(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】光照射デバイス、及び、光照射システム
(51)【国際特許分類】
A61M 36/02 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
A61M36/02
(21)【出願番号】P 2020185722
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和秀
(72)【発明者】
【氏名】塚本 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】桂田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】水上 光太郎
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-528789(JP,A)
【文献】特表2017-512569(JP,A)
【文献】特表2008-538190(JP,A)
【文献】特開2008-148951(JP,A)
【文献】特開2020-138940(JP,A)
【文献】特開2015-89489(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0238137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDT、NIR-PIT、がん、脳動脈瘤、不整脈、またはアルツハイマー病に対する検査または治療のための光照射デバイスであって、
長尺状の本体部と、
前記本体部の先端側の側面の一部分に設けられ、生体内の対象物質に光を照射する光照射部と、
前記本体部において前記光照射部に近接して設けられた検出部であって、前記対象物質が光を照射されたことに起因して発生する物理化学現象を検出する検出部と、
を備え、
前記検出部は、
光ファイバーを巻回して形成されたコイル状の検出素子であって、前記物理化学現象としての超音波を検出する検出素子を有し、
前記本体部の先端側の側面において、前記光照射部を前記検出素子の内側に挿通することによって、前記検出素子の向きと、前記光照射部における光の照射方向とが同じになるように配置されている、光照射デバイス。
【請求項2】
請求項
1に記載の光照射デバイスであって、さらに、
前記本体部の側面に設けられた放射線不透過性を有する方向性マーカー部であって、任意の方向から見た際の当該方向性マーカー部の形状または位置によって、前記光照射部の周方向における位置を認識可能な方向性マーカー部を備える、光照射デバイス。
【請求項3】
PDT、NIR-PIT、がん、脳動脈瘤、不整脈、またはアルツハイマー病に対する検査または治療のための光照射システムであって、
長尺管形状のカテーテルと、
請求項1
または請求項2に記載の光照射デバイスであって、前記カテーテルに挿入して使用される長尺状の光照射デバイスと、
を備え、
前記カテーテルは、
先端側の側面の少なくとも一部分に設けられ、管の内部の光を外部に透過させる光透過部と、
前記光透過部に近接して設けられた放射線不透過性を有する第1マーカー部と、を有し、
前記光照射デバイスは、さらに、前記光照射部に近接して設けられた放射線不透過性を有する第2マーカー部を有する、光照射システム。
【請求項4】
請求項
3に記載の光照射システムであって、
前記第1マーカー部は、前記カテーテルの軸線方向において、前記光透過部の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられている、光照射システム。
【請求項5】
請求項
3または請求項
4に記載の光照射システムであって、
前記第2マーカー部は、前記光照射デバイスの軸線方向において、前記光照射部の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられている、光照射システム。
【請求項6】
請求項
4に従属する請求項
5に記載の光照射システムであって、
前記光照射デバイスを前記カテーテルに挿入し、前記光照射システムの軸線方向における前記光透過部と前記光照射部との位置を合わせた状態において、
先端側の前記第1マーカー部は、先端側の前記第2マーカー部よりも前記軸線方向の先端側に配置され、
基端側の前記第1マーカー部は、基端側の前記第2マーカー部よりも前記軸線方向の基端側に配置されている、光照射システム。
【請求項7】
請求項
3から請求項
6のいずれか一項に記載の光照射システムであって、
前記第1マーカー部は、前記カテーテルの周方向を取り囲む形状であり、
前記第2マーカー部は、前記光照射デバイスの周方向を取り囲む形状である、光照射システム。
【請求項8】
請求項
3から請求項
7のいずれか一項に記載の光照射システムであって、
前記カテーテルには、前記カテーテルの軸線方向において、前記光透過部と前記第1マーカー部とが複数組設けられている、光照射システム。
【請求項9】
請求項
3から請求項
8のいずれか一項に記載の光照射システムであって、
前記カテーテルは、さらに、先端側に接合された先端チップを備え、
前記先端チップには、前記カテーテルの軸線方向に前記先端チップを貫通する貫通孔であって、径が前記光照射デバイスの外径よりも小さい貫通孔が形成されている、光照射システム。
【請求項10】
請求項
3から請求項
9のいずれか一項に記載の光照射システムであって、
前記カテーテルは、さらに、少なくとも前記光透過部の近傍における温度を測定する温度センサを備える、光照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射デバイス、及び、光照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
がん治療においては、外科的、放射線的、薬物的(化学的)手法が単独で、あるいは併用されて用いられ、それぞれの技術が近年発展を遂げている。しかしながら、未だ満足のいく治療技術が見出されていないがんも多く存在し、さらなる治療技術の発展が期待されている。がん治療技術の1つとして、PDT(Photodynamic Therapy:光線力学的療法)と呼ばれる手法が知られている。PDTでは、光感受性物質を静脈投与後、光照射をすることで、がん細胞で活性酸素を発生させ、がん細胞を死滅させる(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、PDTは、光感受性物質のがん細胞への集積選択性が低く、正常細胞に取り込まれることによる副作用の大きさが課題となり、治療技術として広く普及していない。
【0003】
そこで近年注目されている治療技術として、NIR-PIT(Near-infrared photoimmunotherapy:近赤外光線免疫療法)がある。NIR-PITでは、がん細胞の特異的な抗原に対する抗体と、光感受性物質(例えば、IRDye700DX)との2化合物を結合させた複合体を用いる。この複合体は、静脈投与されると、生体内のがん細胞に選択的に集積する。その後、複合体中の光感受性物質の励起波長(例えば、690nm)の光を照射することで、複合体が活性化し、抗がん作用を示す(例えば、特許文献1参照)。NIR-PITでは、抗体によるがんへの集積選択性と、局部光照射による2重選択性により、PDTと比較して副作用を減らすことができる。また、NIR-PITでは、細胞死が短期間でおこり細胞がネクローシスを起こすため、NIR照射による免疫系への作用も期待できる(例えば、非特許文献2参照)。
【0004】
上記において例示した690nmを含む所定の波長領域は、生体の分光学的窓とも呼ばれ、他の波長領域と比べて生体成分による光の吸収が少ない波長領域であるものの、体表からの光照射では光の浸透性が不足するため、体内深部のがんに適用できないという課題があった。そこで近年、体表からの光照射ではなく、よりがん細胞に近い位置で光照射を行うNIR-PITの研究がされている(例えば、非特許文献3参照)。例えば、特許文献2~特許文献4には、このようなPDTやNIR-PITにおいて使用可能なデバイスが開示されている。特許文献2~特許文献4に記載のデバイスは、いずれも、血管内に挿入して使用され、体内深部において光を照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-523907号公報
【文献】特開2018-867号公報
【文献】特表2007-528752号公報
【文献】特許第4966640号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Makoto Mitsunaga, Mikako Ogawa, Nobuyuki Kosaka Lauren T. Rosenblum, Peter L. Choyke, and Hisataka Kobayashi、Cancer Cell-Selective In Vivo Near Infrared Photoimmunotherapy Targeting Specific Membrane Molecules、Nature Medicine 2012 17(12): 、p.1685-1691
【文献】Kazuhide Sato, Noriko Sato, Biying Xu, Yuko Nakamura, Tadanobu Nagaya, Peter L. Choyke, Yoshinori Hasegawa, and Hisataka Kobayashi、Spatially selective depletion of tumor-associated regulatory T cells with near-infrared photoimmunotherapy、Science Translational Medicine 2016 Vol.8 Issue352、ra110
【文献】Shuhei Okuyama, Tadanobu Nagaya, Kazuhide Sato, Fusa Ogata, Yasuhiro Maruoka, Peter L. Choyke, and Hisataka Kobayashi、Interstitial near-infrared photoimmunotherapy: effective treatment areas and light doses needed for use with fiber optic diffusers、Oncotarget 2018 Feb 16; 9(13): 、p.11159-11169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、PDTやNIR-PITにおいては、上述の通り、複合体を集積させたがん細胞に対して、複合体中の光感受性物質の励起波長の光を照射させることで、がん細胞を死滅させる。このため、PDTやNIR-PITでは、生体内の対象組織(具体的には、複合体を集積させたがん細胞)に向かって、正しく光が照射されているか否かを確認したいという要望があった。この点、特許文献2及び特許文献3に記載のデバイスでは、生体内の対象組織に光が照射されているか否かを確認することについては、何ら考慮されていない。また、特許文献4に記載のデバイスでは、パルスレーザ光を生体組織に照射した際、攣縮によって血流量が一時的に低下する性質を利用して、光の強度や波長を制御している。具体的には、特許文献4に記載のデバイスは、体内浅部の血流を検出する検出手段を有し、体内浅部に血流が確認された場合は光の強度を強くし、体内浅部に血流が確認されない場合は光の強度を維持する。しかし、このような特許文献4によっても、生体内の対象組織に光が照射されているか否かを確認することはできないという課題があった。
