(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】測量用ピンポール保持装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
G01C15/06 T
(21)【出願番号】P 2021097057
(22)【出願日】2021-06-10
【審査請求日】2024-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507054881
【氏名又は名称】TPホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130007
【氏名又は名称】垣木 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 道明
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3187891(JP,U)
【文献】特開平04-221709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0226941(US,A1)
【文献】特開平10-019571(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108362305(CN,A)
【文献】実開昭60-88215(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンポールの中心軸に対して垂直に固定されるピンポールホルダーと、
前記ピンポールホルダーに嵌装され、前記ピンポールを支持するための第1支持棒及び第2支持棒と、
前記ピンポールを保持した状態でバランスをとるための錘を備え、
前記ピンポールホルダーは、
ピンポールが嵌装されるピンポール保持部と、
前記ピンポール保持部を三角形の1つの頂点として、該三角形の他の2つの頂点の位置に設けられ、前記第1支持棒及び前記第2支持棒を前記三角形で形成される基準面に対して垂直な方向に回転自在に保持する第1支持部及び第2支持部と、
前記錘を連結するため錘連結部と、
を有し、
前記ピンポール保持部と前記錘連結部を結ぶ前記ピンポールホルダーの中心線が前記第1支持部と前記第2支持部の間を通る、
ことを特徴とする測量用ピンポール保持装置。
【請求項2】
前記ピンポールホルダーの上面の前記ピンポール保持部の近傍に水準器を設けたことを特徴とする請求項1に記載の測量用ピンポール保持装置。
【請求項3】
前記ピンポールホルダーは、前記基準面に垂直な方向から見て略Y状であり、前記三角形の3つの頂点がそれぞれ略Y状をなす3つの頂点の近傍に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の測量用ピンポール保持装置。
【請求項4】
前記三角形は不等辺三角形であり、前記ピンポール保持部と前記第1支持部の距離は前記ピンポール保持部と前記第2支持部の距離と異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の測量用ピンポール保持装置。
【請求項5】
前記第1支持棒の長さと前記第2支持棒の長さが異なることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の測量用ピンポール保持装置。
【請求項6】
前記第1支持部及び前記第2支持部は、それぞれ前記第1支持棒及び前記第2支持棒が嵌装される支持棒嵌装孔と、該支持棒嵌装孔の中心軸に対して直交する回転軸を有する支持棒ホルダーと、前記三角形の頂点から外向きに突出するように前記ピンポールホルダーに形成され、前記支持棒ホルダーの前記回転軸を前記基準面に対して平行に保持する軸受部と、前記第1支持棒及び前記第2支持棒を前記支持棒ホルダーに固定する支持棒固定ねじを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の測量用ピンポール保持装置。
【請求項7】
前記錘連結部は、前記錘を回転自在に吊下支持する錘ホルダーと、該錘ホルダーを摺動自在にガイドする錘ガイド棒と、該錘ガイド棒の一端部が嵌合固定される回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するスライド部材と、前記ピンポールホルダーの内部に形成され、前記スライド部材を摺動可能にガイドするガイド溝とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の測量用ピンポール保持装置。
