(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 8/14 20060101AFI20250124BHJP
【FI】
H02P8/14
(21)【出願番号】P 2021089436
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 敦
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-117199(JP,A)
【文献】特開平04-217898(JP,A)
【文献】特開平11-178396(JP,A)
【文献】特開2015-091215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相ステッピングモータのロータの回転状態を監視するとともに、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角を設定し、設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する制御部と、
前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部と、を備え、
前記制御部は、前記ロータの回転状態として前記ロータの回転速度を監視し、前記ロータの回転速度が大きいほど前記通電角が小さくなるように、前記通電角を設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
2相ステッピングモータのロータの回転状態を監視するとともに、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角を設定し、設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する制御部と、
前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部と、を備え、
前記制御部は、前記ロータの回転状態として前記ロータの負荷を監視し、前記ロータの負荷が小さいほど前記通電角が小さくなるように、前記通電角を設定する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項
1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返す1-2相励磁モードと、前記2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁モードとを動作モードとして有し、
前記制御部は、前記ロータの回転速度が上限閾値以上になった場合に、前記通電角を90°に設定して前記1相励磁モードを選択し、前記ロータの回転速度が前記上限閾値より小さい下限閾値以下になった場合に、前記通電角を90°より大きい値に設定して前記1-2相励磁モードを選択する
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記通電角が90°に設定されている状態において、前記ロータの回転速度が前記下限閾値以下になった場合に、前記通電角を90°から前記90°より大きい値まで時間の経過とともに変化させる
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項
4に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記通電角が前記90°より大きい値に設定されている状態において、前記ロータの回転速度が前記上限閾値以上になった場合に、前記通電角を前記90°より大きい値から90°まで時間の経過とともに変化させる
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項
3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記通電角が90°に設定されている状態において、前記ロータの回転速度の低下に応じて、前記通電角を90°から前記90°より大きい値まで段階的に変化させる
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項
6に記載のモータ駆動制御装置において、
前記制御部は、前記通電角が前記90°より大きい値に設定されている状態において、前記ロータの回転速度が前記上限閾値以上になった場合に、前記ロータの回転速度の増加に応じて、前記通電角を前記90°より大きい値から90°まで段階的に変化させる
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記2相ステッピングモータと、を備える
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項9】
モータ駆動制御装置によって2相ステッピングモータの駆動を制御するためのモータ駆動制御方法であって、
前記モータ駆動制御装置が、前記2相ステッピングモータのロータの回転状態を監視する第1ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角を設定する第2ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記第2ステップにおいて設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する第3ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記制御信号に基づいて前記2相のコイルを駆動する第4ステップと、を含
み、
前記第2ステップは、前記モータ駆動制御装置が、前記ロータの回転状態として前記ロータの回転速度を監視し、前記ロータの回転速度が大きいほど前記通電角が小さくなるように、前記通電角を設定するステップを含む
モータ駆動制御方法。
【請求項10】
モータ駆動制御装置によって2相ステッピングモータの駆動を制御するためのモータ駆動制御方法であって、
前記モータ駆動制御装置が、前記2相ステッピングモータのロータの回転状態を監視する第1ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角を設定する第2ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記第2ステップにおいて設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する第3ステップと、
前記モータ駆動制御装置が、前記制御信号に基づいて前記2相のコイルを駆動する第4ステップと、を含み、
前記第2ステップは、前記モータ駆動制御装置が、前記ロータの回転状態として前記ロータの負荷を監視し、前記ロータの負荷が小さいほど前記通電角が小さくなるように、前記通電角を設定するステップを含む
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、モータユニット、およびモータ駆動制御方法に関し、例えば、ステッピングモータを駆動するためのモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータとして、2つの相を有する2相ステッピングモータが知られている。
2相ステッピングモータの駆動方式としては、1相励磁方式、2相励磁方式、1-2相励磁方式が知られている。
【0003】
1相励磁方式は、一つの相毎に励磁する相を切り替える方式である。1相励磁方式では、一つの相のコイルを一つの方向に連続して通電する電気角の大きさを表す通電角は90度であり、90度毎に2相ステッピングモータが転流する。
【0004】
2相励磁方式は、二つの相毎に励磁する相を切り替える方式である。2相励磁方式では、通電角は180度であり、90度毎に2相ステッピングモータが転流する。
【0005】
1-2相励磁方式は、1相励磁と2相励磁を交互に切り替えて励磁する相を切り替える方式である。1-2相励磁方式では、一般に、通電角は135度であり、45度毎に2相ステッピングモータが転流する。
【0006】
例えば、特許文献1には、2相ステッピングモータを1-2相励磁方式で駆動したときのステッピングモータの回転速度のばらつきを抑えるために、1相励磁期間中に、次の2相励磁期間と同じ相で2相励磁する期間を設けるモータ駆動制御技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、所定のアプリケーションに採用する2相ステッピングモータの駆動を制御する方法として、1相励磁よりも発生するトルクが大きい1-2相励磁方式により、負荷に応じて2相ステッピングモータの回転速度を変動させる制御方法を検討した。具体的には、この制御方法は、1相励磁の期間に非励磁のコイルの逆起電圧がゼロになる点(ゼロクロス点)を検出して2相ステッピングモータのロータの位置を特定し、特定したロータの位置に基づいて転流タイミングを決定することで、負荷に対して適切なトルクを発生させる閉ループの制御方法である。
【0009】
本発明者らが検討した上記制御方法によれば、2相ステッピングモータの負荷が重い場合にはロータの回転速度が下がり、負荷が軽い場合にはロータの回転速度が上がることにより、負荷に応じて回転速度を変化させることによってトルクを調整することができる。
【0010】
