(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】長尺印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 3/00 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
B41M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2022503362
(86)(22)【出願日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2021006526
(87)【国際公開番号】W WO2021172243
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2020031032
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(72)【発明者】
【氏名】松永 剛輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 雅史
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西田 隼也
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-064138(JP,A)
【文献】特開2019-064024(JP,A)
【文献】特開2006-159649(JP,A)
【文献】登録実用新案第3147292(JP,U)
【文献】国際公開第2016/136357(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0221329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺帯状のウェブと、
前記ウェブの長手方向に繰り返して凸版印刷された複数のデザイン印刷部からなるデザイン列であって、前記ウェブの短手方向に2列以上配置されたデザイン列と、
任意の1つの前記デザイン列に隣接して配置され且つ長手方向に延びるベアラーバー印刷部と、を有し、
前記デザイン印刷部が、第1インキを凸版印刷した第1インキ印刷部と、第2インキを凸版印刷した第2インキ印刷部と、を有し、
前記ベアラーバー印刷部が、前記第1インキを凸版印刷した第1バー部と、前記第2インキを凸版印刷した第2バー部と、を有し、
前記第1バー部の幅が、第2バー部の幅よりも大きい、長尺印刷物。
【請求項2】
前記第1インキ印刷部が、背景印刷部であり、前記第2インキ印刷部が、文字を含む画像を表した印刷部である、請求項1に記載の長尺印刷物。
【請求項3】
前記ウェブが、熱収縮性を有する透明なシートからなり、
前記デザイン列において、長手方向に隣接する各デザイン印刷部の間に、デザイン印刷部を有さない非画像部が短手方向に延在されている、請求項1または2に記載の長尺印刷物。
【請求項4】
前記ベアラーバー印刷部が、短手方向に隣接する2つのデザイン列の間に配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の長尺印刷物。
【請求項5】
前記第1バー部と第2バー部が、重ねられており、
前記第2バー部の単位面積あたりのインキ付着量が、第1バー部の単位面積あたりのインキ付着量よりも小さい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の長尺印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺帯状のウェブにデザイン印刷部が長手方向に繰り返し表された長尺印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラベル、包装材、ラッピングリボンなどのシート物は、長尺印刷物を切断することによって得られる。このような長尺印刷物は、通常、長尺帯状のウェブと、前記ウェブの長手方向に繰り返して印刷された複数のデザイン印刷部と、を有する。前記デザイン印刷部は、各種の印刷法によってウェブにインキを印刷することによって形成される。印刷法としては、凸版印刷法と凹版印刷法に大別できる。
【0003】
凸版印刷法は、コスト的に比較的安価であり、さらに、様々な材質或いは厚みのウェブに対する印刷適性に優れている。凸版印刷法としては、フレキソ印刷法、凸版輪転印刷法などの印刷方式が挙げられ、特に、長尺印刷物を凸版印刷法にて形成する場合には、フレキソ印刷法が多用されている。
【0004】
フレキソ印刷法は、円筒状の版胴とその版胴の周囲に巻き付けたシート状の印刷版とを有する円筒状版を用いてフレキソインキを印刷する方式である。前記印刷版は凸版を有する。その印刷版を有する円筒状版を回転させ且つその版の表面にウェブを接触させることにより、インキが凸版からウェブに転写されてデザイン印刷部が形成される。
【0005】
フレキソ印刷などの凸版印刷法にあっては、円筒状版の回転に従い、円筒状版の表面のウェブへの接触(凸版がウェブに接触)と円筒状版の表面のウェブへの非接触(凸版を有さない凹部においてウェブから離れる)とが交互に繰り返される。このため、円筒状版が振動し、いわゆるバウンシングを生じ、インキの転写不良箇所が生じ得る。インキの転写不良箇所は、印刷がぼやけてしまうので、その改善が求められる。
【0006】
特許文献1には、画像部と非画像部とを有し、前記画像部の印刷方向の先端側から0.5mm~5mmまでの領域が、その領域以外の前記画像部の高さよりも低い低層化領域であり、前記低層化領域が前記印刷方向において非画像部に向かって漸次低くなっているフレキソ印刷版を用いることが開示されている。特許文献1には、前記フレキソ印刷版を用いることにより、バウンシングを抑制でき、ムラのない画像を印刷できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
技術の多様性の見地から、凸版印刷によってデザインを表す場合に、特許文献1とは異なる手段によって、デザイン印刷部が綺麗に表されている長尺印刷物が望まれる。
【0009】
本発明の目的は、凸版印刷によってデザイン印刷部の画像が綺麗に表された長尺印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の長尺印刷物は、長尺帯状のウェブと、前記ウェブの長手方向に繰り返して凸版印刷された複数のデザイン印刷部からなるデザイン列であって、前記ウェブの短手方向に2列以上配置されたデザイン列と、任意の1つの前記デザイン列に隣接して配置され且つ長手方向に延びるベアラーバー印刷部と、を有し、前記デザイン印刷部が、第1インキを凸版印刷した第1インキ印刷部と、第2インキを凸版印刷した第2インキ印刷部と、を有し、前記ベアラーバー印刷部が、前記第1インキを凸版印刷した第1バー部と、前記第2インキを凸版印刷した第2バー部と、を有し、前記第1バー部の幅が、第2バー部の幅よりも大きい。
【0011】
本発明の好ましい長尺印刷物は、前記第1インキ印刷部が、背景印刷部であり、前記第2インキ印刷部が、文字を含む画像を表した印刷部である。
【0012】
本発明の好ましい長尺印刷物は、前記ウェブが、熱収縮性を有する透明なシートからなり、前記デザイン列において、長手方向に隣接する各デザイン印刷部の間に、デザイン印刷部を有さない非画像部が短手方向に延在されている。
【0013】
本発明の好ましい長尺印刷物は、前記ベアラーバー印刷部が、短手方向に隣接する2つのデザイン列の間に配置されている。
【0014】
