(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】窓の昇降装置
(51)【国際特許分類】
B61D 25/00 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
B61D25/00 B
(21)【出願番号】P 2021155935
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000147198
【氏名又は名称】株式会社成田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】石田 丈三
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-211497(JP,A)
【文献】実開昭50-048440(JP,U)
【文献】特開2003-301651(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03461713(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第112339785(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 19/00-19/02
B61D 25/00
E05F 3/00- 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に用いられる可動窓を、昇降可能に設け、
前記可動窓を、付勢部材により上方に付勢し、
開口部が、前記可動窓の移動方向に形成されたバネ材を、前記鉄道車両に設け、前記バネ材の開口部に、前記可動窓に対し回動可能に摺動輪を設け、
前記バネ材により、該摺動輪を挟持するとともに、バネ材との当接部を、前記摺動輪の軸芯方向に付勢して、前記摺動輪の回動を抑制するようにしたことを特徴とする窓の昇降装置。
【請求項2】
前記バネ材の前記摺動輪は、一方の当接部と他方の当接部で相互に当接し、
一方の当接部を、前記摺動輪の軸芯方向へ付勢する力と、他方の当接部を、前記摺動輪の軸芯方向へ付勢する力が、異なるようにしたことを特徴とする請求項1記載の窓の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓の昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の客室の側壁に設けられた窓を、固定しており開閉しないようになっているが、近年、客室内の換気の観点から、客室の側壁に設けられた窓を開閉できるようにすることが望まれている。
【0003】
従来、客室の側壁に設けられた固定窓に対し、可動窓を上下方向に開閉可能に設けることが行われている。軽い力、可動窓を閉じることができるように、コイルバネで、可動窓を上側方向に付勢することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、可動窓をコイルバネで上側方向に付勢しているため、可動窓を開いた際に、換気のため少しだけ開けておくなど、可動窓を任意の位置で停止させることが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、任意の場所で可動窓を停止させることができる窓の昇降装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本願発明は、鉄道車両に用いられる可動窓を、昇降可能に設け、
前記可動窓を、付勢部材により上方に付勢し、
開口部が、前記可動窓の移動方向に形成されたバネ材を、前記鉄道車両に設け、前記バネ材の開口部に、前記可動窓に対し回動可能に摺動輪を設け、
前記バネ材により、該摺動輪を挟持するとともに、バネ材との当接部を、前記摺動輪の軸芯方向に付勢して、前記摺動輪の回動を抑制するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記バネ材の前記摺動輪は、一方の当接部と他方の当接部で相互に当接し、
