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特許7624691横隔膜特異的核酸調節エレメントならびにその方法および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】横隔膜特異的核酸調節エレメントならびにその方法および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20250124BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20250124BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20250124BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250124BHJP
   A61K 38/22 20060101ALN20250124BHJP
   A61K 38/39 20060101ALN20250124BHJP
   A61K 38/46 20060101ALN20250124BHJP
   A61K 38/47 20060101ALN20250124BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20250124BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P21/00
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/63 Z
A61K38/22
A61K38/39
A61K38/46
A61K38/47
C12N15/864 100Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019553082
(86)(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018057753
(87)【国際公開番号】W WO2018178067
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】17163080.9
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596099561
【氏名又は名称】ブレイエ・ユニバージテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSITEIT BRUSSEL
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュア,レイ・キム
(72)【発明者】
【氏名】バンデンドリッシェ,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】トゥランバ,ワルット
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】山村 祥子
【審判官】関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/025269(WO,A1)
【文献】特表2009-519710(JP,A)
【文献】特表2017-505126(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197869(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N15/00
Caplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横隔膜、骨格筋および心臓組織における遺伝子発現を強化するための、最大長600ヌクレオチドまたは550ヌクレオチドを有する核酸調節エレメントであって、前記核酸調節エレメントは、配列番号4によって規定される配列、前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列、前記配列の相補配列、またはその核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、核酸調節エレメント。
【請求項2】
非アルファ-アクチン-1(ACTA1)プロモーターに作動可能に連結されている、最大長600ヌクレオチドまたは550ヌクレオチドを有する核酸調節エレメントであって、前記核酸調節エレメントは、配列番号4によって規定される配列、前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列、前記配列の相補配列、またはその核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、少なくとも1つの核酸調節エレメントを含む核酸発現カセットであって、前記プロモーターが、横隔膜、心臓および/または骨格筋特異的プロモーターである、核酸発現カセット。
【請求項3】
前記核酸調節エレメントが、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、請求項2に記載の核酸発現カセット。
【請求項4】
前記プロモーターが、SPc5-12、MYL2、MB、DES、TNNC1、TCAP、MYH7、ALDAおよびTPM1からなる群から選択される遺伝子のいずれか1つの横隔膜、心臓および/または骨格筋特異的プロモーターである、請求項2または3に記載の核酸発現カセット。
【請求項5】
前記プロモーターがSPc5-12である、請求項2~4のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項6】
前記導入遺伝子が治療的タンパク質または免疫原性タンパク質をコードする、請求項2~5のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項7】
前記導入遺伝子が酸性グルコシダーゼ(GAA)、ミオチューブラリン(MTM1)、フォリスタチン、ジストロフィン、サルコグリカンまたはジスフェルリンをコードする、請求項2~6のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項8】
前記導入遺伝子が、配列番号93によって規定される酸性グルコシダーゼ(GAA)、または配列番号94によって規定されるコドン最適化ヒト酸性グルコシダーゼ遺伝子(hGAAco)をコードする、請求項2~7のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項9】
イントロンをさらに含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項10】
ポリアデニル化シグナルをさらに含む、請求項2~9のいずれか1項に記載の核酸発現カセット。
【請求項11】
請求項2~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセットを含むベクター。
【請求項12】
ウイルスベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
非ウイルスベクターである、請求項11に記載のベクター。
【請求項14】
前記核酸調節エレメントの前または後に心筋特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)をさらに含む、請求項11または12に記載のベクター。
【請求項15】
前記CRE-CSk-SH5調節エレメント、配列番号4によって規定される配列、前記配列と少なくとも95%の同一性を有する配列、前記配列の相補配列、またはその核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、最大長600ヌクレオチドまたは550ヌクレオチドを有する核酸調節エレメント、MVMイントロン、SPc5-12プロモーター、ヒトGAA導入遺伝子(配列番号93)またはそのコドン最適化変異体(配列番号94)、および合成ポリA部位(配列番号127)を含む、請求項11、12または14のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項16】
請求項2~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセットまたは請求項11~15のいずれか1項に記載のベクター、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
医薬品で使用するための、請求項1に記載の核酸調節エレメント、請求項2~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット、請求項11~15のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ポンペ病の治療で使用するための、請求項1に記載の核酸調節エレメント、請求項2~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット、請求項11~15のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ワクチンとして使用するための、またはワクチン接種療法で使用するための、請求項1に記載の核酸調節エレメント、請求項2~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセット、請求項11~15のいずれか1項に記載のベクターまたは請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
横隔膜、骨格筋および心臓の細胞において導入遺伝子産物を発現させるためのin vitroまたはex vivoの方法であって、
- 請求項1に記載の核酸調節エレメントを含む、請求項2~10のいずれか1項に記載の核酸発現カセットまたは請求項11~15のいずれか1項に記載のベクターを前記細胞に導入するステップ;および
- 前記細胞において前記導入遺伝子産物を発現させるステップ
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、遺伝子の横隔膜特異的発現を強化することができる核酸調節エレメント、これらの調節エレメントを用いる方法およびその使用に関する。本発明は、これらの調節エレメントを含む発現カセット、ベクターおよび医薬組成物をさらに包含する。本発明は、遺伝子療法、より詳細には横隔膜向け遺伝子療法または遺伝子編集を使用する適用のために、およびワクチン接種目的のために特に有益である。
【背景技術】
【0002】
背景
横隔膜は、胸腔の最下部にわたって伸びるシート状の内部骨格筋である。横隔膜は心臓および肺を含有する胸腔を腹腔から分離し、呼吸において重要な機能を実行する:横隔膜が収縮するときに、胸腔の容量が増加して、空気を肺に吸入する。いかなる器官または筋肉とも同様に、横隔膜は障害および異常にさらされ、それらは多くの異なった形で起こり、損傷または病気が原因のこともある。その結果として、横隔膜機能不全は、潜在的に致命的な帰結を有する重度の呼吸系疾患をもたらす可能性がある。横隔膜の脱力および麻痺は、解剖学的異常領域によって分類することができる。横隔膜の麻痺および脱力は、原因によって片側性の場合もあれば両側性の場合もあり、一時的の場合もあれば恒久的の場合もある。
【0003】
これらのおよび他の筋肉障害の多くにおける潜在的な生命にかかわる横隔膜機能不全を治療するために利用可能である、有効な治療法は現在ない。したがって、横隔膜におけるコグネイトな治療的遺伝子の頑強な発現を可能にする、遺伝子療法による有効な治療法を確立する必要性がある。これには、目的の遺伝子を含有する強力な発現カセットの開発が必要とされる。
【0004】
その結果として、横隔膜における転写を実質的に増加させることが可能である、頑強な核酸調節エレメントを同定する必要性がある。これらの核酸調節エレメントは、遺伝子発現の組織特異的調節にとって決定的に重要である。それらは、転写因子結合部位(TFBS)モチーフのクラスタで一般的に構成される。TFBSのタイプおよび配置ならびにエピジェネティック改変パターンは、遺伝子発現のレベルおよび特異性に影響する。ベクター設計の従来の方法は、発現レベルを増進するために転写エンハンサーをプロモーターと組み合わせた、無計画な試行錯誤アプローチに依存した。これは時には有効であったかもしれないが、それは目的の遺伝子の発現レベルの軽度の増加をもたらしたか全くもたらさなかった、および/または組織特異性の喪失をもたらした、非生産的な組合せをしばしばもたらした。さらに、これらの従来のアプローチは進化で保存された調節モチーフを発現モジュールに含ませることの重要性を考慮しなかったが、それは臨床への橋渡しに特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横隔膜、骨格筋および/または心臓への安全で効率的な遺伝子送達の必要性が、当技術分野にまだある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
横隔膜(すなわち横隔膜:Dph)において転写レベルで遺伝子発現を増進する頑強な核酸調節エレメントを同定するために、本発明者らは、コンピュータによるアプローチ(図1を参照)に依存した。これは、以下のコンピュータのステップを必要とする:(1)横隔膜からの発現データに基づいて、高度および特異的に発現される横隔膜特異的遺伝子を同定した;(2)選択された遺伝子の転写開始部位(TSS)の上流の配列を抽出するために、公開データベース(ENSEMBL)を使用した。3)ヒトゲノムにおける転写開始部位を見つけるために、これらの配列をUCSCゲノムブラウザーデータベースに次に提示した。核酸調節エレメントと本明細書で規定される、対応する横隔膜核酸調節エレメントを抽出するために、以下の判定基準に基づいて配列を選択した:a)豊富なTFBS含有量、b)高いDNase過敏性またはクロマチンアクセス性(すなわち、ヒストン改変)に関連したエピジェネティックサイン、およびc)高度に発現された横隔膜特異的遺伝子に関連したTFBSの進化で保存されたクラスタ。
【0007】
実験のセクションで示すように、発明者は、横隔膜における遺伝子発現を特異的に強化する核酸調節エレメントを同定した。さらに、発明者は、横隔膜特異的ならびに例えば骨格筋および心臓と骨格の筋肉発現のための他の組織特異的発現の組合せによる核酸調節エレメントを同定した。限定するものではないが例示的な筋肉または心臓-筋肉特異的調節エレメントは、欧州特許出願WO2015/110449A1およびWO2011/051450A1で以前に同定したものである。
【0008】
したがって、この組合せアプローチは、横隔膜ならびに、例えばMTMなどの横隔膜および骨格筋を侵す特定の疾患に侵される他の組織における頑強な発現を可能にする。しかし、横隔膜、骨格筋および心臓などの異なる組織を侵すGSD-IIおよびDMDなどの疾患のためには、横隔膜核酸調節エレメントと骨格筋核酸調節エレメントおよび/または心臓核酸エレメントの組合せが開発される。横隔膜調節エレメントならびに横隔膜および他の組織のエレメント(骨格筋および/または心臓のエレメント)の組合せがin vivoで以後検証され、効率的で多重組織特異的遺伝子発現を与える。したがって、このアプローチは、治療的有効性を最大にする一方で、より低く、したがってより安全なベクター用量の使用を可能にする。
【0009】
したがって、本発明は、以下の態様を提供する:
スクリーニングでは、横隔膜組織における発現を増加させる、遺伝子療法送達系、例えばベクター系、例えばAAVベクター系の中の導入遺伝子の発現を増加させることができる、89個の調節エレメントを同定した。これらのエレメントは、下の表3および4に示す。表3は、横隔膜および骨格筋における発現を増加させるために特に重要である横隔膜シス調節エレメント(本明細書で使用される名称「Dph-CRE」、「CRE」または「CRM」または「SH」は同じであり、互換性である)(Dph-CRE)を示し、表4は、横隔膜、骨格筋および心臓組織における発現を増加させるために特に重要である横隔膜CRE(Dph-CRE)を示す。これらのCREのうちの7つは、両群に存在する。
【0010】
詳細には、Dph-CRE02、Dph-CRE04、Dph-CRE58、Dph-CRE59、Dph-CRE60、Dph-CRE64、Dph-CRE06、Dph-CRE21、Dph-CRE41およびDph-CRE18(表3と図5)は、横隔膜および骨格筋組織におけるそれらの高い発現についてin vivoで検証された。より詳細には、Dph-CRE-02、Dph-CRE-64およびDph-CRE-21が好ましい。さらにより好ましくは、Dph-CRE64は、横隔膜および骨格筋における導入遺伝子発現の上方制御を必要とし、心臓においては必要性がより低い疾患を治療するために使用される。具体的な実施形態では、これらのDph-CRE、より好ましくはDph-CRE64(または、Dph-CRE02もしくはCRE-21)は、筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)と組み合わされる。より好ましい実施形態では、CREの前記組合せはヒトデスミンプロモーター、より好ましくはその1,4kb変異体(配列番号92)にカップリングされる。MTM疾患の治療のために、前記CRE-プロモーター組合せは好ましくはhMTM1(配列番号95)を、より好ましくはコドン最適化hMTM1導入遺伝子(配列番号96)を促進する。
【0011】
筋細管性ミオパシー(MTM)は骨格筋および横隔膜を主に侵すが、心臓はめったに侵されない。したがって、理想的には、治療的MTM1導入遺伝子の発現は、心臓でなく骨格筋および横隔膜を標的にするべきである。したがって、SK-SH4-hDes1.4kb発現カセットが言及されているが、その理由は、このカセットでは、骨格筋における発現は高いが、例えばDph-CRE-02、-04および06などの上のDph-CREと組み合わせたときに広範囲の心臓遺伝子発現をもたらすCSk-SH5-SPcと比較して、(Dph-CRE-64)と組み合わせたときにそれは心臓においてかなり低いからである。
【0012】
一例として、MTMの治療のために最も好ましいAAVベクター組合せは、配列番号131、pAAVss-CRE64-Sk-SH4-hDES1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpAによって規定される。
【0013】
あるいは、Dph-CRE69、70、71、66、68、77、02、04、06、07(表4および図5)が、横隔膜、骨格筋および心臓組織におけるそれらの高い発現についてin vivoで検証された。より詳細には、Dph-CRE-02、Dph-CRE-04およびCRE-06が好ましい。具体的な実施形態では、前記Dph-CRE、より好ましくはDph-CRE-02、Dph-CRE04(または、Dph-CRE06)は、骨格筋および心臓特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)と組み合わされる。より好ましい実施形態では、CREの前記組合せは、SPc5-12プロモーター(配列番号124)、SPc5-12(時にはSPC-5-12-GTRMと呼ばれ、この用語は互換性である)にカップリングされる。例えばポンペ病の治療のために、前記CRE-プロモーター組合せは好ましくはhGAA(配列番号93)を、より好ましくはコドン最適化hGAAco導入遺伝子(配列番号94)を促進する。
【0014】
この設計のための理論的根拠は、ポンペ病において、GAA導入遺伝子は欠陥があり、骨格筋、横隔膜および心臓を主に侵すという事実に基づく。したがって、理想的には、治療的GAA遺伝子の発現は、これらの患部組織を標的にするべきである。CSk-SH5-SPc組合せは、横隔膜、骨格筋および心臓における頑強で特異的な発現につながり、したがって、ポンペ病における罹患組織を標的にするのに十分適している。一例として、ポンペ病の治療のために最も好ましいAAVベクター組合せは、配列番号130 pAAVss-CRE04-CSk-SH5-SPc5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(配列番号130)によって規定される。
【0015】
上記の議論に基づき、本発明は、治療的遺伝子の発現について試験した10個の異なるAAV構築物を提供する:
1)pAAVss-hDes1.4kb-MVM-hMTM1-SynthpA(無横隔膜CRE、無筋肉CRE Sk-SH4、Desmin1.4kbプロモーターだけがMTM1遺伝子発現+MTM1を促進する)(配列番号135)
2)pAAVss-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(無横隔膜CRE、無筋肉CRE Sk-SH4、+Des1.4kb+コドン最適化MTM1)(配列番号134)
3)pAAVss-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1-SynthpA(無横隔膜CRE、+筋肉CRE Sk-SH4+Des1.4kb+MTM1)(配列番号137)
4)pAAVss-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(無横隔膜CRE、+筋肉CRE Sk-SH4+Des1.4kb+コドン最適化MTM1)(配列番号136)
5)pAAVss-CRE64-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(筋肉CRE Sk-SH4と組み合わせた、最高に選択された横隔膜CRE64を含有する)(配列番号131)
6)pAAVss-SPc5-12GTRM-MVM-hGAA-SynthpA(無横隔膜CRE、無筋肉CRE、SPc5-12-GTRMプロモーターだけがGAA遺伝子発現を促進する)(配列番号139)
7)pAAVss-SPc5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(無横隔膜、無筋肉CRE CSk-SH5、+SPc5-12-GTRM+コドン最適化GAA)(配列番号138)
8)pAAVss-CSK-SH5-SPc5-12GTRM-MVM-hGAA-SynthpA(無横隔膜CRE、+筋肉CRE CSk-SH5+SPc5-12-GTRM+GAA)(配列番号133)
9)pAAVss-CSk-SH5-SPc-5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(無横隔膜CRE、+筋肉CRE CSK-SH5+SPc5-12-GTRM+コドン最適化GAA)(配列番号132)
10)pAAVss-CRE04-CSk-SH5-SPc-5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(筋肉CRE CSk-SH5と組み合わせた、最高に選択された横隔膜CRE04を含有する)(配列番号130)
本発明は、以下の態様をさらに提供する:
