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特許7624469治療用タンパク質送達のための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】治療用タンパク質送達のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20250123BHJP
   A61K 9/127 20250101ALI20250123BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20250123BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20250123BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20250123BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250123BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20250123BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250123BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20250123BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20250123BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20250123BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20250123BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250123BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20250123BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20250123BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K9/127
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K38/46
A61K38/47
A61K39/395 L
A61K47/64
A61K48/00
A61P3/00
A61P25/00
A61P43/00 111
C07K14/47
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/52 Z
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023026217
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2020542598の分割
【原出願日】2019-02-07
(65)【公開番号】P2023054256
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】62/627,721
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/777,683
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー バイク
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン シグナー
(72)【発明者】
【氏名】マリア プラガスティス
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/100467(WO,A1)
【文献】PUZZO FRANCESCO,RESCUE OF POMPE DISEASE IN MICE BY AAV-MEDIATED LIVER DELIVERY OF SECRETABLE ACID ALPHA-GLUCOSIDASE,SCIENCE TRANSLATIONAL MEDICINE,米国,2017年11月29日,VOL:9, NR:418,,PAGE(S):EAAM6375/1-12,http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aam6375
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61K 9/127
A61K 35/76
A61K 35/761
A61K 35/763
A61K 38/46
A61K 38/47
A61K 39/395
A61K 47/64
A61K 48/00
A61P 3/00
A61P 25/00
A61P 43/00
C07K 14/47
C07K 16/28
C07K 19/00
C12N 15/12
C12N 15/13
C12N 15/52
C12N 15/62
C12N 15/86
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の中枢神経系(CNS)に治療用タンパク質を送達するための組成物であって、
酵素ドメインと、CD63に結合する抗体もしくはその抗原結合部分とを含むマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、
前記酵素ドメインは、アルファ-グルコシダーゼ(GAA)を含み、
前記ポリヌクレオチドは、TTRプロモーターに作動可能に連結されており、
前記ポリヌクレオチドは、ウイルスベクターにあり、
前記組成物は、肝臓標的送達方法を介して、前記対象に投与され、前記ポリヌクレオチドは、肝臓デポから、前記マルチドメイン治療用タンパク質を産生、かつ、分泌し、前記ポリヌクレオチドが、前記対象の前記肝臓に送達された後に、前記肝臓デポが形成され、前記マルチドメイン治療用タンパク質の前記産生及び分泌は、連続した日、週又は月にわたって、少なくとも1μg/mLの一貫した血清レベルで発生する、組成物。
【請求項2】
前記ウイルスベクターが、アデノ関連ウイルス(AAVベクターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも1キログラムあたり2×1012ウイルスゲノム(vg/kg)の用量で使用される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合部分が、単鎖可変断片(scFv)を含む、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合部分が、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記マルチドメイン治療用タンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列、又はその断片を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号11に記載の核酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記対象の任意のCNS組織におけるグリコーゲンレベルが、処置後少なくとも9ヶ月間低下する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記対象が、ポンペ病を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記血清レベルが、少なくとも2μg/mLである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合部分が、CD63の細胞外ドメインに結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列表への参照
10457WO01_ST25.txtファイルに記述されている配列表は、33.5キロバイトであり、2019年1月29日に作成され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は一般に、リソソーム蓄積症の治療など、CNSを損なう疾患および障害を治療するために、治療用タンパク質を中枢神経系(CNS)に送達するための組成物および方法を対象とする。本出願は、血液脳関門(BBB)を通過する一つまたは複数の送達ドメインにコンジュゲートされた治療用タンパク質をコードするヌクレオチド組成物の治療有効量を提供することを目的としている。
【背景技術】
【0003】
薬物送達アプローチは、ナノ担体など、血液脳関門(BBB)を克服するために開発されてきたが、欠点がある。担体は、血液循環の不安定性および望ましくない生体分布プロファイルを示している(Gelperina S、et al.、2005、Am J Respir Crit Care Med.172(12):1487-90。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。また、BBBでの輸送機構、およびCNS疾患状態が関門の完全性を変えているかどうかによっても、標的化効率が低下している。標的化部分または担体の適切な選択は、これらの輸送機構に影響を与える神経炎症状態を考慮しなければならない。
肝臓または他の組織におけるDNA発現を介した治療用タンパク質の送達により、タンパク質のボーラス注射の必要性を排除し、したがって、免疫原性の懸念を軽減する便利なアプローチが提供される。受容体結合タンパク質、特に細胞特異的受容体にコンジュゲートした治療用タンパク質は、特定の組織に対する標的化治療薬の問題を解決する。しかしながら、CNSに効率的に治療を提供する方法を提供する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Gelperina S、et al.、2005、Am J Respir Crit Care Med.172(12):1487-90
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人らは、治療用タンパク質、特に補充酵素が、受容体結合タンパク質と関連付けられた場合、中枢神経系に効果的に送達されうることを発見し、ただしそれは循環血中レベルが経時的に一貫したレベルを達成することを条件としている。マルチドメイン治療用タンパク質は、治療用タンパク質および結合タンパク質複合体のコード配列を担持する遺伝子療法ベクターを介して肝臓に送達されうる。
【0006】
一態様では、本発明は、治療用タンパク質を、対象の中枢神経系(CNS)に送達する方法を提供し、細胞表面受容体(CSR)結合タンパク質(CSR-BP)にコンジュゲートされた治療用タンパク質(tpCSR-BP)をコードするヌクレオチド組成物を、CNS中に治療有効量のtpCSR-BPを提供するのに十分な肝臓標的送達方法を介して、対象に投与することを含む。
【0007】
一実施形態では、CSR-BPは、CSRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。別の実施形態では、治療用タンパク質はリソソーム酵素である。
【0008】
一実施形態では、酵素は、グリコシラーゼ、例えばアルファ-グルコシダーゼまたはアルファ-ガラコシダーゼAなどのグリコシダーゼなどのヒドロラーゼ活性を有する。一実施形態では、細胞表面受容体(CSR)結合タンパク質(CSR-BP)は、内部移行受容体に結合する抗原結合タンパク質である。一実施形態では、内部移行受容体は、エンドサイトーシスされてリソソームに輸送される細胞表面分子である。特定の一実施形態では、内部移行受容体はCD63分子である。一実施形態では、内部移行受容体はITGA7分子である。特定の一実施形態では、CSR-BPは、抗体、抗体断片、またはscFv、例えばCD63またはITGA7に結合する単鎖可変断片(scFv)などである。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるマルチドメイン治療用タンパク質は、一つまたは複数の送達ドメインおよび酵素ドメインを含み、一つまたは複数の送達ドメインは、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に結合する。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、内部移行エフェクターに結合する第二の送達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、第二の送達ドメインは、(i)CD63、インテグリンアルファ7(ITGA7)、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、およびCD36からなる群から選択される内部移行エフェクター;(ii)CD63、MHC-I、液泡型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合性EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体からなる群から任意に選択される、いくつかの組織タイプで発現する内部移行エフェクター;(iii)コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1からなる群から任意に選択される、骨および/または軟骨によって優先的に発現される内部移行エフェクター;(iv)スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(Vセットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)からなる群から任意に選択される、単球、マクロファージ、またはマイクログリアによって優先的に発現される内部移行エフェクター;(v)CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)からなる群から任意に選択される、腎臓細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクターに結合する。他の特定の実施形態では、内部移行エフェクターは、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋肉特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質結合受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAIS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)などの筋肉特異的インターナライザー;(vi)任意にASGR1またはASGR2など、肝臓細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクター;(vii)BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋肉特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質結合受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)からなる群から任意に選択される、筋肉細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクター;および/または(viii)ITGA7、CD9、CD63、ALPL2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRからなる群から選択される内部移行エフェクタータンパク質である。いくつかの実施形態では、第二の送達ドメインは、内部移行エフェクターCD63に結合する。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の送達ドメインの少なくとも一つは、抗原結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の送達ドメインの各々は、抗原結合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の送達ドメインの少なくとも一つは、単鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の送達ドメインの少なくとも一つは、半抗体を含む。いくつかの実施形態では、hTfRに結合する送達ドメインはscFvであり、半抗体はCD63に結合し、酵素ドメインはGAAであり、GAAはCD63に結合する半抗体のカルボキシ末端にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、一つまたは複数の送達ドメインの各々は、scFvを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つのscFvは、Fcに融合される。いくつかの実施形態では、Fcは、野生型ヒトIgG4アイソタイプ、またはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、GAAは、Fcのカルボキシ末端にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、抗hTfR scFvおよび抗hCD63 scFvを含む。いくつかの実施形態では、抗hTfR scFvおよび抗hCD63 scFvは、両方ともそのカルボキシ末端で、単一のGAA酵素に連結されている。いくつかの実施形態では、送達ドメインは抗hTfR scFvであり、酵素ドメインは、scFvのVLドメインのカルボキシ末端に連結されている。いくつかの実施形態では、マルチドメインは、抗hTfR scFvのVHドメインのN末端に連結された第二の送達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、第二の送達ドメインは、抗hCD63 scFVである。いくつかの実施形態では、酵素ドメインは、配列番号1として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
また、少なくとも二つの送達ドメインおよび少なくとも一つの酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質が提供され、二つの送達ドメインの各々は、抗体、半抗体、およびscFvからなる群から独立して選択され、少なくとも一つまたは複数の送達ドメインは、少なくとも一つの酵素ドメインに関連付けられ、好ましくは、一つまたは複数の送達ドメインが、少なくとも一つの酵素ドメインに共有結合されている。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、二つ以下の送達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、送達ドメインのうちの一つのみが、少なくとも一つの酵素ドメインと関連付けられている。いくつかの実施形態では、少なくとも二つの送達ドメインの各々は、酵素ドメインに共有結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも二つの送達ドメインの各々は、同じ酵素ドメインに共有結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも二つの送達ドメインの各々は、異なる酵素ドメインに共有結合している。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、二つ以下の送達ドメインを含み、第一の送達ドメインは半抗体を含み、第二の送達ドメインはscFvを含む。いくつかの実施形態では、scFvはFcに融合される。いくつかの実施形態では、半抗体は、そのカルボキシ末端で第一の酵素ドメインに共有結合され、および/またはscFvは、そのカルボキシ末端でFc、および任意で第二の酵素ドメインに共有結合される。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、二つ以下の送達ドメインを含み、第一および第二の送達ドメインはそれぞれscFvを含む。いくつかの実施形態では、第一および第二のscFvの両方は、酵素ドメインに共有結合している。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、N末端からC末端まで:第一のscFv、第二のscFv、および酵素ドメインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも一つの送達ドメインは、リソソーム輸送分子に結合し、少なくとも一つの送達ドメインはトランスサイトーシスエフェクターに結合する。いくつかの実施形態では、リソソーム輸送分子は、CD63、ITGA7、CD9、CD63、CD81、CD82、またはCD151からなる群から選択され、トランスサイトーシスエフェクターは、LDL受容体、IgA受容体、トランスフェリン受容体、新生児Fc受容体、インスリン受容体、CD98、およびベイシジンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、図1C図1D図1E、または図1Fに示される構造を含む。
【0011】
本明細書に記載されるマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドも本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、ウイルス核酸配列は、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、ウイルス核酸配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列であり、AAV 核酸配列が、内部末端反復配列を含み、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、ウイルス核酸配列が、配列番号6、配列番号7、または両方と、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子とを含む内部末端反復配列を含むアデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号8および/または配列番号9として記載される配列を含む、組織特異的調節因子をさらに含む。
【0012】
一態様では、本発明は、例えば本明細書に記載されるポリヌクレオチドなどのCSR-BPとコンジュゲートされたか、またはCSR-BPに融合された治療用タンパク質をコードする核酸配列を含有する、AAVベクターなどの遺伝子療法ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、任意に天然ウイルス、工学的に操作されたウイルス、またはキメラウイルスであるウイルスベクター、ならびに本明細書に記載のポリヌクレオチド、任意に請求項20~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドおよび脂質を含む脂質ナノ粒子であるポリヌクレオチド複合体、およびそれらの任意の組み合わせを含む裸のポリヌクレオチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、またはアデノ関連ウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、AAV9、Anc80、AAV2/8キメラおよび/または特定の組織、例えば、肝臓またはニューロン組織に対してAAVシュードタイプである。
【0013】
一実施形態では、治療用タンパク質、これをコードするヌクレオチド、および/またはこれをコードするヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクターは、例えば、中枢神経系(CNS)に治療用タンパク質を送達する方法において、酵素補充療法を必要とする対象を治療するために使用され、この方法は、対象に、CNS中に治療有効量のマルチドメイン治療用タンパク質を提供するのに十分な肝臓標的送達方法を介して、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド組成物を投与することを含み、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインおよび酵素ドメインを含む。いくつかの実施形態では、対象は動物である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0014】
一態様では、scFv-ヒドロラーゼ融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するAAVベクターが、ヒトまたは非ヒト対象に投与される。続いて、ポリヌクレオチドは、肝臓内のゲノム遺伝子座に組み込まれ、コードされた融合タンパク質が産生される。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは肝臓内でエピソーム的に転写され、コードされた融合タンパク質が産生される。特定の一実施形態では、融合タンパク質とは、抗CD63scFv-GAA融合タンパク質または抗ITGA7scFv-GAA融合タンパク質であり、ヒトまたは非ヒト対象が内因性GAA活性を欠乏しており、GAA活性が対象において効果的に復元される。
【0015】
一態様では、本発明は、CSR-BPとコンジュゲートされたか、またはCSR-BPに融合された治療用タンパク質をコードする遺伝子を含有する遺伝子療法ベクターを患者に投与することによって、酵素欠損を有する対象(ヒトまたは非ヒト)を治療する方法を提供する。
【0016】
本明細書には、治療用タンパク質を対象の中枢神経系(CNS)に送達する方法が記載され、この方法には、対象に、CNS中に治療有効量のマルチドメイン治療用タンパク質を提供するのに十分な肝臓標的送達方法を介して、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド組成物を投与することを含み、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインおよび酵素ドメインを含む。いくつかの実施形態では、送達ドメインは、内部移行エフェクターに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、リソソーム酵素である。いくつかの実施形態では、リソソーム酵素はGAAである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド組成物は、ウイルスベクターを介して投与される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはAAVベクターである。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド組成物は、1キログラム当たり少なくとも2×1012のウイルスゲノム(vg/kg)の用量で投与される。いくつかの実施形態では、内部移行エフェクターは、CNS中の細胞、上皮細胞、および血液脳関門を通過する細胞からなる群から選択される細胞の表面上で発現する。いくつかの実施形態では、送達ドメインは、内部移行エフェクターに結合する。いくつかの実施形態では、内部移行エフェクターは、(i)CD63、インテグリンアルファ7(ITGA7)、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、およびCD36からなる群から選択され;(ii)例えば、CD63、MHC-I、液胞型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体など、いくつかの組織タイプで発現され、任意に対象は、ファブリー病、ゴーシェ病、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、ポンペ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、αマンノース症、ノイラミニダーゼ欠損症、シアリドーシス、アスパルチルグリコサミン尿症、混合性サポシン欠損症、異型ゴーシェ病、ファーバー脂肪性肉芽腫症、フコシドーシス、およびβマンノース症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し;(iii)例えば、コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1など、骨および/または軟骨によって優先的に発現され、任意に対象は、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVA、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、βマンノース症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシンン欠損症、アスパルチルグリコサミン尿症、ファーバー脂肪性肉芽腫症、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、およびαマンノース症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し;(iv)例えば、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(V-セットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)など、単球、マクロファージ、またはマイクログリアによって優先的に発現され、任意に対象は、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、およびファーバー脂肪性肉芽腫症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し;(v)例えば、CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)など、腎臓細胞によって優先的に発現され、任意に対象は、ファブリー病、アルポート症候群、多発性嚢胞腎疾患、および血栓性血小板減少性紫斑病からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され;(vi)例えば、ASGR1またはASGR2など、肝臓細胞によって優先的に発現され、任意に対象は、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、MPS VI、MPS VII、MPS II、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、ファーバー脂肪性肉芽腫症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され;(vii)例えば、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋肉特異性キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質結合受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)など、筋肉細胞によって優先的に発現され、任意に対象は、ポンペ病の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され;(viii)ITGA7、CD9、CD63、ALPL2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRからなる群から選択され;および/または(ix)CD63である。いくつかの実施形態では、送達ドメインは、単鎖可変断片(scFv)である。いくつかの実施形態では、細胞表面受容体(CSR)結合タンパク質(CSR-BP)は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質はヒドロラーゼを含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質はグリコシラーゼを含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質はグリコシダーゼを含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質はアルファ-グルコシダーゼを含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、配列番号1または配列番号13のアミノ酸配列、またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、抗ABeta、または抗タウ抗体を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号11の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、酵素ドメインは、アルファ-グルコシダーゼを含み、対象の任意のCNS組織中のグリコーゲンレベルは、処置後少なくとも九か月間、低下する。いくつかの実施形態では、対象はポンペ病を有する。いくつかの実施形態では、投与されたヌクレオチド組成物は、少なくとも1μg/mLのマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、GAA(例えば、配列番号1)またはGLA(例えば、UniProtKB番号P06280、aa32~429、配列番号13)などのグリコシダーゼを含み、患者は、ポンペ病またはファブリー病を有する。いくつかの実施形態では、CSR-BPは、CD63またはITGA7などの内部移行受容体に結合する抗原結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、CSR-BPは、CD63に結合するscFv分子である。いくつかの実施形態では、CSR-BPは、ITGA7に結合するscFv分子である。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、抗CD63-GAA融合治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターである。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、抗ITGA7-GAA融合治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むAAVベクターである。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、GAA酵素ドメインを含み、高いGAAの血清レベルが、遺伝子療法ベクターの投与後少なくとも12週間、患者の血清中に維持される。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、GAA酵素を含み、患者のCNS組織中のグリコーゲンレベルは著しく低下する。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、GAA酵素を含み、グリコーゲンレベルは、遺伝子療法ベクターの投与の3か月後、6ヶ月後、または9ヶ月後に野生型レベルで維持される。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質は、GAA酵素を含み、治療後の患者の筋力は、野生型レベルまで復元される。
【0018】
一態様では、本発明は、CSR-BPに融合した治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する遺伝子療法ベクターを投与することによって、ヒトまたは非ヒト対象の組織内、特にCNS組織内のグリコーゲンの蓄積を減少させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、CSR-BPに融合した治療用タンパク質の閾値血清レベルを提供するのに十分な用量で投与される。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも1μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも2μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも3μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも4μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも5μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも6μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも7μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも8μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも9μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも10μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも11μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも12μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも13μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも14μg/mLである。いくつかの実施形態では、閾値レベルは、少なくとも15μg/mLである。一実施形態では、組織は小脳、脊髄または海馬である。一実施形態では、ヒトまたは非ヒト対象は、ポンペ病を有する。一実施形態では、治療用タンパク質は、抗CD63 scFv-GAA融合タンパク質を含む。別の実施形態では、治療用タンパク質は、抗ITGA7 scFv-GAA融合タンパク質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A図1Aは、概略的にマルチドメイン治療用タンパク質を表す。パネルAは、二重特異性抗体(ii)と補充酵素(i)とを含むマルチドメイン治療用タンパク質を図示する。パネルBは、内部移行エフェクター特異的半抗体(ii)と会合して、マルチドメイン治療用タンパク質を形成している酵素-Fc融合ポリペプチド(i)を図示する。パネルCは、抗内部移行エフェクター抗体の重鎖のC末端に共有結合した補充酵素(六角形)を示す。パネルDは、抗内部移行エフェクター抗体の重鎖のN末端に共有結合した補充酵素(六角形)を示す。パネルEは、抗内部移行エフェクター抗体の軽鎖のC末端に共有結合した補充酵素(六角形)を示す。パネルFは、抗内部移行エフェクター抗体の軽鎖のN末端に共有結合した補充酵素(六角形)を示す。パネルGは、VH領域(影付きバー)およびVL領域(オープンバー)を含有する単鎖可変断片(scFv)のC末端に共有結合で連結された補充酵素(六角形)を図示する。パネルHは、二つのscFvドメインに共有結合で連結された補充酵素(六角形)を図示し、第一のscFv(i)は、第一の送達ドメインとしての機能を果たし、第二のscFv(ii)は、第二の送達ドメインとしての機能を果たす。図1Aに図示されていない追加的なマルチドメイン治療用タンパク質には、二つ以上の送達ドメインおよび少なくとも一つの酵素ドメインを含む、マルチドメイン治療用タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な例として、この図のパネルA~Hに示される抗体、半抗体、およびscFvドメインは、任意のタイプの送達ドメインを表し、追加的な送達ドメインまたは補充酵素を関連付けて、マルチドメイン治療用タンパク質を作製することもできる。二つ以上の送達ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質の非限定的な例は、図1C、1D、および1Fにさらに示され、これは第一の内部移行エフェクター特異的半抗体に共有結合した補充酵素(GAAとして示されているがこれに限定されない)を含み、これは第二の内部移行エフェクター特異的scFv-Fc融合に関連し、これはマルチドメイン治療用タンパク質(図1Cおよび1D)を形成するために、補充酵素(GAAとして示されているがこれに限定されない)に共有結合されていることも、されていないこともあり、補充酵素(GAAとして示されているがこれに限定されない)は、各抗内部移行エフェクター特異的半抗体のC末端に共有結合し、これは第一の送達ドメイン、および第二の送達ドメインとして機能する内部移行エフェクター特異的scFv-Fc融合として機能し、抗内部移行エフェクター特異的半抗体および付随物はどちらも一緒になって、マルチドメイン治療用タンパク質(図1D)を形成し、補充酵素は第一のscFvと共有結合し、これは例えば、リンカーを介して、第二のscFv(図1F)に連結する。
