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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】ステアリングコラム装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/189 20060101AFI20250123BHJP
   B62D 1/185 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
B62D1/189
B62D1/185
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023529401
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2021024113
(87)【国際公開番号】W WO2022269897
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトコラムシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】川村 尚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】戎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 勇基
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 友紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康介
(72)【発明者】
【氏名】梅藤 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】仲秋 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 喜章
(72)【発明者】
【氏名】浅川 和久
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0060975(KR,A)
【文献】特開2010-036702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0111656(US,A1)
【文献】特開2008-120229(JP,A)
【文献】特開2008-143441(JP,A)
【文献】特開2007-030527(JP,A)
【文献】特開2013-086713(JP,A)
【文献】特開2013-129302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/189
B62D 1/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して車両の上下方向に揺動自在に取り付けられるように構成されたロアチューブと、
車両のステアリングホイールが取り付けられるように構成されたコラム軸と、
前記コラム軸を回転自在に支持するとともに、前記ロアチューブに対して車両の前後方向に移動自在に取り付けられるアッパチューブと、
前記ロアチューブを前記上下方向に揺動させるとともに前記アッパチューブを前記前後方向に移動させるための動力であるモータトルクを発生するモータと、
前記ロアチューブと前記アッパチューブとを連動自在に連結するリンク機構と、
前記モータトルクを前記リンク機構に伝達するように動作する動力伝達機構と、を有し、
前記リンク機構は、前記動力伝達機構によって前記モータトルクが前記リンク機構に伝達される場合、前記ロアチューブの前記上下方向への揺動と前記アッパチューブの前記前後方向への移動とを連動させるように動作するよう構成されているステアリングコラム装置。
【請求項2】
前記モータを、前記動力伝達機構と連結する減速機構を更に有し、
前記減速機構は、前記モータの回転を減速して得られる前記モータトルクを前記動力伝達機構に伝達するように構成されている請求項1に記載のステアリングコラム装置。
【請求項3】
前記動力伝達機構は、
前記前後方向へ延びるとともに、前記モータトルクによって前記前後方向へ延びる軸線の回りに回転するねじ軸と、
前記アッパチューブに連結されており、前記ねじ軸が回転することによって前記ねじ軸に沿って前記前後方向に移動する送りナットと、を有し、
前記送りナットは、前記前後方向に移動する場合、前記アッパチューブを前記前後方向へ移動させるとともに、前記リンク機構を介して前記ロアチューブを前記上下方向に移動させるように構成されている請求項1又は請求項2に記載のステアリングコラム装置。
【請求項4】
前記車体に取り付けられるように構成されたコラムブラケットを更に有し、
前記アッパチューブは、前記ロアチューブの内周部に嵌合されており、
前記リンク機構は、前記ロアチューブを、前記コラムブラケット及び前記送りナットに連結し、
前記送りナットは、前記アッパチューブを、前記リンク機構に連結する請求項3に記載のステアリングコラム装置。
【請求項5】
前記車体に取り付けられるように構成されたコラムブラケットを更に有し、
前記ロアチューブは、前記アッパチューブの内周部に嵌合されており、
前記リンク機構は、前記アッパチューブを、前記コラムブラケットに連結し、
前記送りナットは、前記アッパチューブのみに連結されている請求項3に記載のステアリングコラム装置。
【請求項6】
前記リンク機構は、前記動力伝達機構によって前記モータトルクが前記リンク機構に伝達される場合、前記ロアチューブの前記上下方向に沿った上方又は下方への揺動と前記アッパチューブの前記前後方向に沿った後方又は前方への移動とを連動させるように動作するよう構成されている請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のステアリングコラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリングコラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車両には、特許文献1に記載のステアリングコラム装置が搭載される。特許文献1に記載のステアリングコラム装置は、アウタコラムと、インナコラムと、電動チルト機構と、電動テレスコピック機構とを含んでいる。アウタコラムは、車体取付ブラケットに対して車両の上下方向に揺動自在に取り付けられている。インナコラムは、ステアリングホイールが取り付けられたステアリング軸を回転自在に支持する。インナコラムは、アウタコラムに対して車両の前後方向に移動自在に取り付けられている。
【0003】
電動チルト機構は、チルト駆動用モータと、ボールねじ機構と、リンク機構とを含んでいる。チルト駆動用モータは、チルト駆動用モータと一体化されている減速機構部を介してボールねじ機構を動作させる。ボールねじ機構は、雄ねじ軸部材が回転することによって当該雄ねじ軸部材の軸線に沿って雌ねじ部材を車両の前後方向に移動させるように動作する。リンク機構は、ボールねじ機構が動作することによってアウタコラムを車両の上下方向に揺動させるように動作する。これにより、車両の上下方向におけるステアリング軸の位置が調整される。
【0004】
