30のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~20の脂肪族炭化水素基)を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸及びその塩であることがより好ましく、炭素数6~40のアルキル基(好ましくは炭素数8~30のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~20の脂肪族炭化水素基)を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩であることが更に好ましく、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸及びその塩であることが特に好ましい。
【0026】
カルボキシ基又はその塩を含む化合物としては、特に制限はなく、一分子中に1つのカルボキシ基と炭化水素基とを有する脂肪酸及びその塩であってもよく、一分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物(以下、ポリカルボン酸ともいう。)及びその塩であってもよいが、硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、ポリカルボン酸及びその塩であることが好ましい。
【0027】
ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、芳香族ポリカルボン酸、及び、脂肪族ポリカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0028】
また、上記ポリカルボン酸塩としては、例えば、ポリカルボン酸のアルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩、ポリカルボン酸ポリアミノアマイド、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アミノアルコール塩等が挙げられる。
【0029】
ポリカルボン酸及びその塩は、ポリカルボン酸系共重合体であってもよい。
また、ポリカルボン酸系共重合体は、櫛型ポリマーであってもよい。櫛型ポリマーとは、主鎖に3つ以上の側鎖が結合したポリマーを示す。
本明細書において、ポリマーの主鎖とは、重合性不飽和基同士の反応により伸長した部分を意味する。また、ポリマーの側鎖とは、ポリマーの主鎖に結合する鎖を意味する。
【0030】
硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、ポリカルボン酸系共重合は、ポリカルボン酸又はその塩より形成される構成単位と、立体反発基より形成される構成単位と、を含むことが好ましい。
上記構成単位を有することで、ポリカルボン酸又はその塩部分が熱伝導性フィラーに吸着し、また、吸着に起因する立体反発力、及び、立体反発基によって、熱伝導性フィラーが分散するので、硬化後の粉吹きを抑制により優れると推定される。
【0031】
立体反発基としては、例えば、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリアミド鎖、又は、アクリル樹脂鎖が挙げられる。
これらの中でも、立体反発基としては、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、又は、アクリル樹脂鎖を有することがより好ましく、ポリエーテル鎖、又は、アクリル樹脂鎖を有することが更に好ましく、ポリエーテル鎖としてポリアルキレンオキシ基を有することが特に好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、例えば、-(CO)a-(a:2~10の整数)、-(CO)a-(a:2~10の整数)等が挙げられる。
【0032】
硬化後の粉吹きを抑制により優れる観点から、ポリカルボン酸又はその塩より形成される構成単位としては、下記式(Pc1)又は式(Pc2)の構成単位が好ましい。
【0033】
【化1】
【0034】
式(Pc1)中、RUAは、水素原子又はメチル基を表し、Mは、水素原子又はカチオン性基を表す。カチオン性基としては、ナトリウム、カルシウム等のアルカリ金属、又は、アンモニウムが挙げられる。
【0035】
硬化後の粉吹き抑制及び低粘度の維持の観点から、ポリカルボン酸系共重合体は、分子構造中にカルボン酸又はその塩より形成される構成単位と立体反発基より形成される構成単位とを含む、ポリカルボン酸系共重合体であることが好ましく、下記式(Pc3)で表される構造を有するポリマーであることがより好ましい。
【0036】
【化2】
【0037】
式(Pc3)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Mは、水素原子又はアルカリ金属を表し、m及びnは、1~20の整数を表す。
【0038】
ポリカルボン酸系共重合は上カルボン酸及びその塩より形成される構成単位、立体反発基より形成される構成単位以外の構成単位(以下、「他の構成単位」ともいう。)を更に含んでいてもよい。
その他の構成単位としては、スチレン等が挙げられる。
【0039】
ポリカルボン酸系共重合体は合成品であってもよいし、市販品であってもよい。市販品としては、例えば、CRODA社製のHypermer(登録商標)KD-9(ポリカルボン酸を主骨格とし、側鎖に炭化水素鎖を有する櫛型の高分子イオン性分散剤、重量平均分子量760、酸価74mgKOH/g)等が挙げられる。
【0040】
アニオン性分散剤の分子量(分子量分布を有する場合には、重量平均分子量)としては特に制限はないが、1000未満であることが好ましく、50以上800以下であることがより好ましい。