【0008】
また、PDTやNIR-PITでは、がん細胞以外の正常な細胞に対しては、細胞損傷の虞を低減するために、光照射は避けることが好ましい。この点、特許文献2及び特許文献3に記載の技術では、血管内における光照射部位の位置決めが困難なため、がん細胞が存在する箇所に対して選択的に光を照射することができないという課題があった。
【0009】
なお、このような課題は、PDTやNIR-PITに限らず、がん、脳動脈瘤、不整脈、アルツハイマー病等に対する検査または治療のために、生体内において光を照射するプロセスを含む検査または治療において使用されるデバイス全般に共通する。また、このような課題は、血管に挿入されるデバイスに限らず、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入されるデバイス全般に共通する。
【0010】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、生体内において光を照射する光照射デバイスにおいて、生体内の対象組織に向かって、正しく光が照射されているか否かを確認可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0012】
(1)本発明の一形態によれば、医療用の光照射デバイスが提供される。この光照射デバイスは、長尺状の本体部と、前記本体部の先端側の側面の一部分に設けられ、生体内の対象物質に光を照射する光照射部と、前記本体部において前記光照射部に近接して設けられた検出部であって、前記対象物質が光を照射されたことに起因して発生する物理化学現象を検出する検出部と、を備える。
【0013】
この構成によれば、光照射デバイスは、光照射部から光を照射された対象物質が、光を照射されたことに起因して発生する物理化学現象(例えば、光や超音波、体液のph変化、温度変化、圧力変化等)を検出する検出部を備える。ここで、例えばNIR-PITでは、生体内の対象組織(がん細胞)に集積された複合体中の対象物質(例えば、IRDye700DXのような光感受性物質)が、対象物質の励起波長の光の照射を受けた際、光を放出すると共に、光音響効果によって超音波を放出する。このため、術者は、検出部による物理化学現象の検出有無によって、生体内の対象組織(対象物質を含む複合体が集積されたがん細胞)に向かって、正しく光照射部からの光が照射されているか否かを確認できる。この結果、確実に対象組織に光を照射することが可能となり、手技の効率を向上できる。このような光照射デバイスの効果は、IRDye700DXを用いるNIR-PITに限らず、光の照射を受けた際に光または超音波を放出する性質を有する、任意の対象物質を用いた検査または治療においても、同様に得られる。
また、対象物質としてのIRDye700DXでは、対象物質への光の積算照射量が増加するにつれて、対象物質が不可逆的な構造変化をして対象組織(がん細胞)の死滅を誘発すると共に、対象物質から放出される光の量と、対象物質から放出される超音波の量とが減少する。このため、術者は、検出部による物理化学現象に関する検出値によって、対象組織の死滅の程度(換言すれば、治療の進捗度合い)を把握することができる。この結果、対象組織への過度な光の照射を抑制することが可能となり、手技の安全性と効率とを向上できる。このような光照射デバイスの効果は、IRDye700DXを用いるNIR-PITに限らず、光の照射を受けた際に放出される光または超音波の量が減少する性質を有する、任意の対象物質を用いた検査または治療においても、同様に得られる。
さらに、光照射部は、本体部の先端側の側面の一部分に設けられているため、本体部の周方向の全体に光照射部が設けられている構成と比較して、光照射がなされる生体組織の範囲を限定することができ、不要な生体組織に対して光照射がされることによる生体組織損傷の抑制に寄与できる。
【0014】
(2)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記検出部は、前記物理化学現象を検出する検出素子を有し、前記本体部の先端側の側面のうち、前記光照射部が設けられている側において、前記検出素子の向きと、前記光照射部における光の照射方向とが平行となるように配置されていてもよい。
この構成によれば、検出部は、本体部の先端側の側面のうち、光照射部が設けられている側において、検出素子の向きと、光照射部における光の照射方向とが平行となるように配置されている。このため、平行でない配置の場合と比較して、検出部による検出精度を向上することができる。
【0015】
(3)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記検出部の前記検出素子は、前記物理化学現象としての光、または、前記物理化学現象としての超音波を検出してもよい。
この構成によれば、検出部は、複合体中の対象物質が励起波長の光の照射を受けた際に放出する光または超音波を検出することで、正しく光照射部からの光が照射されているか否かを確認できる。
【0016】
(4)上記形態の光照射デバイスにおいて、前記検出部は、光ファイバーを巻回して形成されたコイル状の検出素子であって、前記物理化学現象としての超音波を検出する検出素子を有し、前記本体部の先端側の側面において、前記光照射部を前記検出素子の内側に挿通することによって、前記検出素子の向きと、前記光照射部における光の照射方向とが同じになるように配置されていてもよい。
この構成によれば、検出部は、本体部の先端側の側面において、光照射部を検出素子の内側に挿通することによって、検出素子の向きと、光照射部における光の照射方向とが同じになるように配置されている。このため、同軸でない配置の場合と比較して、検出部による超音波の検出精度をより一層向上することができる。
【0017】
(5)上記形態の光照射デバイスでは、さらに、前記本体部の側面に設けられた放射線不透過性を有する方向性マーカー部であって、任意の方向から見た際の当該方向性マーカー部の形状または位置によって、前記光照射部の周方向における位置を認識可能な方向性マーカー部を備えていてもよい。
この構成によれば、光照射デバイスは、放射線不透過性を有し、任意の方向から見た際の形状または位置によって、光照射部の周方向における位置を認識可能な方向性マーカー部を備える。このため、術者は、X線撮影画像に映る方向性マーカー部の形状または位置を確認することで、光照射部の周方向における位置(向き)を容易に把握できる。この結果、本構成の光照射デバイスによれば、例えばNIR-PITにおいて、対象組織(がん細胞)に対して選択的に光を照射できる。
【0018】
(6)本発明の一形態によれば、医療用の光照射システムが提供される。この光照射システムは、長尺管形状のカテーテルと、上記形態の光照射デバイスであって、前記カテーテルに挿入して使用される長尺状の光照射デバイスと、を備え、前記カテーテルは、先端側の側面の少なくとも一部分に設けられ、管の内部の光を外部に透過させる光透過部と、前記光透過部に近接して設けられた放射線不透過性を有する第1マーカー部と、を有し、前記光照射デバイスは、さらに、前記光照射部に近接して設けられた放射線不透過性を有する第2マーカー部を有する。
この構成によれば、カテーテルと光照射デバイスとは、光透過部及び光照射部に近接して設けられた放射線不透過性の第1及び第2マーカー部を有するため、術者は、X線撮影によって生体内の第1及び第2マーカー部の位置を確認することで、生体管腔内における光照射部位(光透過部及び光照射部)の位置決めを容易にできる。このため、本光照射システムによれば、例えば、NIR-PITにおいて対象組織(がん細胞)に選択的に光を照射する等、生体管腔内の特定の位置に対して、選択的に光を照射することができる。また、光透過部には近接して第1マーカー部が、光照射部には近接して第2マーカー部がそれぞれ設けられている。このため、光照射システムの使用時において、カテーテルに対して光照射デバイスを挿入した後、術者は、X線撮影によって第1マーカー部と第2マーカー部との位置関係を確認することで、光透過部と光照射部との位置合わせを容易にできる。さらに、カテーテルと光照射デバイスとを個別に備えることで、デバイス設計の自由度を向上させることができると共に、手技の幅を拡げることができる。
【0019】
(7)上記形態の光照射システムにおいて、前記第1マーカー部は、前記カテーテルの軸線方向において、前記光透過部の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられていてもよい。
この構成によれば、第1マーカー部は、光透過部の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられているため、光透過部と光照射部との位置合わせをより一層容易にできる。
【0020】
(8)上記形態の光照射システムにおいて、前記第2マーカー部は、前記光照射デバイスの軸線方向において、前記光照射部の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられていてもよい。
この構成によれば、第2マーカー部は、光照射部の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられているため、光透過部と光照射部との位置合わせをより一層容易にできる。
【0021】
(9)上記形態の光照射システムにおいて、前記光照射デバイスを前記カテーテルに挿入し、前記光照射システムの軸線方向における前記光透過部と前記光照射部との位置を合わせた状態において、先端側の前記第1マーカー部は、先端側の前記第2マーカー部よりも前記軸線方向の先端側に配置され、基端側の前記第1マーカー部は、基端側の前記第2マーカー部よりも前記軸線方向の基端側に配置されていてもよい。
この構成によれば、光照射デバイスをカテーテルに挿入して光透過部と光照射部との位置合わせをした状態において、先端側の第1マーカー部は、先端側の第2マーカー部よりも軸線方向の先端側に配置され、基端側の第1マーカー部は、基端側の第2マーカー部よりも軸線方向の基端側に配置されている。換言すれば、位置合わせをした状態において、カテーテルの第1マーカー部は、内側に挿入される光照射デバイスの第2マーカー部の両端に位置する配置とされているため、光透過部と光照射部との位置関係を直感的に把握しやすくできる。
【0022】
(10)上記形態の光照射システムにおいて、前記第1マーカー部は、前記カテーテルの周方向を取り囲む形状であり、前記第2マーカー部は、前記光照射デバイスの周方向を取り囲む形状であってもよい。
この構成によれば、第1及び第2マーカー部は、共に、カテーテル及び光照射デバイスの周方向を取り囲む形状であるため、生体管腔内におけるカテーテル及び光照射デバイスの向きを把握しやすくできる。このため、光透過部と光照射部との位置合わせを容易かつ高精度に実施できる。
【0023】
(11)上記形態の光照射システムにおいて、前記カテーテルには、前記カテーテルの軸線方向において、前記光透過部と前記第1マーカー部とが複数組設けられていてもよい。
この構成によれば、カテーテルには、光透過部と第1マーカー部とが複数組設けられている。このため、カテーテルを移動させずに、カテーテルの内部で光照射デバイスのみを軸線方向に移動させることによって、カテーテルの軸線方向の異なる領域において光を照射することができる。また、複数の光透過部には、それぞれ第1マーカー部が設けられているため、各光透過部に対する光照射部の位置合わせを容易にできる。
【0024】