電動テレスコピック機構は、テレスコ駆動用モータと、ボールねじ機構とを含んでいる。テレスコ駆動用モータは、テレスコ駆動用モータと一体化されている減速機構部を介してボールねじ機構を動作させる。ボールねじ機構は、雄ねじ軸部材が回転することによって当該雄ねじ軸部材の軸線に沿って雌ねじ部材を車両の前後方向に移動させるように動作する。この場合、ボールねじ機構は、アウタコラムに対してインナコラムを車両の前後方向に移動させるように動作する。これにより、車両の前後方向におけるステアリング軸の位置が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-172002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のステアリングコラム装置は、車両の上下方向及び前後方向におけるステアリング軸の位置を調整するために、2つの駆動用モータと、2つのボールねじ機構とを必要とする。ただし、車両への搭載性を向上させる観点では、ステアリングコラム装置の構成の簡素化や、体格の小型化が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るステアリングコラム装置は、車体に対して車両の上下方向に揺動自在に取り付けられるように構成されたロアチューブと、車両のステアリングホイールが取り付けられるように構成されたコラム軸と、前記コラム軸を回転自在に支持するとともに、前記ロアチューブに対して車両の前後方向に移動自在に取り付けられるアッパチューブと、前記ロアチューブを前記上下方向に揺動させるとともに前記アッパチューブを前記前後方向に移動させるための動力であるモータトルクを発生するモータと、前記ロアチューブと前記アッパチューブとを連動自在に連結するリンク機構と、前記モータトルクを前記リンク機構に伝達するように動作する動力伝達機構と、を有している。前記リンク機構は、前記動力伝達機構によって前記モータトルクが前記リンク機構に伝達される場合、前記ロアチューブの前記上下方向への揺動と前記アッパチューブの前記前後方向への移動とを連動させるように動作するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るステアリングコラム装置の斜視図。
図2図1のステアリングコラム装置の正面図。
図3図1のステアリングコラム装置の側面図。
図4図3のステアリングコラム装置が備えるコラム軸の周辺構成を示す断面図。
図5図5A図5Cは、図3のステアリングコラム装置についてリンク機構の動作を説明する図。
図6図5のリンク機構の動作に関わってステアリングホイールの位置が辿る経路を説明する図。
図7】第2実施形態に係るステアリングコラム装置の斜視図。
図8図7のステアリングコラム装置の正面図。
図9図7のステアリングコラム装置の側面図。
図10図9のステアリングコラム装置が備えるコラム軸の周辺構成を示す断面図。
図11図11A図11Cは、図9のステアリングコラム装置についてリンク機構の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図1図6を参照して第1実施形態を説明する。
【0010】
図1図3に示すステアリングコラム装置1は、たとえば車両に搭載される電動パワーステアリング装置の一部を構成する。ステアリングコラム装置1は、車両に搭載される。ステアリングコラム装置1は、その軸線が車両の前後方向に延びるように車両に搭載される。図1では、左手前側が車両の後側に一致するとともに、右奥側が車両の前側に一致する。図2では、紙面表側が車両の後側に一致するとともに、紙面裏側が車両の前側に一致する。図3では、左側が車両の後側に一致するとともに、右側が車両の前側に一致する。図1図3では、上側が車両の上側に一致するとともに、下側が車両の下側に一致する。以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」等の用語で表される向きは、車両を基準として定義される。車両の「前後方向」と「上下方向」とに直交する方向は、車両の「幅方向」を意味する。
【0011】
<ステアリングコラム装置>
図1図3に示すように、ステアリングコラム装置1は、コラム軸2と、ステアリングコラム3と、操舵用アクチュエータ4と、位置調整用アクチュエータ5とを有している。コラム軸2は、ステアリング軸6の一部を構成する。ステアリングコラム3は、その内部においてコラム軸2を回転自在に支持する。コラム軸2の後側の第1端は、車両のステアリングホイール7に連結されている。コラム軸2の前側の第2端は、図示しない中間軸に連結されている。中間軸は、コラム軸2と、車両の図示しない左右の転舵輪との間の動力伝達路を構成する。コラム軸2、すなわちステアリング軸6は、ステアリングホイール7の回転に連動して回転する。ステアリング軸6の回転は、図示しないラックアンドピニオン機構を介してラック軸の軸方向の往復動に変換される。ラック軸の往復動は、左右の転舵輪にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪の転舵角を変化させる。
【0012】
<コラム軸について>
図4に示すように、コラム軸2は、アッパシャフト11と、ロアシャフト12とを有している。アッパシャフト11、及びロアシャフト12の材料には、それぞれ金属材料が用いられている。アッパシャフト11の形状は、管状である。ロアシャフト12の形状は、円柱状である。アッパシャフト11の後側の第1端は、ステアリングホイール7に連結されている。アッパシャフト11の前側の第2端の内周部には、ロアシャフト12が嵌合されている。これにより、アッパシャフト11とロアシャフト12とは、一体回転自在、かつ、軸方向である前後方向に相対移動自在に連結されている。
【0013】
<ステアリングコラムについて>
図1図3に示すように、ステアリングコラム3は、アッパチューブ21と、ロアチューブ22と、ハウジング23とを有している。アッパチューブ21、ロアチューブ22、及びハウジング23の材料には、それぞれ金属材料が用いられている。アッパチューブ21、及びロアチューブ22の形状は、それぞれ円筒状である。
【0014】
図4に示すように、アッパチューブ21とロアチューブ22とは、アッパシャフト11及びロアシャフト12、すなわちコラム軸2を収容している。アッパチューブ21は、軸受24を介してアッパシャフト11、すなわちコラム軸2を回転自在に支持している。アッパチューブ21の後側の第1端からは、アッパシャフト11の第1端が突出されている。アッパチューブ21の前側の第2端は、ロアチューブ22の内周部に嵌合されている。これにより、アッパチューブ21は、ロアチューブ22に対して、軸方向である前後方向に相対移動自在に連結されている。アッパチューブ21、すなわちコラム軸2は、前後方向である、いわゆるテレスコピック方向に移動自在である。アッパチューブ21がテレスコピック方向に移動することによって、ステアリングホイール7の前後方向における位置が調整される。
【0015】
アッパチューブ21は、スリット21aを有している。スリット21aは、アッパチューブ21の下側部位に設けられている。スリット21aは、アッパチューブ21の軸方向である前後方向に延びる長孔状の貫通孔である。ロアチューブ22は、スリット22aを有している。スリット22aは、ロアチューブ22の下側部位に設けられている。スリット22aは、ロアチューブ22の軸方向である前後方向に延びる長孔状の貫通孔である。スリット21aと、スリット22aとは、径方向で重なるように配置されている。
【0016】
