(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】エアダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 B
(21)【出願番号】P 2022546887
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017175
(87)【国際公開番号】W WO2022049829
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020148833
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509189905
【氏名又は名称】株式会社BBeng
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】尾子 信一
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150540(JP,A)
【文献】特開2000-220769(JP,A)
【文献】特開平11-141964(JP,A)
【文献】特開2016-125761(JP,A)
【文献】特開2001-174035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機からの空気を流すための筒状部分を有するエアダクトであって、
前記筒状部分は合成材料シートから構成され、
前記合成材料シートの曲げこわさは、38ミリメートル幅で1×10
-5N・m
2以上、1×10
-3N・m
2未満であることを特徴とするエアダクト。
【請求項2】
請求項1に記載のエアダクトであって、
前記合成材料シートは、通気防水性を有し、熱伝導率が0.1w/mk以下で、単位面積あたりの質量が100g/m
2以下で、厚みが0.2mm以下であることを特徴とするエアダクト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアダクトであって、
前記合成材料シートは、合成繊維が熱と圧力により結合されることにより、太さが0.5μm以上10μm以下である細長繊維がランダムに絡み合い、クモの巣状に積層したシートであることを特徴とするエアダクト。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のエアダクトであって、
複数の直管部及び曲がり管部を備え、
前記直管部同士又は前記直管部と前記曲がり管部は、線ファスナーにより着脱可能に接続され、
少なくとも一部の前記直管部には、吹出し部が形成されていることを特徴とするエアダクト。
【請求項5】
請求項4に記載のエアダクトであって、
前記吹出し部は、複数の吹出し穴から構成される単位吹出し部を複数備え、
複数の前記単位吹出し部は、前記直管部の長手方向において、互いに間隔をあけて並べて配置されていることを特徴とするエアダクト。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載のエアダクトであって、
前記合成材料シートにより形成され、内部に空調機からの空気が流れる本体部と、
前記合成材料シートにより、前記本体部の延びる方向に沿って形成された収容部と、
を備え、
前記収容部は、細長い強度部材を収容可能であり、前記本体部の使用時において、前記本体部の頂部に位置することを特徴とするエアダクト。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のエアダクトであって、
前記合成材料シートの両表面のうち少なくとも何れか一方に防炎加工が施されていることを特徴とするエアダクト。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載のエアダクトであって、
前記合成材料シートにより筒状に形成された単位ダクトを複数備え、
前記単位ダクト同士は、樹脂製の線ファスナーにより互いに着脱可能に接続され、
前記樹脂製の線ファスナーには、防炎加工が施されていることを特徴とするエアダクト。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のエアダクトであって、
前記合成材料シートにより形成されたメイン管と、
前記合成材料シートにより形成されたループ経路構成管と、
を備え、
前記メイン管は、直線状に形成され、
前記ループ経路構成管は、その一部が前記メイン管の延長線上に位置するように、一端が前記メイン管の長手方向に接続され、
