(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ガス分析装置及びガス分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20250124BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/39
(21)【出願番号】P 2022514445
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 JP2021014196
(87)【国際公開番号】W WO2021205988
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2020070788
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003134
【氏名又は名称】株式会社SmartLaser&PlasmaSystems
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】出口 祥啓
(72)【発明者】
【氏名】神本 崇博
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-222526(JP,A)
【文献】特開2015-40747(JP,A)
【文献】特開2001-66250(JP,A)
【文献】特開2011-158426(JP,A)
【文献】特開2008-51598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0160173(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108181269(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を計測対象ガスに照射するレーザ光源と、
前記レーザ光の波長をそれぞれ所定の波長帯において変化させるように前記レーザ光源を制御するレーザ制御手段と、
前記計測対象ガスを透過したレーザ光を光電変換して電気信号を出力する光検出手段と、
前記電気信号に基づいて前記計測対象ガスの吸収波長を分析する解析手段とを備えるガス分析装置であって、
前記レーザ制御手段は、
矩形波又は台形波の電圧信号を発生する信号発生器と、
前記電圧信号を、矩形波又は台形波の駆動電流に変換して前記レーザ光源に流す電流電源とを備え、
前記レーザ制御手段は、前記信号発生器及び前記電流電源を用いた電流制御のみにより、前記レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定である平坦部を有する形状で変化することで、前記レーザ光の出力が変化し、前記レーザ光源の温度が変化し、前記レーザ光源の回折格子間隔が変化し、前記レーザ光の波長が、前記レーザ光の強度の立ち上がりから遅延して、前記レーザ光源の温度の上昇につれて、時間とともに概ね比例して、前記時間期間において変化するように、前記レーザ光源を制御する、ガス分析装置。
【請求項2】
前記形状は、矩形形状又は台形形状である、
請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
複数のレーザ光をそれぞれ出力する複数のレーザ光源と、
前記複数のレーザ光の波長をそれぞれ所定の波長帯において変化させるように、それぞれ前記複数のレーザ光源を制御するレーザ制御手段と、
前記複数のレーザ光を合波して、合波後の合波光を計測対象ガスに照射する合波手段と、
前記計測対象ガスを透過したレーザ光を光電変換して電気信号を出力する光検出手段と、
前記電気信号に基づいて前記計測対象ガスの吸収波長を分析する解析手段とを備えるガス分析装置であって、
前記レーザ制御手段は、
矩形波又は台形波の電圧信号を発生する信号発生器と、
前記電圧信号を、矩形波又は台形波の駆動電流に変換して前記複数のレーザ光源に流す電流電源とを備え、
前記レーザ制御手段は、前記信号発生器及び前記電流電源を用いた電流制御のみにより、前記複数のレーザ光が互いに重ならないようにかつ順次繰り返して出力し、前記各レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定である平坦部を有する形状で変化することで、前記各レーザ光の出力が変化し、前記各レーザ光源の温度が変化し、前記各レーザ光源の回折格子間隔が変化し、前記各レーザ光の波長が、前記各レーザ光の強度の立ち上がりから遅延して、前記各レーザ光源の温度の上昇につれて、時間とともに概ね比例して、前記時間期間において変化するように、前記複数のレーザ光源を制御する、ガス分析装置。
【請求項4】
前記形状は、矩形形状又は台形形状である、
請求項
3に記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記複数のレーザ光の各光強度は実質的に同一であり、所定のしきい値以下の差を有する、
請求項
3又は4に記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記複数のレーザ光源は、第1のレーザ光源と、第2のレーザ光源とを含み、
前記第1のレーザ光源は、第1のレーザ光を出力し、
前記第2のレーザ光源は、第2のレーザ光を出力し、
前記レーザ制御手段は、前記第1及び第2のレーザ光を交互にかつ繰り返して出力するように、前記第1及び第2のレーザ光源を制御する、
請求項
3~5のうちのいずれか1つに記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記ガス分析装置はさらに、前記合波光を複数の光路に分岐して
前記計測対象ガスに照射する分波手段をさらに備え、
前記光検出手段は、前記複数の光路の各々に対応して設けられ、前記計測対象ガスを透過したレーザ光を光電変換して電気信号を出力する複数の光検出部を含み、
前記解析手段は、前記各光検出部から出力された複数の電気信号に基づいて、計測対象ガスを分析し、
前記レーザ制御手段は、前記第1のレーザ光の振幅と前記第2のレーザ光の振幅とを互いに異ならせるように、前記第1及び第2のレーザ光源を制御し、
前記解析手段は、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光の振幅の差に基づいて、前記各光検出部からの各電気信号の波形における本来の吸収以外の要因による変動の影響をキャンセルする、
請求項
3又は4を引用する請求項
6に記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記レーザ制御手段は、前記平坦部の変動が所定のしきい値以下であるように、前記各レーザ光源を制御する、
請求項
1~7のうちのいずれか1つに記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記光検出手段と前記解析手段との間に設けられ、前記電気信号を増幅する増幅手段をさらに備える、
請求項
1~8のうちのいずれか1つに記載のガス分析装置。
【請求項10】
前記レーザ制御手段は、前記時間期間において前記複数のレーザ光の振幅が互いに実質的に同一となり、かつ前記時間期間において前記複数のレーザ光が互いに実質的に同一の波長帯で変化するように、前記複数のレーザ光を制御する、
請求項
3~6のうちのいずれか1つに記載のガス分析装置。
【請求項11】
