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特許7624515長期および高温保管後のバッテリ寿命の延長
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-22
(45)【発行日】2025-01-30
(54)【発明の名称】長期および高温保管後のバッテリ寿命の延長
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20250123BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250123BHJP
【FI】
H02J7/04 B
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023530643
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 US2022078689
(87)【国際公開番号】W WO2023107785
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】63/265,020
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジェイムズ・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】イェ,チャン・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユアンダン
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-143769(JP,A)
【文献】特開2019-092339(JP,A)
【文献】特開2018-198473(JP,A)
【文献】特開2019-106333(JP,A)
【文献】国際公開第2015/162877(WO,A1)
【文献】特開2000-277168(JP,A)
【文献】特開2009-181910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
G01R 11/00-11/66
G01R 21/00-22/10
G01R 35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスによって行なわれる方法であって、前記方法は、
前記電子デバイスのバッテリを充電するための外部電源への電気的接続を検出するステップと、
前記検出するステップに応答して前記バッテリの充電を遅らせるステップと、
1つ以上の現在のバッテリ状態を判定するステップと、
直近の充電イベントと前記外部電源への前記電気的接続の検出の時間との間で、前記バッテリの以前のバッテリ状態を判定するステップとを含み、前記以前のバッテリ状態は、前記バッテリの温度データとバッテリ使用データとを含み、前記バッテリ使用データは、前記バッテリがある持続時間にわたってアイドル状態または低電力状態にあったことを示し、前記方法はさらに、
前記温度データに基づいて、前記持続時間にわたる前記バッテリの平均温度を示す値を判定するステップと、
前記1つ以上の現在のバッテリ状態と、前記持続時間が時間しきい値よりも大きいことと、前記平均温度を示す前記値が温度しきい値よりも大きいこととに基づいて、前記バッテリのための充電モードを開始する前に放電モードを適用するステップとを含み、前記放電モードは、複数の放電プロファイルのうちの少なくとも1つに従って前記バッテリを放電するように構成され、前記方法はさらに、
前記放電モードの完了後、複数の充電プロファイルのうちの少なくとも1つに従って前記バッテリを充電するために前記充電モードを適用するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記複数の放電プロファイルは、前記電子デバイスに第1の予め規定された期間にわたって第1の放電速度で前記バッテリを放電させるように構成された第1の放電プロファイルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の放電プロファイルは、対応する期間を各々有する複数の放電速度を有するステッププロファイルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の放電プロファイルの前記複数の放電速度は、前記対応する期間に従って順次適用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の現在のバッテリ状態は、前記バッテリの現在の充電状態を含み、
前記方法はさらに、前記現在の充電状態がしきい値レベル充電状態を下回ることに基づいて、前記複数の放電プロファイルから前記第1の放電プロファイルを選択するステップを含み、
前記放電モードを適用するステップは、前記第1の放電プロファイルに従って前記放電モードを適用するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記しきい値レベル充電状態は、80%の充電状態と30%の充電状態との間の範囲を規定する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の放電プロファイルは、前記第1の放電プロファイルとは異なる第2の放電プロファイルを含み、
前記1つ以上の現在のバッテリ状態は、前記バッテリの現在の充電状態を含み、
前記方法はさらに、前記現在の充電状態が、前記第1の放電プロファイルに関連付けられた第1のしきい値レベル充電状態とは異なる第2のしきい値レベル充電状態を下回ることに基づいて、前記複数の放電プロファイルから前記第2の放電プロファイルを選択するステップを含み、
前記放電モードを適用するステップは、前記第2の放電プロファイルに従って前記放電モードを適用するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の放電プロファイルは、第2の予め規定された期間にわたって少なくとも第2の放電速度で前記バッテリを放電するように構成され、
前記第2の放電速度は前記第1の放電速度とは異なる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の放電プロファイルは、対応する期間を各々有する複数の放電速度を有するステッププロファイルであり、
前記第2の放電プロファイルの前記複数の放電速度は、前記対応する期間に従って順次適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のしきい値レベル充電状態は、30%の充電状態を規定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記放電モードの前記完了に応答して、および前記充電モードを適用する前に、事前充電プロファイルに従って前記バッテリを充電するために事前充電モードを適用するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記事前充電プロファイルは、第1の予め規定された期間にわたって少なくとも第1の遅い充電速度を規定する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記事前充電プロファイルはさらに、第2の予め規定された期間にわたって第2の遅い充電速度を規定し、
前記第2の遅い充電速度は前記第1の遅い充電速度よりも大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バッテリを放電するために使用される前記複数の放電プロファイルのうちの前記少なくとも1つに基づいて、複数の事前充電プロファイルから前記事前充電プロファイルを選択するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
電子デバイスであって、
前記電子デバイスに電力を提供するためのバッテリと、
コンピュータ実行可能な命令を格納するためのメモリと、
バッテリマネージャモジュールを実現するために前記メモリに格納された前記命令を実行するためのプロセッサとを含み、前記バッテリマネージャモジュールは、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法を行なうように構成される、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
多くのバッテリ駆動式デバイスは屋外に配置されており、特に直射日光にさらされる場合には高温環境にさらされる。しかしながら、そのような高温に長期間にわたってさらされることは、バッテリを劣化させ得る。いくつかの屋外デバイス(たとえば、「スマートホーム」システムの一部として使用されるデバイス、モバイルデバイス)にとっては、安全性および長寿命(たとえば3年以上)のために高温暴露に耐えることができるバッテリを有することが望ましい。
【0002】
リチウムイオン(Liイオン)バッテリは、より高温で劣化を受けやすく、老朽化の加速、過電圧、およびガス発生をもたらす。Liイオンバッテリはまた、より低電圧で劣化を受けやすく、銅溶解およびガス発生をもたらす。そのような劣化を防止するために、多くのLiイオンバッテリは、長寿命のために中間範囲の充電状態(state-of-charge:SOC)(たとえば、30%~80%のSOC)で保持される。そのような中間範囲のSOCは一般に、Liイオンバッテリにとって安定していると考えられている。
【0003】
いくつかのバッテリは、長期間(たとえば1週間以上)にわたって保管されてから、室温と平衡するよう放置され、その後、充電された後に、熱イベントを経験するかもしれない。これらの熱イベントは、高温保管に起因するバッテリのアノード表面でのLiめっきによって引き起こされるかもしれず、それは、特に中および低充電状態でのそのような状態からのその後の室温充電時に、グラファイト/アノード材料の動力学的(拡散)プロセスに影響を与えた。また、バッテリは、グラファイト/アノード表面でのリチウム金属の電解質減少に起因して熱を生成し、発熱エネルギーを放出した。これらの熱イベントは容量劣化および活性リチウムの消費を引き起こし、バッテリの寿命を減少させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概要