前記ループ経路構成管は、他の一部が前記メイン管の長手方向と垂直になるように、他端が前記メイン管の径方向に接続され、
前記メイン管と前記ループ経路構成管は、P字状のダクトを形成していることを特徴とするエアダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質のエアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気が流れる経路を案内する、軟質材料で構成されたエアダクトが知られている。特許文献1は、この種の軟質ダクトを開示する。
【0003】
特許文献1のソックダクトは、不織布層と、不織布層の内周又は外周に分離自在に配置されたガラスクロス層と、を備える構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1の不織布でダクトを構成する場合、不織布の表面の平滑性が低いこと、また、不織布のドレープ性による送風時の座屈によって、エアの流れの損失が大きい。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、座屈を抑制でき、形状を好適に維持でき、送風時の摩擦損失を軽減できるエアダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成のエアダクトが提供される。即ち、このエアダクトは、空調機からの空気を流すための筒状部分を有する。前記筒状部分は合成材料シートから構成される。前記合成材料シートの曲げこわさは、38ミリメートル幅で1×10-5N・m2以上、1×10-3N・m2未満である。
【0009】
これにより、エアダクトが折り曲げ可能であって、保管及び運搬が容易になるとともに、一定のコシがあることにより、動作時において、空気を流すための筒形状を良好に維持することができる。
【0010】
前記のエアダクトにおいて、前記合成材料シートは、通気防水性を有し、熱伝導率が0.1w/mk以下で、単位面積あたりの質量が100g/m2以下で、厚みが0.2mm以下であることが好ましい。
【0011】
これにより、極軽量のエアダクトを形成することができるとともに、通気防水性を有することで、結露の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
前記のエアダクトにおいて、前記合成材料シートは、合成繊維が熱と圧力により結合されることにより、太さが0.5μm以上10μm以下である細長繊維がランダムに絡み合い、クモの巣状に積層したシートであることが好ましい。
【0013】
これにより、折り曲げに強いエアダクトを形成することができ、エアダクトの耐久性を向上することができる。
【0014】
前記のエアダクトは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、複数の直管部及び曲がり管部を備える。前記直管部同士又は前記直管部と前記曲がり管部は、線ファスナーにより着脱可能に接続される。少なくとも一部の前記直管部には、吹出し部が形成されている。
【0015】
これにより、パーツ(直管部及び曲がり管部)の増減により、異なる形状のエアダクトを容易に形成することができる。また、直管部から空気を適切に吹き出すことができる。
【0016】
前記のエアダクトは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記吹出し部は、複数の吹出し穴から構成される単位吹出し部を複数備える。複数の前記単位吹出し部は、前記直管部の長手方向において、互いに間隔をあけて並べて配置されている。
【0017】
これにより、広範囲に空気を吹き出すことができる。
【0018】
前記のエアダクトは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このエアダクトは、本体部と、収容部と、を備える。前記本体部は、前記合成材料シートにより形成され、内部に空調機からの空気が流れる。前記収容部は、前記合成材料シートにより、前記本体部の延びる方向に沿って形成されている。前記収容部は、細長い強度部材を収容可能であり、前記本体部の使用時において、前記本体部の頂部に位置する。
【0019】
これにより、エアダクトの延びる方向における変形を抑制することができる。
【0020】
前記のエアダクトにおいて、前記合成材料シートの両表面のうち少なくとも何れか一方に防炎加工が施されていることが好ましい。
【0021】
これにより、エアダクトが燃えにくくなる。
【0022】
