(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】接合方法および接合構造体
(51)【国際特許分類】
B29C 65/02 20060101AFI20250123BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20250123BHJP
B32B 37/06 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B29C65/02
B32B15/08 P
B32B37/06
(21)【出願番号】P 2023172028
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2024-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩一郎
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-171620(JP,A)
【文献】特開2019-119213(JP,A)
【文献】特開2012-006528(JP,A)
【文献】特開2021-098374(JP,A)
【文献】特開2019-181946(JP,A)
【文献】特開2017-105106(JP,A)
【文献】特開2012-084438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02
B29C 65/06
B32B 15/08
B32B 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属酸化物粒子クラスターが形成される第1面と、第2金属酸化物粒子クラスターが形成される第2面とを有し、前記第1面から前記第2面までの厚さが1mm以下である金属部材を、熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材と、熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材との間に配置する工程と、
前記第1部材と前記第2部材との間で前記金属部材を加熱および加圧し、前記第1面を前記第1樹脂と接合させ、前記第2面を前記第2樹脂と接合させる工程と、を備え
、
前記金属部材は、前記第1部材および前記第2部材の間に位置する複数の接合部分と、前記複数の接合部分の間を接続する接続部分とを備え、
前記第1部材および前記第2部材は、前記複数の接合部分において前記金属部材と接合される接合方法。
【請求項2】
前記金属部材は、前記金属部材に電磁波を照射する、前記金属部材に電流を流す、および、前記金属部材に磁場を印加することの少なくとも一つによって加熱される、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記金属部材は
、前記第1部材および前記第2部材の間から延出する延出部分を
さらに備え、
前記金属部材は、前記延出部分に電磁波を照射する、前記延出部分に電流を流す、および、前記延出部分に磁場を印加することの少なくとも一つによって加熱される、請求項1に記載の接合方法。
【請求項4】
前記
複数の接合部分を前記第1部材および前記第2部材に接合した後に、前記延出部分を除去する工程をさらに備える、請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記接続部分は、前記複数の接合部分のいずれかと前記延出部分の間をさらに接続する、請求項3に記載の接合方法。
【請求項6】
前記複数の接合部分は、前記第2部材の外周部に接合する外周接合部分と、前記第2部材の前記外周部から離れた部分に接合する内側接合部分とを含み、
前記接続部分は、前記外周接合部分と前記内側接合部分の間を接続す
る、請求項1に記載の接合方法。
【請求項7】
前記接続部分は、前記第1部材または前記第2部材と接合されない、請求項1から6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記金属部材は、前記第1部材および前記第2部材の間において、前記複数の接合部分および前記接続部分とは異なる箇所を除いて配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記第1部材と前記第2部材の間に配置する前に、前記金属部材を予熱する工程をさらに備える、請求項1
から6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項10】
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は、前記第1面または前記第2面に沿う方向に延びる強化繊維を含む繊維強化樹脂から構成される、請求項1から
6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項11】
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維を備える、請求項
10に記載の接合方法。
【請求項12】
前記第1樹脂および前記第2樹脂の少なくとも一方は、芳香族ポリエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、またはポリエーテルサルホン(PES)である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項13】
前記金属部材は、鋼材、アルミニウム材、アルミニウム合金材、チタン材、チタン合金材、ニッケルチタン合金材、銅材、または銅合金材を備える、請求項1から
6のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項14】
熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材と、
熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材と、
前記第1部材の前記第1樹脂と接合する第1金属酸化物粒子クラスターが形成される第1面と、前記第2部材の前記第2樹脂と接合する第2金属酸化物粒子クラスターが形成される第2面とを有し、前記第1面から前記第2面までの厚さが5μm以上1mm以下である金属部材と、を備え
、
前記金属部材は、前記第1部材および前記第2部材の間に位置する複数の接合部分と、前記複数の接合部分の間を接続する接続部分とを備え、
前記第1部材および前記第2部材は、前記複数の接合部分において前記金属部材と接合される接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法および接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機などの軽量化のため、繊維強化樹脂を用いた構造用部材が採用されつつある。例えば、強化繊維に樹脂を含浸させたプリプレグを加熱加圧成形することによって繊維強化樹脂(FRP;Fiber Reinforced Plastics)材が形成される。FRP材は、例えばエポキシ接着剤によって金属材と接着される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の先行技術では、エポキシ接着剤で接着することによる強度低下が懸念される。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、軽量で剛性に優れた接合構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の接合方法は、第1金属酸化物粒子クラスターが形成される第1面と、第2金属酸化物粒子クラスターが形成される第2面とを有し、第1面から第2面までの厚さが1mm以下である金属部材を、熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材と、熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材との間に配置する工程と、第1部材と第2部材との間で金属部材を加熱および加圧し、第1面を第1樹脂と接合させ、第2面を第2樹脂と接合させる工程と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、接合構造体である。この接合構造体は、熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材と、熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材と、第1部材の第1樹脂と接合する第1金属酸化物粒子クラスターが形成される第1面と、第2部材の第2樹脂と接合する第2金属酸化物粒子クラスターが形成される第2面とを有し、第1面から第2面までの厚さが5μm以上1mm以下である金属部材と、を備える。
【0008】
本発明のある態様によれば、軽量で剛性に優れた接合構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る接合構造体の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、第1実施形態に係る接合方法を模式的に示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る接合構造体の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る補強部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る補強部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る補強部材の構成を概略的に示す上面図である。