本文書は、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための手法を記載する。これらの手法は、バッテリの充電を遅らせて、バッテリ状態を検出し、バッテリが長期間にわたってアイドル状態または低電力状態にあった間に高温にさらされたかどうかを判定する。これらの手法は、高温保管後、「通常」充電プロファイルを開始する前に、独特の調整された放電を通してバッテリのアノード表面を緩めてリフレッシュするための方法論を含む。これらの手法は、長期高温保管によって引き起こされるリチウムめっきおよび容量劣化を減少させることによってバッテリの長寿命を延長するために、動力学的(Liイオン)限界を有し得る広範な化学プラットフォームに適用され得る。
【0005】
いくつかの局面では、電子デバイスによって行なわれる方法が開示される。方法は、電子デバイスのバッテリを充電するための外部電源への電気的接続を検出するステップと、検出するステップに応答してバッテリの充電を遅らせるステップとを含む。方法はさらに、1つ以上の現在のバッテリ状態を判定するステップと、直近の充電イベントと外部電源への電気的接続の検出の時間との間で、バッテリの以前のバッテリ状態を判定するステップとを含む。いくつかの実現化例では、以前のバッテリ状態は、バッテリの温度データとバッテリ使用データとを含む。いくつかの実現化例では、バッテリ使用データは、バッテリがある持続時間にわたってアイドル状態または低電力状態にあったことを示す。方法はまた、温度データに基づいて、当該持続時間にわたるバッテリの平均温度を示す値を判定するステップを含む。加えて、方法は、1つ以上の現在のバッテリ状態と、当該持続時間が時間しきい値よりも大きいことと、平均温度を示す値が温度しきい値よりも大きいこととに基づいて、バッテリのための充電モードを開始する前に放電モードを適用するステップを含む。いくつかの実現化例では、放電モードは、複数の放電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを放電するように構成される。また、方法は、放電モードの完了後、複数の充電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを充電するために充電モードを適用するステップを含む。
【0006】
他の局面では、電子デバイスが開示される。電子デバイスは、電子デバイスに電力を提供するためのバッテリと、コンピュータ実行可能な命令を格納するためのメモリと、バッテリマネージャモジュールを実現するためにメモリに格納された命令を実行するためのプロセッサとを含む。バッテリマネージャモジュールは、電子デバイスのバッテリを充電するための外部電源への電気的接続を検出し、検出に応答して、バッテリの健全性チェックを行なうためにバッテリの充電を遅らせるように構成される。バッテリマネージャモジュールはまた、1つ以上の現在のバッテリ状態を判定し、直近の充電イベントと外部電源への電気的接続の検出の時間との間で、バッテリの以前のバッテリ状態を判定するように構成される。いくつかの実現化例では、以前のバッテリ状態は、バッテリの温度データとバッテリ使用データとを含み、バッテリ使用データは、バッテリがある持続時間にわたってアイドル状態または低電力状態にあったことを示す。加えて、バッテリマネージャモジュールはさらに、温度データに基づいて、当該持続時間にわたるバッテリの平均温度を示す値を判定するように構成される。バッテリマネージャモジュールはまた、1つ以上の現在のバッテリ状態と、当該持続時間が時間しきい値よりも大きいことと、平均温度を示す値が温度しきい値よりも大きいこととに基づいて、バッテリのための充電モードを開始する前に放電モードを適用するように構成され、放電モードは、たとえばバッテリのアノード構造を緩めてリフレッシュするように、複数の放電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを放電するように構成される。加えて、バッテリマネージャモジュールは、放電モードの完了後、複数の充電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを充電するために充電モードを適用するように構成される。
【0007】
この概要は、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長する簡略化された概念を紹介するために提供され、それは、以下の詳細な説明においてさらに説明される。この概要は、請求される主題の本質的特徴を識別するよう意図されておらず、また、請求される主題の範囲を定める際に使用されるよう意図されてもいない。
【0008】
図面の簡単な説明
長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長する1つ以上の局面の詳細が、この文書において、以下の図面を参照して説明される。同じ特徴および構成要素を参照するために、同じ番号が、図面全体を通して使用される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書で説明される手法に従ったバッテリ駆動式電子デバイスの例示的な一実現化例を示す図である。
図2図1からの電子デバイスの例示的な一実現化例をより詳細に示す図である。
図3】リチウムイオンバッテリの例示的な基本構造を示す図である。
図4】Liイオンバッテリのグラファイトアノード材料充電/放電動力学の例示的な一実現化例を示す図である。
図5図1からのバッテリマネージャモジュールの例示的な一実現化例をより詳細に示す図である。
図6】長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための例示的な方法を表わす図である。
図7】長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための例示的な方法を表わす図である。
図8】長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための例示的な方法を表わす図である。
図9】電子デバイスのバッテリを充電する前にバッテリのアノード表面を概して緩めてリフレッシュするための方法を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本文書は、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための手法を記載する。本明細書で説明されるこれらの手法は、バッテリが、その次の充電サイクルの前に、どれくらい長くアイドリングまたは低電力動作してきたか、および、どれくらい長く、比較的長時間にわたってより高温にさらされてきたかを追跡する。充電時、通常充電が許容可能かどうか、または、バッテリ長寿命手法が実現されることになっているかどうかをシステムが計算し判定できるようになるまで、即時充電は遅らされる。バッテリ長寿命手法が利用可能である場合、化学プラットフォームおよびバッテリのSOCに依存して、バッテリはまず、低速またはパルス速度で放電されてから、低速またはパルス速度で充電されて、通常充電プロファイルを開始する前にアノード構造を緩めてリフレッシュすることを可能にする。
【0011】
本明細書で説明される手法は、バッテリのための高められた安全性、信頼性、性能、および持続性/長寿命を提供する。たとえば、説明された手法を実現することは、バッテリのアノード構造上のリチウムめっきを減少させ、それは次に、潜在的な発熱エネルギー放出を減少させる。また、これらの手法を使用することは、高温保管後のデバイスの耐久性を高めることによって、デバイスのためのより広い屋外動作温度範囲を提供する。さらに、これらの手法はバッテリの容量劣化を減少させ、それは、バッテリの長期性能および持続性を高め、より長いサイクル寿命を提供し、バッテリ長寿命を強化する。
【0012】
第1の例では、バッテリ駆動式デバイスが、バッテリが中間範囲のSOCである間に、長時間にわたって高温にさらされる。そのような例で、夏季にアリゾナ(Arizona)州フェニックス(Phoenix)に位置するバッテリ駆動式カメラがフル充電されて、時間の大半にわたってカメラをアイドル状態のままにしておく比較的低い活動エリアに配置されると仮定する。ある時点で、ユーザは、充電するためにカメラを屋内に取り込み、それは、カメラのバッテリの温度を下げ、バッテリ動力学を遅くする。ユーザは、充電のためにカメラのプラグを差し込む。バッテリマネージャモジュールは、(i)バッテリが長時間、しきい値放電速度(たとえば、放電速度C/50)よりも大きい速度で放電しなかったこと、(ii)バッテリSOCが中間範囲のSOC(たとえば、30%~80%のSOC)であること、および(iii)(たとえば1週間を上回る)しきい値時間量よりも長い間、バッテリ温度が平均してしきい値温度(たとえば70℃)を上回ったことを検出する。これらの状態に起因して、バッテリマネージャモジュールは、充電遅延を実現し、バッテリ健全性チェックを開始する。次に、バッテリを直ちに充電する代わりに、バッテリマネージャモジュールはバッテリに、まず、たとえば放電速度C/50で5分間、次に、たとえば放電速度C/5で1分間、放電させる。放電に続いて、事前充電が、たとえば充電速度C/50で30秒間、次に、たとえば充電速度C/5で3分間、行なわれる。放電および事前充電の完了後、バッテリマネージャモジュールは、通常充電プロファイルを開始する。
【0013】