態様1:以下からなる群から選択される配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる、横隔膜特異的遺伝子発現を強化するための核酸調節エレメント:配列番号1から89、これらの配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列。したがって、この態様は、横隔膜における遺伝子発現を強化するための、配列番号4によって規定される配列、これらの配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、前記配列の相補配列、またはその核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、最大長1000ヌクレオチド、好ましくは800ヌクレオチド、より好ましくは700ヌクレオチド、600ヌクレオチドまたは550ヌクレオチドを有する核酸調節エレメント、あるいは、横隔膜特異的遺伝子発現を強化するためのその使用を好ましくは提供する。これらの実施形態のいずれか1つでは、配列番号4は配列番号1~89のいずれか1つと置き換えることができる。
態様2:以下からなる群から選択される配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる、横隔膜および骨格筋における遺伝子発現を強化するための態様1による核酸調節エレメント:配列番号1~7および10~65、82および83(表3のDph-CRE-1~7、10~65、82および83を参照)、またはこれらの配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、あるいは、横隔膜および骨格筋における遺伝子発現を強化するためのその使用。前記態様の好ましい実施形態では、前記調節エレメントは、Dph-CRE64(配列番号64)またはDph-CRE02(配列番号2)またはDph-CRE21(配列番号21)である。
態様3:配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)のいずれか1つによって規定される調節エレメントを同じく含む、最大長1000ヌクレオチド、好ましくは800ヌクレオチド、より好ましくは700ヌクレオチドを有する、態様1または2による核酸調節エレメント。前記態様の好ましい実施形態では、前記調節エレメントは、Dph-CRE64(配列番号64)またはDph-CRE02(配列番号2)またはDph-CRE21(配列番号21)である。
態様4:以下からなる群から選択される配列の機能的断片を含む、横隔膜、骨格筋および心臓組織における遺伝子発現を強化するための態様1による核酸調節エレメント:配列番号1~9、66~81および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89)、または、これらの配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、または、横隔膜、骨格筋および心臓組織における遺伝子発現を強化するためのその使用。前記態様の好ましい実施形態では、前記調節エレメントは、Dph-CRE04(配列番号4)またはDph-CRE06(配列番号6)またはDph-CRE02(配列番号2)である。
態様5:配列番号1~9、66~81および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)のいずれか1つによって規定される調節エレメントを同じく含む、最大長1000ヌクレオチド、好ましくは800ヌクレオチド、より好ましくは700ヌクレオチド、さらにより好ましくは600ヌクレオチド、例えば500ヌクレオチドを有する、態様1または4による核酸調節エレメント。前記態様の好ましい実施形態では、前記調節エレメントは、Dph-CRE04(配列番号4)またはDph-CRE06(配列番号6)またはDph-CRE02(配列番号2)である。
態様6:横隔膜、骨格筋および心臓組織における遺伝子発現を強化するための核酸調節エレメントであって、態様1~3のいずれか1つにおいて規定される配列の相補配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、あるいは、態様1~3のいずれか1つによる核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸調節エレメント。
態様7:横隔膜、骨格筋および心臓組織における遺伝子発現を強化するための核酸調節エレメントであって、態様1、4または5のいずれか1つにおいて規定される配列の相補配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる、あるいは、態様1、4または5のいずれか1つによる核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸調節エレメント。
態様8:核酸発現カセットまたはベクターの中の、態様1~3および6のいずれか1つによる核酸調節エレメントの使用であって、より詳細には横隔膜および骨格筋における前記核酸発現カセットまたはベクターの遺伝子発現を強化するための使用。
態様9:核酸発現カセットまたはベクターの中の、態様1、4、5および7のいずれか1つによる核酸調節エレメントの使用であって、より詳細には横隔膜、骨格筋および心臓組織における前記核酸発現カセットまたはベクターの遺伝子発現を強化するための使用。
態様10:プロモーターに作動可能に連結されている、少なくとも1つの、例えば1、2、3、4、5またはそれより多くの態様1~7のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含む核酸発現カセット。
態様11:核酸調節エレメントが、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、態様10による核酸発現カセット。
態様12:プロモーターが、横隔膜および骨格筋特異的プロモーター、例えば、表3に規定される遺伝子、すなわち、ACTA1、CKM、TPM2、MYL1、TNNC2、FHL1、TNNT1、TNNI2、MYLPF、TNNT3、MYH2、SLN、MYBPC1、ENO3、CA3、ATP2A1およびMYH1遺伝子のいずれか1つのプロモーターである;または、プロモーターが、横隔膜、骨格筋および心臓特異的プロモーター、例えば、表4に規定される遺伝子、すなわち、ACTA1、CKM、MYL2、MB、DES、TNNC1、TCAP、MYH7、ALDOAおよびTPM1遺伝子のいずれか1つのプロモーターである、態様10または11のいずれか1つによる核酸発現カセット。前記態様、特に態様2および3の好ましい実施形態では、プロモーターは、マウスまたはヒトデスミンプロモーター、より好ましく配列番号92によるヒト1.4kbデスミンプロモーターである。前記態様、特に態様4および5の好ましい実施形態では、プロモーターは、配列番号124によるSPc5-12プロモーターである。
態様13:導入遺伝子が治療的タンパク質または免疫原性タンパク質をコードする、態様10~12のいずれか1つによる核酸発現カセット。
態様14:導入遺伝子が、分泌可能なタンパク質または構造タンパク質、例えば、ミオチューブラリン(MTM、配列番号95)、酸性グルコシダーゼ(GAA、配列番号93)、フォリスタチン、ジストロフィン、サルコグリカンまたはジスフェルリンをコードする、態様9~13のいずれか1つによる核酸発現カセット。前記態様の好ましい実施形態では、前記導入遺伝子は、MTMco(配列番号96)またはGAAco(配列番号94)などのようにコドン最適化される。
【0016】
さらに、Dph-CREには、例えばWO2015/110449に開示されるものなどのように、骨格筋または骨格筋および心臓組織におけるさらなる発現をもたらす、さらなる調節エレメント(CRE)を追加することができる。前記さらなるCREは、Dph-CREの前または後に置くことができる(例示的なベクター主鎖は、図8に示す)。好ましい実施形態では、骨格筋CRE Sk-SH4(配列番号121)、または骨格筋および心臓のCRE CSk-SH5(配列番号122)およびCSk-SH1(配列番号123)調節エレメントは、Dph-CREと組み合わせて使用される。
【0017】
具体的には、Dph-CRE64、02または21とCRE Sk-SH4の組合せ、特にDph-CRE64とCRE Sk-SH4の組合せが好ましい。この実施形態は、好ましくは、マウスまたはヒトデスミンプロモーター、より好ましく配列番号92によるヒト1.4kbデスミンプロモーターにカップリングされる。さらにより好ましくは、前記CRE-プロモーター組合せは、MTM1導入遺伝子(配列番号94)またはそのコドン最適化変異体MTM1co(配列番号96)を促進する。前記組合せは、MTM疾患の治療における使用のために、特に興味深い。
【0018】
さらに、Dph-CRE04、06または02とCRE CSk-SH5の組合せ、特にDph-CRE04とCRE CSk-SH5の組合せが特に好ましい。この実施形態は、配列番号124によるSPc5-12プロモーターに好ましくはカップリングされる。さらにより好ましくは、前記CRE-プロモーター組合せは、hGAA(配列番号93)導入遺伝子またはそのコドン最適化変異体hGAAco(配列番号94)を促進する。前記組合せは、ポンペ病の治療における使用のために、特に興味深い。
態様15:イントロン、好ましくはマウス微小ウイルス(MVM)イントロン(配列番号125)をさらに含む、態様9~14のいずれか1つによる核酸発現カセット。
態様16:ポリアデニル化シグナル、好ましくは合成ポリA部位(配列番号127)またはシミアンウイルス40(SV40)ポリアデニル化シグナルをさらに含む、態様9~15のいずれか1つによる核酸発現カセット。
態様17:態様1~7のいずれか1つによる核酸調節エレメントまたは態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセットを含むベクター。
態様18:ウイルスベクター、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、より好ましくはAAV9ベクターである、態様17によるベクター。
態様19:非ウイルスベクター、好ましくはプラスミド、ミニサークル、エピソームベクターまたはトランスポゾンをベースにしたベクター、例えば、PiggyBacをベースにしたベクターまたはSleeping Beautyをベースにしたベクターである、態様17によるベクター。
【0019】
前記態様の特に興味深い実施形態は、配列番号131(特にMTM疾患の治療で使用するための)または130(特にポンぺ病の治療で使用するための)によって規定されるベクターである。
態様20:態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセットまたは態様17~19のいずれか1つによるベクター、および医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
態様21:医薬品で使用するための、より好ましくは遺伝子療法で使用するための、態様1~7のいずれか1つによる核酸調節エレメント、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物。
態様22:MTMの治療における使用のための、態様1~3および6のいずれか1つによる核酸調節エレメント、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物。
態様23:ポンペ病の治療で使用するための、態様1、4、5および7のいずれか1つによる核酸調節エレメント、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物。
【0020】
あるいは、態様1~7のいずれか1つによる核酸調節エレメント、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物を使用して、以下の疾患のいずれか1つを治療することができる:神経筋障害および心臓疾患(例えば無βリボタンパク質血症(バッセンコルンツヴァイク)、アセチルコリンレセプター欠損(先天性筋無力症症候群)、シャルルボア-サガネー症候群/疾患、良性先天性ミオパシー、ブロディ病、中心核ミオパシー(筋細管性ミオパシー)、軟骨形成異常ミオトニー(シュワルツ-ジャンペル症候群)、チャドリー症候群、フィンガープリントミオパシー、遺伝性神経痛性筋萎縮(パーソニッジ-ターナー症候群)、封入体ミオパシー(例えば、2型または3型)、封入体筋肉炎、アイザック症候群(神経ミオトニー)、ケネディ病(脊髄延髄(筋肉)萎縮)、大食細胞筋膜炎、マッカドル病(ミオホスホリラーゼ欠損症/糖原V型)、多発性単神経炎、筋肉-目-脳病、ネマリンミオパシー、ノナカミオパシー、リップリングマッスル病、脛骨筋肉ジストロフィー(Udd遠位型ミオパシー)、ウェランダーの遠位型ミオパシー、酸性マルターゼ欠損症(ポンぺ病/糖原病II型)、ダノン病(糖原病IIb型/空胞ミオパシー)、脱分枝酵素欠損症(糖原病III型/フォーブズ病)、アンダーセン病/症候群(糖原病IV型/分枝酵素欠損症)、タウリ病(糖原病VII型/ホスホフルクトキナーゼ欠損症)、デスミン貯蔵ミオパシー(筋原線維ミオパシー)、ミオデニレートデアミナーゼ欠損症、アドレノロイコジストロフィー、先天性多発性関節拘縮症、先天性緑内障を有する運動失調、ビタミンE欠乏症による運動失調、バース症候群、ベツレムミオパシー、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症、カルニチン欠損症、中心コア疾患、遺伝性運動および感覚神経障害(例えば、シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)、例えばCMT I型、CMT II型、CMT III型(デジェリーヌ-ソッタ病)、CMT IV型(レフスム病)、CMT V型;腓骨筋萎縮;ニューロン型の腓骨筋萎縮)、遺伝性の感覚および自律神経障害(例えばI型、III型(家族性自律神経失調症/ライリー-デイ症候群)、IV型(疼痛および無汗への先天性無感覚)、先天性線維型不均衡ミオパシー、遠位性脊髄筋萎縮、家族性アミロイドニューロパチー、筋ジストロフィーを有する家族性拡張型心筋症、フリートライヒの運動失調、高カリウム血性周期性麻痺(ガムストープ病)、巨大軸索神経病、ギラン-バレー症候群(急性炎症性脱髄性/多発神経根筋障害)、高体温(悪性の高体温)、低カリウム血性周期性麻痺、医原性ミオパシー、カーンズ-セイヤー症候群、クーゲルベルクヴェランデル病(脊髄筋萎縮III型)、レイン遠位型ミオパシー、ランバート-イートン(筋無力性)症候群、リー症候群、ミニコアミオパシー/マルチコアミオパシー、ミトコンドリアミオパシーおよび/または神経障害、混合結合組織重複疾患、ミヨシミオパシー、伝導ブロックを有する多病巣性運動神経障害、重症筋無力症、先天性筋強直症(トムゼン病)、筋緊張性筋ジストロフィー(例えば、I型(シュタイナート病)、II型(近位筋緊張性ミオパシー))、眼球咽頭筋ジストロフィー、オリーブ橋小脳萎縮、先天性パラミオトニア、腫瘍随伴神経障害、多発性筋炎、還元体ミオパシー、肩甲骨腓骨筋萎縮、管凝集ミオパシー、ウォーカー-ワールブルグ症候群、ウェルドニッヒ-ホフマン病(脊髄筋萎縮I型)、ゼブラボディミオパシー、核膜病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)/ベッカー筋ジストロフィー(BMD))、運動ニューロン病(MND)、例えば、シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)、例えばCMT I型、CMT II型、CMT III型(デジェリーヌ-ソッタ病)、CMT IV型(レフスム病)、CMT V型、脊髄筋萎縮(SMA)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、エメリー-ドライフス筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパシー、肢帯筋ジストロフィー、代謝ミオパシー、筋炎症性疾患、筋無力症、ミトコンドリアミオパシー、イオンチャネルの異常、核膜病、心筋症、心臓肥大、心不全、遠位型ミオパシー、心血管疾患、血友病、例えば血友病AおよびB、ならびに糖尿病。
【0021】
一実施形態では、Dph-CRE Sk-SH4 CREをデスミンプロモーター(例えば、ヒトDES1.4kbプロモーター(配列番号92))と組み合わせて使用した遺伝子療法から恩恵を受けることができる疾患および障害は、骨格筋を侵す疾患であり、例えば、無βリボタンパク質血症(バッセンコルンツヴァイク)、アセチルコリンレセプター欠損症(先天性筋無力症症候群)、シャルルボア-サガネー症候群/病、良性先天性ミオパシー、ブロディ病、中心核ミオパシー(筋細管性ミオパシー)、軟骨形成異常ミオトニー(シュワルツ-ジャンペル症候群)、チャドリー症候群、フィンガープリントミオパシー、遺伝性神経痛性筋萎縮(パーソニッジ-ターナー症候群)、封入体ミオパシー(例えば、2型または3型)、封入体筋肉炎、アイザック症候群(神経ミオトニー)、ケネディ病(脊髄延髄(筋肉)萎縮)、大食細胞筋膜炎、マッカドル病(ミオホスホリラーゼ欠損症/糖原V型)、多発性単神経炎、筋肉-目-脳病、ネマリンミオパシー、ノナカミオパシー、リップリングマトゥースル病、脛骨筋ジストロフィー(Udd遠位型ミオパシー)およびヴェランデルの遠位型ミオパシーが含まれる。
【0022】
別の実施形態では、Dph-CRE CSk-SH5 CREを例えばSPc5-12プロモーターと組み合わせて使用した遺伝子療法から恩恵を受けることができる疾患および障害は、骨格筋および心臓の両方を侵す疾患であり、例えば、酸性マルターゼ欠損症(ポンぺ病/糖原病II型)、ダノン病(糖原病IIb型/空胞ミオパシー)、脱分枝酵素欠損症(糖原病III型/フォーブズ病)、アンダーセン病/症候群(糖原病IV型/分枝酵素欠乏症)、タウリ病(糖原病VII型/ホスホフルクトキナーゼ欠損症)、デスミン貯蔵ミオパシー(筋原線維ミオパシー)、ミオデニレートデアミナーゼ欠損症、アドレノロイコジストロフィー、先天性多発性関節拘縮症、先天性緑内障を有する運動失調、ビタミンE欠乏症を有する運動失調、バース症候群、ベツレムミオパシー、カルニチンパルミチルトランスフェラーゼ欠損症、カルニチン欠損症、中心コア病、遺伝性運動および感覚神経障害(例えば、シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)、例えばCMT I型、CMT II型、CMT III型(デジェリーヌ-ソッタ病)、CMT IV型(レフスム病)、CMT V型;腓骨筋萎縮;ニューロン型の腓骨筋萎縮)、遺伝性感覚および自律神経障害(例えば、I型、III型(家族性自律神経失調症/ライリー-デイ症候群)、IV型(疼痛および無汗への先天性無感覚)、先天性線維型不均衡ミオパシー、遠位性脊髄筋萎縮、家族性アミロイドニューロパチー、筋ジストロフィーを有する家族性拡張型心筋症、フリートライヒの運動失調、高カリウム血性周期性麻痺(ガムストープ病)、巨大軸索神経病、ギラン-バレー症候群(急性炎症性脱髄性/多発神経根筋障害)、高体温(悪性の高体温)、低カリウム血性周期性麻痺、医原性ミオパシー、カーンズ-セイヤー症候群、クーゲルベルクヴェランデル疾患(脊髄筋萎縮III型)、レイン遠位型ミオパシー、ランバート-イートン(筋無力性)症候群、リー症候群、ミニコアミオパシー/マルチコアミオパシー、ミトコンドリアミオパシーおよび/または神経障害、混合結合組織重複疾患、ミヨシミオパシー、伝導ブロックを有する多病巣性運動神経障害、重症筋無力症、先天性筋強直症(トムゼン病)、筋緊張性筋ジストロフィー(例えば、I型(シュタイナート病)、II型(近位筋緊張性ミオパシー))、眼球咽頭筋ジストロフィー、オリーブ橋小脳萎縮、先天性パラミオトニア、腫瘍随伴神経障害、多発筋炎、還元体ミオパシー、肩甲骨腓骨筋萎縮、管凝集ミオパシー、ウォーカー-ワールブルグ症候群、ウェルドニッヒ-ホフマン病(脊髄筋萎縮I型)、ゼブラボディミオパシーおよび核膜病が含まれる。
態様24:ワクチン、好ましくは予防的ワクチンとして使用するための、またはワクチン接種療法、好ましくは予防的ワクチン接種で使用するための、態様1~7のいずれか1つによる核酸調節エレメント、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物。
態様25:横隔膜および骨格筋細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法、好ましくはin vitroまたはex vivoの方法であって:
- 態様1~3および6のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含む、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセットまたは態様17~19のいずれか1つによるベクターを細胞に導入すること;および
- 細胞において導入遺伝子産物を発現させること
を含む方法。
態様26:横隔膜、骨格筋および心臓の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法、好ましくはin vitroまたはex vivoの方法であって:
- 態様1、4、5および7のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含む、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセットまたは態様17~19のいずれか1つによるベクターを細胞に導入すること;および
- 細胞において導入遺伝子産物を発現させること、を含む方法。
態様27:それを必要とする対象への、態様1~3および6のいずれか1つによる核酸調節エレメントを各々含む、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物の治療的有効量の投与を含む、MTMの治療方法。
態様28:それを必要とする対象への、態様1、4、5および7のいずれか1つによる核酸調節エレメントを各々含む、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物の治療的有効量の投与を含む、ポンペ病の治療方法。
態様29:筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)/ベッカー筋ジストロフィー(BMD))、筋緊張性ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー(DM)、デュシェンヌジストロフィン症、サルコグリカン症、ミヨシミオパシー、フクヤマ型先天性筋ジストロフィー、ジスフェルリン症、神経筋疾患、運動ニューロン疾患(MND)、例えばシャルコー-マリー-トゥース病(CMT)、脊髄筋萎縮(SMA)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、エメリー-ドライフス筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパシー、肢帯筋ジストロフィー、代謝ミオパシー、筋炎症性疾患、筋無力症、ミトコンドリアミオパシー、イオンチャネルの異常、核膜病、心筋症、心臓肥大、心不全、遠位型ミオパシー、心血管疾患、血友病AおよびBを含む血友病ならびに糖尿病、を含む群から選択される疾患または障害のいずれか1つを治療する方法であって、態様1~7のいずれか1つによる核酸調節エレメントを各々含む、態様10~16のいずれか1つによる核酸発現カセット、態様17~19のいずれか1つによるベクターまたは態様20による医薬組成物の治療的有効量の投与を含む方法。
態様30。配列番号94に規定されるコドン最適化ヒトGAA遺伝子
