(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20250124BHJP
H05B 47/135 20200101ALI20250124BHJP
H05B 45/37 20200101ALI20250124BHJP
H05B 47/18 20200101ALI20250124BHJP
H05B 47/19 20200101ALI20250124BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20250124BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20250124BHJP
H10H 20/00 20250101ALI20250124BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B47/135
H05B45/37
H05B47/18
H05B47/19
H05B47/16
H05B45/10
H01L33/00 L
(21)【出願番号】P 2021028553
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】597096161
【氏名又は名称】株式会社朝日ラバー
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】増子 直也
(72)【発明者】
【氏名】石黒 英治
(72)【発明者】
【氏名】川口 武
(72)【発明者】
【氏名】田崎 益次
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 啓一
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-069631(JP,A)
【文献】特開2014-222639(JP,A)
【文献】特開2015-115507(JP,A)
【文献】特開2003-223994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/155
H05B 47/135
H05B 45/37
H05B 47/18
H05B 47/19
H05B 47/16
H05B 45/10
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる分光分布の発光を示
す、少なくとも2種
の、蛍光体含有LED装置を組み合わせた光源を備える照明部を備え、
CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、平均演色評価数Raが互いに3以
上異なる照明光の種類に段階的な切り替えが可能で
あり、
前記段階的な切り替えが、平均演色評価数Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、平均演色評価数Raが75以上80未満である照明光を呈する第2設定と、の切り替え、を含み、
前記第2設定の照明光は、前記第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積比が1.3未満である、ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記段階的な切り替えが
、平均演色評価数Raが80以上95未満である照明光を呈する第3設
定への切り替え、をさらに含み、
前記第3設定の照明光は、前記第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積比が1.3以上である、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
ユーザが覚醒を求めるときは前記第2設定に切り替え、ユーザが鎮静を求めるとき
は前記第3設定に切り替える請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記段階的な切り替えが、ユーザの生体情報データに基づく入力値に応じて実行される請求項1~3の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記ユーザの生体情報が、生体情報を取得可能なウェアラブルコンピュータからの出力値に基づく請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
互いに異なる分光分布の発光を示す、少なくとも2種の、蛍光体含有LED装置を組み合わせた光源を備える照明部を備え、
CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、平均演色評価数Raが互いに3以上異なる照明光の種類に段階的な切り替えが可能であり、
前記段階的な切り替えが、平均演色評価数Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、平均演色評価数Raが80以上95未満である照明光を呈する第3設定と、の切り替え、を含み、