別の例では、バッテリ駆動式カメラは、バッテリが低範囲のSOCでアイドル状態または低電力状態にある間に、長時間にわたって高温にさらされる。この事例では、バッテリ駆動式カメラは、(夏季に)アリゾナ州フェニックスに位置し、フル充電されて、適度に高い活動エリアの近くに配置される。最初はかなりの活動があり、それはバッテリを30%未満のSOCまで駆動し、その後、家族が2週間休暇に出かける。この2週間の期間中、カメラは、大半の時間にわたってアイドル状態にある。家族は帰宅し、充電するためにカメラを屋内に取り込む。バッテリマネージャモジュールは、(i)バッテリが長時間、たとえば放電速度C/50よりも大きい速度で放電しなかったこと、(ii)バッテリSOCがたとえば30%未満であること、および(iii)バッテリ温度が、1週間よりも長い間、平均してたとえば67℃であったことを検出する。これらの状態に基づいて、バッテリマネージャモジュールは、充電遅延をトリガし、バッテリ健全性チェックを開始する。次に、バッテリマネージャモジュールは、たとえば、5分間、放電速度C/50で、1ヘルツ(Hz)で低周波数パルス放電を開始し、次に、たとえば、1分間、放電速度C/5で、1キロヘルツ(kHz)で高周波数パルス放電を開始し、それに続いて、事前充電が、たとえば充電速度C/50で30秒間、次に、たとえば充電速度C/5で3分間、行なわれる。パルス放電および事前充電の完了後、バッテリマネージャモジュールは、通常充電プロファイルを開始する。
【0014】
さらに別の例では、バッテリ駆動式カメラは、バッテリが消耗される間に、長時間にわたって高温にさらされる。この例では、バッテリ駆動式カメラは、バッテリが0%のSOCまで消耗されてカメラがオフになるようにカメラの動作を(たとえば運動検出センサを介して)トリガする活動を有する高活動エリアに配置される。その後、家族が、カメラを充電せずに2週間休暇に出かける。この2週間の期間中、カメラはオフのままである。家族はその後帰宅し、カメラを屋内に取り込み、充電のためにカメラのプラグを電源に差し込む。最初は、充電遅延が生じる。なぜなら、システムは外部電源を用いて電源を入れるが、バッテリはシステム起動には低過ぎるためである。また、バッテリは、不足電圧保護(undervoltage protection:UVP)状態にあり、ゼロの電圧出力を有し得る。バッテリマネージャモジュールはバッテリ健全性チェックをトリガし、システムは、内部デバイス温度との地理的位置および位置温度相関に(履歴的に、または近接する同様のデバイスに)基づいて、バッテリがおそらく高温にさらされていたかどうかを推定するためにチェックする。バッテリマネージャモジュールは、(i)バッテリが長時間、たとえば放電速度C/50よりも大きい速度で放電しなかったこと、(ii)バッテリSOCがたとえば0%以下(たとえば、3.0ボルト(V)~1.0Vの範囲)であること、および(iii)バッテリ温度が、1週間よりも長い間、平均してたとえばおそらく71℃であったことを検出する。これらの状態に起因して、バッテリマネージャモジュールはデフォルトの事前充電プロファイルを開始して、たとえばC/50で60秒間、または、UVPしきい値に達してバッテリが放電電界効果トランジスタ(field-effect transistor:FET)を安定して閉鎖することができる(たとえば、それを再び開放するための電圧バウンスがない)ようになるまで、バッテリをゆっくり充電し、次に、たとえばC/5で5分間、>3.0Vのしきい値で、または、化学が事前充電状態から高速充電状態へ移行した場合に、バッテリを充電する。事前充電シーケンスの後で、バッテリマネージャモジュールは、バッテリを100%のSOCまで充電するために室温で通常充電モードに入る前に、バッテリに(たとえば、放電速度C/50で5分間、次に、放電速度C/5で1分間)放電させ、その後、(たとえば、充電速度C/50で30秒間、次に、充電速度C/5で3分間)事前充電させる。
【0015】
長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための説明された手法の特徴および概念は任意の数の異なる環境で実現され得るが、複数の局面が、以下の例の文脈において説明される。
【0016】
例示的なデバイス
図1は、本明細書で説明される手法に従ったバッテリ駆動式電子デバイスの例示的な一実現化例100を示す。図示される例は、電子デバイス102に電力を提供するバッテリ104を有する電子デバイス102を含む。電子デバイス102はまた、バッテリマネージャモジュール106を含み、それは、バッテリ104を監視して管理するように構成され、バッテリ104の充電イベントを制御することと、バッテリ健全性を監視することとを含む。バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ健全性をチェックし、バッテリ104に関する問題を検出すると通知(たとえばアラート)を提供するように構成される。充電イベントを制御することにより、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ104内の化学劣化およびイオン消費を減少させるようにバッテリ104の充電を最適化することができ、それにより、バッテリ104の寿命を延長する。複数の局面では、電子デバイス102に電流を提供する外部電源108(たとえば、コンセント、モバイルバッテリ(power bank)、コンピューティングデバイス)に電子デバイス102が結合されると、充電イベントが生じる。外部電源108への結合は、有線接続(たとえばケーブル)であってもよく、または、無線接続(たとえば誘導コイルを使用)であってもよい。
【0017】
バッテリ104は、任意の好適な再充電可能バッテリであり得る。本明細書で説明されるような例示的なバッテリ104(図2および図3参照)は、リチウムイオン(Liイオン)バッテリである。任意の好適なLiイオンバッテリ化学が実現され得る。
【0018】
バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ充電マネージャ110と、バッテリ状態マネージャ112とを含む。バッテリ充電マネージャ110は、バッテリ104を充電および放電するための事前充電プロファイル114、充電プロファイル116、および放電プロファイル118をそれぞれ作成して選択するように構成される。事前充電プロファイル114および充電プロファイル116は、バッテリ104を充電するための充電速度および対応する期間を規定する。事前充電プロファイル114および/または充電プロファイル116のいずれかが、各ステップの充電速度および/または対応する期間を調節する(たとえば増減する)ステッププロファイルであってもよい。放電プロファイル118は、バッテリ104を放電するための放電速度および対応する期間を規定する。放電プロファイル118のいずれかが、各ステップの放電速度および/または対応する期間を調節する(たとえば増減する)ステッププロファイルであってもよい。
【0019】
バッテリ状態マネージャ112は、直近の充電イベントから外部電源108への接続が検出されたとき(または、バッテリ充電要求が受信されたとき)までの第1の期間にわたって、バッテリ使用データ120を判定する。バッテリ使用データ120は、バッテリ104がアイドル状態(オフ状態を含む)または低電力状態にあった持続時間(たとえば、第1の期間内の第2の期間)を示し得る。アイドル状態または低電力状態中、電子デバイス102は事実上、「使用中」であるというよりはむしろ、「保管」されている。
【0020】
バッテリ状態マネージャ112はまた、第1の期間中に温度データ122および充電状態データ124(SOCデータ124)を判定してもよい。別の例では、バッテリ状態マネージャ112は、第2の期間中にのみ温度データ122およびSOCデータを判定してもよく、それは、待ち時間および計算要件を減少させ得る。
【0021】
温度データ122は、第1の期間または第2の期間にわたるバッテリ104の内部温度(たとえば履歴温度)を含んでいてもよい。バッテリ状態マネージャ112は、第2の期間にわたるバッテリ104の平均温度を示す値を計算してもよく、それは、バッテリ104が長期間にわたって高温にさらされたかどうかを判定するために使用され得る。いくつかの局面では、温度データ122は、電子デバイス102の位置(たとえば地理的位置)に対応する地域における環境温度に基づいて推定されてもよい。環境温度は、ネットワーク(たとえばネットワーク126)を通してサーバから取得されてもよい。
【0022】
SOCデータ124は、電子デバイス102が外部電源108に電気的に結合されたときのバッテリ104の現在のSOC(たとえば0%、2%、10%、23%、30%、50%、80%、98%)を含み得る。別の例では、現在のSOCデータは、充電イベントの時点(たとえば、外部電源108が電子デバイス102に接続されてからしばらく経った時点)でのバッテリ104のSOCを表わしていてもよい。
【0023】
電子デバイス102はまた、ネットワーク126を通して1つ以上のデバイスまたはサーバと通信するように構成され得る。限定ではなく例示として、電子デバイス102は、ローカルエリアネットワーク(local-area-network:LAN)、無線ローカルエリアネットワーク(wireless local-area-network:WLAN)、パーソナルエリアネットワーク(personal-area-network:PAN)、ワイドエリアネットワーク(wide-area-network:WAN)、イントラネット、インターネット、ピアツーピアネットワーク、ポイントツーポイントネットワーク、またはメッシュネットワークを通してデータを通信し得る。
【0024】
ここで、図1からの電子デバイスの例示的な一実現化例をより詳細に示す図2を検討する。図2の電子デバイス102は、スマートフォン102-1、タブレット102-2、ラップトップ102-3、セキュリティカメラ102-4、コンピューティングウォッチ102-5、コンピューティング眼鏡102-6、ゲーミングシステム102-7、ビデオ録画ドアベル102-8、およびスピーカ102-9を含む、さまざまな例示的なデバイスを有して示される。電子デバイス102はまた、他のデバイス、たとえば、テレビ、娯楽システム、オーディオシステム、プロジュクタ、自動車、ドローン、トラックパッド、ドローイングパッド、ネットブック、電子書籍リーダ、ホームセキュリティシステム、および他の家電を含み得る。なお、電子デバイス102は、モバイルであってもよく、ウェアラブルであってもよく、非ウェアラブルであるもののモバイルであってもよく、または、比較的非モバイル(たとえばデスクトップおよび機器)であってもよい。