図1図3の説明に戻り、ロアチューブ22は、アッパチューブ21が嵌合された第1端と反対側に、前側の第2端を有する。ハウジング23は、ロアチューブ22の第2端に連結されている。ハウジング23の外部には、操舵用モータ25が設けられている。ハウジング23の内部には、減速機構26が収容されている。減速機構26は、操舵用モータ25の回転を減速し、この減速される回転をロアシャフト12に伝達する。本実施形態において、減速機構26は、操舵用モータ25の回転軸と一体回転可能に連結されたウォーム、及びウォームホイールを有するウォーム減速機である。操舵用モータ25と、減速機構26とは、操舵用アクチュエータ4の一部を構成する。操舵用アクチュエータ4は、ハウジング23に収容されているとともに、ステアリングコラム3の一部を構成するとも言える。
【0017】
ステアリングコラム3は、コラムブラケット27と、ロアブラケット28とを有している。コラムブラケット27は、たとえばボルトと、当該ボルトに螺合するナットとによって車体の固定部BD1に固定されている。ロアチューブ22は、コラムブラケット27を介して車体の固定部BD1に固定されている。ロアブラケット28は、たとえばボルト、及び当該ボルトに螺合するナットによって車体の固定部BD2に固定される。ハウジング23は、ロアブラケット28を介して車体の固定部BD2に固定されている。
【0018】
コラムブラケット27は、1つ以上のブラケットベース部27aと、ベース連結部27bと、1つ以上のブラケットプレート部27cとを有している。ブラケットベース部27aの形状は、平板状である。ブラケットベース部27aは、車体の固定部BD1に対して対向する平面を有している。本実施形態において、2つのブラケットベース部27aが、ロアチューブ22の幅方向の両側に配置されている。ベース連結部27bの形状は、長板状である。ベース連結部27bは、ロアチューブ22の上方において幅方向に延びている。ベース連結部27bは、2つのブラケットベース部27aの前側の端同士を連結する。ブラケットプレート部27cの形状は、平板状である。ブラケットプレート部27cは、ロアチューブ22に対して幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、ブラケットプレート部27cは、2つのブラケットベース部27aに一つずつ設けられている。2つのブラケットプレート部27cは、2つのブラケットベース部27aの幅方向で対向する縁部から下方に延びている。
【0019】
ロアチューブ22は、1つ以上の支持プレート部22bを介してコラムブラケット27に取り付けられている。支持プレート部22bは、たとえば溶接等によってロアチューブ22に一体化されている。支持プレート部22bは、ロアチューブ22の後側の第1端に設けられている。支持プレート部22bの形状は、平板状である。支持プレート部22bは、ロアチューブ22に対して幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つの支持プレート部22bが、ロアチューブ22の幅方向の両側に配置されている。支持プレート部22bのロアチューブ22とは反対側の平面は、ブラケットプレート部27cの平面と対向している。2つの支持プレート部22bは、ロアチューブ22の上方において支持プレート連結部22cによって互いに連結されている。支持プレート連結部22cは、チューブ押圧部31を有している。チューブ押圧部31は、たとえばばね等の付勢力を用いてロアチューブ22に対してアッパチューブ21を押し付けている。チューブ押圧部31は、アッパチューブ21がロアチューブ22に対して前後方向へ移動する際に、アッパチューブ21ががたつくことを抑制する。
【0020】
支持プレート部22bは、リンク機構50によって、対応するブラケットプレート部27cに連結されている。支持プレート部22bは、対応するブラケットプレート部27cに対して上下方向に揺動自在に連結されている。
【0021】
ハウジング23の前側の第1部位は、幅方向に延びるチルト支持軸29を有している。ハウジング23は、チルト支持軸29によってロアブラケット28に取り付けられている。支持プレート部22bが設けられているロアチューブ22の第1端は、コラムブラケット27に対して、チルト支持軸29を回動中心として上下方向に揺動自在に取り付けられている。ロアチューブ22、すなわちコラム軸2は、上下方向である、いわゆるチルト方向に揺動自在である。ロアチューブ22がチルト方向に揺動することによって、ステアリングホイール7の上下方向における高さ位置を調整することができる。
【0022】
<位置調整用アクチュエータについて>
図1図3に示すように、位置調整用アクチュエータ5は、位置調整用モータ41と、送りねじ機構42と、減速機構43とを有している。位置調整用モータ41は、ハウジング23の外部に設けられている。送りねじ機構42は、ねじ軸44と、送りナット45とを有している。送りねじ機構42は、たとえばボールねじ機構であってもよい。ねじ軸44は、ロアチューブ22の下方に配置されている。本実施形態において、送りねじ機構42は、動力伝達機構の一例である。
【0023】
ねじ軸44は、ハウジング23の後側の部位である第2部位からさらに後方に延びている。ねじ軸44の外周部には、ねじ溝44aが形成されている。ねじ溝44aは、ロアチューブ22のスリット22aが軸方向に延びる範囲内で延びている。
【0024】
送りナット45の形状は、直方体状である。送りナット45は、ねじ軸44の周囲に配置されている。送りナット45の内周部には、ねじ軸44のねじ溝44aに対応するねじ溝45aが形成されている。ねじ軸44と、送りナット45とは、互いのねじ溝44a,45aを介して螺合されている。
【0025】
図4に示すように、送りナット45は、ナット連結部46を介してアッパチューブ21の下側の部位に連結されている。ナット連結部46は、送りナット45に固定されている。ナット連結部46は、アッパチューブ21のスリット21a、及びロアチューブ22のスリット22aを介してアッパチューブ21の内部に挿入されている。ナット連結部46は、アッパチューブ21の内部に挿入された状態でスリット21aの幅方向の外側の部位に固定されている。ナット連結部46は、たとえばリベット等の締結部材47によってアッパチューブ21に固定されている。送りナット45は、ねじ軸44の回転に連動してねじ軸44の軸方向に移動する。送りナット45は、アッパチューブ21と共にねじ軸44の軸方向である前後方向に移動する。
【0026】
ステアリングコラム装置1に作用する外部からの衝撃力が所定の離脱荷重を超える場合、締結部材47を介したナット連結部46とアッパチューブ21との固定が解除される。アッパチューブ21のスリット21a内に挿入されているナット連結部46は、アッパチューブ21の移動を妨げることがない。これにより、アッパチューブ21がロアチューブ22に対して後方に移動自在である。
【0027】
減速機構43は、位置調整用モータ41の回転を減速し、この減速される回転をねじ軸44に伝達する。本実施形態において、減速機構43は、位置調整用モータ41の回転軸41aと一体回転可能に連結されたウォーム43a、及びウォームホイール43bを有するウォーム減速機構である。ウォームホイール43bは、ねじ軸44に嵌合されている。ウォームホイール43bは、ねじ軸44に一体回転可能に連結されている。減速機構43は、位置調整用モータ41の回転を伝達するベルトを有するベルト式の減速機構等、適宜変更可能である。
【0028】
位置調整用モータ41のモータトルクは、ウォーム43a及びウォームホイール43b、すなわち減速機構43を介してねじ軸44へと伝達される。こうして伝達されるモータトルクは、ねじ軸44を回転させる。位置調整用モータ41のモータトルクは、ねじ軸44を回転させて送りナット45をアッパチューブ21と共に前後方向、すなわちテレスコピック方向に移動させる動力に変換される。
