(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】無線装置
(51)【国際特許分類】
H04W 60/00 20090101AFI20250124BHJP
H04W 4/08 20090101ALI20250124BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20250124BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20250124BHJP
【FI】
H04W60/00
H04W4/08
H04W64/00 150
H04W92/18
(21)【出願番号】P 2021047901
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-02-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2021年1月11日、https://ieeexplore.ieee.org/document/9369487、2021 IEEE 18th Annual Consumer Communications & Networking Conferenceにおける予稿集 [刊行物等]2021年1月11日、https://ccnc2021.ieee-ccnc.org/、2021 IEEE 18th Annual Consumer Communications & Networking Conferenceにおける仮想会議 (Virtual Conference)
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タイ ゾゥ
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-538583(JP,A)
【文献】特開2001-177860(JP,A)
【文献】特開2018-093537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126458(US,A1)
【文献】国際公開第2016/184492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局の接続相手の位置を、該基地局の通信エリアを含む追跡エリアの単位で管理するコアネットワークにおいて、前記基地局と接続する無線装置であって、
前記基地局を介して前記コアネットワークと通信する第1の無線インタフェースと、
共通する前記追跡エリアに位置する他の無線装置と通信する第2の無線インタフェースと、
自己の過去の位置情報に基づいて自己の移動の軌跡情報を生成する測位部と、
所定のタイミングで前記軌跡情報を含む送信信号を生成して前記第2の無線インタフェースを介して前記他の無線装置に送信し、
前記送信信号に応じて前記他の無線装置から返信された応答信号を前記第2の無線インタフェースを介して受信し、
前記応答信号を返信した前記他の無線装置のIDを含むグループリストを生成し、
前記グループリストに基づいて、自己および前記応答信号を返信した前記他の無線装置の位置情報の登録要求を、前記第1の無線インタフェースを介して前記コアネットワークに送信する、
グループ管理部と、
前記第2の無線インタフェースを介して前記他の無線装置から該他の無線装置の移動の軌跡情報を含む信号を受信し、
前記自己の移動の軌跡情報および前記他の無線装置の移動の軌跡情報に基づいて両者の相関を示す相関情報を生成し、
前記相関情報に基づいて前記他の無線装置がなすグループに属するか否かを判定し、
判定の結果前記グループに属する場合に前記第2の無線インタフェースを介して自己のIDを含む応答信号を送信する、
グループ判定部と、
を具備する無線装置。
【請求項2】
基地局の接続相手の位置を、該基地局の通信エリアを含む追跡エリアの単位で管理するコアネットワークにおいて、前記基地局と接続する無線装置であって、
前記基地局を介して前記コアネットワークと通信する第1の無線インタフェースと、
共通する前記追跡エリアに位置する他の無線装置と通信する第2の無線インタフェースと、
自己の過去の位置情報に基づいて自己の移動の軌跡情報を生成する測位部と、
所定のタイミングで前記軌跡情報を含む送信信号を生成して前記第2の無線インタフェースを介して前記他の無線装置に送信し、
前記送信信号に応じて前記他の無線装置から返信された応答信号を前記第2の無線インタフェースを介して受信し、
前記応答信号を返信した前記他の無線装置のIDを含むグループリストを生成し、
前記グループリストに基づいて、自己および前記応答信号を返信した前記他の無線装置の位置情報の登録要求を、前記第1の無線インタフェースを介して前記コアネットワークに送信する、
グループ管理部と、
を具備する無線装置。
【請求項3】
基地局の接続相手の位置を、該基地局の通信エリアを含む追跡エリアの単位で管理するコアネットワークにおいて、前記基地局と接続する無線装置であって、
前記基地局を介して前記コアネットワークと通信する第1の無線インタフェースと、
共通する前記追跡エリアに位置する他の無線装置と通信する第2の無線インタフェースと、
自己の過去の位置情報に基づいて自己の移動の軌跡情報を生成する測位部と、
前記第2の無線インタフェースを介して前記他の無線装置から該他の無線装置の移動の軌跡情報を含む信号を受信し、
前記自己の移動の軌跡情報および前記他の無線装置の移動の軌跡情報に基づいて両者の相関を示す相関情報を生成し、
前記相関情報に基づいて前記他の無線装置がなすグループに属するか否かを判定し、
判定の結果前記グループに属する場合に前記第2の無線インタフェースを介して自己のIDを含む応答信号を送信する、
グループ判定部と、
を具備する無線装置。
【請求項4】
前記測位部は、前記第1の無線インタフェースを介して接続する前記基地局の通信エリアを含む追跡エリアの識別情報を、前記位置情報として取得することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項5】
