IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高砂工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ロータリーキルン 図1
  • 特許-ロータリーキルン 図2
  • 特許-ロータリーキルン 図3
  • 特許-ロータリーキルン 図4
  • 特許-ロータリーキルン 図5
  • 特許-ロータリーキルン 図6
  • 特許-ロータリーキルン 図7
  • 特許-ロータリーキルン 図8
  • 特許-ロータリーキルン 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ロータリーキルン
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/12 20060101AFI20250124BHJP
   F27B 7/16 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
F27B7/12
F27B7/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021147089
(22)【出願日】2021-09-09
(65)【公開番号】P2023039794
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390008431
【氏名又は名称】高砂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】大島 士月
(72)【発明者】
【氏名】土井 理成
(72)【発明者】
【氏名】西川 雅之
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-344994(JP,A)
【文献】特開2019-089665(JP,A)
【文献】実開昭48-024279(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/12
F27B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の軸周りに、正方向および逆方向に回転可能な外筒と、
前記外筒の径方向内側に配置され、前記外筒と共に回転可能であって、被処理物に熱処理を施す熱処理帯を内部に有する内筒と、
を備えるロータリーキルンであって、
前記内筒は、筒状の内筒本体と、前記内筒本体の内周面において前記熱処理帯の軸方向中心よりも下流側に配置される螺旋状の下流側送りフィンと、を有し、
前記内筒が前記正方向に回転する場合、前記被処理物は、前記下流側送りフィンにより、前記熱処理帯に近接する方向に送られ、
前記内筒が前記逆方向に回転する場合、前記被処理物は、前記下流側送りフィンにより、前記熱処理帯から離間する方向に送られ、
前記被処理物に熱処理を施す熱処理モードにおいては、前記内筒を前記正方向に回転させ、前記被処理物を前記熱処理帯に滞留させ、前記被処理物に熱処理を施し、
前記被処理物を下流側に寄せる片寄せモードにおいては、前記内筒を前記正方向に回転させ、前記熱処理モードに対して、上流側から下流側に向かって下降する傾斜が大きくなるように、前記内筒を傾動させ、前記熱処理帯において前記被処理物を下流側に寄せ、
前記被処理物を排出する排出モードにおいては、前記内筒を逆方向に回転させ、前記被処理物を前記熱処理帯から下流側に移動させることを特徴とするロータリーキルン。
【請求項2】
前記内筒は、さらに、前記内筒本体の内周面において前記熱処理帯の軸方向中心よりも上流側に配置される螺旋状の上流側送りフィンを有し、
前記上流側送りフィンの螺旋巻回方向と、前記下流側送りフィンの螺旋巻回方向と、は互いに反対であり、
前記内筒が前記正方向に回転する場合、前記被処理物は、前記上流側送りフィンおよび前記下流側送りフィンにより、前記熱処理帯に近接する方向に送られ、
前記内筒が前記逆方向に回転する場合、前記被処理物は、前記上流側送りフィンおよび前記下流側送りフィンにより、前記熱処理帯から離間する方向に送られる請求項1に記載のロータリーキルン。
【請求項3】
さらに、基部と、前記基部に対して傾動可能な傾動部と、を備え、
前記外筒および前記内筒は、前記傾動部に配置される請求項1または請求項2に記載のロータリーキルン。
【請求項4】
前記熱処理モードにおける、前記内筒の前記傾斜は0°であり、
前記片寄せモードおよび前記排出モードにおける、前記内筒の前記傾斜は一定である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のロータリーキルン。
【請求項5】
前記内筒は、さらに、前記内筒本体の内周面において前記熱処理帯に配置され前記内筒の回転に応じて前記被処理物を掻き上げる掻き上げフィンを有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のロータリーキルン。
【請求項6】
前記内筒は、前記外筒に対して着脱、交換可能である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のロータリーキルン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医薬品、電池材料などの被処理物に対して熱処理を施すロータリーキルンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッチ処理(バッチ式の熱処理)が可能なロータリーキルンが開示されている。同文献記載のロータリーキルンは、外筒と内筒とを備えている。外筒と内筒とは同軸状に配置されている。外筒および内筒には、上流側から下流側に向かって下降する、所定の傾斜が設定されている。当該傾斜は不変である。外筒と内筒とは、軸周りに、正方向および逆方向に回転可能である。内筒の内部には、被処理物に熱処理を施す熱処理帯が設定されている。内筒の下流端の内周面には、返し羽根が配置されている。返し羽根は、螺旋状に延在している。