本発明の好ましい長尺印刷物は、前記第1バー部と第2バー部が、重ねられており、前記第2バー部の単位面積あたりのインキ付着量が、第1バー部の単位面積あたりのインキ付着量よりも小さい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、円筒状版にてデザイン印刷部を凸版印刷する際にインキ抜けを抑制できるので、凸版印刷によってデザイン印刷部の画像が綺麗に表された長尺印刷物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、長尺印刷物を表面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、同長尺印刷物を裏面側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、長尺印刷物の製造工程で使用される印刷機の参考側面図である。
【
図7(a)】
図7(a)は、第1円筒状版の平面図である。
【
図7(b)】
図7(b)は、第1円筒状版の斜視図である。
【
図8(a)】
図8(a)は、第2円筒状版の平面図である。
【
図8(b)】
図8(b)は、第3円筒状版の平面図である。
【
図8(c)】
図8(c)は、第4円筒状版の平面図である。
【
図8(d)】
図8(d)は、第5円筒状版の平面図である。
【
図9(a)】
図9(a)は、凸版の表面の一部分を拡大した斜視図(断面を含む)であり、表面に小突起が粗に形成されている凸版を示す断面を含む斜視図であり。
【
図9(b)】
図9(b)は、凸版の表面の一部分を拡大した斜視図(断面を含む)であり、表面に小突起が密に形成されている凸版を示す断面を含む斜視図である。
【
図10】
図10は、印刷工程をウェブの裏面側から見た一部省略平面図である。
【
図11】
図11は、印刷工程をウェブの裏面側から見た一部省略平面図である。
【
図12】
図12は、長尺印刷物をロール状に巻き取ったロール体の斜視図である。
【
図13】
図13は、長尺印刷物から得られた長尺シートを裏面側から見た平面図である。
【
図14】
図14は、長尺シートから筒状ラベルを形成する過程を示す参考斜視図である。
【
図15(a)】
図15(a)は、長尺シートから得られたラベルを物品に装着する過程を示す正面図である。
【
図15(b)】
図15(b)は、長尺シートから得られたラベルを物品に装着する過程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本明細書において、平面視形状は、ウェブの表面側又は裏面側から法線方向にウェブを見たときの形状をいう。また、用語の頭に、「第1」、「第2」などを付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するためだけに付加されたものであり、その順序や優劣などの特別な意味を持たない。「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。また、各図における印刷部などの各構成の寸法、厚み、縮尺比などは、実際のものとは異なっている。
【0018】
<長尺印刷物の概要>
図1は、長尺印刷物Aを表面側から見た図である。
図2は、長尺印刷物Aを裏面側から見た図であり、
図3は、
図2の一部分を拡大した平面図であり、
図4は、
図3のIV-IV線で切断した断面図であり、
図5は、
図3のV-V線で切断した断面図である。
【0019】
図1において、長尺印刷物Aは、平面視で長尺帯状である。本明細書において、長尺帯状は、長手方向長さが短手方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。前記短手方向は、長手方向と直交する方向である。長尺帯状の長手方向長さとしては、例えば、5m以上、好ましくは10m以上である。
【0020】
長尺印刷物Aは、長尺帯状のウェブ1と、ウェブ1に形成された印刷部と、を有する。ここで、本明細書において、印刷部は、ウェブ1にインキを凸版印刷してなるインキ固化部からなる。印刷部は、デザイン印刷部2と、ウェブ1の長手方向に帯状に延びるベアラーバー印刷部3と、を含む。デザイン印刷部2は、画像(デザイン)を表した印刷部であり、ベアラーバー印刷部3は、凸版印刷する際にベアラー凸版がウェブ1に接触することによって形成される印刷部である。
【0021】
デザイン印刷部2は、ウェブ1の長手方向に繰り返して凸版印刷されており、従って、複数のデザイン印刷部2が長手方向に配置されている。この長手方向に並んだ複数のデザイン印刷部2からなる列(デザイン列)は、ウェブ1の短手方向に2列以上配置されている。ベアラーバー印刷部3は、任意の1つのデザイン列に隣接して配置されている。
【0022】
デザイン印刷部2は、第1インキを凸版印刷した第1インキ印刷部21と、第2インキを凸版印刷した第2インキ印刷部22と、を有する。ベアラーバー印刷部3は、第1インキを凸版印刷した第1バー部31と、第2インキを凸版印刷した第2バー部32と、を有し、第1バー部31の幅が、第2バー部32の幅よりも大きい。第1バー部31や第2バー部32などのバー部の幅は、短手方向における長さをいう。
【0023】
<ウェブ>
ウェブ1は、柔軟性並びに適宜な強度及び剛性を有するものであれば特に限定されず、例えば、合成樹脂製シート、発泡樹脂シート、紙、合成紙、不織布、及びこれらが2層以上積層された積層シートなどが挙げられる。さらに、合成樹脂製シート、紙又は積層シートなどに、金属蒸着膜などのガス及び/又は光バリア層が積層されているものをウェブ1として用いてもよい。なお、シートという用語には、一般にフィルムと呼ばれるものも含まれる。合成樹脂製シートなどの材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状オレフィン、ポリエチレンを含む共重合ポリマーなどのポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系などが挙げられる。
【0024】
また、ウェブ1は、熱収縮性及び/又は自己伸縮性を有するものでもよく、或いは、実質的に熱収縮性及び自己伸縮性を有さないものでもよい。熱収縮性は、所定温度(例えば、70℃~100℃)に加熱されることによって収縮する性質をいう。自己伸縮性は、引っ張り力を加えることによって伸張し、その後、引っ張り力を解除することによってほぼ元の状態に復元する性質をいう。なお、実質的に熱収縮性を有さないウェブ1としては、例えば、長手方向及び短手方向のそれぞれの熱収縮率が5%以下のシート、好ましくは同熱収縮率が3%以下のシートが挙げられる。
【0025】
熱収縮性及び/又は自己伸縮性を有するシートをウェブ1として用いる場合、そのシートは、短手方向に熱収縮及び/又は自己伸縮するものでもよく、或いは、長手方向に熱収縮及び/又は自己伸縮するものでもよく、或いは、短手方向及び長手方向に熱収縮及び/又は自己伸縮するものでもよい。また、そのウェブ1は、短手方向に主として熱収縮及び/又は自己伸縮するものでもよく、或いは、長手方向に熱収縮及び/又は自己伸縮するものでもよく、或いは、短手方向及び長手方向に同等に熱収縮及び/又は自己伸縮するものでもよい。
【0026】
図示例では、短手方向に主として熱収縮するウェブ1が用いられている。かかるウェブ1の主たる熱収縮方向(例えば短手方向)の熱収縮率は、特に限定されないが、比較的大きな径差を有する被着体にも良好に熱収縮装着できる点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上である。前記ウェブ1は、主たる熱収縮方向に対して直交する方向(例えば長手方向)に熱変化するものでもよく、その方向における熱収縮率は、例えば、-3~15%であり、好ましくは1~10%である。前記熱収縮率のマイナスは、熱伸長を意味する。