前記レーザ制御手段は、前記時間期間において前記複数のレーザ光の振幅が互いに異なり、かつ前記時間期間において前記複数のレーザ光が互いに実質的に異なる波長帯で変化するように、前記複数のレーザ光を制御する、
請求項
3~6のうちのいずれか1つに記載のガス分析装置。
【請求項12】
レーザ光源がレーザ光を計測対象ガスに照射するステップと、
前記レーザ光の波長をそれぞれ所定の波長帯において変化させるように前記レーザ光源を制御するステップと、
前記計測対象ガスを透過したレーザ光を光電変換して電気信号を出力するステップと、
前記電気信号に基づいて前記計測対象ガスの吸収波長を分析するステップとを含むガス分析方法であって、
前記ガス分析方法は、
信号発生器が、矩形波又は台形波の電圧信号を発生するステップと、
電流電源が、前記電圧信号を矩形波又は台形波の駆動電流に変換して前記レーザ光源に流すステップとを含み、
前記レーザ光源を制御するステップは、前記信号発生器及び前記電流電源を用いた電流制御のみにより、前記レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定である平坦部を有する形状で変化することで、前記レーザ光の出力が変化し、前記レーザ光源の温度が変化し、前記レーザ光源の回折格子間隔が変化し、前記レーザ光の波長が、前記レーザ光の強度の立ち上がりから遅延して、前記レーザ光源の温度の上昇につれて、時間とともに概ね比例して、前記時間期間において変化するように、前記レーザ光源を制御することを含む、ガス分析方法。
【請求項13】
前記形状は、矩形形状又は台形形状である、
請求項
12に記載のガス分析方法。
【請求項14】
複数のレーザ光源が複数のレーザ光をそれぞれ出力するステップと、
前記複数のレーザ光の波長をそれぞれ所定の波長帯において変化させるように、それぞれ前記複数のレーザ光源を制御するステップと、
前記複数のレーザ光を合波して、合波後の合波光を計測対象ガスに照射するステップと、
前記計測対象ガスを透過したレーザ光を光電変換して電気信号を出力するステップと、
前記電気信号に基づいて前記計測対象ガスの吸収波長を分析するステップとを含むガス分析方法であって、
前記ガス分析方法は、
信号発生器が、矩形波又は台形波の電圧信号を発生するステップと、
電流電源が、前記電圧信号を矩形波又は台形波の駆動電流に変換して前記複数のレーザ光源に流すステップとを含み、
前記複数のレーザ光源を制御するステップは、前記信号発生器及び前記電流電源を用いた電流制御のみにより、前記複数のレーザ光が互いに重ならないようにかつ順次繰り返して出力し、前記各レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定である平坦部を有する形状で変化することで、前記各レーザ光の出力が変化し、前記各レーザ光源の温度が変化し、前記各レーザ光源の回折格子間隔が変化し、前記各レーザ光の波長が、前記各レーザ光の強度の立ち上がりから遅延して、前記各レーザ光源の温度の上昇につれて、時間とともに概ね比例して、前記時間期間において変化するように、前記複数のレーザ光源を制御することを含む、ガス分析方法。
【請求項15】
前記形状は、矩形形状又は台形形状である、
請求項
14に記載のガス分析方法。
【請求項16】
前記複数のレーザ光の各光強度は実質的に同一であり、所定のしきい値以下の差を有する、
請求項
14又は15に記載のガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて対象ガスを分析するガス分析装置及びガス分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化、化石燃料の枯渇、環境汚染等の防止の観点から、様々な分野で地球環境保全やエネルギーの有効利用に関心が集まっており、そのため種々の環境技術の研究がなされている。
【0003】
そのような環境技術において、エンジンやバーナー等における燃焼現象の燃焼構造や、その過渡的な振る舞いを詳細に解明することは重要なことである。近年、燃焼ガスにおいて温度や濃度の分布を高応答で時系列的に計測する手段として、半導体レーザ吸収法を活用した計測技術が開発されている。
【0004】
一般に吸収法は気体分子が化学種に特有の波長の赤外線を吸収する性質及びその吸収量の温度依存性及び濃度依存性を利用した計測法である。入射光が光路長の一様な吸収媒体(対象ガス)を通過したときの、入射光の強度(Iλ0)と透過光(Iλ)の強度の比(Iλ/Iλ0)を求めることにより、対象ガスの濃度や温度を計測することができる(例えば、非特許文献1及び2参照)。特に、可変波長半導体レーザを用いて、所定波長のレーザ光が吸収される現象を利用して対象ガスを分析する方法を、波長可変半導体レーザ吸収分光法(TDLAS(TUNABLE DIODE LASER ABSORPTION SPECTROSCOPY))と呼んでいる。
【0005】
半導体レーザを用いて吸収法を活用して計測対象ガスの性質(濃度や温度)を検出する技術が特許文献1~3等に開示されている。
【0006】
例えば特許文献1では、レーザ光を分波器で計測用レーザ光と参照用レーザ光とに分波し、計測用レーザ光をガス中に透過させて光検出器で受光し、受光した計測用レーザ光の光強度と前記参照用レーザ光の光強度とからガス中のガス成分によって吸収された吸収スペクトルを把握する方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2では、レーザ光の発振波長を所定周波数の変調信号で変調する際に、測定対象のガス状物質に固有の吸収波長を所定周波数で変調する第1の期間と、固有の吸収波長から外れた波長を所定周波数で変調する第2の期間とを有し、第1の期間で計測したオフセット信号を含むガス濃度信号から、第2の期間で計測したオフセット信号を差し引くことにより、正確なガス濃度を求める方法が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3において、ガス分析装置は、第1及び第2のレーザ光を出力する第1及び第2のレーザ光源と、第1及び第2のレーザ光の波長がそれぞれ所定の波長帯にて変化するよう第1及び第2のレーザ光源を制御するレーザ制御手段と、第1のレーザ光と第2のレーザ光を混合し、計測対象ガスに照射する合波手段と、計測対象ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段と、受光手段からの電気信号に基づき、計測対象ガスの温度及び/又は濃度を分析する解析手段とを備える。ここで、レーザ制御手段は、レーザ光の波長を変化させる際に、第1のレーザ光の振幅の大きさと、第2のレーザ光の振幅の大きさとを異ならせ、かつ第1のレーザ光の強度と第2のレーザ光の強度とを逆方向に変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-051598号公報
【文献】特開2011-158426号公報
【文献】特開2015-040747号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Maximilian Lackner, "TUNABLE DIODE LASER ABSORPTION SPECTROSCOPY (TDLAS) IN THE PROCESS INDUSTRIES - A REVIEW," Reviews in Chemical Engineering, Vol. 23, Issue 2, April 2007.