前記第3設定の照明光は、前記第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積比が1.3以上である、ことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光機能を有する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の好みに応じて、白色光や暖色光に調整できる調光機能を有する照明装置が知られている。また、人の覚醒感や鎮静感、疲労感等を変化させるように調光された照明装置も知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、暗所において明るく感じさせて高い視認性を与え、かつ疲労感を与えにくい光を発する光源として、CIE1931の色度図の座標において、無彩色を示す座標W(0.33,0.33)とスペクトル軌跡上の480nmの座標B(0.091,0.133)と、560nmの座標G(0.373,0.624)とを結ぶ線分WB及び線分WGとスペクトル軌跡に囲まれる領域における、色純度が2~50の領域に含まれ、かつ、波長領域480~540nmにおいて連続した分光波長が占める面積が380~780nmの光源全体の分光波長面積に対して15%以上である光を発する光源を開示する。
【0004】
また、疲労感に関するものではないが、紙面の白さ感を高める光により、紙面の文字を読みやすくする照明光も提案されている。このような技術として、下記特許文献2は、固体発光素子を有する光源を備え、光源は、相関色温度が5400~7000Kの範囲で、色偏差Duv-6~8の範囲にあり、The CIE1997 Interim Color Appearance Model (Simple Version)で規定される算出方法を用いて求められたコピー用紙における鮮やかさの指標であるクロマ値が2.7以下となる分光放射特性を有する照明装置を開示する。
【0005】
また、下記特許文献3は、仮眠効果が高い仮眠支援を実行することができる環境制御システムを開示する。具体的には、ユーザの行動を示す行動指標情報を含む入力情報を取得する第1取得部と、制御内容決定ルールに従って、入力情報から、ユーザを仮眠させるための制御内容であって、光を出力する機器を含む環境制御機器の制御内容を決定する決定部と、決定された制御内容に基づいて環境制御機器を制御する制御部と、制御内容に対するユーザの評価を示す評価情報を取得する第2取得部と、評価情報に基づく値を報酬として用いる機械学習によって制御内容決定ルールを更新する更新部とを備える環境制御システムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-125577号公報
【文献】特開2014-075186号公報
【文献】特開2020-103508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
人の覚醒感や鎮静感、疲労感等を変化させるように調光できる従来の照明装置においては、人が照明の下で各種作業をしているときに人の感覚に変化を与えるように調光するときには、人が光の変化に気づくように調光がなされているために、作業している人に光の変化による違和感を与えてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決すべく、人の覚醒感や鎮静感、疲労感等を変化させるように調光できる照明装置において、作業している人に光の変化による違和感を与えにくい照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面は、互いに異なる分光分布の発光を示す、少なくとも2種の、蛍光体含有LED装置を組み合わせた光源を備える照明部を備え、CIE1931の色度座標において、座標A (0.32, 0.32)と、座標B (0.32, 0.34)と、座標C (0.34, 0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、平均演色評価数Raが互いに3以上異なる照明光の種類に段階的な切り替えが可能である照明装置である。このような照明装置によれば、人の覚醒感や鎮静感、疲労感等を変化させるように調光できる照明装置において、作業している人に光の変化による違和感を与えにくい照明装置が得られる。また、蛍光体含有LED装置を用いることにより、疲労感を与えにくい連続した分光分布を有する照明光が得られやすい点から好ましい。そして、段階的な切り替えは、平均演色評価数Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、平均演色評価数Raが75以上80未満である照明光を呈する第2設定と、の切り替え、を含み、第2設定の照明光は、第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積比が1.3未満である。または、段階的な切り替えは、平均演色評価数Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、平均演色評価数Raが80以上95未満である照明光を呈する第3設定と、の切り替え、を含み、第3設定の照明光は、第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積比が1.3以上である。
【0010】
