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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】吸水性樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20200101AFI20250123BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20250123BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20250123BHJP
   A61F 13/49 20060101ALN20250123BHJP
【FI】
C08J7/04 Z
D04H1/728
C08F8/14
A61F13/49
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023112887
(22)【出願日】2023-07-10
(65)【公開番号】P2024022497
(43)【公開日】2024-02-16
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】111129327
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100209060
【弁理士】
【氏名又は名称】冨所 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲らい▼泰宏
(72)【発明者】
【氏名】陳忠毅
(72)【発明者】
【氏名】李政霖
(72)【発明者】
【氏名】陳鳳儀
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/003935(WO,A1)
【文献】特表2013-540460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04- 7/06
D04H 1/00- 18/04
C08F 6/00-246/00
301/00
A61F 13/15- 13/84
D01F 8/00- 8/18
D06M 13/00- 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア構造と、
前記コア構造を完全に被覆するシェル層と、
前記シェル層の外面の少なくとも一部を被覆する繊維改質層と、
を備え
前記繊維改質層は、高分子材料の複数本の繊維を含み、
前記繊維は、前記外面に異方的に積層され、
前記高分子材料の分子量は10,000g/mole~500,000g/moleであり、
前記高分子材料の親水親油バランス値(HLB)は11~19であり、
前記繊維の直径は689nm以上820nm以下であり、
前記繊維は、エレクトロスピニングによるナノ繊維であり、
ゲルベッド浸透性(GBP)は11.4Darcy以上19.8Darcy以下であ
吸水性樹脂。
【請求項2】
前記繊維改質層は、前記シェル層の前記外面の一部に連続的に被覆される請求項1に記載の吸水性樹脂。
【請求項3】
前記繊維改質層は、前記シェル層の前記外面の複数の部分に不連続に被覆される請求項1に記載の吸水性樹脂。
【請求項4】
前記繊維改質層は、前記シェル層の前記外面に完全に被覆される請求項1に記載の吸水性樹脂。
【請求項5】
酸基含有モノマー水溶液と、架橋剤と、熱分解開始剤及び/又はレドックス開始剤を含む重合開始剤とを含む吸水性樹脂組成物にフリーラジカル重合反応を行って、架橋コア構造を形成する工程と、
前記架橋コア構造に表面架橋反応を行って、前記架橋コア構造上に、前記架橋コア構造を完全に被覆するシェル層を形成する工程と、
前記表面架橋反応を行った後、紡糸プロセスを行って、前記シェル層の外面に、前記外面の少なくとも一部を被覆しつ複数本の繊維を含む繊維改質層を形成して、水性樹脂を得る工程と、
を含み、
前記吸水性樹脂のゲルベッド浸透性(GBP)は11.4Darcy以上19.8Darcy以下であり、
前記紡糸プロセスは、
高分子材料を含む高分子溶液を調製する工程であって、前記高分子材料の分子量は10,000g/mole~500,000g/moleであり、前記高分子材料の親水親油バランス値(HLB)は11~19である、工程と、
前記高分子溶液に紡糸工程を行って前記繊維を形成する工程であって、前記繊維は、エレクトロスピニングによるナノ繊維であり、前記繊維の直径は689nm以上820nm以下である、工程と、
を含
吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリグリコール酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ナノセルロース、メチルセルロース、ポリ乳酸、ポリペプチド、及び/または、ポリウレタンを含む、請求項5に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記紡糸工程は、密閉環境で行われる、請求項5に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記紡糸工程は、前記高分子溶液に高電圧電界を加える工程を含む、請求項5に記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂に関し、特に、優れた吸水性と、液体浸透性及び透過性とを兼ね備える吸水性樹脂及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、例えば、農業又は園芸における水保持剤、建築材料における防露凝結剤、石油から水分を除去する材料、ケーブルにおける外層防水被覆剤、個人衛生用品(例えば紙おむつ、婦人衛生用品及び使い捨てタオル等)等、幅広い用途に使用され、その中でも紙おむつを主とする。
【0003】
近年、紙おむつの薄型化が進んでいる。したがって、親水性繊維(即ち、木材パルプ又は嵩密度の低い材料)の使用量を低減しながら、吸水性樹脂(即ち、嵩密度及び吸水量が高い材料)の使用量を増加させることがその発展形態となる。紙おむつの吸収体構造における吸水性樹脂の割合を高めることにより、紙おむつの薄型化を達成する。しかし、紙おむつの実際の使用状況を考慮すると、吸水性樹脂の使用量が増加し、且つ親水性繊維の使用量が減少すると、大量の水分を吸収する吸水性樹脂は、吸水後のコロイドゲルの強度が柔らかくなることから、ゲルブロッキング(Gel Blocking)の欠陥をもたらし、これにより紙おむつの液体拡散性が著く低下し、紙おむつの性能に影響を与える。
【0004】