一方の当接部を、前記摺動輪の軸芯方向へ付勢する力と、他方の当接部を、前記摺動輪の軸芯方向へ付勢する力が、異なるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、開口部が、前記可動窓の移動方向に形成されたバネ材を、鉄道車両に設け、バネ材の開口部に、可動窓に対し回動可能に摺動輪を設け、
バネ材により、摺動輪を挟持するとともに、バネ材との当接部を、摺動輪の軸芯方向に付勢して、摺動輪の回動を抑制するようにしたことにより、可動窓が付勢部材で上方に付勢された状態においても、可動窓を任意の位置で保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例1に係る窓の昇降装置において、可動窓を閉じた状態の室内側から見た図。
【
図3】
図2の状態から、可動窓を下降させた状態の断面図。
【
図4】本発明の実施例に用いる付勢部材で、ロッドを伸長させた状態の図。
【
図5】
図4の状態からロッドを伸縮させた状態の図。
【
図6】本発明の実施例1に用いる付勢部材の他例で、ロッドを伸長させた状態の図。
【
図7】
図6の状態からロッドを伸縮させた状態の図。
【
図8】可動窓を閉じた状態の、可動窓と鉄道車両との関係を示す側面図。
【
図9】
図8の状態から可動窓を降下させた状態の可動窓と固定窓の関係を示す側面図。
【
図10】可動窓を全開状態にした状態の可動窓と固定窓の関係を示す側面図。
【
図11】
図10の状態から可動窓を上昇させた状態の可動窓と固定窓の関係を示す側面図。
【
図12】本発明の実施例1の窓の昇降装置の操作例を示す一例の図。
【
図13】本発明の実施例1の窓の昇降装置の操作例を示す他例の図。
【
図14】本発明の実施例1に用いる可動窓の上面図。
【
図16】本発明の実施例1に用いるバネ材と摺動輪と付勢部材と可動窓との関係を示す模式図。
【
図17】バネ材と摺動輪の鉄道車両への取付状態を示す模式図。
【
図18】本発明の実施例1に用いるバネ材と摺動輪の他例を示す図。
【
図19】本発明の実施例1に用いる付勢部材の他例を示す図。
【
図20】本発明の実施例1に用いる付勢部材の他例を示す図。
【
図22】本発明の実施例2に係る窓の昇降装置において、可動窓を最も高い位置に保持した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【0011】
[実施例1]
本実施例1は、
図1に示すように、本発明の窓の昇降装置1を、鉄道車両の側壁2に設けられた側窓に適用した実施例である。
【0012】
窓の昇降装置1は、固定窓3と上下方向に移動可能(昇降可能)な可動窓4を有する。可動窓4は、固定窓3に対し、内側又は外側に設けられ、本実施例では、
図2,
図3に示すように可動窓4を、固定窓3の外側に設けた。
【0013】
固定窓3が、
図1~
図3に示すように、鉄道車両の側壁2に設けた内外を貫通する開口部5の下部の横方向全体を閉塞するように設けられている。可動窓4は、閉じた状態で、固定窓3と可動窓4により開口部5を閉塞し、可動窓4が、開いた状態では、開口部5の上部が開口するように、可動窓4は、上下方向に移動可能に設けられている。
【0014】
固定窓3は、透明の固定ガラス6を有し、固定ガラス6の両側部に設けられた図示しない固定側枠と、固定側枠の上端間に架設された固定上枠7と、固定側枠の下端間に架設された固定下枠8が、車両の側壁2に対して固設されている。
【0015】
可動窓4は、
図1~
図3に示すように、両側部に可動側枠10,10と、可動側枠10,10の上端間に可動上枠11を、可動側枠10,10の下端間に可動下枠12が有している。可動側枠10,10と可動上枠11と可動下枠12に、透明の可動ガラス13が固設されている。
【0016】
可動窓4は、
図1に示すように、その横方向の両側部に設けた付勢部材15,15により、閉方向(上方)に付勢されている。各付勢部材15は、
図5に示すように、2本のガススプリング16、17で構成されている。なお、本実施例では、2個の付勢部材15により、可動窓4を付勢するようにしたが、付勢部材15の数は、1個でも3個以上でもよく任意に設定することができる。
【0017】
付勢部材15による付勢力は任意に設定することができるが、可動窓4の閉状態と全開状態の略中間の位置で、付勢部材15による付勢力と可動窓4の自重が等しくなるように設定されている。
