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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/14 20060101AFI20250123BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B60Q1/14 Z
B60Q1/14 H
B60Q1/04 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022512143
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013009
(87)【国際公開番号】W WO2021200701
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2020065000
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020069320
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】杉本 篤
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-201400(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172148(WO,A1)
【文献】特開2016-130109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/14
B60Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第1光出射部を含み、それぞれの前記第1光出射部からの光が照射される第1照射スポットが少なくとも左右方向に並ぶように前記複数の第1光出射部からの光を出射する第1灯具ユニットと、
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第2光出射部を含み、それぞれの前記第2光出射部からの光が照射される第2照射スポットがマトリックス状に並ぶように前記複数の第2光出射部からの光を出射する第2灯具ユニットと、
車両の前方に位置する他車両を検出する検出装置からの前記他車両の状態を示す信号を基に、前記他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる所定領域を決定する領域決定部と、
制御部と、
を備え、
前記第2照射スポットは前記第1照射スポットよりも小さく、少なくとも1つの前記第1照射スポットは少なくとも1つの前記第2照射スポットと重なり、
前記制御部は、
前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合には、少なくとも前記第1灯具ユニットから光が出射するように前記第1灯具ユニットを制御し、
前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットに対応する前記第1光出射部から出射する光の光量が減少するように前記第1灯具ユニットを制御するとともに、前記所定領域と重なる前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量が減少またはゼロとなり、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量が、前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合と比べて、増加するように前記第2灯具ユニットを制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第1光出射部を含み、それぞれの前記第1光出射部からの光が照射される第1照射スポットが少なくとも左右方向に並ぶように前記複数の第1光出射部からの光を出射する第1灯具ユニットと、
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第2光出射部を含み、それぞれの前記第2光出射部からの光が照射される第2照射スポットがマトリックス状に並ぶように前記複数の第2光出射部からの光を出射する第2灯具ユニットと、
車両の前方に位置する他車両を検出する検出装置からの前記他車両の状態を示す信号を基に、前記他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる所定領域を決定する領域決定部と、
制御部と、
を備え、
前記第2照射スポットは前記第1照射スポットよりも小さく、少なくとも1つの前記第1照射スポットは少なくとも2つの前記第2照射スポットと重なり、
前記制御部は、
前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合には、少なくとも前記第1灯具ユニットから光が出射するように前記第1灯具ユニットを制御し、
前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットに対応する前記第1光出射部から出射する光の光量が減少するように前記第1灯具ユニットを制御するとともに、前記所定領域と重なる前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量が減少またはゼロとなり、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットのうち前記所定領域に近い前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部ほど出射する光の光量が多くなるように前記第2灯具ユニットを制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項3】
前記制御部は、前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合には、前記第1灯具ユニット及び前記第2灯具ユニットから光が出射するように前記第1灯具ユニット及び前記第2灯具ユニットを制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第1光出射部を含み、それぞれの前記第1光出射部からの光が照射される第1照射スポットが少なくとも左右方向に並ぶように前記複数の第1光出射部からの光を出射する第1灯具ユニットと、
出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第2光出射部を含み、それぞれの前記第2光出射部からの光が照射される第2照射スポットがマトリックス状に並ぶように前記複数の第2光出射部からの光を出射する第2灯具ユニットと、
車両の前方に位置する他車両を検出する検出装置からの前記他車両の状態を示す信号を基に、前記他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる所定領域を決定する領域決定部と、
制御部と、
を備え、
前記第2照射スポットは前記第1照射スポットよりも小さく、少なくとも1つの前記第1照射スポットは少なくとも1つの前記第2照射スポットと重なり、
前記制御部は、
前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合には、前記第1灯具ユニットから光が出射するように前記第1灯具ユニットを制御するとともに前記第2灯具ユニットから光が非出射となるように前記第2灯具ユニットを制御し
前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットに対応する前記第1光出射部から出射する光の光量が減少するように前記第1灯具ユニットを制御するとともに、前記所定領域と重なる前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量がゼロとなり、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から光が出射するように前記第2灯具ユニットを制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の前方に位置する他の車両を検出する検出装置からの情報に基づいて、出射する光の配光パターンを変化させる車両用前照灯が知られている。下記特許文献1及び下記特許文献2には、このような車両用前照灯が記載されている。
【0003】
下記特許文献1に記載の車両用前照灯は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数のLED(Light Emitting Diode)を有するランプユニットと、制御部と、を備え、それぞれのLEDからの光が照射される照射スポットは左右方向に並んでいる。制御部は、自車両の前方に位置する他車両を検出する検出装置からの情報を基に、当該他車両と重なる照射スポットに対応するLEDを消すようにランプユニットを制御する。このような構成により、他車両の乗員が眩惑することを抑制できるとされている。
【0004】
下記特許文献2に記載の車両用前照灯は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数のLED(Light Emitting Diode)を有する灯具ユニットを備える。この車両用前照灯は、所定の配光パターンを有する光を出射する第1状態からこの所定の配光パターンにおいて灯具ユニットからの光が非照射とされる遮光領域が形成された配光パターンを有する光が出射する第2状態に切り替え可能である。この車両用前照灯は、車両の前方に位置する他車両と遮光領域とが互いに重なるようにすることで、他車両の乗員が眩惑することを抑制できるとされている。
【0005】
【文献】特開2015-16773号公報
【文献】特開2015-015104号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様による車両用前照灯は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第1光出射部を含み、それぞれの前記第1光出射部からの光が照射される第1照射スポットが少なくとも左右方向に並ぶように前記複数の第1光出射部からの光を出射する第1灯具ユニットと、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の第2光出射部を含み、それぞれの前記第2光出射部からの光が照射される第2照射スポットがマトリックス状に並ぶように前記複数の第2光出射部からの光を出射する第2灯具ユニットと、検出装置から車両の前方に位置する他車両の検出を示す信号が入力する場合に前記他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる所定領域を決定する領域決定部と、制御部と、を備え、前記第2照射スポットは前記第1照射スポットよりも小さく、少なくとも1つの前記第1照射スポットは少なくとも1つの前記第2照射スポットと重なり、前記制御部は、前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合には、少なくとも前記第1灯具ユニットから光が出射するように前記第1灯具ユニットを制御し、前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットに対応する前記第1光出射部から出射する光の光量が減少またはゼロとなるように前記第1灯具ユニットを制御するとともに、前記所定領域と重なる前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量が減少またはゼロとなり、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から光が出射するように前記第2灯具ユニットを制御することを特徴とするものである。
【0007】
ここで、他車両の運転者が車外を視認するための視認部としては、他車両が対向車の場合には例えばフロントウインド等を挙げることができ、他車両が先行車の場合には例えばサイドミラー、リアウインド、車両の後方を撮像する撮像装置等を挙げることができる。また、光の光量がゼロになるとは、光の光量が減少されてゼロになることとともに、光の光量がゼロのまま維持されることも含まれる。
【0008】
第1の態様のこの車両用前照灯では、第1灯具ユニットから出射して他車両の視認部に照射される光の光量が減少またはゼロとなるとともに、第2灯具ユニットから出射して他車両の視認部に照射される光の光量が減少またはゼロとなる。このため、第1の態様のこの車両用前照灯によれば、他車両の乗員が眩惑することを抑制し得る。また、第1の態様のこの車両用前照灯では、照射される光の光量が減少した第1照射スポットと重なるとともに所定領域と重ならない第2照射スポットには光が照射される。このため、照射される光の光量が減少した第1照射スポットのうち所定領域と重ならない領域の少なくとも一部に第2灯具ユニットからの光を照射し得る。したがって、第1の態様のこの車両用前照灯によれば、第2灯具ユニットを備えない場合と比べて、前方の視認性を向上し得る。
【0009】
また、第1の態様の車両前照灯では、前記制御部は、前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量が、前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合と比べて、増加するように前記第2灯具ユニットを制御することとしてもよい。
【0010】
このような構成にすることで、上記の光の光量が増加しない場合と比べて、照射される光の光量が減少した第1照射スポットのうち所定領域と重ならない領域の少なくとも一部に照射される第2灯具ユニットからの光の光量を多くし得、前方の視認性をより向上し得る。
【0011】
また、第1の態様の車両前照灯では、少なくとも1つの前記第1照射スポットは少なくとも2つの前記第2照射スポットと重なり、前記制御部は、前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットのうち前記所定領域に近い前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部ほど出射する光の光量が多くなるように前記第2灯具ユニットを制御することとしてもよい。
【0012】
例えば、照射される光の光量が減少した第1照射スポットの一部と当該第1照射スポットに隣り合う他の第1照射スポットの一部とが互いに重なる場合、照射される光の光量が減少した第1照射スポットのうち他の第1照射スポットと重なる重畳領域には、当該他の第1照射スポットに対応する第1光出射部からの光が照射される。ここで、光が照射される照射スポットでは、中央側から外縁側に向かって照射される光の強度が低くなる傾向にある。このため、上記の重畳領域に照射される他の第1照射スポットに対応する第1光出射部からの光の強度は、上記の所定領域に近づくにつれて高くなる傾向にある。この車両用前照灯では、照射される光の光量が減少した第1照射スポットと重なるとともに所定領域と重ならない第2照射スポットのうち所定領域に近い第2照射スポットほど照射される光の強度が高くなる。このため、例えば、照射される光の光量が減少した第1照射スポットと重なるとともに所定領域と重ならない第2照射スポットが上記の重畳領域と重なる場合には、当該重畳領域における光の強度が均一となるようにし得、運転者が重畳領域に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0013】
或いは、前記制御部は、前記領域決定部によって前記所定領域が決定される場合には、前記所定領域と重なる前記第1照射スポットと重なるとともに前記所定領域と重ならない前記第2照射スポットに対応する前記第2光出射部から出射する光の光量が、前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合の光量から変化しないように前記第2灯具ユニットを制御することとしてもよい。
【0014】
このような構成にすることで、上記の光の光量が変化する場合と比べて、制御部による第2灯具ユニットの制御を簡易にし得る。
【0015】
また、第1の態様の車両前照灯では、前記制御部は、前記領域決定部によって前記所定領域が決定されない場合には、前記第1灯具ユニット及び前記第2灯具ユニットから光が出射するように前記第1灯具ユニット及び前記第2灯具ユニットを制御することとしてもよい。
【0016】
このような構成にすることで、領域決定部によって所定領域が決定されない場合には、第1灯具ユニットから出射する光と第2灯具ユニットから出射する光とを含む光によって配光パターンが形成される。前述のように、少なくとも1つの第1照射スポットは少なくとも1つの第2照射スポットと重なるため、第1灯具ユニットから出射する光が照射される領域と第2灯具ユニットから出射する光が照射される領域とを互いに重ならせ得る。このため、第1の態様のこの車両用前照灯によれば、上記の場合に第2灯具ユニットからの光が非出射とされる場合と比べて、形成する配光パターンにおける光の強度分布の自由度を向上し得る。
【0017】
本発明の第2の態様の車両用前照灯は、出射する光の光量を個別に変更可能でマトリックス状に配置される複数の光出射部を有し前記複数の光出射部から出射する光の光量に応じた配光パターンを有する光を出射する灯具ユニットを備え、所定の配光パターンの光を出射する第1状態と、前記所定の配光パターンにおける所定領域の光量が減少された配光パターンの光が出射する第2状態とに切り替え可能であり、前記第2状態から前記第1状態に切り替わる際に、前記所定領域の一部の領域での光量が前記第1状態での当該一部の領域での光量に戻されるとともに、当該一部の領域が時間の経過とともに広がることを特徴とするものである。
