(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ビオトープ実験施設及び水生生物の保全施設
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20250124BHJP
E02B 5/00 20060101ALI20250124BHJP
E03B 3/06 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
A01G25/00 601Z
E02B5/00 Z
E03B3/06
(21)【出願番号】P 2021043997
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】上條 隆志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 博光
(72)【発明者】
【氏名】稲留 康一
(72)【発明者】
【氏名】長 千佳
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-308927(JP,A)
【文献】特開2006-060958(JP,A)
【文献】特開2004-081070(JP,A)
【文献】特開2003-143942(JP,A)
【文献】特開2008-155190(JP,A)
【文献】特開2012-165684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
E02B 5/00
E03B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
池と、
前記池からの池水が供給部から排出部に向けて流される池水用水路と、
該池水用水路に設けられ、池水が溜められる実験池と、
該実験池内に設けられ、当該実験池の水位を調整する水位調整手段と、
池水を前記排出部から前記供給部へ給水して前記池に循環させる池水循環系と、
上記池の水位を調節する池水位調節手段と、
前記池水用水路に池水を供給する取水手段と、
上記池水用水路から前記実験池への流入池水量を調整する流入量調整手段とを備え、
上記排出部は、上記池水位調節手段及び前記水位調整手段を介して排出される池水、並びに上記池水用水路から放水される余剰の池水が流入し、上記池水循環系へ給水させる給水源であることを特徴とするビオトープ実験施設。
【請求項2】
前記池水用水路には前記実験池が複数設けられ、それらの前記実験池が相互に異なる深さで掘削形成されることを特徴とする請求項1に記載のビオトープ実験施設。
【請求項3】
前記池水用水路に井戸水を給水する井戸水給水系を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のビオトープ実験施設。
【請求項4】
請求項1~3いずれかの項に記載のビオトープ実験施設の前記池が、水生生物の保全を必要とする池で構成されることを特徴とする水生生物の保全施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物多様性の保全に役立つ、動物や植物の生息・生育環境を研究するのに好適なビオトープ実験施設、及び当該ビオトープ実験施設を活用し、環境保全に利用可能な水生生物の保全施設に関する。
【背景技術】
【0002】
動物や植物は本来自然環境の中で生息・生育する。植物の生育を補助するシステムに関する技術として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1の「ヨシの育苗システム及びそれを用いた育苗方法並びにヨシの移植方法」は、苗床と、該苗床に水を供給する給水設備と、発芽発根用貯水池とから概ね構成してある。苗床は、その底部に苗床資材を敷設するとともに該苗床資材の天端よりも水位が高くなるように水を張って構成してある。給水設備は、水源としての河川から導水された水を貯水する開放型貯水槽と、該開放型貯水槽内と苗床内とを連通させる給水管とから構成してあり、苗床及び発芽発根用貯水池内では、かかる給水設備から供給された水が流水するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地球自然環境保護の一環として、多様な生物の保護が唱えられており、生物多様性の保全に役立つ、動物や植物の生息・生育環境を研究するための実験施設の開発が望まれている。
【0005】
また、研究成果の反映などによって、生物多様性に適合する環境保全を実現することが望まれる。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、生物多様性の保全に役立つ、動物や植物の生息・生育環境を研究するのに好適なビオトープ実験施設、及び当該ビオトープ実験施設を活用し、環境保全に利用可能な水生生物の保全施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるビオトープ実験施設は、池からの池水が供給部から排出部に向けて流される池水用水路と、該池水用水路に設けられ、池水が溜められる実験池と、該実験池内に設けられ、当該実験池の水位を調整する水位調整手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