前記グループ判定部は、前記応答信号を送信した後、自己の位置情報が前記コアネットワークに登録されたことを示す更新受付情報を受信することを特徴とする請求項1または3に記載の無線装置。
【請求項6】
前記グループ管理部は、前記登録要求を送信した後、所定の期間経過後に前記送信信号を再度生成して前記第2の無線インタフェースを介して前記他の無線装置に送信することを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の管理は、セルラネットワークにおいて重要な機能である。移動体の管理は、コアネットワークCNがユーザ機器UEの位置を追跡するプロセスであり、登録と呼出の二つの要素がある。
【0003】
登録は、コアネットワークCNに対してユーザ機器UEが自己の位置情報を報告するプロセスである。現行の4GLTE(Long-Term Evolution)やEPC(Evolved Packet Core)システムにおいて、セル(すなわちEvolved Node B (eNBs))は、移動体の移動を管理するトラッキングエリア(TAs;追跡エリア)を形成するようにグループ化されている。各々のセルは一つの追跡エリアTAに割り当てられ、それぞれのユーザ機器UEは一つの追跡エリアTAについて登録を行う。ユーザ機器UEがある追跡エリアTAから他の追跡エリアTAへ移動するとき、ユーザ機器UEは、コアネットワークCNに対して最近の位置情報を報告(登録)する。
【0004】
コアネットワークCNに対する位置情報の登録手順は、LTE/EPCにおいてはトラッキングエリアアップデート(Tracking Area Update;追跡エリア更新手順)と呼ばれる。ユーザ機器UEは、新しい追跡エリアTAへ移動したときや、追跡エリアの更新タイマが所定の時間経過したときなどに、登録または追跡エリア更新手順を実行する必要がある。追跡エリアTAは、さらに追跡エリアリスト(Tracking Area List)を形成するようグループ化されている。追跡エリアリストは、複数の追跡エリアTAを含んでいるから、ユーザ機器UEは、追跡エリア更新手順を実行することなくこれら追跡エリアTA相互間を自由に移動することができる。ユーザ機器UEが、現在の追跡エリアリストに含まれていない他の追跡エリアTAへ移動するとき、ユーザ機器UEは追跡エリア更新手順を完了する必要がある。
【0005】
呼出(Paging, Call termination)は、着信データやユーザ機器UEへの呼出ルーティング手続である。コアネットワークCN(移動管理機構(Mobility Management Entity; MME)を含む)が、ユーザ機器UEへの呼出やデータを受信すると、コアネットワークCNは、ユーザ機器UEが最近登録された追跡エリアTAに属するすべてのセルにおいて呼出メッセージを送信する。ユーザ機器UEが呼出メッセージを受信すると、ユーザ機器UEが呼出メッセージに応答するセルを通じて接続が確立される。移動管理の目的は、コアネットワークCNがユーザ機器UEを正確に追跡することである。そのため、ユーザ機器UEは、その位置情報を定期的にその位置情報を報告する。
【0006】
コアネットワークCNは、報告がなされた情報を随時アップデートする。もしコアネットワークCNにおける位置情報が不正確であれば、コアネットワークCNはユーザ機器UEへの呼出を正しく転送することができない。
【0007】
ユーザ機器UEが、いわゆる携帯電話などではなく、M2M通信(Machine to Machine)を行う機器(M2Mデバイス)である場合を考えると、一般に、M2Mのネットワークは、セルラネットワークにおいて参照されるM2Mデバイスの数が多く、何百ものM2Mデバイスを参照する。そのため、M2Mネットワークにおいては、現在の移動体の加入者に加えて何百万ものデバイスが移動体通信システムに接続されることになる。大量の数のデバイスに係る移動管理は、移動体ネットワークにとって無視できない負担となる。
【0008】
移動管理に関する通信を減らす解決策の一つとして、特に登録に関する通信において、グルーピングアプローチ(グループ化手法)が知られている。グループ化手法では、同じような移動パターンをもつM2Mデバイス(またはユーザ機器UE)がグループ化され、その中の一つのデバイスがグループリーダ(GL)として選択される。グループが新しい追跡エリアTAに移動すると、グループリーダGLのみが当該グループを代表して登録動作を実行する。このように、この手法では、登録や位置情報のアップデートに起因する通信の集中を減らすことができる。
【0009】
しかし、この手法では、登録や呼出の機能についてグループリーダGLに過度に依存してしまう問題がある。グループリーダGLがグループを離脱したり、混信や端末の電力不足等により登録手順(あるいは追跡エリア更新手順)を確立できない場合、コアネットワークCNはグループ全体の追跡に失敗してしまう。また、グループ化手法では、ユーザ機器UEやデバイスの離脱を検出するメカニズムを持たないため、メンバたるユーザ機器UEやM2Mデバイスがグループの軌跡から逸脱した場合、コアネットワークCNは離脱を検出することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、従来の無線装置では、グループ化手法を用いた場合でもコアネットワークが追跡に失敗する可能性がある。本実施形態は係る課題を解決するためになされたもので、移動体の管理にグルーピング手法を用いた場合でもコアネットワークが追跡を維持することのできる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