【0018】
第2の態様のこの車両用前照灯では、所定領域が他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる場合には、第1状態から第2状態に切り替わることで、他車両の乗員が眩惑することを抑制し得る。また、第2の態様のこの車両用前照灯では、所定領域における一部の領域から明るくなり、この明るくなった領域が時間の経過とともに広がる。換言すれば、光量が減少された領域が時間の経過とともに小さくなる。したがって、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、第2状態から第1状態に瞬時に切り替わる場合と比べて、運転者が所定領域における明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0019】
また、第2の態様の車両前照灯では、前記一部の領域は、時間の経過とともに前記所定領域の下縁から上方側に向かって広がることとしてもよい。
【0020】
運転者が注意を払う対象物には、他車両とともに、例えば道路上の歩行者や障害物等が含まれる。この車両用前照灯では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域における道路に近い側から明るくし得る。このため、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域と道路上の歩行者や障害物等とが重なっている場合には、当該歩行者や障害物等をより速く運転者に認識させ得る。
【0021】
また、第2の態様の車両前照灯では、前記一部の領域は、時間の経過とともに前記所定領域の上縁から下方側に向かって広がることとしてもよい。
【0022】
標識は道路より上方に位置する。第2の態様のこの車両用前照灯では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域における上方側から明るくなる。このため、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域と標識とが重なっている場合には、当該標識をより速く運転者に認識させ得る。
【0023】
また、第2の態様の車両前照灯では、前記一部の領域は、時間の経過とともに前記所定領域における左右方向の一方側の縁から他方側に向かって広がることとしてもよい。
【0024】
第2の態様のこの車両用前照灯では、所定領域における左右方向の一方側から明るくなる。このため、所定領域における左右方向の両側から明るくなる場合と比べて、複数の光出射部から出射する光の調節を簡易にし得る。また、所定領域と路肩側に位置する標識とが重なるとともに左右方向におけるこの標識が位置する側の縁から上記の一部の領域が広がる場合には、当該標識を速く運転者に認識させ得る。
【0025】
この場合、前記所定領域の中心は、前記所定の配光パターンの左右方向の中心から左右方向の所定側にずれており、前記一部の領域は、時間の経過とともに前記所定領域における左右方向の前記所定側と反対側の縁から前記所定側に向かって広がることとしてもよい。
【0026】
一般的に出射する光の配光パターンにおける左右方向の中心は、車両の左右方向の中心を通る鉛直線上に位置する傾向にある。このため、第2の態様のこの車両用前照灯では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域における左右方向の両側のうち車両の中心を通る鉛直線に近い側から明るくし得る。このため、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、所定領域における左右方向の両側のうち車両の中心を通る鉛直線から遠い側から明るくなる場合と比べて、運転者が所定領域における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0027】
また、第2の態様の車両前照灯では、前記一部の領域は、時間の経過ととも前記所定領域の外周縁の全周から前記所定領域の内部側に向かって広がることとしてもよい。
【0028】
このような構成にすることで、上記の一部の領域が所定領域の外周縁の一部から広がる場合と比べて、所定領域を速く明るくし得る。このため、所定領域と重なっている標識等をより速く運転者に認識させ得る。また、一部の領域が所定領域の外周縁の一部から広がる場合と比べて、運転者が違和感を覚えることを抑制し得、運転者に安心感を与え得る。
【0029】
また、第2の態様の車両前照灯では、前記一部の領域は、時間の経過ととも前記所定領域の内部側から当該所定領域の外周側に向かって広がることとしてもよい。
【0030】
この車両用前照灯では、所定領域の内部側から明るくなる。このため、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、所定領域の外周側から明るくなる場合と比べて、運転者が所定領域における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0031】
この場合、前記一部の領域が下方側に向かって広がる速度は、当該一部の領域が上方側に向かって広がる速度より速いこととしてもよい。
【0032】
第2の態様のこの車両用前照灯では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域における下方側を上方側より速く明るくし得る。このため、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域と道路上の歩行者や障害物等とが重なっている場合には、当該歩行者や障害物等をより速く運転者に認識させ得る。
【0033】
或いは、前記一部の領域が上方側に向かって広がる速度は、当該一部の領域が下方側に向かって広がる速度より速いこととしてもよい。
【0034】
第2の態様のこの車両用前照灯では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域における上方側を下方側より速く明るくし得る。このため、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域と標識とが重なっている場合には、当該標識をより速く運転者に認識させ得る。
【0035】
また、第2の態様の車両前照灯では、前記第2状態から前記第1状態に切り替わる際に、前記所定領域における前記一部の領域以外の領域において、光の強度が前記一部の領域から離れるほど低くなるように、光量が時間の経過とともに増加されることとしてもよい。
【0036】
前述のように、第2の態様のこの車両用前照灯では、第2状態から前記第1状態に切り替わる際に、所定領域における一部の領域から明るくなり、この明るくなった領域が時間の経過とともに広がる。このため、上記のような構成にすることで、所定領域において明るい領域から離れるほど暗くなるようにし得、明るい領域と暗い領域との境界を目立たなくし得る。したがって、第2の態様のこの車両用前照灯によれば、運転者が所定領域における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の態様としての第1実施形態における車両用前照灯を備える車両を概念的に示す平面図である。
図2図1に示す第1灯具ユニットを概略的に示す側面図である。
図3図2に示す配光パターン形成部を概略的に示す正面図である。
図4図3に示すそれぞれの発光素子からの光が照射される第1照射スポットを説明する図である。
図5図1に示す第2灯具ユニットを概略的に示す側面図である。
図6図5に示す配光パターン形成部を概略的に示す正面図である。
図7図6に示すそれぞれの発光素子からの光が照射される第2照射スポットを説明する図である。
図8図1に示す第3灯具ユニットを概略的に示す側面図である。
図9図8に示す光源部を概略的に示す正面図である。
図10】第1実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。
図11】第1実施形態におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図12】第1実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
図13】領域決定部によって決定される所定領域の一例を示す図である。
図14図13における所定領域及びその近傍を拡大して示す図である。
図15図14に示す所定領域に応じた配光パターンの一例を示す図である。
図16】変形例に係る第2灯具ユニットを概略的に示す鉛直方向に沿った断面図である。
図17】本発明の第2の態様としての第3実施形態における車両用前照灯を備える車両を概念的に示す平面図である。
図18】第3実施形態におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図19】第3実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。
図20】検出装置によって他車両として先行車が検出された際に出射される光の配光パターンの一例を示す図である。
図21】第3実施形態における他車両に応じた配光パターンが変化する様子の一例を説明するための図である。
図22】第4実施形態における他車両に応じた配光パターンが変化する様子の一例を説明するための図である。
図23】第5実施形態における他車両に応じた配光パターンが変化する様子の一例を説明するための図である。
図24】第6実施形態における他車両に応じた配光パターンが変化する様子の一例を説明するための図である。
図25】第7実施形態における他車両に応じた配光パターンが変化する様子の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る車両用前照灯を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。また、上記添付図面では、理解を容易にするために各部材の寸法が誇張して示されている場合がある。
【0039】
(第1実施形態)
本発明の第1の態様としての第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態における車両用前照灯を備える車両を概念的に示す平面図である。図1に示すように、車両100は、車両用前照灯1と、検出装置110と、ライトスイッチ120とを備える。
【0040】
本実施形態の車両用前照灯1は、自動車用の前照灯とされる。車両用前照灯1は、左右一対の灯具部5と、制御部COと、判定部50と、領域決定部55と、一対の電源回路60と、を主な構成として備える。なお、本明細書において、特に明示のない限り、「右」とは自車両である車両100の運転者の視点における右側を意味し、「左」とは自車両である車両100の運転者の視点における左側を意味する。
【0041】
本実施形態では、一対の灯具部5は、車両100の左右方向において互いに概ね対称な形状とされ、車両100の前方に向かって変更可能な配光パターンの光を出射する。また、一方の灯具部5の構成は、形状が概ね対称であることを除いて、他方の灯具部5の構成と同じとされる。このため、以下では、一方の灯具部5について説明し、他方の灯具部5についての説明は省略する。
【0042】
本実施形態の灯具部5は、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30を備える。これら灯具ユニット10,20,30は互いに横並びに並べられており、第2灯具ユニット20が車両100の最も中心側に配置され、第3灯具ユニット30が車両100の最も外側に配置され、第1灯具ユニット10が第2灯具ユニット20と第3灯具ユニット30との間に配置される。
【0043】
図2は、図1に示す第1灯具ユニット10を概略的に示す側面図である。図1に示すように、第1灯具ユニット10は、配光パターン形成部12と、投影レンズ15と、筐体16とを主な構成として備える。なお、図2において、筐体16は鉛直断面にて示されている。
【0044】
筐体16は、ランプハウジング17、フロントカバー18、及びバックカバー19を主な構成として備える。ランプハウジング17の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー18がランプハウジング17に固定されている。また、ランプハウジング17の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー19がランプハウジング17に固定されている。
【0045】
ランプハウジング17と、当該ランプハウジング17の前方の開口を塞ぐフロントカバー18と、当該ランプハウジング17の後方の開口を塞ぐバックカバー19とによって形成される空間は灯室10Rであり、この灯室10R内に配光パターン形成部12及び投影レンズ15が収容されている。
【0046】
図3は、図2に示す配光パターン形成部12を概略的に示す正面図である。図2図3に示すように、本実施形態の配光パターン形成部12は、光を出射する第1光出射部としての複数の発光素子13a~13hと、複数の発光素子13a~13hが実装される回路基板14とを有する。複数の発光素子13a~13hは、左右方向に一列に並んで配置され、前方に向かって光を出射する。複数の発光素子13a~13hは出射する光の光量を個別に変更可能とされている。本実施形態では、これら発光素子13a~13hは、光を出射する出射面が上下方向に長尺な概ね長方形状のLEDとされ、配光パターン形成部12は所謂LEDアレイであり、8個のLEDが配列されている。なお、発光素子の種類や数は、特に限定されるものではい。
【0047】
このような配光パターン形成部12は、光を出射させる発光素子13a~13hを選択することで所定の配光パターンを形成することができる。また、配光パターン形成部12は、それぞれの発光素子13a~13hから出射する光量を調節することで所定の配光パターンにおける光の強度分布を調節することができる。つまり、配光パターン形成部12は、複数の発光素子13a~13hから出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成すると理解できる。
【0048】
投影レンズ15は、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ15は、配光パターン形成部12よりも前方に配置され、配光パターン形成部12から出射する光が入射し、この光の発散角が投影レンズ15で調節される。投影レンズ15は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。投影レンズ15の光軸は、配光パターン形成部12における発光素子13dと発光素子13eとの間を通り、投影レンズ15の後方焦点は、発光素子13dの光の出射面を含む面上または当該面の近傍に位置している。このような投影レンズ15で発散角が調節された光がフロントカバー18を介して第1灯具ユニット10から車両100の前方へ向けて出射する。
【0049】
図4は、図3に示すそれぞれの発光素子13a~13hからの光が照射される第1照射スポットを説明する図である。図4に示される第1照射スポットS1a~S1hは、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上において、発光素子13a~13hから光が照射される領域である。また、図4において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示す。複数の発光素子13a~13hは、上記のように、左右方向に一列に並んで配置されているため、第1照射スポットS1a~S1hは、左右方向に一列に並ぶ。したがって、第1灯具ユニット10は、それぞれの発光素子13a~13hからの光が照射される第1照射スポットS1a~S1hが左右方向に並ぶように複数の発光素子13a~13hからの光を出射すると理解できる。第1照射スポットS1aは発光素子13aに対応し、発光素子13aから光が出射するとき当該光が第1照射スポットS1aに照射される。また、第1照射スポットS1bは発光素子13bに対応し、第1照射スポットS1cは発光素子13cに対応し、第1照射スポットS1dは発光素子13dに対応し、第1照射スポットS1eは発光素子13eに対応し、第1照射スポットS1fは発光素子13fに対応し、第1照射スポットS1gは発光素子13gに対応し、第1照射スポットS1hは発光素子13hに対応する。
【0050】
これら第1照射スポットS1a~S1hは、概ね同じ大きさで上下方向に長尺な長方形状である。また、隣り合う第1照射スポットの一部が互いに重なっている。例えば、第1照射スポットS1aの一部と第1照射スポットS1bの一部とが互いに重なり、第1照射スポットS1bの他の一部と第1照射スポットS1cの一部とが互いに重なっている。また、これら第1照射スポットS1a~S1hは水平線Sと重なり、2つの第1照射スポットS1d,S1eは鉛直線Vと重なっている。換言すれば、こられ第1照射スポットS1a~S1hがこのように配置されるように、発光素子13a~13hの位置等が調整されている。なお、隣り合う第1照射スポットは互いに接していてもよく、互いに離れて隙間が形成されていてもよい。しかし、これら第1照射スポットS1a~S1hは左右方向に隙間なく並んでいることが好ましい。また、第1照射スポットS1a~S1hの形状は特に限定されるものではない。
【0051】
図5は、図1に示す第2灯具ユニット20を概略的に示す側面図である。図5に示すように、第2灯具ユニット20は、配光パターン形成部22と、投影レンズ25と、筐体26とを主な構成として備える。なお、図5において、筐体26は鉛直断面にて示されている。筐体26は、第1灯具ユニット10の筐体16と同様の構成とされ、ランプハウジング27、フロントカバー28、及びバックカバー29を主な構成として備え、筐体26によって形成される灯室20R内に配光パターン形成部22及び投影レンズ25が収容されている。
