(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】練習用箸
(51)【国際特許分類】
A47G 21/10 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
A47G21/10 A
(21)【出願番号】P 2023184662
(22)【出願日】2023-10-27
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503301347
【氏名又は名称】株式会社ケイジェイシー
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】崔 鍾植
(72)【発明者】
【氏名】海藤 優希
(72)【発明者】
【氏名】若林 彩咲
(72)【発明者】
【氏名】右田 誠
(72)【発明者】
【氏名】平林 明
(72)【発明者】
【氏名】丁子 雄希
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-118920(JP,A)
【文献】特開2017-046851(JP,A)
【文献】特開2013-048843(JP,A)
【文献】特表2013-500795(JP,A)
【文献】特開2009-291607(JP,A)
【文献】特開平10-228234(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186873(JP,U)
【文献】実開昭56-069084(JP,U)
【文献】米国特許第09808104(US,B1)
【文献】国際公開第2013/091134(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/004290(WO,A1)
【文献】韓国公開実用新案第20-2009-0001430(KR,U)
【文献】中国実用新案第215126963(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101991331(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定箸と、可動箸と、前記固定箸の後端寄りに設けられ前記可動箸の方向に延びる連結体とを備える練習用箸であって、
前記連結体は、第1方向に切り欠かれた第1溝部と該第1方向と交差する第2方向に前記第1溝部から切り欠かれた第2溝部とを含
み、前記第1溝部及び前記第2溝部からなるC形状又はL形状の連結溝を有し、
前記可動箸は、前記可動箸の後端寄りに設けられ、長辺と短辺とを有する開口部と、該開口部に設けられ前記短辺方向に伸びる軸部とを有し、
前記開口部の前記長辺の側面に一対のリブが形成されており、
前記軸部は、前記連結溝の前記第1溝部から前記第2溝部に挿入される練習用箸。
【請求項2】
前記第2溝部は、前記軸部の直径よりも狭い幅を有する狭幅部を含み、前記軸部は、前記狭幅部を超えて挿入される請求項1に記載の練習用箸。
【請求項3】
前記連結体の先の前部と前記開口部の前部とが当接した際に、前記固定箸の箸先と前記可動箸の箸先とが重なり合う、請求項1に記載の練習用箸。
【請求項4】
前記可動箸は、前半部と後半部とからなり、
前記後半部は前記開口部を有するとともに、前記後半部の先端側にボールジョイントを有し、
前記前半部は、その後端側に前記ボールジョイントを受ける受け部を有している、請求項1に記載の練習用箸。
【請求項5】
前記固定箸は、前記連結体の先端側に、親指の付け根に当接する親指ストッパ、及び親指の指腹を支える親指サポートを有し、
前記親指ストッパの当接面は、親指の付け根側に膨らんだ曲面であり、
前記親指サポートの当接面は、親指の第1関節を超える長さである、請求項1に記載の練習用箸。
【請求項6】
前記固定箸は、前記親指サポートの先端側に、薬指を添える薬指フックを有し、
前記薬指フックは、凸状に形成された第1フックとそれに隣り合う第2フックとを含む、
請求項5に記載の練習用箸。
【請求項7】
前記可動箸は、前記開口部の先端側に、人差し指及び中指を支える人差し指・中指サポートを有し、
前記人差し指・中指サポートは、人差し指と中指とで挟まれる細長いサポート板を含む、請求項1に記載の練習用箸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正しい箸の使い方を練習するための又は理想的な箸の使い方に矯正するための練習用箸に関する。