池水を前記排出部から前記供給部へ給水して前記池に循環させる池水循環系と、上記池の水位を調節する池水位調節手段と、前記池水用水路に池水を供給する取水手段と、上記池水用水路から前記実験池への流入池水量を調整する流入量調整手段とを備え、上記排出部は、上記池水位調節手段及び前記水位調整手段を介して排出される池水、並びに上記池水用水路から放水される余剰の池水が流入し、上記池水循環系へ給水させる給水源であることを特徴とする。
【0009】
前記池水用水路には前記実験池が複数設けられ、それらの前記実験池が相互に異なる深さで掘削形成されることを特徴とする。
【0010】
前記池水用水路に井戸水を給水する井戸水給水系を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る水生生物の保全施設は、上記ビオトープ実験施設の前記池が、水生生物の保全を必要とする池で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるビオトープ実験施設にあっては、池の動物や植物の生息・生育環境を利便性よく研究することができ、生物多様性の保全に役立たせることができ、また、本発明に係る水生生物の保全施設にあっては、当該ビオトープ実験施設の活用により、好適に水生生物に対する環境保全を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るビオトープ実験施設及び水生生物の保全施設の好適な一実施形態を示す構成図である。
【
図2】
図1の施設に備えられる水位調整手段を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示した水位調整手段の側断面図である。
【
図4】
図1に示した施設に備えられる実験池の高さ位置関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかるビオトープ実験施設の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係るビオトープ実験施設1は、
図1に示すように、池2を備えて構成される。池2は、自然に創成されたものであっても、人工的に造成されたものであってもよい。
【0016】
池2の端2aには、池2から排出される池水を回収する排出部となる排出枡3が設けられる。排出枡3は例えば、池2に設定される管理水位のうち最低水位よりも低い位置に設けられる。
【0017】
排出枡3と池2との間には、池2の水位を調節する池水位調節手段として、開度調整自在な排水堰4が設けられる。管理水位は、池2の池水量を管理するものである。池水は、水位調節のために排水堰4が開かれることで排水され、排出枡3に流れ込んで回収される。
【0018】
池2には、池水を排出枡3から供給部となる供給枡7へ給水して池2に循環させる池水循環系5が備えられる。
【0019】
池水循環系5は、排出枡3に設けられ、排出枡3内に溜められた池水を給水する給水ポンプ6と、池2の端2bに設けられ、給水ポンプ6から送られる池水が溜められる供給枡7と、供給枡7と給水ポンプ6との間をつないで池水を送る循環配管8と、供給枡7に設けられ、供給枡7内の池水を池2に還流する還流ポンプ9とから構成される。
【0020】
還流ポンプ9による供給枡7から2池への池水の循環給水は、おおよそ排出枡3とは反対側の池2の端2bに向けて給水することが好ましい。従って、排出枡3は、池水循環系5が池水を循環するときの給水源となる。
【0021】
本実施形態における排出枡3及び供給枡7とはそれぞれ、ビオトープ実験施設1において池水の排出がなされる場所及び池水の供給がなされる場所を言う。これら排出枡3及び供給枡7は、例えば池2が傾斜地にある場合には、傾斜に沿って、排出枡3が低い位置に設置され、供給枡7が高い位置に設置される。
【0022】
池2の側方には、池2に隣接させて、池2の端2bに設けた供給枡7の近隣に供給側端部10aが位置づけられ、排出側端部10bが排出枡3につなげられて、池水用水路10が設けられる。
【0023】
池水用水路10は、地表面から掘り下げられ、雨水が降りそそぐなど、大気開放の水路として形成してもよいし、暗渠としてもよい。
【0024】
供給枡7には、供給枡7内の池水の一部を取水して池水用水路10に供給するための取水手段として、取水ポンプ11が設けられる。池水用水路10には、供給側端部10aから、取水ポンプ11によって池水の一部が取水され供給される。
【0025】
池水用水路10は、供給枡7から取水された池水が供給枡7側(供給側端部10a)から排出枡3側(排出側端部10b)へ向けて自然流下して、排出枡3に流れ込むように、スロープ状の水路として形成される。
【0026】
池水用水路10を流れる池水は、後述する実験池12a~12cに供給される他、余剰の池水は、排出枡3へ放水される。
【0027】
池水用水路10には、分岐流路13を介して、取水された池水が溜められる実験池12a~12cが設けられる。図示例では、実験池12a~12cは3つ設けられているが、1つであってもよいことはもちろんである。
【0028】
実験池12a~12cは、池2の周辺の地盤を掘削して形成した穴に池水を溜めることで形成される。
【0029】
実験池12a~12cと池水用水路10との間の分岐流路13には、池水用水路10から実験池12a~12cへの流入池水量を調整する流入量調整手段として、開度調整自在な堰14が設けられる。
【0030】