【0003】
バッチ処理を行う場合は、内筒を正方向に回転させる。返し羽根は、内筒から被処理物が流出するのを抑制する。被処理物を排出する場合は、内筒を逆方向に回転させる。返し羽根は、内筒から被処理物が排出されるのを助勢する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-38508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同文献記載のロータリーキルンの場合、内筒の傾斜は不変である。また、当該傾斜は、被処理物の排出性を考慮して、大きめに設定されている。このため、バッチ処理を行う場合、被処理物が、自重により上流側から下流側に向かって流下しやすい。したがって、被処理物が、内筒の下流端付近に偏在しやすい。よって、被処理物に対して均質な熱処理を施しにくい。そこで、本発明は、被処理物に対して均質な熱処理を施しやすいロータリーキルンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のロータリーキルンは、自身の軸周りに、正方向および逆方向に回転可能な外筒と、前記外筒の径方向内側に配置され、前記外筒と共に回転可能であって、被処理物に熱処理を施す熱処理帯を内部に有する内筒と、を備えるロータリーキルンであって、前記内筒は、筒状の内筒本体と、前記内筒本体の内周面において前記熱処理帯の軸方向中心よりも下流側に配置される螺旋状の下流側送りフィンと、を有し、 前記内筒が前記正方向に回転する場合、前記被処理物は、前記下流側送りフィンにより、前記熱処理帯に近接する方向に送られ、前記内筒が前記逆方向に回転する場合、前記被処理物は、前記下流側送りフィンにより、前記熱処理帯から離間する方向に送られ、前記被処理物に熱処理を施す熱処理モードにおいては、前記内筒を前記正方向に回転させ、前記被処理物を前記熱処理帯に滞留させ、前記被処理物に熱処理を施し、前記被処理物を下流側に寄せる片寄せモードにおいては、前記内筒を前記正方向に回転させ、前記熱処理モードに対して、上流側から下流側に向かって下降する傾斜が大きくなるように、前記内筒を傾動させ、前記熱処理帯において前記被処理物を下流側に寄せ、前記被処理物を排出する排出モードにおいては、前記内筒を逆方向に回転させ、前記被処理物を前記熱処理帯から下流側に移動させることを特徴とする。
【0007】
ここで、「上流側」とは、内筒の軸方向両側のうち、被処理物が供給される側をいう。「下流側」とは、内筒の軸方向両側のうち、「上流側」の反対側であって、被処理物が排出される側をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロータリーキルンの内筒は、下流側送りフィンを有している。熱処理モードにおいて、被処理物は、下流側送りフィンにより、熱処理帯に近接する方向に送られる。このため、被処理物にバッチ処理を施すことができる。
【0009】
また、本発明のロータリーキルンの内筒は傾動可能である。熱処理モードにおける内筒の傾斜(0(水平)を含む)は、排出モードにおける内筒の傾斜よりも小さい。このため、熱処理モードにおいて、被処理物が、熱処理帯における下流側に偏在するのを、抑制することができる。よって、被処理物に対して均質な熱処理を施しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態であるロータリーキルンの軸方向断面図である。
図2図2は、図1の枠II内の拡大図である。
図3図3は、図2のIII-III方向断面図である。
図4図4は、図2の枠IV内の拡大図である。
図5図5は、同ロータリーキルンの片寄せモードにおける軸方向部分断面図である。
図6図6は、同ロータリーキルンの排出モードにおける軸方向部分断面図である。
図7図7は、同ロータリーキルンの内筒装着前の状態における軸方向部分断面図である。
図8図8(A)~図8(E)は、その他の実施形態(その1~その5)のロータリーキルンの内筒本体の内周面の展開図である。
図9図9(A)~図9(D)は、その他の実施形態(その6~その9)のロータリーキルンの内筒本体の径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明する。
【0012】
[ロータリーキルンの構成]
まず、本実施形態のロータリーキルンの構成について説明する。以降の図において、左側は上流側(供給側)に、右側は下流側(排出側)に、各々対応している。図1に、本実施形態のロータリーキルンの軸方向断面図を示す。図2に、図1の枠II内の拡大図を示す。図3に、図2のIII-III方向断面図を示す。図4に、図2の枠IV内の拡大図を示す。なお、図2に示すのは、同ロータリーキルンの熱処理モードにおける軸方向部分断面図である。図1図4に示すように、ロータリーキルン1は、主に、回転筒部2と、回転支持部3と、供給部4と、熱処理部5と、排出部6と、架台9と、を備えている。
【0013】
(架台9)
架台9は、下フレーム93と、上フレーム94と、傾動軸95と、昇降調整部96と、を備えている。下フレーム93は、本発明の「基部」の概念に含まれる。上フレーム94は、本発明の「傾動部」の概念に含まれる。
【0014】
上フレーム94は、下フレーム93の上側に、所定間隔だけ離間して、対向して配置されている。傾動軸95、昇降調整部96は、上フレーム94と下フレーム93との間に配置されている。下フレーム93に対して、上フレーム94は、昇降調整部96の駆動力により、傾動軸95を中心に傾動可能である。
