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▶ シオルタ・セラピューティクス,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】治療用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20250123BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20250123BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20250123BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250123BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/741
A61K35/74 A ZNA
A61P11/06
A61P37/08
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/19
A61K9/14
A61K9/68
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022546594
(86)(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 US2020054444
(87)【国際公開番号】W WO2021071864
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】62/911,873
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522138630
【氏名又は名称】シオルタ・セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】キメス,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】バヤダレス,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】バジュララ,ニーラジャ
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-511563(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097030(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/043051(WO,A1)
【文献】特表2019-512473(JP,A)
【文献】国際公開第2019/032573(WO,A1)
【文献】特表2015-519069(JP,A)
【文献】特開2010-004787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101974427(CN,A)
【文献】特表2018-532758(JP,A)
【文献】特表2021-503452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の少なくとも1つの株、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)の少なくとも1つの株およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)の少なくとも1つの株を含む精製細菌集団、ならびに
ii.凍結保護物質
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
固体剤型または液体剤型である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
凍結保護物質が炭水化物および/または抗酸化剤を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
炭水化物がサッカロースもしくはトレハロースまたはそれらの組合せを含むか、または、抗酸化剤がアミノ酸を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アミノ酸がL-グルタマートもしくはL-システインまたはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
凍結保護物質が(1)サッカロース、トレハロース、L-システインおよびL-グルタマート、または(2)グリセロールを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(1)サッカロースが重量%として医薬組成物の0.1%から80%の量で存在するか、
(2)トレハロースが重量%として医薬組成物の0.01%から25%の量で存在するか、
(3)L-システインが重量%として医薬組成物の0.001%から10%の量で存在するか、
(4)L-グルタマートが重量%として医薬組成物の0.01%から10%の量で存在するか、または、
(5)グリセロールが重量%として医薬組成物の0.1%から40%の量で存在する
請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
L-システインが重量%として医薬組成物の0.05%~1%の量で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
L-システインが重量%として医薬組成物の0.1%の量で存在する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物が液体剤型に製剤化されており、
(1)医薬組成物がさらにバッファーを含むか、もしくは、容器の中に存在しており、または
(2)医薬組成物が0.25mLから10mLの総体積を有する、
請求項2から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
バッファーがリン酸緩衝食塩水(PBS)であり、かつ、7.4のpHを有するか、
または、容器が2mL ポリプロピレン製スクリューキャップバイアルである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
医薬組成物が経口剤形として製剤化されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口剤形がカプセル剤、錠剤、乳濁剤、懸濁剤、シロップ剤、ゲル剤、ガム、ペースト剤、ハーブティー、滴剤、溶解性顆粒剤、散剤、錠剤、凍結乾燥物、棒付きアイスキャンディーまたはアイスクリームである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
精製細菌集団が凍結されているか、または、凍結乾燥されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
精製細菌集団が生存可能である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
凍結保護物質が抗酸化剤を含む、請求項3から15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抗酸化剤が、医薬組成物の0.05重量%から10重量%の量で存在する、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は治療用医薬組成物に関する。
【0002】
相互参照
本出願は2019年10月7日付出願の米国仮特許出願第62/911,873号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を含む。2020年10月2日付で作成された前記ASCIIコピーは53206-707_601_SL.txtと称され、3,713バイトのサイズを有する。
【背景技術】
【0004】
マイクロバイオーム(microbiome)およびゲノム研究の分野における最近の進展は、ヒトの腸の細菌組成がヒトの健康、疾患の発生および進行に根本的な影響を及ぼすという証拠を提供している。しかし、マイクロバイオームと宿主との関係、マイクロバイオーム組成による宿主における機能的および代謝的変化、ならびに治療用途のための細菌組成物の開発の可能性に関しては、多くのことが不明なままである。例えば、アレルギーおよび喘息のような炎症性疾患のリスクに寄与する確立された遺伝的成分が存在するものの、微生物曝露およびマイクロバイオーム組成を含む環境的要因がこれらの疾患の病因に重要な役割を果たしている。臨床試験からのデータは、最終的にアレルギーおよび喘息を発症する幼児の腸内マイクロバイオームが細菌種組成および免疫調節活性において異なっていることを示している。アレルギー疾患全般の発生率の上昇が懸念されており、喘息は、急速に増大しつつある世界的な懸念材料の1つであり、厄介な問題である。これらのアレルギー疾患のいずれにも治療法が存在しないため、それらは公衆衛生上の重大な課題となっており、症状の処置に数十億ドルが費やされている。例えば、喘息は、米国だけでも年間560億ドルを超える莫大な費用負担をもたらしており、そのうち200億ドル近くが、安定しない有効性および潜在的に深刻な副作用をもたらす標準治療に費やされている。結果として、アレルギー疾患の予防を目的とした免疫調節性微生物組成物のような治療選択肢の拡大は、不均衡に冒される小児集団において特に、重大な満たされていない要求に対処するであろう。
【発明の概要】
【0005】
簡潔な概要
本明細書は、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)およびラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)の少なくとも1つの株を含む精製細菌集団と凍結保護物質とを含む、固体剤形の医薬組成物を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質が炭水化物および抗酸化剤を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、炭水化物がサッカロース、トレハロースまたはそれらの組合せを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、抗酸化剤がアミノ酸を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、アミノ酸がL-グルタマート、L-システインまたはそれらの組合せを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、L-システインが重量%として約0.05%~約1%の量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質が重量%として約60% サッカロース、約10% トレハロース、約1% L-システインおよび約4% L-グルタマートを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、医薬組成物が懸濁剤に製剤化(処方)されている、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、医薬組成物が経口剤形として製剤化されている、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、経口剤形がカプセル剤、錠剤、乳濁剤、懸濁剤、シロップ剤、ゲル剤、ガム、ペースト剤、ハーブティー、滴剤、溶解性顆粒剤、散剤、錠剤、凍結乾燥物、アイスバー(棒付きアイスキャンディー)またはアイスクリームである、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が凍結乾燥されている医薬組成物を提供する。
【0006】
本明細書は、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)およびラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)の少なくとも1つの株を含む精製細菌集団と抗酸化剤とを含む、液体剤形の医薬組成物を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質を更に含む医薬組成物を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質がグリセロールを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、グリセロールが体積%として約10%~約30%の量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、抗酸化剤がアミノ酸を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、アミノ酸がL-システインを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、L-システインが重量%として約0.1%の量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、バッファーを更に含む医薬組成物を提供する。本明細書は更に、バッファーがリン酸緩衝食塩水(PBS)であり、約7.4のpHを有する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、医薬組成物が約1mLの総体積を有する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、容器を更に含む医薬組成物を提供する。本明細書は更に、容器が2mL ポリプロピレンスクリューキャップバイアルである、医薬組成物を提供する。
【0007】
本明細書は、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、ラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)およびフィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の少なくとも1つの株を含む精製細菌集団と薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供し、ここで、医薬組成物はカプセル(カプセル剤)内に含まれ、カプセルは植物由来材料を含む。本明細書は更に、植物由来材料がセルロースベースの重合体を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、セルロースベースの重合体がプルランを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、カプセルがカプセル内のガス組成による測定で約0.5cm/m/日未満の酸素透過性を有する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、カプセルが、脱イオン水を使用した37℃での測定で約1.6分の崩壊エンドポイントを有する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質を更に含む医薬組成物を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質が炭水化物および抗酸化剤を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が凍結乾燥されている、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)およびラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)の少なくとも1つの株が、表1に挙げられている株から選択される、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)またはラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の少なくとも2つを含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)を含む、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、各細菌株が約10CFU~約1012CFUの量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、各細菌株が約10CFU~約1010CFUの量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、各細菌株が約5×10CFUの量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が約10CFU~約1012CFUの総量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が約10CFU~約1010CFUの総量で存在する、医薬組成物を提供する。本明細書は更に、細菌集団が約1.5×10CFUの総量で存在する、医薬組成物を提供する。
【0008】
本明細書は、既に記載されている任意の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における疾患の治療方法を提供する。本明細書は更に、疾患が炎症性疾患である、対象における疾患の治療方法を提供する。本明細書は更に、炎症性疾患がアレルギーまたは皮膚炎である、対象における疾患の治療方法を提供する。本明細書は更に、アレルギーがアレルギー性喘息、アレルギー性小児喘息または食物アレルギーである、対象における疾患の治療方法を提供する。本明細書は更に、疾患が代謝性疾患である、対象における疾患の治療方法を提供する。本明細書は更に、代謝性疾患が肥満、糖尿病またはメタボリックシンドロームである、対象における疾患の治療方法を提供する。
【0009】
本明細書は、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供し、該方法は、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)およびラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)の株を含む精製細菌集団を含む医薬組成物を対象に経口投与することを含み、ここで、医薬組成物を少なくとも1日1回、少なくとも7日間、対象に投与する。本明細書は更に、対象が約7日齢以下の新生児である、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、対象が約28日齢~約12月齢の乳児である、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、医薬組成物を対象に少なくとも28日間投与する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、医薬組成物を対象に少なくとも336日間投与する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、医薬組成物を対象に1日1回、2回、3回、4回、5回または6回投与する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、医薬を対象に1日1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回または12回投与する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、アレルギー状態がアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎またはアレルギー性喘息である、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、対象が、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎またはアレルギー性喘息であるアレルギー状態の病歴を有する生物学的母親、父親または兄弟姉妹を有する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、対象が約2.5kg~4.5kgの出生体重を有する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、各細菌株が約10CFU~約1012CFUの量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、各細菌株が約10CFU~約1010CFUの量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、各細菌株が約5×10CFUの量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、細菌集団が約10CFU~約1012CFUの総量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、細菌集団が約10CFU~約1010CFUの総量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、細菌集団が約1.5×10CFUの総量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)およびラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)を同量で投与する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)およびラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)をそれぞれ5×10CFUで投与する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、炭水化物ベースの賦形剤を更に含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、医薬組成物を母乳、人工乳(人工栄養、フォーミュラ)または食物中に混合する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、懸濁剤が凍結保護物質を含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質がグリセロールを含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、グリセロールが体積%として約10%~約30%の量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、抗酸化剤を更に含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、抗酸化剤がアミノ酸を含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、アミノ酸がL-システインを含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、L-システインが重量%として約0.1%の量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、バッファーを更に含む。対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、バッファーがリン酸緩衝食塩水(PBS)であり、約7.4のpHを有する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、医薬組成物が約1mLの総体積を有する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、組成物がカプセル内に含まれる、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、カプセルが植物ベースの材料を含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、カプセルが凍結保護物質を含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質が炭水化物および抗酸化剤を含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、炭水化物がサッカロース、トレハロースまたはそれらの組合せを含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、抗酸化剤がアミノ酸を含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、アミノ酸がL-グルタマート、L-システインまたはそれらの組合せを含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、L-システインが重量%として約0.05%~約1%の量で存在する、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、凍結保護物質が重量%として約60% サッカロース、約10% トレハロース、約1% L-システインおよび約4% L-グルタマートを含む、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。本明細書は更に、細菌集団が凍結乾燥されている、対象におけるアレルギー状態の発生率を低減する方法を提供する。
【0010】
本明細書は、漸増量の増殖培地を使用して複数の接種ラウンドを行うことを含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供し、ここで、各接種ラウンドは直前の接種ラウンドの全バッチ物質の少なくとも約5%を含む。本明細書は更に、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)がアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)またはアッケルマンシア・グリカニフィラ(Akkermansia glycaniphila)を含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)がアッケルマンシア・ムシニフィラ(DSM 33213)を含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、増殖培地が約1L~約4,000Lである、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、約1Lの増殖培地の初期接種ラウンドを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、接種ラウンドの少なくとも1つが少なくとも約3000Lの体積の増殖培地におけるものである、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、初期接種ラウンドが初期接種ラウンド増殖培地の約2%のアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)の凍結ストックを含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、初期接種ラウンドが、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)を嫌気性条件中で増殖させることを含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、少なくとも2.5のOD600の量で存在するアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を含む最終接種ラウンドを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、直前の接種ラウンドの全バッチ物質の約10%(体積%)の最終接種ラウンドを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、増殖培地に対して複数の滅菌ラウンドを行うことを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供し、ここで、各滅菌ラウンドは、NCO(90:5:5)で増殖培地を脱気することを含む。本明細書は更に、バッチを凍結乾燥することを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、凍結乾燥前にバッチを遠心分離することを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、凍結乾燥後にバッチを粉砕することを更に含む、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、各接種ラウンドの増殖期間中に増殖培地が約7未満のpH値を有する、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、各接種ラウンドの増殖期間中に増殖培地が約6.5未満のpH値を有する、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。
【0011】
