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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】クレーン、クレーンのブーム倒伏方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20250124BHJP
   B66C 23/26 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
B66C23/88 R
B66C23/26 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021058955
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022155626
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】古河 翔多
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-138081(JP,U)
【文献】実開昭61-183392(JP,U)
【文献】実開昭61-132391(JP,U)
【文献】特開平07-144885(JP,A)
【文献】特開平05-270790(JP,A)
【文献】米国特許第04491228(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00;19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、
前記ブームを起伏可能に吊支するペンダントロープと、を備え、
前記ペンダントロープは、前記ブームを吊支しているときに、当該ペンダントロープの長手方向が、前記ブームが起伏動作するブーム起伏面に対し、平行に保持され
前記ペンダントロープは、前記ブームの幅方向に離れて一対設けられ、
前記一対のペンダントロープの前記幅方向の間隔を保持する間隔保持部材を有し、
前記一対のペンダントロープは、それぞれ、前記ブームの基端側に配置される基端側ロープと、前記基端側ロープに隣接して前記ブームの先端側に配置され前記基端側ロープと連結される先端側ロープと、を含み、
前記間隔保持部材は、前記ペンダントロープが前記ブームを吊支しているときに、前記一対の基端側ロープ間の距離と前記一対の先端側ロープ間の距離とが異なった状態を保持する、
クレーン。
【請求項2】
ブームと、
前記ブームを起伏可能に吊支するペンダントロープと、を備え、
前記ペンダントロープは、前記ブームの幅方向に離れて一対設けられ、
前記一対のペンダントロープは、それぞれ、前記ブームの基端側に配置される基端側ロープと、前記基端側ロープに隣接して前記ブームの先端側に配置され前記基端側ロープと連結される先端側ロープと、を含み、
前記ペンダントロープにより前記ブームを吊支しているときに、一対の前記基端側ロープ間の距離と一対の前記先端側ロープ間の距離とが異なった状態を保持する間隔保持部材を有する、
クレーン。
【請求項3】
前記間隔保持部材は、前記一対の基端側ロープ同士を連結する基端側連結部と、前記一対の先端側ロープ同士を連結する先端側連結部と、を有し、前記基端側連結部と前記先端側連結部の前記ブームの幅方向長さが異なる、
請求項1又は請求項2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記間隔保持部材は、前記基端側ロープと前記先端側ロープを連結する長手方向連結部を有する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項5】
前記ブームは、前記一対の基端側ロープを第1幅方向距離で配置する基端側ロープ配置部と、前記一対の前記先端側ロープを前記第1幅方向距離よりも小さい第2幅方向距離で配置する先端側ロープ配置部と、を有し、
前記間隔保持部材は、前記基端側ロープ配置部に配置された前記一対の基端側ロープ同士および前記先端側ロープ配置部に配置された前記一対の先端側ロープ同士を、前記第1幅方向距離と前記第2幅方向距離の大小関係を変えずに連結可能に構成されている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項6】
前記間隔保持部材は、前記幅方向の間隔の保持を解除可能に構成されている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項7】