吸水性樹脂のゲルブロッキングを防止する従来の方法としては、ゲルブロッキングを防止するためにUV光で重合反応を行い、二次表面架橋反応を行う方法(米国特許US10,335,768)、多価金属塩(例えば、硫酸アルミニウム)を吸水性樹脂と混合した後に加熱反応を行うことにより、ゲルブロッキング現象を効果的に軽減し、液体を吸収した吸水性樹脂の浸透性を向上させる方法(日本公開特許JP2001-523289A)、多価金属塩水溶液を粒子サイズが5μm~500μmの吸水性樹脂の表面に添加した後に、この吸水性樹脂を加熱することにより、ゲルブロッキング現象を改善する方法(日本特許JP2509087)、水溶性多価金属の粉末、粘着剤、及び吸水性樹脂を混合することにより、液体を吸収した吸水性樹脂の拡散性及び液体浸透性を向上させる方法(中国公開特許CN1747751A、WIPO公開特許WO2004/113452A、又は米国公開特許US20170050170A)、酸基含有モノマー水溶液において、アミノ基含有アゾ化合物を発泡剤として使用することにより、製造される吸水性樹脂に優れた浸透性を持たせる方法(米国特許US5985944)、酸基含有モノマー水溶液に界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)を添加することにより、モノマー水溶液中の溶存ガスの溶解度を低下させる方法(日本特許JP6532894)、又は、窒素原子がプロトン化できる窒素含有ポリマー(例えば、N-ビニルカルボキサミド)又はその溶液を吸水性樹脂に添加することにより、吸水性樹脂の液体浸透性を向上させる方法(米国公開特許US20050245684A)が挙げられる。
【0005】
また、米国特許US7777093には、吸水性樹脂の表面に熱可塑性ポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエステル等のポリマー)を塗布することにより、吸水性樹脂の液体浸透性を向上できることが記載されている。しかしながら、吸水性樹脂の原料を追加すると、原料の安全性に疑問が生じるだけでなく、全体コストの増加や、その他の物理的特性の低下を招くこともある。
【0006】
また、吸水性樹脂の液体浸透性を向上させるために、ポリビニルアミンやポリアリルアミン等を組み合わせたポリアミン重合体を用いて表面処理工程を行ってもよい(WIPO公開特許WO2006082189A)。しかしながら、ポリアミン被覆粒子の製造の難易度やコスト、その化学的特性と物理的特性は、いずれも吸水性樹脂の吸水率に関連するため、理想的な吸水性樹脂は、設計が難しい組み合わせ結果である。
【0007】
これに鑑みて、従来の吸水性樹脂及びその製造方法におけるゲルブロッキングの欠陥をさらに改善するために、吸水性樹脂及びその製造方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、吸水性樹脂のシェル層表面に繊維改質層を設けることにより、従来のゲルブロッキングの欠陥を効果的に解消することができる吸水性樹脂を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、紡糸プロセスで吸水性樹脂の繊維改質層を形成することにより、樹脂粒子間の液体流動性を向上させ、吸水性樹脂の液体浸透性及び透過性を向上させる吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様によれば、コア構造と、コア構造を完全に被覆するシェル層と、シェル層の外面の少なくとも一部を被覆する繊維改質層とを備え、繊維改質層は、複数本の繊維を含み、これらの繊維は、外面に異方的に積層される吸水性樹脂を提供する。
【0011】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の繊維改質層は、シェル層の外面の一部に連続的に被覆される。
【0012】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の繊維改質層は、シェル層の外面の複数の部分に不連続に被覆される。
【0013】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の繊維改質層は、シェル層の外面に完全に被覆される。
【0014】
本発明の一態様によれば、まず、酸基含有モノマー水溶液と、架橋剤と、熱分解開始剤及び/又はレドックス開始剤を含む重合開始剤とを有する吸水性樹脂組成物に、フリーラジカル重合反応を行って、架橋コア構造を形成する工程と、その後、架橋コア構造に表面架橋反応を行って、架橋コア構造上に、架橋コア構造を完全に被覆するシェル層を形成する工程と、表面架橋反応を行った後、紡糸プロセスを行って、シェル層の外面に、シェル層の外面の少なくとも一部を被覆し、且つ複数本の繊維を含む繊維改質層を形成して、吸水性樹脂を得る工程とを含む吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の紡糸プロセスは、まず高分子材料を含む高分子溶液を調製してから、高分子溶液に紡糸工程を行ってこれらの繊維を形成する工程を含む。
【0016】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の高分子材料の分子量は10,000g/mole~500,000g/moleである。
【0017】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の高分子材料の親水親油バランス値(HLB)は11~19である。
【0018】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の紡糸工程は、エレクトロスピニングによって行われる。
【0019】
本発明の幾つかの実施例によれば、前述の繊維の直径は1000nm以下である。
【0020】
本発明の吸水性樹脂及びその製造方法を適用すれば、表面架橋反応と紡糸プロセスによって吸水性樹脂のコアシェル構造のシェル層及びシェル層の表面に設けられる繊維改質層を形成することにより、製造される吸水性樹脂に優れた吸水性を持たせるだけでなく、優れた液体浸透性及び透過性を持たせることができる。ここで、樹脂粒子間の隙間を効果的に増加させ、その中での液体の流動性を向上させ、液体浸透性及び透過性を向上させるように、紡糸プロセスでは、エレクトロスピニング技術を用いてナノ繊維を形成してよい。エレクトロスピニング技術により、形成されるナノ繊維は直径が均一となるため、繊維改質層の空隙構造を効果的に調整することで、従来のゲルブロッキングの欠陥を解消し、吸水性樹脂の用途要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例及びその利点をより完全に理解するために、以下、図面を参照しながら説明する。強調すべきなのは、様々な特徴は、図示を目的としたものにすぎず、縮尺どおりに描かれていない。関連図面の内容は以下のとおりである。
図1】本発明の幾つかの実施例による吸水性樹脂の製造方法を示すフローチャートである。
図2A】本発明の実施例1の吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
図2B】本発明の実施例3の吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
図2C】本発明の実施例5の吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