実施形態の無線装置は、基地局の接続相手の位置を、該基地局の通信エリアを含む追跡エリアの単位で管理するコアネットワークにおいて、基地局と接続する無線装置である。この無線装置は、基地局を介してコアネットワークと通信する第1の無線インタフェースと、共通する追跡エリアに位置する他の無線装置と通信する第2の無線インタフェースと、自己の過去の位置情報に基づいて自己の移動の軌跡情報を生成する測位部と、所定のタイミングで軌跡情報を含む送信信号を生成して第2の無線インタフェースを介して送信し、該送信信号に応じて他の無線装置から返信された応答信号を第2の無線インタフェースを介して受信し、該応答信号を返信した他の無線装置のIDを含むグループリストを生成し、グループリストに基づいて、自己および前記応答信号を返信した前記他の無線装置の位置情報の登録要求を、第1の無線インタフェースを介してコアネットワークに送信する、グループ管理部を具備する。また、この無線装置は、第2の無線インタフェースを介して他の無線装置から該他の無線装置の移動の軌跡情報を含む信号を受信し、自己の移動の軌跡情報および他の無線装置の移動の軌跡情報に基づいて両者の相関を示す相関情報を生成し、相関情報に基づいて他の無線装置がなすグループに属するか否かを判定し、判定の結果グループに属する場合に第2の無線インタフェースを介して自己のIDを含む応答信号を送信する、グループ判定部を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】セルラネットワークにおいて呼出の受信を示す図である。
【
図3】セルラネットワークにおいて移動するM2Mデバイスを示す図である。
【
図4】M2Mデバイスのグループからデバイスが離脱した様子を示す図である。
【
図5】M2Mデバイスのグループからデバイスが離脱する様子を示す図である。
【
図6】グループ化されたデバイスが移動する様子を示す図である。
【
図7】実施形態に係るデバイスの構成を示す図である。
【
図8】実施形態に係るデバイスのグループ化動作を示す図である。
【
図9】実施形態に係るデバイスのグループ化動作を示す図である。
【
図10】デバイスのグループ化動作における通信手順を示す図である。
【
図11】二つのデバイスが移動する様子を示す図である。
【
図12】実施形態に係るデバイスの効果を示す図である。
【
図13】実施形態に係るデバイスの効果を示す図である。
【
図14】実施形態に係るデバイスの効果を示す図である。
【
図15】実施形態に係るデバイスの効果を示す図である。
【
図16】実施形態に係るデバイスの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(セルラネットワークの概要)
図1を参照して、実施形態に係るセルラネットワークについて説明する。
図1に示すように、実施形態のセルラネットワークNWは、コアネットワークCNを有している。コアネットワークCNは、いわゆるバックボーンネットワークであり、ユーザ機器UEはコアネットワークCNに属している。コアネットワークは、ユーザ機器UEへ呼出メッセージを送るため、ユーザ機器UEの位置情報を管理するシステムを有している。
【0015】
実施形態のセルラネットワークNWは、基地局eNB1ないしeNB5を有している。基地局eNB1ないしeNB5は、コアネットワークCNと接続されている。
図1に示す例では、基地局eNB1およびeNB2の通信エリア(セル)それぞれが、追跡エリア(Tracking Area)TA1を構成している。同様に、基地局eNB3ないしeNB5の通信エリアそれぞれが、追跡エリアTA2を構成している。
【0016】
追跡エリアTAは、セルラネットワークの端末たるユーザ機器UEを追跡する単位となる領域である。各基地局の通信エリアたるセルそれぞれは、いずれか一つの追跡エリアTAに割り当てられている。ユーザ機器UEは、一つの追跡エリアTAに位置するものとして、コアネットワークCNに対して登録を行う。ユーザ機器UEが基地局eNB1のセルから基地局eNB2のセルへ移動しても、ユーザ機器UEは、依然として追跡エリアTA1に位置したままである。一方、ユーザ機器UEが基地局eNB2のセルから基地局eNB3のセルへ移動した場合、ユーザ機器UEは追跡エリアTA1から追跡エリアTA2へ移動することになる。コアネットワークCNは、追跡エリアを単位としてユーザ機器UEの位置と移動を管理する。
【0017】
ユーザ機器UEが、例えば追跡エリアTA1から追跡エリアTA2へ移動するとき、ユーザ機器UEは、コアネットワークCNに対して自己の最新の位置情報を報告する。位置情報は、追跡エリアTAのIDとして表すことができる。
図1に示す例では、移動後のユーザ機器UEは、追跡エリアTA2を自己の最新の位置情報としてコアネットワークCNに報告する。
【0018】
続いて、
図1および
図2を参照して、実施形態に係るセルラネットワークNWにおいてユーザ機器UEが受ける呼出の流れ(着信する通信の流れ)を説明する。コアネットワークCNがユーザ機器UEに対する呼出を受信すると、コアネットワークCNは、ユーザ機器UEが最後に登録された追跡エリアTAに属する全てのセルの基地局に対して、ユーザ機器UEの呼出メッセージを送信する(
図2中、一点鎖線)。ユーザ機器UEが呼出メッセージを受信すると、ユーザ機器UEが呼出メッセージに応答するセルの基地局を通じて接続が確立される(
図2中、実線)。
【0019】
図1および
図2に示す例では、移動後のユーザ機器UEは、追跡エリアTA2を位置情報としてコアネットワークCNに報告しているから、コアネットワークCNが受信したユーザ機器UEに対する呼出は、追跡エリアTA2に属する基地局eNB3ないしeNB5の通信エリアすべてに向けて送信される(
図2中一点鎖線)。ユーザ機器UEは呼出メッセージを受信すると、自己が属するセルの基地局eNB3を通じて接続を確立する。ユーザ機器UEの以後の通信は、基地局eBN3を介して行われる(
図2の実線矢印)。
【0020】
(ユーザ機器がM2Mデバイスの場合)
図3を参照して、ユーザ機器UEがM2Mデバイスのように一定数がまとまって移動する場合について説明する。ユーザ機器UEが、いわゆる携帯電話などではなく、M2M通信(Machine to Machine)を行う機器(M2Mデバイス)である場合を考える。この場合、一般に、セルラネットワークNWにおいて参照されるM2Mデバイスは数が多く、何百ものM2Mデバイスを参照することがあり得る。そのため、M2Mデバイスが属するセルラネットワークにおいては、現在の移動体の加入者に加えて何百万ものM2Mデバイスがセルラネットワークに接続されることになる。大量の数のデバイスの移動管理は、コアネットワークCNや基地局にとって無視できない負担となる。