【文献】村田昭弘,「プロセス用レーザガス分析計の紹介」,かんぎきょう,日本環境技術協会,18~19頁,2010年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1~3に開示された技術では、光路中に設けられた窓汚れなどによるレーザ光強度の低下の影響を除去できない。具体的には、吸収スペクトルに基づき計測対象ガスを測定する場合、吸収スペクトルに現れる信号強度の低下部分(以下「吸収線」ともいう)の位置(波長)及び大きさを検出することが重要である。レーザ光の光路中に設けられた窓の汚れ等の本来の吸収以外の要因により、計測対象ガスに照射されるレーザ光が変動する場合があり、このような場合、吸収スペクトルに現れる信号強度の低下部分(吸収線)の大きさが、本来の吸収による場合と異なってしまい、ガスの分析精度が低下するという問題点があった。
【0012】
特に、特許文献3では、混合した信号に微小な変動が生じるため、高感度化及び高精度化が困難となるという問題点があった。
【0013】
本発明の目的は、従来技術に比較して高い精度でガスを分析できるガス分析装置及びガス分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るガス分析装置は、
レーザ光を計測対象ガスに照射するレーザ光源と、
前記レーザ光の波長をそれぞれ所定の波長帯において変化させるように前記レーザ光源を制御するレーザ制御手段と、
前記計測対象ガスを透過したレーザ光を光電変換して電気信号を出力する光検出手段と、
前記電気信号に基づいて前記計測対象ガスの吸収波長を分析する解析手段とを備えるガス分析装置であって、
前記レーザ制御手段は、前記レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定な平坦部を有する形状で変化し、かつ前記レーザ光の波長が前記時間期間において変化するように、前記レーザ光源を制御する。
【発明の効果】
【0015】
従って、本発明によれば、レーザ制御手段は、前記レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定な平坦部を有する形状で変化し、かつ前記レーザ光の波長が前記時間期間において変化するように、前記レーザ光源を制御する。これにより、ガス分析の検出精度を従来技術に比較して向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】実施形態1に係るガス分析装置10の構成例を示すブロック図である。
【
図1B】
図1Aのレーザ制御装置14及びレーザ11の詳細を示すブロック図である。
【
図2】
図1Aのガス分析装置10の動作を示す図であって、レーザ光1の強度、レーザ光1の波長、及び光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧の概略波形図である。
【
図3】実施形態2に係るガス分析装置10Aの構成例を示すブロック図である。
【
図4】
図3のガス分析装置10Aの動作を示す図であって、レーザ光1,2の強度、レーザ光1,2の波長、及び光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧の概略波形図である。
【
図5】実施形態3に係るガス分析装置10Bの構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態1~3の変形例に係るレーザ光1の強度を示す波形図である。
【
図7】実施形態1~3に係るガス分析装置10,10A,10Bにおける対象ガスがH
20であるときの吸収度の波長特性を示す吸収スペクトラム図である。
【
図8】実施形態1に係るガス分析装置10の実施例の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が100Torrのときの光検出器19の出力電圧の波形図である。
【
図9】実施形態1に係るガス分析装置10の実施例の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が50Torrのときの光検出器19の出力電圧の波形図である。
【
図10】実施形態1に係るガス分析装置10の実施例の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が10Torrのときの光検出器19の出力電圧の波形図である。
【
図11】実施形態4に係る二次元ガス分析装置10Cの構成例を示すブロック図である。
【
図12】
図11の二次元ガス分析装置10Cのバーナー100への応用例1を示す概略図である。
【
図13】
図11の二次元ガス分析装置10Cのエンジン200への応用例2を示す概略図である。
【
図14】
図11の二次元ガス分析装置10Cのジェットエンジン300への応用例3を示す概略図である。
【
図15】
図11の二次元ガス分析装置10Cの半導体プロセス処理への応用例4を示す概略図である。
【
図17】
図11の二次元ガス分析装置10Cの脱硝装置400への応用例5を示す概略図である。
【
図18】
図11の二次元ガス分析装置10Cの排ガス脱硝システム500への応用例6を示すフローチャートである。
【
図19】実施形態1に係るガス分析装置10の実施例1の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が10Torr(1.3kPa)のときの光検出器19の出力電圧の波形図である。
【
図20】実施形態2に係るガス分析装置10Aの実施例2の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が10Torr(1.3kPa)のときの光検出器19の出力電圧の波形図である。
【
図21】実施形態2に係るガス分析装置10Aの実施例2の実験結果であって、AC信号としての増幅率を向上させることができることを示す、光検出器19の出力電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0018】
<実施形態の特徴>
本発明に係る実施形態及び変形例では、可変波長分布活性分布帰還(TDFB)型半導体レーザを用いて、TDLAS法を用いて、計測対象のガスを分析することで、濃度と温度を検出する。ここで、本実施形態では、特に、詳細後述するように、例えば、レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に一定な平坦部を有する形状(例えば、矩形形状又は台形形状)で変化し、かつ前記レーザ光の波長が前記時間期間において変化するように、レーザ光源を制御することを特徴とする。
【0019】
<実施形態1>
(ガス分析装置の構成)
図1Aは実施形態1に係るガス分析装置10の構成例を示すブロック図であり、
図1Bは
図1Aのレーザ制御装置14及びレーザ11の詳細を示すブロック図である。また、
図2は
図1Aのガス分析装置10の動作を示す図であって、レーザ光1の強度、レーザ光1の波長、及び光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧の概略波形図である。
【0020】
図1Aにおいて、ガス分析装置10は、レーザ光源である半導体レーザ(以下、レーザという)11と、レーザ制御装置14と、コリメータ17と、光検出器19と、光検出器19からの電気信号Sdを増幅するACアンプ21と、解析装置23とを備える。なお、ACアンプ21は、詳細後述するように、ACアンプに限定されず、レーザ光の強度が一定である平坦部の部分を基準として増幅できるアンプであればよい。
【0021】