本明細書は、漸増量の増殖培地を使用して複数の接種ラウンドを行うことを含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供し、ここで、各接種ラウンドの増殖期間中に増殖培地は約6.5未満のpH値を有する。本明細書は更に、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)を含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(DSM 33185)を含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、増殖培地が約1L~約4,000Lである、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、約1Lの増殖培地の初期接種ラウンドを更に含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、接種ラウンドの少なくとも1つが少なくとも約3000Lの増殖培地である、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、初期接種ラウンドが初期接種ラウンド増殖培地の約0.4%のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)の凍結ストックを含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、初期接種ラウンドが、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)を嫌気性条件中で増殖させることを含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、少なくとも5のOD600の量で存在するフィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)を含む最終接種ラウンドを更に含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、増殖培地に対して複数の滅菌および脱気ラウンドを行うことを更に含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供し、ここで、各滅菌ラウンドは、増殖培地を121℃で20分間オートクレーブ(高圧滅菌)することを含み、各脱気ラウンドは、NCO(90:5:5)で増殖培地を脱気することを含む。本明細書は更に、バッチを凍結乾燥することを更に含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、凍結乾燥前にバッチを遠心分離することを更に含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、凍結乾燥後にバッチを粉砕することを更に含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、各接種ラウンドの増殖期間中に増殖培地が約6未満のpH値を有する、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、各接種ラウンドの増殖期間中に増殖培地が約5.5未満のpH値を有する、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、各接種ラウンドの増殖期間中に増殖培地が約5未満のpH値を有する、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。本明細書は更に、各接種ラウンドが直前の接種ラウンドの全バッチ物質の少なくとも約1%を含む、フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の大規模増殖のための方法を提供する。
【0012】
図面の簡潔な説明
本発明の新規特徴は添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴および利点のより深い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明および以下に説明する添付の図面(本明細書においては「図面」または「図」)を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本明細書に記載されている組成物の製造工程を要約した概略フローチャートを示す。
図2図2は、改変NAGT培地におけるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)の経時的増殖を測定するための、600ナノメートル波長における光吸収(本明細書においては「OD600」とも称される)対時間のチャートを示す。データは、以下のものを包含する種々の培地からのものである:非改変NAGT培地、改変NAGT培地、グルコース非含有改変NAGT培地、カルシウム非含有改変NAGT培地およびマグネシウム非含有改変NAGT培地。
図3図3は、種々のNAGT培地におけるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)の経時的増殖を測定するための、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。データは、以下のものを包含する種々の培地からのものである:非改変NAGT培地、NAG非含有NAGTおよびソイトーン(soytone)非含有NAGT。
図4図4は、種々の増殖培地におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)の経時的増殖を測定するための、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。データは、以下のものを包含する種々の培地からのものである:完全培地、酢酸ナトリウム非含有培地、ソイトーン非含有培地、酵母エキス非含有培地およびシステイン非含有培地。
図5図5は、種々の補足物を含有するYFAP培地におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の増殖に関する、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)を、ビタミン非含有YFAP内で3回継代培養した後、種々の補足物を含有するYFAP培地内で増殖させた。データは、以下のものを包含する種々の培地からのものである:完全ビタミンミックスを含有するYFAP培地(ビタミンミックス溶液)(YFAP+ビタミン)、ビオチン非含有YFAP培地(ビオチン非含有YFAP)、コバラミン非含有YFAP培地(コバラミン非含有YFAP)、PABA非含有YFAP培地(PABA非含有YFAP)、葉酸非含有YFAP培地(葉酸非含有YFAP)、ピリドキサミン非含有YFAP培地(ピリドキサミン非含有YFAP)、チアミン非含有YFAP培地(チアミン非含有YFAP)、リボフラビン非含有YFAP培地(リボフラビン非含有YFAP)、および完全ビタミンミックスを含有しないYFAP培地(ビタミン非含有YFAP)。ビタミンの添加はフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)の増殖を約10%増加させた。
図6図6は、種々の補足物を含有するYFAP培地におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の増殖に関する、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)を、ビタミンの非存在下で1回継代培養した。データは、以下のものを包含する種々の培地からのものである:完全ビタミンミックスを含有するYFAP培地(ビタミンミックス溶液)(YFAP+ビタミン)、ビオチン非含有YFAP培地(ビオチン非含有YFAP)、コバラミン非含有YFAP培地(コバラミン非含有YFAP)、PABA非含有YFAP培地(PABA非含有YFAP)、葉酸非含有YFAP培地(葉酸非含有YFAP)、ピリドキサミン非含有YFAP培地(ピリドキサミン非含有YFAP)、チアミン非含有YFAP培地(チアミン非含有YFAP)、リボフラビン非含有YFAP培地(リボフラビン非含有YFAP)、および完全ビタミンミックスを含有しないYFAP培地(ビタミン非含有YFAP)。完全ビタミンミックスまたはコバラミンの欠如はフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)の増殖を約30%減少させた。
図7図7は、pH制御の非存在下のYFAP培地におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の増殖に関する、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。培養物を24時間目の時点で接種し、100rpmで撹拌し、37℃でインキュベートした。pHを固定しなかった場合には、それは約5.5に低下した。酸化還元(レドックス)を-400mVで維持し、細菌増殖はOD600=1.1に達した。24時間目より前の読取り値はいずれも各測定に関するベースライン値を表す。
図8図8は、pH制御の存在下のYFAP培地におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の増殖に関する、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。培養物を24時間目の時点で接種し、100rpmで撹拌し、37℃でインキュベートした。水酸化アンモニウム(NHOH)の添加によりpHを6.75に固定すると、酸化還元は-460mVに低下し、一方、細菌増殖はOD600=0.5付近で横ばい状態になった。24時間目より前の読取り値はいずれも各測定に関するベースライン値を表す。
図9図9は、種々の増殖培地におけるラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)の経時的増殖の時間に対する600ナノメートル波長における光吸収のチャートを示す。このチャートはブイヨン(Boullion)vMRSブロスおよびHiMedia vMRSブロスにおけるラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)の増殖を比較している。
図10図10は、NAGT培地内のアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の20リットル培養の増殖に関する、時間に対する、585ナノメートル波長における光吸収(本明細書においては「OD585」とも称される)(左側のY軸)およびグルコース濃度(g/L)(右側のY軸)のチャートを示す。このチャートはアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)の増殖とグルコースレベルとの間の経時的な関係を示している。27時間目および48時間目におけるグルコース(4.52g/L)およびN-アセチルグルコサミン(5.54g/L)の添加()は、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)培養が25時間目から50時間目の間に指数増殖期を維持し、50時間目以降に定常期に入ることを可能にした。
図11図11は、ベジトン(Vegitone)MRS培地内のラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の20リットル培養の増殖に関する、時間に対する、585ナノメートル波長における光吸収(左側のY軸)およびグルコース濃度(g/L)(右側のY軸)のチャートを示す。このチャートはラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の増殖とグルコースレベルとの間の経時的な関係を示している。10時間目および11時間目におけるグルコース(10g/L)の2回の添加(1回目の供給および2回目の供給**)は、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)培養が11時間目から14時間目の間に指数増殖期を維持し、14時間目以降に定常期に入ることを可能にした。
図12】FAP培地内のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の20リットル培養の増殖に関する、時間に対する、585ナノメートル波長における光吸収(左側のY軸)およびグルコース濃度(g/L)(右側のY軸)のチャートを示す。このチャートは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の増殖とグルコースレベルとの間の経時的な関係を示している。9時間目におけるグルコース(10g/L)を添加(1回目の供給)は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)培養の細胞が9時間目から14時間目まで増殖を維持することを可能にした。
図13図13は、NAGT培地内のアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の150リットル培養の増殖に関する、時間に対する、585ナノメートル波長における光吸収(左側のY軸)およびグルコース濃度(g/L)(右側のY軸)のチャートを示す。このチャートはアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)の増殖とグルコースレベルとの間の経時的な関係を示している。19時間目におけるグルコース(4.52g/L)およびN-アセチルグルコサミン(5.54g/L)の添加は、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)培養が20時間目以降に指数増殖を維持することを可能にした。
図14図14は、ベジトン(Vegitone)MRS培地内のラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の150リットル培養の増殖に関する、時間に対する、585ナノメートル波長における光吸収(左側のY軸)およびグルコース濃度(g/L)(右側のY軸)のチャートを示す。このチャートはラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の増殖とグルコースレベルとの間の経時的な関係を示している。10時間目におけるグルコース(35g/L)の添加()は、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)培養が10時間目から12時間目までの指数増殖を維持し、12時間目以降に定常増殖に入ることを可能にした。
図15図15は、YFAP-NU培地内の1Lのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培養の経時的増殖の測定に関する、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。
図16図16は、YFAP-NU培地内の150Lのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培養の経時的増殖の測定に関する、600ナノメートル波長における光吸収対時間のチャートを示す。8時間目におけるグルコース(10g/L)の添加()は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)培養が指数期に入り、定常期に達することを可能にした。
図17図17A~17Cは、細菌細胞集団(例えば、ヒト対象に投与されうる細胞集団)における代謝活性治療株の定量のための、熱殺菌対照アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞のフローサイトメトリー・ゲーティング実験を示す。例示株として使用したアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞ストック溶液を0.9% NaClバッファー溶液中で10-4Mに希釈し、95℃の加熱ブロック内に20分間配置して、実験実施前の細胞死を確認した。細胞を2μMのヨウ化プロピジウムおよび2μMのSYTO9で染色した。前方散乱領域(FSC-A)および側方散乱領域(SSC-A)によって計数された全ての細胞(図17A)にゲートを適用して、それぞれ細胞のサイズおよび粒度に関して選択する。ついで、それらの細胞を前方散乱高(FSC-H)および前方散乱領域(FSC-A)に基づいて線形性でゲートして、単一細胞を特定した(図17B)。ついで単一細胞を使用して、死細胞(PIhighSYTO9low)および生細胞(PI-SYTO9high)に関するゲートを設定し、これは50μlの溶液中の生細胞および死細胞の百分率を示した(図17C)。
【0014】
図17Aは、それぞれ細胞サイズおよび粒度を選択するために前方散乱領域(FSC-A)および側方散乱領域(SSC-A)によって計数された全ての細胞にゲートが適用された場合に得られたフローサイトメトリーの結果を示す。
【0015】
図17Bは、単一細胞を特定するために前方散乱高(FSC-H)および前方散乱領域(FSC-A)に基づいて線形性で細胞がゲートされた場合に得られたフローサイトメトリーの結果を示す。
【0016】
図17Cは、死細胞(PIhighSYTO9low)および生細胞(PI-SYTO9high)用のゲートを設定するために単一細胞を使用した場合に得られたフローサイトメトリーの結果を示し、これは50μlの細胞懸濁液中の生細胞および死細胞の百分率を示している。
図18図18は、(標準的な)寒天プレーティング法を用いて決定された総生細胞数と生細胞のフローサイトメトリー定量データとを比較するグラフを示す。左側のy軸は、フローサイトメトリーにより測定された総生細胞数を示す。右側のy軸は生物学的重複実験のための栄養寒天プレーティングからの算出平均CFU/mL値を示す。両側マンホイットニーt検定はそれらの2つの定量法の平均値の間に有意差を示さなかった(p値は0.0532)。
図19図19A~19Cは、それぞれ細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)(図19A)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)(図19B)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)(図19C)を糞便サンプルにおいて定量するための検出曲線(対照閾値を細菌細胞数に対してプロットした)の限界を示す。点線は、測定データポイントを連結したものであり、直線は、フィットされた回帰直線を表し、「R」は決定係数である。示されているデータは、糞便DNAバックグラウンドにおいて希釈された3つの株の50ngの全DNA(株DNA+糞便DNA)の純粋な細菌DNA(10、1、0.1、0.01、0.001、0.0001および0.00001ナノグラム(ng))を使用して作成された標準曲線を表す。株[例えば、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)]DNAの量を決定するためにヒトサンプルを分析する場合、実験で使用されるDNAプライマーが細菌株のDNAを適切に増幅しうることを確認するために、対照サンプルが並行して実施され分析されうる。
図20図20は、3500Lの培養体積におけるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)に関する、最適化された超大規模増殖および製造プロセスの概略フローチャートを示す。19.2mLの実施用細胞バンク(WCB)アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)を嫌気性チャンバー内で解凍し、嫌気性チャンバー内の1L ボトル(2001)内で1Lの還元(reduced)NAGT培地(2% v/vの接種率)に接種した。OD585>1になった際または培養物を48時間増殖させた際に、培養を停止した。2001における全培養物を使用して、20L 発酵槽(2002)内の16Lの培地(5% v/vの接種率)に接種した。OD585>1.5になった際または培養物を48時間増殖させた際に、培養を停止した。2002における15Lの培養物を使用して、300L 発酵槽(2003)内の300Lの培地(5% v/vの接種率)に接種した。OD585>1.5になった際または培養物を48時間増殖させた際に、培養を停止した。表15に定められている240Lを準備した。100Lの糖供給物を3500L 発酵槽(2004)に添加した。2002における300Lの培養物を使用して、2004における3500Lの培地(8~10% v/vの接種率)に接種した。グルコース濃度が2g/L未満に低下したら、更に100Lの糖供給物を添加した。OD585>2.5になった際または培養物を72時間増殖させた際に、培養を停止した。ついで2004における全培養物を嫌気性雰囲気下で遠心分離し、バイオマスとして回収した。表17に定められている100Lの濾過滅菌脱気凍結保護物質を、嫌気性ガスでパージされた混合タンク内で該バイオマスと混合した。凍結保護物質を含有するバイオマスを凍結乾燥(凍結および乾燥)し、粉砕した。各工程において、細菌培養に使用する培地を滅菌し(121℃でオートクレーブ)、使用前にNCO(90:5:5)で脱気した。糖成分(N-アセチルグルコサミンおよびグルコース)を、その他NAGT培地成分とは別に調製した。糖供給物を濾過滅菌し、脱気し、その他のNAGT培地成分に加えて、完全培地を得た。
図21図21は、3500Lの製造プロセスにおける1L ボトル内のNAGT培地内の1Lのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図22図22は、3500Lの製造プロセスにおける20L 発酵槽内のNAGT培地内の20Lのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図23図23は、3500Lの製造プロセスにおける300L 発酵槽内のNAGT培地内の300Lのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図24図24は、3500Lの製造プロセスにおける3500L 発酵槽内のNAGT培地内の3500Lのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図25図25は、3500Lの培養体積におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)に関する、最適化された超大規模増殖および製造プロセスの概略フローチャートを示す。6.4mLの実施用細胞バンク(WCB)フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)を嫌気性チャンバー内で解凍し、嫌気性チャンバー内の2L フラスコ(2501)内で1Lの還元(reduced)NAGT培地(2% v/vの接種率)に接種した。OD600>3になった際または培養物を48時間増殖させた際に、培養を停止した。2501における1.5Lの培養物を使用して、300L 発酵槽(2502)内の150Lの培地(1% v/vの接種率)に接種した。OD585>5になった際または培養物を48時間増殖させた際に、培養を停止した。表22に定められている250Lを準備した。100Lの糖供給物を3500L 発酵槽(2503)に添加した。2502における35Lの培養物を使用して、3500L 発酵槽(2503)内の300Lの培地(5% v/vの接種率)に接種した。OD585>5になった際または培養物を72時間増殖させた際に、培養を停止した。ついで2503における全培養物を嫌気性雰囲気下で遠心分離し、バイオマスとして回収した。表24に定められている120Lの濾過滅菌脱気凍結保護物質を、嫌気性ガスでパージされた混合タンク内で該バイオマスと混合した。凍結保護物質を含有するバイオマスを凍結乾燥(凍結および乾燥)し、粉砕した。各工程において、細菌培養に使用する培地を滅菌し(121℃でオートクレーブ)、使用前にNCO(90:5:5)で脱気した。糖成分(グルコース)を、その他YFAP培地成分とは別に調製した。糖供給物を濾過滅菌し、脱気し、その他のYFAP培地成分に加えて、完全培地を得た。
図26図26は、3500Lの製造プロセスにおける2L フラスコ内のYFAP培地内の2Lのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図27図27は、3500Lの製造プロセスにおける300L 発酵槽内のYFAP培地内の150Lのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図28図28は、3500Lの製造プロセスにおける3500L 発酵槽内のYFAP培地内の3500Lのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培養の増殖に関する、585ナノメートル波長における光吸収(Y軸)対時間のチャートを示す。
図29図29は、本明細書に記載されているヒト臨床試験の3つの段階(スクリーニング期間、治療期間および休薬期間)、ならびに医薬組成物を対象に経口投与することによる、プラセボと比較した場合の種々の年齢の対象におけるアレルギーを治療するその能力を示す。
図30図30は固体剤形(3001)または液体剤形(3002)の製剤を示す。いずれの形態の組成物も経口投与されうる。
図31図31は、本明細書に記載されているヒト臨床試験の3つの段階(スクリーニング期間、治療期間および休薬期間)、ならびに医薬組成物を対象に経口投与することによる、プラセボと比較した場合の種々の年齢の対象におけるアレルギーを治療するその能力を示す。
図32図32は、本明細書に記載されているヒト臨床試験の3つの段階(スクリーニング期間、治療期間および休薬期間)、ならびに医薬組成物を対象に経口投与することによる、プラセボと比較した場合の種々の年齢の対象におけるアレルギーを治療するその能力を示す。
【0017】
詳細な説明
本明細書は、炎症性または代謝性疾患の治療のための細菌を含む医薬組成物を提供する。幾つかの場合には、医薬組成物は1以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む。記載されている医薬組成物は、1以上の細菌株を含む1以上の細菌種を含みうる。幾つかの場合には、医薬組成物はラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)および/またはフィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)のいずれか1以上を含むこと、またはそれらから本質的になること、またはそれらからなることが可能である。更に詳細な例においては、本明細書に記載されている医薬組成物は、本明細書中で言及されている以下の種、すなわち、ラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)、アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)および/またはフィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)の任意の1以上の特定の株を含む、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる。例えば、幾つかの場合には、本明細書に記載されている医薬組成物は、細菌株ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)[本明細書においては「ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)」とも称される]、寄託番号DSM 33213を有するアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)[本明細書においてはアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)とも称される]およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)[本明細書においてはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)とも称される]を含む、またはそれらから本質的になる、またはそれらからなる。幾つかの場合には、医薬組成物は、実施例2において定められている組成物Aを含みうる。
【0018】
本明細書は、医薬組成物、そのような組成物の製剤、そのような組成物の製造方法、そのような医薬組成物の投与経路、ならびにそのような医薬組成物を使用して予防および/または治療されうる適応を提供する。
【0019】
本開示はまた、本明細書に記載されている医薬組成物を製剤化(処方)する方法、ならびに疾患または病態を有する又は有する疑いのある対象にそのような医薬組成物を投与するための方法を提供する。そのような方法は、1以上の細菌種および/または株を含みうる又はそれらからなりうる本発明における医薬組成物を経口剤形に製剤化することを含みうる。そのような経口製剤は、1以上の細菌種および/または菌株、緩衝化グリセロール溶液、例えば、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPOおよび1.8mM KHPO、20% v/v グリセロールおよび抗酸化剤、例えば0.1% w/w L-システインを含む標準リン酸緩衝食塩水から構成されうるものを含みうる、またはそれらからなりうる。
【0020】
本明細書は更に、本明細書に記載されている細菌株のバッチの製造を可能にする製造方法を提供する。そのような方法は、通常の製造方法と比較して1以上の利点をもたらしうる。そのような利点には、(i)総収量の増加、(ii)増殖速度の増加、および/または(iii)総細胞数当たりの生存可能細菌細胞の数の増加のいずれか1以上が含まれうる。幾つかの場合には、そのような方法は非動物由来の培地成分の使用を含みうる。そのような非動物培地には、植物培地が含まれうる。そのような植物培地は、植物ペプトン、植物抽出物、酵母エキスおよび他の非動物成分のような種々の成分を含みうる。幾つかの場合には、そのような非動物培地には、N-アセチルグルコサミン-スレオニン(NAGT)培地およびブイヨン(Boullion)MRS植物培地、酵母脂肪酸フィトン(YFAP)培地、およびそれらの改変形態が含まれうる。そのような改変培地においては、1以上の培地成分が除去され、添加され、および/または他の成分により置換されていることが可能である。他の場合には、培地成分の量は、非改変培地と比較して増加または減少される。一例においては、改変NAGT培地はマグネシウム、カルシウムまたはグルコースの任意の1以上を含まなくてもよい。
【0021】
本開示のそのような経口製剤は対象における疾患または病態の予防および/または治療方法において使用可能であり、該方法は、疾患または病態を有する又は有する疑いのある対象(例えば、ヒト)に該経口製剤を投与することを含む。そのような疾患または病態は炎症性疾患(例えば、アレルギーまたは喘息)または自己免疫疾患でありうる。