前記ブームは、複数の単位ブームを連結して構成され、
前記一対のペンダントロープは、前記ブームの基端側に配置される一対の基端側ロープと、前記基端側ロープに隣接して前記ブームの先端側に配置され前記基端側ロープと連結される一対の先端側ロープと、を含む複数の一対の部分ロープで構成されており、
前記複数の一対の部分ロープは、対毎に前記複数の単位ブームに対応した数の当該一対の部分ロープが設けられ、
前記複数の一対の部分ロープの各対は、前記ブームが倒伏されたときに、対応する単位ブーム上に載置される、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項8】
前記一対の先端側ロープと前記一対の基端側ロープとは、前記ブームのうち、前記幅方向に先細り状に形成された上部ブームと、当該上部ブームに連結される中間ブームとに対応する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載のクレーンのブーム倒伏方法であって、
前記ブームが起伏動作するブーム起伏面に対して、前記ペンダントロープの長手方向が平行な状態で前記ブームに連結された前記ペンダントロープを用い、
前記ペンダントロープを前記ブーム起伏面に対して平行に保持しつつ、当該ペンダントロープにより前記ブームを起立させた状態から倒伏させたときに、前記ペンダントロープが前記ブームに設けたブラケット上に配置され、
前記ペンダントロープが前記ブラケットに固定される、
クレーンのブーム倒伏方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン、クレーンのブーム倒伏方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブームを吊支したペンダントロープを用いてブームを起伏させるクレーンが知られている。
この種のクレーンでは、一般的にブームの先端が先細り状に形成されているため、例えば左右一対のペンダントロープでブームを吊支した場合などには、ペンダントロープがブームに対して傾斜する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ペンダントロープがブームに対して傾斜している場合、ブームを倒伏状態から起立させた後に再び倒伏させたときに、ブーム上に載置されるペンダントロープの幅方向位置が変わるおそれがある。
【0004】
ブーム上にはペンダントロープを支持するブラケットが設けられているが、ブーム上でのペンダントロープの幅方向位置が変わると、ペンダントロープがブラケット上に好適に載置されなくなる。その結果、ペンダントロープがブラケットのロープ支持部以外の部分やブームと接触し、これらが損傷するおそれがある。ブラケットを大きくして対応することも考えられるが、作業員が移動するスペースを確保する必要などもあるため、単純にブラケットを大きくすることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭62-29384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ペンダントロープ等の損傷を抑制しつつ、好適にブームを起伏させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、クレーンであって、
ブームと、
前記ブームを起伏可能に吊支するペンダントロープと、を備え、
前記ペンダントロープは、前記ブームを吊支しているときに、当該ペンダントロープの長手方向が、前記ブームが起伏動作するブーム起伏面に対し、平行に保持され
前記ペンダントロープは、前記ブームの幅方向に離れて一対設けられ、
前記一対のペンダントロープの前記幅方向の間隔を保持する間隔保持部材を有し、
前記一対のペンダントロープは、それぞれ、前記ブームの基端側に配置される基端側ロープと、前記基端側ロープに隣接して前記ブームの先端側に配置され前記基端側ロープと連結される先端側ロープと、を含み、
前記間隔保持部材は、前記ペンダントロープが前記ブームを吊支しているときに、前記一対の基端側ロープ間の距離と前記一対の先端側ロープ間の距離とが異なった状態を保持する構成とした。
【0008】
また、本発明は、クレーンであって、
ブームと、
前記ブームを起伏可能に吊支するペンダントロープと、を備え、
前記ペンダントロープは、前記ブームの幅方向に離れて一対設けられ、
