(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】人力駆動車用制御装置、制御システム、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B62M 9/122 20100101AFI20250123BHJP
B62M 9/132 20100101ALI20250123BHJP
【FI】
B62M9/122
B62M9/132
(21)【出願番号】P 2021077967
(22)【出願日】2021-04-30
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】道川 慧太
(72)【発明者】
【氏名】前田 信
(72)【発明者】
【氏名】藤本 尚希
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0128920(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0108882(US,A1)
【文献】特開2020-040560(JP,A)
【文献】特開2020-163951(JP,A)
【文献】特開2006-137206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 9/122
B62M 9/132
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変更可能に構成される変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記人力駆動車が
第1状態であるか否かを判定し、
第1状態
であると判定した場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように
制御する、人力駆動車用制御装置。
【請求項2】
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御部は、前記第1挙動において、前記複数のスプロケット間の前記チェーンの移動を制限するように前記ディレーラを制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項3】
前記ディレーラは、前記チェーンに当接するガイド部材を含み、
前記制御部は、前記ガイド部材の駆動を制限するように前記ディレーラを制御する、
請求項2に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項4】
前記人力駆動車は、前記ディレーラを駆動させるモータを含み、
前記制御部は、前記モータの出力を低下させる、
請求項2に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータをPWMにより制御し、前記モータに入力されるパルス波のデューティー比を低下させる、
請求項4に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1挙動において、前記変速比が前記人力駆動車のライダにより指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように前記変速装置を制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項7】
前記変速装置はディレーラを含み、
前記制御部は、前記変速比が前記第2変速比となるように前記ディレーラを制御する、
請求項6に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1挙動において、前記人力駆動車のライダによる指示に関わらず、前記変速比が第3変速比に固定されるように前記変速装置を制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項9】
前記第3変速比は、前記駆動機構における最大変速比の半分よりも大きい変速比である、
請求項8に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項10】
前記第3変速比は、前記駆動機構における最大変速比である、
請求項9に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1挙動において、前記人力駆動車の走行速度が第1速度範囲に含まれる場合、前記変速比を相対的に大きくし、前記人力駆動車の走行速度が前記第1速度範囲の上限よりも速い第2速度範囲に含まれる場合、前記変速比を相対的に小さくするように前記変速装置を制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1速度範囲において、前記変速比が前記駆動機構における最大変速比に固定されるように前記変速装置を制御する、
請求項11に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第2速度範囲において、前記変速比が前記駆動機構における最小変速比に固定されるように前記変速装置を制御する、
請求項11に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項14】
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御部は、前記第1挙動において、前記チェーンを可動限界まで移動させるように前記ディレーラを制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項15】
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御部は、あらかじめ定められた第1移動量になるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する、
請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記チェーンの詰まりが生じるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する、
請求項14または15に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項17】
前記人力駆動車は変速指示装置を含み、
前記制御部は、前記変速指示装置から送信される変速指示を無視する、
請求項1から16のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項18】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変更可能に構成される変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記制御部は、前記第1挙動において、前記変速比が前記人力駆動車のライダにより指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように前記変速装置を制御する、
人力駆動車用制御装置。
【請求項19】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変更可能に構成される変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記制御部は、前記第1挙動において、前記人力駆動車のライダによる指示に関わらず、前記変速比が第3変速比に固定されるように前記変速装置を制御する、
人力駆動車用制御装置。
【請求項20】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変更可能に構成される変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御部は、前記第1挙動において、前記チェーンを可動限界まで移動させるように前記ディレーラを制御する、
人力駆動車用制御装置。
【請求項21】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変更可能に構成される変速装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御部は、あらかじめ定められた第1移動量になるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する、
人力駆動車用制御装置。
【請求項22】
前記第1状態は、前記人力駆動車が盗難されている状態である、
請求項1から
21のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項23】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置と、
前記変速装置を制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、
前記人力駆動車が
第1状態であるか否かを判定し、
第1状態