【0027】
ただし、本明細書において、熱収縮率は、加熱前(標準状態下で24時間保存)のウェブ1の長さ(元の長さ)と、90℃温水中に10秒間浸漬して取り出した後のウェブ1の長さ(浸漬後の長さ)と、をそれぞれ標準状態下で計測し、下記式に代入して求められる。なお、各ウェブ1の長さは、標準状態下で計測する。標準状態は、23℃、1気圧、50%RHをいう。
熱収縮率(%)=[{(長手方向(又は短手方向)の元の長さ)-(長手方向(又は短手方向)の浸漬後の長さ)}/(長手方向(又は短手方向)の元の長さ)]×100。
【0028】
ウェブ1の厚みは、特に限定されず、例えば、8μm~500μmであり、好ましくは、10μm~200μmである。例えば、合成樹脂製シート、合成紙及びこれらを含む積層シートなどからなるウェブ1の厚みは、8μm~200μmであり、好ましくは、10μm~120μmである。
【0029】
また、ウェブ1は、透明又は不透明のいずれでもよい。本明細書において、透明は、有色透明又は無色透明という意味である。好ましくは透明なウェブ1が用いられ、より好ましくは無色透明なウェブ1が用いられる。上記例示した中で、透明なウェブ1としては、合成樹脂製シート、合成樹脂製シートと透明な別のシートとの積層シートなどが挙げられる。
【0030】
ここで、透明(有色透明又は無色透明)は、対象物の裏面側に、その裏面から1cm離れた箇所に、白地の紙に黒色インキで任意の数字(大きさ12ポイント)を印刷したものを配置し、前記対象物を透かしてその数字を表面側から識別できる状態をいう。不透明は、前記と同じ条件で裏面側に配置した数字を対象物の表面側から視認できない状態(数字を認識できない状態)をいう。透明(無色透明又は有色透明)の指標としては、例えば、全光線透過率などを用いて表すことができる。透明(無色透明又は有色透明)の指標としては、例えば、全光線透過率が70%以上であり、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上である。ただし、全光線透過率は、透明である測定対象(透明なウェブ1である場合にはそのウェブ1が測定対象、透明な印刷部である場合には、前記透明なウェブ1に透明な印刷層を設けたものが測定対象)を、JIS K 7361(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した測定法によって測定される値をいう。
【0031】
<デザイン印刷部>
デザイン印刷部2は、纏まりある任意の画像(デザイン)を1つのデザインパターンとし、そのデザインパターンが、ウェブ1の長手方向に繰り返して印刷されている。その長手方向に並んだ複数のデザイン印刷部2を「列」とすると、デザイン印刷部2は、ウェブ1の短手方向に1列だけ設けられていてもよいが、通常、短手方向に2列以上(複数列)設けられる。デザイン列は、ウェブ1の短手方向に2列以上有していればよく、好ましくは、3列以上、より好ましくは、4列以上配置される。デザイン列の列数の上限は、特に制限はなく、ウェブ1の短手方向長さとデザイン印刷部2の短手方向長さとの関係で決定される。図示例では、便宜上、短手方向において4列のデザイン列が設けられた長尺印刷物Aを表している。
【0032】
デザイン印刷部2は、
図1に示すように、ウェブ1の表面側から画像(デザイン)が視認できるように、ウェブ1の表面又は/及び裏面に設けられている。なお、ベアラーバー印刷部3も同様である。
図1において、ウェブ1の表面側から見たときに視認できる、デザイン印刷部2及びベアラーバー印刷部3を実線で表している。ウェブ1が透明である場合、デザイン印刷部2は、ウェブ1の表面及び裏面の少なくともいずれか一方に設けられる。ウェブ1が不透明である場合、デザイン印刷部2は、ウェブ1の少なくとも表面(表面のみ又は表面及び裏面)に設けられる。なお、ベアラーバー印刷部3は、後述する製法から、デザイン印刷部2と同じ面に形成される。図示例では、透明なウェブ1の裏面にデザイン印刷部2及びベアラーバー印刷部3が設けられている。
【0033】
上述のように、各デザイン列において、複数のデザイン印刷部2がウェブ1の長手方向に配置されているが、長手方向において隣接するデザイン印刷部2は、連続していてもよく、或いは、長手方向に所定間隔を開けて配置されていてもよい。図示例では、長手方向において隣接するデザイン印刷部2は、連続しておらず、所定間隔を開けて配置されている。従って、デザイン列において、長手方向に隣接する各デザイン印刷部2の間に、デザイン印刷部2を有さない非画像部2aが短手方向に延在されている。この非画像部2aは、短手方向に延びる帯状であり、ウェブ1が透明である場合には、透明部となる。
【0034】
また、各デザイン列において、ウェブ1の短手方向において隣接するデザイン印刷部2は、連続していてもよく、或いは、短手方向に所定間隔を開けて配置されていてもよい。図示例では、短手方向において隣接するデザイン印刷部2は、連続しておらず、所定間隔を開けて配置されている。従って、短手方向に隣接する各デザイン印刷部2の間に、デザイン印刷部2を有さない非画像部2bが長手方向に延在されている。この非画像部2bは、長手方向に延びる帯状であり、ウェブ1が透明である場合には、透明部となる。以下、短手方向の延びる帯状の非画像部2aを短手非画像部2aといい、長手方向の延びる帯状の非画像部2bを長手非画像部2bという。
【0035】
短手非画像部2aの幅(短手非画像部2aの長手方向における長さ)及び長手非画像部2bの幅(長手非画像部2bの短手方向における長さ)は、それぞれ独立して、特に限定されず、適宜設定される。短手非画像部2aの幅は、例えば、3mm~10mmであり、長手非画像部2bの幅は、例えば、1mm~10mmである。
【0036】
デザイン印刷部2は、2種以上の異なるインキによって形成されている。デザイン印刷部2(及びベアラーバー印刷部3)を構成するインキは、任意の色彩を呈するカラーインキである。上述のように、デザイン印刷部2は、第1インキを凸版印刷した第1インキ印刷部21と、第2インキを凸版印刷した第2インキ印刷部22と、を有する。第1インキと第2インキは、異なるインキである。ここで、異なるインキとは、後述する製法においてデザイン印刷部2を形成する際に、異なる円筒状版にて凸版印刷されるインキを意味する。異なるインキは、色彩及び/又は組成が異なっていてもよく、或いは、色彩及び組成が同じであってもよい。通常、異なるインキは、色彩が異なるインキであり(色違いインキ)、このような色彩が異なるインキは、一般的にはその組成も異なる。
【0037】
デザイン印刷部2は、第1インキの固化部である第1インキ印刷部21と、第2インキの固化部である第2インキ印刷部22と、を有していることを条件として、さらに、これらと異なるインキを凸版印刷した印刷部を有していてもよい。より装飾性に優れたデザインを表す観点から、デザイン印刷部2は、3種以上の異なるインキを凸版印刷して形成されていることが好ましく、4種以上の異なるインキを凸版印刷して形成されていることがより好ましい。図示例では、デザイン印刷部2は、5種の異なるインキによって形成されている。以下、5種のインキ及びそれらを凸版印刷して形成された印刷部を、第1乃至第5インキ及び第1乃至第5インキ印刷部21乃至25という。
【0038】
デザイン印刷部2に表される画像(デザイン)は、特に限定されず、任意である。デザイン印刷部2に表される画像は、大別して、(1)何らかの観念を視覚的に識別できる画像(以下、観念を視覚的に識別できる画像を特に「標示」という)、(2)何らかの観念を視覚的に識別できない画像(以下、前記標示との対比から「非標示」という)、に分けられる。