【0029】
<リンク機構について>
図1図3に示すように、リンク機構50は、ナットリンク部材51と、1つ以上のブラケットリンクプレート52とを有している。ナットリンク部材51は、送りナット45と、ブラケットリンクプレート52とを相互に連結する。ブラケットリンクプレート52は、ナットリンク部材51と、ロアチューブ22と、コラムブラケット27とを相互に連結する。
【0030】
ナットリンク部材51は、1つ以上のナットリンクプレート部51aと、ナットリンク連結部51bとを有している。ナットリンクプレート部51aの形状は、平板状である。ナットリンクプレート部51aは、送りナット45に対して幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つのナットリンクプレート部51aが、送りナット45の幅方向の両側に配置されている。2つのナットリンクプレート部51aの下側の第2端は、ナットリンク連結部51bによって互いに連結されている。ナットリンクプレート部51aは、第2端と直交する方向に延びる第1端であるナットリンク先端部51cを有している。ナットリンクプレート部51aは、たとえばリベット等の締結部材53によって送りナット45に連結されている。ナットリンクプレート部51aと送りナット45とは、締結部材53を回動中心として相対回動自在である。
【0031】
ブラケットリンクプレート52の形状は、長板状である。ブラケットリンクプレート52は、ロアチューブ22及びナットリンクプレート部51aの両方に幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つのブラケットリンクプレート52が、ロアチューブ22及び送りナット45の幅方向の両側に配置されている。各ブラケットリンクプレート52は、対応するナットリンクプレート部51aに対して幅方向で対向するナット側端部52aを有している。ナット側端部52aは、たとえばリベット等の締結部材54によって、対応するナットリンク先端部51cに連結されている。各ブラケットリンクプレート52とそれに対応するナットリンク先端部51cとは、締結部材54を回動中心として相対回動自在である。
【0032】
各ブラケットリンクプレート52は、ロアチューブ22に対して幅方向で対向するチューブ側端部52bを有している。チューブ側端部52bは、コラムブラケット27によって幅方向から覆われる被覆部52cと、コラムブラケット27によって幅方向から露出される露出部52dとを有している。各被覆部52cは、たとえばリベット等の締結部材55によって、対応するブラケットプレート部27cに連結されている。各ブラケットリンクプレート52とそれに対応するブラケットプレート部27cとは、締結部材55を回動中心として相対回動自在である。
【0033】
各露出部52dは、たとえばリベット等の締結部材56によって、対応する支持プレート部22bに連結されている。各ブラケットリンクプレート52とそれに対応する支持プレート部22bとは、締結部材56を回動中心として相対回動自在である。各露出部52dは、ブラケットリンクプレート52と支持プレート部22bとの間の相対回動の中心の位置を移動させるためのガイド孔52eを有している。本実施形態において、ガイド孔52eは、被覆部52cから露出部52dに亘って延びる貫通孔である。
【0034】
送りナット45の動作は、ナットリンク部材51及びブラケットリンクプレート52を介して、コラムブラケット27に対するロアチューブ22の動作に変換される。たとえば、送りナット45が前方から後方に向かって移動する場合、ブラケットリンクプレート52は、図3において、締結部材54を回動中心としてナットリンク先端部51cに対して時計回り方向に回動することができる。これと同時に、ブラケットリンクプレート52は、図3において、締結部材55を回動中心としてブラケットプレート部27cに対して時計回り方向に回動するとともに、締結部材56を回動中心として支持プレート部22bに対して時計回り方向に回動することができる。つまり、位置調整用モータ41のモータトルクは、ナットリンク部材51及びブラケットリンクプレート52を動作させ、それによってロアチューブ22をコラムブラケット27に対して上下方向、すなわちチルト方向に揺動させる動力に変換される。
【0035】
<リンク機構の動作について>
位置調整用モータ41は、たとえばモータ制御装置60に接続されている。モータ制御装置60には、位置調整用レバー70が接続されている。モータ制御装置60は、位置調整用レバー70に対する運転者による操作であるレバー操作に基づいて、位置調整用モータ41の動作を制御する。モータ制御装置60は、位置調整用レバー70の前方への操作に対して、ねじ軸44を第1方向に回転させるためのモータトルクを発生するように位置調整用モータ41の動作を制御する。第1方向は、送りナット45をハウジング23に接近する方向である前方に移動させるための方向である。モータ制御装置60は、位置調整用レバー70の後方への操作に対して、ねじ軸44を第1方向と反対方向の第2方向に回転させるためのモータトルクを発生するように位置調整用モータ41の動作を制御する。第2方向は、送りナット45をハウジング23から遠ざける方向である後方に移動させるための方向である。
【0036】
図5Aに示す状態は、送りナット45が位置調整用モータ41に、すなわちハウジング23に最も接近する状態である。ナットリンク部材51は、ナットリンク先端部51cが最も下方に位置する状態にある。ブラケットリンクプレート52は、ナット側端部52aが最も前方に位置する状態にある。この場合、ブラケットリンクプレート52は、上下方向の寸法が最も大きくなるとともに、前後方向の寸法が最も小さくなる状態にある。締結部材54と締結部材56とは、前後方向の位置がほぼ一致する状態にある。締結部材56は、締結部材55に対して上方に位置する。アッパチューブ21は最も前方に移動しているとともに、ロアチューブ22は最も上方に移動している。ステアリングホイール7は、前後方向において最も前方の位置に調整され、且つ、上下方向において最も上方の位置に調整されている状態にある。このときのステアリングコラム3の状態を、以下の説明では、第1状態と言う。
【0037】
第1状態において、位置調整用モータ41は、第1方向への回転によって発生するモータトルクによってねじ軸44を回転させる。送りナット45は、ねじ軸44の回転に連動して、ハウジング23から遠ざかる方向である後方に移動する。ナットリンク部材51は、送りナット45の移動に連動して、ナットリンク先端部51cが上方に移動するように回動する。ブラケットリンクプレート52は、送りナット45の移動、及びナットリンク部材51の回動に連動して、ナット側端部52aが後方に移動するように回動する。この場合、ブラケットリンクプレート52は、上下方向の寸法が小さくなるとともに、前後方向の寸法が大きくなるように傾く。締結部材54の位置と締結部材56の位置とは、前後方向において変化していく。締結部材56は、締結部材55に対して上下方向に近付くように下方に移動する。これにより、アッパチューブ21が送りナット45の移動に連動して後方に移動するとともに、ロアチューブ22が送りナット45の移動に連動して下方に移動する。ステアリングホイール7の位置は、後方に移動し且つ下方に移動するように調整される。その後、位置調整用モータ41が第1方向への回転を維持することによってねじ軸44を回転させる結果、送りナット45がねじ軸44の軸方向の移動可能範囲のほぼ中央に移動した状態になる。このときのステアリングコラム3の状態を、以下の説明では、中間状態と言う。