また、段階的な切り替えが、平均演色評価数Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、平均演色評価数Raが75以上80未満である照明光を呈する第2設定との切り替えに加え、平均演色評価数Raが80以上95未満である照明光を呈する第3設定への切り替え、を含むことが、覚醒感と鎮静感との変化を与えやすい調光が可能である点から好ましい。または、平均演色評価数Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、平均演色評価数Raが80以上95未満である照明光を呈する第3設定との切り替えに加え、平均演色評価数Raが75以上80未満である照明光を呈する第2設定への切り替え、を含むことが、覚醒感と鎮静感との変化を与えやすい調光が可能である点から好ましい。このような照明装置によれば、例えば、通常の照明時には、覚醒感及び鎮静感の中間的な感じを与える照明を第1設定として点灯し、ユーザが覚醒を求めるときは第2設定に切り替えて点灯し、ユーザが鎮静を求めるときは第3設定に切り替えて点灯するようにすることにより、ユーザに違和感を与えずに覚醒感や鎮静感を与えることができる。
【0011】
また、段階的な切り替えが、ユーザの生体情報に基づく入力値に応じて実行されることが、ユーザ個々人の生体情報を反映させて自動的に好ましい光に調整できる点から好ましい。このような場合、ユーザの生体情報が、生体情報を取得可能なウェアラブルコンピュータからの出力値に基づくことが、生体情報の取得を調光にリアルタイムに反映させやすい点から好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、人の覚醒感や鎮静感、疲労感等に変化を与えるように調光できる照明装置において、作業している人に光の変化による違和感を与えにくい照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の照明装置10を用いた照明システム100の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、LEDモジュールである照明部1の平面模式図である。
【
図3】
図3は、LED装置30の平面模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したLED装置30のB-B’断面における断面模式図である。
【
図5】
図5は、平均演色評価数Raが互いに3以上の異なる照明光の種類に段階的に切り替えたときの効果を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、実施例で用いた照明装置の各設定の照明光の発光スペクトルである。
【
図7】
図7は、実施例で用いた照明装置の各設定の照明光のCIE表色系の色度図の座標である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る照明装置の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態の照明装置は、互いに異なる分光分布の発光を示す少なくとも2種の蛍光体含有LED装置を組み合わせた光源を備える照明部を備え、CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、平均演色評価数Raが互いに3以上異なる照明光の種類に段階的な切り替えが可能である照明装置である。
【0015】
図1は本実施形態の照明装置10を用いた照明システム100の構成を示すブロック図である。照明システム100は、照明装置10と制御装置20とから構成されている。制御装置20は、照明装置10に照明光の種類の切り替えの指示を与える制御装置である。
【0016】
図1を参照すれば、照明装置10は、互いに異なる分光分布の発光を示す少なくとも2種の蛍光体含有LED装置を組み合わせてなる光源を備える発光部である照明部1を備える。また、照明光の種類の切り替えを制御するための照明制御部2と、照明光の種類を特定する指示信号を受信するための信号受信部3と、照明部1に照明制御部2を介して給電するための入力電源4とを少なくとも備える。
【0017】
入力電源4は、照明制御部2に給電するための電源である。例えば、差し込みプラグ等によって照明装置10が商用の交流電源から電力供給を受ける場合、入力電源4は交流電力を直流電力に変換するDC-ACコンバータを備える。
【0018】
制御装置20は、信号送信部22と信号生成部21とを備える。また、制御装置20は電池を電源としても、差し込みプラグにより商用の交流電力が供給されてもよい。
【0019】
信号送信部22は、後述するように信号生成部21で生成させた制御コマンド信号Sを、照明装置10の信号受信部3に送信する。信号送信部22から信号受信部3への送信は、有線通信またはBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)などの無線通信のいずれであってもよい。
【0020】
制御装置20の信号送信部22から送信された制御コマンド信号Sは、照明装置10の信号受信部3で受信される。信号受信部3で受信される制御コマンド信号Sは、後述するように照明光の種類を段階的に切り替えるように制御するためのコマンド信号である。本実施形態においては、制御コマンド信号Sは、後述するように、例えばユーザの生体情報データに基づいて制御装置20の信号生成部21で生成される。
【0021】
そして、照明制御部2は、信号受信部3で受信された制御コマンド信号Sに基づいて、照明光の種類を段階的に切り替える。
【0022】