【0039】
前記標示としては、文字、記号、絵柄などが挙げられる。前記絵柄としては、看者が何らかの観念を視覚的に識別できるものであり、例えば、山の柄、花の柄、クリスタルカット模様、波模様、インキ付着量の差によって表されたグラデーション模様など、様々なものが挙げられる。
【0040】
前記非標示としては、無模様一色のベタ状の画像が挙げられる。前記ベタ状は、インキ固化部が面方向に延在して1つの連続した層を成していることをいう。ただし、印刷法にて形成されるベタ状の画像は、ドット状に付着し且つ固化したインキの集合物から構成されるので、巨視的に見ると、そのインキ固化部が面方向に延在して1つの連続した層を成しているが、微視的に見ると、その面内に無数の微細な隙間が存在する場合があることに留意されたい。このように微視的に見ると、微細な隙間を有する場合でも、巨視的に1つの連続した層を成している場合には、ベタ状の範疇に含まれるものとする。
【0041】
デザイン印刷部2の画像は、標示のみでもよく、或いは、非標示のみでもよく、或いは、標示及び非標示でもよい。好ましくは、デザイン印刷部2の画像は、標示のみから構成され、又は、標示及び非標示から構成される。1つの好ましいデザイン印刷部2は、標示を表す複数の印刷部からなり、もう1つの好ましいデザイン印刷部2は、標示を表す少なくとも1つの印刷部と、非標示を表す少なくとも1つの印刷部と、からなる。特に好ましいデザイン印刷部2は、標示を表す2つ以上の印刷部と、非標示を表す1つの印刷部と、からなる。
【0042】
図示例では、第1インキを凸版印刷して形成された第1インキ印刷部21は、それ以外のインキ印刷部(第2乃至第5インキ印刷部22乃至25など)の背景となる背景印刷部とされている。背景印刷部(第1インキ印刷部21)は、他のインキ印刷部の標示を際立たせる効果及び他のインキ印刷部の標示と融合して、デザイン印刷部2によって表されるデザインの1つの要素となる。背景印刷部である第1インキ印刷部21は、他のインキ印刷部(第2乃至第5インキ印刷部22乃至25など)の裏面及びウェブ1の裏面(インキ印刷部が形成されていない範囲のウェブ1の裏面)を覆うように、その他のインキ印刷部の裏面及びウェブ1の裏面に延在して形成される。従って、第1インキ印刷部21は、デザイン印刷部2の最裏面部を構成している。なお、図示例では、他のインキ印刷部(第2乃至第5インキ印刷部22乃至25など)は、ウェブ1と第1インキ印刷部21の間に介在されている。
【0043】
背景印刷部である第1インキ印刷部21は、上述のように、クリスタルカット模様、波模様、インキ付着量の差によって表されたグラデーション模様などの絵柄を表した印刷部でもよく、或いは、無模様一色の印刷部でもよい。好ましくは、第1インキ印刷部21は、標示又は非標示のベタ状の印刷部であり、より好ましくは、非標示の無模様一色のベタ状の印刷部である。
【0044】
第1インキ印刷部21の色彩は、特に限定されず、白色、銀色、黒色などの任意の色彩から選ばれる1色である。好ましくは、無模様一色の第1インキ印刷部21は、白色である。このような無模様白色の第1インキ印刷部21は、白色インキ(第1インキ)をウェブ1に凸版印刷することによって形成できる。
【0045】
第1インキ印刷部21以外のインキ印刷部(第2乃至第5インキ印刷部22乃至25)は、ウェブ1の裏面に直接的に設けられ、第1インキ印刷部21が、それらのインキ印刷部22乃至25を覆うように、それらのインキ印刷部22乃至25の裏面及びウェブ1の裏面に設けられる。各インキ印刷部(第1乃至第5インキ印刷部21乃至25)の厚みは、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、0.5μm~5μmである。
【0046】
各平面図において、第1インキ印刷部21が設けられた範囲を横長長方形で表している。この横長長方形の範囲に、ベタ状に第1インキを凸版印刷することにより、第1インキ印刷部21が形成されている。ただし、第1インキ印刷部21が設けられる範囲の平面視形状、及び、その配置は、図示例に限定されるわけではなく、これらは、あくまで参考的に記載していることに留意されたい。
【0047】
なお、ウェブ1の裏面側から見ると、第2乃至第5インキ印刷部22乃至25は、背景印刷部である第1インキ印刷部21に覆われているので、明瞭に視認できない。
図1においては、第2乃至第5インキ印刷部22乃至25が表面側から明瞭に視認できることを表す意味で、実線で描いたが、
図2においては、第2乃至第5インキ印刷部22乃至25が裏面側から明瞭に視認できないことを表す意味で、これらを破線で描いている。
【0048】
第2乃至第5インキ印刷部22乃至25は、それぞれ独立して、任意の標示を表している。標示によって視覚的に伝達される内容(情報)の観点では、大別して、法定表示、非法定表示がある。法定表示は、法律、業界団体の取り決め又は慣習などによって表すべきものをいう。法定表示は、長尺印刷物Aを適用する商品に応じて決定され、例えば、商品名、成分、原産地、内容量、賞味期限、製造日、製造者(販売者)などが挙げられる。
【0049】
法定表示は、一般に、主として文字からなるが、これに限定されず、記号などを含んでいる場合もある。非法定表示は、通常、商品を宣伝するために任意に表すものをいう。非法定表示は、一般に、商標(商品名)、キャラクター、商品イメージ、商品説明、キャッチフレーズなどが挙げられる。
【0050】
例えば、デザイン印刷部2を構成する複数のインキ印刷部のうち少なくとも1つは、法定表示を表す印刷部であり、それらのうち少なくとも1つは、非法定表示を表す印刷部である。図示例では、第2インキを凸版印刷して形成された第2インキ印刷部22は、法定表示を表し、第3乃至第5インキを凸版印刷して形成された第3乃至第5インキ印刷部は、それぞれ非法定表示を表している。
【0051】
各平面図において、第2インキ印刷部22が設けられた範囲を正方形で表し、第3インキ印刷部が設けられた範囲を縦長長方形で表し、第4インキ印刷部が設けられた範囲を三角形で表し、第5インキ印刷部が設けられた範囲を円形で表している。
【0052】
ただし、第2乃至第5インキ印刷部22乃至25が設けられる範囲の平面視形状、及び、それらの配置は、図示例に限定されるわけではなく、これらは、あくまで参考的に記載していることに留意されたい。さらに、第2乃至第5インキ印刷部22乃至25が、文字や記号を表している場合、前記平面視形状(例えば、第2インキ印刷部22では正方形、第3インキ印刷部23では縦長長方形など)の範囲内に、文字や記号が集中的に表されている。また、図示例では、第1乃至第5インキ印刷部21乃至25は、それぞれ1箇所の範囲に纏まって形成されているが、それぞれ、2箇所以上の範囲に分散して形成されていてもよい。
【0053】
長手方向における長さの観点では、第1インキ印刷部21の長手方向長さは、第2インキ印刷部22の長手方向長さよりも大きい。第1インキ印刷部21及び第2インキ印刷部22以外のインキ印刷部の長手方向長さは、第1インキ印刷部21の長手方向長さよりも小さいことを条件にして、特に限定されず、第2インキ印刷部22の長手方向と同じでもよく、或いは、小さくてもよい。例えば、第1インキ印刷部21及び第2インキ印刷部22以外のインキ印刷部の長手方向長さは、いずれも、第2インキ印刷部22の長手方向よりも小さい。例えば、第1インキ印刷部21の長手方向長さ>第2インキ印刷部22の長手方向長さ>第3インキ印刷部23の長手方向長さ≧第4インキ印刷部24の長手方向長さ≧第5インキ印刷部25の長手方向長さ、の関係を満たしている。
【0054】
