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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】血液処理デバイスの流体流れ制御
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20250123BHJP
【FI】
A61M1/16 115
A61M1/16 163
A61M1/16 111
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022549199
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2021051610
(87)【国際公開番号】W WO2021164989
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】102020104101.2
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】イルガング トビアス
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-503301(JP,A)
【文献】特開平01-270873(JP,A)
【文献】特表2002-521141(JP,A)
【文献】特開平02-071754(JP,A)
【文献】特開2009-240825(JP,A)
【文献】特表2012-510826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理デバイスであって、
閉鎖流体システムとして形成することができるライン部分(14)と、第1の濃縮物溶液を供給するために少なくとも1つの第1の濃縮物供給ライン(26)と、を備える流体流れを誘導する流体ラインシステム(10)と、
前記流体ラインシステム(10)内の流体を搬送するための流体ポンプ(11)と、
前記流体ラインシステム(10)の状態を捕捉するための決定手段(13;23;33;29)と、
前記流体流れを制御するための制御ユニットと、を有する血液処理デバイスにおいて、
前記制御ユニットは、前記決定手段(13;23;33;29)によって捕捉された前記状態が予め決められた条件を満足するときにのみ前記ライン部分(14)が閉鎖流体システムを形成するように構成され
前記第1の濃縮物溶液を前記第1の濃縮物供給ライン(26)に移送するための接続手段(28)と、
前記接続手段(28)をその中に導入することができるチャンバ(27)と、
前記接続手段(28)の位置を捕捉するための接続手段センサ(29)と、を更に有し、
前記決定手段は、前記接続手段センサ(29)を備え、前記予め決められた条件は、前記接続手段(28)の前記位置が位置条件を満足したときにのみ満足される、
ことを特徴とする血液処理デバイス。
【請求項2】
前記第1の濃縮物供給ライン(26)内で支配的な第1の濃縮物値を捕捉するための第1の濃縮物センサ(23)を有し、前記決定手段が、前記第1の濃縮物センサ(23)を備え、前記予め決められた条件は、前記第1の濃縮物値が第1の濃縮物値条件を満足したときにのみ満足され、
前記第1の濃縮物供給ライン(26)から下流の前記流体ラインシステム(10)内で支配的な混合流体値を捕捉するための混合流体センサ(13)を備え、前記決定手段は、前記混合流体センサ(13)を備え、前記予め決められた条件が、前記混合流体値が混合流体値条件を満足したときにのみ満足される、
請求項1に記載の血液処理デバイス。
【請求項3】
濃縮物供給モードを捕捉するための手段を更に有し、
前記予め決められた条件は、位置条件が満足される時かつ前記捕捉された濃縮物供給モードが、濃縮物供給が前記捕捉された位置で前記接続手段(28)を通して起こる濃縮物給モードであるときにのみ満足される、
請求項に記載の血液処理デバイス。
【請求項4】
第2の濃縮物溶液を供給するための第2の濃縮物供給ライン(36)と、
前記第2の濃縮物供給ライン(36)内の第2の濃縮物値を捕捉するための第2の濃縮物センサ(33)であって、前記決定手段が、該第2の濃縮物センサ(33)を備える前記第2の濃縮物センサ(33)と、を更に有し、
前記予め決められた条件は、前記第2の濃縮物値が第2の濃縮物値条件を満足したときにのみ満足される、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【請求項5】
前記接続手段センサは、磁気センサ又は接触センサ、特に、ホールセンサ又は機械スイッチを有する、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【請求項6】
前記接続手段センサ(29)は、前記血液処理デバイスの前記チャンバ(27)上に配置され、及び/又は前記接続手段センサ(29)は、前記血液処理デバイスに送出される濃縮物容器に取り付けられるように形成される、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【請求項7】
前記第1及び/又は第2の濃縮物センサ(33,23)が、コンダクタンスセンサ又は導電率センサ又は超音波センサであり、及び/又は前記混合流体センサ(13)が、伝導度センサ又は導電率センサ又は超音波センサである、
請求項に記載の血液処理デバイス。
【請求項8】
ライン分岐(15)をさらに有し、前記ライン分岐(15)は、前記ライン部分(14)を通じた流体流れのときに該ライン分岐(15)を通して流体流れを接続することができるように前記ライン部分(14)の少なくとも1つの部分的部分と平行に形成され、
さらに、前記ライン分岐(15)内の透析器(9)を有する、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【請求項9】
前記流体ラインシステム(10)内にロッキング要素(91,92)を更に有し、
前記制御ユニットは、少なくとも前記ロッキング要素(91,92)を制御することによって前記ライン部分(14)を閉鎖流体システムとして形成するように構成される、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【請求項10】
前記ライン部分(14)内の圧力値を捕捉する圧力センサ(16)を更に有し、
前記制御ユニットは、前記決定手段(13;23;33;29)によって捕捉された前記状態が前記予め決められた条件を満足したときにのみ前記ライン部分(14)内で圧力保持試験を実施するように構成され、
この圧力保持試験では、600から800mmHgの圧力が、前記ライン部分(14)内の前記流体に印加され、該ライン部分(14)内の前記圧力値が予め決められた期間中に捕捉され、該ライン部分(14)内の漏出に対する結論を前記圧力値の変化から引き出すことができる、
請求項1ないしのいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【請求項11】