【0038】
中間状態の場合、図5Bに示すように、ナットリンク部材51は、ナットリンク先端部51cの位置がねじ軸44の位置と上下方向においてほぼ一致する状態にある。ブラケットリンクプレート52は、ナット側端部52aがチューブ側端部52bよりも後方に位置する状態にある。この場合、締結部材56の位置は、締結部材55の位置に対して上下方向においてほぼ一致する。アッパチューブ21は前後方向の移動可能範囲のほぼ中間に移動しているとともに、ロアチューブ22は上下方向の移動可能範囲のほぼ中間に移動している。ステアリングホイール7は、前後方向においてほぼ中間の位置に調整され、且つ、上下方向においてほぼ中間の位置に調整されている状態にある。
【0039】
中間状態において、位置調整用モータ41は、第1方向への回転によって発生するモータトルクによってねじ軸44をさらに回転させる。送りナット45は、ねじ軸44の回転に連動して、ハウジング23から遠ざかる方向である後方にさらに移動する。ナットリンク部材51は、送りナット45の移動に連動して、ナットリンク先端部51cがねじ軸44の上方に移動するように回動する。ブラケットリンクプレート52は、送りナット45の移動、及びナットリンク部材51の回動に連動して、ナット側端部52aが後方にさらに移動するように回動する。この場合、ブラケットリンクプレート52は、上下方向の寸法がさらに小さくなるとともに、前後方向の寸法がさらに大きくなるように傾く。締結部材54の位置と締結部材56の位置とは、前後方向にさらに大きくずれていく。締結部材56は、締結部材55の下方に移動する。これにより、アッパチューブ21が送りナット45の移動に連動して後方にさらに移動するとともに、ロアチューブ22が送りナット45の移動に連動して下方にさらに移動する。ステアリングホイール7の位置は、後方にさらに移動し且つ下方にさらに移動するように調整される。その後、位置調整用モータ41が第1方向への回転を維持することによってねじ軸44を回転させる結果、送りナット45がハウジング23から最も離間する状態になる。このときのステアリングコラム3の状態を、以下の説明では、第2状態と言う。
【0040】
第2状態の場合、図5Cに示すように、ナットリンク部材51は、ナットリンク先端部51cが最も上方に位置する状態にある。ブラケットリンクプレート52は、ナット側端部52aが最も後方に位置する状態にある。この場合、ブラケットリンクプレート52は、上下方向の寸法が最も小さくなるとともに、前後方向の寸法が最も大きくなる状態にある。締結部材54と締結部材56とは、上下方向の位置ずれが最も大きくなる状態にある。締結部材56は、締結部材55に対して下方に位置する。アッパチューブ21は最も後方に移動しているとともに、ロアチューブ22は最も下方に移動している。ステアリングホイール7は、前後方向において最も前方の位置に調整され、且つ、上下方向において最も上方の位置に調整されている状態にある。
【0041】
第2状態において、位置調整用モータ41は、第2方向への回転によって発生するモータトルクによってねじ軸44を回転させる。送りナット45は、ねじ軸44の回転に連動して、ハウジング23に最も接近する位置まで前方に移動する。ナットリンク部材51は、送りナット45の移動に連動して、ナットリンク先端部51cが最も下方の位置にまで移動するように回動する。ブラケットリンクプレート52は、送りナット45の移動、及びナットリンク部材51の回動に連動して、ナット側端部52aが最も前方の位置にまで移動するように回動する。この場合、ブラケットリンクプレート52は、上下方向の寸法が最も大きくなるとともに、前後方向の寸法が最も小さくなるように起立する。締結部材54の位置と締結部材56の位置とは、前後方向において変化していく。締結部材56は、締結部材55に対して上下方向に近付くように上昇し、そして、締結部材55の上方へと移動する。これにより、アッパチューブ21が送りナット45の移動に連動して最も前方の位置にまで移動するとともに、ロアチューブ22が送りナット45の移動に連動して最も上方の位置にまで移動する。ステアリングホイール7は、前後方向において最も前方の位置に調整され、且つ、上下方向において最も上方の位置に調整された状態になる。つまり、ステアリングコラム3の状態は、第2状態から中間状態を経て第1状態になる。
【0042】
本実施形態によれば、位置調整用モータ41は、送りねじ機構42を介してリンク機構50を動作させる。リンク機構50は、モータトルクがリンク機構50に伝達される場合、ロアチューブ22のチルト方向への揺動とアッパチューブ21のテレスコピック方向への移動とを連動させるように動作する。これにより、ステアリングホイール7の上下方向の位置と前後方向の位置とを一度に調整することができる。
【0043】
図6において、横軸に沿った方向はテレスコピック方向であり、縦軸に沿った方向はチルト方向である。ステアリングホイール7の位置に関し、図5Aの第1状態に対応する位置P1を始点とし、図5Cの第2状態に対応する位置P2を終点とする。この場合、ステアリングホイール7の位置は、2次元平面内に規定される第1経路に沿って、位置P1から位置P2まで、テレスコピック方向に移動しつつチルト方向に移動する。ステアリングホイール7の位置に関し、図5Cの第2状態に対応する位置P2を始点とし、図5Aの第1状態に対応する位置P1を終点とする。この場合、ステアリングホイール7の位置は、2次元平面内に規定される第2経路に沿って、位置P2から位置P1まで、テレスコピック方向に移動しつつチルト方向に移動する。第1経路及び第2経路は、図5Bの中間状態に対応する位置P3をいずれも経由する。第1経路及び第2経路は、位置P1及び位置P2のどちらが始点か終点であるかに関係なく、互いに同じである。
【0044】
このように、リンク機構50は、アッパチューブ21とロアチューブ22とを連動させるように連結している。ステアリングホイール7の位置は、上下方向及び前後方向のうちいずれか一方の位置が定まると、上下方向及び前後方向のうちの他方の位置が定まる。つまり、ステアリングホイール7の位置は、上下方向の位置と前後方向の位置とが連動して調整される。ステアリングホイール7の位置の調整について、上下方向の位置を調整する機構と前後方向の位置を調整する機構との間で、位置調整用モータ41及び送りねじ機構42を共用することができる。
【0045】
<第1実施形態の効果>
(1-1)ステアリングホイール7の位置の調整について、上下方向の位置を調整する機構と前後方向の位置を調整する機構との間で、位置調整用モータ41及び送りねじ機構42を共用できるので、ステアリングコラム装置1の構成が簡素化されるとともに、体格が小型化される。したがって、ステアリングコラム装置1の車両への搭載性を向上させることができる。
【0046】
(1-2)ステアリングホイール7の位置の調整について、上下方向の位置を調整する機構と前後方向の位置を調整する機構との間で、位置調整用モータ41及び送りねじ機構42に加えて、減速機構43を共用することができる。これにより、ステアリングコラム装置1の構成がさらに簡素化されるとともに、体格がさらに小型化される。したがって、ステアリングコラム装置1の車両への搭載性をさらに向上させることができる。
【0047】