【
図7】第2実施形態に係る補強部材の構成を概略的に示す側断面図である。
【
図8】頂部の格子枠形状形状を模式的に示す上面図である。
【
図9】
図9(a),(b)は、プリプレグシートの形成方法を模式的に示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る補強部材の成形方法を模式的に示す図である。
【
図11】
図11(a),(b)は、プリプレグシートの配向方向を模式的に示す図である。
【
図12】実施例に係る補強部材を示す上面図である。
【
図13】本体部材と補強部材の間の接合部を模式的に示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る金属部材の構成を概略的に示す上面図である。
【
図15】変形例に係る補強部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図16】変形例に係る補強部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図17】変形例に係る補強部材の成形方法を模式的に示す図である。
【
図18】第3実施形態に係る接合構造体の構成を概略的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の寸法比と一致しない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る接合構造体200の構成を概略的に示す断面図である。接合構造体200は、第1部材210と、第2部材220と、金属部材230とを備える。接合構造体200は、第1部材210と第2部材220との間が金属部材230によって接合された構造体であり、金属部材230が接着材または接合材として機能する。
【0012】
第1部材210は、熱可塑性の第1樹脂を含む。第1部材210は、全体が第1樹脂で構成される樹脂材、または、第1樹脂が含浸される第1強化繊維を含む繊維強化樹脂材である。第2部材220は、熱可塑性の第2樹脂を含む。第2部材220は、全体が第2樹脂で構成される樹脂材、または、第2樹脂が含浸される第2強化繊維を含む繊維強化樹脂材である。第1樹脂と第2樹脂は、同じ樹脂材料であってもよいし、異なる樹脂材料であってもよい。同様に、第1強化繊維と第2強化繊維は、同じ強化繊維材料であってもよいし、異なる強化繊維材料であってもよい。第1強化繊維および第2強化繊維の少なくとも一方は、金属部材230の第1面232または第2面234に沿う方向に延びるように設けることができる。第1強化繊維および第2強化繊維の少なくとも一方は、編成されてもよい。
【0013】
第1樹脂および第2樹脂の少なくとも一方は、熱可塑性のエンジニアリングプラスチックであり、例えば、芳香族ポリエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、またはポリエーテルサルホン(PES)である。第1強化繊維および第2強化繊維の少なくとも一方は、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維である。
【0014】
金属部材230は、第1部材210と接合する第1面232と、第2部材220と接合する第2面234とを備える。金属部材230の第1面232から第2面234までの厚さは、5μm以上2mm以下であり、例えば10μm以上1mm以下であり、例えば50μm以上0.5mm以下である。金属部材230として、例えば、鋼材、アルミニウム材、アルミニウム合金材、チタン材、チタン合金材、ニッケルチタン合金材、銅材、または銅合金材を用いることができる。
【0015】
第1面232には、第1樹脂と接合するための第1金属酸化物粒子クラスター236が形成される。第2面234には、第2樹脂と接合するための第2金属酸化物粒子クラスター238が形成される。第1金属酸化物粒子クラスター236および第2金属酸化物粒子クラスター238の少なくとも一方は、金属部材230の表面をレーザ照射などによって加熱し、改質することによって形成できる。金属酸化物粒子クラスターは、例えば、加熱前の金属部材230を構成する金属材料の酸化物で構成される。金属酸化物粒子クラスターは、例えば、金属材料が局所的に溶融することによって形成される粒子状の金属酸化物が表面に固着したものである。金属酸化物粒子クラスターの粒径は、例えば5nm以上500nm以下であり、例えば50nm以上200nm以下である。金属酸化物粒子クラスターの最大高さは、例えば50nm以上3μm以下であり、例えば100nm以上2μm以下であり、例えば200nm以上1μm以下である。
【0016】
第1金属酸化物粒子クラスター236は、第1部材210に含まれる第1樹脂と化学結合するとともに、粒子クラスターの凹凸に軟化した第1樹脂が入り込むことによって第1樹脂と物理的に結合する。第1金属酸化物粒子クラスター236を設けることにより、第1部材210と金属部材230との間の接合強度を向上できる。同様に、第2金属酸化物粒子クラスター238は、第2部材220に含まれる第2樹脂と化学結合するとともに、粒子クラスターの凹凸に軟化した第2樹脂が入り込むことによって第2樹脂と物理的に結合する。第2金属酸化物粒子クラスター238を設けることにより、第2部材220と金属部材230との間の接合強度を向上できる。第1部材210と第2部材220との間を金属酸化物粒子クラスターを介して接合することにより、第1樹脂と第2樹脂を融着して直接的に接合する場合やエポキシ接着剤を介して接合する場合に比べて、接合強度を飛躍的に向上できる。
【0017】
図2(a)~(c)は、第1実施形態に係る接合方法を模式的に示す図である。まず、
図2(a)に示されるように、第1部材210と第2部材220との間に金属部材230を配置する。金属部材230は、接合部分240と、第1延出部分242と、第2延出部分244とを備える。接合部分240は、第1部材210と第2部材220との間に位置する部分である。接合部分240の両面には、第1金属酸化物粒子クラスター236および第2金属酸化物粒子クラスター238が形成される。
【0018】
第1延出部分242および第2延出部分244は、第1部材210と第2部材220との間から延出してはみ出す部分である。第1延出部分242は、例えば第1部材210に沿って延出する部分である。第2延出部分244は、例えば第2部材220に沿って延出する部分である。第1延出部分242および第2延出部分244の両面には、第1金属酸化物粒子クラスター236および第2金属酸化物粒子クラスター238が形成されなくてもよい。
図2(a)に示される例では、第1延出部分242と第2延出部分244との間に接合部分240が設けられる。なお、金属部材230は、第1延出部分242および第2延出部分244の一方のみを備え、他方を備えなくてもよい。金属部材230は、第1延出部分242および第2延出部分244を備えず、接合部分240のみを備えてもよい。
【0019】
次に、
図2(b)に示されるように、第1部材210と第2部材220との間で金属部材230の接合部分240を矢印Fで示されるように加圧する。また、金属部材230の加圧中に金属部材230を加熱する。金属部材230は、電磁波を照射したり、電流を流したりすることによって加熱できる。例えば、第1延出部分242および第2延出部分244の少なくとも一方にレーザ光や赤外光などの電磁波を照射してもよい。例えば、第1延出部分242および第2延出部分244に電源を接続し、金属部材230に電流を流して抵抗加熱してもよい。その他、第1延出部分242および第2延出部分244の少なくとも一方の周囲にコイルを配置して高周波磁場を印加し、金属部材230に渦電流を発生させる高周波誘導加熱によって金属部材230を加熱してもよい。金属部材230を加熱しながら加圧することにより、第1部材210の第1樹脂が軟化して第1金属酸化物粒子クラスター236と接合し、第2部材220の第2樹脂が軟化して第2金属酸化物粒子クラスター238と接合する。
【0020】
次に、
図2(c)に示されるように、第1部材210と第2部材220との間に接合される接合部分240から、第1延出部分242および第2延出部分244を切り離して除去する。第1延出部分242および第2延出部分244は、第1部材210または第2部材220と接合しない非接合部分であり、接合に寄与しないためである。これにより、
図1に示される接合構造体200ができあがる。なお、第1延出部分242および第2延出部分244は除去されなくてもよく、第1延出部分242および第2延出部分244の少なくとも一方が接合部分240につながった状態のままであってもよい。
【0021】
金属部材230は、第1部材210と第2部材220との間に配置される前に予熱されてもよい。
【0022】
本実施形態によれば、第1部材210と第2部材220との間の接合強度を向上させることができる。また、金属部材230の厚みを2mm以下、好ましくは1mm以下とすることにより、金属部材230の追加による重量の増加を抑制できる。また、金属部材230の厚みを薄くすることにより、第1部材210または第2部材220の表面が曲面状であってもフィルム状の金属部材230を第1部材210または第2部材220の表面に沿わせることが容易となる。また、第1部材210または第2部材220に編成された強化繊維が含まれる場合に、強化繊維の編み目などに起因する微細な凹凸に沿ってフィルム状の金属部材230を配置することが容易となる。これにより、繊維強化樹脂である第1部材210または第2部材220と金属部材230との間の密着性を高めることができ、接合強度を向上できる。
