(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ラッピング基材の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/04 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
B29C63/04
(21)【出願番号】P 2021174322
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】709002521
【氏名又は名称】庄内機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184767
【氏名又は名称】佐々 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098556
【氏名又は名称】佐々 紘造
(74)【代理人】
【識別番号】100137501
【氏名又は名称】佐々 百合子
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸作
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007829(JP,A)
【文献】特開2017-087667(JP,A)
【文献】特開2000-247304(JP,A)
【文献】特開2015-149510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/04
B65B 11/00
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形の基材の上面、左右の側面(左右側面)、及び前後の側面(前後側面)をラッピングシートで連続的にラッピングする方法であって、
(1)基材の幅より左右側面をラッピングする分幅広のラッピングシートに、接着剤を連続的に塗布する工程と、
(2)基材を、現基材の後ろ側面にラッピングする分の長さと、次基材の前側面にラッピングする分の長さ、を足した分より長い間隔で、ラッピングシートとの貼り合わせ手段に供給する工程と、
(3)ラッピングシートと貼り合わせる工程と、
(4)ラッピングシートを切断しつつ、
側面に折り込むと基材の4隅に生じるラッピングシートの重複部分をあらかじめ切除し、かつ、この際左右に生じる切除片を基材と基材の間の余剰部分を介して一体化されるように切除する工程と、
(5)基材の左右側面からはみ出たラッピングシートを基材の左右側面に折り込んで接着する工程と、
(6)基材の前後側面からはみ出たラッピングシートを基材の前後側面に折り込んで接着する工程、
よりなるラッピング基材の製造方法。
【請求項2】
(4)の工程で、現基材のラッピングシートの後ろの切除部分と、次基材のラッピングシートの前の切除部分が一体化するように切除する、請求項1のラッピング基材の製造方法。
【請求項3】
長方形の基材の上面、前後の側面(前後側面)、及び左右の側面(左右側面)、をラッピングシートで連続的にラッピングする装置であって、
(1)基材の幅より左右側面をラッピングする分幅広のラッピングシートに、接着剤を連続的に塗布する手段と、
(2)基材を、現基材の後ろ側面にラッピングする分の長さと、次基材の前側面にラッピングする分の長さ、を足した分より長い間隔で、ラッピングシートとの貼り合わせ手段に供給する手段と、
(3)ラッピングシートと貼り合わせる手段と、
(4)ラッピングシートを切断しつつ、
側面に折り込むと基材の4隅に生じるラッピングシートの重複部分をあらかじめ切除し、かつ、この際左右に生じる切除片が基材と基材の間の余剰部分を介して一体化されるように切除する手段と、
(5)基材の左右側面からはみ出たラッピングシートを基材の左右側面に折り込んで接着する手段と、
(6)基材の前後側面からはみ出たラッピングシートを基材の前後側面に折り込んで接着する手段、
よりなるラッピング基材の製造装置。
【請求項4】