【0018】
ガススプリング16、17は、シリンダー16a,17aを有し、このシリンダー16a,17aに対し伸縮するロッド16b,17bが設けられ、ロッド16b,17bは、伸長する方向に付勢するガスが、シリンダー16a,17a内に封入されている。
【0019】
一のガススプリング16は、
図4,
図5に示すように、シリンダー16aが上側に、ロッド16bが下側となるように、一のガススプリング16の軸方向が上下方向となるように設けられている。
図1に示すように、一のガススプリング16におけるシリンダー16aの一端部(上端部)は、可動窓4の可動側枠10の上端部に取付けられている。
【0020】
他のガススプリング17は、シリンダー17aが上側に、ロッド17bが下側となるように、
図4,5に示すように、他のガススプリング17の軸方向が上下方向となるように設けられている。他のガススプリング17における17bの先端部である他端部(下端部)は、鉄道車両の側壁2に連結されている。
【0021】
一のガススプリング16のロッド16bの他端(下端)は、
図4,
図5に示すように、他のガススプリング17のシリンダー17aの他端(下端)と略同じ位置となるように、一のガススプリング16のロッド16bの先端部である他端部は、連結具19により、他のガススプリング17のシリンダー17aに連結されている。
【0022】
なお、本実施例では、一のガススプリング16のロッド16bの他端(下端)は、他のガススプリング17のシリンダー17aの他端(下端)が略同じ位置となるようにしたが、一のガススプリング16のロッド16bの他端(下端)より、一端側(上側)に位置してもよいし、他端側(下側)に位置するようにしてもよい。
【0023】
また、本実施例では、一のガススプリング16は、
図4,
図5に示すように、シリンダー16aが上側に、ロッド16bが下側となるように配設したが、
図6,
図7に示すように、一のガススプリング16のシリンダー16aが下側に、ロッド16bが上側となるように配設し、一のガススプリング16のシリンダー16aと、他のガススプリング17のシリンダー17aを連結するようにし、一のガススプリング16のロッド16bの先端部を、可動窓4の可動側枠10の上端部に連結し、他のガススプリング17におけるロッド17bの先端部である他端部(下端部)を、鉄道車両の側壁2に連結するようにしてもよい。
【0024】
また、
図4,
図5に示すガススプリング16,17を上下変転させた状態で、他のガススプリング17のロッド17bの先端部を、可動窓4の可動側枠10の上端部に連結し、一のガススプリング16におけるシリンダー16aの一端部を、鉄道車両の側壁2に連結するようにしてもよい。
【0025】
なお、
図4,
図5に示すように、ガススプリング16,17を、シリンダー16a,17aが上側に、ロッド16b,17bが下側に位置した方が、ガススプリング16,17内のガスが外部に漏洩しにくく好ましい。
【0026】
本実施例では、各付勢部材15を、2本のガススプリング16、17で構成したが、2本以上の複数本のガススプリングで構成されていればよく、各ガススプリングが、一のガススプリング16と他のガススプリング17と同様に連結され、ガススプリングの一端部の内、連結されていない一端部が、可動窓4の可動側枠10の上端部に取付けられ、ガススプリングの他端部の内、連結されていない他端部が、鉄道車両の側壁2に取付けられている。
【0027】
上記のように付勢部材15を構成したことにより、一のガススプリング16の軸芯と、他のガススプリング17の軸芯が同一線上に位置せず、相互が平行となるように配置され、付勢部材15の長手方向の中央部において、一のガススプリング16との一部、他のガススプリング17の一部が、隣り合うようにして、一のガススプリング16と他のガススプリング17が連結されている。
【0028】
可動窓4は、可動上枠11の室内側には、円筒状の筒状部材18が、横方向全体に亘って設けられ、筒状部材18は、その両端部が、可動側枠10,10に対して回動可能に取り付けられているとともに、図示しない付勢部材により上側方向に回動するように付勢されている。