【0052】
図6は、図5に示す配光パターン形成部22を概略的に示す正面図である。図5図6に示すように、本実施形態の配光パターン形成部22は、光を出射する第2光出射部としての複数の発光素子23と、複数の発光素子23が実装される回路基板24とを有する。複数の発光素子23は、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。これら発光素子23は、第1灯具ユニット10における発光素子13a~13hより小さく、出射する光の光量を個別に変更可能とされている。本実施形態では、配光パターン形成部22は、左右方向に並ぶ96個の発光素子23から成る発光素子群を32個有し、これら発光素子群が上下方向に並んでいる。また、これら発光素子23はマイクロLEDとされ、配光パターン形成部22は所謂マイクロLEDアレイである。なお、それぞれの発光素子群における発光素子23の数や、発光素子群の数は、特に限定されるものではない。
【0053】
このような配光パターン形成部22は、光を出射させる発光素子23を選択することで所定の配光パターンを形成することができる。また、配光パターン形成部22は、それぞれの発光素子23から出射する光量を調節することで所定の配光パターンにおける光の強度分布を調節することができる。つまり、配光パターン形成部22は、複数の発光素子23から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成すると理解できる。
【0054】
投影レンズ25は、投影レンズ15と同様に、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ25は、配光パターン形成部22よりも前方に配置され、配光パターン形成部22から出射する光が入射し、この光の発散角が投影レンズ25で調節される。投影レンズ25は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、投影レンズ25の後方焦点は、配光パターン形成部22におけるいずれかの発光素子23の光の出射面上またはその近傍に位置している。このような投影レンズ25で発散角が調節された光がフロントカバー28を介して第2灯具ユニット20から車両100の前方へ向けて出射する。
【0055】
図7は、図6に示すそれぞれの発光素子23からの光が照射される第2照射スポットを説明する図である。図7に示される第2照射スポットS2は、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上において、発光素子23から光が照射される領域である。また、図7において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、第1照射スポットS1a~S1hが破線で示されている。配光パターン形成部22における複数の発光素子23は、上記のように、マトリックス状に配置されているため、車両100の前方において、それぞれの発光素子23からの光が照射される第2照射スポットS2は、マトリックス状に並ぶ。したがって、第2灯具ユニット20は、それぞれの発光素子23からの光が照射される第2照射スポットS2がマトリックス状に並ぶように複数の発光素子23からの光を出射すると理解できる。なお、理解を容易にするため、図7では、複数の第2照射スポットS2の数が少なくされている。それぞれの第2照射スポットS2は1つの発光素子23に対応しており、複数の発光素子23における特定の発光素子23の相対的な位置と、複数の第2照射スポットS2におけるこの特定の発光素子23に対応する特定の第2照射スポットS2の相対的な位置は、上下左右で反転している。例えば、車両100の運転者の視点における右の上端に位置する発光素子23に対応する第2照射スポットS2は、車両100の運転者の視点における左の下端に位置する。
【0056】
これら第2照射スポットS2は、概ね同じ大きさの正方向形状である。なお、図7では、理解を容易にするために、隣り合う第2照射スポットS2が互いに接するように複数の第2照射スポットS2が記載されているが、隣り合う第2照射スポットS2は互いに重なっている。そして、これら第2照射スポットS2の全体から形成される領域70は、左右方向に長尺な長方形状である。つまり、この領域70は、第2灯具ユニット20が光を照射可能な領域であると理解できる。この領域70は、水平線S及び鉛直線Vと重なっており、6つの第1照射スポットS1b~S1gとも重なっている。この6つの第1照射スポットS1b~S1gのそれぞれは、第2照射スポットS2の少なくとも1つと重なっており、本実施形態では、複数の第2照射スポットS2と重なっている。換言すれば、第2照射スポットS2から形成される領域70がこのように配置されるように第2灯具ユニット20の向き等が調整されている。なお、隣り合う第2照射スポットS2は互いに接していてもよく、互いに離れて隙間が形成されていてもよい。しかし、複数の第2照射スポットS2は隙間なくマトリックス状に配置されていることが好ましい。また、第2照射スポットS2は第1照射スポットS1a~S1hより小さければよく、形状は特に限定されるものではない。また、複数の第2照射スポットS2は大きさや形状の異なる第2照射スポットS2を含んでいてもよい。また、8つの第1照射スポットS1a~S1hのうち少なくとも1つの第1照射スポットが、少なくとも1つの第2照射スポットS2と重なっていればよく、全部の照射スポットS1a~S1hが第2照射スポットS2と重なっていてもよい。
【0057】
図8は、図1に示す第3灯具ユニット30を概略的に示す側面図である。図8に示すように、第3灯具ユニット30は、光源部32と、シェード33と、投影レンズ35と、筐体36とを主な構成として備える。なお、図8において、筐体36は鉛直断面にて示されている。筐体36は、第1灯具ユニット10の筐体16と同様の構成とされ、ランプハウジング37、フロントカバー38、及びバックカバー39を主な構成として備え、筐体36によって形成される灯室30R内に光源部32、シェード33、及び投影レンズ35が収容されている。
【0058】
図9は、図8に示す光源部32を概略的に示す正面図である。なお、図9には、シェード33も記載されている。図8図9に示すように、本実施形態の光源部32は、光を出射する発光素子32aと、発光素子32aが実装される回路基板32bとを有する。本実施形態では、発光素子32aは、光を出射する出射面が左右方向に長尺な概ね長方形状のLEDとされ、前方に向かって光を出射する。
【0059】
シェード33は、遮光部33aと固定部33bとを有する。本実施形態では、遮光部33aと固定部33bは、板状部材を曲げ加工することで一体に成形されている。遮光部33aは、光源部32の発光素子32aより前方において左右方向に延在しており、下端部には固定部33bが接続されている。固定部33bは、遮光部33aの下端部から後方に向かって延在しており、固定部33bの遮光部33a側と反対側の端部が回路基板32bに固定される。遮光部33aの上方側の縁は、第1縁部33e1、第2縁部33e2、及び第3縁部33e3から成る。第1縁部33e1は概ね水平方向に延在する。第2縁部33e2は第1縁部33e1の一方側の端から第1縁部33e1側と反対側かつ下方に向かって直線状に延在する。第3縁部33e3は第2縁部33e2の第1縁部33e1側と反対側の端から第1縁部33e1側と反対側に向かって概ね水平方向に延在する。このようなシェード33の遮光部33aは、発光素子32aから出射する光の一部を遮る。
【0060】
投影レンズ35は、投影レンズ15と同様に、入射する光の発散角を調節するレンズである。本実施形態では、投影レンズ35は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされ、シェード33よりも前方に配置される。投影レンズ35の後方焦点は、シェード33の遮光部33aにおける上方側の縁またはその近傍に位置している。上記のように、発光素子32aから出射する光の一部はシェード33の遮光部33aによって遮光され、発光素子32aから出射する光の他の一部が投影レンズ35に入射し、遮光部33aの形状に応じた特定の配光パターンの光が投影レンズ35から出射する。なお、この特定の配光パターンは、遮光部33aによって一部の光の遮光された際の配光パターンが上下左右に反転した配光パターンである。このように投影レンズ35から出射する特定の配光パターンを有する光がフロントカバー38を介して第3灯具ユニット30から車両100の前方へ向けて出射する。
【0061】
次に、図1に示す制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。後述するように、制御部COは、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30を制御する。
【0062】
制御部COには、車両100が備えるライトスイッチ120が接続されている。本実施形態のライトスイッチ120は、ロービームの出射、ハイビームの出射、光の非出射のいずれかを選択するスイッチである。例えば、ライトスイッチ120は、ロービームの出射が選択された場合にロービームの出射を示す信号を制御部COに出力し、ハイビームの出射が選択された場合にハイビームの出射を示す信号を制御部COに出力する。また、ライトスイッチ120は、光の非出射が選択された場合に制御部COに信号を出力しない。
【0063】
本実施形態の検出装置110は、車両100の前方に位置する他車両を検出する。検出装置110は、他車両を検出する場合に、他車両の検出を示す信号を、判定部50を介して領域決定部55に出力する。また、検出装置110は、検出される他車両の状態も検出し、当該他車両の状態を示す信号を、判定部50を介して領域決定部55に出力する。なお、検出装置110は、これら信号を領域決定部55に直接出力してもよい。他車両の状態として、例えば、車両100に対する当該他車両の位置、他車両が先行車であるか対向車であるか、車両100から他車両までの距離等が挙げられる。検出装置110は、例えば、図示しないカメラ、検出部等を備える。カメラは、車両100の前部に取り付けられ、所定の時間間隔、例えば1/30秒間隔で車両100の前方を撮影する。カメラによって撮影される撮影画像には、一対の灯具部5から出射する光が照射される領域の少なくとも一部が含まれる。検出部は、カメラによって撮影された撮影画像から、車両100の前方に位置する他車両の検出、及び当該他車両の状態の検出をする。
【0064】
例えば、他車両が対向車である場合、撮影画像には対向車の前照灯から出射される光による白色系の一対の光点が映り込む。検出部は、この白色系の一対の光点が対向車の前照灯からの光に対応するものとして、他車両の検出を示す信号及び他車両が対向車であることを示す信号を判定部50に出力する。なお、検出部は、他車両が対向車であることを示す信号が他車両の検出を含むものとして、他車両が対向車であることを示す信号を出力してもよい。また、検出部は、この白色系の一対の光点間の距離等に基づいて、車両100から対向車までの距離を演算する。そして、検出部は、車両100に対する対向車の位置を示す信号としての撮影画像における白色系の一対の光点の位置を示す信号、及び演算したこの距離を示す信号を判定部50に出力する。また、他車両が先行車である場合、撮影画像には先行車の尾灯から出射される光による赤色系の一対の光点が映り込む。検出部は、赤色系の一対の光点が先行車の尾灯からの光に対応するものとして、他車両の検出を示す信号及び他車両が先行車であることを示す信号を判定部50に出力する。なお、検出部は、他車両が先行車であることを示す信号が他車両の検出を含むものとして、他車両が先行車であることを示す信号を出力してもよい。また、検出部は、この赤色系の一対の光点間の距離等に基づいて、車両100から先行車までの距離を演算する。そして、検出部は、車両100に対する先行車の位置を示す信号としての撮影画像における赤色系の一対の光点の位置を示す信号、及び演算したこの距離を示す信号を判定部50に出力する。
【0065】
一方、検出部は、車両100の前方に位置する他車両を検出しない場合には、判定部50に信号を出力しない。
【0066】
検出部の構成として、例えば、制御部COと同様の構成が挙げられ、カメラとして、例えば、C-MOS(Complementary metal oxide semiconductor)カメラ、CCD(Charged coupled device)カメラが挙げられる。
【0067】
なお、検出装置110の構成、検出装置110による他車両の検出方法、車両100から他車両までの距離の演算方法、対向車と先行車との識別方法、検出装置110から判定部50に出力される他車両の状態を示す信号は、特に限定されるものではない。例えば、検出装置110は、カメラによって撮影された撮影画像に画像処理を施す画像処理部を更に備え、検出部は、画像処理部によって画像処理された情報から他車両の検出、及び当該他車両の状態の検出をしてもよい。また、検出装置110は、車両100の前方に位置する物体を検出可能なミリ波レーダやライダー等を更に備え、カメラによって撮像された撮影画像と、ミリ波レーダやライダー等から入力される信号に基づいて、車両100の前方に位置する他車両の検出、及び当該他車両の状態の検出をしてもよい。
【0068】
判定部50は、車両100の前方に位置する他車両を検出する検出装置110からの他車両の状態を示す信号を基に、検出された他車両が所定の要件を満たす状態か否かを判定する。所定の要件として、例えば、他車両と車両100との間の距離が所定の距離未満であること、対向車の前照灯が点灯していること、先行車の尾灯が点灯していること、これらの要件の少なくとも2つを満たすことなどが挙げられる。本実施形態の所定の要件は他車両と車両100との間の距離が所定の距離未満であることとされ、所定の距離は、例えば100mである。なお、この所定の距離は、他車両が先行車である場合と他車両が対向車である場合とで異なっていてもよい。本実施形態の判定部50は、他車両が所定の要件を満たす状態である場合には、他車両の状態を示す信号として、他車両が撮影された撮影画像、撮影画像における他車両の存在位置といった情報を示す信号を領域決定部55に出力する。また、判定部50は、他車両が所定の要件を満たさない状態である場合、及び検出装置110から判定部50に信号が入力されない場合には、領域決定部55に信号を出力しない。このため、判定部50による判定とは、このように検出装置110から入力される信号に応じて場合分けをして出力する信号を変化させることと理解できる。判定部50の構成として、例えば、制御部COと同様の構成が挙げられる。
【0069】
領域決定部55は、判定部50を介した検出装置110からの他車両の状態を示す信号を基に、他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる所定領域を決定し、当該所定領域を示す信号を制御部COに出力する。このため、この所定領域は予め定められている領域ではない。しかし、領域決定部55は、判定部50からの他車両の状態を示す信号を基に、予め定められた複数の領域からこの所定領域となる領域を選択して当該領域を所定領域に決定してもよい。他車両の運転者が車外を視認するための視認部としては、他車両が対向車の場合には例えばフロントウインド等を挙げることができ、他車両が先行車の場合には例えばサイドミラー、リアウインド、車両の後方を撮像する撮像装置等を挙げることができる。所定領域は、このような他車両の視認部の全体と重なっていることが好ましい。本実施形態では、領域決定部55は、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上において、他車両の全体が含まれる矩形状の領域を所定領域と決定する。この所定領域の外縁と他車両の外縁との間には所定の隙間が形成される。領域決定部55は、このような所定領域を決定する。一方、領域決定部55は、他車両の状態を示す信号が入力しない場合、制御部COに信号を出力しない。なお、領域決定部55は、この場合、所定領域を決定しないことを示す信号を制御部COに出力してもよい。領域決定部55の構成として、例えば、制御部COと同様の構成が挙げられる。なお、領域決定部55が判定部50を兼ねていてもよい。また、所定領域の形状は特に制限されるものではない。
【0070】
一方の電源回路60は一方の灯具部5に対応し、他方の電源回路60は他方の灯具部5に対応している。それぞれの電源回路60は、ドライバを含んでおり、制御部COから信号が入力すると、このドライバによって第1灯具ユニット10の各発光素子13a~13h、第2灯具ユニット20の各発光素子23、第3灯具ユニット30の発光素子32aに供給される電力が調節される。こうして、これら発光素子13a~13h,23,32aのそれぞれから出射する光の光量が調節される。なお、電源回路60のドライバは、PWM(Pulse Width Modulation)制御によってそれぞれの発光素子13a~13h,23,32aに供給される電力を調整してもよい。この場合、デューティーサイクルを調節することによって、それぞれの発光素子13a~13h,23,32aから出射する光の光量が調節される。
【0071】
次に、車両用前照灯1から出射するロービームについて説明する。
【0072】
本実施形態では、第2灯具ユニット20から出射する光と第3灯具ユニット30から出射する光とによってロービームの配光パターンが形成される。
【0073】
図10は、本実施形態におけるロービームの配光パターンを示す図である。図10において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービームの配光パターンPLが太線で示される。また、図10において、第2灯具ユニット20からの光が照射可能な領域70が破線で示されている。
【0074】