であると判定した場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように
制御する、
人力駆動車の制御システム。
【請求項24】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置と、
前記変速装置を制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記制御装置は、前記第1挙動において、前記変速比が前記人力駆動車のライダにより指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように前記変速装置を制御する、
人力駆動車の制御システム。
【請求項25】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置と、
前記変速装置を制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記制御装置は、前記第1挙動において、前記人力駆動車のライダによる指示に関わらず、前記変速比が第3変速比に固定されるように前記変速装置を制御する、
人力駆動車の制御システム。
【請求項26】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置と、
前記変速装置を制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御装置は、前記第1挙動において、前記チェーンを可動限界まで移動させるように前記ディレーラを制御する、
人力駆動車の制御システム。
【請求項27】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置と、
前記変速装置を制御する制御装置と
を含み、
前記制御装置は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成され、
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記制御装置は、あらかじめ定められた第1移動量になるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する、
人力駆動車の制御システム。
【請求項28】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置を制御する制御装置が、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定
した場合、前
記変速装置の動作を制限する
制御を前記変速装置に対して実行する
人力駆動車の制御方法。
【請求項29】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置を制御する制御装置が、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記変速比が前記人力駆動車のライダにより指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように前記変速装置を制御することにより、前記変速装置の動作を制限する、
人力駆動車の制御方法。
【請求項30】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置を制御する制御装置が、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記人力駆動車のライダによる指示に関わらず、前記変速比が第3変速比に固定されるように前記変速装置を制御することにより、前記変速装置の動作を制限する、
人力駆動車の制御方法。
【請求項31】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置を制御する方法であって、
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記変速装置を制御する制御装置が、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記チェーンを可動限界まで移動させるように前記ディレーラを制御する、
人力駆動車の制御方法。
【請求項32】
人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置を制御する方法であって、
前記変速装置はディレーラを含み、
前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、
前記変速装置を制御する制御装置が、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、あらかじめ定められた第1移動量になるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する
人力駆動車の制御方法。
【請求項33】
人力駆動車の変速装置に対して制御データを出力するコンピュータに、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定された場合、前記変速装置の動作を制限する制御データを出力する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項34】
人力駆動車の変速装置に対して制御データを出力するコンピュータに、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記変速装置の変速比が前記人力駆動車のライダにより指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように前記変速装置を制御することにより、前記変速装置の動作を制限する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項35】
人力駆動車の変速装置に対して制御データを出力するコンピュータに、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記人力駆動車のライダによる指示に関わらず、前記変速装置の変速比が第3変速比に固定されるように前記変速装置を制御する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項36】
人力駆動車の変速装置に対して制御データを出力するコンピュータに、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記人力駆動車に搭載されている複数のスプロケットと、前記変速装置に含まれるディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンとに対し、前記チェーンを可動限界まで移動させるように、前記ディレーラを制御する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項37】
人力駆動車の変速装置に対して制御データを出力するコンピュータに、
前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、
前記人力駆動車が盗難状態にあると判定した場合、前記人力駆動車に搭載されている複数のスプロケットと、前記変速装置に含まれるディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンとに対し、あらかじめ定められた第1移動量になるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用制御装置、制御システム、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動コンポーネントが装備されたロードバイク、マウンテンバイク、電動アシストバイク(e-bike)等の人力駆動車が流通している。人力駆動車の駐車スペースは、屋外に設けられていることが多く、不特定多数の者がアクセス可能である。このため、所有者は人力駆動車の盗難被害に遭う可能性がある。電動コンポーネントが装備された人力駆動車は高価であることが多く、盗難被害に遭った場合の所有者のダメージは大きい。
【0003】
特許文献1には、電動アシスト自転車の盗難防止機能について記載され、盗難防止モードが選択された場合、アシスト用のモータを用いてブレーキトルクを発生させ、自力走行を妨げることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法は、アシスト用のモータを前提としており、電動アシスト自転車以外の自転車に適用することができない。
【0006】
本発明は、電動アシスト自転車以外の自転車にも適用できる人力駆動車用制御装置、制御システム、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車の駆動機構における変速比を変更可能に構成される変速装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成される。
【0008】