【0015】
(回転支持部3)
回転支持部3は、上フレーム94に配置されている。回転支持部3は、一対の上流側ローラー30と、一対の下流側ローラー31と、上流側摺動シール部32と、下流側摺動シール部33と、を備えている。上流側ローラー30は、後述する熱処理部5の左側に配置されている。一対の上流側ローラー30は、前後方向(炉幅方向)に並んで配置されている。下流側ローラー31は、熱処理部5の右側に配置されている。一対の下流側ローラー31は、前後方向に並んで配置されている。上流側摺動シール部32は、上流側ローラー30の左側に配置されている。下流側摺動シール部33は、下流側ローラー31の右側に配置されている。
【0016】
(回転筒部2)
回転筒部2は、回転支持部3により、回転可能に支持されている。回転筒部2は、外筒20と、連結筒21と、内筒22と、を備えている。外筒20は、外筒本体200と、上流側タイヤ201と、下流側タイヤ202と、スプロケット203と、を備えている。
【0017】
外筒本体200は、回転軸Aを中心とする円筒状を呈している。外筒本体200の内周面は、凹凸を有しない平滑面である。外筒本体200は、傾斜角度(詳しくは、左右方向(水平方向)に対する傾斜角度をいう。例えば、「傾斜角度が大きくなる」とは、水平方向に対して、左側(上流側)から右側(下流側)に向かって下降する傾斜が大きくなることをいう。以下同様。)0°の状態において、左右方向に延在している。図4に示すように、外筒本体200の右端には、取付孔200aが開設されている。外筒本体200の右端付近(取付孔200aよりも左側の部分)は、下流側摺動シール部33に摺接している。詳しくは、図4に示すように、下流側摺動シール部33は、左右一対の軸受330を備えている。外筒本体200は、軸受330を介して、下流側摺動シール部33に摺接している。
【0018】
上流側タイヤ201は、外筒本体200の左端付近に環装されている。上流側タイヤ201は、環状を呈している。上流側タイヤ201は、一対の上流側ローラー30に、転動可能に載置されている。下流側タイヤ202は、外筒本体200の右端付近に環装されている。下流側タイヤ202は、環状を呈している。下流側タイヤ202は、一対の下流側ローラー31に、転動可能に載置されている。
【0019】
スプロケット203は、上流側タイヤ201の左側に併設されている。スプロケット203には、駆動力伝達用のチェーン(図略)が巻装されている。駆動装置(図略)からの駆動力は、チェーンを介して、スプロケット203に伝達される。当該駆動力により、外筒本体200つまり外筒20は、上流側ローラー30、下流側ローラー31上で、回転軸A(外筒本体200の径方向中心軸)の軸周りに、正方向および逆方向(正方向に対して反対方向)に回転可能である。
【0020】
連結筒21は、外筒本体200の左側に連結されている。連結筒21は、回転軸Aを中心とする円筒状を呈している。連結筒21は、上流側摺動シール部32に摺接している。詳しくは、図4に示す下流側摺動シール部33と同様に、上流側摺動シール部32は左右一対の軸受を備えている。連結筒21は、軸受を介して、上流側摺動シール部32に摺接している。連結筒21は、外筒20と共に、回転軸Aの軸周りに、正方向および逆方向に回転可能である。
【0021】
内筒22は、外筒20の径方向内側に配置されている。内筒22は、外筒20および連結筒21と共に、回転軸Aの軸周りに、正方向および逆方向に回転可能である。内筒22は、内筒本体220と、上流側送りフィン221と、下流側送りフィン222と、複数の掻き上げフィン223と、を備えている。
【0022】
内筒本体220は、回転軸Aを中心とする円筒状を呈している。内筒本体220は、傾斜角度0°の状態において、左右方向に延在している。内筒本体220の内部(後述する熱処理部5の断熱材51、ヒーター52の径方向内側)には、熱処理帯Bが設定されている。熱処理帯Bにおいては、被処理物Wに、所定の熱処理が施される。
【0023】
内筒本体220の左端開口は、被処理物Wの供給口220aである。内筒本体220の右端開口は、被処理物Wの排出口220bである。図4に示すように、内筒本体220の右端には、取付部220cが配置されている。取付部220cは、フランジ部220dと、四つのガイド部220eと、を備えている。フランジ部220dは、内筒本体220の右端から、径方向外側に張り出している。フランジ部220dは、環状を呈している。四つのガイド部220eは、各々、フランジ部220dの径方向外端から、左側に突出している。四つのガイド部220eは、周方向に90°ずつ離間して配置されている。ガイド部220eは、突起状を呈している。ガイド部220eには、取付孔220fが開設されている。取付孔220fの内周面には、ねじ部(図略)が形成されている。
【0024】
フランジ部220d左面と、内筒本体220外周面と、ガイド部220e内周面と、の間には、左側に向かって開口する凹状の空間が区画されている。当該空間には、外筒本体200の右端が収容されている。ガイド部220eの取付孔220fと、外筒本体200の取付孔200aと、は径方向に並んでいる。これらの取付孔220f、200aには、ボルト(締結部材)23が挿通されている。ボルト23は、取付孔220fに固定(ねじ止め)され、取付孔200aに挿入されている。このように、外筒20に対して、内筒22は、ボルト23により着脱可能である。
【0025】
上流側送りフィン221は、内筒本体220の内周面に配置されている。上流側送りフィン221は、熱処理帯Bの左端付近(熱処理帯Bの軸方向中心Cよりも左側)に配置されている。上流側送りフィン221は、螺旋状を呈している。詳しくは、上流側送りフィン221は、内筒本体220の軸方向(回転軸Aの延在方向)および周方向に対して交差する方向に延在している。上流側送りフィン221は、回転軸Aを中心に、540°(1.5回転)の範囲に亘って延在している。