(4)の手段が、現基材のラッピングシートの後ろの切除部分と、次基材のラッピングシートの前の切除部分が一体化するように切除する手段である、請求項3のラッピング基材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッピングシートの切除片混入による製品不良を減少させることのできる、ラッピング基材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合板、PB(Particle Board)及びMDF(Midium Dencity Fiber Board)などの板状の基材に樹脂製の化粧シート等をラッピングしたラッピング基材が、フローリング材、クローゼット、棚、造作材等に、デザインや価格等の観点から、多用されている。このラッピング基材は、通常、上面及び4側面の併せて5面がラッピングされている。
【0003】
このようなラッピング基材を連続的に製造する方法として、左右が基材より幅広のラッピングシート(以下、シートということもある)を用い、前後の長さを基材より長くなるように切断して、上面にシートを接着するとともに前後左右の側面に、シートを折り込んで接着し、5面ラッピングする方法がある。この際、前後左右の側面にシートを折り込むと基材の4隅でシートが重複してしまうので、この重複部分をあらかじめ切除することが多い(例えば、特許文献1、特許文献2)。このとき生じる切除片は、基材が薄いときや、側面へ折り返す幅が狭い場合、小さくなってしまう。例えば、厚さが薄いフローリング材や、上面側に薄い厚さでしか側面を覆わない場合は、側面へ折り込む幅が狭くなるので切除片が小さいものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-7829号公報
【文献】特開2017-52286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、ラッピングシートを側面に折り込む際に基材の4隅にシートの重複部分が生じる。この重複部分をあらかじめ取り除く際に生じる切除片が製品に混入して、製品不良の原因となることがある。特に切除片が小さいと製品不良が生じやすい。本発明の目的は、この切除片による製品不良を少なくすることができる、ラッピング基材の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討の結果、シートの左右に生じる切除片を一体的に切り出して切除片を大きくし、切除片が製品に混入するのを防止することに思い至り、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の通りである。
1.長方形の基材の上面、左右の側面(左右側面)、及び前後の側面(前後側面)をラッピングシートで連続的にラッピングする方法であって、
(1)基材の幅より左右側面をラッピングする分幅広のラッピングシートに、接着剤を連続的に塗布する工程と、
(2)基材を、現基材の後ろ側面にラッピングする分の長さと、次基材の前側面にラッピングする分の長さ、を足した分より長い間隔で、ラッピングシートとの貼り合わせ手段に供給する工程と、
(3)ラッピングシートと貼り合わせる工程と、
(4)ラッピングシートを切断しつつ、
側面に折り込むと基材の4隅に生じるラッピングシートの重複部分をあらかじめ切除し、かつ、この際左右に生じる切除片を基材と基材の間の余剰部分を介して一体化されるように切除する工程と、
(5)基材の左右側面からはみ出たラッピングシートを基材の左右側面に折り込んで接着する工程と、
(6)基材の前後側面からはみ出たラッピングシートを基材の前後側面に折り込んで接着する工程、
よりなるラッピング基材の製造方法。
2.(4)の工程で、現基材のラッピングシートの後ろの切除部分と、次基材のラッピングシートの前の切除部分が一体化するように切除する、前記1のラッピング基材の製造方法。
3.長方形の基材の上面、前後の側面(前後側面)、及び左右の側面(左右側面)、をラッピングシートで連続的にラッピングする装置であって、
(1)基材の幅より左右側面をラッピングする分幅広のラッピングシートに、接着剤を連続的に塗布する手段と、
(2)基材を、現基材の後ろ側面にラッピングする分の長さと、次基材の前側面にラッピングする分の長さ、を足した分より長い間隔で、ラッピングシートとの貼り合わせ手段に供給する手段と、
(3)ラッピングシートと貼り合わせる手段と、
(4)ラッピングシートを切断しつつ、
側面に折り込むと基材の4隅に生じるラッピングシートの重複部分をあらかじめ切除し、かつ、この際左右に生じる切除片が基材と基材の間の余剰部分を介して一体化されるように切除する手段と、
(5)基材の左右側面からはみ出たラッピングシートを基材の左右側面に折り込んで接着する手段と、
(6)基材の前後側面からはみ出たラッピングシートを基材の前後側面に折り込んで接着する手段、