前記一対のペンダントロープは、それぞれ、前記ブームの基端側に配置される基端側ロープと、前記基端側ロープに隣接して前記ブームの先端側に配置され前記基端側ロープと連結される先端側ロープと、を含み、
前記ペンダントロープにより前記ブームを吊支しているときに、一対の前記基端側ロープ間の距離と一対の前記先端側ロープ間の距離とが異なった状態を保持する間隔保持部材を有する構成とした。
【0009】
また、本発明は、上記クレーンのブーム倒伏方法であって、
前記ブームが起伏動作するブーム起伏面に対して、前記ペンダントロープの長手方向が平行な状態で前記ブームに連結された前記ペンダントロープを用い、
前記ペンダントロープを前記ブーム起伏面に対して平行に保持しつつ、当該ペンダントロープにより前記ブームを起立させた状態から倒伏させたときに、前記ペンダントロープが前記ブームに設けたブラケット上に配置され、
前記ペンダントロープが前記ブラケットに固定されるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペンダントロープ等の損傷を抑制しつつ、好適にブームを起伏させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るクレーンを模式的に示した側面図である。
図2】(a)は倒伏されたブーム上にペンダントロープが載置された状態のクレーンの側面図であり、(b)は図2(a)のブームとペンダントロープの平面図である。
図3】(a)は単位ブームの端部を示す平面図であり、(b)は(a)の上部を延在方向から見た図である。
図4】スプレッダの平面図であって、(a)は幅方向中央のリンクが閉じた状態のものであり、(b)は当該リンクが開いた状態のものである。
図5】実施形態に係るクレーンの組立方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[クレーンの概略構成]
図1は、本実施形態に係るクレーン1を模式的に示した側面図である。なお、図1及び図2では、分かりやすさのために、後述のペンダントロープ6を太線で示している。
図1に示すように、クレーン1は、いわゆる移動式のクローラクレーンである。具体的に、クレーン1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に起伏可能に取付けられたブーム4とを含む。
なお、以下では、上部旋回体3の搭乗者から見た前後左右方向をクレーン1の前後左右方向として説明する。
【0014】
上部旋回体3の前側にはブーム4の基端部が支持されている。また、上部旋回体3におけるブーム支持位置よりも後側には、マスト31の基端部が支持されている。
上部旋回体3の後部には、ブーム4及び吊荷との重量バランスをとるカウンタウエイト5が取付けられている。
【0015】
ブーム4は、基端部を中心に起伏可能なように上部旋回体3に取付けられている。ブーム4は、基端側の下部ブーム41と、先端側の上部ブーム42と、これらの間の中間ブーム43とを備えている。下部ブーム41、上部ブーム42及び中間ブーム43は、着脱自在に連結されており、さらに中間ブーム43は、複数(本実施形態では3つ)の中間ブームブロック431が着脱自在に連結されて構成されている。
本明細書では、これら分割されたブーム4の最小ブロックのうち、下部ブーム41を除くもの(すなわち、上部ブーム42と中間ブームブロック431)を「単位ブーム」という。つまり、ブーム4は、下部ブーム41に複数の単位ブーム40が延在方向(長手方向)Xに着脱自在に連結されて構成されている。このようなブーム4では、中間ブームブロック431の数量を増減させることで、長さを調節可能となっている。
また、上部ブーム42は、延在方向Xの先端側に向かって幅方向Y(左右方向)に先細り状(少なくとも先端側の幅が中間ブーム43の幅よりも小さい形状)に形成されている(図2(b)参照)。
【0016】
ブーム4の先端(上端)には、当該ブーム4を起伏可能に吊支するペンダントロープ6の一端が接続されている。ペンダントロープ6の他端は、マスト31上端の上部スプレッダ311に接続されている。ペンダントロープ6の具体構成については後述する。
上部旋回体3の後部には下部スプレッダ(図示省略)が設けられ、上部スプレッダ311と下部スプレッダとの間には起伏ロープ33が複数回掛け回されている。起伏ロープ33は上部旋回体3上の起伏ウインチ(図示省略)に巻回されており、この起伏ウインチにより起伏ロープ33が巻取り又は巻出されると、上部スプレッダ311と下部スプレッダとの間隔が変化し、マスト31が傾動してブーム4が起伏する。
【0017】