図2D】本発明の実施例8の吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
図2E】本発明の比較例1の吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例の製造及び使用を詳細に説明する。しかしながら、実施例に提供される多くの応用可能な発明概念が様々な特定の内容において実施されてよいことを理解できる。議論される特定の実施例は、説明のみに用いられ、本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
本発明は、エレクトロスピニング技術を用いてナノ繊維を製造し、ナノ繊維を吸水性樹脂の表面に被覆することにより、吸水性を維持しつつ、製造される吸水性樹脂の液体浸透性及び透過性を向上させる吸水性樹脂の製造方法を提供する。本発明の吸水性樹脂を紙おむつ等の吸収用製品に適用する場合、従来のゲルブロッキングの欠陥を効果的に回避し、吸収用製品の吸水性を維持することができる。ここで、本発明では、まず吸水性樹脂組成物にフリーラジカル重合反応を行って水コロイドゲルを形成し、そして小さな水コロイドゲルにせん断し、次いで、小さな水コロイドゲルを温度100℃~250℃の熱風で乾燥し、粉砕し、篩別して、架橋コア構造を得て、その後、架橋コア構造に表面架橋反応を行い、前述のナノ繊維を被覆して、本発明の吸水性樹脂を得る。
【0024】
本発明の吸水性樹脂は、エレクトロスピニングにより、吸水性樹脂の表面に、空隙構造が制御できるナノ繊維を形成することができ、それにより吸水性樹脂の表面に繊維改質層があり、樹脂粒子間の隙間が増加し、よって、液体の流動性を効果的に向上させ、従来のゲルブロッキングの欠陥を解消できるとともに、吸水性樹脂が依然として優れた吸水性を持つことができる。
【0025】
図1を参照されたい。それは本発明の幾つかの実施例による吸水性樹脂の製造方法のフローチャートを示す。方法100では、操作110に示すように、吸水性樹脂組成物にフリーラジカル重合反応を行って、架橋コア構造を形成する。ここで、吸水性樹脂組成物は、酸基含有モノマー水溶液、架橋剤、及び重合開始剤を含む。
【0026】
酸基含有モノマー水溶液は、酸基含有モノマー化合物を水に溶解させたものである。酸基含有モノマー化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、及び/又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、酸基含有モノマー化合物は、酸基及び不飽和二重結合を有する他の水溶性モノマーを選択的に含んでよい。例えば、酸基及び不飽和二重結合を有する他の水溶性モノマーは、マリン酸、フマル酸、無水マレイン酸、フマル酸無水物、及び/又は酸基及び不飽和二重結合を有する他の適切な水溶性モノマーを含んでよい。他の実施例において、酸基含有モノマー化合物は、不飽和二重結合を有する他の親水性モノマーを選択的に含んでよい。例えば、不飽和二重結合を有する他の親水性モノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、2-カルボキシエチルアクリレート、2-カルボキシエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ジメチルアミンアクリルアミド、塩化プロピレンアクリロイルアミノトリメチルアンモニウム、及び/又は不飽和二重結合を有する他の適切な親水性モノマーを含んでよい。親水性モノマーの添加量は、吸水性樹脂の物理的特性を損なわない限り、特に制限されない。前述のモノマーの選択は、特に一種に限定されず、複数種のモノマーを併用してもよい。
【0027】
幾つかの実施例において、酸基含有モノマー化合物のカルボン酸基は、得られる吸水性樹脂のpHを中性又は微酸性に制御するように、部分的に中和されることができる。中和に用いられる中和剤は、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素の水酸化物又は炭酸化合物であってよい。例えば、中和剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、又はアンモニア化合物を含むが、これらに限定されず、且つ一種を単独で又は複数種を組み合わせて使用してよい。酸基含有モノマー化合物のカルボン酸基は、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩に、部分的に中和される。幾つかの実施例において、酸基含有モノマー水溶液の中和濃度は、45モル%~85モル%、好ましくは50モル%~75モル%であってよい。酸基含有モノマー水溶液の中和濃度が前述の範囲にある場合、製造される吸水性樹脂は、皮膚に触れても人体に害を及ぼさないように、中性又は微酸性となる。幾つかの実施例において、酸基含有モノマー水溶液のpHは、5.5以上である。酸基含有モノマー水溶液のpHが5.5以上である場合、形成される架橋コア構造中の残留モノマーの量が少なく、これは吸水性樹脂の物理的特性の向上に寄与する。
【0028】
フリーラジカル重合反応を行う際の酸基含有モノマー水溶液の濃度は、特に限定されないが、好ましくは20重量%~55重量%、より好ましくは30重量%~45重量%である。酸基含有モノマー水溶液の濃度がこの範囲にある場合、重合によって形成される水コロイドゲルは、適度な柔らかさと粘度を有するため、優れた加工性を有し、また水コロイドゲル中の残留モノマーの量が少ないため、得られる吸水性樹脂は優れた物理的特性を有する。
【0029】
幾つかの実施例において、酸基含有モノマー水溶液は、水溶性高分子を選択的に含んでよい。幾つかの具体例において、水溶性高分子は、部分けん化又は完全けん化ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、デンプン及び/又はデンプン誘導体(例えば、メチルセルロース、アクリル酸メチルセルロース及び/又はエチルセルロース)を含んでよいが、これらに限定されない。好ましくは、水溶性高分子は、デンプン及び/又は部分けん化又は完全けん化ポリビニルアルコールであってよい。酸基含有モノマー水溶液の使用量を100重量%としたら、水溶性高分子の使用量は、0重量%~20重量%であってよく、好ましくは0重量%~10重量%、より好ましくは0重量%~5重量%である。水溶性高分子の使用量がこの範囲にある場合、吸水性樹脂の製造コストが削減されるが、その吸水性が影響されないため、依然として用途要求を満たすことができる。
【0030】