態様31。遺伝子療法で使用するための、より詳細にはGAA発現の回復またはGAA発現の増加を必要とする疾患の治療で使用するためのコドン最適化ヒトGAA遺伝子。より好ましくは、前記疾患は、ポンペ病またはデュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
態様32。配列番号96に規定されるコドン最適化ヒトMTM1遺伝子。
態様33。遺伝子療法で使用するための、より詳細にはMTM1発現の回復またはMTM発現の増加を必要とする疾患の治療で使用するためのコドン最適化ヒトMTM1遺伝子。より好ましくは、前記疾患は、MTM疾患またはデュシェンヌ型筋ジストロフィーである。
態様34。態様30のコドン最適化ヒトGAA遺伝子を含むベクター。
態様35。態様32のコドン最適化ヒトMTM1遺伝子を含むベクター。
態様36。態様34または35によるベクターを含む医薬組成物。
態様37。態様30のコドン最適化ヒトGAA遺伝子を含む、態様1および4~5のいずれか1つによるベクター。
態様38。態様32のコドン最適化ヒトMTM1遺伝子を含む、態様1~3および5のいずれか1つによるベクター。
態様39。横隔膜、骨格筋および心臓の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法、好ましくはin vitroまたはex vivoの方法であって:
- 最大長1000ヌクレオチド、好ましくは800ヌクレオチド、より好ましくは700ヌクレオチド、600ヌクレオチドまたは550ヌクレオチドを有する核酸調節エレメントを含み、配列番号4または配列番号64によって規定される配列、前記配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、前記配列の相補配列、あるいは前記核酸調節エレメントにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む、態様10~16による核酸発現カセット、または態様17~19のいずれか1つによるベクターを細胞に導入すること;および
- 細胞において導入遺伝子産物を発現させること
を含む方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】横隔膜および骨格筋に特異的な、または横隔膜、骨格筋および心臓に特異的な潜在的核酸調節エレメントの同定の流れ図。核酸調節エレメントを同定するために、以下のステップを含むコンピュータによるアプローチを使用した:(1)RNA(定量化)次世代シークエンシングによる、ヒト横隔膜組織を含む異なるヒト組織からの全RNA試料の遺伝子発現プロファイリング、(2)i)横隔膜および骨格筋(17個の遺伝子)およびii)横隔膜、骨格筋および心臓(10個の遺伝子)において高度におよび特異的に発現される遺伝子を同定するための遺伝子発現プロファイルの比較、(3)ENSEMBLを使用して同定された遺伝子の転写開始部位を見つけること、ならびに(4)i)高いDNase過敏性部位;ii)開放的なクロマチンに関連したエピジェネティックマーカー(アセチル化、メチル化)の高い含有量;iii)転写因子結合部位の高い含有量;iv)脊椎動物の間での強力な進化的保存;およびv)3種(ヒト、ラット、マウス)において保存されている転写因子結合部位、に基づいて、UCSCゲノムブラウザーデータベースを使用して候補核酸調節エレメントを選択すること。
図2】列挙したヒト組織からの全RNA試料中の遺伝子ACTA1(A)、CKM(B)、TPM2(C)、MYL1(D)、TNNC2(E)、FHL1(F)、TNNT1(G)、TNNI2(H)、MYLPF(I)、TNNT3(J)、MYH2(K)、SLN(L)、MYBPC1(M)、ENO3(N)、CA3(O)、ATP2A1(P)、MYH1(Q)の発現を示す図。発現は、100万のマッピングされた読み取りデータあたりの転写物1キロベースあたりの断片として示される(FPKM)。
図3】列挙したヒト組織からの全RNA試料中の遺伝子MYL2(A)、MB(B)、DES(C)、TNNC1(D)、TCAP(E)、MYH7(F)、ALDOA(G)、TPM1(H)の発現を示す図。発現は、100万のマッピングされた読み取りデータあたりの転写物1キロベースあたりの断片として示される(FPKM)。
図4】デスミンプロモーターのin vivoでの比較を示す図。SCIDマウスは、最も頑強な骨格筋特異的CRE(Sk-SH4と呼ばれる)を異なるデスミンプロモーター:Sk-SH4-hDES1.4kb、(配列番号92)Sk-SH4-hDES1.0kbおよび(配列番号91)Sk-SH4-mDES(配列番号90)と一緒に含有するAAV9-ルシフェラーゼベクターの1×1010vg/マウスで注射し、マウスの二頭筋(A)、横隔膜(B)、腓腹筋(C)、心臓(D)、四頭筋(E)、脛骨(F)および三頭筋(G)における光子シグナルとして定量化した。
図5A】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。横隔膜における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5B】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。四頭筋における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5C】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。腓腹筋における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5D】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。脛骨における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5E】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。二頭筋における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5F】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。三頭筋における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5G】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。全骨格筋組織における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5H】本発明による横隔膜CRE(Dph-CRE)の不在または存在下における組織発現レベルの比較を示す図。心臓における発現。左のグラフでは、hDES1.4kbプロモーターおよび筋肉特異的CRE Sk-SH4(配列番号121)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CRE(Dph-CRE)の発現における差の倍率は、hDES1.4kbプロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。右のグラフでは、SPc5-12プロモーターおよび筋肉特異的CRE CSk-SH5(配列番号122)を含むベクター主鎖における異なる新しい横隔膜CREの発現における差の倍率は、SPc5-12プロモーターだけを有する同じベクター主鎖に対して(下の数字)、および新しいCREのない同じベクター主鎖に対して(上の数字)示す。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図5I】横隔膜CREの特異性(横隔膜、骨格筋および心臓において主に発現されるが他の組織では発現されない)。横隔膜CREの番号は、表3および4の番号付けに対応する。
図6A】ヒトコドン最適化GAA遺伝子のmRNA発現に及ぼす筋肉特異的CRE(CSk-SH5-配列番号122)の影響。
図6B】GAAタンパク質発現の増加。マウス器官からの総タンパクを、製造業者のプロトコールにより抽出した。総タンパクを試料緩衝液で希釈して、hGAA ELISAプレートに加えた。バックグラウンドは、注射を受けていないマウスにより引き算した。結果は、コドン最適化hGAA配列が翻訳効率を向上させ、2~3倍高い発現をもたらすことができることを示す。
図7A】ヒトコドン最適化MTM1遺伝子のmRNA発現に及ぼす骨格筋特異的CRE(Sk-SH4-配列番号121)の影響。
図7B】コドン最適化は、腓腹筋および横隔膜それぞれにおけるhMTM1タンパク質発現の2.2~3.8倍の増加につながった。
図8】AAVベクター主鎖の概略図。A)プロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子またはレポーター遺伝子およびポリA部位にカップリングしたDph-CREを有する参照主鎖。B-C)Dph-CREの後B)またはDph-CREの前C)にカップリングされたさらなる筋肉CRE(Sk-CRE)または心筋CRE(CSk-CRE)を有すること以外、A)と同じである。
図9】A)hMTMcoまたはB)hGAAco導入遺伝子の発現のためのAAVベクターの概略図。ベクターA)は、AAVベクターのITRの間にクローニングされる、Dph-CRE(Dia-CRMと呼ばれる)の1つ、Sk-SH4-CRE(配列番号121)、hDes1,4kbプロモーター、MVMイントロン、hMTM1co導入遺伝子および合成ポリA部位をさらに含む。ベクターB)は、AAVベクターのITRの間にクローニングされる、Dph-CRE(Dia-CRMと呼ばれる)の1つ、CSk-SH5-CRE(配列番号122)、SPc5-12プロモーター、MVMイントロン、hGAAco導入遺伝子および合成ポリA部位をさらに含む。
図10】横隔膜特異的シス調節エレメント(Dph-CRE)CRE04(配列番号4)をCSk-SH5(配列番号122)と一緒に使用した、GAA治療的遺伝子転写の増加を示す図。各バーの上に示される差倍率は、Dph-CRE含有AAV(暗灰色)とDph-CRE04およびCSk-SH5(淡灰色)なしのその対照の間の相対的発現から計算される。
図11】横隔膜特異的シス調節エレメント(Dph-CRE)CRE64(配列番号64)をSk-SH4(配列番号121-図ではSKCRM4と呼ばれる)と一緒に使用した、MTM1治療的遺伝子転写の増加を示す図。各バーの上に示される差倍率は、Dph-CRE含有AAV(淡灰色)とDph-CRE64およびSk-SH4(黒色)なしのその対照の間の相対的発現から計算される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
説明
本明細書で用いるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに別途指示しない限り、単数形および複数形の両方を含む。
【0025】
本明細書で用いられる用語「含むこと(comprising)」、「含む(comprise)」および「構成する」は、「含むこと(including)」、「含む(include)」または「含有すること」、「含有する」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバー、要素、方法ステップも排除しない。これらの用語は、「からなる」および「から本質的になる」も包含し、それらは特許用語において確立された意味を享受する。
【0026】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲の中に包含される全ての数字および端数、ならびに列挙されるエンドポイントを含む。
【0027】
本明細書で用いる用語「約」または「概ね」は、パラメータ、量、時間的期間などの測定可能な値を指すときは、そのような変動が開示される発明を実行するのに適当である限り、指定された値のおよびそれからの変動、例えば、指定された値のおよびそれからの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらにより好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含するものである。修飾語「約」が指す値は、それ自体も特異的に、および好ましくは開示されていることを理解すべきである。
【0028】
用語「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」、例えば一群のメンバーの1もしくは複数メンバーまたは少なくとも1メンバーはそれ自体明確であるが、さらなる実例により、本用語は、とりわけ前記メンバーのいずれか1つ、または前記メンバーのいずれか2つまたはそれより多く、例えば前記メンバーのいずれか3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上または7つ以上等、および最大で全ての前記メンバーへの言及を包含する。別の例では、「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7またはより多くを指すことができる。
【0029】
本明細書における発明の背景の議論は、発明の状況を説明するために含まれる。これは、言及される材料のいずれも、特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で、いかなる国においても、公開された、公知であった、または一般常識の一部であったと認めるものとして解釈されないものとする。
【0030】
この開示全体で、様々な刊行物、特許および公開特許明細書が、確認引用によって参照される。本明細書で引用される全文書は、これにより参照により完全に組み込まれる。詳細には、本明細書に具体的に言及されているそのような文書の教示またはセクションは、参照により組み込まれる。
【0031】
別途定義されない限り、本発明の開示で使用される専門用語および科学用語を含む全ての用語は、この発明が属する分野の当業技術者が通常理解する意味を有する。さらなるガイダンスにより、本発明の教示をより良く評価するために用語の定義が含まれる。本発明の特定の態様または本発明の特定の実施形態に関連して特定の用語が定義されるときにも、そのような含意はこの明細書全体に適用される、すなわち、別途定義されない限り本発明の他の態様または実施形態の場面にも適用されるものである。
【0032】
以下の節では、本発明の異なる態様または実施形態がさらに詳細に規定される。明らかにそれとは反対に指示されない限り、そのように規定される各態様または実施形態は、任意の他の態様または実施形態と組み合わせることができる。詳細には、好ましいかまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいかまたは有利であると示される任意の他の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができる。
【0033】
この明細書全体で「一実施形態」、「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書全体の様々な場所における語句「一実施形態では」または「ある実施形態では」の出現は、同じ実施形態を必ずしも全て指しているわけではないが、その可能性もある。さらに、この開示から当業者にとって明らかになるように、特定の特徴、構造または特性を、任意の適する様式で1つまたは複数の実施形態で組み合わせることができる。さらに、本明細書に記載される一部の実施形態は他の実施形態に含まれる特徴の一部を含むか含まないが、当業者が理解するように異なる実施形態の特徴の組合せは本発明の範囲内にあり、異なる実施形態を形成するものである。例えば、添付の請求項で、請求される実施形態のいずれも任意の組合せで使用することができる。
【0034】
本発明に関する一般的な方法のために、とりわけ、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版」(Sambrookら、1989)、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら、1987)を含む周知の教科書が参照される。
【0035】
一態様では、本発明は、横隔膜および骨格筋の細胞もしくは組織における、または横隔膜、心臓および骨格筋の細胞もしくは組織における遺伝子発現を強化するための、配列番号1から89、これらの配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、または配列番号1から89からなる群から選択される配列の機能的断片からなる群から選択される配列を含む、それから本質的になる(すなわち、調節エレメントは、例えばクローニング目的のために使用される配列をさらに含むことができるが、示される配列は調節エレメントの必須部分を構成する、例えば、それらはプロモーターなどのより大きな調節領域の一部を形成しない)、またはそれからなる、核酸調節エレメントに関する。
【0036】
下の表3は、横隔膜および骨格筋の細胞または組織における遺伝子発現を強化するための異なる核酸調節エレメントのコアヌクレオチド配列、ならびにそれらの対応する遺伝子および長さを示す。
【0037】
【表1-1】
【0038】
【表1-2】
【0039】
【表1-3】
【0040】
【表1-4】
【0041】
【表1-5】
【0042】
【表1-6】
【0043】
【表1-7】
【0044】
【表1-8】
【0045】
【表1-9】
【0046】
【表1-10】
【0047】
【表1-11】
【0048】
【表1-12】
【0049】
下の表4は、横隔膜、心臓および骨格筋の細胞または組織における遺伝子発現を強化するための異なる核酸調節エレメントのコアヌクレオチド配列、ならびにそれらの対応する遺伝子および長さを示す。
【0050】
【表2-1】
【0051】
【表2-2】
【0052】
【表2-3】
【0053】
【表2-4】
【0054】
【表2-5】
【0055】
【表2-6】
【0056】
本明細書で用いるように、「CRE」(シス調節エレメント)、「CRM」(シス調節モジュール)または「SH」とも呼ばれる「核酸調節エレメント」または「調節エレメント」は、遺伝子の転写、特に遺伝子の組織特異的転写を調節および/または制御することが可能である、転写制御エレメント、より詳細には非コードシス作用性転写制御エレメントを指す。調節エレメントは、少なくとも1つの転写因子結合部位(TFBS)、より詳細には組織特異的転写因子のための少なくとも1つの結合部位、最も詳細には筋肉特異的転写因子のための少なくとも1つの結合部位を含む。一般的に、本明細書で用いるように、調節エレメントは、調節エレメントなしでプロモーターだけからの遺伝子の転写と比較したとき、プロモーターによって促進される遺伝子発現を増加または強化する。したがって、調節エレメントはエンハンサー配列を特に含むが、転写を強化する調節エレメントが一般的なはるか上流のエンハンサー配列に限定されずに、それらが調節する遺伝子から任意の距離に存在することができることを理解すべきである。実際、転写を調節する配列が、それらがin vivoで調節する遺伝子の上流(例えば、プロモーター領域)または下流(例えば、3’UTR)に位置することができること、および遺伝子のすぐ近くにまたはずっと遠くに位置することができることは、当技術分野で公知である。注目すべきは、本明細書に開示される調節エレメントは天然に存在する配列を一般的に含むが、そのような調節エレメントまたは調節エレメントのいくつかの複製の組合せ(一部)、すなわち天然に存在しない配列を含む調節エレメント自体も、調節エレメントとして想定されている。本明細書で用いる調節エレメントは、転写制御に関与するより大きな配列の一部、例えばプロモーター配列の一部を含むことができる。しかし、調節エレメントだけでは転写の開始のために一般的に十分でなく、この目的のためにはプロモーターを必要とする。本明細書に開示される調節エレメントは、核酸分子として、すなわち単離された核酸または単離された核酸分子として提供される。したがって、前記核酸調節エレメントは、天然に存在するゲノム配列の小部分にすぎない配列を有し、したがってこのように天然に存在しないが、そこから単離される。
【0057】
本明細書で用いるように用語「核酸」は、ヌクレオチドで本質的に構成される任意の長さのオリゴマーまたはポリマー(好ましくは線状ポリマー)を一般的に指す。ヌクレオチド単位は、複素環式の塩基、糖基、および少なくとも1つの、例えば1つ、2つまたは3つの、改変または置換されたリン酸基を含むリン酸基を一般的に含む。複素環式の塩基は、とりわけプリンおよびピリミジン塩基、例えば、天然に存在する核酸に広く存在するアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)、他の天然に存在する塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)ならびに化学的または生化学的に改変された(例えば、メチル化された)非天然のまたは誘導体化された塩基を含むことができる。糖基は、とりわけペントース(ペントフラノース)基、例えば、好ましくは天然に存在する核酸に一般的なリボースおよび/もしくは2-デオキシリボース、またはアラビノース、2-デオキシアラビノース、トレオースまたはヘキソース糖基、ならびに改変または置換された糖基を含むことができる。本明細書において意図する核酸は、天然に存在するヌクレオチド、改変されたヌクレオチドまたはそれらの混合物を含むことができる。改変されたヌクレオチドは、改変された複素環式の塩基、改変された糖部分、改変されたリン酸基またはその組合せを含むことができる。安定性、酵素分解への抵抗性、または一部の他の有益な特性を向上させるために、リン酸基または糖の改変を導入することができる。さらに好ましくは、用語「核酸」は、hnRNA、mRNA前駆体、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅生成物、オリゴヌクレオチドおよび合成(例えば、化学合成された)DNA、RNAまたはDNA/RNAハイブリッドを具体的に含む、DNA、RNAおよびDNA/RNAハイブリッド分子を包含する。核酸は、天然に存在するもの、例えば、天然に存在するかもしくはそこから単離されるものであってよく;または天然に存在しないもの、例えば、組換えのものであってよく、すなわち、組換えDNA技術によって生成すること、および/または部分的もしくは完全に、化学的もしくは生化学的に合成することができる。「核酸」は、二本鎖、部分的二本鎖または一本鎖であってよい。一本鎖の場合、核酸は、センス鎖またはアンチセンス鎖であってよい。さらに、核酸は環状または線状であってよい。
【0058】
本明細書で用いるように、「転写因子結合部位」、「転写因子結合配列」または「TFBS」は、転写因子が結合する核酸領域の配列を指す。TFBSの非限定的な例には、TCF3またはE2Aとしても知られる転写因子3のための結合部位;NF1としても知られる核因子Iのための結合部位;C/EBPとしても知られるCCAAT-エンハンサー結合タンパク質のための結合部位;MyoDとしても知られる筋原性分化のための結合部位;SREBPとしても知られるステロール調節エレメント結合タンパク質のための結合部位;LRFとしても知られる白血病/リンパ腫関連因子のための結合部位;p53としても知られるタンパク質53のための結合部位;HNF3aとしても知られる肝細胞核因子3-アルファのための結合部位;HNF3bとしても知られる肝細胞核因子3-ベータのための結合部位;HNF4としても知られる肝細胞核因子4のための結合部位;MEF2AまたはRSRFC4としても知られる筋細胞特異的エンハンサー因子2Aのための結合部位;PPARとしても知られるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体のための結合部位;SRFとしても知られる血清応答因子のための結合部位;Tal1_bとしても知られる転写活性化因子様タンパク質1bのための結合部位が含まれる。転写因子結合部位は、Transfac(登録商標)などのデータベースにおいて見出すことができる。