しかしながら、例えば、逆方向の負荷が加わる等して負荷が急激に軽くなった場合、ロータの回転速度が上がり過ぎて、モータ駆動制御装置を構成するマイクロコントローラによるデータ処理がロータの回転速度に追い付かず、2相ステッピングモータの駆動制御が不安定になり、2相ステッピングモータによる駆動対象物が振動したり、異音が発生したりする虞があることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、負荷変動に対する2相ステッピングモータの駆動制御の安定性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、2相ステッピングモータのロータの回転状態を監視するとともに、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角を設定し、設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する制御部と、前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るモータ駆動制御装置によれば、負荷変動に対する2相ステッピングモータの駆動制御の安定性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係るモータユニットの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る2相ステッピングモータ20の構成を模式的に示す図である。
【
図3】2相ステッピングモータの通電切替制御における通電角と1相励磁の期間および2相励磁の期間との関係を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る通電角θの設定方法の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る、1-2相励磁モードでの2相ステッピングモータの通電切替制御を説明するための図である。
【
図6】1-2相励磁モードでの2相励磁の目標通電時間の決定方法を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1に係る制御部の機能ブロック構成を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9A】実施の形態2に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9B】実施の形態2に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態3に係る通電角θの設定方法の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態3に係る通電角θの設定方法の別の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態3に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図13】ロータの負荷に応じて通電角θを設定する制御部の機能ブロック構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0016】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(10)は、2相ステッピングモータ(20)のロータ(22)の回転状態を監視するとともに、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイル(21,21A,21B)のうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角(θ)を設定し、設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号(Sd)を生成する制御部(11,11A)と、前記制御信号に基づいて、前記2相のコイルを駆動する駆動部(12)と、を備えることを特徴とする。
【0017】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記ロータの回転状態として前記ロータの回転速度を監視し、前記ロータの回転速度が大きいほど前記通電角が小さくなるように、前記通電角を設定してもよい。
【0018】
〔3〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部(11A)は、前記ロータの回転状態として前記ロータの負荷を監視し、前記ロータの負荷が小さいほど前記通電角が小さくなるように、前記通電角を設定してもよい。
【0019】
〔4〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁と前記2相のコイルのうち2相分の前記コイルを励磁する2相励磁とを交互に繰り返す1-2相励磁モードと、前記2相のコイルのうち1相分の前記コイルを励磁する1相励磁モードとを動作モードとして有し、前記制御部は、前記ロータの回転速度が上限閾値(Rtu)以上になった場合に、前記通電角を90°に設定して前記1相励磁モードを選択し、前記ロータの回転速度が前記上限閾値より小さい下限閾値(Rtd)以下になった場合に、前記通電角を90°より大きい値に設定して前記1-2相励磁モードを選択してもよい。
【0020】
〔5〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記通電角が90°に設定されている状態において、前記ロータの回転速度が前記下限閾値よ以下になった場合に、前記通電角を90°から前記90°より大きい値まで時間の経過とともに変化させてもよい。
【0021】
〔6〕上記〔5〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記通電角が前記90°より大きい値に設定されている状態において、前記ロータの回転速度が前記上限閾値以上になった場合に、前記通電角を前記90°より大きい値から90°まで時間の経過とともに変化させてもよい。
【0022】
〔7〕上記〔4〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記通電角が90°に設定されている状態において、前記ロータの回転速度の低下に応じて、前記通電角を90°から前記90°より大きい値まで段階的に変化させてもよい。
【0023】
〔8〕上記〔7〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記制御部は、前記通電角が前記90°より大きい値に設定されている状態において、前記ロータの回転速度が前記上限閾値以上になった場合に、前記ロータの回転速度の増加に応じて、前記通電角を前記90°より大きい値から90°まで段階的に変化させてもよい。
【0024】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータユニット(1)は、上記〔1〕乃至〔8〕の何れかに記載のモータ駆動制御装置(10)と、前記2相ステッピングモータ(20)と、を備えることを特徴とする。
【0025】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、モータ駆動制御装置(10)によって2相ステッピングモータ(20)の駆動を制御するためのモータ駆動制御方法である。本方法は、前記モータ駆動制御装置が、前記2相ステッピングモータのロータの回転状態を監視する第1ステップ(S4,S9)と、前記モータ駆動制御装置が、前記ロータの回転状態に基づいて、前記2相ステッピングモータにおける2相のコイルのうち一つの相の前記コイルを一方向に連続して通電する電気角の大きさを示す通電角(θ)を設定する第2ステップ(S8,S13)と、前記モータ駆動制御装置が、前記第2ステップにおいて設定した前記通電角に基づいて、前記2相ステッピングモータの駆動を制御するための制御信号を生成する第3ステップ(S8,S13)と、前記モータ駆動制御装置が、前記制御信号に基づいて前記2相のコイルを駆動する第4ステップ(S8,S13)と、を含むことを特徴とする。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0027】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るモータユニットの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、モータユニット1は、2相ステッピングモータ20と、2相ステッピングモータ20を駆動するモータ駆動制御装置10とを備えている。モータユニット1は、例えば、車載用途の空調ユニットとしてのHVAC(Heating Ventilation and Air-Conditioning)で使用可能なアクチュエータ等のモータを動力源として用いる各種装置に適用可能である。
【0028】
図2は、実施の形態1に係る2相ステッピングモータ20の構成を模式的に示す図である。
【0029】
2相ステッピングモータ20は、例えば、2相のコイルを有するステッピングモータである。
図2に示されるように、2相ステッピングモータ20は、A相のコイル21Aと、B相のコイル21Bと、ロータ22と、2相のステータヨーク(図示せず)とを有している。
【0030】
コイル21A,21Bは、それぞれ、ステータヨーク(不図示)を励磁するコイルである。コイル21A,21Bは、それぞれ、後述する駆動部12に接続されている。コイル21A,21Bには、それぞれ異なる位相の電流(コイル電流)が流れる。
【0031】
なお、本実施の形態において、コイル21A,21Bをそれぞれ区別しない場合には、単に、「コイル21」と表記する場合がある。