【0041】
硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、アニオン性分散剤(A)の含有量としては、組成物の全質量に対して、0.15質量%~0.8質量%であることが好ましく、0.2質量%~0.6質量%であることがより好ましく、0.4質量%~0.6質量%であることが更に好ましい。
【0042】
また、硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持の観点から、後述する熱伝導性フィラー(F)に対する前記アニオン性分散剤(A)の含有量の比(アニオン性分散剤(A)/熱伝導性フィラー(F))が、質量基準で0.001~0.015であることが好ましく、0.002~0.01であることがより好ましく、0.003~0.007であることが更に好ましい。
アニオン性分散剤は、組成物中に1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0043】
<(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)>
本開示に係る硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)を含む。(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)は、一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーであってもよいし、一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有するモノマーであってもよい。
一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーとしては、特に制限されず、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸等が挙げられる。
耐熱性及び柔軟性を両立する観点から、一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーとしては、直鎖又は分岐鎖のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、下記式(1)で表される化合物を含むことが更に好ましい。
【0044】
【化3】
【0045】
式(1)中、Rは、炭素数1~50のアルキル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0046】
式(1)中、Rにおけるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、アルキル基は置換基を有していてもよい。
置換基としては例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アリール基、ヘテロ環基等が挙げられるが、カルボキシ基、又は、ヒドロキシ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
【0047】
耐熱性及び柔軟性を両立する観点から、Rにおけるアルキル基の総炭素数は、2~30であることが好ましく、5~25であることがより好ましく、10~25であることが更に好ましく、総炭素数12~24であることが特に好ましい。
ここで、総炭素数とは、上記アルキル基が炭素原子を含む置換基を有している場合、その置換基の炭素数を含めた炭素数の総数を意味する。
【0048】
耐熱性及び柔軟性を両立する観点から、式(1)中、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状又は置換基を有する総炭素数2~30のアルキル基であることが好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状又は水酸基を有する総炭素数2~25のアルキル基であることがより好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数12~24の無置換のアルキル基であることが好ましい。
【0049】
一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
は、水素原子又はメチル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0051】
一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有するモノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有するモノマーとしては、耐熱性及び柔軟性を両立する観点から、一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ及び/又は3つ有する化合物であることが好ましく、一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ有する化合物であることがより好ましく、下記式(2)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0053】
【化4】

【0054】
式(2)中、RB1は、炭素数1~5のアルキレン基を表し、RB2及びRB3は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、nは4以上の整数を表す。
B1で表される炭素数1~5のアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