図3に示す例では、複数のユーザ機器UEが追跡エリアTA1から追跡エリアTA2へ移動した場合に、ユーザ機器UEそれぞれが自己の位置情報を、基地局eNB3を介してコアネットワークCNに報告している状況を示している。この場合、基地局eNB3やコアネットワークCNの負担が極めて大きくなる。
【0021】
そこで、実施形態のセルラネットワークでは、まずユーザ機器UEがグループリーダGLを代表とするグループを形成する。このグループは、移動する軌跡が似ているユーザ機器UEをメンバとして構成される。
【0022】
(グループ化の基準)
ユーザ機器UEをグループ化する基準を説明する。数式1に示すようにM2MデバイスmがM個存在すると仮定する。
【数1】
コアネットワークCNの追跡エリアは、TA
1,TA
2,...,TA
NのようにN個に分割されているものとする。M2Mデバイス各々は追跡エリアTA内を独立して移動し、コアネットワークCNにはM2Mデバイスそれぞれの過去の軌跡が記録されている。M2Mデバイスそれぞれの移動に関する相関は、M2Mデバイスの過去の軌跡をもとに推定することができる。そこで、M2Mデバイスは、M2Mデバイス相互の移動に関する相関をもとにグループ化する。
【0023】
M2Mデバイスm
xが追跡エリアTA
iから追跡エリアTA
jに向けて時刻tにおいて移動したとすると、デバイスm
xの移動は数式2のようにあらわされる。
【数2】
数式2は、時刻tにおいてデバイスm
xが追跡エリアTA
iから追跡エリアTA
jに向かうこと意味する。もしデバイスm
xが時刻[t,t+T]の間においてw個の追跡エリアTAを移動すると、デバイスm
xの軌跡は数式3のようになる。
【数3】
同様に、もしデバイスm
yが時刻[t,t+T]の間においてw
2個の追跡エリアTAを移動すると、デバイスm
yの軌跡は数式4のようになる。
【数4】
【0024】
デバイスm
xが訪れるK個(K>0)の直近の追跡エリアTAを含むデバイスm
xの軌跡をρ
x(K)とおくと、数式5のようにあらわされる。
【数5】
ここで、軌跡ρ
i
xは、時刻t
iにおいて追跡エリアTA
iに存在するデバイスm
xを示すツータプル(TA
i
x,t
i
x)である。移動体m
xおよびm
yの相関Cは、数式6のように推定することができる。
【数6】
【数7】
∈は、閾値であり、デバイスm
xおよびm
yの相関を決定するために用いられる。さらに、Z(ρ
v
x,ρ
v
y)は、1または0の値をとる二値関数である。例えば、K=3とおき、もしC
x,y(3)=1であれば、デバイスm
xおよびm
yの移動の軌跡は、時刻および空間に関して三つの追跡エリアTAにおいて共通していることになる。それゆえ、もしC
x,y(K)=1であれば、デバイスm
xおよびm
yが移動の相関をもつと決定できる。すなわち、グループ化可能なデバイスであると判定することができる。
【0025】
実施形態のセルラネットワークでは、ユーザ機器UEが自己の軌跡と他のユーザ機器の軌跡との相関性に基づいてグループ化の適否を判定する。
【0026】
(ユーザ機器UEのグループ化手順)
続いて、実施形態におけるユーザ機器UEのグループ化手順について説明する。グループ化手順は、帯域外の通信により行われる。すなわち、M2Mデバイス間の通信は、ライセンスされた基地局を介して行う通信規格ではなく、ライセンスされていない通信規格(帯域)を経由して行うことができる。いかなるM2MデバイスもグループにおけるグループリーダGLとしてふるまうことができ、その移動パターンをブロードキャスト送信することによりグループ化手順を開始することができる。
【0027】
M2Mデバイスmxがグループ化手順を開始する場合、デバイスmxは、自己のIDと軌跡ρx(K)を含むグループ化メッセージをブロードキャスト送信する。他のM2Mデバイスmyが当該メッセージを受信すると、デバイスmyは、受信した軌跡ρx(K)および自己の軌跡ρy(K)の値それぞれを比較することにより、グループリーダGLたるデバイスmxとの相関Cを推定する。もし、数式6および数式7を用いた演算の結果、Cx,y(K)=1であれば、デバイスmyは、デバイスmxと移動に関して相関があると判定できる。
【0028】
デバイスmyは、判定の結果デバイスmxと移動に関して相関がある場合、自己のデバイスIDを含むグループ登録メッセージをデバイスmxに対して送信する。これによりデバイスmyは、デバイスmxをグループリーダGLとするグループに所属したことになる。
【0029】
ここで、もし移動に関する相関基準を満たすたくさんのデバイスが、同時にグループ登録メッセージを送信した場合、メッセージの衝突が発生し、グループ化を確立することが難しくなる。かかるメッセージの衝突問題については、プリバックオフウィンドウ方式を適用することができる。
【0030】
プリバックオフウィンドウ方式は、各デバイスがグループ登録メッセージを送信する前に、ランダムバックオフを実施することで衝突を軽減する。グループ化メッセージに応答するデバイスは、0からWbの範囲のランダムバックオフを選択しておく。ここで、Wbは、あらかじめ決められたタイムスロットに関するバックオフウィンドウである。グループ化メッセージに応答するデバイスは、各々が選択したバックオフの値に応じた時間差でグループ登録メッセージを送信する。これにより、グループ登録メッセージの衝突を抑えることができる。
【0031】
前述したとおり、グループ化したユーザ機器それぞれが自己の位置情報をコアネットワークCNに報告すると、ネットワークの負荷が大きくなってしまう。そこで、実施形態のセルラネットワークでは、グループ化したユーザ機器UEのうち、グループを代表するグループリーダGLのみが自己のグループの位置情報をコアネットワークCNに報告する。
【0032】