【0032】
ロータ22は、円周方向に沿って、S極22SとN極22Nとが交互に反転するように、多極着磁された永久磁石を備えている。なお、
図2では、ロータ22が2極である場合が一例として示されている。
【0033】
ステータヨークは、ロータ22の周囲に、ロータ22の外周部に近接して配置されている。ロータ22は、コイル21A,21Bのそれぞれに流れるコイル電流の位相が周期的に切り替えられることにより、回転する。ロータ22には、出力軸(図示せず)が接続されており、ロータ22の回転力により、出力軸が駆動される。
【0034】
モータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20を駆動させるための装置である。モータ駆動制御装置10は、例えば上位装置(図示せず)からの駆動指令に基づいて、2相ステッピングモータ20の各相のコイル21A,21Bの通電状態を制御することにより、2相ステッピングモータ20の回転および停止を制御する。
【0035】
図1に示すように、モータ駆動制御装置10は、制御部11と駆動部12を有している。
駆動部12は、2相ステッピングモータ20のコイル21A,21Bに通電して、2相ステッピングモータ20を駆動する機能部である。駆動部12は、モータ駆動部13を有している。
【0036】
モータ駆動部13は、制御部11によって生成された制御信号Sdに基づいて、2相ステッピングモータ20に駆動電力を供給する。
図2に示すように、モータ駆動部13は、コイル21Aの正極側の端子AP、コイル21Aの負極側の端子AN、コイル21Bの正極側の端子BP、およびコイル21Bの負極側の端子BNにそれぞれ接続されており、各端子AP,AN,BP,BNに電圧を印加することにより、コイル21A,21Bを通電させる。
【0037】
モータ駆動部13は、例えば、4つのスイッチング素子(例えばトランジスタ)から構成されたHブリッジ回路等によって構成されている。モータ駆動部13は、例えば、Hブリッジ回路を構成する各スイッチング素子を選択的にオン・オフさせることにより、コイル21A,21Bの通電を切り替える。
【0038】
図2に示すように、A相のコイル21Aに電流+Iaを流す場合には、モータ駆動部13は、例えば、コイル21Aの端子ANに対して端子APに“+Va”の電圧を印加する。一方、A相のコイル21Aに電流-Iaを流す場合には、モータ駆動部13は、コイル21Aの端子ANに対して端子APに“-Va”の電圧を印加する。B相のコイル21Bについても同様に、電流+Ibを流す場合には、モータ駆動部13は、例えば、コイル21Bの端子BNに対して端子BPに“+Vb”の電圧を印加し、B相のコイル21Bに電流-Ibを流す場合には、モータ駆動部13は、コイル21Bの端子BNに対して端子BPに“-Vb”の電圧を印加する。
【0039】
モータ駆動部13は、制御部11から与えられる、2相ステッピングモータ20の駆動を制御するための制御信号Sdに基づいて、上述したように各コイル21A,21Bの端子間に印加する電圧を切り替えることにより、各コイル21A,21Bの通電状態を切り替える。
【0040】
制御部11は、モータ駆動制御装置10の統括的な制御を行う機能部である。制御部11は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM等の各種記憶装置と、タイマ(カウンタ)、A/D変換回路、D/A変換回路、および入出力I/F回路等の周辺回路とがバスを介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)である。本実施の形態において、制御部11は、IC(集積回路)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
【0041】
制御部11は、2相ステッピングモータ20の通電切替制御を行うための動作モードとして、1―2相励磁方式で2相ステッピングモータ20を駆動する1-2相励磁モードと、1相励磁方式で2相ステッピングモータ20を駆動する1相励磁モードとを有している。
【0042】
1-2相励磁モードは、2相ステッピングモータ20における2相のコイル21のうち1相分のコイル21を励磁する1相励磁と2相のコイル21のうち2相分のコイル21を励磁する2相励磁とを交互に繰り返す動作モードである。1相励磁モードは、2相のコイル21のうち1相分のコイル21を励磁する動作モードである。
【0043】
制御部11は、設定された動作モードに従って、2相ステッピングモータ20の駆動を制御するための制御信号Sdを生成し、駆動部12を介して2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0044】
上述したように、1-2相励磁モードによる2相ステッピングモータ20の駆動時に負荷が軽くなったり、逆方向の負荷が加わったりした場合には、ロータ22の回転速度が速くなりすぎて、モータ駆動制御装置10の統括的な制御を行う制御部11としてのマイクロコントローラのデータ処理が間に合わず、モータ駆動制御が不安定になる虞がある。
そこで、制御部11は、2相ステッピングモータ20の通電切替制御を行うとき、負荷変動に伴うロータ22の回転速度の変化を制限するために、以下に示す処理を行う。
【0045】
先ず、2相ステッピングモータ20の通電切替制御における通電角と1相励磁および2相励磁のそれぞれの期間との関係について説明する。
【0046】
図3は、2相ステッピングモータの通電切替制御における通電角と1相励磁の期間および2相励磁の期間との関係を示す図である。
【0047】
図3において、横軸は電気角を表している。同図の上段には通電角θ=120°としたときのA相およびB相のコイルの励磁状態がそれぞれ示され、同図の中段には通電角θ=100°としたときのA相およびB相のコイルの励磁状態がそれぞれ示され同図の下段には通電角θ=90°としたときのA相およびB相のコイルの励磁状態がそれぞれ示されている。
【0048】
一般に、2相ステッピングモータの1-2相励磁モードによる通電切替制御において、通電角θが小さくなるほど、1相励磁の期間が長くなる一方で、2相励磁の期間が短くなる。例えば、
図3の上段に示すように、1-2相励磁モードにおいて、通電角θを120°に設定した場合、1相励磁の期間の電気角は60°、2相励磁の期間の電気角は30°となるが、
図3の中段に示すように、1-2相励磁モードにおいて、通電角θを100°に設定した場合、1相励磁の期間の電気角は80°、2相励磁の期間の電気角は10°となる。そして、
図3の下段に示すように、通電角θを90°まで小さくすると、2相励磁の期間が消滅し、1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替わる。
【0049】
このように、2相ステッピングモータの通電切替制御において、通電角θを変化させることにより、1相励磁の期間と2相励磁の期間を変化させることができる。
【0050】
一般に、2相ステッピングモータの通電切替制御において、2相励磁の期間が短くなるほど2相ステッピングモータのトルクが小さくなる。したがって、2相ステッピングモータ20の負荷が一定である場合において、通電角θを小さくするほど2相励磁の期間が短くなってトルクが小さくなり、その結果、ロータ22の回転速度が低下する。例えば、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータを駆動するとき、通電角θを100°に設定した場合のロータ22の回転速度は、通電角θを120°に設定した場合のロータ22の回転速度に比べて、低くなる。更に通電角を下げて90°にした場合、すなわち1相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動した場合、ロータ22の回転速度は更に低下する。
【0051】
そこで、制御部11は、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転状態に応じて通電角θを変化させることにより、2相ステッピングモータ20の負荷変動に伴うロータ22の回転速度の変化を制限する。
【0052】
具体的には、制御部11は、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転状態を監視し、ロータ22の回転状態に基づいて通電角θを設定する。より具体的には、制御部11は、ロータ22の回転状態としてロータ22の回転速度を監視し、ロータ22の回転速度が大きいほど通電角θが小さくなるように通電角θを設定することにより、動作モードを切り替える。
【0053】
図4は、実施の形態1に係る通電角θの設定方法の一例を示す図である。
図4において、横軸は通電角θ〔°〕を表し、縦軸は2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度〔rpm〕(一例)を表している。また、参照符号301は、回転速度が上昇するときの通電角θの変化を表し、参照符号302は、回転速度が低下するときの通電角θの変化を表す。
【0054】
例えば、
図4に示すように、動作モード(通電角θ)を切り替えるための回転速度の判定値として、上限閾値Rtuと、上限閾値Rtuより小さい下限閾値Rtdとが設定される。
【0055】
上限閾値Rtuは、動作モードを1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替えるための回転速度の閾値である。制御部11は、ロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上になった場合に、通電角θを90°に設定して1相励磁モードを選択する。