本実施形態のロービームの配光パターンPLは、上縁に、カットオフラインCL1,CL2,CL3を有する。カットオフラインCL1は、水平線Sより下方かつ鉛直線V上またはその近傍に位置するエルボー点EPから左右方向の一方側である右側に水平方向に延在する。カットオフラインCL2は、エルボー点EPから左右方向の他方側である左側に斜め上方に向かって延在し、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端は、水平線Sより上方に位置している。カットオフラインCL3は、カットオフラインCL2におけるエルボー点EP側と反対側の端から、左右方向の他方側に水平方向に延在する。また、ロービームの配光パターンPLにおける光の強度が最も高い領域であるホットゾーンHZLは、エルボー点EPの近傍に位置している。なお、車両の右側通行が運用されている国や地域では、ロービームの配光パターンは、図10に示すロービームの配光パターンPLと概ね左右対称の形状とされ、カットオフラインCL1はエルボー点EPから左側に水平方向に延在し、カットオフラインCL2はエルボー点EPから右側に斜め上方に延在する。
【0075】
第3灯具ユニット30におけるシェード33の遮光部33aの上端の形状は、ロービームの配光パターンPLの上縁に対応しており、第3灯具ユニット30から出射する光の特定の配光パターンの外形は、ロービームの配光パターンPLの外形に概ね一致している。また、ロービームの配光パターンPLのうち、第2灯具ユニット20からの光が照射可能な領域70と重なる重畳領域71には、ホットゾーンHZLが含まれ、当該重畳領域71には、第2灯具ユニット20からの光が照射される。換言すれば、重畳領域71内に位置する第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光が出射され、この重畳領域71には、第2灯具ユニット20からの光と第3灯具ユニット30からの光とが照射される。この重畳領域71における光の強度分布は、例えば、ホットゾーンHZLから離れるほど強度が低くなる分布とされる。この重畳領域71における光の強度分布がこのような分布となるように、それぞれの発光素子23から出射する光の光量が制御部COによって調節される。このように第2灯具ユニット20及び第3灯具ユニット30から光が出射されることで、車両用前照灯1からロービームが出射される。
【0076】
次に、車両用前照灯1から出射するハイビームについて説明する。
【0077】
本実施形態では、第1灯具ユニット10から出射する光と、第2灯具ユニット20から出射する光と、第3灯具ユニット30から出射する光とによってハイビームの配光パターンが形成される。
【0078】
図11は、本実施形態におけるハイビームの配光パターンを示す図である。図11において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビームの配光パターンPHが太線で示される。また、図11において、第1照射スポットS1a~S1hとともに、第2灯具ユニット20が光を照射可能な領域70が破線で示されている。本実施形態では、ハイビームの配光パターンPHにおける光の強度が最も高い領域であるホットゾーンHZHは、水平線Sと鉛直線Vとの交点上またはその近傍に位置しており、2つの第1照射スポットS1d,S1e、及び領域70と重なっている。
【0079】
本実施形態では、車両用前照灯1からハイビームを出射する際、第1灯具ユニット10における全ての発光素子13a~13h、及び第2灯具ユニット20における全ての発光素子23から光が出射される。このため、第1照射スポットS1a~S1hには、対応する発光素子13a~13hからの光が照射され、領域70には、発光素子23から光が照射される。また、第3灯具ユニット30は、ロービームを形成するときと同じ光を出射する。ハイビームの配光パターンPHのうち、領域70と重なる領域における光の強度分布は、例えば、ホットゾーンHZHから離れるほど強度が低くなる分布とされる。この領域70における光の強度がこのような分布となるように、それぞれの発光素子23から出射する光の光量が制御部COによって調節される。このように第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30から光が出射されることで、車両用前照灯1からハイビームが出射される。
【0080】
次に、本実施形態の車両用前照灯1の動作について説明する。図12は、本実施形態における制御部の制御フローチャートの一例を示す図である。図12に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP11~ステップSP17を含んでいる。
【0081】
(ステップSP11)
まず、制御部COは、ライトスイッチ120からロービームの出射を示す信号が入力するか否かを判断する。この信号が制御部COに入力される場合、制御部COは制御フローをステップSP12に進める。一方、この信号が制御部COに入力されない場合、制御部COは制御フローをステップSP13に進める。このため、制御部COの判断とは、このように入力する信号に応じて場合分けをして次に進むステップを変更することと理解できる。
【0082】
(ステップSP12)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1からロービームが出射するように、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30を制御する。具体的には、制御部COは、ロービームに対応する所定の制御信号を電源回路60に出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、全ての発光素子13a~13hへの電力の供給が停止され、発光素子32aに供給される電力が所定の電力となり、各発光素子23に供給される電力がロービームに対応する電力となるように調整される。このため、第2灯具ユニット20からロービームの一部となる光が出射し、第3灯具ユニット30からロービームの他の一部となる光が出射することで、車両用前照灯1からロービームが出射される。そして、制御部COは、制御フローをステップSP11に戻す。
【0083】
(ステップSP13)
本ステップでは、制御部COは、ライトスイッチ120からハイビームの出射を示す信号が入力するか否かを判断する。この信号が制御部COに入力される場合、制御部COは制御フローをステップSP14に進める。一方、この信号が制御部COに入力されない場合、制御部COは制御フローをステップSP17に進める。
【0084】
(ステップSP14)
本ステップでは、制御部COは、領域決定部55から入力する信号に基づいて、領域決定部55によって所定領域が決定されたか否かを判断する。領域決定部55から信号が制御部COに入力されない場合、制御部COは制御フローをステップSP15に進める。一方、領域決定部55から信号が制御部COに入力される場合、制御部COは制御フローをステップSP16に進める。
【0085】
(ステップSP15)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1からハイビームが出射するように、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30を制御する。具体的には、制御部COは、ハイビームに対応する所定の制御信号を電源回路60に出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、配光パターン形成部12の各発光素子13a~13hに供給される電力が所定の電力となり、光源部32の発光素子32aに供給される電力が所定の電力となり、配光パターン形成部22の各発光素子23に供給される電力がハイビームに対応する電力となるように調整される。このため、第1灯具ユニット10からハイビームの一部となる光が出射し、第2灯具ユニット20からハイビームの他の一部となる光が出射し、第3灯具ユニット30からハイビームの別の他の一部となる光が出射することで、車両用前照灯1からロービームが出射される。そして、制御部COは、制御フローをステップSP11に戻す。なお、前述のように、第3灯具ユニット30から出射する光の配光パターンは、車両用前照灯1からロービームを出射する際に第3灯具ユニット30から出射する光の配光パターンと同じ特定の配光パターンである。
【0086】
(ステップSP16)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが領域決定部55によって決定された所定領域に応じた配光パターンとなるように、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30を制御する。そして、制御部COは、制御フローをステップSP11に戻す。
【0087】
図13は、領域決定部55によって決定される所定領域80の一例を示す図であり、検出装置110によって対向車である他車両90が検出されるとともに判定部50によって当該他車両90が所定の要件を満たすと判断された際に決定される所定領域80の一例を示す図である。図14は、図13における所定領域80及びその近傍を拡大して示す図である。図13において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上における所定領域80が太線で示されている。また、図13には、第1照射スポットS1a~S1hが一点鎖線で示され、領域70が破線で示されている。また、図14には、第2照射スポットS2が細線で示されている。なお、理解を容易にするため、図14では、第2照射スポットS2の数が少なくされている。また、隣り合う第2照射スポットS2が互いに接するように複数の第2照射スポットS2が記載されているが、隣り合う第2照射スポットS2は互いに重なっている。
【0088】
前述のように、本実施形態では、所定領域80は、対向車である他車両90の全体が含まれる矩形状であり、この所定領域80の外縁と他車両90の外縁との間には所定の隙間が形成されている。このため、所定領域80は、対向車である他車両90の運転者が車外を視認するための視認部としてのフロントウインド91と重なる。制御部COは、この所定領域80と第1照射スポットS1a~S1hとの位置関係に応じて第1灯具ユニット10を制御する。具体的には、制御部COは、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fに対応する発光素子13e,13fから出射する光の光量がハイビームを出射するときの光量より減少またはゼロとなるように当該発光素子13e,13fを制御する。また、制御部COは、所定領域80と重ならない第1照射スポットS1a~S1d,S1g,S1hに対応する発光素子13a~13d,13g,13hから出射する光の光量がハイビームを出射するときの光量となるように、これら発光素子13a~13d,13g,13hを制御する。具体的には、制御部COは、各発光素子13a~13hから出射する光の光量がこのようになるような制御信号を電源回路60に出力し、電源回路60のドライバによって各発光素子13a~13hに供給される電力が調整される。なお、本実施形態では、制御部COは、発光素子13e,13fから出射する光の光量がゼロとなるように、第1灯具ユニット10を制御する。
【0089】
また、制御部COは、所定領域80と第2照射スポットS2との位置関係に応じて第2灯具ユニット20を制御する。具体的には、制御部COは、所定領域80と重なる第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量がハイビームを出射するときの光量より減少するように、当該発光素子23を制御する。また、制御部COは、図14において複数の点から構成されるハッチングが施された第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光が出射するように、当該発光素子23を制御する。このハッチングが施された第2照射スポットS2は、所定領域80と重なっている第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに、所定領域80と重なっていない。また、制御部COは、所定領域80と重なっている第1照射スポットS1e,S1fと重ならない第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量がハイビームを出射するときの光量と同じとなるように、当該発光素子23を制御する。具体的には、制御部COは、各発光素子23から出射する光の光量がこのようになるような制御信号を電源回路60に出力し、電源回路60のドライバによって各発光素子23に供給される電力が調整される。なお、本実施形態では、制御部COは、所定領域80と重なる第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量がゼロとなり、ハッチングが施された第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光の光量がハイビームを出射するときの光量と同じとなるように、第2灯具ユニット20を制御する。しかし、ハッチングが施された第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光の光量はハイビームを出射するときの光量と異なっていてもよい。
【0090】
また、制御部COは、所定領域80とは関係なく、ハイビームを出射する際に第3灯具ユニット30から出射する光の配光パターンと同じ特定の配光パターンを有する光が出射するように第3灯具ユニット30を制御する。
【0091】
図15は、図14に示す所定領域80に応じた配光パターンの一例を示す図である。図15において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上における配光パターン200が太線で示されている。上記のように、第1照射スポットS1e,S1f以外の第1照射スポットS1a~S1d,S1g,S1hに対応する発光素子13a~13d,13g,13hから出射する光の光量、及び第1照射スポットS1e,S1fと重ならない第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量は、ハイビームを出射するときの光量と同じである。また、第3灯具ユニット30から出射する光は、ハイビームを出射するときの光と同じである。このため、配光パターン200は、ハイビームの配光パターンPHにおいて第1照射スポットS1e,S1fと重なる領域の光の強度分布が変化した配光パターンである。また、上記のように、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fに対応する発光素子13e,13eから出射する光の光量、及び所定領域80と重なる第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量はハイビームを出射するときの光量より減少している。このため、配光パターン200は、所定領域80を含むとともにハイビームを出射するときより光量が減少された減光領域81を有し、この減光領域81と他車両90における視認部としてのフロントウインド91とが重なる。
【0092】
(ステップSP17)
本ステップでは、ライトスイッチ120から制御部COに信号は入力されていない。このため、ライトスイッチ120において光の非出射が選択された状態である。制御部COは、第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30からの光が非出射となるように、これら灯具ユニット10,20,30を制御する。具体的には、制御部COは、電源回路60に所定の信号を出力して、電源回路60に全ての発光素子13a~13h、全ての発光素子23、及び発光素子32aへの電力の供給を停止させ、車両用前照灯1からの光を非出射とする。そして、制御フローをステップSP11に戻す。
【0093】
このように、本実施形態の車両用前照灯1では、出射するハイビームの配光パターンPHは、領域決定部55によって所定領域80が決定される場合に、減光領域81を有する配光パターン200に変化される。なお、制御部COの制御フローは特に限定されるものではない。
【0094】
ところで、前述の特許文献1に記載の車両用前照灯では、他車両とともにその周囲の領域に光が照射されなくなるため、前方の視認性が低下する傾向にある。
【0095】
そこで、本実施形態の車両用前照灯1は、第1灯具ユニット10と、第2灯具ユニット20と、領域決定部55と、制御部COと、を備える。第1灯具ユニット10は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の発光素子13a~13hを含み、それぞれの発光素子13a~13hからの光が照射される第1照射スポットS1a~S1hが左右方向に並ぶように複数の発光素子13a~13hからの光を出射する。第2灯具ユニット20は、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の発光素子23を含み、それぞれの発光素子23からの光が照射される第2照射スポットS2がマトリックス状に並ぶように複数の発光素子23からの光を出射する。領域決定部55は、検出装置110から車両100の前方に位置する他車両90の検出を示す信号が入力する場合に他車両90の運転者が車外を視認するための視認部と重なる所定領域80を決定する。第2照射スポットS2は第1照射スポットS1a~S1hよりも小さく、第1照射スポットS1b~S1gは複数の第2照射スポットS2と重なる。制御部COは、領域決定部55によって所定領域80が決定されない場合には、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20から光が出射するように第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20を制御する。また、制御部COは、領域決定部55によって所定領域80が決定される場合には、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fに対応する発光素子13e,13fから出射する光の光量が減少またはゼロとなるように第1灯具ユニット10を制御する。また、この場合、制御部COは、所定領域80と重なる第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量が減少またはゼロとなり、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光が出射するように第2灯具ユニット20を制御する。