【0026】
下流側送りフィン222は、内筒本体220の内周面に配置されている。下流側送りフィン222は、熱処理帯Bの右端付近(熱処理帯Bの軸方向中心Cよりも右側)に配置されている。下流側送りフィン222は、螺旋状を呈している。詳しくは、下流側送りフィン222は、内筒本体220の軸方向および周方向に対して交差する方向に延在している。下流側送りフィン222は、回転軸Aを中心に、540°(1.5回転)の範囲に亘って延在している。
【0027】
上流側送りフィン221、下流側送りフィン222の径方向高さ、ピッチ、螺旋長さは同一である。上流側送りフィン221の螺旋巻回方向と、下流側送りフィン222の螺旋巻回方向と、は互いに反対である。例えば、左側から見て、上流側送りフィン221は時計回りに巻回されている。他方、下流側送りフィン222は反時計回りに巻回されている。
【0028】
内筒22が正方向に回転する場合、被処理物Wは、上流側送りフィン221により、右側に送られる。また、被処理物Wは、下流側送りフィン222により、左側に送られる。すなわち、被処理物Wは、熱処理帯Bに近接する方向に送られる。内筒22が逆方向に回転する場合、被処理物Wは、上流側送りフィン221により、左側に送られる。また、被処理物Wは、下流側送りフィン222により、右側に送られる。すなわち、被処理物Wは、熱処理帯Bから離間する方向に送られる。
【0029】
複数の掻き上げフィン223は、内筒本体220の内周面に配置されている。図3に示すように、複数の掻き上げフィン223は、回転軸Aを中心に、所定角度ずつ離間して配置されている。掻き上げフィン223は、上流側送りフィン221と下流側送りフィン222との間に配置されている。掻き上げフィン223は、熱処理帯Bに配置されている。掻き上げフィン223は、内筒本体220の軸方向に延在している。
【0030】
(熱処理部5)
熱処理部5は、上フレーム94に配置されている。熱処理部5は、ハウジング50と、断熱材51と、ヒーター(熱源)52と、を備えている。回転筒部2は、熱処理部5を左右方向に貫通している。回転筒部2の左右方向中間部分は、熱処理部5に収容されている。ハウジング50は円筒状を呈している。断熱材51は、ハウジング50の内面に積層されている。ヒーター52は、断熱材51に埋設されている。ヒーター52の内周面は、外筒本体200の外周面に、径方向に対向している。
【0031】
(排出部6)
排出部6は、回転筒部2の右側に配置されている。排出部6は、排出フード60と、排出シュート61と、排出容器62と、を備えている。排出フード60は、回転筒部2の右端(詳しくは、内筒本体220の排出口220b)を、右側から覆っている。排出フード60の右端の開口60aには、蓋600が配置されている。蓋600は、排出フード60の開口60aに対して、開閉可能である。排出フード60には、配管L2の下流端が連なっている。配管L2の上流端は、ガス供給源(図略)に連なっている。排出シュート61は、排出フード60の下側(下流側)に連結されている。排出シュート61は、上下方向に延在している。排出シュート61は、バルブ(図略)と、蛇腹部610と、を備えている。蛇腹部610は、上フレーム94傾動時の排出フード60の移動量に応じて、変形可能である。排出容器62は、排出シュート61の下側に連結されている。排出容器62には、熱処理後の被処理物Wが貯留される。
【0032】
(供給部4)
供給部4は、回転筒部2の左側に配置されている。供給部4は、供給フード40と、供給シュート41と、供給容器42と、供給フィーダー43と、を備えている。供給フード40は、回転筒部2の左端(詳しくは、連結筒21の左端)を、左側から覆っている。供給フード40には、配管L1の上流端が連なっている。配管L1の下流端は、真空ポンプ(図略)に連なっている。
【0033】
図3に示すように、供給フィーダー43は、二軸式のスクリューフィーダーである。供給フィーダー43は、供給パイプ430と、一対のフィーダー本体431と、複数の軸受部432と、を備えている。複数の軸受部432は、上フレーム94に配置されている。供給パイプ430は、供給フード40を貫通している。供給パイプ430の右端は、内筒本体220の供給口220aに挿入されている。供給パイプ430の右端は、上流側送りフィン221の径方向内側に配置されている。フィーダー本体431は、供給パイプ430の径方向内側に配置されている。フィーダー本体431の左端は、複数の軸受部432により、回転可能に支持されている。駆動装置(図略)からの駆動力により、フィーダー本体431は、自身の軸周りに回転可能である。
【0034】
供給シュート41は、供給パイプ430の左端の上側に連結されている。供給シュート41は、上下方向に延在している。供給シュート41は、バルブ(図略)を備えている。供給容器42は、供給シュート41の上側に連結されている。供給容器42には、熱処理前の被処理物Wが貯留される。
【0035】
[熱処理方法]
次に、本実施形態のロータリーキルンによる熱処理方法について説明する。熱処理方法は、供給工程と、熱処理工程と、片寄せ工程と、排出工程と、を有している。熱処理工程中、ガス供給源は、配管L2を介して、炉内空間(供給フード40、回転筒部2、排出フード60の内部空間)に所定のガス(雰囲気ガスなど)を供給する。また、真空ポンプは、配管L1を介して、炉内空間を減圧する。
【0036】
(供給工程)