この圧力保持試験では、700から750mmHgの圧力が、前記ライン部分(14)内の前記流体に印加される、
請求項10に記載の血液処理デバイス。
【請求項12】
前記第1の濃縮物溶液を搬送するための少なくとも1つの第1の濃縮物ポンプ(25)を更に有する、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の血液処理デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液処理デバイス、並びに血液処理デバイス内の流体流れを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液処理デバイスという用語は、透析機械として理解されるものとする。透析機械は、慢性腎臓病を治療するために透析センターで使用されることが多い。高い安全性要件に加えて、透析センターで透析機械を使用するタイミングが、特別な役割を果たす。
【0003】
血液処理デバイスの使用では、特に透析処置の場合に、特に厳密なスケジュールの遵守が、以下に言及する理由から不可欠である。一方で、透析センターでの透析処置の場合、使用される透析機械は、4ないし5時間の処置時間と共に1台の透析装置で1日につき3人を治療することができるように、様々な透析患者の個々の処置に日常的に割り当てられる。
【0004】
治療されることになる個人、すなわち、患者を準備するために処置間に必要な時間、並びに例えば透析機械を殺菌するのに必要な時間のような他の段階は、常に時間最適化の対象である。処置が遅延される場合に、その後の処置及び従って患者のスケジュールだけでなく医療スタッフ、看護スタッフ、又は腎臓専門医のスケジュールも変更しなければならない。そのような変更の結果は、医療スタッフの超過勤務及びストレス、さらには、例えば透析機械の好ましくない利用に起因してそれぞれの処置センターに対するコストを生じさせることがある。
【0005】
この緊密なタイミングのため、処置間の時間を可能な限り短く保たなければならないだけでなく、処置中の中断も可能な限り短く保つ必要がある。
【0006】
その後の処置が、処置の頻繁な中断に起因して遅延される場合に、これは、処置センター及びスタッフに対して不利をもたらすだけでなく、処置の遅延は、患者に対しても不利な影響を及ぼす。
【0007】
処置が、例えば、翌日に、又は休日及び週末に起因して更に数日にわたり遅延される場合に、これは、健康を危険にする結果に至る場合がある。過剰水分レベル、並びに尿中物質の蓄積に起因する毒作用増加は、患者の健康に対して重大な影響を有する。
【0008】
これに加えて、長時間の処置は、患者の健康に悪影響を及ぼす。患者が、定期的な処置にも関わらず、可能な限り普通である日常生活を送ることを可能にすることが目標である。処置は、すなわち、必要以上に時間を取ってはならない。
【0009】
上記に列挙した時間重視の処置状況に加えて、患者の安全を保証することができるように血液処理デバイスの適正作動を絶えずモニタすることが有利である。
【0010】
透析処置中の安全を保証するための様々な安全システムが公知である。適正作動を検査するために、処置は、一部の安全性試験を実施するときに中断される可能性がある。例えば、圧力保持試験は、DE 4239937 C2から安全性システムとして公知である。
【0011】
この圧力保持試験の開始ときに、予め決められた量の流体が透析液回路の中に搬送される。流出弁は、予め決められた圧力を確立することができるように圧力保持試験中は閉じられる。この試験中は、透析液回路は、透析液が透析器の中に到達することができないように前進バイパス状態にある。
【0012】
透析液回路内の流体圧力の曲線は、透析液回路内の1又はいくつかの点で測定された圧力値から決定することができる。圧力保持試験は、例えば、8秒の長さの時間にわたってかつ処置中に定期的に行われる。
【0013】
圧力保持試験を実施するために生理的でない(非生理的な)流体がここで透析液の中に到達する場合に、この流体は、この非生理的流体が患者に到達することを防ぐために処置を継続する前に透析液回路から除去されなければならない。
【0014】
非生理的流体を検出するために、例えば透析液回路に流体の組成をモニタするための導電率センサが設けられる。導電率センサを用いて非生理的流体が捕捉された場合に、この流体は、すなわち、既に透析液回路に到達している。この目的のために、導電率センサは、測定値を設定値又は設定値範囲と比較することができ、血液処理デバイス又はその制御器は、それぞれ逸脱の場合に非生理的流体を検出することができる。
【0015】
透析液回路から非生理的流体を除去するために、非生理的流体の明確な検出の後で時間依存式洗浄が行われるべきであり、処置の中断が延長される。上記に明示した悪影響が、そこからもたらされる可能性がある。
【0016】
圧力保持試験に起因する処置の中断を低く保つための労力が従来技術で為されている。例えば、EP 1327457 B1は、圧力保持試験の実施に起因する血液処理の中断なしでモニタを可能にする流体システム内の漏出を検出する方法を開示している。圧力保持試験は、すなわち、漏出の高い可能性がある時だけ行われる。漏出に関する高い可能性が検出された場合に、従って、処置もこの方法に応答して中断され、圧力保持試験が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】DE 4239937 C2
【文献】EP 1327457 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本出願は、すなわち、特に圧力保持試験の実施に起因する血液処理の中断を可能な限り短く保ち、同ときに患者の安全を保証するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、請求項1に記載の血液処理デバイスを用いて及び請求項13に記載の血液処理デバイス内の流体流れを制御する方法を用いて解決される。有利な更に別の改良及び実施形態は、従属請求項の主題である。
【0020】
本発明により、ライン部分と第1の濃縮物溶液を供給するための少なくとも1つの第1の濃縮物供給ラインとを備える流体流れを誘導するための流体ラインシステムを有する血液処理デバイスを提供する。ライン部分は、閉鎖流体システムとして形成することができる。血液処理デバイスは、更に、流体ラインシステム内の流体を搬送するための流体ポンプ、並びに流体ラインシステムの状態を捕捉するための決定手段、及び流体流れを制御するための制御ユニットを有する。血液処理デバイスは、決定手段によって捕捉された状態が予め決められた条件を満足するときにのみライン部分が閉鎖流体システムを形成するように制御ユニットが構成されることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、閉鎖流体システムは、流体の流入も流出も起こらない流体システムである。閉鎖流体システム内でのある一定の時間の後に、流体は、停止状態になり、すなわち、流体流れは起こらず、閉鎖流体システム内で支配的な動圧がゼロに近づき、全圧が静圧にほぼ対応する。