【0020】
図1B図1Bは、図1AのパネルGに表されるマルチドメイン治療用タンパク質をそれぞれコードするAAV遺伝子療法ベクターの非限定的で例示的な図を提供し、scFvは抗ヒトCD63 scFvであり、補充酵素はGAAである(例えば、抗hCD63scFv::hGAA;例えば配列番号10として記載されるアミノ酸配列を参照)。配列番号10のアミノ酸1~117は、H4H12450N抗体の重鎖可変ドメイン(V)のアミノ酸配列を提供し、配列番号10のアミノ酸118~132は、H4H12450Nの重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間のアミノ酸リンカー配列を提供し、配列番号364のアミノ酸133~240は、H4H12450N抗体の軽鎖可変ドメイン(V)のアミノ酸配列を提供し、配列番号10のアミノ酸241~245は、抗hCD63scFvとGAAとの間のアミノ酸リンカー配列を提供し、配列番号10のアミノ酸246~1128は、補充酵素GAAまたはその生物学的活性部分のアミノ酸配列を提供する。例示的な5’ITRおよび3’ITRの配列は、それぞれ配列番号6および配列番号7として記載されている。この図のパネルAは、例示的な肝特異的エンハンサー(例えば、セルピナ1、配列番号9として記載されているが、これに限定されない)、例示的な肝特異的プロモーター(例えば、TTR、配列番号8として記載されているが、これに限定されない)、例示的なシグナルペプチド、抗hCD63scFv::hGAA治療用マルチドメイン(配列番号10)をコードする核酸配列、およびポリAテールを含む、肝特異的発現のための例示的なベクターを提供する。この図のパネルBは、肝特異的エンハンサーおよび肝特異的プロモーター配列の代わりに例示的なユビキタスプロモーターを有する、パネルAに示されるものと類似した例示的ベクターを提供する。この図のパネルCは、肝特異的エンハンサー(例えば、セルピンA1)およびプロモーター(例えば、TTR)の代わりに例示的なニューロン特異的プロモーターを有する、パネルAに示されるものと類似した例示的ベクターを提供する。この図のパネルDは、肝特異的(例えば、セルピンA1)エンハンサーおよびプロモーター(例えば、TTR)と組み合わせた例示的なニューロン特異的プロモーターを有する、パネルAに示されるものと類似した例示的ベクターを提供する。
【0021】
図1C図1Cは、図示したように、マルチドメイン治療用タンパク質をそれぞれコードする発現ベクターの非限定的で例示的な図を提供し、半抗体は抗CD63抗体であり、scFvは抗ヒトトランスフェリン受容体scFvであり、補充酵素はGAA(例えば、抗hTfRscFv::hGAA)である。
【0022】
図1D図1Dは、図示したように、マルチドメイン治療用タンパク質をそれぞれコードする発現ベクターの非限定的で例示的な図を提供し、半抗体は抗CD63抗体であり、scFvは抗ヒトトランスフェリン受容体(TfR)scFvであり、FcドメインはヒトIgG4 Fcであり、補充酵素はGAA(例えば、抗hTfRscFv::hGAA)である。
【0023】
図1E図1Eは、図1AのパネルHに表した、マルチドメイン治療用タンパク質をそれぞれコードする発現ベクターの非限定的な例示的な図を提供し、二つscFvのうちの一つは抗ヒトCD63scFvであり、二つのscFvのうちのもう一方は抗ヒトトランスフェリン受容体(TfR)scFvであり、補充酵素はGAA(例えば、抗hCD63scFv::hGAA::anti-TfRscFV)である。
【0024】
図1F図1Fは、図示したように、マルチドメイン治療用タンパク質をそれぞれコードする発現ベクターの非限定的な例示的な図を提供し、二つscFvのうちの一つは抗ヒトCD63scFvであり、二つのscFvのうちのもう一方は抗ヒトトランスフェリン受容体(TfR)scFvであり、補充酵素はGAA(例えば、抗hCD63scFv::抗TfRscFV::GAAまたは抗TfRscFV::抗hCD63scFv::GAA)である。
【0025】
図1G図1Gは、図1AのパネルGに示したように、マルチドメイン治療用タンパク質をそれぞれコードする発現ベクターの非限定的で例示的な図を提供し、scFvは抗ヒトトランスフェリン受容体(TfR)scFvであり、補充酵素はGAA(例えば、抗TfRscFV::GAA)である。
【0026】
図2図2は、送達された酵素の機能として組織ミリグラム当たりのマイクログラムで貯蔵グリコーゲンの量を図示する棒グラフである。X軸はCD63hu/hu;GAA-/-マウス由来の組織を図示し、左から右まで:心臓、四頭筋、腓腹筋、横隔膜、ヒラメ筋、長指伸筋(EDL)筋肉である。レーン1のボックスは、未処置のマウスポンペ病モデルにおける貯蔵グリコーゲンの量を図示する。レーン6のボックスは、未処置の野生型マウスモデルにおける貯蔵グリコーゲンの量を図示する。レーン2のボックスは、1010vgの用量でAAV-hGAA(ヒトGAAをコードする遺伝子を含有するアデノ関連ウイルスベクター)を処置されたマウスポンペ病モデルにおける貯蔵グリコーゲンの量を図示する。レーン3のボックスは、1011vgの用量でAAV-hGAAで処置されたマウスポンペ病モデルにおける貯蔵グリコーゲンの量を図示する。レーン4のボックスは、1010vgの用量でAAV-抗hCD63scFv::hGAA(ヒトGAAに連結された抗ヒトCD63 scFvドメインをコードする遺伝子を含有するアデノ関連ウイルスベクター)で処置されたマウスポンペ病モデルにおける貯蔵グリコーゲンの量を図示する。レーン5のボックスは、1011vgの用量でAAV-抗hCD63scFv::hGAAで処置されたマウスポンペ病モデルにおける貯蔵グリコーゲンの量を図示する。
【0027】
図3図3は、AAV注射の3ヵ月後での各マウスの骨格筋組織中の平均グリコーゲン測定値(μg/mg)を図示するグラフである。各測定値を、特定の投与量で特定の酵素構築物を用いて処理されたマウス当たりのGAA曝露(すなわち血清レベル)の関数としてプロットしている。黒正方形は、1010vg用量でのAAV-hGAAを表す。黒三角形は、1011vg用量でのAAV-hGAAを表す。黒逆三角形は、1010vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。黒斜方形は、1011vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。
【0028】
図4図4は、AAV注射の3ヵ月後に心臓組織中で測定された平均心筋グリコーゲン(μg/mg)を、特定の投与量で特定の酵素構築物を用いて処置されたマウス当たりのGAA曝露(すなわち血清レベル)の関数として示すドットプロットである。黒正方形は、1010vg用量でのAAV-hGAAを表す。黒三角形は、1011vg用量でのAAV-hGAAを表す。黒逆三角形は、1010vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。黒斜方形は、1011vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。
【0029】
図5図5は、特定の投与量で特定の酵素構築物で処置されたマウス当たりのGAA曝露(すなわち血清レベル)の関数として、AAV注射の3か月後の抗GAA抗体の力価を図示するドットプロットである。白正方形は、1010vg用量でのAAV-hGAAを表す。白丸は、1011vg用量でのAAV-hGAAを表す。白斜方形は、1010vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。六角形は、1011vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。
【0030】
図6図6は、AAV注射の3ヵ月後での抗GAA抗体の力価を、酵素構築物および用量の関数として図示するドットプロットである。丸は、空のAAVベクターを受けている対照マウスを表す。正方形は、1010vg用量でのAAV-hGAAを表す。三角形は、1011vg用量でAAV-hGAAを表す。逆三角形は、1010vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。斜方形は、1011vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。
【0031】
図7A図7Aは、遺伝子療法ベクターの注射後、週での時間の関数としてGAA(任意単位「a.u.」;y軸)の血清レベルを図示する線グラフである。正方形(一番下の線)は、1010vg用量でのAAV-hGAAを表す。三角形(上から二番目)は、1011vg用量でのAAV-hGAAを表す。逆三角形(上から三番目)は、1010vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。斜方形(一番上の線)は、1011vg用量でのAAV-抗hCD63scFv::hGAAを表す。
【0032】
図7B図7Bは、以下のようなCD63 HumIn GAA KOマウス(GAA-/-,CD63hu/huマウス)またはGAA+/+,CD63hu/huマウスにおけるAAV構築物の投与後のmRNA比(mGADPH mRNAに対するhGAA mRNA)を図示する棒グラフである:(1)未処置対照、(2)AAV-肝特異的プロモーター-hGAA(1e10vg)、(3)AAV-肝特異的プロモーター-hGAA(1e11vg)、(4)AAV-肝特異的プロモーター-抗hCD63::hGAA(1e10vg)、(5)AAV-肝特異的プロモーター-抗hCD63::hGAA(1e11vg)、または(6)未処理処置対照(GAA+/+,CD63hu/hu)。AAV構築物の全ての注射について、肝臓でのGAAの発現が検出された。
【0033】
図7C図7Cは、融合タンパク質(正方形)をコードするAAVを受けているマウスおよびGAAをコードするAAVを受けているマウス(どちらの構築物も、発現を駆動するための肝特異的プロモーター(LSP)を配された)について、血清GAAレベルとRNA発現レベルと、を比較した点グラフである。
【0034】
図7D図7Dは、hGAA、抗hCD63 scFv::GAA(融合構築物)、または非結合融合構築物scFv::GAA対照をコードする肝特異的プロモーター駆動性構築物を一過的にトランスフェクションされたHuh-7ヒト肝細胞を示す棒グラフである。どちらのscFv::GAA融合構築物も、トランスフェクションの3日後に、分泌上清におけるタンパク質の比率がhGAAのみよりも高かった。CI-MPR媒介性取り込みを軽減するために、実験期間中に上清中にM6Pを追加したことは、比率に影響を及ぼさなかった。(*=p<0.05、n=3)。
【0035】
図7E図7Eは、送達されたベクターの関数としてのGAAの血清力価の量を示す棒グラフである。X軸は、GAAまたはScFv-GAA融合体をコードするプラスミドを与えられた、CD63をヒト化されたKOマウス(GAA-/-;CD63hu/hu)からの血清を示し、左から右に:1)制御(処置なし);2)AAV-LSP-hGAA処置(1e10vg/マウス);3)AAV-LSP-hGAA処置(1e11vg/マウス);4)AAV-LSP-抗CD63::hGAA処置(1e10vg/マウス);および5)AAV-LSP-抗CD63::hGAA処置(1e11vg/マウス)。
【0036】
図8-1】図8は、核を明らかにするためにDAPIで対比染色されたマウス筋線維における、lamp1染色リソソームを図示する蛍光顕微鏡写真である。パネルAおよびA1は、未処理の野生型(GAA+/+)マウスに由来し、lamp1(パネルA)および核(パネルA1)について染色した、四頭筋細胞を図示する。パネルBおよびB1は、未処理GAAヌル(GAA-/-)マウスに由来し、lamp1(パネルB)および核(パネルB1)について染色した、四頭筋細胞を図示する。パネルCおよびC1は、AAV-hGAA構築物で処置されたGAA-/-マウスに由来し、lamp1(パネルC)および核(パネルC1)について染色した、四頭筋細胞を図示する。パネルDおよびD1は、AAV-hCD63scFv::hGAA構築物で処置されたGAA-/-マウスに由来し、lamp1(パネルD)および核(パネルD1)について染色した、四頭筋細胞を図示する。
図8-2】同上。
【0037】
図9図9は、AAV-LSP hGAAまたはAAV-LSP抗hCD63::hGAAのいずれかで処置されたマウスの握力強度およびロータロッド試験性能を示す線グラフを図示する。野生型GAAマウス(逆三角形)、未処理対照(正方形)、AAV-LSP-hGAA処理(1e11vg/マウス)(三角形)、またはAAV-LSP-抗hCD63::hGAA治療(1e11vg/マウス)(丸)のロータロッド測定値(A)および前肢の握力強度測定値(B)を、1ヶ月間隔で6ヶ月間取得した。エラーバーは+/-標準偏差である。全ての群に対してN=8~10。
【0038】
図10A図10Aおよび図10Bは、ガイドとしての他の膜タンパク質、例えばGAAをガイドするための抗ITGA7(インテグリンアルファ7)scFv融合タンパク質などの使用を図示する。図10Aは、5mM M6Pの存在下または非存在下で、抗マウスCD63-GAAまたは抗マウスITGA7-GAAと共に一晩インキュベーションされたC2C12マウス筋芽細胞のGAA活性(y軸)を示す。図10Bは、流体力学的送達(HDD)によってscFv::GAA型の抗hCD63::GAA(2)または完全長IgG4::GAA型の抗マウスインテグリンアルファ7(3)をコードするプラスミドを与えられ、次いで、HDDの3週間後に組織のグリコーゲンレベルを測定された、CD63をヒト化されたGAA KOマウス(GAA-/-;CD63hu/hu)を示す。未処置対照マウス、GAA-/-;CD63hu/hu(1)、および未処置野生型GAA対照マウス、GAA+/+;CD63hu/hu(4)も、同じ組織のグリコーゲンレベルについて試験した。
図10B】同上。
【0039】
図11図11は、野生型のCD63+/+マウスと比較したCD63hu/huマウスにおけるGAAに融合された全長抗CD63抗体(すなわち、全長IgG4抗体)の血清クリアランスを示す。GAAに融合された抗CD63抗体の重鎖および軽鎖を発現するプラスミドは、各マウスの尾静脈を介して注射された。抗CD63(全長IgG4)::GAAの血清pKは、24時間以内に血清から消失することが観察された。
【0040】
図12A図12Aは、酵素構築物および用量の関数としての関数としてのAAV注射の1ヶ月後でのGAAの血清レベル(任意単位「a.u.」;y軸)を図示するドットプロットである。正方形は、AAV-LSP-Δ8GAAを表す。三角形は、AAV-抗hCD63scFv::GAAを表す。どちらの構築物も、発現)を駆動するための肝特異的プロモーター(LSP)を提供した。用量は、マウスのキログラム(kg)当たりのウイルスゲノム(vg)として示される。
【0041】
図12B図12Bは、GAA血清レベルの関数としての組織(心臓、四頭筋、横隔膜、または三頭筋)のミリグラム当たりのマイクログラムでのグリコーゲンのレベルを図示するドットプロットを示す。正方形は、AAV-LSP-Δ8GAAを表す。三角形は、AAV-抗hCD63scFv::GAAを表す。どちらの構築物も、発現)を駆動するための肝特異的プロモーター(LSP)を提供した。
【0042】
図13図13は、送達された酵素/ベクターの機能としてCNS組織ミリグラム当たりのマイクログラムで貯蔵グリコーゲンの量を図示する棒グラフである(9か月の研究)。X軸は、未処置(各レーン1)、またはGAAをコードするプラスミド(各レーン2)、またはScFv-GAA融合体(各レーン3)を与えられた野生型マウスのコンパレーター(各レーン4)、またはKOマウス(GAA-/-)からサンプリングされた各CNS組織(脊髄、小脳または海馬)を示す。融合タンパク質で処置したマウスが、いかなる融合結合ドメインもないGAAをコードするベクターの送達と比較して、CNS組織内のグリコーゲン貯蔵量がより確固たる減少を示したことは予想外の発見であった。
【0043】
図14A図14Aは、特定の用量で特定のベクター構築物にGAAをAAV送達した3か月後の脊髄組織1mg当たりのグリコーゲンの貯蔵量(μgグリコーゲン/mg組織;y軸)を示すグラフである(vg=ウイルスゲノム)。グリコーゲンレベルは、未処置(レーン2;x軸)またはGAAをコードするプラスミド(各レーン3;x軸)を与えられたか、または抗CD63ScFv-GAA融合体(レーン4~6;x軸)の様々な用量を与えられたKOマウス(GAA-/-)と比較して、野生型マウス(レーン1;x軸)に提供される。ScFv-GAA融合体の用量を増加させると、脊髄の貯蔵グリコーゲンレベルが減少し、1e11vgの用量は、GAA単独(融合なし)の同等の用量よりも対象に対してより大きな利益を提供する。
【0044】
図14B図14Bは、特定の用量で特定のベクター構築物にGAAをAAV送達した3か月後の脳組織1mg当たりのグリコーゲンの貯蔵量(μgグリコーゲン/mg組織;y軸)を示すグラフである(vg=ウイルスゲノム)。グリコーゲンレベルは、未処置(レーン2;x軸)またはGAAをコードするプラスミド(各レーン3;x軸)を与えられたか、または抗CD63ScFv-GAA融合体(レーン4~6;x軸)の様々な用量を与えられたKOマウス(GAA-/-)と比較して、野生型マウス(レーン1;x軸)に提供される。ScFv-GAA融合体の用量を増加させると、脳の貯蔵グリコーゲンレベルが減少し、1e11vgの用量は、GAA単独(融合なし)の同等の用量よりも対象に対してより大きな利益を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、記載された特定の実施形態、組成物、方法、および実験条件に限定されるものではないが、それはこうした実施形態、組成物、方法、および条件が異なる場合があるからである。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲のみによって制限されるものとなることから、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみにあり、制限することを意図するものではない。
【0046】
本明細書に記載された方法および材料と類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験に使用することができるが、いくつかの好適な方法および材料をこれより記載する。本明細書で引用された全ての出版物は、その記述全体が参照により本明細書に組み込まれる。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0047】
「血液脳関門」とは、血液を脳および中枢神経系の細胞外流体から分離する半透膜関門を指す。関門は、特定の物質の脳および脊髄への通過または選択的輸送を阻止する。血液脳関門は、脳内皮細胞によって形成される。
【0048】
「治療有効量」は、対象がコード化された治療用タンパク質の一貫した血中レベル(血清/血漿レベル)を達成するように、対象に送達されるベクターの量または投与量を指す。一般的に、約1x10~約1x1016ゲノムベクターの濃度を、この方法で利用することができる。肝臓への送達のための投与量は、1kg当たり約1x1010~5x1013AAVゲノムでありうる。投与量は、血液脳関門を通過することによる治療的利益のバランスを取って、任意の副作用に対する分子の所望の効果を達成するように調節され、このような投与量は使用される組み換えベクターに応じて変化しうる。導入遺伝子の発現レベルは、血清または血漿の抽出によって血液循環中でモニターされて、循環タンパク質の定常状態を達成するベクターの投与頻度を決定することができる。当業者であれば、例えば、ベクター送達後の連続した日、週、または月にわたる治療用タンパク質の一貫した血中レベルを決定するための実験を行うことにより、有効量の特定の値を決定することができる。循環している治療用タンパク質を試験するための適切な実験は、ウェスタンブロット、ELISA、LC-MSなどを含むがこれらに限定されない当技術分野で公知である。一例では、CNS中の治療有効量のscFv-GAA融合タンパク質は、例えば脊髄、小脳または海馬組織などのCNS組織に貯蔵されたグリコーゲンを減少させるのに十分な量のscFv-GAA融合タンパク質を産生する、ウイルスベクターの量である。
【0049】
CNS障害
様々な脳疾患は、本明細書に記載の治療用タンパク質の送達モードから利益を得る場合がある。CNS障害、およびタンパク質療法に適している神経学的症状を伴う障害には、以下:アルツハイマー病、脳癌、ベーチェット病、大脳ループス、クロイツフェルト・ヤコブ病、認知症、てんかん、脳炎、フリートライヒ運動失調症、ギラン・バレー症候群、ゴーシェ病、頭痛、水頭症、ハンチントン病、頭蓋内圧亢進、大脳白質萎縮症、片頭痛、重症筋無力症、筋ジストロフィー、多発性硬化、ナルコレプシー、ニューロパシー、プラダー・ウィリー症候群、パーキンソン病、レット症候群、下肢静止不能症候群、睡眠障害、くも膜下出血、脳卒中、外傷性脳損傷、三叉神経痛、一過性脳虚血発作、およびフォンヒッペル・リンダウ病(血管腫症)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
CNSへの治療用タンパク質の抗CD63融合送達は、その遍在発現、細胞外小胞の膜タンパク質としてのその役割(EVs、例えば、エクソソーム)、およびインテグリンとの関連によって特に有益でありうる。内部移行エフェクターと類似の特性を有する他の細胞表面受容体には、ITGA7、CD9、CD63、CD81、CD82、およびCD151が含まれ、本明細書全体で考察されるように、取り込みの所望の位置を強化するために、組織または細胞型に特異的でありうる。
【0051】
CNSへの治療用タンパク質の抗トランスフェリン融合送達も、特に有益であることが示されている。したがって、治療用タンパク質の輸送および送達は、特定の血液脳関門(BBB)標的への抗受容体融合などの送達機構の使用によって強化される。いくつかのBBB標的は、CNSの取り込みに有益であることが示されてきた(Zuchero、et al.、6 Jan 2016、Neuron、89(1):70-82;Boado、RJ et al、Mol Pharm、2014 August 4;11(8):2928-2934;それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。トランスフェリン受容体と同様のBBB取り込み特性を有する他の細胞表面受容体には、インスリン受容体、CD98、およびベイシジン(Bsg)が含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、CNS組織(例えば、脳)への治療用タンパク質の標的送達は、抗トランスフェリン受容体または抗インスリン受容体、または抗CD98または抗Bsgの使用を用いる。治療用タンパク質はまた、本明細書全体を通して本明細書に記載されるように、内部移行エフェクター抗体に融合されうる。いくつかの実施形態では、CNSおよび末梢組織への治療用タンパク質の標的送達は、例えば、脳取り込みおよび末梢取り込みの両方を強化するために、抗インスリン受容体送達ドメインの使用を用いる(Boado、RJ et al.、2014、supra;Yu et al.、25 May 2011、Science Transl Med.3:84ra44。それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0053】
本明細書に記載のマルチドメイン治療用タンパク質の一部として有用でありうる例示的抗トランスフェリン受容体、抗インスリン受容体、抗CD98、および抗Bsg抗体ならびにその部分は、当技術分野で周知である(非限定的な例示的抗トランスフェリン受容体抗体については、例えば、米国特許第20170174778号;米国特許第20150196663号;米国特許第9629801号;米国特許第20180002433号;国際特許出願公開第2016081643号;米国特許第20180134797号;国際特許出願公開第2014189973号;米国特許第20150110791号;米国特許第9708406号;米国特許第20170260292号;国際特許出願公開第2016081640号;米国特許第20180057604号;米国特許第9611323号;国際特許出願公開第2012075037号;国際特許出願公開第2018210898号、米国特許第20180344869号、米国特許第20180282408号、米国特許第20170051071号、国際特許出願公開第2016207240号、国際特許出願公開第2015101588号、米国特許第20160324984号;米国特許第20180222993号;国際特許出願公開第2017055542号;米国特許第20180222992号;国際特許出願公開第2017055540号;Cabezon、I.、et al.Mol Pharm.2015 Nov 2;12(11):4137-45;Yu YJ、et al.Sci Transl Med(2014)6:261ra154;Couch、et al.Sci Transl Med.2013 May 1;5(183):183ra57、1-12;and Yu et al.、2011、supraを参照のこと;非限定的な例示的抗CD98抗体については、例えば、国際特許出願公開第2017214456号、国際特許出願公開第2017214458号、国際特許出願公開第2017214462号;国際特許出願公開第2008017828号;国際特許出願公開第2015146132号;国際特許出願公開第2016094566号;国際特許出願公開第2013078377号;国際特許出願公開第2017026497号;Hayes GM et al.Int.J.Cancer(2015)137:710-20;and Bixby、et al.American Society Hematology 2015 Meeting、Abstract# 3809 を参照のこと;非限定的な例示的抗BSG抗体については、例えば、国際特許出願公開第2011112566号;米国特許第20110223176号;米国特許第20140079711号;国際特許出願公開第2010036460号;米国特許第8618264号;国際特許出願公開第2005092381号;国際特許出願公開第2018165619号;および国際特許出願公開第2017186182号を参照のこと;非限定的な例示的抗インスリン受容体抗体については、例えば、米国特許第8974791号;国際特許出願公開第2013081706号;米国特許第20160152719号;米国特許第20160208006号;米国特許第20170114152号;Pardridge、WM et al.BioDrugs.2018 Apr;32(2):169-176;Boado RJ et al.Mol.Pharm.(2016)13:3241-6;Cieniewicz AM、et al.Diabetes(2017)66:206-217;Bexwada、P.et al.J Pharmacol Exp Ther.2016 Feb;356(2):466-73;およびBedinger、DH、et al.J Pharmacol Exp Ther.2015 Apr;353(1):35-43を参照のこと;それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。当業者なら、これらの周知の抗体、またはその抗原結合部分(例えば、それに由来するscFvなど)を、本明細書に記載の治療用タンパク質に容易に連結し、本明細書に記載のマルチドメイン治療用タンパク質を作製および使用することができる。
【0054】
リソソーム蓄積症
「酵素欠損症の疾患」としては、非リソソーム蓄積症、例えばクラッベ病(ガラクトシルセラミダーゼ)、フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、ミトコンドリア障害、フリードライヒ運動失調症、ツェルウェーガー症候群、副腎脳白質ジストロフィー、ウィルソン病、ヘモクロマトーシス、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症、およびリソソーム蓄積症が挙げられる。「リソソーム蓄積症」は、リソソームの機能の欠陥の結果として生じる任意の障害を含む。現在およそ50種のリソソーム蓄積障害が特定されており、その最もよく知られているものとしては、テイ・サックス病、ゴーシェ病、およびニーマン・ピック病が挙げられる。これらの疾患の病因は、タンパク質機能の喪失に通常は起因して、不完全な分解産物がリソソーム内に蓄積することにあると考えられている。リソソーム蓄積症は、正常な機能ではリソソーム含有物を分解するかまたは分解を調整するタンパク質における、機能喪失型または減弱型のバリアントによって引き起こされる。リソソーム蓄積症と密接に関連するタンパク質としては、酵素、受容体、および他の膜貫通タンパク質(例えばNPC1)、翻訳後修飾タンパク質(例えばスルファターゼ)、膜輸送タンパク質、ならびに非酵素性補助因子および他の可溶性タンパク質(例えばGM2ガングリオシド活性化因子)が挙げられる。そのため、リソソーム蓄積症は、欠陥のある酵素それ自体によって引き起こされる前述の障害が包含されるだけでなく、任意の分子的な欠陥によって引き起こされる任意の障害も含まれる。したがって、本明細書で使用される場合、用語「酵素」は、リソソーム蓄積症に関連する前述の他のタンパク質を包含することが意図される。
【0055】
分子的な損傷の性質は、多くの場合、疾患の重症度に影響を及ぼすが、換言すれば、完全な機能喪失は、胎児または新生児の発症に付随する傾向にあり、重度の症状を伴い、そして部分的な機能喪失は、(比較的)軽度の遅発型疾患に付随する。一般的に、欠損細胞における代謝的な欠陥を修正すべき際には、ごく僅かなパーセンテージの活性のみを回復させることが求められる。表1には、よく見られるリソソーム蓄積症の一部と、それらに関連する機能喪失タンパク質の一覧を示す。リソソーム蓄積症は、概してDesnick and Schuchman,2012に記載されている。
【0056】
リソソーム蓄積症は、リソソームにおける種々の基質の分解に影響を及ぼす希少疾患の一種である。それらの基質には、スフィンゴ脂質類、ムコ多糖類、糖タンパク質類、グリコーゲン、およびオリゴ糖類が含まれ、これらが疾患を有する者の細胞に蓄積して細胞死をもたらしうる。リソソーム蓄積症によって冒される器官として、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)、肺、肝臓、骨、骨格筋および心筋、ならびに細網内皮系が挙げられる。
【0057】
リソソーム蓄積症の治療に対する選択肢として、酵素補充療法(ERT)、基質減少療法、薬理学的シャペロン介在療法、造血幹細胞移植療法、および遺伝子療法が挙げられる。基質減少療法の例として、ゴーシェ病1型を治療するためのミグルスタットまたはエリグルスタットの使用が挙げられる。これらの薬剤は、シンターゼ活性を遮断することによって作用し、その結果、基質の産生を低減する。造血幹細胞療法(HSCT)は、例えば、MPSの一部の型の患者において、陰性の中枢神経系の表現型を寛解および遅延させるのに用いられる。R.M.Boustany,“Lysosomal storage diseases--the horizon expands,”9(10)Nat.Rev.Neurol.583-98,Oct.2013を参照のこと。それら文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。表1には、一部のリソソーム蓄積症と、その関連酵素または他のタンパク質の一覧表を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0058】
最もよく見られるLSDのうち二種は、ポンペ病とファブリー病である。10,000人に1人の推定発生率を有するポンペ病は、欠陥のあるリソソーム酵素アルファ-グルコシダーゼ(GAA)によって引き起こされ、その結果、リソソーム内のグリコーゲンのプロセシングが欠損する。リソソーム内のグリコーゲンの蓄積は、主に骨格組織、心臓組織、および肝組織に生じる。乳児期のポンペ病の発症は、通例2歳になる前に、心肥大、筋緊張低下、肝腫大を引き起こし、また心肺不全による死亡をもたらす。成人期のポンペ病の発症は、10代から50代になっても起こり、通例、骨格筋にのみ関係する。現在利用可能な治療としては、GenzymeのMYOZYME(登録商標)/LUMIZYME(登録商標)(アルグルコシダーゼアルファ)が挙げられるが、これはCHO細胞で生産されて静脈内注入によって投与される組換えヒトアルファ-グルコシダーゼである。
【0059】
軽度の遅発型の発症例を含めて全体で3,000人に1人の推定発生率を有するファブリー病は、欠陥のあるリソソーム酵素アルファ-ガラクトシダーゼA(GLA)により引き起こされ、その結果、血管、ならびに他の組織および器官内にグロボトリアオシルセラミドが蓄積する。ファブリー病に付随する症状として、神経損傷および/または小血管閉塞による疼痛、腎機能不全および腎不全、高血圧および心筋症などの心合併症、被角血管腫の形成などの皮膚症状、無汗症または多汗症、ならびに渦巻き状角膜、放射状白内障、ならびに結膜異常および網膜血管異常などの眼の疾患が挙げられる。現在利用可能な治療としては、CHO細胞で生産されて静脈内注入によって投与される組換えヒトアルファ-ガラクトシダーゼAであるGenzymeのFABRAZYME(登録商標)(アガルシダーゼベータ);ヒト線維芽細胞で生産されて静脈内注入によって投与される組換えヒトアルファ-ガラクトシダーゼAであるShireのREPLAGAL(登録商標)(アガルシダーゼアルファ);および異常なアルファ-ガラクトシダーゼAを機能的な立体構造へフォールディングをシフトさせる経口投与用低分子ペャロンであるAmicusのGALAFOLD(商標)(ミガラスタット、1-デオキシガラクトノジリマイシン)が挙げられる。
【0060】
リソソーム蓄積症に対して現在行われている治療は、至適なものではない。例えば、ERTを一般的には高頻度および高用量で、例えば、隔週に最大40mg/kgまで投与しなければならない。さらに、一部の補充酵素は免疫学的に交差反応性(CRIM)があり、対象におけるIgGの産生を刺激するため、マンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介したリソソームへの酵素の送達を妨げることがある。IgGは、補充酵素のM6P残基を遮蔽する可能性があり、抗原-IgG-抗体複合体は、Fc受容体を介して細胞のリソソームに取り込まれ得るが、それによって、補充酵素が優先的にマクロファージの方へ送られる。
【0061】
適切な罹患組織への補充酵素の送達は非効率でもあり(表2、およびDesnick&Schuchman,“Enzyme replacement therapy for lysosomal diseases:lessons from 20 years of experience and remaining challenges,”13 Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.307-35,2012を参照)、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。例えば、乳児型ポンペに対し長期の酵素補充療法を受けている患者は、開鼻音、持続性筋力低下、下垂、骨減少症、難聴、誤嚥リスク、嚥下障害、心不整脈、および嚥下障害をさらに患う場合がある。補充酵素の用量は多くの場合、毎週または隔週、経時的に40mg/kgまで増加させなければならない。
【表2】
【0062】
内因性マンノース-6リン酸受容体(MPR)は、大部分の組換え酵素のリソソームへの輸送を媒介する。MPRには、カチオン非依存性(CI-MPR)およびカチオン依存性(CD-MPR)の二つの相補的な形態がある。いずれの形態のノックアウトも、リソソーム酵素の輸送異常を来す。リソソームヒドロラーゼは小胞体で合成され、シスゴルジネットワークに移動し、そこでマンノース-6-リン酸(M6P)基の付加によって共有結合修飾される。このマーカーの構成は、以下の二つのリソソーム酵素の逐次作用に依存する:UDP-N-アセチルグルコサミン-l-ホスホトランスフェラーゼ(G1cNac-ホスホトランスフェラーゼ)、およびN-アセチルグルコサミン-l-ホスホジエステル-α-N-アセチル-グルコサミニダーゼ(脱被覆酵素(uncovering enzyme))。GlcNac-ホスホトランスフェラーゼは、G1cNAc-1-リン酸残基を、UDP-G1cNAcから、ヒドロラーゼの高マンノース型オリゴ糖にある選択されたマンノースのC6位に転移させる触媒作用を及ぼす。次いで、脱被覆酵素は、末端のG1cNAcを除去し、M6P認識シグナルを露出する。トランスゴルジネットワークでは、このM6Pシグナルは、リソソームヒドロラーゼが、M6P受容体への選択的結合を介して他の全ての種のタンパク質から分離することを可能にする。産生したクラスリン被覆小胞は、トランスゴルジネットワークから出芽し、後期エンドソームと融合する。後期エンドソームの低pHで、ヒドロラーゼはM6P受容体から解離し、空の受容体はさらなる輸送を繰り返すためにゴルジ装置へ再循環される。
【0063】
マンノース受容体を介して送達されるβ-グルコセレブロシダーゼを除いて、組換えリソソーム酵素は、M6P糖鎖修飾を含み、主にCI-MPR/IGF2Rを介してリソソームに送達される。しかし、糖鎖修飾/CI-MPR-媒介性の酵素補充送達は、臨床的に意義のある全ての組織に到達するわけではない(表2)。酵素補充療法の改良は、(i)β2-アゴニストのクレンブテロールを用いてCI-MPRの表面発現を増加させること(Koeberl et al.,“Enhanced efficacy of enzyme replacement therapy in Pompe disease through mannose-6-phosphate receptor expression in skeletal muscle,” 103(2)Mol.Genet.Metab.107-12,2011、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、(ii)酵素上のM6P残基の量を増加させること(Zhu et al.,“Conjugation of mannose-6-phosphate-containing oligosaccharides to acid alpha-glucosidase improves the clearance of glycogen in Pompe mice,”279(48)J.Biol.Chem.50336-41,2004、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、または(iii)IGF-IIドメインを酵素に融合させること(Maga et al.,“Glycosylation-independent lysosomal targeting of acid alpha-glucosidase enhances muscle glycogen clearance in Pompe mice,”288(3)J.Biol.Chem.1428-38,2013、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)によって、CI-MPR送達を改善することを中心に据えている。
【0064】
数多くのリソソーム蓄積症が酵素補充療法または遺伝子療法により不十分に治療されているが、これは、主として、関連する組織または器官への補充酵素の標的指向性が乏しいこと、レシピエント宿主の負の免疫学的反応があること、および血清半減期が短いことに起因する。望ましくないくも膜下腔内注射をせずに、特に脳および脊髄において、酵素のさらに良好な組織生体内分布とリソソーム取り込みとを強化し促進する改良型酵素補充療法に対するニーズがある。出願人らは、標的罹患組織、特にCNS組織のリソソームに酵素を提供するために、酵素のCI-MPR非依存結合タンパク質誘導送達および肝臓発現を用いた、改良型酵素補充療法の開発を行ってきた。
