(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】車体姿勢制御装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
B60G17/015 A
(21)【出願番号】P 2021208019
(22)【出願日】2021-12-22
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 周
(72)【発明者】
【氏名】平尾 隆介
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-046172(JP,A)
【文献】特開2021-119063(JP,A)
【文献】特開2012-071630(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/061770(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0008944(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011080104(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と車体の間に設けられる力発生機構の発生力を制御することにより、前記車体の姿勢を制御する車体姿勢制御装置であって、
路面状態から前記車体のロール状態を制御するためのロール指令値を算出するロール指令値算出手段と、
前記ロール指令値算出手段による前記ロール指令値に基づいて、前記車体に発生するピッチモーメントを予測するピッチモーメント予測手段と、
前記車体のロールレイトの大きさに応じて前記車体がダイブする度合いが増大するように目標ピッチレイトを算出する目標ピッチレイト算出手段と、
前記ピッチモーメント予測手段による予測値を考慮して、前記目標ピッチレイト算出手段による算出値を補正するピッチレイト補正手段と、を有する車体姿勢制御装置。
【請求項2】
前記ロール指令値算出手段は、前記ロール指令値としてロール制御目標減衰力を算出し、
前記ピッチモーメント予測手段は、前記ロール制御目標減衰力に基づいて、前記車体に発生する前記ピッチモーメントを予測する請求項1に記載の車体姿勢制御装置。
【請求項3】
前記ロール指令値算出手段は、前記ロール指令値としてロール制御目標減衰力を算出し、
前記力発生機構には、前記ロール制御目標減衰力に基づいた指令電流が供給され、
前記ピッチモーメント予測手段は、前記指令電流に基づいて、前記車体に発生する前記ピッチモーメントを予測する請求項1に記載の車体姿勢制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば4輪自動車等の車両に好適に用いられる車体姿勢制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロールレイトに応じて車体が前下がりになるように目標ピッチレイトを求め、目標ピッチレイトに応じてサスペンション装置の減衰力を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1には、前下がりのピッチ制御に加え、ロール制御が可能な車体姿勢制御装置が開示されている。ここで、ロール制御に伴って車体にピッチモーメントが発生することがある。これに対し、特許文献1に記載された車体姿勢制御装置では、減衰力の可変幅を考慮していない。このため、車両に対して必ずしも適切なピッチ制御にはならない虞れがあった。
【0005】
本発明の一実施形態の目的は、ロール制御を実行しているときでも、適切なピッチ制御が可能な車体姿勢制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、車両の車輪と車体の間に設けられる力発生機構の発生力を制御することにより、前記車体の姿勢を制御する車体姿勢制御装置であって、路面状態から前記車体のロール状態を制御するためのロール指令値を算出するロール指令値算出手段と、前記ロール指令値算出手段による前記ロール指令値に基づいて、前記車体に発生するピッチモーメントを予測するピッチモーメント予測手段と、前記車体のロールレイトの大きさに応じて前記車体がダイブする度合いが増大するように目標ピッチレイトを算出する目標ピッチレイト算出手段と、前記ピッチモーメント予測手段による予測値を考慮して、前記目標ピッチレイト算出手段による算出値を補正するピッチレイト補正手段と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、ロール制御を実行しているときでも、適切なピッチ制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1ないし第3の実施形態による車体姿勢制御装置が適用された4輪自動車を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態による車体姿勢制御装置を示す制御ブロック図である。