前記のエアダクトは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このエアダクトは、複数の単位ダクトを備える。前記単位ダクトは、前記合成材料シートにより筒状に形成されている。前記単位ダクト同士は、樹脂製の線ファスナーにより互いに着脱可能に接続されている。前記樹脂製の線ファスナーには、防炎加工が施されている。
【0023】
これにより、不使用時において、エアダクトを分解して保管できるので、保管のスペースを大幅に節約することができるとともに、樹脂製の線ファスナーを使用することにより、結露の発生を好適に抑制することができる。また、樹脂製ファスナーも燃えにくくなる。
【0024】
前記のエアダクトは、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このエアダクトは、メイン管と、ループ経路構成管と、を備える。前記メイン管及び前記ループ経路構成管は、前記合成材料シートにより形成されている。前記メイン管は、直線状に形成される。前記ループ経路構成管は、その一部が前記メイン管の延長線上に位置するように、一端が前記メイン管の長手方向に接続されている。前記ループ経路構成管は、他の一部が前記メイン管の長手方向と垂直になるように、他端が前記メイン管の径方向に接続されている。前記メイン管と前記ループ経路構成管は、P字状のダクトを形成している。
【0025】
これにより、エアダクト内に流れる空気の動圧により、メイン管から導入される空気の流れが、メイン管の長手方向と垂直になる他のループ経路構成部分よりも、メイン管の延長線上に位置するループ経路構成管部分において支配的となるので、ループ経路構成管内における均圧状態を容易に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエアダクトを備える空調システムの全体的な構成を示す概略図。
【
図6】直管部と曲がり管部との連結の例を示す斜視図。
【
図8】(a)穴付直管部の構成を示す部分斜視図。(b)穴付直管部の構成を示す説明図。
【
図9】(a)棒材を収容部に通している様子を示す部分斜視図。(b)紐を収容部に通している様子を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るエアダクト2を備える空調システム100の全体的な構成を示す概略図である。なお、以下の説明における「上流」及び「下流」とは、空調空気が流れる方向における上流及び下流を意味する。
【0028】
図1に示す空調システム100は、空調機1からの空気(即ち、空調空気)を、エアダクト2を介して、目的の空間へ提供することができる。
【0029】
空調システム100の用途は限定されないが、特に、固定的な空調設備がない施設において、短期的な空調のニーズが発生し、空調設備の動機的な設置/撤去が望まれる状況において好適に使用することができる。具体的な例としては、仮設のテント、体育館等がイベント又は災害避難のために用いられる場合を挙げることができる。
【0030】
空調システム100は、
図1に示すように、主として、空調機1と、エアダクト2と、を備える。
【0031】
空調機1は、例えば、図略の発電機が発電した電力により駆動される。この発電機は、例えば、ディーゼルエンジン等から構成される。空調機1は、外気を導入して、空調空気(つまり、温度、湿度、空気清浄度等のうち少なくとも何れかを含む空気質を所定の質に調整した空気)を放出することができる。空調機1は、例えば、圧縮機、熱交換器等を備える公知の空冷ヒートポンプ式空調機とすることができる。
【0032】
エアダクト2は、空調機1が放出した空調空気を目的の空間へ流す経路を構成する。エアダクト2は、例えば、100%ポリエチレン等の合成繊維によるシート(合成材料シート)から形成される。このシートは、例えば、0.5μm以上10μm以下の太さを有する連続性極細長繊維を、クモの巣状に積層して熱と圧力により結合されることで形成される。即ち、このシートは、繊維がランダムに絡み合うことで形成されている。
【0033】
このように形成されたエアダクト2は、極わずかな通気性を有するとともに、防水性も有する。本実施形態のエアダクト2の耐水圧が8kPa以上である。即ち、本実施形態のエアダクト2は、水圧が8kPa程度まで水を通さない。また、上記のシートからなるエアダクト2は、熱伝導率が0.1w/mk以下、単位面積あたりの質量が100g/m2以下、厚みが0.2mm以下である性質を持っている。
【0034】
また、本実施形態のエアダクト2の生地のシートは、ある程度の厚みを有するように、極細の繊維を重ねることによって形成される。この繊維の重なりにより、シートの表面が滑らかになるとともに、不透明度が高く、極めて高い白色度を有する。
【0035】
