(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】火花点火式内燃機関または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関を運転するための方法および制御ユニット
(51)【国際特許分類】
F01M 11/10 20060101AFI20250124BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
F01M11/10 B
F01M11/04 A
F01M11/04 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020079518
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】10 2019 111 012.2
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ローボグナー
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ランゲ
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・ヴィルケ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ベック
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0139484(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0376948(US,A1)
【文献】特表2005-518494(JP,A)
【文献】特開2006-002690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0250156(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関(1)または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関(1)を運転するための方法であって、
運転される前記内燃機関(1)には、オイル回路(3)を通じて潤滑油が供給され、
潤滑のために前記オイル回路(3)内においてその時点で使用されている前記潤滑油の、全塩基価の測定値および/または酸価の測定値が検出され、
全塩基価の決定した測定値に応じて、および/または酸価の決定した測定値に応じて、前記オイル回路(3)に関するオイル交換量が決定され、
該オイル交換量に相当した程度の、その時点で使用されている潤滑油が、前記オイル回路(3)から除去され、
前記オイル交換量に相当した程度の新しい潤滑油が、前記オイル回路(3)に適用され、
前記オイル回路(3)から除去された潤滑油は、収集タンク(10)に収集され、続いて廃棄され
、
前記オイル回路(3)に関する前記オイル交換量は、特性マップまたは特性曲線の関数としての全塩基価の決定した前記測定値に応じて、および/または酸価の決定した前記測定値に応じて決定され、
測定値の種々の支持点に関して、オイル交換量が記憶されており、内挿法または外挿法は、個別の支持点の間において実施される、方法。
【請求項2】
潤滑のために前記オイル回路(3)内においてその時点で使用されている前記潤滑油の、全塩基価の前記測定値および酸価の前記測定値が検出され、
決定した全塩基価の前記測定値に応じて、および決定した酸価の前記測定値に応じて、前記オイル回路(3)に関する前記オイル交換量が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
潤滑のために前記オイル回路(3)内においてその時点で使用されている前記潤滑油の全塩基価の前記測定値は、第1センサ(6)の補助と共に検出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
潤滑のために前記オイル回路(3)内においてその時点で使用されている前記潤滑油の酸価の前記測定値は、第2センサ(7)の補助と共に検出される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
火花点火式内燃機関(1)または火花点火運転モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関(1)を運転するための制御ユニット(12)であって、
該制御ユニット(12)は、前記内燃機関を潤滑するためにその時点で使用されている潤滑油の、全塩基価の測定値をセンサ(6)から受信し、および/または酸価の測定値をセンサ(7)から受信し、
前記制御ユニット(12)は、全塩基価の前記測定値に応じて、および/または酸価の前記測定値に応じて、オイル交換量を決定し、
前記制御ユニット(12)は、その時点で使用されている潤滑油が、除去可能な決定された前記オイル交換量に相当した程度まで、オイル回路から廃棄されるために除去可能であるとの関数として、制御信号を発信し、
前記制御ユニット(12)は、決定された前記オイル交換量に相当した程度の新しい潤滑油が、前記オイル回路に供給可能であるとの関数として、制御信号を送信
し、
前記オイル回路(3)に関する前記オイル交換量は、特性マップまたは特性曲線の関数としての全塩基価の決定した前記測定値に応じて、および/または酸価の決定した前記測定値に応じて決定され、
測定値の種々の支持点に関して、オイル交換量が記憶されており、内挿法または外挿法は、個別の支持点の間において実施される、制御ユニット(12)。
【請求項6】
前記制御ユニットは、請求項1から
4のいずれか一項に記載の、制御側の方法を実行するように備わっている、請求項
5に記載の制御ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火式内燃機関、または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関を運転するための方法に関する。本発明はさらに、火花点火式内燃機関、または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関を運転するための制御ユニットに関する。