架橋剤は、少なくとも2つの不飽和二重結合基を有する化合物、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物、他の適切な架橋剤、又は上記化合物の任意の組み合わせを含んでよい。フリーラジカル反応を行う際に、架橋剤は、形成される架橋コア構造に適度な架橋度を持たせることができ、得られる吸水性樹脂の加工性を向上させることができる。幾つかの具体例において、少なくとも2つの不飽和二重結合基を有する化合物は、N,N’-ビス(2-プロペニル)アミン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、アクリル酸プロピレン、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、グリセロールトリメタクリレート、グリセロールにエチレンオキシドを付加したトリアクリレート、グリセロールにエチレンオキシドを付加したトリメタクリレート、トリメチロールプロパンにエチレンオキシドを付加したトリアクリレート、トリメチロールプロパンにエチレンオキシドを付加したトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、N,N,N-トリス(2-プロペニル)アミン、エチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチレングリセリントリアクリレート、ジエチルポリオキシエチレングリセリントリアクリレート、及び/又はジプロピレントリグリコールトリアクリレートを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、少なくとも2つの不飽和エポキシ基を有する化合物は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及び/又はジグリセロールポリグリシジルエーテルを含んでよいが、これらに限定されない。吸水性樹脂組成物中の固形分の合計含有量を100重量%としたら、架橋剤の使用量は、0.001重量%~5重量%であってよく、好ましくは0.01重量%~3重量%である。架橋剤の使用量がこの範囲にある場合、フリーラジカル重合反応によって形成される架橋コア構造は優れた機械的性質を有し、機械加工しやすいとともに、製造される吸水性樹脂は依然として優れた吸水性を有することができる。
【0031】
重合開始剤は分解してフリーラジカルを生じ、酸基含有モノマー化合物のフリーラジカル重合反応を誘発し、そして水コロイドゲルを形成して、架橋コア構造を得ることができる。本発明の重合開始剤は、熱分解開始剤、レドックス開始剤、他の適切な重合開始剤、又は上記材料の任意の組み合わせを含んでよいが、これらに限定されない。幾つかの具体例において、熱分解開始剤は、過酸化水素、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、過酸化アシルアミン、過硫酸塩(例えば、アンモニウム塩又はアルカリ金属塩等)、及び/又はアゾ化合物(例えば、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩もしくは2,2´-アゾビス(N,N-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩等)を含んでよい。幾つかの具体例において、レドックス開始剤は、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸塩、及び/又はアスコルビン酸もしくは第1鉄塩を含んでよい。
【0032】
重合開始剤が熱分解開始剤とレドックス開始剤との両方を含む場合、レドックス開始剤が先に分解してフリーラジカルを生じ、フリーラジカル重合反応における第1段階の重合反応を誘発することができる。同時に、第1段階の重合反応による反応熱が熱分解開始剤を分解させて、第2段階の重合反応を誘発し、フリーラジカル重合反応の反応性を向上させることができる。
【0033】
中和されたアクリル酸塩を100重量%としたら、重合開始剤の使用量は、0.001重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%である。重合開始剤の重量が0.001重量%~10重量%である場合、フリーラジカル重合反応は適切な反応性を有し、制御しやすく、且つ形成される水コロイドゲルの重合度が高すぎることを回避し、塊状のコロイドブロックが形成することを回避することができる。
【0034】
本発明のフリーラジカル重合反応は、従来のバッチ式反応容器で行ってもよいし、コンベア式反応器で行ってもよい。フリーラジカル重合反応を行った後、形成された水コロイドゲルを、まず粉砕機で直径2.0mm以下の小さな水コロイドゲルにせん断し、ベーキング乾燥させ、更に篩別する。好ましくは、小さな水コロイドゲルの直径は1.0mm以下である。
【0035】
せん断を行う際に、水コロイドゲルの粒径は、好ましくは2.00mm以下、より好ましくは0.05mm~1.50mmである。粒径が2.00mmより大きい水コロイドゲルを、再び反応器に戻してもう一回粉砕する。粒径が2.00mmより大きい水コロイドゲルに後続のベーキングを行う際に、熱伝導効果が低いため、完成品に過剰な残留モノマーが多くなりやすく、且つその物理的特性が悪くなる。粒径が0.05mmより小さい水コロイドゲルをベーキング、粉砕処理した後、完成品中の微粉量が増加しやすく、完成品の品質が低下する。本発明によれば、アクリル酸塩コロイドゲルの粒子の大きさの分布が狭いほど、ベーキングした後のコロイドゲルの物理的特性を最良の状態にすることができるだけでなく、後続のベーキングの時間及び温度の制御も容易になる。
【0036】
ベーキング温度は、100℃~180℃であってよい。ベーキング温度が100℃未満であると、ベーキング時間が長すぎて不経済である。ベーキング温度が180℃を超えると、温度が高すぎて架橋剤が早めに架橋反応しやすいため、後続の乾燥過程において、架橋度が高すぎて残留モノマーを効果的に除去することができない。
【0037】
ベーキング乾燥を行った後、篩別する。篩別する固定粒径は、好ましくは0.06mm~1.00mm、より好ましくは0.10mm~0.850mmである。粒径が0.06mmより小さい微粉であれば、完成品の粉塵量を増加しやすく、粒径が1.00mmより大きい粒子であれば、完成品の吸水速度を低下しやすい。本発明によれば、アクリル酸塩重合体の粒度の大きさの分布が狭いほど好ましい。
【0038】
ベーキング乾燥後に粉砕して、固定粒径を篩別したら、本発明の架橋コア構造を得ることができる。
【0039】
引き続き図1を参照されたい。操作110を行った後、操作120に示すように、架橋コア構造に表面架橋反応を行う。製造された架橋コア構造は、溶解しない親水性重合体であり、その内部に均一な架橋構造を有する。一般的に、後に得られる吸水性樹脂の品質(例えば、吸収速度、コロイド強度、抗ケーキング性、及び/又は液体浸透性等)を改善するために、架橋コア構造の表面に更に架橋する。この表面架橋処理は、酸基と反応できる多官能性架橋剤を利用するものであり、これまでにも多くの特許が提供され、例えば、吸水性樹脂と架橋剤を有機溶剤に分散させて表面架橋処理を行うもの(JP1981-131608A、JP1982-44627A、JP1983-42602A、JP1983-117222A)、架橋剤と架橋剤溶液を無機粉末で吸水性樹脂に直接混合して処理するもの(JP1985-163956A、JP1985-255814A)、架橋剤を添加した後に蒸気処理するもの(JP1989-113406A)、有機溶剤、水、及び多価アルコールで表面処理を行うもの(JP1989-292004A、米国特許US6346569)、有機溶液、水、エーテル(ether)化合物を使用するもの(JP1990-153903A)等が挙げられる。これらの表面処理方法は、吸収速度及び圧力下での吸水倍率を向上させることができるが、保持力が低下しすぎる悪い結果を招き、実用性が低下する。