図1Bにおいて、レーザ制御装置14は、コントローラ60と、波形発生器61と、電流電源62とを備えて構成される。コントローラ60は、波形発生器61により発生される電圧信号の周期、デューティ比、電圧等を設定するように波形発生器61を制御する。これに応答して、波形発生器61は例えば矩形波又は台形波の形状を有する所定の電圧信号を発生して電流電源62に出力する。電流電源62は電圧/電流変換回路を含み、入力される電圧信号を例えば矩形波又は台形波の形状を有する所定の駆動電流に変換してレーザ11の一対の電極41,42間に流す。
【0022】
また、
図1Bにおいて、レーザ11は、一対の電極41,42間に、p型クラッド層43と、活性層44と、n型クラッド層45と、n型基板46とが挟設されて構成され、一方の側面に反射面51が形成される。一対の電極41,42に流れる電流に応答して、活性層44はレーザ光を発生して反射面51により反射されたレーザ光が
図1Bの横方向に出射する。
【0023】
すなわち、レーザ11は、所定の波長帯域のレーザ光1を出力可能なレーザ光源であり、本実施形態では、レーザ11は、公知の可変波長分布活性分布帰還(TDFB)型半導体レーザであり、後述するレーザ12,13も同様である。TDFBレーザは、一般的に、しきい値電流を超える励起電流で入力することで、所定強度のレーザ光を出力させることができる。ここで、レーザ11に流す電流値を前記駆動電流により例えば矩形波又は台形波の形状で変化することで、レーザ光の出力が変化し、このとき、レーザ11の温度が変化する。これにより、レーザ11の内部の回折格子間隔が変化することで、レーザ光の波長が変化する。
【0024】
本実施形態では、レーザ制御装置14は、所定周波数のクロック信号に同期して、レーザ11に対する励起電流値を変化させることで、
図2に示すように、レーザ光1の強度を、例えばデューティ比50%(時間期間T1=T2)の矩形パルス形状で変化させる。レーザ11に対してこのように制御することで、レーザ光1の強度は、時間期間T1において矩形パルスの最大強度E1でほぼ一定となり、平坦部Lf1を有する。ここで、平坦部Lf1の強度変動は、例えば後述する半導体プロセス装置における水分検出のための高精度化のためには、最大強度E1に対して、例えば10
-6のしきい値以下に設定することが好ましい。
【0025】
このとき、レーザ光1の波長は、光強度の立ち上がりから若干遅延して、レーザ11の温度の上昇につれて、例えば波長λ1から波長λ2までの波長走査範囲Lw1で時間とともに概ね比例して、単調増加して変化する。すなわち、レーザ制御装置14は、レーザ11を制御し、レーザ光1の波長を時間的に変化(走査)させながら、レーザ11からレーザ光1を出力させることができる。
【0026】
なお、
図2において、レーザ光1の波長の図示において、点線は、レーザ光1の波長が定まっておらず不定であることを示し、後述する
図4においても同様である。ここで、計測対象ガスの吸収波長を波長λ1からλ2までの間に設定することで、所定の波長λaにおいて光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧のドロップ部分Ld1が発生する。
【0027】
レーザ11からのレーザ光1は、レーザ光1を平行化して集束させるコリメータ17を介して計測対象ガスに照射された後、光検出器19に入力される。光検出器19は、計測対象ガスを透過したレーザ光を受光し、受光したレーザ光の強度に応じた、交流成分を含むアナログ電気信号Sdに光電変換する。ACアンプ21は電気信号Sdの交流成分を十分に増幅可能な増幅帯域(特に、レーザ光1の強度が急激に上昇又は下降するので、高次高調波成分を有するため)を有し、かつレーザ光の強度が一定である平坦部の部分を基準として増幅できるアンプである。特に、ACアンプ21は、例えば電気信号Sdに対して所定のオフセットをかけて、
図2の電気信号Sdの出力電圧におけるドロップ部Ld1の左右に位置する平坦部を例えば0Vの基準電圧として増幅するように構成される。ACアンプ21は、光検出器19からのアナログ電気信号Sdを上記のように増幅して、増幅後の電気信号Sdaを解析装置23に出力する。次いで、解析装置23は、ACアンプ21からアナログ電気信号Sdaを入力して内蔵するAD変換器によりAD変換した後、公知の通り、電気信号Sdaの波形(吸収スペクトル)を解析して、計測対象ガスの濃度及び温度を解析する(例えば、非特許文献1及び2参照)。解析装置23は例えばコンピュータ(情報処理装置)により実現できる。
【0028】
以上のように構成されたガス分析装置10において、レーザ11から出力されるレーザ光1の波長を、例えば推定される吸収波長λaを含む波長λ1~λ2の所定の波長帯において走査しながらレーザ光1を計測対象ガスに照射し、その際得られる計測対象ガスの吸収情報を含む電気信号Sdaに係るレーザ光の吸収スペクトルを解析することで、計測対象ガスの濃度や温度の計測を行う。ここで、レーザ光1の矩形パルス波の繰り返しにより、複数の矩形パルス波に対応して複数回積算した分析を行い、その平均値を計算することで、分析精度を向上させることができる。
【0029】
解析装置23は、入力される電気信号Sdaの信号波形に基づき、計測対象ガスの濃度や温度を解析する。解析は例えば以下の方法で行う。解析装置23は、計測対象ガスに関して、種々の濃度や温度に対する計測受光強度信号(電気信号)の信号波形の理論値の情報を予め備えている。解析装置23は、計測によって実際に得られた信号波形と、信号波形の理論値とを比較し、それらの誤差が最も小さくなるときの信号波形の理論値を特定する。そして、その特定した理論値に関する濃度と温度を求めることで、計測対象ガスの濃度や温度の計測値を求めることができる。
【0030】
なお、ガス濃度及び温度の分析は、レーザ制御装置14内のクロック信号に基づいて同期することが好ましい。ここで、レーザ制御装置14内のクロック信号に代えて、受信する電気信号Sdaからクロック信号を再生して、再生クロック信号に同期してガス濃度及び温度の分析を行ってもよい。
【0031】
図7はガス分析装置10における計測対象ガスがH
20であるときの吸収度の波長特性を示す吸収スペクトラム図である。また、計測対象ガスと吸収波長λとの関係の一例を表1に示す。
図2のドロップ部Ld1に対応する波長λaが、波長走査範囲Lw1内において、
図7又は表1で示す吸収波長となるように、レーザ光1の強度の振幅E1を設定する。
【0032】
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、レーザ制御装置14は、所定周波数のクロック信号に同期して、レーザ11に対する励起電流値を変化させることで、
図2に示すように、レーザ光1の強度を矩形パルス形状で変化させ、このとき、レーザ光1の強度は、時間期間T1において矩形パルスの最大強度E1でほぼ一定となり、平坦部Lf1を有する。このとき、レーザ光1の波長は、光強度の立ち上がりから若干遅延して、レーザ1
1の温度の上昇につれて、例えば波長λ1から波長λ2までの波長走査範囲Lw1で時間とともに概ね比例して変化する。すなわち、レーザ制御装置14は、レーザ11を制御し、レーザ光1の波長を時間的に変化(走査)させながら、レーザ11からレーザ光1を出力させることができる。ここで、計測対象ガスの吸収波長λaを波長λ1からλ2までの間に設定することで、所定の吸収波長λaにおいて光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧のドロップ部分Ld1が発生する。このドロップ部分Ld1における電気信号Sdaを上述のように解析することで、計測対象ガスの濃度及び温度を測定することができる。
【0034】
すなわち、レーザ制御装置14は、レーザ光1の強度が、所定の時間期間T1において少なくとも実質的に平坦な平坦部Lf1の振幅E1を有する矩形形状で変化し、かつレーザ光1の波長が時間期間T1において変化するようにレーザ11を制御する。これにより、ガス分析の検出精度及び検出感度を従来技術に比較して大幅に向上できる。また、
図1Aのガス分析装置10は1個のレーザを用いて構成しており、2個のレーザを用いる特許文献3のガス分析装置に比較して構成を簡単化できる。