(1-3)送りねじ機構42には、ねじ軸44の配置のために、及び、送りナット45の移動のために、前後方向に延びるスペースが必要である。この点、本実施形態では、ステアリングホイール7の位置の調整について、上下方向の位置を調整する機構と前後方向の位置を調整する機構との間で、送りねじ機構42を共用することで、共用しない場合と比較して、ねじ軸44及び送りナット45のために必要なスペースが半分で済む。これは、ステアリングコラム装置1の車両への搭載性を向上させるのに効果的である。
【0048】
(1-4)リンク機構50がアッパチューブ21に連結されず、送りナット45がアッパチューブ21とリンク機構50とに連結されている。これにより、アッパチューブ21がロアチューブ22の内周部に嵌合される構成において、アッパチューブ21を前後方向へスムーズに移動させることができる。これは、アッパチューブ21がロアチューブ22の内周部に嵌合される構成を採用する場合において、ロアチューブ22の上下方向への揺動とアッパチューブ21の前後方向への移動とをスムーズに連動させるのに効果的である。
【0049】
(1-5)モータ制御装置60は、たとえば運転者が車両から降車する場合、ステアリングコラム3の状態が第1状態になるように位置調整用モータ41の動作を制御する構成とすることができる。また、モータ制御装置60は、たとえば運転者が車両に乗車する場合、ステアリングコラム3の状態が第2状態や、任意状態になるように位置調整用モータ41の動作を制御する構成とすることができる。任意状態は、第1状態と第2状態との間の状態であり、運転者が予め設定して記憶しておくことができる状態である。
【0050】
この場合、運転者が車両から降車する場合、ステアリングホイール7を第1状態に調整することができる。一方、運転者が車両に乗車する場合、ステアリングホイール7を任意状態に調整することができる。これに関し、ステアリングホイール7における上下方向の位置及び前後方向の位置を一度に調整することができる場合、所望の位置への調整を素早く完了させることができる。したがって、運転者が車両から降車、又は車両に乗車する際の利便性を高めることができる。
【0051】
<第2実施形態>
次に、図7図11を参照して第2実施形態を説明する。なお、説明の便宜上、上記第1実施形態と同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図7図9に示すように、ステアリングコラム8は、第1実施形態のアッパチューブ21がロアチューブ22の内周部に嵌合されているのに対して、ロアチューブ82がアッパチューブ81の内周部に嵌合されている点が、第1実施形態と異なる。ステアリングコラム8のコラムブラケット87への連結の構成が第1実施形態と異なる。リンク機構100の構成が第1実施形態と異なる。
【0053】
<ステアリングコラムについて>
図7図10に示すように、ステアリングコラム8は、アッパチューブ81と、ロアチューブ82と、ハウジング83とを有している。ロアチューブ82の前側の第2端には、ハウジング83が設けられている。ロアチューブ82の後側の第1端は、アッパチューブ81の内周部に嵌合されている。
【0054】
アッパチューブ81は、コラムブラケット87を介して車体の固定部BD1に固定されている。コラムブラケット87は、1つ以上のブラケットベース部87aと、ベース連結部87bと、1つ以上のブラケットプレート部87cとを有している。ブラケットベース部87aの形状は、平板状である。ブラケットベース部87aは、車体の固定部BD1に対して対向する平面を有している。本実施形態において、2つのブラケットベース部87aが、アッパチューブ81の幅方向の両側に配置されている。ベース連結部87bの形状は、長板状である。ベース連結部87bは、アッパチューブ81の上方において幅方向に延びている。ベース連結部87bは、2つのブラケットベース部87aを相互に連結する。ブラケットプレート部87cの形状は、平板状である。ブラケットプレート部87cは、アッパチューブ81に対して幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、ブラケットプレート部87cは、2つのブラケットベース部87aに一つずつ設けられている。2つのブラケットプレート部87cは、2つのブラケットベース部87aの幅方向で対向する縁部から下方に延びている。
【0055】
アッパチューブ81は、1つ以上の支持プレート部81bを介してコラムブラケット87に取り付けられている。支持プレート部81bは、たとえば溶接等によってアッパチューブ81に一体化されている。支持プレート部81bの形状は、平板状である。支持プレート部81bは、アッパチューブ81に対して幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つの支持プレート部81bが、アッパチューブ81の幅方向の両側に配置されている。支持プレート部81bは、アッパチューブ81の下方において支持プレート連結部81cによって相互に連結されている。
【0056】
支持プレート部81bは、リンク機構100によって、対応するブラケットプレート部87cに連結されている。支持プレート部81bは、対応するブラケットプレート部87cに対して上下方向に揺動自在に連結されている。
【0057】
ハウジング83の後側の第2部位には、1つ以上のリンク取付部83aが設けられている。リンク取付部83aの形状は、柱状である。リンク取付部83aは、ハウジング83の第2部位から後方に延びている。本実施形態において、2つのリンク取付部83aが、ロアチューブ82の幅方向の両側に配置されている。リンク取付部83aは、リンク機構100によって、対応するブラケットプレート部87cに連結されている。
【0058】
ロアチューブ82は、アッパチューブ81、及びリンク機構100を介してコラムブラケット87に取り付けられている。アッパチューブ81が設けられているロアチューブ82の第1部位は、コラムブラケット87に対して、チルト支持軸29を回動中心として上下方向に揺動自在に取り付けられている。
【0059】
<位置調整用アクチュエータについて>
図7図9に示すように、位置調整用アクチュエータ9の位置調整用モータ91は、ハウジング83の外部に設けられている。送りねじ機構92のねじ軸94は、アッパチューブ81及びロアチューブ82の幅方向の一方側である第1側に配置されている。本実施形態において、第1側は、操舵用アクチュエータ4が設けられている側と同じである。ねじ軸94は、ハウジング83の第2部位からさらに後方に延びている。
【0060】
送りねじ機構92の送りナット95の形状は、円柱状である。送りナット95は、ねじ軸94の周囲に配置されている。送りナット95は、アッパチューブ81の第1側に設けられた支持プレート部81bに固定されている。送りナット95は、たとえば溶接等によって支持プレート部81bに一体化されている。送りナット95は、ねじ軸94の回転に連動してねじ軸94の軸方向に移動する。送りナット95は、アッパチューブ81と共にねじ軸94の軸方向である前後方向に移動する。
【0061】
ステアリングコラム装置1に作用する外部からの衝撃力が所定の離脱荷重を超える場合、アッパチューブ81に対する支持プレート部81bの固定、又は支持プレート部81bに対する送りナット95の固定が解除される。これにより、アッパチューブ81がロアチューブ82に対して後方に移動自在である。
【0062】
<リンク機構について>