また、このシートは、繊維を重ねた状態で圧力及び熱をある程度強く掛けることにより、単位面積当たりの繊維同士の融着点を多くすることができる。これにより、このシートは、布より硬く、紙のような風合いを有することになる。具体的には、このシートの曲げこわさは、38ミリメートル幅で1×10-5N・m2以上、1×10-3N・m2未満である。
【0036】
曲げこわさは、例えば、
図2に示すような曲げこわさ試験によって得ることができる。単位面積当たりの重さW(g/m
2)のシートを幅b(cm)で切断し、台の端から長さL(cm)だけ水平に張り出させ、台の端に当たる部分を上から押さえた状態とする。シートが張り出した先端に重さF(g)の重りを取り付けても良いが、この重りは省略することもできる。シートを38ミリメートル幅で切断した場合、b=3.8である。シートのたわみがd(cm)だった場合、曲げこわさSは、以下の式で計算することができる。
【数1】
【0037】
このシートにより形成されたエアダクト2は、使用時において、紙風船のように、素早く膨らむことができるとともに、膨らんだ筒形状を良好に維持することができる。例えば、開口をダクトの先端に形成し、その開口へ向けてダクト内に空気を流す場合においても、エアダクト2の形状(特に空気の流れで変形し易い先端側の形状)を良好に維持することができ、安定した状態で送風することができる。この結果、エアダクト2の座屈を抑制でき、空調空気の摩擦損失を軽減することができる。
【0038】
そして、エアダクト2の生地のシートが上記のように紙のような風合いを有することで、エアダクト2の内壁が平滑になり、送風時において、空調空気の摩擦損失を一層軽減することができる。試験により、このように形成されたエアダクト2は、同形状の板金スパイラルダクトと同等の程度まで摩擦損失を軽減できることが確かめられた。
【0039】
曲げこわさが1×10-5N・m2よりも小さい場合、空気を流したときのダクトの座屈、バタつき等が多くなり、空気の流れに支障が生じる。一方で、曲げこわさが1×10-3N・m2以上である場合、空気を流しても膨らみにくくなる等、取扱いに困難が生じる。
【0040】
シートを、曲げこわさが1×10-5N・m2以上、1×10-3N・m2未満となるように構成した場合、従来よりも保形性が優れる一方で、折り畳んだとき等に折り目及びシワが付き易い。そこで、本実施形態では、エアダクト2の外周面に相当する面において、規則的な刺し子の模様がシートに印刷されている。この模様により、外観において折り目等が目立たないようにすることができる。ただし、模様は刺し子以外の模様であっても良く、模様の印刷を省略することもできる。
【0041】
本実施形態のエアダクト2を形成するシートは、その両表面のうち少なくとも何れか一方に防炎加工が施されている。これにより、難燃性が実現されている。また、本実施形態のエアダクト2において、当該シートで形成されたエアダクト2の各パーツを連結するための後述の線ファスナー9にも防炎加工が施されている。
【0042】
本実施形態のエアダクト2は、
図1に示すように、メイン管3と、ループ経路構成管4と、から構成されている。
【0043】
メイン管3は、空調機1と、ループ経路構成管4と、を連結するために用いられる。メイン管3は、空調機1からの空調空気をループ経路構成管4へ導く。メイン管3は、例えば、直管状に形成される。即ち、メイン管3においては、長手方向の両端側が開口されている。
【0044】
メイン管3は、
図3に示すように、長手方向一方側に形成された第1継手部31と、長手方向他方側に形成された第2継手部32と、を備える。
【0045】
第1継手部31は、空調空気が流れる方向におけるメイン管3の上流側端部に設けられている。第1継手部31は、紐体31aと、紐止め31bと、を備え、紐体31aがメイン管3の外周に沿って張り巡られた巾着状に形成されている。
【0046】
紐体31aは、メイン管3の長手方向一方側の端部において、当該メイン管3の外周に沿って形成された紐通路を通過している。
図3に示すように、この紐通路を通過してメイン管3を周回した紐体31aの両端部近傍が、紐止め31bによりまとめて固定されている。
【0047】
紐止め31bが紐体31aを束縛する位置を調整することにより、紐体31aの有効長さを調整することができる。メイン管3の紐通路を通過する紐体31aの長さが短ければ短い程、第1継手部31が設けられた側におけるメイン管3の開口面積が小さくなる。即ち、巾着袋の開口を閉めるように、紐体31aを引っ張った後、紐止め31bにより紐体31aを束縛することで、メイン管3の開口を絞り込んだ状態で維持することができる。
【0048】