【0023】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る接合構造体10の構成を概略的に示す斜視図である。接合構造体10は、航空機のエンジンの外周に取り付けられるブロッカードアである。ブロッカードアは、エンジンのバイパス気流を遮って逆噴射させるための可動部材である。実施の形態では、接合構造体10としてブロッカードアを例示するが、本実施の形態に係る接合構造体10の用途は特に限定されない。本実施の形態に係る接合構造体10は、任意の形状および用途の構造用部材に適用することができる。
【0024】
接合構造体10は、本体部材12と、補強部材14とを備える。本体部材12は、板状部材であり、逆噴射時にバイパス気流がぶつかる表面12aと、表面12aとは反対側の裏面12bとを有する。本体部材12は、全体として緩やかに湾曲する形状を有する。本体部材12は、厚みの薄い板状の部材であるため、表面12aに加わる荷重によって変形(例えば撓み)が生じやすい。補強部材14は、本体部材12の裏面12bに取り付けられ、本体部材12の表面12aの変形(例えば撓み)を抑制し、本体部材12の剛性を高める。補強部材14は、凹凸が形成された板状の部材であり、凹凸形状によって変形(例えば撓み)を抑制する。
【0025】
従来、軽量かつ高剛性の構造用部材として、ハニカムコアを有するサンドイッチパネルが使用されている。ハニカムコアは、その材料自体が高価であり、任意の形状に加工することも容易ではないため、加工にコストがかかる。本実施の形態では、本体部材12および補強部材14を繊維強化樹脂(FRP;Fiber Reinforced Plastics)で構成し、本体部材12に補強部材14を接合することによって、ハニカムコアを用いずに軽量かつ高剛性の接合構造体10を実現する。本体部材12と補強部材14との間は、例えば、第1実施形態と同様に、金属酸化物粒子クラスターが表面に形成された金属部材(
図3には不図示)によって接合される。
【0026】
図4~
図7は、第2実施形態に係る補強部材14の構成を概略的に示す図である。補強部材14は、凹凸が形成された板状部材16からなる。板状部材16は、第1面16aと、第1面16aとは反対側の第2面16bとを有する。
図4は、第1面16aを見たときの斜視図であり、
図5は、第2面16bを見たときの斜視図である。
図6は、第1面16aを見たときの上面図である。
図7は、
図6のV-V線断面に対応する側断面図である。
【0027】
図面において、補強部材14の厚み方向をz方向とし、補強部材14の長手方向をx方向とし、x方向およびz方向に直交する方向をy方向としている。これらの方向は、実施の形態の理解を助けるために設定されるものであり、接合構造体10や補強部材14の製造時や使用時における方向を何ら制限するものではない。また、図面において、凹凸形状を分かりやすく示すために凹凸形状の変曲部にも実線を付している。
【0028】
板状部材16の外縁18の形状は、例えば四角形であり、例えば長方形である。板状部材16の外縁18は、長手方向(例えばx方向)に延びる長辺18aと、長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる短辺18bと、長辺18aと短辺18bの間に設けられる角部18cとを有する。板状部材16の外縁18の形状は特に限られず、台形、菱形、平行四辺形であってもよいし、三角形、五角形または六角形といった任意の多角形であってもよい。板状部材16の角部18cは、隅切りされてもよい。角部18cは、直線状に隅切りされてもよいし、円弧状に隅切りされてもよい。
【0029】
板状部材16は、全体として均一な厚みt(
図7参照)を有するように構成される。板状部材16の厚みtは、特に限られないが、例えば0.5mm以上10mm以下であり、好ましくは1mm以上5mm以下である。
【0030】
板状部材16は、外周部20と、凸部22と、複数の凹部24とを備える。
【0031】
外周部20は、板状部材16の外縁18を規定する部分である。外周部20は、板状部材16の外縁18に沿ったフレーム形状または閉ループ形状を有する。外周部20は、凸部22や複数の凹部24に比べて厚み方向の形状変化が少ない部分である。外周部20は、本体部材12の裏面12bと接合される部分であり、本体部材12の裏面12bに沿った形状を有する。本体部材12の裏面12bが緩やかに湾曲する形状であれば、外周部20は、全体として緩やかに湾曲する形状を有する。本体部材12の裏面12bが平坦であれば、外周部20は、全体として平坦な形状を有する。
【0032】
凸部22は、外周部20の内側に形成される。凸部22は、第1面16aの平面視(
図6参照)において外周部20が形成される領域よりも内側の領域に形成される。凸部22は、外周部20に対して厚み方向に突出する部分である。凸部22は、第1面16a側に突出し、第1面16aが凸、第2面16bが凹となるように形成される。凸部22は、例えば、板状部材16の大部分を占めるように形成される。凸部22の外縁26によって囲われる面積S1は、板状部材16の外縁18によって囲われる面積Sの50%以上であり、好ましくは70%以上または80%以上である。
【0033】
凸部22の外縁26は、長辺18aに沿って長手方向(例えばx方向)に延びる第1区間26aと、短辺18bに沿って長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる第2区間26bと、第1区間26aと第2区間26bの間を円弧状に延びる第3区間26cとを有する。第3区間26cの曲率半径は、板状部材16の角部18cの曲率半径よりも大きい。図示する例において、凸部22の外縁26は、四角形の四隅を円弧状にした形状を有する。
【0034】
凸部22の頂部28は、外周部20からの厚み方向の高さh1(
図7参照)が一定となるように構成される。外周部20が平坦である場合、頂部28も平坦となるように構成される。外周部20が緩やかに湾曲する場合、頂部28も緩やかに湾曲するように構成される。外周部20から頂部28までの厚み方向の高さh1は、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。外周部20から頂部28までの厚み方向の高さh1は、板状部材16の厚みtより大きいことが好ましく、例えば5mm以上であり、例えば10mm以上である。
【0035】
外周部20と頂部28の間には、外側傾斜部30(
図7参照)が設けられる。外側傾斜部30は、外周部20から頂部28に向けて高さが単調に増加するように形成される。外側傾斜部30は、外周部20から頂部28に向けて傾きが急激に変化しないように形成され、滑らかな曲面のみによって形成されることが好ましい。外側傾斜部30は、板状部材16の外縁18に直交する断面視において、例えば曲率半径が20mm以上または30mm以上の滑らか曲線によって構成される。
【0036】
複数の凹部24は、凸部22の内側に形成される。複数の凹部24は、第1面16aの平面視(
図6参照)において凸部22の外縁26よりも内側の領域に形成される。複数の凹部24は、例えば、第1面16aの平面視(
図6参照)において頂部28の外縁よりも内側の領域に形成される。複数の凹部24は、頂部28に対して厚み方向に凹むように形成される。複数の凹部24は、第2面16b側に突出し、第1面16aが凹、第2面16bが凸となるように形成される。複数の凹部24は、頂部28において格子状に配列される。複数の凹部24は、板状部材16の長手方向(例えばx方向)に配列されるとともに、長手方向と交差する方向(例えばy方向)に配列される。複数の凹部24は、頂部28において放射状に配列されてもよい。
【0037】
複数の凹部24のそれぞれの外縁32(
図6参照)は、長辺18aに沿って長手方向(例えばx方向)に延びる第1区間32aと、短辺18bに沿って長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる第2区間32bと、第1区間32aと第2区間32bの間を円弧状に延びる第3区間32cとを有する。第3区間32cの曲率半径は、板状部材16の角部18cの曲率半径よりも大きい。図示する例において、凹部24の外縁32は、四角形の四隅を円弧状にした形状を有する。複数の凹部24のそれぞれの外縁32は、長手方向(例えばx方向)のサイズと長手方向と交差する方向(例えばy方向)のサイズが同程度である。つまり、第1区間32aの長さは、第2区間32bの長さと同程度であり、例えば、第2区間32bの長さの0.8倍~1.2倍程度である。
【0038】
複数の凹部24のそれぞれの底部34は、本体部材12の裏面12bと接合される部分である。底部34は、頂部28からの厚み方向の深さh2(
図7参照)が一定となるように構成される。外周部20が平坦である場合、外周部20によって規定される仮想平面B(
図7参照)上に複数の凹部24のそれぞれの底部34が位置するように構成される。外周部20が緩やかに湾曲する場合、外周部20によって規定される曲面上に複数の凹部24のそれぞれの底部34が位置するように構成される。頂部28から底部34までの厚み方向の高さh2は、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。頂部28から底部34までの厚み方向の高さh2は、例えば5mm以上であり、例えば10mm以上である。
【0039】
複数の凹部24のそれぞれの底部34は、四角形または四角形の四隅を丸めた形状を有する。底部34を四角形または四角形に近似した形状とすることにより、底部34を円形とする場合に比べて、底部34が占める面積を増やすことができる。これにより、本体部材12と頂部28の接合面積を大きくすることができ、本体部材12と補強部材14の接合強度を高めることができる。
【0040】
頂部28と底部34の間には、内側傾斜部36(