【請求項8】
前記ピンポール保持部は、外径の異なる複数種類のピンポールに対応して、前記ピンポールの外径に対応した内径を有するインサート部品が嵌装されることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の測量用ピンポール保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量の際にプリズムターゲットなどのターゲットが取り付けられるピンポールをダイレクトに保持する測量用ピンポール保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、例えば特許文献1の
図2に示されている一般的な三脚型測量用ピンポール保持装置(第1従来例)100の構造を示す。このピンポール保持装置100は、周知の三脚101の上部の雲台102に水準器108付のクリップ状の保持具103を取り付けたものである。三脚101の各脚部104は、例えば外径及び内径の異なる複数の円筒状部材(例えば、外筒と内筒)105,106と、これらの円筒状部材105,106を相対的に固定する固定ねじ107などで構成されている。測量を開始するにあたって、作業員は、水準器108を見ながら三脚101の脚部104の長さを調整して保持具103をほぼ水平にし、さらに雲台102を微調整して保持具103を完全に水平にする。そして、保持具103の先端のクリップ部109にピンポール110を挟持させる。ピンポール110に取り付けられたプリズムターゲット111にも水準器112が設けられているので、水準器112を見ながらピンポール110が鉛直になるように調整する。プリズムターゲット111はピンポール110に嵌装され、ピンポール110の長手方向に摺動可能である。それによって、プリズムターゲット111は、その光軸が水平になるように保持される。
【0003】
従来の測量用ピンポール保持装置100では、ピンポール110がダイレクトに保持されていないため、ピンポール110を鉛直に保持するために2つの水準器108,112を見ながら複数回微調整を行なわなければならず、調整に時間を要する。また、三脚101の脚部104の円筒状部材105,106はアルミニウムなどの金属パイプで形成されており、また、雲台102もアルミダイキャストなどで構成されている。さらに、保持具103は、クリップ部109によってピンポール110を強固に保持するために強力なばねが用いられており、保持部103自体も大型である。そのため、従来の測量用ピンポール保持装置100は大きく、且つ、重いため、持ち運び及び取り扱いに不便である。
【0004】
図10は、特許文献2に記載された二脚型測量用ピンポール保持装置(第2従来例)200の構造を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。このピンポール保持装置200は、一対の脚部201と、脚部201を伸縮固定する脚伸縮調整レバー202と、取っ手の脚グリップ203と、一対の脚部201を開閉可能に連結する連結部204と、連結部204から下方に延設され、ピンポールを保持するための固定用ロッド205と、固定用ロッド205に取り付けられた2つのクリップ状挟持具206などで構成されている。ピンポール210は、クリップ状挟持具206によって固定用ロッド205に対してほぼ平行に保持される。固定用ロッド205の長さは脚部201の長さよりも短く、ピンポール保持装置200は、一対の脚部201とピンポール210によって三点支持される。各脚部201は、上記第1従来例の場合と同様に、例えば外径及び内径の異なる複数の円筒状部材(例えば、外筒と内筒)207,208で構成されている。測量を開始するにあたって、作業員は、ピンポール210の頂上部などに設けられた水準器211を見ながら、脚伸縮調整レバー202を操作してロックを解除し、外筒207から内筒208を引き出して脚部201の長さを調節する。プリズムターゲット212はピンポール210に嵌装され、ピンポール210の長手方向に摺動可能である。ピンポール210が鉛直に保持されることによって、プリズムターゲット212は、その光軸が水平になるように保持される。
【0005】