(12)上記形態の光照射システムにおいて、前記カテーテルは、さらに、先端側に接合された先端チップを備え、前記先端チップには、前記カテーテルの軸線方向に前記先端チップを貫通する貫通孔であって、径が前記光照射デバイスの外径よりも小さい貫通孔が形成されていてもよい。
この構成によれば、カテーテルの先端側に接合された先端チップには貫通孔が形成されているため、この貫通孔からガイドワイヤを挿通することによって、カテーテルを生体管腔内の目的部位まで容易にデリバリできる。また、貫通孔の径は光照射デバイスの外径よりも小さいため、カテーテルに光照射デバイスを挿入した際に、光照射デバイスの先端が先端チップに突き当たることによって、光照射デバイスの先端側への抜けを抑制できる。
【0025】
(13)上記形態の光照射システムにおいて、前記カテーテルは、さらに、少なくとも前記光透過部の近傍における温度を測定する温度センサを備えていてもよい。
この構成によれば、少なくとも光透過部の近傍における温度を測定する温度センサを備えるため、光照射による生体組織の温度変化をリアルタイムに観測でき、光照射による血液の凝固や、生体組織損傷の抑制に寄与できる。
【0026】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、光照射デバイス、カテーテル、これらが別体又は一体とされた光照射システム、これらデバイスまたはシステムにおいて使用される光源の制御方法、これらデバイスまたはシステムの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。
【
図2】A-A線(
図1)における横断面構成を例示した説明図である。
【
図3】光照射デバイスの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図4】光照射システムの使用状態を例示した説明図である。
【
図5】対象物質から放出される超音波と光の積算放射量との関係を示す図である。
【
図6】第2実施形態の光照射デバイスの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図7】第3実施形態の光照射デバイスの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図8】第4実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図9】第5実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図10】第6実施形態の光照射デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図11】第7実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図12】第8実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図13】B方向(
図12)から見たカテーテルの構成を例示した説明図である。
【
図14】第9実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。
【
図15】第10実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図16】第11実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図17】C-C線(
図16)におけるカテーテルの横断面構成を例示した説明図である。
【
図18】第12実施形態の光照射デバイスの先端側の構成を例示した説明図である。
【
図19】第13実施形態の光照射デバイスの先端側の構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。光照射システムは、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用され、生体管腔内から生体組織に向けて光を照射するシステムである。光照射システムは、カテーテル1と、カテーテル1に挿入して使用される光照射デバイス2とを備えている。
図1では、カテーテル1と、光照射デバイス2とを個別に図示している。
【0029】
本実施形態では、光照射システムを、NIR-PIT(Near-infrared photoimmunotherapy:近赤外光線免疫療法)において使用する場合について説明する。NIR-PITでは、がん細胞の特異的な抗原に対する抗体と、光感受性物質(例えば、IRDye700DX)との2化合物を結合させた複合体を、予め患者に静脈投与しておく。静脈投与された複合体は、生体内のがん細胞に選択的に集積する。その後、光照射システムを生体管腔内に挿入し、複合体中の光感受性物質の励起波長(例えば、690nm)のレーザ光を生体内のがん細胞に向けて照射する。これにより、生体内のがん細胞に集積された複合体が活性化し、抗がん作用を示す。以降、がん細胞のように、光照射システムによる処理の対象とする生体組織を「対象組織」とも呼ぶ。また、IRDye700DXのように、光照射によって活性化する光感受性物質を「対象物質」とも呼ぶ。
【0030】
なお、本実施形態では、光の例として波長690nmのレーザ光を例示するが、レーザ光の波長は任意に変更してよい。また、光照射システムでは、レーザ光に限らず、例えば、LED光や白色光を用いてもよい。さらに、光照射システムは、NIR-PITに限らず、例えば、PDT(Photodynamic Therapy:光線力学的療法)や、がん、脳動脈瘤、不整脈、アルツハイマー病等に対する検査または治療のために、生体内において光を照射するプロセスを含む検査または治療において使用されてよい。
【0031】
図1では、カテーテル1の中心を通る軸と、光照射デバイス2の中心を通る軸とを、それぞれ軸線O(一点鎖線)で表す。以降、光照射デバイス2をカテーテル1に挿入した状態において、互いの中心を通る軸は軸線Oに一致するものとして説明するが、挿入状態における両者の中心を通る軸は、それぞれ相違していてもよい。また、
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸はカテーテル1及び光照射デバイス2の軸線方向(長手方向)に対応し、Y軸はカテーテル1及び光照射デバイス2の高さ方向に対応し、Z軸はカテーテル1及び光照射デバイス2の幅方向に対応する。
図1の左側(-X軸方向)をカテーテル1、光照射デバイス2、及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)をカテーテル1、光照射デバイス2、及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、カテーテル1、光照射デバイス2、及び各構成部材の長手方向(X軸方向)における両端のうち、先端側に位置する一端を「先端」と呼び、基端側に位置する他端を「基端」と呼ぶ。先端及びその近傍を「先端部」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、
図1以降においても共通する。
【0032】
カテーテル1は、長尺管形状であり、シャフト110と、先端チップ120と、コネクタ140とを備えている。
【0033】
シャフト110は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材である。シャフト110は、先端部110dと基端部110pとの両端部が開口した中空の略円筒形状である。シャフト110は、内部にルーメン110Lを有する。ルーメン110Lは、カテーテル1のデリバリ時には、カテーテル1に対してガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンとして機能する。ルーメン110Lは、カテーテル1のデリバリ後においては、カテーテル1に対して光照射デバイス2を挿通させるためのデバイス用ルーメンとして機能する。このように、ガイドワイヤルーメンとデバイス用ルーメンとを単一のルーメンで兼用することにより、カテーテル1を細径化できる。シャフト110の外径、内径及び長さは任意に決定できる。
【0034】
先端チップ120は、シャフト110の先端部に接合されて、他の部材よりも先行して生体管腔内を進行する部材である。先端チップ120は、カテーテル1の生体管腔内での進行をスムーズにするために、基端側から先端側にかけて縮径した外側形状を有している。先端チップ120の略中央部分には、軸線O方向に先端チップ120を貫通する貫通孔120hが形成されている。ここで、貫通孔120hの開口径Φ1は、シャフト110のルーメン110Lの内径Φ2よりも小さい。このため、シャフト110と先端チップ120との境界では、先端チップ120の内表面120iが突出することによる段差が形成されている。先端チップ120の開口120oは、貫通孔120hに通じており、カテーテル1に対してガイドワイヤ(図示省略)を挿通する際に使用される。先端チップ120の外径及び長さは任意に決定できる。
【0035】
コネクタ140は、カテーテル1の基端側に配置され、術者によって把持される部材である。コネクタ140は、略円筒形状の接続部141と、一対の羽根142とを備えている。接続部141の先端部には、シャフト110の基端部110pが接合され、基端部には、羽根142が接合されている。羽根142は、コネクタ140と一体的な構造であってもよい。コネクタ140の開口140oは、コネクタ140の内部を介してルーメン110Lに通じており、カテーテル1に対して光照射デバイス2を挿通する際に使用される。接続部141の外径、内径及び長さと、羽根142の形状とは、任意に決定できる。
【0036】
カテーテル1のシャフト110には、さらに、光透過部139と、第1マーカー部131,132とが設けられている。
【0037】
光透過部139は、シャフト110の内部から照射される光(レーザ光)を外部に透過させる。光透過部139は、中空の略円筒形状の部材であり、シャフト110の外径と略同一の外径を有し、シャフト110のルーメン110Lの内径Φ2と略同一の内径を有している。光透過部139は、周方向の全体に設けられ、周方向の全体においてシャフト110の内部の光を外部に透過させる。光透過部139は、基端側と先端側とにおいて、それぞれシャフト110に接合されている。光透過部139は、光透過性を有する透明な樹脂材料、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等により形成できる。なお、光透過部139の内表面または外表面には、干渉フィルタが設けられていてもよい。干渉フィルタは、所定の透過帯域(例えば、波長600nm以上1000nm以下)を有する膜体である。干渉フィルタは、透過帯域内の波長の光を透過する一方、透過帯域外の波長の光を透過しない(遮断する)。
【0038】
第1マーカー部131,132は、光透過部139の位置を表す目印として機能する。第1マーカー部131は、光透過部139の先端部に近接して設けられており、光透過部139の先端部の位置を表す目印として機能する。第1マーカー部132は、光透過部139の基端部に近接して設けられており、光透過部139の基端部の位置を表す目印として機能する。第1マーカー部131,132は、それぞれ、中空の略円筒形状の部材である。
図1の例では、第1マーカー部131,132は、それぞれ、シャフト110の外表面に形成された凹部に配置され、シャフト110の外表面に接合されている。換言すれば、第1マーカー部131,132は、それぞれ、シャフト110の周方向を取り囲むようにして、シャフト110の外表面に埋設されている。なお、第1マーカー部131,132は、凹部のないシャフト110の外表面に接合されることにより、シャフト110の外表面から突出して設けられてもよい。