図7参照)が設けられる。内側傾斜部36は、底部34から頂部28に向けて高さが単調に増加するように形成される。内側傾斜部36は、底部34から頂部28に向けて傾きが急激に変化しないように形成され、滑らかな曲面のみによって形成されることが好ましい。内側傾斜部36は、板状部材16の外縁18に直交する断面視において、例えば曲率半径が20mm以上または30mm以上の滑らか曲線によって構成される。
【0041】
頂部28は、複数の凹部24が格子状に配列されることにより、複数の凹部24の外縁32を囲う格子枠形状を有する。
図8は、頂部28の格子枠形状を模式的に示す上面図であり、頂部28の格子枠形状を太線によって模式的に示している。頂部28は、長手方向(例えばx方向)に延びる複数の第1梁38a,38bと、長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる複数の第2梁40a,40bと、円弧状に延びる複数の角部42とを備える。複数の第1梁38a,38bは、複数の凹部24の外側に位置する外側第1梁38aと、複数の凹部24の間に位置にする内側第1梁38bとを含む。複数の第2梁40a,40bは、複数の凹部24の外側に位置する外側第2梁40aと、複数の凹部24の間に位置する内側第2梁40bとを含む。外側第1梁38aと外側第2梁40aの間は、円弧状に延びる角部42によって接続される。内側第1梁38bの両端は、外側第2梁40aに接続される。内側第2梁40bの両端は、外側第1梁38aに接続される。頂部28は、第1梁38a,38b、第2梁40a,40bおよび角部42によって形成される格子枠形状を有することにより、長手方向(例えばx方向)および長手方向に交差する方向(例えばy方向)の双方の荷重変化に対応可能となる。
【0042】
補強部材14は、繊維強化樹脂から構成され、例えば熱可塑性繊維強化樹脂から構成される。補強部材14は、強化繊維に樹脂を含浸させて形成されるプリプレグシートを金型で加熱および加圧して賦形成形することにより形成される。強化繊維として、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維を用いることができる。強化繊維は、接合部や切込部のない連続繊維であることが好ましく、板状部材16の凹凸形状に沿って連続して延びる強化繊維を用いることが好ましい。強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂として、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)やポリエーテルケトンケトン(PEKK)などのエンジニアリングプラスチックを用いることができる。なお、本体部材12も補強部材14と同様の繊維強化樹脂から構成されることができ、補強部材14と同様の熱可塑性繊維強化樹脂から構成されることができる。本体部材12または補強部材14は、熱硬化性繊維強化樹脂から構成されてもよい。この場合、強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0043】
図9(a),(b)は、プリプレグシートの形成方法を模式的に示す図である。
図9(a)は、プリプレグシートの形成に用いるプリプレグテープ50を示す。プリプレグテープ50は、単一方向に配向された複数本の強化繊維52に熱可塑性樹脂54を含浸させたものである。複数本の強化繊維52は、プリプレグテープ50の長手方向Aに延びるように配向されている。熱可塑性樹脂54は、複数本の強化繊維52の間の隙間を充填しており、複数本の強化繊維52の相対位置が変化しないように複数本の強化繊維52から構成される繊維束を固定している。プリプレグテープ50の幅wは、特に限られないが、例えば1mm以上20mm以下であり、例えば2mm以上10mm以下である。プリプレグテープ50の長さLは、補強部材14の外形サイズよりも大きく、例えば0.5m以上または1m以上である。プリプレグテープ50の厚みは、例えば0.1mm以上2mm以下であり、例えば0.2mm以上1mm以下である。
【0044】
図9(b)は、プリプレグテープ50を用いて形成されるプリプレグシート60を示す。プリプレグシート60は、第1方向A1に延びる複数本の第1プリプレグテープ56と、第1方向A1と交差する第2方向A2に延びる複数本の第2プリプレグテープ58とを編成することにより形成される。第1プリプレグテープ56および第2プリプレグテープ58のそれぞれは、
図9(a)に示すプリプレグテープ50と同様に構成される。
図9(b)に示すプリプレグシート60において、第1方向A1と第2方向A2は直交している。つまり、第1方向A1を0度方向とすると、第2方向A2は90度方向である。
【0045】
複数本の第1プリプレグテープ56の間には第1隙間d1がある。第1隙間d1は、第1プリプレグテープ56の幅w1よりも小さい。第1隙間d1は、例えば第1プリプレグテープ56の幅w1の1%以上50%以下であり、好ましくは5%以上25%以下である。同様に、複数本の第2プリプレグテープ58の間には第2隙間d2がある。第2隙間d2は、第2プリプレグテープ58の幅w2よりも小さい。第2隙間d2は、例えば第2プリプレグテープ58の幅w2の1%以上50%以下であり、好ましくは5%以上25%以下である。第1プリプレグテープ56の幅w1は、第2プリプレグテープ58の幅w2と同じであってもよいし、異なってもよい。第1隙間d1は、第2隙間d2と同じであってもよいし、異なってもよい。
【0046】
プリプレグシート60は、互いに交差する第1プリプレグテープ56と第2プリプレグテープ58の間が固定されていない。そのため、複数本の第1プリプレグテープ56は、互いに対して第2方向A2に変位可能であり、第1隙間d1が可変となるように構成される。同様に、複数本の第2プリプレグテープ58は、互いに対して第1方向A1に変位可能であり、第2隙間d2が可変となるように構成される。
【0047】
プリプレグシート60の樹脂重量含有率(wt%)は、50%以下であり、例えば40%以下、35%以下、30%以下、または25%以下である。プリプレグシート60の樹脂重量含有率を低くすることにより、補強部材14の剛性を高めることができる。プリプレグシート60を形成するプリプレグテープ50の樹脂重量含有率(wt%)は、プリプレグシート60の樹脂重量含有率と同等であってもよく、50%以下であり、例えば40%以下、35%以下、30%以下、または25%以下である。
【0048】
図9(b)に示すプリプレグシート60は、綾織となるように第1プリプレグテープ56および第2プリプレグテープ58が編成されている。プリプレグシートの編成方法は綾織に限られず、平織や朱子織などの任意の他の編成方法を用いてプリプレグシートが形成されてもよい。また、プリプレグシートは、三方向以上に延びるプリプレグテープを用いて編成されてもよく、例えば、第1方向(例えば0度方向)に延びる複数の第1プリプレグテープと、第1方向と交差する第2方向(例えば+60度方向)に延びる複数の第2プリプレグテープと、第1方向および第2方向と交差する第3方向(例えば-60度方向)に延びる複数の第3プリプレグテープとによって編成されてもよい。
【0049】
プリプレグシートは、単一方向繊維に樹脂が含浸されたプリプレグテープを用いずに編成されてもよい。プリプレグシートは、例えば連続繊維を用いて編成された連続繊維シートの全体に熱可塑性樹脂を含浸させることによって形成されてもよい。例えば、第1方向(例えば0度方向)に延びる複数本の第1連続繊維と、第1方向と交差する第2方向(例えば90度方向)に延びる複数本の第2連続繊維とを平織、綾織、朱子織などで編成して連続繊維シートが形成されてもよい。プリプレグシートは、このような連続繊維シートに熱可塑性樹脂を含浸させることにより形成されてもよい。この場合、プリプレグシートの互いに交差する第1連続繊維と第2連続繊維の間が樹脂で固定される。
【0050】
図10は、第2実施形態に係る補強部材14の成形方法を模式的に示す図である。補強部材14を成形するための金型62を用意し、金型62の上型64と下型66の間に複数枚のプリプレグシート60a,60b,60cを積層させて配置する。上型64は、板状部材16の第1面16aに対応した凹凸形状を有し、下型66は、板状部材16の第2面16bに対応した凹凸形状を有する。なお、上型64と下型66の上下関係は問わず、上下を逆にして使用してもよい。
【0051】
複数枚のプリプレグシート60a~60cのそれぞれは、
図9(b)に示すプリプレグシート60と同様に構成される。複数枚のプリプレグシート60a~60cは、第1プリプレグシート60aと、第2プリプレグシート60bと、中間プリプレグシート60cとを含む。第1プリプレグシート60aは、上型64と接触するシートであり、板状部材16の第1面16aを構成する。第2プリプレグシート60bは、下型66と接触するシートであり、板状部材16の第2面16bを構成する。中間プリプレグシート60cは、第1プリプレグシート60aと第2プリプレグシート60bの間に配置される。
図10の例では、5枚のプリプレグシートを積層しており、1枚の第1プリプレグシート60aと、1枚の第2プリプレグシート60bと、3枚の中間プリプレグシート60cとを積層している。なお、プリプレグシートの積層数は特に問わず、4枚以下であってもよいし、6枚以下であってもよい。プリプレグシートの積層数は、プリプレグシートの厚みと成形される補強部材14の厚みtとに応じて適宜設定することができる。
【0052】
複数枚のプリプレグシート60a~60cは、プリプレグシート60a~60cを構成するプリプレグテープの配向方向が互いに異なるように配置されてもよい。
図11(a),(b)は、プリプレグシート60a~60cの配向方向を模式的に示す図である。