【0096】
本実施形態の車両用前照灯1では、第1灯具ユニット10から出射して他車両90の視認部に照射される光の光量が減少またはゼロとなるとともに、第2灯具ユニット20から出射して他車両90の視認部に照射される光の光量が減少またはゼロとなる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、他車両90の乗員が眩惑することを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2には光が照射される。このため、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1e,S1fのうち所定領域80と重ならない領域の少なくとも一部に第2灯具ユニット20からの光を照射し得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第2灯具ユニット20を備えない場合と比べて、前方の視認性を向上し得る。
【0097】
本実施形態の車両用前照灯1では、制御部COは、領域決定部55によって所定領域80が決定される場合には、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量が、領域決定部55によって所定領域80が決定されない場合の光量から変化しないように第2灯具ユニット20を制御する。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の光の光量が変化する場合と比べて、制御部COによる第2灯具ユニット20の制御を簡易にし得る。
【0098】
なお、制御部COは、領域決定部55によって所定領域80が決定される場合には、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量が、領域決定部55によって所定領域80が決定されない場合と比べて、増加するように第2灯具ユニット20を制御してもよい。この場合、上記の光の光量が増加しない場合と比べて、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1e,S1fのうち所定領域80と重ならない領域の少なくとも一部に照射される第2灯具ユニット20からの光の光量を多くし得、前方の視認性をより向上し得る。なお、上記の光の光量は、領域決定部55によって所定領域80が決定されない場合に、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2に照射される第1灯具ユニット10からの光の光量と第2灯具ユニットからの光の光量とを足し合わせた合計光量となることがこのましい。このような構成にすることで、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない領域に、車両100の運転者が違和感を覚えることを抑制し得る。
【0099】
また、本実施形態のように、少なくとも1つの第1照射スポットが少なくとも2つの第2照射スポットと重なっている場合、制御部COは、領域決定部55によって所定領域80が決定されない場合には、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2のうち所定領域80に近い第2照射スポットS2に対応する発光素子23ほど出射する光の光量が多くなるように第2灯具ユニット20を制御してもよい。
【0100】
例えば、本実施形態のように、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1fの一部と当該第1照射スポットS1fに隣り合う他の第1照射スポットS1gの一部とが互いに重なる場合、図14に示すように、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1fのうち他の第1照射スポットS1gと重なる重畳領域SAには、当該他の第1照射スポットS1gに対応する発光素子13gからの光が照射される。ここで、光が照射される照射スポットでは、中央側から外縁側に向かって照射される光の強度が低くなる傾向にある。このため、上記の重畳領域SAに照射される他の第1照射スポットS1gに対応する発光素子13gからの光の強度は、所定領域80に近づくにつれて高くなる傾向にある。上記のような車両用前照灯では、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2のうち所定領域80に近い第2照射スポットS2ほど照射される光の強度が高くなる。このため、例えば、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2が上記の重畳領域SAと重なる場合には、当該重畳領域SAにおける光の強度が均一となるようにし得、運転者が重畳領域SAに違和感を覚えることを抑制し得る。
【0101】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、制御部COは、領域決定部55によって所定領域80が決定されない場合には、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20から光が出射するように第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20を制御する。このため、この場合には、第1灯具ユニット10から出射する光と第2灯具ユニットから出射する光とを含む光によってハイビームの配光パターンPHが形成される。前述のように、少なくとも1つの第1照射スポットは少なくとも1つの第2照射スポットと重なる。このため、第1灯具ユニット10から出射する光が照射される領域と第2灯具ユニット20から出射する光が照射される領域とを互いに重ならせ得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、上記の場合に第2灯具ユニット20からの光が非出射とされる場合と比べて、形成するハイビームの配光パターンPHにおける光の強度分布の自由度を向上し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第2灯具ユニット20のみによってハイビームの配光パターンPHを形成する場合と比べて、発光素子23から出射する光の光量を少なくしたり、発光素子23の数を少なくしたりできる。このため、発光素子23で生じる熱が分散しにくくなることを抑制でき、発光素子23が過加熱することを抑制し得る。
【0102】
また、本実施形態の車両用前照灯1は、検出装置110からの情報を基に、他車両が所定の要件を満たす状態であるか否かを判定する判定部50を更に備える。この所定の要件は、他車両と車両100との距離が所定の距離未満であることであり、領域決定部55は、判定部50によって他車両が所定の要件を満たす状態であると判定される場合に、上記のように所定領域80を決定し、第1灯具ユニット10及び第2灯具ユニット20が制御部COによって上記のように制御される。他車両と車両100との距離が大きくなると他車両の乗員の眩惑が生じにくくなる傾向にある。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、他車両の乗員の眩惑が生じにくい場合においてハイビームの配光パターンPHが変化することを抑制し得る。なお、領域決定部55は、判定部50の判定に関係なく、検出装置110から他車両の検出を示す信号が入力する場合に、上記のように所定領域80を決定してもよく、車両用前照灯1が判定部50を備えなくてもよい。この場合、例えば、検出装置110は、他車両を検出する場合に、他車両の検出を示す信号と当該他車両の状態を示す信号とを直接領域決定部55に出力する。
【0103】
(第2実施形態)
次に、本発明の第1の態様としての第2実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0104】
本実施形態の車両用前照灯1は、ハイビームの配光パターンPHが第1灯具ユニット10から出射する光及び第3灯具ユニット30から出射する光によって形成される点において、第1実施形態の車両用前照灯1と主に異なる。このため、本実施形態の車両用前照灯1の動作は、第1実施形態の車両用前照灯1の動作と異なる。なお、本実施形態における制御部の制御フローチャートは第1実施形態とおなじであるものの、ステップSP15,SP16における制御部COの動作が異なる。このため、ステップSP15,SP16について説明し、他のステップSP11~SP14,SP17についての説明は省略する。
【0105】
(ステップSP15)
本実施形態のステップSP15では、制御部COは、車両用前照灯1からハイビームが出射するように、第1灯具ユニット10及び第3灯具ユニット30から光が出射し、第2灯具ユニット20から光が非出射となるように、これら灯具ユニット10,20,30を制御する。具体的には、制御部COは、電源回路60に所定の信号を出力して、電源回路60に、全ての発光素子13a~13hへの所定の電力の供給、全ての発光素子23への電力の供給の停止、発光素子32aへの所定の電力の供給をさせる。そして、制御部COは、制御フローをステップSP11に戻す。このため、第1灯具ユニット10は第1実施形態のステップSP15と同様の光を出射し、第3灯具ユニット30は第1実施形態のステップSP15と同様の光を出射し、第2灯具ユニット20からの光は非出射とされる。このため、図11に示すハイビームの配光パターンPHと外形が同じであるハイビームの配光パターンが形成される。なお、このハイビームの配光パターンにおける領域70と重なる領域における光の強度分布は、図11に示すハイビームの配光パターンPHにおける領域70と重なる領域における光の強度分布と異なる。
【0106】
(ステップSP16)
本実施形態のステップSP16では、例えば、図13図14に示す所定領域80が領域決定部55によって形成される場合、制御部COは、第1実施形態と同様に第1灯具ユニット10の複数の発光素子13a~13hを制御する。このため、制御部COは、所定領域80と重なる第1照射スポットS1e,S1fに対応する発光素子13e,13eから出射する光の光量がハイビームを出射するときの光量より減少するように当該発光素子13e,13fを制御する。また、制御部COは、所定領域80と重ならない第1照射スポットS1a~S1d,S1g,S1hに対応する発光素子13a~13d,13g,13hから出射する光の光量がハイビームを出射するときの光量となるように、これら発光素子13a~13d,13g,13hを制御する。なお、本実施形態では、発光素子13e,13fから出射する光の光量はゼロとされる。
【0107】
ここで、本実施形態では、ハイビームを出射する際、第2灯具ユニット20からの光は非出射とされている。制御部COは、所定領域80と重なる第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量がハイビームを出射するときと同様にゼロとなるように、当該発光素子23を制御する。また、制御部COは、図14においてハッチングが施された第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光が出射するように、当該発光素子23を制御する。また、制御部COは、所定領域80と重なっている第1照射スポットS1e,S1fと重ならない第2照射スポットS2に対応する発光素子23から出射する光の光量がハイビームを出射するときと同様にゼロとなるように、当該発光素子23を制御する。具体的には、制御部COは、各発光素子23から出射する光の光量がこのようになるような制御信号を電源回路60に出力し、電源回路60のドライバによって各発光素子23に供給される電力が調整される。なお、本実施形態では、制御部COは、ハッチングが施された第2照射スポットS2に対応する発光素子23から光の光量が、ハイビームを出射するときに当該第2照射スポットS2に照射される第1灯具ユニット10からの光の光量と同じとなるように、ハッチングが施された第2照射スポットS2に対応する発光素子23を制御する。
【0108】
また、制御部COは、第1実施形態と同様に、所定領域80とは関係なく、ハイビームを出射する際に第3灯具ユニット30から出射する光の配光パターンと同じ特定の配光パターンを有する光が出射するように第3灯具ユニット30を制御する。
【0109】
このように第1灯具ユニット10、第2灯具ユニット20、及び第3灯具ユニット30が制御部COによって制御されることで、図15に示す配光パターン200と外形が同じで、ハイビームを出射するときより光量が減少されるとともに他車両90における視認部としてのフロントウインド91と重なる減光領域81を有する配光パターンが形成される。なお、この配光パターンにおける光の強度分布は、図15に示す配光パターン200とは異なる。
【0110】
本実施形態の車両用前照灯1では、第1実施形態と同様にして、第1灯具ユニット10から出射して他車両90の視認部に照射される光の光量が減少するとともに、第2灯具ユニット20から出射して他車両90の視認部に照射される光の光量が減少する。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、他車両90の乗員が眩惑することを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、第1実施形態と同様にして、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1e,S1fと重なるとともに所定領域80と重ならない第2照射スポットS2には光が照射される。このため、照射される光の光量が減少した第1照射スポットS1e,S1fのうち所定領域80と重ならない領域の少なくとも一部に第2灯具ユニット20からの光を照射し得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第1実施形態と同様にして、第2灯具ユニット20を備えない場合と比べて、前方の視認性を向上し得る。
【0111】
なお、本発明の第1の態様について、第1及び第2実施形態を例に説明したが、本発明の第1の態様はこれらに限定されるものではない。
【0112】
例えば、第1及び第2実施形態では、第1灯具ユニット10は、それぞれの発光素子13a~13hからの光が照射される第1照射スポットS1a~S1hが左右方向に一列に並ぶように複数の発光素子13a~13hからの光を出射する第1灯具ユニット10を例に説明した。しかし、第1灯具ユニットは、第1照射スポットが少なくとも左右方向に並ぶように複数の発光素子からの光を出射すればよい。例えば、第1灯具ユニットは、第1照射スポットが上下左右に並ぶように複数の発光素子からの光を出射してもよく、第1照射スポットが左右方向に複数の列を形成して並ぶように複数の発光素子からの光を出射してもよい。このような第1灯具ユニットの構成としては、例えば、第1実施形態において配光パターン形成部がマトリックス状に配置される複数の発光素子を備える構成が挙げられる。
【0113】
また、第1及び第2実施形態では、出射する光の光量を個別に変更可能な複数の発光素子23を含み、それぞれの発光素子23からの光が照射される第2照射スポットがマトリックス状に並ぶように複数の発光素子23からの光を出射する第2灯具ユニット20を例に説明した。しかし、第2灯具ユニット20は、図16に示すような構成であってもよい。
【0114】
図16は、変形例に係る第2灯具ユニットを概略的に示す鉛直方向に沿った断面図である。図16に示すように、本変形例の第2灯具ユニット20は、配光パターン形成部12に替わって、光源41と、リフレクタ42と、反射装置43と、光吸収板45とを主な構成として備える点において、上記実施形態の第1灯具ユニット10と主に異なる。
【0115】
光源41は、光を出射する発光素子である。本変形例では、光源41は、前方に向かって光を出射するように配置される。光源41として、例えばLEDが挙げられる。
【0116】
リフレクタ42は、光源41から出射する光を反射面42rによって反射して当該光を後述する反射装置43の反射制御面に照射するように構成される。本変形例では、リフレクタ42は、曲面状の板状部材とされ、前方側から光源41に被さるように配置される。リフレクタ42における光源41側の面が反射面42rとされる。この反射面42rは光源41側と反対側に凹状となるように湾曲し、例えば、回転楕円曲面を基調として光源41から出射する光を集光して反射制御面に照射するように構成される。
【0117】