図7図9に示すように、リンク機構100は、1つ以上の第1リンク部材101と、1つ以上の第2リンク部材102と、1つ以上の第3リンク部材103とを有している。第1リンク部材101の形状は、長板状である。第1リンク部材101は、支持プレート部81bに対して幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つの第1リンク部材101が、アッパチューブ81の幅方向の両側に配置されている。
【0063】
各第1リンク部材101の第1端は、対応する支持プレート部81bに連結されている。各第1リンク部材101は、たとえばリベット等の締結部材104によって、対応する支持プレート部81bに連結されている。第1リンク部材101と支持プレート部81bとは、締結部材104を回動中心として相対回動自在である。各第1リンク部材101の第2端は、対応する第3リンク部材103に連結されている。
【0064】
第2リンク部材102の形状は、長板状である。第2リンク部材102の長辺の寸法は、第1リンク部材101の長辺の寸法よりも小さい。第2リンク部材102は、アッパチューブ81及びコラムブラケット87の両方に幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つの第2リンク部材102が、アッパチューブ81の幅方向の両側に配置されている。各第2リンク部材102の第1端は、対応するブラケットプレート部87cに連結されている。
【0065】
各第2リンク部材102は、たとえばリベット等の締結部材105によって、対応するブラケットプレート部87cに連結されている。第2リンク部材102とブラケットプレート部87cとは、締結部材105を回動中心として相対回動自在である。各第2リンク部材102の第2端は、対応する第3リンク部材103に連結されている。
【0066】
第3リンク部材103の形状は、長板状である。第3リンク部材103の長辺の寸法は、第1リンク部材101の長辺の寸法よりも大きい。第3リンク部材103は、アッパチューブ81及びロアチューブ82の両方に幅方向で対向する平面を有している。本実施形態において、2つの第3リンク部材103が、アッパチューブ81及びロアチューブ82の幅方向の両側に配置されている。
【0067】
各第3リンク部材103の第2端は、対応するリンク取付部83aに連結されている。各第3リンク部材103は、たとえばリベット等の締結部材106によって、対応するリンク取付部83aに連結されている。第3リンク部材103とリンク取付部83aとは、締結部材106を回動中心として相対回動自在である。各第3リンク部材103の第1端は、対応する第1リンク部材101の第2端に連結されている。各第3リンク部材103は、たとえばリベット等の締結部材107によって、対応する第1リンク部材101に連結されている。第3リンク部材103と第1リンク部材101とは、締結部材107を回動中心として相対回動自在である。各第3リンク部材103の第1端と第2端との間の中間部は、対応する第2リンク部材102の第2端に連結されている。第2リンク部材102が連結される中間部は、第3リンク部材103の第1端と第2端との間の中央に対して第1端側に接近した部位である。各第3リンク部材103の中間部は、たとえばリベット等の締結部材108によって、対応する第2リンク部材102に連結されている。第3リンク部材103と第2リンク部材102とは、締結部材108を回動中心として相対回動自在である。
【0068】
送りナット95の動作は、第1リンク部材101、第2リンク部材102、及び第3リンク部材103を介して、コラムブラケット87に対するロアチューブ82の動作に変換される。たとえば、送りナット95が前方から後方に向かって移動する場合、第1リンク部材101は、図9において、締結部材104を回動中心として支持プレート部81bに対して時計回り方向に回動することができる。これと同時に、第3リンク部材103は、図9において、締結部材107を回動中心として第1リンク部材101に対して反時計回り方向に回動するとともに、締結部材106を回動中心としてリンク取付部83aに対して反時計回り方向に回動することができる。これと同時に、第2リンク部材102は、図9において、締結部材108を回動中心として第3リンク部材103に対して時計回り方向に回動するとともに、締結部材105を回動中心としてブラケットプレート部87cに対して時計回り方向に回動することができる。つまり、位置調整用モータ91のモータトルクは、第1リンク部材101、第2リンク部材102、及び第3リンク部材103を動作させ、それによってロアチューブ82をコラムブラケット87に対して上下方向、すなわちチルト方向に揺動させる動力に変換される。
【0069】
<リンク機構の動作について>
図11Aに示す第1状態は、送りナット95が位置調整用モータ91に、すなわちハウジング83に最も接近する状態である。第1リンク部材101は、締結部材104が設けられた第1端が最も前方且つ最も上方に位置する状態にある。第2リンク部材102は、締結部材108が設けられた第2端が最も後方且つ最も下方に位置する状態にある。第3リンク部材103は、締結部材107が設けられた第1端が最も下方に位置する状態にある。この場合、リンク機構100の全体は、前後方向の寸法が最も小さいとともに、上下方向の寸法が最も大きくなる状態にある。アッパチューブ81は最も前方に移動しているとともに、ロアチューブ82は最も上方に移動している。ステアリングホイール7は、前後方向において最も前方の位置に調整され、且つ、上下方向において最も上方の位置に調整されている状態にある。
【0070】
第1状態において、位置調整用モータ91は、第1方向への回転によって発生するモータトルクによってねじ軸94を回転させる。送りナット95は、ねじ軸94の回転に連動して、ハウジング83から遠ざかる方向である後方に移動する。アッパチューブ81は、送りナット95の移動に連動して後方に移動する。第1リンク部材101は、アッパチューブ81の移動に連動して、第1端が後方及び下方に移動するように回動する。第3リンク部材103は、第1リンク部材101の回動に連動して、第1端が上方に移動するように回動する。第2リンク部材102は、第3リンク部材103の回動に連動して、第2端が前方及び上方に移動するように回動する。この場合、リンク機構100の全体は、前後方向の寸法が大きくなるとともに、上下方向の寸法が小さくなるように動作する。これにより、アッパチューブ81が送りナット95の移動に連動して後方に移動するとともに、ロアチューブ82が送りナット95の移動に連動して下方に移動する。ステアリングホイール7の位置は、後方に移動し且つ下方に移動するように調整される。その後、位置調整用モータ91が第1方向への回転を維持することによってねじ軸94を回転させる結果、ステアリングコラム3は、送りナット95がねじ軸94の軸方向の移動可能範囲のほぼ中央に移動した中間状態になる。
【0071】
中間状態の場合、図11Bに示すように、第1リンク部材101は、第1端が後方及び下方に移動するように回動する結果、第2リンク部材102とほぼ同じだけ傾く。第3リンク部材103は、第1端の位置がねじ軸94の位置と上下方向においてほぼ一致する状態にある。アッパチューブ81は前後方向の移動可能範囲のほぼ中間に移動しているとともに、ロアチューブ82は上下方向の移動可能範囲のほぼ中間に移動している。ステアリングホイール7は、前後方向においてほぼ中間の位置に調整され、且つ、上下方向においてほぼ中間の位置に調整されている状態にある。
【0072】