【0022】
定義
「少なくとも」、「より大きい」または「以上」なる語が一連の2以上の数値における最初または最後の数値のそれぞれ前または後にあるときはいつでも、「少なくとも」、「より大きい」または「以上」なる語はその一連の数値における数値のそれぞれに適用される。例えば、1、2または3以上は1以上、2以上または3以上と同等である。
【0023】
「せいぜい」、「未満」または「以下」なる語が一連の2以上の数値における最初または最後の数値のそれぞれ前または後にあるときはいつでも、「せいぜい」、「未満」または「以下」なる語はその一連の数値における数値のそれぞれに適用される。例えば、3、2または1以下は3以下、2以下または1以下と同等である。
【0024】
数値または範囲の文脈で本明細書中で使用される「約」なる語は、特に示されていない限り、一般に、挙げられている又は特許請求されている数値または範囲の±10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%を意味する。
【0025】
医薬組成物
本開示は、細菌共生体(細菌コンソーシアム)と1以上の医薬賦形剤とを含みうる、それらから本質的になりうる、またはそれらからなりうる医薬組成物を提供する。そのような医薬賦形剤には、凍結保護物質、抗酸化剤および水性緩衝溶液が含まれうる。
【0026】
本明細書は、細菌共生体を含みうる医薬組成物を提供する。そのような細菌共生体は1以上の異なる細菌種および/または株を含みうる。そのような細菌種および/または株は1以上の異なる細菌門に属しうる。そのような細菌門には、ベルコミクロビア(Verrucomicrobia)、ファーミキューテス(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、アクチノバクテリア(Actinobacteria)および/もしくはバクテロイデス(Bacteroidetes)またはそれらの組合せが含まれうる。
【0027】
幾つかの場合には、本明細書に記載されている細菌共生体は1以上のラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)を含みうる。そのような1以上のラクトバシラス属種には以下のものが含まれうる:ラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ゼエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバシラス・アシディピシス(Lactobacillus acidipiscis)、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシラス・アジリス(Lactobacillus agilis)、ラクトバシラス・アビアリウス(Lactobacillus aviarius)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・コレオホミニス(Lactobacillus coleohominis)、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバシラス・クルストラム(Lactobacillus crustorum)、ラクトバシラス・クルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバシラス・ジオリボランス(Lactobacillus diolivorans)、ラクトバシラス・ファーラジニス(Lactobacillus farraginis)、ラクトバシラス・フェルメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・フチュエンシス(Lactobacillus fuchuensis)、ラクトバシラス・ハービネンシス(Lactobacillus harbinensis)、ラクトバシラス・ヘルベチカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシラス・ヒルガルジイ(Lactobacillus hilgardii)、ラクトバシラス・インテスチナリス(Lactobacillus intestinalis)、ラクトバシラス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバシラス・ケフィラノファシエンス(Lactobacillus kefiranofaciens)、ラクトバシラス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)、ラクトバシラス・リンドネリ(Lactobacillus lindneri)、ラクトバシラス・マリ(Lactobacillus mali)、ラクトバシラス・マニホチボランス(Lactobacillus manihotivorans)、ラクトバシラス・ムコセ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバシラス・オエニ(Lactobacillus oeni)、ラクトバシラス・オリゴフェルメンタンス(Lactobacillus oligofermentans)、ラクトバシラス・パニス(Lactobacillus panis)、ラクトバシラス・パンテリス(Lactobacillus pantheris)、ラクトバシラス・パラブレビス(Lactobacillus parabrevis)、ラクトバシラス・パラコリノイデス(Lactobacillus paracollinoides)、ラクトバシラス・パラケフィリ(Lactobacillus parakefiri)、ラクトバシラス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum)、ラクトバシラス・ペントサス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバシラス・ポンチス(Lactobacillus pontis)、ラクトバシラス・リューテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバシラス・ロッシエ(Lactobacillus rossiae)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバシラス・サリギニス(Lactobacillus siliginis)、ラクトバシラス・スシコラ(Lactobacillus sucicola)、ラクトバシラス・バクシノステルカス(Lactobacillus vaccinostercus)、ラクトバシラス・バジナリス(Lactobacillus vaginalis)、ラクトバシラス・ビニ(Lactobacillus vini)、ラクトコッカス・ガルビエエ(Laclococcus garvieae)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)またはそれらの組合せ。幾つかの実施形態においては、ラクトバシラス属種はラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)またはラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)である。そのような場合には、細菌共生体は1以上のラクトバシラス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)またはラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株を含みうる。そのような1以上のラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)株には、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)(すなわち、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187))が含まれうる。種々の場合には、本明細書における細菌共生体はラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)を含みうる。
【0028】
幾つかの場合には、本明細書における細菌共生体は1以上のアッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)を含みうる。そのような1以上のアッケルマンシア属種には、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、アッケルマンシア・グリカニフィラ(Akkermansia glycaniphila)またはそれらの組合せが含まれうる。幾つかの場合には、そのような1以上のアッケルマンシア属種はアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)である。そのような場合には、本明細書における細菌共生体は1以上のアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)株を含みうる。そのような1以上のアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)株には、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)が含まれうる。種々の場合には、本明細書における細菌共生体はアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)を含む。
【0029】
幾つかの場合には、本明細書における細菌共生体は1以上のフィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)を含みうる。そのような1以上のフィーカリバクテリウム属種には、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)が含まれうる。そのような場合には、本明細書における細菌共生体は1以上のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)株を含みうる。そのような1以上のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)株には、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33191)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33186)もしくはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33190)またはそれらの組合せが含まれうる。種々の場合には、本明細書における細菌共生体はフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)を含む。
【0030】
本明細書は更に、バクテロイデス属種(Bacteroides sp)、ブラウティア属種(Blautia sp.)、ビフィドバクテリウム属種(Bifidobacterium sp.)、コプロコッカス属種(Coprococcus sp.)またはドレア属種(Dorea sp.)の任意の1以上の、1以上の株を含みうる細菌共生体を提供する。そのような場合には、本明細書における細菌共生体はバクテロイデス・フェシス(Bacteroides faecis)(DSM 22177)、バクテロイデス・シータイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)(DSM 33178)、ブラウティア・プロダクタ(Blautia producta)(DSM 33180)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)(DSM 33179)、コプロコッカス・コメス(Coprococcus comes)(DSM 33176)またはドレア・ロンギカテナ(Dorea longicatena)(DSM 33188)の任意の1以上を含みうる。本明細書に記載されている細菌共生体に含まれる例示的な株を表1に示す。
【表1】
【0031】
本明細書は、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の細菌種および/または株を含みうる、それらから本質的になりうる、またはそれらからなりうる細菌共生体を提供する。幾つかの場合には、そのような細菌共生体は、表1から選択される少なくとも1つの細菌株を含みうる。幾つかの実施形態においては、細菌共生体は最大3つの異なる細菌株からなりうる。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている細菌共生体は、表2に挙げられている少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全ての細菌株を含む。幾つかの場合には、細菌共生体は細菌株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)を含む、またはそれらからなる。
【表2】
【0032】
本開示が提供する細菌共生体は、それが含有する細菌種および/または株のそれぞれの種々のコロニー形成単位(CFU)数を含みうる。幾つかの場合には、そのような細菌共生体は、約10CFU~約1012CFU、約10CFU~約1012CFU、約10CFU~約1011CFU、約10CFU~約1010CFUまたは約10CFU~約1010CFUの細菌種または株を含みうる。幾つかの実施形態においては、そのような細菌共生体はまた、約10CFU~約1010CFUの細菌種または株を含みうる。幾つかの場合には、細菌共生体は少なくとも約10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、1010CFU、5×1010CFU、1011CFU、5×1011CFUまたは1012CFU、かつ、約5×1012CFU以下の細菌種または株を含みうる。細菌共生体はまた、細菌種または株当たり約10~約1011CFUを含みうる。幾つかの場合には、細菌共生体は細菌種または株当たり約103~約1012CFUを含みうる。幾つかの場合には、細菌共生体は細菌種または株当たり約10~約5×1010CFUを含みうる。幾つかの場合には、細菌共生体は細菌種または株当たり約107~約5×1010CFUを含みうる。種々の実施形態においては、細菌共生体は細菌種または株当たり約5×10CFUを含みうる。医薬組成物を投与用の単位用量に製剤化する場合には、そのようなCFU値はそのような剤形の質量単位当たり(例えば、5×10CFU/g)または体積単位当たり(例えば、5×10CFU/mL)でありうる。
【0033】
幾つかの実施形態においては、本開示は、種々の量のコロニー形成単位(CFU)の細菌細胞を含みうる細菌共生体を提供する。そのような細菌共生体は約10CFU~約1012CFU、約10CFU~約1012CFU、約10CFU~約1011CFU、約10CFU~約1010CFU、または約10CFU~約1011CFUの細菌細胞を含みうる。そのような細菌共生体はまた、約10CFU~約1012CFUの細菌細胞を含みうる。幾つかの実施形態においては、そのような細菌共生体はまた、約10CFU~約1010CFUの細菌細胞を含みうる。幾つかの場合には、細菌共生体は、少なくとも約10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、1010CFU、5×1010CFU、1011CFU、5×1011CFUまたは1012CFU、かつ、約5×1012CFU以下の細菌細胞を含みうる。
【0034】
幾つかの実施形態においては、本開示は、約10CFU~約1012CFUの細菌細胞の総量で存在しうる細菌集団を提供する。幾つかの実施形態においては、細菌集団は少なくとも約10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、10CFU、5×10CFU、1010CFU、5×1010CFU、1011CFU、5×1011CFUまたは1012CFU、かつ、約5×1012CFU以下の細菌細胞の総量で存在しうる。他の場合には、細菌集団は約10CFU~約1010CFUの細菌細胞の総量で存在しうる。幾つかの場合には、細菌集団は約1.5×10CFUの細菌細胞の総量で存在しうる。
【0035】
幾つかの場合には、本明細書に記載されている医薬組成物における細菌種または株のCFU数は、対象のマイクロバイオータ(微生物叢)に存在するその細菌種または株のCFU数の或る割合でありうる。マイクロバイオータは腸または膣マイクロバイオータでありうる。そのような対象はヒト対象でありうる。したがって、幾つかの場合には、医薬組成物における細菌のCFUとマイクロバイオータにおけるそのような細菌のCFU数との比は約1:10~約1:10、約1:10~約1:10、約1:10~約1:10、または約1:10~約5:1でありうる。本開示の特定の実施形態においては、そのような比は少なくとも約0.0001、0.0002、0.0005、0.001、0.002、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、1、2、3、3.5、4または5、かつ、10以下でありうる。
【0036】
本明細書における幾つかの実施形態においては、本開示の医薬組成物において使用される細菌共生体は約5×10CFU/mLの細菌株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)および/またはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)のいずれかを含みうる、またはそれらからなりうる。そのような場合には、細菌共生体は約5×10CFU/mLの細菌株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)からなりうる。
【0037】
本明細書は、1以上の凍結保護物質を含みうる医薬組成物を提供する。そのような凍結保護物質は、そのような組成物が凍結または凍結乾燥される場合、例えば、使用前の輸送および/または貯蔵中に、医薬組成物中の細菌細胞の生存性を維持するために使用されうる。幾つかの場合には、そのような1以上の凍結保護物質はグリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トレハロース、スクロース、ジエチルグリコール、トリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、サッカロース、ホルムアミド、グリセロール3-ホスファート、プロリン、メチルアルコール、グルコース、ウシ血清アルブミン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルデンプン、ソルビトールまたはそれらの組合せでありうる。凍結保護物質はアイスブロッカー(ice blocker)を含みうる。アイスブロッカーはポリグリセロール、ポリビニルアルコール、X-1000およびZ-1000を含みうる。そのような凍結保護物質は、例えば医薬組成物が固体剤形(例えば、カプセル剤または錠剤)であるか又は液体剤形(例えば、懸濁剤またはゲル剤)であるかに応じて、約5、10、15、20、25または30体積パーセント(% v/v)または重量パーセント(% w/w)の量で、医薬組成物において使用されうる。凍結保護物質はまた、炭水化物または抗酸化剤を含みうる。炭水化物はトレハロース、スクロース、ソルビトール、グルコース、フルクトース、サッカロースまたはそれらの組合せを含みうる。
【0038】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は抗酸化剤を更に含む。幾つかの実施形態においては、抗酸化剤はL-システインである。幾つかの実施形態においては、L-システインは重量%として約0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、5%、10%、0.001%~0.005%、0.0051%~0.01%、0.011%~0.05%、0.05%~0.1%、0.051%~0.1%、0.11%~0.5%、0.51%~1%、1.1%~1.5%、1.5%~2%、2.1%~5%、または5.1%~約10%の量で存在する。サッカロースは重量%として約0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、0.1%~1%、1%~5%、5%~10%、10~15%、15~20%、20~25%、25~30%、30~35%、35~40%、40~45%、45~50%、50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%、75~80%、51~61%、52~62%、53~63%、54~64%、55~65%、56~66%、57~67%、58~68%、または59~69%の量で存在しうる。トレハロースは重量%として約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、20.5%、21%、21.5%、22%、22.5%、23%、23.5%、24%、24.5%、25%、0.01%~15%、0.1%~20%、0.01%~0.1%、0.11%~1%、1~11%、2~12%、3~13%、4~14%、5~15%、6~16%、7~17%、8~18%、9~19%、10~20%、11~21%、12~22%、13~23%、14~24%、または15~25%の量で存在しうる。グリセロールは体積%として約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、1~21%、2~22%、3~23%、4~24%、5~25%、6~26%、7~27%、8~28%、9~29%、10~30%、11~31%、12~32%、13~33%、14~34%、15~35%、16~36%、17~37%、18~38%、19~39%、または20~40%の量で存在しうる。
【0039】
本明細書における幾つかの実施形態においては、本明細書における医薬組成物の凍結保護物質はグリセロールである。そのようなグリセロールは、表1から選択される1以上、2以上または3以上の細菌株の細菌共生体を含みうる医薬組成物において約20% v/v の量で使用されうる。幾つかの実施形態においては、細菌集団は凍結乾燥されうる。凍結乾燥プロセスは細菌集団の低温脱水を含みうる。幾つかの実施形態においては、凍結乾燥プロセスは、細菌集団を低温および低圧に付すことを含みうる。
【0040】
本明細書は、1以上の抗酸化剤を含みうる医薬組成物を提供する。幾つかの場合には、そのような抗酸化剤は、医薬組成物中に存在しうる嫌気性細菌種および/または株を保護するために使用されうる。そのような場合には、そのような1以上の抗酸化剤は、貯蔵および/もしくは輸送中に嫌気性条件をもたらすために、ならびに/または活性酸素種から細菌細胞を保護するために使用されうる。本明細書における幾つかの実施形態においては、抗酸化剤はアスコルビン酸、ジチオスレイトール、グルタチオン、フェノール酸(例えば、没食子酸、プロトカテク酸、カフェイン酸およびロスマリン酸)、フェノール性ジテルペン(例えば、カルノソルおよびカルノシン酸)、フラボノイド(例えば、ケルセチンおよびカテキン)、揮発性油(例えば、オイゲノール、カルバクロール、サイモールおよびメントール)、α-トコフェロール(例えば、ビタミンE)、トロロックス、アスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンC、補酵素Q10、マンガン、ヨウ化物、メラトニン、アルファ-カロテン、アスタキサンチン、ベータカロチン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ルテイン、リコペン、ゼアキサンチン、フラボノイド(例えば、フラボン、例えば、アピゲンチン)、ルテオリン、タンゲイチン、フラボノール、イソラムネチン、ケンフェロール、ミリセチン、プロアントシアニジン、ケルセチン、エリオジクチオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、テアフラビン、テアルビジン、イソフラボン植物エストロゲン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、スチルベノイド、例えばレスベラトロール、プテロスチルベン、アントシアニン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ペツニジン、チコリ酸、クロロゲン酸、桂皮酸、エラグ酸、エラジタンニン、没食子酸、ガロタンニン、ロスマリン酸、クルクミン、キサントン、カプサイシン、ビリルビン、クエン酸、シュウ酸、フィチン酸、N-アセチルシステイン、L-システイン、L-グルタマート、L-プロリン、R-α-リポ酸、アントシアニン、銅、クリプトキサンチン、フラボノイド、インドール、イソフラボノイド、リグナン、セレン、亜鉛、またはそれらの組合せでありうる。そのような1以上の抗酸化剤は約0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%または0.5% w/wの量で医薬組成物中に存在しうる。L-グルタマートは重量%として約0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、7%、8%、9%、10%、1~5%、1.1~5.1%、1.2~5.2%、1.3~5.3%、1.4~5.4%、1.5~5.5%、1.6~5.6%、1.7~5.7%、1.8~5.8%、1.9~5.9%、2~6%、2.1~6.1%、2.2~6.2%、2.3~6.3%、2.4~6.4%、2.5~6.5%、2.6~6.6%、2.7~6.7%、2.8~6.8%、2.9~6.9%、3~7%、3.1~7.1%、3.2~7.2%、3.3~7.3%、3.4~7.4%、3.5~7.5%、3.6~7.6%、3.7~7.7%、3.8~7.8%、3.9~7.9%、または4~8%の量で存在しうる。幾つかの場合には、凍結保護物質は重量%として約60% サッカロース、約10% トレハロース、約1% L-システインおよび約4% L-グルタマートを含みうる。
【0041】
本明細書は、水性バッファー溶液を含みうる医薬組成物を提供する。そのような水性培地は細菌細胞のための主要な貯蔵および輸送培地として使用されうる。したがって、バッファーは、本明細書に記載されている医薬組成物を形成するように溶解または懸濁された細菌共生体、凍結保護物質および抗酸化剤の任意の1以上を含有しうる。幾つかの場合には、水性バッファー溶液はリン酸緩衝食塩水(PBS)、HEPESまたはトリスバッファー、任意の他の適切なバッファーまたはそれらの任意の組合せでありうる。幾つかの実施形態においては、バッファーはPBSであり、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPOおよび1.8mM KHPOを含む。他の場合には、バッファーはPBSであることが可能であり、約6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9または9のpHを有しうる。
【0042】
したがって、本明細書における幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)のそれぞれの約5×10CFUからなる細菌共生体、凍結保護物質としての約20% v/v グリセロール、抗酸化剤としての0.1% w/w L-システイン、ならびに137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPOおよび1.8mM KHPOを含有するPBSバッファーを含む。そのような医薬組成物は、本明細書に記載されている方法および組成物を使用して、製造されること、および経口投与可能な剤形に製剤化されることが可能である。
【0043】
本明細書は、対象への投与のために製剤化されうる医薬組成物を提供する。対象はヒト対象でありうる。投与には、非経口投与および経口投与が含まれうる。非経口投与は、例えば坐剤の形態で、種々の非経口経路で医薬組成物を投与することを含みうる。種々の他の場合には、本明細書に記載されている医薬組成物は経口剤形に製剤化されうる。そのような経口剤形には、カプセル剤、錠剤、乳濁剤、懸濁剤、シロップ剤、ゲル剤、ガム、ペースト剤、ハーブティー、滴剤、溶解性顆粒剤、散剤、錠剤、凍結乾燥物および他の任意の適切な経口剤形が含まれうる。カプセル(カプセル剤)は植物由来材料を含みうる。植物由来材料は、セルロースベースの重合体を含みうる。カプセルはまた、ゼラチン;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);デンプン;動物由来またはセルロースベースの加水分解コラーゲン(酸、アルカリ、酵素または熱加水分解);プルラン;タピオカ;またはそれらの任意の組合せを含みうる。セルロースベースの重合体はプルランを含みうる。カプセルは腸溶コーティングされうる。腸溶コーティングカプセルは脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、植物繊維またはそれらの任意の組合せを含みうる。カプセルは000、00、0、1、2、3、4または5の空丸剤カプセルサイズ(Empty Pill Capsule Size)のサイズを有しうる。カプセルはデンプン非含有、グルテン非含有、保存剤非含有でありうる。カプセルに未製剤化アセトアミノフェンが充填された場合のアセトアミノフェンの溶解による測定で、カプセルの90%超が水、pH=1.2の溶液、酢酸ナトリウムバッファーUSP(pH=4.5)またはリン酸ナトリウムバッファー(pH=7.2)に60分以内に溶解する。カプセルは、脱イオン水を使用した37℃での測定で約1.6分の崩壊エンドポイントを有しうる。カプセルは、脱イオン水を使用した37℃での測定で、約0.1、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、3.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9または4分の崩壊エンドポイントを有しうる。カプセルは、脱イオン水を使用した37℃での測定で、0.1~0.5分、0.51~0.6分、0.61~0.7分、0.71~0.8分、0.81~0.9分、0.91~1分、1.01~1.1分、1.11~1.2分、1.21~1.3分、1.31~1.4分、1.41~1.5分、1.51~1.6分、1.61~1.7分、1.71~1.8分、1.81~1.9分、1.91~2分、2.01~2.1分、2.11~2.2分、2.21~2.3分、2.31~2.4分、2.41~2.5分、2.51~2.6分、2.61~2.7分、2.71~2.8分、2.81~2.9分、2.91~3分、3.01~3.1分、3.11~3.2分、3.21~3.3分、3.31~3.4分、3.41~3.5分、3.51~3.6分、3.61~3.7分、3.71~3.8分、3.81~3.9分、または3.91~4分の崩壊エンドポイントを有しうる。カプセルは、カプセル内のガス組成による測定で、0.5以下の酸素透過性(cm/m/日)を有しうる。カプセルは、カプセル内のガス組成による測定で、0.0001以下、0.0005以下、0.001以下、0.005以下、0.01以下、0.05以下、0.1以下、0.5以下、1以下、1.5以下、2以下、5以下または10以下の酸素透過性(cm/m/日)を有しうる。