照明部1は、CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、平均演色評価数Raが互いに3以上異なる照明光の種類に調光できるように設計されている。なお、CIE1931の色度座標、分光分布、及び、平均演色評価数は、後述するように、例えば、分光放射照度計(コニカミノルタ(株)製の分光放射照度計CL-500A)を用いて測定される。
【0023】
ここで平均演色評価数Raとは、照明光が物体色の見え方に及ぼす影響についての光源の特性である演色性を評価した数値であり、規定された8種類の試験色についての演色評価数の平均を示す。平均演色評価数Raの差は、照明光の波長の分光分布の影響を強く受ける。例えば、同じ色座標であって平均演色評価数Raが互いに異なる2つの光においては、人はそれらを同色に認知するが、光の分光分布は異なっていることを意味する。そして、近似する色において平均演色評価数Raが互いに3以上異なるように段階的に光を切り替えることによれば、人が認知できる色味を大きく変化させずに、人が認知できない照明の波長の分光分布を大きく変化させることができる。このような段階的な切り替えによれば、人が認知できない分光分布の変化によって、人の感性に影響を与えることができる。
【0024】
図2は、LEDモジュールである照明部1の平面模式図であり、照明部1は、LED実装基板39及びLED実装基板39に実装された互いに異なる分光分布を示す発光をする3種の蛍光体含有LED装置30a,30b,30cを備える。以下、蛍光体含有LED装置を単にLED装置とも称し、また、3種の蛍光体含有LED装置30a,30b,30cをまとめて、単にLED装置30とも称する。
【0025】
図2に示すように、照明部1は、LED実装基板39に実装された、3種のLED装置30a,30b,30cを備え、各LED装置30a,30b,30cをそれぞれ複数個備える。
図2に示す照明部1においては、LED装置30a、LED装置30b、及びLED装置30cがそれぞれ30個ずつ実装されている。なお、照明部において実装されるLED装置は、互いに異なる分光分布の発光を示すLED装置を少なくとも2種以上備えていればよく、また、各種類のLED装置の配置や数は、適宜、配光や光量に応じて調整される。また、照明部にはレンズや光拡散層が備えらえて配光角や光拡散性を調整されていてもよい。
【0026】
本実施形態の、LED装置30a,30b,30cは、互いに異なる分光分布を示す発光をさせるために、互いに異なる組成の蛍光体を含有する。具体的には、例えば、LED装置30a,30b,30cは、それぞれ、例えば、420~480nmの範囲に発光ピーク波長を有する青色LED素子31を備え、さらに、500~590nmの範囲に蛍光ピーク波長を有するYAG蛍光体及び430~530nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する緑色蛍光体から選ばれる少なくとも一種の蛍光体と、を含み、それぞれ互いに異なる分光分布を示す発光をするように蛍光体組成が調整されている。ここで蛍光ピーク波長とは、蛍光体の蛍光スペクトルの強度が最も高い蛍光ピークの強度に対応する波長と定義される。
【0027】
図3は、LED装置30の平面模式図であり、
図4は、
図3に示したLED装置30のB-B’断面における断面模式図である。
図4に示すように、LED装置30は、LED装置本体35と、蛍光体を含有する層である蛍光体層38と、を備える。
【0028】
LED装置本体35は、青色LED素子31と、青色LED素子31を収容する収容凹部32aを備えるパッケージ部材32と、収容凹部32aに収容された青色LED素子31を封止する透明樹脂封止材34とを備えるLED発光装置である。収容凹部32aの内壁面には、銀メッキ等による反射膜37が形成されている。青色LED素子31の一方の電極はリード32bに接続され、青色LED素子31の他方の電極は金線36によりワイヤーボンディングされてリード32cに接続されて、各リード32b,32cが外部へ延出されている。リード32bはアノードであり、リード32cはカソードである。LED装置本体35のリード32bに電源の正極側、リード32cに電源の負極側を接続して、電力を付与することにより、青色LED素子31が発光する。このようなLED装置本体35においては、透明樹脂封止材34の上面が発光面になる。
【0029】
青色LED素子31は、420~480nmの青色領域に発光ピーク波長を有する、青色LEDチップである。青色LED素子の具体例としては、例えば、GaN系等の素子が挙げられる。また、透明樹脂封止材34は、収容凹部32aに収容された青色LED素子31を封止して密封する。
【0030】
透明樹脂封止材を形成する透明樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。本実施形態のLED装置本体は表面実装型装置(SMD)と称されるタイプであるが、SMDの代わりに、いわゆる砲弾型、パッケージ型、チップオンボード型(COBタイプ)などの他のタイプのLED装置を用いてもよい。
【0031】
蛍光体層38は、LED装置本体35の発光面を覆うように配された蛍光体33を含有する層である。蛍光体層38に含まれる蛍光体33は青色LED素子31の発光により励起されて蛍光を発する。そのために、LED装置30から発せられる光の分光分布は、青色LED素子31の発光と蛍光体33の蛍光とを混合した分光分布を示す。
【0032】