グループリーダGLとなったデバイスmxは、時間Wbの間に時間的に分散した複数のデバイスからのグループ登録メッセージを取得し、グループ構成手順を実行する。プリバックオフウィンドウ方式により、多くのデバイスはグループ登録メッセージのデバイスmxへの送信に成功するが、デバイスmxは、r個のグループ登録メッセージのみ(r≦rmax)を受け入れてグループを構成してもよい。rmaxは、グループメンバの最大数を規定するあらかじめ設定された値である。
【0033】
グループリーダたるデバイスmxは、グループ登録メッセージを記録するとともに、グループメンバのIDのリストを含むグループ受領通知(ACK)をブロードキャスト送信する。グループ受領通知を受信したデバイスは、自己のIDがグループ受領通知に含まれていれば、自己がグループに参加したことを知ることができる。
【0034】
グループ受領通知を受信した結果、自己のIDがグループ受領通知に含まれていない場合、そのデバイスはデバイスmxのグループには参加することができなかったことになる。グループ登録メッセージを送信したものの当該リストに含まれていないM2Mデバイスは、さらなるグループ化手順によりグループを構成することができる。すなわち、自己がグループリーダとなることができる。
【0035】
(グループ化されたユーザ機器の位置情報の登録更新)
通常の移動体管理と同様に、グループ化されたM2Mデバイスについても位置情報の登録手順を必要とする。すなわち、M2Mデバイスは、(1)新しい追跡エリアTAへと移動したときや、(2)タイマの時間Tupdateが経過したときに、自己の位置情報をコアネットワークCNへ報告する必要がある。
【0036】
グループに属したM2Mデバイスが、グループに属したまま新しい追跡エリアTAへと移動したときは、当該グループのグループリーダGLのみがグループを代表して登録手順や更新手順を実行することができる。すなわち、M2Mデバイスのグループが新しい追跡エリアTAへと移動すると、グループリーダGLのみが登録手順や追跡エリア更新手順を実行する。登録手順や追跡エリア更新手順においてグループリーダGLたるデバイスが送信する追跡エリア更新メッセージは、グループメンバのIDのリストを含んでいる。従って、コアネットワークCNは、グループリーダGLから追跡エリア更新メッセージを受信することで、グループに属するデバイス個々の位置情報を登録し更新することができる。コアネットワークCNは、グループリーダGLから追跡エリア更新メッセージを受けると、追跡エリア更新受付メッセージをグループリーダGLたるデバイスへ返信する。グループリーダGLたるデバイスは、追跡エリア更新受付メッセージをそのグループのメンバに転送する。グループメンバたるデバイスは、追跡エリア更新受付メッセージを受信することで、自己の位置情報がコアネットワークCNに登録されまたは更新されたことを知ることになる。
【0037】
M2Mデバイスは、グループに属してからの時間をカウントする更新タイマを有している。更新タイマのカウント値が所定の値Tupdateを経過すると、すべてのM2Mデバイスは、グループの所属を解除する。すなわち、更新タイマの値が値Tupdateを経過すると、M2Mデバイスは、現在のグループへの所属をキャンセルし、グループ化手順を再度実行する。これは、定期的にグループ化を更新することで、グループメンバたるデバイスがグループから離脱したことを検出することを可能にする。
【0038】
グループ化手順を再実行するのは元のグループリーダGLである必要はない。グループへの所属を解除してすぐ再実行してもよい。ただし、グループリーダGLとなるための手順が同じタイミングで集中するとグループ化手順が滞る可能性があるから、M2Mデバイス個々がもつIDなどをもとにランダムに時間差を設けてグループ化手順を開始する構成が望ましい。これにより、グループリーダGLとなるM2Mデバイスが平準化させることができる。
【0039】
グループが再構成されると、グループごとの新たなグループリーダGLは、コアネットワークCNへの登録手順を実行する。
【0040】
グループ単位での位置情報の登録や更新が完了すると、グループに属するM2Mデバイスは、コアネットワークCNから呼出を受けることが可能になる。呼出手順については、コアネットワークCNからデバイスへの個別呼出メッセージや、グループ呼出の仕組みによるグループ呼出メッセージを送信することで実現できる。M2Mデバイスが呼出メッセージを受信すると、デバイスは呼出メッセージに応じて接続を確立する。
【0041】
(離脱の検出)
あるグループが新しい追跡エリアTAへと移動すると、いくつかのメンバの軌跡がグループから離脱することがあり得る。例えば、
図4に示すように、グループG
iが追跡エリアTA
iから追跡エリアTA
jへと移動し、メンバーデバイスたるデバイスm
k(m
k∈G
i)が追跡エリアTA
k(k≠j)へ移動した場合を考える。
【0042】
デバイスmkはメンバーデバイスであるから、登録手順を実行することはなく、グループリーダGLから追跡エリアの更新受付メッセージを待つ立場にある。そのため、もしデバイスmkが、所定の時間間隔Tupdate経過後に更新受付メッセージをグループリーダGLから受け取らなかった場合、デバイスmkは自分がグループから離脱したことを知ることになる。その場合、デバイスmkは、自らをグループリーダGLとして自己のρk(K)およびIDをブロードキャストすることで新しいグループ化手順を実行する。
【0043】
同様に、グループから離脱したデバイスやグループに属していないデバイスは、前述の手順によりグループリーダGLとなるか、グループリーダGLからのグループ登録メッセージに応答することで、グループに属することができる。グループ化後、新たなグループリーダGLとなったデバイスmkは、登録メッセージをコアネットワークCNへ送信する。
【0044】
新しいグループ化手順を実行したグループリーダGLたるデバイスmkは、修正された追跡エリア更新メッセージをコアネットワークCNに送信する。その結果、コアネットワークCNは、デバイスmkについて、旧グループGiのグループリーダから受け取った位置情報と、現行グループGkのグループリーダから受け取った位置情報の異なる二つの位置情報を持つことになる。コアネットワークCNは、修正された登録メッセージの情報(新しく受け取った情報)を優先することで、混乱や誤報を避けるように動作する。以上の流れにより、離脱したデバイスの位置情報はコアネットワークCNにおいて更新される。