【0044】
更に、本明細書は、凍結されうる医薬組成物の経口製剤を提供する。そのような凍結製剤は、対象、例えばヒト対象に、凍結状態で投与されうる。幾つかの場合には、そのような凍結製剤はアイスキャンデー、アイスクリームまたは他の凍結製剤でありうる。
【0045】
本明細書における種々の実施形態においては、本開示の医薬組成物は対象への経口投与用の液体懸濁液におけるものでありうる。そのような液体懸濁液は、そのような経口剤形の単位用量を得るために、特定の体積に分注(アリコート化)されうる。そのような単位用量は約0.25、0.5、1、2、3、5または10mLの体積を有しうる。幾つかの場合には、本明細書における医薬組成物の単位用量は約1mLの体積を有する。そのような医薬組成物は細菌共生体、凍結保護物質、抗酸化剤、水性バッファー溶液(これは液体細胞懸濁液からのものでありうる)を含みうる。そのような細胞懸濁液は、本明細書に記載されているとおりの細菌株当たりの特定の数の代謝活性細胞をそれが含有することを確認するために、品質管理のために試験されうる。
【0046】
幾つかの実施形態においては、本明細書は、対象への経口投与のための単位用量に製剤化された医薬組成物を提供する。そのような経口製剤は、細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)のそれぞれの約5×10CFU、約20% v/v グリセロール、約0.1% w/w L-システイン、ならびに137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPOおよび1.8mM KHPOを含有するPBSバッファーを含みうる、またはそれらからなりうる。そのような経口製剤は約1mLの総体積を有しうる。
【0047】
本明細書は、本明細書に記載されている医薬組成物の製造方法を提供する。幾つかの場合には、そのような医薬組成物は、1以上の細菌種および/または株を含む細菌共生体を含む。幾つかの場合には、そのような1以上の細菌株はラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)および/またはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の任意の1以上を含みうる。そのような医薬組成物の製造は幾つかの工程を含みうる。そのような工程は、増殖培地の調製、接種および培養、細菌細胞の回収、ならびに医薬組成物において使用される調製細菌株バッチを一緒にすることによる細菌共生体の合体を含みうる。幾つかの場合には、そのような製造方法はヒト対象における臨床使用のための医薬組成物の製造に使用されうる。
【0048】
細菌共生体を製造するための本開示の方法は培地調製を含むことが可能であり、これは、種々の乾燥培地成分、例えば塩、ビタミン、抗酸化剤などをUSP等級の注射用水に溶解することを含みうる。完全溶解後、それぞれの細菌細胞の最適な増殖が確保されうるよう、培地のpHを調整することが可能である。ついでpH調整培地を生物安全性(バイオセイフティー)キャビネットに移し、滅菌することが可能である。種々の場合に、本明細書における微生物共生体は1以上の嫌気性細菌株を含みうる。そのような場合、嫌気性細菌の接種の前に、培地を、NCO(約90:5:5)の雰囲気を含む嫌気性チャンバーに移して、還元することが可能である。
【0049】
本明細書における製造方法は、細菌株/種の出発培養を作製することを含みうる。そのような方法は、濾過培地を含有する各フラスコからの特定の体積を用いることにより、医薬組成物に含まれるべき細菌株の出発培養を作製し、そのような体積を、滅菌済み予め還元されたスクリューキャップチューブに移し、ついで、それぞれの細菌細胞を含有する細胞バンクからのストック溶液を使用して、解凍細菌細胞を移すことを含みうる。嫌気性細菌細胞を使用する場合、出発培養を嫌気性条件下で約37℃で約12~16時間培養することが可能である。特定のインキュベーション時間の後、出発培養を増殖(濁度)に関して視覚的に検査し、細菌増殖が確認されたら、更なる細胞増殖のために追加的なより大きな培養フラスコ内に移すことが可能である。約12、18、24、30時間のインキュベーションの後、細胞培地の細胞密度および吸光度を測定することが可能である。そのような測定は、特定されたOD600の範囲内に吸光度が収まることを確認するために、600ナノメートルで細胞懸濁液の吸光度を測定することにより行われうる。そのようなOD600の値または範囲は細菌株に特異的でありうる。例えば、表1に示されている各細菌株は、特異的なOD600値または範囲を有しうる。そのようなOD600の範囲は約0.5~約1.5、約0.7~約1.3、または約0.9~約1.1でありうる。OD600測定の後、遠心分離のような種々の技術を用いて、細菌細胞を回収することが可能である。
【0050】
幾つかの場合には、細胞の回収のために、適切な遠心分離パラメーターが選択されうる。例えば、幾つかの場合には、表1に挙げられている細菌株のいずれかを、細胞が上清から分離されうることを保証する、約5,000~10,000×gで約4℃で約20~60分間の回転を含むパラメーターを使用して回収することが可能である。遠心分離後、得られた細胞ペレットを嫌気性環境(例えば、嫌気性チャンバー)内に戻し、清澄化培養上清を、例えば、滅菌血清ピペットを使用して、そのようなペレットから完全に除去することが可能である。ついで、細胞ペレットを、濃縮された予め還元された凍結保護物質溶液に再懸濁させることにより混合することが可能である。幾つかの場合には、そのような懸濁液は、増殖中の細胞懸濁液の約20~40倍の濃度であることが可能であり、予め還元された凍結保護物質溶液は約20% v/v グリセロールまたは別の凍結保護物質を含みうる。ついで濃縮細胞懸濁液を、アリコート、例えば予め還元され予めラベル付けされた2mLスクリューキャップ クライオバイアルに分注し、約-70℃以下の予めラベル付けされた保管ボックスに移すことが可能である。そのような細菌細胞を医薬組成物において使用する可能性がある場合には、製造および約-70℃以下での初期貯蔵の約3日後、仕様試験が行われうる。
【0051】
本明細書は、医薬組成物において使用される1以上の種および/または株の細胞集団または細胞バッチの製造方法を提供する。種々の場合には、表1に示されている細菌株のいずれかを、本明細書に記載されている製造方法において使用することが可能である。特定の場合には、株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)および/またはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)(表2)の1以上を、医薬組成物において使用される細胞バッチを製造するために使用することが可能である。そのような場合には、本開示はそのような細胞バッチの製造方法を提供する。
【0052】
本明細書は、本明細書に記載されている医薬組成物において使用されうるラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞バッチの製造方法を提供する。そのような方法は、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞培地を調製することを含みうる。そのような培地はvMRS培地またはブイヨンvMRSブロスでありうる。幾つかの場合には、そのような培地はHiMedia vMRSブロスではない。そのような培地は、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)株に特異的であり、vMRS粉末およびリン酸二カリウム(KHPO)を含みうる。そのような場合、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞を増殖および培養するための培地は約250~300gのvMRS粉末およびリン酸二カリウム(KHPO)を含みうる。特定の場合には、そのような培地は約273gのvMRS粉末および約12.5gのリン酸二カリウム(KHPO)および約4.9Lの水を含みうる。そのようなvMRS培地のpHは、例えば5M 塩酸塩溶液または氷酢酸を使用して、約6.5±0.1に調整されうる。ついで、培地を濾過し、嫌気性状態へと還元し、例えば、ストック ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)溶液を含有する出発培養チューブに移し、37℃で約16~20時間インキュベートすることが可能である。インキュベーションおよび増殖の後、600nmでの細胞培養の吸光度を測定し、3回重複して測定して、実施細胞懸濁液の吸光度が約0.8~約1.6、好ましくは約1.0~1.4の範囲内にあることを確認することが可能である。培養フラスコの内容物を遠心分離し、残留細胞ペレットを、抗酸化剤および凍結保護物質(例えば、20% v/v グリセロール)を含有する25mLの無菌PBSに再懸濁させ、ついで一緒にして、均質な細胞懸濁液を得ることが可能である。ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞懸濁液は、最終的な細胞濃度を得るために、例えば、クライオバイアル内に分注されうる。そのような最終的なラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の細胞濃度は単位用量当たり約5×10~約1010のラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)生細胞でありうる。そのような単位用量は約1mLの体積を有しうる。そのような場合、単位用量は約5×10のラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)生細胞を含みうる。
【0053】
更に、本明細書は、本明細書に記載されている医薬組成物において使用されうるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞バッチの製造方法を提供する。そのような方法は、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞培地を調製することを含みうる。幾つかの場合には、そのようなアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)培地は改変NAGT培地でありうる。そのような改変NAGT培地はソイトーンもしくはN-アセチルグルコサミン(NAG)、またはソイトーンとNAGとの両方を含みうる。幾つかの場合には、そのような改変NAGT培地はマグネシウム、カルシウム、グルコースまたはそれらの組合せを含有しないことが可能である。幾つかの場合には、改変NAGT培地は細胞増殖の改善をもたらしうる。そのような改善された細胞増殖は、非改変NAGT培地における細胞増殖と比較して、約30%、35%、40%、45%または50%高くなりうる。
【0054】
したがって、幾つかの場合には、そのようなNAGT培地はアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)株(DSM 33213)に特異的であることが可能であり、以下の成分のうちの任意の1以上を含みうる:ソイトーン、エンドウマメペプトン、酵母エキス、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸マグネシウム(例えば、MgSO×7HO)、塩化カルシウム(CaCl)、グルコース、N-アセチルグルコサミン、L-スレオニンおよび/またはL-システイン。そのような場合には、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞を増殖および培養するための約5Lの体積の改変NAGT培地は、約75g~100gのSOLABIAエンドウマメペプトン、約75g~約85gのDifco(商標)セレクト・ソイトーン(Select Soytone)、約10g~約15gのBacto(商標)酵母エキス、約2g~約8gの炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、約10g~約15gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、約0.5g~約5gの塩化ナトリウム(NaCl)、約0.5g~約5gの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、約0.5g~約5gの塩化カルシウム(CaCl)、約20g~約25gのグルコース(デキストロース)、約25g~約30gのN-アセチルグルコサミン、約15g~約25gのL-スレオニンおよび/または約2g~約8gのL-システイン。一例においては、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞を増殖および培養するための約5Lの体積の改変NAGT培地は約82.5gのSOLABIAエンドウマメペプトン、82.5gのDifco(商標)セレクト・ソイトーン、約12.5gのBacto(商標)酵母エキス、約5gの炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、約12.5gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、約1.5gの塩化ナトリウム(NaCl)、約0.5gの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、約0.5gの塩化カルシウム(CaCl)、約22.6gのグルコース(デキストロース)、約27.7gのN-アセチルグルコサミン、約20gのL-スレオニンおよび/または約5gのL-システインを含みうる。
【0055】
そのようなNAGT培地のpHは、例えば、5M 塩酸塩溶液を使用して、例えば、約6.5±0.1に調整されうる。そのようなNAGT培地のpHも約7に調整されうる。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細菌細胞を、そのようなNAGT増殖培地を含有する調製済みバイアル内に添加することが可能である。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)株に特異的でありうる期間のインキュベーションの後、約0.5~約1.2、好ましくは約0.7~1.1の吸光度値が得られるように、600nmにおける細胞培養の吸光度を測定し、記録することが可能である。ついで培養フラスコの内容物を遠心分離し、上清を除去し、残留細胞ペレットを、抗酸化剤および凍結保護物質、例えば20% v/v グリセロールを含有する無菌PBSに再懸濁させることが可能である。単位用量当たり約5×10~約1010のアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)生細胞の最終的なアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞濃度が得られるよう、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞懸濁液をクライオバイアルに分注することが可能である。そのような単位用量は約1mLの体積を有しうる。そのような場合には、単位用量は約5×10のアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)生細胞を含みうる。
【0056】
更に、本明細書は、本明細書に記載されている医薬組成物の細菌共生体において使用されうるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞バッチの製造方法を提供する。そのような方法は、完全ビタミンミックス溶液(例えば、YFAPビタミンミックス)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞培地を調製することを含みうる。YFAPビタミンミックスはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)株に特異的であることが可能であり、ビオチン、コバラミン、p-アミノ安息香酸、葉酸、ピリドキサミン、チアミンおよび/またはリボフラビンの任意の1以上を含みうる。そのような場合、1Lの体積のYFAPビタミンミックスは約10mgのビオチン、約10mgのコバラミン、約30mgのp-アミノ安息香酸、約50mgの葉酸、約150mgのピリドキサミン、約50mgのチアミンおよび約50mgのリボフラビンを含みうる。全ての培地成分を溶解して、固形物および沈殿物を含有しない透明溶液を得ることが可能である。後記のとおり、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培地における使用のために、YFAPビタミンミックス培地を濾過し、滅菌することが可能である。
【0057】
そのようなフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培地は、BBL(商標)フィトンペプトン、SOLABIAエンドウマメペプトン、Difco(商標)セレクト・ソイトーン、Bacto(商標)酵母エキス、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、グルコース(デキストロース)、プロピオン酸ナトリウム、L-システインおよび/またはYFAPビタミンミックス溶液(例えば、前記のとおりに調製されるもの)の任意の1以上を含むように調製されうる。そのような場合、約5Lの体積のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培地は約75g~100gのSOLABIAエンドウマメペプトン、約45g~約55gのBBL(商標)フィトンペプトン、45g~約55gのDifco(商標)セレクト・ソイトーン、約20g~約30gのBacto(商標)酵母エキス、約2g~約8gの炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、約10g~約15gの二塩基性カリウムリン酸塩(KHPO)、約2g~約8gの塩化ナトリウム、約0.5g~約2gの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、約20g~約30gの酢酸ナトリウム(NaOAc)、約40g~約60gのグルコース(デキストロース)、約2g~約8gのプロピオン酸ナトリウム、約2g~約8gのL-システイン、および約0.5~約3mLのYFAPビタミンミックス溶液(例えば、前記のとおりに調製されたもの)を含む。したがって、一例においては、約5Lの体積のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培地は約100gのSOLABIAエンドウマメペプトン、50gのBBL(商標)フィトンペプトン、約50gのDifco(商標)セレクト・ソイトーン、約25gのBacto(商標)酵母エキス、約5gの炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、約12.5gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、約5gの塩化ナトリウム、約1gの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、約25gの酢酸ナトリウム(NaOAc)、約50gのグルコース(デキストロース)、約5gのプロピオン酸ナトリウム、約5gのL-システインおよび約1mLのYFAPビタミンミックス溶液(例えば、前記のとおりに調製されたもの)を含みうる。
【0058】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培地YFAP-NUは、エンドウマメペプトン、NuCel(登録商標)783酵母エキス、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、酢酸ナトリウム(NaOAc)、グルコース(デキストロース)、L-システインおよび/またはコバラミンの任意の1以上を含むように調製されることも可能である。そのような場合には、約5Lの体積のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)培地は約75g~100gのエンドウマメペプトン、約50gのNuCel(登録商標)783酵母エキス、5gの炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、約12.5gの二塩基性リン酸カリウム(KHPO)、約5gの塩化ナトリウム(NaCl)、約1gの硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)、約25gの酢酸ナトリウム(NaOAc)、約50gのグルコース(デキストロース)、約5gのL-システインおよび約5gのコバラミンを含みうる。
【0059】
そのような細胞培地のpHは、例えば、氷酢酸を使用して、約6.5±0.1に調整されうる。そのようなpHは、使用される細菌株に応じて、約6.2~約6.8で変動しうる。幾つかの場合には、細胞培地のpHは調整されなくてもよい。そのようなpHは約4.5~約7.5で変動しうる。幾つかの実施形態においては、そのような培地のpHは約5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4または7.5でありうる。嫌気性状態への還元の後、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の出発培養は、特定の量のストックフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)溶液、例えば約500μLの細胞バンクストック溶液を、還元培地を含有する出発培養チューブに加え、ついで37℃で約12~16時間インキュベートすることにより調製されうる。出発培養の増殖の後(例えば、更に約12~24時間のインキュベーションの後)、600nmにおける細胞培養の吸光度を測定し、3回重複して測定して、吸光度が特定の範囲内にあることを確認する。そのような吸光度の範囲は約1.2~約2.0、好ましくは約1.4~約1.8でありうる。ついで培養フラスコを遠心分離し、上清を除去し、残留細胞ペレットを無菌PBSに再懸濁させて、均質な溶液を得ることが可能である。幾つかの場合には、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞懸濁液をクライオバイアル(例えば、2mLクライオバイアル)に分注して、最終的なフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞濃度を単位用量当たり約5×10~約1010のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)生細胞とすることが可能である。そのような単位用量は約1mLの体積を有しうる。そのような場合、そのような単位用量は約5×10のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞を含みうる。
【0060】
本開示はまた、医薬組成物において使用される細菌共生体に含まれるべき株の、1以上の細胞バッチを構築することを含む方法を提供する。例えば、幾つかの場合には、そのような方法は、表1の1以上の細菌株の細胞集団を構築することを含む。そのような場合、株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の任意の1以上のために製造された細胞バッチを一緒にして、医薬組成物において使用される細菌共生体を形成されることが可能である。
【0061】
そのような方法は、細菌株の各細胞集団における代謝活性細胞の量を決定することを含みうる。医薬組成物の細菌共生体が3つの細菌株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)を含む又はそれらからなる場合、調製された細胞バッチのそれぞれにおける代謝活性細菌細胞の数が決定されうる。そのような測定は、任意の適切な方法、例えば、本明細書に記載されている方法を使用して行われうる。そのような測定から得られた情報を使用して、細菌株[例えば、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)および/またはフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)]の所与バッチから調製されうる単位用量の量を決定することが可能である。例えば、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)バッチから調製されうる単位用量の量は以下のとおりに決定されうる。ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)バッチからの潜在的用量数=((ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)平均効力(CFU/mL)×(ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)バッチ体積(mL)))/(4×10CFU/用量)。
【0062】
したがって、幾つかの実施形態においては、本明細書における医薬組成物の細菌共生体は細菌種または株当たり約5×10CFUを含みうる。各株から生じうる潜在的単位用量数が計算されたら、それぞれの株の細胞を含有するそれぞれのバイアルを冷凍庫から取り出し、アンティチェンバー(antechamber)内で予め還元させた後、先に進めることが可能である。還元および解凍の後、各株の細胞懸濁液体積の計算量を1Lのガラスボトルに移し、PBSのようなバッファーを使用して体積を増加させて、計算細胞濃度/ミリリットルとすることが可能である。幾つかの場合には、そのような計算濃度は約5×10CFU/細菌種/mL医薬品組成物でありうる。得られた均質懸濁液を、クライオバイアルを使用して単位用量に分注し、対象への投与のような更なる使用まで-80℃で貯蔵することが可能である。
【0063】
本明細書において提供される細菌共生体の製造方法は、それぞれの組成物における細菌株の細胞が生存可能であり、正しい株に対応することを保証するために、品質管理を行うことを更に含みうる。そのような品質管理方法においては、種々のパラメーター、試験方法および仕様が各株バッチに関して評価されうる。そのような評価は対象への医薬組成物の投与の前に行われうる。例示的な品質管理パラメーターには、(i)細菌株の濃度、および(ii)コロニー増殖の目視検査による形態学的特徴が含まれうる。例えば、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞コロニーの形態学的特徴には、環状、縁全体、平坦、小ないし中程度のサイズ、クリーム色ないし黄褐色が含まれうる。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞コロニーの形態学的特徴には、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の場合、環状、縁全体、隆起、点状サイズ、不透明ないし半透明が含まれうる。そしてラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞コロニーの形態学的特徴には、環状、縁全体、隆起、小ないし中程度、白色ないしクリーム色が含まれうる。
【0064】
本明細書は、医薬組成物の貯蔵および/または輸送を可能にするように設計され製造されうる医薬組成物を提供する。幾つかの場合には、細菌共生体を含む本明細書における医薬組成物は、医薬組成物における細菌細胞の生存率が貯蔵および/または輸送によって全く又は最小限でしか影響を受けないように設計されうる。そのような場合、医薬組成物における細菌細胞の少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または99%の生存率が貯蔵および/または輸送中に維持される。
【0065】
幾つかの場合には、本明細書における医薬組成物は、細菌細胞の生存性を維持するために、約-70℃または-80℃の低温での貯蔵を可能にする凍結保護物質を含む。そのような場合、医薬組成物は凍結保護物質として約20% v/v のグリセロールを含みうる。本明細書における医薬組成物は、貯蔵用または輸送用バイアル内の嫌気性環境を維持しうる抗酸化剤であって、活性酸素種から細菌細胞を保護しうる抗酸化剤を更に含みうる。
【0066】
一例においては、本明細書における医薬組成物において、生きた栄養性細菌は、それらの生存性を維持するために、20% v/v グリセロールと0.1% w/w システインとを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)中で凍結貯蔵されうる。そのような場合、生細菌は、表1に示されている株の任意の1以上に属しうる。
【0067】
本開示は、本明細書に記載されている医薬組成物と組合せて使用されうる容器およびキットを提供する。本開示は更に、該医薬組成物を含むそのような容器およびキットを使用するように使用者(例えば、使用する人たち)に指示しうる説明を提供する。