【
図3】
図2中の補正用目標ピッチモーメント演算部を示す制御ブロック図である。
【
図4】旋回走行時の操舵角、ロール角、ピッチ角、ロールレイト、ピッチレイト、前下がりピッチ補正量、電流指令値の関係を示す特性線図である。
【
図5】第2の実施形態による車体姿勢制御装置を示す制御ブロック図である。
【
図6】
図5中の電流補正値演算部を示す制御ブロック図である。
【
図7】第3の実施形態による車体姿勢制御装置を示す制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態による車体姿勢制御装置を、例えば4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0010】
ここで、
図1ないし
図4は本発明の第1の実施形態を示している。
図1に示すように、車体1は、車両のボディを構成している。車体1の下側には、例えば左,右の前輪2と左,右の後輪3(一方のみ図示)とが設けられている。
【0011】
前輪側のサスペンション装置4は、左,右の前輪2側と車体1との間に介装して設けられている。各サスペンション装置4は、左,右の懸架ばね5(以下、ばね5という)と、各ばね5と並列になって左,右の前輪2側と車体1との間に設けられた左,右の減衰力調整式ショックアブソーバ6(以下、減衰力可変ダンパ6という)とにより構成されている。
【0012】
後輪側のサスペンション装置7は、左,右の後輪3側と車体1との間に介装して設けられている。各サスペンション装置7は、左,右の懸架ばね8(以下、ばね8という)と、各ばね8と並列になって左,右の後輪3側と車体1との間に設けられた左,右の減衰力調整式ショックアブソーバ9(以下、減衰力可変ダンパ9という)とにより構成されている。
【0013】
ここで、各サスペンション装置4,7の減衰力可変ダンパ6,9は、減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成されている。減衰力可変ダンパ6,9は、車輪(前輪2、後輪3)と車体1との間に設けられており、力(減衰力)を発生させる力発生機構である。減衰力可変ダンパ6,9には、その減衰力特性をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力調整バルブ、ソレノイド等からなるアクチュエータ(図示せず)が付設されている。なお、減衰力調整用のアクチュエータは、減衰力特性を必ずしも連続的に変化させる構成である必要はなく、2段階または3段階以上で断続的に調整する構成であってもよい。また、減衰力可変ダンパ6,9は、減衰力を切換えられればよく、空圧ダンパや電磁ダンパであってもよい。
【0014】
操舵角センサ10は、車体1側に設けられている。操舵角センサ10は、車両の運転者が旋回走行時等にハンドルをステアリング操作するときの操舵角(後述の前輪舵角δfに対応する)を検出し、その検出信号をコントローラ21に出力する。
【0015】
車速センサ11は、車体1に設けられている。車速センサ11は、例えば車両の走行速度(後述の車速Vに対応する)を検出し、その検出信号をコントローラ21に出力する。
【0016】
コントローラ21は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御手段である。コントローラ21は、入力側が操舵角センサ10および車速センサ11等に接続され、出力側がFRダンパ(右側前輪の減衰力可変ダンパ6)、FLダンパ(左側前輪の減衰力可変ダンパ6)、RRダンパ(右側後輪の減衰力可変ダンパ9)、RLダンパ(左側後輪の減衰力可変ダンパ9)のアクチュエータ(図示せず)等に接続されている。
【0017】
図2に示すように、コントローラ21は、車両モデル部22、ロール抑制用の目標減衰力演算部25,26、絶対値演算部29、目標ピッチモーメント算出部30、各輪のダンパ指令値算出部40,41,42,43、補正用目標ピッチモーメント演算部51を含んで構成されている。
【0018】
この場合、コントローラ21は、操舵角センサ10で検出した操舵角の信号と車速センサ11で検出した車速の信号とに基づいて、車両モデル部22で横加速度を推定(算出)する。コントローラ21は、推定された横加速度(推定横加速度)に基づき目標ピッチモーメントを算出する。コントローラ21は、目標ピッチモーメントに応じて減衰力可変ダンパ6,9をフィードフォワード制御(FF制御)する。これにより、コントローラ21は、ロール感の向上を実現できるようにしている。
【0019】
車両モデル部22は、操舵角(前輪舵角δf)と車速Vとより、以下の数1式に示す車両モデルを用いて横加速度αyを推定する。ここで、横加速度αyは、車両の線形モデルを仮定し、動特性を無視すると、数1式で求めることができる。但し、Vは車速[m/s]、Aはスタビリティファクタ[S2/m2]、δfは前輪舵角[rad]、Lはホイールベース[m]である。