これにより、第1継手部31を空調機1の空調空気排出管11の外周に位置させた後、紐体31aを引っ張る等の簡単な操作で、第1継手部31(エアダクト2の開口)と空調空気排出管11の外周とを密着させることができる。この結果、メイン管3と、空調機1と、が接続される。このように、メイン管3と空調機1との接続作業が極めて簡単になり、作業の手間を大幅に低減することができる。
【0049】
第2継手部32は、空調空気が流れる方向におけるメイン管3の下流側端部に設けられている。第2継手部32は、メイン管3を周回するように樹脂製の線ファスナー9のエレメント91を設けることで形成されている。スライダー92によって、第2継手部32に設けられたエレメント91と、後述の第1流通部51に設けられたエレメント91と、が互いに噛み合うことで、メイン管3と連結管5(第1流通部51)が接続される。スライダー92は、2つのエレメント91のうち何れかに対して取外し不能に設けても良いし、何れのエレメント91からも取外し可能に設けても良い。
【0050】
メイン管3は、例えば、
図5に示すように、複数の直管部(単位ダクト)61から構成されても良い。直管部61同士の間は、樹脂製の線ファスナー9により連結されている。これにより、必要に応じて、メイン管3の長さを容易に調整することができる。
【0051】
本実施形態のエアダクト2において、メイン管3は、連結管5を介してループ経路構成管4に連結されている。
【0052】
連結管5は、メイン管3からの空調空気をループ経路構成管4内に導く。連結管5は、メイン管3と、ループ経路構成管4と、を接続する。
図4に示すように、連結管5は、略T字状に形成され、第1流通部51と、第2流通部52と、を有する。連結管5は、上述の合成材料シートにより一体的に形成されている。
【0053】
第1流通部51は、メイン管3とループ経路構成管4とを連結する。第1流通部51は、メイン管3からの空調空気をループ経路構成管4へ導く。第1流通部51は、
図4に示すように、通気時において、空調空気が真っ直ぐに流れる直管状に形成される。第1流通部51は、メイン管3の長手方向(即ちメイン管3における空調空気が流れる方向)に沿って配置されている。
【0054】
第1流通部51の長手方向は、メイン管3の長手方向と一致している。メイン管3に近い側に置ける第1流通部51の端部には、第1開口51aが形成される。メイン管3から遠い側における第1流通部51の端部には、第2開口51bが形成される。
【0055】
空調空気の流れの観点で見た場合、この第1開口51aは、第1流通部51における空調空気の入口である。第2開口51bは、第1流通部51における空調空気の出口である。空調空気は、その向きを殆ど変えることなく、第1開口51a、第2開口51b、ループ経路構成管4の順に流れる。
【0056】
第1流通部51において、第2開口51bは、第1流通部51の第1開口51aより小さく形成される。例えば、第1開口51aが300mmΦに形成される場合、第2開口51bが215mmΦに形成される。通気時において、本実施形態の第1開口51aの断面積は、メイン管3の断面積と実質的に同じである。また、通気時において、第2開口51bの断面積は、後述のループ経路構成管4の断面積と実質的に同じである。
【0057】
第1流通部51の第1開口51a及び第2開口51bには、線ファスナー9のエレメント91が開口輪郭に沿って設けられている。第1流通部51の第1開口51aは、上記の線ファスナー9を介してメイン管3の下流側端部(即ち第2継手部32)と着脱可能に接続される。第2開口51bは、線ファスナー9を介してループ経路構成管4の上流側端部と着脱可能に接続される。
【0058】
この構成により、連結管5の第2開口51bに接続しているループ経路構成管4の部分は、メイン管3の延長線に位置する。この結果、連結管5の第1流通部51を介して、メイン管3内の空調空気が、その動圧により、ループ経路構成管4内に容易に流れる。
【0059】
下流側における第1流通部51の部分には、
図4に示すように、空調空気が流れるときの抵抗を増大する抵抗部51cが設けられている。抵抗部51cは、空調空気が流れる経路の断面積が第2開口51bに行くに従って次第に狭くなる台形円錐状に形成されている。
【0060】
この構成により、抵抗部51cを通過する空調空気の流速が徐々に増加するため、当該空調空気は迅速に下流側のループ経路構成管4内に流れる。
【0061】
第2流通部52は、
図4に示すように、通気時において、空調空気が真っ直ぐに流れる直管状に形成される。第2流通部52においては、第1流通部51と接続されている側とは反対側の端部であるループ経路構成管接続端52aが、ループ経路構成管4の端部と接続されている。
【0062】