本工程においては、ロータリーキルン1が供給モードを実行する。具体的には、まず、上フレーム94つまり外筒20、内筒22の傾斜角度を0°に設定する。すなわち、外筒20、内筒22を水平に配置する。次に、外筒20、内筒22を正方向に回転させる。また、供給フィーダー43を駆動する。また、熱処理部5のヒーター52に通電し、外筒本体200の径方向外側から、内筒本体220内部の熱処理帯Bを所定の温度まで加熱する。続いて、供給容器42から、供給シュート41、供給フィーダー43、供給口220aを介して、内筒本体220の内部つまり熱処理帯Bに、被処理物Wを供給する。その後、供給フィーダー43を停止する。
【0037】
(熱処理工程)
本工程においては、図2に示すように、所定の雰囲気下で、ロータリーキルン1が熱処理モードを実行する。具体的には、内筒22を正方向に回転させたまま、かつ内筒22の傾斜角度を0°に保持したまま、所定の温度パターン(温度一定の場合を含む)で、所定の時間だけ、熱処理帯Bの被処理物Wに、熱処理を施す。熱処理中、被処理物Wは、内筒22の回転に伴い、揺動する。また、被処理物Wは、複数の掻き上げフィン223により掻き上げられ、自重により流下する。
【0038】
ここで、内筒22は正方向に回転している。このため、上流側送りフィン221付近の被処理物Wは、上流側送りフィン221により、下流側(熱処理帯B側)に送られる。並びに、下流側送りフィン222付近の被処理物Wは、下流側送りフィン222により、上流側(熱処理帯B側)に送られる。したがって、被処理物Wは熱処理帯Bに滞留する。
【0039】
(片寄せ工程)
本工程においては、ロータリーキルン1が片寄せモードを実行する。図5に、本実施形態のロータリーキルンの片寄せモードにおける軸方向部分断面図を示す。なお、図5図2に対応している。
【0040】
本工程においては、内筒22を正方向に回転させたまま、昇降調整部96を駆動し、下フレーム93に対して、上フレーム94(つまり外筒20および内筒22)を、左側から右側に向かって下降するように、傾動させる。片寄せ工程における外筒20および内筒22の傾斜角度θは、熱処理工程における外筒20および内筒22の傾斜角度θ(=0°)に対して、大きくなる。内筒22の傾動により、熱処理帯Bにおいて、被処理物Wは下流側に寄せられる。すなわち、被処理物Wは、上流側送りフィン221から離間し、下流側送りフィン222に近接するように、内筒本体220内部を流下する。
【0041】
(排出工程)
本工程においては、ロータリーキルン1が排出モードを実行する。図6に、本実施形態のロータリーキルンの排出モードにおける軸方向部分断面図を示す。なお、図6図2に対応している。
【0042】
本工程においては、外筒20および内筒22の回転方向を反転させる。すなわち、外筒20および内筒22を逆方向に回転させる。このため、被処理物Wは、下流側送りフィン222により、熱処理帯Bから下流側に送られる。被処理物Wは、排出口220b、排出シュート61を介して、排出容器62に貯留される。
【0043】
[内筒の着脱方法]
次に、本実施形態のロータリーキルンの内筒の着脱方法について説明する。図7に、本実施形態のロータリーキルンの内筒装着前の状態における軸方向部分断面図を示す。なお、図7の一点鎖線枠は、図2の枠IIに対応している。
【0044】
図1に示す蓋600は、排出フード60の開口60aに対して、右側から開閉可能である。外筒20に対して内筒22を取り外す場合は、まず、蓋600を開く。図7に示すように、蓋600を開くと、開口60aから、回転筒部2の右端にアクセス可能になる。次に、開口60aを介して、図4に示すボルト23を、取付孔220f、200aから、径方向外側に抜き出す。続いて、開口60aを介して、内筒22を、外筒20から右側に抜き出す。
【0045】
外筒20に対して内筒22を取り付ける場合は、まず、開口60aを介して、内筒22を、外筒20に、右側から挿入する。次に、開口60aを介して、図4に示すボルト23を、取付孔220f、200aに、径方向外側から挿入する。続いて、図1に示す蓋600を閉める。
【0046】
このようにして、外筒20に対して内筒22が着脱される。複数種類の内筒22を準備しておけば、共通の外筒20に対して、複数種類の内筒22を、交換して用いることができる。
【0047】
[作用効果]
次に、本実施形態のロータリーキルンの作用効果について説明する。図2に示すように、本実施形態のロータリーキルン1の内筒22は、上流側送りフィン221と、下流側送りフィン222と、を備えている。熱処理工程(熱処理モード)において、被処理物Wは、上流側送りフィン221および下流側送りフィン222により、熱処理帯B(詳しくは、軸方向中心C)に近接する方向に送られる。また、熱処理帯B(詳しくは、軸方向中心C)から離間する方向への被処理物Wの搬送が抑制される。このため、被処理物Wにバッチ処理を施すことができる。
【0048】
図1に示すように、下フレーム93に対して、上フレーム94は傾動可能である。外筒20および内筒22は、上フレーム94に配置されている。このため、内筒22は傾動可能である。したがって、内筒22に所望の傾斜角度θを設定することができる。
【0049】
図2図6に示すように、熱処理工程における内筒22の傾斜角度θは、排出工程(排出モード)における内筒22の傾斜角度θよりも小さい。このため、熱処理工程において、被処理物Wが、熱処理帯Bにおける下流側に偏在するのを、抑制することができる。よって、被処理物Wに対して均質な熱処理を施しやすい。また、排出工程において、被処理物Wの自重を利用して、被処理物Wを、熱処理帯Bから速やかに排出することができる。
【0050】