【背景技術】
【0002】
箸は、特に東南アジアで食事用具として広く利用されている。しかし、箸に慣れていない子供又は箸を使い慣れていない欧米人にとっては箸を正しく使うことは難しい。また怪我もしくは障害によって利き手を逆にしなければならない人もいる。このため、特許文献1に開示されるような、箸の正しい操作、特に正しい箸の持ち方を練習するための練習用箸が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された練習用箸では、固定箸から伸びて設けられた連結体に、円形ないし半円形状の切り欠き部が形成されており、可動箸には断面が円形の軸部が形成されており、切り欠け部に軸部が圧入されて係止されている。これにより、可動箸が連結体との接続部(軸部)を支点にして、可動箸の箸先が固定箸の箸先に接近したり、離間したりするように回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された練習用箸では、固定箸と可動箸とが圧入されているだけであるので、製造精度のバラつきで切り欠け部と軸部とが簡単に外れてしまったり、逆に切り欠け部と軸部とが外れなかったりする問題があった。さらに、適切な寸法で製造されていても、数年の使用により切り欠け部と軸部とが簡単に外れる問題があった。また、に切り欠け部と軸部との隙間(クリアランス)のよって、可動箸の箸先と固定箸の箸先とが正しく噛み合わず、箸先同士がズレて交差してしまうこともあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、可動箸が固定箸に対して正確に回転する練習用箸を提供する。
【0007】
本実施形態の練習用箸は、固定箸と、可動箸と、固定箸の後端寄りに設けられ可動箸の方向に延びる連結体とを備える。その連結体は、第1方向に切り欠かれた第1溝部と該第1方向と交差する第2方向に第1溝部から切り欠かれた第2溝部とを含む連結溝を有する。また、可動箸は、可動箸の後端寄りに設けられた長辺と短辺とを有する開口部と、該開口部に設けられ短辺方向に伸びる軸部とを有する。そして、軸部は、連結溝の第1溝部から第2溝部に挿入される。
【0008】
第2溝部は、軸部の直径よりも狭い幅を有する狭幅部を含み、軸部が狭幅部を超えて挿入されることが好ましい。
また開口部の長辺の側面に一対のリブが形成されることが好ましい。
また連結体の先の前部と開口部の前部とが当接した際に、固定箸の箸先と可動箸の箸先とが重なり合う。
可動箸は、前半部と後半部とからなり、後半部は開口部を有するとともに、後半部の先端側にボールジョイントを有し、前半部は、その後端側にボールジョイントを受ける受け部を有していることが好ましい。
【0009】
固定箸は、連結体の先端側に、親指の付け根に当接する親指ストッパ、及び親指の指腹を支える親指サポートを有し、親指ストッパの当接面は親指の付け根側に膨らんだ曲面であり、親指サポートの当接面は、親指の第1関節を超える長さである。
固定箸は、親指サポートの先端側に、薬指を添える薬指フックを有し、薬指フックは、凸状に形成された第1フックとそれに隣り合う第2フックとを含む。
また可動箸は、開口部の先端側に、人差し指及び中指を支える人差し指・中指サポートを有し、人差し指・中指サポートは、人差し指と中指とで挟まれる細長いサポート板を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の練習用箸は、長い期間使用されても可動箸が固定箸に対して正確に回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は第1実施形態に係る練習用箸の全体構成を示した斜視図であり、(B)は練習用箸の背面図であり、(C)は練習用箸の正面図である。
【
図2】(A)は箸を閉じた状態と開いた状態と連結体付近の断面構造を示した図であり、(B)は可動箸の開口部の周辺を示した側面図であり、(C)は連結体の拡大断面図である。
【