【0029】
筒状部材18の室内側には、
図1~
図3に示すように、操作ハンドル20が、可動窓4の一端部から他端部全体に亘って設けられている。筒状部材18が、付勢部材により上側方向に回動する方向に付勢されていることにより、筒状部材18とともに操作ハンドル20も上側方向に回動する方向に付勢されている。
【0030】
筒状部材18の両側部における可動側枠10,10に対する取付部は、
図1に示すように、室内側からは視認できないようになっている。
【0031】
操作ハンドル20は、
図1,
図12,
図13に示すように、可動窓4の横方向の一端部から他端部全体に亘って設けられ、
図12,
図13に示すように、乗車している乗客等は、可動窓4の近傍であれば、どの位置からも操作ハンドル20を操作することができるようになっている。
【0032】
筒状部材18の両端部においは、室内側から視認できない場所に、フック状の第1係合部21が、筒状部材18と一体に形成され、筒状部材18と第1係合部21は、上下方向に回動できるようになっている。
【0033】
筒状部材18の第1係合部21と着脱可能に係合できるフック状の第2係合部22が、鉄道車両の側壁2に設けられている。
図2,
図8に示すように、第1係合部21と第2係合部22が、相互に係合した状態において、可動窓4の閉状態を保持することができる。
【0034】
第1係合部21と第2係合部22は、
図2~
図11に示すフック状以外にも、相互に着脱可能であれば任意の構造とすることができる。
【0035】
可動窓4の閉状態の
図8に示す状態から、可動窓4が開く方向である下方向に移動させるために、
図9に示すように、操作ハンドル20を下側に押し下げると、筒状部材18と第1係合部21は、図示しない付勢部材の付勢力に抗して下側方向に回動して、第1係合部21と第2係合部22の係合状態が解除される。
【0036】
また、筒状部材18には、
図2,
図3,
図8~
図11に示すように、磁石で構成された第3係合部25が操作ハンドルと直交する方向に突出するように設けられている。
【0037】
固定窓3の固定上枠7の上側面には、第3係合部25と着脱可能に係合できる磁石で構成された第4係合部26が設けられている。第3係合部25と第4係合部26は、磁石以外にも、相互に着脱可能であれば任意の構造とすることができる。
【0038】
操作ハンドル20が下側方向に回動させ、筒状部材18の第3係合部25と固定窓3の第4係合部26が、
図10に示すように、相互に係合した状態において、
図3,可動窓4が最も開いた状態を保持することができるようになっている。
【0039】
図3,
図10に示すように、第3係合部25と第4係合部26が、相互に係合した状態から、可動窓4を閉じる方向である上側方向に、操作ハンドル20を持ち上げると、操作ハンドル20は、
図11に示すように、上側方向に回動し、第3係合部25と第4係合部26の係合状態が解除され、可動窓4を上側方向に移動させることができるようになっている。
【0040】
可動窓4の左右の可動側枠10,10は、夫々、車体側枠27と窓側枠28で構成されている。車体側枠27は、鉄道車両の側壁2に取付けられ、窓側枠28は、車体側枠27に対し、取り外し可能に連結されている。窓側枠28には、可動上枠11と可動下枠12と可動ガラス13が取り付けられている。筒状部材18の両端部は、車体側枠27に対し、回動可能に連結されている。
【0041】
なお、本実施例では、各可動側枠10を、車体側枠27と窓側枠28で構成したが、車体側枠27と窓側枠28を一体に形成してもよい。
【0042】
これにより、昇降装置1全体を、側壁2から取り外すことなく、車体側枠27と車体側枠27の相互の連結を解除するとともに、筒状部材18の両端部を、車体側枠27から取り外すことで、可動窓4を、側壁2から取り外すことができ、昇降装置1の点検や修理等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0043】
また、
図16,
図17に示すように、横断面がW状で、側方で、かつ、内側が開口するバネ材30が、