【0002】
本発明は、ここでは特にいわゆる大型機関または大型内燃機関の分野に関し、それらのシリンダは140mmよりも大きい、特に175mmよりも大きい直径のピストンを備えている。そのような大型内燃機関は、例えば船舶用機関である。
【背景技術】
【0003】
内燃機関は、運転の間、潤滑油を用いて潤滑されなければならない。過程において、潤滑油には、運転に関与した経年劣化が生じる。潤滑油の経年劣化は、潤滑油が潤滑効果を損ね、内燃機関の損傷が生じる結果となり得る。このことは、回避されなければならない。
【0004】
いわゆる大型機関の分野において、潤滑油の一部がシリンダの燃焼チャンバ内に進入し、燃焼される燃料と共に燃焼されることは、よくあることである。この運転に関する潤滑油の消費は補償され、潤滑油回路には、特に過大な潤滑油がシリンダの領域内で燃焼された場合に、常時新しい潤滑油が供給される。
【0005】
シリンダの領域内での潤滑油の消費または燃焼、およびこのオイル消費を埋め合わせるための新しい潤滑油の補充を通じて、潤滑油の正確な潤滑効果は、大部分の従来の大型内燃機関内で維持され、これにより内燃機関の完全なオイル交換を実施する必要がない。このことは、大きな出費を含んでいる。
【0006】
しかしながら、シリンダの領域内での潤滑油の燃焼は、大量の排ガスの放出に帰結する。ますます厳しい排出ガス規制により、シリンダの領域内で潤滑油が燃焼することを避けなければならない。この場合、従来の大型内燃機関において実行されている、燃焼した潤滑油の補充が減少する。したがって、内燃機関において、排ガスの放出を改善するために、可能な限り少量の潤滑油がシリンダ内で燃焼され、特に潤滑油の経年劣化が過度に進行した場合に、完全なオイル交換を実行することが必要とされる。このことは高価なものである。
【0007】
したがって、シリンダの領域において、潤滑油がわずかな程度しか燃焼しないような、そのようなより新しいタイプの内燃機関においては、完全なオイル交換をすることなく、実施されることが可能である必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことを始点として、本発明は、火花点火式内燃機関または火花点火運転モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関を運転するための、新しいタイプの方法および制御ユニットを創造する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1による、火花点火式内燃機関または火花点火運転モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関を運転するための方法を通じて解決される。
【0010】
本発明によれば、潤滑のためにオイル回路内でその時点で使用されている潤滑油の全塩基価の測定値、または酸価の測定値が検出される。全塩基価の測定値に応じて、および/または酸価の測定値に応じて、オイル回路に関するオイル交換量が決定される。その時点で使用されている潤滑油は、決定されたオイル交換量の範囲でオイル回路から除去される。さらに、新しい潤滑油が、決定されたオイル交換量に相当した程度だけオイル回路に供給される。本発明により、測定により使用された潤滑油の全塩基価(TBN)および/または酸価を検出することが、最初に提案されている。個々の検出された測定値に応じて、内燃機関のためのオイル交換量が決定される。次いで、オイル交換量の範囲で、潤滑油がオイル回路から具体的に除去され、新しい潤滑油が、潤滑油回路に同程度供給される。これにより、潤滑油消費は、排ガス放出の影響を受けることなく再生されることが可能である。オイル回路から除去された潤滑油は、収集タンクに収集され、続いて廃棄されるか、またはさらに使用されることが可能である。したがって、完全なオイル交換は、その設計により潤滑油がシリンダの領域内で燃焼される内燃機関でさえも、排除されることが可能である。
【0011】
本発明のさらなる展開によれば、潤滑のためにオイル回路内でその時点で使用されている潤滑油の、全塩基価の測定値および酸価の測定値が検出され、全塩基価の決定した測定値に応じて、および酸価の決定した測定値に応じて、オイル回路に関するオイル交換量が決定される。潤滑油の両方の測定値に応じて、すなわち潤滑油の全塩基価および酸価の両方に応じて、オイル交換量を確立することは、火花点火式内燃機関または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関に関するオイル交換量を有利に決定するために、特に好適である。
【0012】
本発明のさらなる展開によれば、オイル回路に関するオイル交換量は、特性線図の関数としてまたは特性曲線の関数として、決定した全塩基価の測定値に応じておよび/または決定した酸価の測定値に応じて決定される。特性線図または特性曲線の関数としてオイル交換量を決定することは、特に容易に実施されることが可能である。全塩基価および/または酸価の測定値の異なった支持点に関して、オイル交換量は記憶されることが可能であり、必要であれば、個別の測定値の間の内挿が実施されることが可能である。
【0013】
火花点火式内燃機関または火花点火運転モードにおいて二系統燃料内燃機関を運転するための制御ユニットが、請求項6において規定されている。
【0014】
本発明の好適なさらなる展開は、従属請求項および以下の記載から得られる。本発明の例示的な実施形態は、これに限定されることなく、図を用いてより詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】内燃機関を示した線図である。 本発明は、火花点火式内燃機関、または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関を運転するための方法および制御ユニットに関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、複数のシリンダ2およびオイル回路3を備えた内燃機関1を大幅に概略化した線図を示している。オイル回路3は、内燃機関1の特にシリンダ2に潤滑油を供給することに寄与しており、潤滑油は、内燃機関1のシリンダ2に行き側4を通じて供給され、戻り側5を通じてシリンダ2から排出される。