【0056】
下限閾値Rtdは、動作モードを1相励磁モードから1-2相励磁モードに切り替えるための回転速度の閾値である。制御部11は、ロータ22の回転速度が下限閾値Rtd以下になった場合に、通電角θを90°より大きい値(例えば、90°<θ≦135°)に設定して1-2相励磁モードを選択する。
なお、本実施の形態では、1-2相励磁モードにおいて通電角θを“120°”に設定する場合を一例として説明するが、通電角θの値はこれに限定されるものではなく、90°<θ≦135°の範囲で任意の値に設定することができる。
【0057】
例えば、
図4に示すように、制御部11は、通電角θ=120°の1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上になった場合、通電角θを90°に設定して1相励磁モードに切り替える。
【0058】
また、
図4に示すように、1相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が下限閾値Rtd以下になった場合、通電角θを120°に設定して1-2相励磁モードに切り替える。
【0059】
通電角θを切り替えるための回転速度の判定値は、一つであっても良いが、モータの駆動制御の安定性を向上させるために、上述したように上限閾値Rtuと下限閾値Rtdの2つの閾値を設けることが好ましい。例えば、上限閾値Rtuと下限閾値Rtdとの差は、少なくとも100rpm以上であることが好ましい。
これによれば、例えば、動作モードを切り替えた直後にロータ22の駆動速度が変動することにより、動作モードの切り替わりが何度も繰り返されることを防止することができる。
【0060】
次に、1-2相励磁モードにおける1相励磁および2相励磁の切り替え方法について説明する。
制御部11は、各動作モードにおいて、設定した通電角θと1相励磁中に非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロスの検出結果とに基づいて、コイル21の通電切替を行う。
【0061】
先ず、1-2相励磁モードにおけるコイル21の通電切替制御について説明する。
図5は、実施の形態1に係る、1-2相励磁モードでの2相ステッピングモータの通電切替制御を説明するための図である。
【0062】
同図において、参照符号401は、A相のコイル21Aの端子ANに対する端子APの電圧(以下、「A相電圧」とも称する。)を表し、参照符号402は、A相のコイル21Aの逆起電圧を表している。同図には、一例として、通電角θ=120°に設定して1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20の通電切替制御を行ったときのA相のコイルの電圧波形が示されている。なお、図中の符号AP,AN,BP,BNで示された期間は、それらの符号に該当する各端子(例えば、A相のコイル21Aの正極側の端子AP)に電圧が印加された状態であることを示している。
【0063】
図4に示すように、制御部11は、1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動するとき、1相励磁と2相励磁とを交互に繰り返すように、2相ステッピングモータ20の通電状態を切り替える。例えば、
図4において、180°から210°までの2相励磁の期間(電気角30°)では、A相電圧を“-Va”としてコイル21Aを負(-)に励磁させるとともに、B相電圧を“-Vb”としてコイル21Bを負に励磁させる。次の210°から270°までの2相励磁の期間(電気角60°)では、A相電圧を“0”としてコイル21Aを励磁させない一方で、引き続き、B相電圧を“-Vb”としてコイル21Bを負に励磁させる。次の270°から300°までの2相励磁の期間(電気角30°)では、A相電圧を“+Va”としてコイル21Aを正(+)に励磁させるとともに、引き続き、B相電圧を“-Vb”としてコイル21Bを負に励磁させる。
【0064】
ここで、2相ステッピングモータ20の1相励磁が行われる期間と2相励磁が行われる期間は、コイル21A,21Bに発生した逆起電圧と、設定された通電角θの値とに基づいて決定される。
【0065】
先ず、2相ステッピングモータ20の1相励磁の期間は、以下のように決定される。
2相ステッピングモータ20の1相励磁の期間は、一方のコイル21が励磁されているときに他方の非励磁のコイル21に発生した逆起電圧に基づいて、決定される。
【0066】
具体的には、制御部11は、2相励磁から1相励磁に切り替わった後、非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロス点の検出結果に応じて、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。
【0067】
例えば、
図5に示すように、1相励磁の電気角210°から270°までの期間において、非励磁のA相のコイル21Aには、正方向のスパイク状の電圧が発生した後、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転に同期した逆起電圧が発生する。その後、制御部11は、時刻taにおいてA相のコイル21Aの逆起電圧が0Vになる点(ゼロクロス点)を検出したとき、1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。
【0068】
2相ステッピングモータ20の2相励磁の期間は、以下のように決定される。
上述したように、2相ステッピングモータ20の1相励磁が行われる期間では、非励磁のコイル21に逆起電圧が発生する。一方、2相ステッピングモータ20の2相励磁が行われる期間(例えば、
図3の電気角180°~210°および270°~300°の期間等)では、A相のコイル21AとB相のコイル21Bがともに励磁されているので、いずれのコイル21A,21Bの逆起電圧も測定することはできない。そのため、2相励磁から1相励磁に切り替えるタイミングは、1相励磁から2相励磁への切り替えの時のように、コイル21の逆起電圧に基づいて決定することはできない。
【0069】
そこで、制御部11は、2相ステッピングモータ20が励磁されているときの単位角度当たりの経過時間と予め設定された通電角θとに基づいて、2相励磁を行う期間を決定する。
【0070】
具体的には、制御部11は、2相ステッピングモータ20が励磁されているときの単位角度当たりの経過時間と通電角θとに基づいて、2相励磁を行う期間、すなわち2相励磁の目標通電時間T2nを決定する。2相励磁の目標通電時間T2nは、例えば、以下に示す手法によって決定することができる。
【0071】
図6は、1-2相励磁モードでの2相励磁の目標通電時間の決定方法を説明するための図である。
【0072】
図6において、横軸は時間および電気角を表している。また、同図の上段にはA相の通電状態が示され、同図の下段にはB相の通電状態が示されている。
図6において、T1nはn(nは1以上の整数)番目の1相励磁の期間を表し、T1n-1は(n-1)番目の1相励磁の期間を表し、T2nはn番目の2相励磁の期間を表し、T2n-1は(n-1)番目の2相励磁の期間を表している。
【0073】
図6において、通電角をθとしたとき、1相励磁の期間T1n-1,T1nに対応する電気角の大きさは、それぞれ、(180°-θ)と表せる。また、2相励磁の期間T2n-1,T2nに対応する電気角の大きさは、それぞれ、(θ-90°)と表せる。
【0074】
図6に示すように、制御部11は、先ず、1相励磁の期間T1nを計測する。次に、制御部11は、1相励磁の期間T1nの計測値と当該1相励磁の期間T1nに対応する電気角の大きさ(180°-θ)とに基づいて単位角度当たりの経過時間を算出し、算出した経過時間と設定された通電角θに基づいて、次の2相励磁の目標通電時間T2nを算出する。
【0075】
例えば、制御部11は、下記式(1)に基づいて目標通電時間T2nを算出する。
【0076】
【0077】
上記式(1)において、“T1n/(180-θ)”は、2相ステッピングモータ20が1相励磁されているときの単位角度当たりの経過時間、すなわち、1相励磁の期間T1nにおいて電気角が単位角度(1°)だけ進むために必要な時間を表している。また、(θ-90)は、2相励磁の期間に対応する電気角である。
【0078】
例えば、通電角θが120°であるとき、式(1)は下記式(2)で書き表すことができる。
【0079】
【0080】
式(2)から理解されるように、目標通電時間(2相励磁の期間)T2nは、電気角30°分だけ通電させるために必要な時間である。
【0081】
なお、制御部11は、上記式(1)に基づいて2相励磁の目標通電時間T2nを算出する際に、当該2相励磁の直前に行われた1相励磁の期間を計測し、その期間を1相励磁の期間T1nの計測値として用いても良い。あるいは、当該2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間を夫々計測し、計測した複数の期間の平均値を、1相励磁の期間T1nの計測値として用いてもよい。
【0082】
ここで、複数の1相励磁の期間の平均値は、単純平均値であってもよいし、2相励磁の前に行われた複数の1相励磁の期間に重み付けをして平均値を算出し、その平均値に基づいて目標通電時間T2nを設定してもよい。例えば、目標通電時間T2nの算出目的の2相励磁に時間的に近いものほど比重が大きくなるように、各1相励磁の期間に重み付けをして平均値を算出してもよい。
【0083】