【0035】
(実施形態1の変形例)
以上の実施形態1においては、T1=T2としているが、T1>T2とすることで、レーザ光1の波長走査範囲Lw1を、T1=T2の場合に比較して大きくできる。ただし、
図2に示すように、レーザ光1の強度の立ち上がり及び立下がりにおいて、レーザ光1の波長は若干遅延して波長走査範囲Lw1に到達した後、波長走査範囲Lw1を介して当該範囲外に出るので、レーザ光1の強度のデューティ比は例えば80%以下に設定することが望ましい。しかし、デューティ比を下げ過ぎると、波長走査範囲Lw1が狭くなるので、それらのトレードオフになり、例えばデューティ比は30%以上が好ましい。
【0036】
また、吸収波長λaは、波長走査範囲Lw1の概ね半分の位置に設定することで、出力電圧のドロップ部分Ld1を波長走査範囲Lw1の概ね半分の位置に設定できる。これにより、波長が不定となる部分にかからないで、高精度で計測対象ガスの分析を行うことができる。
【実施例】
【0037】
(実施形態1に係る実施例)
図8~
図10はそれぞれ、実施形態1に係るガス分析装置10の実施例の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が100Torr、50Torr及び10Torrのときの光検出器19の出力電圧の波形図である。ここで、実施例に係る適用試験における仕様条件を以下に示す。
【0038】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
水蒸気濃度:0.7%(絶対濃度)
温度域:300K
レーザパス長:100mm
変調周波数:50kHz
積算回数:654回(13ms)
レーザ波長:1392.5nm
ACアンプ21の周波数帯域:20MHz
解析装置23内のAD変換器:
サンプリング周波数100MHz、14~16ビット
圧力:10Torr(1.3kPa)~100Torr(103kPa)
大気圧換算濃度:92ppm
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0039】
図8~
図10から明らかなように、波長
走査範囲Lw1内においてドロップ部Ld1が発生しており、解析装置23により計測対象ガスの分析可能であることが示されている。
【0040】
本実施形態に係るガス分析装置10において、感度及び検出精度を向上させるためには以下のようにすることが考えられる。
【0041】
(1)積算時間を1秒とし、従来技術の約10倍に設定する。また、積算回数を増大させる。
(2)光検出器19として冷却型光検出器を用いて、その検出感度が従来技術の約10倍を有する冷却型光検出器を用いる。
(3)ACアンプ21の増幅度を、従来技術の約10倍とする。
(4)レーザ11からのレーザ光1の強度を、従来技術の約10倍とする。
(5)その他の電気回路におけるノイズを、従来技術に比較して低減する。
【0042】
<実施形態2>
図3は実施形態2に係るガス分析装置10Aの構成例を示すブロック図である。また、
図4は
図3のガス分析装置10Aの動作を示す図であって、レーザ光1,2の強度、レーザ光1,2の波長、及び光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧の概略波形図である。実施形態2に係るガス分析装置10Aは、
図1Aの実施形態1に係るガス分析装置10に比較して以下の点が異なる。
【0043】
(1)レーザ光2を発光するレーザ12をさらに備える。
(2)レーザ制御装置14に代えて、2個のレーザ11,12を制御するレーザ制御装置14Aを備える。ここで、レーザ制御装置14Aは、
図1Bのコントローラ60と、2個の信号発生器61(
図1B)と、2個の電流電源62(
図1B)とを備えて構成される。
(3)レーザ11,12と、コリメータ17との間に合波器15を設ける。
(4)解析装置23に代えて、2個のレーザ光1,2に対応する電気信号の各部分を時分割で分析する解析装置23Aを備える。
以下、相違点について説明する。
【0044】
レーザ制御装置14Aは、所定周波数のクロック信号に同期して、レーザ11に対する励起電流値を変化させることで、
図4に示すように、レーザ光1の強度を、例えばデューティ比50%(時間期間T1=T2)の矩形パルス形状で変化させる。レーザ11に対してこのように制御することで、レーザ光1の強度は、時間期間T1において矩形パルスの最大強度E1でほぼ一定となり、平坦部Lf1を有する。
【0045】
また、レーザ制御装置14Aは、前記クロック信号を反転して発生された反転クロック信号に同期して、レーザ12に対する励起電流値を変化させることで、
図4に示すように、レーザ光2の強度を、例えばデューティ比50%(時間期間T1=T2)の矩形パルス形状で変化させる。レーザ12に対してこのように制御することで、レーザ光2の強度は、時間期間T2において矩形パルスの最大強度E2でほぼ一定となり、平坦部Lf2を有する。
【0046】
すなわち、
図4に示すように、レーザ制御装置14Aは、レーザ光1とレーザ光2とを交互に繰り返して、実質的に同一の最大強度E1,E2(E1≒E2)の矩形パルス形状で変化させるようにレーザ11,12を制御する。ここで、最大強度E1,E2の差から、E1,E2の強度を求めることが可能となり、以下のように制御する。
(1)平坦部Lf1,Lf2の強度変動はそれぞれ、例えば後述する半導体プロセス装置における水分検出のための高精度化のためには、最大強度E1,E2に対して、例えば10-6のしきい値以下に設定することが好ましい。
(2)E1,E2の差が最大強度E1,E2に対して、その差が、例えば10
-6のしきい値以下に設定することが好ましい。
【0047】
このとき、レーザ光1の波長は、実施形態1と同様に、光強度の立ち上がりから若干遅延して、レーザ11の温度の上昇につれて、例えば波長λ1から波長λ2までの波長走査範囲Lw1で時間とともに概ね比例して、単調増加して変化する。すなわち、レーザ制御装置14Aは、レーザ11を制御し、レーザ光1の波長を時間的に変化(走査)させながら、レーザ11からレーザ光1を出力させることができる。
【0048】
また、レーザ光2の波長は、光強度の立ち上がりから若干遅延して、レーザ12の温度の上昇につれて、例えば波長λ3から波長λ4までの波長走査範囲Lw2(Lw1≒Lw2であるが、若干異なる場合もある)で時間とともに概ね比例して、単調増加して変化する。すなわち、レーザ制御装置14Aは、レーザ12を制御し、レーザ光2の波長を時間的に変化(走査)させながら、レーザ11からレーザ光1を出力させることができる。
【0049】
ここで、第1の計測対象ガスの吸収波長を、レーザ光1に係る波長λ1からλ2までの間に設定することで、所定の波長λa1において光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧のドロップ部分Ld1が発生する。また、第2の計測対象ガスの吸収波長を、レーザ光2に係る波長λ3からλ4までの間に設定することで、所定の波長λa2(λa1≒λa2であるが、若干異なる場合もある)において光検出器19からの電気信号Sdの出力電圧のドロップ部分Ld2が発生する。
【0050】
レーザ11,12からの2個のレーザ光1,2は合波器15により合波された後、その合波光4は、合波光4を平行化して集束させるコリメータ17を介して計測対象ガスに照射された後、光検出器19に入力される。光検出器19は、計測対象ガスを透過したレーザ光を受光し、受光したレーザ光の強度に応じた、交流成分を含むアナログ電気信号Sdに光電変換する。ACアンプ21は電気信号Sdの交流成分を十分に増幅可能な増幅帯域(特に、レーザ光1の強度が急激に上昇又は下降するので、高次高調波成分を有するため)を有し、光検出器19からのアナログ電気信号Sdを増幅して、増幅後の電気信号Sdaを解析装置23に出力する。次いで、解析装置23は、ACアンプ21からアナログ電気信号Sdaを入力して内蔵するAD変換器によりAD変換した後、公知の通り、電気信号Sdaの波形(吸収スペクトル)を解析して、計測対象ガスの濃度及び温度を解析する(例えば、非特許文献1及び2参照)。解析装置23は例えばコンピュータ(情報処理装置)により実現できる。