【0068】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は容器内に存在する。容器は、本開示の医薬組成物を培養(増殖)、貯蔵、輸送、分注(アリコート化)および/または投与するために使用されうる。例えば、そのような容器は、医薬組成物を対象に投与するために使用されうる。一例においては、容器はクライオバイアルであり、ヒト対象に医薬組成物を投与するために使用されうる。本明細書に記載されている容器はまた、細菌集団、例えば1以上の嫌気性細菌細胞を含む集団の増殖、輸送および/または貯蔵(例えば、冷却または凍結貯蔵)に適した条件を提供しうる。そのような嫌気性細菌細胞には、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)および/またはラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞の任意の1以上が含まれうる。そのような場合、容器は、細菌細胞の生存性を維持するために、医薬組成物の増殖、輸送および/または貯蔵中に特定の酸素含量または濃度を提供するために使用されうる。幾つかの場合には、本明細書における容器は医薬組成物における細菌細胞の少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または99%の生存率を維持しうる。幾つかの場合には、容器は細菌細胞の約95%の生存率を少なくとも約1週間、2週間、4週間、8週間または12週間維持しうる。容器は更に、対象へのそのような医薬組成物の投与のための適切な体積、量および投与スケジュールを提供するために使用されうる。そのような場合、容器またはそのような容器を含むキットはヒト対象による自己投与のために設計されうる。そのような自己投与のための説明が使用説明として提供可能であり、本明細書に記載されているキットの一部でありうる。種々の場合において、そのような説明は書面による説明もしくは口頭による説明またはそれらの組合せでありうる。
【0069】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は容器内に存在する。容器は2mLのポリプロピレン製スクリューキャップバイアルを含みうる。バイアルは単一用量(単回投与)バイアルまたは複数用量バイアルでありうる。幾つかの場合には、容器はまた、環状オレフィン共重合体(COC)、環状オレフィン重合体(COP)、ポリプロピレン、ポリエチレン(HDPE)、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)ベースの材料、ガラス、プラスチックチューブ、ジャー、アルミニウムチューブ、ディスペンサーチューブまたはそれらの任意の組合せを含みうる。バイアルの体積は1/50、1/10、1/5、1/3、1/2、5/8、1、2、3、4、8、11、13、16、20、30、40、50 DRAMでありうる。バイアルの体積はまた、0.01ml、0.05ml、0.1ml、0.2ml、0.3ml、0.4ml、0.5ml、0.6ml、0.7ml、0.8ml、0.9ml、1ml、1.1ml、1.2ml、1.3ml、1.4ml、1.5ml、1.6ml、1.7ml、1.8ml、1.9ml、2ml、2.1ml、2.2ml、2.3ml、2.4ml、2.5ml、2.6ml、2.7ml、2.8ml、2.9ml、3ml、3.1ml、3.2ml、3.3ml、3.4ml、3.5ml、3.6ml、3.7ml、3.8ml、3.9ml、4ml、4.1ml、4.2ml、4.3ml、4.4ml、4.5ml、4.6ml、4.7ml、4.8ml、4.9ml、5ml、5.1ml、5.2ml、5.3ml、5.4ml、5.5ml、5.6ml、5.7ml、5.8ml、5.9ml、6ml、6.1ml、6.2ml、6.3ml、6.4ml、6.5ml、6.6ml、6.7ml、6.8ml、6.9ml、7ml、7.1ml、7.2ml、7.3ml、7.4ml、7.5ml、7.6ml、7.7ml、7.8ml、7.9ml、8ml、8.1ml、8.2ml、8.3ml、8.4ml、8.5ml、8.6ml、8.7ml、8.8ml、8.9ml、9ml、9.1ml、9.2ml、9.3ml、9.4ml、9.5ml、9.6ml、9.7ml、9.8ml、9.9mlまたは10mlでありうる。バイアルの体積はまた、0.01~0.1ml、0.11~1ml、1.1~1.11、1.11~1.2、1.21~1.3、1.31~1.4、1.41~1.5、1.51~1.6、1.61~1.7、1.71~1.8、1.81~1.9、1.91~2、2.01~2.1、2.11~2.2、2.21~2.3、2.31~2.4、2.41~2.5、2.51~2.6、2.61~2.7、2.71~2.8、2.81~2.9、2.91~3、3.01~3.1、3.11~3.2、3.21~3.3、3.31~3.4、3.41~3.5、3.51~3.6、3.61~3.7、3.71~3.8、3.81~3.9、3.91~4、4.01~4.1、4.11~4.2、4.21~4.3、4.31~4.4、4.41~4.5、4.51~4.6、4.61~4.7、4.71~4.8、4.81~4.9、4.91~5、5.01~5.1、5.11~5.2、5.21~5.3、5.31~5.4、5.41~5.5、5.51~5.6、5.61~5.7、5.71~5.8、5.81~5.9、5.91~6、6.01~6.1、6.11~6.2ml、6.21~6.3ml、6.31~6.4ml、6.41~6.5ml、6.51~6.6ml、6.61~6.7ml、6.71~6.8ml、6.81~6.9ml、6.91~7ml、7.01~7.1ml、7.11~7.2ml、7.21~7.3ml、7.31~7.4ml、7.41~7.5ml、7.51~7.6ml、7.61~7.7ml、7.71~7.8ml、7.81~7.9ml、7.91~8ml、8.01~8.1ml、8.11~8.2ml、8.21~8.3ml、8.31~8.4ml、8.41~8.5ml、8.51~8.6ml、8.61~8.7ml、8.71~8.8ml、8.81~8.9ml、8.91~9ml、9.01~9.1ml、9.11~9.2ml、9.21~9.3ml、9.31~9.4ml、9.41~9.5ml、9.51~9.6ml、9.61~9.7ml、9.71~9.8ml、9.81~9.9mlまたは9.91~10mlでありうる。
【0070】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載されている医薬組成物は凍結乾燥または凍結される。凍結乾燥または凍結された医薬組成物における細菌細胞は-70℃で貯蔵されうる。幾つかの実施形態においては、細菌細胞は10℃、4℃、0℃、-5℃、-10℃、-15℃、-20℃、-25℃、-30℃、-35℃、-40℃、-45℃、-50℃、-55℃、-60℃、-65℃、-70℃、-75℃または-80℃で貯蔵されうる。その他の場合には、細菌細胞はまた、-80℃~-70℃、-70℃~-60℃、-60℃~-50℃、-50℃~-40℃、-40℃~-30℃、-30℃~-20℃、-20℃~-10℃、-10℃~0℃、または0℃~10℃で貯蔵されうる。幾つかの実施形態においては、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも70%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。幾つかの場合には、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも75%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。他の場合には、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも80%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。幾つかの実施形態においては、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも85%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。他の実施形態においては、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも90%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。また、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも95%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。幾つかの実施形態においては、貯蔵された凍結乾燥または凍結細菌細胞の少なくとも99%は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、24ヶ月、25ヶ月、26ヶ月、27ヶ月、28ヶ月、29ヶ月、30ヶ月、31ヶ月、32ヶ月、33ヶ月、34ヶ月、35ヶ月または36ヶ月後に尚も生存可能でありうる。
【0071】
本開示のキットは、本明細書に記載されている医薬組成物を使用するための種々の成分を提供しうる。そのような成分には、容器、試験サンプル、および/または医薬組成物の(例えば、その生存性、貯蔵培地のpHなどの)分析を行うための装置が含まれうる。したがって、本開示のキットは、扱いやすく正確で信頼しうる、医薬組成物の使用(限定的なものではないが、投薬、投与、貯蔵、輸送を含む)を可能にしうる。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、表2に示されている細菌株の任意の1以上を含む微生物共生体を含む。そのような場合、キットは、表1の少なくとも1つ、少なくとも2つまたは全ての株を含む医薬組成物を含みうる。
【0072】
治療方法
本開示は、疾患の予防および/または治療のための、本明細書に記載されている医薬組成物の使用方法を提供する。そのような疾患には、炎症性疾患、代謝性疾患または自己免疫疾患が含まれうる。そのような疾患は、対象における腸内菌共生バランス失調もしくは腸内菌共生バランス失調関連状態またはアレルギー性I型過敏症の結果でありうる。そのような疾患には、アレルギー性II型過敏症、アレルギー性III型過敏症またはアレルギー性IV型過敏症も含まれうる。そのような腸内菌共生バランス失調は対象の腸内細菌叢の腸内菌共生バランス失調でありうる。幾つかの場合には、炎症性疾患はアレルギーである。他の場合には、炎症性疾患は皮膚炎である。そのようなアレルギーは、アレルギー性小児喘息を含むアレルギー性喘息および食物アレルギーでありうる。そのような代謝性疾患には、肥満、糖尿病またはメタボリックシンドロームが含まれうる。
【0073】
したがって、幾つかの場合には、本明細書に記載されている医薬組成物は、アレルギーを有しうる又はアレルギーを有する疑いのある対象への投与のために製剤化されうる。そのような対象は、例えば2以上のアレルゲンに対して、多重感作された状態でありうる。そのような対象は哺乳動物でありうる。幾つかの場合には、対象はヒトである。そのような医薬組成物は、齧歯動物またはヒトのような対象に投与される場合、炎症性疾患の予防および/または治療に有用な抗炎症効果を有しうる。幾つかの場合には、そのような抗炎症効果は、医薬組成物が経口投与された際に誘発されうる。
【0074】
幾つかの場合には、本明細書における医薬組成物を使用して治療される対象はヒトである。ヒト対象は新生児、乳児、幼児、小児、ティーンエイジャーまたは成人でありうる。幾つかの場合には、新生児は約3日齢未満、約1週齢未満、約2週齢未満、約3週齢未満、約4週齢未満、約8週齢未満でありうる。幾つかの場合には、乳児は少なくとも約2月齢、少なくとも約6月齢、少なくとも約12月齢でありうる。幾つかの場合には、医薬組成物は、約2歳~約18歳、少なくとも約18歳でありうる対象を治療するために使用されうる。対象は2歳~18歳であることが可能であり、または少なくとも18歳である。対象は約2歳~約18歳であることが可能であり、または少なくとも約18(例えば、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90)歳である。幾つかの場合には、対象は約2歳~約18歳または約19歳でありうる。対象は約2歳~約18歳または約19歳でありうる。対象は約2歳~約18歳または約20歳でありうる。対象は約2歳~約18歳または約20歳でありうる。対象は約2歳~約18歳または約25歳でありうる。対象は約2歳~約18歳または約25歳でありうる。対象は約2歳~約18歳または約30歳以上でありうる。対象は約2歳~約18歳または約30歳でありうる。幾つかの実施形態においては、対象は約18歳~約40歳、約12歳~約17歳および/または約2歳~約11歳である。本明細書における医薬組成物は、投与のために、ミルク、母乳、人工乳(乳児授乳用)または食物と混合されうる。
【0075】
本明細書における医薬組成物は、投与スケジュールに応じて種々の期間にわたって投与されうる。治療期間は対象および個体によって異なる可能性があり、本明細書に記載されている種々の要因、例えば病態、年齢などに左右されうる。幾つかの場合には、対象は、1日間~少なくとも約1週間、約1週間~約1ヶ月間、または約1ヶ月~約1年間にわたって治療されうる。そのような場合、対象は約1ヶ月間、2ヶ月間または3ヶ月間にわたって治療されうる。幾つかの場合には、治療は、連続した日、連続した週および/または連続した月に行われうる。幾つかの実施形態においては、医薬組成物は、連続した約28、29または30日間にわたって投与される。
【0076】
本明細書における治療方法は、本開示の医薬組成物を1日1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回または12回投与することを含みうる。種々の場合において、本開示の医薬組成物を1日2回投与する。そのような1日2回の投与は朝および夜に行われうる。そのような場合、与えられた日の1回目の投与と2回目の投与との間に約8、12または16時間の間隔が存在しうる。
【0077】
本明細書における種々の実施形態においては、アレルギーのような炎症性疾患の予防および/または治療のためにヒト対象に投与される医薬組成物は、表1に挙げられている細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)および/またはラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の少なくとも1つを含む。そのような医薬組成物は、2~11歳、12~17歳および18~40歳の群の対象(例えば、約10、20または40名の対象)に、1日2回、連続して約28日間投与されうる。そのような場合、そのような医薬組成物は液体懸濁液として1mLの単位用量で投与されうる。そのような単位用量は、投与のために、低温または室温の食物および飲料に添加されうる。
【0078】
本明細書には本発明の種々の実施形態が示され記載されているが、そのような実施形態は単なる例示として記載されているに過ぎないことが当業者に明らかであろう。多数の変形、変更および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に見出されうる。本明細書に記載されている本発明の実施形態に対する種々の代替的実施形態が使用されうると理解されるべきである。
【0079】
実施例
これらの実施例は例示目的で記載されているに過ぎず、本出願に記載されている特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。
【0080】
実施例1:細菌株の増殖、分離および特徴付け
本明細書は、ヒトサンプルから分離された細菌株の増殖、分離および特徴付けのための方法を提供する。そのような株は、本明細書に記載されている細菌共生体の一部として使用されうる。
【0081】
1.細菌の増殖
一般に、本明細書に記載されている細菌を増殖させるための手順は、純粋嫌気性細菌株および通性嫌気性細菌株を培養するために使用されうる。本実施例における細菌株をヒト糞便サンプルから得、選択培地において増殖させた。継代培養に際して、コロニーを液体培地に移し、ついでPCRおよび配列決定のために調製した。コロニーをグリセロールストックとしても貯蔵した。
【0082】
まず、ヒト糞便サンプルを嫌気性輸送培地(Anaerobic Systems As-915)において、または嫌気性雰囲気生成系(例えば、AnaeroPouch Thermo Fisher R686001)を含むプラスチックバッグ内に密封された糞便収集バイアルにおいて収集した。嫌気性菌株の生存性が確保されるように、移行時間および潜在的酸素曝露を最小化するために、全てのサンプルを直ちに嫌気性チャンバー内に移した。
【0083】
0.9mLのPBS+Cys(1×PBS+0.1% w/w L-システイン)を13本のチューブ(1.5mLの体積を有する)に分注することにより、段階希釈チューブを調製した。使い捨てスパチュラまたはループを使用して、20~30mgのサンプルを、0.9mLのPBS+Cysを含有する第1の1.5mLチューブ内に移した。得られた混合物を約30秒間ボルテックスし、得られた均質な溶液0.1mLを、0.9mLのPBS+Cysを含有する第2の1.5mLチューブ内に移した。ついで、13本のチューブ全てがサンプルの段階希釈物を含有する(例えば、バイアル1~13における1~10-12希釈)まで、この工程を繰り返した。
【0084】
使い捨てホッケースティックスプレッダーを使用して、10-5~10-12の希釈物(バイアル6~13)を含有するサンプルチューブからの約0.1mLを加えて、選択寒天増殖培地を含有する別々の寒天プレートに加えた。ついで寒天プレートをパラフィルムで密封して蒸発を防ぎ、37℃で72時間、インキュベーター内に配置した。コロニー[例えば、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)など]の特異的形態学的特徴に適合するコロニーを特定し、分離のための新たな予め還元された寒天プレート上に配置した。寒天プレートをパラフィルムで密封し、37℃で更に72時間、嫌気性インキュベーター内に配置した。
【0085】
特異的に分離されたコロニーを培養プレートから選び、コロニーを1mLの予め還元された液体ブロスに再懸濁させることにより、分離コロニーを液体培地内に移した。選択された生物の陽性対照および陰性対照を並行して接種し、それぞれ、増殖を比較し、汚染をモニターする。ついで全ての液体コロニーサンプルを37℃で72時間インキュベートする。
【0086】
陽性対照および陰性対照を使用して、陽性合致ブロス培養物を特定した。PBS中に0.75mLの50% v/v グリセロールを含有する2mLのクライオチューブ内に0.75mLのブロス培養液を移すことにより、陽性合致ブロス培養物のグリセロールストックを調製した。ついで、密封されたクライオチューブサンプルを嫌気性チャンバーから取り出し、-80℃で貯蔵した。後記のとおりに16SベースPCRを使用して、分離体の特定のために、残りのブロス培養サンプルを使用した。
【0087】
2.分離体の特定のための16SベースPCR
ブロス培養サンプルを遠心分離して細胞ペレットを形成させ、生じた上清を注意深く除去して、形成した細胞ペレットを無傷のままにする。ついで、細胞ペレットを0.5~1mLの超純水に再懸濁させた。
【0088】
50μLの最終反応体積のためのPCRマスターミックスを、以下のPCR成分(NEB E5000S)および体積を用いて調製した:10×バッファー(5μL)、10mM dNTP(1μL)、10μM 27Fフォワードプライマー(1μL)、10μM 1492Rリバースプライマー(1μL)、タグポリメラーゼ(0.25μL)および滅菌水(40.25μL)。PCRマスターミックス(48.5μL)および1.5μLの再懸濁細菌細胞を0.2mLのPCRストリップチューブ内に入れ、ボルテックスした後、PCR反応サンプルを以下のサーモサイクラープロトコルに付した(表3)。
【表3】
【0089】
PCR反応の完了時に、サンプルを、GENEWIZまたは同等のベンダーを利用して、サンガー配列決定に付した。
【0090】
3.分離された細菌株の特徴付け
以下の表4は、医薬組成物において使用される細菌共生体を本開示の種々の実施形態において形成しうる株(表2も示されている)アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の短鎖脂肪酸の産生、抗生物質耐性および全ゲノム配列決定分析を示す。
【表4】
【0091】
実施例2:細菌組成物Aの製造
本明細書に記載されている細菌株の収量および増殖速度を増加させるように製造条件を調製した。特に、細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)に関して、収量および増殖速度を増加させるための製造条件を得た。本明細書における図1は、これらの株を使用して組成物Aを製造するための製造工程を要約した概略フローチャートを示す。
【0092】
1.培地の調製
本実施例の製造工程においては、動物非含有培地を使用した。細菌バッチを得るために、まず、株のそれぞれに関して、5Lのブロス培地を調製した。USP等級の水中での15分間の激しい攪拌により培地成分を完全に溶解した後、培地のpHを塩酸で調整した。ついで、pH調整済み培地を生物安全性(バイオセイフティー)キャビネットに移し、0.2μm真空フィルターユニットを使用して(例えば、1リットルの部分を5回使用して)、濾過滅菌した。濾過滅菌した増殖培地を、NCO(90:5:5)の雰囲気を含む嫌気性チャンバーに直ちに移し、接種前に、還元のために、通気キャップを付けて12~18時間貯蔵した。
【0093】
2.接種および培養
嫌気性条件下での12~18時間の培地の還元の後、それぞれの1Lフィルターフラスコからの10mLを、予め還元された滅菌済み15mLスクリューキャップチューブに移し、「滅菌対照#5」と表示した。追加的な40mLの滅菌培地を、「出発培養Xの2」と表示された2つの別々の50mLファルコン(Falcon)チューブに移した。1つの2mLマスター細胞バンク(MCB)クライオバイアルを-70℃の貯蔵から取り出し、バイアルの外側を70% EtOHで洗浄し、リントフリー(lint-free)ワイプで拭いて乾燥させた。ついでMCBアリコートを嫌気性チャンバー内に移し、チューブ・ラック内に配置して5~10分間解凍した。完全に解凍したら、滅菌済み1mL濾過ピペットチップを使用して、解凍した1mLのMCBアリコート500μLを2つの40mLの出発培養のそれぞれに移した。接種した出発培養チューブおよび滅菌対照のキャップをしっかりと締め、対照および出発培養を嫌気性条件下で約37℃で12~16時間培養した。
【0094】
12~16時間後、出発培養および滅菌対照をインキュベーターから取り出し、増殖(例えば、濁度)に関して視覚的に検査した。また、先に進める前に、滅菌対照において、視認可能な増殖または濁度の欠如を確認した。確認されたら、滅菌済み10mL血清ピペットチップを使用して、予め還元された濾過滅菌済み培地を含有する5つの予め加温された1Lフラスコのそれぞれに10mLの出発培養を注意深く移した。ついで培養物を嫌気性条件下で37℃で12~16時間インキュベートした。インキュベーション後、設定されたパラメーター内での増殖を確認するために、吸光分光法(Epoch 2 Plate Reader,Biotek)を用いて、培養物の濁度を定量した。培養物の吸光度が目標OD600の範囲内にあることが確認されたら、細胞を遠心分離により回収した。
【0095】
3.回収
細胞採取の12~18時間前に、スクリューキャップシールを有する5本の滅菌済み1L遠心分離ボトル(Beckman Coulter)を嫌気性チャンバー内に配置して、使用前にボトルを還元した。培養物を増殖させ、培養物が目標OD600範囲内にあることを確認した後、培養物を滅菌済み1L遠心分離ボトル内に移した。遠心分離ボトルのキャップを、ガス交換を防ぐためにしっかり密閉し、6×1Lローターを含む予冷床遠心分離機にボトルを移した。細胞を8,000×g、4℃で30分間ペレット化した。遠心分離後、細胞ペレットを嫌気性チャンバー内に戻し、滅菌済み血清ピペットを使用して、清澄化培養上清をペレットから完全に除去した。ついで、予め還元された凍結保護物質溶液における40倍濃度での再懸濁により、細胞ペレットを一緒にした。ついで、濃縮された細胞懸濁液を、予め還元され予めラベル付けされた2mLスクリューキャップクライオバイアルにおける1mLアリコートへと分注し、予めラベル付けされた-70℃の貯蔵ボックスに直ちに移した。製造および-70℃での初期貯蔵の3日後、原薬株を仕様試験に付した。
【0096】
医薬組成物において使用されるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞に関する製造手順を以下に記載する。
【0097】
A.医薬組成物において使用されるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の作製
培地の調製のために、5Lビーカーに4.9Lの水(注射用)を加えた後、Difco(商標)セレクト・ソイトーン(82.5±0.82g)、Bacto(商標)酵母エキス(12.5±0.12g)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(5±0.05g)、リン酸水素二カリウム(KHPO)(12.5±0.12g)、塩化ナトリウム(NaCl)(1.5±0.015g)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.5±0.05g)、塩化カルシウム(CaCl)(0.5±0.05g)、グルコース(デキストロース)(22.6±0.22g)、N-アセチルグルコサミン(27.7±0.27g)、L-スレオニン(20±0.2g)およびL-システイン(5±0.05g)を混合下で加えた。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0098】
NAGT培地のpHを6.5±0.1に調整した。ついで培地を真空濾過し、5つの1Lバッチに分けた。培地が完全に還元した後(約12~16時間後)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細菌細胞の出発培養を、45mLの体積の培地を使用して調製した。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細菌細胞(約500μLのストック溶液)を細胞バンクから取り出し、増殖培地を含有する調製済みバイアル内に加えた。ついで細胞懸濁液を加温し、37℃のインキュベーターユニット内で24~60時間インキュベートして、濁った/混濁した懸濁液を得る。ついで600nmでの吸光度を3回の重複実験において測定し記録して、約0.7~1.1の値を得る。
【0099】
ついで、JLA8.1000遠心分離機を使用して、培養フラスコを8000rpm、4℃で30分間遠心分離した。上清を除去した後、残留細胞ペレットを25mLの滅菌済みPBS-GC(元の培養体積の40倍濃度)に再懸濁させ、ついで一緒にして均質溶液を得た。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞懸濁液を2mLクライオバイアル内に分注して、バイアル当たり1×10を超えるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)生細胞の、最終的なアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞濃度を得、更に使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0100】
B.医薬組成物において使用されるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の作製
YFAPビタミンミックス溶液の調製のために、1Lボトルに水(注射用)を充填し、ついでビオチン(10±1mg)、コバラミン(10±1mg)、p-アミノ安息香酸(30±1mg)、葉酸(50±1mg)、ピリドキサミン(150±1mg)、チアミン(50±1mg)およびリボフラビン(50±1mg)を混合下で加えた。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。ついでYFAPビタミンミックス培地を濾過し、滅菌した。
【0101】
培地の調製のために、5Lビーカーに4.9Lの水(注射用)を加えた後、BBL(商標)フィトンペプトン(50±0.5g)、Difco(商標)セレクト・ソイトーン(50±0.5g)、Bacto(商標)酵母エキス(25±0.25g)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(5±0.05g)、二塩基性リン酸カリウム(KHPO)(12.5±0.12g)、塩化ナトリウム(NaCl)(5±0.05g)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(1±0.01g)、酢酸ナトリウム(NaOAc)(25±0.25g)、グルコース(デキストロース)(50±0.25g)、プロピオン酸ナトリウム(5±0.05g)、L-システイン(5±0.05g)およびYFAPビタミンミックス溶液(1mL;前記のとおりに調製)を混合下で加えた。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0102】
ついで、5M 塩酸塩溶液を使用して、YFAP培地のpHを6.5に調整した。ついで培地を濾過し、嫌気性状態への完全な還元のために、暗所で約12~18時間放置した。ある体積の培地を出発培養チューブに移した後、約500μLのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)ストック溶液を出発培養チューブ内に移し、37℃で約12~16時間インキュベートした。出発培養チューブを濁度に関して評価し、5つのアリコートに分け、滅菌済み培地を含有する予め加温された1Lフラスコに加え、ついで37℃で12~16時間インキュベートした。
【0103】
インキュベーション後、600nmでの吸光度を測定し、3回の重複実験において繰り返して、吸光度が1.4~1.8の吸光度の範囲内にあることを確認した。JLA8.1000遠心分離機を使用して、培養フラスコを8000rpm、4℃で30分間遠心分離した。上清を除去した後、残留細胞ペレットを25mLの滅菌済みPBS-GC(元の培養体積の40倍濃度)に再懸濁させ、ついで一緒にして均質溶液を得た。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞懸濁液を2mLクライオバイアル内に分注して、バイアル当たり1×10を超えるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)生細胞の、最終的なフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞濃度を得、更に使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0104】