第1流通部51の第1開口51a及び第2開口51bと同じように、ループ経路構成管接続端52aには、線ファスナー9のエレメント91が開口輪郭に沿って設けられている。ループ経路構成管接続端52aは、上記の線ファスナー9を介して、ループ経路構成管4の端部と着脱可能に接続される。
【0063】
第2流通部52は、抵抗部51cより上流側の第1流通部51に接続されている。これにより、第2流通部52内における空調空気の流通による、第1流通部51の抵抗部51c内における空調空気の流れへの影響を極めて小さくすることができる。即ち、抵抗部51cにより、空調空気が好適にループ経路構成管4内に案内される。
【0064】
この構成により、ループ経路構成管接続端52aに接続するループ経路構成管4の部分は、第1流通部51(即ちメイン管3)と垂直になる。
【0065】
ループ経路構成管4は、連結管5の第2開口51bと、ループ経路構成管接続端52aと、を連結することで、空調空気が流れるループ状の経路の大部分を構成する。使用時において、当該ループ経路構成管4は、空調対象の空間の天井部に取り付けられ、空調対象の空間へ空調空気を放出する。
【0066】
上記のように、メイン管3が連結管5を介してループ経路構成管4と連結することで構成されたエアダクトは、
図1又は
図5に示すように、P字状のダクトになっている。これにより、メイン管3を流れる空調空気の動圧により、メイン管3の延長線上に位置するループ経路構成管4の部分に導入される空調空気の流れが支配的になる。この結果、
図1に示すように、ループ経路構成管4内において、空調空気の合流等が発生しないため、ループ経路構成管4内の均圧状態を容易に達成することができる。
【0067】
ループ経路構成管4は、メイン管3より細く形成することが好ましい。例えば、メイン管3の直径を300mmΦとする場合、ループ経路構成管4の直径を215mmΦにする。しかし、これに限定されない。ループ経路構成管4は、
図5に示すように、複数(本実施形態においては4つ)の直管部(単位ダクト)61と、複数(本実施形態においては3つ)の曲がり管部(単位ダクト)62と、から構成される。
【0068】
それぞれの直管部61及び曲がり管部62の両端には、線ファスナー9のエレメント91が開口輪郭に沿って設けられている。即ち、
図6等に示すように、それぞれの直管部61及び曲がり管部62の端部を、線ファスナー9を介して他の直管部61、曲がり管部62、又は連結管5に着脱可能に接続することができる。
【0069】
直管部61は、通気時において、空調空気が真っ直ぐに流れる直管状に形成されている。直管部61は、互いに異なる長さのものを用意しておき、形成したいエアダクト2の形状に応じて適宜選択して使用することができる。
【0070】
本実施形態のループ経路構成管4を構成する直管部61は、空調対象の空間へ空調空気を放出するための吹出し穴70が形成されている。以下の説明においては、この吹出し穴70が形成されている直管部61を穴付直管部63と称する。
【0071】
穴付直管部63は、
図8に示すように、空調対象の空間の天井部に取り付けられた状態において、下部に複数の単位吹出し部7が形成されている。この複数の単位吹出し部7は、穴付直管部63の長手方向に沿って、所定の第1間隔L1ずつあけて並べられている。この複数の単位吹出し部7は、穴付直管部63の吹出し部を構成する。
【0072】
穴付直管部63の端部に最も近い単位吹出し部7は、
図8に示すように、穴付直管部63の端部から所定の第2間隔L2をあけて配置することが好ましい。この第2間隔L2は、上記の第1間隔L1と同じ長さであっても良いし、異なる長さであっても良い。
【0073】
各単位吹出し部7においては、複数(本実施形態においては3つ)の吹出し穴70を有する。この複数の吹出し穴70は、例えば
図8に示すように、穴付直管部63の周壁において等間隔で配置されている。複数の吹出し穴70の間隔は、例えば、当該吹出し穴70を平面に投影した場合に所定の距離D1あけて位置するように定めることができる。しかし、これに限定されず、例えば、複数の吹出し穴を、千鳥状に配置したり、全体として任意の模様を形成するように配置したりすることもできる。
【0074】
曲がり管部62は、平面視で円弧状に形成されている。曲がり管部62は、空調空気が流れる方向を変更する必要がある箇所に用いられる。曲がり管部62を通過することで、空調空気が流れる方向は90°変更される。しかし、これに限定されず、必要に応じて、曲がり管部62の円弧角を任意に変更することができる。
【0075】
それぞれの直管部61及び曲がり管部62は、端部同士が樹脂製の線ファスナー9により接続されることで、
図1又は
図5等に示すようなループの大部分を形成するループ経路構成管4を構成する。