本変形例の反射装置43は、所謂DMD(Digital Mirror Device)であり、入射する光を反射する反射制御面43rを有し、この反射制御面43rによって反射する光によって所定の配光パターンを形成できるように構成される。反射装置43は、光源41より上方かつリフレクタ42より後方において反射制御面43rが前方側を向くように配置される。この反射制御面43rに光源41から出射してリフレクタ42で反射した光が照射される。反射制御面43rは、マトリックス状に配列される複数の反射素子の反射面によって構成されており、これら反射素子は、基板に個別に傾倒可能に支持される。この複数の反射素子は、リフレクタ42からの光が投影レンズ15に向かうように反射される第1傾倒状態と、リフレクタ42からの光が後述する光吸収板45に向かうように反射される第2傾倒状態とにそれぞれ個別に切り替え可能とされている。このような反射装置43は、反射素子の傾倒状態を制御することによって、反射制御面43rから投影レンズ15に向かう光によって所定の配光パターンを形成できる。また、これらの反射素子の傾倒状態を経時的に制御することによって、所定の配光パターンの光の強度分布を所望の強度分布にできる。つまり、この反射装置43の複数の反射素子は、投影レンズ15に向かう方向へ出射する光の光量を個別に変更可能でマトリックス状に配置されており、この反射装置43は、複数の反射素子の反射面から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを形成すると理解できる。また、この反射装置43のそれぞれの反射素子から投影レンズ15に向かう方向へ出射する光が照射される照射スポットはマトリックス状に並ぶ。
【0118】
光吸収板45は、光吸収性を有する板状部材であり、入射する光の多くを熱に変換するように構成される。本変形例では、光吸収板45は、反射装置43よりも前方かつ上方に配置され、反射制御面43rから光吸収板45に向かう光が光吸収板45に入射し、この光の多くが熱に変換される。光吸収板45として、例えばアルミニウム等の金属から構成されて表面に黒アルマイト加工等が施される板状部材が挙げられる。
【0119】
第2灯具ユニット20がこのような構成であっても、第1及び第2実施形態と同様に、他車両の乗員の眩惑を抑制しつつ、前方の視認性を向上し得る。なお、説明は省略するが、配光パターン形成部は、例えば、入射する光を回折することで所定の配光パターンの光を出射するLCOS(Liquid Crystal On Silicon)や回折格子であってもよい。また、第1灯具ユニット10がこのような構成であってもよい。
【0120】
また、第1及び第2実施形態では、第3灯具ユニット30を備える車両用前照灯1を例に説明した。しかし、車両用前照灯1は、第3灯具ユニット30を備えなくてもよい。また、第3灯具ユニット30の構成は特に限定されるものではない。第3灯具ユニット30は、例えば、パラボラ型の灯具や直射レンズ型の灯具とされてもよく、出射する光の配光パターンを変化できない構成であってもよい。また、上記実施形態では、ロービームは第2灯具ユニット20から出射する光及び第3灯具ユニット30から出射する光によって形成されていた。しかし、ロービームを第3灯具ユニット30から出射する光のみによって形成してもよい。
【0121】
また、第1及び第2実施形態では、それぞれ筐体16,26,36を備える灯具ユニット10,20,30を例に説明した。しかし、これら灯具ユニット10,20,30は1つの筐体を共有し、1つの筐体における灯室内にそれぞれの灯具ユニット10,20,30の筐体とは異なる他の部材が収容されてもよい。
【0122】
(第3実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0123】
図17は、本実施形態における車両用前照灯を備える車両を概念的に示す平面図である。図17に示すように、本実施形態の車両用前照灯1は、領域決定部55を備えない点、制御部COと別体のメモリMEを備える点、及びそれぞれの灯具部5が第1灯具ユニット10を備えない点において、主に第1実施形態の車両用前照灯1と異なる。
【0124】
本実施形態の検出装置110は、他車両を検出する場合に、他車両の検出を示す信号、及び、当該他車両の状態を示す信号を、判定部50を介して制御部COに出力する。なお、検出装置110は、これら信号を制御部COに直接出力してもよい。
【0125】
本実施形態の判定部50は、他車両が所定の要件を満たす状態である場合には、他車両の状態を示す信号として、車両100から他車両までの距離を示す信号、及び車両100に対する当該他車両の位置を示す信号を制御部COに出力する。また、判定部50は、この距離及び位置を示す情報を後述するメモリMEに記憶させる。なお、メモリMEに記憶されるこれらの情報は、記憶される度に書き換えられる。また、判定部50は、他車両が所定の要件を満たさない状態である場合、及び検出装置110から判定部50に信号が入力されない場合には、制御部COに信号を出力しない。
【0126】
メモリMEは、情報を記憶し、当該記憶した情報を読み出し可能に構成される。メモリMEは、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。
【0127】
メモリMEには、第2灯具ユニット20から出射する光によって形成される配光パターンに関する情報と検出装置110によって検出される他車両の状態とが関連付けられたテーブルが記憶される。第1灯具ユニット10から出射する光によって形成される配光パターンに関する情報として、例えば、配光パターン形成部22の各発光素子23に供給される電力に関する情報等が挙げられる。この各発光素子23に供給される電力に関する情報としては、例えば、後述するロービームの配光パターンを形成する際、ハイビームの配光パターンを形成する際、他車両に応じた配光パターンを形成する際、及び他車両に応じた配光パターンをハイビームの配光パターンに変化させる際のそれぞれにおける、各発光素子23に供給される電力に関する情報等が挙げられる。また、検出装置110によって検出される他車両の状態として、例えば、上記の車両100から他車両までの距離、及び車両100に対する他車両の位置等が挙げられる。また、メモリMEには、第3灯具ユニット30の発光素子32aに供給される所定の電力に関する情報、及び参照値も記憶される。参照値は、第2灯具ユニット20及び第3灯具ユニット30の後述する制御において制御部COが参照するとともに制御部COによって書き換えられる値である。本実施形態では、この参照値はゼロか1のいずれかとされ、初期値はゼロとされる。
【0128】
本実施形態では、制御部COは、ライトスイッチ120からロービームの出射を示す信号が入力する場合、メモリMEに記憶される情報を参照し、ロービームの配光パターンにおけるそれぞれの発光素子23に供給される電力、及び発光素子32aに供給される所定の電力に基づく信号を電源回路60に出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、各発光素子23に供給される電力が調整されるとともに、発光素子32aに所定の電力が供給される。そして、車両用前照灯1からロービームとなる光が出射する。本実施形態におけるロービームの配光パターンPLは、第1実施形態のロービームの配光パターンPLと同じとされる。
【0129】
また、本実施形態では、第2灯具ユニット20から出射する光と、第3灯具ユニット30から出射する光とによってハイビームの配光パターンが形成される。制御部COは、ライトスイッチ120からハイビームの出射を示す信号が入力する場合、メモリMEに記憶される情報を参照し、ハイビームの配光パターンにおけるそれぞれの発光素子23に供給される電力、及び発光素子32aに供給される所定の電力に基づく信号を電源回路60に出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、各発光素子23に供給される電力が調整されるとともに、発光素子32aに所定の電力が供給される。そして、車両用前照灯1からハイビームとなる光が出射する。なお、本実施形態では、第3灯具ユニット30から出射する光は、ロービームを出射する際に第2灯具ユニット20から出射する光と同じである。
【0130】
図18は、本実施形態におけるハイビームの配光パターンを示す図である。図18において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビームの配光パターンPHが太線で示される。また、図18において、第2灯具ユニット20が光を照射可能な領域70が破線で示されている。本実施形態では、領域70の外形は、第1実施形態における領域70の外形と同様に左右方向に長尺な矩形である。しかし、本実施形態の領域70は、第1実施形態での領域70より、右側、左側、及び上方に広げられている。つまり、このようになるように、第2灯具ユニット20の配光パターン形成部22と投影レンズ25とが調節されている。ハイビームの配光パターンPHにおける光の強度が最も高い領域であるホットゾーンHZHは、水平線Sと鉛直線Vとの交点上またはその近傍に位置しており、領域70と重なっている。また、ハイビームの配光パターンPHは、概ね左右対称であり、ハイビームの配光パターンPHの左右方向の中心は、鉛直線V上またはその近傍に位置している。なお、特に図示はしないが、ロービームの配光パターンPLにおけるホットゾーンHZLは、第1実施形態と同様に、ロービームの配光パターンPLのうち領域70と重なる重畳領域71に含まれる。
【0131】
本実施形態では、車両用前照灯1からハイビームを出射する際、第2灯具ユニット20における全ての発光素子23から光が出射される。このため、領域70には、発光素子23からの光が照射される。ハイビームの配光パターンPHのうち、領域70と重なる領域における光の強度分布は、例えば、ホットゾーンHZHから離れるほど強度が低くなる分布とされる。換言すれば、この領域70における光の強度がこのような分布となるように、制御部COによって、それぞれの発光素子23に供給される電力が調節され、それぞれの発光素子23から出射する光の光量が調節される。このように第2灯具ユニット20及び第3灯具ユニット30から光が出射されることで、車両用前照灯1からハイビームが出射される。本実施形態では、検出装置110による他車両の検知に応じて、車両用前照灯1が出射する光の配光パターンがハイビームの配光パターンと他車両に応じた配光パターンとに切り替えられる。
【0132】
次に、本実施形態の車両用前照灯1から出射する光の配光パターンがハイビームの配光パターンと他車両に応じた配光パターンとに切り替えられる動作について説明する。図19は、本実施形態における制御部COの制御フローチャートの一例を示す図である。図19に示すように、本実施形態の制御フローは、ステップSP21~ステップSP24を含んでいる。
【0133】
(ステップSP21)
ライトスイッチ120においてハイビームの出射が選択され、ライトスイッチ120からハイビームの出射を示す信号が制御部COに入力されており、図19では、この状態がスタートの状態である。また、メモリMEに記憶される参照値は初期値のゼロである。
【0134】
本ステップでは、制御部COは、判定部50から入力する信号に基づいて、検出装置110によって他車両が検出されるとともに当該他車両が所定の要件を満たす状態であるか否かを判断する。上記のように、検出装置110は、他車両を検出する場合に、他車両の検出を示す信号を、判定部50を介して制御部COに出力する。また、判定部50は、検出装置110によって検出された他車両が所定の要件を満たす状態である場合には、他車両の状態を示す信号として、車両100から他車両までの距離を示す信号、及び車両100に対する当該他車両の位置を示す信号を制御部COに出力する。このため、制御部COは、他車両の検出を示す信号と当該他車両の状態を示す信号とが判定部50から入力する場合には、他車両が所定の要件を満たす状態であると判断して、制御フローをステップSP22に進める。一方、制御部COは、他車両の状態を示す信号が判定部50から入力しない場合には、他車両が所定の要件を満たさない状態であると判断して、制御フローをステップSP23に進める。なお、検出装置110によって他車両が検出されない場合、判定部50には他車両の状態を示す信号が入力されず、制御部COには他車両の検出を示す信号が入力されない。このため、このような場合も、制御フローはステップSP13に進むことになる。
【0135】
(ステップSP22)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンが検出装置110で検出された他車両に応じた配光パターンとなるように、第2灯具ユニット20及び第3灯具ユニット30を制御する。具体的には、制御部COは、車両100から他車両までの距離を示す信号、及び車両100に対する当該他車両の位置を示す信号に基づいて、メモリMEに記憶されたテーブルを参照する。そして、制御部COは、これらの他車両の状態に関する情報に応じた配光パターンにおけるそれぞれの発光素子23に供給される電力、及び発光素子32aに供給される所定の電力に基づく信号を電源回路60に出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、他車両の状態に関する情報に応じた配光パターンの光が生成されるように各発光素子23に供給される電力が調整されるとともに、発光素子32aに所定の電力が供給される。この結果、車両用前照灯1から当該配光パターンとなる光が出射する。そして、制御部COは、車両100から他車両までの距離、及び車両100に対する当該他車両の位置の情報をメモリMEに記憶させるとともに、メモリMEに記憶される参照値を1に書き換え、制御フローをステップSP24に進める。このため、参照値が1である場合には、車両用前照灯1は他車両に応じた配光パターンの光を出射している状態であり、参照値がゼロである場合には、車両用前照灯1は他車両に応じた配光パターンの光を出射してない状態であると理解できる。
【0136】
図20は、検出装置110によって他車両として先行車が検出された際に出射される光の配光パターンの一例を示す図である。図20において、Sは水平線を示し、Vは車両100の左右方向の中心を通る鉛直線を示し、車両100の25m前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターン300が太線で示される。
【0137】
本実施形態では、配光パターン300の形状は図18に示すハイビームの配光パターンPHの形状と同じである。しかし、配光パターン300の所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量は、ハイビームの配光パターンPHにおける所定領域310に相当する領域に照射される第2灯具ユニット20からの光の光量より少なく、所定領域310における光の強度は所定の基準強度よりも低い。本実施形態では、所定領域310内の光の強度は概ね一定である。なお、所定領域310を光が照射されない領域としてもよい。このように、所定領域310では、上記の判定部50によって他車両が所定の要件を満たさない状態と判定される場合に比べて第2灯具ユニット20からの光の光量が減少されている。一方、配光パターン300のうち所定領域310以外の領域における光の強度分布は、配光パターンPHのうち所定領域310に相当する領域以外の領域における光の強度分布と概ね同じである。このため、配光パターン300のうち所定領域310以外の他の領域は、第2灯具ユニット20からの光の光量が減少されていない領域であり、所定領域310に比べて明るい領域である。そして、配光パターン300は、ハイビームの配光パターンPHにおける所定領域310での第2灯具ユニット20からの光の光量が減少された配光パターンである。
【0138】
この所定領域310は、第2灯具ユニット20からの光が照射可能な領域70内に位置し、検出装置110によって検出された他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なる。所定領域310は、他車両の視認部の全体と重なっていることが好ましい。図20に示す例では、所定領域310は、検出装置110によって検出された他車両90の全体が含まれる矩形状とされており、所定領域310内には視認部としてのサイドミラー及びリアウインドが位置している。
【0139】
次に、検出装置110によって検出された他車両が所定の要件を満たさない場合の制御部COの動作を示すステップSP23について説明する。
【0140】
(ステップSP23)
本ステップでは、制御部COは、車両用前照灯1からハイビームが出射するように、第2灯具ユニット20及び第3灯具ユニット30を制御する。なお、制御部COによる第2灯具ユニット20の制御は、メモリMEに記憶される参照値がゼロであるか1であるかに応じで異なる。まず、メモリMEに記憶される参照値が初期値であるゼロである場合について説明する。
【0141】
制御部COは、メモリMEに記憶される参照値を参照し、当該参照値がゼロである場合、メモリMEに記憶されるハイビームの配光パターンに関する情報を参照する。そして、制御部COは、前述のように、ハイビームの配光パターンにおけるそれぞれの発光素子23に供給される電力、及び発光素子32aに供給される所定の電力に基づく信号を電源回路60に出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、ハイビームの配光パターンPHとなる光が生成されるように各発光素子23に供給される電力が調整され、車両用前照灯1からハイビームの配光パターンPHとなる光が出射する。そして、制御部COは、制御フローをステップSP24に進める。
【0142】
一方、参照値が1である場合は、前述のように、車両用前照灯1が他車両に応じた配光パターン300の光を出射している場合である。このため、検出装置110によって検出された他車両が所定の要件を満たさないまたは検出装置110によって他車両が検出されていないにもかかわらず、車両用前照灯1が他車両に応じた配光パターン300の光を出射している状態である。このような状態としては、検出装置110によって検出された他車両が検出されなくなる場合が挙げられる。他車両が先行車である場合には、例えば先行車と車両100とが上り坂を走行している際に先行車が上り坂の頂上を超えることで当該先行車が検出装置110によって検出されなくなる場合が挙げれられる。他車両が対向車である場合には、例えば対向車が駐車場に入る等して建物等に対向車が隠れて当該対向車が検出装置110によって検出されなくなる場合が挙げれられる。
【0143】