上記第1側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動車が第1状態であると判定される場合、人力駆動車は駆動が非効率となるので、搭乗の意を削ぐことができ、結果として不正使用を防止することができる。
【0009】
本発明の第2側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速装置はディレーラを含み、前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、前記制御部は、前記第1挙動において、前記複数のスプロケット間の前記チェーンの移動を制限するように前記ディレーラを制御する。
【0010】
上記第2側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、チェーンの移動が制限され、搭乗の意を削ぐことができる。
【0011】
本発明の第3側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記ディレーラは、前記チェーンに当接するガイド部材を含み、前記制御部は、前記ガイド部材の駆動を制限するように前記ディレーラを制御する。
【0012】
上記第3側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、変速装置のディレーラのガイド部材の動きが制限され、変速が困難になるので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0013】
本発明の第4側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記人力駆動車は、前記ディレーラを駆動させるモータを含み、前記制御部は、前記モータの出力を低下させる。
【0014】
上記第4側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、変速装置のディレーラのモータの出力が低下し、変速が困難になるので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0015】
本発明の第5側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第4側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記モータをPWM(Pulse Width Modulation)により制御し、前記モータに入力されるパルス波のデューティー比を低下させる。
【0016】
上記第5側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、変速装置のディレーラのモータの出力が低下し、変速が困難になるので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0017】
本発明の第6側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1挙動において、前記変速比が前記人力駆動車のライダにより指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように前記変速装置を制御する。
【0018】
上記第6側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、ライダが変速装置に対して第1変速比となるように指示しても、意に反して第2変速比となり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0019】
本発明の第7側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第6側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速装置はディレーラを含み、前記制御部は、前記変速比が前記第2変速比となるように前記ディレーラを制御する。
【0020】
上記第7側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、ライダが変速装置に対して第1変速比となるように指示しても、意に反してディレーラが変速比を第2変速比とするように動作するので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0021】
本発明の第8側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1挙動において、前記人力駆動車のライダによる指示に関わらず、前記変速比が第3変速比に固定されるように前記変速装置を制御する。
【0022】
上記第8側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、ライダが変速装置に対して第1変速比となるように指示しても、意に反してディレーラが変速比を第3変速比とするように動作するので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0023】
本発明の第9側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第8側面の人力駆動車用制御装置において、前記第3変速比は、前記駆動機構における最大変速比の半分よりも大きい変速比である。
【0024】
上記第9側面の人力駆動車用制御装置によれば、ペダルが重くなるような第3変速比となるので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0025】
本発明の第10側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第9側面の人力駆動車用制御装置において、前記第3変速比は、前記駆動機構における最大変速比である。
【0026】
上記第10側面の人力駆動車用制御装置によれば、ペダルが最も重くなる第3変速比となるので、搭乗の意を削ぐことができる。
【0027】
本発明の第11側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1挙動において、前記人力駆動車の走行速度が第1速度範囲に含まれる場合、前記変速比を相対的に大きくし、前記人力駆動車の走行速度が前記第1速度範囲の上限よりも速い第2速度範囲に含まれる場合、前記変速比を相対的に小さくするように前記変速装置を制御する。
【0028】
上記第11側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、人力駆動車の走行速度が比較的低い場合には、変速比が大きくなり、走行速度が比較的高くなると、変速比が小さくなる。ライダにとって人力駆動車は走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0029】
本発明の第12側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第11側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1速度範囲において、前記変速比が前記駆動機構における最大変速比に固定されるように前記変速装置を制御する。
【0030】
上記第12側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、人力駆動車の走行速度が比較的低い場合には、変速比が最大変速比に固定されるので、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0031】
本発明の第13側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第11側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第2速度範囲において、前記変速比が前記駆動機構における最小変速比に固定されるように前記変速装置を制御する。
【0032】
上記第13側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、人力駆動車の走行速度が比較的高くなると、変速比が最小変速比に固定されるので、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0033】
本発明の第14側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速装置はディレーラを含み、前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、前記制御部は、前記第1挙動において、前記チェーンを可動限界まで移動させるように前記ディレーラを制御する。
【0034】
上記第14側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、ライダの操作の有無に関わらず、チェーンが可動限界まで移動するので、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0035】