【0065】
リソソーム蓄積症は、欠陥のあるリソソーム内に蓄積する産物の種類によって分類されうる。スフィンゴ脂質蓄積症は、脂肪族アミノアルコールに連結された脂肪酸を含有する脂質であるスフィンゴ脂質の代謝に影響を及ぼす疾患の1種である(S.Hakomori,“Glycosphingolipids in Cellular Interaction,Differentiation,and Oncogenesis,” 50 Annual Review of Biochemistry 733-764,July 1981に概説されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。スフィンゴ脂質蓄積症の蓄積産物としては、ガングリオシド(例えばテイ・サックス病)、糖脂質(例えばファブリー病)、およびグルコセレブロシド(例えばゴーシェ病)が挙げられる。
【0066】
ムコ多糖症は、グリコサミノグリカン(GAGSまたはムコ多糖類)の代謝に影響を及ぼす疾患の一群であり、このグリコサミノグリカンは、骨、軟骨、腱、角膜、皮膚、および結合組織の構築に役立つ二糖の反復した非分岐長鎖である(J.Muenzer,“Early initiation of enzyme replacement therapy for the mucopolysaccharidoses,” 111(2)Mol.Genet.Metab.63-72(Feb.2014);Sasisekharan et al.,“Glycomics approach to structure-function relationships of glycosaminoglycans,” 8(1)Ann.Rev.Biomed.Eng.181-231(Dec.2014)に概説され、それぞれが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ムコ多糖症の蓄積産物としては、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、コンドロイチン硫酸の様々な形態、およびヒアルロン酸が挙げられる。例えば、モルキオ症候群Aは、リソソーム酵素であるガラクトース-6-硫酸スルファターゼの欠陥により生じ、結果として、リソソーム内でのケラチン硫酸およびコンドロイチン6-硫酸の蓄積をもたらす。
【0067】
グリコーゲン蓄積症(別名、糖原病)は、細胞がグリコーゲンを代謝(生成または分解)することができないことに起因する。グリコーゲン代謝は、グルコース-6-ホスファターゼ、酸性アルファグルコシダーゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、グリコーゲン分枝酵素、筋グリコーゲンホスホリラーゼ、肝グリコーゲンホスホリラーゼ、筋ホスホフルクトキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコーストランスポーター、アルドラーゼA、ベータエノラーゼ、およびグリコーゲンシンターゼ含めた様々な酵素または他のタンパク質により調整される。典型的なリソソーム蓄積/グリコーゲン蓄積症はポンペ病であり、ポンペ病では、酸性アルファグルコシダーゼの欠陥によりグリコーゲンがリソソーム内に蓄積される。症状として、肝腫大、筋力低下、心不全、また乳児バリアントの場合には、2歳までの死亡が挙げられる(DiMauro and Spiegel,“Progress and problems in muscle glycogenosis,” 30(2)Acta Myol.96-102(Oct.2011)を参照のこと、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0068】
「マルチドメイン治療用タンパク質」は、(i)二つ以上の機能ドメインを含有する単一タンパク質、(ii)二つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質、および(iii)二つ以上のタンパク質または二つ以上のポリペプチドの混合物を含む。ポリペプチドという用語は、通例、ペプチド結合を介して連結されている単鎖のアミノ酸を意味するものとされる。タンパク質という用語は、ポリペプチドという用語を包含するだけでなく、さらに複雑な構造をも含む。すなわち、単一ポリペプチドとは、タンパク質であり、タンパク質は、より高次の構造に会合した一つまたは複数のポリペプチドを含有ことができる。例えば、ヘモグロビンは、四つのポリペプチド、すなわち二つのアルファグロビンポリペプチドと二つのベータグロビンポリペプチドとを含有するタンパク質である。ミオグロビンもタンパク質であるが、これは単一のミオグロビンポリペプチドのみを含有する。
【0069】
マルチドメイン治療用タンパク質は、一つまたは複数のポリペプチドと、二つの機能を付与する少なくとも二つのドメインとを含む。これらのドメインのうちの一方は、酵素欠損症に関連する欠陥タンパク質の活性の補充をもたらす「酵素ドメイン」である。これらのドメインのうちの他方は、内部移行エフェクターとの結合をもたらす「送達ドメイン」である。そのため、酵素補充活性と内部移行エフェクター(別名、内部移行エフェクター結合タンパク質に結合する能力(送達ドメイン活性)とを付与する単一のポリペプチドは、マルチドメイン治療用タンパク質である。また、一方のタンパク質が酵素機能を付与し、別のタンパク質が内部移行エフェクター結合活性を付与する、タンパク質の混合物も、マルチドメイン治療用タンパク質である。図1Aは、マルチドメイン治療用タンパク質の様々な典型例を図示する。一例(図1A、パネルA)では、マルチドメイン治療用タンパク質は、酵素(六角形により表される)と、酵素(破線)および内部移行エフェクター(実線)を結合する二重特異性抗体(IE-BP)とを含有する。ここで、二重特異性抗体の一方のアームは、酵素に非共有結合し、他方のアームは、内部移行エフェクターに非共有結合し、それによって、補充酵素を細胞内または細胞内小区画内に内部移行させることができる。別の例(パネルB)では、マルチドメイン治療用タンパク質は、二つのポリペプチドを含有する単一タンパク質を含み、その一方のポリペプチドは酵素機能を有し、他方は送達ドメイン機能を有する。ここで、酵素は、イムノグロブリンFcドメインまたは重鎖定常領域に融合され、これが、酵素半抗体のFcドメインと会合して、二機能性マルチドメイン治療用タンパク質を形成する。パネルBに図示された実施形態は、酵素が、半抗体のイムノグロブリン可変ドメインでの抗原抗体相互作用を介するのではなく半抗体の一方に共有結合で付加されていることを除いて、パネルAの実施形態と類似している。
【0070】
他の実施例では、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインに(直接的にまたはリンカーを介して間接的に)共有結合で連結された酵素から成る。一実施形態では、酵素は、イムノグロブリン分子(例えば、重鎖または代替的に軽鎖)のC末端に付加されている。別の実施形態では、酵素は、イムノグロブリン分子(例えば、重鎖または代替的に軽鎖)のN末端に付加されている。これらの典型例では、イムノグロブリン分子は、送達ドメインである。さらに別の実施形態では、酵素は、内部移行エフェクターに結合するscFv分子のC末端に付加される。
【0071】
一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、少なくとも二つの、およびいくつかの実施形態では二つ以下の送達ドメインを含み、それぞれは、同一抗原上または二つの異なる抗原上のいずれかで、異なるエピトープに向けられる。一実施形態では、第一の送達ドメインは、リソソーム輸送分子または他の内部移行エフェクター(例えば、CD63)、またはITGA7、CD9、CD63、CD81、CD82、もしくはCD151などの他の類似した細胞表面受容体に結合する。別の実施形態では、第二の送達ドメインは、トランスサイトーシスエフェクターと結合して、マルチドメイン治療用タンパク質の経細胞輸送を推進する。一実施形態では、トランスサイトーシスエフェクターは、特にLDL受容体、IgA受容体、トランスフェリン受容体、または新生児Fc受容体(FcRn)である。特定の実施形態では、トランスサイトーシス送達ドメインは、トランスフェリン受容体に結合する分子、例えば、抗トランスフェリン受容体抗体または抗トランスフェリン受容体scFv分子などを含む。Tuma and Hubbard、“Transytosis:Crossing Cellular Barriers,” Physiological Reviews,83(3):871-935(2003年7月1日)は、本発明の実践において有用なトランスサイトーシスを媒介する細胞表面受容体について、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、第二の送達ドメインは、トランスフェリン受容体、またはインスリン受容体、CD98、もしくはベイシジン(Bsg)などの他の類似した細胞表面タンパク質に結合する。少なくとも二つの送達ドメインを含む各マルチドメイン治療用タンパク質はまた、少なくとも一つの酵素ドメインを含み、例えば、少なくとも二つの送達ドメインの各々は、本明細書に記載の方法で、酵素ドメインに独立に関連付けられるか、または関連付けられなくてもよく(例えば、抗原-抗体相互作用を介して、直接共有結合を介して、間接共有結合を介して)、少なくとも二つの送達ドメインのうちの少なくとも一つは、酵素ドメインに関連付けられている。さらに、少なくとも二つの送達ドメインの各々は、抗体、半抗体、またはscFv(例えば、Fcと融合したscFvなど)を独立して含んでもよい。
【0072】
「酵素ドメイン」または「酵素」とは、酵素欠損症の病因または生理学的効果に関連する任意のタンパク質を意味する。酵素としては、実在の酵素、輸送タンパク質、受容体、または、欠陥がありかつ疾患の原因となった分子的損傷があると考えられる他のタンパク質が挙げられる。酵素としてはまた、疾患の分子的損傷を補充もしくは迂回するのに類似したまたは十分な生化学的または生理学的活性を付与することのできる任意のタンパク質も含まれる。例えば、「アイソザイム」を酵素として用いてもよい。リソソーム蓄積症関連タンパク質の例としては、表1に「関与酵素/タンパク質」として列挙されたもの、および酵素欠損症の分子的欠陥を迂回する任意の既知のもしくは後に発見されるタンパク質または他の分子が挙げられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、酵素とはヒドロラーゼであり、そのようなものとしては、エステラーゼ、グリコシラーゼ、エーテル結合に作用するヒドロラーゼ、ペプチダーゼ、リニアアミダーゼ、ジホスファターゼ、ケトンヒドロラーゼ、ハロゲナーゼ、ホスホアミダーゼ、スルホヒドロラーゼ、スルフィナーゼ、デスルフィナーゼなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、酵素とはグリコシラーゼであり、そのようなものとしては、グリコシダーゼおよびN-グリコシラーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、酵素とはグリコシダーゼであり、そのようなものとしては、アルファ-アミラーゼ、ベータ-アミラーゼ、グルカン1,4-アルファ-グルコシダーゼ、セルロース、エンド-1,3(4)-ベータ-グルカナーゼ、イヌリナーゼ、エンド-1,4-ベータ-キシラナーゼ、エンド-1,4-b-キシラナーゼ、デキストラナーゼ、キチナーゼ、ポリガラクツロニダーゼ、リソザイム、エクソ-アルファ-シアリダーゼ、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-マンノシダーゼ、ベータ-マンノシダーゼ、ベータ-フルクトフラノシダーゼ、アルファ,アルファ-トレハロース、ベータ-グルクロニダーゼ、キシランエンド-1,3-ベータ-キシロシダーゼ、アミロ-アルファ-1,6-グルコシダーゼ,ヒアルロノグルコサミニダーゼ、ヒアルロノグルクロニダーゼなどが挙げられる。
【0074】
分子的欠陥がα-グルコシダーゼ活性における欠陥であるポンペ病の場合には、酵素としては、ヒトアルファ-グルコシダーゼ、および「アイソザイム」類、例えば他のアルファ-グルコシダーゼ類、工学的に操作された組換えアルファ-グルコシダーゼ、他のグルコシダーゼ類、組換えグルコシダーゼ類、非還元末端1-4結合アルファ-グルコース残基を加水分解して単一アルファグルコース分子を放出するように工学的に操作された任意のタンパク質、任意のEC 3.2.1.20酵素、グリコーゲンまたはデンプン用の天然または組換えの低pH糖質加水分解酵素、およびグルコシルヒドロラーゼ、例えば、スクラーゼ・イソマルターゼ、マルターゼ・グルコアミラーゼ、グルコシダーゼII、および中性アルファ-グルコシダーゼなどが挙げられる。
【0075】
「内部移行エフェクター」は、細胞内へ内部移行できるか、または逆行性膜輸送に関与もしくは寄与するタンパク質、場合によっては、受容体タンパク質を含む。内部移行(internalization)エフェクター、内部移行(internalizing)エフェクター、内部移行(internalization)受容体、および内部移行(internalizing)受容体は、本明細書で交換可能に使用される。いくつかの例において、内部移行エフェクターは、トランスサイトーシスを経るタンパク質である;すなわち、該タンパク質は、細胞の一方の側で内部移行され、細胞の他方の側へ輸送される(例えば、頂端から基底へ)。多くの実施形態において、内部移行エフェクタータンパク質は、細胞表面発現タンパク質または可溶性細胞外タンパク質である。しかし、本発明はまた、内部移行エフェクタータンパク質がエンドソーム、小胞体、ゴルジ、リソソームなど.の細胞内区画内で発現する実施形態についても考慮する。例えば、逆行性膜輸送(例えば、初期/再循環エンドソームからトランスゴルジネットワークへの経路)に関与するタンパク質は、本発明の様々な実施形態において、内部移行エフェクタータンパク質として機能を果たすことがある。いずれの場合も、送達ドメインが内部移行エフェクタータンパク質に結合することによって、マルチドメイン治療用タンパク質全体およびそれらに関連する任意の分子(例えば、酵素)も、細胞内へ内部移行されるようになる。下記に説明する通り、内部移行エフェクタータンパク質は、細胞内へ直接的に内部移行されるタンパク質、ならびに細胞内へ間接的に内部移行されるタンパク質を含む。
【0076】
細胞内へ直接的に内部移行される内部移行エフェクタータンパク質は、細胞性の内部移行を経る少なくとも一つの細胞外ドメイン(例えば、膜貫通タンパク質、GPIアンカータンパク質など)を有する膜結合性分子を含み、好ましくは、細胞内分解経路および/または再循環経路を介してプロセシングされる。細胞内に直接的に内部移行される内部移行エフェクタータンパク質の具体的かつ非限定的な例としては、例えば、CD63、MHC-I(例えば、HLA-B27)、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質、別名VIP17)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体(例えば、SCARA1-5、SCARB1-3、CD36)などが挙げられる。
【0077】
一実施形態では、内部移行エフェクターはいくつかの組織タイプで発現し、CNSおよび末梢細胞タイプの両方の標的化が望ましい治療に有用である。CNSおよび末梢細胞タイプの両方への輸送に有用な内部移行エフェクターとしては、CD63、MHC-I、液胞型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、内部移行エフェクターは、プロラクチン受容体(PRLR)である。PRLRは、ある特定の治療用途の標的であるだけでなく、その高速の内部移行および代謝回転に基づく有効な内部移行エフェクタータンパク質でもあることが見出された。内部移行エフェクタータンパク質としてのPRLRの可能性は、例えば、国際特許出願公開第2015/026907号に記載されており、とりわけ抗PRLR抗体がin vitroにてPRLR発現細胞により効果的に内部移行されることが示されている。
【0078】
いくつかの細胞タイプによって発現される内部移行エフェクターの標的化は、例えば、ファブリー病、ゴーシェ病、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、ポンペ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、αマンノース症、ノイラミニダーゼ欠損症、シアリドーシス、アスパルチルグリコサミン尿症、混合性サポシン欠損症、異型ゴーシェ病、ファーバー脂肪性肉芽腫症、フコシドーシス、およびβマンノース症などの疾患の治療において、CNSおよび末梢細胞タイプの両方の標的化が望ましい場合に有用でありうる。
【0079】
別の実施形態では、内部移行エフェクターはいくつかの組織タイプで発現する。一例では、内部移行エフェクターは、骨および軟骨を優先的に標的としうる。CNS、ならびに骨および軟骨のいずれかまたは両方への輸送に有用なエフェクターには、コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1が含まれるが、これらに限定されない。こうしたエフェクターは、CNSならびに骨格および軟骨の両方の標的化が望ましい治療で有用である。
【0080】
骨および軟骨によって優先的に発現される内部移行エフェクターの標的化は、例えば、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVA、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、βマンノース症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、アスパルチルグリコサミン尿症、ファーバー脂肪性肉芽腫症、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、ムコ多糖症、およびαマンノース症などの疾患の治療において、CNSならびに骨格および軟骨の両方の標的化が望ましい場合に有用でありうる。
【0081】
さらに別の実施形態では、内部移行エフェクターは、マクロファージ、単球、およびマイクログリアなどの特定の組織または細胞タイプで優先的に発現する。CNSおよびマクロファージへの輸送に有用なエフェクターには、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(Vセットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)が含まれるが、これらに限定されない。こうしたエフェクターは、CNSおよびマクロファージの両方の標的化が望ましい治療で有用である。CNSマクロファージは、マイクログリアと呼ばれる場合がある。
【0082】
マクロファージ(単球またはマイクログリア)により優先的に発現する内部移行エフェクターの標的化は、例えば、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、およびファーバー脂肪性肉芽腫症などの疾患の治療において、CNSおよびマクロファージ(またはマイクログリア)の両方の標的化が望ましい場合に有用でありうる。
【0083】
ある実施形態では、内部移行エフェクターは、腎臓特異的内部移行エフェクターであり、例えば、CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)などである。
【0084】
腎臓内で優先的に発現する内部移行エフェクターの標的化は、例えば、ファブリー病、アルポート症候群、多発性嚢胞腎疾患、および血栓性血小板減少性紫斑病などの疾患の治療において、CNSおよび腎臓の両方の標的化が望ましい場合に有用でありうる。
【0085】
さらに別の実施形態では、内部移行エフェクターは、肝臓などの特定の組織または細胞タイプで優先的に発現する。CNSおよび肝臓への輸送に有用なエフェクターには、ASGR1およびASGR2が含まれるが、これらに限定されない。こうしたエフェクターは、CNSおよび肝臓の両方の標的化が望ましい治療で有用である。
【0086】
肝臓内で優先的に発現する内部移行エフェクターの標的化は、例えば、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、MPS VI、MPS VII、MPS II、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、ファーバー脂肪性肉芽腫症などの疾患の治療において、CNSおよび肝臓の両方の標的化が望ましい場合に有用でありうる。
【0087】
いくつかの実施形態では、内部移行エフェクターは、筋特異的インターナライザーであり、例えば、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)などである。
【0088】
筋肉で優先的に発現する内部移行エフェクターの標的化は、例えば、ポンペ病などの疾患の治療において、CNSおよび筋組織の両方の標的化が望ましい場合に有用でありうる。
【0089】
いくつかの実施形態では、内部移行エフェクターは、ITGA7、ITGA10、CD9、CD63、APLP2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRである。ITGA7、ITGA10、CD9、CD63、APLP2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRに対する抗体は、当技術分野で周知である(例示的な非限定的抗IGTA7抗体については、例えば、R&D Systems「インテグリンアルファ7:製品」を参照のこと;抗ITGA10抗体の例示的な非限定的例については、例えば、米国特許第8048991号、米国特許第20120034625号、米国特許第8563255号、米国特許第20140099716号、米国特許第20160319023号、国際特許出願公開第2018138322号、および米国特許第10087253号を参照のこと;例示的な非限定的抗CD63抗体については、例えば、国際特許出願公開第201102982号;国際特許出願公開第2014185908号;米国特許第20160115229号;国際特許出願公開第2017134197号;米国特許第9738717号;およびde Goeij BE et al.Mol.Cancer Ther.(2016)Nov;15(11):2688-2697を参照のこと;抗APLP2抗体の例示的な非限定的例については、例えば、米国特許第543153A号;米国特許第5441931A号;米国特許第5677146A号;および米国特許第5935854A号を参照のこと;抗MSR1抗体の例示的な非限定的例については、例えば、R&D Systems 製品シートMAB27081;R&D Systems製品シートAF2708;AbCam製品シートab1515707;Yu X,et al.、J.Biol.Chem.、2011;286(21):18795-806;およびN Nishijima、et al.、Front Immunol、2017;8(0):379を参照のこと;抗ASGR1抗体の例示的な非限定的例については、例えば、国際特許出願公開第2017058944号を参照のこと;非限定的な例示的抗ASGR2抗体については、例えば、www.origene.com/category/antibodies?q=ASGR2&sub_category=Primary+Antibodies&reactivities=Humanで入手可能なASGR2に対するOrigene Antibodiesを参照のこと;例示的な非限定的抗PRLR抗体については、例えば、米国特許第9649374号;米国特許第9302015号;米国特許第20130171147号;米国特許第10106616号;国際特許出願公開第2015026907号;米国特許第9777063号;国際特許出願公開第2011069795号;米国特許第20130272968号;米国特許第20140141003号;国際特許出願公開第2011069799号;米国特許第20120315276号;国際特許出願公開第2012163932号;米国特許第9241989号;国際特許出願公開第2012136519号;国際特許出願公開第2011069798号;国際特許出願公開第2019011719号;米国特許第8883979号;米国特許第20140065158号;国際特許出願公開第2015187596号;米国特許第9353186号;国際特許出願公開第2018102304号;米国特許第20130022606号;米国特許第9688764号;米国特許第20130129739号;米国特許第20160002342号;米国特許第20150056222号;米国特許第20150056221号;米国特許第20170008965号;米国特許第20150093393号;国際特許出願公開第2011069797号;米国特許第20160251442号;米国特許第20180094066号;国際特許出願公開第2014036076号;米国特許第20180185504号;米国特許第20140271659号;国際特許出願公開第2011069794号;国際特許出願公開第2014143909号;米国特許第20160319029号;米国特許第9545451号;米国特許第9023357号;米国特許第20150252116号;国際特許出願公開第2011069796号 Kelly MP、et al.、Mol.Cancer Ther.(2017)Jul;16(7):1299-1311;Otto C.et al.Endocrinology(2015)156:4365-73 2017-01-20;およびAndreev J et al.、Mol.Cancer Ther.(2017)Apr;16(4):681-693を参照のこと;これらの文献の各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。当業者なら、これらの周知の抗体、またはその抗原結合部分(例えば、それに由来するscFvなど)を、本明細書に記載の治療用タンパク質に容易に連結し、本明細書に記載のマルチドメイン治療用タンパク質を作製および使用することができる。
【0090】
内部移行エフェクター(IE)を細胞内に直接的に内部移行させる実施形態において、送達ドメインは、例えば、IEと特異的に結合する抗体もしくは抗体の抗原結合断片、またはIEと特異的に相互作用するリガンドもしくはリガンドの一部でありうる。例えば、IEがKremen-1またはKremen-2である場合、送達ドメインは、Kremenリガンド(例えばDKK1)またはそのKremen結合部分を含むか、またはそれからなることがある。別の例として、IEがASGR1などの受容体分子である場合、送達ドメインは、受容体(例えば、アシアロオロソムコイド[ASOR]またはベータ-Ga1NAc)またはその受容体結合部分に特異的なリガンドを含むか、またはそれからなることがある。
【0091】
細胞内へ間接的に内部移行される内部移行エフェクタータンパク質としては、それら自身では内部移行しないが、細胞内へ直接的に内部移行される第二のタンパク質またはポリペプチドと結合またはその他会合した後に細胞内へ内部移行されてゆく、タンパク質およびポリペプチドが挙げられる。細胞内へ間接的に内部移行されるタンパク質としては、例えば、内部移行する細胞の表面に発現される受容体分子と結合できる可溶性リガンドを挙げることができる。内部移行する細胞の表面に発現される受容体分子とのその相互作用を介して細胞内へ(間接的に)内部移行される、可溶性リガンドの非限定的な例は、トランスフェリンである。IEがトランスフェリン(または別の間接的に内部移行されるタンパク質)である実施形態において、送達ドメインとIEとの結合、およびIEとトランスフェリン受容体(または内部移行する細胞の表面に発現される別の受容体分子)との相互作用により、送達ドメイン全体およびそれと関連する任意の分子(例えば酵素)が細胞内へ内部移行されるようになり、同時にIEとその結合パートナーが内部移行される。
【0092】
IEが細胞内に間接的に内部移行される実施形態において、送達ドメインは、例えば、IEと特異的に結合する抗体、抗体の抗原結合断片、もしくはscFv、または可溶性エフェクタータンパク質と特異的に相互作用する受容体もしくは受容体の一部でありうる。例えば、IEがサイトカインである場合、送達ドメインは、対応するサイトカイン受容体またはそのリガンド結合部分を含むか、またはそれからなることがある。
【0093】
IEの典型例はCD63であり、それは細胞膜を4回貫通する細胞表面タンパク質のテトラスパニンスーパーファミリーのメンバーである。CD63は、ほぼ全ての組織で発現し、シグナル伝達複合体の形成および安定化に関与していると考えられている。CD63は、細胞膜、リソソーム膜、および後期エンドソーム膜に局在化している。CD63は、インテグリンと会合することが知られており、また上皮間葉転移に関与している可能性がある。H.Maecker et al.,“The tetraspanin superfamily:molecular facilitators,” 11(6)FASEB J.428-42,May 1997;and M.Metzelaar et al.,“CD63 antigen.A novel lysosomal membrane glycoprotein,cloned by a screening procedure for intracellular antigens in eukaryotic cells,”266 J.Biol.Chem.3239-3245,1991を参照のこと。それら各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0094】
IEの別の典型例は、アミロイドベータ(A4)前駆体様タンパク質2(「APLP2」)であり、これはAPP(アミロイド前駆体タンパク質)ファミリーの遍在発現メンバーである。APLP2は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子(例えばKd)と相互作用することが知られている膜結合タンパク質である。それは細胞表面でKdと結合し、クラスリン依存的にKdと共に牽引されて内部移行される。Tuli et al.,“Mechanism for amyloid precursor-like protein 2 enhancement of major histocompatibility complex class I molecule degradation,”284 The Journal of Biological Chemistry 34296-34307(2009)を参照のこと;この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0095】
IEの別の典型例は、プロラクチン受容体(PRLR)である。プロラクチン受容体は、I型サイトカイン受容体ファミリーのメンバーであり、リガンドに結合しそれに続いて二量体化すると、「チロシンキナーゼのJak2、Fyn、およびTec、ホスファターゼSHP-2、グアニンヌクレオチド交換因子Vav、ならびにシグナル伝達抑制因子SOCS」を活性化する(Clevenger and Kline,“Prolactin receptor signal transduction,” 10(10)Lupus 706-18(2001),要約を参照;これらの各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。プロラクチン受容体は、エンドサイトーシス再循環を経て、リソソーム画分内で見出されうる。Genty et al.,“Endocytosis and degradation of prolactin and its receptor in Chinese hamster ovary cells stably transfected with prolactin receptor cDNA,”99(2)Mol.Cell Endocrinol.221-8(1994);and Ferland et al.,“The effect of chloroquine on lysosomal prolactin receptors in rat liver,”115(5)Endocrinology 1842-9(1984)を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「免疫反応」は、通例、外部または「非自己」のタンパク質に対する患者の免疫学的応答を意味する。免疫学的応答は、アレルギー反応、および補充酵素の有効性を妨げる抗体の発生を含む。一部の患者は、非機能性タンパク質のいずれも産生することはなく、それゆえ補充酵素を「異種」タンパク質にする場合がある。例えば、GLAが欠乏しているファブリー病患者への組換えGLA(rGLA)の反復注射は、アレルギー反応を引き起こすことが多い。他の患者では、rGLAに対する抗体の産生により、疾患の治療における補充酵素の有効性が減少することが示されている。例えば、改変NAGAを「アイソザイム」として使用してGLAを補充することについて論じている、Tajima et al.(“Use of a Modified α-N-Acetylgalactosaminidase(NAGA)in the Development of Enzyme Replacement Therapy for Fabry Disease,”85(5)Am.J.Hum.Genet.569-580(2009))を参照されたい。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。改変NAGAは、GLAとの免疫学的交差反応性を有さず、「組換えGLAを用いて繰り返し治療されているファブリー病患者由来の血清に対して反応しなかった」前掲の文献、要約)。
【0097】
「免疫抑制剤」は、全般的な免疫抑制を結果として生じる薬物および/またはタンパク質を含み、ポンペ病またはファブリー病を有する患者において、補充酵素、例えばそれぞれGAAまたはGLAに対する交差反応性免疫学的物質(CRIM)を防ぐために使用されうる。免疫抑制剤の非限定的な例としては、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、ラパマイシンDNAアルキル化剤、抗CD20抗体、抗BAFF抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0098】
調節因子、例えば、例として肝臓などの組織に特異的なプロモーターは、その調節因子の特異的である組織において、そのような調節因子の制御下で、核酸配列、例えば遺伝子の発現を増強する。肝特異的な調節因子、例えば肝特異的プロモーターの非限定的な例は、Chuah et al.(2014)Mol.Ther.22:1605-13を参照のこと。それら文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0099】
用語「タンパク質」は、アミド結合を介して共有結合で連結されている約20個を超えるアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを意味する。タンパク質は、一般に当該技術分野で「ポリペプチド」として知られる一つまたは複数のアミノ酸ポリマー鎖を含む。したがって、ポリペプチドは、タンパク質であってもよく、タンパク質は、複数のポリペプチドを含有して、単一機能性生体分子を形成することがある。ジスルフィド架橋(すなわち、シスチンを形成するようなシステイン残基間の)が、一部のタンパク質に存在することがある。これらの共有結合による連結が、単一のポリペプチド鎖内にあっても、二つの個々のポリペプチド鎖間にあってもよい。例えば、ジスルフィド架橋は、インスリン、イムノグロブリン類、およびプロタミンなどの適正な構造および機能に不可欠である。ジスルフィド結合形成の最近の総説として、Oka and Bulleid,“Forming disulfides in the endoplasmic reticulum,”1833(11)Biochim Biophys Acta 2425-9(2013)を参照されたい。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
本明細書で使用される際に、「タンパク質」は、生物学的治療用タンパク質、研究または治療法で使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質および他のFc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、scFv融合タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ならびにペプチドホルモンなどを含む。タンパク質は、組換え細胞ベースの生産系、例えば、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、ピキア属)、哺乳類系(例えば、CHO細胞、およびCHO-K1細胞などのCHO派生物)を用いて生産されてもよい。生物学的治療用タンパク質とその生産について論じている最近の総説として、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non-human sialylation,”28 Biotechnol Genet Eng Rev.147-75(2012)を参照のこと。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0101】
用語「抗体」には、本明細書で使用される場合、四つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続した二つの重(H)鎖と二つの軽(L)鎖とを含む、イムノグロブリン分子を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと省略される)と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の三つのドメインを含む。軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと省略される)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は、一つのドメインCLを含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へとさらに細分することができる。各VHおよびVLは、以下の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3として省略されることがあり、軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3として省略されることがある)でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される、三つのCDRおよび四つのFRで構成される。用語「高親和性」抗体は、それらの標的への結合親和性が、表面プラズモン共鳴、例えばBIACORE(商標)または溶液親和性ELISAによって測定された場合に、少なくとも10-9M、少なくとも10-10M、少なくとも10-11M、または少なくとも10-12Mである抗体を指す。用語「抗体」は、例えば、モノクローナルまたはポリクローナルなどの任意のタイプの抗体を包含しうる。さらに、抗体は、例えば、哺乳類または非哺乳類など、任意の起源でありうる。一実施形態では、抗体は、哺乳類であってもよいし鳥類であってもよい。さらなる実施形態では、抗体は、ヒト由来であってもよく、さらにヒトモノクローナル抗体であってもよい。
【0102】