前述のように、判定部50は、他車両が所定の要件を満たす状態である場合には、車両100から他車両までの距離、及び車両100に対する当該他車両の位置を示す情報をメモリMEに記憶させる。このため、他車両が所定の要件を満たさなくなる直前のこれら他車両の状態を示す情報がメモリMEに記憶されている。制御部COは、メモリMEに記憶される参照値を参照し、当該参照値が1である場合、メモリMEに記憶されたこれら他車両の状態を示す情報に基づいて、メモリMEに記憶されたテーブルを参照する。そして、制御部COは、これらの他車両の状態を示す情報に応じた配光パターン300をハイビームの配光パターンPHに変化させる際のそれぞれの発光素子23に供給される電力に基づく信号を電源回路60に出力する。また、制御部COは、発光素子32aに供給される所定の電力に基づく信号を電源回路60にも出力する。これにより、電源回路60のドライバによって、他車両に関する情報に応じた配光パターン300がハイビームの配光パターンPHに変化するように各発光素子23に供給される電力が調整されるとともに、発光素子32aに所定の電力が供給される。この結果、他車両に応じた配光パターン300がハイビームの配光パターンPHに変化し、車両用前照灯1からハイビームの配光パターンPHとなる光が出射する。このため、ハイビームの配光パターンPHの光を出射する状態を第1状態とし、他車両に応じた配光パターン300の光を出射する状態を第2状態とすると、車両用前照灯1が第2状態から第1状態に切り替わると理解できる。そして、制御部COは、メモリMEに記憶される参照値をゼロに書き換え、制御フローをステップSP24に進める。
【0144】
図21は、本実施形態における他車両に応じた配光パターン300が変化する様子の一例を説明するための図であり、配光パターン300のうち所定領域310及びその近傍を拡大して示す図である。なお、図21に示される状態は、例えば図20に示す配光パターン300を有する光を出射する車両100と先行車とが上り坂を走行している際に先行車が上り坂の頂上を超えることで当該先行車が検出装置110によって検出されなくなった状態である。本実施形態では、まず、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。そして、図21に示すように、所定領域310の一部の領域である領域311での光量を図18に示すハイビームの配光パターンPHにおける領域311に相当する領域での光量に戻す。つまり、領域311は、車両用前照灯1からハイビームの配光パターンPHが出射する状態である第1状態での光量に戻された領域であると理解できる。本実施形態では、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量は、所定領域310の下縁DEから上方に向かって第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、時間の経過とともに増加させる。また、第1状態での光量に戻された領域311は、所定領域310の下縁DEに沿って延在する長方形状の領域とされる。なお、領域311は下縁DEに接していればよく、領域311の形状は特に限定されない。また、図21において、理解を容易にするため、領域311にはハッチングが施されている。
【0145】
次に、第1状態での光量に戻された領域311が上方側に広がるように、所定領域310における第1状態での光量に戻された領域311以外の領域において、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに更に増加させる。本実施形態では、領域311から離れるほど第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。このため、領域311に近い領域が領域311から遠い領域より明るい状態が維持されつつ、時間の経過とともにどちらの領域もより明るくなる。そして、領域311に近い領域から順に第1状態での光量に戻された領域311となり、当該領域311が広がっていく。そして、所定領域310の全体が第1状態での光量に戻された領域311となることで、車両用前照灯1から出射する光の配光パターンがハイビームの配光パターンPHとなる。
【0146】
なお、第1状態での光量に戻された領域311が所定領域310の下縁DEから上方側に向かって時間の経過とともに広がればよい。例えば、所定領域310における領域311以外の領域において第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる際、この領域の全体において光量が増加してもよく、この領域の一部において光量が増加してもよい。
【0147】
このように、本ステップでは、車両用前照灯1が第2状態である場合には、第1状態での光量に戻された領域311が時間の経過とともに広がることで、光量が減少された領域が時間の経過とともに小さなり、この光量が減少された領域がなくなることで、車両用前照灯1が第2状態から第1状態に切り替わる。
【0148】
(ステップSP24)
本ステップでは、制御部COは、ライトスイッチ120からハイビームの出射を示す信号が入力するか否かを判断する。この信号が制御部COに入力される場合、制御部COは制御フローをステップSP21に戻す。一方、この信号が制御部COに入力されない場合、制御部COは、電源回路60に所定の信号を出力して、電源回路60にそれぞれの発光素子23への電力の供給及び発光素子32aへの電力の供給を停止させ、車両用前照灯1からの光を非出射とし、この制御を終了する。
【0149】
このように、本実施形態では、車両用前照灯1の状態は、他車両が所定の要件を満たす状態である否か応じて、ハイビームを出射する状態と他車両に応じた配光パターンの光を出射する状態に切り替えられる。なお、制御部COの制御フローは、図19に示す制御フローに限定されるものではない。
【0150】
ところで、前述の特許文献2では、車両用前照灯の状態が、所定の配光パターンを有する光を出射する第1状態から当該所定の配光パターンに遮光領域が形成された配光パターンを有する光が出射する第2状態に切り替わることについては記載されているが、第2状態から第1状態に切り替わることについては記載されていない。例えば、第2状態から第1状態に瞬時に切り替わる場合、遮光領域の全体に急に光が照射されることになるため、運転者が違和感を覚える場合ある。
【0151】
そこで、本実施形態の車両用前照灯1は、第2灯具ユニット20を備える。第2灯具ユニット20は、出射する光の光量を個別に変更可能でマトリックス状に配置される複数の発光素子23を有し、複数の発光素子23から出射する光の光量に応じた配光パターンを有す光を出射する。また、本実施形態の車両用前照灯1は、所定の配光パターンの光であるハイビームを出射する第1状態と、ハイビームの配光パターンPHにおける所定領域310の光量が減少された配光パターン300の光が出射する第2状態とに切り替え可能である。本実施形態の車両用前照灯1では、所定領域310が他車両の運転者が車外を視認するための視認部と重なるようにしている。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第1状態から第2状態に切り替わることで、他車両の乗員が眩惑することを抑制し得る。また、本実施形態の車両用前照灯1では、第1状態から第2状態に切り替わる際に、所定領域310の一部の領域311での光量が第1状態での当該領域311での光量に戻されるとともに、当該領域311が時間の経過とともに広がる。このため、本実施形態の車両用前照灯1では、所定領域310における領域311から明るくなり、この明るくなった領域311が時間の経過とともに広がる。換言すれば、光の光量が減少された領域が時間の経過とともに小さくなる。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第2状態から第1状態に瞬時に切り替わる場合と比べて、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0152】
本実施形態の車両用前照灯1では、領域311は、時間の経過とともに所定領域310の下縁DEから上方側に向かって広がる。運転者が注意を払う対象物には、他車両とともに、例えば道路上の歩行者や障害物等が含まれる。本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における道路に近い側から明るくし得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域と道路上の歩行者や障害物等とが重なっている場合には、当該歩行者や障害物等をより速く運転者に認識させ得る。
【0153】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における領域311以外の領域において、光の強度が領域311から離れるほど低くなるように、光の光量が時間の経過とともに増加される。上記のように、本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における領域311から明るくなり、この明るくなった領域311が時間の経過とともに広がる。このため、上記のような構成にすることで、所定領域310において明るい領域から離れるほど暗くなるようにし得、明るい領域と暗い領域との境界を目立たなくし得る。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0154】
また、本実施形態の車両用前照灯1は、検出装置110からの情報を基に、他車両が所定の要件を満たす状態であるか否かを判定する判定部50を更に備える。この所定の要件は、他車両と車両100との距離が所定の距離未満であることであり、制御部COは、判定部50によって他車両が所定の要件を満たす状態であると判定される場合に、上記のように第2灯具ユニット20を制御する。他車両と車両100との距離が大きくなると他車両の乗員の眩惑が生じにくくなる傾向にある。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、他車両の乗員の眩惑が生じにくい場合においてハイビームの配光パターンPHが変化することを抑制し得る。なお、制御部COは、判定部50の判定に関係なく、検出装置110から他車両の検出を示す信号が入力する場合に、上記のように第2灯具ユニット20を制御してもよく、車両用前照灯1が判定部50を備えなくてもよい。この場合、例えば、検出装置110は、他車両を検出する場合に、他車両の検出を示す信号と当該他車両の状態を示す信号を直接制御部COに出力するとともに、他車両の状態を示す情報をメモリMEに記憶させる。
【0155】
(第4実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第4実施形態について詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、第2状態から第1状態に切り替わる際の所定領域310における光量の変化の仕方が第3実施形態と異なる。図22は、本実施形態における他車両に応じた配光パターン200が変化する様子の一例を説明するための図であり、配光パターン300のうち所定領域310及びその近傍を拡大して示す図である。
【0156】
本実施形態では、第3実施形態と同様に、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。そして、図22に示すように、所定領域310の一部の領域である領域311での光量を図18に示すハイビームの配光パターンPHにおける領域311に相当する領域での光量に戻す。しかし、本実施形態では、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量は、所定領域310の上縁UEから下方に向かって第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、時間の経過とともに増加させる。また、第1状態での光量に戻された領域311は、所定領域310の上縁UEに沿って延在する長方形状の領域とされる。なお、領域311は上縁UEに接していればよく、領域311の形状は特に限定されない。そして、第1状態での光量に戻されたこの領域311が下方側に広がるように、所定領域310における第1状態での光量に戻された領域311以外の領域において、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに更に増加させる。本実施形態では、第3実施形態と同様に、領域311から離れるほど第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。このため、領域311に近い領域が領域311から遠い領域より明るい状態が維持されつつ、時間の経過とともにどちらの領域ともより明るくなる。そして、領域311に近い領域から順に第1状態での光量に戻された領域311となり、当該領域311が広がっていく。そして、所定領域310の全体が第1状態での光量に戻された領域311となることで、第2状態から第1状態に切り替わる。なお、図22において、理解を容易にするため、領域311にはハッチングが施されている。
【0157】
なお、第1状態での光量に戻された領域311が所定領域310の上縁UEから下方側に向かって時間の経過とともに広がればよい。例えば、所定領域310における領域311以外の領域において第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる際、この領域の全体において光量が増加してもよく、この領域の一部において光量が増加してもよい。
【0158】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、第3実施形態と同様にして、所定領域310における領域311から明るくなり、この明るくなった領域311が時間の経過とともに広がる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0159】
本実施形態では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、領域311は、時間の経過とともに所定領域310の上縁UEから下方側に向かって広がるため、所定領域310における上方側から明るくなる。ここで、標識は道路より上方に位置する。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域310と標識とが重なっている場合には、当該標識をより速く運転者に認識させ得る。
【0160】
本実施形態の車両用前照灯1では、第3実施形態と同様に、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における領域311以外の領域において、光の強度が領域311から離れるほど低くなるように、光量が時間の経過とともに増加される。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第3実施形態と同様にして、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0161】
(第5実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第5実施形態について詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、第2状態から第1状態に切り替わる際の所定領域310における光量の変化の仕方が第3実施形態と異なる。図23は、本実施形態における他車両に応じた配光パターン300が変化する様子の一例を説明するための図であり、配光パターン300のうち所定領域310及びその近傍を拡大して示す図である。
【0162】
本実施形態では、第3実施形態と同様に、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。そして、図23に示すように、所定領域310の一部の領域である領域311での光量を図18に示すハイビームの配光パターンPHにおける領域311に相当する領域での光量に戻す。しかし、本実施形態では、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量は、所定領域310の右縁REから左側に向かって第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、時間の経過とともに増加させる。また、第1状態での光量に戻された領域311は、所定領域310の右縁REに沿って延在する長方形状の領域とされる。なお、領域311は右縁REに接していればよく、領域311の形状は特に限定されない。そして、第1状態での光量に戻されたこの領域311が左側に広がるように、所定領域310における第1状態での光量に戻された領域311以外の領域において、第1灯具ユニット10からの光の光量を時間の経過とともに更に増加させる。本実施形態では、第3実施形態と同様に、領域311から離れるほど第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。このため、領域311に近い領域が領域311から遠い領域より明るい状態が維持されつつ、時間の経過とともにどちらの領域もより明るくなる。そして、領域311に近い領域から順に第1状態での光量に戻された領域311となり、当該領域311が広がっていく。そして、所定領域310の全体が第1状態での光量に戻された領域311となることで、第2状態から第1状態に切り替わる。なお、図23において、理解を容易にするため、領域311にはハッチングが施されている。
【0163】
なお、所定領域310における領域311以外の領域において第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる際、この領域の全体において光量が増加してもよく、この領域の一部において光量が増加してもよい。