【0039】
光照射デバイス2は、長尺状の外形を有しており、本体部210と、先端チップ220と、コネクタ240と、光伝達部250と、検出部260と、補強部材272(
図2において後述)とを備えている。
【0040】
本体部210は、軸線Oに沿って延びる長尺状の部材である。本体部210は、先端部210dと基端部210pとの両端部が開口した中空の略円筒形状(管形状)である。本体部210の先端側の外表面には、光照射部239と、検出素子261とが設けられている(
図3において後述)。本体部210の内側(内部)のルーメン210Lには、光伝達部250と、検出部260と、補強部材272とがそれぞれ収容されている。また、本体部210の内側のうち、光伝達部250、検出部260、及び補強部材272を除く空隙部分には、封止部材271が充填されている。封止部材271としては、例えば、ポリウレタン等の任意の樹脂材料を用いることができる。
【0041】
先端チップ220は、本体部210の先端部210dに接合されて、他の部材よりも先行してカテーテル1のルーメン110Lを進行する部材である。先端チップ220は、光照射デバイス2の長手方向に延びる略円柱形状の部材である。ここで、先端チップ220及び本体部210の外径Φ3(換言すれば、光照射デバイス2の外径Φ3)は、カテーテル1の貫通孔120hの開口径Φ1よりも大きく、かつ、カテーテル1のシャフト110及び光透過部139の内径Φ2よりも小さいことが好ましい(Φ1<Φ3<Φ2)。
【0042】
コネクタ240は、光照射デバイス2の基端側に配置され、術者によって把持される部材である。コネクタ240は、略円筒形状の接続部241と、一対の羽根242とを備えている。接続部241の先端部には、本体部210の基端部210pが接合され、接続部241の基端部には、羽根242が接合されている。羽根242は、コネクタ240と一体的な構造であってもよい。
【0043】
図2は、A-A線(
図1)における横断面構成を例示した説明図である。
図3は、光照射デバイス2の先端側の構成を例示した説明図である。
図3(A)は、光照射デバイス2の先端側の断面構成を表す。
図3(B)は、
図3(A)のB方向から見た光照射デバイス2の構成を表す。
【0044】
光伝達部250は、先端に形成された光照射部239から、生体内の対象組織(がん細胞)と、対象組織に集積された複合体中の対象物質(例えば、IRDye700DX)とに対して、光を照射する。
図2に示すように、光伝達部250は、光照射デバイス2の長手方向に延びるコア250cと、コア250cの外表面を被覆するクラッド250clとを有する光ファイバーにより構成されている。コア250cは、クラッド250clの略中央に配置されており、クラッド250clよりも高い光屈折率を有する。コア250c及びクラッド250clは、屈折率が均一である。光伝達部250は、コア250cとクラッド250clとの屈折率差を利用した光の全反射によって光を伝達する。
【0045】
図1に示すように、光伝達部250の先端側は、本体部210の内側に挿入されて、封止部材271によって固定されている。また、
図3(A)に示すように、光伝達部250の先端部には、光伝達部250が+Y軸方向に湾曲した湾曲部が形成されている。そして、
図3(B)に示すように、光伝達部250の先端(先端面)は、本体部210の外表面に露出して配置されている。光伝達部250の先端では、コア250cが露出した状態とされている。露出したコア250cからは、光源3によって発生され、光伝達部250を介して伝達されたレーザ光LTが照射される。すなわち、光伝達部250の先端において露出したコア250cは、光LTを外部へと照射する光照射部239として機能する。このように、本実施形態の構成では、光伝達部250の先端部を湾曲させることによって、光照射部239からの光LTの照射方向を、光照射デバイス2の長手方向(軸線O方向)に交差する方向、換言すれば、光照射デバイス2の側面の一方向としている。なお、光照射部239のコア250cには、周知の加工(例えば、先端面を斜めにカットする加工、刻み目を形成する加工、サンドブラスト加工、化学的処理)が施されていてもよい。また、コア250cの先端または先端近傍には、レーザ光LTを透過、屈折、増幅するための樹脂体や光反射ミラーが設けられていてもよい。樹脂体は、例えば、石英微粉末を分散させたアクリル系紫外線硬化樹脂に塗布し、紫外光で硬化させることにより形成できる。
【0046】
図1に示すように、光伝達部250の基端側は、コネクタ240の内部を通過して外部へと引き出されている。光伝達部250の基端部は、図示しないコネクタを介して、直接的、または他の光ファイバを介して間接的に、光源3に接続されている。光源3は、例えば、任意の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生装置である。なお、光伝達部250の長さは任意に決定してよい。
【0047】
検出部260は、対象物質(例えば、IRDye700DX)から放出された超音波を検出するセンサである。本実施形態の検出部260は、光照射デバイス2の長手方向に延びるコア260cと、コア260cの外表面を被覆するクラッド260clとを有する光ファイバーにより構成された、光ファイバドップラセンサ(FOD)である(
図2)。
【0048】
図3(A)に示すように、検出部260は、検出素子261と、延伸部262とを有している。
図3(B)に示すように、検出素子261は、光ファイバーの先端側の一部分を巻回して形成されたコイル状の検出素子である。検出素子261は、レーザードップラ効果を利用して、被計測物(ここでは、生体組織に集積された複合体中の対象物質)から放出される超音波を検出する。また、
図1に示すように、延伸部262は、光ファイバーの残余の部分により構成されており、検出素子261と、外部に設けられた検出装置4とを接続し、検出素子261による検出値(検出信号)を検出装置4に伝送する。
【0049】
図1に示すように、延伸部262の先端側は、本体部210の内側に挿入されて、封止部材271によって固定されている。また、
図3(A)に示すように、延伸部262の先端部には、延伸部262が+Y軸方向(換言すれば、光照射部239の湾曲方向と同じ方向)に湾曲した湾曲部が形成されている。そして、延伸部262の先端部に設けられた検出素子261は、本体部210の外表面に露出して配置されている。具体的には、
図3(B)に示すように、検出素子261は、本体部210の先端側の側面において、光照射部239とX軸方向に隣り合う位置に設けられている。換言すれば、検出部260と、光照射部239とは、近接して設けられている。ここで、
図3(A)に示すように、本体部210の先端側の側面において、検出素子261の向きEDは、光照射部239における光の照射方向LTDと並行とされている。ここで「検出素子261の向きED」は、検出素子261のコイルの中心軸の向きを意味する。また、「光の照射方向LTD」は、光照射部239からの光の照射範囲の中心を意味する。
【0050】
図1に示すように、延伸部262の基端側は、コネクタ240の内部を介して外部へと引き出されている。延伸部262の基端部は、図示しないコネクタを介して、直接的、または他の光ファイバを介して間接的に、検出装置4に接続されている。検出装置4は、超音波を検出すると共に、検出した超音波の強さを、画面表示、LED(Light Emitting Diode)表示、音声案内等の任意の手段で術者に案内する装置である。なお、検出素子261の巻き数、及び、延伸部262の長さは任意に決定してよい。
【0051】
なお、本実施形態の光伝達部250及び検出部260は、コアとクラッドとが共に樹脂製のプラスチック光ファイバーにより構成されている。コアは、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Polymethylmetacrylate)、ポリスチレン、ポリカーボネート、含重水素化ポリマー、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー等により形成できる。コアは、光が伝搬するモード数によってシングルモードと、マルチモードとに分類されるが、本実施形態ではどちらを用いてもよい。また、マルチモードのコアの場合、屈折率分布によってステップインデックスと、グレーデッドインデックスとに分類されるが、本実施形態ではどちらを用いてもよい。クラッドは、例えば、フッ素系ポリマーにより形成できる。なお、光伝達部250及び検出部260には、プラスチック光ファイバに代えて、石英ガラス光ファイバや、多成分ガラス光ファイバを採用してもよい。
【0052】
補強部材272は、長尺状の光照射デバイス2を補強し、光照射デバイス2の過度な撓みを抑制するための部材である。補強部材272は、軸線Oに沿って延びる長尺状であり、中実の略円柱形状を有するコア線である。補強部材272は、本体部210の内側において、先端部が先端チップ220の近傍に位置し、基端部がコネクタ240の内部に位置するように配置されている。補強部材272は、任意の材料、例えば、強化プラスチック(PEEK)等の任意の硬質樹脂材料や、金属材料により形成できる。補強部材272の長さは任意に決定できる。
【0053】
光照射デバイス2の本体部210には、さらに、第2マーカー部231,232が設けられている。第2マーカー部231,232は、光照射部239の位置を表す目印として機能する。第2マーカー部231は、光照射部239の先端部に近接して設けられており、光照射部239の先端部の位置を表す目印として機能する。第2マーカー部232は、光照射部239の基端部(より具体的には、検出素子261の基端部)に近接して設けられており、光照射部239の基端部の位置を表す目印として機能する。第2マーカー部231,232は、それぞれ、中空の略円筒形状の部材である。
図1の例では、第2マーカー部231,232は、それぞれ、本体部210の外表面に形成された凹部に配置され、本体部210の外表面に接合されている。換言すれば、第2マーカー部231,232は、それぞれ、本体部210の周方向を取り囲むようにして、本体部210の外表面に埋設されている。なお、第2マーカー部231,232は、凹部のない本体部210の外表面に接合されることにより、本体部210の外表面から突出して設けられてもよい。
【0054】
カテーテル1の第1マーカー部131,132と、光照射デバイス2の第2マーカー部231,232とは、放射線不透過性を有する樹脂材料や金属材料により形成できる。例えば、樹脂材料を用いる場合、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等に対して、三酸化ビスマス、タングステン、硫酸バリウム等の放射線不透過材料を混ぜて形成できる。例えば、金属材料を用いる場合、放射線不透過材料である金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金)等で形成できる。
【0055】
カテーテル1のシャフト110と、光照射デバイス2の本体部210とは、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、樹脂材料や金属材料で形成することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等を採用できる。金属材料としては、例えば、SUS304等のステンレス鋼、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン鋼等を採用できる。また、シャフト110と、本体部210とは、上述した材料を複数組み合わせた接合構造体とすることもできる。カテーテル1の先端チップ120と、光照射デバイス2の先端チップ220とは、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー等の樹脂材料により形成できる。カテーテル1のコネクタ140と、光照射デバイス2のコネクタ240とは、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で形成することができる。