本実施形態では、蛍光体層38として、蛍光体含有キャップが用いられている。蛍光体含有キャップは、蛍光体を光透過性樹脂に均一に分散させたシートをキャップ状に成形して製造される。光透過性樹脂の具体例としては、例えば、シリコーンゴムやエポキシ樹脂等が例示される。蛍光体層としては、蛍光体含有キャップの代わりに、透明樹脂封止材中に埋設させた蛍光体含有シートであっても、透明樹脂封止材の発光面に蛍光体を含有する光透過性樹脂の組成物を塗布して形成された樹脂層であってもよい。また、LED装置は、LED素子を封止する透明樹脂封止材に蛍光体を分散させたものであってもよい。
【0033】
蛍光体層は、500~590nmの範囲に蛍光ピーク波長を有するYAG蛍光体や430~530nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する緑色蛍光体を含有することが、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、平均演色評価数Raが互いに3以上異なる照明光に調光できるように調整しやすい点から好ましい。
【0034】
500~590nmの範囲に蛍光ピーク波長を有するYAG蛍光体は、青色LED素子の発光により励起されて、500~590nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する黄系の光を発する。このような蛍光体の具体例としては、例えば、セリウム付活YAG系蛍光体等が挙げられる。
【0035】
また、430~530nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する緑色蛍光体は、青色LED素子の発光により励起されて、430~530nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する青~緑系の光、緑~黄系の光を発する。このような蛍光体の具体例としては、例えば、シリケート系蛍光体、LuAG系蛍光体(LAG蛍光体)、アルミネート系蛍光体、ユーロピウム賦活ストロンチウム・アルミネート系蛍光体(SAE蛍光体)、β-SiAlON:Eu等のサイアロン系の蛍光体、等が挙げられる。
【0036】
蛍光体層は、上記YAG蛍光体や上記緑色蛍光体以外のその他の蛍光体や着色剤や光拡散材を含有してもよい。その他の蛍光体の具体例としては、580~680nmの範囲にピーク波長を有する赤系の光を発する赤色蛍光体が挙げられる。このような赤色蛍光体の具体例としては、例えば、窒化物系蛍光体、シリケート系蛍光体、(Sr,Ca)CaAlSiN3:Eu、CaAlSiN3:Eu等のカズン系蛍光体、サイアロン系蛍光体、等が挙げられる。また、着色剤の具体例としては、例えば、緑色顔料として、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG、フタロシアニングリーン等の有機または無機顔料、酸化チタン,タルク,硫酸バリウムの白色顔料、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。また、光拡散材としては、シリカ,炭酸カルシウムが挙げられる。
【0037】
蛍光体層の厚さは特に限定されないが、例えば20~3000μm、さらには50~1000μm、とくには100~500μmであることが好ましい。また、蛍光体層に分散される蛍光体の割合は、蛍光体の種類や蛍光体層の厚さ等によって適宜調整されるが、一例としては、蛍光体層の厚さが100μmのとき、光透過性樹脂100質量部に対して、10~300質量部、さらには、50~200質量部配合することが好ましい。
【0038】
照明部1は、上述のようなLED装置30a,30b,30cをLED実装基板39に実装することによって構成されたLEDモジュールを用いて、照明光としてCIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内の光であり、互いに平均演色評価数(Ra)が3以上、好ましくはRaが5以上異なる照明光の種類に段階的な切り替えができるように設計されている。
【0039】
このような照明部1を構成するために、例えば、
図2に示すように、500~590nmの範囲に蛍光ピーク波長を有するYAG蛍光体を主として含むLED装置30aと、430~530nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する緑色蛍光体及び500~590nmの範囲に蛍光ピーク波長を有するYAG蛍光体を含むLED装置30bと、580~680nmの範囲にピーク波長を有する赤色蛍光体及び430~530nmの範囲に蛍光ピーク波長を有する緑色蛍光体を含むLED装置30cとをそれぞれ複数個ずつ組み合わせたLEDモジュールを用いる。
【0040】
そして、
図1を参照すれば、LEDモジュールである照明部1には、照明制御部2を介して入力電源4が接続されている。照明部1の各LED装置30a,30b,30cは、それぞれ、照明制御部2から供給される直流電力によって発光する。照明部1のLED装置30a,30b,30cにそれぞれ供給される直流電力の電流量は照明制御部2によって次のように制御される。
【0041】
照明制御部2は、後述する信号受信部3に受信された制御コマンド信号Sの種類に応じて、発光させるLED装置30a,30b,30cの種類、数、電流量を制御する。さらに、照明制御部2は、照明部1の照明光について、設定により点灯または消灯させるタイミングを変える制御をしてもよい。