【0076】
本実施形態のループ経路構成管4は、複数のパーツ(直管部61及び曲がり管部62)の組合せにより形成されているので、パーツ(直管部61及び曲がり管部62)の増減によって、異なる形状のループ経路構成管4を構成することができる。これにより、空調を行う対象空間の形状及び大きさ等に応じて柔軟に対応することができる。
【0077】
ループ経路構成管4を構成する直管部61の一部は、吹出し穴70が形成されていない直管部61を用いることもできる。例えば、空調空気を放出する必要がない部分において、吹出し穴70が形成されていない直管部61を使用する。これにより、空調空気の吹出しによる圧力の損失を無くすことができ、空調空気が好適に下流のループ経路構成管4内に流れることができる。
【0078】
本実施形態のエアダクト2は、上記のようにメイン管3、ループ経路構成管4、及びメイン管3とループ経路構成管4を連結する連結管5から構成された本体部(筒状部分)の他に、収容部8を備える。
【0079】
収容部8は、エアダクト2(本体部等)の配索、固定等に用いられる。収容部8は、
図3、
図6等に示すように、メイン管3及びループ経路構成管4の上に形成されている。収容部8は、エアダクト2の本体部を形成する上述の合成材料シートと同じ材料から構成されている。これにより、製造時の材料の管理を簡略化でき、コストを低減することができる。収容部8は、メイン管3及びループ経路構成管4の形成時において、メイン管3及びループ経路構成管4と一体的に縫われることで、メイン管3及びループ経路構成管4に固定される。
【0080】
収容部8は中空状に構成されており、
図9(a)に示すように、棒材82等の強度部材を差し込んで収容することができる。棒材82を収容部8内に設けることで、メイン管3及びループ経路構成管4の細長い形状を容易に維持することができる。
【0081】
エアダクト2の現場への設置時に、収容部8は、例えば、
図6又は
図9(b)等に示すように、長手方向の任意の位置で切断することができる。切断は、ハサミ等の汎用の工具を用いて容易に行うことができる。これにより、棒材82を通す場所を柔軟に変更できる。また、
図9(b)に示すように、切断された1又は複数の収容部8に紐83を通し、空調対象空間の天井部に、紐83で吊り下げるようにエアダクト2を取り付けることができる。しかしこれに限定されず、例えば、収容部8に収容された棒材82の長手方向両側で取付け紐等を介して空調対象空間の天井部にエアダクト2を取り付けても良い。本実施形態では、切断位置の目安とするために、収容部8に切断線が等間隔で印刷されている。しかし、切断線は省略することもできる。
【0082】
以上に説明したように、本実施形態のエアダクト2は、空調機からの空気を流すための筒状部分を有する。筒状部分は合成材料シートから構成される。合成材料シートの曲げこわさは、38ミリメートル幅で1×10-5N・m2以上、1×10-3N・m2未満である。
【0083】
これにより、エアダクト2が折り曲げ可能であって、保管及び運搬が容易になるとともに、一定のコシがあることにより、動作時において、空気を流すための筒形状を良好に維持することができる。
【0084】
また、本実施形態のエアダクト2において、合成材料シートは、通気防水性を有し、熱伝導率が0.1w/mk以下で、単位面積あたりの質量が100g/m2以下で、厚みが0.2mm以下である。
【0085】
これにより、極軽量のエアダクト2を形成することができるとともに、通気防水性を有することで、結露の発生を効果的に抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態のエアダクト2において、合成材料シートは、合成繊維が熱と圧力により結合されることにより、太さが0.5μm以上10μm以下である細長繊維がランダムに絡み合い、クモの巣状に積層したシートである。
【0087】
これにより、折り曲げに強いエアダクト2を形成することができ、エアダクト2の耐久性を向上することができる。
【0088】
また、本実施形態のエアダクト2は、複数の直管部及び曲がり管部を備える。直管部同士又は直管部と曲がり管部は、線ファスナー9により着脱可能に接続される。少なくとも一部の直管部には、吹出し部が形成されている。
【0089】
これにより、パーツ(直管部及び曲がり管部)の増減により、異なる形状のエアダクト2を容易に形成することができる。また、直管部から空気を適切に吹き出すことができる。
【0090】
また、本実施形態のエアダクト2において、吹出し部は、複数の吹出し穴から構成される単位吹出し部を複数備える。複数の単位吹出し部は、直管部の長手方向において、互いに間隔をあけて並べて配置されている。