図11(a)は、第1プリプレグシート60aおよび第2プリプレグシート60bの配向方向を示す。第1プリプレグシート60aおよび第2プリプレグシート60bでは、第1プリプレグテープ56および第2プリプレグテープ58の配向方向A1,A2が補強部材14の長手方向(例えばx方向)に対して45度の向きとなる。
図11(b)は、中間プリプレグシート60cの配向方向を示す。中間プリプレグシート60cは、第1プリプレグテープ56の配向方向A1が補強部材14の長手方向(例えばx方向)と一致する。したがって、中間プリプレグシート60cの配向方向A1,A2は、第1プリプレグシート60aおよび第2プリプレグシート60bの配向方向A1,A2に対して45度回転させた向きとなっている。
【0053】
図10に示される上型64と下型66の間で複数枚のプリプレグシート60a~60cを加熱および加圧することにより、板状部材16を成形できる。
図10の複数枚のプリプレグシート60a~60cは、ヒータを備える上型64および下型66によって熱可塑性樹脂54の融点以上の温度に加熱される。複数枚のプリプレグシート60a~60cは、金型62による加熱および加圧によって一体化し、板状部材16に賦形成形される。その後、金型62から板状部材16を取り出すことにより、板状部材16ができあがる。金型62による賦形成形後に、補強部材14として不要な部分を板状部材16から切断したり、板状部材16の第1面16aまたは第2面16bを研磨したりしてもよい。
【0054】
図12は、実施例に係る補強部材14を示す上面図である。
図12に示す補強部材14は、強化繊維として炭素繊維を使用し、熱可塑性樹脂としてPEEKを使用し、
図11(a),(b)に示されるプリプレグシート60a,60b,60cを使用した場合を示す。
図12に示されるように、凸部22および複数の凹部24を備える複雑な凹凸形状を有する板状部材16を形成できていることが分かる。特に、板状部材16の全体にわたって±45度方向に延びるプリプレグテープの編目のずれがほぼ生じていないため、補強部材14は、板状部材16の全体にわたって高い剛性を有することができる。また、複数の凹部24のそれぞれの底部34は、四角形に近い形状を有することが分かる。
【0055】
図13は、本体部材12と補強部材14の間の接合部44を模式的に示す図である。補強部材14は、本体部材12の裏面12bに接合される。補強部材14は、複数の接合部44によって本体部材12に接合される。複数の接合部44は、本体部材12の裏面12bと補強部材14の第2面16bとの間に設けられる。複数の接合部44は、補強部材14の外周部20および底部34に設けられる。本体部材12と補強部材14の間には空洞48が設けられる。本体部材12、補強部材14および複数の接合部44は、第1実施形態に係る第1部材210、第2部材220および金属部材230に相当する。
【0056】
複数の接合部44のそれぞれは、第1実施形態に係る金属部材230と同様に構成されることができる。複数の接合部44は、本体部材12と接合する第1面と、補強部材14と接合する第2面とを備え、第1面と第2面の間が金属材料で構成され、第1面および第2面に金属酸化物粒子クラスターが形成される。複数の接合部44の金属酸化物粒子クラスターは、本体部材12または補強部材14に含まれる熱可塑性樹脂と化学的および物理的に接合する。複数の接合部44は、例えば、本体部材12と補強部材14の間に金属部材を配置し、本体部材12と補強部材14の間で金属部材を加熱および加圧することにより形成できる。
【0057】
図14は、第2実施形態に係る金属部材250の構成を概略的に示す上面図である。金属部材250は、外周接合部分252と、内側接合部分254と、延出部分256と、第1接続部分258と、第2接続部分260とを備える。
【0058】
外周接合部分252は、補強部材14の外周部20と接合する部分である。外周接合部分252は、補強部材14の外周部20と同様の形状を有することができる。内側接合部分254は、補強部材14の凹部24の底部34と接合する部分である。
【0059】
延出部分256は、補強部材14の外縁18から外側に延出する部分であり、補強部材14とは接合しない非接合部分である。
図14の例では、延出部分256がy方向に延びるように設けられるが、延出部分256が延出する方向は問わず、x方向に延びてもよいし、x方向またはy方向に対して斜めに延びてもよい。
【0060】
第1接続部分258は、外周接合部分252と内側接合部分254の間を接続する部分であり、補強部材14とは接合しない非接合部分である。第2接続部分260は、隣り合う二つの内側接合部分254の間を接続する部分であり、補強部材14とは接合しない非接合部分である。
図14の例では、第1接続部分258および第2接続部分260がy方向に延びているが、第1接続部分258および第2接続部分260が延びる方向は問わず、x方向に延びてもよいし、x方向またはy方向に対して斜めに延びてもよい。金属部材250は、x方向に延びる接続部材、y方向に延びる接続部材、およびx方向またはy方向に対して斜めに延びる接続部材のうちの二つ以上を備えてもよい。
【0061】
外周接合部分252および内側接合部分254の両面には、金属酸化物粒子クラスターが形成される。一方、延出部分256、第1接続部分258、および第2接続部分260の両面には、金属酸化物粒子クラスターが形成されなくてもよい。金属部材250は、延出部分256、第1接続部分258および第2接続部分260の少なくとも一つを備えなくてもよい。金属部材250は、例えば、第1接続部分258を備える一方で、第2接続部分260を備えなくてもよい。金属部材250は、延出部分256を備えずに、第1接続部分258および第2接続部分260の少なくとも一方を備えてもよい。
【0062】
金属部材250は、上述の第1実施形態に係る金属部材230と同様の材料で構成されることができる。金属部材250の厚さは、第1実施形態に係る金属部材230の厚さと同様とすることができ、例えば5μm以上2mm以下、例えば10μm以上1mm以下、例えば50μm以上0.5mm以下とすることができる。
【0063】
つづいて、金属部材250を用いた本体部材12および補強部材14の接合方法について説明する。まず、本体部材12と補強部材14との間に金属部材250を配置する。次に、本体部材12と補強部材14との間で金属部材250を加圧する。例えば、本体部材12および補強部材14の形状に対応した金型を利用して本体部材12および補強部材14を加圧することにより、補強部材14の接合箇所である外周部20および底部34を効果的に加圧できる。
【0064】
つづいて、本体部材12と補強部材14との間で金属部材250を加圧しながら、金属部材250を加熱する。例えば、本体部材12と補強部材14の間からはみ出した延出部分256を利用して、金属部材250を加熱することができる。延出部分256にレーザ光や赤外光などの電磁波を照射して加熱してもよい。延出部分256に電源を接続して抵抗加熱してもよい。延出部分256に磁場を印加して誘導加熱してもよい。金属部材250を加圧しながら加熱することにより、金属部材250の金属酸化物粒子クラスターに軟化した樹脂が入り込むとともに、樹脂が化学結合する。これにより、本体部材12および補強部材14は、金属部材250を介して強固に接合される。
【0065】
金属部材250が延出部分256を備えない場合、外周接合部分252および内側接合部分254を直接的に加熱してもよい。例えば、本体部材12および補強部材14の外部から磁場を印加することにより、外周接合部分252および内側接合部分254を高周波誘導加熱してもよい。この場合、第1接続部分258および第2接続部分260が高周波誘導加熱されてもよく、第1接続部分258および第2接続部分260から伝わる熱によって内側接合部分254が加熱されてもよい。
【0066】
本体部材12と補強部材14を接合した後、補強部材14の外側にはみ出す延出部分256を切断して除去することができる。なお、延出部分256は除去されなくてもよい。一方、第1接続部分258および第2接続部分260は、本体部材12と補強部材14との間に残存した状態となる。第1接続部分258および第2接続部分260は、本体部材12または補強部材14と接合してもよいし、接合しなくてもよい。
【0067】
本実施形態によれば、補強部材14が単一の板状部材16のみで構成することができるため、ハニカムコアを用いる場合に比べて補強部材14の構造を単純化できる。また、金型62を用いた賦形成形によって補強部材14を形成できるため、ハニカムコアを用いる場合に比べて補強部材14の製造工程を単純化できる。補強部材14は、補強部材14の長手方向(例えばx方向)および長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる梁を備える格子枠形状の頂部28を備えるため、長手方向および長手方向に交差する方向の双方の荷重に対応可能となる。その結果、補強部材14は、本体部材12の変形を好適に抑制することが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、補強部材14の全体にわたって連続する強化繊維によって補強部材14を構成することができるため、強化繊維の途中に切込部が設けられる場合に比べて補強部材14の剛性を向上できる。本実施形態によれば、外側傾斜部30および内側傾斜部36が緩やかに湾曲するように構成されるため、連続繊維で構成されるプリプレグテープの編目のずれを抑制することができ、補強部材14の全体の剛性を向上できる。
【0069】
本実施形態によれば、金属部材250を介して本体部材12と補強部材14の間を接合することにより、金属部材250を用いない場合に比べて接合強度を飛躍的に向上させることができる。また、厚みの小さい金属部材250を用いることにより、金属部材250の追加による重量の増加を抑制できる。その結果、軽量で剛性に優れた接合構造体10を提供できる。
【0070】