図示例では、第1インキ印刷部21の長手方向長さ>第2インキ印刷部22の長手方向長さ>第3インキ印刷部23の長手方向長さ>第4インキ印刷部24の長手方向長さ>第5インキ印刷部25の長手方向長さ、の関係を満たしている。なお、第1乃至第5インキ印刷部21乃至25が、長手方向においてそれぞれ2箇所以上の範囲に分散して形成されている場合には、その第1乃至第5インキ印刷部21乃至25の各長手方向長さは、それぞれ、その2箇所以上の範囲の長手方向長さの合計をいう。
【0055】
例えば、第1インキ印刷部21の長手方向長さを100%とした場合、第2インキ印刷部22の長手方向長さは、30%~95%であり、第3インキ印刷部23の長手方向長さは、30%~90%であり、第4インキ印刷部24の長手方向長さは、15%~60%であり、第5インキ印刷部25の長手方向長さは、15%~60%である。第1乃至第5インキ印刷部21乃至25の短手方向長さは、特に限定されず、全て同じでもよく、或いは、互いに異なっていてもよい。第1インキ印刷部21を背景印刷とする場合には、通常、図示例のように、第1インキ印刷部21の短手方向長さが最も大きい。
【0056】
<ベアラーバー印刷部>
ベアラーバー印刷部3は、第1インキを凸版印刷した第1バー部31と、第2インキを凸版印刷した第2バー部32と、を有し、第1バー部31の幅が、第2バー部32の幅よりも大きい。
【0057】
ベアラーバー印刷部3は、第1バー部31及び第2バー部32の2つのバー部を有していることを条件として、3つ以上のバー部を有していてもよい。好ましくは、ベアラーバー印刷部3は、デザイン印刷部2の各インキ印刷部にそれぞれ対応した、複数のバー部からなる。上述のように、デザイン印刷部2が第1乃至第5インキ印刷部21乃至25からなる場合、ベアラーバー印刷部3は、それぞれのインキ印刷部に対応して、第1乃至第5バー部31乃至35からなる。
【0058】
第1乃至第5バー部31乃至35は、いずれも、ウェブ1の長手方向に帯状に延在する。ただし、第1乃至第5バー部31乃至35は、(ウェブ1の長手方向全体に亘って連続しておらず)長手方向の所々で周期的に途切れる箇所を有しつつ、長手方向に帯状に延在する。この途切れ箇所は、後述する製法のように、円筒状版の継ぎ目部分に相当する。図示例では、第1乃至第5バー部31乃至35の各途切れ箇所は、短手非画像部2aに一致している。
【0059】
第1バー部31は、第1インキを凸版印刷したものからなる。従って、第1インキ印刷部21と第1バー部31は、同じインキ(第1インキ)から形成されている。第2バー部32は、第2インキを凸版印刷したものからなる。従って、第2インキ印刷部22と第2バー部32は、同じインキ(第2インキ)から形成されている。第3バー部33は、第3インキを凸版印刷したものからなる。従って、第3インキ印刷部23と第3バー部33は、同じインキ(第3インキ)から形成されている。第4バー部34は、第4インキを凸版印刷したものからなる。従って、第4インキ印刷部24と第4バー部34は、同じインキ(第4インキ)から形成されている。第5バー部35は、第5インキを凸版印刷したものからなる。従って、第5インキ印刷部25と第5バー部35は、同じインキ(第5インキ)から形成されている。
【0060】
各バー部(第1乃至第5バー部31乃至35)の厚みは、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、0.5μm~5μmである。幅(ウェブ1の短手方向における長さ)の観点では、第1バー部31の幅は、第2バー部32の幅よりも大きい。
【0061】
第1バー部31及び第2バー部32以外のバー部の幅は、第1バー部31の幅よりも小さいことを条件にして、特に限定されず、第2バー部32の幅と同じでもよく、或いは、その幅よりも小さくてもよい。例えば、第1バー部31及び第2バー部32以外のバー部の幅は、いずれも、第2バー部32の幅よりも小さい。例えば、第1バー部31の幅>第2バー部32の幅>第3バー部33の幅≧第4バー部34の幅≧第5バー部35の幅、の関係を満たしている。
【0062】
図示例では、第1バー部31の幅31W>第2バー部32の幅32W>第3バー部33の幅33W>第4バー部34の幅34W>第5バー部35の幅35W、の関係を満たしている(符号31W乃至35Wは、
図3を参照)。なお、第1乃至第5バー部31乃至35が、短手方向においてそれぞれ2箇所以上の範囲に分散して形成されている場合には、その第1乃至第5バー部31乃至35の各幅は、それぞれ、その2箇所以上の範囲の幅の合計をいう。
【0063】
例えば、第1バー部31の幅を100%とした場合、第2バー部32の幅は、31%~60%であり、第3バー部33の幅は、11%~30%であり、第4バー部34の幅は、1%~10%であり、第5バー部35の幅は、0%を越え10%以下である。
【0064】
第1乃至第5インキ印刷部21乃至25の長手方向長さと、それらに対応する第1乃至第5バー部31乃至35の幅は、相関関係にある。つまり、長手方向長さが大きいインキ印刷部に対応するバー部は、その幅が大きい。例えば、長手方向長さが最も大きい第1インキ印刷部21に対応する第1バー部31は、その幅が最も大きく、長手方向長さが第1インキ印刷部21よりも小さい第2インキ印刷部22に対応する第2バー部32は、その幅が第1バー部31よりも小さい。
【0065】
ウェブ1の短手方向におけるベアラーバー印刷部3(第1乃至第5バー部31乃至35)の配置は、特に限定されない。ベアラーバー印刷部3(第1乃至第5バー部31乃至35)は、例えば、ウェブ1の短手方向右端部又は左端部に配置されていてもよく、ウェブ1の短手方向中間部に配置されていてもよい。
【0066】
ベアラーバー印刷部3がウェブ1の短手方向右端部に配置されている場合とは、ウェブ1の短手方向右縁と最も右側のデザイン列との間の領域に、ベアラーバー印刷部3が配置されることをいう。ベアラーバー印刷部3がウェブ1の短手方向左端部に配置されている場合とは、ウェブ1の短手方向左縁と最も左側のデザイン列との間の領域に、ベアラーバー印刷部3が配置されることをいう。ベアラーバー印刷部3がウェブ1の短手方向中間部に配置されている場合とは、短手方向において隣接する2つのデザイン列の間の領域に、ベアラーバー印刷部3が配置されることをいう。
【0067】
好ましくは、ベアラーバー印刷部3(第1乃至第5バー部31乃至35)は、ウェブ1の短手方向中間部に配置される。図示例では、ベアラーバー印刷部3は、ウェブ1の短手方向略中央部(例えば、右側の2つのデザイン列と左側の2つのデザイン列の間の領域)に配置されている。
【0068】
第1乃至第5バー部31乃至35(各バー部)について、少なくとも1つのバー部と少なくとも1つのバー部が重なった状態でウェブ1に設けられていてもよく、或いは、少なくとも1つのバー部と少なくとも1つのバー部が重なり且つ少なくとも1つのバー部が他のバー部に重なることなくウェブ1に直接的に設けられていてもよく、或いは、第1乃至第5バー部31乃至35(各バー部)が、重なることなくそれぞれ独立してウェブ1に直接的に設けられていてもよい。
【0069】
少なくとも1つのバー部と少なくとも1つのバー部が重なった状態でウェブ1に設けられている場合としては、例えば、第2乃至第5バー部32乃至35(複数のバー部)が重なることなく短手方向に並んで配置され且つ第1バー部31がその第2乃至第5バー部32乃至35の全てに重なって配置されている場合、或いは、第2乃至第4バー部32乃至34(複数のバー部)が重なることなく短手方向に並んで配置され且つ第1バー部31及び第5バー部35がその第2乃至第4バー部32乃至34の全てに重なって配置されている場合、或いは、全てのバー部31乃至35が厚み方向に重なっている場合、などが挙げられる。