【0017】
ここで本発明によれば、潤滑のためのオイル回路3内においてその時点で使用されている潤滑油の全塩基価(TBN)の測定値および/または酸価の測定値を検出することが、提案されている。潤滑のためのオイル回路3内においてその時点で使用されている潤滑油の全塩基価の測定値は、第1センサ6の補助と共に検出される。潤滑のためのオイル回路3内においてその時点で使用されている潤滑油の酸価の測定値は、第2センサ7の補助と共に検出される。
【0018】
オイル回路内のセンサ6および7の配列は、不定である。2つのセンサ6および7は、ユニット内に組み合わされることも可能である。
【0019】
全塩基価の決定した測定値によりおよび/または酸価の決定した測定値により、オイル回路3に関するオイル交換量が決定される。この目的のために、2つのセンサ6、7は、それぞれの測定値を制御ユニット12に送信し、制御ユニットは、全塩基価の測定値に応じておよび/または酸価の測定値に応じて、オイル回路3に関するオイル交換量を決定する。
【0020】
本発明によれば、その時点で使用されている潤滑油は、オイル回路3から決定されたオイル交換量に相当した範囲で排除され、さらに決定されたオイル交換量に相当した程度の新しい潤滑油が、オイル回路3へと供給される。制御ユニット12は、このオイル交換が実行される関数としての制御変数を決定する。
【0021】
したがって、
図1は第1バルブ8を示しており、このバルブは、さらなる制御ユニットの中間接続の影響を受ける制御ユニット12により直接的に、または間接的に制御されることが可能であり、それは、潤滑油をオイル回路3から決定された交換量に相当した程度だけ除去して、除去されたオイルを収集タンク10に収集するためである。さらに、
図1はさらなるバルブ9を示しており、このバルブは、オイル回路3に、貯蔵タンク11内に既に維持された新しい潤滑油を供給するために、制御ユニット12から同様に制御されることが可能である。
【0022】
本発明により、潤滑油のためのオイル回路3内においてその時点で使用されている潤滑油の全塩基価の測定値に応じておよび/または酸価の測定値に応じて、決定されたオイル量をオイル回路3から除去すること、ならびにこのオイルを、すなわち個々の測定値の関数として確立したオイル交換量に相当した程度の新しい潤滑油に交換すること、が適宜に提案されている。
【0023】
このように、オイル消費は、シリンダ2の領域内で再生されることが可能である。新しいオイルの決定されたオイル交換量は、潤滑油の潤滑油特性を維持するために、および内燃機関1の完全なオイル交換を不要にするために、連続的に供給されることが可能である。
【0024】
全塩基価の決定した測定値に応じた、および/または酸価の決定した測定値に応じた、オイル回路に関するオイル交換量の決定は、特性線図または特性曲線に優先的に応じて行われる。特性マップまたは特性曲線は、制御ユニット12内に記憶されている。測定値の種々の支持点に関して、オイル交換量が記憶されている。内挿法または外挿法は、個別の支持点の間において実施されることが可能である。
【0025】
この方法は、火花点火式内燃機関または火花点火運転モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関に採用されている。特に、オイル交換量は2つの測定値、すなわち潤滑油の全塩基価および酸価の両方に応じた測定値に応じて決定されている。この手段は、火花点火式内燃機関または火花点火運転モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関に関して、特に好適である。
【0026】
本発明はさらに、方法を実行するための制御ユニット12に関する。制御ユニットは、前述の方法を実行するために、制御側に備わっている。この目的のために、制御ユニット12はデータインターフェイスを備え、これは、本発明による方法を実行することに従事するアセンブリと、特にセンサ6および7ならびにバルブ8および9とデータを交換するためである。さらに、ハードウェア側のアセンブリとしての制御ユニット12は、データ処理のためのプロセッサおよびデータ記憶のためのメモリを備えている。さらに、制御ユニット12は、本発明による方法を実行することに寄与するプログラムモジュールであるソフトウェア側の手段を備えている。
【0027】
制御ユニット12は、個々のセンサ6、7から個々の測定値、優先的にセンサ6から全塩基価の測定値およびセンサ7から酸価の測定値を受信する。個々の測定値に応じて、制御ユニット12はオイル交換量を決定する。オイル交換量に応じて、制御ユニット12は、適宜にその時点で使用されている潤滑油がオイル回路3から除去され、新しい潤滑油がオイル回路2に供給されることに応じて、オイル交換が発生することに応じた制御信号を発信する。
【0028】
本発明は、特にいわゆる大型機関または大型内燃機関の分野に関し、それらのシリンダは140mmよりも大きい、特に175mmよりも大きい直径のピストンを備えている。そのような大型内燃機関は、例えば船舶用機関である。本発明においては、これらは火花点火式内燃機関、または火花点火モードにおいて運転される二系統燃料式内燃機関として実施されている。燃料として、そのような内燃機関は、天然ガスのような気体燃料またはメタノールのような液体燃料を燃焼させる。気体燃料を燃焼させる内燃機関は、ガスエンジンとしても参照される。
【符号の説明】
【0029】
1 ・・・内燃機関
2 ・・・シリンダ
3 ・・・オイル回路
4 ・・・行き側
5 ・・・戻り側
6 ・・・センサ
7 ・・・センサ
8 ・・・バルブ
9 ・・・バルブ
10 ・・・収集タンク
11 ・・・貯蔵タンク
12 ・・・制御ユニット