【0025】
電子デバイス102は、バッテリ(たとえばバッテリ104)を含む。バッテリ104は、任意の好適な再充電可能バッテリであり得る。一例では、バッテリ104は、Liイオンバッテリであってもよい。さまざまな異なるLiイオンバッテリ化学が実現されてもよく、それらのいくつかの例は、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、酸化マンガンリチウム(LiMn2O4スピネル、またはLi2MnO3系リチウム過剰層状材料、LMR-NMC)、およびリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiMnCoO2、Li-NMC、LNMC、NMC、またはNCM)を含む。多くのバッテリは、(たとえば80%のSOCを上回る)より高電圧、および(たとえば20%のSOCを下回る)より低電圧で化学劣化を受けやすい。この受けやすさのため、バッテリ寿命は、中間範囲のSOC(たとえば、約50%を含む20%~80%)で維持(使用および保管)されれば、著しく延長可能である。多くのバッテリはまた、熱暴走を含む、60℃を上回る熱イベントに影響されやすい。いくつかのバッテリは、それらの化学に起因して、熱イベントを経験する前に80℃までの温度に耐えることができる。バッテリが長期間にわたって(たとえば60℃または80℃を上回る)高温で中間範囲のSOC内で(たとえばアイドル状態またはより低い電力状態で)保管された場合、追加の熱イベントが観測されてきた。そのような状況では、バッテリ内のセルがガスで膨張し、場合によっては、封止材が開いて外側のナイロンパウチ材料が熱分解するかもしれない。
【0026】
電子デバイス102は、電子デバイス102の動作を制御し、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための手法を可能にするために、さまざまなコンピュータ実行可能命令を処理することができる、1つ以上のプロセッサ202(たとえば、マイクロプロセッサ、コントローラ、または他のコントローラのうちのいずれか)を含む。それに代えて、またはそれに加えて、プロセッサ202は、処理回路および制御回路に関連して実現されるハードウェア要素、ファームウェア、または固定論理回路のうちのいずれか1つまたはそれらの組合せを用いて実現され得る。図示されていないものの、電子デバイス102は、デバイス内のさまざまなコンポーネントを結合するシステムバスまたはデータ転送システムを含み得る。システムバスは、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、ユニバーサルシリアルバス、および/または、さまざまなバスアーキテクチャのうちのいずれかを利用するプロセッサまたはローカルバスといった、異なるバス構造のうちのいずれか1つまたはそれらの組合せを含み得る。
【0027】
電子デバイス102はまた、永続的および/または非一時的(すなわち、単なる信号伝送とは対照的である)データストレージを可能にする1つ以上のメモリデバイスといった、コンピュータ読取可能媒体(computer-readable media:CRM)204を含み、その例は、ランダムアクセスメモリ(random access memory:RAM)、不揮発性メモリ(たとえば、読出専用メモリ(read-only memory:ROM)、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどのうちのいずれか1つ以上)、および、ディスクストレージデバイスを含む。ディスクストレージデバイスは、ハードディスクドライブ、記録可能および/または書換可能コンパクトディスク(compact disc:CD)、任意のタイプのデジタル多用途ディスク(digital versatile disc:DVD)といった、任意のタイプの磁気または光学記憶デバイスとして実現されてもよい。
【0028】
コンピュータ読取可能媒体204は、さまざまなデバイスアプリケーション206、オペレーティングシステム208、メモリ/ストレージ、ならびに、電子デバイス102の動作局面に関する他のタイプの情報および/またはデータを格納するためのデータストレージメカニズムを提供する。たとえば、オペレーティングシステム208は、本明細書で説明される機能性のうちのいくつかまたはすべてを提供するために、コンピュータ読取可能媒体204内のコンピュータアプリケーションとして維持され、プロセッサ202によって実行され得る。デバイスアプリケーション206は、任意の形態の制御アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、または信号処理および制御モジュールといった、デバイスマネージャを含み得る。デバイスアプリケーション206はまた、バッテリマネージャモジュール106といった、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための手法を実現するためのシステムコンポーネント、エンジン、またはマネージャを含み得る。電子デバイス102はまた、1つ以上の機械学習システムを含むか、または、当該機械学習システムへのアクセスを有し得る。
【0029】
CRM204はまた、バッテリマネージャモジュール106に加えて、サイクルカウンタ210と温度モジュール212とを含み得る。サイクルカウンタ210は、バッテリ104の充電放電サイクルの量を追跡する。サイクルカウンタ210はまた、バッテリ104が充電開始前にフル放電されていない場合、または、バッテリ104が放電開始前にフル充電されていない場合などに、部分的なサイクルを勘案し得る。サイクルカウンタ210はまた、充電イベント(たとえばバッテリ104の充電)がいつ生じるかを追跡し、直近の充電イベントがいつ生じたかについての表示を提供し得る。そのような表示は、現在の充電イベントと直近の充電イベントとの間を含む、2つの充電イベント間の時間の長さを判定するために使用され得る。
【0030】
温度モジュール212は、バッテリ104の温度を判定する。複数の局面では、温度モジュール212は、温度データ122(たとえば、図1の温度データ122)を提供するためにバッテリ104の温度を経時的に監視する。温度データ122は、2つの充電イベント間の時間の長さにわたってバッテリ104の温度を判定するために使用され得る。また、温度データ122は、バッテリ104が長期間(たとえば、時間しきい値よりも大きい期間)にわたってアイドル状態または低電力状態にあった間に、バッテリ104が高温にさらされたかどうかを判定するために使用される。
【0031】
温度モジュール212はまた、電子デバイス102のオフ状態中にバッテリ104がおそらくさらされていた温度を推定し得る。たとえば、温度モジュール212は、気象情報(たとえば、電子デバイス102の位置に対応する地理的地域(たとえば場所、位置、エリア、市)についてサーバから取得された気象情報)を、電子デバイス102の履歴温度データと組合せて使用して、オフ状態中にバッテリ104がおそらくさらされた温度を推定(たとえば外挿)することができる。たとえば、周囲温度が約40℃であるときにバッテリ温度が典型的にはたとえば70℃に達した場合、温度モジュール212は、バッテリがオフ状態にあるときの周囲温度が40℃であると仮定して、バッテリ温度はおそらく約70℃であったと推定することができる。推定されるバッテリ温度は、アルゴリズム的にまたはルックアップテーブルを使用することを含む、任意の好適なやり方で判定され得る。
【0032】
バッテリマネージャモジュール106のさまざまな実現化例は、システムオンチップ(System-on-Chip:SoC)、1つ以上の集積回路(Integrated Circuit:IC)、埋め込まれたプロセッサ命令を有するかまたはメモリに格納されたプロセッサ命令にアクセスするように構成されたプロセッサ、埋め込まれたファームウェアを有するハードウェア、さまざまなハードウェアコンポーネントを有するプリント回路基板、またはそれらの任意の組合せを含み、もしくは、それらと通信することができる。
【0033】
電子デバイス102はまた、通信モジュール214(たとえばネットワークインターフェイス)を含み得る。電子デバイス102は、有線、無線または光学ネットワーク(たとえばネットワーク126)を通してデータを通信するために通信モジュール214を使用することができる。限定ではなく例示として、通信モジュール214は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、イントラネット、インターネット、ピアツーピアネットワーク、ポイントツーポイントネットワーク、またはメッシュネットワークを通してデータを通信し得る。通信モジュール214は、シリアルおよび/またはパラレルインターフェイス、無線インターフェイス、任意のタイプのネットワークインターフェイス、モデム、または任意の他のタイプの通信インターフェイスのうちの1つ以上として実現され得る。通信モジュール214を使用して、電子デバイス102は、リソースを有するプラットフォームにアクセスするためにクラウドコンピューティングサービス(たとえばネットワーク126)を介して通信し得る。いくつかの局面では、電子デバイス102は、通信モジュール214を使用してソフトウェア更新を検索し、バッテリマネージャモジュール106が電子デバイス102上で更新および/または実現されることを可能にし得る。
【0034】
電子デバイス102はまた、1つ以上のセンサ216を含み、それらは、音声センサ(たとえばマイク)、タッチ入力センサ(たとえばタッチスクリーン、指紋センサ、容量性タッチセンサ)、画像取込デバイス(たとえばカメラまたはビデオカメラ)、近接センサ(たとえば容量性センサ)、または周囲光センサ(たとえば光検出器)を含む、さまざまなセンサのうちのいずれかを含み得る。
【0035】