【0020】
【0021】
位相調整用フィルタ23は、操舵角入力から横加速度、ロール角発生までのダイナミクスを補償する。微分部24は、横加速度を微分して横加加速度を算出する。このとき、横加速度は、ロール角とほぼ一致する。横加加速度は、ロールレイトとほぼ一致する。このため、次段の目標減衰力演算部25,26は、ロールレイトと相関のある横加加速度に右側前輪用のFrゲイン,右側後輪用のRrゲインを乗算することで、ロール抑制用の目標減衰力とする。目標減衰力演算部25,26は、路面状態としての横加加速度(ロールレイト)から車体1のロール状態を制御するためのロール指令値を算出するロール指令値算出手段を構成している。このとき、目標減衰力演算部25,26が出力するロール抑制用の目標減衰力は、ロール指令値に相当している。
【0022】
符号反転部27,28は、ロール抑制用の目標減衰力を左側車輪(左側前輪、左側後輪)で右側車輪とは反転させるため、目標減衰力に「-1」を乗算する。相対速度推定部44は、微分部24で算出された横加加速度を用いて各輪の相対速度を推定する。
【0023】
絶対値演算部29は、横加速度(ロール角)の絶対値|u|を求める。目標ピッチモーメント算出部30(目標ピッチモーメント算出手段)は、横加速度の絶対値|u|にゲイン「Kroll2r」を乗算して目標ピッチモーメントMa0を算出する。絶対値演算部29および目標ピッチモーメント算出部30は、車体1のロールレイトの大きさに応じて車体1がダイブする度合いが増大するように目標ピッチレイト(目標ピッチモーメントMa0)を算出する目標ピッチレイト算出手段を構成している。ここで、横加速度に比例して目標ピッチモーメントMa0を算出したのは、第1の実施形態で採用したピッチレイトからピッチモーメントまでの伝達関数は今回対象としている操舵入力周波数の1Hz以下のときに、その位相特性が-90度であることから、ロールレイトを積分したロール角に比例すればよく、ロール角は横加速度と相関があることから、横加速度に比例すればよいためである。
【0024】
目標ピッチモーメントMa0は、後述する補正用目標ピッチモーメント演算部51によって補正される。補正用目標ピッチモーメント演算部51は、目標ピッチモーメントMa0を補正した補正用目標ピッチモーメントMa1を出力する。
【0025】
等配分演算部31は、補正用目標ピッチモーメントMa1が入力されると、これに従って各車輪(即ち、左,右の前輪2、後輪3)の目標減衰力を振り分けるように、補正用目標ピッチモーメントMa1を4分割して各輪に等配分する。次の目標減衰力演算部32,33は、等配分されたモーメント(Ma1/4)を前輪2側の重心点までの距離lfで割り算することにより、ピッチ発生分となる右側前輪2,左側前輪2の目標減衰力を算出する。また、目標減衰力演算部34,35は、等配分されたモーメント(Ma1/4)を後輪3側の重心点までの距離lrで割り算することにより右側後輪3,左側後輪3の目標減衰力を算出する。
【0026】
加算部36は、目標減衰力演算部25からのロール抑制分となる目標減衰力と、目標減衰力演算部32からピッチ発生分となる目標減衰力とを加算して、加算後の目標減衰力を、右側前輪2の目標減衰力として算出する。加算部37は、目標減衰力演算部25からのロール抑制分となる目標減衰力と、目標減衰力演算部33からピッチ発生分となる目標減衰力とを加算して、加算後の目標減衰力を、左側前輪2の目標減衰力として算出する。
【0027】
また、前輪2側と後輪3側とではピッチ成分が逆になる。このため、減算部38は、目標減衰力演算部26からのロール抑制分となる目標減衰力と、目標減衰力演算部34からピッチ発生分となる目標減衰力とを減算して、減算後の目標減衰力を、右側後輪3の目標減衰力として算出する。減算部39は、目標減衰力演算部26からのロール抑制分となる目標減衰力と、目標減衰力演算部35からピッチ発生分となる目標減衰力とを減算して、減算後の目標減衰力を、左側後輪3の目標減衰力として算出する。
【0028】
このようにロール抑制分とピッチ発生分で算出した目標減衰力を加算または減算して各輪の目標減衰力を演算した後には、ダンパ指令値算出部40,41,42,43において、この目標減衰力と相対速度推定部44が推定した相対速度とに基づいて、前もって記憶しておいたダンパの特性マップによって、必要な電流値を出力する。即ち、ダンパ指令値算出部40,41,42,43は、FRダンパ(右側前輪2の減衰力可変ダンパ6),FLダンパ(左側前輪2の減衰力可変ダンパ6),RRダンパ(右側後輪3の減衰力可変ダンパ9),RLダンパ(左側後輪3の減衰力可変ダンパ9)のアクチュエータ(図示せず)に出力すべきダンパ指令値を電流値(電流指令値)として算出する。
【0029】
そして、各車輪(左,右の前輪2、後輪3)側の減衰力可変ダンパ6,9は、アクチュエータに供給された電流値(ダンパ指令値)に従って減衰力特性がハードとソフトの間で連続的に、または複数段で可変に制御される。
【0030】