【0042】
具体的には、照明制御部2は、例えば、信号受信部3に受信された制御コマンド信号Sの種類に応じて、照明光の種類を、所定の第1設定から所定の第2設定に切り替えたり、所定の第1設定から所定の第3設定に切り替えたり、所定の第3設定から所定の第2設定に切り替えたり、するように給電を制御する。具体的には、照明制御部2は、制御コマンド信号Sにより第1設定の指示を受けた場合には、第1設定の分光分布の光を、制御コマンド信号Sにより第2設定の指示を受けた場合には、第2設定の分光分布の光を、制御コマンド信号Sにより第3設定の指示を受けた場合には、第3設定の分光分布の光を、発光させるLED装置30a,30b,30cの種類、数、電流量を制御することにより照明させる。
【0043】
本実施形態の照明装置においては、CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、第1設定となる分光分布の照明光はRaが70以上75未満になり、第2設定となる分光分布の照明光はRaが75以上80未満になり、第3設定となる分光分布の照明光はRaが80以上95未満になるように設定されている。
【0044】
例えば、LED装置30aを主に点灯させた場合には、Raが70以上75未満である第1設定の照明光を発するように設計する。また、LED装置30bを主に点灯させた場合には、Raが75以上80未満である第2設定の照明光を発するように設計する。さらに、LED装置30cを主に点灯させた場合には、Raが75以上80未満である第3設定の照明光を発するように設計する。
【0045】
このような場合において、照明制御部2が制御コマンド信号Sにより第1設定の指示を受けた場合には、LED装置30aを主に点灯させることにより、第1設定となるRaが70以上75未満になる分光分布の種類の光で照明させる。また、照明制御部2が制御コマンド信号Sにより第2設定の指示を受けた場合には、LED装置30bを主に点灯させることにより、第2設定となるRaが75以上80未満になる分光分布の種類の光で照明させる。さらに、照明制御部2が制御コマンド信号Sにより第3設定の指示を受けた場合には、LED装置30cを主に点灯させることにより、第3設定となるRaが80以上95未満になる分光分布の種類の光で照明させる。また、LED装置30aとLED装置30bとを組み合わせて点灯させる、LED装置30aとLED装置30cとを組み合わせて点灯させる、LED装置30bとLED装置30cとを組み合わせて点灯させる、等のように組み合わせることにより、さらに、4段階以上の段階的に切り替えて照明させることも可能になる。
【0046】
後述するように、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、Raが70以上75未満である第1設定の照明を、Raが75以上80未満である第2設定の照明に切り替えた場合、被験者を覚醒化させやすかった。また、Raが70以上75未満である第1設定の照明を、Raが80以上95未満である第3設定の照明に切り替えた場合、被験者に眠気を感じさせて鎮静化させやすかった。
【0047】
従って、
図5に示すように、第1設定から第3設定に切り替えたり、第1設定から第2設定に切り替えたり、第3設定から第2設定に切り替えたり等することにより、人の覚醒感や鎮静感に変化を与えることができる。そして、CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、Raが互いに3以上の異なる照明光の種類に段階的な切り替えることによれば、視覚による色の違いを感知しにくいために、作業している人に光の種類の変化による違和感を与えにくい。
【0048】
このような第2設定の照明光は、第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積が1.3未満であることが、第1設定の照明光よりもユーザを覚醒化させやすい分光分布になる点から好ましい。また、第3設定の照明光は、第1設定の照明光に対して、460nm~500nmの範囲の分光分布の面積比が1.2以上であり、580nm~780nmの範囲の分光分布の面積が1.3以上であることが、第1設定の照明光よりもユーザを鎮静化させやすい分光分布になる点から好ましい。
【0049】
制御装置20は、照明装置10の信号受信部3に制御コマンド信号Sを送信することにより、照明装置10の照明部1が、照明制御部2に制御コマンド信号Sの指示に応じた照明光に段階的に切り替えた光を発するように制御する装置である。
図1を参照すれば、制御装置20は、制御コマンド信号Sを生成する信号生成部21と、制御コマンド信号Sを送信する信号送信部22とを備える。
【0050】
信号生成部21は、照明部1が照射する照明光を制御するための制御コマンド信号Sを生成する。例えば、信号生成部21は、ユーザが疲労感を感じて覚醒化を求めている場合には、ユーザ自らが標準的な光の第1設定の照明を覚醒化の効果がある第2設定の照明に調光スイッチで切り替え、ユーザが疲労感を感じて鎮静化を求めている場合には、鎮静化のために、ユーザ自らが標準的な光の第1設定の照明を鎮静化の効果がある第3設定の照明に調光スイッチで切り替えることにより、その指示を与える制御コマンド信号Sを生成させてもよい。
【0051】