また、ブーム4の先端にはシーブ441,442が設けられ、このシーブ441,442を介して巻上ロープ35の一端がフック36に接続されている。フック36の他端は上部旋回体3上の巻上ウインチ(図示省略)に巻回されており、この巻上ウインチの駆動によってフック36が昇降する。
【0018】
上記構成からなるクレーン1は、運搬を容易とする等の目的により組立分解が可能に構成されている。なお、ここでいう「組立分解が可能」とは、少なくとも可逆的に取付及び取り外しが可能なことをいう。
【0019】
[ペンダントロープの構成]
図2(a)は、倒伏されたブーム4上にペンダントロープ6が載置された状態のクレーン1の側面図であり、図2(b)は、図2(a)のブーム4とペンダントロープ6の平面図である。
図2(a)、(b)に示すように、ペンダントロープ6は、その一部をなす複数のペンダントロープ(以下、「部分ロープ60」という。)と、延在方向Xに隣接する2つの部分ロープ60同士を延在方向Xに連結する複数の連結部材65とを含む。また、本実施形態のペンダントロープ6は、ブーム4の幅方向Yに離れた一対が設けられており、部分ロープ60も同様に左右で一対をなしている。
以下では、特に断りのない限り、単に「ペンダントロープ」という場合には「一対」のものを指し、「各ペンダントロープ」という場合には左右個々のものを指すこととする。また、一対の部分ロープ60を「部分ロープ60対」という場合がある。後述の上部ロープ62、中間ロープ63、下部ロープ64についても同様である。
複数の部分ロープ60対は、複数の単位ブーム40に対応して同じ数量だけ設けられており、上部ブーム42に対応する上部ロープ62対と、中間ブーム43(中間ブームブロック431)に対応する中間ロープ63対とを含む。したがって、ペンダントロープ6は、上部スプレッダ311から中間ブーム43の基端部までの部分に対応する下部ロープ64対に、複数の部分ロープ60対(中間ロープ63対と上部ロープ62対)が連結部材65で連結されて構成されている。
【0020】
また、ペンダントロープ6は、ブーム4を吊支しているときに、その長手方向が、ブーム4が起伏動作する面(すなわち、ブーム4の回転中心軸に垂直な面。以下、「ブーム起伏面」という。)Sに対して、平行に保持されている。
そのため、ペンダントロープ6のうち、中間ブーム43(中間ブームブロック431)に対応する中間ロープ63対同士は、直線的に連結され、連結された状態でブーム起伏面Sに平行に配置される。また、上部スプレッダ311から中間ブーム43の基端部までの下部ロープ64対と、最も基端側の中間ロープ63対も、同様に直線的に連結され、ブーム起伏面Sに平行に配置される。
一方、ペンダントロープ6のうち、最も先端側の中間ロープ63対と上部ロープ62対とは、ブーム4の幅方向Yに段付き状に連結される。具体的には、この中間ロープ63対と上部ロープ62対とは、幅方向Yに先細り状に形成された上部ブーム42において上部ロープ62対がブーム起伏面Sに平行に保持されるように、上部ロープ62対を中間ロープ63対よりも幅方向Yの内側に位置させた段付き状に連結される。
なお、このペンダントロープ6の平行状態は、少なくともブーム4のブーム4を吊支しているときに保持されていればよい。
【0021】
ペンダントロープ6を連結する連結部材65は、複数のピン結合金具66と、スプレッダ67とを含む。
このうち、ピン結合金具66は、図3(a)に示すように、中間ロープ63同士、または中間ロープ63と下部ロープ64を、直線的に連結する。ピン結合金具66は、連結する部分ロープ60の端部に取り付けられた金具本体661と、金具本体661の孔部に挿通されて金具本体661同士をピン結合する結合ピン662とを備える。このピン結合金具66は、部分ロープ60を1本ごとに個別に連結する。
【0022】
スプレッダ67は、本発明に係る間隔保持部材の一例であり、図4(a)に示すように、最も先端側の中間ロープ63対と、この中間ロープ63対よりも幅方向Yの距離が短い上部ロープ62対とを、段付き状に連結する。スプレッダ67は、一対のペンダントロープ6の幅方向Yの間隔を保持する。
具体的に、スプレッダ67は、第1連結金具671、第2連結金具672、第1リンク板673、第2リンク板674、第3リンク板676を含む。スプレッダ67は、これらの構成要素を左右一対ずつ有し、略左右対称形に形成されている。
第1連結金具671は、中間ロープ63対の各端部に連結される。各中間ロープ63の端部には、ピン結合金具66と同様の金具本体661が取り付けられ、この金具本体661に対して第1連結金具671が結合ピン662でピン結合される。