C.医薬組成物において使用されるラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞の作製
vMRS培地の調製のために、5Lビーカーに4.9Lの水(注射用)を加えた後、273gのvMRS粉末およびリン酸二カリウム(KHPO)(12.5±0.1g)を混合下で加えた。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0105】
ついでvMRS培地のpHをNHOHまたは酢酸で6.5に調整した。ついで、0.2μmの真空フィルターユニットを使用して培地を濾過し、嫌気性状態への完全な還元のために、暗所で約12~18時間放置した。ある体積(例えば、45mL)の培地を出発培養チューブに移した後、約500μLのラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)ストック溶液を出発培養チューブ内に移し、37℃で約16~20時間インキュベートした。出発培養チューブを濁度に関して評価し、5つのアリコートに分け、滅菌済み培地を含有する予め加温された1Lフラスコに加え、ついで37℃で16~20時間インキュベートした。
【0106】
インキュベーション後、600nmでの吸光度を測定し、3回の重複実験において繰り返して、吸光度が1.0~1.4の吸光度の範囲内にあることを確認した。JLA8.1000遠心分離機を使用して、培養フラスコを8000rpm、4℃で20分間遠心分離した。上清を除去した後、残留細胞ペレットを25mLの滅菌済みPBS-GC(元の培養体積の40倍濃度)に再懸濁させ、ついで一緒にして均質溶液を得た。ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞懸濁液を1mLクライオバイアル内に分注して、バイアル当たり1×10を超えたラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)生細胞の、最終的なラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞濃度を得、更に使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0107】
D.組成物Aの構築
本明細書に記載されている医薬組成物における細菌共生体として使用可能であり、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)3つの細菌株を調製するために、クリオバイアル内で-80℃で貯蔵された最終的な細胞懸濁液における代謝活性細菌細胞の数を各株に関して測定した。3つの株バッチから得られうる可能な経口用量の最大数は以下のとおりに計算されうる(表5)。
【表5】
【0108】
組成物Aの完全な成分一覧を表6に示す。
【表6】
【0109】
表6に挙げられている株を含有するストックバイアルが解凍されたら(冷凍庫から取り出してから約15~20分後)、各株に関する細胞懸濁液体積の計算量を1Lガラスボトルに移し、1mL当たりの細胞の計算濃度(例えば、本実施例では5×10CFU/細菌種/mL)に達するように、PBS-GCを使用して体積を増加させた。混合された種の薬品の生じた均質懸濁液をクライオバイアル内の1mLの体積に分注し、更に使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0110】
E.組成物Aの品質管理
以下のパラメーター、試験方法および仕様を、表7に記載されているとおり、品質管理の目的で、組成物Aの各バッチに関して評価した。
【表7】
【0111】
好ましくない微生物に関する試験は、標準的なプロトコルを用いて、USP<62>に従い行った。簡潔に説明すると、サンプルを、まず、ダイズカゼイン消化ブロス(SCDA)または他の適切な中和培地に接種することにより富化し、ついで、特定された/好ましくない微生物の存在の決定のために、選択的寒天上にストリークした。
【0112】
サンプル中に存在する微生物の総数の計数を、標準的なプロトコルを用いて、USP<61>に従い行った。そのような微生物の計数は、膜濾過、注入プレーティングまたはスプレッドプレート法のいずれかを用いて行った。
【0113】
実施例3:増殖培地の最適化
本実施例においては、本明細書に記載されている細菌株を培養するための増殖培地組成の最適化を示す。特に、そのような株には、細菌共生体において使用されるアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)が含まれる。
【0114】
1.アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)
N-アセチルグルコサミンスレオニン(NAGT)培地におけるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の増殖を種々のpH値で評価し、それと共に、1つの培地成分を同時に除去して、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の増殖に対するそのような培地成分の効果を評価した。一般的なNAGT培地は6.5のpHを有し、11.9mM 炭酸水素ナトリウムを含有していた。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞を、47.6mM 炭酸水素ナトリウムを含有し7.5のpHを有する改変NAGT培地内で増殖させた場合、増殖の約40%の増加(OD600、により測定された場合;曲線2、図2)が観察された。プレーティング(平板)法を用いることにより生物量(バイオマス)の増加も確認された。グルコース(曲線3、図2)、硫酸マグネシウム(曲線4、図2)または塩化カルシウム(曲線5、図2)の、改変NAGT培地からの除去は、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の増殖における影響をほとんど又は全く示さなかった。
【0115】
図3は、ソイトーンまたはNAGを欠く培地においては細菌増殖を示さないことがそれぞれ増殖曲線2および3により示されているとおり、ソイトーンおよびN-アセチルグルコサミン(NAG)がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の増殖に必要であるらしいことを示している。増殖曲線1は、ソイトーンとNAGとの両方を含有するNAGT培地におけるアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞の強力な増殖を示している。
【0116】
2.フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖に対するYFAP培地における特定の成分の効果を、1つの培地成分を同時に除去することにより評価した。例えば、図4は、完全培地におけるフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖(曲線1)と比較した場合に、酵母エキス[例えば、曲線3は、酵母エキスを欠く培地におけるFP(DSM 33185)の増殖を示している]およびシステイン[例えば、曲線4は、酵母エキスを欠く培地におけるFP(DSM 33185)の増殖を示している]がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖に必要であるらしいことを示している。酢酸ナトリウムの非存在(曲線5)は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖を妨げないようであるが、ソイトーンの非存在(曲線2)は後期対数増殖期および定常期における細胞死を招くようである。
【0117】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖に対するビタミン補足物のタイプの影響も調べた。例えば、図5は、ビタミンの添加が、ビタミン非含有YFAP培地内で3回継代培養されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の収量を増加させたことを示している。ビタミンを含有するYFAP(YFAP+ビタミン)において増殖するフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の最終的なOD600は、チアミンを欠くYFAP培地(チアミン非含有YFAP)、ピロキサミンを欠くYFAP培地(ピロキサミン非含有YFAP)、葉酸を欠くYFAP培地(葉酸非含有YFAP)、コバラミンを欠くYFAP培地(コバラミン非含有YFAP)、PABAを欠くYFAP培地(PABA非含有YFAP)、リボフラビンを欠くYFAP培地(リボフラビン非含有YFAP)、ビタミンを欠くYFAP培地(ビタミン非含有YFAP)またはビオチンを欠くYFAP培地(ビオチン非含有YFAP)において増殖するものより約10%高かった。YFAP+ビタミン培地は、完全ビタミンミックス溶液が添加されたYFAP培地(例えば、YFAPビタミンミックス)を含む。YFAPビタミンは約10mg/Lのビオチン、約10mg/Lのコバラミン、約30mg/Lのp-アミノ安息香酸、約50mg/Lの葉酸、約150mg/Lのピリドキサミン、約50mg/Lのチアミンおよび約50mg/Lのリボフラビンを含む。
【0118】
もう1つの例において、図6は、コバラミンが、ビタミン非含有YFAP培地内で1回継代培養されたフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の最適な増殖のための注目すべき因子であったことを示している。コバラミンを欠くYFAP(YFAPコバラミンなし)において増殖するフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の最終的なOD600は、チアミンを欠くYFAP培地(チアミン非含有YFAP)、ピロキサミンを欠くYFAP培地(ピロキサミン非含有YFAP)、葉酸を欠くYFAP培地(葉酸非含有YFAP)、PABAを欠くYFAP培地(PABA非含有YFAP)、リボフラビンを欠くYFAP培地(リボフラビン非含有YFAP)、ビオチンを欠くYFAP培地(ビオチン非含有YFAP)またはビタミンの添加を伴うYFAP培地(YFAP+ビタミン)において増殖するものより約30%低かった。コバラミンを欠くYFAPの増殖の不利な点は、ビタミンを欠くYFAP(ビタミン非含有YFAP)の場合に類似していた。
【0119】
培地のpHも、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖のための注目すべき要因であることが示された。図7はpH制御の非存在下のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖を示し、図8はpH制御の存在下のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)細胞の増殖を示す。pHを水酸化アンモニウム(NHOH)で6に制御した場合には、酸化還元電位は-460mVに低下し、細菌増殖はOD600=0.5付近で横ばいになった。pHを制御しなかった場合には、酸化還元電位は-400mVに維持され、細菌増殖はOD600=1.1に達した。したがって、pH制御の非存在下の培養はpH制御の存在下の培養より50%以上多くの細菌を生成した。
【0120】
3.ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)
ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)を、一般的には、HiMedia Laboratoriesから入手したvMRSブロス内で増殖させた。しかし、図9は、HiMedia vMRSブロスを使用した場合(曲線1)と比較して、Biokar diagnostics(参照:BK176HA)から入手したブイヨン(Boullion)MRS Vegetalを使用して培地を作製した場合(曲線2)、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞の増殖が約55%増加したことを示している。いずれの理論にも拘束されるものではないが、細胞増殖の観察された改善は、HiMedia vMRSブロスと比較して、ブイヨンMRS Vegetalの植物性ペプトンの量が多い(20g/Lの場合の量の約2倍)ためであると考えられる。
【0121】
実施例4:細菌の大規模増殖(20L)
本明細書に記載されている細菌株の収量および増殖速度を増加させるために、20Lの体積の培養において細菌を増殖させるための製造条件を調製した。特に、細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)に関して、収量および増殖速度を増加させるための製造条件を得た。
【0122】
アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)の大規模増殖
1Lの接種培養および20Lの初代培養のためのNAGT培地を調製するために、培地成分を以下のとおりに秤量する:エンドウマメペプトン(16.5g/L)、酵母エキス(2.5g/L)、デキストロース(45.2g/L)、二塩基性リン酸カリウム(KHPO)(2.5g/L)、塩化ナトリウム(NaCl)(0.3g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.1g/L)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(1g/L)、塩化カルシウム(0.1g/L)、N-アセチルグルコサミン(5.54g/L)、L-スレオニン(4g/L)、L-システイン(1g/L)。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0123】
NAGT培地のpHをNHOHおよび酢酸で6.5±0.1に調整した。ついで、培地を、121℃で20分間オートクレーブすることにより滅菌した。グルコースおよびN-アセチルグルコサミンの供給物を別々に濾過滅菌した。ついで培地成分を一緒に混合した。
【0124】
NAGTを含有する接種フラスコを嫌気性チャンバーに移し、嫌気性雰囲気下で48時間インキュベートすることによりNCO(90:5:5)で脱気した。接種培養をRCBまたはMCB[アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の場合は0.4%]から接種し、嫌気性雰囲気下、攪拌せずに37℃でインキュベートした。培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。a)減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0125】
20Lの培地を、NCO(90:5:5)を使用するガス注入により脱気した。酸化還元値が低下し安定化するまで、6.5L/分で脱気を行った。初代培養を5%(例えば、接種培養の約1L)で接種し、培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養を100rpmで撹拌し、37℃で増殖させた。図10に示されているとおり、90.4gのグルコースおよび110.8gのN-アセチルグルコサミンの供給物を24時間目および48時間目で加えて、細菌培養を25時間目から50時間目の間で指数期に維持させ、50時間目以降に定常期に移行させた。a)増殖の減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を約70時間増殖させたら、培養を停止した。
【0126】
ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)の大規模増殖
1Lの接種培養および150Lの初代培養のためのベジトン(Vegitone)MRS培地を調製するために、培地成分を以下のとおりに秤量する:エンドウマメペプトン(20g/L)、酵母エキス(10g/L)、デキストロース(20g/L)、二塩基性リン酸水素二カリウム(KHPO)(2.5g/L)、クエン酸アンモニウム(0.3g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.1g/L)、酢酸ナトリウム(NaOAc)(5.54g/L)、Tween 80(4g/L)。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0127】
ベジトンMRS培地のpHをNHOHまたは酢酸で6.5±0.1に調整した。ついで、培地を、121℃で20分間オートクレーブすることにより滅菌した。グルコース糖溶液を濾過滅菌した。ついで培地成分を一緒に混合した。
【0128】
ベジトンMRSを含有する接種フラスコを嫌気性チャンバーに移し、嫌気性雰囲気下で48時間インキュベートすることにより、NCOで脱気した。接種培養をRCBまたはMCB[ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の場合は0.4%]から接種し、嫌気性雰囲気下、攪拌せずに37℃でインキュベートした。培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。a)減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0129】
20Lの培地を、NCO(90:5:5)を使用するガス注入により脱気した。酸化還元値が低下し安定化するまで、6.5L/分で脱気を行った。初代培養に1%(例えば、接種培養物の約200mL)で接種し、培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養を100rpmで撹拌し、37℃で増殖させた。図11に示されているとおり、10時間目および11時間目に200gのグルコースを加えて、細菌培養を11時間目から14時間目の間で指数期に維持させ、14時間目以降に定常期に移行させた。a)増殖の減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を16時間増殖させたら、培養を停止した。
【0130】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)の大規模増殖
1Lの接種培養および20Lの初代培養のためのYFAP培地を調製するために、培地成分を以下のとおりに秤量する:エンドウマメペプトン(20g/L)、酵母エキス(5g/L)、デキストロース(10g/L)、二塩基性リン酸水素二カリウム(KHPO)(2.5g/L)、塩化ナトリウム(NaCl)(1g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.2g/L)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(1g/L)、酢酸ナトリウム(NaOAc)(5g/L)、L-システイン(1g/L)。YFAPビタミンミックス溶液を、実施例3に記載されているとおりに調製した。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0131】
YFAP培地のpHをNaOHで6.5±0.1に調整した。ついで、培地を、121℃で20分間オートクレーブすることにより滅菌した。グルコースおよびYFAPビタミンミックス溶液を濾過滅菌した(0.2μmフィルター)。ついで培地成分を一緒に混合した。
【0132】
YFAPを含有する接種フラスコを嫌気性チャンバーに移し、嫌気性雰囲気下で少なくとも16時間インキュベートすることにより、NCOで脱気した。接種培養を、リサーチ細胞バンク(Research Cell Bank)(RCB)またはマスター細胞バンク(Master Cell Bank)(MCB)から接種し[フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)では0.4%]、嫌気性雰囲気下、攪拌せずに37℃でインキュベートした。培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養物を10~16時間増殖させた後、培養を停止した。
【0133】
全ての開放容器操作は、良好な無菌技術を用いて、生物学的安全性キャビネット(BSC)または嫌気性チャンバー(AC)のいずれかにおいて行った。20Lの培地を、NCO(90:5:5)を使用するガス注入により脱気した。酸化還元値が低下し安定化するまで、6.5L/分で脱気を行った。初代培養に1%(例えば、接種培養の約200mL)で接種し、培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養物を100rpmで撹拌し、37℃で増殖させた。図12に示されているとおり、200gのグルコースの供給物を9時間目に加えて、細胞が9時間目から14時間目まで増殖を維持することを可能にした。a)増殖の減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を16時間増殖させたら、培養を停止した。
【0134】
実施例5:細菌の大規模増殖(150L)
本明細書に記載されている細菌株の収量および増殖速度を増加させるために、150Lの体積の培養において細菌を増殖させるための製造条件を調製した。特に、細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)に関して、収量および増殖速度を増加させるための製造条件を得た。
【0135】
アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)の大規模増殖
1Lの接種培養および150Lの初代培養のためのNAGT培地を調製するために、培地成分を以下のとおりに秤量する:エンドウマメペプトン(16.5g/L)、酵母エキス(2.5g/L)、デキストロース(45.2g/L)、二塩基性リン酸カリウム(KHPO)(2.5g/L)、塩化ナトリウム(NaCl)(0.3g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.1g/L)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(1g/L)、塩化カルシウム(0.1g/L)、N-アセチルグルコサミン(5.54g/L)、L-スレオニン(4g/L)、L-システイン(1g/L)。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0136】
NAGT培地のpHをNHOHまたは酢酸で6.5±0.1に調整した。ついで、培地を、121℃で20分間オートクレーブすることにより滅菌した。グルコースを濾過滅菌した(0.2μm)。ついで培地成分を一緒に混合した。
【0137】
NAGTを含有する接種フラスコを嫌気性チャンバーに移し、嫌気性雰囲気下で48時間インキュベートすることによりNCOで脱気した。接種培養をRCBまたはMCBから接種し[アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の場合は0.4%]、嫌気性雰囲気下、攪拌せずに37℃で培養した。培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。a)減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を48時間増殖させたら、培養を停止した。
【0138】
150Lの培地を、NCO(90:5:5)を使用するガス注入により脱気した。酸化還元値が低下し安定化するまで、6.5L/分で脱気を行った。初代培養を0.4%(例えば、接種培養の約600mL)で接種し、培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養を100rpmで撹拌し、37℃で増殖させた。図13に示されているとおり、678gのグルコースおよび831gのN-アセチルグルコサミンの濾過滅菌供給物を19時間目に加えて、20時間目以降に細菌培養物を指数関数的増殖に維持させた。a)増殖の減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0139】
ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)の大規模増殖
1Lの接種培養および150Lの初代培養のためのベジトンMRS培地を調製するために、培地成分を以下のとおりに秤量する:エンドウマメペプトン(20g/L)、酵母エキス(10g/L)、デキストロース(20g/L)、二塩基性リン酸水素二カリウム(KHPO)(2.5g/L)、クエン酸アンモニウム(0.3g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.1g/L)、酢酸ナトリウム(NaOAc)(5.54g/L)、Tween 80(4g/L)。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0140】
ベジトンMRS培地のpHをNHOHまたは酢酸で6.5±0.1に調整した。ついで、培地を、121℃で20分間オートクレーブすることにより滅菌した。グルコースを別々に濾過滅菌した。ついで培地成分を一緒に混合した。
【0141】
ベジトンMRSを含有する接種フラスコを嫌気性チャンバーに移し、嫌気性雰囲気下で48時間インキュベートすることによりNCOで脱気した。接種培養をRCBまたはMCBから接種し[ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)の場合は0.4%]、嫌気性雰囲気下、攪拌せずに37℃で培養した。培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。a)減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0142】
150Lの培地を、NCO(90:5:5)を使用するガス注入により脱気した。酸化還元値が低下し安定化するまで、6.5L/分で脱気を行った。初代培養を0.4%(例えば、接種培養の約600mL)で接種し、培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養を100rpmで撹拌し、37℃で増殖させた。図14に示されているとおり、5250gのグルコースの供給物を10時間目に加え、細菌培養物を10時間目から12時間目まで指数関数的増殖に維持し、12時間目以降に定常増殖に移行させた。a)増殖の減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0143】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)の大規模増殖
1Lの接種培養および150Lの初代培養のためのYFAP培地を調製するために、培地成分を以下のとおりに秤量する:エンドウマメペプトン(20g/L)、酵母エキス(5g/L)、デキストロース(10g/L)、二塩基性リン酸水素二カリウム(KHPO)(2.5g/L)、塩化ナトリウム(NaCl)(1g/L)、硫酸マグネシウム七水和物(MgSO×7HO)(0.2g/L)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)(1g/L)、酢酸ナトリウム(NaOAc)(5g/L)、L-システイン(1g/L)。実施例3に記載されているとおりに、YFAPビタミンミックス溶液を調製した。全ての成分が完全に溶解し、透明になり、固形物および沈殿物がなくなるまで、混合物を撹拌した。
【0144】
YFAP培地のpHをNaOHおよび酢酸で6.5±0.1に調整した。ついで、培地を、121℃で20分間オートクレーブすることにより滅菌した。グルコースおよびYFAPビタミンミックス溶液を濾過滅菌した(0.2μmフィルター)。ついで培地成分を一緒に混合した。
【0145】
YFAPを含有する接種フラスコを嫌気性チャンバーに移し、嫌気性雰囲気下で少なくとも16時間インキュベートすることによりNCOで脱気した。接種培養をRCBまたはMCBから接種し[フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)では0.4%]、嫌気性雰囲気下、攪拌せずに37℃で培養した。培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。a)減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0146】
150Lの培地を、NCO(90:5:5)を使用するガス注入により脱気した。酸化還元値が低下し安定化するまで、6.5L/分で脱気を行った。図15に示されているとおり、初代培養を0.4%(例えば、接種培養の約600mL)で接種し、11時間目から16時間目まで指数関数的増殖を維持し、培養グルコース消費および光学密度を2時間ごとにモニターした。培養を100rpmで撹拌し、37℃で増殖させた。図16に示されているとおり、150gのグルコースの供給物を8時間目に加えて、8時間目以降に細菌培養物が指数関数的増殖を維持することを可能にした。a)増殖の減速の段階が観察されたら、またはb)培養物を24時間増殖させたら、培養を停止した。
【0147】
実施例6:細菌の凍結乾燥
大規模増殖条件で増殖させる細菌のための凍結保護物質溶液を調製するために、サッカロース(80g/L)、トレハロース(13.3g/L)、グルタミン酸ナトリウム(5.3g/L)、L-システイン(1.3g/L)を水と混合し、濾過滅菌(0.2μmフィルター)し、NCO(90:5:5)ガスを使用するガス注入により脱気した。標準校正済み酸化還元プローブで酸化還元状態をモニターした。酸化還元値が低下し安定化して完全な嫌気性状態を示すまで(約60分)、脱気を続けた。完全に還元された凍結保護物質混合物を密封して、使用するまで空気の侵入を防いだ。全てのシャープルズ(Sharples)遠心分離機および混合タンク成分を、121℃で20分間オートクレーブすることにより、所定の位置で滅菌した。