【0022】
流体ラインシステムは、閉鎖流体システムとして形成することができるライン部分を有する。言い換えれば、流体ラインシステムの部分的部分は、流体をこの部分的部分に保持することができるように分離することができる。
【0023】
ライン部分に加えて、流体ラインシステムは、濃縮物供給ラインを有する。この濃縮物供給ラインは、濃縮物供給ラインを通して搬送される流体、例えば、濃縮溶液がライン部分の中に到達することができるようにライン部分に直接的又は間接的に接続される。
【0024】
制御ユニットは、血液処理デバイス内に配置された少なくとも1つの流体ポンプ及び/又はロッキング要素を系統的に制御することによって流体流れを制御する。制御ユニットによって制御することができるこれらの要素はまた、血液処理デバイスの外側に配置することができる。
【0025】
決定手段は、流体ラインシステムの状態を捕捉する。決定手段は、特に、流体ラインシステムに存在する流体の状態を捕捉する。決定手段は、流体センサとすることができる。代わりに又は同ときに、決定手段は、接続手段の位置を捕捉するためのセンサとすることができ、すなわち、決定手段は、いくつかの物理センサ、例えば、導電率センサ及び/又は伝導度センサ及び/又は磁気センサ及び/又は接触センサを有することができる。言い換えれば、決定手段は、いくつかの要素を有することができる。決定手段は、流体ラインシステム内の異なる位置に配置された2つの流体センサだけを有することもできる。
【0026】
ライン部分は、決定手段によって捕捉された流体ラインシステムの状態が予め決められた条件を満足するときにのみ閉じられ、すなわち、閉鎖流体システムが形成される。
【0027】
流体ラインシステムの状態の予め決められた条件は、上限及び/又は下限によって定められる値範囲を指定することができる。しかし、予め決められた条件は、更に存在だけを検出することができる。予め決められた条件は、例えば、流体の存在として又は接続手段の存在として定めることができる。
【0028】
状態が予め決められた条件を満足しないときに、これは、ライン部分が閉鎖流体システムを形成しないことを意味する。言い換えれば、流体は、ライン部分から外に誘導される。流体は、ライン部分から外に誘導することができ、すなわち、流出弁が開かれ、一方で流体は、同ときにライン部分に供給することができ、すなわち、流入弁も同じく開かれる、そのいずれかである。これに代えて、流体は、ライン部分から外に誘導することができるだけであり、一方で流体は、ライン部分に供給されず、言い換えれば、ライン部分は、流体が空にされる。閉鎖流体システムは、決定手段によって捕捉された状態、すなわち、流体の存在及び/又は流体の組成及び/又は接続手段の位置が予め決められた条件を満足するときにのみ形成される。
【0029】
特許請求の範囲による血液処理デバイスに起因して、処置の中断は、可能な限り短く保たれる。これは、取りわけ、流体値が予め決められた条件を満足するときにのみ閉鎖流体システムが形成されるということで達成される。すなわち、圧力保持試験がこれに必要な条件が満足されないときであっても実施されることが防止される。すなわち、例えば非生理的流体が捕捉されたときに、より早期の時点での圧力保持試験の実施を防止することができる。
【0030】
その結果、予め決められた条件が満足されない時、例えば、非生理的流体が存在するときに、圧力保持試験の実施が回避される。時間の節約に加えて、患者の安全も保証される。非生理的流体は、血液処理デバイスに保持されない。非生理的流体が患者に到達する可能性は、更に低減される。
【0031】
血液処理デバイスの更に別の改良により、血液処理デバイスは、第1の濃縮物供給ライン内で支配的な第1の濃縮物値を捕捉するための第1の濃縮物センサを更に有することができ、決定手段は、第1の濃縮物センサを備える。この更に別の改良では、予め決められた第1の条件は、第1の濃縮物値が第1の濃縮物値条件を満足するときにのみ満足される。これに加えて又はこれに代えて、血液処理デバイスは、第1の濃縮物供給ラインから下流の流体ラインシステム内で支配的な混合流体値を捕捉するための混合流体センサを有することができ、混合流体センサは、決定手段とすることができる。この追加又は代替の更に別の改良の場合では、予め決められた条件は、混合流体値が混合流体値条件を満足するときにのみ満足される。
【0032】
言い換えれば、決定手段は、濃縮物センサ及び/又は混合流体センサとすることができる。これは、第1の代替では、第1の濃縮物値並びに混合流体値の各々が予め決められた条件を満足するときにのみ予め決められた条件が満足されることを意味する。混合流体値及び濃縮物値に対する予め決められた条件は、各々が異なる条件とすることができる。
【0033】
流体ラインシステムの状態、ここでは流体の特性を捕捉するための濃縮物センサ及び/又は混合流体センサとしての決定手段は、流体の1又はいくつかの化学組成を捕捉するセンサとすることができる。しかし、決定手段はまた、流体の組成を捕捉することなく流体の存在だけを表示するインジケータとすることができる。
【0034】
決定手段が流体の特性を捕捉するとき、及びこの捕捉された流体特性が、この場合に予め決められた条件を予め決定する予め決められた値範囲内にないときに、予め決められた条件は、すなわち、満足されない。流体の組成は、本発明に関しては流体特性として理解されるものとする。組成は、ゼロで始まる範囲を網羅することができ、ゼロは、流体が存在しないことを意味する。
【0035】
第2の代替では、この状態は、濃縮物値並びに混合流体値がそれぞれの予め決められた条件を満足するときにのみ予め決められた条件を満足する。言い換えれば、濃縮物値又は混合流体値がそれぞれの予め決められた条件を満足するときであっても、第2の代替での状態が予め決められた条件を満足しないという状況が起こるときがある。濃縮物値及び/又は混合流体値がそれぞれの予め決められた条件を満足しない場合に、これは、本発明に関しては、混合流体センサの濃縮物センサによって捕捉された流体ラインシステムの状態が予め決められた条件を満足しないことを意味する。
【0036】
本発明に関して第1の濃縮物値は、第1の濃縮物供給ラインに存在する濃縮物溶液の組成の特性を指す。濃縮物溶液は、血液処理デバイスに供給される更に別の流体と共にもたらされて従って混合流体を形成する流体である。本発明に関して混合流体値は、すなわち、混合流体の組成の特性を指す。本発明により、混合流体は、すなわち、濃縮物供給ラインから下流でのみ形成される。
【0037】
流体ラインシステム内の異なる点での流体の特性の個別の捕捉により、非生理的流体が迅速に捕捉される可能性が高まる。非生理的流体が検出される可能性は、異なる点での流体特性の捕捉によって同ときに高められる。
【0038】
更に別の改良により、血液処理デバイスは、第1の濃縮物溶液を第1の濃縮物供給ラインの中に移送するための接続手段、並びに接続手段をその中に導入することができるチャンバを更に有することができる。血液処理デバイスは、接続手段の位置を捕捉するための接続手段センサを更に有することができる。この更に別の改良の場合に、決定手段は、接続手段センサを備え、予め決められた条件は、接続手段の位置が位置条件を満足するときにのみ満足される。