【0040】
本発明において、表面処理と同時に反応できる表面架橋剤は、ポリオール、ポリアミン、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物、アルキレンカーボネート、及び/又は他の適切な化合物を含むが、これらに限定されない。例えば、多価アルコールは、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及び/又はプロピレングリコールを含んでよく、多価アミンは、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、及び/又はトリエチレンジアミンを含んでよく、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及び/又はジグリセロールポリグリシジルエーテルを含んでよく、アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネート、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、及び/又は1,3-ジオキサン-2-オンを含んでよい。前述の表面架橋剤は、一種を単独で又は複数種を組み合わせて使用してよい。吸水性樹脂組成物中の固形分の総含有量を100重量%としたら、表面架橋剤の使用量は、0.001重量%~10重量%、好ましくは0.005重量%~5重量%である。表面架橋剤の使用量がこの範囲にあると、前述の表面架橋の効果が著しく向上するとともに、吸水性樹脂が依然として良好な吸水性を有することができ、良好な物理的特性を有する。
【0041】
表面架橋剤を塗布する際には、表面架橋剤の種類に応じて、直接添加してもよいし、表面架橋剤水溶液を調製して添加してもよいし、表面架橋剤の親水性有機溶剤水溶液を調製して添加してもよい。ここで、親水性有機溶剤は、溶液を形成できれば、特に限定されない。幾つかの具体例において、親水性有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、アセトン、メチルエーテル、及び/又はジエチルエーテル等であってよい。好ましくは、親水性有機溶剤は、メタノール及び/又はエタノールであってよい(米国特許US6849665)。
【0042】
表面架橋反応を行った後、表面架橋剤は、架橋コア構造の外面にシェル層を形成し、且つ架橋コア構造を完全に被覆することができる。その後、図1の操作130と操作140に示すように、シェル層の外面に繊維改質層を形成するように、紡糸プロセスを行って、本発明の吸水性樹脂を得る。
【0043】
紡糸プロセスに際しては、延伸法、テンプレート合成法、自己組織化法、及びエレクトロスピニング法等の技術によってナノ繊維を有する繊維改質層を形成してよい。その中で、エレクトロスピニング法は、使用できる原料の範囲が広く、且つその装置を操作しやすい。エレクトロスピニングの製造方法は、ポリマー溶液に高圧電界を印加することにより、ポリマー溶液を紡糸針先から噴射し、溶剤が揮発した後、溶液中のポリマーが沈降して硬化し、ナノ次元の繊維材料を得るものである。
【0044】
エレクトロスピニング法により、ナノ繊維を効率的に製造することができる。その原理については、非ニュートン流体が高圧電界の作用下で、紡糸ノズルの出口でテイラーコーン構造を形成することができ、噴射された溶液の液滴がミクロンスケールからナノスケールの繊維を形成することができ、不規則な形状の不織布のような外観をしているナノ繊維を収集トレイから受け取ることができる。ここで、噴射流速は、通常、0.001ml/min~0.1ml/minである。
【0045】
一般に、エレクトロスピニング法は、開放環境下で行われる。しかしながら、開放環境では、エレクトロスピニングによって形成されたナノ繊維が様々な環境因子(例えば、環境の温度、湿度及び/又は風速等)に影響され、ナノ繊維の外観が影響され、且つ形成されたナノ繊維が直径の不均一な欠陥を有する(例えば、大量のビーディング(beading)を含む繊維が生成される)可能性がある。
【0046】
開放環境の影響を効果的に解決するために、本発明は、環境因子を効果的に制御するために、密閉環境でエレクトロスピニングを行う。本発明のエレクトロスピニング装置において、紡糸針先及び収集トレイが密閉された箱体に設けられるため、密閉環境においてナノ繊維を形成することができる。
【0047】
本発明の紡糸プロセスは、まず高分子溶液を調製してから、分子溶液に紡糸工程を行って、シェル層の外面にナノ繊維を有する繊維改質層を形成することを含む。形成された各ナノ繊維は、いずれも均一な直径を有する。幾つかの具体例において、形成されたナノ繊維の直径は1000nm以下である。
【0048】
高分子溶液は、高分子材料を溶剤に溶解したものである。本発明のナノ繊維を効果的に製造するために、高分子材料の重量平均分子量(M)は、10,000g/mole~500,000g/moleであってよく、好ましくは50,000g/mole~500,000g/moleである。高分子材料の重量平均分子量がこの範囲にある場合、調製される高分子溶液は適切な粘度と機械的性質を有し、ナノ繊維の連続的且つ安定した形成に寄与し、形成されるナノ繊維が切れにくく、ビーディング(beading)欠陥の発生を回避することができる。幾つかの実施例において、高分子材料の親水親油バランス値は11~19であってよい。高分子材料の親水親油バランス値がこの範囲にある場合、後続のエレクトロスピニングによって形成される繊維改質層は、吸水性樹脂の液体浸透性及び透過性を効果的に向上させ、用途要求を満たすことができる。好ましくは、高分子材料の親水親油バランス値は13~18である。
【0049】
幾つかの具体例において、高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン(FVPF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリグリコール酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ナノセルロース、メチルセルロース、ポリ乳酸、ポリペプチド、ポリウレタン、ポリオキシエチレン、他の適切な高分子材料、又は上記材料の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0050】