【0045】
グループリーダGLがグループから離脱する場合も同様である。例えば、
図5に示すように、グループG
iが追跡エリアTA
iから追跡エリアTA
jへと移動し、グループリーダGLが追跡エリアTA
k(k≠j)へ移動した場合も、同様の手順によりグループを更新することができる。
【0046】
(実施形態の構成)
次に、
図6ないし
図11を参照して、実施形態に係る無線装置について説明する。実施形態に係る無線装置は、いわゆるM2M通信を行うM2Mデバイスであり、複数のデバイスが類似の軌跡をたどって移動する。
図6に示すように、例えば複数のデバイスが同じ運搬手段により移動しており、当該デバイスがコアネットワークCNに対して登録等の動作を行う。
【0047】
図7は、実施形態の無線装置の構成を示している。
図7に示すように、実施形態の無線装置1aないし1eは、少なくとも一部が共通の構成を有しており、基地局eNBや他の無線装置と通信を行う。以下の説明においては、代表して無線装置1aの構成を説明し、無線装置1bないし1eの共通する構成について図示および説明を省略する。
図7に示すように、実施形態の無線装置1aは、無線インタフェース(無線I/F)10a、端末通信部11a、グループ管理部12a、測位部13a、グループ判定部14aおよび記憶部15aを有している。
【0048】
無線インタフェース10aは、無線装置1aが送信するデータをアンテナANTに送る送信信号に変換し、アンテナANTが受けた受信信号を受信データに変換する。無線インタフェース10aは、無線装置1aが基地局eNBを通じて音声やデータなどを送受信する第1の規格と、近接する他の無線装置1bないし1eとグループ化メッセージなどを送受信する第2の規格とに対応している。
【0049】
端末通信部11aは、第1の規格に対応する演算ブロックである。端末通信部11aは、送信データを生成するとともに受信データを復号する。端末通信部11aが準拠する第1の規格は、例えばセルラネットワークNWに用いられる規格であり、LTEや5G規格などが例示される。端末通信部11aは、主として基地局eNBと通信する送受信データを処理する。
【0050】
グループ管理部12aは、無線装置1aが属するグループを管理する演算ブロックである。グループ管理部12aは、自らがグループリーダGLとなる場合のグループ管理手順を実行する。グループ管理部12aにより他の無線装置と通信する場合、無線インタフェース10aは、第2の規格を用いることができる。
【0051】
測位部13aは、無線装置1aの位置情報を取得する演算ブロックである。測位部13aは、GPSなどの手段により自ら位置情報を取得してもよいが、無線インタフェース10aが通信する基地局eNBが属する追跡エリアTAを位置情報として管理してもよい。測位部13aは、過去の自己の位置情報に基づいて、自己が移動した軌跡に関する軌跡情報を演算し、記憶部15aに保存する。
【0052】
グループ判定部14aは、他の無線装置1bないし1eがグループリーダGLとして送信したグループ化メッセージを受信した場合、当該グループ化メッセージに係るグループに所属するか否かを判定し決定する演算ブロックである。グループ判定部14aは、測位部13aが生成した自己の軌跡情報と、受信したグループ化メッセージに含まれる軌跡情報とを比較演算してグループへの所属の適否を判定する。グループ判定部14aにより他の無線装置と通信する場合、無線インタフェース14aは、第2の規格を用いることができる。
【0053】
記憶部15aは、不揮発性のメモリである。記憶部15aは、グループ管理部12aが管理する所属グループに関する情報や、測位部13aが管理する位置情報・軌跡情報などを記憶する。
【0054】
次に、
図7ないし10を参照して、実施形態の無線装置の動作を説明する。ここでは、無線装置1aがグループ化手順を実行し、無線装置1bが無線装置1aのグループに所属するか否かを判定するものとして説明する。
【0055】
測位部13aは、無線インタフェース10aを介して無線装置1aが属する基地局セルおよび追跡エリアTAに関する情報を取得する。測位部13aは、取得した追跡エリアTAの情報と時刻情報とを対応付けて軌跡ρx(k)を生成し、記憶部15aに記憶させる(S100)。ここで記憶部15aに蓄積された軌跡ρx(k)は、無線装置1aの移動に関する軌跡情報を構成する。
【0056】
グループ管理部12aは、無線装置1aがグループに属しているかを管理している。無線装置1aがグループに属していない状態で所定の時間が経過した場合、あるいは、無線装置1aが所属していたグループからグループの解除がなされた場合、グループ管理部12aは、記憶部15aに記憶された自己の移動に関する軌跡情報を読み出し、軌跡情報と自己のIDを含む送信信号を生成する。無線インタフェース10aは、生成された送信信号を第2の規格に基づいて送信する(S110)。
図10に示すように、無線装置1aが送信した送信信号は、他の無線装置1bないし1eにより受信される。
【0057】
グループ管理部12aは、所定の時間TWが経過するまで他の無線装置1bないし1eからの応答を待機する。応答がない場合、無線インタフェース10aは、自己のIDと軌跡情報を含む送信信号の送信を繰り返す(S120でNo)。
【0058】
所定の時間T
Wが経過するまでに他の無線装置からのグループ登録メッセージとして応答信号dIDを受信すると(S120でYes)、グループ管理部12aは、受信した応答信号dIDに基づいて、応答信号を発した他の無線装置のIDのリスト(グループリスト)を生成して記憶部15aに記憶させる(S130)。
図10に示す例では、無線装置1bないし1dから応答信号dIDが送信されているが、無線装置1eからは応答信号が発せられていない。これは、無線装置1aの軌跡情報と無線装置1eの軌跡情報とが相関が低いため、無線装置1eがグループに属さない判定をしたことを意味している。
【0059】