実験池12a~12cには、実験池12a~12cの水位を調整する水位調整手段15が設けられる。水位調整手段15は、
図2及び
図3に示すように、実験池12a~12cの底部に埋設される排出管16の取水口16aに設置される。
【0031】
水位調整手段15は、上向きに開口された取水口16aを覆って、下通水孔17aを有する底部プレート17を排出管16に取り付け固定し、底部プレート17に、中心位置から立ち上げてネジシャフト18を回転自在に設けると共に、ネジシャフト18の両側位置から立ち上げて一対のガイドロッド19を設け、そして、これらガイドロッド19が回り止めとなるように挿通されると共に、ネジシャフト18と螺合するナット20が固定され、底部プレート17と向かい合わせで、上通水孔21aを有する天端プレート21を設け、天端プレート21と底部プレート17との間に、上下方向に伸縮自在な不透水性の蛇腹状スリーブ22を設け、天端プレート21の上に、ガイドロッド19及びネジシャフト18を貫通させて、異物が排出管16に流れ込むことを防ぐ半球状網体(
図2では図示省略)23を設け、一対のガイドロッド19の上端を、底部プレート17を挟むようにして排出管16の外側に取り付け固定された帯状U字フレーム24に連結固定し、ネジシャフト18の上端を、U字フレーム24を貫通した上方で回転操作ハンドル25に連結し、さらに、U字フレーム24の外側に、蛇腹状スリーブ22周りに異物が溜まって水位調整手段15が作動不良になることを防ぐために、当該蛇腹状スリーブ22を包囲して筒状網体26を設けることによって構成される。
【0032】
実験池12a~12cの水位は、天端プレート21の上通水孔21aの位置によって決定され、当該位置よりも上方の池水は、上通水孔21aから蛇腹状スリーブ22内に流れ込み、底部プレート17の下通水孔17aを通じて排出管16へ排水される。
【0033】
上通水孔21aの位置を決める天端プレート21は、手動による回転操作ハンドル25の回転操作でネジシャフト18を回転させると、一対のガイドロッド19で回り止めされた天端プレート21が蛇腹状スリーブ22の伸縮を伴ってネジシャフト18の高さ方向に上下移動される。
【0034】
天端プレート21の上下移動によって、実験池12a~12cの水位を調整する上通水孔21aの位置が上下に移動され、実験池12a~12cの水位が調整される(
図3中、水位調整範囲H参照)。
【0035】
水位調整手段15は、水位調整のために天端プレート21を上下移動させる際、蛇腹状スリーブ22が伸縮するので、底部プレート17の高さ位置を変化させる必要はなく、水位調整手段全体を上下させなければならない構造と異なり、実験池12a~12cの底部を必要以上に深く掘削しなくてもよい。
【0036】
ネジシャフト18の回転は、回転操作ハンドル25を手動で操作することなく、遠隔操作されるモータ駆動方式としてもよい。
【0037】
排出管16は、
図1に示すように、排出枡3から延設された排水配管27と会所28でつながれ、水位調整手段15によって実験池12a~12cから排出された池水が排出枡3に向けて排出され回収される。
【0038】
本実施形態にあっては、池水用水路10には、並列に複数の分岐流路13がつながれ、これら分岐流路13を介して、複数の実験池12a~12c(第1~第3実験池)が並列に設けられる。
【0039】
これら実験池12a~12cは、動物や植物の生息・生育環境に関し、異なる環境を創出するために、供給枡7から排出枡3に向かってスロープ状の池水用水路10に沿って、地表面から、相互に異なる深さで掘削形成される。
【0040】
具体的には、
図4に示すように、例えば第1実験池12aの掘削深さD1に対し、第2実験池12bの掘削深さD2が深く(D2>D1)設定され、また、第1及び第2実験池12a,12bの掘削深さD1,D2に対し、第3実験池12cの掘削深さD3がさらに深く(D3>D2>D1)設定される。
【0041】
図示例では、各分岐流路13に実験池12a~12cを一つずつ設ける場合が示されているが、一本の分岐流路13を枝分かれさせて複数の実験池を設けるようにしても良く、この場合、それら実験池の掘削深さは、同じにしても異ならせても良い。
【0042】
本実施形態に係るビオトープ実験施設1にはさらに、井戸水を井戸29から汲み上げて給水し、池2や実験池12a~12cの水温を調整するための井戸水給水系30が設けられる。
【0043】
井戸水給水系30は、例えば供給枡7の近くに造成される井戸29と、井戸29から井戸水を汲み上げる汲み上げポンプ31と、開閉弁32を有すると共に汲み上げポンプ31に接続され、開閉弁32が開かれることにより、井戸水を池2や池水用水路10の供給側端部10a側、各分岐流路13に給水する給水配管33とから構成される。
【0044】
また、付帯設備として、各実験池12a~12cや池2の適所に、水温計34や管理・観察用カメラ35が備えられる。
【0045】
水温計34で検出される水温に応じて、井戸水給水系30の汲み上げポンプ31の運転・停止と開閉弁32の開閉を行うようにし、汲み上げポンプ31を運転して井戸水を供給することで、各所の水温を調整することができる。
【0046】
具体的には、夏季には、水温が高いときに井戸水を供給して水温を下げ、他方、冬季には、水温が低いときに井戸水を供給して水温を上げる。
【0047】