本発明の第15側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面の人力駆動車用制御装置において、前記変速装置はディレーラを含み、前記人力駆動車は、複数のスプロケットと、前記ディレーラの駆動により前記複数のスプロケットのいずれかに巻回されるチェーンと、を含み、前記制御部は、あらかじめ定められた第1移動量になるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する。
【0036】
上記第15側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、ライダの操作の有無に関わらず、チェーンが移動するので、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0037】
本発明の第16側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第14側面または第15側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記チェーンの詰まりが生じるまで前記チェーンを移動させるように前記ディレーラを制御する。
【0038】
上記第16側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、人力駆動車のチェーンに詰まりが生じるので、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0039】
本発明の第17側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面から第16側面のいずれか1つの人力駆動車用制御装置において、前記人力駆動車は変速指示装置を含み、前記制御部は、前記変速指示装置から送信される変速指示を無視する。
【0040】
上記第17側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態では、ライダが変速指示装置を介して変速を指示したとしても無視されるので、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0041】
本発明の第18側面に従う人力駆動車用制御装置は、上記第1側面から第17側面のいずれか1つの人力駆動車用制御装置において、前記第1状態は、前記人力駆動車が盗難されている状態である。
【0042】
上記第18側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1状態は盗難されている状態である。盗難されている人力駆動車は、駆動を非効率化させる第1挙動を示すので、盗難の意を削ぐことができる。結果的に、盗難を防止することができる。
【0043】
本発明の第1側面に従う人力駆動車の制御システムは、人力駆動車の駆動機構における変速比を変速可能に構成される変速装置と、前記変速装置を制御する制御装置とを含み、前記制御装置は、前記人力駆動車が第1状態にある場合、前記人力駆動車の駆動を非効率化させる第1挙動を前記変速装置に実行させるように構成される。
【0044】
上記第19側面の制御システムによれば、人力駆動車が第1状態であると判定される場合、人力駆動車は駆動が非効率となるので、搭乗の意を削ぐことができ、結果として不正使用を防止することができる。
【0045】
本発明の第20側面に従う人力駆動車の制御方法は、人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、前記人力駆動車が盗難状態にあると判定された場合、前記人力駆動車の変速装置の動作を制限する。
【0046】
上記第20側面の人力駆動車の制御方法によれば、人力駆動車が第1状態であると判定される場合、人力駆動車は駆動が非効率となるので、搭乗の意を削ぐことができ、結果として盗難を防止することができる。
【0047】
本発明の第21側面に従うコンピュータプログラムは、人力駆動車の変速装置に対して制御データを出力するコンピュータに、前記人力駆動車が盗難状態にあるか否かを判定し、前記人力駆動車が盗難状態にあると判定された場合、前記変速装置の動作を制限する制御データを出力する処理を実行させる。
【0048】
上記第21側面のコンピュータプログラムによれば、人力駆動車が第1状態であると判定される場合、人力駆動車は駆動が非効率となるので、搭乗の意を削ぐことができ、結果として盗難を防止することができる。
【発明の効果】
【0049】
本願によれば、非正規ユーザが人力駆動車に搭乗した場合に、搭乗を削ぐような制御が実行され、結果として不正な人力駆動車の取得を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】第1実施形態における人力駆動車用制御装置が適用される人力駆動車の側面図である。
【
図4】人力駆動車用制御装置の構成を説明するブロック図である。
【
図5】第1実施形態の制御装置と情報処理装置とを示す図である。
【
図6】情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】情報処理装置の記憶部に記憶されている管理データの内容例を示す。
【
図8】第1実施形態における人力駆動車の第1挙動の一例を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態における人力駆動車の第1挙動の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における人力駆動車の第1挙動の他の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態における人力駆動車の第1挙動の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の各実施形態に関する説明は、本発明に関する人力駆動車用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する人力駆動車用制御装置は、各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態等のように各実施形態とは異なる形態を取り得る。
【0052】
以下の各実施形態に関する説明において、前、後、前方、後方、左、右、横、上、および、下等の方向を表す言葉は、ライダが人力駆動車のサドルに着座した状態における方向を基準として用いられる。
【0053】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における制御装置100が適用される人力駆動車1の側面図である。人力駆動車1は、走行のための原動力に関して、少なくとも部分的に人力を用いる車両である。内燃機関または電動機のみを原動力に用いる車両は、本実施形態の人力駆動車1から除外される。人力駆動車1は、例えば、マウンテンバイク、ロードバイク、クロスバイク、シティサイクル、電動アシストバイク(e-bike)等を含む自転車である。
【0054】
人力駆動車1は、車両本体11、ハンドルバー12、前輪13、後輪14、シート15を備える。人力駆動車1は、駆動機構20、デバイス30(31~35)、バッテリ40、およびセンサ50(51~55)を備える。
【0055】
制御装置100の制御部110は、人力駆動車1に搭載されているデバイス30を制御する。制御装置100は、一例では、人力駆動車1のバッテリ40、サイクルコンピュータ、電動アシスト自転車のドライブユニット等に搭載される。
【0056】
制御装置100は、デバイス30、バッテリ40と接続されている。接続態様および制御装置100の詳細は後述する。(なお、本明細書において、デバイス30を含め、制御装置100の制御対象となるものを単に、「制御対象」と呼ぶことがある。)
【0057】
車両本体11は、フレーム11A、およびフロントフォーク11Bを備える。前輪13は、フロントフォーク11Bに回転可能に支持される。後輪14は、フレーム11Aに回転可能に支持される。ハンドルバー12は、前輪13の進行方向を変更できるようにフレーム11Aに支持される。
【0058】
駆動機構20は、人力駆動力を後輪14へ伝達する。駆動機構20は、クランク21、第1スプロケットアセンブリ22、第2スプロケットアセンブリ23、チェーン24、および、一対のペダル25を含む。
【0059】
クランク21は、クランク軸21A、右クランク21B、および左クランク21Cを含む。クランク軸21Aは、フレーム11Aに回転可能に支持される。右クランク21Bおよび左クランク21Cは、それぞれクランク軸21Aに連結される。一対のペダル25の一方は、右クランク21Bに回転可能に支持される。一対のペダル25の他方は、左クランク21Cに回転可能に支持される。
【0060】
第1スプロケットアセンブリ22は、クランク軸21Aと一体回転可能に連結されている。第1スプロケットアセンブリ22は、1または複数のスプロケット22Aを含む。第1スプロケットアセンブリ22は、一例では、外径が異なる複数のスプロケット22Aを含む。