制御部11は、上述した手法に基づいて、2相励磁の目標通電時間T2nを決定する。そして、制御部11は、2相励磁の開始後、目標通電時間T2nが経過した場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。
【0084】
例えば、
図5に示すように、2相励磁が行われる電気角270°から300°までの期間では、A相のコイル21AとB相のコイル21Bはともに励磁されているので、逆起電圧の測定はできない。そこで、制御部11は、時刻ta(電気角270°)において2相励磁を開始してから、電気角30°分の目標通電時間T2nが経過した時刻tb(電気角300°)において、2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。
【0085】
以上説明したように、1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動する場合、制御部11は、1相励磁中の非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロス点の検出に応じて1相励磁から2相励磁に切り替え、2相励磁の開始後、2相ステッピングモータ20が励磁されているときの単位角度当たりの経過時間と通電角θとに基づいて設定した目標通電時間T2nが経過したら、2相励磁から1相励磁に切り替える。
【0086】
次に、1相励磁モードにおけるコイル21の通電切替制御について説明する。
通電角θが90°に設定された場合、上記式(1)によれば、2相励磁の目標通電時間T2nが0(ゼロ)になる。すなわち、動作モードが1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替わる。1相励磁モードにおいて、制御部11は、1-2相励磁モードと同様に、1相励磁中の非励磁のコイル21に発生した逆起電圧のゼロクロス点を検出する。制御部11は、逆起電圧のゼロクロス点を検出する度に、励磁する一つのコイル21と励磁方向とを切り替える(
図3の下段参照)。
【0087】
図7は、実施の形態1に係る制御部11の機能ブロック構成を示す図である。
【0088】
図7に示すように、制御部11は、上述した2相ステッピングモータ20のコイル21A,21Bの通電切替制御を実現するための機能部として、逆起電圧監視部111、ゼロクロス点検出部112、1相励磁期間計時部113、2相励磁期間算出部114、2相励磁期間計時部115、記憶部116、制御信号生成部117、回転速度計測部118、回転速度判定部119、および通電角切替部120を有している。
【0089】
これらの機能部は、例えば、上述した制御部11としてのプログラム処理装置(マイクロコントローラ)において、プロセッサが記憶装置に記憶されたプログラムに従って各種演算を実行し、A/D変換回路やタイマ等の周辺回路を制御することによって、実現される。
【0090】
逆起電圧監視部111は、各相のコイル21A,21Bに発生する逆起電圧を監視する機能部である。
【0091】
ゼロクロス点検出部112は、逆起電圧監視部111の監視結果に基づいて、2相ステッピングモータ20のコイル21A,21Bに発生する逆起電圧のゼロクロス点を検出するための機能部である。ゼロクロス点検出部112は、非励磁のコイル21の逆起電圧のゼロクロス点を検出した場合に、ゼロクロス点が検出されたことを示す検出信号Szを出力する。
【0092】
1相励磁期間計時部113は、2相ステッピングモータ20の1相励磁の期間T1nを計測するための機能部である。1相励磁期間計時部113は、例えば、上述したマイクロコントローラを構成するタイマ(カウンタ)等によって実現することができる。
【0093】
1相励磁期間計時部113は、2相ステッピングモータ20の励磁状態が2相励磁から1相励磁へ切り替わったことに応じて、計時を開始する。例えば、1相励磁期間計時部113は、後述する2相励磁期間計時部115から出力される2相励磁の期間の終了を通知する信号に応じて、1相励磁の期間T1nの計測を開始する。
【0094】
1相励磁期間計時部113は、逆起電圧のゼロクロス点が検出された場合に、計時を停止する。例えば、1相励磁期間計時部113は、ゼロクロス点検出部112から出力されるゼロクロス点が検出されたことを示す検出信号Szに応じて、1相励磁の期間T1nの計測を停止し、1相励磁の期間T1nの計測値を記憶部116に記憶するとともに、2相励磁期間算出部114に対して1相励磁の期間T1nの終了を示す通知信号を出力する。
【0095】
ここで、記憶部116には、1相励磁期間計時部113によって計測された、複数の1相励磁の期間の情報が記憶されてもよいし、最新の1相励磁の期間の情報のみが記憶されてもよい。
【0096】
記憶部116は、通電切替制御を行うために必要な各種データを記憶するための機能部である。記憶部116には、例えば、上述した1相励磁期間計時部113によって計測された1相励磁の期間T1nの計測値と、通電角θの値と、上記式(1)の情報と、後述する2相励磁の期間の目標通電時間T2nの値とが記憶部116に記憶される。
【0097】
2相励磁期間算出部114は、2相ステッピングモータ20の2相励磁の目標通電時間T2nを算出するための機能部である。2相励磁期間算出部114は、2相ステッピングモータ20の励磁状態が1相励磁から2相励磁へ切り替わったことに応じて、2相励磁の目標通電時間T2nを算出する。
【0098】
2相励磁期間算出部114は、1相励磁期間計時部113から出力された1相励磁の期間T1nの終了を示す信号に応じて、記憶部116から2相励磁の目標通電時間T2nを算出するために必要なデータを読み出し、目標通電時間T2nを算出する。2相励磁期間算出部114は、記憶部116から、通電角θの値と、1相励磁の期間の計測値(T1n)と、上記式(1)の情報とを読み出し、上記式(1)に基づく計算を行って目標通電時間T2nを算出して記憶部116に記憶する。
【0099】
目標通電時間T2nを算出するとき、2相励磁期間算出部114は、後述する通電角切替部120によって指定された動作モードに対応する通電角の値を記憶部116から読み出す。例えば、通電角切替部120から1-2相励磁モードを指示する動作モード信号が出力されている場合には、2相励磁期間算出部114は、通電角θの値として“120°”を記憶部116から読み出して、目標通電時間T2nを算出する。一方、通電角切替部120から1相励磁モードを指示する動作モード信号が出力されている場合には、2相励磁期間算出部114は、通電角θの値として“90°”を記憶部116から読み出して、目標通電時間T2nを算出する。
【0100】
2相励磁期間算出部114は、目標通電時間T2nの算出後、2相励磁期間計時部115に対して2相励磁の期間の計測を開始することを2相励磁期間計時部115に指示する。
【0101】
2相励磁期間計時部115は、2相ステッピングモータ20の2相励磁の期間を計測するための機能部である。2相励磁期間計時部115は、例えば、上述したマイクロコントローラを構成するタイマ(カウンタ)等によって実現することができる。
【0102】
2相励磁期間計時部115は、2相励磁期間算出部114からの計測開始の指示に応じて、2相励磁の期間の計測を開始する。例えば、2相励磁期間計時部115は、2相励磁期間算出部114からの計測開始を指示に応じて、記憶部116から目標通電時間T2nを読み出して自らのタイマにセットして計測を開始する。計測時間が目標通電時間T2nに到達した場合、2相励磁期間計時部115は、計測を停止するとともに、2相励磁の終了を示す信号を出力する。
【0103】
なお、2相励磁の目標通電時間T2nの決定手法として前述した第1の手法を用いる場合、1相励磁期間計時部113が備えるタイマと2相励磁期間計時部115が備えるタイマが同時に用いられることはない。したがって、この場合には、タイマを一つだけ設け、1相励磁期間計時部113と2相励磁期間計時部115とがその一つのタイマを共用するようにしてもよい。
【0104】
一方、2相励磁の目標通電時間T2nの決定手法として前述した第2の手法を用いる場合、1相励磁期間計時部113が備えるタイマが逆起電圧のゼロクロス点間の時間の計測を行い、2相励磁期間計時部115が備えるタイマが2相励磁の期間の計測を行う。そのため、1相励磁期間計時部113と2相励磁期間計時部115のそれぞれのタイマが同時に用いられる期間が発生する。したがって、この場合には、1相励磁期間計時部113と2相励磁期間計時部115が一つのタイマを共用することができないため、1相励磁期間計時部113と2相励磁期間計時部115は、それぞれタイマを備えている必要がある。
【0105】
制御信号生成部117は、2相ステッピングモータ20の駆動を制御するための制御信号Sdを生成する機能部である。制御信号生成部117は、例えば、上述したマイクロコントローラを構成するプロセッサによるプログラム処理と入出力I/F回路等の周辺回路によって実現することができる。
【0106】
制御信号生成部117は、制御信号Sdにより、2相ステッピングモータ20の1相励磁と2相励磁の切り替えを指示する。制御信号生成部117は、後述する通電角切替部120から出力される動作モード信号によって指定された動作モードに応じた制御信号Sdを生成し、出力する。
【0107】