【0039】
本発明に関して接続手段は、流体の移送を可能にする手段である。接続手段は、チャンバに対して移動することもできる管状要素である。言い換えれば、接続手段は、それを用いて流体を搬送することができる可撓性接続部、例えば、ホース配置、又は剛性接続要素、例えば、吸引ワンドとすることができる。流体は、負圧を印加することによって濃縮物供給ラインの中に押し込むことができ、ポンプを通して搬送することができ、又は負圧を発生させることによって引き込むことができる。
【0040】
本発明による接続手段センサは、接続手段の位置を捕捉することができる。接続手段センサは、接続手段の位置を接続手段の存在として肯定方式で捕捉することができる。しかし、本発明に関して位置の捕捉は、接続手段が存在しないことを接続手段センサが捕捉するように否定的な捕捉を意味することもできる。接続手段センサは、接触センサ、光センサ、又は磁気センサとすることができる。
【0041】
本発明でチャンバは、血液処理デバイスに形成されて周囲区域への開口部を有するキャビティである。接続手段は、この開口部を通してチャンバの中に導入することができる。その寸法に関して、チャンバは、すなわち、接続手段が脱落することが防止されるように接続手段に対して適応される。例えば、接続手段と相互作用するロッキング機構を特にチャンバ上に形成することができる。
【0042】
接続手段が生理的流体を搬送することができる位置にないことが接続手段センサの補助によって捕捉される場合に、非生理的流体が血液処理デバイスに存在する状態は、すなわち、流体センサ、混合流体センサ、又は濃縮物センサによる非生理的流体の捕捉の前であっても検出することができる。
【0043】
この更に別の改良では、非生理学的流体が早期に検出される可能性が更に高まる。非生理的条件、例えば非生理的流体の存在の場合に、圧力保持試験の実施は防止することができる。これは、対応する制御に応答して圧力保持試験が可能な限り早期に中断されるか又は時間集中的な洗浄工程を防止することができるので、特に時間節約の利点をもたらす。
【0044】
更に別の改良により、血液処理デバイスは、濃縮物供給モードを捕捉するための手段を更に有することができる。この更に別の改良の場合に、予め決められた条件は、接続手段の位置が位置条件を満足する時、及び捕捉された濃縮物供給モードが、濃縮物供給が検出位置で接続手段を通して行われる濃縮物給モードであるときにのみ満足される。
【0045】
本発明に関して濃縮物供給モードは、血液処理デバイスの濃縮物供給のモードを指定する。濃縮物供給は、液体形態で提供される濃縮物溶液を通して又は乾燥濃縮物を通して行うことができる。第1の濃縮物供給モードの場合に、処置に必要である量の濃縮物は、濃縮物容器内で、液体形態で血液処理デバイスに送出される。濃縮物は、すなわち、既に溶液内に調製されている。
【0046】
言い換えれば、第1の濃縮液物給モードは、第1の濃縮物供給ラインの中への第1の濃縮物溶液の供給が接続手段を通して行われるモードとすることができ、第1の濃縮物溶液を供給するための第1の濃縮物供給モードにある接続手段は、チャンバに導入されない。
【0047】
別の濃縮物供給モードの場合に、液体形態で提供される濃縮物は、中央供給を通して供給される。この目的のために、中央供給接続部が、血液処理デバイス上に設けられる。中央供給ラインは、中央供給接続部を通して接続される。この濃縮物供給モードの場合に、濃縮物リザーバが、血液処理デバイスから距離を置いて、例えば異なる部屋に設けられる。
【0048】
濃縮物供給の更に別の代替の場合に、濃縮物は、濃縮物バッグ内の乾燥濃縮物として血液処理デバイスに割り当てることができる。例えば、乾燥濃縮物は、濃縮物バッグ内で血液処理デバイスに取り付けることができる。
【0049】
濃縮物供給モードが、血液処理デバイスの場合に接続手段の位置に加えて捕捉される場合に、非生理的流体が実際に存在する可能性が高まる。非生理的流体が存在しない場合でも流体ラインシステムが予め決められた条件を満足しないことを決定手段が捕捉する事象が起こる可能性は、低減される。言い換えれば、圧力保持試験の不要な防止が回避される。
【0050】
更に別の改良により、血液処理デバイスは、第2の濃縮物溶液を供給するための第2の濃縮物供給ライン、並びに第2の濃縮物供給ライン内の第2の濃縮物値を捕捉するための第2の濃縮物センサを更に有することができる。この更に別の改良の場合に、決定手段は、第2の濃縮物センサを備え、予め決められた条件は、第2の濃縮物値が第2の濃縮物値条件を満足するときにのみ満足される。
【0051】
本発明に関して第2の濃縮物供給ラインは、流体、より正確には濃縮物溶液がそれを用いて供給される更に別の供給ラインである。第2の濃縮物供給ラインは、その後に更に別の流体、例えば、浸透物に供給されるようにかつ混合流体を形成するように最初に第1の濃縮物供給ラインと融合することができる。これに代えて、第1又は第2の濃縮物供給ラインは、その後に第1又は第2の濃縮物溶液と融合することができるように最初に更に別の流体と融合することができる。これに代えて、第1及び第2の濃縮物溶液は、同ときに、すなわち、混合点を通して供給することができ、すなわち、混合流体を形成することができる。
【0052】
この更に別の改良の場合に、予め決められた条件は、第2の濃縮物値が第2の濃縮物値条件を満足するときに満足される。第2の濃縮物条件は、第2の濃縮物の組成に対する条件である。第2の濃縮物値条件は、第1の濃縮物値条件とは異なる可能性がある。
【0053】
更に別の改良により、接続手段センサは、磁気センサ又は接触センサ、特に、ホールセンサ又は機械スイッチを有することができる。
【0054】
更に別の改良により、接続手段センサは、血液処理デバイスのチャンバ上で血液処理デバイス上に配置することができる。これに加えて又はこれに代えて、接続手段センサは、それを血液処理デバイスに送出することができる濃縮物容器に取り付けることができるように形成することができる。
【0055】
本発明に関して、接続手段センサは、血液処理デバイスのチャンバ上に配置することができる。言い換えれば、血液処理デバイスのチャンバ上に配置された接続手段センサは、それぞれ接続手段がチャンバに導入されているか否か又は接続手段が血液処理デバイスのチャンバに少なくとも部分的に位置付けられているか否かを捕捉する。接続手段センサは、接触センサ、例えば、ホールセンサとすることができる。
【0056】
これに代えて又はこれに加えて、接続手段センサは、チャンバから距離を置いた場所に位置付けることができる。接続手段センサは、すなわち、接続手段がチャンバから距離を置いて位置付けられ、すなわち、チャンバ内ではないことを捕捉することができる。
【0057】
接続手段上に並びにチャンバ上に配置されるセンサ配置も、すなわち、本発明によるソリューションによって捕捉される。磁石は、すなわち、接続手段に又は血液処理デバイスから距離を置いた場所で、例えば、血液処理デバイスに送出される濃縮物容器に取り付けることができる。対応する磁気センサは、濃縮物容器又は接続手段上に相補的部品として相応に配置することができる。血液処理装デバイスのチャンバ上に又は血液処理デバイスから距離を置いた場所で、例えば、濃縮物容器に配置されるホールセンサは、接続手段センサとして同様に捕捉される。