上記第1従来例の三脚型ピンポール保持装置100と比較して、第2従来例の二脚型ピンポール保持装置200は、脚部が1本少なく雲台を備えていないため小型軽量であり、取扱性が改善されている。また、脚伸縮調整レバー202が脚部201の上部に設けられているため、脚部201の長さ調節が比較的容易である。しかしながら、ピンポール210を鉛直に保持するために、水準器211を見ながら一対の脚部201の長さを調節しなければならない点は同様であり、調整に時間を要する。また、ピンポール保持装置200は、雲台を備えていない点で微調整が困難である。さらに、ピンポール210を鉛直に保持した状態で、ピンポール保持装置200に対して矢印X方向に力が加えられた場合、当該X方向の力に対する反力を発生させることができず、矢印Y方向に転倒する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実登第3218837号
【文献】特開2017-075926号公報(特許第6373819号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、小型軽量で、取扱性に優れ、きわめて簡単な操作でピンポールを鉛直に調整保持することが可能な、ターゲットが取り付けられるピンポールをダイレクトに保持する測量用ピンポール保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る測量用ピンポール保持装置は、
ピンポールの中心軸に対して垂直に固定されるピンポールホルダーと、
前記ピンポールホルダーに嵌装され、前記ピンポールを支持するための第1支持棒及び第2支持棒と、
前記ピンポールを保持した状態でバランスをとるための錘を備え、
前記ピンポールホルダーは、
ピンポールが嵌装されるピンポール保持部と、
前記ピンポール保持部を三角形の1つの頂点として、該三角形の他の2つの頂点の位置に設けられ、前記第1支持棒及び前記第2支持棒を前記三角形で形成される基準面に対して垂直な方向に回転自在に保持する第1支持部及び第2支持部と、
前記錘を連結するため錘連結部と、
を有し、
前記ピンポール保持部と前記錘連結部を結ぶ前記ピンポールホルダーの中心線が前記第1支持部と前記第2支持部の間を通る、
ことを特徴とする。
【0009】
上記ピンポール保持装置において、前記ピンポールホルダーの上面の前記ピンポール保持部の近傍に水準器を設けてもよい。
【0010】
上記ピンポール保持装置において、前記ピンポールホルダーは、前記基準面に垂直な方向から見て略Y状であり、前記三角形の3つの頂点がそれぞれ略Y状をなす3つの頂点の近傍に位置するように構成してもよい。
【0011】
上記ピンポール保持装置において、前記三角形は不等辺三角形であり、前記ピンポール保持部と前記第1支持部の距離は前記ピンポール保持部と前記第2支持部の距離と異なるように構成してもよい。
【0012】
上記ピンポール保持装置において、前記第1支持棒の長さと前記第2支持棒の長さが異なるように構成してもよい。
【0013】
上記ピンポール保持装置において、前記第1支持部及び前記第2支持部は、それぞれ前記第1支持棒及び前記第2支持棒が嵌装される支持棒嵌装孔と、該支持棒嵌装孔の中心軸に対して直交する回転軸を有する支持棒ホルダーと、前記三角形の頂点から外向きに突出するように前記ピンポールホルダーに形成され、前記支持棒ホルダーの前記回転軸を前記基準面に対して平行に保持する軸受部と、前記第1支持棒及び前記第2支持棒を前記支持棒ホルダーに固定する支持棒固定ねじを備えるように構成してもよい。
【0014】
上記ピンポール保持装置において、前記錘連結部は、前記錘を回転自在に吊下支持する錘ホルダーと、該錘ホルダーを摺動自在にガイドする錘ガイド棒と、該錘ガイド棒の一端部が嵌合固定される回転部材と、該回転部材を回転自在に保持するスライド部材と、前記ピンポールホルダーの内部に形成され、前記スライド部材を摺動可能にガイドするガイド溝とを備えるように構成してもよい。
【0015】
上記ピンポール保持装置において、前記ピンポール保持部は、外径の異なる複数種類のピンポールに対応して、前記ピンポールの外径に対応した内径を有するインサート部品が嵌装されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る測量用ピンポール保持装置の構成によれば、ピンポールがピンポールホルダーにダイレクトに保持されるため、第1支持棒と第2支持棒だけを用意すればよく、構造が簡単であり、装置を小型軽量化することができる。また、ピンポールを保持した状態でバランスをとるための錘を備えているため、ピンポールが鉛直に保持された状態でピンポールを倒す方向に力が作用しても、錘に作用する重力が反力を発生し、ピンポールが倒れにくくなる。さらに、ピンポール保持部と錘連結部を結ぶピンポールホルダーの中心線が第1支持部と第2支持部の間を通るため、錘に作用する重力が第1支持棒と第2支持棒にほぼ均等に作用し、ピンポールを鉛直に保持した状態が安定する。
【0017】