本実施形態に係るビオトープ実験施設1の作用について説明すると、池2は、生物多様性を総合的に反映した自然環境を提供し、様々な動物や植物が生息・生育する。池2は通常、排水堰4の開閉によって水位が調節され、降雨時などを含め、余剰の池水は池2から排出されて、排出枡3に回収される。
【0048】
池水循環系5は、排出枡3の給水ポンプ6と供給枡7の還流ポンプ9を運転することにより稼働される。池水循環系5を稼働すると、排出枡3内の池水は、給水ポンプ6により供給枡7へ給水されると共に、供給枡7内の池水が還流ポンプ9により池2に循環供給される。供給された池水量の増分は、排水堰4を開いておくことで、排出枡3に回収される。池水循環系5により池水を池2に循環させながら、当該池2の池水を順次入れ替えることができる。
【0049】
実験池12a~12cに池水を溜める際には、分岐流路13の堰14を開くと共に取水ポンプ11を運転し、供給枡7から池水用水路10へ池水を供給し、池水用水路10を流れる池水を分岐流路13から実験池12a~12cへと導く。実験池12a~12cには、池水が流入して溜められる。従って、実験池12a~12cの池水は、池2の池水と水質が同じである。実験池12a~12cの水位は、水位調整手段15の天端プレート21の高さ位置によって調整され、余剰の池水は、排出管16から排出枡3に向けて排水されて回収される。
【0050】
池水を溜めた後の実験池12a~12cの管理運用では、堰14の開度を調整することで、実験池12a~12cへの池水流入量が調整される。実験池12a~12cにおいても、堰14の開放に伴う流入池水量の増分は、水位調整手段15から排出管16を通じて排出枡3へ排出され回収される。水位調整手段15の天端プレート21を最も低い高さ位置にすれば、実験池12a~12cからほぼすべての池水を抜くことができる。
【0051】
実験池12a~12cは、池2から特定の動物を移したり、特定の植物を移植したりし、これにより、個別的な環境を作り出して、研究に役立てることができる。
【0052】
実験池12a~12cの水位を水位調整手段15で調整できるので、生息・生育させる各種生物それぞれに適合する水深を実験池12a~12cに設定することができ、自在性に富んだ実験池12a~12cとすることができる。また、複数の実験池12a~12cを備えていて、同時に複数の研究を進めることができる。
【0053】
複数の実験池12a~12cは相互に異なる深さで掘削形成されているので、これら複数の実験池12a~12cを使用し、異なる多様な環境の下で、動物や植物の生息・生育について実験し研究することができる。
【0054】
池水用水路10への供給枡7からの給水は、取水ポンプ11の運転・停止によって切り替えることができ、池水を池水用水路10に常時流すようにしても、必要なときにだけ流すようにしてもよい。
【0055】
池水用水路10を流れて、実験池12a~12cに導入されずに放水される余剰の池水は、給水源である排出枡3に流入するので、池水を無駄にすることなく有効利用することができる。
【0056】
開閉弁32を備える井戸水給水系30から井戸水を、池2や池水用水路10、分岐流路13へ適宜に供給できるので、各所の水温を個々に調整することができる。
【0057】
本実施形態に係るビオトープ実験施設1は、池2からの池水が供給枡7から排出枡3に向けて流される池水用水路10と、池水用水路10に設けられ、池水が溜められる実験池12a~12cと、実験池12a~12c内に設けられ、当該実験池12a~12cの水位を調整する水位調整手段15とを備えていて、池水の実験池12a~12cにより、池2の動物や植物の生息・生育環境を様々な仕方で利便性よく研究することができ、生物多様性の保全に役立たせることができ、これにより、開発行為により発生する環境への影響の補償として代償資源を提供するという代償ミティゲーションに活用することができる。
【0058】
本実施形態に係るビオトープ実験施設1は、池2に生息・生育する水生生物の保全施設として利用することができる。
【0059】
すなわち、水生生物の保全を必要とする池を、上記
図1に示したビオトープ実験施設1における上記池2とすることで、水生生物の保全施設1が構成される。
【0060】
実験池12a~12cには、池水用水路10を介して、水生生物の保全を要する池2から池水が導入されると共に当該池2から生物が移され、実験池12a~12cを、水生生物の保全に関するデータの収集設備として活用することができる。これにより、ビオトープ実験施設1は、水生生物の保全を必要とする池2に生息・生育する水生生物の保全施設1と成すことができる。
【0061】
上記実施形態に限らず、発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはもちろんである。例えば、排水堰4及び堰14は、開度調整自在としたが、扉等の開度によって調節可能とする構成だけでなく、流路の底部から所定高さまで高さ位置の調節が可能な壁状の堰部材を設ける構成であってもよい。また、還流ポンプ9や取水ポンプ11は必須ではなく、供給枡7と池2の端2b及び池水用水路10の供給側端部10aが直接つながっていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 ビオトープ実験施設、水生生物の保全施設
2 池
3 排出枡
4 排水堰
5 池水循環系
7 供給枡
10 池水用水路
11 取水ポンプ
12a~12c 実験池
14 堰
15 水位調整手段
30 井戸水給水系