図2図5に示すように、熱処理工程における内筒22の傾斜角度θは、片寄せ工程(片寄せモード)における内筒22の傾斜角度θよりも小さい。このため、熱処理工程において、被処理物Wが、熱処理帯Bにおける下流側に偏在するのを、抑制することができる。よって、被処理物Wに対して均質な熱処理を施しやすい。また、片寄せ工程において、被処理物Wの自重を利用して、被処理物Wを、速やかに下流側送りフィン222に近接させることができる。また、片寄せ工程において、被処理物Wの自重を利用して、被処理物Wを、速やかに上流側送りフィン221から離間させることができる。
【0051】
図2に示すように、供給工程(供給モード)における内筒22の傾斜角度θは0°である。つまり、内筒22は水平に配置されている。このため、供給工程(供給モード)において、供給フィーダー43から搬出された被処理物Wは、熱処理帯Bに搬入されにくい。この点、供給工程において、内筒22は正方向に回転している。このため、内筒22が水平に配置されているにもかかわらず、被処理物Wを、上流側送りフィン221により、下流側に送ることができる。したがって、被処理物Wを、速やかに熱処理帯Bに搬入することができる。
【0052】
図5に示すように、片寄せ工程において、内筒22には、左側から右側に向かって下降するように傾斜角度θが設定されている。このため、被処理物Wは、自重により、上流側送りフィン221から離間し、下流側送りフィン222に近接するように、内筒本体220内部を流下する。ここで、内筒22は正方向に回転している。このため、傾斜角度θが設定されているにもかかわらず、熱処理帯Bからの被処理物Wの流出を、下流側送りフィン222により抑制することができる。
【0053】
図6に示すように、排出工程において、内筒22は逆方向に回転している。仮に、上流側送りフィン221付近に被処理物Wが残留している場合を想定する。この場合、当該被処理物Wは、上流側送りフィン221により、熱処理帯Bから上流側つまり供給口220a側に送られることになる。つまり、被処理物Wは逆流することになる。しかしながら、片寄せ工程により、上流側送りフィン221付近の被処理物Wは、既に下流側に流下している。このため、上流側送りフィン221付近には、被処理物Wが残留しにくい。したがって、排出工程における被処理物Wの逆流を抑制することができる。
【0054】
図2に示すように、上流側送りフィン221は、熱処理帯Bの左端付近に配置されている。上流側送りフィン221の左端は、熱処理帯Bから左側に突出している。他方、上流側送りフィン221の右端は、熱処理帯Bに進入している。すなわち、上流側送りフィン221は、熱処理帯Bの左端を挟んで、配置されている。このため、供給工程において、確実に、被処理物Wを熱処理帯Bに送り込むことができる。また、熱処理工程において、確実に、被処理物Wを熱処理帯Bに滞留させることができる。
【0055】
図2に示すように、下流側送りフィン222は、熱処理帯Bの右端付近に配置されている。下流側送りフィン222の右端は、熱処理帯Bから右側に突出している。他方、下流側送りフィン222の左端は、熱処理帯Bに進入している。すなわち、下流側送りフィン222は、熱処理帯Bの右端を挟んで、配置されている。このため、熱処理工程、片寄せ工程において、確実に、被処理物Wを熱処理帯Bに滞留させることができる。また、排出工程において、確実に、被処理物Wを熱処理帯Bから送り出すことができる。
【0056】
図2に示すように、供給フィーダー43の右端(排出口)は、上流側送りフィン221の左端よりも、右側に配置されている。このため、供給工程において、確実に、被処理物Wを熱処理帯Bに送ることができる。
【0057】
図2図3に示すように、内筒本体220の内周面には、掻き上げフィン223が配置されている。このため、内筒本体220の回転を利用して、被処理物Wを撹拌することができる。したがって、被処理物Wに対して均質な熱処理を施しやすい。
【0058】
図2図3に示すように、掻き上げフィン223は、内筒本体220の軸方向に延在している。すなわち、掻き上げフィン223の延在方向は、周方向成分を含んでいない。このため、被処理物Wは、掻き上げフィン223により掻き上げられても、軸方向に移動しにくい。したがって、熱処理帯Bにおいて、被処理物Wが偏在しにくい。よって、被処理物Wに対して均質な熱処理を施しやすい。
【0059】
図4に示すように、外筒20に対して、内筒22は、ボルト23により、取り付けられている。このため、図7に示すように、簡単に、内筒22の着脱作業を行うことができる。また、外筒20と内筒22との周方向位置合わせを、簡単に行うことができる。
【0060】
図4に示すように、フランジ部220d左面と、内筒本体220外周面と、ガイド部220e内周面と、の間には、左側に向かって開口する凹状の空間が区画されている。外筒本体200の右端は、当該空間に収容されている。このため、外筒20と内筒22との軸方向位置合わせを、簡単に行うことができる。
【0061】
図7に示すように、外筒20に対して内筒22は交換可能である。被処理物Wの種類に応じて、複数種類の内筒22を準備しておくことにより、共通の外筒20に対して、複数種類の内筒22を、交換して用いることができる。すなわち、複数種類の被処理物Wに対して、ロータリーキルン1を共用化することができる。このため、本実施形態のロータリーキルン1は、少量多品種の被処理物Wに用いるのに、好適である。
【0062】
図7に示すように、本実施形態のロータリーキルン1は、外筒20から内筒22を取り外した状態で、運転することができる。この場合、熱処理帯Bは、外筒20の内部に設定される。また、搬入工程、熱処理工程、搬出工程における外筒20の傾斜角度θは一定である。また、片寄せ工程は行わない。こうすると、被処理物Wに連続処理(連続式の熱処理)を施すことができる。このように、本実施形態のロータリーキルン1は、バッチ処理と連続処理とを切り換えて実行することができる。このため、複数種類の被処理物Wに対して、ロータリーキルン1を共用化することができる。
【0063】