【0070】
後述するように、長尺印刷物Aのうちベアラーバー印刷部3を含む領域は、長尺印刷物の使用時に廃棄されるため、廃棄量を少なくする観点から、ベアラーバー印刷部3の幅は、できるだけ小さいことが好ましい。かかる観点から、ベアラーバー印刷部3を構成する第1乃至第5バー部31乃至35(各バー部)は、少なくとも1つのバー部と少なくとも1つのバー部が重なっていることが好ましく、3つ以上のバー部が重なっていることがより好ましく、全てのバー部が厚み方向に重なっていることが最も好ましい。
【0071】
他方、後述するように、長尺印刷物Aはロール状に巻いて保管・運搬されるが、そのロール体において長尺印刷物Aのブロッキングを防止する観点から、ベアラーバー印刷部3を構成する第1乃至第5バー部31乃至35(各バー部)は、互いに重なることなく短手方向に並んで配置されていることが好ましい。各バー部が重なっていると、その重なり部分におけるベアラーバー印刷部3の厚みが大きくなり、長尺印刷物Aをロール状に巻いた際に、前記重なり部分においてブロッキングを生じ易くなるからである。ブロッキング抑制の観点から、ベアラーバー印刷部3の最大厚みは、デザイン印刷部2の最大厚みと同じ又はそれよりも小さいことが好ましい。
【0072】
なお、複数のバー部からなるベアラーバー印刷部3の幅をできるだけ小さくするために、短手方向に並んで配置される複数のバー部は、短手方向両側縁が近接して又は短手方向両側縁が接するように設けられていることが好ましい。
【0073】
廃棄量の低減及びブロッキング防止を両立させるために、ベアラーバー印刷部3は、2つのバー部が重なっていることが好ましい。2つのバー部が重なっていても、ベアラーバー印刷部の厚みは、さほど大きくならず、長尺印刷物のブロッキングを抑制できる。例えば、ベアラーバー印刷部3が第1及び第2バー部31,32からなる場合、第1及び第2バー部31,32は重なって設けられることが好ましい。例えば、ベアラーバー印刷部3が第1及び第2バー部31,32以外のバー部を有する場合、第1バー部31以外のバー部は、互いに重なることなく短手方向に並んで配置され、その並んで配置された複数のバー部のそれぞれに重なるように第1バー部31が配置されることが好ましい。
【0074】
なお、特に図示しないが、ベアラーバー印刷部3が第1乃至第5バー部31乃至35を有する場合、第2乃至第5バー部32乃至35から選ばれる3つのバー部は、互いに重なることなく短手方向に並んで配置され、残る1つのバー部が前記3つのバー部のいずれかに重なって設けられ、その並んで配置された複数のバー部のそれぞれに重なるように第1バー部31が配置されていてもよい。例えば、第2バー部32、第3バー部33及び第4バー部34が互いに重なることなく短手方向に並んで配置され、第4バー部34が第3バー部33に重なって設けられ、それらに重なるように第1バー部31が設けられていてもよい。
【0075】
或いは、特に図示しないが、ベアラーバー印刷部3が第1乃至第5バー部31乃至35を有する場合、第2乃至第5バー部32乃至35から選ばれる2つのバー部は、互いに重なることなく短手方向に並んで配置され、残る2つのバー部がそれぞれ短手方向に並んだ2つのバー部にそれぞれ重なって設けられ、その並んで配置された複数のバー部のそれぞれに重なるように第1バー部31が配置されていてもよい。例えば、第2バー部32及び第3バー部33が互いに重なることなく短手方向に並んで配置され、第4バー部34が第2バー部32に重なり且つ第5バー部35が第3バー部33に重なって設けられ、それらに重なるように第1バー部31が設けられていてもよい。
【0076】
図示例のように、ベアラーバー印刷部3が第1乃至第5バー部31乃至35からなる場合、第2乃至第5バー部32乃至35は、互いに重なることなく短手方向に並んで配置され、その第2乃至第5バー部32乃至35のそれぞれに重なるように第1バー部31が配置されることが好ましい。この場合、図示例のように、第2乃至第5バー部32乃至35がウェブ1の裏面に直接的に設けられ、第1バー部31が、第2乃至第5バー部32乃至35の裏面を覆うように設けられる。なお、特に図示しないが、第1バー部31がウェブ1の裏面に直接的に設けられ、第2乃至第5バー部32乃至35が、互いに重なることなく第1バー部31の裏面に並んで設けられていてもよい。図示例では、短手方向に並んで配置されている第2乃至第5バー部32乃至35は、隣接する短手方向両側縁が近接して設けられているが、短手方向両側縁が接するように設けられていてもよい(図示せず)。
【0077】
ベアラーバー印刷部3を構成する各バー部(第1乃至第5バー部31乃至35)の単位面積あたりのインキ付着量は、特に限定されず、適宜設定できる。上述のように、ベアラーバー印刷部3の厚みを小さくすると、ブロッキングの発生を抑制できる。例えば、第1バー部31と第2バー部32が重なっている場合、第1バー部31と第2バー部32の合計厚みを比較的小さくすることにより、ブロッキングの発生を抑制できる。このため、第1バー部31と第2バー部32の合計厚みを比較的小さくするために、第2バー部32の単位面積あたりのインキ付着量を、第1バー部31の単位面積あたりのインキ付着量よりも小さくすることが好ましい。凸版印刷で形成されるバー部の、単位面積あたりのインキ付着量と厚みとは、通常、比例関係にあり、単位面積あたりのインキ付着量が第1バー部31の単位面積あたりのインキ付着量よりも小さい第2バー部32の厚みは、第1バー部31の厚みよりも小さくなる。
【0078】
同様な理由から、第2乃至第5バー部32乃至35のそれぞれの単位面積あたりのインキ付着量は、第1バー部31の単位面積あたりのインキ付着量よりも小さいことが好ましい。第2乃至第5バー部32乃至35のそれぞれの単位面積あたりのインキ付着量は、同じでもよく、或いは、異なっていてもよい。好ましくは、第1バー部31の単位面積あたりのインキ付着量>第2バー部32の単位面積あたりのインキ付着量の関係を満たし、より好ましくは、第1バー部31の単位面積あたりのインキ付着量>第2バー部32の単位面積あたりのインキ付着量又は第3バー部33の単位面積あたりのインキ付着量又は第4バー部34の単位面積あたりのインキ付着量又は第5バー部35の単位面積あたりのインキ付着量の関係を満たす。
【0079】
<長尺印刷物の製造方法>
上記長尺印刷物Aは、例えば、次のような方法で得ることができる。ただし、長尺印刷物Aは、下記製法によって得られたものに限定されるわけではない。
【0080】
長尺印刷物Aは、長尺帯状のウェブ1を長手方向に搬送する工程、搬送中のウェブ1に少なくとも2つのインキ(第1インキ及び第2インキ)を印刷してデザイン印刷部2及びベアラーバー印刷部3を形成する工程、によって得られる。デザイン印刷部2及びベアラーバー印刷部3を形成する際の印刷方式は、シート状の印刷版を版胴に巻き付けた円筒状版を用いた凸版印刷方式であり、好ましくは、円筒状版を用いたフレキソ印刷方式である。
【0081】
図6は、長尺印刷物の製造工程で使用される印刷機の参考側面図であり、印刷機5を示す。
図6の細矢印は、ウェブ1の搬送方向を示す。ウェブ1を長手方向に送る途中に、印刷機5が配置されている。印刷機5は、例えば、フレキソ印刷方式の円筒状版を有する。上述のように、デザイン印刷部2が第1乃至第5インキ印刷部21乃至25からなる場合には、5つの円筒状版61乃至65(第1円筒状版61、第2円筒状版62、第3円筒状版63、第4円筒状版64及び第5円筒状版65)が配設される。
【0082】
詳しくは、