【0059】
本明細書に開示される配列は、横隔膜および骨格筋特異的遺伝子の転写をin vivoで制御することが可能な調節エレメントの配列の一部であってよい。横隔膜および骨格筋特異的調節エレメントの個別の例は、以下の遺伝子を特に制御することができる(表2を参照):ACTA1、CKM、TPM2、MYL1、TNNC2、FHL1、TNNT1、TNNI2、MYLPF、TNNT3、MYH2、SLN、MYBPC1、ENO3、CA3、ATP2A1またはMYH1。
【0060】
したがって、実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ACTA1調節エレメント、すなわち、ACTA1遺伝子(アルファ-アクチン-1遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号1~5のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、CKM調節エレメント、すなわち、CKM遺伝子(筋肉クレアチンキナーゼ遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号6または7のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYL2調節エレメント、すなわち、MYL2(ミオシン、軽鎖2遺伝子)遺伝子の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号8または9のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TPM2調節エレメント、すなわち、TPM2遺伝子(トロポミオシン2遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号10~12のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYL1調節エレメント、すなわち、MYL1遺伝子(遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号13~17のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TNNC2調節エレメント、すなわち、TNNC2遺伝子(トロポニンT2、心臓型の遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号18または19のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、FHL1調節エレメント、すなわち、FHL1遺伝子(4つと半分のLIMドメイン1遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号20~26のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TNNT1調節エレメント、すなわち、TNNT1遺伝子(トロポニンT 1型遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号27または28のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TNNI2調節エレメント、すなわち、TNNI2遺伝子(トロポニンI 2型遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号29~31のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYLPF調節エレメント、すなわち、MYLPF遺伝子(ミオシン軽鎖、リン酸化可能、骨格速筋遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号32を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TNNT3調節エレメント、すなわち、TNNT3遺伝子(トロポニンT 3型遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号33~38のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYH2調節エレメント、すなわち、MYH2遺伝子(ミオシン、重鎖2遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号82または83のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、SLN調節エレメント、すなわち、SLN遺伝子(サルコリピン遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号39~42のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYBPC1調節エレメント、すなわち、MYBPC1遺伝子(ミオシン結合タンパク質C、スロータイプの遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号43~50のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ENO3調節エレメント、すなわち、ENO3遺伝子(エノラーゼ3遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号51~54のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、CA3調節エレメント、すなわち、CA3遺伝子(炭酸脱水酵素III遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号55~57のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ATP2A1調節エレメント、すなわち、ATP2A1遺伝子(ATPアーゼ、Ca++輸送、心筋、速い攣縮1遺伝子または筋形質/小胞体カルシウムATPアーゼ1遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号58~64のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYH1調節エレメント、すなわち、MYH1遺伝子(ミオシン、重鎖1遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号65を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。
【0061】
本明細書に開示される配列は、横隔膜、骨格筋および心臓に特異的な遺伝子の転写をin vivoで制御することが可能な調節エレメントの配列の一部であってよい。横隔膜、骨格筋および心臓に特異的な調節エレメントの特定の例は、以下の遺伝子を特に制御することができる:ACTA1、CKM、MYL2、MB、DES、TNNC1、TCAP、MYH7、ALDOAまたはTPM1。したがって、実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ACTA1調節エレメント、すなわち、ACTA1遺伝子(アルファ-アクチン-1遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号1~5のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、CKM調節エレメント、すなわち、CKM遺伝子(筋肉クレアチンキナーゼ遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号6または7のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYL2調節エレメント、すなわち、MYL2(ミオシン、軽鎖2遺伝子)遺伝子の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号8または9のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MB調節エレメント、すなわち、MB遺伝子(ミオグロビン遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号66~68のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、DES調節エレメント、すなわち、DES遺伝子(デスミン遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号69~71のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TNNC1調節エレメント、すなわち、TNNC1遺伝子(トロポニンC1型遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号72~74のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TCAP調節エレメント、すなわち、TCAP遺伝子(タイチン-キャップ遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号75を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、MYH7調節エレメント、すなわち、MYH7遺伝子(ミオシン、重鎖7遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号76または77のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、ALDOA調節エレメント、すなわち、ALDOA遺伝子(アルドラーゼA遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号78~81のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。他の実施形態では、本明細書に開示される核酸調節エレメントは、TPM1調節エレメント、すなわち、TPM1遺伝子(トロポミオシン1遺伝子)の発現をin vivoで制御する調節エレメント、例えば配列番号84~89のいずれか1つまたは複数を含む調節エレメント、またはその機能的断片からの配列を含む。
【0062】
本明細書で用いるように、用語「同一性」および「同一の」などは、2つのポリマー分子の間、例えば2つの核酸分子、例えば2つのDNA分子の間の配列類似性を指す。配列アラインメントおよび配列同一性の判定は、例えば、Altschulら 1990(J Mol Biol 215:403~10)によって元々記載されたBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)、例えば、TatusovaおよびMadden 1999(FEMS Microbiol Lett 174:247~250)によって記載される「Blast 2 sequences」アルゴリズムを使用して実行することができる。一般的に、配列同一性百分率は、配列の全長にわたって計算される。本明細書で用いるように、用語「実質的に同一である」は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を表す。
【0063】
本出願で用いられる用語「機能的断片」は、本明細書に開示される、筋肉特異的発現を調節する能力を保持する調節エレメント配列の断片を指す、すなわち、それらは組織特異性をなお付与することができ、それらは、それらが由来する配列と同じ方法で(おそらく同じ程度でないが)(導入)遺伝子の発現を調節することが可能である。機能的断片は、それらが由来する配列からの少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350または少なくとも400の連続したヌクレオチドを好ましくは含むことができる。さらに好ましくは、機能的断片は、それらが由来する配列に存在する転写因子結合部位(TFBS)の少なくとも1、より好ましくは少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4、さらにより好ましくは少なくとも5、少なくとも10、または少なくとも15個を含むことができる。
【0064】
本出願で用いられる「横隔膜および骨格筋特異的発現」は、他の(すなわち、横隔膜または骨格筋以外の)組織と比較して、横隔膜および骨格筋の細胞または横隔膜もしくは骨格筋の組織における(導入)遺伝子(RNAおよび/またはポリペプチドとして)の優先的または支配的な発現を指す。特定の実施形態により、(導入)遺伝子発現の少なくとも50%、より詳細には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%は、横隔膜および/または骨格筋の細胞または組織の中で起こる。特定の実施形態により、横隔膜および骨格筋に特異的な発現は、筋肉以外の他の器官または組織、例えば、肺、肝臓、脳、腎臓および/または脾臓への発現遺伝子産物が10%未満、5%未満、2%未満、またはさらに1%未満の「漏出率」であることを必要とする。
【0065】
本明細書で用いるように、「横隔膜、骨格筋および心臓に特異的な発現」は、横隔膜、心臓、骨格筋の細胞または組織、特に心筋における(導入)遺伝子の優先的または支配的な発現を指す。特定の実施形態により、(導入)遺伝子発現の少なくとも50%、より詳細には少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%は、横隔膜、骨格筋の細胞および心臓組織の中で起こる。したがって、特定の実施形態により、(導入)遺伝子発現の10%未満、5%未満、2%未満、またはさらに1%未満は、横隔膜、心臓および骨格筋以外の器官または組織で起こる。
【0066】
同じことが必要な変更を加えて筋細胞特異的および筋芽細胞特異的発現に適用され、それらは筋肉特異的発現の特定の形であると考えることができる。本出願全体で、発現との関連で筋肉特異性が指摘される場合、筋細胞特異的および筋芽細胞特異的発現も明示的に想定される。同様に、心臓および骨格筋特異的発現が本出願で使用される場合、心筋細胞および骨格筋細胞特異的発現ならびに心臓の筋芽細胞および骨格筋芽細胞特異的発現も明示的に想定される。同様に、骨格筋特異的発現が本出願で使用される場合、骨格筋細胞特異的および骨格筋芽細胞特異的発現も明示的に想定される。
【0067】
本明細書で用いるように、用語「心臓の筋肉」または「心筋」は、心臓において見出される自律的に調節される横紋筋タイプを指す。
【0068】
本明細書で用いるように、用語「骨格筋」は、骨格に付着している自発的に制御される横紋筋タイプを指す。骨格筋の非限定的な例には、二頭筋、三頭筋、四頭筋、脛骨内筋および腓腹筋が含まれる。
【0069】
本明細書で用いるように、用語「筋細胞」は、それが適当な条件下で筋肉特異的表現型を発現することが可能であるように、前駆体筋芽細胞から分化した細胞を指す。最終分化筋細胞はお互いと融合して、筋線維の主構成成分である管状筋細胞を形成する。用語「筋細胞」は、脱分化した筋細胞も指す。本用語は、そのような細胞が一次であるかまたは継代されているかを問わず、in vivo細胞およびex vivo培養細胞を含む。
【0070】
本明細書で用いるように、用語「筋芽細胞」は、分化して筋肉細胞または筋細胞を生成する、中胚葉の中の胚細胞を指す。本用語は、そのような細胞が一次であるかまたは継代されているかを問わず、in vivo細胞およびex vivo培養細胞を含む。
【0071】
実施形態では、本発明は、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)からなる群から選択される配列;配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)からなる群から選択される配列のいずれかと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、または、その機能的断片を含むか、それから本質的になるか、それからなる、横隔膜および骨格筋における遺伝子発現を強化するための核酸調節エレメントに関し、前記機能的断片は、それが由来する配列からの少なくとも20、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200または少なくとも250の連続したヌクレオチドを含み、前記機能的断片は、それが由来する配列に存在する転写因子結合部位(TFBS)の少なくとも1、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、または少なくとも15個を含む。
【0072】
さらなる実施形態では、本発明は、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)からなる群から選択される配列;または、配列番号1~9、66~81および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)からなる群から選択される配列のいずれか1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列、または、その機能的断片、を含むか、それから本質的になるか、それからなる、横隔膜、骨格筋および心臓における遺伝子発現を強化するための核酸調節エレメントに関し、前記機能的断片は、それが由来する配列からの少なくとも20、好ましくは少なくとも25、より好ましくは少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200または少なくとも250の連続したヌクレオチドを含み、前記機能的断片は、それが由来する配列に存在する転写因子結合部位(TFBS)の少なくとも1、好ましくは少なくとも5、より好ましくは少なくとも10、または少なくとも15個を含む。
【0073】
本明細書に開示される2つ以上の同一のまたは異なる配列またはその機能的断片を組み合わせることにより、人工配列を含む核酸調節エレメントを作製することも可能である。したがって、ある特定の実施形態では、横隔膜および骨格筋の細胞または組織における遺伝子発現を強化するための、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)からなる群から選択される少なくとも2つの配列を含む、核酸調節エレメントが提供される。
【0074】
あるいは、ある特定の実施形態では、横隔膜、骨格筋および心臓の細胞または組織における遺伝子発現を強化するための、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)からなる群から選択される少なくとも2つの配列を含む、核酸調節エレメントが提供される。
【0075】
例えば、本明細書で、配列番号1~89のいずれか1つの2、3、4または5個の反復配列、例えばタンデムリピート、またはその組合せを含むか、それから本質的になるか、それからなる、核酸調節エレメントが開示される。
【0076】
人工配列を含む核酸調節エレメントの特定の例には、本明細書に開示される配列に存在する転写因子結合部位(TFBS)を再編成することによって得られる調節エレメントが含まれる。前記再配列は、TFBSの順序を変更すること、および/または他のTFBSと比較して1つまたは複数のTFBSの位置を変更すること、および/またはTFBSの1つまたは複数の複製数を変更することを包含することができる。例えば、本明細書において、筋肉特異的遺伝子発現、特に心臓および骨格筋特異的遺伝子発現を強化するための、E2A、HNH1、NF1、C/EBP、LRF、MyoDおよびSREBPのための;または、E2A、NF1、p53、C/EBP、LRFおよびSREBPのための;または、E2A、HNH1、HNF3a、HNF3b、NF1、C/EBP、LRF、MyoDおよびSREBPのための;または、E2A、HNF3a、NF1、C/EBP、LRF、MyoDおよびSREBPのための;または、E2A、HNF3a、NF1、CEBP、LRF、MyoDおよびSREBPのための;または、HNF4、NF1、RSRFC4、C/EBP、LRFおよびMyoD、または、NF1、PPAR、p53、C/EBP、LRFおよびMyoDのための結合部位を含む、核酸調節エレメントも開示される。さらに、例えば、本明細書において、横隔膜および骨格筋特異的遺伝子発現を強化するための、特に、NFYA、SIN3A、TCF12、PHF8、IRF1の1つまたは複数、およびその組合せ、例えばNFYA、SIN3A、TCF12、PHF8およびIRF1のための結合部位を含む、核酸調節エレメントも開示される。さらに、例えば、本明細書において、横隔膜、心臓および骨格筋特異的遺伝子発現を強化するための、特に、MAFF、FOXA2、TAL1、CEBPB、RFX5、HSF1、SRFの1つまたは複数、およびその組合せ、例えばMAFF、FOXA2、TAL1、CEBPB、RFX5、HSF1およびSRFのための結合部位を含む、核酸調節エレメントも開示される。一部の実施形態では、これらの核酸調節エレメントは、列挙されるTFBSのいずれか1つまたは複数の少なくとも2つ、例えば2、3、4、またはそれより多くの複製を含む。
【0077】
調節エレメントが一本鎖の核酸として提供される場合、例えば、一本鎖AAVベクターを使用するとき、相補鎖は開示される配列に同等であると考えられる。したがって、本明細書において、本明細書に記載される配列、特に配列番号1~89;これらの配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列;または、その機能的断片からなる群から選択される配列の相補配列を含むか、それから本質的になるか、それからなる、筋肉特異的遺伝子発現を強化するための核酸調節エレメントも開示される。
【0078】
さらに、本明細書において、筋肉特異的遺伝子発現を強化するための、本明細書に記載の核酸調節エレメント、特に、配列番号1~89;これらの配列のいずれかと、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列;その機能的断片からなる群から選択される配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸調節エレメント;または、その相補配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズする核酸調節エレメントも開示される。前記核酸調節エレメントは、それらがハイブリダイズする配列と等しい長さである必要はない。好ましい実施形態では、前記ハイブリダイズする核酸調節エレメントのサイズは、それがハイブリダイズする配列から、長さが25%、特に長さが20%、より詳細には長さが15%、最も詳細には長さが10%を超えて異ならない。
【0079】