【0058】
更に別の改良により、第1及び/又は第2の濃縮物センサは、伝導度センサ又は導電率センサ又は超音波センサとすることができる。これに加えて又はこれに代えて、混合流体センサは、伝導度センサ又は導電率センサ又は超音波センサとすることができる。混合流体センサに使用されるものとは異なるタイプの濃縮物センサは、第1及び/又は第2の濃縮物センサに使用することができる。すなわち、異なるタイプのセンサ及び従って制御又は制御機構にそれぞれ起因してシステム安全性を高めることが可能である。
【0059】
更に別の改良により、血液処理デバイスは、ライン分岐を更に有することができる。ライン分岐は、ライン部分を通じた流体流れの場合にライン分岐を通して流体流れを接続することができるように、ライン部分の少なくとも1つの部分的部分と平行に形成される。透析器が、ライン分岐に更に配置される。
【0060】
本発明に関してライン分岐は、流体ラインシステムの部分的部分と平行に延びる流体ライン部分である。ライン分岐は、ライン部分を通じた流体流れの場合にライン部分を通して流体流れが起こらないように、ライン部分の部分的部分と平行に形成される。
【0061】
血液処理デバイスのこの更に別の改良により、血液処理デバイスは、ライン分岐に透析器を有する。血液処理デバイスは、この場合に透析機械として形成される。
【0062】
ライン分岐に透析器を形成することにより、安全性を高めることができる。透析器は、特に、流体がライン分岐と平行に延びるライン部分の部分を通して誘導されるということで、流体流れから切り離すことができる。ライン部分は、更に、閉鎖システムとして形成することができる。このシステム内の圧力曲線をモニタすることにより、システム構成要素、例えば、弁の作動は、流体の流入及び流出が起きない閉鎖システム内で検査することができる。
【0063】
更に別の改良により、血液処理デバイスは、流体ラインシステムにロッキング要素を更に有する。制御ユニットは、少なくともロッキング要素を制御することによってライン部分が閉鎖流体システムとして形成されるように構成することができる。
【0064】
本発明の更に別の改良により、血液処理デバイスは、ライン部分内の圧力値を捕捉するための圧力センサを更に有する。この更に別の改良の場合に、制御ユニットは、決定手段によって捕捉された状態が予め決められた条件を満足するときにのみライン部分内で圧力保持試験を実施するように構成される。この圧力保持試験の場合に、好ましくは600から800mmHg、より好ましくは700から750mmHgの圧力が、ライン部分内の流体に印加され、ライン部分内の圧力値は、予め決められた期間中に捕捉され、圧力値の変化からライン部分の漏出に対する結論を引き出すことができる。
【0065】
ライン部分は、閉鎖システムとして形成することができる。圧力保持試験は、閉鎖システム内で実施することができる。本発明に関して圧力保持試験は、透析器が処置中に規則的な時間間隔、例えば、8秒での短い時間間隔にわたって各場合に透析液回路から分離される場合の方法である。この短い時間期間中の圧力曲線は、少なくとも1つの圧力センサを用いた信号の検出によって捕捉される。システム及びシステム構成要素の状態に対する結論は、その後に、捕捉された圧力値、特に、圧力値の曲線から引き出することができ、可能な漏出を識別することができる。圧力保持試験中に透析液回路内で支配的な圧力、特に好ましくは+725mmHgは、処置中に存在する圧力よりも上にある。
【0066】
更に別の改良により、血液処理デバイスは、第1の濃縮物溶液を搬送するための少なくとも1つの第1の濃縮物ポンプを有することができる。
【0067】
第1の濃縮物溶液を搬送するための濃縮物ポンプは、第1の濃縮物供給ライン内に配置することができる。これに代えて、濃縮物ポンプはまた、第1の濃縮物供給ラインから距離を置いて配置することができ、かつ例えば第1の濃縮物供給ライン内に負圧を発生させることによって第1の濃縮物溶液を搬送することができる。
【0068】
上記に言及した利点を備える血液処理デバイス内の流体流れを制御する方法を更に提案する。
【0069】
閉鎖流体システムとして形成することができるライン部分と第1の濃縮物溶液を供給するための少なくとも第1の濃縮物供給ラインとを備える流体流れを誘導するための流体ラインシステムを有する血液処理デバイス内の流体流れを制御する方法は、決定手段を用いて流体ラインシステムの状態を検出する段階と、その状態を予め決められた条件と照合する段階とを有する。
【0070】
本方法は、流体ラインシステムの状態が予め決められた条件を満足するときにのみライン部分が閉鎖流体システムを形成することを可能にすることによって特徴付けられる。
【0071】
本方法の更に別の改良が提供され、血液処理デバイスは、第1の濃縮物供給ライン内で支配的な第1の濃縮物値を捕捉するための決定手段として第1の濃縮物センサを有し、予め決められた条件は、濃縮物値が濃縮物値条件を満足するときにのみ満足され、及び/又は血液処理デバイスは、濃縮物供給ラインから下流の流体ラインシステム内の混合流体値を捕捉するための決定手段として混合流体センサを有し、予め決められた条件は、混合流体値が混合流体値条件を満足するときにのみ満足される。
【0072】
本方法に加えて又はその代替として更に別の改良が提供され、血液処理デバイスは、チャンバ、及びチャンバの中に導入することができる接続手段、並びに接続手段の位置を捕捉するための決定手段としての接続手段センサを有し、接続手段センサを用いて接続手段の位置を検出する段階を更に有し、予め決められた条件は、接続手段の位置が位置条件を満足するときにのみ満足される。
【0073】
特許請求の範囲によるこのソリューションに起因して、非生理的流体は、特に可能な限り早期に、例えば、それが透析液回路に到達する前に検出される。処置の中断は、すなわち、圧力保持試験が、非生理的流体が検出されるや否やそれぞれ直ちに終了されるか又は圧力保持試験の開始が回避されることで可能な限り短く保つことができる。その結果、圧力保持試験の実施は、非生理的条件が手元にある時、すなわち、流体値に対する条件が満足されないときに回避することができる。時間的な利点に加えて、患者の安全性が、これに加えて、非生理的流体に圧力が印加される閉鎖システムが形成されないので保証される。
【0074】
制御器は、更に、非生理的液体が可能な限り早期の時点で、例えば、透析液回路に到達する前に検出されるので、透析液回路の時間を消費する洗浄工程が防止されるように設計することができる。
【0075】
本発明の上述の特徴及び機能、並びに更に別の態様及び特徴は、同封の図を参照する好ましい実施形態の詳述に基づいて以下でより詳細に説明する。同一の特徴/要素及び同じ機能を備える特徴/要素は、図では同じ参照番号で識別される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】血液処理デバイスの図である。