図6に示すように、印刷機5は、ウェブ1を搬送するセンタードラム51と、ウェブ1を挟んでセンタードラム51の周囲に配置された複数の円筒状版(例えば、第1乃至第5円筒状版61乃至65)と、を有する。例えば、第5円筒状版65、第4円筒状版64、第3円筒状版63、第2円筒状版62及び第1円筒状版61は、この順で、ウェブ1の搬送方向上流側から下流側に配設されている。なお、第1乃至第5円筒状版61乃至65の配置は、この順に限定されず、適宜変更できる。もっとも、第1インキ印刷部21を一色の背景印刷部とする場合には、それを形成する第1円筒状版61は、最も下流側に配置される。この場合、第1円筒状版61を最下流側に配置することを条件に、他の円筒状版(第2乃至第5円筒状版65)の配置は、任意に選択できる。
【0083】
第1乃至第5円筒状版61乃至65には、それぞれアニロックスロール52とドクターチャンバー53が具備されている。ドクターチャンバー53からアニロックスロール52にインキが付着し、アニロックスロール52から円筒状版の凸版にインキが転移し、円筒状版の凸版からウェブ1にインキが印刷される。
【0084】
前記円筒状版(第1乃至第5円筒状版61乃至65)は、円柱状の版胴69と、その版胴69の周囲に巻き付けたシート状の印刷版(第1乃至第5印刷版71乃至75)と、を有する。シート状の印刷版は、例えば、エラストマーやゴムなどの柔軟性を有するシートに、凸版が形成されたものである。前記版胴69及びシート状の印刷版並びにアニロックスロール52及びドクターチャンバー53などの印刷機5は、従来公知のフレキソ印刷方式で用いられているものを用いることができる。
【0085】
図7(a)は、第1円筒状版の平面図であり、
図7(b)は、第1円筒状版の斜視図である。より具体的には、
図7(a)および
図7(b))は、上記デザイン印刷部2の第1インキ印刷部21及びベアラーバー印刷部3の第1バー部31を同時に凸版印刷する第1円筒状版61を示す。
【0086】
第1円筒状版61は、支持軸68を有する円柱状の版胴69と、その版胴69の周囲に巻き付けたシート状の第1印刷版71と、第1印刷版71の両端部の継ぎ目を埋める目地接着剤67と、を有する。第1印刷版71は、その表面に、第1インキ印刷部21を印刷するデザイン凸版711と第1バー部31を印刷するベアラー凸版712とが形成されている。
【0087】
版胴69に巻き付けた第1印刷版71のデザイン凸版711は、版胴69の周方向に所定間隔を開け且つ版胴69の軸方向に所定間隔を開けて規則的に複数設けられている。第1印刷版71のデザイン凸版711の周方向長さ及び軸方向長さは、第1インキ印刷部21の長手方向長さ及び短手方向長さに等しい。また、版胴69に巻き付けた第1印刷版71のベアラー凸版712は、版胴69の軸方向中央部において、周方向に連続した凸条に設けられている。第1印刷版71のベアラー凸版712の軸方向長さは、第1バー部31の幅(短手方向長さ)に等しい。また、第1印刷版71のベアラー凸版712の周長さは、版胴69の周長-継ぎ目部分の幅、に概ね等しい。
【0088】
なお、デザイン凸版711及びベアラー凸版712は、第1印刷版71の両端部の継ぎ目部分には形成することができない。この第1円筒状版61の継ぎ目部分(目地接着剤67にて埋められている部分)は、版胴69の軸方向に延在している。かかる第1円筒状版61で凸版印刷した際、その継ぎ目部分には、インキが付着せず、継ぎ目部分は、短手非画像部2a及び第1バー部31の周期的に途切れる箇所に対応する。
【0089】
図8(a)は、上記デザイン印刷部2の第2インキ印刷部22及びベアラーバー印刷部3の第2バー部32を同時に凸版印刷する第2円筒状版62を示し、
図8(b)は、上記デザイン印刷部2の第3インキ印刷部23及びベアラーバー印刷部3の第3バー部33を同時に凸版印刷する第3円筒状版63を示し、
図8(c)は、上記デザイン印刷部2の第4インキ印刷部24及びベアラーバー印刷部3の第4バー部34を同時に凸版印刷する第4円筒状版64を示し、
図8(d)は、上記デザイン印刷部2の第5インキ印刷部25及びベアラーバー印刷部3の第5バー部35を同時に凸版印刷する第5円筒状版65を示す。
【0090】
第2乃至第5円筒状版62乃至65のそれぞれの構成は、上記第1円筒状版61の構成と同様である。そのため、上記第1円筒状版61の構成を説明した段落の「第1」を、「第2」、「第3」、「第4」又は「第5」に読み替え、上記段落の符号「71」を「72」、「73」、「74」又は「75」に読み替えることにより、第2乃至第5円筒状版62乃至65のそれぞれの構成をここで説明したものとする。
【0091】
なお、第1乃至第5印刷版71乃至75の各デザイン凸版711乃至751の周方向長さは、それぞれ第1乃至第5インキ印刷部21乃至25の長手方向長さに等しいので、図示例では、第1印刷版71のデザイン凸版711の周方向長さ>第2印刷版72のデザイン凸版721の周方向長さ>第3印刷版73のデザイン凸版731の周方向長さ>第4印刷版74のデザイン凸版741の周方向長さ>第5印刷版75のデザイン凸版751の周方向長さ、の関係を満たしている。
【0092】
さらに、第1乃至第5印刷版71乃至75の各ベアラー凸版712乃至752の軸方向長さは、それぞれ第1乃至第5バー部31乃至35の幅に等しいので、図示例では、第1印刷版71のベアラー凸版712の軸方向長さ>第2印刷版72のベアラー凸版722の軸方向長さ>第3印刷版73のベアラー凸版732の軸方向長さ>第4印刷版74のベアラー凸版742の軸方向長さ>第5印刷版75のベアラー凸版752の軸方向長さ、の関係を満たしている。
【0093】
また、
図8(a)~(d)に示すように、第2乃至第5印刷版72乃至75の各ベアラー凸版722乃至752は、軸方向における位置関係で、互いに重ならないにように横ずれして配置されている。このように各ベアラー凸版722乃至752が横にずれて配置されている第2乃至第5印刷版72乃至75を用いることにより、第2乃至第5バー部32乃至35が、互いに重なることなくウェブ1に並んで印刷された長尺印刷物Aが得られる。
【0094】
図9(a)及び(b)は、凸版の一部分を切断した断面を含む斜視図である。
図9(a)および(b)に示すように、第1乃至第5印刷版71乃至75の各凸版(デザイン凸版及びベアラー凸版)の表面には、無数の小突起79が突設されている。従って、凸版は、微視的には、無数の小突起79の集合で構成されている。印刷時には、各小突起79の頂面にインキが付着しており、この各小突起79の頂面からウェブ1にインキが移転することにより、デザイン印刷部2及びベアラーバー印刷部3が凸版印刷される。
【0095】
図9(a)は、小突起79が粗に形成されている凸版を示し、同図(b)は、小突起79が密に形成されている凸版を示す。
図9(a)の小突起79が粗に形成されている凸版は、単位面積あたりのインキ付着量が小さいインキ印刷部及びバー部を印刷できる。
図9(b)の小突起79が密に形成されている凸版は、単位面積あたりのインキ付着量が大きいインキ印刷部及びバー部を印刷できる。
【0096】
上述のように、例えば、第1バー部31の単位面積あたりのインキ付着量>第2バー部32の単位面積あたりのインキ付着量の関係を満たす第1バー部31及び第2バー部32を形成する場合、小突起79が密に形成されているベアラー凸版712を有する第1印刷版71を用い且つ小突起79が粗に形成されているベアラー凸版722を有する第2印刷版72を用いて凸版印刷すればよい。また、第2乃至第5バー部32乃至35から選ばれる2つのバー部を重なって設ける場合、ブロッキング抑制の観点から、その重ね合わせる2つのバー部は、小突起79が粗に形成されているベアラー凸版を有する印刷版を用いて形成することが好ましい。
【0097】
<<搬送工程>>