電子デバイス102はまた、ディスプレイデバイス(たとえばディスプレイデバイス218)を含み得る。ディスプレイデバイス218は、任意の好適なタッチ感知式ディスプレイデバイス、たとえば、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)、薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)LCD、イン・プレース・スイッチング(in-place switching:IPS)LCD、容量性タッチスクリーンディスプレイ、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode:OLED)ディスプレイ、アクティブマトリクス有機発光ダイオード(active-matrix organic light-emitting diode:AMOLED)ディスプレイ、スーパーAMOLEDディスプレイなどを含み得る。ディスプレイデバイス218は、デジタルコンテンツがスクリーン上に表示されるように、ディスプレイまたはスクリーンと呼ばれ得る。
【0036】
図示されていないものの、電子デバイス102はまた、データを受信し提供するためのI/Oインターフェイスを含む。たとえば、I/Oインターフェイスは、タッチ感知式入力、容量性ボタン、マイク、キーボード、マウス、加速度計、ディスプレイ、発光ダイオード(LED)インジケータ、スピーカ、または触覚フィードバックデバイスのうちの1つ以上を含み得る。
【0037】
上述の説明に加えて、ユーザは、本明細書で説明されるシステム、プログラムまたは特徴がユーザ情報(たとえば、ユーザの社会的ネットワーク、社会的行為または活動、職業、ユーザの好み、ユーザの現在位置、ユーザのカレンダースケジュール、またはユーザの予定された活動に関する情報)の収集を可能にし得る場合、および、ユーザがサーバからコンテンツまたは通信を送信される場合の双方について、ユーザが選択することを可能にする制御を提供され得る。加えて、あるデータは、それが格納または使用される前に、個人識別可能情報が除去されるように、1つ以上のやり方で処理され得る。たとえば、ユーザのアイデンティティは、ユーザについての個人識別可能情報が判定できないように処理されてもよく、または、位置情報が取得される場合、ユーザの特定の位置が判定できないように、ユーザの地理的位置が(たとえば、市、郵便番号、または州レベルまで)一般化されてもよい。このため、ユーザは、どんな情報がユーザに関して収集されるか、その情報がどのように使用されるか、および、どんな情報がユーザに提供されるかに対する制御を有し得る。
【0038】
これらのおよび他の能力および構成、ならびに、図1および図2のエンティティが作用し相互作用するやり方が、以下により詳細に述べられる。これらのエンティティはさらに分割されたり組合されたりしてもよい。図1の実現化例100、および、図2~9の詳細な図示は、説明される手法を個々にまたは互いと組み合わせて採用することができる多くの可能な環境、デバイス、および方法のうちのいくつかを示す。
【0039】
図3は、リチウムイオンバッテリの例示的な基本構造300を示す。バッテリ104は、電解質溶液306(たとえば、有機溶媒におけるリチウム塩)および多孔性セパレータ308(たとえばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)によって分離された、アノード302(たとえばグラファイト)とカソード304(たとえば金属酸化物)とを含む。バッテリ104を放電および/または充電する際、リチウムイオン310は電解質306中を移動する。保管下では、固体電解質相間(solid electrolyte interphase:SEI)層312がアノード302上に成長する。時間とともに、SEI層312は平衡を確立し始めて、アノード302上に成長し始め、それは、Liイオンがアノード302にインターカレートすることを防止することによってバッテリ104の容量を減少させる。本明細書で説明されるように、バッテリ104の放電/充電シーケンスは、SEI層に関連付けられたタイミングについて対応するように操作され得る。
【0040】
図4は、Liイオンバッテリのグラファイトアノード材料充電/放電動力学の例示的な一実現化例400を示す。一般に、Liイオンバッテリは、グラファイト層状構造(たとえばアノード302)を含む。図示された例では、グラファイト層状構造は、充電のさまざまな段階(たとえば段階-1 402、段階-2 404、段階-3 406、段階-4 408、段階-5 410)で示されている。段階-1 402は、グラファイト層状構造(たとえばアノード302)にリチウムが実質的にない、フル放電されたバッテリ(たとえば低SOC)を表わす。反対側で、段階-5 410は、グラファイト層状構造がリチウムで充填されている、フル充電のバッテリ(たとえば高SOC)を表わす。段階-3 406は、グラファイト層状構造がリチウムで半分充填されている、中間SOC(たとえば約50%の充電)を表わす。
【0041】
図示されるように、中間範囲および低範囲のSOCでは、グラファイト構造は、より高いSOCでのより開放されたグラファイト構造に対して、より閉鎖されている。たとえば、中間およびより低いSOCでのグラファイト層間の距離412-1は、より高いSOCでのグラファイト層間の距離412-2よりも短い。よって、より長期の高温保管およびその後の室温での充電後、SEI層(たとえば、図3からのSEI層312)を有するアノード/グラファイト表面、および構造は、「通常」充電プロファイルを開始する前に、緩んでリフレッシュするための時間を必要とする。高温保管後にアノード/グラファイト表面を緩めてリフレッシュする方法論は、本明細書で説明されるような、通常充電プロファイルの前に生じる独特の調整された放電を介する。
【0042】
図5は、図1からのバッテリマネージャモジュール106の例示的な一実現化例500をより詳細に示す。バッテリマネージャモジュール106は、電子デバイス102のバッテリ104の充電動作を制御する。複数の局面では、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ104の充電イベントを開始する際、放電モード502、事前充電モード504、および/または充電モード506を切り替える。
【0043】
放電モード502は、複数の放電プロファイル118(たとえば、放電プロファイル-A 118-1、放電プロファイル-B 118-2、…、放電プロファイル-N 118-3)を含む。放電モード502は、バッテリ104を放電するために選択され、適用される。放電プロファイル118は、少なくとも1つの放電速度と、その放電速度でバッテリ104を放電するための対応する持続時間とを規定するために選択される。いくつかの局面では、放電プロファイル118は、放電プロファイル118の適用が放電速度を対応する期間に従って順次適用するように、放電速度および対応する期間のシーケンスを規定する。放電プロファイル118は、1つの放電速度から次の放電速度へ1ステップずつ進むステッププロファイルであってもよい。図1からのバッテリ状態マネージャ112によって判定されるバッテリ状態(たとえば、SOC、使用、高温暴露、現在温度)に基づいて、特定の放電プロファイル118が選択され得る。このように、放電プロファイル118は、放電をバッテリ104の現在の状態に調整するように選択可能である。
【0044】
動作時、放電プロファイル118はまず、第1の予め規定された量の時間にわたって遅い放電速度を開始し、次に、第2の予め規定された量の時間にわたって放電速度をより速い速度まで増加させる(たとえば、ステップアップさせる)。任意の好適な放電速度が使用され得る。一例では、放電プロファイル118は、5分間、放電速度C/50で始め、次に、1分間、放電速度C/5までステップアップさせる(または上昇させる)。
【0045】
事前充電モード504は、複数の事前充電プロファイル114(たとえば、事前充電プロファイル-A 114-1、事前充電プロファイル-B 114-2、…、事前充電プロファイル-N 114-3)を含む。事前充電プロファイルは、第1の量の時間にわたって遅い充電速度を開始し、次に、第2の量の時間にわたって充電速度を増加した充電速度までステップアップさせることができる。典型的には、事前充電モード504は、放電モード502の後、および充電モード506の前に適用される。通常充電速度よりも著しく遅い、任意の好適な充電速度が使用され得る。一例では、事前充電プロファイル114は、以前に適用された放電プロファイル118をミラーリングし得る(たとえば、事前充電プロファイル114は、バッテリ104を放電するためではなく充電するために、放電プロファイル118と同じ速度および時間を規定し得る)。しかしながら、選択された事前充電プロファイル114は、選択された放電プロファイル118によって規定される放電速度とは異なる充電速度を規定してもよい。一例では、第1の事前充電速度C/50を30秒間、第2の事前充電速度C/5を3分間規定する事前充電プロファイル114が選択される。
【0046】
充電モード506は、複数の充電プロファイル116(たとえば、充電プロファイル-A 116-1、充電プロファイル-B 116-2、…、充電プロファイル-N 116-3)を含む。充電プロファイル116は、業界標準充電速度であり得る「通常」充電プロファイルを規定する。典型的な通常充電プロファイルは速い充電速度を含んでいてもよく、それは、バッテリがフル充電に近づくにつれてステップダウンし得る。例示的な通常充電プロファイル116は充電速度3Cで充電し、その後、デバイスが電圧を整合させて分極を平衡させることをゆっくり始めるとともに、充電速度2Cまで、次に充電速度1Cまで、次に充電速度C/2までステップダウンし得る。
【0047】
例示的な方法