図1に示す蓋600は、排出フード60の開口60aに対して、右側から開閉可能である。このため、内筒22の着脱作業、交換作業を行う際、作業者が、簡単に回転筒部2の右端(内筒22の挿入端、抜出端)に近づくことができる。
【0064】
図2に示すように、熱処理工程における内筒22の傾斜角度θは0°に設定されている。このため、水平状態において、被処理物Wに熱処理を施すことができる。したがって、被処理物Wに対して均質な熱処理を施しやすい。
【0065】
図5図6に示すように、片寄せ工程および排出工程における、内筒22の傾斜角度θは一定である。このため、下フレーム93に対する上フレーム94の傾動作業が一回で済む。また、片寄せ工程と排出工程とで傾斜角度θを切り換える場合と比較して、熱処理方法(供給工程から排出工程まで)に要する時間を短縮化することができる。
【0066】
[その他]
以上、本発明のロータリーキルンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0067】
図8(A)~図8(E)に、その他の実施形態(その1~その5)のロータリーキルンの内筒本体の内周面の展開図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。中心角φは、図3に示すように、内筒本体220を右側から見た場合の回転軸Aに対する中心角である。中心角φは、回転軸Aの真上位置を0°として、時計回り方向(上→後→下→前)に進角する。
【0068】
図8(A)に示すように、内筒本体220が、上流側送りフィン221、下流側送りフィン222だけを備えていてもよい。内筒本体220が、掻き上げフィン223(図3参照)を備えていなくてもよい。
【0069】
図8(B)に示すように、下流側送りフィン222のピッチよりも、上流側送りフィン221のピッチの方が、大きくてもよい。反対に、上流側送りフィン221のピッチよりも、下流側送りフィン222のピッチの方が、大きくてもよい。このように、上流側送りフィン221、下流側送りフィン222のピッチは、同じでも異なっていてもよい。
【0070】
また、下流側送りフィン222の螺旋長さ(中心角φの720°分)よりも、上流側送りフィン221の螺旋長さ(中心角φの360°分)の方が、短くてもよい。反対に、上流側送りフィン221の螺旋長さよりも、下流側送りフィン222の螺旋長さの方が、短くてもよい。このように、上流側送りフィン221、下流側送りフィン222の螺旋長さは、同じでも異なっていてもよい。
【0071】
図8(C)に示すように、内筒本体220が、二条の上流側送りフィン221と、二条の下流側送りフィン222と、を備えていてもよい。このように、上流側送りフィン221、下流側送りフィン222の条数は、特に限定しない。上流側送りフィン221、下流側送りフィン222の条数は、同じでも異なっていてもよい。
【0072】
図8(D)に示すように、上流側送りフィン221、下流側送りフィン222の螺旋長さは、90°(中心角φの90°分)であってもよい。すなわち、螺旋長さは360°以下であってもよい。上流側送りフィン221、下流側送りフィン222の螺旋長さは、特に限定しない。
【0073】
図8(E)に示すように、上流側送りフィン221は無端環状であってもよい。また、有端環状、円弧状などであってもよい。上流側送りフィン221の配置数は特に限定しない。また、上流側送りフィン221を配置しなくてもよい。
【0074】
上流側送りフィン221と、下流側送りフィン222と、熱処理帯Bと、の位置関係は特に限定しない。上流側送りフィン221の左端は、熱処理帯Bから左側に突出していても、突出していなくてもよい。上流側送りフィン221の右端は、熱処理帯Bに進入していても、進入していなくてもよい。すなわち、上流側送りフィン221は、熱処理帯Bの軸方向中心Cよりも、左側に配置されていればよい。
【0075】
同様に、下流側送りフィン222の右端は、熱処理帯Bから右側に突出していても、突出していなくてもよい。下流側送りフィン222の左端は、熱処理帯Bに進入していても、進入していなくてもよい。すなわち、下流側送りフィン222は、熱処理帯Bの軸方向中心Cよりも、右側に配置されていればよい。
【0076】
図9(A)~図9(D)に、その他の実施形態(その6~その9)のロータリーキルンの内筒本体の径方向断面図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0077】
図9(A)に示すように、内筒本体220が、90°ごとに離間して、四つの掻き上げフィン223を備えていてもよい。このように、掻き上げフィン223の配置数、配置間隔は特に限定しない。図9(A)に示すように、掻き上げフィン223の径方向高さよりも、上流側送りフィン221の径方向高さの方が、大きくてもよい。図9(B)に示すように、掻き上げフィン223の径方向高さよりも、上流側送りフィン221の径方向高さの方が、小さくてもよい。このように、掻き上げフィン223、上流側送りフィン221の径方向高さは特に限定しない。下流側送りフィン222についても同様である。
【0078】
図9(C)に示すように、掻き上げフィン223の横断面(内筒本体220の径方向断面)形状が三角形状であってもよい。このように、掻き上げフィン223の横断面形状は特に限定しない。四角形状、半円形状などであってもよい。
【0079】
図9(D)に示すように、内筒本体220が、掻き上げフィン223、上流側送りフィン221、下流側送りフィン222を備えていなくてもよい。すなわち、内筒本体220の内周面が、凹凸を有しない平滑面であってもよい。
【0080】
図8(A)~図8(E)、図9(A)~図9(D)に示す内筒22を、図7に示す外筒20に対して、交換可能に配置してもよい。すなわち、図7図8(A)~図8(E)、図9(A)~図9(D)に示す内筒22を、図1に示す単一のロータリーキルン1に対して、交換可能に配置してもよい。