柔軟性の観点から、RB1で表されるアルキレン基としては、炭素数2~5の分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~4のアルキレン基であることがより好ましく、分岐鎖状の炭素数3又は4のアルキレン基であることが更に好ましい。
B2及びRB3は、それぞれ独立に、メチル基であることが好ましい。
nは4~25であることが好ましく、4~10であることがより好ましく、3~8であることが更に好ましい。
【0055】
柔軟性、及び、形状安定性の観点から、式(2)中、RB1は、炭素数2~5の分岐鎖状のアルキレン基であり(より好ましくは直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2~4のアルキレン基であり、更に好ましくは分岐鎖状の炭素数3又は4のアルキレン基である)、RB2及びRB3は、メチル基であり、nは4~25(より好ましくは4~10であり、更に好ましくは3~8である)であることが好ましい。
【0056】
ある実施形態において、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)は、一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーから選択される少なくとも1種と、一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有するモノマーから選択される少なくとも1種と、を含むことが好ましい。
【0057】
一分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有するモノマーの含有量Aと、一分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有するモノマーの含有量Bとの含有比(A:B)は、硬化物の硬度及び硬化速度の観点から、99.5:0.5~95:5が好ましく、99:1~97:3がより好ましい。
【0058】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)の含有量としては、組成物の全質量に対して、1質量%~10質量%であることが好ましく、2質量%~8質量%であることがより好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)は、組成物中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0059】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)は、分子量が1,000未満のモノマーであることが好ましい。
本明細書においてモノマーとは、分子量が1,000未満である重合性化合物を意味し、重合性ポリマーとは、重量平均分子量(Mw)が1,000以上である重合性化合物を意味する。
本開示における「重合性ポリマー」の概念には、いわゆるオリゴマーも包含される。
【0060】
<重合開始剤(D)>
本開示に係る硬化性組成物は、重合開始剤(D)を含む。
重合開始剤(D)としては、光、熱又はその両方のエネルギーによりラジカル、カチオン等の重合開始種を発生する化合物であって、公知の熱重合開始剤、公知の光重合開始剤などを適宜選択して用いることができる。
重合開始剤(D)としては、上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)の反応性の観点から、ラジカル重合開始剤が好ましく、熱により遊離ラジカルを発生させる過酸化物がより好ましく、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物が更に好ましい。
【0061】
有機過酸化物としては、イソブチルパーオキサイド、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、サクシニックパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、4-メチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、m-トルノイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサノン、2,2-ビス(4,4-ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(m-トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、α,α’ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ-2エチルヘキシルカーボネート1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、及び、クメンハイドロパーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0062】
-含有量-
重合開始剤(D)の含有量は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
【0063】
<熱伝導性フィラー(F)>
本開示に係る硬化性組成物は、熱伝導性フィラー(F)を含む。
熱伝導性フィラー(F)の材質は、特に制限されず、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、カーボン等が挙げられる。高熱伝導性、絶縁性により優れる点から、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸化亜鉛を含むことがより好ましい。