図6図7、および図8は、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための例示的な方法600、700、および800をそれぞれ表わす。方法600、700、および800は電子デバイス102によって行なうことができ、それは、バッテリマネージャモジュール106を使用して、長期および高温保管後に、通常充電プロファイルに従ってバッテリ104を充電する前に、バッテリ104のアノード表面を緩めてリフレッシュするためのバッテリ長寿命手法を適用する。方法600、700、および800は、バッテリ104および電子デバイス102のための高められた安全性、信頼性、性能、および持続性/長寿命をまとめて提供する。方法600および800は方法700の補足であり、オプションで方法700とともに行なわれる。
【0048】
方法600、700、および800は1組のブロックとして示され、それらは、行なわれる動作を特定するものの、それぞれのブロックによって動作を行なうために示された順序または組合せに必ずしも限定されない。また、幅広い追加のおよび/または代替的な方法を提供するために、動作のうちの1つ以上のいずれかが繰り返され、組合され、再編成され、またはリンクされてもよい。以下の説明の部分では、図1の例示的な実現化例100、もしくは、図2~5に詳述されるようなエンティティまたはプロセスが参照され得る。その参照は例示のためにのみ行なわれる。手法は、1つのデバイス上で動作する1つのエンティティまたは複数のエンティティによる実行に限定されない。
【0049】
602で、バッテリを充電するための外部電源への電気的接続が検出される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、電子デバイス102のプラグが電源(たとえばコンセント、モバイルバッテリ、別の電子デバイス)に差し込まれたことを検出する。複数の局面では、検出は、電子デバイス102の別のコンポーネントから受信された、バッテリ104を充電するための要求に基づく。検出はまた、またはそれに代えて、外部電源(たとえば外部電源108)からバッテリ104に提供されている電圧および/または電流の増加に基づき得る。
【0050】
604で、バッテリに対して健全性チェックを行なうために、バッテリの充電が遅らされる。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ104の充電を遅らせて、バッテリ健全性チェックを要求または開始する。
【0051】
606で、現在のバッテリ状態が判定される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106はバッテリ状態マネージャ112と通信してバッテリ健全性チェックを行ない、現在のバッテリ状態を判定する。バッテリ健全性チェックは、バッテリ104の現在のSOCとバッテリ104の現在温度とを測定または検出することを含み得る。
【0052】
608で、直近の充電イベントと現在時間(たとえば、電気的接続が検出されたとき)との間で、以前のバッテリ状態が判定される。一例では、バッテリ状態マネージャ112は、バッテリ104の使用(たとえば動作状態)、SOC、温度、および対応するタイムスタンプを頻繁に判定し、この情報を未加工の形でメモリ(たとえば、バッファ、記憶媒体、メモリ媒体、キャッシュ)に格納する。この未加工データを使用して、バッテリ状態マネージャ112(またはバッテリマネージャモジュール106)は、バッテリ104が、直近の充電イベントと現在時間との間で、アイドル状態または低電力状態中、比較的長い持続時間にわたって高温にさらされたかどうかに関する情報を取得することができる。方法600は次に「A」へ進み、それは図7の702につながっている。
【0053】
図7は、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための方法700を表わす。702で、バッテリは、直近の充電イベントと現在時間との間の期間内で、ある持続時間にわたってアイドル状態または低電力状態にあったと判定される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ104が、当該持続時間にわたって、(たとえば時間のしきい値量を上回る)長時間、しきい値放電速度よりも大きい速度で放電しなかったと判定する。しきい値放電速度は、バッテリ104が依然として「アイドル」または「低電力」であると考えられる最大放電速度を規定する。それに代えて、しきい値放電速度は、バッテリ104が依然として「使用中」であると考えられる最小放電速度を規定する。事実上、バッテリ104がしきい値放電速度よりも大きい速度で放電しない場合、バッテリ104は「保管」されている。
【0054】
704で、温度データに基づいて、バッテリの平均温度(T-avg)を示す値が、持続時間にわたって判定される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ状態マネージャ112によって取得された温度データ122を利用して、持続時間全体にわたるバッテリの平均温度T-avgを判定する。いくつかの局面では、バッテリ104が0%のSOC以下である場合などでは、温度データは利用できないかもしれない。そのような場合、バッテリ状態マネージャ112は、通信モジュール214を使用してネットワーク126を介してオンラインリソース(たとえば、サーバ、気象サービス)と通信し、持続時間中に生じた(デバイスの地理的位置に基づいた)地元の気象情報を取得してもよい。気象情報(たとえば、1時間ごとの地元の温度)は、持続時間にわたる平均バッテリ温度を推定するために使用され得る。この推定された平均バッテリ温度は、バッテリが消耗されてしきい値放電速度よりも大きい速度で放電しておらず、事実上アイドル状態(またはオフ状態)にとどまっていた時間中に、バッテリ104がおそらく高温にさらされたかどうかを判定するために使用される。
【0055】
706で、バッテリマネージャモジュール106は、持続時間にわたるバッテリの平均温度T-avgを示す値が温度しきい値T1を上回ったかどうかを判定する。温度しきい値T1は、バッテリ104にとって「高温」であると考えられる最低温度を規定する。それに代えて、温度しきい値T1は、バッテリ104にとって「安全」であると考えられる温度の許容範囲の最高温度を規定してもよい。多くのバッテリについては、温度しきい値T1は60℃であり得る。持続時間にわたる平均温度T-avgが温度しきい値T1以下であった場合(706で「いいえ」)、方法700は「B」へ進み、それは図8の806につながっており、そこでは通常充電プロファイルが適用される。しかしながら、持続時間にわたるバッテリ104の平均温度が温度しきい値T1よりも高かった場合(706で「はい」)、方法は708へ進む。
【0056】
708で、バッテリマネージャモジュール106は、持続時間が、「長時間」を規定するしきい値時間長H1よりも大きいかどうかを判定する。任意の好適なしきい値時間長H1が使用され得る。一例では、しきい値時間長は、およそ1週間である。別の例では、しきい値時間長は、およそ2週間であってもよい。複数の局面では、しきい値時間長H1は、より高い温度がより短い時間長に対応し、より低い温度がより大きい時間長に対応するように、バッテリの平均温度に依存し得る。一例では、しきい値時間長H1は、平均温度70℃については1週間であってもよい。別の例では、しきい値時間長H1は、平均温度61℃については2週間であってもよい。
【0057】
持続時間(たとえば、バッテリ104がアイドル状態または低電力状態にあり、この点で、温度が平均して温度しきい値T1よりも高かった時間の量)がしきい値時間長H1以下である場合(708で「いいえ」)、方法700は「B」へ進み、それは図8の806につながっており、そこでは通常充電プロファイルが適用される。しかしながら、持続時間がしきい値時間長H1よりも大きい場合(708で「はい」)、方法は710へ進む。
【0058】
710で、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリの現在のSOCが第1のしきい値レベルSOC C1(たとえば80%)未満かどうかを判定する。現在のSOCが第1のしきい値レベルSOC C1以上である場合(710で「いいえ」)、方法700は「B」へ進み、それは図8の806につながっており、そこでは通常充電プロファイルが適用される。しかしながら、現在のSOCが第1のしきい値レベルSOC C1未満である場合(710で「はい」)、方法は712へ進む。
【0059】
712で、バッテリマネージャモジュール106は、SOCが第2のしきい値レベルSOC C2(たとえば30%)未満かどうかを判定する。SOCが第2のしきい値レベルSOC C2以上である場合(712で「いいえ」)、バッテリマネージャモジュール106は、SOCが中間範囲SOC(たとえば、30%~80%のSOC)であると判定し、方法は714へ進む。
【0060】
714で、バッテリマネージャモジュール106は、複数の放電プロファイル(たとえば、図5の放電プロファイル118)から、ある放電プロファイルを選択する。一例では、バッテリマネージャモジュール106は、現在のバッテリ状態(たとえば、現在のSOC、現在温度)に基づいて、ある特定の放電プロファイルを選択する。
【0061】
716で、バッテリマネージャモジュール106は、選択された放電プロファイル118に従ってバッテリ104を放電するために放電モード502を適用する。電子デバイス102は外部電源108に電気的に接続されているが、バッテリマネージャモジュール106はまず、上述の状態に基づいて、バッテリ104を放電する。たとえば、プロセッサ202にキュー内のコマンドをスピンまたは実行させること、アプリケーションにクリーンアップタスクを行なわせること、ディスプレイデバイス218を照らすかその輝度を高めること、音声録音を再生することなどを含む、バッテリ104を放電する任意の好適な態様が利用され得る。放電は、選択された放電プロファイル118によって規定された遅い放電速度で生じ、1つ以上のより大きい放電速度までステップアップ(または上昇)し得る。充電前のこの放電は、通常充電プロファイルを開始する前にバッテリ104のアノード構造が緩んでリフレッシュすることを可能にする。選択された放電プロファイルによって規定された放電速度および時間に従った放電モードの完了後、方法600は「C」へ進み、それは図8の802につながっている。