また、信号生成部21は、入力された生体情報データに基づいて、生体情報のパラメータに予め関連付けられた設定による指示を与える制御コマンド信号Sを生成させてもよい。
【0052】
ここで、ユーザの生体情報データとは、例えば、心拍情報(心拍波形、心拍間隔、心拍数、LF/HF等)、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、体表温度、血圧、脳波、近赤外線分光法(NIRS)を用いたoxyHb濃度等のバイタルサインの各種データである。
【0053】
生体情報データを採取する手段は特に限定されないが、ユーザが装着してリアルタイムに生体情報を採取できるセンサを備えたウェアラブル心拍センサ等のウェアラブルセンサや、ウェアラブルセンサの機能を備えたスマートウォッチやスマートフォン等のウェアラブルコンピュータを用いる手段が挙げられる。生体情報データの取得は、ユーザが選定することなく自動的に取得されてもよい。また、制御装置20自身が生体情報データを採取するセンサを備えていてもよい。また、制御装置20は、生体情報データを採取するセンサから生体情報データを取得するのではなく、ウェアラブルコンピュータからクラウドサーバに蓄積された生体情報データを取得してもよい。
【0054】
信号生成部21は、例えば、生体情報データに基づくパラメータを照明光の種類に関連付けたテーブルを準備しておき、リアルタイムで計測された生体情報データに基づくパラメータの入力を受けたとき、そのパラメータに関連付けられた照明光の種類に切り替える指示を与える制御コマンド信号Sを生成してもよい。
【0055】
また、ユーザがどのような種類の照明光の場合にユーザが覚醒化または鎮静化しやすいかを人工知能(AI)に予め機械学習させておき、入力された生体情報データに基づいて人工知能(AI)に適した照明の種類を選択させるようにして、照明光の種類に切り替える指示を与える制御コマンド信号Sを生成させてもよい。なお、機械学習等のAIは、ユーザの個人毎でのモデルを構成しており、生体情報データを用いて個人毎のモデルから、ユーザの現状を把握して設定に反映するように制御コマンド信号Sを生成する方法であってもよい。
【0056】
このような照明システムは、例えば、住宅やオフィス、店舗や車内等で使用され、照明装置は室内灯やデスクライトや作業灯、オフィス照明、間接照明等でありユーザや作業環境へ照明するために用いられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明の範囲は、実施例に何ら限定されるものではない。
[蛍光体含有LED装置の製造]
本実施例で用いた蛍光体含有LED装置について説明する。
【0058】
下記表1に示した配合組成で、シリコーンゴムに蛍光体F1~F6(いずれも日亜化学工業(株)製)及び光拡散材D(炭酸カルシウム)を均一に分散させた蛍光体を含有するシリコーンゴム組成物を調製し、各組成物を熱プレス成形することにより、厚さ0.3mmの蛍光体含有キャップCAP1~CAP3を製造した。
【0059】
【0060】
そして、青色LED装置の発光面に、蛍光体含有キャップ(CAP1~CAP3)の何れかをそれぞれシリコーン系接着剤で接着して蛍光体含有LED装置A~Cを製造した。なお、青色LED装置としては、「NFSC172C(発光ピーク波長:445nm)」(日亜化学工業(株)製)を用いた。
[色度座標、分光分布、平均演色評価数、照度の評価]
分光放射照度計(コニカミノルタ(株)製の分光放射照度計CL-500A)を用いてCIE1931の色度座標、分光分布、平均演色評価数、照度、相関色温度、色温度偏差dvを測定した。
[照明装置の作製]
それぞれ異なる分光分布となる蛍光体含有LED装置A~Cを、
図2に示すように、直径20cmである円形のLED実装基板に各々30個実装した。なお、LED実装基板には、蛍光体含有LED装置A~Cのそれぞれを別の群として、点灯、消灯、電流量を調整可能なような調光制御部が実装されている。このようにして照明部と調光制御部とを備えた照明装置を構成した。この照明装置は、照度500~1200lx(ルクス)の範囲において、蛍光体含有LED装置Aの群のみが点灯することによりRaが70以上75未満である照明光を呈する第1設定と、蛍光体含有LED装置Bの群のみが点灯することによりRaが75以上80未満である照明光を呈する第2設定と、蛍光体含有LED装置Cの群のみが点灯することによりRaが80以上95未満である照明光を呈する第3設定と、の3段階の切り替えが可能である。また、照明装置は信号受信部をさらに備える。このようにして、
図2に示すような照明部を備えた、卓上スタンド型の照明装置を作製した。
【0061】
作製された照明装置を第1設定、第2設定、または第3設定に切り替えたときの、照明光の照度500lx及び1000lxにおける光学特性を表2に示す。
【0062】
【0063】
また、第1設定、第2設定。または第3設定に切り替えたときの発光スペクトルを
図6に、CIE表色系の色度図の座標を
図7に示す。また、第1設定の照明の各波長領域の分光分布の面積に対する、第2設定または第3設定の照明の各波長領域の分光分布の面積比を表3に示す。
【0064】
【0065】
[生体情報の取得及び照明光の切り替え]
生体情報として、ユーザの体表温度の変化及び心拍の変化をウェアラブル心拍センサ(myBeat(ユニオンツール(株)製))を用いて取得した。そして、体表温度の変化及び心拍の変化から、覚醒状態及び鎮静状態を判断した。覚醒状態から鎮静状態に移行するときには、心拍数が減少して心拍間隔(RRI)が増加し、ユーザの体表温度は上昇する。