語句「二重特異性抗体」は、二つ以上のエピトープを選択的に結合することができる抗体を含む。二重特異性抗体は、通例二つの異なる重鎖を含み、各重鎖は、異なるエピトープ―二つの異なる分子(例えば抗原)上または同一の分子(例えば同一の抗原)上のどちらかの―を特異的に結合する。二重特異性抗体が二つの異なるエピトープ(第一のエピトープおよび第二のエピトープ)を選択的に結合することができる場合、第一のエピトープに対する第一の重鎖の親和性は、一般的に、第二のエピトープに対する第一の重鎖の親和性よりも少なくとも一桁から二桁、または三桁もしくは四桁低く、その逆もまた同様である。二重特異性抗体により認識されるエピトープは、同一の標的の上にも異なる標的の上にも(例えば、同一のタンパク質の上にも異なるタンパク質の上にも)ありうる。二重特異性抗体は、例えば、同一の抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製することができる。例えば、同一の抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列は、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列に融合可能であり、こうした配列は、イムノグロブリン軽鎖を発現する細胞内で発現することができる。典型的な二重特異性抗体は、各々が三つの重鎖CDRとそれに続いて(N末端からC末端へ)CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを有する二つの重鎖と、抗原結合特異性を付与しないが各重鎖と会合可能であるか、または各重鎖と会合できかつ重鎖抗原結合領域により結合される一つまたは複数のエピトープを結合できるか、または各重鎖と会合できかつ重鎖の一方もしくは両方をエピトープの一方もしくは両方に結合させることができるイムノグロブリン軽鎖とを有する。
【0103】
語句「重鎖」または「イムノグロブリン重鎖」は、任意の生物由来のイムノグロブリン重鎖定常領域配列を含み、別段に指定のない限り、重鎖可変ドメインを含む。別段の指定のない限り、重鎖可変ドメインは、三つの重鎖CDRと四つのFR領域とを含む。重鎖の断片としては、CDR、CDRおよびFR、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。典型的な重鎖は、可変ドメインに続いて(N末端からC末端へ)、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを有する。重鎖の機能性断片としては、抗原を特異的に認識する(例えば、抗原をマイクロモル濃度、ナノモル濃度、またはピコモル濃度の範囲のKDで認識する)ことが可能であり、かつ細胞から発現および分泌することが可能であり、かつ少なくとも一つのCDRを含む、断片が挙げられる。
【0104】
語句「軽鎖」は、任意の生物由来のイムノグロブリン軽鎖定常領域配列を含み、別段の指定のない限り、ヒトカッパ軽鎖およびヒトラムダ軽鎖を含む。軽鎖可変(VL)ドメインは、別段の指定のない限り、典型的には三つの軽鎖CDRと四つのフレームワーク(FR)領域とを含む。一般に、完全長の軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含むVLドメインと、軽鎖定常ドメインとを含む。本発明で使用可能な軽鎖は、例えば、抗原結合タンパク質が選択的に結合する第一の抗原と第二の抗原のどちらにも選択的に結合しない軽鎖を含む。適切な軽鎖としては、既存の抗体ライブラリー(ウェットライブラリーまたはin silico)で最も一般的に採用される軽鎖をスクリーニングすることによって特定できるものが挙げられ、この軽鎖は、抗原結合タンパク質の抗原結合ドメインの親和性および/または選択性に実質的に干渉しない。適切な軽鎖としては、抗原結合タンパク質の抗原結合領域が結合するエピトープの一方または両方を結合できる軽鎖が挙げられる。
【0105】
語句「可変ドメイン」には、次のアミノ酸領域をN末端からC末端の配列に含む(特に明記されない限り)、イムノグロブリン軽鎖または重鎖(所望通りに修飾済)のアミノ酸配列が含まれる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「可変ドメイン」は、二連のベータシート構造を有する標準ドメイン(VHまたはVL)内にフォールディングできるアミノ酸配列を含み、このベータシートは、第一のベータシートと第二のベータシートの残基間をジスルフィド結合によって連結されている。
【0106】
語句「相補性決定領域」または用語「CDR」は、生物のイムノグロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、この配列は、通常(すなわち野生型動物では)イムノグロブリン分子(例えば、抗体またはT細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域における二つのフレームワーク領域の間に見られる。CDRは、例えば生殖系列配列または再構成もしくは非再構成の配列によってコードされ、例えば、ナイーヴB細胞もしくは成熟B細胞またはT細胞によってコードされうる。一部の環境下(例えば、CDR3に関して)では、CDRは、二つ以上の配列(例えば、生殖細胞系配列)によってコードされ得、その二つ以上の配列は(例えば、非再構成核酸配列においては)連続していないが、例えば、配列のスプライシングまたは接続(例えば、重鎖CDR3を形成するためのV-D-J再構成)の結果として、B細胞核酸配列では連続している。
【0107】
用語「抗体断片」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の一つまたは複数の断片を指す。用語「抗体断片」の中に包含される結合断片の例としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された二つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989)Nature 241:544-546、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、(vi)単離されたCDR、ならびに(vii)Fv断片の二つのドメインであるVLおよびVHからなり、合成リンカーによって接続されて単一タンパク質鎖を形成し、その鎖ではVL領域とVH領域とがペアリングして一価分子を形成している、scFvが挙げられる。ダイアボディなどの単鎖抗体の他の形態も、用語「抗体」の下に包含される(例えば、Holliger et al.(1993)PNAS USA 90:6444-6448;Poljak et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照。この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0108】
語句「Fc含有タンパク質」は、イムノグロブリンのCH2領域およびCH3領域の少なくとも機能性部分を含む、抗体、二重特異性抗体、イムノアドヘシン、および他の結合タンパク質を含む。「機能性部分」は、Fc受容体(例えば、FcyRまたはFcRn、すなわち胎児性Fc受容体)を結合できる、および/または補体の活性化に関与できるCH2領域およびCH3領域を指す。CH2領域およびCH3領域が、任意のFc受容体を結合不能にしかつ補体の活性化も不能にする欠失、置換、および/もしくは挿入、または他の修飾を含有する場合、CH2領域およびCH3領域は、機能的ではない。
【0109】
Fc含有タンパク質は、イムノグロブリンドメインに改変を含むことができ、そのような改変は、当該改変が結合タンパク質の一つまたは複数のエフェクター機能に影響を及ぼす場合(例えば、FcyR結合、FcRn結合、ならびにそれゆえ半減期および/またはCDC活性に影響を及ぼす改変)を含む。そのような改変としては、以下に限定されないが、イムノグロブリン定常領域のEU付番を参照して、以下の改変およびそれらの組み合わせが挙げられる:238、239、248、249、250、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、297、298、301、303、305、307、308、309、311、312、315、318、320、322、324、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、337、338、339、340、342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438、および439。
【0110】
例えば、限定を意図されず、結合タンパク質は、Fc含有タンパク質であり、(記載された改変を含まない同一のFc含有タンパク質と比較して)血清半減期の改善を示し、250位(例えば、EもしくはQ);250位および428位(例えば、LもしくはF);252位(例えば、L/Y/F/WもしくはT)、254位(例えば、SもしくはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DもしくはT)での改変;または428位および/もしくは433位(例えば、L/R/SI/P/QもしくはK)および/もしくは434位(例えば、H/FもしくはY)での改変;または250位および/もしくは428位での改変;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での改変を有する。別の例では、改変は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)の改変;428L、2591(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)の改変;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)の改変;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)の改変;250Qおよび428Lの改変(例えば、T250QおよびM428L);307および/または308の改変(例えば、308Fもしくは308P)を含みうる。
【0111】
用語「抗原結合タンパク質」は、本明細書で使用される場合、抗原、例えば細胞特異的抗原および/または本発明の標的抗原などのエピトープを、特異的に認識するポリペプチドまたはタンパク質(機能単位で複合体化した一つまたは複数のポリペプチド)を指す。抗原結合タンパク質は、多重特異性であってもよい。抗原結合タンパク質に関連する用語「多重特異性」は、そのタンパク質が同一の抗原上または異なる抗原上のどちらかにおいて異なるエピトープを認識することを意味する。本発明の多重特異性抗原結合タンパク質は、単一の多機能性ポリペプチドであり得るか、または相互に共有結合でまたは非共有結合で会合した二つ以上のポリペプチドの多量体複合体でありうる。用語「抗原結合タンパク質」は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質と連結し得るかまたは共発現し得る、本発明の抗体またはその断片を含む。例えば、抗体またはその断片は、一つまたは複数の他の分子実体、例えばタンパク質またはその断片などに、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合による会合、またはその他により)機能的に連結して、第二の結合特異性を有する二重特異性または多重特異性の抗原結合分子を産生することができる。
【0112】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、多重特異性抗原結合ポリペプチドによって認識される抗原の一部分を指す。単一抗原(抗原ポリペプチドなど)が、二つ以上のエピトープを有していてもよい。エピトープは、構造的または機能的と定義されうる。機能的エピトープは一般に、構造的エピトープのサブセットであり、抗原結合ポリペプチドと抗原との間の相互作用の親和性に直接的に寄与する残基として定義される。エピトープは、立体配座的でもあり得、すなわち、非線形アミノ酸から構成されうる。ある特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性のある表面群である決定基を含み得、ある特定の実施形態では、特異的三次元構造特徴および/または比電荷特徴を有しうる。連続したアミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への露出に際して保持されるのに対して、三次フォールディングにより形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理に際して損なわれる。
【0113】
用語「ドメイン」は、特定の機能または構造を有するタンパク質またはポリペプチドの任意の部分を指す。好ましくは、本発明のドメインは、細胞特異的抗原または標的抗原に結合する。細胞特異的抗原ドメインまたは標的抗原結合ドメインなどは、本明細書で使用される場合、天然に発生したか、酵素的に入手可能であるか、合成であるか、または遺伝子改変されており、かつ抗原を特異的に結合する、任意のポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。
【0114】
用語「半抗体(half-body)」または「半抗体(half-antibody)」は、互換的に用いられ、一つの重鎖と一つの軽鎖とを本質的に含有する抗体の半分を指す。抗体重鎖は、二量体を形成することができ、それゆえ一つの半抗体の重鎖は、異なる分子(例えば、別の半抗体)または別のFc含有ポリペプチドと会合している重鎖と会合することができる。二つの僅かに異なるFcドメインは、二重特異性抗体、または他のヘテロ二量体、ヘテロ三量体、およびヘテロ四量体などの形成にあるように「ヘテロ二量体化」しうる。Vincent and Murini,“Current strategies in antibody engineering:Fc engineering and pH-dependent antigen binding,bispecific antibodies and antibody drug conjugates,” 7 Biotechnol.J.1444-1450(20912);and Shimamoto et al.,“Peptibodies:A flexible alternative format to antibodies,”4(5)MAbs 586-91(2012)を参照のこと。各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0115】
一実施形態では、半抗体可変ドメインは内部移行エフェクターを特異的に認識し、半抗体のFcドメインは補充酵素(例えば、ペプチボディ)を含むFc融合タンパク質と二量体化する(同上文献の586ページ)。
【0116】
「単鎖可変断片」または「scFv」という用語は、イムノグロブリン重鎖可変領域(VH)およびイムノグロブリン軽鎖可変領域(VL)を含有する単鎖融合ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、VHおよびVLは、10から25アミノ酸のリンカー配列によって接続される。ScFvポリペプチドは、CL領域またはCH1領域などの他のアミノ酸配列も含みうる。ScFv分子は、ファージディスプレイによって製造されてもよいし、ハイブリドーマまたはB細胞から重鎖および軽鎖を直接的にサブクローニングすることによって作製してもよい。Ahmad et al.,Clinical and Developmental Immunology,volume 2012,article ID 98025は、ファージディスプレイおよび抗体ドメインクローニングによりscFv断片を作製する方法について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
「アルファ-グルコシダーゼ」(または「α-グルコシダーゼ」)、「α-グルコシダーゼ活性」、「GAA」、および「GAA活性」は互換的に用いられ、グリコーゲンおよびデンプンの1,4-アルファ結合を加水分解してグルコースにすることを促進する任意のタンパク質を意味する指す。GAAは、特に、EC 3.2.1.20、マルターゼ、グルコインべルターゼ、グルコシドスクラーゼ、マルターゼ・グルコアミラーゼ、アルファ-グルコピラノシダーゼ、グルコシドインベルターゼ、アルファ-D-グルコシダーゼ、アルファ-グルコシドヒドロラーゼ、アルファ-1,4-グルコシダーゼ、およびアルファ-D-グルコシドグルコヒドロラーゼとしても知られている。GAAは、リソソーム内、および小腸の刷子縁に見出されうる。ポンペ病に罹患している患者は、機能性リソソームα-グルコシダーゼが欠乏している。S.Chiba,“Molecular mechanism in alpha-glucosidase and glucoamylase,”61(8)Biosci.Biotechnol.1233-9(1997);およびHesselink et al.,“Lysosomal dysfunction in muscle with special reference to glycogen storage disease type II,”1637(2)Biochim.Biophys.Acta.164-70(2003)を参照のこと。それら文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0118】
「アルファ-ガラクトシダーゼA」(または「α-ガラクトシダーゼA」)、「α-ガラクトシダーゼA活性」、「α-ガラクトシダーゼ」、「α-ガラクトシダーゼ活性」、「GLA」、および「GLA活性」は、互換的に用いられ、糖脂質および糖タンパク質由来の末端α-ガラクトシル部分の加水分解を促進し、またα-D-フコシドを加水分解する任意のタンパク質を意味する。GLAは、特に、EC 3.2.1.22、メリビアーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼA、α-ガラクトシドガラクトヒドロラーゼ、α-D-ガラクトシドガラクトヒドロラーゼとしても知られている。GLAは、X連鎖GLA遺伝子によりコードされるリソソーム酵素である。GLAの欠陥によりファブリー病が引き起こされ得るが、その場合、グロボトリアオシルセラミド(別名Gb3、GL-3、またはセラミドトリヘキソシド)として知られる糖脂質が血管内に蓄積し(すなわち、隆起血管障害)、その結果、疼痛や、腎臓、心臓、皮膚、および/または脳血管組織、ならびに他の組織および器官の機能に障害をもたらす。例えば、Prabakaran et al.“Mannose 6-phosphate receptor and sortilin mediated endocytosis of α-galactosidase A in kidney endothelial cells,” 7(6)PLoS One e39975 pp.1-9(2012)を参照されたい。この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0119】
一態様では、本発明は、リソソーム蓄積症に罹患している患者(または対象)に「マルチドメイン治療用タンパク質」を投与することによって、該患者を治療する方法を提供する。マルチドメイン治療用タンパク質は、患者の細胞に入り、LSDに関連のある酵素(すなわち「内因性酵素」)または酵素活性を補充する酵素または酵素活性(すなわち「補充酵素」)をリソソームに送達する。一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する遺伝子療法ベクターを介して患者に送達される。
【0120】
LSDとしては、スフィンゴ脂質蓄積症、ムコ多糖症、およびグリコーゲン蓄積症が挙げられる。いくつかの実施形態では、LSDは、ファブリー病、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II型、ゴーシェ病III型、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型、GM1-ガングリオシドーシス、サンドホフ病、テイ・サックス病、GM2-活性化因子欠損症、GM3-ガングリオシドーシス、異染性白質ジストロフィー、スフィンゴ脂質活性化因子欠損症、シャイエ病、ハーラー・シャイエ病、ハーラー病、ハンター病、サンフィリポA、サンフィリポB、サンフィリポC、サンフィリポD、モルキオ症候群A、モルキオ症候群B、マロトー・ラミー病、スライ病、MPS IX、およびポンペ病のうちの任意の一つまたは複数である。特定の一実施形態では、LSDはファブリー病である。別の実施形態では、LSDはポンペ病である。
【0121】
いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、(a)補充酵素と、(b)内部移行エフェクターを結合する分子実体(送達ドメイン)とを含む。いくつかの実施形態では、補充酵素は、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、サポシン-C活性化因子、セラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、β-ヘキソサミニダーゼ、GM2活性化因子、GM3シンターゼ、アリールスルファターゼ、スフィンゴ脂質活性化因子、α-イズロニダーゼ、イズロニダーゼ-2-スルファターゼ、ヘパリンN-スルファターゼ、N-アセチル-α-グルコサミニダーゼ、α-グルコサミドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、およびヒアルロニダーゼのうちの任意の一つまたは複数である。
【0122】
場合によっては、患者は、補充酵素が患者によって「非自己」として認識されるのに十分なタンパク質を作製しないことがあり、補充酵素の投与後に続いて免疫反応が起こる。これは望ましくないことである。したがって、いくつかの実施形態では、補充酵素は、対象における免疫反応の誘導を回避するように設計または生産される。そのような解決策の一つは、補充酵素として「アイソザイム」を用いることである。アイソザイムは、患者の「自己」タンパク質に十分類似しているが、LSDの症状を緩和するのに十分な補充酵素活性を有する。
【0123】
LSDがポンペ病でありかつ内因性酵素がα-グルコシダーゼ(GAA)である特定の一実施形態では、アイソザイムは、酸性α-グルコシダーゼ、スクラーゼ・イソマルターゼ(SI)、マルターゼ・グルコアミラーゼ(MGAM)、グルコシダーゼII(GANAB)、および中性α-グルコシダーゼ(C GNAC)のうちの任意の一つでありうる。LSDがファブリー病でありかつ内因性酵素がα-ガラクトシダーゼA(GLA)である特定の別の実施形態では、アイソザイムは、GLA活性を持つように工学的に操作されたα-N-アセチルガラクトサミニダーゼでありうる。
【0124】
本明細書に提供されるのは、補充酵素に対する交差反応性免疫学的物質(CRIM)を低減させるための、アイソザイムの使用以外の方法である。図5および図6に示されるように、内部移行エフェクター結合ドメインと酵素ドメインとを含むマルチドメイン治療用タンパク質の(例えば遺伝子療法ベクターを介した)投与は、対照の治療用タンパク質(内部移行エフェクタードメインを欠く、酵素ドメインを含む)の投与に含めて、補充酵素に対するCRIMのレベルを低減させる。したがって、一実施形態では、または、酵素の欠損を有する患者で酵素に対するCRIMを低減させることは、患者にマルチドメイン治療用タンパク質(または同一物をコードする核酸、例えば、マルチドメイン治療用タンパク質をコードする遺伝子を含有する遺伝子療法ベクターを投与することを含み、その場合、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメイン(例えば内部移行エフェクター結合タンパク質)および酵素ドメインと、を含む。
【0125】
マルチドメイン治療用タンパク質は、補充酵素の細胞内への取り込みを可能にする内部移行エフェクター結合タンパク質成分を有する。したがって、いくつかの実施形態では、内部移行エフェクターは、CD63、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL-受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質-2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR(プロラクチン受容体)、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質、別名VIP17)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体、SCARA1-5、SCARB1-3、およびCD36でありうる。ある実施形態では、内部移行エフェクターは、腎臓特異的インターナライザーであり、例えば、CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)などである。他のある特定の実施形態では、内部移行エフェクターは、筋特異的インターナライザーであり、例えば、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)などである。いくつかの特定の実施形態では、内部移行エフェクターは、ITGA7、CD9、CD63、APLP2、ASGR1、ASGR2、またはPRLRである。
【0126】
いくつかの実施形態では、内部移行エフェクター結合タンパク質は、抗原結合タンパク質を含み、そのようなものとしては、例えば、受容体融合分子、トラップ分子、受容体Fc融合分子、抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)分子、dAb断片、単離相補性決定領域(CDR)、CDR3ペプチド、拘束FR3-CDR3-FR4ペプチド、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ、一価ナノボディ、二価ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP:small modular immunopharmaceutical)、ラクダ抗体(VHH重鎖ホモ二量体抗体)、およびサメ可変IgNARドメインが挙げられる。
【0127】
一実施形態では、内部移行エフェクターを結合する分子実体は、抗体、抗体断片、または他の抗原結合タンパク質である。例えば、分子実体は、二重特異性抗体とすることができ、そこでは、一方のアームが内部移行エフェクター(例えば、ITGA7、CD9、CD63、PRLR、APLP2、ASGR1、ASGR2)を結合し、他方のアームが補充酵素を結合する。ここで、マルチドメイン治療用タンパク質は、二重特異性抗体と補充酵素とを含む(図1A)。特定の実施形態では、治療される疾患はファブリー病であり、マルチドメイン治療用タンパク質は、GLAと、GLAおよびCD63を結合する二重特異性抗体とを含む。特定の実施形態では、治療される疾患はファブリー病であり、マルチドメイン治療用タンパク質は、GLAと、GLAおよびITGA7を結合する二重特異性抗体とを含む。特定の別の実施形態では、治療される疾患はポンペ病であり、マルチドメイン治療用タンパク質は、GAAと、GAAおよびCD63を結合する二重特異性抗体とを含む。特定の別の実施形態では、治療される疾患はポンペ病であり、マルチドメイン治療用タンパク質は、GAAと、GAAおよびITGA7を結合する二重特異性抗体とを含む。
【0128】
別の実施形態では、内部移行エフェクターを結合する分子実体は、半抗体と、Fcドメインを含有する補充酵素(酵素-Fc融合ポリペプチド)とを含む。一実施形態では、酵素-Fc融合ポリペプチドのFcドメインが、内部移行エフェクター特異的半抗体のFcドメインと会合して、マルチドメイン治療用タンパク質を形成する(図1B)。
【0129】
他の実施形態では、補充酵素は、内部移行エフェクター結合タンパク質に共有結合で連結されている。前のパラグラフで述べた酵素-Fc融合:半抗体の実施形態(図1Bも参照)は、このクラスに属するが、それは、そのFc二量体を一つまたは複数のジスルフィド架橋を介して固定することができるためである。酵素活性ドメインまたはポリペプチドと、内部移行-結合ドメインまたはポリペプチドとの間の共有結合による連結は、任意の種類の共有結合、すなわち電子の共有に関与した任意の結合であってもよい。場合によっては、共有結合は、二つのアミノ酸の間のペプチド結合であり、それゆえに、補充酵素と内部移行エフェクター結合タンパク質とは、全体としてまたは部分的に、融合タンパク質にあるような連続ポリペプチド鎖を形成する。場合によっては、補充酵素部分と内部移行エフェクター結合タンパク質とが直接的に連結されている。他の場合では、リンカーを用いて二つの部分を繋ぐ。Chen et al.,“Fusion protein linkers:property,design and functionality,”65(10)Adv Drug Deliv Rev.1357-69(2013)を参照されたい。
【0130】
「リンカー」または「スペーサー」という用語は、典型的には、融合タンパク質の一つまたは複数の連結成分、例えば、scFvのVLに関連したVH、本明細書に記載されるようなマルチドメイン治療用タンパク質の送達ドメイン(例えば、抗内部移行エフェクター抗体)に連結された治療用タンパク質(例えば、補充酵素)の適切な折り畳みを可能にする、短い(例えば、2~25アミノ酸)ポリペプチドを指す。リンカーは、融合タンパク質の構成要素の可撓性の接合領域を提供し、分子の二つの末端が独立して移動することを可能にし、二つの部分の各々の適切な機能を保持するのに重要な役割を果たしうる。したがって、接合領域は、場合によっては、二つの部分を一緒に組み合わせるリンカー、および二つの部分のそれぞれが独自の生物学的構造を形成し、他の部分に干渉しないようにするスペーサーの両方として機能する。さらに、接合領域は、対象の免疫系によって異物として認識されない、別の言い方をすると、免疫原性とみなされないエピトープを作り出すべきである。リンカーの選択はまた、融合分子の結合活性に影響を与える可能性がある。(Huston,et al,1988,PNAS,85:16:5879-83;Robinson & Bates,1998,PNAS 95(11):5929-34;Arai,et al.2001,PEDS,14(8):529-32;and Chen,X.et al.,2013,Advanced Drug Delivery Reviews 65:1357-1369を参照のこと)一実施形態では、送達ドメインは、一つまたは複数のペプチドリンカーを介して治療用ポリペプチドまたはその断片に接続される。別の実施形態では、scFv抗体の可変領域は、一つまたは複数のペプチドリンカーを介して相互に、またはその断片に接続されている。
【0131】
リンカー鎖の長さは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14 15以上のアミノ酸残基でありうるが、典型的には5~25残基である。リンカーの例としては、Gly-Gly、Gly-Gly-Gly(3Gly)、4Gly、5Gly、6Gly、7Gly、8Glyまたは9Glyなどのポリグリシンリンカーが挙げられる。リンカーの例としては、Ser-Gly、Gly-Ser、Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly、Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser、Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly-Gly、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n、および(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)nなどのGly-Serペプチドリンカーも挙げられ、式中、n=1~10である。(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nおよび(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)nは、(G4S)nおよび(S4G)nとしてもそれぞれ知られている。
【0132】
いくつかの実施形態では、治療用タンパク質、例えば、補充酵素は、抗内部移行エフェクター抗体の重鎖のC末端に(図1Cを参照)、または軽鎖のC末端に(図1E)、共有結合される。いくつかの実施形態では、補充酵素は、抗内部移行エフェクター抗体の重鎖のN末端に(図1Dを参照)、または軽鎖のN末端に(図1F)共有結合される。いくつかの実施形態では、酵素は、抗内部移行エフェクターscFvドメインのC末端に連結される(図1G)。
【0133】
いくつかの場合では、特に治療用タンパク質、例えば、補充酵素がリソソーム内で正常にタンパク質分解によりプロセシングされない場合には、切断可能なリンカーが、抗体-酵素融合体を含むマルチドメイン治療用タンパク質の実施形態に追加される。いくつかの実施形態では、a)立体的に大きな抗体を除去することによってできる限り酵素活性の保持の助けとするために、かつb)酵素のリソソーム内半減期をできる限り増加するために、カテプシン切断可能リンカーを抗体と補充酵素との間に挿入して、リソソーム内での抗体の除去を容易にする。
【0134】
特定の一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する遺伝子療法ベクターで患者または細胞に送達される。一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインおよび酵素ドメインを含む。いくつかの実施形態では、送達ドメインは、内部移行エフェクター例えば、CD63、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、またはCD36などと結合する。一実施形態では、送達ドメインは、CD63に結合する単鎖可変断片(scFv)(すなわち抗CD63 scFv)である。別の実施形態では、送達ドメインは、ITGA7に結合する単鎖可変断片(scFv)(すなわち抗ITGA7 scFv)である。
【0135】
特定の一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質の酵素ドメインは、ヒドロラーゼを含む。特定の実施形態では、酵素ドメインは、グリコシラーゼであるヒドロラーゼを含む。より具体的な実施形態では、酵素ドメインは、グリコシダーゼであるグリコシラーゼを含む。より具体的な実施形態では、酵素ドメインは、アルファ-グルコシダーゼであるグリコシダーゼである。
【0136】
一般的に、本明細書に開示されるのは、例えば、ポンペ病の患者におけるグリコーゲンの減少および/またはGAAに対する免疫寛容の増強のための、リソソーム蓄積症の治療における内部移行エフェクタードメインおよび酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチド、例えば、(m)RNA、DNA、およびそれらの修飾形態を含む組成物およびその使用である。
【0137】
「ポリヌクレオチド」という用語は、少なくとも一つのポリペプチドをコードするヌクレオチド(例えば、RNAまたはDNA)のポリマーを含み、そのようなポリペプチドとしては、融合ポリペプチド、例えば、内部移行エフェクタードメインおよび酵素ドメインを含むマルチドメイン治療ポリペプチドが挙げられる。本明細書で使用される際に、ポリヌクレオチドは、修飾および非修飾の両方のヌクレオチドを含むポリマーを包含する。ポリヌクレオチドは、一つまたは複数のコード領域および非コード領域を含有してもよい。ポリヌクレオチドは、天然源から精製され、組み換え発現系を用いて製造され、任意選択的に精製され、化学的に合成されることなどがありうる。適切な場合、例えば、化学的に合成された分子の場合、ポリヌクレオチドは、化学修飾された塩基類または糖類を有する類似体、骨格修飾などのヌクレオチド類似体を含むことができる。別段の指示がない限り、ポリヌクレオチド配列は、5’から3’の方向に提示される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、天然のヌクレオシド類(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン);ヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチル アデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン);化学修飾塩基類;生物学的修飾塩基類(例えば、メチル化塩基);介在塩基類;修飾糖類(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース);ならびに/または修飾リン酸基類(例えば、ホスホロチオエートおよび5’-N-ホスホロアミダイト結合)であるかまたはそれを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、一つまたは複数の非標準ヌクレオチド残基を含む。非標準ヌクレオチド残基は、例えば、5-メチル-シチジン(“5mC”)、シュードウリジン(“ψU”)、および/または2-チオ-ウリジン(“2sU”)を含みうる。例えば、それぞれがそのような残基とポリヌクレオチド内へのそれらの組み込みの議論について参照によりその全体を組み込まれる、米国特許第8,278,036号または国際特許出願公開第2011012316号を参照されたい。非標準ヌクレオチド残基の存在によって、ポリヌクレオチドは、対照よりも、すなわち同じ配列を有するが標準残基のみを含有するポリヌクレオチドよりも、安定なおよび/または免疫原性の低いものとなりうる。さらに別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、イソシトサイン、シュードシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、および2-クロロ-6-アミノプリンシトシン、ならびにこれらの修飾および他の核酸塩基の修飾の組合せから選択される一つまたは複数の非標準ヌクレオチド残基を含みうる。特定の実施形態は、フラノース環または核酸塩基への追加的な修飾をさらに含みうる。追加的な修飾としては、例えば、糖の修飾または置換を含みうる(例えば、一つまたは複数の2’-O-アルキル修飾であるロックされた核酸(LNA))。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、追加のポリヌクレオチドおよび/またはペプチドポリヌクレオチド(PNA)と複合体を形成していてもよいし、ハイブリダイズしていてもよい。糖の修飾が2’-O-アルキル修飾である実施形態では、そのような修飾としては、以下に限定されないが、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾、2’-O-メトキシエチル修飾、および2’-デオキシ修飾が挙げられる。ある特定の実施形態では、これらの修飾のいずれかは、ヌクレオチドの0%~100%に、例えば、個別でまたは組み合わせで成分ヌクレオチドの0%、1%、10%、25%、50%、75%、85%、90%、95%、または100%に、存在することがある。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、メッセンジャーRNA(mRNA)分子を含み、それは、その安定性を増加させるためのおよび/またはその免疫原性を減少させるための周知の方法によって、修飾されていることもいないこともあり、例えば、修飾ヌクレオチドを含むことも含まないこともある。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNA分子を含み、それは、その安定性を増加させるためのおよび/またはその免疫原性を低下させるための周知の方法によって、修飾されていることもいないこともあり、例えば、修飾ヌクレオチドを含むことも含まないこともある。