【0061】
第2スプロケットアセンブリ23は、後輪14のリアハブに回転可能に支持される。第2スプロケットアセンブリ23は、1または複数のスプロケット23Aを含む。第2スプロケットアセンブリ23は、一例では、外径が異なる複数のスプロケット23Aを含む。
【0062】
チェーン24は、第1スプロケットアセンブリ22のいずれかのスプロケット22A、および第2スプロケットアセンブリ23のいずれかのスプロケット23Aに巻き掛けられる。ペダル25に加えられる人力駆動力によってクランク21が前転すると、第1スプロケットアセンブリ22がクランク21とともに前転し、第1スプロケットアセンブリ22の回転がチェーン24を介して第2スプロケットアセンブリ23に伝達し、この回転が後輪14を回転させる。チェーン24の代わりに、ベルトまたはシャフトが用いられてもよい。
【0063】
人力駆動車1は、バッテリ40から供給される電力によって動作し、制御装置100によって動作が制御されるデバイス30を備える。デバイス30は少なくとも、変速装置32を含む。デバイス30は、アシスト機構31、ブレーキ装置33を含む。デバイス30は、図示しない電動サスペンション、および電動シートポストを含んでもよい。デバイス30は、ロック装置34を含む。ロック装置34は人力駆動車1のセキュリティに関するデバイスである。デバイス30は基本的に、操作装置35における操作に従った制御装置100による制御によって動作する。
【0064】
アシスト機構31は、人力駆動車1の推進をアシストするコンポーネントである。一例では、アシスト機構31は、クランク軸21A及びフレーム11Aとの間に介在し、第1スプロケットアセンブリ22へトルクを伝達して人力駆動車1の推進をアシストする。アシスト機構31は、人力駆動車1の後輪14に駆動力を伝達するチェーン24を走行させる。
【0065】
変速装置32は、人力駆動車1の駆動機構20における変速比を変更可能に構成されるデバイスである。変速装置32は、クランク21の回転数に対する後輪14の回転数の比、すなわち変速比を変更する。第1例では、変速装置32は、第2スプロケットアセンブリ23とチェーン24との連結状態を変速するリアディレーラ32Bを含む外装式変速機である。第2例では、変速装置32は、第1スプロケットアセンブリ22とチェーン24との連結の状態を変速するフロントディレーラ32Aを含む外装式変速機である。第3例では、変速装置32は、フロントディレーラ32Aおよびリアディレーラ32Bの両者を含む外装式変速機である。
【0066】
図2および
図3は、フロントディレーラ32Aおよびリアディレーラ32Bをそれぞれ拡大して示したものである。フロントディレーラ32Aは、チェーン24に当接するガイド部材32Cおよびモータ32Eを含む。リアディレーラ32Bは、チェーン24に当接するガイド部材32D、およびモータ32Fを含む。フロントディレーラ32Aおよびリアディレーラ32Bは、それぞれガイド部材32Cおよび32Dにチェーン24(図示せず)を沿わせ、外径が異なるスプロケット22A間、または、23A間でチェーン24を移動させる。具体的には、ガイド部材23Cおよび32Dは、それぞれ、人力駆動車1の進行方向に対して左右方向(
図2および
図3における紙面前後方向)において駆動し、スプロケット22A間、または23A間でチェーン24を移動させる。
【0067】
モータ32Eおよびモータ32Fは、それぞれ、制御装置100により制御され、フロントディレーラ32Aおよびリアディレーラ32Bをそれぞれ駆動させる。本実施形態において、モータ32Eおよびモータ32Fは、ガイド部材32Cおよび32Dをそれぞれ駆動させる。モータ32Eおよびモータ32Fは、制御装置100から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号によって制御され得る。モータ32Eおよびモータ32Fの出力は、PWM信号のパルス波のデューティー比に応じて変動し、のデューティー比が低下すると低下する。
【0068】
ブレーキ装置33は、第1例では、前輪13および後輪14に設けられるリムブレーキである。第2例では、ブレーキ装置33はディスクブレーキである。ブレーキ装置33は、ハンドルバー12に設けられるブレーキレバー(操作装置35)に接続され得る。
【0069】
ロック装置34は、人力駆動車1の状態をロック状態およびロック解除状態の一方から他方へ切り替える装置である。ロック状態は、人力駆動車1の動作、および、人力駆動車1に搭載されるデバイス30の動作の少なくとも一方が制限される状態である。ロック解除状態は、人力駆動車1およびデバイス30の動作制限が解除された非制限状態である。
【0070】
ロック装置34は、一例として、後輪14に対して設けられている。ロック装置34は、駆動回路および電動アクチュエータ(いずれも図示せず)を備える。駆動回路は、ライダのロック操作に応じて電動アクチュエータを駆動し、後輪14の回転を物理的に規制する。ロック装置34は、ライダのロック解除操作に応じて電動アクチュエータの駆動を解除し、後輪14の回転を許容する。ライダによるロック操作およびロック解除操作は、物理的な鍵を用いた操作であってもよく、操作装置35に対する電子キーの入力操作であってもよい。
【0071】
ロック装置34は、正当な操作、対応する鍵または電子キーによる解除操作と異なる操作を検知した場合、制御装置100を介して盗難のおそれがあることを情報処理装置3へ通知する機能を有してもよい。
【0072】
操作装置35は、ハンドルバー12に設けられる。操作装置35は、例えば、ライダによって操作される操作部35Aを含む。操作部35Aの一例は、1または複数のボタンである。操作部35Aの他の例は、ブレーキレバーである。左右のハンドルに設けられているブレーキレバーを左右に倒すことで操作が可能である。操作部35Aとして、情報端末装置5を用いてもよい。情報端末装置5が含むディスプレイパネルに操作ボタンが表示され、情報端末装置5は操作ボタンが選択されることを検知すると制御装置100へ通知する。
【0073】
操作装置35は、変速指示装置35Bを含む。変速指示装置35Bは、複数のボタンに含まれるいずれかのボタンである。変速指示装置35Bは、ブレーキバーに取り付けられたボタン状の装置である。ライダが変速指示装置35Bに対する押下の操作の都度、変速比のアップ、あるいはダウンが可能である。
【0074】
操作装置35は、動作状態を報知する報知部35Cを備える。報知部35Cは、LED(Light Emitting Diode)を用いて、オン(点灯)であるか、オフ(消灯)であるかを示す。
【0075】
操作装置35は、操作部35Aおよび変速指示装置35Bの操作に応じた信号を、デバイス30へ送信できるように、デバイス30と通信接続される。第1例では、操作装置35は、通信線、または、PLC(Power Line Communication)が可能な電線によってデバイス30および制御装置100と通信する。第2例では、操作装置35は、無線通信によってデバイス30および制御装置100と通信する。
【0076】
バッテリ40は、バッテリ本体41およびバッテリホルダ42を含む。バッテリ本体41は、1または複数のバッテリセルを含む蓄電池である。バッテリホルダ42は、人力駆動車1のフレーム11Aに固定される。バッテリ本体41は、バッテリホルダ42に着脱可能である。バッテリ40は、デバイス30および制御装置100に電気的に接続され、必要に応じて電力を供給する。バッテリ40は、制御装置100と通信するための制御部を含むことが好ましい。制御部は、CPUを用いたプロセッサを含むことが好ましい。
【0077】
人力駆動車1は、状態を検出するためのセンサ50を各所に備える。センサ50は、速度センサ51、加速度センサ52、トルクセンサ53、ケイデンスセンサ54、およびGPS(Global Positioning System)センサ55等を含む。
【0078】
速度センサ51は、前輪13に設けられ、前輪13の単位時間当たりの回転数から速度を算出して制御装置100およびデバイス30へ通知する。
【0079】
加速度センサ52はフレーム11Aに固定される。加速度センサ52は、人力駆動車1の振動を出力するセンサである。停止している人力駆動車1の転倒、人力駆動車1への衝撃による振動を検知するために設けられている。加速度センサ52は、振動の大きさに対応する信号を制御装置100およびデバイス30へ通知する。
【0080】
トルクセンサ53は、右クランク21Bおよび左クランク21Cに掛かるトルクをそれぞれ測定するように設けられる。トルクセンサ53は、右クランク21Bおよび左クランク21Cの少なくとも一方において測定されたトルクを示す信号を制御装置100およびデバイス30へ通知する。
【0081】
ケイデンスセンサ54は、右クランク21Bおよび左クランク21Cのいずれかのケイデンスを測定するように設けられる。ケイデンスセンサ54は、測定したケイデンスを示す信号を制御装置100およびデバイス30へ通知する。
【0082】