熱伝導性フィラーとして適用される酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムとしては、特に制限されず、熱伝導性フィラーとして通常用いられる酸化亜鉛を挙げられる。
【0064】
熱伝導性フィラー(F)は、表面処理された熱伝導性フィラーであってもよい。表面処理された熱伝導性フィラーの含有することは、熱伝導性フィラーと熱伝導性フィラー以外の他の含有成分との親和性を向上させ、硬化後の粉吹きの抑制、及び、低粘度の維持の向上に寄与しうる。
【0065】
熱伝導性フィラーに対する表面処理は、特に制限されず、物理的処理であっても、化学的処理であってもよく、熱伝導性フィラーを構成する粒子の表面を処理可能な公知の処理を適用することができる。
表面処理としては、表面処理剤を用いた処理であることが好ましい。
【0066】
表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、カルボン酸系カップリング剤、リン酸系カップリング剤、脂肪酸、高分子化合物、界面活性剤、及び油脂が挙げられる。
【0067】
熱伝導性フィラー(F)は、分散性の観点からは、表面処理剤として、シラン系カップリング剤を用いて表面処理されていることが好ましい。
【0068】
熱伝導性フィラー(F)は、全て表面処理された熱伝導性フィラーであってもよいし、一部が表面処理された熱伝導性フィラーであってもよい。硬化後の粉吹きの抑制、低粘度の維持及び高熱伝導率の観点からは、熱伝導性フィラー(F)として、表面処理された熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。
【0069】
熱伝導性フィラー(F)としては、硬化後の粉吹きの抑制、低粘度の維持及び熱伝導率の観点から、体積平均粒子径が0.05μm~30μmであることが好ましく、0.1μm~20μmであることがより好ましく、0.3μm~15μmであることが更に好ましい。
【0070】
また、熱伝導率により優れ、かつ、硬化後の粉吹きの抑制、及び、低粘度の維持が得られる点から、体積平均粒子径が30μmを超える熱伝導性フィラー(F)(好ましくは酸化亜鉛)と、体積平均粒子径が0.05μm~30μm(好ましくは0.1μm~20μmで、より好ましくは0.1μm~15μm)である熱伝導性フィラー(F)とを併用してもよく、30μmを超え50μm以下である熱伝導性フィラー(F)とを併用してもよい。
【0071】
熱伝導性フィラーの体積平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により、JIS Z 8825:2013(対応国際規格:ISO13320)に準拠して測定する。
具体的には、熱伝導性フィラー粒子を含む試料に対して、レーザ回折散乱式粒度測定装置を使用し、熱伝導性フィラー粒子の体積分布を測定する。得られた測定値(体積分布)に基づき、試料に含まれる熱伝導性フィラーの体積平均粒径を求めることができる。
測定装置の例としては、レーザ回折散乱式粒度測定装置としては、(株)島津製作所製、製品名;ナノ粒子径分布測定装置 SALD-7500nanoを用いることができる。
【0072】
本開示に係る硬化性組成物において、組成物中に熱伝導性フィラー(F)を高充填する観点から、体積平均粒子径が異なる熱伝導性フィラー(F)(好ましくは酸化亜鉛)を2種以上含むことが好ましい。
本開示に係る硬化性組成物において体積平均粒子径が異なる熱伝導性フィラー(F)(好ましくは酸化亜鉛)を2種以上含む場合、上記観点から、最小体積平均粒子径に対する最大体積平均粒子径の比が1.5倍以上であることが好ましい。
【0073】
また、本開示に係る硬化性組成物において、熱伝導率により優れ、かつ、硬化後の粉吹きの抑制、及び、低粘度の維持が得られる点から、体積平均粒子径が0.05μm~30μmで、体積平均粒子径の差が5μm以上で、かつ、体積平均粒子径が異なる2種以上の酸化亜鉛を含むことがより好ましい。
【0074】
-含有量-
熱伝導性フィラー(F)の含有量は、組成物の全質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、85質量%~98質量%であることがより好ましく、90質量%~96質量%であることが更に好ましい。
【0075】
酸化亜鉛以外の熱伝導性フィラー(F)の含有量としては、熱伝導性フィラー(F)の全質量に対して、組成物の全質量に対して、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、0質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0076】
<可塑剤(E)>
本開示に係る硬化性組成物は、可塑剤(E)を含む。
可塑剤(E)としては、特に制限はなく、例えば、可塑剤として使用されるポリマー、不飽和炭化水素基を有する脂肪酸エステル化合物、芳香族カルボン酸エステル化合物等、不飽和炭化水素基を有する脂肪酸及び芳香族カルボン酸を含む油等が挙げられる。
本開示において「ポリマー」とは、重量平均分子量(Mw)が1,000以上である化合物を意味する。
本開示において「ポリマー」の概念には、いわゆるオリゴマーも包含される。
【0077】
可塑剤として使用されるポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、シリコーンポリマー等が挙げられるが、低粘度の維持、硬化後の粉吹きの抑制、耐熱性及び硬化後の柔軟性の観点から、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0078】