中間状態において、位置調整用モータ91は、第1方向への回転によって発生するモータトルクによってねじ軸94をさらに回転させる。送りナット95は、ねじ軸94の回転に連動して、ハウジング83から遠ざかる方向である後方にさらに移動する。アッパチューブ81は、送りナット95の移動に連動して後方にさらに移動する。第1リンク部材101は、アッパチューブ81の移動に連動して、第1端が後方及び下方にさらに移動するように回動する。第3リンク部材103は、第1リンク部材101の回動に連動して、第1端が上方にさらに移動するように回動する。第2リンク部材102は、第3リンク部材103の回動に連動して第2端が前方、及び上方にさらに回動する。この場合、リンク機構100の全体は、前後方向の寸法がさらに大きくなるとともに、上下方向の寸法がさらに小さくなるように動作する。これにより、アッパチューブ81が送りナット95の移動に連動して後方にさらに移動するとともに、ロアチューブ82が送りナット95の移動に連動して下方にさらに移動する。ステアリングホイール7の位置は、後方にさらに移動し且つ下方にさらに移動するように調整される。その後、位置調整用モータ91が第1方向への回転を維持することによってねじ軸94を回転させる結果、ステアリングコラム3は、送りナット95がハウジング83から最も離間する第2状態になる。
【0073】
第2状態の場合、図11Cに示すように、第1リンク部材101は、第1端が最も後方且つ最も下方に位置する状態にある。第2リンク部材102は、第2端が最も前方且つ最も上方に位置する状態にある。第3リンク部材103は、第1端が最も上方に位置する状態にある。この場合、リンク機構100の全体は、前後方向の寸法が最も大きいとともに、上下方向の寸法が最も小さくなる状態にある。アッパチューブ81は最も後方に移動しているとともに、ロアチューブ82は最も下方に移動している。ステアリングホイール7は、前後方向において最も後方の位置に調整され、且つ、上下方向において最も下方の位置に調整されている状態にある。
【0074】
第2状態において、位置調整用モータ91は、第2方向への回転によって発生するモータトルクによってねじ軸94を回転させる。送りナット95は、ねじ軸94の回転に連動して、ハウジング83に最も接近する位置まで前方に移動する。アッパチューブ81は、送りナット95の移動に連動して、最も前方の位置にまで前方に移動する。第1リンク部材101は、アッパチューブ81の移動に連動して、第1端が最も前方且つ最も上方の位置にまで移動するように回動する。第3リンク部材103は、第1リンク部材101の回動に連動して、第1端が最も下方の位置にまで移動するように回動する。第2リンク部材102は、第3リンク部材103の回動に連動して、第2端が最も後方且つ最も下方の位置にまで移動するように回動する。この場合、リンク機構100の全体は、前後方向の寸法が最も小さくなるとともに、上下方向の寸法が最も大きくなるように動作する。これにより、アッパチューブ81が送りナット95の移動に連動して最も前方の位置にまで移動するとともに、ロアチューブ82が送りナット95の移動に連動して最も上方の位置にまで移動する。ステアリングホイール7は、前後方向において最も前方の位置に調整され、且つ、上下方向において最も上方の位置に調整された状態になる。つまり、ステアリングコラム3の状態は、第2状態から中間状態を経て第1状態になる。
【0075】
位置調整用モータ91は、送りねじ機構92を介してリンク機構100を動作させる。リンク機構100は、モータトルクがリンク機構100に伝達される場合、ロアチューブ82のチルト方向への揺動とアッパチューブ81のテレスコピック方向への移動とを連動させるように動作する。これにより、上記第1実施形態と同様、ステアリングホイール7の上下方向の位置と前後方向の位置とを一度に調整することができる。
【0076】
このように、リンク機構100は、アッパチューブ81とロアチューブ82とを連動させるように連結している。ステアリングホイール7の位置の調整について、上下方向の位置を調整する機構と前後方向の位置を調整する機構との間で、位置調整用モータ91及び送りねじ機構92を共用することができる。
【0077】
<第2実施形態の効果>
(2-1)リンク機構100がアッパチューブ81に連結され、送りナット95がアッパチューブ81のみに連結されている。これにより、ロアチューブ82がアッパチューブ81の内周部に嵌合される構成において、リンク機構100と送りナット95とを連結する必要がなくなり、ねじ軸94及び送りナット95の配置の制限を緩和することができる。これは、ロアチューブ82がアッパチューブ81の内周部に嵌合する構成を採用する場合において、ステアリングコラム装置1の車両への搭載性を向上させるのに効果的である。
【0078】
<他の実施形態>
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0079】
・上記第1実施形態において、リンク機構50は、アッパチューブ81が最も前方に移動している場合に、ロアチューブ82が最も下方に移動している状態になるように構成されてもよい。この場合、リンク機構50は、アッパチューブ81が最も後方に移動している場合に、ロアチューブ82が最も上方に移動している状態になるように構成されればよい。ここに記載した他の実施形態を採用する場合、上記第1実施形態に準じた効果が得られる。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0080】
・上記第1実施形態において、送りナット45の形状は、リンク機構50にモータトルクを伝達可能な形状である限り、適宜変更可能である。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0081】
・上記第1実施形態において、減速機構43は、削除してもよい。この場合、位置調整用モータ41の回転は、ねじ軸44に直接伝達されてもよい。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0082】
・上記第1実施形態では、送りナット45は、ロアチューブ22と連結することもできる。この場合、送りナット45の前後方向への移動に連動してロアチューブ22が上下方向へ揺動できるようにするためのリンク機構を追加等すればよい。また、リンク機構50は、ここに記載した送りナット45の前後方向への移動に連動してアッパチューブ21が前後方向に移動するように構成すればよい。これは、上記第2実施形態についても同様である。
【0083】
・上記第1実施形態では、リンク機構50のナットリンク部材51、及びブラケットリンクプレート52の形状は、ステアリングホイール7について、上下方向の位置の調整と前後方向の位置の調整とが可能な場合、適宜変更可能である。これは、支持プレート部22b、及びブラケットプレート部27cについても同様である。ここに記載した他の実施形態は、上記第2実施形態に対しても同様に適用できる。この場合、上記第2実施形態では、リンク機構100の第1リンク部材101、第2リンク部材102、及び第3リンク部材の形状は、ステアリングホイール7について、上下方向の位置の調整と前後方向の位置の調整とが可能な場合、適宜変更可能である。これは、支持プレート部81b、及びブラケットプレート部87cについても同様である。
【0084】
・上記各実施形態において、ステアリングコラム装置1は、ステアリングホイール7と転舵輪との間の動力伝達路が機械的に分離したステアバイワイヤ式のステアリング装置の一部を構成してもよい。
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