図16に示すように、可動窓4の両側部に位置するようにして、鉄道車両の側壁2に設けられている。バネ材30は、周方向の中央部に図示しない貫通孔が形成され、貫通孔にボルト32が遊嵌して挿通され、ボルト32にはナット33が螺合されている。ボルト32とナット33によりバネ材30は、側壁2に取付けられている。
【0044】
バネ材30は、
図17に示すように、バネ性を有する金属で構成され、周方向の中央部に貫通孔が形成された取付部30aを有し、取付部30aの周方向の両側部に、周方向の外側に向かう程、側壁2側に位置するテーパ部30b,30bが形成され、各テーパ部30b,30bの周方向の外側に円弧状の付勢部30c,30cが形成され、各付勢部30cの先に付勢部30cより小径で円弧状の当接部30dが形成されている。当接部30d,30d間には、左右方向オ内側に開口し開口部34が形成され、この開口部34は、
図16に示すように、可動窓4の移動方向である上下方向に形成されている。
【0045】
ボルト32又はナット33を締め付けることにより、バネ材30の当接部30d,30d間の間隔が狭くなり、ボルト32又はナット33を緩めるとバネ材30の当接部30d,30d間の間隔が広くなるようになっている。バネ材30の当接部30d,30d間の開口部34内には、縦断面が円形の摺動輪35が回動可能に設けられている。
【0046】
摺動輪35は、一対の拡径部35a,35aと拡径部35a,35a間に設けられた小径部35bで構成され、拡径部35aは、少なくとも一部が、内側から外側に向かう程拡径するように形成されている。バネ材30の当接部30d,30dは、一対の拡径部35a,35aと当接している。なお、小径部35bは設けなくてもよい。
【0047】
摺動輪35は、バネ材30の当接部30d,30dで挟持されるとともに、摺動輪35の中心方向に付勢され、摺動輪35が回動することを、バネ材30により抑制されている。
【0048】
摺動輪35は、連結棒37に回動可能に設けられ、連結棒37は、付勢部材15の上端部と、可動窓4の可動側枠10の上端部に連結されている。
【0049】
可動窓4の上下動に伴い、連結棒37と摺動輪35も上下に移動するとともに、摺動輪35が回動する。バネ材30により摺動輪35の回動の抵抗となるため、可動窓4が自重や、付勢部材15の付勢力による移動に抗して、可動窓4を、換気のために少し開けるなどして、任意の高さで保持することができる。
【0050】
なお、バネ材30の当接部30d,30dの円弧のRを
図17に示すように、同じとしてもよいし、
図18に示すように、バネ材40の当接部41,42の円弧のRを異なるようにして、一方の当接部41を摺動輪35の軸芯方向へ付勢する力と、他方の当接部42を摺動輪35の軸芯方向へ付勢する力が異なるようにし、例えば、摺動輪35の上側方向の回動の際の抵抗より、下側方向への回動の際の抵抗を大きくし、摺動輪35が、下側方向より上側側方向に向かって回動しやすくするようにすることで、下側方向に回動しにくくし、可動窓4が下側方向に移動しにくくしてもよい。
【0051】
付勢部材15を、2本のガススプリング16、17で構成したことにより、1本のガススプリングで構成した場合よりも、付勢部材15の上下方向の長さを同じとした場合、ロッド16b,17bの移動可能距離を長くすることができ、限られた設置スペースの中で、ロッド16b,17bの移動距離を長くとることができる。また、シリンダー16a,17a内のガスの封入量を多くすることができ、ロッド16b,17bが単位収縮量当たりの反発力を小さくすることができ、小さな操作力で可動窓4を移動させることができる。
【0052】
なお、上記実施例1においては、各付勢部材15を、複数のガススプリング16,17で構成したが、可動窓4を上側方向に付勢することができれば、コイルスプリング等任意の部材で構成することができる。
【0053】
例えば、付勢部材39として、
図19に示すように、1本のガススプリング43で構成するとともに、ガススプリング43のシリンダー43a内と連通するリザーバータンク44を設けて構成してもよい。付勢部材39内のガスの容量を増加するようにして、ロッド43bの単位収縮量当たりの反発力が低くなるようにしてもよい。
【0054】
また、付勢部材45として、
図20,