表現「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、温度および塩濃度の規定条件の下で標的核酸分子にハイブリダイズする核酸分子の能力を指す。一般的に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、天然の二重鎖の融点(Tm)から25℃~30℃以下(例えば、20℃、15℃、10℃または5℃)下回るだけである。Tmの計算方法は、当技術分野で周知である。非限定的な例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成するための代表的な塩および温度条件は、以下の通りである:65℃の1×SSC、0.5%SDS。略記号SSCは、核酸ハイブリダイゼーション溶液で使用する緩衝液を指す。1リットルの20×(20倍濃縮)保存用SSC緩衝溶液(pH7.0)は、175.3gの塩化ナトリウムおよび88.2gのクエン酸ナトリウムを含有する。ハイブリダイゼーションを達成するための代表的時間は、12時間である。
【0080】
好ましくは、本明細書に記載される調節エレメントは、限られた長さであるだけであるが、完全に機能的である。これは、それらのペイロード容量を不必要に制限することなく、ベクターまたは核酸発現カセットにおけるそれらの使用を可能にする。したがって、実施形態では、本明細書に開示される調節エレメントは、1500ヌクレオチド以下、1000ヌクレオチド以下、900ヌクレオチド以下、800ヌクレオチド以下、700ヌクレオチド以下、より好ましくは600ヌクレオチド以下、例えば550ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、450ヌクレオチド以下、400ヌクレオチド以下、350ヌクレオチド以下、または300ヌクレオチド以下の核酸である(すなわち、核酸調節エレメントは、1500ヌクレオチド、1000ヌクレオチド、900ヌクレオチド、800ヌクレオチド、700ヌクレオチド、好ましくは600ヌクレオチド、例えば550ヌクレオチド、500ヌクレオチド、450ヌクレオチド、400ヌクレオチド、350ヌクレオチドまたは300ヌクレオチドの最大長を有する)。
【0081】
しかし、開示される核酸調節エレメントは、調節活性(すなわち、転写の特異性および/または活性に関して)を保持することを理解すべきであり、したがって、それらは20ヌクレオチド、25ヌクレオチド、30ヌクレオチド、35ヌクレオチド、40ヌクレオチド、45ヌクレオチド、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、150ヌクレオチド、200ヌクレオチド、250ヌクレオチド、300ヌクレオチド、350ヌクレオチドまたは400ヌクレオチドの最小長を特に有する。
【0082】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号1~89;前記配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、例えば、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列;またはその機能的断片からなる群から選択される配列の1000ヌクレオチド以下、好ましくは900ヌクレオチド以下、好ましくは800ヌクレオチド以下、好ましくは700ヌクレオチド以下の核酸調節エレメントを提供する。
【0083】
本明細書に開示される核酸調節エレメントは、核酸発現カセットにおいて使用することができる。したがって、一態様では、本発明は、核酸発現カセットにおける本明細書に記載される核酸調節エレメントの使用を提供する。
【0084】
一態様では、本発明は、プロモーターに作動可能に連結されている、本明細書に記載される核酸調節エレメントを含む核酸発現カセットを提供する。実施形態では、核酸発現カセットは、導入遺伝子を含有しない。そのような核酸発現カセットは、内因性遺伝子の発現を促進するために使用することができる。好ましい実施形態では、核酸発現カセットは、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、本明細書に記載される核酸調節エレメントを含む。
【0085】
本明細書で用いるように、用語「核酸発現カセット」は、1つまたは複数の所望の細胞型、組織または器官における(導入)遺伝子の発現を誘導する、1つまたは複数の転写制御因子(例えば、限定されずに、プロモーター、エンハンサーおよび/または調節エレメント、ポリアデニル化配列およびイントロン)を含む核酸分子を指す。一般的に、それらは導入遺伝子も含有するが、核酸発現カセットは、核酸カセットが挿入される細胞における内因性遺伝子の発現を誘導することも想定される。
【0086】
本明細書で用いるように、用語「作動可能に連結される」は、そのエレメントが機能的に接続されて、互いと相互作用することができるような、各々と比較した様々な核酸分子エレメントの配置を指す。そのようなエレメントには、限定されずに、プロモーター、エンハンサーおよび/または調節エレメント、ポリアデニル化配列、1つまたは複数のイントロンおよび/またはエクソン、ならびに発現させる目的の遺伝子(すなわち、導入遺伝子)のコード配列を含めることができる。適切な向きであるかまたは作動可能に連結されているとき、核酸配列エレメントは、一緒に作用してお互いの活性をモジュレートし、最終的に導入遺伝子の発現レベルに影響を及ぼすことができる。モジュレートとは、特定のエレメントの活性のレベルを増加させること、低下させること、または維持することを意味する。他のエレメントと比較した各エレメントの位置は、各エレメントの5’末端および3’末端によって表すことができ、任意の特定のエレメントの間の距離は、そのエレメントの間の介在ヌクレオチドまたは塩基対の数によってリファレンスを付けることができる。当業者によって理解されるように、作動可能に連結とは機能的活性を暗示し、天然の位置的関連に必ずしも関係していない。実際、核酸発現カセットの中で使用されるとき、調節エレメントはプロモーターの直ぐ上流に一般的に位置する(これは一般的に正しいが、それは核酸発現カセットの中の位置の限定または除外であると絶対に解釈されるべきでない)が、in vivoの場合その必要性はない。例えば、その転写にそれが影響を及ぼす遺伝子の下流に存在する調節エレメント配列は、プロモーターの上流に位置するとき、同様に機能することができる。したがって、具体的な実施形態により、調節エレメントの調節または強化する作用は、位置に非依存性である。
【0087】
特定の実施形態では、核酸発現カセットは、本明細書に記載される1つの核酸調節エレメントを含む。代替の実施形態では、核酸発現カセットは、2つ以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の本明細書に記載される核酸調節エレメントを含む、すなわち、それらは、それらの調節(および/または強化)作用を強化するために、モジュール的に組み合わされる。さらなる実施形態では、2つ以上の核酸調節エレメントのうちの少なくとも2つは、同一であるかまたは実質的に同一である。さらなる実施形態では、2つ以上の調節エレメントの全ては、同一であるかまたは実質的に同一である。同一であるかまたは実質的に同一である核酸調節エレメントの複製は、核酸発現カセットの中のタンデムリピートとして提供することができる。代替のさらなる実施形態では、2つ以上の核酸調節エレメントのうちの少なくとも2つは互いと異なる、すなわち、異なる配列番号によって規定される。核酸発現カセットは、同一であるおよび実質的に同一である核酸調節エレメントと同一でない核酸調節エレメントの組合せを含むこともできる。
【0088】
例えば、核酸発現カセットは、配列番号1を含む核酸調節エレメント、および配列番号2~689のいずれか1つまたは複数を含む核酸調節エレメントを含むことができ;または、核酸発現カセットは、配列番号1~89のいずれか1つまたは複数を含む核酸調節エレメント、および別の組織型に特異的である核酸調節エレメント(シス調節エレメント、CRE、CRMまたはSH)、例えば、同じ著者からの以前の出願に開示されるもの:WO2015110449;WO2009130208;WO2009071679;WO2011051450;WO2016146757、WO2014063753;またはWO2014064277を含むことができる。あるいは、配列番号2~89によってそれぞれ規定される残りの調節エレメントについて、これを実行することができる。具体的な実施形態では、Sk-SH4(配列番号121)またはCSk-SH5(配列番号122)と呼ばれる筋肉特異的調節エレメントは、配列番号1~89によって規定される横隔膜シス調節エレメントのいずれか1つと組み合わせて使用することができる。
【0089】
本出願で用いられるように、用語「プロモーター」は、それらが作動可能に連結されている対応する核酸コード配列(例えば、導入遺伝子または内因性遺伝子)の転写を、直接的または間接的に調節する核酸配列を指す。プロモーターは、単独で機能して転写を調節することができるか、または1つまたは複数の他の調節配列(例えば、エンハンサーまたはサイレンサー、または調節エレメント)と協力して作用することができる。本出願との関連で、(導入)遺伝子の転写を調節するために、プロモーターは一般的に本明細書に開示される調節エレメントに作動可能に連結される。本明細書に記載される調節エレメントがプロモーターおよび導入遺伝子の両方に作動可能に連結されるとき、調節エレメントは、(1)導入遺伝子のかなりの程度の横隔膜特異的、特に横隔膜および骨格筋特異的、または横隔膜、心臓および骨格筋特異的発現をin vivoで(および/または心臓、横隔膜および骨格筋の細胞または組織に由来する細胞系ではin vitroで)付与することができ、および/または(2)横隔膜および骨格筋における、または横隔膜、心臓および骨格筋における(および/または心臓、横隔膜および骨格筋の細胞または組織に由来する細胞系ではin vitroでの)導入遺伝子の発現レベルを増加させることができる。
【0090】
プロモーターは、同種(すなわち、核酸発現カセットでトランスフェクトする動物、特に哺乳動物と同じ種に由来する)または異種(すなわち、発現カセットでトランスフェクトする動物、特に哺乳動物の種以外の供給源に由来する)であってよい。このように、プロモーターの供給源は、任意のウイルス、任意の単細胞原核生物もしくは真核生物の生物体、任意の脊椎動物もしくは無脊椎動物の生物体、または任意の植物であってよく、または、そのプロモーターが本明細書に記載される調節エレメントと組み合わせて機能的である限り、合成プロモーター(すなわち、天然に存在しない配列を有する)でさえあってよい。好ましい実施形態では、プロモーターは哺乳動物のプロモーター、特にマウスまたはヒトのプロモーターである。
【0091】
プロモーターは、誘導可能なまたは構成的プロモーターであってよい。
非限定的な例示的な骨格筋および/または横隔膜特異的プロモーターは、デスミンプロモーター、他の筋肉特異的プロモーター、例えば筋肉クレアチンキナーゼプロモーター(MCK)(Wang Bら、Gene Ther、2008)、アルファ-ミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖(MLC-2)、心臓トロポニンC(cTnC)、ミオゲニンMYF4プロモーター(Pacak C.A.ら、Genet Vaccines Ther、2008)、ウイルスのプロモーター、例えばマウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター(Suga Tら、Plos One、2011)、および横隔膜核酸調節エレメントの下流にクローニングするために使用することができる全ての潜在的プロモーターである。本明細書に開示される調節エレメントは、それらの天然のプロモーターならびに別のプロモーターと共に核酸発現カセットにおいて使用することができる。好ましくは、本明細書に開示される核酸発現カセットは、横隔膜、心臓および/もしくは骨格筋特異性を増加させるために、ならびに/または他の組織における発現の漏出を回避するために、横隔膜、心臓および/または骨格筋特異的プロモーターを含む。そのようなプロモーターの例は、横隔膜および/または骨格筋特異的プロモーター、例えば、表3に規定される遺伝子、すなわち、ACTA1、CKM、TPM2、MYL1、TNNC2、FHL1、TNNT1、TNNI2、MYLPF、TNNT3、MYH2、SLN、MYBPC1、ENO3、CA3、ATP2A1およびMYH1遺伝子の1つのプロモーター;または、横隔膜、骨格筋および心臓特異的プロモーター、例えば、表4に規定される遺伝子、すなわち、ACTA1、CKM、MYL2、MB、DES、TNNC1、TCAP、MYH7、ALDOAおよびTPM1遺伝子のいずれか1つのプロモーターである。筋肉特異的プロモーターの非限定的な例には、デスミン(DES)プロモーター、合成SPc-5-12プロモーター(SPc5-12-GTRM)、アルファ-アクチン1プロモーター(ACTA1)、クレアチンキナーゼ、筋肉(CKM)プロモーター、4つと半分のLIMドメインタンパク質1(FHL1)プロモーター、アルファ2アクチニン(ACTN2)プロモーター、フィラミン-C(FLNC)プロモーター、筋形質/小胞体カルシウムATPアーゼ1(ATP2A1)プロモーター、トロポニンI 1型(TNNI1)プロモーター、ミオシン-1(MYH1)プロモーター、リン酸化可能な、骨格速筋ミオシン軽鎖(MYLPF)プロモーター、アルファ-3鎖トロポミオシン(TPM3)プロモーター、アンキリン反復ドメイン含有タンパク質2(ANKRD2)プロモーター、ミオシン重鎖(MHC)プロモーター、ミオシン軽鎖(MLC)プロモーター、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、Liら(1999、Nat Biotechnol.17巻:241~245)に記載される合成筋肉プロモーター、例えばSPc5-12プロモーター、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、Wangら(2008、Gene Ther、15巻:1489~1499)に記載される、MCKエンハンサーからMCK基本プロモーターまでの二重または三重タンデムからそれぞれなるdMCKプロモーターおよびtMCKプロモーターが含まれる。
【0092】
特に好ましい実施形態では、プロモーターは哺乳動物のプロモーター、特にマウスまたはヒトのプロモーターである。
【0093】
好ましい実施形態では、プロモーターは、デスミン遺伝子、特にマウスのデスミン遺伝子に由来するもの、例えば配列番号90(図4を参照)に規定されるプロモーターであるか、またはヒトデスミン遺伝子に由来するもの、例えば配列番号91(1,0kb)もしくは配列番号92(1,4kb)に規定されるプロモーターである。好ましい実施形態では、デスミンプロモーターは、配列番号92の1,4kbプロモーターであり、それは、発現レベルをさらに増加させることが示されている(例を参照)。例えば、マウスのデスミンプロモーターは、pDRIVE-mDesmin(Invivogen)として市販されている。デスミンプロモーターは、心筋および骨格筋の両方で発現される。実施形態では、プロモーターは、骨格筋特異的プロモーター、特に、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター、より詳細には、Wangら(2008、Gene Ther、15巻:1489~1499)に記載される、MCKエンハンサーおよびMCK基本プロモーターの二重または三重タンデムからなる二重MCKプロモーターまたは三重MCKプロモーターである。さらに、プロモーターは核酸発現カセットの中の導入遺伝子のプロモーターである必要はないが、導入遺伝子はそれ自身のプロモーターから転写されることができる。
【0094】
核酸発現カセットの長さを最小にするために、調節エレメントを最小限のプロモーター、または本明細書に記載されるプロモーターの短縮版に連結することができる。本明細書で用いるように、「最小限のプロモーター」(基本プロモーターまたはコアプロモーターとも呼ばれる)は、発現を促進することがなお可能であるが、(例えば組織特異的)発現の調節に寄与する配列の少なくとも一部を欠いている、フルサイズのプロモーターの一部である。この定義は、遺伝子の発現を促進することが可能であるが、その遺伝子を組織特異的に発現するそれらの能力を失った、(組織特異的)調節エレメントが欠失したプロモーターと、遺伝子の(おそらく減少した)発現を促進することが可能であるが、その遺伝子を組織特異的に発現するそれらの能力を必ずしも失っていない、(組織特異的)調節エレメントが欠失したプロモーターの両方を包含する。好ましくは、本明細書に開示される核酸発現カセットに含有されるプロモーターは、長さが1000ヌクレオチド以下、900ヌクレオチド以下、800ヌクレオチド以下、700ヌクレオチド以下、600ヌクレオチド以下、500ヌクレオチド以下、400ヌクレオチド以下、300ヌクレオチド以下または250ヌクレオチド以下である。
【0095】
本明細書で用いるように、用語「導入遺伝子」は、核酸配列が導入される細胞の中で発現されるポリペプチドまたはポリペプチドの一部をコードする特定の核酸配列を指す。しかし、一般的に核酸配列が挿入される細胞の中の特定のポリペプチドの(例えばより低い)量を制御するために、導入遺伝子がRNAとして発現される可能性もある。これらのRNA分子には、限定されずに、RNA干渉(shRNA、RNAi)、マイクロRNA調節(miR)(これは、特定の遺伝子の発現を制御するために使用することができる)、触媒性RNA、アンチセンスRNA、RNAアプタマー等を通してそれらの機能を発揮する分子が含まれる。核酸配列がどのように細胞に導入されるかは本発明にとって本質的でなく、それは、例えばゲノムへの組み込みを通してもよく、またはエピソームプラスミドとしてでもよい。注目すべきは、導入遺伝子の発現は、核酸配列が導入される細胞のサブセットに制限することができる。用語「導入遺伝子」は、(1)細胞の中で天然に見出されない核酸配列(すなわち、異種核酸配列);(2)それが導入された細胞の中で天然に見出される核酸配列の突然変異形である核酸配列;(3)それが導入された細胞の中に天然に存在する同じ(すなわち、同種)または類似の核酸配列のさらなる複製を加える役目をする核酸配列;または、(4)それが導入された細胞の中でその発現が誘導される、サイレントの天然に存在するかまたは同種の核酸配列を含むものとする。
【0096】
導入遺伝子は、プロモーターに対して(および/または、例えば核酸発現カセットが遺伝子療法のために使用される場合にそれが導入される動物、特に哺乳動物またはヒトに対して)、同種または異種であってよい。
【0097】
導入遺伝子は、完全長cDNAもしくはゲノムDNA配列、または少なくとも一部の生物活性を有するその任意の断片、サブユニットもしくは突然変異体であってよい。詳細には、導入遺伝子は、ミニ遺伝子、すなわちそのイントロン配列の一部、ほとんどまたは全てを欠いている遺伝子配列であってよい。したがって、導入遺伝子は、イントロン配列を必要に応じて含有することができる。必要に応じて、導入遺伝子は、ハイブリッド核酸配列、すなわち、同種および/または異種のcDNAおよび/またはゲノムDNA断片から構築されるものであってよい。「突然変異形」は、野生型または天然に存在する配列と異なる1つまたは複数のヌクレオチドを含有する核酸配列を意味する、すなわち、突然変異核酸配列は1つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入を含有する。ヌクレオチドの置換、欠失および/または挿入は、そのアミノ酸/核酸配列が野生型アミノ酸/核酸配列から異なる遺伝子産物(すなわち、タンパク質または核酸)を生成することができる。そのような突然変異体の調製は、当技術分野で周知である。一部の場合には、導入遺伝子は、導入遺伝子産物が細胞から分泌されるように、リーダーペプチドまたはシグナル配列をコードする配列を含むこともできる。
【0098】
本明細書に記載される核酸発現カセットが含有することができる導入遺伝子は、RNAまたはポリペプチド(タンパク質)などの遺伝子産物を一般的にコードする。
【0099】
実施形態では、導入遺伝子は、治療的タンパク質をコードする。治療的タンパク質は、分泌可能なタンパク質であってよい。分泌可能なタンパク質、特に分泌可能な治療的タンパク質の非限定的な例には、グルコシダーゼ、フォリスタチン、凝固因子、例えば第VIII因子または第IX因子、インスリン、エリスロポイエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体またはナノボディ、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子等が含まれる。治療的タンパク質は、構造タンパク質であってもよい。構造タンパク質、特に構造的治療的タンパク質の非限定的な例には、ミオチューブラリン、ジスフェルリン、フォリスタチン、ミクロジストロフィン1、ジストロフィンおよびサルコグリカンが含まれる。好ましい実施形態では、導入遺伝子は、ミクロジストロフィン1(MD1とMD2)遺伝子、またはフォリスタチン(FST)遺伝子、好ましくはフォリスタチンのエクソンを省いた構築物を含む。本出願で想定される導入遺伝子の非網羅的および非限定的なリストは、治療的血管新生のための血管新生因子、例えばVEGF、PlGF、またはガイダンス分子、例えばエフリン、セマフォリン、スリットおよびネトリン、またはそれらのコグネイト受容体;サイトカインおよび/または増殖因子、例えば、エリスロポイエチン(EPO)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、単球化学誘引性タンパク質-1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、カルシウム処理に関与するタンパク質、例えば、SERCA(筋肉/小胞体細網Ca2+-ATPアーゼ)、カルシニューリン、ミクロジストロフィン1(MD1)、フォリスタチン(FST)、アルファ-グルコシダーゼ(GAA)、ミオチューブラリン1(MTM1)、導入遺伝子コード抗体、ナノボディ、抗ウイルス性優性ネガティブタンパク質、およびその断片、サブユニットまたは突然変異体を含む。
【0100】
実施形態では、導入遺伝子は、免疫原性タンパク質をコードする。免疫原性タンパク質の非限定的な例には、病原体に由来するエピトープおよび抗原が含まれる。
【0101】
本明細書で用いるように、用語「免疫原性」は、免疫応答を導き出すことが可能な物質または組成物を指す。
【0102】
一般的に導入遺伝子産物の発現をさらに増加または安定化させるために、本明細書に開示される核酸発現カセットの中に他の配列を組み込むこともできる(例えばイントロンおよび/またはポリアデニル化配列)。
【0103】
本明細書に記載される発現カセットの中で、任意のイントロンを利用することができる。用語「イントロン」は、核スプライシング装置が認識してスプライシングするのに十分大きな、完全イントロンの任意の部分を包含する。一般的に、発現カセットの構築および操作を促進する、可能な限り小さい発現カセットのサイズを保つために、短く機能的なイントロン配列が好ましい。一部の実施形態では、イントロンは、発現カセットの中のコード配列によってコードされるタンパク質をコードする遺伝子から得られる。イントロンは、コード配列の5’側、コード配列の3’側、またはコード配列の中に位置することができる。コード配列の5’側にイントロンを置くことの利点は、イントロンがポリアデニル化シグナルの機能に干渉する可能性を最小にすることである。実施形態では、本明細書に開示される核酸発現カセットは、イントロンをさらに含む。適するイントロンの非限定的な例は、マウスの微小ウイルス(MVM)のイントロン、ベータグロビンイントロン(ベータIVS-II)、第IX因子(FIX)イントロンA、シミアンウイルス40(SV40)スモール-tイントロンおよびベータ-アクチンイントロンである。