例えば、動作モード信号によって1相励磁モードが指定されている場合、制御信号生成部117は、ゼロクロス点検出部112による逆起電圧のゼロクロス点が検出される度に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を切り替えるように制御信号Sdを生成する。一方、動作モード信号によって1-2相励磁モードが指定されている場合には、制御信号生成部117は、1相励磁の期間T1nにおいて、ゼロクロス点検出部112の検出信号Szに応じて2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。また、制御信号生成部117は、2相励磁中に、2相励磁期間計時部115による計測時間が目標通電時間T2nに到達した場合に、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。更に、制御信号生成部117は、2相励磁期間計時部115から出力された2相励磁の終了を示す信号に応じて、2相ステッピングモータ20の励磁状態を2相励磁から1相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成する。
【0108】
なお、制御信号生成部117は、ゼロクロス点検出部112の検出信号Szではなく、1相励磁期間計時部113から出力された1相励磁の終了を示す信号に応じて、2相ステッピングモータ20の励磁状態を1相励磁から2相励磁に切り替えるように制御信号Sdを生成してもよい。
【0109】
回転速度計測部118は、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度を計測する機能部である。回転速度計測部118は、例えば、2相励磁期間算出部114と同様に、1相励磁期間計時部113によって計測された1相励磁の期間T1nに基づいて、ロータ22の単位時間当たりの回転数を算出し、ロータ22の回転速度の計測値とする。
【0110】
なお、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度を計測するためのエンコーダ等の回転速度検出装置がモータユニット1に設けられている場合には、回転速度計測部118は、その回転速度検出装置からの検出信号に基づいて、ロータ22の回転速度を計測してもよい。
【0111】
回転速度判定部119は、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度と通電角θを切り替えるための回転速度の判定値とを比較する機能部である。
上述したように、本モータ駆動制御装置100において、通電角θを切り替えるための回転速度の判定値として、上限閾値Rtuと、上限閾値Rtuより小さい下限閾値Rtdとが設定される。上限閾値Rtuおよび下限閾値Rtdの情報は、例えば、記憶部116に記憶されている。
【0112】
回転速度判定部119は、回転速度計測部118による回転速度の計測値と上限閾値Rtuおよび下限閾値Rtdとを比較する機能部である。例えば、回転速度判定部119は、回転速度の計測値が上限閾値Rtu以上になった場合に、そのことを示す信号を通電角切替部120に与える。また、回転速度判定部119は、回転速度の計測値が下限閾値Rtd以下になった場合に、そのことを示す信号を通電角切替部120に与える。
【0113】
通電角切替部120は、通電角θの切り替えを指示する機能部である。通電角切替部120は、回転速度判定部119からの信号に応じて、通電角θ、すなわち動作モードを指示する動作モード信号を出力する。
【0114】
例えば、1-2相励磁モード(通電角θ=120°)で通電切替制御が行われている状態において、回転速度判定部119から回転速度の計測値が上限閾値Rtu以上になったことを示す信号が出力された場合に、通電角切替部120は、1相励磁モード(通電角θ=90°)を指示する動作モード信号を出力する。2相励磁期間算出部114は、1相励磁モードを指示する動作モード信号を受け取った場合に、通電角θを90°に設定して、2相励磁の目標通電時間T2nを“0”とする。また、制御信号生成部117は、1相励磁モードを指示する動作モード信号を受け取った場合に、1相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動するように制御信号Sdを生成し、駆動部12に与える。
【0115】
また、1相励磁モード(通電角θ=90°)で通電切替制御が行われている状態において、回転速度判定部119から回転速度の計測値が下限閾値Rtd以下になったことを示す動作モード信号が出力された場合に、通電角切替部120は、1-2相励磁モード(通電角θ=120°)を指示する動作モード信号を出力する。2相励磁期間算出部114は、1-2相励磁モードを指示する動作モード信号を受け取った場合に、通電角θを120°に設定して、2相励磁の目標通電時間T2nを算出する。また、制御信号生成部117は、1-2相励磁モードを指示する信号を受け取った場合に、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動するように制御信号Sdを生成し、駆動部12に与える。
【0116】
動作モードの切り替えは、回転速度の上限閾値Rtuおよび下限閾値Rtdに対する上昇および低下がそれぞれ複数回検出された場合に、実行されることが好ましい。例えば、通電角切替部120は、回転速度上昇判定カウンタ121および回転速度低下判定カウンタ122を有し、回転速度が上限閾値Rtu以上になった回数を回転速度上昇判定カウンタ121によってカウントするとともに、回転速度が下限閾値Rtd以下になった回数を回転速度低下判定カウンタ122によってカウントし、それらのカウンタのカウント値に基づいて動作モードを切り替えてもよい。
【0117】
具体的には、通電角切替部120は、回転速度判定部119から回転速度の計測値が上限閾値Rtu以上になったことを示す信号が出力された場合に、回転速度上昇判定カウンタ121をインクリメントし(+1)、回転速度の計測値が上限閾値Rtu未満になった場合に、回転速度上昇判定カウンタ121をリセットする。
【0118】
また、通電角切替部120は、回転速度判定部119から回転速度の計測値が下限閾値Rtd以下になったことを示す信号が出力された場合に、回転速度上昇判定カウンタ121をインクリメントし(+1)、回転速度の計測値が下限閾値Rtdより大きくなった場合に、回転速度上昇判定カウンタ121をリセットする。
【0119】
通電角切替部120は、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値が第1閾値(例えば、2以上の整数)以上となった場合に、1相励磁モード(通電角θ=90°)を指示する動作モード信号を出力する。また、通電角切替部120は、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値が第2閾値(例えば、2以上の整数)以上となった場合に、1-2相励磁モード(通電角θ=120°)を指示する動作モード信号を出力する。
なお、第1閾値および第2閾値は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第1閾値および第2閾値の情報は、例えば、記憶部116に予め記憶されている。
【0120】
このように、回転速度上昇判定カウンタ121および回転速度低下判定カウンタ122を用いることにより、ロータ22の回転速度の瞬間的な変化に応じた動作モードの切り替わりを防止することができる。
本実施の形態では、一例として、通電角切替部120が回転速度上昇判定カウンタ121および回転速度低下判定カウンタ122を有しているものとして説明する。
【0121】
図8は、実施の形態1に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
【0122】
例えば、電源投入後、外部の上位装置から2相ステッピングモータ20の駆動指令が入力された場合に、モータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20の駆動制御(励磁モード移行制御)を開始する(ステップS1)。
【0123】
先ず、モータ駆動制御装置10は、その時点で設定されている通電角θに対応する回転速度の判定値を設定する(ステップS2)。ここでは、一例として、電源投入後、最初に1相励磁モードが設定され、通電角θとして90°が設定されているものとする。この場合、ステップS2において、モータ駆動制御装置10は、通電角θを90°から120°に切り替える(動作モードを1相励磁モードから1-2相励磁モードに切り替える)ための回転速度の判定値として、下限閾値Rtdを設定する。
【0124】
次に、モータ駆動制御装置10は、その時点で設定されている動作モードが1相励磁モードであるか否かを判定する(ステップS3)。ここでは、上述したように、次に移行すべき励磁状態がA相の1相励磁であるので(ステップS3:YES)、通電角切替部120が、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が下限閾値Rtd以下であるか否かを判定する(ステップS4)。回転速度が下限閾値Rtd以下でない場合(ステップS4:NO)、通電角切替部120が、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qをリセットする(ステップS5)。
【0125】
一方、回転速度が下限閾値Rtd以下である場合(ステップS4:YES)、通電角切替部120が、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qをインクリメントする(ステップS6)。次に、通電角切替部120は、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上である否かを判定する(ステップS7)。
【0126】
回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上でない場合(ステップS7:NO)、モータ駆動制御装置10は、ステップS2に戻る。