アクリル系ポリマーは、アクリルモノマーより形成される構成単位を有するポリマーであれば特に制限はなく、アクリル系ポリマーは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0079】
アクリル系ポリマーとしては、低粘度の維持、及び、耐熱性の観点からアクリル酸エステルより形成される構成単位を含むことが好ましい。
(メタ)アクリルエステルとしては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。メタ)アクリルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及びイソブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アルキルアクリレートは、無官能のアルキルアクリレートであってもよいし、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基(水酸基)等の官能基を有していてもよい。
【0080】
アクリル系ポリマーとしては、下記式(PAC)で表される構造を有するポリマーであることが好ましい。
【0081】
【化5】
【0082】
式(PAC)中、Rpは、水素原子又はアルキル基を表す。
式(PAC)中、アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。置換基としては、カルボキシ基又はヒドロキシ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
アルキル基としては、飽和アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
【0083】
本開示に係る硬化性組成物が可塑剤(E)を含み、かつ、可塑剤(E)がポリマーである場合、ガラス転移温度が-20℃以下であるポリマーであることが好ましく、ガラス転移温度が-20℃以下であるアクリル系ポリマーであることがより好ましい。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析装置(DSC)を用いて測定した、DSC曲線の変曲点を調べることで求められる。
【0084】
不飽和炭化水素基を有する脂肪酸エステル化合物としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のエステル化合物が挙げられる。
芳香族カルボン酸エステル化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、安息香酸、トリメリット酸等のエステル化合物が挙げられる。
【0085】
本開示に係る硬化性組成物が可塑剤(E)を含む場合、低粘度の維持及び高温安定性の観点から、可塑剤(E)は、アクリル系ポリマー、及び、芳香族カルボン酸エステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、式(PAC)で表される構造を有するポリマー及びトリメリット酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。
【0086】
-含有量-
本開示に係る硬化性組成物が可塑剤(E)を含む場合(2種以上を含む場合は合計量)、低粘度の維持、耐熱性及び柔軟性を両立する観点から、可塑剤(E)の含有量は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)100質量部に対して、10質量部~60質量部であることが好ましく、20質量部~50質量部であることがより好ましく、30質量部~45質量部であることが更に好ましい。
可塑剤(E)は、組成物中に、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
【0087】
<<その他の添加剤>>
本開示に係る硬化性組成物は、必要に応じて、上記アニオン性分散剤(A)、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)、重合開始剤(D)、熱伝導性フィラー(F)、及び、可塑剤(E)以外の成分(以下、「その他の添加剤」ともいう。)を含むことができる。
その他の添加剤としては、その他の分散剤、還元剤(G)、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、レオロジーコントロール剤(粘度調整剤)等の添加剤を適宜配合することができる。
上記添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
<<還元剤(G)>>
本開示に係る硬化性組成物は、必要に応じて、還元剤(G)を更に含んでいてもよい。本開示に係る硬化性組成物を、後述の二液型硬化性組成物に適用する場合、一方の硬化性組成物に還元剤(G)を含有させることが好ましい。
還元剤(G)を添加することで、重合開始剤(D)(例えば、過酸化物)の分解が促進されやすくなり、重合反応が低温条件下でも進行しやすい。
【0088】
還元剤(G)としては、上記重合開始剤(D)の分解を促進可能であれば特に制限はなく、重合開始剤と併用される公知の還元剤が挙げられるが、重合開始剤(D)の分解促進の観点から金属化合物系の還元剤であることが好ましい。
【0089】