【0148】
細菌を31時間増殖させ、10℃に設定された冷却シャープルズ遠心分離機を使用して20Lまたは150Lの培養から回収した。シリンダー内の細菌を滅菌ブレンダーバッグに直ちに移し、バイオマスの重量を測定した。ついで嫌気性のおよび予め還元された同重量の凍結保護物質溶液をブレンダーバッグに加えた。嫌気性ガスラインをブレンダーバッグの隅に挿入した。NCO(90:5:5)ガスを使用して、細菌と凍結保護物質との混合物に6.5L/分の流量で5分間、ガス注入した。
【0149】
濃縮細菌と凍結保護物質との混合物が嫌気性状態に維持されることを保証するために嫌気性ガスを注入した後、ブレンダーバッグを密封して二次ブレンダーバッグ内に配置した。該二重壁ブレンダーバッグをJumboMix3500パドルミキサー内に配置し、Speed#3で5分間ブレンドして、均質な嫌気性混合物を得た。
【0150】
均質化後、細菌を含有する凍結保護物質溶液を、1回使い切りの凍結乾燥プレート内にポンプで送った。各プレートを秤量した。表8に挙げられている工程を用いる凍結乾燥のために、プレートを直ちに予冷(-40℃)凍結乾燥機に移した。
【表8】
【0151】
産物温度が少なくとも2時間安定したら、凍結乾燥操作を終了した。凍結乾燥産物を、1mmの粉砕設定を用いて粉砕し、使用するまで-20℃で真空密封バッグ内で貯蔵した。
【0152】
実施例7:サンプル中の代謝活性細胞数を測定するための寒天プレーティングとフローサイトメトリーとの比較
細胞懸濁液または生物学的サンプル(例えば、ヒト糞便サンプル)のようなサンプルにおける株の代謝活性細胞の数(例えば、株の効力)に関する一貫した正確な読取りをもたらす能力に関して、2つの異なる技術、すなわち、通常の寒天プレーティングおよびフローサイトメトリーを比較した。評価された株には、本明細書における細菌共生体において使用されうるアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)および/またはラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)が含まれる。
【0153】
例えば、サンプル中のアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)および/またはラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)の代謝活性細菌細胞数(CFUとして定義される)を決定するために、寒天プレーティングの方法をフローサイトメトリーの使用と比較した。
【0154】
図17A~17Cは、細菌細胞集団(例えば、ヒト対象に投与されうる細胞集団)における代謝活性治療株の定量のための、熱殺菌対照アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞のフローサイトメトリー・ゲーティング実験を示す。例示株として使用したアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)細胞ストック溶液を0.9% NaClバッファー溶液中で10-4Mに希釈し、95℃の加熱ブロック内に20分間配置して、実験実施前の細胞死を確認した。細胞を2μMのヨウ化プロピジウムおよび2μMのSYTO9で染色した。前方散乱領域(FSC-A)および側方散乱領域(SSC-A)によって計数された全ての細胞(図17A)にゲートを適用して、それぞれ細胞のサイズおよび粒度に関して選択する。ついで、それらの細胞を前方散乱高(FSC-H)および前方散乱領域(FSC-A)に基づいて線形性でゲートして、単一細胞を特定する(図17B)。ついで単一細胞を使用して、死細胞(PIhighSYTO9low)および生細胞(PI-SYTO9high)に関するゲートを設定し、これは50μlの溶液中の生細胞および死細胞の百分率を示した(図17C)。図17Aは、それぞれ細胞サイズおよび粒度を選択するために前方散乱領域(FSC-A)および側方散乱領域(SSC-A)によって計数された全ての細胞にゲートが適用された場合に得られたフローサイトメトリーの結果を示す。図17Bは、単一細胞を特定するために前方散乱高(FSC-H)および前方散乱領域(FSC-A)に基づいて線形性で細胞がゲートされた場合に得られたフローサイトメトリーの結果を示す。図17Cは、死細胞(PIhighSYTO9low)および生細胞(PI-SYTO9high)用のゲートを設定するために単一細胞を使用した場合に得られたフローサイトメトリーの結果を示し、これは50μlの細胞懸濁液中の生細胞および死細胞の百分率を示している。このデータは、代謝的に不活性な細胞(細胞が熱で不活性化されていた)を示す図17Cに示されているとおり、フローサイトメトリー法が、代謝的に活性/不活性な細胞の数を正確に決定しうることを示している。
【0155】
以下の表9は、各希釈度における総生細胞数を計算するために用いられる一連の計算を示す。「総計数細胞数」を計算するために、希釈された及び未染色の細胞を機械により計数し、それに希釈係数を掛け算した(希釈係数×細胞=総計数細胞数)。「標準偏差」および「平均総細胞数」を「総計数細胞数」から導き出した。「生細胞(%)」は、図17A~17Cに説明されているコントロールゲートを希釈染色細胞に適用することにより計算された。「生細胞(%)」を「平均総細胞数」に適用して、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)MCBグリセロールストックにおける「総生細胞数」を計算した。
【表9】
【0156】
株フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)に関しても同様の結果が得られ、このことは、サンプル中の代謝活性治療株の数を正確に測定するためにフローサイトメトリーが使用されうることを実証している。プレーティング法(平板法)を使用して測定された総生細胞と、フローサイトメトリーにより測定されたものとの比較は、フローサイトメトリーがサンプル中の総生細胞数のより正確な測定を可能にしうることを示している(例えば、図17A~17Cを参照されたい)。
【0157】
また、図18は、(標準的な)寒天プレーティング法を用いて決定された総生細胞数と生細胞のフローサイトメトリー定量データとを比較するグラフを示す。データは、フローサイトメトリーが、プレーティング法と比較して、サンプル中の総生細胞数の、有意に、より正確な測定(例えば、CFU/mLとして定量される)を可能にしたことを示している。左側のy軸は、フローサイトメトリーにより測定された総生細胞数を示す。右側のy軸は生物学的重複実験のための栄養寒天プレーティングからの算出平均CFU/mL値を示す。両側マンホイットニーt検定はそれらの2つの定量法の平均値の間に有意差を示さなかった(p値は0.0532)。これらの結果は寒天プレーティング技術の変動性およびFACS技術の相対的一貫性を示しており、生物学的サンプル中の細菌株を定量する方法としてのフローサイトメーターの使用を検証するものである。この技術を用いて試験されうるサンプルには、品質管理の目的で分析されうるヒト糞便サンプルおよび細菌株サンプルが含まれる。
【0158】
総合すると、これらの結果は、(i)サンプル中の代謝活性細胞数と代謝不活性細胞数との比、および(ii)サンプル中の代謝活性細菌細胞の絶対数を決定するために、本明細書に記載されているフローサイトメトリー法が用いられうることを実証している。
【0159】
実施例8:qPCRを使用した糞便DNAにおける細菌細胞の定量
サンプル中の細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)の定量のための、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)の使用を記載する。本実施例は、特異的プライマー、qPCRおよび糞便DNA(鋳型としてのもの)を使用した株の定量を記載する。
【0160】
1.材料
以下の表10は、株の定量に使用される例示的な株特異的プライマー配列を示す。
【表10】
【0161】
ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 332313)から抽出されたゲノムDNAに関してPacBio配列決定を行った。これらのデータを使用して、全ての細菌株の比較ゲノム分析を行って、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)のゲノム内のユニーク領域を特定した。ユニーク領域の特定後、これらの株内に存在するユニーク領域を標的化するqPCRプライマーペア(前記の表10を参照されたい)を設計した。
【0162】
この実験において使用された追加的な材料には、以下のものが含まれた:(i)アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)DNA;(ii)ヒト糞便DNAサンプル対照(株を含有していなかった);(iii)臨床サンプルから抽出されたDNA;(iv)金属384 qPCRプレートホルダー;(v)DNA/RNAse非含有滅菌エッペンドルフ(Eppendorf)チューブ;および(vi)QuantStudio 6 qPCRサーモサイクラー。
【0163】
2.手順
臨床サンプル名およびDNA濃度を電子的に計算し、全てのサンプルを100μLの最終体積で10ng/μLに正規化した。各実施は、ヒト糞便DNAバックグラウンドにおいて希釈された純粋な細菌DNAを使用して作成された7ポイントの陽性対照標準曲線を利用した。これらの標準(「std」と略記されている)は、使いやすさを考慮して、予め作製され、分注されていた。標準曲線に関しては、標的株DNAの以下の段階希釈物を実施に含めた(表11)。
【表11】
【0164】
株DNA定量実験には以下の物品を使用した。
【表12】
【0165】
計算量の水およびDNA溶液を適切なウェルに加えた。qPCRプレートを密封し、ボルテックスし(5~10秒)、1000rpmで2分間遠心分離した。
【0166】
3.プライマーストックとマスターミックスの調製
フォワードおよびリバースの株特異的プライマーを完全に解凍し、プライマーストックを1×TEバッファー中で100μMに維持した(例えば、表10を参照されたい)。2本のエッペンドルフ(Eppendorf)チューブ(1本はフォワードプライマー用、もう1本はリバースプライマー用)に、360μLの滅菌USP等級WFIを加えた。ついで40μLのフォワードプライマー溶液を加え、ホモジナイズし、リバースプライマー溶液に関しても同じ工程を繰り返した。得られた10μMプライマー溶液をSYBRセレクト・マスターミックス(Select Master Mix)(2×ストック)および滅菌水と一緒にし、ホモジナイズした。
【0167】
qPCR 384ウェルプレートを使用して、20μLのqPCRマスターミックスをウェルA~N 1~24およびO 1~14内に分注した。DNA正規化プレートを使用して、マスターミックスを350ウェルの全てに分注した後、A行における全てのウェルの5μLのDNAを取り、反応プレートのA行における奇数ウェルに接種した。ついでA行における全てのウェルから5μLのDNAを移し、反応プレートのA行における偶数ウェルに接種した。DNAを反応プレートに添加するまで、最後の2つの工程を全てのウェルに関して繰り返した。ついで適切な株の標準曲線ストックDNAプレートを生物安全性キャビネットに移し、ついで、反応プレートの設定ごとに行Pの正しいウェル内に標準をピペッティングした。混合および遠心分離の後、サンプルをQuantstudio qPCR機器内に配置した。
【0168】
以下の表13に示されているとおり、以下のサイクリング条件を用いた。
【表13】
【0169】
以下の表14は標準曲線対照サイクル閾値(CT)およびプライマー融解温度(TM)値を示す。表14は更に、選択された株フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)、ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)およびアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)のそれぞれに関して、(ヒト糞便DNAバックグラウンドを用いて)株細胞DNAの量を定量するために使用されうる標準曲線を作成するために使用された株細胞DNAの標準量(例えば、1ng、0.1ng、0.01ngおよび0.001ng)および水中(例えば、糞便DNAバックグラウンドの非存在下)の同量の株細胞DNA(例えば、1ng、0.1ng、0.01ngおよび0.001ng)の存在下のヒト糞便DNAにおける株細胞の推定数を示す。
【表14】
【0170】
図19A~19Cは、それぞれ、3つの選択された株アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞に関する、前記表14に示されている推定株細胞数に対して測定CT値をプロットすることにより作成された検出曲線の限界を示す。
【0171】
実施例9:マウスモデル系
本明細書は、インビボマウスモデルにおけるアレルギー疾患のような炎症性疾患の治療のための3つの細菌株ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)を含む細菌共生体の能力を評価するための方法を提供する。
【0172】
気道アレルゲンに対して気管内で感作された若い成体マウスを使用するアレルギー性気道炎症モデルにおいて、実施例2で定められた組成物Aの経口投与は循環IgE免疫グロブリンの上昇を有意に阻害した。また、組成物Aの経口投与は肺における炎症性Th2細胞の増殖を有意に低減し、同時にTh2関連遺伝子発現ならびに炎症性サイトカインIL-4およびIL-13の肺濃度を減少させた。逆に、組成物Aは肺における抗炎症性Treg細胞の有意な増殖をもたらした。これはアレルギー性喘息関連分子および免疫応答の低減に関連している。また、循環IgEレベルおよび気道好酸球増加の有意な低減が観察された一方、循環ヒスタミンおよび気道好中球は減少傾向であった。いずれの理論にも束縛されるものではないが、これらの研究に基づけば、アレルギーおよび喘息反応の緩和の提示メカニズムはTreg細胞の増殖およびそれに続くアレルゲン特異的IgEのTh2駆動性生成の阻害に基づいていた。組成物Aの投与は、好酸球および好中球を含むエフェクター細胞のアレルギー性喘息関連増殖の阻害にも関連していたため、Treg細胞の増殖が非常に重要であると考えられた。アレルギー反応の開始に関与するIgEエフェクター抗体を中和したモノクローナル抗IgE抗体Xolair(登録商標)(オマリズマブ)とは対照的に、組成物Aを使用する作用メカニズムはアレルギー感作のカスケードの上流で生じた可能性があり、このことは組成物Aの予防的な可能性を強調するものである。組成物Aは、それが、アレルギー反応に関連する新たなIgEおよび炎症性エフェクター細胞の生成を防ぎ、結果として遥かに少ない副作用を有すると予想される点で有利であった。
【0173】
これらの結果は、組成物Aの細菌共生体がアレルギー性気道炎症の治療に有効であったことを示している。更に、そのような共生体の治療効果はモノクローナル抗IgE抗体Xolair(登録商標)(オマリズマブ)の場合より優れている可能性がある一方で、副作用は有意に少ないことが観察された。総合すると、これらの結果はヒト対象における臨床試験のための基礎および理論的根拠として用いられうる。
【0174】
実施例10:アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)原薬(3500L)のための最適化された超大規模増殖および製造プロセス
本明細書に記載されている細菌株の収量および増殖速度を増加させるために、図20に大まかに示されているとおり、3500Lの体積の培養においてアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)を増殖させるための製造条件および手順を調製した。
【0175】
培地の調製
250Lの糖供給物(表15)、3160LのNAGT培地(表16)、1.25Lの氷酢酸および凍結保護物質混合物(表17)の成分を秤量した。
【表15】
【表16】
【表17】
【0176】
糖分画ならびに供給物の調製および除染
300Lの容器および混合タンクの定置洗浄(CIP)を完了した。0.22μmフィルターを使用して、120Lの熱軟水を滅菌混合タンクに加えた。糖供給成分の3分の1(重量によるもの)を混合タンクに加え、それらが完全に溶解するまで、150rpmで10分間撹拌した。ついで糖供給成分の追加的な3分の2および120Lの熱軟水を混合タンクに加え、完全に溶解させた。糖供給物を、0.2μmフィルターを使用して濾過滅菌し、300Lの滅菌容器内に貯蔵した。
【0177】
3500Lの培地の調製および除染
NAGT培地を調製するために、3,500Lの攪拌発酵槽をCIPにより滅菌し、校正されたpHおよび酸化還元(レドックス)センシングプローブを取り付ける。合計400Lの0.22μm濾過水を、予め滅菌された混合タンクに加え、NAGT培地成分と一緒にした。混合物を150rpmで10分間ホモジナイズした。濃縮培地を3500Lのバイオリアクターに移し、3070Lの0.22μm濾過軟水を該発酵槽に加えた。培地のpHをpH=6.5に調整した。培地を所定位置で121℃で20分間滅菌した。蒸気滅菌接続を用いて、100Lの糖供給物を滅菌済みNAGT培地に加えた。ついで、完成したNAGT培地を脱気した。これは、100rpmで攪拌しながら、そしてヘッドスペース圧を0.2バールに維持しながら、0.1vvmの速度でNCO(90:5:5)ガス混合物を添加するスパージャを使用して行った。NAGT培地の酸化還元値を脱気の開始時からモニターした。酸化還元値が低下し、定常値で1時間維持されるまで、脱気を継続した。ついで、90RPMで攪拌しながら、そして0.01vvmのガス混合物の注入を行いながら、NAGTを、使用するまで10℃±2℃で貯蔵した。
【0178】
20Lおよび300Lの発酵槽の調製ならびに除染および培地転移
20Lおよび300Lの発酵槽の定置洗浄(CIP)を完了した。3500Lの発酵槽からの滅菌コネクターを使用して、17Lおよび300Lの滅菌培地を、それぞれ、20Lの発酵槽および300Lの発酵槽に移した。
【0179】
初期接種の準備
1Lの滅菌済みNAGT培地を20Lの発酵槽から滅菌済みの1本のボトルに移した。ついで該滅菌済みボトルを嫌気性チャンバーに移した。19.2mLのWCBアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)を嫌気性チャンバー内で解凍し、滅菌済みピペット接種物を使用して1Lの還元NAGT培地に接種した(2% v/v 接種率)。細胞と培地との混合物を穏やかな回転によりホモジナイズし、585nm(OD600)で定期的に光学密度を測定しながら37℃でインキュベートした。図21は、この期間中に培養物のOD585が着実に上昇したことを示している。a)OD600>1になったら、またはb)培養物を48時間増殖させたら、培養を停止した。
【0180】
20Lの接種
20Lの培地を37℃に加温した。表18に挙げられているパラメーターを使用して、培地を脱気した。
【表18】
【0181】
標準的な酸化還元センサーにより測定した酸化還元値が1時間にわたって安定化するまで、脱気を継続した。滅菌済み三方弁を20L発酵槽に接続した。アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の1Lの接種培養物全体(5% v/v 接種)を三方弁を介して20L発酵槽に添加した。20Lの培養物の光学密度を、OD585を使用してモニターした。図22は、この期間中に培養物のOD585が着実に上昇したことを示している。以下の基準のいずれかに達したら、培養を停止した:a)OD585>1.5、b)総培養時間が48時間に達した、またはc)後続の3回のOD585測定の後に増殖速度の低下が検出された。
【0182】
300Lの接種
300Lの培地を37℃に加温した。表18に挙げられているパラメーターを使用して、培地を脱気した。標準的な酸化還元センサーにより測定した酸化還元値が1時間にわたって安定化するまで、脱気を継続した。滅菌済み三方弁を300L発酵槽に接続した。20L発酵槽からのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の15Lの接種培養物(5% v/v 接種)を三方弁を介して300L発酵槽に添加した。20Lの培養物の光学密度を、OD585を使用してモニターした。図23は、この期間中に培養物のOD600が着実に上昇したことを示している。以下の基準のいずれかに達したら、培養を停止した:a)OD585>1.5、b)総培養時間が48時間に達した、またはc)後続の3回のOD585測定の後に増殖速度の低下が検出された。
【0183】
3500Lの接種
3500Lの培地を37℃に加温した。表18に挙げられているパラメーターを使用して、培地を脱気した。標準的な酸化還元センサーにより測定した酸化還元値が1時間にわたって安定化するまで、脱気を継続した。300L発酵槽を3500L発酵槽に接続した。300L発酵槽からのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)の300Lの接種培養物(8~10% v/v 接種)を3500L発酵槽に添加した。グルコース濃度が2g/L未満に低下したら、更に90Lの糖供給物を添加した。20Lの培養物の光学密度を、OD585を使用してモニターした。図24は、この期間中に培養物のOD585が着実に上昇したことを示している。以下の基準のいずれかに達したら、培養を停止した:a)OD585>2.5、b)総培養時間が72時間に達した、またはc)後続の3回のOD585測定の後に増殖速度の低下が検出された。これらのパラメーターの1つが満たされたら、培養の冷却を開始するために発酵槽を4℃+/-3℃に設定した。
【0184】
遠心分離
GEA遠心分離機および混合タンクの定置洗浄(CIP)を完了した。混合ガスライン(NCO、90:5:5)をGEA遠心分離機および混合タンクに接続し、GEA遠心分離機および混合タンクを30分間脱気した。表19に挙げられているシャープルズ(Sharples)パラメーターを使用して、3500Lの培養物を遠心分離した。
【表19】
【0185】
濃縮細菌画分(バイオマス)を脱気混合タンク内に収集した。収集された濃縮バイオマスの重量を測定した。
【0186】
凍結保護物質溶液の調製および濃縮バイオマスへの添加
混合タンクの定置洗浄(CIP)を完了した。75Lの0.22μm濾過熱軟水を混合タンクに加えた。凍結保護物質混合物成分の3分の1を、それらが完全に溶解するまで、混合タンクに加えた。追加的な20Lの濾過軟水を加えた。混合物を150rpmで10分間ホモジナイズした。凍結保護物質溶液を滅菌済みバイオリアクターに移した。該溶液のベースライン酸化還元値を記録した。表20に挙げられているパラメーターを使用して、凍結保護物質溶液を脱気した。
【表20】
【0187】
脱気した凍結保護物質溶液を混合タンク内の嫌気性濃縮バイオマスに1:1(w/w)の比で加えた。凍結乾燥に利用可能なバイオマスおよび凍結保護物質の総質量および体積を記録した。
【0188】
凍結乾燥および粉砕
滅菌済みプラスチック凍結乾燥トレイに、総厚が1cm(これはトレイ当たりの細胞および凍結保護物質混合物の1.5Lに相当する)を超えないように充填した。凍結プロセスを促進するために、トレイを、それらに充填しながら、予め凍結された凍結乾燥機棚に移動させた。表21に挙げられているパラメーターに従い、凍結乾燥サイクルを開始した。
【表21】
【0189】
凍結乾燥した物質を、スペーサー1および1mmのグリッドを使用して、速度1で粉砕した。粉砕後、凍結乾燥した細胞物質を、1.5kg以下の物質をそれぞれが含有するポリエチレン(PE)バッグ内に直ちに密封した。凍結乾燥した細胞物質を-18℃未満で貯蔵し、実施例2に定められているとおりに組成物Aを製造するために使用した。
【0190】
実施例11:フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)原薬(3500L)の最適化された超大規模増殖および製造プロセス
本明細書に記載されている細菌株の収量および増殖速度を増加させるために、図25に大まかに示されているとおり、3500Lの体積の培養においてフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)を増殖させるための製造条件および手順を調製した。
【0191】
培地の調製
250Lの糖供給物(表22)、3160LのYFAP培地(表23)および凍結保護物質混合物(表24)の成分を秤量した。
【表22】
【表23】
【表24】
【0192】
糖分画ならびに供給物の調製および除染
300Lの容器および混合タンクの定置洗浄(CIP)を完了した。0.22μmフィルターを使用して、120Lの熱軟水を滅菌混合タンクに加えた。糖供給成分の3分の1(重量によるもの)を混合タンクに加え、それらが完全に溶解するまで、150rpmで10分間撹拌した。ついで糖供給成分の追加的な3分の2および130Lの熱軟水を混合タンクに加え、完全に溶解させた。糖供給物を、0.2μmフィルターを使用して濾過滅菌し、300Lの滅菌容器内に貯蔵した。
【0193】
3500Lの培地の調製および除染
YFAP培地を調製するために、3,500Lの攪拌タンクバイオリアクターをCIPにより滅菌し、校正されたpHおよび酸化還元(レドックス)センシングプローブを取り付ける。合計400Lの0.22μm濾過水を、予め滅菌された混合タンクに加え、YFAP培地成分と一緒にし、150rpmで10分間ホモジナイズした。濃縮培地を3500Lのバイオリアクターに移し、3070Lの0.22μm濾過軟水を該バイオリアクターに加えた。蒸気滅菌接続を用いて、100Lの糖供給物を滅菌済みYFAP培地に加えた。632mlのビタミンミックス溶液を加えた。ついで、完成したYFAP培地を脱気する。これは、100rpmで攪拌しながら、そしてヘッドスペース圧を0.2バールに維持しながら、0.1vvmの速度でNCO(90:5:5)ガス混合物を添加するスパージャを使用して行った。
【0194】
初期接種の準備
1.6Lの滅菌済みYFAP培地を300Lの発酵槽から滅菌済みの2Lフラスコに移した。ついで該滅菌済みボトルを嫌気性チャンバーに移した。6.4mLのWCBフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)を嫌気性チャンバー内で解凍し、滅菌済みピペット接種物を使用して1Lの還元YFAP培地に接種した(0.4% v/v 接種率)。細胞と培地との混合物を穏やかな回転によりホモジナイズし、585nm(OD585)で定期的に光学密度を測定しながら37℃でインキュベートした。図26は、この期間中に培養物のOD585が着実に上昇したことを示している。a)OD585>3になったら、またはb)培養物を48時間増殖させたら、培養を停止した。
【0195】
300Lの接種
150Lの滅菌済み培地を300Lの滅菌済み発酵槽に移した。300L発酵槽内のYFAP培地を、0.1vvmで2時間にわたってスパージャを使用してNCO(90:5:5)で脱気した。300Lの培地を37℃に加温した。表18に挙げられているパラメーターを使用して、培地を脱気した。
【0196】
標準的な酸化還元センサーにより測定した酸化還元値が1時間にわたって安定化するまで、脱気を継続した。滅菌済み三方弁を300L発酵槽に接続した。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の1Lの全接種培養物(2% v/v 接種)を三方弁を介して20L発酵槽に添加した。20Lの培養物の光学密度を、OD585を使用してモニターした。図27は、この期間中に培養物のOD585が着実に上昇したことを示している。以下の基準のいずれかに達したら、培養を停止した:a)OD585>5、b)総培養時間が48時間に達した、またはc)後続の3回のOD585測定の後に増殖速度の低下が検出された。
【0197】
3500Lの接種
約3500Lの培地を37℃に加温した。表18に挙げられているパラメーターを使用して、培地を脱気した。標準的な酸化還元センサーにより測定した酸化還元値が1時間にわたって安定化するまで、脱気を継続した。300L発酵槽を3500L発酵槽に接続した。300L発酵槽からのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)の30Lの接種培養物(8~10% v/v 接種)を3500L発酵槽に添加した。20Lの培養物の光学密度を、OD585を使用してモニターした。図28は、この期間中に培養物のOD585が着実に上昇したことを示している。以下の基準のいずれかに達したら、培養を停止した:a)OD585>5、b)総培養時間が72時間に達した、またはc)後続の3回のOD585測定の後に増殖速度の低下が検出された。これらのパラメーターの1つが満たされたら、培養の冷却を開始するために発酵槽を4℃+/-3℃に設定した。
【0198】
遠心分離
GEA遠心分離機および混合タンクの定置洗浄(CIP)を完了した。混合ガスライン(NCO、90:5:5)をGEA遠心分離機および混合タンクに接続し、GEA遠心分離機および混合タンクを30分間脱気した。表19に挙げられているシャープルズ(Sharples)パラメーターを使用して、3500Lの培養物を遠心分離した。
【0199】
濃縮細菌画分(バイオマス)を脱気混合タンク内に収集した。収集された濃縮バイオマスの重量を測定した。
【0200】
凍結保護物質溶液の調製および濃縮バイオマスへの添加
混合タンクの定置洗浄(CIP)を完了した。75Lの0.22μm濾過熱軟水を混合タンクに加えた。凍結保護物質混合物成分の3分の1を、それらが完全に溶解するまで、混合タンクに加えた。追加的な20Lの濾過軟水を加えた。ついで追加的な3分の2の凍結保護物質成分を混合タンクに加え、溶解させた。混合物を150rpmで10分間ホモジナイズした。凍結保護物質溶液を滅菌済みバイオリアクターに移した。該溶液のベースライン酸化還元値を記録した。表18に挙げられているパラメーターを使用して、凍結保護物質溶液を脱気した。
【0201】
脱気した凍結保護物質溶液を混合タンク内の嫌気性濃縮バイオマスに1:1(w/w)の比で加えた。凍結乾燥に利用可能なバイオマスおよび凍結保護物質の総質量および体積を記録した。
【0202】
凍結乾燥および粉砕
滅菌済みプラスチック凍結乾燥トレイに、総厚が1cm(これはトレイ当たりの細胞および凍結保護物質混合物の1.5Lに相当する)を超えないように充填した。凍結プロセスを促進するために、トレイを、それらに充填しながら、予め凍結された凍結乾燥機棚に移動させた。表21に挙げられているパラメーターに従い、凍結乾燥サイクルを開始した。