次に、補正用目標ピッチモーメント演算部51について、
図3を参照して詳細に説明する。補正用目標ピッチモーメント演算部51には、目標ピッチモーメント算出部30からの目標ピッチモーメントMa0と、目標減衰力演算部25,26からの目標減衰力とが入力される。補正用目標ピッチモーメント演算部51は、ロール制御により発生するモーメントを考慮して目標ピッチモーメントMa0を補正し、補正用目標ピッチモーメントMa1を出力する。
図3に示すように、補正用目標ピッチモーメント演算部51は、ピッチモーメント予測部52と、ピッチレイト補正部53とを備えている。
【0031】
ピッチモーメント予測部52は、目標減衰力演算部25,26が出力するロール抑制用の目標減衰力(ロール指令値)に基づいて、車体1に発生するピッチモーメントを予測するピッチモーメント予測手段を構成している。ピッチモーメント予測部52は、2倍演算部52A,52B、モーメント算出部52C,52D、減算部52Eを備えている。2倍演算部52A,52Bは、ロール制御により発生し得る前輪用と後輪用の目標減衰力から2輪分の減衰力を得るために、目標減衰力演算部25,26による目標減衰力を2倍する。このため、2倍演算部52Aは、前輪用の目標減衰力を2倍する。2倍演算部52Bは、後輪用の目標減衰力を2倍する。
【0032】
モーメント算出部52Cは、2倍演算部52Aから出力された減衰力に重心から前軸(前輪2)までの距離lfを乗算する。モーメント算出部52Dは、2倍演算部52Bから出力された減衰力に重心から後軸(後輪3)までの距離lrを乗算する。これにより、モーメント算出部52C,52Dは、前輪2と後輪3のモーメントを算出する。減算部52Eは、前輪2のモーメントから後輪3のモーメントを減算し、これらの差分によってロール制御により発生するモーメントMaRを計算する。
【0033】
ピッチレイト補正部53は、ピッチモーメント予測部52による予測値(モーメントMaR)を考慮して、目標ピッチモーメント算出部30による算出値(目標ピッチモーメントMa0)を補正するピッチレイト補正手段を構成している。ピッチレイト補正部53は、減算器によって構成されている。ピッチレイト補正部53は、目標ピッチモーメントMa0からロール制御により発生するモーメントMaRを減算する。即ち、ピッチレイト補正部53は、目標ピッチモーメントMa0とモーメントMaRとの差分を取り、これらの差分によって補正用目標ピッチモーメントMa1を算出する。
【0034】
本実施形態による車体姿勢制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、コントローラ21による車体1の姿勢制御処理について、
図4を参照して説明する。
図4は、制御時の操舵角、ロール角、ピッチ角、ロールレイト、ピッチレイト、前下がり補正量、電流指令値のタイムチャートを示している。
図4中の破線は比較例(例えば、特許文献1に記載の従来技術に相当)の特性を示し、実線は本実施形態の特性を示している。
【0035】
車両が道路のコーナ部に差し掛かって旋回走行を行うときには、例えば直進→過渡旋回→定常旋回→過渡旋回→直進の順序でステアリング操作が行われる。このとき、車両の運転者は、道路に沿って操舵角を切換えるようにハンドルを操作する。
【0036】
車両の直進時には、操舵角がほぼ零となって中立に保たれ、過渡旋回に達すると、操舵角が必要な角度分だけ増大される。定常旋回になると、操舵角は必要角度を保つようにほぼ一定の角度に保持され、その後の過渡旋回に達すると、操舵角を中立に戻す操作が行われ、直進走行に戻ったときには、ほぼ零となって中立に保たれる。
【0037】
車体1側に発生する横加速度は、操舵角に対応して変化し、操舵角にほぼ比例するように増減する。車体1側のロール角についても、操舵角に対応して変化し、操舵角にほぼ比例するように増減する。
【0038】
本実施形態および比較例では、例えば定常旋回中はピッチ角を低く抑えるように制御し、その後の過渡旋回ではピッチ角が負の値となるように制御する。このため、本実施形態および比較例では、ロールレイトに比例した目標ピッチレイトを求め、各車輪(左,右の前輪2、後輪3)側に設けた減衰力可変ダンパ6,9の減衰力特性を、この目標ピッチレイトとなるように可変に制御して、車体1に対してピッチモーメントを発生させる制御を行う。
【0039】
このように、車両の旋回走行時におけるピッチレイトとロールレイトを比例関係にすることにより、車体1の回転軸にブレが発生せず、操舵フィーリングを向上することができる。また、ロールレイトに応じて目標ピッチレイトを算出し、この目標ピッチレイトとなるように車体1に対してピッチモーメントを発生させる制御を行うことで、ロールレイトとピッチレイトとが比例関係となり、さらに、ロール角の符号により目標ピッチレイトを反転させることで、常に頭下がりピッチとなるため、車体1の回転軸が安定し、ロール感を向上させることができる。
【0040】