図6に示すように、長尺帯状のウェブ1を長手方向に搬送する。ウェブ1をセンタードラム51の周囲に沿わせて送ると、後述する印刷工程において、ウェブ1に順に凸版印刷が施される。
【0098】
<<印刷工程>>
印刷工程においては、ウェブ1に少なくとも2つのインキ(第1インキ及び第2インキ)を印刷してデザイン印刷部2及びベアラーバー印刷部3を形成する。以下、上記のように第1乃至第5インキを凸版印刷することにより、第1乃至第5インキ印刷部21乃至25からなるデザイン印刷部2及び第1乃至第5バー部31乃至35からなるベアラーバー印刷部3を形成する場合を説明する。ただし、第1インキ乃至第5インキの印刷順序は、下記に限定されるわけではなく、各円筒状版の配置を適宜変更して、各インキの印刷順序を変更してもよい。
【0099】
図6を参照して、センタードラム51に送られたウェブ1には、第5円筒状版65によって、第5インキ印刷部25及び第5バー部35が同時に凸版印刷されていく。
図10及び
図11は、円筒状版を用いてウェブ1に印刷する過程を示す平面図である。これらの平面図は、センタードラム51の外側からウェブ1の裏面側を見た図でもある。
【0100】
図6及び
図10を参照して、第5円筒状版65により、ウェブ1の裏面に第5インキを印刷し、第5インキ印刷部25及び第5バー部35を形成する。次に、第4円筒状版64により、ウェブ1の裏面に第4インキを印刷し、第4インキ印刷部24及び第4バー部34を形成し、第3円筒状版63により、ウェブ1の裏面に第3インキを印刷し、第3インキ印刷部23及び第3バー部33を形成する。
【0101】
図6及び
図11を参照して、第2円筒状版62により、ウェブ1の裏面に第2インキを印刷し、第2インキ印刷部22及び第2バー部32を形成し、最後に、第1円筒状版61により、ウェブ1の裏面に第1インキを印刷し、第1インキ印刷部21及び第1バー部31を形成する。なお、インキの種類に応じて、インキの乾燥或いは紫外線などの電離線照射などを行い、各インキを硬化させる。得られた長尺印刷物Aは、通常、芯材59を有する巻き取り部に巻き取られる。
図12は、長尺印刷物Aが芯材59の周囲にロール状に巻き取られたロール体Bを示す。
【0102】
<長尺印刷物の効果>
本開示の長尺印刷物Aは、デザイン印刷部2を構成するインキ印刷部の画像が凸版印刷によって綺麗に表されている。具体的には、長尺印刷物Aを製造する際には、上述のように、円筒状版を使用してインキをウェブ1に凸版印刷する。円筒状版のバウンシングを抑制するために、印刷版にベアラー凸版が形成されている。つまり、版胴の周囲の略全体にベアラー凸版が設けられている円筒状版を用いると、円筒状版の回転中、ベアラー凸版がウェブに離れずに接触しているので、円筒状版のバウンシングを抑制できる。
【0103】
しかしながら、比較的長時間、連続的に印刷工程を行なっていると(印刷機を比較的長時間稼働させていると)、円筒状版が僅かにバウンシングするおそれがある。バウンシングは、凸版がウェブに接触した後に円筒状版に微小な振動が生じることによって発生すると考えられる。長手方向長さの大きいインキ印刷部を形成する円筒状版は、周方向長さの大きいデザイン凸版を有するが、前記凸版がウェブに接触した後に生じるバウンシングによって、インキ抜けが生じ易い。特に、長手方向長さが比較的大きく且つベタ状の一色のインキ印刷部(例えば、上述の第1インキ印刷部21)を凸版印刷した場合には、バウンシングによるインキ抜けが目立ってしまう。
【0104】
この点、本開示においては、第1バー部31を印刷する第1印刷版71のベアラー凸版712の軸方向長さが、他の印刷版(第2印刷版72を含む)のベアラー凸版722の軸方向長さよりも大きい。軸方向長さが比較的大きいベアラー凸版はウェブ1に対する接触面積が大きいので、かかるベアラー凸版712を有する第1円筒状版61は、バウンシングし難くなる。バウンシングし難い第1円筒状版61を用いて凸版印刷された第1インキ印刷部21は、インキ抜けが生じ難く、特に、一色の第1インキ印刷部21は、綺麗に表される。
【0105】
なお、第2乃至5印刷版の各ベアラー凸版722乃至752の周方向長さは、それぞれ第2乃至第5バー部32乃至35の長手方向長さに対応して順に小さいので、第2乃至第5印刷版72乃至75は、バウンシング抑制効果が順に低くなる。しかし、第2乃至第5印刷版72乃至75によって凸版印刷される第2乃至第5インキ印刷部22乃至25は、各長手方向長さが順に小さく、仮にバウンシングを生じても各インキ印刷部に表される画像のインキ抜けが目立ち難い。このため、長尺印刷物Aは、デザイン印刷部2を構成するインキ印刷部が凸版印刷によって外見上綺麗に表されている。さらに、本開示の好ましい長尺印刷物によれば、ロールに巻き取った際にブロッキングを生じ難いという効果も奏する。
【0106】
<長尺印刷物の使用例>
長尺印刷物Aは、デザイン印刷部2によって表された画像(デザイン)が長手方向に繰り返して配置されている。かかる長尺印刷物Aは、各種のラベル、包装材、ラッピングリボンなどとして使用できる。ラベルとしては、筒状ラベル、巻き付けラベル、グルーラベル、インモールドラベルなどの従来公知のものが挙げられる、包装材としては、オーバーラップフィルム、ピロー包装袋用のフィルム、パウチ袋用のフィルムなどが挙げられる。
【0107】
例えば、長尺印刷物Aを筒状ラベルに加工する場合には、まず、長尺印刷物Aを、単列のデザイン列からなる長尺シートに分割する。具体的には、
図2の太矢印で示すデザイン列の境界(例えば、長手非画像部2b)で、長尺印刷物Aを長手方向と平行に切断して、1列のデザイン列を含む長尺シートを得る。
図2に示すように、短手方向に4列のデザイン列が設けられた長尺印刷物Aの場合には、4つの長尺シートが得られる。なお、長尺印刷物Aの短手方向右側部及び左側部(いわゆる耳部)、並びに、ベアラーバー印刷部3を含む領域は、廃棄される。
【0108】
図13は、長尺印刷物Aを分割して得られた1つの長尺シートCを示す。
図14は、長尺シートから筒状ラベルを形成する過程を示す参考斜視図である。
図14に示すように、前記長尺シートCの裏面側を内側にして筒状に丸め、その短手方向左側端部C1と右側端部C2を重ね合わせて接着することにより、長尺状の筒状ラベル連続体Dが得られる。この長尺状の筒状ラベル連続体Dを、1つのデザイン毎に分割するべく長手非画像部2bにおいて短手方向に平行に切断することにより、1つの筒状ラベルが得られる。筒状ラベルは、熱収縮性及び/又は自己伸縮性を有するウェブ1を使用した長尺印刷物Aの1つの使用例である。
【0109】
また、
図13に示す長尺シートCを、1つのデザイン毎に分割するべく長手非画像部2bにおいて短手方向に平行に切断することにより、枚葉状のラベルが得られる。この枚葉状のラベルは、巻き付けラベル、グルーラベル、インモールドラベルなどとして使用できる。
枚葉状のラベルEは、例えば、
図15に示すように、容器などの被着体9に巻き付けるようにして装着される。このような装着方法によるラベルEは、巻き付けラベルとも呼ばれる。この巻き付けラベルEの少なくとも一方の端部E1の裏面に接着剤を塗布し、
図15(a)に示すように、その一方の端部E1を容器などの被着体9に貼り付け、巻き付けラベルEを被着体9の周囲に巻き付けた後、
図15(b)に示すように、その他方の端部E2の裏面を一方の端部E1の表面に貼り付ける(又はその他方の端部E2の裏面を被着体9に貼り付ける)ことにより、ラベル付き物品Fが得られる。
【符号の説明】
【0110】
1 ウェブ
2 デザイン印刷部
21 第1インキ印刷部
22 第2インキ印刷部
3 ベアラーバー印刷部
31 第1バー部
32 第2バー部
31W 第1バー部の幅
32W 第2バー部の幅
2a,2b 非画像部
A 長尺印刷物