【0203】
凍結乾燥した物質を、スペーサー1および1mmのグリッドを使用して、速度1で粉砕した。粉砕後、凍結乾燥した細胞物質を、1.5kg以下の物質をそれぞれが含有するポリエチレン(PE)バッグ内に直ちに密封した。凍結乾燥した細胞物質を-18℃未満で貯蔵し、実施例2に定められているとおりに組成物Aを製造するために使用した。
【0204】
実施例12:臨床試験の設計
ヒトにおける最初の試験の設計を用いて、アレルギー疾患の予防および治療のために提供される細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)からなる細菌共生体を含む経口投与可能な医薬組成物を評価する。
【0205】
本実施例の試験は、(2以上のアレルゲンに対して)多重感作された、他の点では健康なヒト被験者(ヒト対象)における、細菌株アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)からなる細菌共生体の第1b相・多施設・無作為化・二重盲検・プラセボ対照・並行群・3連続部分の試験として設計されている。
【0206】
循環IgEレベル(総レベルおよび特異的レベルの両方)、免疫細胞数、糞便マイクロバイオーム組成、糞便および血漿代謝プロファイル、糞便および血漿免疫刺激能(インビトロ分析)、ならびにベースラインから治療終了までの症状スコアにおける変化を測定することにより、細菌組成物Aの治療機能を評価する。
【0207】
被験者を3つのカテゴリーに分ける(例えば、図29を参照されたい)。第1カテゴリーは18~40歳の約20名の被験者を含み、被験者は2以上のアレルゲンに対して多重感作されており、それ以外の点では健康である(男性:女性;約1:1)(無作為化 3:1 試験:プラセボ)。第2カテゴリーは12~17歳の約20名の被験者を含み、被験者は2以上のアレルゲンに対して多重感作されており、それ以外の点では健康である(男性:女性;約1:1)(無作為化 3:1 試験:プラセボ)。第3カテゴリーは2~11歳の約20名の被験者を含み、被験者は2以上のアレルゲンに対して多重感作されており、それ以外の点では健康である(男性:女性、約1:1)。組成物A対プラセボに関して3:1で被験者を無作為化する。
【0208】
ヒト被験者の治療は組成物Aの1日2回の28日間の経口投与(約12時間+/-4時間ごとの、食物またはミルクと混合することによるもの)からなる。組成物Aの各1mL用量はそれぞれのラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)、アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)およびフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)の5×10 CFU/細菌種を含有する。
【0209】
組成物Aは、ラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)の3つの生細菌株を含有する生きた生物療法製品(生物学的製剤)であり、それぞれは用量当たり5×10 CFUで存在する。組成物Aは、3つ全ての細菌種を含有する単一の凍結グリセロールストックとして供給される。組成物Aの各用量は、シリコーンワッシャーシール付きの2mLのポリプロピレンスクリューキャップバイアル内で提供される。バイアルは、緩衝化グリセロール溶液に懸濁された3つ全ての生細菌株を含有する。緩衝化グリセロール溶液は標準的リン酸緩衝食塩水(PBS、137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPOおよび1.8mM KHPO)、20% v/v グリセロールおよび抗酸化剤としての0.1% w/w システインから構成される。組成物Aの用量の体積は約1mLである。
【0210】
本実施例の目的のために、組成物Aを-70℃で貯蔵し、温度ログ(log)を維持する。組成物Aは、ヒト被験者に提供されたら、-18℃以下の冷凍庫内で貯蔵される。製品の効力および純度を維持するために、消費のために解凍する前には、組成物Aの用量は、そのクライオバイアル(例えば、2mLのクライオバイアル)容器内に密封された状態で維持される。組成物Aの凍結ストックは、室温で5~10分間解凍され、投薬指示に記載されているとおりに直ちに使用される。
【0211】
本実施例におけるプラセボ治療は、賦形剤[プラセボ: 20% v/v グリセロールおよび0.1% w/w システインを含有する、製品製剤化に関して記載されているとおりのリン酸緩衝食塩水(PBS)]の1日2回の28日間の経口投与(約12±4時間ごとの、食物またはミルクと混合することによるもの)からなる。各1mL用量は体積において試験製品と同じであろう。凍結ストックを室温で5~10分間解凍する。ついでバイアルの内容物を適切な量(1~2オンス)の冷却または室温のミルク(母乳、液体乳児用調合乳、牛乳、アーモンドミルク、豆乳を含む)またはアップルソースおよびヨーグルトのような食物中に直ちに混合する。
【0212】
図29に示されているとおり、スクリーニング訪問が第1日(ベースライン訪問)の28日前から7日前までに行われる。投与を第1日から開始する。被験者は28日間治療され、第8日、第15日、第22日および第29日の後続訪問を伴う。フォローアップ訪問は第43日および第57日に行われる。ベースライン後の各訪問は±1日のウィンドウを有する。
【0213】
評価は、(i)有害事象の報告;(ii)併用薬の報告;(iii)身体検査の実施およびバイタルサイン;ならびに(iv)血清化学、肝および腎機能パネル、血液学、鑑別を伴う全血球数および尿検査を含む臨床検査により、28日間の治療期間中およびその後の最大28日(第57日)の休薬期間中に行う。この試験の第3の部においては、安全性評価のための、血液および尿のサンプルの収集を行わない。血液および尿のサンプル採取を要するものを除く全ての他の評価を行う。
【0214】
追加的な評価を、以下のパラメーターにおける、ベースラインから治療終了までの変化を評価することにより行う:(i)糞便マイクロバイオーム分析(細菌組成);(ii)糞便および血漿代謝プロファイリング;(iii)糞便および血漿免疫刺激能(インビトロ分析);(iv)総IgEおよび特異的IgEレベル;(v)循環免疫細胞プロファイリング;(vi)質問票ならびに副作用(AE)および服薬の日誌報告。
【0215】
この試験においては種々の臨床試験変量を測定する。血液学的変量には、ヘマトクリット、ヘモグロビン、平均赤血球ヘモグロビン量、平均赤血球ヘモグロビン濃度、平均赤血球容積、血小板数、赤血球分布幅、赤血球数および白血球数(鑑別を伴うもの)が含まれる。尿検査のパラメーターには、外観(例えば、色および特性)、ビリルビン、ウロビリノーゲン、タンパク質含有量、グルコースレベル(血糖値)、ケトン、白血球エステラーゼ、尿血、亜硝酸塩、pHおよび比重が含まれる。生化学的パラメーターには、グルコースレベル(血糖値)、尿酸、BUN(血中尿素窒素)、クレアチニン、BUN/クレアチニン比、eGFR(推定糸球体濾過率)、ナトリウム、カリウム、塩化物、炭酸水素塩、カルシウム、アルブミン、総ビリルビン、アルカリホスファターゼレベル、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)レベル、ALT(アラニントランスアミナーゼ)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総コレステロールレベルおよびトリグリセリドレベルが含まれる。
【0216】
実施例13:凍結細菌細胞の生存性
グリセロール中の凍結したアッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)の生存性を調べた。約5×10 CFUのアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、約5×10 CFUのフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)および約5×10 CFUのラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)をグリセロール中で混合し凍結した。凍結細菌細胞を-70℃で貯蔵した。細菌細胞の生存性を貯蔵後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月および12ヶ月の時点で評価した。評価を表22に示す。
【表25】
【0217】
実施例14:凍結乾燥医薬品カプセルおよび液体組成物容器
実施例2において定められている組成物Aを、薬学的に許容される賦形剤を使用してカプセル内に封入する。カプセルは標準サイズ0またはサイズ1である。カプセルはタピオカプルランのような植物由来材料から構成される。それはデンプン非含有、グルテン非含有および保存剤非含有である。カプセルは37℃で崩壊する。カプセルの90%超は水、pH=1.2の溶液、酢酸ナトリウムバッファーUSP(pH=4.5)またはリン酸ナトリウムバッファー(pH=7.2)中で60分以内に溶解する。カプセルは、脱イオン水を使用した37℃での測定で1.6分の崩壊エンドポイントを有する。カプセルは、カプセル内のガス組成による測定で0.5以下の酸素透過性(cm/m/日)を有する。カプセルは、図30に示されているとおりに経口投与される。組成物Aはまた、2mL ポリプロピレンスクリューキャップバイアル内に存在し、図30に示されているとおりに経口投与される。
【0218】
実施例15:乳児および新生児におけるアレルギー状態を予防するための臨床試験の設計
組成物Aの更なる試験: 各用量は、それぞれ等量[5×10CFU/アッケルマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)(DSM 33187)]の合計1.5×10CFUおよび炭水化物ベースの賦形剤を含有し、アレルギー疾患の発生リスクの高い新生児および乳児被験者においてプラセボ(外観が同一の賦形剤溶液)と比較される。組成物Aまたはプラセボの1mLを、母乳、粉ミルクまたは食物中に混合して、1日1回、28日間(パートA)および336日間(パートB)にわたって経口(口腔により)投与される。
【0219】
パートA: 図31に示されているとおり、28日齢~12月齢未満の乳児を、まず、28日間の治療、およびそれに続く、安全性/忍容性の評価のための更に1ヶ月の観察(治療外)のために登録し、ついで新生児の登録(パートB)を行う。パートAにおいては、適格被験者を組成物A処置またはプラセボ処置のいずれかに無作為化する。組成物A処置は組成物A(母乳、粉ミルクまたは食物と混合されたもの)の1日1回の28日間の経口投与からなり、プラセボ処置はプラセボ(母乳、粉ミルクまたは食物と混合されたもの)の1日1回の28日間の経口投与からなる。合計20名の適格乳児を3:1(15:5)の無作為化において登録する。
【0220】
パートB: 図32に示されているとおり、7日齢以下の新生児を組成物A処置またはプラセボ処置のいずれかに無作為化する。組成物A処置は組成物A(母乳、粉ミルクまたは食物と混合されたもの)の1日1回の336日間の経口投与からなり、プラセボ処置はプラセボ(母乳、粉ミルクまたは食物と混合されたもの)の1日1回の336日間の経口投与からなる。
【0221】
分娩様式(膣または帝王切開)および登録時の授乳方法(母乳授乳または母乳授乳無し)によって層別化された1:1(112:112)の無作為化において、適格新生児を登録する。適格の可能性のある新生児を妊娠中または出生後の第1週中に特定する。組成物Aまたはプラセボの投与を生後7日以内に開始し、1年間継続し、ついで1年間の観察期間(治療外)が続き、ついで、登録から672日間にわたる10回の訪問(8回の診療所訪問および2回の電話通話)において測定を行う。
【0222】
新生児および乳児の被験者において、プラセボと比較して、組成物Aにおける免疫学的バイオマーカー、追加的な糞便代謝プロファイリングおよび糞便マイクロバイオーム分析を測定する。循環IgEレベル(総レベルおよび特異的レベルの両方)、免疫細胞数、糞便マイクロバイオーム組成、糞便および血漿代謝プロファイル、糞便および血漿免疫刺激能(インビトロ分析)、ならびにベースラインから治療終了までの症状スコアの変化を決定することにより、細菌組成物Aの治療機能を評価する。
【0223】
アレルギー疾患の発生を潜在的に改変する生細菌治療の役割の過去の研究に基づいて、該主要エンドポイントは、アレルギー疾患の発生の低減に関連しうる感受性PDマーカーとみなされる。
【0224】
追加的なエンドポイントには、以下のものが含まれる:168日および672日における医師により診断されたアトピー性皮膚炎の発生率(頻度);168日、336日および672日における医師により診断された食物アレルギー、慢性鼻炎/アレルギー性鼻炎、蕁麻疹および喘鳴性疾患/喘息の発生率(各診断は独立して評価される);168日、336日および672日における食物およびエアロアレルゲンに対する感作の発生率[卵白、ピーナッツ、牛乳、ネコ、チリダニ、イヌ、アルテルナリア(Alternaria)(カビ)および混合草花粉に対する血清アレルゲン特異的IgE試験による評価];アトピー性皮膚炎の重症度[168日、336日および672日におけるアトピー性皮膚炎の包括的重症度評価(investigator global assessment)(IGA)、スコアリングアトピー性皮膚炎(SCORing Atopic Dermatitis)(SCORAD)およびIGAxBSAによる評価];168日、336日および672日における喘鳴疾患/喘息の重症度(増悪歴による評価);アレルギー症状または診断のために処方/使用された併用薬ならびにアトピー性皮膚炎および喘鳴/喘息のためのレスキュー薬の使用;168日、336日および672日における総血清IgEレベル;168日、336日および672日における末梢好酸球数;薬理遺伝学的サンプル(所望により使用されてもよい);糞便マイクロバイオーム分析(微生物組成);糞便および血漿代謝プロファイリング(選択された部位のみ);テープストリップにより評価された皮膚バイオマーカーおよびRNA配列決定プロファイリング;循環免疫細胞プロファイリング(選択された部位のみ);臍帯血(バイオマーカー/免疫細胞プロファイリング)(所望により使用されてもよい;選択された部位のみ);糞便および血漿免疫刺激能(エクスビボ分析)(選択された部位のみ);破傷風/ジフテリアワクチン接種に対する力価;168日、336日および672日における喘鳴疾患/喘息の重症度[喘息コントロール質問票(ACQ)による評価]。
【0225】
主要試験エンドポイントとして、安全性評価を、(i)有害事象の報告;(ii)併用薬の報告;(iii)身体検査の実施およびバイタルサイン;ならびに(iv)血清化学、肝および腎機能パネル、血液学、鑑別を伴う全血球数および尿検査を含む臨床検査により、28日間の治療期間中およびその後の最大28日(第57日)の休薬期間中に行う。この試験の第3の部においては、安全性評価のための、血液および尿のサンプルの収集を行わない。血液および尿のサンプル採取を要するものを除く全ての他の評価を行う。
【0226】
二次試験評価を、以下のパラメーターにおける、ベースラインから治療終了までの変化を評価することにより行う:(i)糞便マイクロバイオーム分析(細菌組成);(ii)糞便および血漿代謝プロファイリング;(iii)糞便および血漿免疫刺激能(インビトロ分析);(iv)総IgEおよび特異的IgEレベル;(v)循環免疫細胞プロファイリング;(vi)質問票ならびに副作用(AE)および服薬の日誌報告。
【0227】
本明細書の表1に挙げられている株は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約の規定に従い、Leibniz-Institut DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(所在地:Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweig)に2019年6月27付で寄託された。該株はDSMZにより試験され、生存可能であると判断された。DSMZは以下のDSMZ寄託アクセッション番号をそれぞれの株に割り当てている:DSM 33213[アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)]、DSM 33179[ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)(DSM 33179)]、DSM 33180[ブラウティア・プロダクタ(B.producta)(DSM 33180)]、DSM 33178[バクテロイデス・シータイオタオミクロン(B.thetaiotaomicron)(DSM 33178)]、DSM 33176[コプロコッカス・コメス(C.comes)(DSM 33176)]、DSM 33185[フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)]、DSM 33191[フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33191)]、DSM 33186[フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33213)]、DSM 33190[フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33190)]、DSM 33187[ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)]、DSM 22177[バクテロイデス・フェシス(B.faecis)(DSM 22177)]、およびDSM 33188[ドレア・ロンギカテナ(D.longicatena)(DSM 33188)]。
【0228】
追加的な実施形態
1.表1に挙げられている少なくとも1つの株を含む細菌共生体と少なくとも1つの抗酸化剤とを含む医薬組成物。
【0229】
2.細菌共生体が、表1に挙げられている少なくとも2つの株を含む、実施形態1の医薬組成物。
【0230】
3.表1に挙げられている少なくとも1つの株がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)またはラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)を含む、実施形態1の医薬組成物。
【0231】
4.表1に挙げられている少なくとも1つの株がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)を含む、実施形態1の医薬組成物。
【0232】
5.表1に挙げられている少なくとも1つの株の各株が約10CFU~約10CFUの量で存在する、実施形態1の医薬組成物。
【0233】
6.表1に挙げられている少なくとも1つの株が約5×10CFUの量で存在する、実施形態5の医薬組成物。
【0234】
7.表1に挙げられている少なくとも1つの株が約10CFU~約1010CFUの総量で存在する、実施形態1の医薬組成物。
【0235】
8.表1に挙げられている少なくとも1つの株が約5×10CFUの量で存在する、実施形態7の医薬組成物。
【0236】
9.少なくとも1つの抗酸化剤がL-システインである、実施形態1の医薬組成物。
【0237】
10.L-システインが約0.05% w/w~約0.5% w/wの量で存在する、実施形態9の医薬組成物。
【0238】
11.凍結保護物質を更に含む、実施形態1の医薬組成物。
【0239】
12.凍結保護物質がグリセロールである、実施形態11の医薬組成物。
【0240】
13.グリセロールが約10% v/v~約30% v/vの量で存在する、実施形態12の医薬組成物。
【0241】
14.バッファーを更に含む、実施形態1の医薬組成物。
【0242】
15.バッファーがPBSである、実施形態14の医薬組成物。
【0243】
16.医薬組成物が経口剤形として製剤化されている、実施形態1の医薬組成物。
【0244】
17.経口剤形がカプセル剤、錠剤、乳濁剤、懸濁剤、シロップ剤、ゲル剤、ガム、ペースト剤、ハーブティー、滴剤、溶解性顆粒剤、散剤、錠剤、凍結乾燥物、アイスバー(棒付きアイスキャンディー)またはアイスクリームである、実施形態16の医薬組成物。
【0245】
18.経口剤形が懸濁剤である、実施形態16の医薬組成物。
【0246】
19.経口剤形がアイスバーまたはアイスクリームである、実施形態16の医薬組成物。
【0247】
20.アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)を含む細菌混合物;L-システイン;ならびに凍結保護物質を含む医薬組成物。
【0248】
21.細菌混合物の各株が約5×10CFUの量で存在する、実施形態20の医薬組成物。
【0249】
22.L-システインが約0.1% w/wの量で存在する、実施形態20の医薬組成物。
【0250】
23.凍結保護物質がグリセロールである、実施形態20の医薬組成物。
【0251】
24.グリセロールが約20% v/vの量で存在する、実施形態23の医薬組成物。
【0252】
25.バッファーを更に含む、実施形態22の医薬組成物。
【0253】
26.バッファーがリン酸緩衝食塩水(PBS)であり、約7.4のpHを有する、実施形態25の医薬組成物。
【0254】
27.医薬組成物が約1mLの総体積を有する、実施形態20の医薬組成物。
【0255】
28.医薬組成物が経口投与用の懸濁剤に製剤化される、実施形態20の医薬組成物。
【0256】
29.実施形態1~28のいずれか1つの医薬組成物を含む容器。
【0257】
30.容器が2mL ポリプロピレンスクリューキャップバイアルである、実施形態29の容器。
【0258】
31.容器が医薬組成物中の細菌細胞の少なくとも95%の生存率を約12週間維持する、実施形態29の容器。
【0259】
32.実施形態29~31のいずれか1つの容器を含むキット。
【0260】
33.容器内の医薬組成物の使用方法をヒト使用者に示す説明を更に含む、実施形態32のキット。
【0261】
34.医薬組成物における少なくとも2つの株を非動物培地内で培養し、培養工程の産物を一緒にして細菌共生体を生成させることを含む、実施形態1~28のいずれか1つの医薬組成物の製造方法。
【0262】
35.非動物培地が植物培地である、実施形態34の製造方法。
【0263】
36.植物培地が植物ペプトン、植物抽出物、酵母エキス、N-アセチルグルコサミン(NAG)、スレオニンまたはそれらの組合せを含む、実施形態35の製造方法。
【0264】
37.細菌細胞を非動物培地内で増殖させることを含む、表1の株の細菌細胞のバッチの製造方法。
【0265】
38.非動物培地が植物培地である、実施形態37の製造方法。
【0266】
39.植物培地が植物ペプトン、植物抽出物、酵母エキス、N-アセチルグルコサミン(NAG)、スレオニンまたはそれらの組合せを含む、実施形態38の製造方法。
【0267】
40.表1の株がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)である、実施形態39の製造方法。
【0268】
41.表1の株がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)である、実施形態39の製造方法。
【0269】
42.表1の株がラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)である、実施形態39の製造方法。
【0270】
43.アッケルマンシア属種(Akkermansia sp.)細胞を改変NAGT増殖培地内で培養して、アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)細胞バッチを得ることを含む、表1のアッケルマンシア・ムシニフィラ株を含む細菌共生体を含む医薬組成物の製造方法。
【0271】
44.改変NAGT増殖培地がソイトーン、N-アセチルグルコサミン(NAG)またはそれらの組合せを含む、実施形態43の製造方法。
【0272】
45.改変NAGT増殖培地がマグネシウム、カルシウムまたはグルコースのいずれか1以上を含まない、実施形態43の製造方法。
【0273】
46.改変NAGT増殖培地が、非改変NAGT増殖培地と比較して30~50%増加したアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)細胞増殖速度をもたらす、実施形態43の製造方法。
【0274】
47.増殖速度の増加が、50時間の細胞培養の後の増殖培地の600nmにおける吸光度の差を測定することにより決定される、実施形態46の製造方法。
【0275】
48.アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)株がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)である、実施形態43の製造方法。
【0276】
49.アッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)細胞バッチが約5×10CFU/mLを含む、実施形態43の製造方法。
【0277】
50.フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)細胞を非動物ベースの増殖培地内で培養して、フィーカリバクテリウム属種細胞バッチを得ることを含む、フィーカリバクテリウム属種を含む細菌共生体を含む医薬組成物の製造方法。
【0278】
51.非動物ベースの増殖培地が酵母ベースの増殖培地である、実施形態50の製造方法。
【0279】
52.酵母ベースの増殖培地がYFAPビタミンミックスを含む、実施形態51の製造方法。
【0280】
53.酵母ベースの増殖培地が酢酸ナトリウム、ソイトーン、酵母エキス、システインまたはそれらの組合せを含む、実施形態51の製造方法。
【0281】
54.酵母ベースの増殖培地が酢酸ナトリウム、ソイトーン、酵母エキスおよびシステインを含む、実施形態51の製造方法。
【0282】
55.フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)がフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)である、実施形態50の製造方法。
【0283】
56.フィーカリバクテリウム属種(Faecalibacterium sp.)細胞バッチが約5×10CFU/mLを含む、実施形態50の製造方法。
【0284】
57.ラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)細胞を酵母ベースの増殖培地内で培養して、ラクトバシラス・クリスパタス(DSM 33187)細胞バッチを得ることを含む、ラクトバシラス・クリスパタス(DSM 33187)を含む細菌共生体を含む医薬組成物の製造方法。
【0285】
58.ラクトバシラス属種(Lactobacillus sp.)細胞バッチが5×10CFU/mLを含む、実施形態57の製造方法。
【0286】
59.実施形態1~27のいずれか1つの医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における疾患の治療方法。
【0287】
60.対象がヒトである、実施形態59の方法。
【0288】
61.ヒト対象が約18歳~約40歳である、実施形態60の方法。
【0289】
62.ヒト対象が乳児または新生児である、実施形態60の方法。
【0290】
63.乳児が約0.5歳~約3歳である、実施形態62の方法。
【0291】
64.新生児が6月齢以下である、実施形態62の方法。
【0292】
65.新生児が3月齢以下である、実施形態62の方法。
【0293】
66.医薬組成物を対象に経口投与する、実施形態57の方法。
【0294】
67.細菌共生体がアッケルマンシア・ムシニフィラ(A.muciniphila)(DSM 33213)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(F.prausnitzii)(DSM 33185)およびラクトバシラス・クリスパタス(L.crispatus)(DSM 33187)からなる、実施形態59の方法。
【0295】
68.疾患が炎症性疾患である、実施形態59の方法。
【0296】
69.炎症性疾患がアレルギーまたは皮膚炎である、実施形態59の方法。
【0297】
70.アレルギーがアレルギー性喘息、アレルギー性小児喘息または食物アレルギーである、実施形態69の方法。
【0298】
71.疾患が代謝性疾患である、実施形態59の方法。
【0299】
72.代謝性疾患が肥満、糖尿病またはメタボリックシンドロームである、実施形態71の方法。
【0300】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に示され記載されているが、そのような実施形態は単なる例示として記載されているに過ぎないことが当業者に明らかであろう。本発明は、本明細書に記載されている特定の具体例によっては限定されないと意図される。本発明は前記明細書を参照して説明されているが、本明細書における実施形態の記載および例示は限定的な意味では解釈されないと意図される。本発明から逸脱することなく、多数の変形、変化および置換が当業者に今や見出されるであろう。更に、本発明の全ての態様は、種々の条件および変数に依存する、本明細書に記載されている特定の描写、構成または相対的比率に限定されないと理解される。本明細書に記載されている本発明の実施形態に対する種々の代替実施形態が本発明の実施の際に使用されうると理解されるべきである。したがって、本発明は任意のそのような代替形態、修飾、変形または均等物をも含むと想定される。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定め、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構成ならびにそれらの均等物はそれらに含まれると意図される。
図1
図2
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【配列表】
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