GPSセンサ55は、フレーム11Aに固定される。GPSセンサ55は、GPS信号に基づいて人力駆動車1の位置データを算出するセンサである。GPSセンサ55は、定期的に位置データを算出し、位置データを示す信号を制御装置100およびデバイス30へ通知する。
【0083】
図4は、制御装置100の構成を説明するブロック図である。制御装置100は、制御部110、記憶部112を備える。
【0084】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit )を用いたプロセッサ(例えば、マイクロコンピュータ等)を含むことが好ましい。制御部110は、内蔵するROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のメモリを用いる。制御部110は、後述する制御プログラムP1に従い、人力駆動車1のステータスに応じて、人力駆動車1に搭載されるデバイス30の動作を制御する。
【0085】
記憶部112は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含む。記憶部112は、制御プログラムP1を記憶する。制御プログラムP1は、記録媒体200に記憶された制御プログラムP2を、制御部110が読み出して記憶部112に複製したものであってもよい。
【0086】
記憶部112は、制御装置100が搭載される人力駆動車1の識別データをあらかじめ、あるいは、デバイス30から取得して記憶する。記憶部112は、人力駆動車1のステータス、つまり、人力駆動車1が第1状態にあるか否かを記憶する。
【0087】
制御部110は、制御対象と通信を行なう。この場合、制御部110自体が制御対象向けの通信部(図示せず)を有してもよいし、制御部110が制御装置100内部に設けられる制御対象向けの通信部と接続されてもよい。制御部110は、制御対象または通信部と通信を行なうための接続部を有することが好ましい。
【0088】
制御部110は、PLCおよびCAN通信の少なくとも1つによって制御対象と通信を行なうことが好ましい。
【0089】
制御部110が制御対象と行なう通信は、有線通信に限らず、ANT(登録商標)、ANT+(登録商標)、Bluetooth(登録商標) 、WiFi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の無線通信でもよい。
【0090】
制御部110は、信号線を介してセンサ50と接続される。制御部110は、信号線を介してセンサ50によって出力される信号からステータスに関するデータを取得する。
【0091】
制御部110は、後述する情報処理装置4と、アンテナを有する無線通信デバイス60を介して通信し得る。無線通信デバイス60は、制御装置100に内蔵されていてもよい。無線通信デバイス60は、所謂インターネットを介した通信を実現するデバイスである。無線通信デバイス60は、ANT(登録商標)、ANT+(登録商標)、Bluetooth(登録商標) 、WiFi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信用のデバイスでもよい。無線通信デバイス60は、3G、4G、5G、LTE(Long Term Evolution)、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、インターネット回線、専用回線、衛星回線等の通信ネットワークに準拠してもよい。制御部110は、ライダの情報端末装置5の送受信機能を用いて情報処理装置4と通信を行ない得る。
【0092】
制御装置100の制御部110は、人力駆動車1が第1状態にある場合、人力駆動車1の駆動を非効率化させる第1挙動を変速装置32に実行させる。第1状態とは、人力駆動車1が不正使用されている、またはそのおそれがある状態であり、より具体的には、人力駆動車1が盗難されている状態である。ただし、第1状態は、必ずしも盗難状態だけではなく、例えば、レンタルサイクルやシェアバイクの使用期限が過ぎた場合等、ライダに正当な搭乗権限がない場合、または正規ユーザが人力駆動車1の使用を制限したい場合、が含まれる。第1挙動の詳細については後述する。
【0093】
第1状態か否かの判定は、例えば、以下のような基準でなされる。
・人力駆動車1がロック状態にあり、加速度センサ52に所定の振動が加えられた場合
・人力駆動車1がロック状態にあり、トルクセンサ53に所定の荷重が加えられた場合
・GPSセンサ55により取得した人力駆動車1の位置データが、本来人力駆動車1があるべき位置ではない場所を示している場合
・人力駆動車1が定められた使用時間を徒過した場合
上記の場合、人力駆動車1の不正な開錠、分解、移動等が推定され、第1状態と判定することができる。
【0094】
制御部110は、人力駆動車1が第1状態にあるか否かを自ら判定してもよく、後述する情報処理装置4からの通知を受けて人力駆動車1が第1状態にあるか否かを認識してもよい。
【0095】
図5は、第1実施形態の制御装置100と情報処理装置4とを示す図である。第1実施形態の制御装置100は、
図5に示すように、情報処理装置4と通信ネットワークNを介して互いに通信可能である。通信ネットワークNは、3G、4G、5G、LTE、WAN、LAN、インターネット回線、専用回線、衛星回線等の通信回線や基地局等の通信設備により構成される。制御装置100は、通信ネットワークNを介して情報処理装置4と通信可能に構成される情報端末装置5を用いてもよい。情報端末装置5は、例えば、人力駆動車1のライダが用いるスマートフォンやサイクルコンピュータ等であり、ライダの指示を入力したり、ライダに対して情報を出力したりするユーザインタフェースとしても機能し得る。
【0096】
制御装置100は、人力駆動車1の操作装置36における操作に基づき、デバイス30へ制御信号を出力する。制御装置100は、ライダの操作によって起動すると、情報処理装置4に人力駆動車1のステータスを確認する。制御装置100は、情報処理装置4から得られた人力駆動車1のステータスが第1状態であるか否かの判定結果に応じて、デバイス30のうちの少なくとも1つへ信号を出力する。
【0097】
図6は、情報処理装置4の構成を示すブロック図である。情報処理装置4は、制御部400、記憶部402、および、通信部404を備える。
【0098】
制御部400は、CPUを用いたプロセッサである。制御部400は、GPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよい。制御部400は、CPUおよびGPUを用いてもよい。制御部400は、内蔵するROMおよびRAM等のメモリを用い、制御装置100との間でデータを送受信し、ステータスを判定する処理を実行する。
【0099】
制御部400は、FPGA(Field Programmable Gate Array )、DSP(Digital Signal Processor)、量子プロセッサ、揮発性または不揮発性のメモリ等を備える1または複数の処理回路であってもよい。
【0100】
記憶部402は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive )等の大容量不揮発性メモリである。記憶部402は、複数の人力駆動車1それぞれに対する管理データを記憶する。管理データは、識別データに対応付けて正規ユーザを特定するためのデータを含む。記憶部402は、各人力駆動車Aの管理データをあらかじめ記憶してもよいし、制御装置100から取得して記憶してもよいし、正規ユーザが使用する情報端末装置5から取得して記憶してもよい。
【0101】
通信部404は、ネットワークNを介した制御装置100との通信を行なう通信デバイスである。通信部404は、3G、4G、5G、LTE、WAN、LAN、インターネット回線、専用回線、衛星回線等の通信ネットワークに準拠する。制御部400は、通信部404を介して制御装置100との間でデータを送受信する。
【0102】
このように構成される制御装置100および情報処理装置4により、人力駆動車1の状態を判定する。状態の判定は、制御装置100が保持するデータと、情報処理装置4で保有しているデータとの照合によって実行される。
【0103】
図7は、情報処理装置4の記憶部402に記憶されている管理データの内容例を示す。管理データは、人力駆動車1の識別データに対応付けて、人力駆動車1およびデバイス30の正規ユーザを特定するためのユーザIDを含む。管理データは、識別データに対応付けて人力駆動車1およびデバイス30の少なくとも1つにおけるステータスに関するステータスデータを含む。
【0104】
情報処理装置4に記憶されている識別データは、製造者名、販売者名、製品名、型番、製造日、および、製造番号の少なくとも1つを含む。識別データは、人力駆動車AおよびコンポーネントCの少なくとも1つに付された二次元コードから読み取ることも可能である。
【0105】
情報処理装置4に記憶されているユーザIDには、正規ユーザの氏名、生年月日、電話番号、メールアドレス、パスワード、および生体情報の少なくとも1つのユーザデータが対応付けられている。ユーザデータには、正規ユーザの氏名、生年月日、電話番号、メールアドレス、パスワード、および生体情報の少なくとも1つが含まれていてもよい。
【0106】