【0056】
図4は、光照射システムの使用状態を例示した説明図である。
図4の上段には、カテーテル1に光照射デバイス2を挿入した様子を図示する。
図4の下段には、先端側の一部分を拡大した様子を図示する。
図1及び
図4を参照しつつ、光照射システムの使用方法について説明する。まず、術者は、生体管腔内にガイドワイヤを挿入する。次に、術者は、ガイドワイヤの基端側を、
図1に示すカテーテル1の先端チップ120の開口120oから、ルーメン110Lへと挿通し、コネクタ140の開口140oから突出させる。次に、術者は、ガイドワイヤに沿わせてカテーテル1を生体管腔内に押し進め、カテーテル1の光透過部139を、光照射の目的部位(例えば、NIR-PITの場合はがん細胞の付近)までデリバリする。このように、カテーテル1の先端チップ120に形成された貫通孔120hからガイドワイヤを挿通することによって、術者は、カテーテル1を生体管腔内の目的部位まで容易にデリバリできる。なお、デリバリの際、術者は、X線画像において、光透過部139の近傍に配置された第1マーカー部131,132の位置を確認しつつ、生体管腔内におけるカテーテル1の位置決めをすることができる。その後、術者は、カテーテル1からガイドワイヤを抜去する。
【0057】
次に、術者は、
図4に示すように、カテーテル1のコネクタ140の開口140oから、光照射デバイス2を挿入する。術者は、カテーテル1のルーメン110Lに沿わせて、光照射デバイス2をカテーテル1の先端側へと押し進める。ここで、上述の通り、光照射デバイス2の外径Φ3を、カテーテル1のルーメン110Lの内径Φ2よりも小さく、先端チップ120の貫通孔120hの開口径Φ1よりも大きくしておけば、カテーテル1に光照射デバイス2を挿入した際に、光照射デバイス2の先端面220eが、先端チップ120の内表面120iに突き当たることによって、光照射デバイス2の先端側への抜けを抑制できる(
図4下段:破線丸枠)。
【0058】
その後、術者は、X線画像において、第1マーカー部131,132と、第2マーカー部231,232との位置関係を確認することで、光透過部139と、光照射部239との軸線O方向(X軸方向)における位置を合わせる。これにより、光伝達部250を介して伝達され、光照射部239から射出されたレーザ光LTを、カテーテル1の光透過部139を透過させて、外部の生体組織へと射出することができる。なお、本実施形態のカテーテル1では、光透過部139が、周方向の全体に設けられている。このため、本実施形態の光照射システムでは、術者は、軸線O方向(X軸方向)における光透過部139と光照射部239との位置合わせをするのみでよく、周方向における光透過部139と光照射部239との位置合わせは不要である。
【0059】
図5は、対象物質から放出される超音波と光の積算放射量との関係を示す図である。
図5の横軸には、光照射システムからの光(
図4:レーザ光LT)の積算放射量を表し、縦軸には、対象物質から放出される超音波の量を表す。
図4で説明したように、光照射システムを用いたNIR-PITの手技では、生体内の対象組織(がん細胞)に対して、複合体中の対象物質(例えば、IRDye700DXのような光感受性物質)の励起波長の光を照射する。光の照射によって、対象物質(IRDye700DX)は、親水性から疎水性へと不可逆的な構造変化を起こし、対象組織の壊死を誘発する。すなわち、光の照射によって、生体内の対象組織に集積された複合体が活性化し、抗がん作用を得ることができる。
【0060】
ここで、対象物質(IRDye700DX)は、対象物質の励起波長の光の照射を受けた際、光を放出すると共に、光音響効果によって超音波を放出するという性質を有する。対象物質の「光と超音波を放出する」性質は、対象物質の構造変化の進行に伴って消失していく。このため、
図5に示すように、光照射システムからの光の積算放射量が増加するにつれて、生体内の対象組織(がん細胞)に集積された複合体中の対象物質から放出される超音波の量は、徐々に減少していく。なお、
図5では、対象物質から放出される超音波の量について図示したが、対象物質から放出される光の量についても同様である。
【0061】
光照射システムは、検出部260によって、対象物質(IRDye700DX)から放出された超音波を検出することができる。検出装置4は、検出部260による検出値を用いて、例えば次のa1,a2のような処理を行う。
(a1)検出装置4は、検出部260の標準値を取得し、記憶しておく。標準値とは、対象物質以外の生体組織(例えば、血中ヘモグロビン等)から放出される超音波の値である。標準値は、複合体を投与する前に、生体内の対象組織(がん細胞)に対して光照射部239から光を照射し、その際の検出部260の検出値を取得することで得ることができる。なお、標準値としては、手技の対象患者から直接取得された値に限らず、健常者から取得された値や、術者により入力された値等、任意のデータが用いられてよい。
(a2)検出装置4は、複合体の投与後、NIR-PITの手技中において、検出部260から得られる検出値をリアルタイムに取得する。検出装置4は、取得した検出値から、処理a1の標準値を除外した値を、リアルタイムに術者に案内する。案内は、画面表示、LED表示、音声案内等の任意の手段を用いることができる。
【0062】
なお、上述した例では、検出部260は、対象物質(IRDye700DX)から放出された「超音波」を検出するセンサであるとした。しかし、検出部260は、対象物質から放出された「光」を検出するセンサであってもよい。この場合、処理a1と同様に、検出装置4に対して、光照射部239から照射される光と生体組織からの反射光との標準値を予め取得、記憶させておく。そして、処理a2と同様に、検出部260から得られる検出値をリアルタイムに取得し、検出値から処理a1の標準値を除外した値を、術者に案内すればよい。
図5で説明した通り、対象物質から放出される光は、超音波と同様の性質を有する。このため、検出部260が光を検出するセンサであっても、同様に処理をすることができる。
【0063】
また、検出部260は、対象物質から放出される「超音波」や「光」の他にも、対象物質が光を照射されたことに起因して、対象物質または生体組織が起こす、種々の物理化学現象を検出するセンサであってもよい。対象物質が起こす物理化学現象としては、上述した超音波や光の放出が挙げられる。生体組織が起こす物理化学現象としては、例えば、対象組織(がん細胞)の周囲に存在する体液のph(ペーハー)変化や、対象物質からの光または超音波の放出に伴って生じる生体組織(体液含む)の温度変化が挙げられる。生体組織が起こす物理化学現象としては、さらに、複合体の抗がん作用により対象組織が死滅させられる過程で起こる対象組織の細胞破裂に伴う、体液の圧力変化が挙げられる。検出部260は、対象物質が光を照射されたことに起因して生体組織が起こす物理化学現象(体液のph変化、温度変化、圧力変化)を検出するセンサとして構成されてもよい。
【0064】
以上説明した通り、第1実施形態の光照射デバイス2は、光照射部239から光LTを照射された対象物質が、光LTを照射されたことに起因して発生する物理化学現象(例えば、光や超音波、体液のph変化、温度変化、圧力変化等)を検出する検出部260を備える。ここで、例えばNIR-PITでは、生体内の対象組織(がん細胞)に集積された複合体中の対象物質(例えば、IRDye700DXのような光感受性物質)が、対象物質の励起波長の光LTの照射を受けた際、光を放出すると共に、光音響効果によって超音波を放出する。このため、術者は、検出部260による物理化学現象の検出有無によって、生体内の対象組織(対象物質を含む複合体が集積されたがん細胞)に向かって、正しく光照射部239からの光LTが照射されているか否かを確認できる。この結果、確実に対象組織に光LTを照射することが可能となり、手技の効率を向上できる。このような光照射デバイス2の効果は、IRDye700DXを用いるNIR-PITに限らず、光LTの照射を受けた際に光または超音波を放出する性質を有する、任意の対象物質を用いた検査または治療においても、同様に得られる。
【0065】
また、対象物質としてのIRDye700DXでは、対象物質への光LTの積算照射量が増加するにつれて、対象物質が不可逆的な構造変化をして対象組織(がん細胞)の死滅を誘発すると共に、対象物質から放出される光の量と、対象物質から放出される超音波の量とが減少する(
図5)。このため、術者は、検出部260による物理化学現象に関する検出値によって、対象組織の死滅の程度(換言すれば、治療の進捗度合い)を把握することができる。この結果、対象組織への過度な光LTの照射を抑制することが可能となり、手技の安全性と効率とを向上できる。このような光照射デバイス2の効果は、IRDye700DXを用いるNIR-PITに限らず、光LTの照射を受けた際に放出される光または超音波の量が減少する性質を有する、任意の対象物質を用いた検査または治療においても、同様に得られる。
【0066】
さらに、光照射デバイス2において、光照射部239は、本体部210の先端側の側面の一部分に設けられているため、本体部210の周方向の全体に光照射部239が設けられている構成と比較して、光照射がなされる生体組織の範囲を限定することができ、不要な生体組織に対して光照射がされることによる生体組織損傷の抑制に寄与できる。
【0067】
また、第1実施形態の光照射デバイス2によれば、検出部260は、本体部210の先端側の側面のうち、光照射部239が設けられている側において、検出素子261の向きEDと、光照射部239における光LTの照射方向LTDとが平行となるように配置されている(
図3)。このため、平行でない配置の場合と比較して、検出部260による検出精度を向上することができる。ここで「平行」とは、概ね平行であれば足り、製造誤差等によるぶれを許容する。また、第1実施形態の検出部260は、複合体中の対象物質が励起波長の光LTの照射を受けた際に放出する超音波を検出することで、正しく光照射部239からの光LTが照射されているか否かを確認できる。
【0068】
さらに、第1実施形態の光照射システムによれば、カテーテル1と光照射デバイス2とは、光透過部139及び光照射部239に近接して設けられた放射線不透過性の第1マーカー部131,132及び第2マーカー部231,232を有する。このため、術者は、X線撮影によって生体内の第1マーカー部131,132及び第2マーカー部231,232の位置を確認することで、生体管腔内における光照射部位(光透過部139及び光照射部239)の位置決めを容易にできる。このため、第1実施形態の光照射システムによれば、例えば、NIR-PITにおいて対象組織(がん細胞)に選択的に光を照射する等、生体管腔内の特定の位置に対して、選択的に光を照射することができる。また、光透過部139には近接して第1マーカー部131,132が、光照射部239には近接して第2マーカー部231,232がそれぞれ設けられている。このため、光照射システムの使用時において、カテーテル1に対して光照射デバイス2を挿入した後、術者は、X線撮影によって第1マーカー部131,132と第2マーカー部231,232との位置関係を確認することで、光透過部139と光照射部239との位置合わせを容易にできる。さらに、カテーテル1と光照射デバイス2とを個別に備えることで、デバイス設計の自由度を向上させることができると共に、手技の幅を拡げることができる。