【0051】
ここで、実施形態2に係る解析装置23Aは、レーザ制御装置14内のクロック信号、もしくは解析装置23Aで再生されたクロック信号に基づいて同期して、電気信号Sdaを時分割処理でガス濃度及び温度の分析処理を実行する。すなわち、時間期間T1では、吸収波長λa1を有する計測対象ガスに係る分析処理(信号積算を含む)を実行し、時間期間T2では、吸収波長λa2を有する計測対象ガスに係る分析処理(信号積算を含む)を実行する。これにより、実質的に同時に、2個の計測対象ガスに対する分析を行うことができる。
【0052】
以上のように構成されたガス分析装置10Aにおいて、レーザ11から出力されるレーザ光1の波長を、例えば推定される吸収波長λa1を含む波長λ1~λ2の所定の波長帯において走査しながらレーザ光1を計測対象ガスに照射し、また、レーザ12から出力されるレーザ光2の波長を、例えば推定される吸収波長λa2を含む波長λ3~λ4の所定の波長帯において走査しながらレーザ光2を計測対象ガスに照射する。その際得られる計測対象ガスの吸収情報を含む電気信号Sdaに係るレーザ光の吸収スペクトルを解析することで、計測対象ガスの濃度や温度の計測を行う。ここで、レーザ光1、2の矩形パルス波の繰り返しにより、各レーザ光1,2の各複数の矩形パルス波に対応して複数回積算した分析を行い、その平均値を計算することで、分析精度を向上させることができる。
【0053】
また、実施形態2のように、互いに異なる最大強度E1,E2を有する2個のレーザ光1,2を合波した合波光を対象ガスに照射して吸収スペクトルを得るようにすることで、従来技術に比較して簡単な構成で、高い精度で吸収量の変化を検出することができる。また、所定時間当たりの積算回数を倍増でき、分析精度を従来技術に比較して向上できる。
【0054】
(実施形態2の変形例)
以上の実施形態2では、E1≒E2として、概ね同一の吸収波長帯で同一の計測対象ガスについて分析するようにしているが、本発明はこれに限らず、E1≠E2として、互いに異なる吸収波長帯で異なる計測対象ガスについて分析するようにしてもよい。この場合、計測対象ガス成分を吸収する波長を含む波長帯のレーザ光に加えて、計測対象ガス成分と異なるガス成分を吸収する波長を含む波長帯のレーザ光を用いることで、複数のガス成分の同時計測も可能となる。ここで、解析装置23Aにおいて時間期間T1,T2で異なる計測対象ガスについて分析するためには、波長走査範囲Lw1において1つの計測対象ガスの吸収波長λa1が存在し、波長走査範囲Lw2において計測対象ガスの吸収波長λa2が存在するように、波長走査範囲Lw1,Lw2を設定することが好ましい。
【0055】
以上の実施形態2では、T1=T2としているが、T1≠T2としてもよい。これにより、レーザ光1の波長走査範囲Lw1と、レーザ光2の波長走査範囲Lw2とを互いに異ならせてもよい。ただし、実施形態1の変形例で説明したように、波長走査範囲Lw1,Lw2の設定については、矩形パルス波のデューティ比を考慮して設定することが好ましい。
【0056】
また、吸収波長λa1は、波長走査範囲Lw1の概ね半分の位置に設定することで、出力電圧のドロップ部分Ld1を波長走査範囲Lw1の概ね半分の位置に設定できる。吸収波長λa2は、波長走査範囲Lw2の概ね半分の位置に設定することで、出力電圧のドロップ部分Ld2を波長走査範囲Lw2の概ね半分の位置に設定できる。これにより、波長が不定となる部分にかからないで、高精度で計測対象ガスの分析を行うことができる。
【0057】
<実施形態3>
図5は実施形態3に係るガス分析装置10Bの構成例を示すブロック図である。実施形態3に係るガス分析装置10Bは、
図3の実施形態
2に係るガス分析装置10Aに比較して以下の点が異なる。
【0058】
(1)レーザ光3を発光するレーザ13をさらに備える。
(2)レーザ制御装置14Aに代えて、3個のレーザ11,12,13を制御するレーザ制御装置14Bを備える。
(3)解析装置23Aに代えて、3個のレーザ光1,2,3に対応する電気信号の各部分を時分割で分析する解析装置23Bを備える。
【0059】
以上のように構成することで、レーザ光1、2,3の矩形パルス波を順次重ならないように放射することを繰り返すことにより、各レーザ光1,2,3の各複数の矩形パルス波に対応して複数回積算した分析を行い、その平均値を計算することで、分析精度を向上させることができる。
【0060】
ここで、各レーザ光1,2,3の最大強度E1,E2,E3は互いに同一でもいいし、互いに異なるように設定し、もしくは、少なくとも2個が同一にするように設定してもよい。これにより、波長設定範囲に対応する、吸収波長を含む波長帯を、互いに同一にし、互いに異なるように設定し、もしくは、少なくとも2個が同一にするように設定できる。
【0061】
また、各レーザ光1,2,3の時間期間E1,E2,E3は、互いに同一でもいいし、互いに異なるように設定し、もしくは、少なくとも2個が同一にするように設定してもよい。ただし、時間期間E1,E2,E3の長さにより、波長走査範囲が変化することは実施形態2と同様であり、実施形態2における設定に係る留意事項も同様である。
【0062】
なお、実施形態3では、3個のレーザ11,12,13を用いて3個のレーザ光1,2,3を合波しているが、本発明はこれに限らず、4個以上のレーザを用いて4個のレーザ光を合波して、例えば4個以上の異なる計測対象ガスについて分析してもよい。
【0063】
<実施形態1~3の変形例>
図6は実施形態1~3の変形例に係るレーザ光1の強度を示す波形図である。
図6に示すように、レーザ光1等の強度の形状を矩形形状に代えて、台形形状になるようにレーザ11等を制御してもよい。これは、実施形態1~3とその変形例に広く適用可能である。
【0064】
ただし、台形の立ち上がり部Lfaと、立ち下がり部Lfbとは、波長走査範囲Lw1をできる限り長くするためには、これらの傾斜を大きくして急激に立ち上げ、もしくは急激に立ち下げることが好ましい。また、台形の立ち上がり部Lfaと、立ち下がり部Lfbの一方を実質的に90゜又は-90゜の角度で構成してもよい。
【0065】
<実施形態4>
図11は実施形態4に係る二次元ガス分析装置10Cの構成例を示すブロック図である。実施形態1~3では、1つのパス(光路)を有し、一次元的に計測対象ガスの状態を測定するガス分析装置10,10A,10Bの構成について説明した。実施形態4では、計測対象ガスの濃度や温度を二次元的に計測可能とするため、複数のパスでの測定を可能とする二次元ガス分析装置の構成について説明する。
【0066】
一般的によく知られているX線CT(Computed Tomography)はX線を利用して対象物をスキャンしてその断面内を細分化し、X線吸収量をその切り分けた要素毎に計測し、未知数と同じ数のX線吸収量の情報を集めることで対象物断面を構成する技術である。計測対象ガスに水蒸気や炭酸ガス等の成分が多く含まれている場合、照射された光は固有の吸収スペクトルを持つそれらの化学種を通過するときに、ある波長で一部吸収されて減衰する。吸収法では、計測場を透過する光路の積分値として吸収量が計測される。複数のレーザ光を計測場に照射し、CT技術を用いて二次元画像を再構成することで、二次元温度分布を計測することができる。
【0067】
(二次元ガス分析装置の構成)
図11の二次元ガス分析装置10Cは計測対象ガスの濃度や温度を二次元的に計測可能な二次元ガス分析装置であって、2個のレーザ11,12と、レーザ制御装置14Aと、合波器15と、ファイバスプリッタ31と、計測セル30と、解析装置23