ところで、比較例では、前下がりピッチ補正量となる目標ピッチモーメントは、ロール制御によるピッチモーメントを考慮せずに算出される。このため、
図4中の破線に示すように、ロール制御の制御量に前下がりピッチ補正量が加算された結果、減衰力可変ダンパ6,9が発生する減衰力可変幅の上限や下限を超えた指令値になることがある。この場合、比較例では、減衰力可変幅の上限や下限を超えた減衰力は発生させることができないことがある。また、比較例では、ロール制御によるピッチモーメントを考慮しないため、指令値が減衰力可変幅の範囲内であっても、車両状態に応じた適切なピッチ角の制御が実行できないことがある。従って、比較例では、意図した前下がりピッチ角へ制御することができないことがあるという問題がある。
【0041】
これに対し、本実施形態では、前下がりピッチ補正量は、目標ピッチモーメントをロール制御によるピッチモーメントを考慮して補正した補正用目標ピッチモーメントMa1となっている。このため、
図4中の実線に示すように、本実施形態では、ロール制御によるピッチモーメントの方向と目標ピッチモーメントの方向とが同じときには、指令値を減少させることができ、減衰力可変ダンパ6,9が発生する減衰力可変幅の上限と下限の範囲内で指令値を出力することができる。また、本実施形態では、ロール制御によるピッチモーメントを考慮するため、ロール制御によるピッチモーメントの方向と目標ピッチモーメントの方向とが異なるときでも、車両状態に応じた適切なピッチ角の制御を行うことができる。この結果、本実施形態では、ロール制御を実行しているときでも、適切な前下がりピッチ制御を実現することができる。
【0042】
かくして、本実施形態では、コントローラ21は、路面状態から車体のロール状態を制御するためのロール指令値(ロール抑制用の目標減衰力)を算出する目標減衰力演算部25,26(ロール指令値算出手段)と、目標減衰力演算部25,26による目標減衰力に基づいて、車体1に発生するピッチモーメントを予測するピッチモーメント予測部52(ピッチモーメント予測手段)と、車体1のロールレイトの大きさに応じて車体1がダイブする度合いが増大するように目標ピッチモーメントMa0(目標ピッチレイト)を算出する絶対値演算部29および目標ピッチモーメント算出部30(目標ピッチレイト算出手段)と、ピッチモーメント予測部52によるモーメントMaR(予測値)を考慮して、目標ピッチモーメントMa0(算出値)を補正するピッチレイト補正部53(ピッチレイト補正手段)と、を有している。このため、ロール制御を実行しているときでも、適切なピッチ制御を実行することができる。
【0043】
また、目標減衰力演算部25,26は、ロール指令値としてロール制御用の目標減衰力(ロール制御目標減衰力)を算出し、ピッチモーメント予測部52は、ロール制御用の目標減衰力に基づいて、車体1に発生するモーメントMaR(ピッチモーメント)を予測する。このとき、減衰力可変ダンパ6,9は、ロール制御用の目標減衰力に基づいて、これらの減衰力が制御される。このため、ピッチモーメント予測部52は、ロール制御用の目標減衰力に基づいて、ロール制御によって発生するピッチモーメントを算出することができる。
【0044】
次に、
図1、
図5、
図6は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、ピッチモーメント予測部は、減衰力可変ダンパに供給される指令電流に基づいて、車体に発生するピッチモーメントを予測することにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0045】
コントローラ61は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御手段である。コントローラ61は、入力側が操舵角センサ10および車速センサ11等に接続され、出力側がFRダンパ(右側前輪の減衰力可変ダンパ6)、FLダンパ(左側前輪の減衰力可変ダンパ6)、RRダンパ(右側後輪の減衰力可変ダンパ9)、RLダンパ(左側後輪の減衰力可変ダンパ9)のアクチュエータ(図示せず)等に接続されている。
【0046】
図5に示すように、ダンパ指令値算出部62,63,64,65は、第1の実施形態によるダンパ指令値算出部40,41,42,43と同様に構成されている。ダンパ指令値算出部62,63,64,65は、目標減衰力演算部25,26が出力するロール抑制用の目標減衰力と、相対速度推定部44が推定した相対速度とに基づいて、前もって記憶しておいたダンパの特性マップより必要な電流値を出力する。即ち、ダンパ指令値算出部62,63,64,65は、FRダンパ(右側前輪2の減衰力可変ダンパ6),FLダンパ(左側前輪2の減衰力可変ダンパ6),RRダンパ(右側後輪3の減衰力可変ダンパ9),RLダンパ(左側後輪3の減衰力可変ダンパ9)のアクチュエータ(図示せず)に出力すべきロール抑制用のダンパ指令値を電流値(電流指令値)として算出する。なお、ロール抑制用の目標減衰力を左側車輪(左側前輪、左側後輪)で右側車輪とは反転させるため、ダンパ指令値算出部63,65には、符号反転部27,28によって「-1」が乗算された目標減衰力が入力される。