図3】(A)は右手で親指ストッパ20、親指サポート30を触った状態を示した図である。(B)は親指ストッパ20、親指サポート30、薬指フック40の拡大図である。(C)は(B)のC-C断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る練習用箸の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る練習用箸を、図を参照しながら詳しく説明する。また各図面では部材を強調するため実際の寸法通りに描かれていないことがある。
【0013】
<<第1実施形態>>
<練習用箸の構造概要>
図1(A)は、第1実施形態に係る練習用箸100の斜視図で、(B)はその背面図で、(C)はその正面図である。
図1(A)、(B)及び(C)に示されるように、第1実施形態に係る練習用箸100は、固定箸10と、可動箸70と、親指ストッパ20、親指サポート30、薬指フック40、人差し指・中指サポート50、及び連結体60とを有している。
【0014】
図1に示されるように、固定箸10の後端寄りに連結体60があり、その箸先(先端)側に順に、親指ストッパ20、親指サポート30及び薬指フック40が配置される。また可動箸70の後端寄りに連結体60が挿入される開口部77があり、の箸先側に人差し指・中指サポート50が配置される。
【0015】
固定箸10は、親指及び薬指によって固定され、可動箸70は中指と人差指との指先で把持され、固定箸10に対して矢印に示されるように可動する。固定箸10及び可動箸70の断面は、四角形、八角形、円形もしくは楕円形のいずれであってもよい。第1実施形態の固定箸10及び可動箸70は、後端側では楕円形の断面であり、箸先(先端)側に行くにつれて円形の断面になっていく形状である。また固定箸10及び可動箸は、先端に向かって細くなるようにテーパになっている。また練習用箸100の長さは大人用が20-24cm、子供用が16-19cmであることが好ましい。
【0016】
固定箸10又は可動箸70は、木製、竹製、金属製又はプラスチック製であればよい。特に加工のし易さ及び量産性を考えて、プラスチック製が好ましい。プラスチック製の材料に制限はないが、例えばABS樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、又はポリエチレンテレフタラート(PET)が好ましい。第1実施形態の固定箸10及び可動箸70は、食物が箸から落ちにくいように多数の凹みからなるノッチ19が設けられている。固定箸10及び可動箸70は、ノッチ19がなくてもよい。
【0017】
固定箸10には、親指ストッパ20及び親指サポート30と、薬指フック40とが、それぞれ固定箸10の箸先から差し込むように取り付けられている。固定箸10は箸先(先端)に向かって細くなっているので、親指ストッパ20及び親指サポート30と、薬指フック40とは容易に挿入される。親指ストッパ20及び親指サポート30と、薬指フック40とが別体であると、指の位置に合わせて調整することが可能となる。第1実施形態では、親指ストッパ20と親指サポート30とが一体化されているが、別々であってもよい。また、固定箸10に、親指ストッパ20、親指サポート30及び薬指フック40が一体化されていてもよい。
【0018】
可動箸70には、人差し指・中指サポート50が、可動箸70の箸先から差し込むように取り付けられている。可動箸70と人差し指・中指サポート50とが一体成型されていてもよい。
【0019】
なお、第1実施形態では、親指ストッパ20、親指サポート30及び薬指フック40、人差し指・中指サポート50は、位置と方向とが一定に位置決めされるように、
図2(A)に示されるように、固定箸10に嵌め込み溝11、12が形成され、また可動箸70に嵌め込み溝72が形成されている。
【0020】
第1実施形態の連結体60は、固定箸10の後端寄りに一体に設けられているが、親指ストッパ20等と同様に。定箸10の箸先から差し込むように取り付けられてもよい。
【0021】
親指ストッパ20、親指サポート30、薬指フック40及び人差し指・中指サポート50は、量産性の観点からプラスチック製が好ましい。プラスチックは、ABS、PP、PS、PET、シリコーンラバー等が挙げられる。指先が当接する親指サポート30、薬指フック40及び人差し指・中指サポート50は、特に弾力性のあるシリコーンラバーで製造されることが好ましい。また親指ストッパ20、親指サポート30、薬指フック40及び人差し指・中指サポート50は、指が滑らないように、小さな凹凸若しくは細かな溝が多数あるざらざらした表面加工があることが好ましい。