【0069】
さらに、カテーテル1において、第1マーカー部131,132は、光透過部139の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられているため、術者は、光透過部139と光照射部239との位置合わせをより一層容易にできる。同様に、光照射デバイス2において、第2マーカー部231,232は、光照射部239の先端側と基端側との少なくとも2か所に設けられているため、術者は、光透過部139と光照射部239との位置合わせをより一層容易にできる。
【0070】
さらに、本実施形態の光照射システムでは、
図4に示すように、光照射デバイス2をカテーテル1に挿入して光透過部139と光照射部239との位置合わせをした状態において、先端側の第1マーカー部131は、先端側の第2マーカー部231よりも軸線O方向の先端側に配置され、基端側の第1マーカー部132は、基端側の第2マーカー部232よりも軸線O方向の基端側に配置されている。換言すれば、
図4の光照射システムでは、位置合わせをした状態において、カテーテル1の第1マーカー部131,132は、内側に挿入される光照射デバイス2の第2マーカー部231,232の両端に位置する配置とされている。このため、術者は、光透過部139と光照射部239との位置関係を直感的に把握しやすい。
【0071】
さらに、本実施形態の光照射システムでは、第1マーカー部131,132と、第2マーカー部231,232とは、共に、カテーテル1及び光照射デバイス2の周方向を取り囲む形状であるため、X線撮影によって、生体管腔内におけるカテーテル1及び光照射デバイス2の向きを把握しやすくできる。このため、術者は、光透過部139と光照射部239との位置合わせを容易かつ高精度に実施にできる。
【0072】
さらに、本実施形態の光照射システムでは、カテーテル1の先端側に接合された先端チップ120には貫通孔120hが形成されているため、この貫通孔120hからガイドワイヤを挿通することによって、カテーテル1を生体管腔内の目的部位まで容易にデリバリできる。また、貫通孔120hの開口径Φ1は光照射デバイス2の外径Φ3よりも小さいため、カテーテル1に光照射デバイス2を挿入した際に、光照射デバイス2の先端が先端チップ120に突き当たることによって、光照射デバイス2の先端側への抜けを抑制できる。また、
図4下段に示すように、光照射デバイス2がカテーテル1に突き当たった状態において、光照射部239の軸線O方向における位置が、光透過部139の軸線O方向における略中央部分に位置するように、光透過部139と光照射部239とが配置されている。このため、術者は、光透過部139と光照射部239との位置合わせをより一層容易にできる。
【0073】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の光照射デバイス2Aの先端側の構成を例示した説明図である。
図6(A)は、光照射デバイス2Aの先端側の断面構成を表す。
図6(B)は、
図6(A)のB方向から見た光照射デバイス2Aの構成を表す。第2実施形態の光照射システムは、
図6に示す光照射デバイス2Aと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Aは、検出部260に代えて検出部260Aを備える。
【0074】
検出部260Aは、検出素子261Aと、延伸部262とを有している。検出素子261Aは、光ファイバーの先端側の一部分を巻回して形成されたコイル状の検出素子である。
図6(B)に示すように、検出素子261Aは、本体部210の先端側の側面において、光照射部239の周囲を取り囲むようにして、光照射部239と同じ位置に配置されている。換言すれば、光照射部239が、コイル状の検出素子261Aの内側に挿通されている。このため、
図6(A)に示すように、本体部210の先端側の側面において、検出素子261Aの向きEDは、光照射部239における光の照射方向LTDと同じ(同軸)とされている。ここで「同軸」とは、概ね同軸であれば足り、製造誤差等によるぶれを許容する。なお、
図6(A)では、図示の便宜上、検出素子261Aの向きEDを表す破線矢印と、光の照射方向LTDを表す実線矢印とをわずかにずらして表しているが、これらは同じ位置を表す。延伸部262の構成は、第1実施形態で説明した通りである。
【0075】
このように、検出部260Aの構成は種々の変更が可能であり、検出素子261Aは、光照射部239と同じ位置に配置されていてもよい。以上のような第2実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態の光照射デバイス2Aによれば、検出部260Aは、本体部210の先端側の側面において、光照射部239を検出素子261Aの内側に挿通することによって、検出素子261Aの向きEDと、光照射部239における光の照射方向LTDとが同じになるように配置されている。このため、同軸でない配置の場合と比較して、検出部260Aによる超音波の検出精度をより一層向上することができる。
【0076】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の光照射デバイス2Bの先端側の構成を例示した説明図である。
図7(A)は、光照射デバイス2Bの先端側の断面構成を表す。
図7(B)は、
図7(A)のB方向から見た光照射デバイス2Bの構成を表す。第3実施形態の光照射システムは、
図7に示す光照射デバイス2Bと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Bは、検出部260に代えて検出部260Bを備える。
【0077】
検出部260Bは、検出素子261Bと、延伸部262とを有している。検出素子261Bは、光ファイバーの先端側の一部分を巻回して形成されたコイル状の検出素子である。
図7(B)に示すように、検出素子261Bは、本体部210の先端側の側面において、光照射部239の近傍であるものの、光照射部239とは離間した位置に設けられている。図示の例では、検出素子261Bは、光照射部239とは、軸線O方向(X軸方向)と周方向(YZ軸方向)との両方において異なる位置に配置されている。この結果、
図7(A)に示すように、本体部210の先端側の側面において、検出素子261Bの向きは、光照射部239における光の照射方向LTDと並行でなく、同軸でもない。
【0078】
このように、検出部260Bの構成は種々の変更が可能であり、検出素子261Bは、本体部210において、光照射部239の近傍に設けられていれば足り、任意の配置とできる。例えば、
図7で説明したように、検出素子261Bと光照射部239とは離間して配置されていてもよい。以上のような第3実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の光照射デバイス2Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態の光照射システムは、
図8に示す光照射デバイス2Cと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Cは、第1実施形態で説明した構成に加えてさらに、方向性マーカー部280を備える。
【0080】
方向性マーカー部280は、光照射デバイス2Cの周方向の向きを表し、術者に対して、光照射部239の周方向における位置を認識させるための目印として機能する。方向性マーカー部280は、放射線不透過性を有する樹脂材料や金属材料からなる素線を、円弧形状に曲げ加工することで形成されている。方向性マーカー部280は、本体部210の側面において、本体部210の肉厚部に埋設されている。図示の例では、方向性マーカー部280は、軸線O方向において、本体部210の略中央部分に配置されている。しかし、方向性マーカー部280は、光照射部239の近傍など、任意の位置に配置されてよい。
図8に示す方向性マーカー部280は、開口280cが、光照射部239とは逆方向(-Y軸方向)に向くように配置されている。このため術者は、X線画像に映る任意の方向からの方向性マーカー部280の形状(具体的には、開口280cの向き)を確認することによって、光照射部239の周方向における位置(換言すれば、光照射部239の向き)を認識することができる。
【0081】
このように、光照射デバイス2Cの構成は種々の変更が可能であり、任意の方向から見た際の形状によって、光照射部239の周方向における位置を認識可能とするための構成(方向性マーカー部280)を有していてもよい。方向性マーカー部280の形状は、上述した円弧形状のほか、螺旋形状や波状等、種々の変更が可能である。以上のような第4実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第4実施形態の光照射デバイス2Cによれば、放射線不透過性を有し、任意の方向から見た際の形状によって、光照射部239の周方向における位置を認識可能な方向性マーカー部280を備える。このため、術者は、X線撮影画像に映る方向性マーカー部280の形状を確認することで、光照射部239の周方向における位置(向き)を容易に把握できる。この結果、第4実施形態の光照射デバイス2Cによれば、例えばNIR-PITにおいて、対象組織(がん細胞)に対して選択的に光を照射できる。
【0082】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態の光照射デバイス2Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態の光照射システムは、
図9に示す光照射デバイス2Dと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Dは、第4実施形態で説明した構成において、方向性マーカー部280に代えて方向性マーカー部280Dを備える。
【0083】
方向性マーカー部280Dは、放射線不透過性を有すると共に、円弧形状に曲げ加工された複数の素線(以降「サブマーカー」とも呼ぶ)を含んでいる。各サブマーカーは、本体部210の側面において、軸線O方向に等間隔に離間した状態で、本体部210の肉厚部に埋設されている。また、各サブマーカーは、いずれも、開口280cが、光照射部239とは逆方向に向くように配置されている。図示の例では、方向性マーカー部280Dは3つのサブマーカーから構成されているが、方向性マーカー部280Dを構成するサブマーカーの数は任意に変更できる。
【0084】
このように、光照射デバイス2Dの構成は種々の変更が可能であり、複数のサブマーカーによって、光照射部239の周方向における位置を認識可能とするための構成(方向性マーカー部280D)を実現してもよい。以上のような第5実施形態の光照射システムによっても、上述した第1、及び第4実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態の光照射デバイス2Dによれば、方向性マーカー部280Dが複数のサブマーカーを備えるため、X線撮影画像に映る方向性マーカー部280Dの形状を確認しやすくすることができる。この結果、術者は、光照射部239の周方向における位置(向き)をより一層、容易に把握できる。
【0085】
<第6実施形態>
図10は、第6実施形態の光照射デバイス2Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態の光照射システムは、