【0139】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはまた、「遺伝子座ターゲティング核酸配列」を含む。遺伝子座を標的とする配列は、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドをレシピエント宿主細胞のゲノムへ組み込むことを可能にする。いくつかの実施形態では、遺伝子座ターゲティング配列は、相同組み換えを可能にするための隣接する相同アームを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子座ターゲティング配列は、組み込みを推進するガイドRNA配列およびII型Cas酵素(すなわち、CRISPR-Cas9法)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子座ターゲティング配列は、組込みを推進するためのガイドジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)認識配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子座ターゲティング配列は、組込みを推進するための転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)認識配列を含む。さらに他の実施形態では、遺伝子座ターゲティング配列は、組込みを推進するためのBuD由来ヌクレアーゼによって使用される単一の残基対ヌクレオチドコードを含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドが組み込まれているゲノム遺伝子座は、「セーフハーバー遺伝子座」である。一実施形態では、「セーフハーバー遺伝子」は、マルチドメイン治療用タンパク質の高い発現を可能にする一方で、必須遺伝子の発現に干渉しないか、または癌遺伝子もしくは他の有害遺伝子の発現を促進しない。一実施形態では、ゲノム遺伝子座は、肝臓で発現されるアルブミン(Alb)遺伝子座、EESYR遺伝子座、SARS遺伝子座、ヒト第1番染色体の188,083,272位もしくはその非ヒト哺乳動物のオルソログ、ヒト第10番染色体の3,046,320位もしくはその非ヒト哺乳動物のオルソログ、ヒト第17番染色体の67,328,980もしくはその非ヒト哺乳動物のオルソログ、染色体上のアデノ関連ウイルス部位1(AAVS1)、ヒト第19番染色体上のAAVウイルスの天然発生の組込み部位もしくはその非ヒト哺乳動物のオルソログ、ケモカイン受容体5(CCR5)遺伝子、HIV-1共受容体をコードするケモカイン受容体遺伝子、またはマウスRosa26遺伝子座もしくはその非マウス哺乳動物のオルソログである。一実施形態では、ゲノム遺伝子座は、アデノ関連ウイルス部位である。一実施形態では、組込みのためのゲノム遺伝子座は、遺伝子療法ベクターの組込みに用いるセーフハーバーゲノム遺伝子座のステップワイズ選択のために参照により本明細書に組み込まれるPapapetrou and Schambach,J.Molecular Therapy,vol.24(4):678-684、2016年4月の方法に従って選択されるが、その全体が参照により本明細書に組み込まれる肝臓発現アルブミン(Alb)遺伝子座内のプロモーターレス遺伝子ターゲティングについてのBarzel et al.Nature、vol.517:360-364も参照されたい。
【0141】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、例えばDNAは、マルチドメイン治療用タンパク質をコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターも含有する。特定の実施形態では、プロモーターは、特定の組織における遺伝子発現を駆動する組織特異的プロモーターである。一実施形態では、組織特異的プロモーターは、セルピナ1(例えば配列番号9)および/またはTTRプロモーター(配列番号8)由来の肝特異的なエンハンサー/プロモーターである。他の実施形態では、プロモーターはCMVプロモーターである。他の実施形態では、プロモーターはユビキチンCプロモーターである
【0142】
一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質をコードする「遺伝子療法ベクター」は、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主、例えば患者などに送達することが可能な任意のベクターである。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、例えば、局所送達、例えば組織特異的送達のために、特定の宿主細胞または器官を標的とする。典型的には、局所送達は、主に器官、例えば肝臓でおよび/またはそれにより翻訳および発現される、mRNAによってコードされるタンパク質(例えばマルチドメイン治療用タンパク質)を必要とし、それによってデポ、例えばタンパク質の産生(および分泌)のための肝臓デポを形成する。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、患者の肝臓にマルチドメイン治療用タンパク質のポリヌクレオチドを送達して肝臓デポを形成する。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるDerosa et al.Gene Therapy,vol.10:699-707を参照されたい。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、患者においてマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを筋組織に送達する。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを患者の脳に送達する。
【0143】
既知のまたは将来的に開発される遺伝子療法送達ベクターを、天然のものでも工学的に操作されたものでも、本発明の実践に用いることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、ウイルスベクターであり、例えば、ウイルス、ウイルスキャプシド、ウイルスゲノムなどを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、裸のポリヌクレオチド、例えばエピソームである。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、ポリヌクレオチド複合体を含む。遺伝子療法ベクターとして使用するための例示的で非限定的なポリヌクレオチド複合体としては、リポプレックス、ポリマーソーム、ポリペックス、デンドリマー、無機ナノ粒子(例えば、ポリヌクレオチド被覆金、シリカ、酸化鉄、リン酸カルシウムなど)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子療法ベクターは、ウイルスベクター、裸のポリヌクレオチド、およびポリヌクレオチド複合体の組み合わせを含む。
【0144】
一実施形態では、遺伝子療法ベクターは、ウイルスであり、そのようなものとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、またはアデノ関連ウイルスが挙げられる。一実施形態では、遺伝子療法ベクターは、アデノ関連ウイルス(AAV)であり、そのようなものとしては、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびAAV11、またはそれらの工学的に操作されたもしくは天然の選択されたバリアントが挙げられる。
【0145】
一実施形態では、ポリヌクレオチドはまた、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列を含有する。一実施形態では、遺伝子療法ベクターは、二つ以上の血清型に由来する遺伝子因子を含有するキメラアデノ関連ウイルスである。例えば、AAV1由来のrep遺伝子とAAV2由来のcap遺伝子とを有するAAVベクター(AAV1/2またはAAV RC1/2とよぶ)が、マルチドメイン治療用タンパク質のポリヌクレオチドを細胞または必要とする患者の細胞に送達するための遺伝子療法ベクターとして、使用されてもよい。一実施形態では、遺伝子療法ベクターは、AAV1/2、AAV1/3、AAV1/4、AAV1/5、AAV1/6、AAV1/7、AAV1/8、AAV1/9、AAV1/10、AAV1/11、AAV2/1、AAV2/3、AAV2/4、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、AAV2/9、AAV2/10、AAV2/11、AAV3/1、AAV3/2、AAV3/4、AAV3/5、AAV3/6、AAV3/7、AAV3/8、AAV3/9、AAV3/10、AAV3/10、AAV4/1、AAV4/2、AAV4/3、AAV4/5、AAV4/6、AAV4/7、AAV4/8、AAV4/9、AAV4/10、AAV4/11、AAV5/1、AAV5/2、AAV5/3、AAV5/4、AAV5/6、AAV5/7、AAV5/8、AAV5/9、AAV5/10、AAV5/11、AAV6/1、AAV6/2、AAV6/3、AAV6/4、AAV6/5、AAV6/7、AAV6/8、AAV6/9、AAV6/10、AAV6/10、AAV7/1、AAV7/2、AAV7/3、AAV7/4、AAV7/5、AAV7/6、AAV7/8、AAV7/9、AAV7/10、AAV7/11、AAV8/1、AAV8/2、AAV8/3、AAV8/4、AAV8/5、AAV8/6、AAV8/7、AAV8/9、AAV8/10、AAV8/11、AAV9/1、AAV9/2、AAV9/3、AAV9/4、AAV9/5、AAV9/6、AAV9/7、AAV9/8、AAV9/10、AAV9/11、AAV10/1、AAV10/2、AAV10/3、AAV10/4、AAV10/5、AAV10/6、AAV10/7、AAV10/8、AAV10/9、AAV10/11、AAV11/1、AAV11/2、AAV11/3、AAV11/4、AAV11/5、AAV11/6、AAV11/7、AAV11/8、AAV11/9、AAV11/10、それらのキメラウイルスベクターまたは誘導体である。Gao et al.,“Novel adeno-associated viruses from rhesus monkeys as vectors for human gene therapy,”PNAS 99(18):11854-11859、Sep.3、2002は、遺伝子療法ベクターとして有用なAAVベクターおよびキメラウイルスベクター、ならびにそれらの構築対および使用のために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
より具体的な実施形態では、遺伝子療法ベクターは、血清型2のrep遺伝子配列および血清型8のcap配列(「AAV2/8」または「AAV RC2/8)を有するキメラAAV ベクターである。
【0147】
いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクターは、特定の細胞、例えば肝細胞を標的とするためにシュードタイプ化されてきた(例えば、工学的に操作されてきた)ウイルスベクターである。ウイルスベクターを使用した標的化遺伝子療法の進歩のうちの多くは、ウイルスベクターの天然指向性のシュードタイピング、拡張、および/または再標的化がもたらされる、ウイルスベクターの非組換え(非遺伝子)または組換え(遺伝子)改変として要約することができる(Nicklin and Baker(2002)Curr.Gene Ther.2:273-93;Verheiji and Rottier(2012)Advances Virol 2012:1-15に概説。各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。非遺伝的手法は、典型的には、野生型(非改変型)ウイルス表面タンパク質および標的細胞の両方を認識するアダプターを利用する。可溶性疑似受容体(野生型ウイルス)、ポリエチレングリコールなどのポリマー、および抗体またはその一部分が、アダプターのウイルス結合ドメインとして使用されてきたが、天然ペプチドまたはビタミンリガンド、ならびに抗体およびその一部分は、上述のアダプターの細胞結合ドメインに使用されてきた。例えば、標的細胞へのウイルスベクターの再標的化は、ベクター:アダプター複合体を、標的細胞の表面に発現されたタンパク質、例えば細胞表面タンパク質に結合すると達成されうる。そのようなアプローチは、AAV(Bartlett et al.(1999)Nat.Biotechnol.74:2777-2785)、アデノウイルス(Hemminki et al.(2001)Cancer Res.61:6377-81;van Beusechem et al.(2003)Gene Therapy 10:1982-1991;Einfeld,et al.(2001)J.Virol.75:11284-91;Glasgow et al.(2009)PLOS One 4:e8355)、ヘルペスウイルス(Nakano et al.(2005)Mol.Ther.11:617-24)、およびパラミキソウイルス(Bian et al.(2005)Cancer Gene Ther.12:295-303;Bian et al.(2005)Int.J.Oncol.29:1359-69)、コロナウイルス(Haijema et al.(2003)J.Virol.77:4528-4538;Wurdinger et al.(2005)Gene Therapy 12:1394-1404、各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)について使用されてきた。
【0148】
より一般的な手法は、ウイルスキャプシドタンパク質、したがってウイルスキャプシドの表面の組換え遺伝子改変である。間接的な組換え手法では、ウイルスキャプシドは、その後アダプターに連結される異種「足場」を用いて改変される。アダプターは、足場および標的細胞に結合する。(Arnold et al.(2006)Mol.Ther.5:125-132、Ponnazhagen et al.(2002)J.Virol.76:12900-907、国際特許出願第97/05266号も参照されたい。各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。(1)抗体アダプターのFcに結合するFc結合分子(例えば、Fc受容体、プロテインAなど)、(2)ビオチン標識化アダプターに結合する(ストレプト)アビジン、(3)(ストレプト)アビジンに融合するアダプターに結合するビオチン、および(4)Spy標識化アダプターに結合するSpyCatcherなどの等長ペプチド結合を形成するタンパク質:タンパク質結合対、などの足場が、Adに組み込まれている(Pereboeva et al.(2007)Gene Therapy14:627-637、Park et al.(2008)Biochemical and Biophysical Research Communications366:769-774、Henning et al.(2002)Human Gene Therapy13:1427-1439、Banerjee et al.(2011)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters21:4985-4988)、AAV(Gigout et al.(2005)Molecular Therapy11:856-865、Stachler et al.(2008)Molecular Therapy16:1467-1473)、およびトガウイルス(Quetglas et al.(2010)Virus Research153:179-196、Ohno et al.(1997)Nature Biotechnology15:763-767、Klimstra et al.(2005)Virology338:9-21。各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0149】
直接的な組み換え型ターゲティングアプローチでは、ターゲティングリガンドは、ウイルスキャプシドの中に直接的に挿入されるかまたは結合される、すなわち、タンパク質ウイルスキャプシドが異種リガンドを発現するように改変される。次いで、リガンドは、標的細胞上で優先的にまたは標的細胞上でのみ発現される受容体またはマーカーを再配向、例えば結合する。(Stachler et al.(2006)Gene Ther.13:926-931;White et al.(2004)Circulation 109:513-519。各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。直接的な組み換えによるアプローチは、AAV(Park et al.,(2007)Frontiers in Bioscience 13:2653-59;Girod et al.(1999)Nature Medicine 5:1052-56;Grifman et al.(2001)Molecular Therapy 3:964-75;Shi et al.(2001)Human Gene Therapy 12:1697-1711;Shi and Bartlett(2003)Molecular Therapy 7:515-525、各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、レトロウイルス(Dalba et al.Current Gene Therapy 5:655-667;Tai and Kasahara(2008)Frontiers in Bioscience 13:3083-3095;Russell and Cosset(1999)Journal of Gene Medicine 1:300-311;Erlwein et al.(2002)Virology 302:333-341;Chadwick et al.(1999)Journal of Molecular Biology 285:485-494;Pizzato et al.(2001)Gene Therapy 8:1088-1096)、ポックスウイルス(Guse et al.(2011)Expert Opinion on Biological Therapy 11:595-608;Galmiche et al.(1997)Journal of General Virology 78:3019-3027;Paul et al.(2007)Viral Immunology 20:664-671)、パラミキソウイルス(Nakamura and Russell(2004)Expert Opinion on Biological Therapy 4:1685-1692;Hammond et al.(2001)Journal of Virology 75:2087-2096;Galanis(2010)Clinical Pharmacology and Therapeutics 88:620-625;Blechacz and Russell(2008)Current Gene Therapy 8:162-175;Russell and Peng(2009)Current Topics in Microbiology and Immunology 330:213-241)、およびヘルペスウイルス(Shah and Breakefield(2006)Current Gene Therapy 6:361-370;Campadelli-Fiume et al.(2011)Reviews in Medical Virology 21:213-226、各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)で使用されている。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子療法ベクターは、調節応答、例えば補充酵素に対する例えば寛容を生じるのに特に適している組織に、シュードタイプ化される。そのような組織としては、以下に限定されないが、粘膜組織、例えば、腸関連リンパ組織(GALT)、造血幹細胞、および肝臓が挙げられる。いくつかの実施形態では、遺伝子療法ベクター、または本明細書に記載されるマルチドメイン治療用タンパク質をコードする遺伝子は、例えば、肝特異的プロモーターなど、それらの組織に特異的なプロモーターの制御下で発現される。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子療法ベクターは、裸のポリヌクレオチドを含む。例えば、いくつかの実施形態では、マルチドメイン治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えば筋肉内に、デポの形成のために直接的に器官内に、静脈内に、注射されることがある。裸のポリヌクレオチドの送達の増強のための周知の追加の方法としては、以下に限定されないが、電気穿孔、超音波穿孔、ポリヌクレオチド被覆金粒子を射出するための遺伝子銃の使用、磁気粒子、および水力学的送達が挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される遺伝子療法ベクターは、ポリヌクレオチド複合体、例えば、以下に限定されないが、ナノ粒子(例えば、ポリヌクレオチド自己組織化ナノ粒子、ポリマー系自己組織化ナノ粒子、無機ナノ粒子、脂質ナノ粒子、半導体性/金属ナノ粒子)、ゲルおよびハイドロゲル、カチオンおよびアニオンを含むポリヌクレオチド複合体、マイクロ粒子、およびそれらの任意の組み合わせなどを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、自己組織化ナノ粒子として製剤化されうる。非限定的な例として、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのための送達システムで使用されうるナノ粒子を作製するために使用されてもよい(例えば、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2012125987号を参照)。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド自己組織化ナノ粒子は、本明細書に開示されるポリヌクレオチドのコアおよびポリマーシェルを含みうる。ポリマーシェルは、本明細書に記載されるポリマーのいずれであってもよく、当該技術分野で公知である。追加的な実施形態では、ポリマーシェルは、コア内のポリヌクレオチドを保護するために使用されうる。
【0154】
いくつかの実施形態では、これらの自己組織化ナノ粒子は、長いポリマーのポリヌクレオチドヘアピンで形成されたマイクロスポンジであることがあり、そのポリヌクレオチドヘアピンは、結晶質の「ひだのある」シートへと形成された後、マイクロスポンジへ自己組織化される。これらのマイクロスポンジは、高密度充填されたスポンジ様のマイクロ粒子であり、それらの粒子は、効率の良い担体として機能し、積荷を細胞に送達できることがある。マイクロスポンジは、直径が1μmから300nmでありうる。マイクロスポンジは、当技術分野で公知の他の薬剤と複合体化されてさらに大きなマイクロスポンジを形成してもよい。非限定的な例として、マイクロスポンジは、外層を形成して細胞による取り込みを促進するための薬剤、例えばポリカチオン性ポリエチレンイメ(PEI)などと複合体化されることがある。この複合体は、高温(150℃)で安定した状態を保つことができる250nm直径の粒子を形成することができる(Grabow and Jaegar,Nature Materials 2012,11:269-269;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。さらに、これらのマイクロスポンジは、リボヌクレアーゼによる分解からの並外れた程度の保護を発揮できることがある。別の実施形態では、ポリマーベースの自己組織化ナノ粒子、例えば、以下に限定されないがマイクロスポンジなどは、完全にプログラム可能なナノ粒子であることがある。ナノ粒子の幾何学的形状、サイズおよび化学量論は、積荷を送達するための最適なナノ粒子、例えば、以下に限定されないがポリヌクレオチドなどを作り出すために、正確に制御されうる。
【0155】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、無機ナノ粒子(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,257,745号)に製剤化されうる。無機ナノ粒子は、水で膨潤可能な粘土性物質を含みうるが、これに限定されない。非限定的な例として、無機ナノ粒子は、単純なケイ酸塩から作製される合成スメクタイト粘土を含みうる(例えば、それぞれが参照によりその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第5,585,108号および第8,257,745号を参照)。
【0156】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、半導性材料または金属材料を含む水分散性ナノ粒子(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20120228565号)で製剤化されてもよいし、磁気ナノ粒子(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20120265001号および第20120283503号)で形成されてもよい。水分散性ナノ粒子は、疎水性ナノ粒子であっても親水性ナノ粒子であってもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、対象に注入された時にゲルを形成しうる、当技術分野で公知の任意のハイドロゲルに封入されうる。ハイドロゲルは、親水性のポリマー鎖のネットワークであり、水が分散媒体であるコロイドゲルとして見出されることがある。ハイドロゲルは、吸収性の高い(99%超の水を含有可能である)天然または合成のポリマーを含みうる。ハイドロゲルは、かなり多くの水分含量があるために、天然組織と非常に類似した柔軟性も有する。本明細書に記載のハイドロゲルは、生体適合性、生分解性、および/または多孔性の脂質ナノ粒子を封入するために使用されうる。
【0158】
非限定的な例として、ハイドロゲルは、アプタマー官能化ハイドロゲルであってもよい。アプタマー官能化ハイドロゲルは、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを使用して一つまたは複数のポリヌクレオチドを放出するようにプログラムされていてもよい。(Battig et al.,J.Am.Chem.Society.2012 134:12410-12413;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、脂質ナノ粒子内に封入されてもよく、次いで、脂質ナノ粒子がハイドロゲル内に封入されてもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、フィブリンゲル、フィブリンハイドロゲル、またはフィブリン接着剤内に封入されてもよい。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、フィブリンゲル、フィブリンハイドロゲル、またはフィブリン接着剤内に封入される前に、脂質ナノ粒子または急速排除性脂質ナノ粒子に製剤化されてもよい。さらに別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、フィブリンゲル、ハイドロゲル、またはフィブリン接着剤に封入される前に、リポプレックスとして製剤化されてもよい。フィブリンゲル、ハイドロゲル、および接着剤は、二つの構成成分、すなわちフィブリノゲン溶液とカルシウムに富むトロンビン溶液とを含む(例えば、それぞれが参照によりその全体を本明細書に組み込まれるSpicer and Mikos,Journal of Controlled Release 2010.148:49-55;Kidd et al.Journal of Controlled Release 2012.157:80-85を参照)。フィブリンゲル、ハイドロゲル、および/または接着剤の構成成分の濃度は、ゲル、ハイドロゲルおよび/または接着剤の特性、ネットワークのメッシュサイズ、および/または分解特性を変化させるように変更することができ、例えば、以下に限定されないが、フィブリンゲル、ハイドロゲル、および/または接着剤の放出特性を変化させるなどができる。(例えば、それぞれが参照によりその全体を本明細書に組み込まれる、Spicer and Mikos、Journal of Controlled Release 2010.148:49-55;Kidd et al.Journal of Controlled Release 2012.157:80-85;Catelas et al.Tissue Engineering 2008.14:119-128を参照されたい)。この特徴は、本明細書に開示されたポリヌクレオチドを送達するために使用される場合に有利でありうる。(例えば、それぞれが参照によりその全体を本明細書に組み込まれる、Kidd et al.Journal of Controlled Release 2012.157:80-85;Catelas et al.Tissue Engineering 2008.14:119-128を参照されたい)。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、カチオンまたはアニオンを含みうる。一実施形態では、製剤は、金属カチオン、例えば、以下に限定されないが、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Mg+およびそれらの組み合わせなどを含む。非限定的な例として、製剤は、ポリマーと、金属カチオンと複合体化されたポリヌクレオチドとを含みうる(例えば、それぞれが参照によりその全体を本明細書に組み込まれる米国特許第6,265,389号および第6,555,525号を参照)。
【0161】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子に製剤化しうる。これらのナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、任意のサイズの形状および化学に成形されうる。一例として、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子は、LIQUIDA TECHNOLOGIES.RTM(Morrisville,N.C.)によるPRINT(登録商標)技術を使用して作製されうる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2007024323号を参照)。
【0162】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、Keystone Nano(ステートカレッジ、ペンシルバニア州)によって、ナノジャケットおよびナノリポソームで製剤化されうる。ナノジャケットは、カルシウム、リン酸塩を含めた体内で天然に見出される化合物か、または少量のケイ酸塩も含む化合物から作製される。ナノジャケットは、5から50nmのサイズに及ぶことがあり、以下に限定されないがポリヌクレオチド、主要構築物および/またはポリヌクレオチドなどの親水性化合物および疎水性化合物を送達するために使用されうる。ナノリポソームは、脂質から作製され、例えば、以下に限定されないが体内で天然に発生する脂質から作製される。ナノリポソームは、60~80nmのサイズに及ぶことがあり、親水性および疎水性の化合物、例えば、以下に限定されないがポリヌクレオチド、主要構築物および/またはポリヌクレオチドを送達するために使用されうる。一態様では、本明細書に開示されるポリヌクレオチドは、以下に限定されないがセラミドナノリポソームなどのナノリポソームで製剤化されている。
【0163】
一実施形態では、マルチドメイン治療用タンパク質は、抗CD63 scFv-GAA融合タンパク質または抗ITGA7 scFv-GAA融合タンパク質である。抗CD63 scFv-GAA融合タンパク質または抗ITGA7 scFv-GAA融合タンパク質のAAV-送達を介した投与は、マルチドメイン治療用タンパク質を内包する遺伝子療法ベクターの投与後の患者の血清中のGAAの長期安定性をもたらす。一実施形態では、レシピエント患者の血清中のGAAのレベルは、マルチドメイン治療用タンパク質を内包する遺伝子療法ベクターの投与後の1ヶ月後、3ヶ月、4ヶ月後、5か月後、または6か月後、送達ドメインの連結のないGAAを受けた患者の血清レベルよりも、≧1.5倍から100倍、≧1.5倍から10倍、≧2.5倍、2.5倍~3倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3.0倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高い。
【0164】
一実施形態では、抗CD63 scFv-GAA融合タンパク質または抗ITGA7 scFv-GAA融合タンパク質のAAV送達を介した投与は、ポンペ病患者における貯蔵グリコーゲンレベルの長期にわたる安定な低減をもたらす。一実施形態では、患者の心臓、骨格筋、および肝臓の組織におけるグリコーゲンレベルは、野生型(非疾患)レベルに低減される。一実施形態では、患者の心臓、骨格筋、および肝臓の組織におけるグリコーゲンレベルは、マルチドメイン治療用タンパク質を内包する遺伝子療法ベクターの投与後、1ヵ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヵ月、野生型レベルで維持される。
【0165】
一実施形態では、抗CD63 scFv-GAA融合タンパク質または抗ITGA7 scFv-GAA融合タンパク質のAAV送達を介した投与は、ポンペ病患者における筋力の長期にわたる回復をもたらす。一実施形態では、握力強度によって測定される患者の強度は、マルチドメイン治療用タンパク質を内包する遺伝子療法ベクターの投与後、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、または6ヵ月、正常(すなわち疾患のない正常なレベル)に復元される。
【0166】
別の態様では、本発明は、酵素活性と抗原結合タンパク質とを含む組成物を提供し、その場合、酵素は、酵素欠損症(LSD)と内部移行エフェクター結合タンパク質とに関連する。リソソーム蓄積症に関連する酵素(それ自体触媒性ではないタンパク質を含む)には、例えば、あらゆる加水分解酵素、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼ、サポシン-C活性化因子、セラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、β-ヘキソサミニダーゼ、GM2活性化因子、GM3シンターゼ、アリールスルファターゼ、スフィンゴ脂質活性化因子、α-イズロニダーゼ、イズロニダーゼ-2-スルファターゼ、ヘパリンN-スルファターゼ、N-アセチル-α-グルコサミニダーゼ、α-グルコサミドN-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ、N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ、β-グルクロニダーゼ、およびヒアルロニダーゼなどが含まれる。
【0167】
内部移行エフェクター結合タンパク質には、例えば、受容体融合分子、トラップ分子、受容体Fc融合分子、抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)分子、dAb断片、単離相補性決定領域(CDR)、CDR3ペプチド、拘束FR3-CDR3-FR4ペプチド、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ、一価ナノボディ、二価ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP:small modular immunopharmaceutical)、ラクダ抗体(VHH重鎖ホモ二量体抗体)、サメ可変IgNARドメイン、および他の抗原結合タンパク質などが含まれる。
【0168】
内部移行エフェクターとしては、例えば、CD63、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR(プロラクチン受容体)、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質、別名VIP17)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体、SCARA1-5、SCARB1-3、およびCD36が挙げられる。ある実施形態では、内部移行エフェクターは、腎臓特異的インターナライザーであり、例えば、CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)などである。他のある特定の実施形態では、内部移行エフェクターは、筋特異的インターナライザーであり、例えば、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)などである。いくつかの特定の実施形態では、内部移行エフェクターは、ITGA7、CD9、CD63、APLP2、ASGR1、ASGR2、またはPRLRである。
【0169】
いくつかの実施形態では、酵素は、抗原結合タンパク質に共有結合で連結されている(すなわち、電子が原子間で共有されている)。特定の一実施形態では、内部移行エフェクター結合タンパク質は、半抗体からなるかまたはそれを含有し、酵素は、Fc融合ドメインに(例えば、C末端で)融合されている。そして、酵素に共有結合で連結されているFcドメインは、抗原結合タンパク質のFcドメインと会合し、その結果その会合は、一つまたは複数のジスルフィド架橋を含有する。この特定の実施形態を図1AのパネルBに概略的に図示する。
【0170】
特定の別の実施形態では、内部移行エフェクター結合タンパク質(送達ドメイン)は、抗体または抗体断片からなるかまたはそれを含有し、酵素は、抗体または抗体断片に共有結合で連結されている。特定の実施形態では、送達ドメインは抗体であり、酵素は、抗体の重鎖または軽鎖のC末端に(ペプチド結合を介して直接的にまたはリンカーを介して間接的に)共有結合で連結されている(それぞれ図1AのパネルCまたはパネルE)。特定の別の実施形態では、送達ドメインは抗体であり、酵素は、抗体の重鎖または軽鎖のN末端に(ペプチド結合を介して直接的にまたはリンカーを介して間接的に)共有結合で連結されている(それぞれ図1AのパネルDまたはパネルF)。
【0171】
いくつかの実施形態では、酵素と送達ドメインとは共有結合で連結されていないが、混合物中に組み合わされている。送達ドメインと酵素とは、非共有結合力により会合して複合体を形成することができる。例えば、特定の一実施形態では、送達ドメインは二重特異性抗体であり、その抗体の一方のアームが内部移行エフェクターを結合し、他方のアームが酵素を結合する。この実施形態を図1AのパネルAに概略的に図示する。
【0172】
いくつかの実施形態では、酵素は、GAAであるか、またはGAA活性(例えば、GAA活性を有するアイソザイム)を含み、内部移行エフェクターは、ITGA7、CDH15、CD9、CD63、APLP2、ASGR1、ASGR2またはPRLRである。特定の実施形態では、酵素は、GAAであるか、またはGAA活性を含み、内部移行ドメインは、CD63であり、送達ドメインは、CD63およびGAAに対する特異性を有する二重特異性抗体である。特定の実施形態では、酵素はGAAであるか、またはGAA活性を含み、内部移行ドメインは、ITGA7であり、送達ドメインは、ITGA7およびGAAに対する特異性を有する二重特異性抗体である。
【0173】
いくつかの実施形態では、酵素は、GLAであるか、またはGLA活性(例えば、GAA活性を有するアイソザイム)を含み、内部移行エフェクターは、ITGA7、CD9、CD63、APLP2、ASGR1、ASGR2、またはPRLRである。特定の実施形態では、酵素は、GLAであるか、またはGLA活性を含み、内部移行ドメインは、CD63であり、送達ドメインは、CD63およびGLAに対する特異性を有する二重特異性抗体である。特定の実施形態では、酵素は、GLAであるか、またはGLA活性を含み、内部移行ドメインは、ITGA7であり、送達ドメインは、ITGA7およびGLAに対する特異性を有する二重特異性抗体である。
【0174】
医薬組成物およびその投与
医薬製剤は、医薬的に許容可能な賦形剤を追加的に含んでいてもよく、そのようなものとしては、本明細書で使用される場合、所望の特定の剤形に適するような溶媒、分散媒体、希釈剤、またはその他の液体媒体、分散剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などのうちいずれかまたは全てが挙げられる。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy、21.sup.st Edition、A.R.Gennaro(Lippincott、Williams&Wilkins,Baltimore、Md.,2006;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、医薬組成物の製剤化に使用される様々な賦形剤とその調製のための公知技術とを開示している。任意の従来の賦形媒体が、例えば、医薬組成物の任意の他の構成成分との有害な様式で任意の望ましくない生物学的効果を生じるかまたはその他相互作用することにより、物質またはその誘導体に不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあることが考慮されている。