金属化合物系還元剤としては、例えば、酸化第一錫、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ナフテン酸亜鉛、三塩化アンチモン、カリウムオレート、ナトリウムO-フェニルフェネート、硝酸蒼鉛、塩化第二鉄、テトラ-n-ブチルチン、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、コバルト2-エチルヘキソエート、第二2-エチルヘキソエート鉄等が挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、金属化合物系還元剤としては、コバルト2-エチルヘキソエート、及び、ナフテン酸コバルトが好ましい。
【0090】
-含有量-
本開示に係る硬化性組成物が還元剤(G)を含む場合、硬化速度の観点から、還元剤(G)の含有量は、前記(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上9質量部以下であることがより好ましい。
還元剤(F)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
<<その他の分散剤>>
本開示に係る硬化性組成物は、上記アニオン性分散剤(A)以外の分散剤(以下、「その他の分散剤」ともいう場合がある。)を更に含んでいてもよい。
その他の分散剤としては、上記アニオン性分散剤(A)以外の分散剤であれば特に制限はなく、例えば、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、アルコール類、金属せっけん、フッ素系界面活性剤、ホウ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0092】
その他の分散剤の含有量としては、本開示に係る硬化性組成物に含まれる分散剤の全質量に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることが好ましく、0質量%以上1質量%以下であることが更に好ましく、その他の分散剤を含有しないことが特に好ましい。
【0093】
<<酸化防止剤>>
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤等が挙げられる。
【0094】
<<腐食防止剤>>
腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、チアジアゾール、ベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0095】
<<防錆剤>>
防錆剤としては、スルホン酸金属塩系化合物、ソルビタン化合物等が挙げられる。
【0096】
<<レオロジーコントロール剤>>
本開示において、レオロジーコントロール剤は、せん断速度変化に対して非ニュートン性を与えるものをさし、低せん断速度域のせん断粘度を高くしつつ、高せん断速度域では、せん断粘度が低くなるような流動特性を付与する添加剤である。
【0097】
レオロジーコントロール剤は、無機化合物系のレオロジーコントロール剤であってもよいし、有機化合物系のレオロジーコントロール剤であってもよい。無機化合物の系レオロジーコントロール剤としては、ヒュームドシリカ、ベントナイト、雲母、カオリン等が挙げられる。
また、有機化合物系のレオロジーコントロール剤としては、ウレア変性ポリマー、ウレタン変性ポリマー、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、脂肪酸アマイドワックス等が挙げられる。
これらの中でも、レオロジーコントロール剤としては、無機化合物系のレオロジーコントロール剤が好ましく、ヒュームドシリカ、又は、ベントナイトがより好ましく、ベントナイトが更に好ましい。ヒュームドシリカを用いる場合、シランカップリング剤やその他の表面改質剤により表面を疎水性としたものが好ましい。また、ベントナイトを用いる場合、4級アンモニウム塩やその他の有機改質剤により有機修飾した有機化ベントナイトが好ましく用いられる。
【0098】
レオロジーコントロール剤の含有量は、とくに制限はなく、適宜設定することができる。
【0099】
〔硬化性組成物の物性〕
本開示に係る硬化性組成物の広がりちょう度としては、粘弾性、ハンドリング性及び脱泡性の観点から、100~500であることが好ましく、260~340であることがより好ましく、280~310であることが更に好ましい。
広がりちょう度は、25℃の環境下でアクリル製の2枚の板の間に試料(硬化前の硬化性組成物)0.05mLを挿入し、荷重100gを5秒間、板の上に加えて試料を圧縮し、試料の広がり直径ミリメートルを測定し、この測定値から1を引いた値に20を掛けて求められる。
広がりちょう度=(測定値-1)×20
【0100】
〔硬化性組成物の形態〕
本開示に係る硬化性組成物は、基板、発熱体等へ塗布する際に、一種類の硬化性組成物を使用する一液型硬化性組成物であることが好ましい。本開示に係る硬化性組成物は、二種類の硬化性組成物を混合して使用する、二液型硬化性組成物であってもよい。
【0101】
〔硬化性組成物の製造方法〕
本開示に係る硬化性組成物の製造方法は、特に制限はなく、特に限定されない。本開示に係る硬化性組成物は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
アニオン性分散剤(A)、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)、重合開始剤(D)、可塑剤(E)及び熱伝導性フィラー(F)、必要に応じてその他の添加剤を、攪拌容器に投入し、攪拌、混合することで得られる。
なお、攪拌及び混合には、公知の撹拌機等を用いることができる。
【0102】
硬化性組成物の製造方法において、その他の添加剤を加える場合には、その添加剤が溶解又は分散可能な時間だけ攪拌すればよく、アニオン性分散剤(A)、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)、重合開始剤(D)、可塑剤(E)及び熱伝導性フィラー(F)と一緒に攪拌容器に加えてもよいし、その他の添加剤以外の成分の混合後に加えてもよい。