図10に示す光照射デバイス2Eと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Eは、第4実施形態で説明した構成において、方向性マーカー部280に代えて方向性マーカー部280Eを備える。
【0086】
方向性マーカー部280Eは、放射線不透過性を有する略直線状の素線により形成されている。方向性マーカー部280Eは、本体部210の側面において、本体部210の肉厚部に埋設されている。また、
図10に示すように、方向性マーカー部280Eは、本体部210の側面において、光照射部239と同じ方向(+Y軸方向)に配置されている。このため術者は、X線画像に映る任意の方向からの方向性マーカー部280Eの位置(具体的には、方向性マーカー部280Eの位置と、第2マーカー部231,232との位置関係)を確認することによって、光照射部239の周方向における位置(換言すれば、光照射部239の向き)を認識することができる。
【0087】
このように、光照射デバイス2Eの構成は種々の変更が可能であり、任意の方向から見た際の位置によって、光照射部239の周方向における位置を認識可能とするための構成(方向性マーカー部280E)を有していてもよい。方向性マーカー部280Eの形状は、上述した直線状のほか、波状等、種々の変更が可能である。以上のような第6実施形態の光照射システムによっても、上述した第1、及び第4実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0088】
<第7実施形態>
図11は、第7実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。第7実施形態の光照射システムは、
図11に示すカテーテル1Fと、光照射デバイス2Fとを備えている。
図11では、カテーテル1Fに対して光照射デバイス2Fを挿入した様子を示している。カテーテル1Fは、第1実施形態で説明した第1マーカー部132を有していない。同様に、光照射デバイス2Fは、第1実施形態で説明した第2マーカー部232を有していない。
【0089】
このように、第1マーカー部及び第2マーカー部には種々の構成を採用することができ、例えば、第1及び第2マーカー部132,232を省略することに代えて、第1及び第2マーカー部131,231を省略してもよい。以上のような第7実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第7実施形態の光照射システムでは、光透過部139及び光照射部239の両端にマーカー部を設ける構成と比較して、カテーテル1F及び光照射デバイス2Fの製造コストを低減できる。
【0090】
<第8実施形態>
図12は、第8実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。第8実施形態の光照射システムは、
図12及び
図13に示すカテーテル1Gと、
図12に示す光照射デバイス2Gとを備えている。
図12では、カテーテル1Gに対して光照射デバイス2Gを挿入した様子を示している。カテーテル1Gは、第1実施形態で説明した第1マーカー部131,132に代えて、第1マーカー部131G,132Gを備えている。光照射デバイス2Gは、第1実施形態で説明した第2マーカー部231,232に代えて、第2マーカー部231G,232Gを備えている。
【0091】
図13は、B方向(
図12)から見たカテーテル1Gの構成を例示した説明図である。
図13(A)は、B方向から見たカテーテル1Gの構成の一例を、
図13(B)は、B方向から見たカテーテル1Gの構成の他の例を、それぞれ示す。第1マーカー部131G,132Gは、それぞれ、カテーテル1Gの周方向の一部分に設けられている。
図13(A)の例では、第1マーカー部131Gは、光透過部139の先端側の一辺に沿って、光透過部139と略同一の範囲に設けられている。同様に、第1マーカー部132Gは、光透過部139の基端側の一辺に沿って、光透過部139と略同一の範囲に設けられている。
図13(B)の例では、第1マーカー部131G,132Gは、光透過部139の周囲を取り囲むように設けられている。なお、
図13では、第1マーカー部131G,132Gについて説明したが、光照射デバイス2Gの第2マーカー部231G,232Gについても同様に、光照射部239の一辺に沿って、または、光照射部239の周囲を取り囲むように設けられている。
【0092】
このように、第1マーカー部131G,132G及び第2マーカー部231G,232Gには種々の構成を採用することができ、図示のように、周方向の一部分にのみ設けられていてもよい。以上のような第8実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第8実施形態の光照射システムでは、周方向の全体にマーカー部を設ける構成と比較して、カテーテル1G及び光照射デバイス2Gの製造コストを低減できる。
【0093】
<第9実施形態>
図14は、第9実施形態の光照射システムの構成を例示した説明図である。第9実施形態の光照射システムは、
図14に示すカテーテル1Hと、第1実施形態と同様の構成を有する光照射デバイス2とを備えている。カテーテル1Hは、光透過部139に代えて光透過部139Hを備え、第1マーカー部131,132に代えて第1マーカー部131H,132Hを備えている。
図14に示すように、光透過部139Hは、軸線O方向(X軸方向)に並んで配置された3つの光透過部1391,1392,1393より構成されている。光透過部1391,1392,1393の各々の構成は、第1実施形態で説明した光透過部139と同様である。
【0094】
また、第1マーカー部131H,132Hは、光透過部1391の位置を表す目印として機能する第1マーカー部1311,1321と、光透過部1392の位置を表す目印として機能する第1マーカー部1312,1322と、光透過部1393の位置を表す目印として機能する第1マーカー部1313,1323とにより構成されている。第1マーカー部1311は、光透過部1391の先端部に近接して設けられ、第1マーカー部1321は、光透過部1391の基端部に近接して設けられている。第1マーカー部1312は、光透過部1392の先端部に近接して設けられ、第1マーカー部1322は、光透過部1392の基端部に近接して設けられている。第1マーカー部1313は、光透過部1393の先端部に近接して設けられ、第2マーカー部1323は、光透過部1393の基端部に近接して設けられている。これら各第1マーカー部1311~1323の構成は、第1実施形態で説明した第1マーカー部131,132と同様である。なお、軸線O方向において隣り合う第1マーカー部、具体的には、第1マーカー部1321と1312、第1マーカー部1322と1313については、結合した1つのマーカー部にしてもよい。
【0095】
このように、カテーテル1Hには、複数組の光透過部1391~1393及び第1マーカー部1311~1323が設けられていてもよい。
図14の例では、3組の場合を例示したが、2組でもよく4組以上でもよい。以上のような第9実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第9実施形態の光照射システムでは、複数組の光透過部1391~1393及び第1マーカー部1311~1323が設けられているため、生体管腔内においてカテーテル1Hを移動させずに、カテーテル1Hの内部で光照射デバイス2のみを軸線O方向(X軸方向)に移動させることによって、カテーテル1Hの軸線O方向の異なる領域において光を照射することができる。また、複数の光透過部1391~1393には、それぞれ第1マーカー部1311~1323が設けられているため、各光透過部1391~1393に対する光照射部239の位置合わせを容易にできる。
【0096】
<第10実施形態>
図15は、第10実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。第10実施形態の光照射システムは、
図15に示すカテーテル1Iと、第1実施形態と同様の構成を有する光照射デバイス2とを備えている。
図15では、カテーテル1Iに対して光照射デバイス2を挿入した様子を示している。カテーテル1Hは、第1実施形態で説明した先端チップ120を備えていない。なお、同様に、光照射デバイス2の先端チップ220を省略してもよい。
【0097】
このように、カテーテル1I及び光照射デバイス2には種々の構成を採用することができ、上述した構成要素の一部を省略してもよい。第10実施形態の光照射システムにおいても、光透過部139の両端に設けられた第1マーカー部131,132と、光照射部239の両端に設けられた第2マーカー部231,232とによって、光透過部139と光照射部239との位置合わせが可能であり、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第10実施形態の光照射システムでは、先端チップ120を設ける構成と比較して、カテーテル1Iの製造コストを低減できる。
【0098】
<第11実施形態>
図16は、第11実施形態の光照射システムの先端側の構成を例示した説明図である。
図17は、C-C線(
図16)におけるカテーテル1Jの横断面構成を例示した説明図である。第11実施形態の光照射システムは、
図16及び
図17に示すカテーテル1Jと、第1実施形態と同様の構成を有する光照射デバイス2とを備えている。
図16では、カテーテル1Jに対して光照射デバイス2を挿入した様子を示している。
【0099】
カテーテル1Jは、第1実施形態で説明した各構成に加えてさらに、温度センサ180を備えている。
図17に示すように、温度センサ180は、二種類の異なる金属導体を含んでおり、光透過部139の近傍における温度を測定する。温度センサ180は、光透過部139と、シャフト110との内部に埋設されている。温度センサ180の先端側は、光透過部139の内部に配置されており、基端側は、図示しない温度計に接続されている。なお、温度センサ180の先端側の少なくとも一部分は、光透過部139又はシャフト110の外表面から突出していていもよい。温度センサ180は、カテーテル1Jと、光照射デバイス2との少なくとも一方に設けられていてもよく、両方に設けられていてもよい。
【0100】
このように、カテーテル1J及び光照射デバイス2は、温度センサ180のように、上述しない種々の構成を備えることができる。以上のような第11実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第11実施形態の光照射システムでは、少なくとも光透過部139の近傍における温度を測定する温度センサ180を備えるため、光照射による生体組織の温度変化をリアルタイムに観測できるため、光照射による血液の凝固や、生体組織損傷の抑制に寄与できる。
【0101】
<第12実施形態>
図18は、第12実施形態の光照射デバイス2Kの先端側の構成を例示した説明図である。第12実施形態の光照射システムは、
図18に示す光照射デバイス2Kと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Kは、光伝達部250に代えて光伝達部250Kを備え、光照射部239に代えて光照射部239Kを備える。
【0102】
光伝達部250Kは、先端側に湾曲部が形成されておらず、本体部210の内側において直線状に延伸している。光伝達部250Kの先端には、光照射部239Kが設けられている。光照射部239Kは、光伝達部250Kの先端において露出されたコアを覆い、かつ、本体部210の側面の一部分に露出して設けられた樹脂体である。光照射部239Kは、例えば、石英微粉末を分散させたアクリル系紫外線硬化樹脂に塗布し、紫外光で硬化させることにより形成できる。なお、光照射部239Kは、他の態様により実現されてもよく、例えば、樹脂体に代えて、光反射ミラーにより実現されてもよい。