【0104】
好ましくは、イントロンはMVMイントロンである。
ポリAテールの合成を誘導する任意のポリアデニル化シグナルが本明細書に記載される発現カセットにおいて有益であり、それらの例は当業者に周知である。例示的なポリアデニル化シグナルには、限定されずに、シミアンウイルス40(SV40)後期遺伝子に由来するポリA配列、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナル、最小限のウサギ-グロビン(mRBG)遺伝子、およびLevittら(1989、Genes Dev3巻:1019~1025)に記載される合成ポリA(SPA)部位が含まれる。
【0105】
好ましくは、ポリアデニル化シグナルは、SV40に由来する(すなわち、SV40 pA)。
【0106】
特定の実施形態では、本発明は、プロモーター、好ましくは、デスミン遺伝子からのプロモーターまたはSPc5-12プロモーターからなる群から選択されるプロモーター、および導入遺伝子、好ましくはルシフェラーゼをコードする導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~89、または前記配列に95%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸調節エレメントを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸発現カセットを提供する。さらなる実施形態では、核酸発現カセットは、MVMイントロンをさらに含む。さらなる実施形態では、核酸発現カセットは、ポリアデニル化シグナル、好ましくは合成ポリA(SynthpA:配列番号127および図9AとB)に由来するポリアデニル化シグナルをさらに含む。
【0107】
特定の実施形態では、本発明は、プロモーター、好ましくはデスミン遺伝子からのプロモーター、および導入遺伝子、好ましくはミクロジストロフィン、エクソンを省いた構築物またはフォリスタチンをコードする導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~89、または前記配列に95%の同一性を有する配列からなる群から選択される核酸調節エレメントを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸発現カセットを提供する。さらなる実施形態では、核酸発現カセットは、MVMイントロンをさらに含む。さらなる実施形態では、核酸発現カセットは、ポリアデニル化シグナルをさらに含む。あるいは、以下の導入遺伝子のいずれか1つを導入することができる:分泌可能なタンパク質、特に分泌可能な治療的タンパク質、例えば、グルコシダーゼ、フォリスタチン、凝固因子、例えば第VIII因子または第IX因子、インスリン、エリスロポイエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体またはナノボディ、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子等;または構造タンパク質、例えば構造的治療的タンパク質、例えば、ミオチューブラリン、ジスフェルリン、フォリスタチン、ミクロジストロフィン1、ジストロフィンおよびサルコグリカン。実施形態では、導入遺伝子は、ミクロジストロフィン1(MD1)遺伝子、またはフォリスタチン(FST)遺伝子、好ましくはフォリスタチンのエクソンを省いた構築物を含む。
【0108】
本明細書に開示される核酸調節エレメントおよび核酸発現カセットは、このように使用することができるか、または一般的には、それらは核酸ベクターの一部であってよい。したがって、さらなる態様は、本明細書に記載される核酸調節エレメントまたは本明細書に記載される核酸発現カセットの、ベクター、特に核酸ベクターにおける使用に関する。
【0109】
一態様では、本発明は、本明細書に開示される核酸調節エレメントを含むベクターも提供する。さらなる実施形態では、ベクターは、本明細書に開示される核酸発現カセットを含む。
【0110】
本出願で用いられる用語「ベクター」は、核酸分子、例えば二本鎖DNAを指し、それは、限定されずにcDNA分子などの別の核酸分子(挿入核酸分子)をそこに挿入していてもよい。ベクターは、適する宿主細胞に挿入核酸分子を輸送するために使用される。ベクターは、挿入核酸分子の転写、および必要に応じて転写物のポリペプチドへの翻訳を可能にする、必要なエレメントを含有することができる。挿入核酸分子は宿主細胞に由来することができるか、または異なる細胞もしくは生物体に由来することができる。宿主細胞に入ると、ベクターは宿主染色体DNAから独立してまたは同時に複製することができ、ベクターおよびその挿入核酸分子のいくつかの複製を生成することができる。ベクターはエピソームのベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムに組み込まれない)であってよいか、または宿主細胞のゲノムの中に組み込まれるベクターであってもよい。したがって、用語「ベクター」は、標的細胞への遺伝子移入を促進する遺伝子送達ビヒクルと定義することもできる。この定義は、非ウイルスおよびウイルスの両方のベクターを含む。非ウイルスベクターには、カチオン性脂質、リポソーム、ナノ粒子、PEG、PEI、プラスミドベクター(例えば、pUCベクター、ブルースクリプトベクター(pBS)およびpBR322、または細菌性配列(ミニサークル)が欠けているその誘導体)、トランスポゾンベースのベクター(例えば、PiggyBac(PB)ベクターまたはSleeping Beauty(SB)ベクター)等が限定されずに含まれる。ウイルスベクターはウイルスに由来し、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスのベクターなどが限定されずに含まれる。一般的に、しかし必ずしもそうではないが、複製のために必須のウイルス遺伝子がウイルスベクターから排除されているので、ウイルスベクターは所与の細胞において増殖する能力を失っているので、複製に欠陥がある。しかし、一部のウイルスベクターは、例えばがん細胞などの所与の細胞において特異的に複製するように適応させることもでき、(がん)細胞特異的(がん)溶解を誘発するために一般的に使用される。ビロソームはウイルスおよび非ウイルスの両方のエレメントを含むベクターの非限定的な例であり、より詳細には、それらはリポソームを不活性化HIVまたはインフルエンザウイルスと組み合わせる(Yamadaら、2003)。別の例は、カチオン性脂質と混合したウイルスベクターを包含する。
【0111】
好ましい実施形態では、ベクターはウイルスベクター、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)のベクター、より好ましくはAAVベクターである。AAV形質導入(すなわち、一本鎖から二本鎖AAVへの変換)における制限ステップの1つを克服するために、AAVベクターは好ましくは自己相補的の二本鎖AAVベクター(scAAV)として使用され(McCarty、2001、2003;Nathwaniら、2002、2006、2011;Wuら、2008)、さらに、一本鎖AAVベクター(ssAAV)の使用も本明細書に包含される(図9AおよびB)。
【0112】
心臓および骨格筋における効率的な形質導入を達成するために、理想的にはAAV血清型9(AAV9)が適している。したがって、特に好ましい実施形態では、ベクターはAAV9ベクターである。
【0113】
AAVベクター粒子の生成は、例えば、記載されているように(Vanden Driesscheら、2007)、AAV血清型9カプシドをコードするAAVレポーターおよびAAVヘルパー構築物のHEK293細胞への一時的同時トランスフェクションと、続く塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心法に基づく精製ステップとによって達成することができる。
【0114】
核酸調節エレメントは事実上モジュール式であるので、所望の標的組織における発現を最大にするための、最良の横隔膜特異的核酸調節エレメントと任意の他の筋肉特異的および/または心臓特異的核酸調節エレメントとの組合せも試験する。その結果として、これは、骨格筋、横隔膜および一部の場合には心臓も侵す疾患(例えば、MTMまたはGSD II)のためにテーラーメイドの多用途の筋肉特異的核酸調節エレメントプラットホームの生成をもたらすことができる。さらに、横隔膜特異的核酸調節エレメントは、他の標的組織において活性である他のプロモーターまたは核酸調節エレメントと組み合わせることもできる。
【0115】
他の実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクター、好ましくはプラスミド、ミニサークル、またはトランスポゾンをベースにしたベクター、例えば、Sleeping Beauty(SB)をベースにしたベクターもしくはpiggyBac(PB)をベースにしたベクターである。
【0116】
さらに他の実施形態では、ベクターは、ウイルスおよび非ウイルスのエレメントを含む。
【0117】
特定の実施形態では、本発明は、配列番号1~89からなる群から選択される核酸調節エレメントを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸調節エレメント、プロモーター、好ましくはデスミン遺伝子からのプロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはミクロジストロフィン1/2またはそのエクソンを省いた構築物をコードする導入遺伝子、およびポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。あるいは、以下の導入遺伝子のいずれか1つを導入することができる:分泌可能なタンパク質、特に分泌可能な治療的タンパク質、例えば、グルコシダーゼ、フォリスタチン、凝固因子、例えば第VIII因子または第IX因子、インスリン、エリスロポイエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体またはナノボディ、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子等;または構造タンパク質、例えば構造的治療的タンパク質、例えばミオチューブラリン、ジスフェルリン、フォリスタチン、ミクロジストロフィン1、ジストロフィンおよびサルコグリカン。実施形態では、導入遺伝子は、ミクロジストロフィン1(MD1または2)遺伝子、またはフォリスタチン(FST)遺伝子、好ましくはフォリスタチンのエクソンを省いた構築物を含む。
【0118】
特定の実施形態では、本発明は、配列番号1~89からなる群から選択される核酸調節エレメントを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸調節エレメント、プロモーター、好ましくはデスミン遺伝子からのプロモーター、MVMイントロン、導入遺伝子、好ましくはフォリスタチンをコードする導入遺伝子、およびポリアデニル化シグナルを含む核酸発現カセットを含むベクターを提供する。あるいは、以下の導入遺伝子のいずれか1つを導入することができる:分泌可能なタンパク質、特に分泌可能な治療的タンパク質、例えば、グルコシダーゼ、フォリスタチン、凝固因子、例えば第VIII因子または第IX因子、インスリン、エリスロポイエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体またはナノボディ、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子等;または構造タンパク質、例えば構造的治療的タンパク質、例えばミオチューブラリン、ジスフェルリン、フォリスタチン、ミクロジストロフィン1、ジストロフィンおよびサルコグリカン。実施形態では、導入遺伝子は、ミクロジストロフィン1(MD1または2)遺伝子、またはフォリスタチン(FST)遺伝子、好ましくはフォリスタチンのエクソンを省いた構築物を含む。
【0119】
本明細書に開示される核酸発現カセットおよびベクターは、例えば、筋肉において通常発現されて利用されるタンパク質(すなわち、構造タンパク質)を発現させるために、または、筋肉において発現され、その後、体の他の部分への輸送のために血流に移送されるタンパク質(すなわち、分泌可能なタンパク質)を発現させるために使用することができる。例えば、本明細書に開示される発現カセットおよびベクターは、治療目的、特に遺伝子療法のために、遺伝子産物(例えばポリペプチド、より詳細には治療的タンパク質またはRNA)の治療量を発現させるために使用することができる。一般的に、遺伝子産物は、発現カセットまたはベクターの中の導入遺伝子によってコードされるが、原則として、治療目的のために内因性遺伝子の発現を増加させることも可能である。代替例では、本明細書に開示される発現カセットおよびベクターは、ワクチン接種目的のために、遺伝子産物(例えばポリペプチド、より詳細には免疫原性タンパク質またはRNA)の免疫量を発現させるために使用することができる。
【0120】
本明細書に教示される核酸発現カセットおよびベクターは、医薬的に許容される賦形剤、すなわち、1つまたは複数の医薬的に許容される担体物質および/または添加剤、例えば、緩衝液、担体、賦形剤、安定剤等によって医薬組成物に製剤化することができる。医薬組成物は、キットの形で提供することができる。
【0121】
本明細書で用いるように、用語「医薬的に許容される」は当技術分野と一貫しており、医薬組成物の他の成分に適合すること、およびそのレシピエントに有害でないことを意味する。
【0122】
したがって、本発明のさらなる態様は、本明細書に記載される核酸発現カセットまたはベクターを含む医薬組成物に関する。
【0123】
これらの医薬組成物の製造のための本明細書に記載される核酸調節エレメントの使用も、本明細書に開示される。
【0124】
実施形態では、医薬組成物は、ワクチンであってもよい。ワクチンは、免疫応答を強化するために、1つまたは複数のアジュバントをさらに含むことができる。適するアジュバントには、例えば、限定されずに、サポニン、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油または炭化水素乳剤、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、および合成アジュバントQS-21が含まれる。必要に応じて、ワクチンは、1つまたは複数の免疫賦活性分子をさらに含むことができる。免疫賦活性分子の非限定的な例には、免疫賦活、免疫強化および炎症誘発活性を有する様々なサイトカイン、リンホカインおよびケモカイン、例えば、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13);増殖因子(例えば、顆粒球-マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF));ならびに、他の免疫賦活性分子、例えばマクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等が含まれる。
【0125】
さらなる態様では、本発明は、医薬品で使用するための本明細書に記載される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物に関する。
【0126】
本明細書で用いるように、用語「治療する」または「治療」は、治療的処置と予防または防止的措置の両方を指す。有益であるか所望の臨床結果には、限定されずに、検出可能であるか検出不能であるにせよ、望ましくない臨床状態もしくは障害の予防、障害の発生率の低減、障害に関連した症状の軽減、障害の範囲の減少、障害の安定した(すなわち、悪化しない)状態、障害の進行の遅延または減速、障害の状態の改善もしくは緩和、寛解(部分的または全体的)、またはその組合せが含まれる。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味することもできる。
【0127】
本明細書で用いるように、用語「治療的処置」または「療法」などは、その目的が、対象の体またはその要素を望ましくない生理的変化もしくは障害から所望の状態、例えば、より重度でないか不快でない状態(例えば、改善または緩和)、もしくはその正常で健康な状態(例えば、対象の健康、身体的完全性および身体的幸福を回復させること)に持ってくること、前記望ましくない生理的変化もしくは障害にそれを保つこと(例えば、安定化または悪化しないこと)、または、前記望ましくない生理的変化もしくは障害と比較してより重度であるかより悪い状態への進行を防止もしくは減速することである処置を指す。
【0128】
本明細書で用いるように、用語「予防」、「防止的処置」または「予防的処置」などは、疾患または障害の開始を予防すること、例えば、前記疾患または障害に侵される前に、疾患または障害またはそれに関連した症状の重症度を低減することを包含する。侵される前のそのような予防または低減は、投与時に疾患または障害の明確な症状に侵されていない患者への、本明細書に記載される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物の投与を指す。「予防」は、再発または回帰を予防すること-例えば改善期間の後の疾患または障害の予防も包含する。実施形態では、本明細書に記載される、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、遺伝子療法、特に横隔膜および骨格筋向けの遺伝子療法で使用するためのものであってよい。あるいは、本明細書に記載される、配列番号1~9、66~81および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、遺伝子療法、特に横隔膜、骨格筋および心臓向けの遺伝子療法で使用するためのものであってよい。
【0129】
本明細書では、遺伝子療法、特に横隔膜および骨格筋向けの遺伝子療法のための薬物の製造のための、本明細書に記載される、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物の使用も開示される。
【0130】
本明細書では、遺伝子療法、特に横隔膜、骨格筋および心臓向けの遺伝子療法のための薬物の製造のための、本明細書に記載される、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物の使用も開示される。
【0131】
本明細書では、その遺伝子療法を必要とする対象における遺伝子療法、特に横隔膜および骨格筋向けの遺伝子療法のための方法であって、
- 対象に、特に対象の横隔膜および/または骨格筋の組織または細胞に、本明細書に記載される核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物を導入するステップであって、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含むステップ;ならびに
- 対象、特に対象の横隔膜および/または骨格筋の組織または細胞において導入遺伝子産物の治療的有効量を発現させるステップ、
を含む方法も開示される。
【0132】
本明細書では、その遺伝子療法を必要とする対象における遺伝子療法、特に横隔膜、骨格筋および心臓向けの遺伝子療法のための方法であって、
- 対象に、特に対象の横隔膜、骨格筋および心臓の組織または細胞に、本明細書に記載される核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物を導入するステップであって、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81、および84~89を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含むステップ;ならびに
- 対象、特に対象の横隔膜、骨格筋および心臓の組織または細胞において導入遺伝子産物の治療的有効量を発現させるステップ
を含む方法も開示される。
【0133】
導入遺伝子産物は、導入することができる以下の導入遺伝子のいずれか1つであってよい:分泌可能なタンパク質、特に分泌可能な治療的タンパク質、例えば、グルコシダーゼ、フォリスタチン、凝固因子、例えば第VIII因子または第IX因子、インスリン、エリスロポイエチン、リポタンパク質リパーゼ、抗体またはナノボディ、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、血漿因子等;または構造タンパク質、例えば構造的治療的タンパク質、例えばミオチューブラリン、ジスフェルリン、フォリスタチン、ミクロジストロフィン1、ジストロフィンおよびサルコグリカン。実施形態では、導入遺伝子は、ミクロジストロフィン1(MD1または2)遺伝子、またはフォリスタチン(FST)遺伝子、好ましくはフォリスタチンのエクソンを省いた構築物を含む。特定の実施形態では、導入遺伝子産物は、フォリスタチンまたはミクロジストロフィン、特にミクロジストロフィン1(MTM1)である。あるいは、導入遺伝子産物は、siRNAなどのRNAであってよい。
【0134】