第2連結金具672は、上部ロープ62対の各端部に連結される。各上部ロープ62の端部には、ピン結合金具66と同様の金具本体661が取り付けられ、この金具本体661に対して第2連結金具672が結合ピン662でピン結合される。
第1リンク板673は、中間ロープ63対に連結される一対の第1連結金具671同士を、幅方向Yに連結して間隔を保持する。この第1リンク板673は、一対の第1連結金具671の各々に個別に取り付けられる。そして、その2つの第1リンク板673同士が、各々幅方向Yに沿って延在した状態で、幅方向Y中央の先端部において連結ピン675によって分解可能にピン結合される。
第2リンク板674は、上部ロープ62対に連結される一対の第2連結金具672同士を、幅方向Yに連結して間隔を保持する。この第2リンク板674は、一対の第2連結金具672の各々に個別に取り付けられる。そして、その2つの第2リンク板674同士が、各々幅方向Yに沿って延在した状態で、幅方向Y中央の先端部において連結ピン675によって分解可能にピン結合される。また、各第2リンク板674は、第1リンク板673とは幅方向Yの長さが異なり、第1リンク板673よりも短い。そのため、第2リンク板674によって連結される上部ロープ62対は、第1リンク板673によって連結される中間ロープ63対よりも幅方向Yの内側に位置する。
第3リンク板676は、第1リンク板673によって連結された一対の第1連結金具671と、第2リンク板674によって連結された一対の第2連結金具672とを、左右で個別に延在方向Xに連結する。つまり、第3リンク板676は、中間ロープ63対と上部ロープ62対とを連結する。
【0023】
このように構成されたスプレッダ67により、上部ロープ62対を中間ロープ63対よりも幅方向Yの内側に位置させた状態で、これら中間ロープ63対と上部ロープ62対とを段付き状に連結できる。
換言すれば、中間ブーム43には、中間ロープ63対がブラケット46(基端側ロープ配置部)により保持され、上部ブーム42には、中間ロープ63対よりも小さい幅方向Yの距離で上部ロープ62対がブラケット46(先端側ロープ配置部)により保持されている。そして、スプレッダ67は、中間ブーム43のブラケット46に配置された中間ロープ63対同士と、上部ブーム42のブラケット46に配置された上部ロープ62対同士とを、その幅方向Yの距離の大小関係を変えずに連結可能に構成されている。
すなわち、スプレッダ67は、ペンダントロープ6がブーム4を吊支しているときに、上部ロープ62対の幅方向Yの距離と、中間ロープ63対の幅方向Yの距離とが、異なった状態を保持できる。ひいては、幅方向Yの距離が異なる中間ロープ63対と上部ロープ62対とを、それぞれブーム起伏面Sに平行に保持させた状態で好適に連結できる。
また、中間ロープ63同士を幅方向Yに連結する2つの第1リンク板673や、上部ロープ62同士を幅方向Yに連結する2つの第2リンク板674は、それぞれ幅方向Yの中央部が開放可能にピン結合されている。つまり、第1リンク板673と第2リンク板674は、幅方向Yの連結(間隔の保持)を解除可能に構成されている。そのため、図4(b)に示すように、2つの第1リンク板673と2つの第2リンク板674のそれぞれを開放することで、フック36を昇降させる巻上ロープ35をスプレッダ67の間に通すことができる。これにより、巻上ロープ35を誤ってスプレッダ67の上側からワイヤリングしてしまった場合などであっても、スプレッダ67の間を通して巻上ロープ35を正しい位置に容易に修正することができる。尚、幅方向Yの連結(間隔の保持)を解除する方法は、中央部で開放することに限らない。例えば、それぞれ幅方向Yの中央部が開放可能としたが、これに限られない。例えば、第1リンク板673と第1連結金具671との連結を解除することで、幅方向Y(間隔の保持)の連結を解除してもよい。
【0024】
また、ペンダントロープ6は、ブーム4が倒伏されて分解された状態では、複数の部分ロープ60対に分解されている。そして、複数の部分ロープ60対の各々は、左右一対の状態で、対応する単位ブーム40上に載置されて固定され、当該単位ブーム40とユニット化される。このとき、各部分ロープ60対は、対応する単位ブーム40の延在方向Xの長さに対応した長さに形成され、延在方向Xに沿った状態で当該単位ブーム40に固定される。尚、本実施形態では、ペンダントロープ6は、ブーム4を吊支しているときと同様に平行に保持されたまま固定される。
【0025】