図21に示すように、本体部46に対し、本体部46より小径の第1伸縮部材47を伸縮可能に設け、第1伸縮部材47に対し、第1伸縮部材47より小径の第2伸縮部材48を伸縮可能に設けて構成してもよい。
【0055】
本体部46の本体内部46aには、第1伸縮部材47が伸縮可能に設けられているとともに、本体部46のケーシング46bと第1伸縮部材47で囲まれた空間内に気体が封入され、この気体により、第1伸縮部材47を伸長方向に付勢されている。第1伸縮部材47の第1伸縮内部47aには、第2伸縮部材48が伸縮可能に設けられているとともに、第1伸縮部材47のケーシング47bと第2伸縮部材48で囲まれた空間内に気体が封入され、この気体により、第2伸縮部材48を伸長方向に付勢されている。本体部46と第1伸縮部材47と第2伸縮部材48は、テレスコピック状に配置、形成されている。
【0056】
なお、伸縮部材47,48の数は2つ以上であれば任意に設定することができ、本体部46と複数の伸縮部材は、テレスコピック状に配置、形成されるとともに、各伸縮部材は、その外側に配置された部材内に封入された気体により、伸長方向に付勢され、付勢部材45は、テレスコピック式のエアシリンダで構成されている。
【0057】
本体部46と第1伸縮部材47と第2伸縮部材48をテレスコピック状に配置、形成したことにより、伸縮部材47,48における単位収縮量当たりの反発力を小さくすることができ、小さな操作力で可動窓4を移動させることができる。
【0058】
また、上記実施例1においては、固定窓3を下側に、可動窓4を上側に設けたが、固定窓3を上側に、可動窓4を下側に設けてもよい。
【0059】
また、固定窓3を、可動窓4及びそれに付属する部材を同様に設けて、上下方向に移動するようにしてもよい。
【0060】
[実施例2]
本実施例2は、本発明の窓の昇降装置51を、
図22~
図24に示すように、鉄道車両の運転室や車掌室の出入口の扉52における下降窓に適用した実施例に基づいて説明する。
【0061】
扉52には、
図22~
図24に示すように、左右に設けた一対のレール53a,53bが上下方向に設けられ、このレール53a,53bに沿って、可動窓54が昇降可能に設けられている。以下、可動窓54の昇降方向(Y-Y方向)に対して、直交する方向を左右方向(X-X方向)として説明する。
【0062】
可動窓54の下端部には、案内溝56が左右方向(X-X方向)に設けられ、この案内溝56内には、回転移動部材57が、左右方向(X-X方向)に移動可能に設けられている。
【0063】
回転移動部材57には、
図22~
図24に示すように、第1連結腕60の一端部が回転軸60aを中心として、昇降方向(Y-Y方向)に回動可能に連結されている。第1連結腕60の他端部は、扉や車体等の本体部に対して回転軸60bを中心として回転可能に連結され、本実施例においては扉52に回転可能に連結した。
【0064】
第1連結腕60の他端側部には、第2連結腕61の一端部が、回転軸60a,60bの間に位置する回転軸61aを中心として昇降方向(Y-Y方向)に回転可能に連結されている。第2連結腕61の他端部は、第1回転軸61bを中心として、リンク部材65の一端部に昇降方向(Y-Y方向)に回転可能に連結されている。
【0065】
リンク部材65は、
図22~
図24に示すように、扉や車体等の本体部に対して回動軸65aを中心として昇降方向(Y-Y方向)に回動可能に連結され、本実施例においては扉52に回動可能に連結した。すなわち、回動軸65aを中心として、リンク部材65が扉52等の本体部に対して昇降方向(Y-Y方向)に回動するようになっている。
【0066】
第1連結腕60と第2連結腕61で連結部材63を構成する。
【0067】
リンク部材65の他端部には、第2回転軸65bが設けられ、この第2回転軸65bに、伸縮ロッドなどの伸縮可能な伸縮部材66の一端部が連結されている。この伸縮部材66は、伸長する方向に常に付勢する付勢力を有する圧縮バネで構成された付勢部材67により、伸長する方向に付勢され、伸縮部材66の他端部と付勢部材67の他端部は、扉や車体等の本体部に対して固定され、本実施例においては扉52に固定した。付勢部材67の伸縮により、伸縮部材66の一端部が、リンク部材65の第2回転軸65bに対して進退し、リンク部材65が、回動軸65aを中心として昇降方向(Y-Y方向)に回動するようになっている。