【0175】
いくつかの実施形態では、医薬的に許容可能な賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒトでの使用および獣医学的使用のために承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬グレードである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たしている。
【0176】
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容可能な賦形剤としては、以下に限定されないが、不活性希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、界面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/または油が挙げられる。そのような賦形剤は、任意選択的に医薬組成物中に含まれてもよい。
【0177】
例示的な希釈剤としては、以下に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉末糖など、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0178】
例示的な造粒剤および/または分散剤としは、以下に限定されないが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木製品、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩類、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム(VEEGUM)(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム化合物など、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0179】
代表的な界面活性剤および/または乳化剤としては、以下に限定されないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびビーガム(VEEGUM)(登録商標)[ケイ酸マグネシウムアルミウニム])、長鎖状アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース系誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[スパン(SPAN)(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[スパン(SPAN)(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[スパン(SPAN)(登録商標)65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[スパン(SPAN)(登録商標)80])、ポリオキシエチレンポリオキシエチレンモノステアレート[ミルジ(MYRJ)(登録商標)45]、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびソルトール(SOLUTOL)(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、クレモフォア(CREMOPHOR)(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[ブリジ(BRIJ)(登録商標)30])、ポリ(ビニルピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、プルロニック(PLUORINC)(登録商標)F68、ポロキサマー(POLOXAMER)(登録商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクセートナトリウムなど、ならびに/またはそれらの組合せを含む。
【0180】
例示的な結合剤としては、以下に限定されないが、デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびデンプン糊);ゼラチン;糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然および合成のガム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、トチャカ抽出物、パンワール(panwar)ガム、ガティガム、イサポール(isapol)皮粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、セルロースアセテート、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸マグネシウムアルミウニム(ビーガム(Veegum)(登録商標))、およびカラマツアラボガラクタン);アルギン酸塩;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート類;ワックス類;水;アルコール、などならびにそれらの組合せを含むが、これらに限定されるものではない。
【0181】
例示的な防腐剤としては、以下に限定されないが、抗酸化剤、キレート剤、抗菌保存剤、抗真菌保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、および/または他の保存剤が挙げられる。例示的な酸化防止剤としては、以下に限定されないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、ピロ亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、および/または硫酸ナトリウムが挙げられる。例示的なキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、および/またはエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗菌保存剤としては、以下に限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、および/またはチメロサールが挙げられる。例示的な抗真菌保存剤としては、以下に限定されないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、および/またはソルビン酸が挙げられる。例示的なアルコール保存剤としては、以下に限定されないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、および/またはフェニルエチルアルコールが挙げられる。例示的な酸性保存剤としては、以下に限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータ-カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、および/またはフィチン酸が挙げられる。他の保存剤としては、以下に限定されないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシム(deteroxime)メシレート、セトリミド、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン化(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、グライダント(GLYDANT PLUS)(登録商標)、フェノニップ(PHENONIP)(登録商標)、メチルパラベン、ジェルマール(GERMALL)(登録商標)115、ゲルマベン(GERMABEN)(登録商標)II、ネオロン(NEOLONE)(商標)、ケーソン(KATHON)(商標)、および/またはオイクシール(EUXYL)(登録商標)が挙げられる。
【0182】
例示的な緩衝剤としては、以下に限定されないが、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェン不含水、等張生理食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコールなど、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0183】
例示的な滑沢剤としては、以下に限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、水素添加植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0184】
代表的な油としては、以下に限定されないが、アーモンド油、キョウニン油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロフサスグリ油、ルリジサ油、カデ油、カモミール油、カノーラ油、キャラウェー油、カルナウバ油、ヒマシ油、シナモン油、ココアバター油、ヤシ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、マツヨイグサ油、魚油、アマニ油、ゲラニオール油、ヒョウタン油、ブドウ種子油、ハシバミ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、アオモジ油、マカダミアナッツ油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、トウニン油、ラッカセイ油、ケシの実油、カボチャ種子油、ナタネ油、コメヌカ油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サスクアナ(sasquana)油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン、ダイズ油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチベルソウ油、クルミ油、およびコムギ胚芽油が挙げられる。例示的な油としては、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0185】
賦形剤、例えばココアバターおよび座薬ろう、着色剤、被覆剤、甘味剤、香味剤、および/または芳香剤などは、調合者の判断に従って組成物中に存在し得る。
【0186】
送達
【0187】
本開示は、可能性のある薬物送達の科学の進歩を考慮した任意の適切な経路による遺伝子療法ベクター(例えばポリヌクレオチド)の送達を包含する。送達は、裸であるかまたは製剤化されうる。
【0188】
裸の送達
【0189】
本発明のポリヌクレオチドは、裸で細胞に送達されうる。本明細書で使用される場合、「裸の」とは、トランスフェクションを促進する薬剤を含まないポリヌクレオチドを送達することを指す。例えば、細胞に送達されるポリヌクレオチドは、修飾を含有していなくてもよい。裸のポリヌクレオチドは、当該技術分野で公知でありかつ本明細書に記載される投与経路を用いて、細胞に送達されてもよい。
【0190】
製剤化による送達
【0191】
ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の方法を使用して製剤化されうる。製剤は、ポリヌクレオチドを含有していてもよく、以下に限定されないが、細胞浸透剤、医薬的に許容可能な担体、送達剤、生体分解可能なまたは生体適合性のポリマー、溶媒、および徐放性送達デポをさらに含んでいてもよい。製剤化されたポリヌクレオチドmRNAは、当技術分野で公知でありかつ本明細書に記載される投与経路を用いて、細胞に送達されうる。
【0192】
投与
【0193】
本発明のポリヌクレオチドは、治療上有効なアウトカムを結果としてもたらす任意の経路によって投与されうる。これらには、以下に限定されないが、経腸、経消化器、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜周囲)、脳内(大脳の中に)、脳室内(脳室の中に)、皮膚上(皮膚の上に適用)、皮内、(皮膚自体の中に)、皮下(皮膚の下に)、鼻投与(鼻を通じて)、静脈内(静脈の中に)、動脈内(動脈の中に)、筋肉内(筋肉の中に)、心臓内(心臓の中に)、骨内注入(骨髄の中に)、くも膜下腔内(脊柱管の中に)、腹腔内、(腹膜の中への注入および注射)、膀胱内注入、硝子体内、(眼を通じて)、空洞内注射、(陰茎の基部の中に)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身分布のための無傷の皮膚を通じた拡散)、経粘膜(粘膜を通じた拡散)、ガス注入(吸引)、舌下、唇下、注腸、点眼(結膜の上に)、または点耳が含まれる。特定の実施形態では、組成物は、血液脳関門、血管障壁、または他の上皮障壁を横断することを可能になるような方法で、投与されうる。本発明のポリヌクレオチド、主要構築物、またはmRNAについての非限定的な投与経路を下記に記載する。
【0194】
非経口投与および注射投与
【0195】
非経口投与のための液体剤形としては、以下に限定されないが、医薬的に許容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、および/またはエリキシルが挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、本技術分野でよく使用される不活性希釈剤を含んでいてもよく、そのようなものとしては、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(具体的には綿実油、地下結実油,トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール類、およびソルビタンの脂肪酸エステル類、ならびにそれらの混合物などがある。不活性希釈剤に加えて、口腔組成物は、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味剤、香味剤、および/または芳香剤などを含みうる。非経口投与のためのある実施形態では、組成物は、CREMOPHOR(登録商標)、アルコール、油、改質油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、および/またはこれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合される。
【0196】
注射用調製物、例えば、滅菌された注射用の水性または油脂性の懸濁液は、適した分散剤、湿潤剤、および/または懸濁剤を用いて公知の技術に従って製剤化されることがある。滅菌された注射用調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤および/または溶媒での滅菌された注射用溶液、懸濁液、および/またはエマルジョン、例えば1,3-ブタンジオールの溶液などでありうる。採用され得る許容可能な媒体および溶媒には、水、リンゲル溶液、U.S.P.、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。滅菌された固定油は、従来溶媒または懸濁媒体として採用されている。この目的のために、任意のブランドの固定油を合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含めて採用することができる。オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用できる。
【0197】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過によって、および/または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌された注射用の媒体中に溶解または分散できる滅菌された固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0198】
活性成分の効果を延長するために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶性または非晶質の材料の液体懸濁液を使用することによって達成されうる。その後、薬剤の吸収速度は、その溶解速度に依存し、溶解速度は、ひいては結晶サイズおよび結晶形態に依存しうる。あるいは、非経口的に投与される薬剤形態の遅延吸収は、油媒体中に薬剤を溶解または懸濁することによって達成される。注射用のデポ形態は、ポリ乳酸-ポリグリコール酸などの生分解性ポリマー中に薬剤のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬剤とポリマーとの比率および採用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射用製剤は、体組織に適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬剤を入れることによって調製される。
【0199】
デポ投与
【0200】
本明細書で記載したように、いくつかの実施形態では、組成物は、持続放出のためにデポに製剤化される。一般に、特定の器官または組織(「標的組織」)が、投与のための標的とされる。
【0201】
本発明のいくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、標的組織内または標的組織の近位に空間的に保持される。提供されるのは、組成物が、具体的には組成物の核酸構成成分が、実質的に標的細胞に保持されるような条件下で、すなわち少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、または99.99%以上の組成物が標的細胞中に保持されることを意味する条件下で、標的組織(一つまたは複数の標的細胞を含有する)を組成物に接触させることによって、哺乳類対象の標的組織に組成物を提供する方法である。有利なことに、保持は、一つまたは複数の標的細胞に入る組成物中に存在する核酸の量を測定することによって決定される。例えば、対象に投与された核酸の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、または99.99%以上が、投与後のある期間にわたって細胞内に存在する。例えば、哺乳類対象への筋肉内注射は、ポリヌクレオチドとトランスフェクション試薬とを含有する水性組成物を使用して実施され、組成物の保持は、筋細胞に存在するリボ核酸の量を測定することによって決定される。
【0202】
本発明の態様は、組成物が標的組織に実質的に保持されるような条件下で、(一つまたは複数の標的細胞を含有する)標的組織を組成物と接触させることによって、哺乳類対象の標的組織に組成物を提供する方法を対象とする。組成物は、目的のポリペプチドが少なくとも一つの標的細胞で産生されるように、有効量のポリヌクレオチドを含有する。組成物は、一般に、「裸の」核酸(細胞浸透剤や他の剤を含まない核酸など)も意図されるとはいえ、細胞浸透剤と、医薬的に許容可能な担体とを含有する。
【0203】
いくつかの状況では、組織内の細胞によって産生されるタンパク質の量は、望ましくは増加する。好ましくは、タンパク質産生のこの増加は、標的組織内の細胞へと空間的に制限される。したがって、提供されるのは、哺乳類対象の組織における目的のタンパク質の産生を増加させる方法である。組成物の単位量が、所定の体積の標的組織内に含有される実質的なパーセンテージの細胞で目的のポリペプチドを生産するように決定されていることを特徴とする、ポリヌクレオチドを含有する組成物が提供される。
【0204】
いくつかの実施形態では、組成物は、複数の異なるポリヌクレオチドを含み、ここでは、ポリヌクレオチドのうち一つまたは複数が、目的のポリペプチドをコードする。任意選択的に、組成物は、組成物の細胞内送達を支援するための細胞浸透剤も含有する。(一般に、所定の体積に隣接する組織で、または標的組織から遠位で、目的のポリペプチドの著しい産生を誘導することなく)所定の体積の標的組織内に含有される実質的なパーセンテージの細胞で目的のポリペプチドを産生するのに必要な組成物の用量について、決定がなされる。この決定に続いて、決定された用量が、哺乳類対象の組織中に直接的に導入される。
【0205】
一実施形態では、本発明は、二回以上の注射で、または分割用量注射によって、送達されるポリヌクレオチドを提供する。
【0206】
一実施形態では、本発明は、小さな使い捨ての薬物リーザバー、パッチポンプ、または浸透圧ポンプを使用して、標的組織の近くに保持されてもよい。パッチポンプの非限定的な例としては、BD(登録商標)(フランクリンレイクス、ニュージャージー州)、Insulet社(ベッドフォード、カリフォルニア州)、SteadyMed Therapeutics(サンフランシスコ、カリフォルニア)、Medtronic(ミネアポリス、ミネソタ州)(例えばMiniMed)、Unilife(ヨーク、ペンシルベニア州)、およびSpringLeaf Therapeutics(ボストン、マサチューセッツ州)によって製造および/または販売されるものが挙げられる。浸透圧ポンプの非限定的な例としては、DURECT(登録商標)(クパチーノ、カリフォルニア州)(例えば、DUROS(登録商標)およびALZET(登録商標))によって製造されるものが挙げられる。
【0207】
用量投与
【0208】
本発明は、マルチドメイン治療ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクターを投与すること、および任意選択的に、続いて、それを必要とする対象にマルチドメイン治療ポリペプチドを投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、マルチドメイン治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクターを、それを必要とする患者に治療有効量で投与することを含み、その場合、治療有効量は、以降のマルチドメイン治療用ポリペプチドの投与を不要とするのに十分である。したがって、いくつかの実施形態では、酵素を欠きそれを必要とする患者を治療する方法、例えばポンペ病の患者でグリコーゲンレベルを低減するおよび/またはGAAに対するCRIMを低減する方法は、補充酵素、例えば抗CD63 scFv::GAA融合タンパク質、例えば配列番号11として記載された配列を含むマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクターを、治療有効量で患者に投与することを含み、その場合、治療有効量は、以降の患者への補充酵素、例えばGAAまたはその誘導体の投与の必要性を、打ち消すものとなる。いくつかの実施形態では、酵素を欠きそれを必要とする患者を治療する方法、例えばポンペ病の患者でグリコーゲンレベルを低減するおよび/またはGAAに対するCRIMを低減する方法は、補充酵素、例えば抗CD63 scFv::GAA融合タンパク質、例えば配列番号11として記載された配列を含むマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクターを、治療有効量で患者に投与することを含み、治療有効量の補充酵素を患者に投与することをさらに含む。核酸、タンパク質もしくは複合体、またはその医薬組成物、イメージング組成物、診断組成物、もしくは予防組成物は、疾患、障害、および/または状態(例えば、作業記憶の欠如に関連する疾患、障害、および/または状態)を予防、治療、診断、またはイメージングするために有効な任意の量および投与経路を使用して、対象に投与されうる。
【0209】
必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、疾患の重症度、具体的な組成、その投与様式、その活性の様式等に応じて、対象間で異なるものとなる。
【0210】
望ましい効果または「治療効果」(例えば、補充酵素の特定の血清濃度)を達成するために必要なAAVウイルスベクターの用量、例えば、体重1キログラム当たりのベクターゲノムの用量の単位(vg/kg)は、AAV投与の経路、治療効果を達成するために必要な発現レベル、治療される特定の疾患または障害、およびマルチドメイン治療用タンパク質の発現の安定性を含むがこれに限定されない、いくつかの要因に基づいて変化する。当業者であれば、前述の要因、ならびに当技術分野で周知の他の要因に基づいて、特定の疾患または障害を有する対象を治療するためのAAVビリオン用量範囲を容易に決定できる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、CDER“Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers,”July 2005を参照のこと。AAV の有効量は、一般に、対象当たり約10~1016のゲノムコピーを含有する、約10μl~約100mlの溶液の範囲である。他の容量の溶液を使用してもよい。使用される容量は、典型的には、特に、対象のサイズ、AAVの用量、および投与経路に依存する。いくつかの実施形態では、対象当たり約1010~1012のAAVウイルスゲノムの用量が適切である。いくつかの実施形態では、AAVは、対象当たり1010、1011、1012、1013、1014、または1015のゲノムコピーの用量で投与される。いくつかの実施形態では、AAVは、1kg当たり1010、1011、1012、1013、または1014のウイルスゲノムの用量で投与される。いくつかの実施形態では、1キログラム当たり少なくとも2×1012のウイルスゲノムが投与される。いくつかの実施形態では、投与量は、閾値マルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、閾値治療用タンパク質レベルは、少なくとも1μg/mLである。いくつかの実施形態では、投与量は、2μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、3μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、4μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、5μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、6μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、7μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、8μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、9μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、10μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、11μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、12μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、13μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、14μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。いくつかの実施形態では、投与量は、15μg/mLを超えるマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する。
【0211】
本発明による組成物は、典型的には、投与を容易にし、投薬量を均一にするために、単位剤形で製剤化される。しかし、本発明の組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されうることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な治療的に有効な、予防的に有効な、または適切なイメージングの用量レベルは、種々の要因に依存するものとなるが、そのような要因としては、治療される障害および障害の重症度;採用される具体的な化合物の活性;採用される具体的な化合物;患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、および食事;採用される具体的な化合物の投与時間、投与経路、および排泄速度;治療期間;採用される具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬剤;および医学分野で周知の類似の要因が挙げられる。
【0212】
非限定的および例示的な実施形態を以下に記載する。
実施形態1
中枢神経系(CNS)に治療有効量のマルチドメイン治療用タンパク質を提供するのに十分な肝臓標的送達方法を介して、マルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド組成物を対象に投与することを含み、マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインおよび酵素ドメインを含む、治療用タンパク質を対象のCNS中に送達する方法。
実施形態2
送達ドメインが、内部移行エフェクターに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
治療用タンパク質がリソソーム酵素である、実施形態1または実施形態2に記載の方法。
実施形態4
リソソーム酵素がGAAである、実施形態3に記載の方法。
実施形態5
ヌクレオチド組成物が、ウイルスベクターを介して投与され、随意にヌクレオチド組成物が、1キログラム当たり少なくとも2×1012のウイルスゲノム(vg/kg)の用量で投与される、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
実施形態6
ウイルスベクターがAAVベクターである、実施形態5に記載の方法。
実施形態7
内部移行エフェクターが、CNS中の細胞、上皮細胞、および血液脳関門を通過する細胞からなる群から選択される細胞の表面上で発現する、実施形態1~6のいずれか一つに記載の方法。
実施形態8
送達ドメインが、
(i)CD63、インテグリンアルファ7(ITGA7)、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、およびCD36からなる群から選択され、
(ii)CD63、MHC-I、液胞型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合 EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体からなる群から任意に選択される、いくつかの組織タイプで発現し、
任意に対象は、ファブリー病、ゴーシェ病、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、ポンペ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、αマンノース症、ノイラミニダーゼ欠損症、シアリドーシス、アスパルチルグリコサミン尿症、混合性サポシン欠損症、異型ゴーシェ病、ファーバー脂肪性肉芽腫症、フコシドーシス、およびβマンノース症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し、
(iii)コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1からなる群から任意に選択される、骨および/または軟骨によって優先的に発現され、
任意に対象は、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVA、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、βマンノース症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、アスパルチルグリコサミン尿症、ファーバー脂肪性肉芽腫症、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、およびαマンノース症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し、
(iv)スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(Vセットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)からなる群から任意に選択される、単球、マクロファージ、またはマイクログリアによって優先的に発現され、
任意に対象は、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、およびファーバー脂肪性肉芽腫症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し、
(v)CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)からなる群から任意に選択される、腎細胞によって優先的に発現され、
任意に対象は、ファブリー病、アルポート症候群、多発性嚢胞腎疾患、および血栓性血小板減少性紫斑病からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され、
(vi)任意にASGR1またはASGR2など、肝細胞によって優先的に発現され、
任意に対象は、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、MPS VI、MPS VII、MPS II、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、ファーバー脂肪性肉芽腫症からなる群から選択される、疾患の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され、
(vii)BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)からなる群から任意に選択される、筋肉細胞によって優先的に発現され、
任意に対象は、ポンペ病の一つまたは複数の症状を示すか、またはそれと診断され、
(viii)ITGA7、CD9、CD63、ALPL2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRからなる群から選択され、または
(ix)CD63である、内部移行エフェクターに結合する、実施形態1~7のうちいずれか一つに記載の方法。
実施形態9
送達ドメインが単鎖可変断片(scFv)である、実施形態1~8のいずれか一つに記載の方法。
実施形態10
細胞表面受容体(CSR)結合タンパク質(CSR-BP)は、配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態1~9のいずれか一つに記載の方法。
実施形態11
治療用タンパク質がヒドロラーゼを含む、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法。
実施形態12
治療用タンパク質がグリコシラーゼを含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載の方法。
実施形態13
治療用タンパク質がグリコシダーゼを含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載の方法。
実施形態14
治療用タンパク質がアルファ-グルコシダーゼを含む、実施形態1~13のいずれか一つに記載の方法。
実施形態15
治療用タンパク質は、配列番号1または配列番号13のアミノ酸配列、またはその断片を含む、実施形態1~14のいずれか一つに記載の方法。
実施形態16
治療用タンパク質が、抗ABeta、または抗タウ抗体を含む、実施形態1~15のいずれか一つに記載の方法。
実施形態17
ポリヌクレオチドが、配列番号11の核酸配列を含む、実施形態1~16のいずれか一つに記載の方法。
実施形態18
酵素ドメインは、アルファ-グルコシダーゼを含み、対象の任意のCNS組織中のグリコーゲンレベルは、処置後少なくとも九か月間、低下する、実施形態1~17のいずれか一つに記載の方法。
実施形態19
対象がポンペ病を有する、実施形態1~18のいずれか一つに記載の方法。
実施形態20
投与されたヌクレオチド組成物が、少なくとも1μg/mLのマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する、実施形態1~19のいずれか一つに記載の方法。
実施形態21
一つまたは複数の送達ドメインおよび酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質であって、一つまたは複数の送達ドメインが、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に結合する、マルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態22
内部移行エフェクターに結合する第二の送達ドメインをさらに含む、実施形態21に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態23
第二の送達ドメインが、
(i)CD63、インテグリンアルファ7(ITGA7)、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、およびCD36からなる群から選択される内部移行エフェクター、
(ii)CD63、MHC-I、液胞型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体からなる群から任意に選択される、いくつかの組織タイプで発現する内部移行エフェクター、
(iii)コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1からなる群から任意に選択される、骨および/または軟骨によって優先的に発現される内部移行エフェクター、
(iv)スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(Vセットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)からなる群から任意に選択される、単球、マクロファージ、またはマイクログリアによって優先的に発現される内部移行エフェクター、
(v)CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)からなる群から任意に選択される、腎細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクターであって、他のある特定の実施形態では、筋特異的インターナライザーであり、例えば、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)などである、内部移行エフェクター、
(vi)任意にASGR1またはASGR2など、肝細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクター、
(vii)BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)からなる群から任意に選択される、筋肉細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクター、または
(viii)ITGA7、CD9、CD63、ALPL2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRからなる群から選択される内部移行エフェクタータンパク質に結合する、実施形態22に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態24
第二の送達ドメインが内部移行エフェクターCD63に結合する、実施形態21~23のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態25
一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、抗原結合タンパク質を含む、実施形態21~24のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態26