本実施形態によれば、金属部材250が第1接続部分258および第2接続部分260を備えることにより、接続部分を介して内側接合部分254を加熱できる。例えば、本体部材12および補強部材14が炭素繊維強化樹脂(CFRP;Carbon Fiber Reinforced Plastics)材である場合、炭素繊維が黒色であることから、本体部材12と補強部材14との間の内側接合部分254に外側から電磁波を照射して加熱することが困難である。また、炭素繊維は導電性を有することから、外部から磁場を印加して誘導加熱をした場合、炭素繊維が加熱されてしまい、内側接合部分254を加熱が不十分となりうる。外部から金属部材250を加熱する場合、本体部材12または補強部材14の外面側が加熱されて高温となり、本体部材12または補強部材14が変形してしまう可能性もある。本実施形態によれば、接続部分を介することで内側接合部分254を十分に加熱することができ、内側接合部分254における本体部材12および補強部材14との接合強度を向上させ、剛性により優れた接合構造体10を提供できる。
【0071】
本実施形態によれば、第1接続部分258および第2接続部分260を非接合部分とすることにより、本体部材12または補強部材14が接続部分に接触しないようにできる。これにより、接合が不要な箇所において本体部材12や補強部材14の表面が軟化して変形することを抑制できる。また、第1接続部分258および第2接続部分260を設けることにより、内側接合部分254を接合箇所に適切に位置決めすることができる。特に、本体部材12または補強部材14と接合しない接続部分を設けることにより、内側接合部分254を接合箇所により適切に位置決めすることができる。
【0072】
図15は、変形例に係る補強部材70の構成を概略的に示す斜視図であり、補強部材70を第1面16aから見たときの図を示す。補強部材70は、板状部材16の第1面16aに設けられる第1リブ72をさらに備える点で、上述の実施形態と相違する。板状部材16は、上述の実施の形態と同様に構成される。
【0073】
補強部材70は、板状部材16と、第1リブ72とを備える。第1リブ72は、板状部材16の第1面16aに設けられ、第1面16aから厚み方向に延びる。第1リブ72は、複数の凹部24の少なくとも一つの内側に設けられる。
図15の例では、長手方向(例えばx方向)の中央の凹部24の内側に第1リブ72が設けられる。なお、第1リブ72は、複数の凹部24のうちの任意の二以上の内側に設けることができ、複数の凹部24の全ての内側に設けることもできる。第1リブ72の上面は、例えば、頂部28と面一となるように構成される。
【0074】
第1リブ72は、長手方向(例えばx方向)に延びる第1横リブ74と、長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる第1縦リブ76とを含む。第1横リブ74の両端は、凹部24の外縁32に接続される。第1縦リブ76の両端は、凹部24の外縁32に接続される。第1横リブ74および第1縦リブ76は、凹部24の底部34の位置で交差して接続される。第1リブ72は、第1横リブ74または第1縦リブ76に対して斜め方向(例えば、±45度方向)に延びる第1斜めリブ(不図示)をさらに含んでもよい。第1リブ72は、第1横リブ74、第1縦リブ76および第1斜めリブを備える群から選択される任意の一以上を含むことができる。
【0075】
図16は、変形例に係る補強部材70の構成を概略的に示す斜視図であり、補強部材70を第2面16bから見たときの図を示す。補強部材70は、板状部材16の第2面16bに設けられる第2リブ82をさらに備える。第2リブ82の下面は、外周部20および複数の凹部24のそれぞれの底部34と面一となるように構成される。第2リブ82の下面は、例えば、
図7に示す仮想平面B上に位置するように構成される。
【0076】
第2リブ82は、板状部材16の第2面16bに設けられ、第2面16bから厚み方向に延びる。第2リブ82は、凸部22の内側に設けられる。第2リブ82は、長手方向(例えばx方向)に延びる第2横リブ84a,84bと、長手方向と交差する方向(例えばy方向)に延びる第2縦リブ86a,86bと、斜め方向(例えば、±45度方向)に延びる第2斜めリブ88a,88bとを含む。
【0077】
第2横リブ84a,84bは、外周部20と底部34の間を接続する第2外側横リブ84aと、二つの底部34の間を接続する第2内側横リブ84bとを含む。第2縦リブ86a,86bは、外周部20と底部34の間を接続する第2外側縦リブ86aと、二つの底部34の間を接続する第2内側縦リブ86bとを含む。第2斜めリブ88a,88bは、外周部20と底部34の間を接続する第2外側斜めリブ88aと、二つの底部34の間を接続する第2内側斜めリブ88bとを含む。第2リブ82は、第2外側横リブ84a、第2内側横リブ84b、第2縦リブ86a、第2内側縦リブ86b、第2外側斜めリブ88aおよび第2内側斜めリブ88bを備える群から選択される任意の一以上を含むことができる。
【0078】
第1リブ72および第2リブ82は、繊維強化樹脂から構成される。第1リブ72および第2リブ82は、板状部材16と同様の熱可塑性繊維強化樹脂または熱硬化性繊維強化樹脂から構成されてもよいし、板状部材16とは異なる材料の熱可塑性繊維強化樹脂または熱硬化性繊維強化樹脂から構成されてもよい。第1リブ72および第2リブ82を構成する強化繊維として、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維を用いることができる。第1リブ72および第2リブ82を構成する樹脂として、PEEKやPEKKなどの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂といったエンジニアリングプラスチックを用いることができる。第1リブ72および第2リブ82は、例えば、板状部材16を構成する強化繊維とは連続しない強化繊維によって構成されてもよい。
【0079】
図17は、変形例に係る補強部材70の成形方法を模式的に示す図である。変形例に補強部材70を成形するための金型92は、第1リブ72および第2リブ82を成形するための溝部98,100を備える点で、上述の実施の形態に係る金型62と相違する。上型94は、板状部材16の第1面16aに対応した凹凸形状を有するとともに、第1リブ72を形成するための第1溝部98を有する。下型96は、板状部材16の第2面16bに対応した凹凸形状を有するとともに、第2リブ82を形成するための第2溝部100を有する。
【0080】
第1溝部98にはプリプレグ90aが充填され、第2溝部100にはプリプレグ90bが充填されている。溝部98,100に充填されるプリプレグ90a,90bは、例えばプリプレグテープ50やプリプレグシート60を切断したチョップ材である。プリプレグ90a,90bのサイズ(幅および長さ)は特に問わない。プリプレグ90a,90bの幅は、1mm以上20mm以下であり、例えば2mm以上10mm以下である。プリプレグ90a,90bの長さは、5mm以上50mm以下であり、例えば10mm以上30mm以下である。
【0081】
第1溝部98にプリプレグ90aが充填された上型94と、第2溝部100にプリプレグ90bが充填された下型96の間には、複数枚のプリプレグシート60a,60b,60cが積層して配置される。複数枚のプリプレグシート60a,60b,60cは、上述の実施の形態と同様である。
【0082】
図17に示される上型94と下型96の間で複数枚のプリプレグシート60a~60cおよびプリプレグ90a,90bを加熱および加圧することにより、板状部材16に第1リブ72および第2リブ82が形成された補強部材70を成形できる。複数枚のプリプレグシート60a~60cおよびプリプレグ90a,90bは、ヒータを備える上型94および下型96によって熱可塑性樹脂54の融点以上の温度に加熱される。複数枚のプリプレグシート60a~60cおよびプリプレグ90a,90bは、金型92による加熱および加圧によって一体化し、補強部材70に賦形成形される。その後、金型92からを取り出すことにより、補強部材70ができあがる。
【0083】
本変形例によれば、板状部材16の第1面16aに第1リブ72が形成され、板状部材16の第2面16bに第2リブ82が形成されるため、補強部材70の剛性をさらに向上できる。
【0084】
本変形例に係る補強部材70は、本体部材12に接合して用いることができる。例えば、補強部材70の外周部20および底部34に加えて、第2リブ82の下面を本体部材12の裏面12bに接合することができる。補強部材70は、上述の実施の形態と同様の方法で、本体部材12に接合することができる。金属部材250は、第2リブ82に接合する内側接合部分をさらに備えることができる。接合構造体10は、本体部材12と、本変形例に係る補強部材70と、金属部材250とを備えることができる。
【0085】
さらなる変形例において、補強部材70は、第1リブ72および第2リブ82の一方のみを備えてもよい。補強部材70は、第1リブ72のみを備え、第2リブ82を備えなくてもよい。補強部材70は、第2リブ82のみを備え、第1リブ72を備えなくてもよい。
【0086】
(第3実施形態)
図18は、第3実施形態に係る接合構造体110の構成を概略的に示す側断面図である。本実施の形態に係る接合構造体110は、いわゆるサンドイッチパネル構造を有する。接合構造体110は、第1本体部材112と、第2本体部材114と、第1補強部材116と、第2補強部材118とを備える。
【0087】
第1本体部材112および第2本体部材114は、サンドイッチパネルのスキンに相当する部材である。第1本体部材112および第2本体部材114のそれぞれは、上述の実施の形態に係る本体部材12と同様に構成されることができる。第1補強部材116および第2補強部材118は、サンドイッチパネルのコアに相当する部材である。第1補強部材116および第2補強部材118のそれぞれは、上述の実施の形態に係る補強部材14または変形例に係る補強部材70と同様に構成されることができる。