【0103】
(硬化物)
本開示に係る硬化物は、本開示に係る硬化性組成物の硬化物である。硬化性組成物を硬化させる方法としては、制限されず、通常用いられる方法から適宜選択することができる。硬化方法としては、活性エネルギー線の照射、加熱等が挙げられるが、加熱による硬化方法が好ましい。
加熱により硬化させる場合、加熱温度としては、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。また、加熱温時間としては、1分~120分であることが好ましい。
また、上記硬化組成物は、空気中の湿気と反応させて硬化してもよく、室温で硬化させてもよい。
【0104】
本開示に係る硬化物の熱伝導率としては、柔軟性、形状安定性、及び、熱伝導性の変化の抑制性の観点から、0.5(W・m/K)~50(W・m/K)であることが好ましく、1(W・m/K)~20(W・m/K)であることが好ましく、3(W・m/K)~20(W・m/K)であることがより好ましい。
本開示に係る硬化物の柔らかさとしては、硬化物の周辺部品への応力緩和の観点から、ショアOOで100以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましい。
同様にアスカーC硬度が、100以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましく、75以下であることが更に好ましい。
本開示に係る硬化物の柔らかさは、ASTM D2240、アスカーCはJIS K 7312(1996)に準拠して求められる。
【0105】
<用途>
本開示に係る硬化性組成物は、例えば、基板に形成された凹部(発熱体と放熱体との隙間)に充填されるTIMとして、好適に用いることができる。
本開示に係る硬化性組成物は、硬化後の粉吹きの抑制に優れることから、所期の品質を長期間に亘り維持することができる。また、本開示に係る硬化性組成物は、低粘度及び熱伝導率に優れることから、得られる硬化物の製造性及び熱伝導性にも優れる。
本開示に係る硬化性組成物から得られた硬化物は、柔軟性、形状安定性、及び、熱伝導性に優れる点から、基板に形成された凹部等の塗布面に対する追従性に優れるので、基板上に高さの異なる部品があった場合でも、効率的に熱を逃がすことができる。また、本開示に係る硬化性組成物は、基板上のミクロな材料の凹凸にも追従できるため、熱を効率的に逃がすことができ、また、温度変動に伴う塗布面に対する追従性にも優れる点から、ギャップフィラーとして好適に適用することができる。
【実施例
【0106】
以下、本開示に係る硬化性組成物及び硬化物を実施例により具体的に説明する。なお、本開示に係る硬化性組成物及び硬化物は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0107】
(実施例1~10及び比較例1~9)
各原料を表1及び表2に記載の量で配合し、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、製品名;あわとり練太郎ARV-310)を用いて、2,000rpm(revolutions per minute)、2分、大気圧下で混合し、硬化性組成物を調製した。
【0108】
(実施例11)
A液及びB液の各原料を表1に記載の量で配合し、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、製品名;あわとり練太郎ARV-310)を用いて、2,000rpm、2分、大気圧下で混合し、A液及びB液を得た。その後、A液及びB液を質量比1:1で配合し、自転・公転ミキサー((株)シンキー製、製品名;あわとり練太郎ARV-310)を用いて、2,000rpm、1分、大気圧下で混合し、二液型硬化性組成物を調製した。
【0109】
実施例1~11及び比較例1~9で調製した硬化性組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0110】
-評価-
<粘度(低粘度の維持)>
上記で調製した硬化性組成物について、動的粘弾性測定装置(Anton Paar社製、製品名:MCR 101)を用いて、25℃におけるせん断粘度η[Pa・s]を測定した。
測定対象である硬化性組成物の治具として、PP25パラレルプレート(直径25mm、Anton Paar社製)を使用した。
測定は、せん断速度0.01[1/s]、0.1[1/s]、1[1/s]、10[1/s]及び100[1/s]の各せん断速度におけるせん断粘度η[Pa・s]を測定することで行った。
せん断速度が0.1[1/s]の条件で測定した、25℃におけるせん断粘度η[Pa・s]が100[Pa・s]以下である場合、低粘度の維持に優れているといえる。
【0111】
<粉吹き>
上記で調製した硬化性組成物をNパージ雰囲気下において、80℃、30分間 硬化し、硬化物の大きさが、縦×横×高さ(厚み)が30mm×10mm×6mmになるように成型した。
成型した硬化物の繰り返し曲げ試験を行った。硬化物の縦方向の端部を把持し、この端部を硬化物の垂直方向に対して角度5度以上、上下に曲げた後、端部を元の状態に戻すまでの一連の動作を1往復とし、この動作を100往復実施した後に硬化物から剥がれ落ちた成分の質量を測定し、下記の評価基準に基づき、硬化後の粉吹きの抑制について評価した。
粉吹きの評価がAである場合、硬化後の粉吹きの抑制に優れるといえる。
-評価基準-
A:粉吹きが見られない。
B:粉吹きした成分の質量が全質量のうち0.05質量%以内である。