よりなるラッピング基材の製造装置。
4.(4)の手段が、現基材のラッピングシートの後ろの切除部分と、次基材のラッピングシートの前の切除部分が一体化するように切除する手段である、前記3のラッピング基材の製造装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のラッピング基材の製造方法及び製造装置によれば、切除片を一体的に大きくし切り出すことができるので、切除片が製品に混入することを防止でき、切除片に起因する製品不良を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のラッピング基材の製造方法の概略を示した。現基材と次基材の切除部分を一体化して切除した場合を示した(
図2、4、6、7も同様)。
【
図2】基材にラッピングシートがラッピングされる様子を、見やすくした図である。
【
図3】実をはめ込んだときの、基材の実部分の拡大図を示した。
【
図4】左右側面が平面で前後側面が実状の場合の、ラッピングシートと切除部分の形状を示した。
【
図5】左右前後の側面が平面の場合の、ラッピングシートと切除部分の形状を示した。
【
図6】
図5で現基材と次基材の切除部分を一体化したときのラッピングシートと切除部分の形状を示した。
【
図7】基材の稜線を覆うように特殊な形状で切断・切除したときのラッピングシートと切除部分の形状を示した。切除部分周辺におけるラッピングするときの山折りを点線で示した。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0010】
1.ラッピング基材の製造方法の概要
本発明では、連続して流れてくる長方形の基材2(
図1)に、ラッピングシート1をラッピングする。2本ロール12で基材上面にラッピングシートを接着し、レーザー13でシートを切断・不要な部分を切除し、コロ14で側面にシートを折り込んで圧着し、上面、左右側面(左側面は3)、前後側面(後ろ側面は4)、の計5面にシートを貼り合わせる。
【0011】
2.基材
ラッピングされる基材2(
図1)は、通常、長方形の板状である。材質は、木製、金属製、またはプラスチック製、あるいはこれらの複合製で、より好ましくは木製である。木製としては、例えば、合板、PB、MDFが挙げられる。
基材は、連続して流れてきて、上面、左右側面、前後側面がラッピングされるが、基材の前後左右は、ラッピングシートの切断直前から直後にかけての、基材の進行方向を基準とする。
基材の前後左右の側面(例えば、左側面3、後ろ側面4)の形状に特に制限はなく、例えば、平面でもいいし、実加工されていてもよい。フローリング材に使用するときは、前後又は左右、あるいはその両方が、実加工されることが多い。
【0012】
3.ラッピングシート及びラッピングシートへの接着剤の塗布
ラッピングシート1(
図1)の材質は、樹脂製、紙製等が挙げられ、樹脂製としては、例えばオレフィン系シート、塩化ビニルシート、ポリエステルフィルム等が挙げられ、紙製としては、例えば、コーティング紙が挙げられる。通常、目的に応じて木目などの印刷が施されている。ラッピングシートにはフィルムのように薄い素材も含まれる。
ラッピングシートは、基材の幅より、左右側面をラッピングする分幅広のものを使用する。左右側面は、必ずしも、その全体をラッピングする必要はない。例えば、左右側面が実加工されている場合、実をはめ込んだ後に上から見える部分(
図3のR部)のみにラッピングしてもよい。
ラッピングシートは、通常ロール状にまかれ、その一端が本発明の装置に連続的に供給され、先ず接着剤塗布手段11により裏面に接着剤が塗布される。
接着剤塗布手段11としては、従来用いられている通常のコーティング手段、例えばロールコーター、ブレードコーター等で差支えない。接着剤としては、従来ラッピング基材に用いられていたものが使用できる。接着剤を塗布されたラッピングシートは、基材との連続貼り合わせ手段に供給される。
【0013】
4.貼り合わせ手段への供給
基材2(
図1)を、現基材の後側面と次の基材の前側面にラッピングする分の長さ、を足した分より長い間隔で、ラッピングシートとの貼り合わせ手段12へ供給する。足した分より長い間隔とすることで、両基材の間に、シートの余剰部分が発生する。
現基材の「現」と次の基材の「次」は、連続的にラッピングする際のラッピングする順番を示している。