【0068】
なお、本実施例では、付勢部材67の伸縮により伸縮部材66が伸縮し、リンク部材65が、回動軸65aを中心として回動するようにしたが、付勢部材67の伸縮に伴い、リンク部材65が、回動軸65aを中心として昇降方向(Y-Y方向)に回動できればよく、伸縮しないロッドを、付勢部材67の伸縮により進退するようにしてもよいし、付勢部材67の一端部を、第2回転軸65bに連結するようにしてもよい。
【0069】
リンク部材65において、回動軸65aと第1回転軸61b間の距離は、回動軸65aと第2回転軸65b間の距離より長く設定され、夫々の長さは任意に設定する。また、リンク部材65の形状は、本実施例では
図22~
図24に示すように、三角形状に形成したが、その形状は任意に形成することができる。
【0070】
また、リンク部材65における回動軸65aの軸心と第1回転軸61bの軸心を結ぶ直線と、回動軸65aの軸心と第2回転軸65bの軸心を結ぶ直線との角度は、任意に設定することができる。
【0071】
第2連結腕61が連結される第1回転軸61bは、左右方向(X-X方向)において、回動軸65aに対して、本体部に固定された付勢部材67の他端部である取付位置と反対側に位置するように設けられている。
【0072】
本実施例2においても、
図22~
図24には、図示していないが可動窓54の両側部に位置するように、上記実施例1と同様のバネ材30,40が設けられている。バネ材30,40は、上記実施例1と同様に構成されるとともに、出入口の扉52に、上記実施例1と同様のボルト32又はナット33を用いて取り付けられている。
【0073】
バネ材30,40には、上記実施例1と同様の摺動輪35が設けられ、摺動輪35は、図示しない連結棒に回動可能に設けられ、連結棒は、可動窓54における側部の上端部に連結されている。
【0074】
付勢部材67の付勢力により伸縮部材66は伸長し、
図22に示すように、第1回転軸61bは上側方向に移動し、第2連結腕61を上側方向に移動させ、第1連結腕60が上側方向に移動して、下降窓54を、その自重に抗して最も高い位置で保持できるようになっている。すなわち、下降窓54は、付勢部材67により上方に付勢されている。
【0075】
次に、
図23,
図24に示すように、付勢部材67の付勢力に抗して、手動で下降窓54を下側方向に押し下げると、回転移動部材57が案内溝56内を、
図22の左側方向に移動しつつ、第1連結腕60の一端部が押し下げられて、第2連結腕61が下方向に移動するとともに、第1回転軸61bが下方向に移動して、伸縮部材66を縮小させる。この最、バネ材30,40と摺動輪35との摩擦力により、下降窓54を任意の場所で保持することができるようになっている。
【0076】
圧縮されたコイルバネで構成された付勢部材67が伸長しようとする付勢力により、第1回転軸61bを上側方向に付勢して下降窓54を上側方向に付勢するため、付勢部材67が損傷等して、例えば、破断した場合にも下降窓54は、付勢部材67を圧縮させなければ下降することができないため、下降窓54を上方に保持することができる。
【0077】
なお、連結部材63を、第1連結腕60と第2連結腕61の2本で構成したが、リンク部材65の回動により連結部材を介して、下降窓54を昇降できれば、連結部材を構成する部材の数や、その構造は任意に設定することができる。
【0078】
それ以外の構造は、前記実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0079】
本実施例2においても前記実施例1と同様の効果を奏する。
【0080】
[その他の実施例]
本発明の窓の昇降装置は、鉄道車両に設けられ、かつ、上下方向に移動できる可動窓を有する窓に対して適用できれば、上記実施例以外にも、例えば、運転室や車掌室の出入口の扉における下降窓、客室の仕切り扉に設けられた窓、便所・サービスルーム(洗面所及び喫煙室・授乳室などの多目的室)等の窓に適用できる。
【符号の説明】
【0081】
1,51 窓の昇降装置
4,54 可動窓
15,39,43,67 付勢部材
30,40 バネ材
30d,41,42 当接部
35 摺動輪