また、第1支持棒及び第2支持棒が、第1支持部及び第2支持部によって、基準面に対して垂直な方向に回転自在に保持されるので、ピンポールの姿勢調節に際して、作業者は、水準器を見ながらピンポールの上端部近傍を操作するだけでよい。第1支持棒及び第2支持棒は自重によってピンポールの傾きに追従し、その姿勢を変化させるので、従来例のような脚部の長さ調節が不要になり、きわめて簡単な操作でピンポールを鉛直に調整保持することが可能となる。さらに、また、第1支持棒及び第2支持棒が第1支持部及び第2支持部によって回動自在に保持されているので、ピンポールと第1支持棒及び第2支持棒とが互いに平行になるようにして収納することができ、搬送や保管が容易であり、取扱性に優れている。
【0018】
また、ピンポールホルダーを基準面に垂直な方向から見て略Y状とすることにより、ピンポールホルダーを軽量化することができる。また、ピンポール保持部と第1支持部及び第2支持部で形成される三角形を不等辺三角形とすることにより、該三角形を正三角形や二等辺三角形にした場合に生じるピンポールと第1支持棒及び/又は第2支持棒との干渉の可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る測量用ピンポール保持装置の構成を示す斜視図であり、ピンポールが鉛直となるように調整された状態を示す図。
【
図2】上記ピンポール保持装置の構成を示す斜視図であり、ピンポールが鉛直となるように調整する途中の状態を示す図。
【
図4】上記ピンポール保持装置を構成するピンポールホルダー(部品)の平面図。
【
図5】上記ピンポールホルダーのピンポール保持部及び第1支持部又は第2支持部の構成を示す部分断面図であり、(a)はピンポールの調整途中の状態、(b)はピンポールが鉛直に調整された状態、(c)はピンポール保持装置を収納する状態を示す図。
【
図6】上記ピンポールホルダーの錘連結部の構成を示す部分断面図であり、(a)は使用状態、(b)は収納状態を示す図。
【
図7】上記ピンポール保持装置の収納状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図。
【
図8】上記ピンポール保持装置に保持されたピンポール上端にターゲット板を取り付けた測量時の使用状態を示す図。
【
図9】特許文献1に示されている一般的な三脚型測量用ピンポール保持装置(第1従来例)を示す図。
【
図10】特許文献2に記載された二脚型測量用ピンポール保持装置(第2従来例)200の構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る測量用ピンポール保持装置について説明する。
図1及び
図2は測量用ターゲット保持装置1の構成を示す斜視図であり、特に
図1はピンポール10が鉛直となるように調整された状態を、
図2はピンポールが鉛直となるように調整する途中の状態を示す。この測量用ターゲット保持装置1は、ピンポール10が嵌装されるピンポール保持部31と、第1支持棒11及び第2支持棒12を保持するための第1支持部32及び第2支持部33を有するピンポールホルダー30と、上記第1支持棒11及び第2支持棒12と、転倒を防止するためにバランスをとるための錘40と、錘40を回転自在に吊下支持する錘ホルダー41と、錘ホルダー41を摺動自在にガイドする錘ガイド棒42などで構成されている。ピンポール10、第1支持棒11及び第2支持棒12は、例えばステンレスなどの金属棒又は金属パイプであり、市販品を使用することができる。また、ピンポール10、第1支持棒11及び第2支持棒12は、単体であってもよいし、端部に雄ねじ及び雌ねじが設けられた所定長さの複数の棒又はパイプを連結したものであってもよい。さらに、錘40も適宜市販品を使用することができる。
【0021】
ピンポールホルダー30は、略Y状の平面形状を有しており、ピンポール保持部31、第1支持棒11及び第2支持棒12は、それぞれY状の各頂点近傍に設けられており、ピンポール10と第1支持棒11及び第2支持棒12で三点支持構造を構成する。
図4に示すように、ピンポール10と錘40又はピンポール保持部31と錘ガイド棒42を結ぶピンポールホルダー30の中心線C1は、第1支持部32の位置と第2支持部33の間を通る。第1支持棒11の長さと第2支持棒12の長さは異なっており、また、第1支持部32の位置と第2支持部33の位置は、ピンポールホルダー30の中心線C1に対して非対称に設定されている。そのため、ピンポール10と第1支持棒11及び第2支持棒12が干渉しにくくなっている。また、ピンポール10には、測量用のプリズムターゲット20などのターゲットが取り付けられ、ピンポール10の中心軸に沿って摺動自在であり、任意の位置に固定可能である。