一つまたは複数の送達ドメインのうちのそれぞれが、抗原結合タンパク質を含む、実施形態25に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態27
一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、単鎖可変断片(scFv)を含む、実施形態21~26のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態28
一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、半抗体を含む、実施形態21~27のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態29
hTfRに結合する送達ドメインはscFvであり、半抗体はCD63に結合し、酵素ドメインはGAAであり、GAAはCD63に結合する半抗体のカルボキシ末端にコンジュゲートされる、実施形態28に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態30
一つまたは複数の送達ドメインのうちのそれぞれが、scFvを含む、実施形態27に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態31
少なくとも一つのscFvがFcに融合されている、実施形態27~30のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態32
Fcが、野生型ヒトIgG4アイソタイプ、またはその誘導体を含む、実施形態31に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態33
GAAが、Fcのカルボキシ末端にコンジュゲートされている、実施形態31~32のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態34
抗hTfR scFv、抗hCD63 scFvを含む、実施形態30に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態35
抗hTfR scFvおよび抗hCD63 scFvが、両方ともそのカルボキシ末端で、単一のGAA酵素に連結されている、実施形態34に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態36
送達ドメインが抗hTfR scFvであり、酵素ドメインがscFvのVLドメインのカルボキシ末端に連結されている、実施形態21~27のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態37
抗hTfR scFvのVHドメインのN末端に連結された第二の送達ドメインをさらに含む、実施形態36に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態38
第二の送達ドメインが、抗hCD63 scFVである、実施形態37に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態39
酵素ドメインが、配列番号1として記載されるアミノ酸配列を含む、実施形態21~38のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態40
実施形態21~39または実施形態50~64のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
実施形態41
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含む、実施形態40に記載のポリヌクレオチド。
実施形態42
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、ウイルス核酸配列は、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である、実施形態40または実施形態41に記載のポリヌクレオチド。
実施形態43
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、ウイルス核酸配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列であり、AAV核酸配列が、内部末端反復配列を含み、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子を含む、実施形態40~42のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
実施形態44
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、ウイルス核酸配列が、配列番号6、配列番号7、または両方と、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子とを含む内部末端反復配列を含むアデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である、実施形態40~43のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
実施形態45
配列番号8および/または配列番号9として記載される配列を含む組織特異的調節因子をさらに含む、実施形態40~44のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド。
実施形態46
実施形態40~45のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクター。
実施形態47
遺伝子療法ベクターが、
任意選択的に天然ウイルス、工学的に操作されたウイルス、またはキメラウイルスである、ウイルスベクター、
実施形態20~25のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含む裸のポリヌクレオチド、
任意選択的に実施形態20~25のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドおよび脂質を含む脂質ナノ粒子である、ポリヌクレオチド複合体、ならびに
それらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される、実施形態46に記載の遺伝子療法ベクター。
実施形態48
遺伝子療法ベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、またはアデノ関連ウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、実施形態46または実施形態47に記載の遺伝子療法ベクター。
実施形態49
遺伝子療法ベクターが、AAV9、Anc80、AAV2/8キメラおよび/または特定の組織、例えば肝臓またはニューロン組織に対してAAVシュードタイプである、実施形態47または実施形態48に記載の遺伝子療法ベクター。
実施形態50
少なくとも二つの送達ドメインおよび少なくとも一つの酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質であって、二つの送達ドメインの各々は、抗体、半抗体、およびscFvからなる群から独立して選択され、少なくとも一つまたは複数の送達ドメインは、少なくとも一つの酵素ドメインに関連付けられ、好ましくは、一つまたは複数の送達ドメインが、少なくとも一つの酵素ドメインに共有結合されている、マルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態51
二つ以下の送達ドメインを含む、実施形態50に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態52
送達ドメインのうちの一つのみが、少なくとも一つの酵素ドメインと関連付けられている、実施形態50または実施形態51に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態53
少なくとも二つの送達ドメインのそれぞれが、酵素ドメインに共有結合している、実施形態50~52のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態54
少なくとも二つの送達ドメインのそれぞれが、同じ酵素ドメインに共有結合している、実施形態53に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態55
少なくとも二つの送達ドメインのそれぞれが、異なる酵素ドメインに共有結合している、実施形態53に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態56
二つ以下の送達ドメインを含み、第一の送達ドメインは半抗体を含み、第二の送達ドメインはscFvを含む、実施形態50~55のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態57
scFvがFcに融合されている、実施形態56に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態58
半抗体が、そのカルボキシ末端で第一の酵素ドメインに共有結合され、および/またはscFvは、そのカルボキシ末端でFc、および任意で第二の酵素ドメインに共有結合される、実施形態56または実施形態57に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態59
二つ以下の送達ドメインを含み、第一の送達ドメインおよび第二の送達ドメインはそれぞれscFvを含む、実施形態50~55のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態60
第一および第二のscFvの両方が、酵素ドメインに共有結合している、実施形態59に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態61
N末端からC末端まで:第一のscFv、第二のscFv、および酵素ドメインを含む、実施形態59に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態62
少なくとも一つの送達ドメインがリソソーム輸送分子に結合し、少なくとも一つの送達ドメインがトランスサイトーシスエフェクターに結合する、実施形態50~61のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態63
リソソーム輸送分子が、CD63、ITGA7、CD9、CD63、CD81、CD82、またはCD151からなる群から選択され、トランスサイトーシスエフェクターは、LDL受容体、IgA受容体、トランスフェリン受容体、新生児Fc受容体、インスリン受容体、CD98、およびベイシジンからなる群から選択される、実施形態62に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態64
図1C図1D図1E、または図1Fに示される構造を含む、実施形態50~63のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
実施形態65
実施形態1~20のいずれか一つに記載の方法における、実施形態21~39および50~64のいずれか一つに記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド、実施形態40~45のいずれか一つに記載のポリヌクレオチド、または実施形態46~49のいずれか一つに記載の遺伝子療法ベクターの使用。
【0213】
下記の実施例は、本発明の方法をさらに説明するために提供されている。これらの実施例は、説明のためだけのものであり、本発明の範囲を何ら制限することを意図するものではない。
【実施例
【0214】
実施例1:抗hCD63 ScFv::GAAポリヌクレオチドおよび遺伝子療法ベクターの構築
ヒトGAA(hGAA;配列番号1;配列番号12により表される核酸配列)またはヒトGAAにそのC末端上で融合された抗ヒトCD63単鎖可変断片(ScFv)(抗hCD63 ScFv-hGAA;配列番号10;配列番号11により表される核酸)の発現をコードするAAV2/8ウイルスを、標準的な三重トランスフェクションプロトコールを使用して生成した(Gray et al.2011;“Production of recombinant adeno-associated viral vectors and use in vitro and in vivo administration”,Current Protocols in Neuroscience,John Wiley&Sons,New York(1999),pp.4.17.1-4.17.25,Vol 1も参照)。生産のために、1×10個のHEK293細胞を15cmプレート上に播いた。翌日、(A)肝特異的セルピナ1エンハンサー(配列番号9)を含みTTR駆動性ヒトGAAをコードする対照pAAVベクターと、肝特異的なセルピナ1のエンハンサー(配列番号9)を含みTTR駆動hCD63 ScFv-hGAA(図1Bを参照)をコードする試験pAAVとのいずれか8μg、および(B)pAAV RC2/8-由来ベクター(Gao、2002)と16μgのpHelper(アジレント、カタログ番号240074)とを用いて、PEIpro(Polyplus transfection、ニューヨーク、ニューヨーク州、カタログ番号115-100)媒介性トランスフェクションを1:1の比(1ul PEIpro:1μg DNA)で用いて、トランスフェクションした。トランスフェクションの72時間後に、細胞を採集し、標準的な凍結融解法を用いて20mM Tris-HCl、1mM MgCl2、2.5mM KCl、100mM NaClからなる緩衝液中で溶解した。次に、ベンゾナーゼ(シグマ、カタログ番号E1014-25KU)を終濃度0.5U/μLで試料に添加し、次いで、これを37℃で60分間インキュベーションした。次いで、ウイルスを、(Zolotukhin et al.、1999,Gene Ther 1999;6:973-985)に記載されるようにイオジキサノール勾配超遠心分離を用いて精製し、続いてqPCRによって滴定した。
【0215】
AAV 試料を、DNaseI(サーモフィッシャーサイエンティフィック、カタログ番号EN0525)を用いて37℃で1時間処理し、DNA extract All Reagents(サーモフィッシャーサイエンティフィック、カタログ番号4403319)をを使用して溶解した。QuantStudio 3リアルタイム PCR システム(サーモフィッシャーサイエンティフィック)を使用し、AAV2 ITRに向けたプライマーを使用して、キャプシド形成されたウイルスゲノムを定量した。AAV2 ITRのプライマーの配列は5’-GGAACCCCTAGTGATGGAGTT-3’(フォワードITR;配列番号3)および5’-CGGCCTCAGTGAGCGA-3’(リバースITR;配列番号4)(Aurnhammer et al.,2012)であり、AAVの左側内部逆反復(ITR)配列(配列番号6)およびAAVの右内部逆反復(ITR)配列(配列番号7)にそれぞれ由来する。AAV2 ITRプローブの配列は、5’-6-FAM-CACTCCCTCTCTGCGCGCTCG-TAMRA-3’(配列番号5)(Aurnhammer C.,Haase M.,Muether N.,et al.,2012,Hum.Gene Ther.Methods 23,18-28)である。95℃の活性化ステップで10分間の後、2ステップPCRサイクルを、95℃で15秒間、60℃で30秒間で40サイクル行った。TaqMan Universal PCR Master Mix(Thermofisher Scientific社、カタログ番号4304437)をqPCRで使用した。DNAプラスミド(アジレント、カタログ番号240074)を標準として使用し、絶対力価を決定した。
【0216】
抗ヒトCD63抗体およびそれらの融合体には、H5C6マウス抗ヒトCD63可変ドメイン(配列番号10のアミノ酸1~119はH5C6抗体の重鎖可変ドメイン(V)のアミノ酸配列を提供し、配列番号10のアミノ酸135~245は、H5C6抗体の軽鎖可変ドメイン(V)のアミノ酸配列を提供する)を使用した。ここで使用された抗hCD63 ScFv(配列番号2)は、H5C6クローンに由来するが、このクローンは、マウス抗hCD63モノクローナルIgG1、カッパ軽鎖抗体である(H5C6は、August,J.T./ Hildreth,J.E.K.によってアイオワ大学の開発研究ハイブリドーマバンクに寄託された(DSHBハイブリドーマ製品H5C6;DSHB カタログ番号h5c6、RRID:AB 528158)。抗体のScFvバージョンは、重-軽の順に可変ドメインを用いて、グリシン-セリンリンカーを間に配して(5’-VH-Gly-Ser-VL-3’)クローニングした。
【0217】
実施例2:AAV後のマウスポンペモデルのグリコーゲン含量
関連のグリコーゲン蓄積in vivo モデルにおける、AAV により送達された抗hCD63 ScFv-GAA融合体とAAVにより送達されたGAAとの効果の対比を決定するために、両方の療法をポンペ病マウスモデルに送達した。このマウスは、マウスGAA遺伝子の欠失についてホモ接合性であり、マウスCD63の代わりにヒトCD63の発現についてホモ接合性であり、系統の背景が75%のC57BL/6、25%の 129SvJであった。これらのマウスは本明細書では、CD63 HumIn GAA KOマウスまたはCD63hu/hu;GAA-/-マウスと呼称される。
【0218】
実験では、TTR肝特異的プロモーター駆動性のヒトGAA(AAV-hGAA;実施例1に記載)またはTTR肝特異的プロモーター駆動性のC末端でヒトGAAに融合された抗ヒトCD63 ScFv(AAV-抗hCD63 ScFv-hGAA;実施例1に記載)のどちらかをゲノムに含有するAAV2/8ウイルスを、尾静脈注射を介して、2ヶ月齢のCD63 HumIn GAA KOマウスに投与した。両方のAAV2/8ウイルスを、1e10vg/マウスまたは1e11vg/マウスの二つの用量のうちどちらか一つで送達した。対照として、未処置CD63 HumIn GAA KOマウスと、マウスGAA遺伝子が無傷である未処置CD63 HumInとを、アッセイに含めた。マウスを、処置後3ヵ月間収容し、この期間中にGAAレベルおよび抗GAA抗体の血清測定のため少しずつ(毎月)採血した。3ヶ月後、すべてのマウスを屠殺し、個々の組織をグリコーゲン測定、PAS-H染色、中心核の定量化、リソソーム増殖の測定、およびLC3b発現の測定のため採取した。マウスの群についての実験用量および処理プロトコールを表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0219】
結果は図2にも図示されており、この図は、抗hCD63scFv::GAAが、GAA単独とは異なり、骨格筋で野生型レベルまでグリコーゲンを低下させることを示している。二ドメイン型の抗hCD63scFv::GAAマルチドメイン治療用タンパク質を用いた処置の結果、単一ドメインのGAA補充酵素と比較して、貯蔵グリコーゲンの減少がはるかに大きくなった。個別のマウスについて三か月にわたる四頭筋のグリコーゲンレベル(図3)または心臓のグリコーゲンレベル(図4)をGAAまたはscfv-GAAの総血清発現量に対してプロットすることによって、抗hCD63scFv::GAA融合タンパク質は、同様の血清レベルであってもGAA酵素単独より多くのグリコーゲンを除去することが観察された(図3および4)。
【0220】
実施例3:GAAに対する免疫応答
抗ヒトGAA抗体の血清レベルを測定するために、製造業者の仕様書に従い血清分離チューブ(BDバイオサイエンス、カタログ番号365967)を使用し、全ての処置群からの血清を、末期採血中に収集した血液から分離した。別途、96ウェル高タンパク質結合プレート(サーモフィッシャー、カタログ番号15041)を、PBSで希釈した20μgのhGAA(R&Dシステムズ、カタログ番号8329-GH-025)で一晩被覆した。プレートをPBS+0.05%Tween(登録商標)(PBS-T)で3回洗浄した。プレートをPBS-T中0.5%BSAでブロッキングし、マウス血清の1:300から1:5.1e7に及ぶ希釈系列をプレートに一晩加えた。HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(ジャクソンイムノリサーチ、カタログ番号115-035-164)およびBD Opt EIA基質キットを使用して、総抗マウスIgG(サブクラス1+2a+2b+3)を測定した。1Nリン酸を使用して、比色反応を停止した。次いで、Spectramax i3プレートリーダー(モレキュラーデバイス)にて450nmで吸光度を読み取った。希釈曲線をシグモイド曲線にフィッティングさせ、この曲線から力価を計算した。総IgG力価の平均+/-標準偏差として表した力価を表4に示す。
【0221】
表4に示すように、処置を受けなかったマウスは、平均レベル1.1E+03の平均バックグラウンド力価を示した。AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAまたはAAV-hGAAのどちらかの低用量のウイルス(1e10 vg/マウス)で処置されたマウスは、高い力価を示したが、高用量(1e11 vg/マウス)で処置したマウスでは、力価がそれよりも低かった。最高レベルの血清中GAAを有していた1e11vgのAAV-抗hCD63 ScFv-hGAAで処置したマウスは、未処置マウスの範囲内の力価を有していた。
【表4】
【0222】
AAV投与後にGAAまたは抗hCD63scFv::GAAのレベルが高いことは、抗GAA力価がより低いことに対応する。高い力価または低い力価のAAV-抗hCD63scFv::GAAまたはAAV-GAAを処置したGAAヌルマウスの血清を、注射後三ヵ月の期間にわたって抗GAA抗体について評価した。図5は、血清中の抗GAA抗体力価とGAA曝露との対比(すなわち、GAAまたはscfv-GAAの3ヵ月にわたる総血清中発現量)を個別のマウスについて図示する。この図は、GAAに対する抗体力価と血清曝露との間に負の相関があることを示し、この相関は、高いGAA曝露を伴うマウスがGAAに寛容であったことを示す。同様に、図6は、GAAまたは抗hCD63scFv::GAAタンパク質をコードするAAVを感染させた様々な群について、抗GAA抗体力価をプロットしており、構築物の用量が高いほど抗GAAの力価が低かったことを示す。
【0223】
実施例4:血清GAA
実験の期間にわたってヒトGAA血清レベルを測定するために、試料を尾部出血を介して毎月採集した。製造業者の仕様書に従い血清セパレータチューブ(BDバイオサイエンス、カタログ番号365967)を使用して、血液から血清を分離した。次いで、1μLの単離血清を4%~20%のNovex wedgewellプレキャストゲルにロードし、220Vで45分間泳動し、標準手順書を使用して200mAで1時間、ニトロセルロース膜に転写した。次いで、ニトロセルロース膜を、1:2000希釈での使用による抗GAA一次抗体(アブカム、番号ab137068)、および1:1000希釈での使用による抗GAPDH抗体(アブカム、番号AB9484)を12mL用いてプロービングし、4℃で一晩インキュベーションした。一次抗体によるインキュベーションの後、膜を一回洗浄当たり1x TBSTにより5分間で三回洗浄した。抗ウサギ IgG(LiCor、926-32211)二次抗体および抗マウスIgG二次抗体(LiCor、925-68070)(Licor、リンカーン、ネブラスカ州)の1:15000の希釈物12mLを、次いで膜に添加し、室温で1時間インキュベートした。二次抗体のインキュベーション後、膜を一回洗浄当たり1x TBSTにより5分間で二回、1×TBSにより5分間で一回、洗浄した。次いで、LiCor Odyssey機器(LI-COR バイオテクノロジー)を使用して、膜をイメージングし定量した。任意単位で平均±標準偏差(SD)として表したGAAの血清レベルを表5に示す。
【0224】
表5に示されるように、供試された高用量(1011vg/マウス)の AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAまたはAAV-hGAAで処置されたCD63 HumIn GAA KOマウスは、実験期間にわたって血清中のGAAのレベルを保持し、AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAで処置されたマウスでは、AAV-hGAAで処置されたマウスよりもいくらか高いGAAの血清レベルを有することが示された。低用量(1010vg/マウス)のAAV-抗hCD63 ScFv-hGAAまたはAAV-hGAAのどちらかで治療されたマウスでは、GAAのレベルが実験期間にわたって低下し、一部のマウスでは、12週間時点までに極めて僅かなレベルに達した。
【表5】
【0225】
GAAまたは抗hCD63scfv::GAAの発現は、高用量のAAV(1011vg/マウス)を受けたマウスにおいて経時的に維持されたが、それより低い用量(1010vg/マウス)を受けたマウスでは低下した。図7Aは、GAA、またはGAAとの抗hCD63scfv融合体をコードするAAVを感染させた様々な群について、ウェスタンブロットによってプロービングされた際の、経時的なGAAの血清レベルをプロットしたグラフを図示する。融合タンパク質(scFv::GAA)は、送達ドメインを含まないGAA酵素よりも一貫して高いレベル(例えば2.5~3倍)の血清GAAを示した(図7A)。
【0226】
注射の3か月後の肝臓、心臓、および四頭筋における発現のリアルタイムPCRによる定量を図7Bに示す。肝臓での発現は、全てのAAV構築物の注射について検出され、AAV-hGAAおよびAAV-抗hCD63::hGAAの両方(どちらも肝特異的プロモーターであるLSPによって駆動される)について、1e11vg/マウスの注射で最高レベルとなった。血清GAAレベルとGAAのRNA発現レベルとの比較も行ったところ(図7C)、その結果では、融合タンパク質をコードするAAVを受けたマウスが、3ヶ月では肝臓に限局して低いGAA RNAの発現を提示したものの、GAAの血清レベルは、その特定のマウスでは高かったことが示されている。AAV-LSP-hGAA注射は、肝臓内でRNAレベルが低かった場合、高いGAAの血清レベルを示さなかった。図7Cを参照されたい。このデータは、融合タンパク質をコードする(および発現が肝特異的プロモーターによって駆動される)AAVが、GAAの分泌プロファイルの改善を達成することを示唆する。
【0227】
Huh-7肝細胞では、抗体::hGAA対hGAAのみの分泌と細胞内との比率がより高いことも観察された。ある実験では、Huh-7ヒト肝細胞は、hGAA、抗hCD63 scFv::GAA融合体、または非結合scFv::GAA融合体対照をコードする肝特異的プロモーター駆動型構築物を、一過的にトランスフェクションした。どちらのscFv::GAA融合構築物も、トランスフェクションの3日後、分泌上清中のタンパク質の比率がhGAAのみよりも高かった(統計的に有意なp<0.05、n=3)。CI-MPR媒介性取り込みを軽減するために実験期間中に上清にM6Pを添加したことは、この比率に影響を及ぼさなかった。
【0228】
実施例5:グリコーゲンの組織測定および筋組織の組織学的特性評価
グリコーゲンの組織測定:個々の組織のグリコーゲン含量を測定するために、心臓、四頭筋、腓腹筋、横隔膜、ヒラメ筋、およびEDLの組織を、COで窒息させた直後の全ての群由来のマウスから切り出し、次いで液体窒素中で急速凍結して、-80℃で保存した。グリコーゲン測定のために、各組織約50mgを、ステンレス鋼ビーズにより蒸留水中1mg対25μLの水の比率で、ベンチトップ用ホモジナイザーで溶解した。グリコーゲン分析溶解物を105°で15分間加熱し、21000×gで遠心分離して破片を除去した。グリコーゲン測定は、蛍光アッセイについての製造業者の指示書に従い、グリコーゲンアッセイキット(シグマアルドリッチ、番号MAK016)を使用して実施した。各試料の蛍光を、535nmの励起および587nmの発光で、蛍光プレートリーダー(モレキュラーデバイス、Spectramax i3)にて測定した。グリコーゲンの計算量は、製造業者により提供された以下の式を用いて計算した。次いで、各治療群の各組織由来のグリコーゲンの計算量の平均を取ったので、表6に平均±標準偏差(SD)として表す。
【0229】
表6に示されるように、GAA WTマウスと比較すると、測定された全ての組織にわたって、Gaaの喪失によって、平均グリコーゲンレベルの大きな増加が引き起こされている。AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAを1011vg/マウスで処置することによって、供試された全ての組織でグリコーゲンがWTレベルまたはWTに近いレベルに減少し、AAV-GAAによる処置が貯蔵グリコーゲンを部分的に減少させたのみであったこととは異なっていた。低用量のどちらのウイルスもグリコーゲンを減少させたが、高用量よりも程度が少なかった。1010vg/マウス用量のAAV-抗hCD63 ScFv-hGAAは、1011vg/マウス用量のAAV-GAAと同様にグリコーゲンレベルを減少させた。
【表6】
【0230】
組織病理学および定量のための四頭筋の採取:低用量(1e10vg/マウス)処置群以外の各群からのマウスから得た四頭筋組織試料を、LC3b発現の定量のために切り出しの直後に液体窒素中で急速凍結して-80℃に保存するか、またはO.C.T培地(Tissue-Tek、番号4583)を含有するブロックの上に配した。
【0231】
O.C.T培地中の組織試料を、多糖類を検出するための切片作製および過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色のためにHistoserv社(ゲルマンタウン、メリーランド州)に送った。追加の切片を調製し、中心核およびリソソーム増殖の染色のために返された。
【0232】
PAS染色:PAS染色切片を、20×倍率でLeicaスライドスキャナーを用いてイメージングした。各治療群の代表的なマウスから結果として得られた画像を図8に示す。
【0233】
図8に示されるように、3か月では、AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAを処置されたCD63 HumIn GAA KOは、処置のないCD63 HumIn GAA KOマウスおよびAAV-hGAAで処置されたCD63 HumIn GAA KOマウスの両方が高レベルのPAS染色を示したのに比較して、顕著な染色の減少を示した。このことはさらに、AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAを用いた処置により、CD63 HumIn GAA KOマウスにおける多糖類の蓄積を低減することができ、またそれを筋線維中にわたって均一な様式で行うことができることを示す。
【0234】
中心核およびリソソームの増殖の定量:Histoservからの未染色切片を冷凍庫から取り出し、次いで染色チャンバー内で、PBS中4%パラホルムアルデヒドを用いて15分間固定した。次いで、固定したスライドを二回、PBS中で5分間洗浄し、続いて、ブロッキング緩衝液(eBiosciences、00-4953-54)と共に室温で1時間インキュベーションした。次いで、スライドを、加湿染色チャンバー内で、ブロッキング緩衝液中1:50希釈のラット抗Lamp-1抗体(アブカム、番号AB25245)もしくはブロッキング緩衝液中1:1000希釈のウサギ抗ラミニン抗体(シグマ、番号L9393)のどちらか、または抗体を添加しないブロッキング緩衝液で染色し、次いで4℃に移して一晩インキュベーションした。翌日、次いでスライドを二回、PBS中で5分間洗浄し、続いて、染色チャンバーで、Alexa Fluor 647(ライフテックサーモ、番号A27040)にコンジュゲートされたヤギ抗ウサギIgG(H+L)superclonal二次抗体、またはAlexa Fluor 555(ライフテックサーモ、番号A21434)にコンジュゲートされたヤギ抗ラットIgG(H+L)交差吸着済み二次抗体のどちらかを用いて染色し、次いで、室温で1時間インキュベーションさせた。次いで、染色されたスライドを二回、PBS中で5分間洗浄した後、DAPIを含むFluoromount-G(ライフテックサーモ、番号00-4959-52)を用いてマウントし、Zeiss LSM710機器(Carl Zeiss Microscopy GmbH)でイメージングした。中央に位置する核の数を、Haloソフトウェア(インディカラボ、ニューメキシコ州)を使用して定量し、中心核を示す線維のパーセンテージ±標準偏差として表7に表した。リソソームの増殖を図8に図示する。
【表7】
【0235】
LC3b発現の定量:LC3b発現の定量のために、急速凍結試料を解凍し、ホモジナイズし、次いで、RIPA緩衝液中、1mgの組織に25μLのRIPA緩衝液の比率(150mM NaCl、1.0% IGEPAL(登録商標)CA-630、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、50mM Tris、pH8.0、シグマアルドリッチ、R0278)で、45秒間のビーズ衝突(MPバイオメディカル)によって溶解した。溶解物を21,000×gで遠心分離することにより不溶性材料を除き、次いで、RIPA緩衝液中の300μgの溶解物を4%~20%のNovex wedgewellプレキャストゲルにロードし、ニトロセルロース膜に転写し、血清GAAレベルの分析について以前に記載された同様のプロトコールを用いて、GAAに対する一次抗体の代わりにマウスLC3b-IおよびLC3b-IIを認識する一次抗体(シグマ、番号L7543)の使用に置き換えて、ウェスタンブロットによって分析した。次いで、LiCor Odyssey機器(LI-COR バイオテクノロジー)を使用して、膜をイメージングし定量した。任意単位で(平均±標準偏差)として表されたLC3b-IレベルおよびLC3b-IIレベルを表8に示す。
【0236】
表8に示すように、GAAを欠いたマウスでは、CD63 HumIn GAA WTマウスと比較して、平均のLC3b-IおよびLC3b-IIの両方のレベルが著しく増加していた。AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAを用いた処置によって、CD63 HumIn GAA KOにおける平均のLC3b-IレベルおよびLC3b-IIレベルは、WTレベルまたはWTに近いレベルに減少した。AAV-hGAAを用いて処置されたCD63 HumIn GAA KOは、CD63 HumIn GAA KOマウスと比較して平均のLC3b-IレベルおよびLC3b-IIレベルの僅かな減少を示したが、この減少は、AAV-抗hCD63 ScFv-hGAAによる処置ほど顕著なものではなかった。
【表8】
【0237】
実施例6:AAV抗hCD63::GAA処置は、筋力および筋協調性の試験で有意な増大を生じる
AAV-LSP hGAAまたはAAV-LSP抗hCD63::hGAAのいずれかを用いて処置したマウスの握力強度およびロータロッド試験性能。野生型GAAマウス、未処置対照、AAV-LSP-hGAA(1e11vg/マウス)またはAAV-LSP-抗hCD63::hGAA処置(1e11vg/マウス)の加速ロータロッド測定値(図9A)および前肢握力強度の測定値(図9B)を、1ヶ月間隔で6ヶ月間にわたって得た。エラーバーは+/-標準偏差である。全ての群に対してN=8~10。
【0238】
実施例7:GAAを組織に向ける「ガイド」としての他の膜タンパク質
酵素欠損マウスにおいてGAAを補充するよう組織にGAAをガイドするため、抗ITGA7(インテグリンアルファ7)融合タンパク質などの他の膜タンパク質を供試した。C2C12マウス筋芽細胞を、5mM M6Pの存在下または非存在下で、抗mCD63-GAAまたは抗ITGA7-GAAと共に一晩インキュベーションした。両方の融合タンパク質について、活性GAA酵素が、経時的に筋芽細胞溶解物に検出された(図10A)。さらに別の実験では、CD63をヒト化されたGAA KOマウス(GAA-/-;CD63hu/hu)に、scFv::GAA型の抗hCD63::GAAまたは完全長IgG4::GAA型の抗インテグリンアルファ-7をコードするプラスミドを、流体力学的送達(HDD)によって与え、HDDの3週間後にマウスを屠殺した。組織のグリコーゲンレベルを、心臓、四頭筋、腓腹筋、および横隔膜で測定した。未処置の対照マウスGAA-/-xCD63hu/hu、および未処置の野生型GAA対照マウスGAA+/+;CD63hu/hu(4)も、同じ条件下で供試した。グリコーゲンレベルは、野生型マウスにあるように、抗hCD63::GAA処置マウス群および抗ITGA7::GAA処置マウス群の両方で、非常に低いレベルであった。図10Bを参照のこと。
【0239】
実施例8:同等の血清レベルでは、AAV抗CD63::GAA処置は、GAA構築物を最適化したAAVよりも効果的である
CD63 HumIn GAA KOマウス(GAA-/-xCD63hu/hu)に、抗hCD63::GAAマルチドメイン治療物(配列番号10)の発現を駆動する肝特異的エンハンサー(セルピナ1;配列番号9)および肝特異的プロモーター(LSP;TTR;配列番号8)を含有するAAVを感染させた。これらは、キモトリプシノーゲンB2のシグナルペプチド(SP7)を使用し、筋強度および筋協調の試験において有意な向上を示したヒトGAAのアミノ酸36~952(Δ8GAA)を含有する。各ウイルスについて、三つの異なる用量:5e11vg/kg、2e12vg/kg、4e12vg/kgを投与した。顎下採血によって定期的に血清を採集した。AAV感染の一ヶ月後、マウスを屠殺した。心筋および骨格筋の組織試料を採集し、液体窒素中で急速凍結させ、保管のために-80℃に保った。組織中のグリコーゲンを、蒸留水中でのビーズ衝突により組織をホモジナイズすることによって測定した。試料を煮沸および遠心分離し、上清を市販のグリコーゲンアッセイキットで使用した。前述の例に記載されたように、ヒトGAAに対する抗体を用いたウェスタンブロットを用いて、血清を定量した。各マウスについて、各組織のグリコーゲンレベルを、1ヶ月での構築物の血清レベルに対してプロットした。4パラメーターのカーブフィットを使用して、各組織における二つの処置のEC50を決定した。
【0240】
抗hCD63::GAAまたはsp7-Δ8GAAのどちらかをコードする肝特異的プロモーター(LSP)を含有するAAVを感染させると、各感染用量で同等のGAAの血清レベルがもたらされた。図11.しかし、アッセイされたそれぞれの筋組織において、抗hCD63::GAAとsp7-Δ8GAAの使用を比べると、約2.2倍のEC50の低減が観察され、このことは、同等の血清レベルでは、抗CD63::GAAは、抗体に融合されていない改変GAA発現構築物よりも効率的にグリコーゲンを取り除くことを示す。図12を参照のこと。
【0241】
実施例9:様々なGAA構築物および用量を用いたAAV治療後のマウスポンペモデルのCNS中のグリコーゲン含量
TTR肝特異的プロモーター駆動性のヒトGAA(AAV-hGAA;実施例1に記載)またはTTR肝特異的プロモーター駆動性のC末端でヒトGAAに融合された抗ヒトCD63 ScFv(AAV-抗hCD63 ScFv-hGAA;実施例1に記載)のどちらかをゲノムに含有するAAV2/8ウイルスを、尾静脈注射を介して、二ヶ月齢のCD63 HumIn GAA KOマウスに投与した。AAV2/8ウイルスはどちらも1e11vg/マウスで送達された。対照として、未処置CD63 HumIn GAA KO(Gaa-/-)マウスと、マウスGAA遺伝子が無傷である未処置CD63 HumIn(野生型マウス)とを、アッセイに含めた。マウスを治療後9ヵ月間収容し、その後、すべてのマウスを犠牲にし、個別の組織をグリコーゲン測定用に採取した。CNS組織を氷上で解剖し、AAV形質導入から9ヵ月後に急速冷凍した。脊髄、小脳、および海馬の組織を、ビーズ衝突を使用して脱イオン蒸留水中で均質化し、また市販の蛍光グリコーゲンアッセイキットを使用して、組織溶解物の上清中でグリコーゲンを測定した(図13)。
【0242】
別の類似実験では、GAA(1e11vg)または抗CD63ScFv-GAA融合(用量1e10vg、5e10vg、または1e11vg)をコードするAAV構築物でノックアウトマウスを処置した。野生型マウスおよびCNS組織1mg当たりの貯蔵グリコーゲン量(脊髄:図14A、脳:図14B)を、AAV送達の3か月後に調べた。野生型マウスおよび未処置のKOマウス(GAA-/-)を、同じ期間(3ヶ月)、CNS組織の貯蔵グリコーゲンレベルのコンパレーターとして使用した。