ステータスデータは例えば、「通常」、「ロック状態」、「盗難中」等のステータスを示す。「通常」とは、人力駆動車1が盗難されておらず、通常に使用されている状態を意味する。「ロック状態」とは、人力駆動車1およびデバイス30の少なくとも1つの動作が物理的、または、電子的に制限された状態を意味する。「ロック状態」は、前輪13または後輪14がロックされた状態を含む。制御装置100は、ロック装置34でロック状態とした場合、情報処理装置4へ「ロック状態」を通知し、情報処理装置4は、通知された「ロック状態」でステータスを更新する。ステータス「盗難中」とは、人力駆動車1が盗難されている状態である。ステータスデータは例えば、正規ユーザからの情報処理装置4への通知に基づき、情報処理装置4が管理データとして記憶する。
【0107】
制御装置100が盗難状態を判定する機能を有している場合、制御装置100は、情報処理装置4へ「盗難中」というステータスを通知し、情報処理装置4がステータスデータを更新してもよい。「盗難中」というステータスを解除するには、正規ユーザが例えばパスワード等の認証データと共に情報処理装置4に解除をリクエストすることが必要である。
【0108】
図7の例では、「B001」の識別データで識別される人力駆動車1に関し、正規ユーザのユーザデータが「U001」であること、および、ステータスデータが「通常」を示すことが示されている。
【0109】
図7の例では、「B003」の識別データに対応付けられているステータスデータは、「盗難中」を示している。「B003」の識別データで識別される人力駆動車1は、正規ユーザまたは制御装置100からの通知によって、「盗難中」であることが記憶される。
【0110】
図8は、第1実施形態における人力駆動車1の第1挙動の一例を示すフローチャートである。制御装置100の制御部110は、記憶部112に記憶されている制御プログラムP1に基づき、起動すると以下の処理を実行する。
【0111】
制御部110は、記憶部112に記憶されている人力駆動車1の識別データを読み出し(ステップS101)、識別データを情報処理装置4へ送信する(ステップS103)。
【0112】
情報処理装置3では、制御装置100から人力駆動車1の識別データを受信すると、識別データに対応付けられているステータスデータを、制御装置100へ応答する。
【0113】
制御装置100の制御部110は、情報処理装置4から応答されたステータスデータを受信し(ステップS105)、ステータスデータが「盗難中」であるか否かを判定する(ステップS107)。
【0114】
ステータスデータが「盗難中」でないと判定された場合(S107:NO)、制御部110は、ロック装置34でロック解除状態であるか否かを判定する(ステップS109)。
【0115】
ロック解除状態でないと判定された場合(S109:NO)、制御部110は、盗難のおそれがあるか否かを判定する(ステップS111)。
【0116】
ステップS111において盗難のおそれはないと判定された場合(S111:NO)、制御部110は、処理をステップS109へ戻す。
【0117】
ステップS111において盗難のおそれがあると判定された場合(S111:YES)、制御部110は、処理を後述のステップS121へ進める。
【0118】
ステップS109でロック解除状態であると判定された場合(S109:YES)、制御部110は、操作装置36(または情報端末装置5)でライダによる操作によってライダを識別するデータを受け付ける(ステップS113)。ステップS113において、ライダは例えば、操作装置36に指名、暗証番号、または生体情報等を入力する。
【0119】
制御部110は、受け付けたライダを識別するライダデータを情報処理装置4へ、人力駆動車1の識別データと対応付けて送信する(ステップS115)。
【0120】
情報処理装置4では、ライダデータを受信し、記憶部402の管理データにて人力駆動車1の識別データに対応付けられて記憶されているユーザIDを参照する。情報処理装置4の制御部400は、ユーザIDに対応付けられている正規ユーザのデータと一致するか否かを判定し、判定結果を制御装置100へ応答する。
【0121】
制御装置100の制御部110は、送信したライダデータが、正規なユーザデータと一致したか否かを、情報処理装置4からの応答に基づき判定する(ステップS117)。
【0122】
一致したと判定された場合(S117:YES)、制御部110は、正規なライダであると判定してデバイス30に対する通常の制御を開始し(ステップS119)、処理を終了する。
【0123】
一致しないと判定された場合(S117:NO)、制御部110は、正規なライダではないから盗難のおそれがあると判定し、情報処理装置4へ「盗難中」というステータスデータを識別データと対応付けて通知する(ステップS121)。ステップS111にて、制御部110によって盗難のおそれがあると判定された場合にも通知する(S121)。
【0124】
制御部110は、変速装置32に第1挙動を実行させ(ステップS123)、処理を終了する。
【0125】
制御部110は、第1挙動において、複数のスプロケット22A間または23A間のチェーン24の移動を制限するように、リアディレーラ32Bおよびフロントディレーラ32Aの少なくとも1つを制御する。例えば、制御部110は、フロントディレーラ32Aまたはリアディレーラ32Bを駆動させない。具体的には、モータ32Eまたは32Fに対して駆動信号を送信しない。
【0126】
制御部110は、第1挙動において、フロントディレーラ32Aあるいはリアディレーラ32Bにおけるガイド部材32Cまたは32Dの駆動を制限するようにフロントディレーラ32Aあるいはリアディレーラ32Bを制御してもよい。この場合、例えば、モータ32Eまたは32Fの出力の大小にかかわらず、ガイド部材32Cまたは32Dの駆動を阻害するように、モータ32Eまたは32Fからガイド部材32Cまたは32Dへ力を伝達する経路において、ストッパ等の物理的な障害を介入させてもよい。
【0127】
制御部110は、第1挙動において、フロントディレーラ32Aあるいはリアディレーラ32Bを駆動させるモータ32Eまたは32Fの出力を低下させてもよい。この場合、例えば、モータ32Eまたは32FがPWM制御により制御されている場合、モータ32Eまたは32Fに入力されるパルス波のデューティー比を低下させてもよい。パルス波のデューティー比が十分に小さい場合、モータ32Eまたは32Fの駆動量が小さくなり、ディレーラ32A,32Bによりチェーン24を充分に移動させることができず、変速を完了させることができなくなる。
なお、本実施形態においては、外装式変速機に代えて、内装式変速機を用いることもできる。この場合、内装式変速機に含まれるギア、またはギアを駆動させるモータについて、上記と同様に駆動を禁止、阻害、または制限する。
【0128】
制御部110は、通常、マニュアル変速の場合、操作装置35の変速指示装置35Bから送信されるシフトアップまたはシフトダウンの変速指示を受けて変速を行なう。オート変速の場合は、所定条件下で変速を行なうように定められた制御プログラムを変速指示装置35Bとみなす。しかしながら第1状態において、制御部110は、変速指示装置35Bからの変速指示を受信しても、それとは異なる挙動を実行するように構成される。もしくは、第1状態において、制御部110は、変速指示装置35Bからの変速指示を無視し、そもそも変速を行なわないように構成されてもよい。
【0129】
このように、ライダの意に反して変速動作が制限されることにより、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0130】
(第2実施形態)
第2実施形態では、人力駆動車1の第1挙動の他の形態について説明する。第2実施形態では、第1挙動は、ライダの意に反した変速の実行である。人力駆動車1および制御装置100の構成については、後述する、第1挙動のための制御内容を除き、第1実施形態と同様であるから、詳細な説明を省略する。
【0131】
図9は、第2実施形態における人力駆動車1の第1挙動の一例を示すフローチャートである。
図9のフローチャートに示す処理手順は、
図8のフローチャートにおけるステップS123の処理の詳細に対応する。
【0132】
制御部10は、変速指示装置35Bにて変速比が指示されたか否かを判定する(ステップS231)。変速比が指示されていないと判定された場合(S231:NO)、制御部110は処理をステップS231へ戻し、変速比が指示されたと判定するまで待機する。
【0133】
ステップS231で変速指示装置35Bにて変速比が指示されたと判定された場合(S231:YES)、制御部110は、人力駆動車1のライダにより指示された第1変速比を特定する(ステップS233)。制御部10は、変速装置C2における変速比が、ステップS233で特定した第1変速比と異なる第2変速比となるように、変速装置C2を制御する(ステップS235)。
【0134】
ステップS235において制御部10は具体的には、変速装置C2における変速比が前記第2変速比となるようにフロントディレーラ32Aおよびリアディレーラ32Bの少なくとも1つを制御する。なお、本実施形態においては、外装式変速機に代えて、内装式変速機を用いることもできる。