【0022】
図3は上記ターゲット保持装置1の平面図であり、
図4はピンポールホルダー30の平面図である。
図5はピンポールホルダー30のピンポール保持部31及び第1支持部32又は第2支持部33の構成を示す部分断面図である。
図3及び
図4に示すように、ピンポールホルダー30は、略Y状平面を有し、Y状をなす1つの頂点の近傍にピンポール保持部31が設けられている。ピンポール保持部31は、例えば円筒状の貫通孔であり、例えば外径6mmと9mmなど外径の異なる複数種類のピンポールに対応するため、ピンポール10の外径に対応した内径を有するインサート部品31aが嵌装される。インサート部品31aの内径はピンポール10の外径よりも所定の公差分だけ大きく、ピンポールホルダー30はピンポール10の中心軸方向に摺動可能であり、ピンポール10がインサート部品31aを介してピンポールホルダー30に固定された状態では、ピンポール10の中心軸が後述するピンポールホルダー30の基準面30aに対してが垂直となる。ピンポール保持部31の側面には、ピンポールホルダー30をピンポール10に対して任意の位置に固定するための固定ねじ31bが設けられている。
【0023】
また、ピンポールホルダー30には、ピンポール保持部31を三角形Tの第1頂点P1として、三角形Tを構成する第2頂点P2及び第3頂点P3の位置に、第1支持棒11及び第2支持棒12を保持する第1支持部32及び第2支持部33が設けられている。
図4において、ピンポールホルダー30の中心点をP0、上記中心線をC1として、中心点P0と第2頂点P2を結ぶ直線C2及び中心点P0と第3頂点P3を結ぶ直線C3は、それぞれ中心線C1に対して130度をなすように設定されている。また、第1頂点P1と第2頂点P2の距離L1と第1頂点P1と第3頂点P3の距離L2は異なっており(例えば、L1>L2)、その結果,三角形Tの第2頂点P2と第3頂点P3は中心線C1に対して非対称であり、三角形Tは正三角形でも二等辺三角形でもない不等辺三角形である。なお、この実施形態では三角形Tを不等辺三角形としているが、後述するように、ピンポール10と第1支持棒11及び/又は第2支持棒12が干渉する可能性の点を除いて、正三角形や二等辺三角形であっても特に問題は無い。
【0024】
図3及び
図5に示すように、第1支持部32及び第2支持部33は、それぞれピンポールホルダー30から外向きに突出する一対の平行なガイドアーム32a,32b及び33a,33bと、第1支持棒11及び第2支持棒12を摺動自在に保持すると共に、一対のガイドアーム32a,32b及び33a,33bの間で、三角形Tで形成される基準面30aに対して平行な中心軸S1,S2の周りに回転自在に保持された支持棒ホルダー32c,33cと、第1支持棒11及び第2支持棒12を支持棒ホルダー32c,33cに固定する固定ねじ32d,33dなどで構成されている。支持棒ホルダー32c,33cに摺動自在に保持された第1支持棒11及び第2支持棒12は、支持棒ホルダー32c,33cの回転に伴って支持棒ホルダー32c,33cの嵌合孔36中を摺動すると共に、三角形Tで形成される基準面30aに対して垂直な方向に揺動又は回転する(
図3の矢印C,D参照)。
【0025】
ピンポール保持装置1は、ピンポール10を鉛直に保持した状態でバランスをとるための錘40を備えている。
図3に示すように、ピンポールホルダー30には、錘40を連結するための錘連結部34が設けられている。
図1又は
図2に示すように、錘40は、錘ホルダー41を介して錘ガイド棒42に回転自在に保持されている。また、
図3及び
図6に示すように、錘ガイド棒42の一端部42aは、軸44aを中心軸としてスライド部材43に回転自在に保持された回転部材44に圧入又はねじにより固定されている。
図3、
図4及び
図6に示すように、ピンポールホルダー30の内部には、スライド部材43を摺動可能にガイドするガイド溝34aが形成されている。また、ピンポールホルダー30には、ガイド溝34aから基準面30aに向けて貫通し、固定ねじ35が貫通する貫通固定溝34bが形成されている。スライド部材43には、固定ねじ(雄ねじ)35と螺合するねじ穴(雌ねじ)43aが形成されており、固定ねじ35をピンポールホルダー30の基準面30a側から締め付けることにより、スライド部材43がガイド溝34aの任意の位置に固定される。上記錘連結部34は、これら錘ホルダー41、錘ガイド棒42、スライド部材43、回転部材44、ガイド溝34a、貫通固定溝34b及び固定ねじ35などで構成される。
図3に示すように、錘連結部34は、ピンポールホルダー30のY状をなす第1支持部32と第2支持部33の間に設けられている。なお、