【0127】
回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上である場合(ステップS7:YES)、モータ駆動制御装置10は、動作モードを1相励磁モードから1-2相励磁モードに切り替える(ステップS8)。具体的には、上述したように、通電角切替部120が1-2相励磁モードを指示する動作モード信号を出力し、その動作モード信号を受け取った2相励磁期間算出部114が、通電角θを120°に設定して、2相励磁の目標通電時間T2nを算出するとともに、制御信号生成部117が、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動するように、制御信号Sdを生成して駆動部12に与える。
【0128】
その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS2に戻り、その時点で設定されている通電角θに対応する回転速度の判定値を設定する。ここでは、一つ前のステップS8において、動作モードが1-2相励磁モード(通電角θ=120°)に設定されているため、モータ駆動制御装置10は、通電角θを120°から90°に切り替える(動作モードを1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替える)ための回転速度の判定値として、上限閾値Rtuを設定する。
【0129】
次に、モータ駆動制御装置10は、その時点で設定されている動作モードを判定する(ステップS3)。ここでは、二つ前のステップS8において、動作モードが1-2相励磁モードに設定されているので(ステップS3:NO)、通電角切替部120が、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0130】
回転速度が上限閾値Rtu以上でない場合(ステップS9:NO)、通電角切替部120が、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pをリセットする(ステップS10)。
【0131】
一方、回転速度が上限閾値Rtu以上である場合(ステップS9:YES)、通電角切替部120が、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pをインクリメントする(ステップS11)。
【0132】
次に、通電角切替部120は、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上である否かを判定する(ステップS12)。回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上でない場合(ステップS12:NO)、モータ駆動制御装置10は、ステップS2に戻り、上述したステップS2~S10の処理を再度実行する。
【0133】
回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上である場合(ステップS12:YES)、モータ駆動制御装置10は、動作モードを1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替える(ステップS13)。具体的には、上述したように、通電角切替部120が1相励磁モードを指示する動作モード信号を出力し、その動作モード信号を受け取った2相励磁期間算出部114が、通電角θを90°に設定して、2相励磁の目標通電時間T2nを0(ゼロ)に設定するとともに、制御信号生成部117が、1相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動するように、制御信号Sdを生成して駆動部12に与える。その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS2に戻り、上述したステップS2~S13までの処理を繰り返す。
【0134】
以上、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度を監視し、ロータ22の回転速度が大きいほど通電角θが小さくなるように通電角θを設定して、2相ステッピングモータ20のコイル21の通電切替制御を行う。
【0135】
これによれば、2相ステッピングモータ20の負荷が軽くなり、ロータ22の回転速度が上昇した場合に、通電角θを下げて2相ステッピングモータ20のトルクを低下させることができるので、ロータ22の回転速度の上昇を抑えることが可能となる。これにより、モータ駆動制御装置10(制御部11)を構成するマイクロコントローラによるデータ処理がロータ22の回転速度に追い付かずに2相ステッピングモータ20の駆動制御が不安定になることを防止することが可能となる。すなわち、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10によれば、負荷変動に対する2相ステッピングモータ20の駆動制御の安定性を高めることが可能となる。
【0136】
また、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置10において、制御部11は、動作モードとして1相励磁モードと1-2相励磁モードとを有し、ロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上になった場合に、通電角を90°に設定して1相励磁モードを選択し、ロータ22の回転速度が下限閾値Rtd(<Rtu)以下となった場合に、通電角θを90°より大きい値(例えば、120°)に設定して1-2相励磁モードを選択する。
【0137】
これによれば、ロータ22の回転速度に応じた通電角θの切り替え励磁方式の切り替えとして容易に実現することができる。また、通電角θを切り替えるための回転速度の判定値として上限閾値Rtuと下限閾値Rtdの2つの閾値を設けているので、上述したように、動作モードを切り替えた直後にロータ22の駆動速度が変化することにより、動作モードの切り替わりが何度も繰り返されることを防止することができる。
【0138】
≪実施の形態2≫
実施の形態1では、通電角の切り替え手法として、1相励磁モード(θ=90°)と1-2相励磁モード(θ=120°)を速やかに切り替える場合を例示したが、実施の形態2に係る通電角の切り替え手法は、通電角θを時間の経過とともに緩やかに変更するものである。
【0139】
具体的には、制御部11は、通電角が90°に設定されている状態(すなわち、1相励磁モードである状態)において、ロータ22の回転速度が下限閾値Rtd以下になった場合に、通電角θを90°から90°より大きい値まで時間の経過とともに変化させる。
【0140】
例えば、
図4において、通電角が90°に設定されている1相励磁モードにおいて、ロータ22の回転速度が下限閾値Rtd以下になった場合、通電角切替部120は、通電角θを一定時間毎に単位角度φずつ、90°から120°まで増加させる。これにより、動作モードが1相励磁モードから1-2励磁モードに切り替わった後に、1-2相励磁モードにおいて通電角θが連続的に変化するので、ロータ22の回転速度の上昇を緩やかにすることができる。
【0141】
また、制御部11は、通電角θが90°より大きい値(例えば、120°)に設定されている状態(すなわち、1-2相励磁モードである状態)において、ロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上になった場合に、通電角θを90°より大きい値から90°まで時間の経過とともに変化させる。
【0142】
例えば、
図4において、通電角が120°に設定されている1-2相励磁モードにおいて、ロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上になった場合、通電角切替部120は、通電角θを一定時間毎に単位角度φずつ、120°から90°まで低下させる。これにより、1-2相励磁モードにて通電角θが120°から90°になるまで連続的に変化した後、導通角θが90°になった時点で動作モードが1励磁モードに切り替わるので、ロータ22の回転速度の低下を緩やかにすることができる。
【0143】
図9は、実施の形態2に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
【0144】
図9において、例えば、電源投入後、外部の上位装置から2相ステッピングモータ20の駆動指令が入力された場合に、モータ駆動制御装置10は、2相ステッピングモータ20の駆動制御(励磁モード移行制御)を開始する(ステップS21)。
【0145】
次に、モータ駆動制御装置10は、回転速度の判定値を設定する(ステップS22)。
例えば、モータ駆動制御装置10は、通電角θを120°から90°に切り替える(動作モードを1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替える)ための回転速度の判定値として、上限閾値Rtuを設定するとともに、通電角θを90°から120°に切り替える(動作モードを1相励磁モードから1-2相励磁モードに切り替える)ための回転速度の判定値として、下限閾値Rtdを設定する。
【0146】
次に、モータ駆動制御装置10は、通電角θが一定時間毎に増加または低下させる処理が実行されているか否かを判定する(ステップS23)。例えば、モータ駆動制御装置10の起動直後においては、通電角θは固定されているので(ステップS23:NO)、この場合には、通電角切替部120が、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0147】