Cとを備えて構成される。ここで、ACアンプ21は解析装置23
C内に内蔵されているものとする。
【0068】
計測セル30は、開口を有し、略円形状のフレーム33を有する。フレーム33に対して、16個の光路(パス)の透過光強度を計測するため、16個のコリメータ17と、各コリメータ17と対向して設けられた16個の光検出器19とが取り付けられている。従って、計測セル30は、その開口において、一対のコリメータ17と光検出器19とがパス(光路)を形成する。すなわち、計測セル30は16個のパス(光路)を有する。各パス(光路)は同じ平面に含まれるよう構成されており、この平面内において二次元的な計測が可能となる。なお、以下では、各パス(光路)を含む平面の法線方向を「計測セル30の法線方向」という。
【0069】
このような構成を有する計測セル30は計測対象のガスが含まれる計測場に配置され、二次元ガス分析装置10Cは、計測セル30の開口領域におけるガス成分の測定を行う。
【0070】
レーザ11は、第1の計測対象ガスの成分が吸収する吸収波長λa1を含む波長帯のレーザ光1を出力し、レーザ12は、第1の計測対象ガスの成分が吸収されない特定波長λa2、又は第1の計測対象ガスの成分とは異なる第2の計測対象ガスの成分が吸収する吸収波長λa2を含む波長帯のレーザ光2を出力する。また、レーザ11及びレーザ12は強度変化の向きが互いに異なるか、もしくは最大強度E1,E2が異なるレーザ光1,2を出力する。
【0071】
レーザ11及びレーザ12それぞれから出射されたレーザ光1,2は合波器15に入力されて合波されて合波光は、ファイバスプリッタ31に入力される。ファイバスプリッタ31は前記合波光を16個の分岐光に分岐して16個のコリメータ17のそれぞれに入力させる。各分岐光はコリメータ17を介して計測場に照射される。計測場を透過したレーザ光は各光検出器19で受光されて電気信号に光電変換された後、解析装置23に入力される。
【0072】
解析装置23は、各光検出器19からの電気信号の信号波形を解析して、ガス成分の濃度及び/又は温度分布を示す二次元画像を再構築する。二次元画像の再構築は既存のCT技術を用いて行うことができる。
【0073】
以上の実施形態4では、パス(光路)の数が16個の例を説明したが、パス(光路)の数は16に限定されるものではなく、8、12等でもよい。
【0074】
以上のように構成された実施形態4に係る二次元ガス分析装置10Cによれば、計測対象ガスの温度や濃度の分布を2次元的に計測することが可能となる。特に、2つのレーザ光の各振幅に差をつけることにより、レーザ光強度が窓の汚れなど、目的とするガス成分の本来の吸収以外の効果により減衰する効果をキャンセルすることができ、ガスの分析精度の低下を防止できる。
【0075】
<応用例>
以下、実施形態4に係る二次元ガス分析装置10Cの応用例について説明する。なお、以下の応用例において、実施形態1~4に係るガス分析装置10~10Bを用いてもよい。
【0076】
(応用例1)
図12は
図11の二次元ガス分析装置10Cのバーナー100への応用例1を示す概略図である。
【0077】
図12に示すように、二次元ガス分析装置10Cは、火力発電所等で使用されるボイラ用バーナー100の燃焼室内の燃焼状態(対象ガスの温度及び濃度)の検出に適用することができる。例えば、
図11の計測セル30を、ボイラの燃焼室110に配置することで、バーナー100の燃焼室110内の燃焼状態を二次元的に把握することが可能となる。さらに、燃焼室110に対して、計測セル30を、その法線方向に複数並べて配置することで、3次元的に燃焼状態を測定することも可能になる。
【0078】
(応用例2
)
図13は
図11の二次元ガス分析装置10Cのエンジン200への応用例2を示す概略図である。
【0079】
図13に示すように、二次元ガス分析装置10Cは、車両用エンジンの燃焼状態(対象ガスの温度及び濃度)の検出に適用することができる。
図13に示すように、例えば、
図11の計測セル30を、エンジン200のシリンダ210内に設けることで、シリンダ210の内部の燃焼状態を検出することが可能となる。また、シリンダ210から排出される排気ガスの流路である排気管220に
図11の計測セル30を設けてもよい。これにより、排気ガスの温度及び濃度を検出することが可能となる。また、シリンダ210内又は排気管220に対して、
図11の計測セル30をその法線方向に複数並べて配置して設けることで、3次元的にガスの状態を測定することも可能になる。
【0080】
以上のように構成された応用例2によれば、エンジン200のシリンダ210内又は排気系において各種ガスの温度及び濃度の検出を可能とし、燃焼の過渡現象や未燃燃料排出挙動の解明に有用である。
【0081】
(応用例3)
図14は
図11の二次元ガス分析装置10Cのジェットエンジン300への応用例3を示す概略図である。
【0082】
図14に示すように、二次元ガス分析装置10Cは、ジェットエンジンや産業用ガスタービンの燃焼状態(対象ガスの温度及び濃度)の検出に適用することができる。ジェットエンジン300(又はガスタービン)では、取り込んだ気流はタービン303の回転力を原動力とする圧縮機により圧縮され、燃焼器301において燃料と混合されて燃焼させられる。燃焼により生じた燃焼ガスはタービン303を回転させるとともに、噴射口から外部に排気される。計測セル30は、例えば、
図13に示すように、ジェットエンジン300の噴射口305付近に設けてもよい。これにより、ジェットエンジン300の燃焼器301内部の燃焼状態を検出することが可能となる。このような技術は、流れ場及び燃料不均一性による振動現象の解明に有用である。また、
図11の計測セル30を、噴射口305付近において、燃焼ガスの排気方向に複数並べて配置してもよく。これにより3次元的に燃焼状態の検出が可能となる。
【0083】
以上のように構成された応用例3によれば、CT技術とレーザを組み合せたガス分析装置の構成を、二次元又は3次元で温度分布及び濃度分布を計測する手法に適用することで、装置の簡略化と定量化、高感度化を達成しつつ、ボイラ、エンジン、ガスタービンなどの燃焼機器へ応用展開させることが可能となる。
【0084】
(応用例4)
図15は
図11の二次元ガス分析装置10Cの半導体プロセス処理への応用例4を示す概略図であり、
図16は当該応用例4を示すフローチャートである。
【0085】
図15及び
図16において、半導体プロセ
ス処理は、例えば、ウェハ製造工程(S1)と、前工程(S2)と、後工程(S3)とを含む。ウェハ製造工程(S1)では、半導体ウェハを製造し、前工程(S2)では、チャンバー内において、ウェハを載置台に載置し、ウェハ上に所定の半導体膜を、成膜装置を用いて形成する。さらに、後工程(S3)において、ウェハを切断して、個々の半導体チップを組み立てる。
【0086】
以上の半導体プロセス処理において、特に、前工程(S2)では、チャンバー内に水分があると純度の高い半導体形成ができないので、それを担保するために、水分検出測定が必要である。実施形態1~4に係るガス分析装置10~10Cを用いて水分を計測しながら水分を除去することで、実質的に水分がないチャンバー内環境を実現できる。
【0087】
(応用例5)
図17は
図11の二次元ガス分析装置10Cの脱硝装置400への応用例5を示す概略図である。
【0088】
図17において、脱硝装置400は例えばNOx等のガスを脱硝する装置であって、排気管410にガス分析装置10を設け、そのNH
3の計測値に基づいて、NH
3の注入管420における注入バルブ430におけるNH
3注入量を制御するように構成されている。
【0089】
従来技術に係る化学発光法や双イオン電極法などに代表される間接NOx方式のNH3計測計では、NH3吸着防止のため加熱導管によるサンプルライン設置や複雑な測定系による保守負担が大きく、応答性も遅いという問題点があった。
【0090】
これに対して、
図17におけるNH