【0164】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、第3実施形態と同様にして、所定領域310における領域311から明るくなり、この明るくなった領域311が時間の経過とともに広がる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0165】
本実施形態の車両用前照灯1では、第3実施形態と同様に、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における領域311以外の領域において、光の強度が領域311から離れるほど低くなるように、光の光量が時間の経過とともに増加される。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第3実施形態と同様にして、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0166】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、領域311は、時間の経過とともに所定領域310における右縁REから左側に向かって広がっていくため、所定領域310における右側から明るくなる。このため、所定領域310における左右方向の両側から明るくなる場合と比べて、複数の発光素子23から出射する光の調節を簡易にし得、制御部COによる複数の発光素子23の制御を簡易にし得る。なお、複数の発光素子23の制御を簡易にする観点では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、領域311は、時間の経過とともに所定領域310の左右方向の一方側の縁から他方側に向かって広がればよい。例えば、領域311は、時間の経過とともに所定領域310の左縁LEから右側に向かって広がってもよい。また、このように、領域311が時間の経過とともに所定領域310の左右方向の一方側の縁から他方側に向かって広がる構成において、所定領域310と路肩側に位置する標識とが重なるとともに左右方向におけるこの標識が位置する側の縁から領域311が広がる場合には、当該標識を速く運転者に認識させ得る。
【0167】
また、本実施形態では、所定領域310の左右方向の中心は、鉛直線Vよりも左側に位置している。前述のように、ハイビームの配光パターンPHの左右方向の中心は、鉛直線V上またはその近傍に位置しているため、所定領域310の左右方向の中心は、ハイビームの配光パターンPHの左右方向の中心から左側にずれている。そして、第2状態から第1状態に切り替わる際に、領域311は、所定領域310における右縁REから左側に向かって広がっている。なお、図示による説明は省略するが、本実施形態の車両用前照灯1は、所定領域310の左右方向の中心がハイビームの配光パターンPHの左右方向の中心から右側にずれている場合、第2状態から第1状態に切り替わる際に、領域311は、所定領域310における左縁LEから右側に向かって広がる。このため、所定領域310の中心は、ハイビームの配光パターンPHの左右方向の中心から左右方向の所定側にずれており、領域311は、時間の経過とともに所定領域310における左右方向の所定側と反対側の縁から所定側に向かって広がると理解できる。このような構成の本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における左右方向の両側のうち車両100の中心を通る鉛直線Vに近い側から明るくし得る。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、所定領域310における左右方向の両側のうち車両100の中心を通る鉛直線Vから遠い側から明るくなる場合と比べて、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0168】
(第6実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第6実施形態について詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、第2状態から第1状態に切り替わる際の所定領域310における光量の変化の仕方が第3実施形態と異なる。図24は、本実施形態における他車両に応じた配光パターン300が変化する様子の一例を説明するための図であり、配光パターン300のうち所定領域310及びその近傍を拡大して示す図である。
【0169】
本実施形態では、第3実施形態と同様に、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。そして、図24に示すように、所定領域310の一部の領域である領域311での光量を図18に示すハイビームの配光パターンPHにおける領域311に相当する領域での光量に戻す。しかし、本実施形態では、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量は、所定領域310の上下左右の縁UE,DE,LE,REから成る外周縁の全周から所定領域310の内部側に向かって第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、時間の経過とともに増加させる。また、第1状態での光量に戻された領域311は、所定領域310の外周縁の全周に沿って延在する環状形状の領域とされる。なお、領域311は所定領域310の外周縁の全周に接していればよく、領域311の形状は特に限定されない。そして、第1状態での光量に戻されたこの領域311が所定領域310の内部側に向かって広がるように、所定領域310における第1状態での光量に戻された領域311以外の領域において、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに更に増加させる。本実施形態では、第3実施形態と同様に、領域311から離れるほど第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。このため、領域311に近い領域が領域311から遠い領域より明るい状態が維持されつつ、時間の経過とともにどちらの領域ともより明るくなる。そして、領域311に近い領域から順に第1状態での光量に戻された領域311となり、当該領域311が広がっていく。そして、所定領域310の全体が第1状態での光量に戻された領域311となることで、第2状態から第1状態に切り替わる。なお、図24において、理解を容易にするため、領域311にはハッチングが施されている。
【0170】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、領域311は、時間の経過とともに所定領域310が外周縁の全周から所定領域310の内部側に向かって広がる。このため、領域311が所定領域310の外周縁の一部から広がる場合と比べて、所定領域310を速く明るくし得る。このため、所定領域310と重なっている標識等をより速く運転者に認識させ得る。また、領域311が所定領域310の外周縁の一部から広がる場合と比べて、運転者が違和感を覚えることを抑制し得、運転者に安心感を与え得る。なお、第1状態での光量に戻された領域311が所定領域310の外周縁の全周から所定領域310の内部側に向かって時間の経過とともに広がればよい。例えば、所定領域310における領域311以外の領域において第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる際、この領域の全体において光量が増加してもよく、この領域の一部において光量が増加してもよい。
【0171】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、第3実施形態と同様にして、所定領域310における領域311から明るくなり、この明るくなった領域311が時間の経過とともに広がる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0172】
本実施形態の車両用前照灯1では、第3実施形態と同様に、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における領域311以外の領域において、光の強度が領域311から離れるほど低くなるように、光量が時間の経過とともに増加される。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第3実施形態と同様にして、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0173】
なお、領域311の広がり方は特に限定されるものではない。例えば、領域311は、所定領域310の左右の縁LE,REから所定領域310の内部側に向かって広がってもよく、所定領域310の上下の縁UE,DEから所定領域310の内部側に向かって広がってもよい。このように領域311が広がったとしても、第3実施形態と同様にして、運転者が所定領域310の明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0174】
(第7実施形態)
次に、本発明の第2の態様としての第7実施形態について詳細に説明する。なお、第3実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、第2状態から第1状態に切り替わる際の所定領域310における光量の変化の仕方が第3実施形態と異なる。図25は、本実施形態における他車両に応じた配光パターン300が変化する様子の一例を説明するための図であり、配光パターン300のうち所定領域310及びその近傍を拡大して示す図である。
【0175】
本実施形態では、第3実施形態と同様に、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。そして、図25に示すように、所定領域310の一部の領域である領域311での光量を図18に示すハイビームの配光パターンPHにおける領域311に相当する領域での光量に戻す。しかし、本実施形態では、所定領域310における第2灯具ユニット20からの光の光量は、所定領域310の内部側から所定領域310の外周側に向かって第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、時間の経過とともに増加させる。また、第1状態での光量に戻された領域311は、所定領域310の外周縁より内側に位置し、所定領域310の中心と重なる矩形状の領域とされる。なお、領域311は所定領域310の外周縁と離隔していればよく、領域311の形状、位置は特に限定されない。そして、第1状態での光量に戻されたこの領域311が所定領域310の外周側に向かって広がるように、所定領域310における第1状態での光量に戻された領域311以外の領域において、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに更に増加させる。本実施形態では、第3実施形態と同様に、領域311から離れるほど第2灯具ユニット20からの光の強度が低くなるように、第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる。このため、領域311に近い領域が領域311から遠い領域より明るい状態が維持されつつ、時間の経過とともにどちらの領域ともより明るくなる。そして、領域311に近い領域から順に第1状態での光量に戻された領域311となり、当該領域311が広がっていく。そして、所定領域310の全体が第1状態での光量に戻された領域311となることで、第2状態から第1状態に切り替わる。なお、図25において、理解を容易にするため、領域311にはハッチングが施されている。
【0176】
なお、第1状態での光量に戻された領域311が所定領域310の内部側から所定領域310の外部側に向かって時間の経過とともに広がればよい。例えば、所定領域310における領域311以外の領域において第2灯具ユニット20からの光の光量を時間の経過とともに増加させる際、この領域の全体において光量が増加してもよく、この領域の一部において光量が増加してもよい。
【0177】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2状態から第1状態に切り替わる際に、第3実施形態と同様にして、所定領域310における領域311から明るくなり、この明るくなった領域311が時間の経過とともに広がる。このため、本実施形態の車両用前照灯1によれば、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることを抑制し得る。
【0178】
本実施形態の車両用前照灯1では、第3実施形態と同様に、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における領域311以外の領域において、光の強度が領域311から離れるほど低くなるように、光量が時間の経過とともに増加される。したがって、本実施形態の車両用前照灯1によれば、第3実施形態と同様にして、運転者が所定領域310における明るさの変化に違和感を覚えることをより抑制し得る。
【0179】
また、本実施形態では、領域311が下方側に広がる速度は、領域311が上方側に広がる速度と概ね同じとされるが、領域311が上方側に広がる速度より速くてもよい。このような構成にすることで、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における下方側を上方側より速く明るくし得る。このため、このような車両用前照灯によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域310と道路上の歩行者や障害物等とが重なっている場合には、当該歩行者や障害物等をより速く運転者に認識させ得る。
【0180】
或いは、領域311が上方側に広がる速度は、領域311が下方側に広がる速度より速くてもよい。このような構成にすることで、第2状態から第1状態に切り替わる際に、所定領域310における上方側を下方側より速く明るくし得る。このため、このような車両用前照灯によれば、例えば、第2状態から第1状態に切り替わる際に所定領域310と標識とが重なっている場合には、当該標識をより速く運転者に認識させ得る。
【0181】
また、本実施形態では、所定領域310の外周縁の全体が同時に所定領域310の外周縁に一致する。しかし、領域311の外周縁のうち上側が下側より先に所定領域310の外周縁に一致するようにしてもよい。或いは、領域311の外周縁のうち下側が上側より先に所定領域310の外周縁に一致するようにしてもよい。
【0182】
なお、本発明の第2の態様について、第3から第7実施形態を例に説明したが、本発明の第2の態様はこれらに限定されるものではない。
【0183】
例えば、第2の態様においても、第2灯具ユニット20は、前述した図16に示すような構成であってもよい。
【0184】
また、第3から第7実施形態では、第3灯具ユニット30を備える車両用前照灯1を例に説明した。しかし、車両用前照灯1は、第3灯具ユニット30を備えなくてもよい。この場合、例えば、発光素子23の数を増やすなどして第2灯具ユニット20から出射する光を照射可能な領域70を広げ、第2灯具ユニット20からの光によってハイビームの配光パターン、ロービームの配光パターン、他車両に応じた配光パターンを形成する。また、第3灯具ユニット30の構成は特に限定されるものではない。第3灯具ユニット30は、例えば、パラボラ型の灯具とされてもよい。
【0185】
また、第3から第7実施形態では、それぞれ筐体26,36を備える灯具ユニット20,30を例に説明した。しかし、これら灯具ユニット20,30は1つの筐体を共有し、1つの筐体における灯室内にそれぞれの灯具ユニット20,30の筐体以外の部材が収容されてもよい。
【0186】
また、第3から第7実施形態では、配光パターン300の外縁と接続していない所定領域310を例に説明した。しかし、所定領域310は配光パターン300の外縁に接続していてもよい。また、所定領域310における光の強度は、例えば、車両100から他車両までの距離に応じて変化してもよい。また、所定領域310の左右方向の幅は、例えば、車両100から他車両までの距離に応じて変化してもよい。
【0187】
また、第3から第7実施形態では、ハイビームの配光パターンPHの光を出射する第1状態と、ハイビームの配光パターンPHにおける所定領域310の光量が減少された配光パターン200の光が出射する第2状態とに切り替え可能な車両用前照灯1を例に説明した。しかし、車両用前照灯1は、所定の配光パターンの光を出射する第1状態と、当該所定の配光パターンにおける所定領域の光量が減少された配光パターンの光が出射する第2状態とに切り替え可能であればよい。
【0188】
また、第3から第7実施形態では、検出装置110によって他車両としての先行車が検出される場合を例にして説明した。しかし、第3から第7実施形態は、検出装置110によって他車両としての対向車が検出される場合にも適用することができる。
【0189】
また、第3から第7実施形態では、制御部COは、メモリMEに記憶されるテーブルを参照してそれぞれの発光素子23に供給される電力を制御していた。しかし、制御部COは、判定部50から入力される情報に基づいて、それぞれの発光素子23に供給される電力に関する情報を演算し、この情報に基づいてそれぞれの発光素子23に供給される電力を制御してもよい。
【0190】
本発明の第1態様によれば、他車両の乗員の眩惑を抑制しつつ、前方の視認性を向上し得る車両用前照灯が提供され、本発明の第2態様によれば、運転者が違和感を覚えることを抑制し得る車両用前照灯が提供され、自動車等の車両用前照灯などの分野において利用可能である。
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