図2】血液処理デバイスの濃縮物供給配置の断面図である。
図3】血液処理デバイス内の流体流れを制御する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、図1を参照して第1の実施形態について説明する。ここで図1は、血液処理デバイスの簡略化した図解を示す。図1に示す例示的実施形態では、血液処理デバイスは透析機械である。
【0078】
図1に示す血液処理デバイスの場合に、処置されることになる血液は、体外血液回路内の透析器9の血液チャンバを流れる。透析液は、透析液回路を通り、向流の原理で、透析器9の透析液チャンバを通って流れる。その場合に、血液チャンバ及び透析液チャンバは、半透膜によって分離されている。
【0079】
血液から除去されることになる物質は、半透膜を通過して透析液に入り、ここでは透析物と呼ぶ透析液を通して排出される。同時に、圧力勾配によって血液中から過剰量の液体を限外濾過することができる。除去されることになる流体は、限外濾過ポンプの補助によって搬送される。
【0080】
患者の血液を浄化するために、血液は、シャントにより動静脈瘻を通して患者から引き出され、体外血液回路に誘導される。その場合に、血液の搬送は、ここでは図示しない血液ポンプの補助によって行われる。浄化された血液は、透析器9を出て、その後に再び患者に供給される。
【0081】
血液処理デバイスの流体供給は、透析水接続部1と、圧力を例えば約0.5barに下げる下流に接続された減圧弁4と、吸入調整器5とを通して行われる。浸透物、すなわち、軟化されて濾過された水は、透析水接続部1を通して供給される。透析機械としての血液処理デバイスに関するここで説明する例示的実施形態では、浸透物は、ベース流体である。
【0082】
透析液は、透析器9を通過した後に、透析液排出ライン及び流出弁61を通して流出部へ供給される。新鮮な透析液の加熱は、透析液を通じた熱交換器7によって行われ、その後に、例えば加熱コイル又は加熱ロッドを使用して、更にその流体を加熱することができる。更に、透析液は、脱気チャンバ8で脱気を受ける。空気の溶液を搬送するために、浸透物は、これを目的とする脱気調整器81を使用して負圧に露出される。すなわち、温度上昇と圧力低下により、空気は、下流に接続された空気分離器82を通して気泡の形で脱気することができる。
【0083】
浸透物は、流体ポンプ11の補助によって搬送される。流体ポンプ11は、例えば、歯車ポンプ、膜ポンプ等として形成することができる。流体ポンプ11を歯車ポンプとして形成した場合に、歯車ポンプの周りにバイパスが形成されるので、流体流れを防止するときに歯車ポンプを止める必要がない。上述のように、透析液は、フローポンプと流れ方向に続く平衡チャンバ3とを通して流出部に供給される。
【0084】
ベース流体、ここでは浸透物の脱気後に、少なくとも1つの濃縮物溶液を混合することにより、混合流体、ここでは透析液が生成される。新鮮な透析液を提供するために、透析水接続部1を通して供給される浸透物と、例えば、ここでは図示しない濃縮物容器から供給される重炭酸濃縮物溶液及び酸濃縮物溶液のような2つの濃縮物溶液とがこうして混合される。
【0085】
図2に示すように、濃縮物溶液は、濃縮物ポンプ25,35を通して搬送することができる。濃縮物ポンプ25,35は、例えば、往復動ポンプ、膜ポンプ、又は歯車ポンプとして形成することができる。配分する段階、すなわち、酸濃縮物及び重炭酸塩の浸透物との予め決められた比率での混合は、容量分析的に行われるか又は導電率で制御されるものとすることができる。この例示的実施形態に示す容量分析的な配分の場合に、供給量は、例えば、往復動ポンプのような濃縮物ポンプ25,35を使用してクロック式供給によって供給量に到達する。
【0086】
しかし、これに代えて、配分は、配分が導電率センサを使用して制御される導電率制御方式で行うことができる。濃縮物の供給量は、望ましい導電率に達するまで増加される。混合によって生成された透析液は、その後に、平衡チャンバ3の一部を通って流れ、従って透析液回路の中に到達する。平衡チャンバ3は、新鮮な透析液と使用済みの透析液である透析液とを平衡させる。透析器9の上流は、透析液の正しい組成を検査するために混合流体センサ13が接続される。混合流体センサ13の下流は、例えば、導電率センサとして形成されたバイパス弁17が接続される。
【0087】
透析処置中に混合流体センサ13が非生理的な流体、すなわち、予め決められた条件、例えば、予め決められた導電率を満足しない流体を検出したときにバイパス弁17が開かれる。
【0088】
バイパスを形成し、すなわち、透析器9を通るライン分岐15を通じた流体流れを防止するために、ロッキング要素91,92を作動させる。特に、透析器9への透析液の取り入れと排出を制御する透析器吸入弁91及び透析器排出弁92は、その場合に閉じられる。従って、透析液は、ライン部分14を通して流れる。弁は、電磁弁として形成することができる。その結果、非生理的流体が透析器9に到達することが防止される。患者の安全性が保証される。
【0089】
透析液の正しい組成のモニタに加えて、例えば、漏出の存在について、血液処理デバイスの作動も検査して患者の安全性を保証することができる。システム内の漏出の可能性を見極めるために、圧力保持試験が行われる。この圧力保持試験の一部として少なくとも1つの圧力センサ16の信号モニタにより、安定状態からの逸脱を捕捉することができる。
【0090】
透析中に、圧力保持試験は、規則正しい時間間隔で、例えば、12.5分毎に実施される。この目的のために、透析器9は特定の時間間隔、例えば、8秒にわたって透析液回路から切り離される。このようにして、圧力保持試験を実施する間、ライン部分14は閉鎖流体システムとして形成される。この閉鎖流体システムを形成するために、制御ユニットは、流体流れを遮断するようにロッキング要素91,92を制御する。閉鎖流体システムを形成するために、平衡チャンバ3は、更に、平衡チャンバを通して流体流れが起こらない状態、すなわち、平衡チャンバ3の切替が行われない状態に保持される。
【0091】
透析器9が透析液回路から切り離されると、血液処理デバイスは、すなわち、バイパス作動状態になる。上述のように、透析器吸入弁91と共に透析器排出弁92も閉じられ、一方でバイパス弁17は開かれる。その結果としてライン分岐15は、対応する弁を閉じることにより、残りの流体ラインシステム10から切り離される。言い換えれば、弁の閉鎖後に、ライン分岐15と残りの流体ラインシステム10の間に流体流れは起こらない。可能な限り完全な試験を達成するために、ライン部分14に属する平衡チャンバ半体の変更は、2つの連続する圧力保持試験中に行われる。
【0092】
この事例では、このライン部分14は自己完結型システムを形成し、その場合に、安定した圧力を期待することができる。処置圧力に比べ、圧力保持試験中のライン部分14の圧力は増加する。漏出の可能性を検出するために、圧力保持試験中の圧力曲線を捕捉する。圧力低下が検出された場合に、漏出の存在を結論付けることができる。