C:粉吹き成分の質量が全質量のうち0.05質量%以上である。
【0112】
<熱伝導率(W/(m・K)>
熱伝導率は、ASTM D5470に準拠して測定した。
縦×横×高さ(厚み)が10mm×10mm×1.0mmになるように成型した硬化性組成物の上下を10mm×10mmの銅板で挟み、Nパージ雰囲気下において、80℃、30分の硬化条件で硬化させた後、熱抵抗測定装置(ツクバリカセイキ(株)製、製品名;熱抵抗測定装置)で熱抵抗(単位;K・cm/W)を測定し、熱伝導率に換算した。
【0113】
<広がりちょう度>
広がりちょう度は、25℃の環境下でアクリル製の2枚の板の間に試料(硬化前の硬化性組成物)0.05mLを挿入し、荷重100gを5秒間、板の上に加えて試料を圧縮し、試料の広がり直径ミリメートルを測定し、この測定値から1を引いた値に20を掛けて求めた。
【0114】
<硬度:形状安定性>
-硬化後の柔らかさ:ショアOO硬度(試料厚み;6mm)-
ASTM D2240に準拠して硬化性組成物の硬化物の柔らかさの測定を行った。
硬化性組成物を50mm×20mm×6mm(厚み6mm)に成型、Nパージ雰囲気下において、80℃、30分の硬化条件で硬化した後、デュロメーター(製品名;GS-754G、(株)テクロック製)を用いて、ショアOO硬度の測定を行った。
【0115】
-硬化後の柔らかさ:アスカーC硬度(試料厚み;6mm)-
JIS K 7312(1996)に準拠して硬化性組成物の硬化物の柔らかさの測定を行った。
硬化性組成物を50mm×20mm×6mm(厚み6mm)に成型、Nパージ雰囲気下において、80℃、30分の硬化条件で硬化した後、アスカーゴム硬度計C型(高分子計器(株)製)を用いて、アスカーC硬度を測定した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
表1及び表2中に記載された各成分の詳細は以下のとおりである。表1及び表2中の「-」は、該当する成分を含まないことを示す。
表1及び表2中、「充填率 質量[%]」とは組成物の全質量に対する熱伝導性フィラー(F)の全質量の質量比を表している。
表1及び表2中、分散剤/フィラーとは、熱伝導性フィラー(F)の全質量に対するアニオン性分散剤(A)の質量比を表している。
【0119】
<<(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(B)>>
・ライトエステルL:ラウリルメタクリレート;共栄社化学(株)製、製品名;LMA
・HO-250(N):2-ヒドロキシエチルメタクリレート;共栄社化学(株)製、製品名;HO-250(N)
・ITEC:2-デシルテトラデシルメタクリレート;新中村化学工業(株)製
・9PG(2官能モノマー):ポリプロピレングリコールジメタクリレート;新中村化学工業(株)製、製品名;9PG
【0120】
<<可塑剤(E)>>
・ARUFON UP-1020(製品名);アクリル系ポリマー;東亞合成(株)製、重量平均分子量;2,000、ガラス転移温度(Tg);-80℃
・アデカサイザーC-880(製品名);トリメリット酸混合直鎖アルキル;(株)ADEKA製、
【0121】
<<重合開始剤(C)>>
・カヤクメンH:クメンハイドロパーオキサイド;化薬アクゾ(株)製
・パーオクタO:1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート;日油(株)製
【0122】
<<還元剤(G)>>
・ヘキソエートコバルト;東栄化工(株)製
【0123】
<<アニオン性分散剤(A)>>
・Crodafos O3A:オキシエチレンオレイルエーテルリン酸(アニオン性分散剤)、OH価:130mgKOH/g、分子量:420、CRODA社製
・Hypermer KD9:くし型のポリカルボン酸(アニオン性分散剤)、重量平均分子量760、OH価66mgKOH/g~77mgKOH/g、CRODA社製
・Hypermer KD3:くし型のポリアミン(弱カチオン性ポリマー)、重量平均分子量:2,000~30,000、OH価:16mgKOH/g~25mgKOH/g、CRODA社製
・Hypermer KD4:くし型ポリカルボン酸(弱アニオン性ポリマー)、重量平均分子量1,700、OH価:28mgKOH/g、CRODA社製
・Hypermer KD16:ジカルボン酸、弱アニオン性化合物、CRODA社製、分子量:490、OH価:299mgKOH/g、CRODA社製
・Hypermer KD57:ジカルボン酸、弱アニオン性化合物、CRODA社製、分子量:470、OH価:489mgKOH/g、CRODA社製
・オレイン酸(9-オクタデセン酸);分子量:282、OH価:198mgKOH/g~204mgKOH/g、日油(株)製
・NIKKOL(登録商標) セラキルアルコール(製品名);モノオレイルグリセリルエーテル、分子量:342、OH価:295mgKOH/g~335mgKOH/g、日本サーファクタント工業(株)製
【0124】
<<その他の添加剤>>
・粘度調整剤(レオロジーコントロール剤):CLAYTONE-40:BYK製
【0125】
<<熱伝導性フィラー(F)>>
・酸化亜鉛1種;体積平均径D50;0.6μm、堺化学工業(株)製
・焼成亜鉛華;体積平均径D50;4μm、ハクスイテック(株)製
・焼成亜鉛華(表面処理品);シランカップリング剤処理、体積平均粒子径;12μm、ハクスイテック(株)製
【0126】
表1及び表2の結果に示すとおり、実施例1~実施例11の硬化性組成物より形成された硬化物は、比較例1~9の硬化性組成物より形成された硬化物に比べて、硬化後の粉吹きの抑制及び低粘度の維持に優れることが分かる。以上より本開示に係る硬化性組成物及び硬化物は、ギャップフィラーとして好適に用いることができる。