【0062】
712でSOCが第2のしきい値レベルSOC C2未満である場合(712で「はい」)、方法は718へ進む。718で、バッテリマネージャモジュール106は、SOCが第3のしきい値レベルSOC C3(たとえば、0%のSOC)未満かどうかを判定する。現在のSOCが第3のしきい値レベルSOC C3よりも大きい場合(718で「いいえ」)、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリが現在、低範囲SOC(たとえば、0%~30%のSOC)であると判定し、方法は720へ進む。
【0063】
720で、バッテリマネージャモジュール106は、複数の放電プロファイル(たとえば、図5の放電プロファイル118)からパルス放電プロファイルを選択する。一例では、バッテリマネージャモジュール106は、現在のバッテリ状態(たとえば、現在のSOC、現在温度)に基づいて、ある特定のパルス放電プロファイルを選択する。選択されたパルス放電プロファイルは、バッテリのアノード表面を緩めてリフレッシュするために、直流(direct current:DC)放電プロファイルなどの他の放電プロファイルと比べて比較的少量のエネルギーを放出する。パルス放電プロファイルを選択後、方法は、選択された放電プロファイル(たとえば、パルス放電プロファイル)に従って放電モードを適用するために、716へ進む。
【0064】
パルス放電(交流(alternating current:AC)放電とも呼ばれる)は、周波数に基づいて、および/または、そのパルスをDC放電と組合せることに基づいて、規定または修正され得る。一例では、従来の周波数応答プロファイルを考慮した場合、およそ1Hzよりも大きい周波数はAC時間ドメイン内にあると考えられ、およそ1Hz以下の周波数はDCと考えられ得る。放電プロファイル118は、特定の持続時間(たとえば、1秒オン、1秒オフ、2秒オン、1秒オフ)にわたって周波数(たとえば1Hzよりも大きい周波数)を規定し得る。放電プロファイル118はまた、またはそれに代えて、ACを使用してバッテリを放電するために異なる時間ドメインで異なる周波数を規定し得る。たとえば、放電プロファイル118は、たとえば、4分間、放電速度C/50で、1Hzで低周波数パルス放電を規定し、それに続いて、たとえば、35秒間、放電速度C/5で、1kHzで高周波数パルス放電を規定し得る。パルス放電は、アノード表面上のSEI層を事実上緩めてリフレッシュするために、DC放電と比べて比較的少量のエネルギーを使用する。
【0065】
718でバッテリのSOCが第3のしきい値レベルSOC C3以下である場合(718で「いいえ」)、722で、デフォルトの事前充電プロファイルに従ってバッテリをゆっくり充電するために事前充電モードが適用される。一般に、SOCが0%以下である場合、バッテリ104は放電できないかもしれない。したがって、通常充電速度よりも著しく小さい充電速度でバッテリ104をゆっくり充電するために、(デフォルトのまたは予め選択された)事前充電プロファイルが適用される。一例では、事前充電プロファイルは、充電速度C/50を60秒間規定し、それに続いて、充電速度C/5を5分間規定するステッププロファイルである。このようにバッテリ104を事前充電することは、めっきを生じさせることなく、アノード構造を部分的に充填する。そして、バッテリ104を部分的にのみ充電する、デフォルトの事前充電プロファイルに従った事前充電モードの完了後、方法は、バッテリ104のアノード表面を緩めてリフレッシュするために、(720で)パルス放電プロファイルを選択し、(716で)選択された放電プロファイル(たとえばパルス放電プロファイル)に従って放電モードを適用することによって、バッテリ104を放電することへ進む。
【0066】
図8の802で、バッテリマネージャモジュール106は、通常充電プロファイルを適用する前に、バッテリ104を事前充電するために事前充電プロファイル114を選択する。一例では、事前充電プロファイル114は、第1の遅い充電速度C/50を30秒間規定し、第2の遅い充電速度C/5を3分間規定する。通常高速充電を適用する前にバッテリ104をゆっくり充電することは、バッテリ104を損傷することなく、バッテリ104が高速充電まで安全に上昇することを可能にする。
【0067】
804で、バッテリマネージャモジュール106は、選択された事前充電プロファイル114に従ってバッテリ104を充電するために事前充電モード504を適用する。選択された事前充電プロファイル114に従った事前充電モード504の完了後、方法は、通常高速充電を開始するために806へ進む。
【0068】
806で、バッテリマネージャモジュール106は、ある充電プロファイルを選択する。一例では、バッテリ104の現在のバッテリ状態に基づいて、充電プロファイル116が、複数の充電プロファイル116から選択され得る。たとえば、バッテリ104が低いSOC(たとえば<30%)を有する場合、バッテリマネージャモジュール106は、高速充電(たとえば充電速度3C)を規定する充電プロファイル116を選択し得る。別の例では、バッテリ104が中間のSOC(たとえば、30%よりも大きく、80%よりも小さいSOC)を有する場合、バッテリマネージャモジュール106は、それほど積極的でない充電(たとえば1C)を規定する充電プロファイル116を選択し得る。
【0069】
808で、選択された充電プロファイルに従ってバッテリを充電するために、ある充電モードが適用される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、選択された充電プロファイル116に従ってバッテリ104を充電するために充電モード506を適用する。
【0070】
図9は、電子デバイスのバッテリを充電する前にバッテリのアノード表面を概して緩めてリフレッシュするための方法900を表わす。方法900は電子デバイス102によって行なうことができ、それは、バッテリマネージャモジュール106を使用して、通常速度でバッテリ104を充電する前に、バッテリ104のアノード表面を緩めてリフレッシュするためのバッテリ長寿命手法を適用する。(図8の)方法800は方法900の補足であり、オプションで方法900とともに行なわれる。(方法800と組合された)方法900は、バッテリ104および電子デバイス102の高められた安全性、信頼性、性能、および持続性/長寿命を提供する。
【0071】
方法900は1組のブロックとして示され、それらは、行なわれる動作を特定するものの、それぞれのブロックによって動作を行なうために示された順序または組合せに必ずしも限定されない。また、幅広い追加のおよび/または代替的な方法を提供するために、動作のうちの1つ以上のいずれかが繰り返され、組合され、再編成され、またはリンクされてもよい。以下の説明の部分では、図1の例示的な実現化例100、もしくは、図2~5に詳述されるようなエンティティまたはプロセスが参照され得る。その参照は例示のためにのみ行なわれる。手法は、1つのデバイス上で動作する1つのエンティティまたは複数のエンティティによる実行に限定されない。
【0072】
方法900では、バッテリ104は、直近の充電イベント以降に生じた以前のバッテリ状態にかかわらず、緩められてリフレッシュされ得る。むしろ、外部電源への接続が検出されると、放電モードが自動的に適用され得る。別の例では、方法900は、タイマーが満了した後に(たとえば3年後に)トリガされ得る。複数の局面では、タイマーはバッテリ104の寿命に対応していてもよく、たとえばSEIめっきおよび/またはLiイオン消費に起因してバッテリ104がおそらく容量を失い始める寿命を示すために使用されてもよい。タイマーは、寿命に起因してバッテリ劣化がおそらく始まる時間より前に満了してもよい。このように、方法900は、以前のバッテリ状態にかかわらず、バッテリ104の寿命を延長するように実現される。
【0073】
902で、バッテリを充電するための外部電源への電気的接続が検出される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、電子デバイス102が外部電源108に結合されたことを検出する。それに代えて、バッテリマネージャモジュール106は、電子デバイス102の別のコンポーネントから、外部電源への電気的接続の表示を受信し得る。
【0074】
904で、バッテリマネージャモジュール106は、タイマーA1が満了したかどうかを判定する。タイマーA1は、バッテリ劣化が始まると予想されるバッテリ104の寿命で、またはそれより前に満了するように設定され得る。タイマーA1が満了していない場合(904で「いいえ」)、方法900は「B」へ進み、それは、通常充電プロファイルを実現する(たとえば、(806で)選択し(808で)適用する)ために、図8の806につながっている。タイマーA1が満了した場合(904で「はい」)、方法900は906へ進む。
【0075】
906で、バッテリの充電が遅らされる。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、バッテリ104のアノード表面を緩めてリフレッシュすることを可能にするために、バッテリ104の充電を遅らせる。
【0076】
908で、現在のバッテリ状態が判定される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106はバッテリ状態マネージャ112と通信して現在のバッテリ状態を判定する。現在のバッテリ状態は、たとえば、バッテリ104の現在のSOC、バッテリ104の現在温度などを含み得る。
【0077】
910で、放電プロファイルが選択される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、複数の放電プロファイル(たとえば、図5の放電プロファイル118)から、ある放電プロファイルを選択する。バッテリマネージャモジュール106は、現在のバッテリ状態(たとえば、現在のSOC、現在温度)に基づいて、ある特定の放電プロファイルを選択し得る。