【0088】
第1補強部材116は、第1外周部120と、第1頂部122と、複数の第1底部124とを備える。第1補強部材116は、複数の第1接合部126を介して第1本体部材112に接合される。第1本体部材112は、複数の第1接合部126を介して第1外周部120および複数の第1底部124に接合される。第1本体部材112と第1補強部材116の間には、第1空洞128が設けられる。
【0089】
第2補強部材118は、第2外周部130と、第2頂部132と、複数の第2底部134とを備える。第2補強部材118は、複数の第2接合部136を介して第2本体部材114に接合される。第2本体部材114は、複数の第2接合部136を介して第2外周部130および複数の第2底部134に接合される。第2本体部材114と第2補強部材118の間には、第2空洞138が設けられる。
【0090】
第1補強部材116は、第3接合部140を介して第2補強部材118に接合される。第3接合部140は、第1頂部122と第2頂部132の間に設けられる。第1補強部材116と第2補強部材118の間には、第3空洞142が設けられる。
【0091】
第1接合部126、第2接合部136および第3接合部140のそれぞれは、上述の第2実施形態に係る接合部44と同様に構成されることができる。例えば、両面に金属酸化物粒子クラスターが形成される第1金属部材、第2金属部材および第3金属部材を用意し、第1本体部材112と第1補強部材116の間を第1金属部材で接合し、第2本体部材114と第2補強部材118の間を第2金属部材で接合し、第1補強部材116と第2補強部材118の間を第3金属部材で接合することができる。
【0092】
本実施形態によれば、四つの板状部材を組み合わせることによってサンドイッチパネル構造を実現できる。本実施形態によれば、ハニカムコアを用いる場合に比べて、接合構造体110の構造を単純化することができ、接合構造体110の製造工程を単純化できる。
【0093】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0094】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0095】
本発明の第1の態様は、強化繊維として連続繊維を用いる繊維強化樹脂から構成され、第1面および第2面を有する板状部材を備え、前記板状部材は、前記板状部材の外縁を規定する外周部と、前記外周部の内側において前記第1面側が凸となる凸部と、前記凸部の内側において前記第1面側が凹となる複数の凹部と、を備える補強部材である。第1の態様によれば、外周部の内側に凸部が設けられ、凸部の内側に複数の凹部が設けられる凹凸構造とすることにより、補強部材の長手方向および長手方向と交差する方向の双方の荷重に対して撓みなどの変形を好適に抑制できる。また、板状部材に凹凸を設けた構造とすることにより、強化繊維として連続繊維を用いる繊維強化樹脂によって板状部材を構成することができ、軽量かつ高剛性の補強部材を実現できる。
【0096】
本発明の第2の態様は、前記複数の凹部は、格子状または放射状に配列される、第1の態様に記載の補強部材である。第2の態様によれば、複数の凹部を格子状または放射状に配列することにより、複数の凹部が配列される方向の荷重に対する変形を好適に抑制できる。
【0097】
本発明の第3の態様は、前記凸部の外縁は、四角形の四隅を円弧状にした形状を有し、前記複数の凹部のそれぞれの外縁は、四角形の四隅を円弧状にした形状を有する、第1または第2の態様に記載の補強部材である。第3の態様によれば、凸部および複数の凹部のそれぞれの外縁を四角形に近似させることにより、四角形の辺に沿った方向の荷重に対する変形を好適に抑制できる。また、凸部および複数の凹部のそれぞれの外縁の四隅を円弧形状にすることにより、凸部および複数の凹部の表面に沿って連続繊維を均一に配置することが容易となり、補強部材の全体としての剛性を向上できる。
【0098】
本発明の第4の態様は、前記複数の凹部のそれぞれの底部は、四角形または四角形の四隅を丸めた形状を有する、第3の態様に記載の補強部材である。第4の態様によれば、複数の凹部のそれぞれの底部を四角形に近似させることにより、四角形の辺に沿った方向の荷重に対する変形を好適に抑制できる。
【0099】
本発明の第5の態様は、前記板状部材の前記外縁に直交する断面視における前記第1面および前記第2面の曲率半径が20mm以上となるように構成される、第1から第4のいずれか一つの態様に記載の補強部材である。第5の態様によれば、第1面および第2面の曲率半径を20mm以上とすることにより、第1面および第2面に沿って連続繊維を均一に配置することが容易となり、補強部材の全体としての剛性を向上できる。
【0100】
本発明の第6の態様は、前記繊維強化樹脂は、第1方向に延びる複数本の連続繊維と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数本の連続繊維とを編成した連続繊維シートを含む、第1から第5のいずれか一つの態様に記載の補強部材である。第6の態様によれば、互いに交差する第1方向および第2方向に延びる複数本の連続繊維を編成した連続繊維シートを用いることにより、補強部材の長手方向および長手方向と交差する方向の双方の荷重に対して撓みなどの変形を好適に抑制できる。
【0101】
本発明の第7の態様は、繊維強化樹脂から構成され、前記第1面または前記第2面から延びるリブをさらに備える、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の補強部材である。第7の態様によれば、板状部材の第1面または第2面にリブを設けることにより、補強部材の剛性をさらに向上できる。
【0102】
本発明の第8の態様は、前記リブは、前記複数の凹部の少なくとも一つの内側において前記第1面から延びる第1リブを含む、第7の態様に記載の補強部材である。第8の態様によれば、凹部の内側に第1リブを設けることにより、凹部の変形をより好適に抑制することができ、補強部材の剛性をさらに向上できる。
【0103】
本発明の第9の態様は、前記リブは、前記凸部の内側において前記第2面から延びる第2リブをさらに備える、第7または第8の態様に記載の補強部材である。第9の態様によれば、凸部の内側に第2リブを設けることにより、凸部の変形をより好適に抑制することができ、補強部材の剛性をさらに向上できる。
【0104】
本発明の第10の態様は、前記第2リブは、前記複数の凹部の少なくとも一つの底部と前記外周部の間を接続する、第9の態様に記載の補強部材である。第10の態様によれば、底部と外周部の間を接続する第2リブを設けることにより、外周部に対する底部の変形をより好適に抑制することができ、補強部材の剛性をさらに向上できる。
【0105】
本発明の第11の態様は、前記第2リブは、前記複数の凹部のうちの二つの底部の間を接続する、第9または第10の態様に記載の補強部材である。第11の態様によれば、二つの底部の間を接続する第2リブを設けることにより、底部の変形をより好適に抑制することができ、補強部材の剛性をさらに向上できる。
【0106】
本発明の第12の態様は、前記繊維強化樹脂の樹脂重量含有率は、50%以下である、第1から第11のいずれか一つの態様に記載の補強部材である。第12の態様によれば、繊維強化樹脂の樹脂重量含有率は、50%以下とすることにより、補強部材の剛性をさらに向上できる。
【0107】
本発明の第13の態様は、第1から第12のいずれか一つの態様に記載の補強部材と、前記補強部材の前記外周部および前記複数の凹部のそれぞれの底部と接合される本体部材と、を備え、前記補強部材と前記本体部材の間に空洞が設けられる接合構造体である。第13の態様によれば、本体部材に補強部材を接合することにより、本体部材の変形を補強部材によって抑制することができ、剛性に優れた接合構造体を提供できる。また、補強部材と本体部材の間に空洞が設けられるため、軽量かつ高剛性の接合構造体を提供できる。
【0108】
本発明の第14の態様は、第1面および第2面を有する板状部材の外縁を規定する外周部と、前記外周部の内側において前記第1面側が凸となる凸部と、前記凸部の内側において前記第1面側が凹となる複数の凹部とを備える板状部材を成形するための金型上に、連続繊維に樹脂を含浸させたプリプレグシートを配置する工程と、前記金型を用いて前記プリプレグシートを加熱および加圧し、繊維強化樹脂から構成される前記板状部材を備える補強部材を成形する工程と、を備える製造方法である。第14の態様によれば、プリプレグシートを金型を用いて賦形成形することによって補強部材を製造できるため、補強部材の製造工程を簡略化できる。また、連続繊維に樹脂を含浸させたプリプレグシートを用いることにより、小さく切断したプリプレグを用いる場合に比べて、プレプリグの配置作業を簡略化でき、成形された補強部材の剛性を向上させることができる。
【0109】
本発明の第15の態様は、前記プリプレグシートは、第1方向に延びる複数の第1プリプレグテープと、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2プリプレグテープとを編成して形成され、前記複数の第1プリプレグテープおよび前記複数の第2プリプレグテープのそれぞれは、単一方向に延びる複数本の連続繊維に前記樹脂を含浸させることにより形成される、第14の態様に記載の製造方法である。第15の態様によれば、賦形成形時に金型の凹凸形状に合わせてプリプレグテープの間の隙間が可変となるため、金型の凹凸形状に沿ってプリプレグテープをより均一に配置することが容易となる。その結果、プリプレグテープが均一に配置された補強部材を成形することができ、補強部材の剛性を向上させることができる。