高分子溶液の溶剤は、前述の高分子材料を溶解させることができ、紡糸工程の時に効率よく蒸発できれば、特に限定されない。幾つかの具体例において、高分子溶液の溶剤は、アルコール系溶剤、アセトン系溶剤、酸もしくはエステル系溶剤、他の適切な溶剤、又は上記溶剤の任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。例えば、アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジフェニルメタノール等が挙げられ、アセトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、又はジイソブチルケトン等が挙げられ、酸もしくはエステル系溶剤としては、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、又はフタル酸ジプロピル等が挙げられ、その他の適当な溶剤としては、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ブロモメタン、ブロモエタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、又は水等が挙げられる。前述の溶剤は、溶剤における高分子材料の溶解度に応じて、一種を単独で又は複数種を組み合わせて使用してよい。
【0051】
高分子溶液中の固形分の総含有量を100重量%としたら、溶剤の使用量は、60重量%~95重量%、好ましくは5重量%0~90重量%である。溶剤の使用量がこの範囲にある場合、高分子材料を効率的に溶解させることができ、高分子溶液が適切な含有量の固形分を有し、それはナノ繊維の形成に寄与する。
【0052】
幾つかの具体例において、使用される高分子溶液は、ポリアクリロニトリル(M=100,000g/mole)をN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させることで形成されてよく、高分子溶液の濃度は、10重量%であってよい。ここで、高分子溶液の調製は当業者によく知られているため、ここでは説明を省略する。
【0053】
高分子溶液を調製した後、密閉式装置を用いて紡糸工程を行う。前述の高分子材料の種類によって、エレクトロスピニングに必要な電圧を決定することができる。幾つかの実施例において、高分子材料がポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、又はゼラチン等を含む場合、ナノ繊維を効果的に形成するように、本発明の紡糸工程において印加される高電圧電界の電圧は、1000ボルト~30000ボルトであってよい。高電圧電界の電圧がこの範囲にある場合、高分子材料をナノ繊維として効果的に紡糸することができ、紡糸工程におけるエネルギーコストが低い。
【0054】
紡糸工程を行う際、高分子溶液は、シリンジによって注入され、そして管路を介して密閉箱体中の紡糸用金属針頭に輸送される。その後、前述の高圧電界下で、マイクロシリンジポンプを起動して、金属針頭で紡糸してナノ繊維を形成し、ナノ繊維は、金属針頭の下方に設けられる収集トレイから受け取られる。
【0055】
高分子材料の加工性の違いによって、紡糸工程における紡糸ノズルでの流速(即ち、高分子溶液の噴射速度)を調整することができる。高分子材料は、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリオキシエチレン、又はゼラチン等を含む場合、紡糸ノズルでの流速は、0.001ml/min~1.0ml/min、好ましくは0.001ml/min~0.1ml/minであってよい。紡糸ノズルでの流速がこの範囲にある場合、紡糸工程は経済的に有益であり、溶剤が効率よく蒸発し、均一な直径のナノ繊維を形成することができ、ビーディング欠陥の発生を回避することができる。
【0056】
紡糸工程の時間は特に限定されず、経済性や繊維改質層の吸水性樹脂の吸水性への影響によって調整してよい。幾つかの具体例において、紡糸工程の時間は、例えば、10min~180minであってよく、好ましくは20min~120min、より好ましくは30min~60minである。これらの具体例において、得られる吸水性樹脂は、液体浸透性及び透過性が効果的に向上するとともに、良好な吸水性を有する。
【0057】
本発明の紡糸工程で形成されるナノ繊維は、均一な直径を有する。幾つかの実施形態では、形成されるナノ繊維の直径は、10nm~1000nmであってよく、好ましくは50nm~1000nmである。ナノ繊維の直径がこの範囲にある場合、高分子溶液は、金属針頭でのゲルブロッキングの欠陥を引き起こしにくく、形成される吸水性樹脂の透過性を効果的に向上させることができる。
【0058】
前述の紡糸工程を行う際に、表面架橋反応によって形成されるシェル層を有する吸水性粒子は、密閉箱体中の収集トレイ上に敷かれるため、紡糸工程によって形成されるナノ繊維は、吸水性粒子の表面(即ち、シェル層の外面)を被覆し、吸水性粒子の表面に繊維改質層を形成して、本発明の吸水性樹脂を形成することができる。ここで、形成されるナノ繊維は、吸水性粒子の表面に異方的に堆積される。
【0059】
製造される吸水性樹脂において、ナノ繊維は、シェル層の外面を完全に被覆する必要がなくて吸水性樹脂の液体浸透性及び透過性を効果的に向上でき、且つ吸水性樹脂が良好な吸水性をも有する。これにより、ナノ繊維によって形成される繊維改質層は、シェル層の外面の一部のみを被覆してよく、ナノ繊維によって形成される繊維改質層は、連続した膜層であってもよく、不連続な膜層であってもよい。換言すれば、シェル層の表面の特定の範囲内において、この特定の範囲に付着した繊維改質層は、連続した膜層であってもよく、不連続な膜層であってもよい(即ち、繊維改質層は、この特定の範囲の一部の領域のみを被覆し、且つこれらの領域は互いに繋がっていない)。
【0060】
他の実施例において、ナノ繊維によって形成される繊維改質層は、シェル層を完全に被覆する。これらの実施例において、シェル層の外面が繊維改質層で完全に被覆されるため、形成される吸水性樹脂は、より優れた液体浸透性及び透過性を有するとともに、良好な吸水性を兼ね備える。
【0061】
本発明の紡糸プロセスにおいて、形成されるナノ繊維は、表面架橋処理後に吸水性の高い吸水性粒子の表面に結合されることができ、それにより製造される吸水性樹脂は優れた液体浸透性、透過性、及び吸水性を同時に備える。これにより、形成される吸水性樹脂は、多量の水分を吸収した後、ゲルブロッキング現象が発生せず、且つ良好な吸水性を有する。本発明について、本発明の条件を満たすナノ繊維の特性を利用することにより、液体浸透性及び透過性の高い吸水性樹脂を製造することができ、様々な衛生用品、農業用及び食品鮮度保持用の吸水剤に適用される。
【0062】
本発明で製造される吸水性樹脂、及びこの吸水性樹脂で製造される衛生用品は、紙おむつ、特に低濃度パルプの紙おむつ(fluffless;大量の吸水性樹脂を同時に使用する)及び成人用紙おむつに優先的に適用することができる。従来の吸水性樹脂は、紙おむつに適用される場合、吸水性樹脂の吸水性を低下させずに、液体浸透性及び透過性を向上させるという利点を有さず、しかし本発明で製造される吸水性樹脂は、この問題を効果的に解決することができる。
【0063】