図3(a)、(b)に示すように、分解された各部分ロープ60対は、左右一対の状態で、その延在方向Xの各端部が、ブラケット46により単位ブーム40に固定される。
ブラケット46は、本発明に係るロープ固定手段の一例であり、部分ロープ60対の幅方向Yの位置に対応して、単位ブーム40の幅方向Yの両側それぞれに配置され、単位ブーム40の副パイプ材40aに固定されている。各部分ロープ60は、ブラケット46上面に載置された状態で、U字状の固定部材461により、脱落しないように固定される。
ブラケット46の上面には、固定する部分ロープ60の幅方向Yの位置を規定する2つのガイド板462が立設されている。部分ロープ60は、ブラケット46の上面のうち、2つのガイド板462の間に載置され、固定される。
【0026】
[クレーンの組立・分解方法]
図5は、クレーン1の組立方法の流れを示すフローチャートである。
この図に示すように、クレーン1の組立時には、まず機械本体、すなわち下部走行体2と上部旋回体3とを組み立てる(ステップS1)。また、上部旋回体3上にマスト31を立設し、その先端の上部スプレッダ311と下部スプレッダとの間に起伏ロープ33を掛け回す。
【0027】
次に、ブーム4を組み立てる(ステップS2)。
ここでは、まず上部旋回体3に下部ブーム41が連結される。そして、下部ブーム41に対して、複数の単位ブーム40(複数の中間ブームブロック431及び上部ブーム42)が基端側から順に連結される。
このとき、各単位ブーム40には、対応する部分ロープ60対が予め固定されているため、単位ブーム40の配置に伴って部分ロープ60対(すなわちペンダントロープ6)の配置もほぼ完了する。
【0028】
次に、複数の部分ロープ60対及び下部ロープ64対を連結させてペンダントロープ6を完成させる(ステップS3)。
ここでは、まず、中間ロープ63対同士、及び下部ロープ64対と中間ロープ63対とをピン結合金具66で連結し、中間ロープ63対と上部ロープ62対とをスプレッダ67で連結する。それから、各ブラケット46の固定部材461を取り外して、各部分ロープ60の固定を解放する。
このとき、各単位ブーム40上には部分ロープ60対が予め延在方向Xに平行に配置されている。そのため、複数の部分ロープ60対を連結させるだけで、ブーム起伏面Sに対して平行に保持された状態のペンダントロープ6が得られる。
そして、完成したペンダントロープ6をブーム4と上部スプレッダ311に連結する。
【0029】
次に、ブーム4先端のシーブ441,442に架けた巻上ロープ35の先端にフック36を接続する(ステップS4)。
そして、起伏ウインチにより起伏ロープ33を巻き取って、倒伏状態のブーム4を起立させる(ステップS5)。このとき、ペンダントロープ6は、ブーム4を吊支しているときに、その長手方向がブーム起伏面Sに対して平行に保持された状態で、ブーム4を起伏させる。
こうして、クレーン1の組み立てが完了する。
【0030】
一方、クレーン1の分解時には、基本的には、上述した組立時の工程とは逆の工程によりクレーン1が分解される。
このうち、ペンダントロープ6を分解する工程では、ブーム4を起立状態から倒伏させてペンダントロープ6をブーム4上に載置させた後に、連結部材65を外してペンダントロープ6を複数の単位ロープ60対及び下部ロープ64に分解する。
【0031】
このとき、ペンダントロープ6は、ブーム4を吊支しているときに、その長手方向がブーム起伏面Sに対して平行に保持されている。そのため、ブーム4を倒伏状態から起立させて再び倒伏させた場合や、中間ブームブロック431を増減させてブーム4の長さを変えた場合であっても、ペンダントロープがブーム起伏面に対して傾斜しているときと異なり、ブーム4上でのペンダントロープ6の幅方向Y位置が変化しない。そのため、これらの場合においても、ブーム4を倒伏させたときにペンダントロープ6がブーム4のブラケット46上に収まる。ブラケット46上に配置されたペンダントロープ6は、当該ブラケット46に固定される。これにより、ペンダントロープ6がブラケット46のロープ支持部以外の部分(固定部材461、ガイド板462等)やブーム4と接触してこれらが損傷する事態を回避できる。
【0032】
ここで、ブーム起伏面Sに対するペンダントロープ6の平行度合は、ブーム4上に載置されるペンダントロープ6の幅方向Y位置がブラケット46(2つのガイド板462間)から外れない範囲であれば平行としてよい。したがって、この平行度合の許容範囲は、延在方向Xに最も離れたブラケット46間の距離Dと、ブラケット46の2つのガイド板462間の距離L(図3(b)参照)とを加味して決定される。また、この許容範囲は、各連結部材65における結合ガタも許容できるものである。