【0022】
<連結体60の構造>
連結体60について詳述する。
図2は、実施形態に係る連結体60を説明する図であり、
図2(A)の右図は、可動箸70が閉じた状態を示した、固定箸10と可動箸70との断面図であり、その左図が可動箸70が開いた状態を示した、固定箸10と可動箸70との断面図である。
図2(B)は、可動箸70の開口部の周辺の拡大図であり、
図2(C)は、連結体60の連結溝65の周辺の拡大断面図である。
【0023】
図2(A)及び(B)に示されるように、可動箸70は、その後端寄りに開口部77を有している。開口部77は、
図2(B)に示されるように、側面方向から見ると、短辺(前部71、後部73)と長辺(一対の側面74)とを有する貫通孔になっている。また開口部77には、前部71と後部73との間に、短辺方向に伸び一対の側面74を結ぶ軸部75が設けられている。一対の側面74には、それぞれ一対の突起であるリブ79が形成されている。一対のリブ79の幅(Z方向もしくは短辺方向)は、幅WTである。リブ79は側面74から0.05mmから0.2mm程度突出している。
【0024】
連結体60は、固定箸10の後端寄りから可動箸70の先端側に斜めに伸びた柄69を有している。柄69の先には、前部61と後部63とが形成されている。そして前部61と後部63との間に、連結溝65が形成されている。なお柄69は可動箸70の先端側に斜めに伸びている、垂直に伸びていてもよい。
【0025】
柄69の先(前部61及び後部63)の幅(Z方向)は、幅WTであり、開口部77の一対のリブ79でZ方向(短辺方向)が規制されるような構成である。このため、連結溝65と軸部75との間に隙間があっても、固定箸10の箸先と可動箸70の箸先とがZ方向にズレることなく、ちょうど重なり合う。固定箸10の箸端と可動箸70の箸端とがちょうど当接した状態で、
図2(A)の右図に示されるように、連結体60の前部61と開口部77の前部71とが当接する。また、固定箸10と可動箸70とが一番開いた状態は、
図2(A)の左図に示されるように、可動箸70の後端が固定箸10の後端に当接した状態となる。なお、一対のリブ79の面積は、側面74の面積の10パーセント以下であり、リブ79と柄69が当接した状態でも摩擦が小さく、人差し指・中指の弱い力で可動箸70を簡単に可動させることができる。また柄69の根本の幅は幅WTより厚いことが好ましい。
【0026】
図2(C)に示されるように、連結体60の連結溝65は、第1方向(図中のX方向)に切り欠かれた第1溝部651とこの第1方向と交差する第2方向(図中のY方向)に第1溝部651から切り欠かれた第2溝部653とを有する。つまり、連結溝65は、正面から見てC形状又はL形状である。第1溝部651及び第2溝部653は、軸部75の直径ΦRRより0.1mmから0.4mmほど大きい幅RLで形成されている。また、第2溝部653の終端657は、軸部75の半径より0.05mmから0.2mmほど大きい半径で切り欠かれており、その終端657の入り口に軸部75の直径ΦRRより0.1mmから0.4mmほど狭い幅RNを有する狭幅部655が形成されている。つまり軸部75は、狭幅部655を超えて終端657に嵌め込まれる。可動箸70は、終端657に嵌め込まれた軸部75を中心に可動する。なお、練習用箸100を洗う場合には、軸部75が連結溝65から出して可動箸70と固定箸10とを別々に洗うことができる。
【0027】
人差し指・中指で可動箸70を可動させる場合に、軸部75が第2溝部653の終端で
図2(C)中に矢印で示される-X方向に力を与えることがある。終端が円形に切り欠かれているため軸部75からの力が分散し、狭幅部655などの一箇所に力がかかることが少ない。連結溝が第1方向のみで且つプラスチック製の場合には、練習用箸が長年使用されると、狭幅部にかかる長年の摩擦力等により狭幅部が摩耗してしまう。そうすると、軸部と連結溝との隙間が大きくなり、固定箸10の箸先と可動箸70の箸先とがZ方向にズレてしまうことがあった。連結溝65がC形状又はL形状であるため、プラスチック製の練習用箸が長年使用されても、固定箸10の箸先と可動箸70の箸先とがズレることがない。
【0028】
<親指ストッパ20、親指サポート30の構造>
親指ストッパ20、親指サポート30ついて詳述する。
図3は、実施形態に係る親指ストッパ20、親指サポート30を説明する図であり、