本発明の目的は、吸水性樹脂を製造するための簡便な製造方法を提供することであり、このような方法で製造される吸水性樹脂は、吸水性樹脂の吸水性を低下させずに、液体浸透性及び透過性を向上させることができる。本発明の製造方法は、(a)酸基モノマー水溶液のフリーラジカル重合反応によって吸水性樹脂の内部架橋構造を形成する工程と、(b)表面架橋剤を添加して表面架橋処理を行い、吸水性樹脂のシェル層構造を形成する工程と、(c)ナノ繊維を形成するための高分子溶液を調製する工程と、(d)エレクトロスピニングプロセスを用いてナノ繊維を吸水性樹脂のシェル層表面に付着させる工程と、を少なくとも含む。
【0064】
以下、実施例を用いて本発明の応用を説明するが、それは本発明を制限するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができる。
【0065】
(吸水性粒子の調製)
【0066】
調製例1
【0067】
まず、2000c.c.の三角フラスコに、濃度48%の水酸化ナトリウム水溶液(437.5g)を540gのアクリル酸及び583.2gの水に徐々に添加する。アクリル酸に対する水酸化ナトリウムの滴下割合を0.85~0.95の範囲内とし、滴下時間を2時間とし、フラスコ内の中和反応系の温度を15℃~40℃に維持することにより、モノマー濃度が42重量%の水溶性不飽和モノマー溶液を得て、その中で70モル%のアクリル酸がアクリル酸ナトリウムに中和される。
【0068】
その後、水溶性不飽和モノマー溶液に0.9gのN,N’-メチレンビスアクリルアミドを加え、温度を20℃に維持する。次に、0.3gの過酸化水素水、3.6gの亜硫酸水素ナトリウム、及び3.6gの過硫酸アンモニウム開始剤を加えて、反応を行う。
【0069】
反応終了後、生成された水コロイドゲルをカッターミルで粉砕し、粒径が2mm以下の小さいコロイドゲルを篩別する。その後、130℃で乾燥する。2時間乾燥した後、0.1mm~0.85mmの固定粒径の篩で篩別し、粉末状吸水性樹脂を得る。下記保持力の評価方法で測定した結果、調製例1の粉末状吸水性樹脂の保持力は41.2g/gである。
【0070】
粉末状吸水性樹脂(200g)を秤取し、エチレングリコールと、1,4-ブタンジオール(台湾プラスチック社製)と、メタノールとの割合が1/1/0.5である混合水溶液(5g)を加え、150℃で1時間加熱処理する。冷却したら、調製例1の吸水性粒子を得て、その保持力は32.7g/gである。
【0071】
また、下記評価方法で調製例1の吸水性粒子の吸水性を評価し、調製例1の吸水性粒子の圧力下での吸水倍率が22.5g/gであり、残留モノマーが378ppmであり、T20が380秒であり、U20が26.6g/gであり、GBPが7.0Darcyである。
【0072】
調製例2
【0073】
まず、2000c.c.の三角フラスコに、濃度48%の水酸化ナトリウム水溶液(437.5g)を540gのアクリル酸及び583.2gの水に徐々に添加する。アクリル酸に対する水酸化ナトリウムの滴下割合を0.85~0.95の範囲内とし、滴下時間を2時間とし、フラスコ内の中和反応系の温度を15℃~40℃に維持することにより、モノマー濃度が42重量%の水溶性不飽和モノマー溶液を得て、その中で70モル%のアクリル酸がアクリル酸ナトリウムに中和される。
【0074】
その後、水溶性不飽和モノマー溶液に1.3gのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量538)を加え、温度を20℃に維持する。次に、0.3gの過酸化水素水、3.6gの亜硫酸水素ナトリウム、及び3.6gの過硫酸アンモニウム開始剤を加えて、反応を行う。
【0075】
反応終了後、生成した水コロイドゲルをカッターミルで粉砕し、粒径が2mm以下の小さいコロイドゲルを篩別する。その後、130℃で乾燥する。2時間乾燥した後、0.1mm~0.85mmの固定粒径の篩で篩別し、粉末状吸水性樹脂を得る。下記保持力の評価方法で測定した結果、調製例2の粉末状吸水性樹脂の保持力は41.6g/gである。
【0076】
粉末状吸水性樹脂(200g)をを秤取し、エチレングリコールと、1,4-ブタンジオールと、メタノールとの割合が1/1/0.5である混合水溶液(5g)を加え、150℃で1時間加熱処理する。冷却したら、調製例2の吸水性粒子を得て、その保持力は33.7g/gである。
【0077】
また、下記評価方法で調製例2の吸水性粒子の吸水性を評価し、調製例2の吸水性粒子の圧力下での吸水倍率が24.9g/gであり、残留モノマーが433ppmであり、T20が300秒であり、U20が27.8g/gであり、GBPが6.9Darcyである。
【0078】
吸水性樹脂の調製
【0079】
実施例1
【0080】
まず、実施例1の高分子溶液を調製し、この高分子溶液は、ポリビニルアルコール(M94,000g/mole、Merck社製、型番341584)を水に溶解させ、濃度を10重量%に調整したものである。その後、調製例1の吸水性粒子(100g)をエレクトロスピニング収集トレイ上に置き、調製した高分子溶液をシリンジに注入する。次に、高圧電界を10,000ボルトに制御し、微量シリンジポンプの流速を0.1ml/minに調整して、エレクトロスピニングプロセスを行う。15分間の紡糸時間を経たら、実施例1の吸水性樹脂を収集トレイから得ることができ、そして下記の評価方法で実施例1の吸水性樹脂の吸水性を評価し、その評価結果は表1に示され、ここでは説明を省略する。
【0081】
実施例2~実施例10
【0082】
実施例2~実施例10では、実施例1の吸水性樹脂と同様の製造方法を用いるが、相違点は、実施例2~実施例5ではエレクトロスピニングのパラメータを変更し、実施例6~実施例10では高分子溶液の組成とエレクトロスピニングのパラメータを変更することである。ここで、実施例6~実施例10で用いられる高分子溶液は、ポリビニルアルコール(M94,000g/mole;Merck社製、型番341584)を水に溶解させ、濃度を10重量%に調整したものである。実施例2~実施例10の条件と評価結果は表1に示され、ここでは説明を省略する。
【0083】
比較例1
【0084】
まず、2000c.c.の三角フラスコに、濃度48%の水酸化ナトリウム水溶液(437.5g)を540gのアクリル酸及び583.2gの水に徐々に添加する。アクリル酸に対する水酸化ナトリウムの滴下割合を0.85~0.95の範囲内とし、滴下時間を2時間とし、フラスコ内の中和反応系の温度を15℃~40℃に維持することにより、モノマー濃度が42重量%の水溶性不飽和モノマー溶液を得て、その中で70モル%のアクリル酸がアクリル酸ナトリウムに中和される。
【0085】
その後、水溶性不飽和モノマー溶液に0.9gのN,N’-メチレンビスアクリルアミドを加え、温度を20℃に維持する。次に、水溶性不飽和モノマー溶液にフェノール(100ppm)を加え、そして0.3gの過酸化水素水、3.6gの亜硫酸水素ナトリウム、及び3.6gの過硫酸アンモニウム開始剤を加えて、反応を行う。
【0086】
反応終了後、生成した水コロイドゲルをカッターミルで粉砕し、粒径が2mm以下の小さいコロイドゲルを篩別する。その後、130℃で乾燥する。2時間乾燥した後、0.1mm~0.85mmの固定粒径の篩で篩別し、粉末状吸水性樹脂を得て、保持力が41.2g/gであると測定した。
【0087】