【0078】
912で、選択された放電プロファイルに従ってバッテリを放電するために放電モードが適用される。たとえば、バッテリマネージャモジュール106は、選択された放電プロファイル118に従ってバッテリ104を放電するために放電モード502を適用する。方法900は次に「C」へ進み、それは、選択された事前充電プロファイルおよび選択された充電プロファイルにそれぞれ従ってバッテリ104を事前充電および充電するために、図8の802につながっている。
【0079】
いくつかの例を以下に記載する。
例1:電子デバイスによって行なわれる方法であって、方法は、電子デバイスのバッテリを充電するための外部電源への電気的接続を検出するステップと、検出するステップに応答してバッテリの充電を遅らせるステップと、1つ以上の現在のバッテリ状態を判定するステップと、直近の充電イベントと外部電源への電気的接続の検出の時間との間で、バッテリの以前のバッテリ状態を判定するステップとを含み、以前のバッテリ状態は、バッテリの温度データとバッテリ使用データとを含み、バッテリ使用データは、バッテリがある持続時間にわたってアイドル状態または低電力状態にあったことを示し、方法はさらに、温度データに基づいて、当該持続時間にわたるバッテリの平均温度を示す値を判定するステップと、1つ以上の現在のバッテリ状態と、当該持続時間が時間しきい値よりも大きいことと、平均温度を示す値が温度しきい値よりも大きいこととに基づいて、バッテリのための充電モードを開始する前に放電モードを適用するステップとを含み、放電モードは、バッテリのアノード構造を緩めてリフレッシュするために、複数の放電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを放電するように構成され、方法はさらに、放電モードの完了後、複数の充電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを充電するために充電モードを適用するステップを含む、方法。
【0080】
例2:複数の放電プロファイルは、電子デバイスに第1の予め規定された期間にわたって第1の放電速度でバッテリを放電させるように構成された第1の放電プロファイルを含む、例1に記載の方法。
【0081】
例3:第1の放電プロファイルは、対応する期間を各々有する複数の放電速度を有するステッププロファイルである、例2に記載の方法。
【0082】
例4:第1の放電プロファイルの複数の放電速度は、対応する期間に従って順次適用される、例3に記載の方法。
【0083】
例5:1つ以上の現在のバッテリ状態は、バッテリの現在の充電状態を含み、方法はさらに、現在の充電状態がしきい値レベル充電状態を下回ることに基づいて、複数の放電プロファイルから第1の放電プロファイルを選択するステップを含み、放電モードを適用するステップは、第1の放電プロファイルに従って放電モードを適用するステップを含む、例2~4のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
例6:しきい値レベル充電状態は、80%の充電状態と30%の充電状態との間の範囲を規定する、例5のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
例7:複数の放電プロファイルは、第1の放電プロファイルとは異なる第2の放電プロファイルを含み、1つ以上の現在のバッテリ状態は、バッテリの現在の充電状態を含み、方法はさらに、現在の充電状態が、第1の放電プロファイルに関連付けられた第1のしきい値レベル充電状態とは異なる第2のしきい値レベル充電状態を下回ることに基づいて、複数の放電プロファイルから第2の放電プロファイルを選択するステップを含み、放電モードを適用するステップは、第2の放電プロファイルに従って放電モードを適用するステップを含む、例2~4のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
例8:第2の放電プロファイルは、第2の予め規定された期間にわたって少なくとも第2の放電速度でバッテリを放電するように構成され、第2の放電速度は第1の放電速度とは異なる、例7に記載の方法。
【0087】
例9:第2の放電プロファイルは、対応する期間を各々有する複数の放電速度を有するステッププロファイルであり、第2の放電プロファイルの複数の放電速度は、対応する期間に従って順次適用される、例8に記載の方法。
【0088】
例10:第2のしきい値レベル充電状態は、30%の充電状態を規定する、例9に記載の方法。
【0089】
例11:放電モードの完了に応答して、および充電モードを適用する前に、事前充電プロファイルに従ってバッテリを充電するために事前充電モードを適用するステップをさらに含む、先行する例のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
例12:事前充電プロファイルは、第1の予め規定された期間にわたって少なくとも第1の遅い充電速度を規定する、例11に記載の方法。
【0091】
例13:事前充電プロファイルはさらに、第2の予め規定された期間にわたって第2の遅い充電速度を規定し、第2の遅い充電速度は第1の遅い充電速度よりも大きい、例12に記載の方法。
【0092】
例14:バッテリを放電するために使用される複数の放電プロファイルのうちの少なくとも1つに基づいて、複数の事前充電プロファイルから事前充電プロファイルを選択するステップをさらに含む、例11~13のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
例15:電子デバイスであって、電子デバイスに電力を提供するためのバッテリと、コンピュータ実行可能な命令を格納するためのメモリと、バッテリマネージャモジュールを実現するためにメモリに格納された命令を実行するためのプロセッサとを含み、バッテリマネージャモジュールは、電子デバイスのバッテリを充電するための外部電源への電気的接続を検出し、検出に応答して、バッテリの健全性チェックを行なうためにバッテリの充電を遅らせ、1つ以上の現在のバッテリ状態を判定し、直近の充電イベントと外部電源への電気的接続の検出の時間との間で、バッテリの以前のバッテリ状態を判定するように構成され、以前のバッテリ状態は、バッテリの温度データとバッテリ使用データとを含み、バッテリ使用データは、バッテリがある持続時間にわたってアイドル状態または低電力状態にあったことを示し、バッテリマネージャモジュールはさらに、温度データに基づいて、当該持続時間にわたるバッテリの平均温度を示す値を判定し、1つ以上の現在のバッテリ状態と、当該持続時間が時間しきい値よりも大きいことと、平均温度を示す値が温度しきい値よりも大きいこととに基づいて、バッテリのための充電モードを開始する前に放電モードを適用するように構成され、放電モードは、バッテリのアノード構造を緩めてリフレッシュするために、複数の放電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを放電するように構成され、バッテリマネージャモジュールはさらに、放電モードの完了後、複数の充電プロファイルのうちの少なくとも1つに従ってバッテリを充電するために充電モードを適用するように構成される、電子デバイス。
【0094】
例16:複数の放電プロファイルは、少なくとも第1の放電プロファイルと第2の放電プロファイルとを含み、第1の放電プロファイルまたは第2の放電プロファイルは、対応する期間を各々有する複数の放電速度を有するステッププロファイルを含む、例15に記載の電子デバイス。
【0095】
例17:1つ以上の現在のバッテリ状態は、バッテリの現在の充電状態を含み、バッテリマネージャモジュールはさらに、現在の充電状態が第1のしきい値レベル充電状態を下回ることに基づいて、複数の放電プロファイルから第1の放電プロファイルを選択するように構成される、例16に記載の電子デバイス。
【0096】
例18:第1のしきい値レベル充電状態は、80%の充電状態と30%の充電状態との間の範囲を規定する、例17に記載の電子デバイス。
【0097】
例19:バッテリマネージャモジュールは、現在の充電状態が、第1の放電プロファイルに関連付けられた第1のしきい値レベル充電状態とは異なる第2のしきい値レベル充電状態を下回ることに基づいて、複数の放電プロファイルから第2の放電プロファイルを選択するように構成され、第2の放電プロファイルは、バッテリを放電するための少なくとも1つの周波数パルス放電と少なくとも1つの放電速度と少なくとも1つの対応する期間とを規定するパルス放電プロファイルを含む、例17に記載の電子デバイス。
【0098】
例20:バッテリマネージャモジュールは、現在の充電状態が0%の充電状態以下である場合には、放電モードを適用する前に、デフォルトの事前充電プロファイルに従ってバッテリをゆっくり充電するために事前充電モードを適用するように構成される、例17に記載の電子デバイス。
【0099】
例21:電子デバイスであって、電子デバイスに電力を提供するためのバッテリと、コンピュータ実行可能な命令を格納するためのメモリと、バッテリマネージャモジュールを実現するためにメモリに格納された命令を実行するためのプロセッサとを含み、バッテリマネージャモジュールは、例1~14のいずれか1つに記載の方法を行なうように構成される、電子デバイス。
【0100】
結論
長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長する複数の局面が、特徴および/または方法に特有の文言で説明されてきたが、添付された請求項の主題は、説明された特定の特徴または方法に必ずしも限定されない。むしろ、特定の特徴または方法は、長期および高温保管後のバッテリ寿命を延長するための手法の例示的な実現化例として開示されており、他の同等の特徴および方法は、添付された請求項の範囲内にあるよう意図される。また、さまざまな異なる局面が説明され、説明された各局面は独立して、または1つ以上の他の説明された局面に関連して実現され得るということが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9