【0093】
圧力保持試験の開始前に、透析液は、供給システムから及び従って濃度供給ライン26,36も通して望ましい圧力に達するまで供給される。ライン部分14の中への透析液の供給中に流体の流出は起こらないので圧力が高まる。この時点で混合流体センサ13により、ある条件の存在、例えば、期待値を満足しない導電率が測定された場合に、透析液回路内に非生理的流体が存在すると結論付けることができる。
【0094】
非生理的流体が検出された場合に、血液処理デバイスは、その非生理的流体が透析器9に到達することを防ぐために、上述のように、バイパス作動に切り換わる。非生理的流体の検出後に、洗浄プログラムで透析液回路を洗浄することができる。このようにして、透析液回路に存在する非生理学的流体が透析器9に到達することを防止することができる。
【0095】
例えば、圧力保持試験を実施するための閉鎖システムの形成は、非生理的流体が検出された状態で、本発明による血液処理デバイスを使用して防止される。このようにして、圧力保持試験を可能な限り早期の時点で防止し、又は既に開始されている圧力保持試験をそれぞれ終了させる。その結果、全体としての処置中断を可能な限り短くすることができる。
【0096】
図2に示すように、血液処理デバイスは、濃縮物を供給するための濃縮物供給ライン26,36を有する。これら濃縮物供給ライン26,36を通して、対応する量の濃縮物がそれぞれ各濃縮物ポンプ25又は36によって浸透物に供給され、こうして透析液の望ましい組成が達成される。
【0097】
それぞれの濃縮物は、濃縮物溶液として、すなわち、液体形態で浸透物に供給される。濃縮物センサ23、33は、いずれの場合にも、それぞれの濃縮物供給ライン26,36に配置される。濃縮物の供給又は濃縮物溶液の組成は、それぞれ、これらの濃縮物センサ23,33を使用してモニタすることができる。濃縮物供給ライン26,36を通じた濃縮物供給のモニタは、例えば、伝導度センサ又は導電率センサを使用して行うことができる。
【0098】
血液処理デバイスの濃縮物供給は、濃縮物容器に挿入された接続手段28,38を使用して濃縮物容器から血液処理デバイスまで行うことができる。図2に示す配置では、接続手段28,38は、血液処理デバイスのチャンバ27,37に挿入される。接続手段28,38がチャンバ27,37内に位置付けられるこの構成は、血液処理デバイスの洗浄工程を仮定していることになる。更に、接続手段28,38の位置は、後述するように、濃縮物供給モードに応じて異なる。その位置捕捉のために、図2に示す実施形態では、血液処理デバイスのチャンバ27,37に接続手段センサ29,39が取り付けられる。
【0099】
対応する液体形態の濃縮物溶液が、図2に示していない濃縮物容器内の透析処置のために調製される。このタイプの濃縮物供給は、ここでは第1の濃縮物供給モード(KVM)として理解される。これに代えて、濃縮物供給は、血液処理デバイスに締結されて乾燥濃縮物を含むバッグから又は中央濃縮物供給として設計することができる。
【0100】
それぞれの濃縮物に対する濃縮物供給が異なる方法で行われる変形も提供することができる。例えば、重炭酸塩の濃縮物供給は、バッグに充填される乾燥濃縮物として設計することができ、一方、酸濃縮物は、濃縮物容器内で液体形態で血液処理デバイスに送出される。
【0101】
濃縮物供給が濃縮物容器を通して液体形態で提供された濃縮物溶液から行われる第1の事例では、接続手段28,38、例えば、吸引ワンドは、それぞれの濃縮物容器に挿入される。これらの接続手段28,38は、濃縮物供給ライン26,36を通して濃縮物溶液を浸透物に供給する。
【0102】
乾燥濃縮物による濃縮物供給の第2の代替では、それぞれの接続手段28,38は、血液処理デバイスのチャンバ27,37、例えば、洗浄チャンバの中に挿入される。この代替の場合に、透析水接続部1を通して流入する供給システムからの流体の一部は、制御弁によって制御しながら乾燥濃縮物を備えるバッグに供給することができる。
【0103】
乾燥濃縮バッグ内に流体を供給した後に、この時点で流体となった濃縮物溶液は、それぞれの接続手段28,38が挿入されたチャンバ27,37を通して浸透物に同様に供給される。この目的のために、乾燥濃縮物を備えるバッグは、対応する接続部分で、例えば、供給ライン及び排出ラインが形成された突出部で血液処理デバイスに締結される。
【0104】
更に別の代替として、それぞれの濃縮物の濃縮物供給は、中央で行うことができる。この場合に、濃縮物容器は、各血液処理デバイスに設けられない。逆に、供給は収集キャニスタを通して行われ、この収集キャニスタは複数の血液処理デバイスに濃縮物を供給することができる。この目的のために、個々の血液処理デバイスは、この収集キャニスタに対するライン接続部を有する。この濃縮物供給の場合にも、それぞれの接続手段28,38は、血液処理デバイスのチャンバ27、37に挿入される。
【0105】
濃縮物供給が袋内の乾燥濃縮物によって行われる場合では、濃縮物溶液が濃縮物容器から供給されないことが検出される。このタイプの濃縮物供給は、例えば、追加のセンサシステムを使用して検出される。この場合に、接触センサ、例えば、ホールセンサは、血液処理デバイスのハウジングカバー上に配置することができ、このカバーは、乾燥濃縮物袋の締結に関連付けられる。これに代えて、このタイプの濃縮物供給は、血液処理デバイス上で手動で設定することができる。接続手段28,38は、このタイプの濃縮物供給中にチャンバ27,37内に挿入されたままである。
【0106】
濃縮物供給が中央で行われる場合に、これをセンサシステムによって検出することができる。この目的のために、血液処理デバイスの中央濃縮物供給に対する接続ラインに対して対応する接続点に接触センサを設けることができる。これに代えて、このタイプの濃縮物供給は、血液処理デバイス上で手動で選択することができる。
【0107】
このタイプの濃縮物供給とは独立に、濃縮物の流れは、対応する接続手段28,38及び対応する濃縮物供給ライン26,36を通して浸透物まで起こり、濃縮物の流れは、濃縮物供給ライン26,36に配置された流体センサ、より正確には第1の濃縮物センサ23と第2の濃縮物センサ33を通過する。上述のように、濃縮物供給ライン26,36に形成されるこれらの濃縮物センサ23,33は、濃縮物供給ライン26,36内で支配的な濃縮物溶液に関連付けられた情報を提供するセンサである。
【0108】
図2に示すように、濃縮物供給ライン26,36に配置された濃縮物センサ23,33が伝導度センサとして形成される場合に、それらは、濃縮物供給ライン26,36に流体が存在するか否かを検出する。これらの伝導度センサは、ある状態即ち導電性検出と、ある状態即ち導電性検出無しと、を区別することができ、従って、濃縮物流体の存在について洞察を与えることができる。導電性が検出されなかったという信号を濃縮物センサ23,33が発すると、圧力保持試験の開始は防止される。
【0109】