本明細書に記載される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物を使用した遺伝子療法から恩恵を受けることができる例示的な疾患および障害には、筋細管性ミオパシー(MTM)、ポンぺ病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)/ベッカー筋ジストロフィー(BMD))、筋強直性ジストロフィー、筋緊張性筋ジストロフィー(DM)、ミヨシミオパシー、フクヤマ型先天性筋ジストロフィー、ジスフェルリン症神経筋疾患、運動ニューロン疾患(MND)、例えばシャルコー-マリー-トゥース病(CMT)、脊髄筋萎縮(SMA)および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、エメリー-ドライフス筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパシー、肢帯筋ジストロフィー、代謝ミオパシー、筋肉炎症性疾患、筋無力症、ミトコンドリアミオパシー、イオンチャネルの異常、核膜病、心筋症、心臓肥大、心不全、遠位型ミオパシー、心血管疾患、血友病AおよびBを含む血友病、ならびに糖尿病が含まれる。さらに、横隔膜および呼吸筋を弱めるために、多くの神経筋障害は呼吸機能に影響を及ぼす(www.medscape.com/viewarticle/805299_3)Semin Respir Crit Care Med.2002年6月;23巻(3号):191~200)。横隔膜の疾患の原因は様々であるが、それらは横隔膜機能に直接的に影響する遺伝子欠陥によることができる。詳細には、しばしば骨格筋および/または心臓のレベルでの異常と合わせて、横隔膜の機能に影響を及ぼす遺伝子の突然変異による複数の遺伝子障害がある。例えば、筋細管性ミオパシー(MTM)は、ミオチューブラリン遺伝子の突然変異により、骨格筋および横隔膜に影響を及ぼす。MTMを患っている患者は、出生時に緊張低下、全身性筋力低下および呼吸不全を一般的に呈する。出生後期を越えた生存は、しばしば胃瘻造設栄養法および機械的換気を含む、集中支援を必要とする。彼らの重度の呼吸困難のため、MTMを患っている患者は一般的に2歳を越えて生存しない。MTMのためには、筋肉向けの遺伝子療法が現在唯一の臨床的に重要なオプションである。あるいは、ポンペ病(糖原貯蔵障害II型またはGSD IIとも呼ばれる)は、骨格筋、横隔膜および心臓を主に侵す。GSD IIは、リソソーム貯蔵欠損症につながるリソソーム酵素酸α-グルコシダーゼ(GAA)の欠損をもたらす。GSD II患者では、グリコーゲンをグルコースに効果的に分解することができない。GSD II患者におけるグリコーゲンの蓄積は、進行性の筋力低下を伴うミオパシーを引き起こす。医療の介入なしでは、GSD IIの最も重度の形を患っている患者は、誕生後1年以内に呼吸不全のために死ぬ。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)などの他の筋肉疾患は、3500名の男の出生児のうちの概ね1名を侵す。本疾患は、横隔膜を含む骨格筋の進行性の破壊につながり、最も影響を受ける個体は30歳代に換気不全で死ぬ。多発筋炎/皮膚筋炎、遺伝性チャネル障害、ミトコンドリア脳筋症、酸性マルターゼ欠損および先天性ミオパシー、非活動萎縮を限定されずに含む、多くの他のミオパシーも肺機能に影響を及ぼす。横隔膜を侵す他の疾患には、先天性筋ジストロフィー(CMD)、ベッカー筋ジストロフィー(BMD)、顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(FSHD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、筋緊張性筋ジストロフィー(DM)、ミヨシミオパシー、フクヤマ型先天性筋ジストロフィー、ジスフェルリン症が含まれる。さらに、多くの神経障害性障害も、横隔膜および呼吸筋を弱める。これには、筋萎縮性側索硬化症、灰白髄炎、ポリオ後症候群、ケネディ症候群、脳卒中、多発性硬化症、脊髄筋萎縮、脊髄空洞、神経痛性神経障害および運動ニューロン疾患が含まれる。上腕神経叢炎および孤立した片側性または両側性の横隔膜神経障害も、横隔膜をかなり弱めることができる。呼吸に影響を及ぼす末梢神経障害は、主に急性の障害、例えば、ギランバレー症候群、ポルフィリン症および重病の神経障害であるが、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害(CIDP)およびシャルコー-マリー-トゥース病(CMT)などの慢性疾患も呼吸機能不全を引き起こすことができる。ランバート-イートン症候群および重症筋無力症などの神経筋伝達の障害は、呼吸にしばしば影響を及ぼす。あるいは、横隔膜機能不全は、解剖学的異常をもたらす先天性欠損(例えば、アーノルド-キアリ奇形)、または、損傷、外傷、感染(例えば、西ナイルウイルス、ボツリヌス菌中毒)、有機リン化合物への曝露、放射線療法、栄養失調、腫瘍圧迫または手術の結果として起こる後天性欠損の結果であってよい。心臓手術において使用される冷却心停止法は、横隔膜神経損傷の別の一般的な原因である。さらに、放射線療法は、横隔神経を侵して横隔膜機能不全をもたらすことができる。肺を侵す閉塞性気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息は、横隔膜損害および脱力をもたらすかなりの過膨張をもたらすことができる。最後に、ループスおよび甲状腺障害も、横隔膜機能不全に寄与することができることが知られている。
【0135】
遺伝子療法プロトコールは、当技術分野で広範に記載されている。これらには、限定されずに、プラスミド(裸のまたはリポソーム中の)の筋肉内注射、筋肉を含む様々な組織における流体力学的遺伝子送達、間質注入、気道への点滴注入、内皮、肝内柔組織への適用、および静脈内または動脈内投与が含まれる。標的細胞へのDNAの利用可能性を強化するために、様々な装置が開発されている。単純なアプローチは、DNAを含有するカテーテルまたは植込み可能な材料と標的細胞を物理的に接触させることである。別のアプローチは、液体のカラムを高圧の下で標的組織に直接的に投入する無針のジェット注射装置を利用することである。これらの送達パラダイムは、ベクターを送達するために使用することもできる。標的化遺伝子送達への別のアプローチは分子コンジュゲートの使用であり、それは、細胞への核酸の特異的標的化のために核酸またはDNA結合性薬剤が付着しているタンパク質または合成リガンドからなる(Cristianoら、1993)。実施形態では、本明細書に記載される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、ワクチン用のため、より詳細には予防的ワクチン用のためであってよい。
【0136】
本明細書では、薬物またはワクチンの製造のための、より詳細には予防的ワクチンの製造のための、本明細書に記載される核酸調節エレメント、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物の使用も開示される。
【0137】
本明細書では、そのワクチン接種を必要とする対象のワクチン接種、特に予防的ワクチン接種の方法であって、
- 対象に、特に対象の横隔膜および骨格筋の組織または細胞に、本明細書に記載される核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物を導入するステップであって、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含むステップ;ならびに
- 対象、特に対象の横隔膜および骨格筋の細胞または組織において導入遺伝子産物の免疫学的有効量を発現させるステップ
を含む方法も開示される。
【0138】
本明細書では、そのワクチン接種を必要とする対象のワクチン接種、特に予防的ワクチン接種の方法であって、
- 対象に、特に対象の横隔膜、骨格筋および心臓の組織または細胞に、本明細書に記載される核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物を導入するステップであって、核酸発現カセット、ベクターまたは医薬組成物は、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81、および84~89を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含むステップ;ならびに
- 対象、特に対象の横隔膜、骨格筋および心臓の細胞または組織において導入遺伝子産物の免疫学的有効量を発現させるステップ
を含む方法も開示される。
【0139】
本明細書で用いるように、「治療を必要とする対象」などのフレーズには、列挙される疾患または障害の治療から恩恵を受けるだろう対象が含まれる。そのような対象は、限定されずに、前記疾患もしくは障害を診断された人々、前記疾患もしくは障害に罹りやすいか起こしやすい人々、および/または前記疾患もしくは障害を予防すべき人々を含むことができる。
【0140】
用語「対象」および「患者」は本明細書で互換的に使用され、動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物を指し、ヒト患者およびヒト以外の哺乳動物を特に含む。「哺乳動物の」対象には、限定されずに、ヒト、家畜、商業用動物、畜産動物、動物園動物、競技用動物、ペットおよび実験動物、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシ;霊長類、例えば類人猿、サル、オランウータンおよびチンパンジー;イヌおよびオオカミなどのイヌ科の動物;ネコ、ライオンおよびトラなどのネコ科の動物;ウマ、ロバおよびシマウマなどのウマ科の動物;雌ウシ、ブタおよびヒツジなどの食用動物;シカおよびキリンなどの有蹄類;マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどの齧歯動物;などが含まれる。好ましい患者または対象は、ヒト対象である。
【0141】
本明細書で用いるように、「治療的量」または「治療的有効量」は、対象における疾患または障害を治療するために、すなわち、所望の局所または全身性作用を得るために有効な遺伝子産物の量を指す。したがって、本用語は、組織、系、動物またはヒトにおいて、研究者、獣医、医師または他の臨床医によって追求される生物学的または医薬的応答を導き出す遺伝子産物の量を指す。そのような量は、遺伝子産物および疾患の重症度に一般的に依存するが、当業者ならば、おそらくルーチンの実験を通して決定することができる。
【0142】
本明細書で用いるように、「免疫学的有効量」は、(導入)遺伝子によってコードされる免疫原への以降の曝露に対する対象の免疫応答を強化するのに有効である、(導入)遺伝子産物の量を指す。誘導される免疫のレベルは、例えばプラーク中和、補体結合、酵素結合免疫吸着または微量中和アッセイによって、例えば中和性の分泌および/または血清抗体の量を測定することによって決定することができる。
【0143】
一般的に、本明細書に記載される発現カセットまたはベクター(すなわち、少なくとも1つの核酸調節エレメントを有する)を使用したときに発現される(導入)遺伝子産物の量は、同一の発現カセットまたはベクターが使用されるがその中に核酸調節エレメントがないときよりも高い。より詳細には、発現は、核酸調節エレメントなしの同じ核酸発現カセットまたはベクターと比較したときの、少なくとも2倍高いか、少なくとも5倍高いか、少なくとも10倍高いか、少なくとも20倍高いか、少なくとも30倍高いか、少なくとも40倍高いか、少なくとも50倍高いか、またはさらに少なくとも60倍高い。好ましくは、より高い発現は、横隔膜、心臓および骨格筋の組織または細胞に特異的なままである。さらに、本明細書に記載される発現カセットおよびベクターは、遺伝子産物の治療的量の発現を長期間誘導する。一般的に、治療的発現は、少なくとも20日、少なくとも50日、少なくとも100日、少なくとも200日、および一部の場合には300日またはそれより長く持続することが想定される。遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)の発現は、例えば遺伝子産物の治療的発現が達成されるかどうか評価するための、任意の当分野認定の手段、例えば抗体ベースのアッセイによって、例えばウェスタンブロットまたはELISAアッセイによって測定することができる。遺伝子産物の発現は、遺伝子産物の酵素的または生物学的活性を検出するバイオアッセイで測定することもできる。
【0144】
本明細書では、横隔膜および/または骨格筋の細胞をトランスフェクトまたは形質導入させるための、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)による核酸調節エレメント、または前記核酸調節エレメントを含む本明細書に開示される核酸発現カセットもしくはベクターの使用も開示される。
【0145】
本明細書では、横隔膜、骨格筋および/または心臓の細胞をトランスフェクトまたは形質導入させるための、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)による核酸調節エレメント、または前記核酸調節エレメントを含む本明細書に開示される核酸発現カセットもしくはベクターの使用も開示される。
【0146】
本明細書では、横隔膜および/または骨格筋の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)による核酸調節エレメントを含む、本明細書に開示される核酸発現カセットまたはベクターの使用も開示され、ここで、核酸発現カセットまたはベクターは、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、本明細書に開示される核酸調節エレメントを含む。
【0147】
本明細書では、横隔膜、骨格筋および心臓の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81および84~89を参照)による核酸調節エレメントを含む、本明細書に開示される核酸発現カセットまたはベクターの使用も開示され、ここで、核酸発現カセットまたはベクターは、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、本明細書に開示される核酸調節エレメントを含む。
【0148】
本明細書では、横隔膜および/または骨格筋の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法であって、
- 本明細書に開示される核酸発現カセットまたはベクターで前記細胞をトランスフェクトまたは形質導入させるステップであって、核酸発現カセットまたはベクターは、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~7、10~65、82および83(表3のDph-CRE1~7、10~65、82および83を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含むステップ;および
- 前記細胞において導入遺伝子産物を発現させるステップ
を含む方法がさらに開示される。
【0149】
本明細書では、横隔膜、骨格筋および心臓の細胞において導入遺伝子産物を発現させるための方法であって、
- 本明細書に開示される核酸発現カセットまたはベクターで前記細胞をトランスフェクトまたは形質導入させるステップであって、核酸発現カセットまたはベクターは、プロモーターおよび導入遺伝子に作動可能に連結されている、配列番号1~9、66~81、および84~89(表4のDph-CRE1~9、66~81、および84~89を参照)のいずれか1つによる核酸調節エレメントを含むステップ;および
- 前記細胞において導入遺伝子産物を発現させるステップ
を含む方法がさらに開示される。
【0150】
横隔膜、心臓および/または骨格筋の細胞の非ウイルス性のトランスフェクションまたはウイルスベクター媒介形質導入は、in vitro、ex vivoまたはin vivoの手順によって実行することができる。in vitroアプローチは、横隔膜、心臓および/または骨格筋の細胞、例えば対象から事前に採収された細胞、例えば人工多能性幹細胞または胚性細胞から分化した細胞系または細胞のin vitroトランスフェクションまたは形質導入を必要とする。ex vivoアプローチは、横隔膜、骨格筋および心臓の細胞の対象からの採収、in vitroトランスフェクションまたは形質導入、および必要に応じてトランスフェクション細胞の対象への再導入を必要とする。in vivoアプローチは、本明細書に開示される核酸発現カセットまたはベクターの対象への投与を必要とする。好ましい実施形態では、横隔膜、骨格筋および心臓の細胞のトランスフェクションは、in vitroまたはex vivoで実行される。
【0151】
当業者は、本明細書に開示される核酸調節エレメント、核酸発現カセットおよびベクターの使用が、遺伝子療法を越えて、例えば横隔膜、骨格筋および心臓の細胞への幹細胞の巧妙な分化、横隔膜、骨格筋および心臓等におけるタンパク質の過剰発現のためのトランスジェニックモデルに影響を有することを理解する。
【0152】
本発明は、以下の非限定的実施例でさらに説明される。
【実施例
【0153】
実施例
実施例1:横隔膜特異的核酸調節エレメントの同定
高度に発現される横隔膜遺伝子を同定するために、ヒト横隔膜組織の遺伝子発現プロファイリングを、骨格筋、心臓、肝臓、脾臓および腎臓等の他の組織のそれと比較して調査した。各組織から抽出された全RNA試料を、民間から購入した(表1)。
【0154】
【表3】
【0155】
遺伝子発現プロファイリングは、RNA次世代シークエンシング(RNA-seq)によって実行した。この方法は、深いカバレージおよび塩基対レベルの分解能を提供する。RNA配列決定定量化は、遺伝子発現研究においてマイクロアレイ技術への効率的な代替法であると証明され、それは差次的発現分析における重要な技術である。
【0156】
この研究では、RNA配列決定は、BGI(Hong Kong)によるIllumina(商標)Hiseq 4000シークエンシング50SE(1試料につき20個のクリーンな読み取り)を使用して達成された。全ての試料は、高いRNA完全性数(RIN)指数で、良から優の品質を示した。
【0157】
最初に、RNA-seqデータに基づいて、横隔膜試料における遺伝子発現レベルを最高から最低の値までランクを付けた。横隔膜における25個の最高発現遺伝子を選択した。次に、i)横隔膜および骨格筋(Dph+SkM)、またはii)横隔膜、骨格筋および心臓(Dph+SkM+Hrt)において高度におよび特異的に発現された遺伝子だけを同定するために、他の組織に対する、心臓の有る無しの横隔膜、骨格筋の間で遺伝子発現プロファイルを比較した。この比較に基づいて、横隔膜および骨格筋において高度におよび特異的に発現される18個の遺伝子(表3)、ならびに横隔膜、骨格筋および心臓において高度に発現される8個の遺伝子(表4)を同定した。転写開始部位(TSS)を見つけるために、25個全ての遺伝子(Dph+SkMが17遺伝子およびDph+SkM+Hrtが10遺伝子:ACTA1およびCKMの2つの遺伝子はDph+SkM群と重なる)を、ENSEMBLを使用して分析した。その後、核酸調節エレメント同定のために、これらのTSSをUCSCゲノムブラウザーデータベースにマッピングした。核酸調節エレメントは、i)高いDNase過感受性部位、ii)開放的なクロマチンに関連したエピジェネティックマーカー(すなわち、アセチル化、メチル化)の高い含有量、iii)転写因子結合部位の高い含有量、iv)脊椎動物の間の強力な進化的保存およびv)3種(ヒト、ラット、マウス)において保存されている転写因子結合部位に基づいて選択した(図1)。最後に、これらの5つの判定基準に基づいて、25個の遺伝子から89個の核酸調節エレメントを同定した。横隔膜および骨格筋における高い発現のために、配列決定をした65個の核酸調節エレメントを同定し(表3)、横隔膜、骨格筋および心臓における高い発現のために、配列決定をした31個の核酸調節エレメントを同定した(表4)。これらのうちの7つは共通したCREであり、したがって、両方の表に存在する。
【0158】
【表4】
【0159】
実施例2:デスミンプロモーターのin vivoでの比較。
実験手順
実施例3に記載されるプロトコールにより、筋肉特異的調節エレメントSk-SH4を含むAAVベクターを生成した。簡潔には、筋肉特異的調節エレメントSk-SH4を従来のオリゴヌクレオチド合成によって合成し、それぞれAAVsc-hDes1.4kb-MVM-Luc、AAVsc-hDes1.0kb-MVM-LucまたはAAVsc-mDes-MVM-LucのAAVベクター主鎖との関連で、ヒトデスミン1.4kbプロモーター(配列番号92)、ヒトデスミン1.0kbプロモーター(配列番号91)またはマウスのデスミンプロモーター(配列番号90)の上流にクローニングした。
【0160】
成体のCB17/IcrTac/PrkdcSCID(SCID、重症複合免疫不全)マウスに、1×1010vg/マウスの用量で静脈内注射した(n=5)。
【0161】
ベクターの注入の2週後および4週後にマウスを屠殺し、異なる筋肉タイプ(二頭筋、横隔膜、腓腹筋、心臓、四頭筋、脛骨筋および三頭筋)を単離し、Keyaerts M1、Caveliers V、Lahoutte T.Trends Mol Med.2012年3月;18巻(3号):164~72。doi:10.1016/j.molmed.2012.01.005。電子出版2012年2月8日。Bioluminescence imaging:looking beyond the lightに記載の通りに、生物発光画像化を使用して定量化した。
【0162】
結果
光子シグナルとして定量化した異なるAAVベクターによって誘導されたルシフェラーゼ発現の比較は、マウスの異なる筋肉タイプ(二頭筋、横隔膜、腓腹筋、心臓、四頭筋、脛骨筋および三頭筋)において、Sk-SH4-mDESを含む発現カセットと比較して、Sk-SH4-hDES1.0kbまたはSk-SH4-hDES1.4kb、特にSk-SH4-hDES1.4kbを含む発現カセットがより高いルシフェラーゼ発現に導くことを示す(図4)。
実施例3:Dph-CREのin vivoでの検証
AAVベクター主鎖(例えば、pAAVSCまたはpAAVSS)におけるレポーター遺伝子の発現を促進するために、選択された上位の横隔膜特異的核酸調節エレメント(表3と4を参照)を、筋肉、横隔膜および必要に応じて心臓組織において活性であるプロモーター(例えば、マウスまたはヒトデスミンプロモーター(DES、より好ましくは配列番号90~92にそれぞれ示すmDES、hDES1.0kbまたはhDES1,4kb)またはSPc5-12プロモーター(配列番号124))の上流にクローニングした。横隔膜において高度に発現される遺伝子の他のプロモーターを、使用することもできる。さらに、他の筋肉特異的プロモーター、例えば筋肉クレアチンキナーゼプロモーター(MCK)(Wang Bら、2008)、アルファ-ミオシン重鎖(a-MHC)、ミオシン軽鎖(MLC-2)または心臓トロポニンC(cTnC)、ミオゲニンMYF4プロモーター(Pacak C.A.ら;2008)またはウイルスのプロモーター、例えばマウス幹細胞ウイルス(MSCV)プロモーター(Suga Tら、Plos One 2011)の全ては、横隔膜核酸調節エレメントの下流にクローニングするために使用することができる潜在的プロモーターである。
【0163】
プラスミドは、マウスの微小ウイルス(MVM)イントロン(配列番号125)およびポリアデニル化部位(pA)、例えば、シミアンウイルス40ポリアデニル化部位(配列番号126)または合成ポリA部位(配列番号127)も含有する。これは、一般的なAAV主鎖pAAV-Dph-CRE01-89-Des/SPc-プロモーター-MVM-イントロン-導入遺伝子/レポーター遺伝子-pAにつながる(図8A)。
【0164】
これらの主鎖のいくつかには、WO2015/110449に開示されるものなどのように、筋肉/心臓CREをさらに補足した。これは、AAV主鎖pAAV-CSk/Sk-CRE-Dph-CRE01-89-Des/SPc-プロモーター-MVM-イントロン-導入遺伝子/レポーター遺伝子-pA(図8B)、または、pAAV-Dph-CRE01-89-Sk/CSk-CRE-Des/SPc-プロモーター-MVM-イントロン-導入遺伝子/レポーター遺伝子-pAにつながり(図8c)、ここで、Sk-CRE/CSk-CREは、WO2015/110449に開示されるCREのいずれか1つ、好ましくは、骨格筋CRE Sk-SH4(配列番号121)、または骨格筋および心臓のCRE CSk-SH5(配列番号122)およびCSk-SH1(配列番号123)調節エレメントである。
【0165】
レポーター遺伝子は、好ましくはルシフェラーゼレポーター遺伝子であり、下で試験した導入遺伝子はヒトGAAおよびMTM1遺伝子またはそれらのコドン最適化変異体である(実施例4を参照)。
【0166】
組織特異的発現に及ぼすDph-CREの作用を研究するために、以下のAAVベクター主鎖を使用した:
- 表3からのDph-CREのためには:pAAVss-Sk-SH4-hDES1.4kb-MVM-ルシフェラーゼ-pA
- 表4からのDph-CREのためには:pAAVss-CSk-SH5-SPc5-12GTRM-MVM-ルシフェラーゼ-pA、
ここで、異なるDph-CREは、Sk-SH4またはCSk-SH5 CREの前または後にクローニングされる。
【0167】