図3(A)は、右手で練習用箸100の親指ストッパ20、親指サポート30を触った状態であり、人差し指、中指、薬指及び小指は伸ばした状態を示した図である。つまり
図3(A)では、人差し指、中指、薬指及び小指は、薬指フック40及び人差し指・中指サポート50に触っていない状態である。
図3(B)は、固定箸10に親指ストッパ20、親指サポート30、薬指フック40が取り付けられた拡大図である。
図3(C)は、
図3(B)のC-C断面図である。
【0029】
図3(A)に示されるように、利用者は、右手で固定箸10を親指と人差し指との間の付け根で挟む。その際に、親指と人差し指との間の付け根付近の掌の腹部が親指ストッパ20に当接する。さらに、利用者は親指の指腹を親指サポート30の当接面32に当接させる。これによって、練習用箸100が安定して把持できるよう状態となる。つまり、付け根付近の指腹部及び親指が、親指ストッパ20及び親指サポート30に当接するので、固定箸10が安定して把持され、可動箸70も連結体60でしっかり連結されているので、練習用箸100が安定して把持できる。
【0030】
親指の指腹を親指サポート30の当接面に当接するように親指を曲げると、親指と人差し指との間の付け根付近の掌の腹部は窪んだ形状になる。このため、
図3(B)に示されるように、親指ストッパ20の当接面22(+Y方向側)は、膨らんだ曲面になっていることが好ましい。
【0031】
親指サポート30の当接面32は、
図3(B)及び(C)に示されるように、親指の指腹の曲面に合わせるような曲面を有することが好ましい。特に親指の指腹の+Y方向側(親指と人差し指との付け根方向)の当接面32の曲面部32aが大きくなることが好ましい。親指ストッパ20にかかる-Y方向の力と親指サポート30にかかる+Y方向の力で練習用箸100を支えるようにするためである。親指の指腹に力を入れるのではなく、親指と人差し指との間の付け根と親指との弱い摩擦力で箸を支える習慣を付けやすくするためである。
【0032】
また当接面32の親指の伸びる方向の長さは、親指の第1関節を超える長さにすることが好ましい。特に幼児もしくは子供が初めて箸を使用する場合、又は利き手を逆にする人が箸を使用する場合には、親指に力を入れてしまい且つ親指の第1関節を曲げてしまうことが多い。このため、当接面32が親指の第1関節を超える長さにすることで、幼児もしくは子供は親指の第1関節を曲げることができず、力が入れ難くなる。このため、幼児もしくは子供は正しく箸を使えるようになる。
【0033】
<薬指フック40の構造>
薬指は基本的に固定箸10に添えて固定橋10を固定するだけでよいので、薬指フック40は、固定箸10で薬指を添える箇所が明確になるように設けられる。力が弱い幼児等は、親指ストッパ20だけでは固定箸10を十分に固定できず、可動箸70を開く際(可動する際)に薬指がずれやすいので、特に幼児用には薬指フック40があった方が好ましい。
【0034】
図1(B)及び
図3(B)に示されるように、薬指フック40は大きな第1フック44とその隣の小さな第2フック46とが背面側(-Z方向)に凸状に形成されており、第1フック44と第2フック46との間に薬指1本分の薬指入れ部42が形成される。利用者は薬指を薬指入れ部42に入れることで、第1フック44に薬指の指腹が、第2フック46に薬指の指背が当接するようになる。そして薬指が固定箸10を支え得る。
【0035】
利用者は薬指を薬指入れ部42に入れると、小指も薬指に添えることになる。しかし、第1フック44は小指が当接するような高さ(-Z方向)に伸ばす必要はない。あくまでも薬指は固定箸10に添えるだけでよいからである。また第1フック44で薬指の位置が定まるなら第2フック46は無くてもよい。
【0036】
<人差し指・中指サポート50の構造>
人差し指及び中指薬指は、可動箸70を矢印方向(
図1参照)に可動させる。このため、人差し指・中指サポート50は、
図1(B)又は(C)に示されるように細長いサポート板52を有していることが好ましい。利用者は人差し指の指腹と中指の指腹とでサポート板52を挟み込むようにして、可動箸70を把持することができる。なお、図示していないが、サポート板52を設ける代わりに、人差し指・中指サポート50の胴体53に、凹みを設けて人差し指の指腹と中指の指腹とで把持できるようにしてもよい。