【0091】
これにより、広範囲に空気を吹き出すことができる。
【0092】
また、本実施形態のエアダクト2は、本体部(メイン管3、ループ経路構成管4、及びメイン管3とループ経路構成管4とを連結する連結管5)と、収容部8と、を備える。本体部は、合成材料シートにより形成され、内部に空調機からの空気が流れる。収容部8は、合成材料シートにより、本体部の延びる方向に沿って形成されている。収容部8は、細長い棒材82を収容可能であり、本体部の使用時において、本体部の頂部に位置する。
【0093】
これにより、エアダクト2の延びる方向における変形を抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態のエアダクト2において、合成材料シートの両表面のうち少なくとも何れか一方に防炎加工が施されている。
【0095】
これにより、エアダクト2が燃えにくくなる。
【0096】
また、本実施形態のエアダクト2は、複数の単位ダクト(直管部61及び/又は曲がり管部62)を備える。単位ダクトは、合成材料シートにより筒状に形成されている。単位ダクト同士は、樹脂製の線ファスナー9により互いに着脱可能に接続されている。樹脂製の線ファスナー9には、防炎加工が施されている。
【0097】
これにより、不使用時において、エアダクト2を分解して保管できるので、保管のスペースを大幅に節約することができるとともに、樹脂製の線ファスナー9を使用することにより、結露の発生を好適に抑制することができる。また、樹脂製ファスナーも燃えにくくなる。
【0098】
また、本実施形態のエアダクト2は、メイン管3と、ループ経路構成管4と、を備える。メイン管3及びループ経路構成管4は、合成材料シートにより形成されている。メイン管3は、直線状に形成される。ループ経路構成管4は、その一部がメイン管3の延長線上に位置するように、一端がメイン管3の長手方向に接続されている。ループ経路構成管4は、他の一部がメイン管3の長手方向と垂直になるように、他端がメイン管3の径方向に接続されている。メイン管3とループ経路構成管4は、P字状のダクトを形成している。
【0099】
これにより、エアダクト2内に流れる空気の動圧により、メイン管3から導入される空気の流れが、メイン管3の長手方向と垂直になる他のループ経路構成部分よりも、メイン管3の延長線上に位置するループ経路構成管4部分において支配的となるので、ループ経路構成管4内における均圧状態を容易に達成することができる。
【0100】
次に、第2実施形態を説明する。
図10は、第2実施形態のエアダクト2aを示す平面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0101】
本実施形態のエアダクト2aにおいて、ループ経路構成管4aは、ループ経路を構成することではなく、エンド経路を形成している。このループ経路構成管4aは、例えば、
図10に示すように、複数(
図10の例においては2つ)の穴付直管部63と、エンド管64と、から構成される。
【0102】
エンド管64は、一端が穴付直管部63と接続可能に、丸管状に形成され、他端が閉じられた形状を有する。エンド管64は、線ファスナー9を介して、穴付直管部63に接続されている。
【0103】
本実施形態のエアダクト2aは、所定のコシ(硬さ)をシートから形成されているので、
図10に示す形状で送風する場合においても、送風時の座屈を抑制でき、その形状を良好に維持することができる。この結果、空調空気の摩擦損失を軽減することができ、送風効率を向上することができる。
【0104】
なお、本実施形態のエアダクト2aにおいて、連結管5を省略しても良い、即ち、ループ経路構成管4aが直接メイン管3に連結されても良い。
【0105】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0106】
エアダクト2は、丸管ではなく、角管状に形成されても良い。
【0107】
曲がり管部62には、吹出し部を設けても良い。
【0108】
棒材82は、ループ経路構成管4の複数の直管部61及び/又は曲がり管部62のうち、一部だけに対応する収容部8に設けても良い。
【0109】
メイン管3と、連結管5と、ループ経路構成管4とは、線ファスナー9の代わりに、面ファスナー等を介して互いに接続されても良い。
【0110】
空調空気排出管11とメイン管3との間に、蛇腹状の蛇管を設けても良い。この場合、メイン管3は、蛇管に取り付けられる。
【0111】
メイン管3は、下流側端部だけが合成材料シートから構成されても良いし、全部が合成材料シートから構成されても良い。
【符号の説明】
【0112】
1 空調機
2 エアダクト