【0047】
加算部66,67は、ダンパ指令値算出部62,63からのロール抑制分の電流値と、後述する電流補正値演算部81からの電流補正値とを加算して合計の電流指令値を算出する。即ち、加算部66,67は、ロール制御の電流指令値に対して電流補正値演算部81からの電流補正値を加算する。加算部66,67からの電流指令値は、飽和処理部70,71を介してFRダンパ(右側前輪2の減衰力可変ダンパ6),FLダンパ(左側前輪2の減衰力可変ダンパ6)のアクチュエータに供給される。飽和処理部70,71は、電流指令値が減衰力可変ダンパ6のアクチュエータに供給可能な電流の限界値(上限値または下限値)を超えたときに、電流指令値を限界値に制限する。
【0048】
加算部68,69は、ダンパ指令値算出部64,65からのロール抑制分の電流値と、後述する電流補正値演算部81からの電流補正値とを加算して合計の電流指令値を算出する。即ち、加算部68,69は、ロール制御の電流指令値に対して電流補正値演算部81からの電流補正値を加算する。加算部68,69からの電流指令値は、飽和処理部72,73を介してRRダンパ(右側後輪3の減衰力可変ダンパ9),RLダンパ(左側後輪3の減衰力可変ダンパ9)のアクチュエータに供給される。飽和処理部72,73は、電流指令値が減衰力可変ダンパ9のアクチュエータに供給可能な電流の限界値(上限値または下限値)を超えたときに、電流指令値を限界値に制限する。また、飽和処理部70,71,72,73から出力された電流指令値は、遅延部74を介して電流補正値演算部81に入力される。このとき、電流補正値演算部81には、電流指令FB値として、遅延部74を通過した電流指令値が入力される。
【0049】
次に、電流補正値演算部81について、
図6を参照して詳細に説明する。電流補正値演算部81には、目標ピッチモーメント算出部30からの目標ピッチモーメントと、位相調整用フィルタ23からの横加速度(ロール角)と、相対速度推定部44からの各輪の相対速度と、遅延部74からの各輪の電流指令値(電流指令FB値)とが入力される。電流補正値演算部81は、目標ピッチモーメント、横加速度(ロール角)、各輪の相対速度、各輪の電流指令値(電流指令FB値)に基づいて、電流補正値を算出する。電流補正値演算部81は、ピッチモーメント予測部83と、ピッチレイト補正部84,85とを備えている。
【0050】
前後輪分配部82は、目標ピッチモーメントを前輪部分と後輪部分とに振り分ける。前後輪分配部82は、絶対値演算部29および目標ピッチモーメント算出部30と共に目標ピッチレイト算出手段を構成している。前後輪分配部82は、除算部82A、目標ピッチモーメント算出部82B,82Cを備えている。除算部82Aは、目標ピッチモーメントをホイールベースIwbの2倍で除算し、前下がりピッチモーメントの1輪分の前下がりピッチ目標減衰力を計算する。目標ピッチモーメント算出部82Bは、前下がりピッチ目標減衰力に前軸(前輪2)から重心までの距離lfを乗算して、前輪2の目標ピッチモーメントを出力する。目標ピッチモーメント算出部82Cは、前下がりピッチ目標減衰力に後軸(後輪3)から重心までの距離lrを乗算して、後輪3の目標ピッチモーメントを出力する。
【0051】
ピッチモーメント予測部83は、目標減衰力演算部25,26が出力するロール抑制用の目標減衰力に基づいて、車体1に発生するピッチモーメントを予測するピッチモーメント予測手段を構成している。このとき、各輪の電流指令FB値は、ロール抑制用の目標減衰力に基づいて設定される。このため、ピッチモーメント予測部83は、各輪の電流指令FB値に基づいて、車体1に発生するピッチモーメントを推定し、推定ピッチモーメントを出力する。
【0052】
ピッチモーメント予測部83は、マップ83A、位相調整用フィルタ83B、レバー比乗算部83C、符号反転部83D、推定ピッチモーメント算出部83E,83Fを備えている。マップ83Aは、各輪の電流指令FB値と各輪相対速度とを用いて、各輪の減衰力可変ダンパ6,9が発生している減衰力を算出する。位相調整用フィルタ83Bは、電流指令から減衰力発生までの位相を調整する。レバー比乗算部83Cは、位相調整用フィルタ83Bによって位相調整された減衰力にレバー比を乗算し、ホイール位置での推定減衰力を算出する。ここで、後輪3は前輪2と減衰力が逆向きとなるため、符号反転部83Dは、レバー比乗算部83Cから出力された推定減衰力に「-1」を乗算する。その後、推定ピッチモーメント算出部83Eは、推定減衰力に前軸(前輪2)から重心までの距離lfを乗算して、前輪2の推定ピッチモーメントを出力する。推定ピッチモーメント算出部83Fは、推定減衰力に後軸(後輪3)から重心までの距離lrを乗算して、後輪3の推定ピッチモーメントを出力する。
【0053】