【0103】
このように、光照射部239Kの構成は種々の変更が可能であり、本体部210の側面において露出されたコアに代えて、本体部210の側面において露出された光学部材(樹脂体やミラー)により構成されてもよい。以上のような第12実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第12実施形態の光照射デバイス2Kによれば、光照射部239Kとして用いる光学部材の光学特性を調整することで、光照射部239Kの性能を調整できる。
【0104】
<第13実施形態>
図19は、第13実施形態の光照射デバイス2Mの先端側の構成を例示した説明図である。第13実施形態の光照射システムは、
図19に示す光照射デバイス2Mと、第1実施形態と同様の構成を有するカテーテル1とを備えている。光照射デバイス2Mは、補強部材272(
図2)に代えて補強部材272Mを備えている。補強部材272Mは、素線を螺旋状に巻回して形成されたコイル形状である。補強部材272Mは、本体部210の肉厚部に埋設されている。補強部材272Mを構成する素線は、任意の樹脂材料や金属材料により形成できる。
【0105】
このように、光照射デバイス2Mの構成は種々の変更が可能であり、光照射デバイス2Mを補強するための補強部材272Mは、コイル形状や、素線を網目織りにしたメッシュ形状としてもよい。また、光照射デバイス2Mには、複数の補強部材272Mが設けられてもよい。この場合、一の補強部材272Mの形状と、他の補強部材272Mの形状とは同じでもよく、相違してもよい。補強部材272Mは、本体部210の肉厚部に埋設されてもよく、第1実施形態と同様に、本体部210の内側に収容されていてもよい。以上のような第13実施形態の光照射システムによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第12実施形態の光照射デバイス2Mによれば、補強部材272Mの形状を変えることによって、光照射デバイス2Mのトルク伝達性、柔軟性、及び形状保持性等を調整できる。
【0106】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0107】
[変形例1]
上記第1~13実施形態では、カテーテル1,1F~1J、及び、光照射デバイス2,2A~2G,2K,2Mの構成の一例を示した。しかし、カテーテル1及び光照射デバイス2の構成は種々の変更が可能である。例えば、カテーテル1の第1マーカー部131,132、及び、光照射デバイス2の第2マーカー部231,232は、省略してもよい。例えば、
図4では、カテーテル1と光照射デバイス2とを組み合わせて用いる方法について説明したが、光照射デバイス2は単独で(カテーテル1を併用されることなく)使用されてもよい。
【0108】
例えば、カテーテル1には、第13実施形態で説明した補強部材が設けられていてもよい。例えば、カテーテル1の外表面や、光照射デバイス2の外表面には、親水性又は疎水性の樹脂からなるコーティングが施されていてもよい。このようにすれば、生体管腔内におけるカテーテル1の滑り性を向上できる。また、カテーテル1のルーメン110L内における光照射デバイス2の滑り性を向上できる。また、ヘパリンなどの抗血栓性材料をカテーテル1の外表面や、光照射デバイス2の外表面にコーティングしてもよい。このようにすれば、出射光(レーザ光)LTの照射によるカテーテル1の内外面や、光照射デバイス2の外面への血栓付着によるレーザ出力の低下を抑制できる。
【0109】
例えば、カテーテル1には、径方向(YZ方向)に拡張可能な拡張部を備えていてもよい。拡張部としては、例えば、柔軟性を有する薄膜からなるバルーンや、素線を網目状にしたメッシュ体を用いることができる。拡張部は、シャフト110において、光透過部139の先端側と、光透過部139の基端側と、の少なくとも一方に設けられ得る。このようにすれば、生体管腔内におけるカテーテル1の位置決めの後、拡張部を拡張することによって、生体管腔内においてカテーテル1を固定することができる。また、拡張部としてバルーンを用いれば、光照射箇所における血流を遮断することができるため、血流による光の遮断を抑制できる。例えば、カテーテル1は、ルーメン110Lとは異なる複数のルーメンを有する、マルチルーメンカテーテルとして構成されていてもよい。
【0110】
例えば、カテーテル1の先端チップ120の内表面120iと、光照射デバイス2の先端チップ220の外表面とを磁性体によって構成し、互いに引き寄せあう構成としてもよい。このようにすれば、
図4に示すように、カテーテル1に光照射デバイス2を挿入し、先端チップ220を先端チップ120に押し当てた状態を容易に維持できる。
【0111】
例えば、光照射デバイス2の本体部210内における、光伝達部250と、延伸部262と、補強部材272との配置は、任意に変更できる。例えば、最も太径の部材(
図2の例では光伝達部250)を、本体部210の中心に配置してもよい。例えば、光伝達部250と、延伸部262と、補強部材272とを等間隔に配置してもよい。例えば、本体部210内には、流体ルーメンやデバイスルーメンを形成するためのインナーシャフトをさらに有していてもよい。例えば、本体部210内の封止部材271は、省略してもよい。
【0112】
[変形例2]
上記第1~13実施形態では、光透過部139,139H、及び、光照射部239,239Kの構成の一例を示した。しかし、光透過部139,139H、及び、光照射部239,239Kの構成は種々の変更が可能である。例えば、光照射部239は、本体部210の肉厚部に埋設されていてもよい。この場合であっても、本体部210を光透過性材料により形成するか、本体部210のうち光照射部239を覆う部分を薄肉に形成することによって、光照射部239からの光を外部に照射可能とできる。
【0113】
例えば、光透過部139を、放射線不透過性を有する材料により構成することで、光透過部139と、第1マーカー部131,132とを一体に構成してもよい。同様に、クラッド250clの少なくとも先端部(光照射部239)を、放射線不透過性を有する材料により構成することで、光照射部239と、第2マーカー部231,232とを一体に構成してもよい。このようにすれば、カテーテル1や光照射デバイス2を構成する部品点数を削減し、カテーテル1や光照射デバイス2の製造工数を減らすことができる。
【0114】
例えば、カテーテル1において、光透過部139は、シャフト110の一部分を薄肉化することにより形成されてもよい。例えば、カテーテル1のシャフト110を光透過性樹脂により形成することによって、シャフト110の全体が光透過部139として機能する構成としてもよい。このようにすれば、カテーテル1を構成する部品点数を削減できる。例えば、光透過部139の少なくとも一方を、シャフト110に形成された切欠き(シャフト110の内外を連通する貫通孔)として形成してもよい。このようにすれば、光透過部139を簡単に形成できる。
【0115】
例えば、カテーテル1において、光透過部139が設けられる軸線O方向(X軸方向)の範囲や周方向(YZ軸方向)の範囲については任意に変更できる。具体的には、例えば、軸線O方向において光透過部139が設けられる範囲を、
図1で例示した範囲よりも広範囲にしてもよい。そうすれば、広範囲な光透過部139の中で光照射デバイス2(光照射部239)を移動させることで、光の照射範囲を容易に変更することができる。このため、生体内において対象組織(がん細胞)が広範囲にわたり存在する場合であっても、生体管腔内におけるカテーテル1の位置を動かす必要がなく、容易に手技を行うことができる。同様に、例えば、第12実施形態の光照射デバイス2Kにおいて、光照射部239Kが設けられる軸線O方向(X軸方向)の範囲や周方向(YZ軸方向)の範囲については任意に変更できる。具体的には、例えば、軸線O方向において光照射部239が設けられる範囲を、
図18で説明した範囲よりも広範囲にしてもよい。そうすれば、光の照射範囲を広くすることができるため、生体内において対象組織(がん細胞)が広範囲にわたり存在する場合であっても、容易に手技を行うことができる。
【0116】
例えば、カテーテル1には、さらに、光透過部139の先端側や、光透過部139の基端側等、任意の位置に配置された別途のマーカー部を備えていてもよい。例えば、光照射デバイス2には、さらに、光照射部239の先端側や、光照射部239の基端側等、任意の位置に配置された別途のマーカー部を備えていてもよい。カテーテル1や、光照射デバイス2のマーカー部の形状は任意に定めることができ、周方向(YZ方向)の全体又は一部分に延びる形状でもよく、軸線O方向(X軸方向)に延びる形状でもよく、シャフトや本体部の周囲を取り囲む形状でもよい。また、カテーテル1の先端チップ120や、光照射デバイス2の先端チップ220がマーカー部として構成されていてもよい。
【0117】
[変形例3]
上記第1~13実施形態では、検出部260,260A,260Bの構成の一例を示した。しかし、検出部260,260A,260Bの構成は種々の変更が可能である。例えば、検出部260の検出素子261は、本体部210の肉厚部に埋設されていてもよい。この場合であっても、本体部210のうち検出素子261を覆う部分を薄肉に形成することによって、検出素子261による検出精度の低下を抑制できる。このようにすれば、光照射デバイス2の安全性をより向上できる。例えば、検出部260には、光ファイバドップラセンサ(FOD)以外の構成を採用してもよい。この場合、検出部260は、例えば、生体組織を伝搬して反射した超音波を受信する超音波探触子(超音波振動子、圧電体、超音波送受信素子、超音波素子とも呼ばれる)と、超音波探触子と検出装置4とを接続する導線とにより構成されてもよい。
【0118】
[変形例4]
上記第1~13実施形態のカテーテル1,1F~1J、及び、光照射デバイス2,2A~2G,2K,2Mの構成、及び上記変形例1~3のカテーテル1,1F~1J、及び、光照射デバイス2,2A~2G,2K,2Mの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2,第3実施形態のいずれかで説明した検出部260と、第4~第6実施形態のいずれかで説明した方向性マーカー部280と、第7,第8のいずれかで説明した第2マーカー部231,232と、を組み合わせて光照射デバイス2を構成してもよい。例えば、第9~第11実施形態のいずれかで説明したカテーテル1と、第12,第13実施形態のいずれかで説明した光照射デバイス2と、を組み合わせて光照射システムを構成してもよい。
【0119】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0120】
1,1F~1J…カテーテル
2,2A~2G,2K,2M…光照射デバイス
3…光源
4…検出装置
110…シャフト
120…先端チップ
131,131G,131H,132,132G,132H…第1マーカー部
139,139H…光透過部
140…コネクタ
141…接続部
142…羽根
180…温度センサ
210…本体部
220…先端チップ
231,231G,232,232G…第2マーカー部
239,239K…光照射部
240…コネクタ
241…接続部
242…羽根
250…光伝達部
250,250K…光伝達部
250c…コア
250cl…クラッド
260,260A,260B…検出部
260c…コア
260cl…クラッド
261,261A,261B…検出素子
262…延伸部
271…封止部材
272,272M…補強部材
280,280D,280E…方向性マーカー部