図3及び
図4に示すように、ピンポールホルダー30の基準面30a上で、且つ、ピンポール保持部31の近傍には、円形凹部51が形成され、水準器50が取り付けられている。
【0026】
図6において、(a)はターゲット保持装置1の使用状態を示し、(b)は収納状態を示す。
図6(a)において、スライド部材43はピンポールホルダー30のガイド溝34aの奥まで押し込まれており、それに伴って回転部材44もガイド溝34aの内部に引き込まれている。回転部材44がガイド溝34aの内部に引き込まれる際、ピンポールホルダー30のガイド溝34aの開口部のエッジ34cに当接し、基準面30aに対して垂直な方向に回転する。その結果として、回転部材44に固定された錘ガイド棒42が基準面30aに対してほぼ平行となるように保持される。一方、
図6(b)において、スライド部材43は、回転部材44がピンポールホルダー30のガイド溝34aから外部に突出するように引き出されており、錘40の自重により回転部材44が回転し、錘ガイド棒42がほぼ鉛直となるように垂れ下がっている。
【0027】
図7はターゲット保持装置1の収納状態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。ターゲット保持装置1の収納に際して、予め、
図6(b)に示すように、ピンポールホルダー30の錘連結部34の固定ねじ35を緩め、スライド部材43を外向きに移動させる。回転部材44をピンポールホルダー30の外部に突出させ、錘40の自重により錘ガイド棒42及び錘40がほぼ鉛直となるように垂れ下がらせておく。次に、ピンポール10をピンポールホルダー30のピンポール保持部31に固定していた固定ねじ31b、第1支持部32及び第2支持部33の固定ねじ32d及び33dをそれぞれ緩め、ピンポールホルダー30を上方に持ち上げ、ピンポール10をほぼ鉛直に保持する。第1支持棒11及び第2支持棒12には鉛直下向きに重力が作用しているため、ピンポールホルダー30を上方に持ち上げると、
図5(a)に示すように、支持棒ホルダー32c,33cが鉛直方向に回転し、第1支持棒11及び第2支持棒12もそれぞれ自重により支持棒ホルダー32c,33cの嵌合孔中を摺動する。
図5(c)及び
図7に示すように、ピンポール10、第1支持棒11及び第2支持棒12がほぼ平行に、且つ、ほぼ鉛直に保持された状態で、固定ねじ31b、32d及び33dを締め付けることにより、ターゲット保持装置1が収納状態で固定される。
【0028】
一方、ターゲット保持装置1を使用する場合、作業者は、
図5(c)及び
図7に示す状態から固定ねじ31b、32d及び33dを緩め、ピンポール10に設けられている目盛りを見ながら、ピンポールホルダー30のピンポール保持部31とピンポール10を相対的に摺動させ、所望する位置で固定ねじ31bを締め付け、ピンポール10とピンポールホルダー30を固定する。そして、
図2に示すように、ピンポール10の頂上部近傍を操作してピンポール10を略鉛直に持ち上げる。また、ピンポール10の下端と第1支持棒11及び第2支持棒12の下端が地面上で適度な大きさの三角形を構成するように、第1支持棒11及び第2支持棒12を傾斜させておく。上記の場合と同様、
図5(a)に示すように、第1支持棒11及び第2支持棒12は重力の作用によって鉛直方向の下向きに引っ張られているため、ピンポール10及びそれに固定されたピンポールホルダー30の傾きに追従して支持棒ホルダー32c,33cが鉛直方向に回転し、第1支持棒11及び第2支持棒12もそれぞれ支持棒ホルダー32c,33cの嵌合孔中を摺動し、その傾斜角又は姿勢を変化させる。前述のように、水準器50はピンポールホルダー30の基準面30a上のピンポール保持部31の近傍に設けられている。そのため、作業者は、水準器50を見ながらピンポール10の頂上部を矢印A方向や矢印B方向に傾け、ピンポールの中心軸が鉛直となるように調整する。
図1及び
図5(b)に示すように、ピンポール10が鉛直になった状態で、固定ねじ32d及び33dを締め付け、第1支持棒11及び第2支持棒12をそれぞれ第1支持部32及び第2支持部33に固定する。次に、
図6(a)に示すように、スライド部材43をピンポールホルダー30のガイド溝34aの奥まで押し込み、回転部材44をガイド溝34aの内部に引き込む。それによって、回転部材44に固定された錘ガイド棒42が基準面30aに対してほぼ平行となるように保持される。
【0029】
本発明に係るピンポール保持装置1では、
図1に示すように、ピンポール10が鉛直に保持された状態で、ピンポール10を保持するピンポールホルダー30の中心P0(