【0066】
ウェアラブル心拍センサにより計測されたユーザの体表温度の変化及び心拍数の変化を、専用アプリケーションを用いてパーソナルコンピュータで受信しながらモニターした。そして、心拍間隔(RRI)の増加及び体表温度の上昇により、ユーザが覚醒状態から鎮静状態に移行したときに、第1設定の色度(0.333,0.335)、照度513.8lxの照明光から第2設定の色度(0.334,0.332)、照度511.4lxに切り替えるように、無線通信により照明装置の信号受信部にコマンド信号をパーソナルコンピュータから送信した。また、心拍間隔の減少及び体表温度の下降により、ユーザが鎮静状態から覚醒状態に移行したときに、照明光を第1設定から第3設定の色度(0.331,0.333)、照度507.1lxに切り替えるように、無線通信により照明装置の信号受信部にコマンド信号をパーソナルコンピュータから送信した。
[照明システムの評価]
上述の照明装置及び制御装置からなる照明システムを用いて、照明光の変更について評価した。1グループとして、20代の被験者5名を採用した。暗室内に、400×400mmの正方形の面を有するテーブル及び椅子を配置し、テーブル上に上述した照明装置を配置した。ウェアラブル心拍センサを被験者に取り付け、椅子に被験者が座ったときにテーブル上に配置する印刷物と被験者との視距離が450mmになるようにテーブル及び椅子の高さを調節し、目の位置を調整させた。なお、被験者には、実験の目的を伝えていない。
【0067】
暗室で被験者グループを1名ずつ椅子に座らせて1分間の安静時間を保持させた。そして、照明装置が第1設定である、照明光で照明し、30分間印刷物を黙読させた。黙読させながら、ウェアラブル心拍センサから心拍間隔及び体表温度の変化を受信した。そして、照明装置の照明光を第1設定から、第2設定の照明光に切り替えた。そして、切り替えによって4名以上の被験者の心拍間隔が5%以上減少することを検知し、被験者が覚醒化したことを確認した。
【0068】
また、同様に、別の被験者グループを1名ずつ椅子に座らせて1分間の安静時間を保持させた。そして、照明装置が第1設定である、照明光で照明し、30分間印刷物を黙読させた。黙読させながら、ウェアラブル心拍センサから心拍間隔及び体表温度の変化を受信した。そして、照明装置の照明光を第1設定から、第3設定の照明光に切り替えた。そして、切り替えによって4名以上の被験者の心拍間隔が5%以上増加したことにより、被験者が鎮静化したことを確認した。
【0069】
そして、各グループの被験者の各人に、覚醒感(文字を読む意欲や集中力の向上)及び鎮静感(眠気)に基づいて、以下の主観的な判定を求めた。
(第1のグループ)
A:第1設定から第2設定への切り替えによって、覚醒感が増した。
B:第1設定から第2設定への切り替えによって、覚醒感及び鎮静感(眠気)の変化を感じなかった。
C:第1設定から第2設定への切り替えによって、鎮静感が増した。
(第2のグループ)
D:第1設定から第3設定への切り替えによって、覚醒感が増した。
E:第1設定から第3設定への切り替えによって、覚醒感及び鎮静感(眠気)の変化を感じなかった。
F:第1設定から第3設定への切り替えによって、鎮静感が増した。
【0070】
上記第1のグループの判定によれば、5人中4人がAと判定し、第1設定から第2設定への切り替えによって覚醒感が増す傾向が確認された。また、上記第2のグループの判定によれば、5人中4人がFと判定し、第1設定から第3設定への切り替えによって鎮静感が増す傾向が確認された。
【0071】
また、各グループの被験者の計10人に、照明光の変化による違和感(印刷物の色味の変化)について、以下の主観的な判定を求めた。
A:第1設定から第2設定または第3設定への切り替えによって、違和感がなかった。
B:第1設定から第2設定または第3設定への切り替えによって、違和感を持った。
【0072】
上記判定によれば、10人中9人がAと判定し、第1設定から第2設定または第3設定への切り替えによって違和感を与えない傾向が確認された。
【0073】
上記実施例の結果により、CIE1931の色度座標において、座標A(0.32,0.32)と、座標B(0.32,0.34)と、座標C(0.34,0.34)と、座標D(0.34,0.32)とを結ぶ白色光の色度領域内において、Raが互いに3以上の異なる照明光の種類に段階的な切り替えることにより、被験者に違和感を与えなかった。そして、Raが70以上75未満である照明光を呈する第1設定からRaが75以上80未満である照明光を呈する第2設定に切り替えることにより、被験者の覚醒感が増した。一方、第1設定からRaが80以上95未満である照明光を呈する第3設定に切り替えることにより、被験者の鎮静感が増した。
【符号の説明】
【0074】
1 照明部
2 照明制御部
3 信号受信部
4 入力電源
10 照明装置
20 制御装置
21 信号生成部
22 信号送信部
30 蛍光体含有LED装置
30a 蛍光体含有LED装置A
30b 蛍光体含有LED装置B
30c 蛍光体含有LED装置C
31 青色LED素子
32 パッケージ部材
32a 収容凹部
32b リード
32c リード
33 蛍光体
34 透明樹脂封止材
35 装置本体
36 金線
37 反射膜
38 蛍光体層
39 LED実装基板
100 照明システム