【0037】
<練習用箸の使用概要>
次に、第1実施形態のの練習用箸100の使用方法について説明する。
図1又は
図3に示されるように、まず、親指と人差し指の間の付け根に親指ストッパ20の当接面22に当接させる。そして親指を曲げて親指の指腹を親指サポート30の当接面32に当接する。また、中指の指先と薬指の指先とで人差し指・中指サポート50のサポート板52を挟み込む。さらに薬指の先端部の指腹を薬指フック40の薬指入れ部42に入れる。これによって、固定箸10及び可動箸70を安定して把持することができる。そして、人差し指と中指で可動箸70を矢印(
図1参照)方向に、自在に操作することができる。
【0038】
<<第2実施形態>>
<練習用箸の構造概要>
図4は、第2実施形態に係る練習用箸110の断面図である。第1実施形態と、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付している。同一符号の箇所は、説明を省略する。
【0039】
第2実施形態の練習用箸110は、第1実施形態の練習用箸100とは、可動箸70の代わりに、可動箸80(後半部81、前半部87)が使用されている点で異なっている。後半部81には、軸部75、開口部77等が設けられている点は、第1実施形態の可動箸70と同じである。また前半部87には、人差し指・中指サポート50用の嵌め込み溝72が形成されている点も、第1実施形態の可動箸70と同じである。
【0040】
後半部81には、先端側(-Y方向)にボールジョイント83が形成されている。また前半部87には、後端側にボールジョイント83の受け部85が形成されている。そしてボールジョイント83が受け部85に嵌め込まれている。なお、図示していないが嵌め込みの代わりに受け部85の一部がネジ等で留められることで、ボールジョイント83が受け部85に収納されるようにしてもよい。
【0041】
以上のような構成により、前半部87は、後半部81に対してY軸を中心として回転できるようになっている。一般に、可動箸の箸先を固定箸の箸先に接するように人差し指及び中指を動かすと(
図1の矢印方向)、Y軸を中心として5度から20度程度回転する。それは、可動箸の箸先を固定箸の箸先に接するようにすると、人差し指の移動より中指の移動が大きくなりがちだからである。
【0042】
第2実施形態は、前半部87が後半部81に対してY軸を中心として回転できるようにすることで、Y軸を中心とした回転を練習用箸110で実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本実施形態の練習用箸は、幼児もしくは子供用の練習用箸として、怪我等によって利き手を逆にする人用の練習用箸として、または箸の使い方に不慣れな欧米人等の練習用箸として使うことができる。また、本実施形態の誤った箸の使い方に慣れた大人に対して、矯正用の箸として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
100、110…練習用箸
10…固定箸、 11、12…嵌め込み溝、 19…ノッチ
20…親指ストッパ、 22…当接面
30…親指サポート、 32…当接面、 32a…曲面部
40…薬指フック、 42…薬指入れ部、 44…第1フック、 46…第2フック
50…差し指・中指サポート
60…連結体、 65…連結溝、 651…第1溝部、 653…第2溝部
655…狭幅部、 657…終端、 69…柄
70…可動箸、 71…前部、 73…後部、 74…側面、 75…軸部
77…開口部、 79…リブ
80…可動箸、 81…後半部、 83…ボールジョイント
85…受け部、 87…前半部
【要約】
【課題】 可動箸が固定箸に対して正確に回転する練習用箸を提供する。
【解決手段】 練習用箸(100,110)は、固定箸(10)と、可動箸(70)と、固定箸の後端寄りに設けられ可動箸の方向に延びる連結体(60)とを備える。その連結体(60)は、第1方向に切り欠かれた第1溝部(651)と該第1方向と交差する第2方向に第1溝部から切り欠かれた第2溝部(653)とを含む連結溝(65)を有する。また、可動箸(70)は、可動箸の後端寄りに設けられた長辺と短辺とを有する開口部(77)と、該開口部に設けられ短辺方向に伸びる軸部(75)とを有する。そして、軸部(75)は、連結溝の第1溝部から第2溝部に挿入される。
【選択図】
図2