前後側面へのラッピングは、側面の全部をラッピングしても、一部をラッピングしてもよく、例えば、前後側面が実状に加工されているときは、実をはめ込んだときに上から見える部分(
図3のR部)のみをラッピングすることでもよい。すなわち、前記ラッピングする分の長さは、前後側面の全てをラッピングできる長さでも、その一部をラッピングする長さでもよい。
貼り合わせ手段への基材の供給間隔は、貼り合わせ手段までの運搬ローラーの速度を調整したり、基材を運搬ローラーに載せる間隔を調整したりして、調整する。
【0014】
5.貼り合わせ手段
貼り合わせ手段12(
図1)により、基材の上面にラッピングシートを張り合わせる。貼り合わせ手段は、従来用いているものでよく、例えば2本ロール、2本ロールが直列に組み合わされた4本ロール、基材を送るローラーと1本のロールで貼り合わせる手段、上からラッピングシートと基材を押し付けて貼り合わせる手段である。ロールは、接着剤等の性質に合わせて、常温ロールでも熱間ロールでも差支えない。押し付けるときも、常温でも、加熱条件下でもよい。ロールはまたラッピングシート及び基材の主たる移送手段ともなっている場合が多い。
【0015】
6.シートの切断及び不要な部分の切除
レーザー13(
図1)で、帯状に延びたラッピングシートを切断しつつ、シートを側面に折り込んだときに、基材の4隅に相当するラッピングシートの部分が重ならないように重複部分を切除する。
重複部分は、前、後ろともに、左右の切除片を一体化して切り出す。左右の切除片は、基材と基材の間の切除される余剰部分でつながれ一体化する(
図4の切除部分5。なお、5では現基材の後の切除部分が、次基材の前の切除部分とさらに一体化している)。
この余剰部分は、「基材2(
図1)を、現基材の後側面と次の基材の前側面にラッピングする分の長さ、を足した分より長い間隔で、ラッピングシートとの貼り合わせ手段12へ供給する」([0013]第1文)ことで、生じる余剰部分である。
前後側面が実状である場合は、左右側面の末端に対応するシートの部分は実の形状に合わせるような形にするとより好ましい(
図4。シートの4隅を参照)。
左右の切除片と基材と基材の間の無駄部分が一体化された切除部分の形状は、左右前後の側面が平面の時は、上下の横棒のついた大文字のIを縦半分に割った形である(
図5。切除部分を現基材の後ろと次基材の前でさらに一体化すると
図6になる)。また、基材の稜線を覆うように特殊な形状で切り出してもよい(
図7。
図7では現基材の後の切除部分が、次基材の前の切除部分と、さらに一体化している)。いずれにしても、左右の切除片は基材間の余剰部分を介して、一体的に切り出される。
【0016】
本発明は連続的に基材をラッピングするので、現基材の後ろから、次基材が流れてくるので、現基材のラッピングシートの後ろの切除部分と、次基材のラッピンシートの前の切除部分を一体化するように切除でき、こうすればより好ましい(
図1、2、4、6、7)。
【0017】
これらの切断・切除はレーザーカッターで行い、ラッピングシートを一時停止させることなくほぼ一定速度で移送させながら、その動きにレーザー光を連動させて、行う。
【0018】
以上のようにすれば、ラッピングシートに多少の無駄は生じるが、左右の切除片が一体化され大きくなるので、これが製品に紛れる恐れがなくなり、切除片による製品不良を減少させることができる。現基材と次基材の切除部分を一体化すれば、さらに切除片が大きく、切除片の数も少なくなるので、より好ましい。
【0019】
7.ラッピングシートの基材左右側面への折り込みと接着
基材左右側面への折り込み及び接着は、基材を搬送しながら複数個のコロ16(
図1)を徐々に傾斜を変化させて、ラッピングシートはみ出し部分を左右側面に折り込んで接着することで行えばよい。なお、折り込み手段は、普通に用いられるものを使用できコロに限定されるものではない。
8.ラッピングシートの基材前後側面への折り込みと接着
基材前後側面への折り込みは、基材の搬送方向を90度転換した後、同様にコロ等を用いて前後側面へと折り込み、接着すればよい(
図1)。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明により、ラッピング基材の製品不良が少なくなり、生産効率が上がるので、建築資材や家具材料を製造する産業分野に有用である。
【符号の説明】
【0021】
1 ラッピングシート
2 基材
3 基材の左側面
4 基材の後ろ側面
5 切除部分
11 接着剤塗布手段
12 貼り合わせ手段
13 レーザー
14 コロ