【0081】
外筒20、内筒22の材質は特に限定しない。金属、セラミックス、カーボン、ガラスなどであってもよい。外筒20は、一体物であっても、複数の部材から構成されていてもよい。複数の部材から構成されている場合、各部材の材質は、同一であっても、異なっていてもよい。内筒22についても同様である。外筒本体200、内筒本体220の径方向断面形状は特に限定しない。円筒状、多角形(四角形、六角形、八角形など)筒状などであってもよい。
【0082】
ロータリーキルン1の種類は特に限定しない。内筒本体220の内部の熱処理帯Bを、内筒本体220の筒壁を介して、内筒本体220の外部から間接的に加熱する外熱式のロータリーキルンであってもよい。内筒本体220の内部の熱処理帯Bを、内筒本体220の内部から直接加熱する内熱式のロータリーキルンであってもよい。
【0083】
供給フィーダー43の右端(排出口)の位置は特に限定しない。例えば、供給フィーダー43の右端が、熱処理帯Bの内部に配置されていてもよい。また、供給フィーダー43の右端が、熱処理帯Bの外部に配置されていてもよい。供給フィーダー43の種類は特に限定しない。例えば、スクリューフィーダー、気流搬送式フィーダーなどであってもよい。昇降調整部96の種類は特に限定しない。例えば、電動ジャッキ、油圧シリンダなどであってもよい。
【0084】
配管L1にガス供給源を、配管L2に真空ポンプを、各々接続してもよい。また、ガス供給源を駆動せずに、真空ポンプを駆動し、炉内空間を減圧してもよい。また、配管L1に対して、ガス供給源、真空ポンプを切り換え接続可能としてもよい。同様に、配管L2に対して、ガス供給源、真空ポンプを切り換え接続可能としてもよい。
【0085】
熱処理帯Bの雰囲気は特に限定しない。配管L2を介してガス供給源から炉内空間に供給されるガスは、空気、アンモニア、不活性ガス(ヘリウム、アルゴン、窒素、二酸化炭素など)、還元性ガス(水素、一酸化炭素、炭化水素など)、酸化性ガス(酸素、水蒸気、燃焼ガスなど)などであってもよい。また、熱処理帯Bの雰囲気は、空気、真空(大気圧よりも低い圧力の雰囲気)であってもよい。
【0086】
被処理物Wの種類(材質、特性、形状、大きさなど)は特に限定しない。材質は、有機物、無機物、金属などであってもよい。形状は、粉状物、粒状物、塊状物などであってもよい。具体的には、医薬品、電池材料(正極材、負極材、電解質)、食品、廃棄物などであってもよい。本発明のロータリーキルンは、熱処理工程において被処理物Wに対して均質な熱処理を施しやすいため、被処理物Wの品質を均質化しやすい。このため、特に、医薬品、電池材料などに好適である。
【0087】
熱処理方法の片寄せ工程、排出工程における内筒22の傾斜角度θは、特に限定しない。例えば、1°以上5°以下の範囲に含まれる、任意の角度であってもよい。勿論、傾斜角度θは、1°未満、5°超過であってもよい。また、片寄せ工程と排出工程とで、傾斜角度θを切り換えてもよい。各工程(供給工程、熱処理工程、片寄せ工程、排出工程)における内筒22の傾斜角度θは特に限定しない。正(上流側から下流側に向かって下降する方向)でも、負(上流側から下流側に向かって上昇する方向)でも、0でもよい。あるいは、傾斜角度θを変えながら、各工程を実行してもよい。例えば、片寄せ工程において、始期から終期に向かって、傾斜角度θを徐々に大きくしてもよい。
【0088】
熱処理方法の各工程の所要時間は特に限定しない。時系列的に連続する二つの工程の少なくとも一部が、重複していてもよい。例えば、供給工程の終期と、熱処理工程の始期と、が重複していてもよい。熱処理工程の終期と、片寄せ工程の始期と、が重複していてもよい。
【0089】
熱処理方法の各工程を自動で行ってもよい。この場合、図1に示すロータリーキルン1は、制御装置(コンピューター、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)など)を備えている。制御装置は、昇降調整部96、駆動装置、ヒーター52などを介して、外筒20、内筒22の傾斜角度θや回転、供給フィーダー43の回転、熱処理帯Bの温度、供給部4のバルブ、排出部6のバルブなどを制御する。制御装置は、記憶部に格納された被処理物の処理プログラム(各工程の所要時間などに関するプログラム)に基づいて、熱処理方法の各工程を自動で行う。
【符号の説明】
【0090】
1:ロータリーキルン、2:回転筒部、20:外筒、200:外筒本体、200a:取付孔、201:上流側タイヤ、202:下流側タイヤ、203:スプロケット、21:連結筒、22:内筒、220:内筒本体、220a:供給口、220b:排出口、220c:取付部、220d:フランジ部、220e:ガイド部、220f:取付孔、221:上流側送りフィン、222:下流側送りフィン、223:掻き上げフィン、23:ボルト、3:回転支持部、30:上流側ローラー、31:下流側ローラー、32:上流側摺動シール部、33:下流側摺動シール部、330:軸受、4:供給部、40:供給フード、41:供給シュート、42:供給容器、43:供給フィーダー、430:供給パイプ、431:フィーダー本体、432:軸受部、5:熱処理部、50:ハウジング、51:断熱材、52:ヒーター、6:排出部、60:排出フード、60a:開口、600:蓋、61:排出シュート、610:蛇腹部、62:排出容器、9:架台、93:下フレーム(基部)、94:上フレーム(傾動部)、95:傾動軸、96:昇降調整部
θ:傾斜角度、φ:中心角、A:回転軸、B:熱処理帯、C:軸方向中心、W:被処理物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9