AAVベクター粒子の生成は、前に記載されている通りに(Vanden Driesscheら、2007 J Thromb Haemost 5:16~24)、AAV血清型9カプシドをコードするAAVレポーターおよびAAVヘルパー構築物のHEK293細胞への一時的同時トランスフェクションと、続く塩化セシウム(CsCl)密度勾配超遠心法に基づく精製ステップとによって達成され、これは、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0168】
簡潔には、トランスフェクションの2日後、細胞を採収し、等密度遠心法を使用してベクター粒子を精製した。採収した細胞は連続した凍結融解サイクルおよび超音波処理によって溶解し、ベンゾナーゼ(Novagen、Madison、WI)およびデオキシコール酸(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で処理し、その後連続した3回の塩化セシウム(Invitrogen Corp、Carlsbad、CA)密度勾配超遠心法に付した。AAVベクターを含有する分画を収集し、ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(PBS)(Gibco、BRL)の中の1mMのMgClに濃縮し、-80℃で保存した。
【0169】
ベクター力価(1mlあたりのウイルスゲノム(vg)数)は、ABI7500リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystem、Foster city、CA、USA)における、SYBR Greenミックス(SYBR Green色素、Taqmanポリメラーゼ、ROXおよびdNTPの全てが1つになったものを含む)およびルシフェラーゼ特異的プライマーを使用した定量的リアルタイムPCRによって決定した。使用したフォワードおよびリバースプライマーは、それぞれ、5’-CCCACCGTCGTATTCGTGAG-3’(配列番号128)および5’-TCAGGGCGATGGTTTTGTCCC-3’(配列番号129)であった。
【0170】
一般的に、全てのベクターについて、20枚のシャーレのプロデューサー細胞の小さい生産バッチから、1.5~6.1×1011vg/mlの範囲内の力価が達成された。60枚のシャーレなどのより多くのシャーレのプロデューサー細胞が使用された場合、AAV粒子の一般的に1mlあたり1012~1013gcの範囲内のより高い力価が達成された。適当なcDNAを有する、対応するAAVベクターを生成するために使用したそれぞれのベクタープラスミドの既知の複製数(10~10)を使用して、標準曲線を作成した。
【0171】
全ての動物の手順は、Free University of Brussels(VUB)(Brussels、Belgium)の施設動物倫理委員会の承認を得た。全てのマウスは、特定病原体除去条件に収容した。食物および水は、無制限に提供された。
【0172】
4週齢免疫不全CB17-SCIDマウス(Janvier、France)に、精製されたAAVベクターを異なるベクター用量で静脈内注射し(i.v.)、レポーター遺伝子発現を定量化することによるほとんどの頑強な横隔膜特異的核酸調節エレメントの同定を可能にする。異なる筋肉組織(二頭筋、横隔膜、腓腹筋、心臓、四頭筋、脛骨筋および三頭筋)で、生物発光画像化を使用して定量化した。AAV注射から概ね1週後に全身生物発光を実行し、AAV注射から概ね3週後に器官生物発光を実行した。
【0173】
光子シグナルとして定量化した異なるAAVベクターによって誘導されたルシフェラーゼ発現は、Sk-SH4主鎖のためにはDph-CRE-02、-58、-59、-60、-64、-21、-41、-18、-04、-06について、およびCSk-SH5主鎖のためにはDph-CRE-77、-02、-04、-06、-69、-70、-71、-66、-68および-07について、図5A~5Iに示す。全20個の試験したDph-CREは、Sk-SH4-hDES1,4kbまたはCSk-SH5-SPc5-12主鎖を使用してベースライン発現に対して増加した発現を示す。試験した横隔膜CREの100%は、強化されたルシフェラーゼ発現を示した。詳細には、Dph-CRE-02、21および64は、Sk-SH4-hDES1,4kb主鎖と比較して特により高い発現レベルを示し、Dph-CRE-04、-02および-06は、CSk-SH5-SPc5-12kb主鎖と比較して特により高い発現レベルを示す。
【0174】
20個の横隔膜CREの個々のスクリーニングは、臨床治験において現在使用されているか、将来の治験が考えられているいかなる従来のベクター設計によるよりも高い、横隔膜および骨格筋および/または心臓における頑強な遺伝子発現につながった、(横隔膜CRE+骨格筋CRE)および(横隔膜CRE+骨格筋/心臓CRE)の相乗的CRE組合せの良好な生成を明らかに実証した。
【0175】
実験は、筋肉特異的CREなしの対照(hDES1.4kb)と比較したとき、骨格筋特異的CRE(Sk-SH4)が、in vivoでレポーター(または、導入遺伝子)の発現における頑強な増加につながることを示す。詳細には、筋肉特異的CRE(Sk-SH4)にカップリングした横隔膜特異的CRE(Dph-CRE64、CRE02およびCRE21)は複合モジュールとして相乗的に作用し、in vivoでのルシフェラーゼ発現の極めて高いレベルの増強につながる。他のDph CRE(60、58、04、18、41、69、06)も、ルシフェラーゼ遺伝子発現の中等度の増強を示した。
【0176】
同様に、複合の心臓/骨格筋特異的CRE(CSk-SH5)は、CSk-SH5 CREなしであるがルシフェラーゼ遺伝子を促進するSPc5-12-GTRMプロモーターだけの対照と比較したとき、in vivoでルシフェラーゼ発現の頑強な増加につながった。さらに、横隔膜特異的CRE(Dph-CRE04、02および06)が、複合の心臓/骨格筋特異的CRE(CSk-SH5)にカップリングしたときに相乗的に作用し、in vivoでのルシフェラーゼ発現の極めて高いレベルの増強につながることを示した。他のDph CRE(77、70、66、71、69、68、07)は、ルシフェラーゼ遺伝子発現の増強の中等度のレベルを示した。
【0177】
ヒトデスミン1.4kbプロモーターによって促進されるSk-SH4筋肉CREと組み合わせたとき、Dph-CRE64は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の最大の増加を示した。筋肉CREと組み合わせた横隔膜CREの明確な相乗作用がある。
【0178】
合成SPc5-12プロモーターによって促進されるCSk-SH5筋肉CREと組み合わせたとき、Dph-CRE04は、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の最大の増加を示した。筋肉CREと組み合わせた横隔膜CREの明確な相乗作用がある。
【0179】
これは、CREがモジュール様式で相乗的に作用することができることを実証する。
個々の器官データは、全身のデータを追認した。横隔膜組織では、Sk-SH4-hDes1.4kb発現カセットと組み合わせた横隔膜CREの群に関して、最も頑強である横隔膜CREは、以下の通りである:ヒトデスミン1.4kbプロモーターだけによって促進されるルシフェラーゼ発現と比較したとき、400~600倍のルシフェラーゼ発現の増強につながるCRE02、CRE64、CRE60およびCRE21(hDes1.4kbに正規化、差の倍率は図5A左側のグラフの上の下段の数字で示す)。ルシフェラーゼ発現におけるこの400~600倍の増加は、筋肉CRE(Sk-SH4)と組み合わせた横隔膜CREの寄与である。Sk-SH4-hDes1.4kbに正規化したとき、ルシフェラーゼ発現の最高10倍の増強をこれらの4つの頑強な横隔膜CREから検出することができる(差の倍率は図5A左側のグラフの上の上段の数字で示す)。この10倍の差は、この発現カセットから促進される個々の横隔膜CREの寄与である。
【0180】
同様に、CSk-SH5-SPc5-12-GTRM発現カセットと組み合わせた横隔膜CREの群に関して、最も頑強である横隔膜CREは、以下の通りである:SPc5-12-GTRMプロモーターだけによって促進されるルシフェラーゼ発現と比較したとき、約300倍のルシフェラーゼ発現の増強につながるCRE02、CRE04、CRE06(SPc5-12-GTRMに正規化、差の倍率は図5A右側のグラフの上の下段の数字で示す)。ルシフェラーゼ発現におけるこの300倍の増加は、筋肉/心臓CRE(CSk-SH5)と組み合わせた横隔膜CREの寄与である。CSk-SH5-SPc5-12-GTRMに正規化したとき、ルシフェラーゼ発現の最高23~25倍の増強をこれらの3つの頑強な横隔膜CREから検出することができる(差の倍率は図5A右側のグラフの上の上段の数字で示す)。この23~25倍の増強は、個々の横隔膜CREからの唯一の寄与である。
【0181】
他の筋肉組織のために、類似の比較を行う:図5B)四頭筋における発現、図5C)腓腹筋における発現、図5D)脛骨筋における発現、図5E)二頭筋における発現、図5F)三頭筋における発現、図5G)、心臓における発現、図5H)、横隔膜CREの特異性(横隔膜、骨格筋および心臓において主に発現されるが他の組織では発現されない)。横隔膜CREの番号は、表3と4 図5I)の番号付けに対応する。
実施例4:治療的遺伝子GAAおよびMTM1のコドン最適化
実験手順
AAVプラスミド構築物の生成
遺伝子オプティマイザー(GeneArt、Life technologies、Germany)を使用して、ヒトアルファ-グルコシダーゼ(hGAA)遺伝子およびヒトミオチューブラリン1(hMTM1)遺伝子をコドン最適化した。
【0182】
野生型ヒトアルファ-グルコシダーゼ(hGAA;配列番号93)および5’および3’末端にBsiWIおよびXmaJI制限部位が隣接しているコドン最適化hGAA遺伝子(hGAAco;配列番号94)をクローニングして、調節エレメントCSk-SH5に作動可能に連結されたSPc5-12プロモーターによって促進した。
【0183】
他方、野生型ヒトミオチューブラリン1(hMTM1;配列番号95)および5’および3’末端にBsiWIおよびXmaJI制限部位が隣接しているコドン最適化hMTM1(hMTM1co;配列番号96)遺伝子をクローニングして、調節エレメントSk-SH4(配列番号121)に作動可能に連結されたhDES1.4kb(配列番号92)から促進させた。
【0184】
hDES1.4kbプロモーター(配列番号92)に作動可能に連結されたSk-SH4調節エレメント(配列番号121)またはSPc5-12プロモーター(配列番号124)に作動可能に連結されたCSk-SH5調節エレメント(配列番号122)は、一本鎖アデノ随伴ウイルスベクター(AAVss)主鎖との関連でMVMイントロン(配列番号125)の上流にクローニングした。ベクターは、49bp合成ポリアデニル化部位(Levitt Nら、1989)(配列番号127)も含有した。生成された構築物は、
pAAVss-Sk-SH4-hDES1.4kb-MVM-hMTM1
pAAVss-Sk-SH4-hDES1.4kb-MVM-hMTM1co
pAAVss-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hGAA
pAAVss-CSk-SH5-SPc5-12-MVM-hGAAco
と命名された。
AAVベクターの生成および精製
AAVベクターの生成および精製は、実施例2に記載されている通りに実行した。
動物の研究
全ての動物の手順は、Free University of Brussels(VUB)(Brussels、Belgium)の施設動物倫理委員会の承認を得た。全てのマウスは、特定病原体除去条件に収容した。食物および水は、無制限に提供された。
【0185】
濃縮したベクター(5×1011vg/マウス)を、4週齢CB.17-SCIDマウス(Janvier、France)の尾静脈に注射した。注射から4~5週後、マウスを安楽死させ、mRNAおよびタンパク質の発現を評価するために個々の器官を分析した。
hGAA(co)およびhMTM1(co)ELISA
全てのGAAおよびMTM1 ELISAについては、プロトコールは製造業者の説明書によって示されるように従う。両方のキット(MyBiosources)は、タンパク質抽出カクテルとしてPBSを必要とする。プロテアーゼ活性を抑制し、試料の品質を最大にするために、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Invitrogen、USA)を加える。
【0186】
各ELISAのために、凍結保存から50mgの組織を取った。次に、プロテアーゼ阻害剤を含む500μLの冷PBSを組織に加え、次にマトリックスD(MPBio)により20秒間の3サイクルでホモジナイズした。その後、4℃で5分間、溶解物を13,000rpmで遠心分離した。上清を収集し、各ELISAキットで指摘される通り処理したか、または分析まで-20℃で保存した。
mRNA分析
qRT-PCRのために、30~50mgの試料を冷凍保存から取り出した。20秒間の2サイクルでマトリックスD(MPBio)を使用して、試料をホモジナイズした。次に、RNAヌクレオスピン(Macherey-Nagel)を使用してRNAを抽出した。製造業者のプロトコールに従ってSuperScript III cDNA合成キット(Invitrogen、USA)を使用して、cDNAを合成した。次に、ABI 7700(Applied Biosystems、USA)での定量的qPCRによって、cDNAを増幅した。各遺伝子のプライマー配列は、下の表に掲載する。
標的 プライマー 配列 アンプリコンサイズ(bp) 配列番号
hGAA F TGCCCTCGCAGTATATCACAG 129 140
R GAGACCCGTAGAGGTTCGC 141
hGAAco F ACCCCTTCATGCCTCCTTAT 148 142
R TCCATGTAGTCCAGGTCGTT 143
hMTM1 F GTTTGAGATCCTCACGAGATACG 96 144
R GTCCATCCATCCACGTTAAACTT 145
hMTM1co F GGCAAGAGAAACAAGGACGA 150 146
R GGCATCGTCGGACTCATATC 147
結果
hGAA(co)発現
定量的RT-PCRを使用して、SPc-hGAAco、CSk-SH5-SPc-hGAAcoおよびCSk-SH5-SPc-hGAA構築物を注射したCB.17-SCIDマウスの横隔膜、腓腹筋および心臓におけるhGAAおよびhGAAco遺伝子の発現を調査した。結果は、CSk-SH5がCB.17-SCIDマウスの横隔膜、腓腹筋および心臓においてhGAAco mRNAの発現をそれぞれ16.9、9.8および14.2倍増加させることができることを示す(図6a)。さらに、図6bは、野生型hGAAと比較して、コドン最適化hGAA配列がCB.17-SCIDマウスの横隔膜、腓腹筋および心臓において翻訳効率をそれ自体向上させ、2倍を超える高いhGAAタンパク質発現をもたらすことを示す。
hMTM1(co)発現
定量的RT-PCRおよびELISAを使用して、hDES1.4kb-hMTM1co、Sk-SH4-hDES1.4kb-hMTM1coおよびSk-SH4-hDES1.4kb-hMTM1構築物を注射したCB.17-SCIDマウスの横隔膜および腓腹筋におけるhMTM1およびhMTM1co遺伝子の発現を調査した。結果は、Sk-SH4がCB.17-SCIDマウスの横隔膜および腓腹筋においてhMTM1co mRNAの発現をそれぞれ5.3および3.2倍増加させることができることを示す(図7A)。さらに、図7Bは、野生型hMTM1と比較して、コドン最適化hMTM1配列がCB.17-SCIDマウスの横隔膜および腓腹筋において翻訳効率を単独で向上させ、2~4倍高いhMTM1タンパク質発現をもたらすことができることを示す。
実施例5:MTMおよびGSD II関連疾患のための潜在的臨床治験のためのMTMおよびGSD-IIのためのプロトタイプAAVベクター。
【0187】
MTMのためのプロトタイプAAVベクター(図9a)は、MTM1の転写および翻訳を最大にするように設計された。横隔膜CRE(Dia-CRE)を以前に同定された骨格筋CRE(Sk-SH4)にカップリングすることによって、転写を強化した。マウスの微小ウイルス(MVM)イントロンおよび合成ポリアデニル化部位(SynthポリA)と組み合わせた、ヒトバイアスコドン利用最適化ヒトMTM1遺伝子(hMTM1co)の発現を促進するために、これらのエレメントを1.4kbヒトデスミンプロモーターの上流にクローニングした。
【0188】
GSD-IIのためのプロトタイプAAVベクター(図9b)は、GAAの転写および翻訳を最大にするように設計された。横隔膜CRE(Dia-CRE)を以前に同定された心臓/骨格筋CRE(CSk-SH5)にカップリングすることによって、転写を強化した。マウスの微小ウイルス(MVM)イントロンおよびヒト酸性α-グルコシダーゼ遺伝子(hGAAco)および合成ポリアデニル化部位(SynthポリA)と組み合わせた、ヒトバイアスコドン利用最適化ヒトGAA遺伝子(hGAAco)の発現を促進するために、これらのエレメントを合成SPc5-12-GTRMプロモーターの上流にクローニングした。
【0189】
以下の10個の異なるAAV構築物を、マウスにおける治療的遺伝子のin vivo発現について評価し、最良パフォーマンスのものは前臨床またはフェーズI臨床試験の対象になる:
1)pAAVss-hDes1.4kb-MVM-hMTM1-SynthpA(横隔膜CREなし、筋肉CRE Sk-SH4なし、MTM1遺伝子発現を促進するDesmin1.4kbプロモーター+MTM1だけ)(配列番号135)
2)pAAVss-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(横隔膜CREなし、筋肉CRE Sk-SH4なし、+Des1.4kb+コドン最適化MTM1)(配列番号134)
3)pAAVss-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1-SynthpA(横隔膜CREなし、+筋肉CRE Sk-SH4+Des1.4kb+MTM1)(配列番号137)
4)pAAVss-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(横隔膜CREなし、+筋肉CRE Sk-SH4+Des1.4kb+コドン最適化MTM1)(配列番号136)
5)pAAVss-CRE64-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(筋肉CRE Sk-SH4と組み合わせた最良選択横隔膜CRE64を含有する)(配列番号131)
6)pAAVss-SPc5-12GTRM-MVM-hGAA-SynthpA(横隔膜CREなし、筋肉CREなし、GAA遺伝子発現を促進するSPc5-12-GTRMプロモーターだけ)(配列番号139)
7)pAAVss-SPc5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(横隔膜なし、筋肉CRE CSk-SH5なし、+SPc5-12-GTRM+コドン最適化GAA)(配列番号138)
8)pAAVss-CSk-SH5-SPc5-12GTRM-MVM-hGAA-SynthpA(横隔膜CREなし、+筋肉CRE CSk-SH5+SPc5-12-GTRM+GAA)(配列番号133)
9)pAAVss-CSk-SH5-SPc5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(横隔膜CREなし、+筋肉CRE CSk-SH5+SPc5-12-GTRM+コドン最適化GAA)(配列番号132)
10)pAAVss-CRE04-CSK-SH5-SPc-5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(筋肉CRE CSk-SH5と組み合わせた最良選択横隔膜CRE04を含有する)(配列番号130)
筋細管性ミオパシー(MTM)患者は心臓の問題を有さないので、この疾患の治療のために心臓を標的にすることは意図されていない。これのために、横隔膜および骨格筋組織においてMTM1遺伝子またはコドン最適化MTM1coを発現させるために、ヒトデスミン1,4kbプロモーターカセットによるSk-SH4CREをDia-CRE64と組み合わせて使用した。
【0190】
ポンペ患者は心臓の問題も患うので、心臓を標的にすることも重要である。これのために、治療的GAA遺伝子またはコドン最適化GAAco遺伝子を発現させるために、Dia-CRE04と組み合わせたCSk-SH5 CREを、合成SPc5-12プロモーターカセットと一緒に使用するが、それは、この組合せが横隔膜、骨格筋および心臓組織における非常に頑健な発現につながるからである。
実施例6:プロトタイプAAVベクターpAAVss-CRE04-CSk-SH5-SPc-5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpAおよびpAAVss-CRE64-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpAのin vivo検証。
【0191】
筋肉特異的Sk-SH4(配列番号121)または心臓/筋肉特異的CSk-SH5(配列番号122)調節エレメントとそれぞれ組み合わせた、横隔膜特異的調節エレメントCRE04(配列番号4によって規定される)またはCRE64(配列番号64によって規定される)を含むAAV主鎖を、5×1010vg/マウスの用量でCB17-SCIDの子に注射した。注射から8週後の時点で、AllPrep DNA/RNAミニキット(Qaigen)を製造業者の説明書により使用して全RNA抽出のために器官を取り出した。Superscript VI cDNA合成キット(ThermoFisher)を使用して、RNAを逆転写した。その後、各器官からのcDNAを、hGAA、hGAAco、hMTM1またはhMTM1co治療的遺伝子特異的プライマーを使用したqRT-PCRを実行するために付した。相対発現(2ΔΔCt)をもたらす正規化のための内部標準として、mGapdh遺伝子を使用した。
【0192】
横隔膜特異的CRE04と骨格筋および心臓特異的CSk-SH5の組合せを含有するAAV(AAVss-CRE04-CskSH5-SPc5-12GTRM-MVM-hGAAco-SynthpA(配列番号130))は、横隔膜、腓腹筋、脛骨筋および心臓におけるhGAAcoの発現を対照と比較して少なくとも17倍増加させた(図10)。
【0193】
横隔膜特異的CRE64とSk-SH4の組合せを含有するAAV(図でSk-CRM4と呼ばれる-AAVss-CRE64-Sk-SH4-hDes1.4kb-MVM-hMTM1co-SynthpA(配列番号131))は、横隔膜、腓腹筋、脛骨筋および心臓におけるhMTM1coの発現を対照と比較して少なくとも2.6倍増加させた(図11)。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図2-9】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4-1】
図4-2】
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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