グループリストが生成されると、無線インタフェース10aは、応答信号を発した他の無線装置に対してグループ受領通知(ACK)を送信する(S140)。このグループ受領通知は、グループメンバとしてグループに参加したことを示すものである。
図10に示す例では、無線装置1aは、応答信号dIDを送信した無線装置1bないし1dに対してグループ受領通知を送信している。
【0060】
この段階で、無線装置1aは、自己および他の無線装置1bないし1dをメンバとするグループのグループリーダGLとなったことになる。グループ管理部12aは、グループメンバである自己および他の無線装置1bないし1dのIDのリストを含む追跡エリア更新メッセージを基地局eNBに送信する(S150)。基地局eNBは、受け取ったグループ更新情報をコアネットワークCNに転送する。コアネットワークCNは、ネットワークのバックボーンであって追跡ネットワークTA配下に属する無線装置を管理するデータベースを包含するから、受け付けたグループ更新情報を用いてデータベース上の追跡エリアTA情報を更新する。追跡エリアの更新が完了すると、コアネットワークCNは更新受付情報を基地局eNBに送り、基地局eNBは更新受付情報を無線装置1aに転送する。
【0061】
更新受付情報を受信すると、無線インタフェース10aは、更新受付情報をグループメンバである他の無線装置1bないし1dに転送する(S160)。更新受付情報を受信すると、他の無線装置1bないし1dは、自己がグループメンバとして登録されたことを知ることになる。
【0062】
このように、この実施形態では、グループリーダGLとなる無線装置が自己の軌跡情報を他の無線装置に対して送信し、その軌跡情報に基づいてグループ化が適切と判定した無線装置が返す応答信号に基づいて、グループ化が行われる。従って、グループ化された無線装置は、同様の軌跡に沿った移動を行うことが強く推定されるから、コアネットワークCNによる移動管理が適切に行われる。また、グループリーダGLが自己の軌跡情報を発することをトリガーとしてグループ化手順が開始するので、コアネットワークCN等が関与することなく自律的にグループ化を進めることができる。また、グループ化後にグループリーダGLとなった無線装置により追跡エリア更新メッセージが送信されるので、位置情報の更新等による通信の集中を抑えることができる。
【0063】
続いて、グループ化手順におけるグループメンバたる無線装置1bないし1eを代表して無線装置1bの動作を説明する。
【0064】
測位部13bは、無線インタフェース10bを介して無線装置1bが属する基地局セルおよび追跡エリアTAに関する情報を取得する。測位部13bは、取得した追跡エリアTAの情報と時刻情報とを対応付けて軌跡ρy(k)を生成し、記憶部15bに記憶させる(S200)。ここで記憶部15bに蓄積された軌跡ρy(k)は、無線装置1bの移動に関する軌跡情報を構成する。
【0065】
無線インタフェース10bが無線インタフェース10aから軌跡情報(軌跡ρx(k))を含むグループ化メッセージを受信すると(S210のYes)、グループ判定部14bは、取得した軌跡情報(軌跡ρx(k))と、記憶部15bに記憶した自己の軌跡情報(軌跡ρy(k))に基づいて、グループ化メッセージを送信した無線装置1aと自己との相関Cx,y(k)を算出する(S220)。
【0066】
算出した相関C
x,y(k)が「0」である場合(S230でNo)、グループ判定部14bは応答信号を生成せず、無線インタフェース10bは何も送信せず処理を終了する。これは、無線装置1aとの間の相関性が低く、同一のグループに属することが適切ではないからである。
図10に示す例では、無線装置1eが相当し、応答信号dIDを送信せず処理を終了している。
【0067】
算出した相関C
x,y(k)が「1」である場合(S230でYes)、グループ判定部14bは、応答信号dIDを生成し、無線インタフェース10bは応答信号dIDを無線装置1aに対して送信する(S240)。これは、無線装置1bが無線装置1aとの間の相関性が高く、同一のグループに属することが適切であることを意味する。
図10に示す例では、無線装置10bないし10dが応答信号dIDを無線装置1aに送信している。
【0068】
応答信号dIDを送信すると、無線インタフェース10bはグループ受領通知の受信を待機する(S250)。一定時間Twの間にグループ受領通知が受信できない場合、無線インタフェース10bは応答信号dIDを再送信する(S250でNo)。
【0069】
グループ受領通知を受信すると(S250でYes)、グループ判定部14bは、無線装置1aのIDをグループリーダGLとして記憶部15bに記憶する(S260)。これにより、無線装置1bは、無線装置1aをグループリーダGLとするグループに所属したことを知ることができる。
【0070】
その後、無線インタフェース10bは、追跡エリア更新受付情報を受信する(S270)。これにより、グループ判定部14bは、無線装置1bが無線装置1aをグループリーダGLとするグループに属することがコアネットワークCNに記録されたことを知ることができる。
【0071】
かかる一連の動作により、無線装置1aをグループリーダGLとし、無線装置1aないし1dをグループメンバとするグループが形成されるとともに、グループ化された情報がコアネットワークCNに記録される。これにより、コアネットワークCNは無線装置1aないし1dの位置を追跡することができ、無線装置1aないし1dはコアネットワークからの呼出を受けることが可能になる。
【0072】
(相関の判定)
図11を参照して、実施形態におけるM2Mデバイスの相関の判定について説明する。二つのデバイスが時間的・位置的に同じような移動経路(軌跡)を取った場合、二つのデバイスは相関するものと規定する。例えば、グループリーダGL候補のデバイスm
xと相関を判定するデバイスm
yの軌跡をそれぞれJ
x、J
yとすると、以下のようにあらわすことができる。
【数8】
【数9】
ここで、TAは追跡エリアTAのID、tは対応する追跡エリアに入った時刻である。
【0073】
軌跡ρ(k)は、デバイスが訪れたk個の追跡エリアTAの集合で表される。