図4参照)に対して、ピンポール10と反対側に錘40が設けられている。そのため、矢印X方向に力が加えられたとしても、錘40に作用する重力が矢印X方向の力に対する反力を発生させるため、ピンポール保持装置1は転倒しにくくなる。また、本発明に係るピンポール保持装置1では、ピンポールホルダー30の基準面30aを形成する三角形Tが不等辺三角形である。三角形Tが正三角形又は二等辺三角形であってもよいが、第1支持部32及び第2支持部33の位置がピンポールホルダー30の中心線C1に対して対称となるので、第1支持棒11及び第2支持棒12を傾けたときに、傾斜角によっては第1支持棒11及び第2支持棒12がピンポール10に接触し、空間的に干渉することがある。その場合は、ピンポール10に対するピンポールホルダー30の位置を変える、例えば上方に持ち上げることによって、第1支持棒11及び/又は第2支持棒12とピンポール10の接触を解消することができる。一方、第1支持部32及び第2支持部33の位置がピンポールホルダー30の中心線C1に対して非対称とすることにより、第1支持棒11及び第2支持棒12がピンポール10に接触し、空間的に干渉する可能性を低減することができる。さらに、ピンポール10を保持するピンポール保持部31と第1支持棒11及び第2支持棒12を保持する第1支持部32及び第2支持部33の距離L1,L2を適宜選択したり、第1支持棒11の長さと第2支持棒12の長さを適宜変更したりすることにより、第1支持棒11及び第2支持棒12がピンポール10に接触する可能性を排除することができる。
【0030】
また、ピンポール10をピンポールホルダー30のピンポール保持部31に固定し、第1支持部32及び第2支持部33の固定ねじ32d及び33dを緩めた状態では、第1支持棒11及び第2支持棒12が事実上フリー状態となり、ピンポール10を傾けると、ピンポールホルダー30の傾斜に追従して第1支持棒11及び第2支持棒12の姿勢が自動的に変化する。そのため、ピンポール10が鉛直になった時点で第1支持部32及び第2支持部33の固定ねじ32d及び33dを締め付け、第1支持棒11及び第2支持棒12をピンポールホルダー30の第1支持部32及び第2支持部33に固定すれば、ピンポール10が鉛直状態で保持される。従来のピンポール保持装置100又は200と比較して、脚部の長さを調節する必要がなく、ピンポール10の鉛直調節がきわめて簡単、且つ、容易になる。さらに、水準器50が、ピンポール10の中心軸に垂直なピンポールホルダー30の基準面30a上でピンポール保持部31の近傍に設けられているため、この水準器50のみを見ながらピンポール10を鉛直に調節することができ、調節作業が簡単になり、調節に要する時間を短縮することができる。
【0031】
図8は、ピンポール保持装置1に保持されたピンポール10の上端にレーザー測量用ターゲット60を取り付けた測量時の使用状態を示す。
図8に示す例では、レーザー測量用ターゲット60は、ターゲット板61と、ターゲット板61を所定の回転軸(水平軸)を中心として回転自在に保持するアーム62と、ターゲット板61及びアーム62をピンポール10に取り付けるための軸部63などで構成されている。ピンポール10の上端10aには雄ねじが、軸部63には雌ねじがそれぞれ形成されており(周知構造につき図示せず)、ピンポール10が鉛直に保持された状態では、ターゲット板61も鉛直に保持される。ターゲット板61は、遠方に設置されるレーザースキャナー装置やトータルステーションから認識されやすくするため、一定の表面積を有している。一方、ピンポール10やレーザー測量用ターゲット60は屋外に設置されるため、風の影響を受けやすい。前述のように、本発明のピンポール保持装置1は、ピンポールホルダー30の中心線C1の延長線上に錘40が設けられているため、ターゲット板61に対してX方向に風が当たったとしても、ピンポール10及びレーザー測量用ターゲット60が転倒しにくくなる。
【符号の説明】
【0032】
1 測量用ピンポール保持装置
10 ピンポール
11 第1支持棒
12 第2支持棒
20 プリズムターゲット
30 ピンポールホルダー
31 ピンポール保持部
31a インサート部品
32 第1支持部
32a,32b ガイドアーム
32c 支持棒ホルダー
32d 固定ねじ
33 第2支持部
33a,33b ガイドアーム
33c 支持棒ホルダー
33d 固定ねじ
34 錘連結部
34a ガイド溝
34b 貫通固定溝
35 固定ねじ
36 嵌合孔
40 錘
41 錘ホルダー
42 錘ガイド棒
43 スライド部材
44 回転部材
45 固定軸
50 水準器
60 レーザー測量用ターゲット