圧力保持試験中に血液処理デバイスが既にバイパス作動中であるという事実に起因して、非生理的流体の捕捉、例えば、濃縮物供給ライン26,36内の空気(導電率が検出されない状態)の検出という場合に、もはや切替を行うことができない。しかし、特許請求の範囲により、既に開始されている圧力保持試験を終了させるために、この信号が評価される。空気が透析液回路に到達することが防止される。この早期の時点で非生理的流体を既に検出することができる場合に、透析処置の中断を短くすることができる。流体値の条件を満足しないことが確実な場合に、圧力保持試験は行われない。非生理的液体が存在するときに流体値の条件は満足されない。
【0110】
上述のように、濃縮物センサ23,33を圧力保持試験の一部として評価することにより、既に開始された圧力保持試験を終了させるだけでなく、圧力保持試験の開始も防止することができる。従って、透析処置の中断を短くするために、濃縮センサ23,33の評価も圧力保持試験の一部として特許請求の範囲に従って行われる。
【0111】
上述のように、濃縮物センサ23,33に加えて、濃縮物供給のタイプを検出する圧力値センサを設けることができる。これらのセンサを評価することにより、非生理的流体を早期に検出し、圧力保持試験の防止を達成することができる。例えば、濃縮物供給が乾燥濃縮物で充填されたバッグを通して行われる場合に、これは、接触センサ、例えば、ホールセンサを使用して検出することができる。接触センサは、例えば、乾燥濃縮物バッグを締結するために作動される必要があるハウジングカバー上に配置することができる。
【0112】
接触センサ信号の評価でカバーが開いていると示された場合に、乾燥濃縮物を使用する濃縮物供給であると結論付けることができる。中央濃縮物供給を検出するために、中央ホースシステムを接続するための接続部分にも同様に接触センサを形成することができる。これに代えて又はこれに加えて、濃縮物供給のタイプは、血液処理デバイスで手動で選択することができる。
【0113】
濃縮物容器を通じた濃縮物供給が存在する場合に、この目的に対して、それぞれの接続手段28,38を対応する濃縮物容器に挿入することができる。しかし、それぞれの接続手段28,38がチャンバ27,37内に位置付けられることが捕捉されたときに、この事実から、生理的流体を引き込むことができない結果になる。この更に別の終了条件の場合に、最初に、どのタイプの濃縮物供給があるかを検出することができる。
【0114】
その後に、対応する接続手段28,38の位置を決定し、接続手段がそれぞれ濃縮物容器に挿入されているか、血液処理デバイスのチャンバ27,37に挿入されているか、又はその中に位置付けられるかを捕捉する。これは、例えば、接触センサの評価を通して行うことができる。この試験シーケンスの例示的進行を図3に示している。
【0115】
この場合に、段階101は圧力保持試験の開始を示している。段階102では、流体値が予め決められた条件を満足するか否かの問い合わせが行われる。流体値が予め決められた条件を満足する時(102b)、段階103では、濃縮物供給モードが第1の濃縮物供給モードであるか否かが決定される。この条件も満足されている場合(103b)、段階104では、接続手段28,38の位置が予め決められた条件を満足するか否かが決定される。対応する条件の決定が明確な結果を与える場合(102b、103b、104b)、段階105で圧力保持試験が実施される。
【0116】
それぞれの条件が満足されないときに、すなわち、流体値が予め決められた条件を満足しない場合に、段階202で圧力保持試験が終了する。濃縮物供給モードが第1の濃縮液供給モードであるという条件が満足されないときに、同様に段階203で圧力保持試験が終了する。接続手段28,38の位置が予め決められた条件を満足するという条件が満足されないときに、段階204で同様に圧力保持試験が終了する。
【0117】
段階の順序は、接続手段28,38の位置を最初に検出し、その後に濃縮物供給のタイプを検出するように変更することができる。
【0118】
図3に示す条件に加えて、更に別の条件を捕捉して、圧力保持試験の実施を決定することができる。同様に、図3に示す条件の全てを問い合わせる必要はない。例えば、流体値に関する条件の有無だけを検査すればよい場合もある。
【0119】
すなわち、対応する接続手段28,38が血液処理デバイスのチャンバ27,37に挿入され、濃縮物容器には挿入されていないことが検出された場合に、接続手段28、38が非生理的流体を引き出すという結論をそこから引き出すことができる。この場合も非生理学的流体が引き込まれて透析液回路に到達することを防止するために、それぞれ、圧力保持試験を防止するか又は終了させる。
【0120】
これに対して中央濃縮物供給又は乾燥濃縮物供給があること、言い換えれば、接続手段28,38を血液処理デバイスのチャンバ27,37内に挿入する必要がある濃縮物供給があることが検出された場合に、正確には圧力保持試験の終了は行われない。
【0121】
接続手段28,38が血液処理デバイスのチャンバ27,37に挿入されているか否かを検出するために、いずれの場合にも、図2に関して上述したように、接続手段センサ29,39又は位置検出センサは、接続手段28,38が挿入されたそれぞれのチャンバ27,37に割り当てることができる。この目的のために、例えば、磁気センサ又は接触センサ、ホールセンサなどを使用することができる。これに代えて、機械式スイッチ、例えば、圧力スイッチ、トグル又はロッカースイッチを使用することができる。
【0122】
この追加の情報、例えば、接続手段センサ29,39と共に流体センサ13,23,33、特に圧力保持試験の一部としての濃縮物供給ライン26,36内の濃縮物センサによって得られる濃縮物供給のタイプを評価することにより、非生理的流体を早期の時点で、より正確には透析液回路に到達する前に検出することができる。従って、予め決められた条件を満足しない場合に、圧力保持試験は行われない。非生理的流体が存在するときに、予め決められた条件が満足されない。
【0123】
その結果、必要な条件が満足されないときに閉鎖システムが形成されないので、透析処置の中断が短く保たれる。対応する制御が行われた場合に、例えば、透析液回路を洗浄するための時間を消費する洗浄を更に防止することができる。更に、非生理的液体が存在するときに、圧力保持試験を防止により、患者の安全性が改善する。
【0124】
圧力保持試験が行われる場合に、処置中に存在する圧力と比べて高い圧力が透析液回路内に起こる。非生理的流体が透析液回路に存在するときに、いずれにせよ、特許請求の範囲によるソリューションを使用して圧力保持試験の実施と高い圧力の発生とを防止することができる。
【0125】
制御器は、プロセッサ又はマイクロチップを有することができ、それぞれ、プログラムコードが格納されたストレージデバイスと組み合わせて血液処理デバイスで対応する制御を実行するように構成するか又はプログラムすることが可能である。プロセッサ又はマイクロチップは、それぞれ、取り分け、データを処理する及び/又は通信を引き受けるように設定される。プロセッサ又はマイクロチップは、それぞれ、構成事前設定値を使用してプログラムすることができ、次に、取りわけ、作動データ及び機械データを処理するための処理ユニットとしても機能する。
図1
図2
図3