粉末状吸水性樹脂(200g)を秤取し、エチレングリコールと、1,4-ブタンジオールと、メタノールとの割合が1/1/0.5である混合水溶液(5g)を加え、150℃で1時間加熱処理する。冷却したら、比較例1の吸水性樹脂を得る。その評価結果は表1に示され、ここでは説明を省略する。
【0088】
比較例2
【0089】
比較例2は、比較例1の吸水性樹脂と同様な製造方法を用いるが、相違点は、比較例2では、0.2gのシリカ(Evonik社製、品番A200)を更に使用して得られる吸水性樹脂に表面処理を行うことである。その評価結果は表1に示され、ここでは説明を省略する。
【0090】
評価方法
【0091】
以下の評価方法においては、特に説明がない限り、室温(例えば、21℃~25℃)、相対湿度35%~55%の環境下で行い、評価前に吸水性樹脂を十分に混合する必要がある。
【0092】
1.繊維直径
【0093】
繊維直径は、透過型電子顕微鏡を用いて、当業者によく知られている方法で測定する。
【0094】
2.保持力
【0095】
保持力(Centrifuge Retention Capacity;CRC)は、欧州不織布協会(European Disposables and Nonwovens Association;EDANA)が規定したERT 441.3(10)の測定方法に従って試験する。
【0096】
3.圧力下での吸水倍率
【0097】
圧力下での吸水倍率(Absorption Against Pressure;AAP)は、EDANAが規定したERT 442.3(10)の測定方法に従って試験する。4.9kPaの圧力下で、濃度が0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液に対して圧力下での吸水倍率を60分間測定する場合、好ましくは15g/g以上、より好ましくは20g/g~30g/gのものを優先的に選択する。
【0098】
4.残留モノマー
【0099】
残留モノマー(Residual Monomers;RAA)は、EDANAが規定したERT 410.3(10)の測定方法に従って試験する。
【0100】
5.T20及びU20
【0101】
T20及びU20は、動的有効浸透率及び摂取量動力学試験法(K(t)試験法)を用いて測定する。
【0102】
測定方法としては、時間依存性有効浸透率(K(t))、吸水性樹脂粒子からなる水コロイド層、又はこのような吸収性粒子を含む構造の圧力下での摂取量動力学を測定する。この方法の目的は、ポリマーが高濃度で吸収製品中に存在し、且つ機械的圧力下にある場合に、吸水性樹脂粒子からなる水コロイドや、それらを含む吸収製品等の構造の、液体を全体的に分配する能力を評価することである。Darcyの法則と定常流動法は、ここで有効浸透率の表現の計算に用いられ、その詳細は当業者によく知られている。例えば、この測定方法は、P.K.Chatterjee, Elsevier著、Absorbency(1982)、42~43ページ、及びChemical Engineering,第II巻、第3版、J.M.Coulson及びJ.F.Richardson,Pergamon Press(1978)、122~127ページを参照してよい。
【0103】
前述の方法で使用される装置は、時間依存性浸透率試験機と呼ばれ、BRAUN GmbH製、型番03-080578の製品であってよい。
【0104】
T20は、前述のK(t)試験法で用いられる計算式で測定して計算される。試験時間は、0秒から、サンプルが20g/gの摂取量に達するまでの時間(単位は秒)であり、その試験方法は、中国公開特許CN103619291Aに記載の内容に従って試験する。
【0105】
U20は、前述のK(t)試験法で用いられる計算式で計算される。20分経過後のサンプルの摂取量(単位:g/g)を分析し、試験方法は、中国公開特許CN103619291Aに記載の内容に従って試験する。
【0106】
6.自由膨潤ゲルベッド浸透性(FSGBP)
【0107】
自由膨潤ゲルベッド浸透性(FSGBP)とは、吸水性樹脂粒子が自由に膨潤する条件下で、ゲルベッド浸透性試験装置によって得られる液体の浸透量(単位:Darcy)である。「自由膨潤」とは、吸水性樹脂が膨潤拘束荷重を受けずに膨潤することを許容することを意味し、0psiの膨潤圧力下でのゲルベッド浸透性(GBP)とも呼ばれ、試験方法は、米国特許US8822582に記載の内容に従って試験する。
【0108】
【表1】
【0109】
表1から分かるように、調製例1及び調製例2に比べて、エレクトロスピニングプロセスによって製造される実施例1~実施例10の吸水性樹脂は、T20、U20、及びGBPの評価結果がいずれも向上したため、優れた液体浸透性及び透過性を有する。比較例1では、表面架橋反応においてフェノールを添加することにより、吸水性樹脂の液体浸透性を向上させることができたが、その吸水性が低下し、優れた透過性を持たせることができなかった。比較例2では、シリカ粉体を用いて吸水性樹脂に表面処理を行うことにより、吸水性樹脂の液体浸透性を向上させることができたが、その圧力下での吸収倍率が大幅に低下し、良好な液体浸透性を有さない。明らかに、本発明は、エレクトロスピニングによって繊維改質層を形成して、吸水性樹脂に表面処理を行うことにより、製造される吸水性樹脂は、良好な液体浸透性及び透過性に加えて、良好な吸水性を有する。
【0110】
図2A図2Eを参照されたい。それらはそれぞれ、本発明の実施例1、実施例3、実施例5、実施例8、及び比較例1の吸水性樹脂の走査型電子顕微鏡写真を示す。その中で、図2A図2Dの拡大倍率は1000倍であり、その縮尺ゲージは50.0μmを表し、図2Eの拡大倍率は120倍であり、その縮尺ゲージは300μmを表す。図2A図2Dの吸水性樹脂は、図2E(比較例1の吸水性樹脂)に比べて、表面にナノ繊維が積層された繊維改質層を有し、且つ吸水性樹脂のシェル層の一部が繊維改質層で被覆されていない。更に、表1の評価結果から分かるように、吸水性樹脂の液体浸透性及び透過性がいずれも向上したことから、本発明の繊維改質層が表面シェル層の一部を被覆するだけで、得られる吸水性樹脂は、良好な液体浸透性及び透過性を有し、且つ良好な吸水性を兼ね備えることができる。
【0111】
上記実施例から分かるように、本発明の優れた液体浸透性及び透過性を兼ね備える高吸水性樹脂及びその製造方法の利点は、エレクトロスピニング技術を用いて高吸水性樹脂に表面処理プロセスを行い、ナノ繊維の高空隙率及び高比表面積の特性に基づいて、高吸水性樹脂に液体浸透性及び透過性を同時に持たせることができ、例えば超薄型ベビー用紙おむつ又は成人用紙おむつ等、様々な個人衛生用品に適用できることである。
【0112】
本発明は、実施形態に基づいて以上のように開示されたが、それは本発明を制限するものではなく、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行うことができ、よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義されたものを基準とする。
【符号の説明】
【0113】
100 方法
110、120、130、140 操作
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E