ピッチレイト補正部84,85は、ピッチレイト補正部53は、ピッチモーメント予測部52による予測値(推定ピッチモーメント)を考慮して、目標ピッチモーメント算出部82B,82Cによる算出値(目標ピッチモーメント)を補正するピッチレイト補正手段を構成している。ピッチレイト補正部84,85は、それぞれ減算器によって構成されている。ピッチレイト補正部84,85は、目標ピッチモーメントと推定ピッチモーメントとの差分を算出する。ゲイン乗算部86は、ピッチレイト補正部84から出力された差分値にピッチモーメントFB制御ゲインKfを乗算し、前輪2の電流制御指令補正値に換算する。ゲイン乗算部87は、ピッチレイト補正部85から出力された差分値にピッチモーメントFB制御ゲインKrを乗算し、後輪3の電流制御指令補正値に換算する。
【0054】
次に、前下がりピッチモーメントによる電流指令補正値を各輪に割り振る。前輪2は、旋回内側車輪(伸側)の減衰力を大きく(+)、外側車輪(圧側)を小さく(-)する。逆に、後輪3は旋回外側車輪(圧側)の減衰力を大きく(+)、内側車輪(伸側)を小さく(-)する。これにより、コントローラ61は、前下がりロールを実現する。
【0055】
このため、右旋回電流指令演算部90は、符号反転部90A,90Bによって、左側前輪2と右側後輪3の電流指令補正値に「-1」を乗算する。ゲイン乗算部90C,90Dは、減衰力の伸圧比を合わせるために、伸び側となる右側前輪2と右側後輪3の電流指令補正値にゲインKif,Kirを乗算する。これにより、電流値に対する伸び縮みでの減衰力差を吸収する。
【0056】
同様に、左旋回電流指令演算部91は、符号反転部91A,91Bによって、右側前輪2と左側後輪3の電流指令補正値に「-1」を乗算する。ゲイン乗算部91C,91Dは、減衰力の伸圧比を合わせるために、伸び側となる左側前輪2と左側後輪3の電流指令補正値にゲインKif,Kirを乗算する。これにより、電流値に対する伸び縮みでの減衰力差を吸収する。
【0057】
旋回方向判断部93は、車両のフィルタ92を通過した横加速度(ロール角)に基づいて、左右の旋回方向を判断し、旋回方向信号を出力する。指令値切換部94は、旋回方向信号に基づいて、左右旋回時の電流指令を切り替え、各輪の前下がりピッチ制御指令値を算出する。このとき、前下がりピッチ制御指令値は、電流補正値となる。
【0058】
加算部66,67,68,69は、各輪の前下がりピッチ制御指令値(電流補正値)をロール制御の電流指令値と加算する。飽和処理部70,71,72,73は、この電流指令値に飽和処理を施した後に、減衰力可変ダンパ6,9へ電流指令値として出力する。
【0059】
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、ロール制御を実行しているときでも、適切なピッチ制御を実行することができる。また、第2の実施形態では、減衰力可変ダンパ6,9には、ロール制御用の目標減衰力に基づいた指令電流が供給され、ピッチモーメント予測部83(ピッチモーメント予測手段)は、指令電流の電流指令FB値に基づいて、車体1に発生するピッチモーメントを予測する。このため、ピッチモーメント予測部83は、減衰力可変ダンパ6,9に供給される実電流値に基づいて、ピッチモーメントを予測するから、第1の実施形態に比べて、車両の実挙動に即したピッチを推定することができる。このため、第2の実施形態では、第1の実施形態に比べて、適切な前下がり制御を実施することができる。
【0060】
次に、
図1、
図7は本発明の第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、車両モデルに代えて、ロールレイト、ロール角、ピッチレイト、相対速度をセンサ等で検出することにある。なお、第3の実施形態では、前述した第2の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0061】
コントローラ101は、マイクロコンピュータ等によって構成される制御手段である。コントローラ101の入力側は、操舵角センサ10および車速センサ11等に接続されると共に、ロールレイト、ロール角、ピッチレイト、相対速度の検出が可能な各種センサ(図示せず)に接続されている。コントローラ101の出力側は、FRダンパ(右側前輪の減衰力可変ダンパ6)、FLダンパ(左側前輪の減衰力可変ダンパ6)、RRダンパ(右側後輪の減衰力可変ダンパ9)、RLダンパ(左側後輪の減衰力可変ダンパ9)のアクチュエータ(図示せず)等に接続されている。
【0062】
コントローラ101は、例えばロールレイトセンサで検出したロールレイトを目標減衰力演算部25,26に入力することで、ロール抑制用の目標減衰力を求める。また、コントローラ101は、目標ピッチモーメントを算出するために、ゲイン乗算部102、判別部103、乗算部104、FF制御部105、減算部106、FB制御部107、加算部108等を備えている。
【0063】
コントローラ101のゲイン乗算部102は、例えばロールレイトセンサで検出したロールレイトの信号に車両毎に予め決められたゲインを掛け、このときのロールレイトに対応した目標ピッチレイトを算出する。ゲイン乗算部102は、車体1のロールレイトの大きさに応じて車体1がダイブする度合いが増大するように目標ピッチレイトを算出する目標ピッチレイト算出手段を構成している。