【0135】
制御部10は、処理をステップS231へ戻し、変速比が指示される都度に、異なる指示された第1変速比と異なる第2変速比となるように、変速装置32を制御する。
【0136】
制御部10は、電源オフ状態となるまで、ステップS231からS235の処理を繰り返す。
【0137】
第2実施形態では人力駆動車1は、
図9のフローチャートに示した処理以外に、以下のような第1挙動を実行してもよい。
【0138】
制御部110は、第第1挙動において、操作装置35に対する人力駆動車1のライダによる指示に関わらず、変速比が特定の第3変速比に固定されるように変速装置32を制御してもよい。つまり、制御装置100の制御部110は、シフトアップまたはシフトダウンの変速指示を受けたかどうかに関わらず、変速比を例えば、最大変速比の半分よりも大きい第3変速比に固定する。例えば、10段変速の人力駆動車1であれば、変速段数が6段以上に固定される。制御部110は、変速比を例えば、最大変速比である第3変速比に固定してもよい。例えば、10段変速の人力駆動車1であれば、変速段数が10段に固定される。
【0139】
図10は、第2実施形態における人力駆動車1の第1挙動の他の一例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートに示す処理手順は、
図8のフローチャートにおけるステップS123の処理の詳細に対応する。
【0140】
制御部110は、速度センサ51からの信号に基づき、人力駆動車1の走行速度を決定する(ステップS301)。
【0141】
制御部110は、決定した走行速度が第1速度範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS303)。第1速度範囲は例えば0km/h以上、5km/h以下の運転開始時と判定できる速度範囲である。第1速度範囲は例えば1km/h以上、6km/h以下であってもよいし、他の範囲であってもよく、人力駆動車1の種類毎に応じてあらかじめ記憶部112に記憶されている。
【0142】
ステップS303で走行速度が第1速度範囲に含まれると判定される場合(S303:YES)、制御部10は、駆動機構20における変速比を相対的に大きくするように変速装置32を制御する(ステップS305)。制御部110は、処理をステップS301へ戻す。
【0143】
ステップS305において例えば制御部110は、変速指示装置35Bから変速装置32に対する変速比の指示があるか否かに関わらず、変速比を1~最大差段階分大きくするか、最大変速比まで大きくする。制御部110は他の例では、第1速度範囲内に含まれる場合、変速比が駆動機構20における最大変速比に固定されるように変速装置32を制御する。例えば10段変速の人力駆動車1であれば、速度が運転開始時と判定できる速度範囲にある間、変速段数が10段に固定される。
【0144】
ステップS303で走行速度が第1速度範囲に含まれないと判定される場合(S303:NO)、制御部110は、決定した走行速度が第2速度範囲に含まれるか否かを判定する(ステップS307)。第2速度範囲は、第1速度範囲の上限よりも速い速度範囲である。第2速度範囲は例えば5km/h超である。第2速度は他の例では、6km/h超であってもよいし他の範囲であってもよい。人力駆動車1の種類毎に応じて、第1速度範囲よりも速い範囲であらかじめ記憶部112に記憶されている。
【0145】
ステップS307で走行速度が第2速度範囲に含まれると判断される場合(S307:YES)、制御部110は、駆動機構20における変速比を相対的に小さくするように変速装置32を制御する(ステップS309)。例えば制御部110は、速度が運転開始時よりも速い範囲に達した場合、通常は段数を大きくすべきところ、ライダの意に反して変速段数を小さくする。制御部110は、処理をステップS301へ戻す。
【0146】
ステップS309において例えば制御部110は、変速指示装置35Bから変速装置32に対する変速比の指示があるか否かに関わらず、変速比を1~最大差段階分小さくするか、最小変速比まで小さくする。制御部10は他の例では、第2速度範囲内に含まれる場合、変速比が駆動機構Bにおける最小変速比に固定されるように変速装置C2を制御する。例えば10段変速の人力駆動車1であれば、速度が運転開始時よりも速い範囲に達した場合、変速段数が1段に固定される。
【0147】
ステップS307で走行速度が第2速度範囲に含まれないと判定される場合(S307:NO)、制御部110は、処理をステップS301へ戻す。制御部110は、電源オフ状態となるまで、ステップS301からS309の処理を繰り返す。
【0148】
図11は、第2実施形態における人力駆動車1の第1挙動の他の一例を示すフローチャートである。
図11のフローチャートに示す処理手順は、
図8のフローチャートにおけるステップS123の処理の詳細に対応する。
図11のフローチャートに示す処理手順のうち、
図9のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0149】
変形例において制御部110は、ステップS231で変速指示装置35Bにて変速比が指示されたと判定された場合(S231:YES)、変速指示装置35Bから送信される変速指示を無視し(ステップS237)、処理をステップS231へ戻す。制御部10は、電源オフ状態となるまで、ステップS231,S237の処理を繰り返す。
【0150】
このように制御部110は、変速指示装置35Bにて変速比を指示する操作がされたとしても、対応する処理をしない。人力駆動車1を盗難したライダが運転を開始し、変速装置32で変速を試みても、変速がなされない。
【0151】
このように、ライダの意に反する変速動作が行なわれることにより、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0152】
(第3実施形態)
第3実施形態では、人力駆動車1の第1挙動の他の形態について説明する。第3実施形態では、第1挙動は、走行を阻害するようなチェーン24の移動である。人力駆動車1および制御装置100の構成については、後述する、第1挙動のための制御内容を除き、第1実施形態と同様であるから、詳細な説明を省略する
【0153】
第3実施形態の制御部110は、第1挙動において、変速装置32に対し、チェーン24を可動限界まで移動させるようにフロントディレーラ32AあるいはリアディレーラC32Bを制御する。制御装置100の制御部110は、
図8のフローチャートにおけるステップS123で、チェーンB4を可動限界まで移動させる。例えば、制御部110は、チェーン24が所定のスプロケット22A,23Aに架けられている場合、最も外側のスプロケット22A,23A、または最も内側のスプロケット22A,23Aまで、チェーン24を一気に移動させる。
【0154】
制御部10は、あらかじめ定められた第1移動量になるまでチェーン24を移動させるようにフロントディレーラ32Aあるいはリアディレーラ32Bを制御する。例えば、リアディレーラ32Bの場合、第1移動量は、5枚以上のスプロケット23A間でチェーン24を移動させる移動量である。この場合、段階的に変速を行なう多段変速とは異なり、一気にチェーン24を移動させる。
【0155】
上述のようにチェーン24を移動させることにより、制御部10は、チェーン24の詰まりが生じるまでチェーン24を移動させるようにフロントディレーラ32Aあるいはリアディレーラ32Bを制御し得る。制御部110は、チェーン24がスプロケット22Aおよび23Aの少なくとも1つから外れる箇所に移動するように、フロントディレーラ32Aおよびリアディレーラ32Bの少なくとも1つを制御してもよい。
【0156】
このように、ライダの意に反するチェーン24の移動が行なわれることにより、ライダにとって走行しづらくなり、搭乗の意を削ぐことができる。
【0157】
今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0158】
1…人力駆動車、11…車両本体、11A…フレーム、11B…フロントフォーク、12…ハンドルバー、13…前輪、14…後輪、15…シート、20…駆動機構、21…クランク、21A…クランク軸、21B…右クランク、21C…左クランク、22…第1スプロケットアセンブリ、22A…スプロケット、23…第2スプロケットアセンブリ、23A…スプロケット、24…チェーン、25…ペダル、30…デバイス、31…アシスト機構、32…変速装置、32A…フロントディレーラ、32B…リアディレーラ、32C…ガイド部材、32D…ガイド部材、32E…モータ、32F…モータ、33…ブレーキ装置、34…ロック装置、35…操作装置、35A…操作部、35B…変速指示装置、35C…報知部、40…バッテリ、41…バッテリ本体、42…バッテリホルダ、50…センサ、51…速度センサ、52…加速度センサ、53…トルクセンサ、54…ケイデンスセンサ、55…GPSセンサ、100…制御装置、110…制御部、112…記憶部、P1…制御プログラム、60…無線通信デバイス、4…情報処理装置、400…制御部、402…記憶部、404…通信部、5…情報端末装置、200…記録媒体、P2…制御プログラム