【0110】
本発明の第16の態様は、前記プリプレグシートは、第1方向に延びる複数の第1連続繊維と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2連続繊維とを編成した連続繊維シートに前記樹脂を含浸させることにより形成される、第14の態様に記載の製造方法である。第16の態様によれば、互いに交差する第1方向および第2方向に延びる複数本の連続繊維を編成した連続繊維シートを用いることにより、成形された補強部材の剛性を向上させることができる。
【0111】
本発明の第17の態様は、前記金型は、前記第1面または前記第2面から延びるリブを形成するための溝部を備え、前記金型の前記溝部にプリプレグを充填させる工程をさらに備え、前記金型を用いて前記プリプレグシートおよび前記プリプレグを加熱および加圧することにより、前記板状部材の前記第1面または前記第2面に繊維強化樹脂から構成される前記リブが接合された前記補強部材を成形する、第14から第16のいずれか一つの態様に記載の製造方法である。第17の態様によれば、補強部材にリブを形成することができるため、成形された補強部材の剛性をさらに向上させることができる。金型の溝部にプリプレグを充填することにより、板状部材とリブが一体化した補強部材を簡便に製造することができる。
【0112】
本発明の第18の態様は、前記補強部材の前記外周部および前記複数の凹部のそれぞれの底部を本体部材の表面に接合して接合構造体を形成する工程をさらに備える、第14から第17のいずれか一つの態様に記載の製造方法である。第18の態様によれば、本体部材の表面に補強部材を接合することにより、軽量かつ高剛性の接合構造体を簡便に製造することができる。
【0113】
本発明の第19の態様は、第1金属酸化物粒子クラスターが形成される第1面と、第2金属酸化物粒子クラスターが形成される第2面とを有し、前記第1面から前記第2面までの厚さが1mm以下である金属部材を、熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材と、熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材との間に配置する工程と、前記第1部材と前記第2部材との間で前記金属部材を加熱および加圧し、前記第1面を前記第1樹脂と接合させ、前記第2面を前記第2樹脂と接合させる工程と、を備える接合方法である。第19の態様によれば、金属酸化物粒子クラスターが形成される金属部材を用いることにより、熱可塑性樹脂と金属部材とを強固に接合することができ、第1部材と第2部材との間の接合強度を向上できる。また、金属部材の厚さを1mm以下にすることにより、金属部材の追加による重量増加を抑制することができ、軽量で剛性の優れた接合構造体を提供できる。
【0114】
本発明の第20の態様は、前記金属部材は、前記金属部材に電磁波を照射する、前記金属部材に電流を流す、および、前記金属部材に磁場を印加することの少なくとも一つによって加熱される、第19の態様に記載の接合方法である。第20の態様によれば、金属部材を加熱することにより、金属部材に接触する第1部材および第2部材の表面近傍のみを加熱および軟化させて接合することができる。これにより、第1部材および第2部材の加熱による変形を抑制でき、接合構造体の品質を向上できる。
【0115】
本発明の第21の態様は、前記金属部材は、前記第1部材および前記第2部材の間に位置する接合部分と、前記第1部材および前記第2部材の間から延出する延出部分とを備え、前記金属部材は、前記延出部分に電磁波を照射する、前記延出部分に電流を流す、および、前記延出部分に磁場を印加することの少なくとも一つによって加熱される、第19または第20の態様に記載の接合方法である。第21の態様によれば、第1部材と第2部材との間からはみ出る延出部分を設けることにより、第1部材と第2部材との間に挟み込まれる金属部材を効果的に加熱できる。
【0116】
本発明の第22の態様は、前記接合部分を前記第1部材および前記第2部材に接合した後に、前記延出部分を除去する工程をさらに備える、第21の態様に記載の接合方法である。第22の態様によれば、接合に寄与しない延出部分を除去することにより、より軽量な接合構造体を提供できる。
【0117】
本発明の第23の態様は、前記第1部材と前記第2部材の間に配置する前に、前記金属部材を予熱する工程をさらに備える、第19から第22のいずれか一つの態様に記載の接合方法である。第23の態様によれば、金属部材を予熱しておくことにより、第1部材と第2部材の間に挟み込んだ後の加熱工程を短縮することができ、生産性を向上できる。
【0118】
本発明の第24の態様は、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は、前記第1面または前記第2面に沿う方向に延びる強化繊維を含む繊維強化樹脂から構成される、第19から第23のいずれか一つの態様に記載の接合方法である。第24の態様によれば、繊維強化樹脂を用いることにより、軽量かつ高剛性の接合構造体を提供できる。
【0119】
本発明の第25の態様は、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維を備える、第24の態様に記載の接合方法である。第25の態様によれば、強化繊維として炭素繊維、ガラスまたはアラミド繊維を用いることにより、軽量かつ高剛性の接合構造体を提供できる。
【0120】
本発明の第26の態様は、前記第1樹脂および前記第2樹脂の少なくとも一方は、芳香族ポリエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、またはポリエーテルサルホン(PES)である、第19から第25のいずれか一つの態様に記載の接合方法である。第26の態様によれば、第1樹脂または第2樹脂としてエンジニアリングプラスチックを用いることにより、軽量かつ高剛性の接合構造体を提供できる。
【0121】
本発明の第27の態様は、前記金属部材は、鋼材、アルミニウム材、アルミニウム合金材、チタン材、チタン合金材、ニッケルチタン合金材、銅材、または銅合金材を備える、第19から第26のいずれか一つの態様に記載の接合方法である。第27の態様によれば、これらの金属材料を用いることにより、金属酸化物粒子クラスターと樹脂との間の接合強度を向上させることができる。
【0122】
本発明の第28の態様は、前記金属部材は、前記第2部材の外周部に接合する外周接合部分と、前記第2部材の前記外周部から離れた部分に接合する内側接合部分と、前記外周接合部分と前記内側接合部分の間を接続する接続部分とを備える、第19から第27のいずれか一つの態様に記載の接合方法である。第28の態様によれば、金属部材の外周接合部分と内側接合部分とを接続する接続部分を設けることにより、内側接合部分を適切に加熱することができ、内側接合部分における接合強度を向上させることができる。
【0123】
本発明の第29の態様は、前記接続部分は、前記第1部材または前記第2部材と接合されない、第28の態様に記載の接合方法である。第29の態様によれば、接合が不要な箇所において接続部分が第1部材または第2部材と接触し、加熱による変形が第1部材または第2部材に生じることを抑制できる。また、第1部材または第2部材と接合しない接続部分を設けることにより、内側接合部分を接合箇所に適切に位置決めすることができる。
【0124】
本発明の第30の態様は、熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材と、熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材と、前記第1部材の前記第1樹脂と接合する第1金属酸化物粒子クラスターが形成される第1面と、前記第2部材の前記第2樹脂と接合する第2金属酸化物粒子クラスターが形成される第2面とを有し、前記第1面から前記第2面までの厚さが5μm以上1mm以下である金属部材と、を備える接合構造体である。第30の態様によれば、金属酸化物粒子クラスターが形成される金属部材を用いることにより、熱可塑性樹脂と強固に接合することができ、第1部材と第2部材との間の接合強度を向上できる。また、金属部材の厚さを1mm以下にすることにより、金属部材の追加による重量増加を抑制することができ、軽量で剛性の優れた接合構造体を提供できる。
【符号の説明】
【0125】
10,110,200…接合構造体、12…本体部材、14…補強部材、16…板状部材、16a…第1面、16b…第2面、18…外縁、20…外周部、22…凸部、24…凹部、26…外縁、28…頂部、30…外側傾斜部、32…外縁、34…底部、36…内側傾斜部、50…プリプレグテープ、52…強化繊維、54…熱可塑性樹脂、56…第1プリプレグテープ、58…第2プリプレグテープ、60…プリプレグシート、210…第1部材、220…第2部材、230,250…金属部材、232…第1面、234…第2面、236…第1金属酸化物粒子クラスター、238…第2金属酸化物粒子クラスター、240…接合部分、242…第1延出部分、244…第2延出部分、252…外周接合部分、254…内側接合部分、256…延出部分、258…第1接続部分、260…第2接続部分。
【要約】
【課題】軽量で剛性に優れた接合構造体を提供する。
【解決手段】接合構造体200は、熱可塑性の第1樹脂を含む第1部材210と、熱可塑性の第2樹脂を含む第2部材220と、第1部材210の第1樹脂と接合する第1金属酸化物粒子クラスター236が形成される第1面232と、第2部材220の第2樹脂と接合する第2金属酸化物粒子クラスター238が形成される第2面234とを有し、第1面232から第2面234までの厚さが5μm以上1mm以下である金属部材230と、を備える。
【選択図】
図1