具体的に、ペンダントロープ6は、tanθ=L/D となる角度θの傾きまでは平行であるものとする。このような角度θとしては、4度以下が好ましく、2度以下がより好ましく、1度以下がさらに好ましい。これらの角度θの具体例として、中間ブームブロック431の数量に応じて角度θが変わる場合を考える。例えば、中間ブームブロック431が1つのときに、延在方向Xに最も離れたブラケット46間の距離Dが3000mmであり、2つのガイド板462間の距離Lが約160mmである場合、中間ブーム43が1つの中間ブームブロック431だけで構成されるときには、tanθ=160/3000である。したがって、θ≒3°である。また、中間ブーム43が2つの中間ブームブロック431で構成されるときには、tanθ=160/6000となり、θ≒1.5°である。また、中間ブーム43が3つの中間ブームブロック431で構成されるときには、tanθ=160/9000となり、θ≒1°である。
【0033】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、ブーム4を起伏可能に吊支するペンダントロープ6は、ブーム4を吊支しているときに、その長手方向がブーム起伏面Sに対して平行に保持されている。
そのため、ブーム4を倒伏状態から起立させて再び倒伏させた場合や、中間ブームブロック431を増減させてブーム4の長さを変えた場合であっても、ブーム4上でのペンダントロープ6の幅方向Y位置が変化しない。これにより、ペンダントロープ6がブラケット46のロープ支持部以外の部分やブーム4と接触することを回避できる。
したがって、ペンダントロープ6等の損傷を抑制しつつ、好適にブーム4を起伏させることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、スプレッダ67は、ペンダントロープ6がブーム4を吊支しているときに、一対の中間ロープ63間の距離と、一対の上部ロープ62間の距離とが、異なった状態を保持する。
これにより、ペンダントロープ6の幅方向Y位置を保持しつつ、ブーム4を起伏させることができる。したがって、ペンダントロープ6等の損傷を抑制しつつ、好適にブーム4を起伏させることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、スプレッダ67は、部分ロープ60対を幅方向Yに連結する2つの第1リンク板673及び2つの第2リンク板674を有し、これら2つの第1リンク板673及び2つの第2リンク板674は、幅方向Yの連結を解除可能に構成されている。
そのため、2つの第1リンク板673と2つの第2リンク板674のそれぞれを連結解除することで、フック36を昇降させる巻上ロープ35をスプレッダ67の間に通すことができる。これにより、巻上ロープ35を誤ってスプレッダ67の上側からワイヤリングしてしまった場合などであっても、スプレッダ67の間を通して巻上ロープ35を正しい位置に容易に修正することができる。
【0036】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、ペンダントロープ6が左右1本ずつで一対をなすものとした。しかし、本発明に係るペンダントロープは、左右の2本(又は3本以上)ずつで一対をなすものであってもよいし、左右に対をなしていないものであってもよい。
また、上部ブーム42は、中間ブーム43と幅方向Yの距離が略同じであってもよい。この場合、一対のペンダントロープ6は、その全長に亘って幅方向Yの距離が略同じになる。
また、
【0037】
また、本発明を適用可能なクレーンは、ペンダントロープによりブームを起伏させるものであれば、特に限定されない。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 クレーン
4 ブーム
40 単位ブーム
41 下部ブーム
42 上部ブーム
43 中間ブーム
431 中間ブームブロック
6 ペンダントロープ
60 部分ロープ
62 上部ロープ
63 中間ロープ
64 下部ロープ
46 ブラケット
462 ガイド板
65 連結部材
66 ピン結合金具
67 スプレッダ(間隔保持部材)
673 第1リンク板(基端側連結部)
674 第2リンク板(先端側連結部)
676 第3リンク板(長手方向連結部)
311 上部スプレッダ
S ブーム起伏面
X ブームの延在方向
Y ブームの幅方向
図1
図2
図3
図4
図5