【0064】
判別部103は、ロール角の信号が正の値か負の値かの符号判別を行う。このロール角は例えば車両の横加速度センサの信号などを用いて検出する。乗算部104は、ロール角の符号をゲイン乗算部102からの信号(目標ピッチレイト)に掛け算することにより、車両がダイブ状態(頭下がりのピッチ)となるように目標ピッチレイトを補正値として求める。
【0065】
FF制御部105は、目標ピッチレイトの補正値が入力されると、下記の数2~数4式による演算を行い、フィードフォワード制御による目標ピッチモーメントを算出する。減算部106は、例えばピッチレイトセンサで検出した実ピッチレイトの信号と目標ピッチレイトの補正値との差を、目標値に対する誤差として演算する。
【0066】
FB制御部107は、減算部106からの信号(目標値に対する誤差)に従ってフィードバック制御による目標ピッチモーメントを算出する。FB制御部107は、PID制御器として、前記の誤差に応じて目標ピッチモーメントを出力する。
【0067】
ここで、FF制御部105は、ピッチモーメントからピッチレイトまでの特性を2次の振動モデルとしてモデル化し、伝達関数を算出して、その逆特性を利用した制御器である。ピッチ運動の運動方程式は、下記の数2式より求められる。但し、Q:ピッチ角 Ix:ピッチ慣性 Kx:ピッチ剛性 Cx:ピッチ減衰係数 Mx:ピッチモーメントである。なお、式中のドットは、時間による1階微分を意味する。ドットが2つであれば2階微分を意味する。
【0068】
【0069】
この数2式により、ピッチモーメントからピッチレイトまでの伝達関数は、下記の数3式となる。これによって、ピッチモーメントからピッチレイトまでの伝達関数は、下記の数4式により求められる。
【0070】
【0071】
【0072】
加算部108は、FF制御部105で算出した目標ピッチモーメントとFB制御部107で算出した目標ピッチモーメントとを加算して、その値を最終的な目標ピッチモーメントとして後段の電流補正値演算部81に出力する。また、電流補正値演算部81には、上下加速度センサや車高センサ等から求めた各輪の相対速度が入力される。これに加え、電流補正値演算部81には、横加速度に代えてロール角が入力されると共に、遅延部74からの各輪の電流指令値(電流指令FB値)が入力される。電流補正値演算部81は、目標ピッチモーメント、各輪の相対速度、各輪の電流指令値(電流指令FB値)に基づいて、電流補正値を算出する。
【0073】
かくして、このように構成される第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、ロール制御を実行しているときでも、適切なピッチ制御を実行することができる。また、第3の実施形態では、第1の実施形態に比べて、車両の実挙動に即したピッチを推定することができる。このため、第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、適切な前下がり制御を実施することができる。
【0074】
なお、第1ないし第3の実施形態では、目標減衰力演算部25,26(ロール指令値算出手段)は、路面状態としての横加加速度(ロールレイト)から車体1のロール状態を制御するためのロール指令値を算出するものとした。本発明はこれに限らない。路面状態は、車両モデル部22等が操舵角と車速から推定した横加加速度に限らず、例えばカメラ等による外界認識手段からの信号に基づいて推定した推定値でもよく、車両が持っているセンサ(横加速度センサ、ロールレイトセンサ等)の検出値でもよい。
【0075】
第1,第2の実施形態で用いている、相対速度は車高センサの微分値でもよいし、例えばばね下側の加速度センサとばね上側の加速度センサの検出値から相対加速度を算出し、この値を積分することで算出してもよく、フラットな路面であれば、ばね下の動きがほぼゼロとみなせるため、ばね上側の加速度センサの検出値を積分したばね上速度を相対速度としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1:車体、2:前輪(車輪)、3:後輪(車輪)、4,7:サスペンション装置、6,9:減衰力可変ダンパ(減衰力調整式ショックアブソーバ、力発生機構)、21,61,101:コントローラ(制御手段)、25,26:目標減衰力演算部(ロール指令値算出手段)、29:絶対値演算部、30:目標ピッチモーメント算出部(目標ピッチレイト算出手段)、51:補正用目標ピッチモーメント演算部、52:ピッチモーメント予測部(ピッチモーメント予測手段)、53:ピッチレイト補正部(ピッチレイト補正手段)、82:前後輪分配部、83:ピッチモーメント予測部(ピッチモーメント予測手段)、84,85:ピッチレイト補正部(ピッチレイト補正手段)、102:ゲイン乗算部(目標ピッチレイト算出手段)