3測定では、プロセスラインである排気管410に直接設置して測定するので、従来技術に比較して応答性及び保守性が大幅に向上させることができる。さらに、応答性の良いNH
3濃度の計測信号をNH
3注入量制御に活用し、NH
3注入の最適化の実現も可能になる。
【0091】
(応用例6)
図18は
図11の二次元ガス分析装置10Cの排ガス脱硝システム500への応用例6を示すフローチャートである。
【0092】
図18において、排ガス脱硝システム500は、ボイラ501と、エコ
ノマイザ502と、脱硝装置503と、エアーヒータ504と、集塵装置505と、排気煙突506とを備える。脱硝装置503は、集塵設備の集塵率向上と腐食防止を目的として設けられる。
図17において、NH
3の注入点は基本的には脱硝装置503であるが、脱硝装置503が無いときは、
図18に示すように、エアーヒータ504と集塵装置505との間に設けられる。ここで、二次元ガス分析装置10Cは例えば511,512,513に設けられる。
【0093】
以上のように構成された応用例6では、NH3を高精度で計測して排ガス脱硝することができる。特に、二次元ガス分析装置10Cを用いることで、従来技術に比較して、高い成分選択性と、高速応答性、保守性の改善が得られる。
【0094】
(応用例7)
例えば火力発電所において、実施形態に係るガス分析装置10~10Cを用いることで以下のように構成することができる。
(1)ボイラにおいて、ガス分析装置10~10Cを用いてガスの分析制御を行うことで、NOx、CO、過剰O2を低減することができ、これにより、燃焼効率を従来技術に比較して大幅に向上させることができる。
(2)ボイラから排出されるガス処理装置において、従来技術に比較して、脱硝効率を向上させ、アンモニアスリップを低減させ、脱硝用触媒の寿命を長くさせることができる。
【0095】
(応用例のまとめ)
以上説明したように、実施形態に係るガス分析装置10~10Cを用いた応用例によれば、従来技術に比較して、高い成分選択性と、高速応答性、保守性の改善が得られる。ここで、NH3測定のみならず,最適燃焼制御でのCO,O2の測定、電解プラント又は半導体プロセスにおける微量水分の測定等、各種産業プロセス用に普及し、単なるモニタリングのみならず、プロセス制御と結びつけて、環境保全、ランニングコスト削減に大きく貢献できる。
【0096】
(追加の実施例)
【実施例1】
【0097】
図19は、実施形態1に係るガス分析装置10の実施例1の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が10Torr(1.3kPa)のときの光検出器19の出力電圧の波形図である。ここで、実施例1に係る適用性試験における仕様条件を以下に示す。
【0098】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
水蒸気濃度:0.7%(絶対濃度)
レーザパス長:100mm
変調周波数:50kHz
積算回数:654回(13ms)
レーザ波長:1392.5nm
圧力:10Torr(1.3kPa)
大気圧換算濃度:92ppm
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0099】
図19の実施例1の試験結果によれば、信号対雑音電力比(S/N)は129dBであり、大気圧換算濃度として1ppbが可能となる。
図19から明らかなように、各平坦部でそれぞれドロップ部Ld1を有するようにレーザ光を発生することができる。
【実施例2】
【0100】
図20は実施形態2に係るガス分析装置10Aの実施例2の実験結果であって、対象ガスがH
2Oでチャンバー圧力が10Torr(1.3kPa)のときの光検出器19の出力電圧の波形図である。ここで、実施例2に係る適用性試験における仕様条件を以下に示す。
【0101】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
水蒸気濃度:0.7%(絶対濃度)
レーザパス長:100mm
変調周波数:50kHz
積算回数:654回(13ms)
レーザ波長:1392.5nm
圧力:10Torr(1.3kPa)
大気圧換算濃度:92ppm
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0102】
図20の実施例2の試験結果によれば、
図20から明らかなように、異なる平坦部でそれぞれドロップ部Ld1,Ld2を有するようにレーザ光を発生することができる。
【実施例3】
【0103】
図21は実施形態2に係るガス分析装置10Aの実施例2の実験結果であって、AC信号としての増幅率を向上させることができることを示す、光検出器19の出力電圧の波形図である。
【0104】
従来例において、ノコギリ波のレーザ強度を有するレーザ光を用いて計測した場合、AC信号としての増幅率を上昇させると、AC信号の上部及び下部において飽和状態が発生してレーザ光の発生が不安定となり、安定動作のために当該増幅率の上限があるという問題点があった。これに対して、実施形態2の試験結果では、各平坦部でドロップ部を有するようにレーザ光を発生することで、AC信号としての増幅率を大幅に向上させることができ、特に、平坦部において電圧信号の増幅度を大幅に上昇させることができる。それ故、ガス分析能力として、約100倍の高感度化を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上詳述したように、本発明によれば、レーザ制御手段は、前記レーザ光の強度が、所定の時間期間において少なくとも実質的に平坦な振幅を有する矩形形状又は台形形状で変化し、かつ前記レーザ光の波長が前記時間期間において変化するように、前記レーザ光源を制御する。これにより、ガス分析の検出精度を従来技術に比較して向上できる。
【0106】
また、本発明に係るガス分析装置を用いた応用例によれば、従来技術に比較して、高い成分選択性と、高速応答性、保守性の改善が得られる。特に、半導体プロセスにおいて、本発明のガス分析装置を用いることで、半導体ウェハ上に所定の膜を形成するチャンバー内における水分を従来技術に比較して高精度で検出して、水分除去に寄与でき、産業上で極めて高い効果を奏する。
【0107】
さらに、本発明に係るガス分析装置を用いて、下記の産業上の利用が考えられる。
(1)自動車産業において、排ガス管理、燃焼制御を行うことができる。特に、排ガス計測装置として、自動車メーカの新エンジン開発ツールに活用できる。
(2)各種産業機器において、工程プロセス管理、及び制御を行うことができる。
(3)各種プラントでのプロセスモニタ及び制御を行うことができる。例えば、合成化学プラント,鉄鋼プラント等の生産プロセスで品質管理や制御用に活用でき、原料や製品などのガス中に含まれる特定成分をモニターできる。
【符号の説明】
【0108】
1,2,3 レーザ光
4 合波光
10,10C,10B ガス分析装置
10C 二次元ガス分析装置
11,12,13 レーザ
14,14A,14B レーザ制御装置
14b 計測制御装置
15 合波器
17 コリメータ
19 光検出器
21 ACアンプ
23,35 解析装置
30 二次元ガス分析装置の計測セル
31 ファイバスプリッタ
33 フレーム
41,42 電極
43 p型クラッド層
44 活性層
45 n型クラッド層
46 n型基板
51 反射面
60 コントローラ
61 波形発生器
62 電流電源
100 バーナー
110 燃焼室
200 車両用エンジン
210 シリンダ
220 排気管
300 ジェットエンジン
301 燃焼器
303 タービン
305 噴射口
400 脱硝装置
410 排気管
420 注入管
430 注入バルブ
500 排ガス脱硝システム
501 ボイラ
502 エコマイザ
503 脱硝装置
504 エアーヒータ
505 集塵装置
506 排気煙突
511 ガス分析装置
512 ガス分析装置
513 ガス分析装置