【0243】
ScFv-GAA融合構築物は、1e11vg/マウスの用量で罹患マウスの貯蔵グリコーゲンレベルを低下させる点で、GAA単独よりも効果的であった(図13~14)。5e10 vgのScFv-GAA融合の用量は、より高い用量のGAA単独構築物と同等のグリコーゲン貯蔵レベルの減少を提供した(図14A~14B)。これらの減少したグリコーゲン貯蔵レベルは、Hordeaux et al 2017(例えば、AAV GAAをくも膜下腔内注射したマウスのグリコーゲンの減少および筋力の改善)によって効果的であることが示された。ScFv-GAA融合タンパク質の相対血清レベルは、5e10vgで検出可能であり、1e11vgを受けたマウスでは15ug/mL以上である(表9)。
【表9】
【0244】
いかなる一つの理論にも束縛されるものではないが、検出可能な血清レベル、例えば、血液脳関門を通過する送達ドメインに連結された1ug/mLを超えるGAAの血清レベルは、治療的であるとみなされる。
【0245】
実施例10:少なくとも二つの送達ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質の発現
CHO細胞を、図1C図1Gに示す発現構築物でトランスフェクトし、各構築物の発現を確認した(データ非表示)。さらに、4W1および4M1(図1F)によってコードされるマルチドメイン治療用タンパク質の一部のCD63への結合は、ELISAによって確認された(データ非表示)。
(項目1)
中枢神経系(CNS)に治療有効量のマルチドメイン治療用タンパク質を提供するのに十分な肝臓標的送達方法を介して、前記マルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド組成物を対象に投与することを含み、前記マルチドメイン治療用タンパク質は、送達ドメインおよび酵素ドメインを含む、治療用タンパク質を前記対象のCNS中に送達する方法。
(項目2)
前記送達ドメインが、内部移行エフェクターに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記治療用タンパク質がリソソーム酵素である、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記リソソーム酵素がGAAである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記ヌクレオチド組成物がウイルスベクターを介して投与される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記ウイルスベクターが、AAVベクターであり、任意に前記ヌクレオチド組成物が、1キログラム当たり少なくとも2×1012のウイルスゲノム(vg/kg)の用量で投与される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記内部移行エフェクターが、CNS中の細胞、上皮細胞、および血液脳関門を通過する細胞からなる群から選択される細胞の表面上で発現する、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記送達ドメインが、
(i)CD63、インテグリンアルファ7(ITGA7)、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、およびCD36からなる群から選択され、
(ii)いくつかの組織タイプで発現し、
CD63、MHC-I、液胞型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体からなる群から任意に選択され、
任意に前記対象は、ファブリー病、ゴーシェ病、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、ポンペ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、αマンノース症、ノイラミニダーゼ欠損症、シアリドーシス、アスパルチルグリコサミン尿症、混合性サポシン欠損症、異型ゴーシェ病、ファーバー脂肪性肉芽腫症、フコシドーシス、およびβマンノース症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し、
(iii)骨および/または軟骨によって優先的に発現され、
コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1からなる群から任意に選択され、
任意に前記対象は、MPS I、MPS II、MPS IIIA、MPS IIIB、MPS IIID、MPS IVA、MPS IVB、MPS VI、MPS VII、MPS IX、βマンノース症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、アスパルチルグリコサミン尿症、ファーバー脂肪性肉芽腫症、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、およびαマンノース症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し、
(iv)単球、マクロファージ、またはマイクログリアによって優先的に発現され、
スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(Vセットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)からなる群から任意に選択され、
任意に前記対象は、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、およびファーバー脂肪性肉芽腫症からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示し、
(v)腎細胞によって優先的に発現され、
CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)からなる群から任意に選択され、
任意に前記対象は、ファブリー病、アルポート症候群、多発性嚢胞腎疾患、および血栓性血小板減少性紫斑病からなる群から選択される疾患の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され、
(vi)肝細胞によって優先的に発現され、
任意にASGR1またはASGR2、
任意に前記対象は、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、ゴーシェ病、MPS VI、MPS VII、MPS II、ニーマン・ピック病A型、B型、およびC2型、シアリドーシス、ノイラミニダーゼ欠損症、異型ゴーシェ病、混合性サポシン欠損症、ファーバー脂肪性肉芽腫症からなる群から選択される、疾患の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され、
(vii)筋細胞によって優先的に発現され、
BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)からなる群から任意に選択され、
任意に前記対象は、ポンペ病の一つまたは複数の症状を示すか、またはそのように診断され、
(viii)ITGA7、CD9、CD63、ALPL2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRからなる群から選択され、または
(ix)CD63である、内部移行エフェクターに結合する、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記送達ドメインが単鎖可変断片(scFv)である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記細胞表面受容体(CSR)結合タンパク質(CSR-BP)が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記治療用タンパク質がヒドロラーゼを含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記治療用タンパク質がグリコシラーゼを含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記治療用タンパク質がグリコシダーゼを含む、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記治療用タンパク質がアルファ-グルコシダーゼを含む、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記治療用タンパク質が、配列番号1または配列番号13のアミノ酸配列、またはその断片を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記治療用タンパク質が、抗ABeta、または抗タウ抗体を含む、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記ポリヌクレオチドが、配列番号11の核酸配列を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記酵素ドメインが、アルファ-グルコシダーゼを含み、前記対象の任意のCNS組織中のグリコーゲンレベルが、処置後少なくとも九か月間、低下する、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記対象がポンペ病を有する、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記投与されたヌクレオチド組成物が、少なくとも1μg/mLのマルチドメイン治療用タンパク質血清レベルを提供する、項目1~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
一つまたは複数の送達ドメインおよび酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質であって、前記一つまたは複数の送達ドメインが、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に結合する、マルチドメイン治療用タンパク質。
(項目22)
内部移行エフェクターに結合する第二の送達ドメインをさらに含む、項目21に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目23)
前記第二の送達ドメインが、
(i)CD63、インテグリンアルファ7(ITGA7)、MHC-I、Kremen-1、Kremen-2、LRP5、LRP6、LRP8、トランスフェリン受容体、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、ASGR1、ASGR2、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、IGF2R、液胞型H+ATPアーゼ、ジフテリア毒素受容体、葉酸受容体、グルタミン酸受容体、グルタチオン受容体、レプチン受容体、スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、およびCD36からなる群から選択される内部移行エフェクター、
(ii)CD63、MHC-I、液胞型H+ ATPアーゼ、IGF2R、インテグリンアルファ7(ITGA7)、LRP5、LRP6、LRP8、Kremen-2、LDL受容体、LDL関連タンパク質1受容体、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質2(APLP2)、アペリン受容体(APLNR)、PRLR、MAL(ミエリンおよびリンパ球タンパク質(MAL)、ジフテリア毒素受容体、HBEGF(ヘパリン結合EGF様成長因子)、グルタチオン受容体、グルタミン酸受容体、レプチン受容体、および葉酸受容体からなる群から任意に選択される、いくつかの組織タイプで発現する内部移行エフェクター、
(iii)コラーゲンX、インテグリンアルファ10(ITGA10)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、線維芽細胞成長因子受容体アイソフォームC(FGFR3C)、ヒアルロナンおよびプロテオグリカンリンクタンパク質1(CRTL1)、アグリカン、コラーゲンII、およびKremen-1からなる群から任意に選択される、骨および/または軟骨によって優先的に発現される内部移行エフェクター、
(iv)スカベンジャー受容体A1-5(SCARA1-5)、SCARB1-3、CD36、MSR1(マクロファージスカベンジャー受容体1)、MRC1(マクロファージマンノース受容体1)、VSIG4(Vセットおよびイムノグロブリンドメイン含有タンパク質4)、CD68(マクロシアリン)、およびCSF1R(マクロファージコロニー刺激因子1受容体)からなる群から任意に選択される、単球、マクロファージ、またはマイクログリアによって優先的に発現される内部移行エフェクター、
(v)CDH16(Cadheri-16)、CLDN16(Claudn-16)、KL(Klotho)、PTH1R(副甲状腺ホルモン受容体)、SLC22A13(溶質輸送体ファミリー22メンバー13)、SLC5A2(ナトリウム/グルコース共輸送体2)、およびUMOD(ウロモジュリン)からなる群から任意に選択される、腎細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクターであって、他のある特定の実施形態では、筋特異的インターナライザーであり、例えば、BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)などである、内部移行エフェクター、
(vi)任意にASGR1またはASGR2など、肝細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクター、
(vii)BMPR1A(骨形態形成タンパク質受容体1A)、m-カドヘリン、CD9、MuSK(筋特異的キナーゼ)、LGR4/GPR48(Gタンパク質共役受容体48)、コリン作動性受容体(ニコチン性)アルファ1、CDH15(Cadheri-15)、ITGA7(インテグリンアルファ7)、CACNG1(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ1)、CACNAlS(L型カルシウムチャネルサブユニットアルファ15)、CACNG6(L型カルシウムチャネルサブユニットガンマ6)、SCN1B(ナトリウムチャネルサブユニットベータ1)、CHRNA1(ACh受容体サブユニットアルファ)、CHRND(ACh受容体サブユニットデルタ)、LRRC14B(ロイシンリッチリピート含有タンパク質14B)、ジストログリカン(DAG1)、およびPOPDC3(Popeyeドメイン含有タンパク質3)からなる群から任意に選択される、筋肉細胞によって優先的に発現される内部移行エフェクター、または
(viii)ITGA7、CD9、CD63、ALPL2、MSR1、ASGR1、ASGR2、またはPRLRからなる群から選択される内部移行エフェクタータンパク質に結合する、項目22に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目24)
前記第二の送達ドメインが前記内部移行エフェクターCD63に結合する、項目21~23のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目25)
前記一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、抗原結合タンパク質を含む、項目21~24のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目26)
前記一つまたは複数の送達ドメインのそれぞれが、抗原結合タンパク質を含む、項目25に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目27)
前記一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、単鎖可変断片(scFv)を含む、項目21~26のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目28)
前記一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、半抗体を含む、項目21~27のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目29)
hTfRに結合する前記送達ドメインはscFvであり、前記半抗体はCD63に結合し、前記酵素ドメインはGAAであり、GAAはCD63に結合する前記半抗体のカルボキシ末端にコンジュゲートされる、項目28に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目30)
前記一つまたは複数の送達ドメインのそれぞれが、scFvを含む、項目27に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目31)
少なくとも一つのscFvがFcに融合されている、項目27~30のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目32)
前記Fcが、野生型ヒトIgG4アイソタイプ、またはその誘導体を含む、項目31に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目33)
GAAが、Fcのカルボキシ末端にコンジュゲートされている、項目31~32のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目34)
抗hTfR scFv、抗hCD63 scFvを含む、項目30に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目35)
前記抗hTfR scFvおよび抗hCD63 scFvが、両方ともそのカルボキシ末端で、単一のGAA酵素に連結されている、項目34に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目36)
前記送達ドメインが抗hTfR scFvであり、前記酵素ドメインが前記scFvのVLドメインのカルボキシ末端に連結されている、項目21~27のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目37)
前記抗hTfR scFvのVHドメインのN末端に連結された第二の送達ドメインをさらに含む、項目36に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目38)
前記第二の送達ドメインが、抗hCD63 scFVである、項目37に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目39)
前記酵素ドメインが、配列番号1として記載されるアミノ酸配列を含む、項目21~38のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目40)
少なくとも二つの送達ドメインおよび少なくとも一つの酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質であって、前記二つの送達ドメインの各々は、抗体、半抗体、およびscFvからなる群から独立して選択され、少なくとも一つまたは複数の前記送達ドメインは、前記少なくとも一つの酵素ドメインに関連付けられ、好ましくは、前記一つまたは複数の送達ドメインが、前記少なくとも一つの酵素ドメインに共有結合されている、マルチドメイン治療用タンパク質。
(項目41)
二つ以下の送達ドメインを含む、項目40に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目42)
前記送達ドメインのうちの一つのみが、前記少なくとも一つの酵素ドメインと関連付けられている、項目40または項目41に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目43)
前記少なくとも二つの送達ドメインのそれぞれが、酵素ドメインに共有結合している、項目40~42のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目44)
前記少なくとも二つの送達ドメインのそれぞれが、前記同じ酵素ドメインに共有結合している、項目43に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目45)
前記少なくとも二つの送達ドメインのそれぞれが、異なる酵素ドメインに共有結合している、項目43に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目46)
二つ以下の送達ドメインを含み、前記第一の送達ドメインは半抗体を含み、前記第二の送達ドメインはscFvを含む、項目40~45のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目47)
前記scFvがFcに融合されている、項目46に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目48)
前記半抗体が、そのカルボキシ末端で第一の酵素ドメインに共有結合され、および/または前記scFvは、そのカルボキシ末端でFc、および任意で第二の酵素ドメインに共有結合される、項目46または項目47に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目49)
二つ以下の送達ドメインを含み、前記第一の送達ドメインおよび第二の送達ドメインはそれぞれscFvを含む、項目40~45のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目50)
前記第一および第二のscFvの両方が、酵素ドメインに共有結合している、項目49に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目51)
N末端からC末端まで:前記第一のscFv、前記第二のscFv、および前記酵素ドメインを含む、項目49に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目52)
少なくとも一つの送達ドメインがリソソーム輸送分子に結合し、少なくとも一つの送達ドメインがトランスサイトーシスエフェクターに結合する、項目40~51のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目53)
前記リソソーム輸送分子が、CD63、ITGA7、CD9、CD63、CD81、CD82、またはCD151からなる群から選択され、前記トランスサイトーシスエフェクターは、LDL受容体、IgA受容体、トランスフェリン受容体、新生児Fc受容体、インスリン受容体、CD98、およびベイシジンからなる群から選択される、項目52に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目54)
図1C図1D図1E、または図1Fに示される構造を含む、項目40~53のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目55)
項目21~54のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目56)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含む、項目55に記載のポリヌクレオチド。
(項目57)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、前記ウイルス核酸配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である、項目55または項目56に記載のポリヌクレオチド。
(項目58)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、前記ウイルス核酸配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列であり、前記AAV核酸配列が、内部末端反復配列を含み、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子を含む、項目55~57のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
(項目59)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、前記ウイルス核酸配列が、配列番号6、配列番号7、または両方と、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子とを含む内部末端反復配列を含むアデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である、項目55~58のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
(項目60)
配列番号8および/または配列番号9として記載される配列を含む組織特異的調節因子をさらに含む、項目55~59のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
(項目61)
項目55~60のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクター。
(項目62)
前記遺伝子療法ベクターが、
任意選択的に天然ウイルス、工学的に操作されたウイルス、またはキメラウイルスである、ウイルスベクター、
項目20~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む裸のポリヌクレオチド、
任意選択的に項目20~25のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドおよび脂質を含む脂質ナノ粒子である、ポリヌクレオチド複合体、ならびに
それらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される、項目61に記載の遺伝子療法ベクター。
(項目63)
前記遺伝子療法ベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、またはアデノ関連ウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、項目61または項目62に記載の遺伝子療法ベクター。
(項目64)
前記遺伝子療法ベクターが、AAV9、Anc80、AAV2/8キメラおよび/または特定の組織、例えば肝臓またはニューロン組織に対してAAVシュードタイプである、項目62または項目63に記載の遺伝子療法ベクター。
(項目65)
項目1~20のいずれか一項に記載の方法における、項目21~54のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド、項目55~60のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または項目61~64のいずれか一項に記載の遺伝子療法ベクターの使用。
本発明は、例えば、以下の項目A1~45を提供する。
(項目A1)
患者の中枢神経系(CNS)に治療用タンパク質を送達する方法であって、前記患者の肝臓にマルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド組成物を送達して、前記マルチドメイン治療薬を、送達後の連続する数日間、数週間、または数か月間にわたって少なくとも1μg/mLの一貫した血清レベルで産生および分泌するための肝臓デポを形成し、前記CNS中に前記マルチドメイン治療用タンパク質の治療有効量を提供することを含み、
前記マルチドメイン治療用タンパク質が、CD63またはITGA7と酵素ドメインとを結合する抗体またはその抗原結合部分を含む、方法。
(項目A2)
前記治療用タンパク質がリソソーム酵素である、項目A1に記載の方法。
(項目A3)
前記リソソーム酵素がGAAである、項目A2に記載の方法。
(項目A4)
前記ヌクレオチド組成物がウイルスベクターを介して投与される、項目A1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目A5)
前記ウイルスベクターが、AAVベクターであり、任意に前記ヌクレオチド組成物が、1キログラム当たり少なくとも2×1012のウイルスゲノム(vg/kg)の用量で投与される、項目A4に記載の方法。
(項目A6)
前記抗体またはその抗原結合タンパク質が、単鎖可変断片(scFv)を含む、項目A1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目A7)
前記抗体またはその抗原結合タンパク質が、配列番号2のアミノ酸配列を含む、項目A1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目A8)
前記治療用タンパク質がヒドロラーゼを含む、項目A1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目A9)
前記治療用タンパク質がグリコシラーゼを含む、項目A1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目A10)
前記治療用タンパク質がグリコシダーゼを含む、項目A1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目A11)
前記治療用タンパク質がアルファ-グルコシダーゼを含む、項目A1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目A12)
前記治療用タンパク質が、配列番号1または配列番号13のアミノ酸配列、またはその断片を含む、項目A1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目A13)
前記ポリヌクレオチドが、配列番号11の核酸配列を含む、項目A1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目A14)
前記酵素ドメインが、アルファ-グルコシダーゼを含み、前記対象の任意のCNS組織中のグリコーゲンレベルが、処置後少なくとも九か月間、低下する、項目A1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目A15)
前記対象がポンペ病を有する、項目A1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目A16)
前記血清レベルが少なくとも2μg/mLである、項目A1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目A17)
前記抗体またはその抗原結合部分が、CD63またはITGA7の細胞外ドメインに結合する、項目A1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目A18)
一つまたは複数の送達ドメインおよび酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質であって、前記一つまたは複数の送達ドメインのうちの一つが、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に結合し、前記一つまたは複数の送達ドメインのうちの他方が、CD63またはITGA7に結合する抗体またはその抗原結合タンパク質を含む、マルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A19)
前記一つまたは複数の送達ドメインのそれぞれが、抗原結合タンパク質を含む、項目A18に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A20)
前記一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、単鎖可変断片(scFv)を含む、項目A18または項目A19に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A21)
前記一つまたは複数の送達ドメインのうち少なくとも一つが、半抗体を含む、項目A18~20のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A22)
hTfRに結合する前記送達ドメインはscFvであり、前記半抗体はCD63に結合し、前記酵素ドメインはGAAであり、GAAはCD63に結合する前記半抗体のカルボキシ末端にコンジュゲートされる、項目A21に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A23)
前記一つまたは複数の送達ドメインのそれぞれが、scFvを含む、項目A22に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A24)
少なくとも一つのscFvがFcに融合されている、項目A20~23のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A25)
前記Fcが、野生型ヒトIgG4アイソタイプ、またはその誘導体を含む、項目A24に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A26)
GAAが、Fcのカルボキシ末端にコンジュゲートされている、項目A24~25のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A27)
抗hTfR scFv、抗hCD63 scFvを含む、項目A23に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A28)
前記抗hTfR scFvおよび抗hCD63 scFvが、両方ともそのカルボキシ末端で、単一のGAA酵素に連結されている、項目A27に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A29)
前記送達ドメインが抗hTfR scFvであり、前記酵素ドメインが前記scFvのVLドメインのカルボキシ末端に連結されている、項目A18~28のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A30)
前記抗hTfR scFvのVHドメインのN末端に連結された他方の送達ドメインを含む、項目A29に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A31)
前記第二の送達ドメインが、抗hCD63 scFvである、項目A30に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A32)
前記酵素ドメインが、配列番号1として記載されるアミノ酸配列を含む、項目A18~31のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A33)
少なくとも二つの送達ドメインおよび少なくとも一つの酵素ドメインを含むマルチドメイン治療用タンパク質であって、前記二つの送達ドメインの各々は、抗体、半抗体、およびscFvからなる群から独立して選択され、少なくとも一つまたは複数の前記送達ドメインは、前記少なくとも一つの酵素ドメインに関連付けられ、好ましくは、前記一つまたは複数の送達ドメインが、前記少なくとも一つの酵素ドメインに共有結合されている、マルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A34)
図1C図1D図1E、または図1Fに示される構造を含む、項目A33に記載のマルチドメイン治療用タンパク質。
(項目A35)
項目A18~34のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(項目A36)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含む、項目A35に記載のポリヌクレオチド。
(項目A37)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、前記ウイルス核酸配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である、項目A35または項目A36に記載のポリヌクレオチド。
(項目A38)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、前記ウイルス核酸配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列であり、前記AAV核酸配列が、内部末端反復配列を含み、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子を含む、項目A35~37のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
(項目A39)
ウイルス核酸配列および遺伝子座ターゲティング核酸配列をさらに含み、前記ウイルス核酸配列が、配列番号6、配列番号7、または両方と、任意選択的に、肝特異的プロモーターまたはニューロン特異的プロモーターなどの組織特異的調節因子とを含む内部末端反復配列を含むアデノ関連ウイルス(AAV)核酸配列である、項目A35~38のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
(項目A40)
配列番号8および/または配列番号9として記載される配列を含む組織特異的調節因子をさらに含む、項目A35~39のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
(項目A41)
項目A35~40のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子療法ベクター。
(項目A42)
前記遺伝子療法ベクターが、
任意選択的に天然ウイルス、工学的に操作されたウイルス、またはキメラウイルスである、ウイルスベクター、
項目A35~40のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む裸のポリヌクレオチド、
任意選択的に項目A34~39のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドおよび脂質を含む脂質ナノ粒子である、ポリヌクレオチド複合体、ならびに
それらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される、項目A41に記載の遺伝子療法ベクター。
(項目A43)
前記遺伝子療法ベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、またはアデノ関連ウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターである、項目A41または項目A42に記載の遺伝子療法ベクター。
(項目A44)
前記遺伝子療法ベクターが、AAV9、Anc80、AAV2/8キメラおよび/または特定の組織、例えば肝臓またはニューロン組織に対してAAVシュードタイプである、項目A42または項目A43に記載の遺伝子療法ベクター。
(項目A45)
項目A1~17のいずれか一項に記載の方法における、項目A18~34のいずれか一項に記載のマルチドメイン治療用タンパク質をコードするヌクレオチド、項目A35~40のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または項目A41~44のいずれか一項に記載の遺伝子療法ベクターの使用。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8-1】
図8-2】
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
【配列表】
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