【数10】
【0074】
時刻t
iにTA
iに入ったデバイスm
xをρ
i
xと表すと、二つのユーザの相関は、以下の通り見積もることができる。
【数11】
ここで、
【数12】
Zは1または0を取る二値関数なので、Cの結果は1か0の二値となる。もし時刻tiにおけるデバイスm
xの追跡エリアとデバイスm
yの追跡エリアとが同一であり、かつ当該追跡エリアTAに入った両者の時刻の差が所定の値を下回る場合、C=1(相関あり)となる。この条件を満たさない場合はC=0(相関なし)となる。k=3でC=1であれば、デバイスm
xとデバイスm
yの移動は最後の3つの追跡エリアTAについて時間的・位置的に同等ということができる。
【0075】
M2Mデバイスmxは、そのρx(k)を近隣デバイスにブロードキャストする。この時、デバイスmxは自らグループリーダになることを宣言する。近隣デバイスmyは、デバイスmxがブロードキャスト送信したρx(k)を受信する。
【0076】
デバイスmyは、デバイスmxとの相関を演算する。もしC=1であれば、デバイスmyは、デバイスmxと移動体の相関があると判定する。デバイスmyは応答信号IDをデバイスmxに送信しグループに参加する。
【0077】
グループが新しい追跡エリアTAに入った時、グループリーダGLたるデバイスのみが登録を実行する(TAU手順)。グループリーダGLたるデバイスがコアネットワークCNに送信する追跡エリア更新メッセージにはメンバーデバイスのIDが含まれている。グループ化は、所定のタイミングTupdate毎に行われる。その際、メンバを構成していたどのデバイスがグループ化手順を開始してもよい。グループ化手順が再実行されたら、その時のグループリーダGLが更新登録情報をコアネットワークCNに送信する。
【0078】
コアネットワークCNは、グループを構成するデバイス個々の位置情報を追跡エリアTAの単位で記録する。コアネットワークCNは、特定のデバイスに対して呼出やデータが届くと、対応する追跡エリアTAを介して当該デバイスへ転送する。
【0079】
(実施形態の評価)
実施形態について二つの手法で評価を行った。一つ目は、信号減少率(Signaling Reduction Ratio: SSR)で、以下の数式によりあらわされる。
【数13】
ここで、R
nは、グループ化されていないデバイスにより登録された登録メッセージ総数、R
gは、グループ化したデバイスにより登録された登録メッセージ総数である。大きいSSRは、高い登録メッセージ負担を低減することを示す。
【0080】
二つ目は、呼出失敗率(Page Miss Ratio; PMR)で、以下の数式によりあらわされる。
【数14】
ここで、P
totalは、コアネットワークCNによりなされた呼出総数、P
missは、呼出総数のうち呼び出しに失敗した数である。大きいPMRは、呼出手順における高いリスクの存在を示している。
【0081】
二つの移動モデルについてシミュレーションを行った。一つ目の移動モデルは、ランダムウォークモデルである。ランダムウォークモデルは、デバイスは独立して隣接する追跡エリアTAへランダムに移動するものであり、デバイス個々の移動に相関がないものである。二つ目の移動モデルは、計画的な運搬モデルである。運搬モデルは、複数のデバイスが車両やコンテナなどの移動体に積み込まれた状態のものである。移動体は、個々に移動する追跡エリアTAや滞在時間を決定できる替りに移動は道路上などあらかじめ決められた軌跡上を移動するものである。同じ移動体に積み込まれたデバイスの移動は強い相関性が存在する。
【0082】
(Kの効果)
図12は、指数Kが与える影響を表したものである。指標Kは、グループ化の基準である。ある二つのデバイスがグループ化するにあたって、過去の追跡エリアTAの変更(変化)が共通している数が指標Kである。指標Kが大きいということは、相関性がより高いデバイス同士がグループ化していることを表している。また、指標Kが大きければ離脱が少ないことでもあり、PMR値も小さくなる。ランダムウォークモデルでは、指標Kが大きい場合SRRも小さく、SRRはグループ化するメリットはあまりない。
【0083】
(T
updateの効果)
図13は、グループ化の更新タイミングが与える影響を表したものである。運搬モデルでは、更新タイミングごとにすべてのデバイスがグループを更新している。
図13に示すように、実施形態では、ランダムウォークモデルにおいても運搬モデルにおいてもPMRが小さい値となっており、定期的にグループ化を更新する仕組みが有効に働いていることがわかる。
【0084】
(平均滞在時間の効果)
図14は、ある追跡エリアTAにおける滞在時間を平均化した平均滞在時間が与える影響を表したものである。平均滞在時間が短い場合、デバイスは頻繁に追跡エリアTAを変更していることになる。
図14に示すように、実施形態では、追跡エリアTAにおける滞在時間の長短にかかわらず、PMRが小さい値となっている。
【0085】
(呼出メッセージの到着レートの効果)
図15は、コアネットワークCNからの呼出の到着率が与える影響を表したものである。
図15に示すように、呼出メッセージ到着レートは、グループ化の登録とは関係がない。実施形態では、呼出メッセージ到着レートに関わらずPMRが小さい値となっているが、これは離脱検出機能が有効に働いていることによるものである。
【0086】
(受容できるPMRにおけるSSRの最大効果)
図16に示すように、指標Kと交信タイミングT
updateを適切に設定することで、登録メッセージ数を大幅に減らすことができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は,例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1a~1e…無線装置(デバイス)、
10a~10b…無線インタフェース、
11a~11b…端末通信部、
12a~12b…グループ管理部、
13a~13b…測位部、
14a~14b…グループ判定部、
15a~15b…記憶部、
eNB…基地局、
CN…コアネットワーク、
TA…追跡エリア。