回転速度が上限閾値Rtu以上でない場合(ステップS24:NO)、通電角切替部120が、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pをリセットする(ステップS5)。次に、通電角切替部120が、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が下限閾値Rtd以下であるか否かを判定する(ステップS26)。
【0148】
回転速度が下限閾値Rtd以下でない場合(ステップS26:NO)、通電角切替部120が、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qをリセットする(ステップS27)。その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS22に戻る。
【0149】
一方、回転速度が下限閾値Rtd以下である場合(ステップS26:YES)、通電角切替部120が、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qをインクリメントする(ステップS28)。次に、通電角切替部120は、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上である否かを判定する(ステップS29)。
【0150】
回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上でない場合(ステップS29:NO)、モータ駆動制御装置10は、ステップS22に戻る。
【0151】
回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上である場合(ステップS29:YES)、モータ駆動制御装置10は、動作モードを1相励磁モードから1-2相励磁モードに切り替えるために、通電角θを増加させることを決定する(ステップS30)。そして、通電角切替部120は、通電角θを単位角度φだけ増加させる(ステップS31)。その後、ステップS22に戻る。
【0152】
ステップS24において、回転速度が上限閾値Rtu以上である場合(ステップS24:YES)、通電角切替部120が、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pをインクリメントする(ステップS32)。
【0153】
次に、通電角切替部120は、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上である否かを判定する(ステップS33)。回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上でない場合(ステップS33:NO)、モータ駆動制御装置10は、ステップS22に戻る。回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上である場合(ステップS33:YES)、モータ駆動制御装置10は、動作モードを1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替えるために、通電角θを低下させることを決定する(ステップS34)。そして、通電角切替部120は、通電角θを単位角度φだけ低下させる(ステップS35)。その後、ステップS22に戻る。
【0154】
ステップS23において、通電角θが一定時間毎に増加する処理が実行されている場合(ステップS23:YES1)には、通電角切替部120は、更に、通電角θを単位角度φだけ増加させる(ステップS36)。
【0155】
次に、通電角切替部120は、通電角θが上限値(例えば、120°)に到達したか否かを判定する(ステップS37)。通電角θが上限値に到達していない場合(ステップS37:NO)には、再びステップS22に戻り、通電角θが上限値に到達するまで、上述の処理を繰り返し実行する。通電角θが上限値に到達した場合(ステップS37:YES)には、通電角θを一定時間毎に増加させる処理を停止する(ステップS38)。その後、再びステップS22に戻る。
【0156】
ステップS23において、通電角θが一定時間毎に低下する処理が実行されている場合(ステップS23:YES2)には、通電角切替部120は、更に、通電角θを単位角度φだけ低下させる(ステップS39)。
【0157】
次に、通電角切替部120は、通電角θが下限値(90°)に到達したか否かを判定する(ステップS40)。通電角θが下限値に到達していない場合(ステップS40:NO)には、再びステップS22に戻り、通電角θが下限値に到達するまで、上述の処理を繰り返し実行する。通電角θが下限値(90°)に到達した場合(ステップS40:YES)には、通電角θを一定時間毎に低下させる処理を停止する(ステップS41)。その後、再びステップS22に戻る。
【0158】
以上の処理手順により、通電角θを一定時間毎に連続して変化させることができる。
【0159】
以上、実施の形態2に係る通電角θの切り替え手法によれば、通電角θを連続的に変化させるのでロータ22の回転速度を緩やかに変化させることができ、2相ステッピングモータ20のより安定した駆動を実現することが可能となる。
【0160】
≪実施の形態3≫
実施の形態2では、通電角の切り替え手法として通電角θを一定時間毎に連続的に変化させる場合を例示したが、実施の形態3に係る通電角の切り替え手法は、通電角を段階的に変更するものである。
【0161】
図10は、実施の形態3に係る通電角θの設定方法の一例を示す図である。
図10において、横軸は通電角θ〔°〕を表し、縦軸は2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度〔rpm〕を表している。また、参照符号501は、回転速度が上昇するときの上限閾値Rtuの変化を表し、参照符号502は、回転速度が低下するときの下限閾値Rtdの変化を表す。本例では、回転速度が低下して通電角θが120°に変化するまで、設定されている通電角θ毎に下限閾値Rtdが設定されている。
【0162】
実施の形態3において、制御部11は、通電角が90°に設定されている状態において、ロータ22の回転速度の低下に応じて通電角を90°から90°より大きい値まで段階的に変化させる。
【0163】
例えば、
図10に示すように、動作モード(通電角θ)を切り替えるための回転速度の判定値として、上限閾値Rtuと、複数の下限閾値Rtd1~Rtd3とが設定される。
【0164】
下限閾値Rtd1は、動作モードを1相励磁モードから1-2相励磁モードに切り替えるための回転速度の閾値であり、下限閾値Rtd2,Rtd3は、1-2相励磁モードにおいて、通電角θを段階的に切り替える(増やす)ための回転速度の閾値である。例えば、
図10に示すように、通電角θ=90°の1相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が下限閾値Rtd1以下になった場合、制御部11(通電角切替部120)は、通電角θを90°から100°に設定し、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0165】
次に、
図10に示すように、通電角θ=100°の1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が下限閾値Rtd2(<Rtd1)以下になった場合、制御部11(通電角切替部120)は、通電角θを100°から110°に設定し、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0166】
更に、
図10に示すように、通電角θ=110°の1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が下限閾値Rtd3(<Rtd2)以下になった場合、制御部11(通電角切替部120)は、通電角θを110°から120°に設定し、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0167】
なお、1-2相励磁モードにおいて、通電角θが100°,110°,120°のいずれの値であっても、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu以上になった場合には、制御部11(通電角切替部120)は、速やかに通電角θを90°に設定する。
【0168】
これによれば、動作モードが1相励磁モードから1-2励磁モードに切り替わった後に、1-2相励磁モードにおいて通電角θが段階的に変化するので、ロータ22の回転速度が低下する速度を緩やかにすることができる。
【0169】
図11は、実施の形態3に係る通電角θの設定方法の別の一例を示す図である。
図11において、横軸は通電角θ〔°〕を表し、縦軸は2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度〔rpm〕を表している。また、参照符号601は、回転速度が上昇するときの上限閾値Rtuの変化を表し、参照符号602は、回転速度が低下するときの下限閾値Rtdの変化を表す。本例では、回転速度が低下して導通角θが90°から120°に変化するまでの導通角θ毎に下限閾値Rtdが設定されているとともに、回転角度が上昇して導通角θが120°から90°に変化するまでの上限閾値Rtuが設定されている。
【0170】
図11に示すように、制御部11は、通電角が90°に設定されている状態において、ロータ22の回転速度の低下に応じて通電角を90°から90°より大きい値(例えば、120°)まで段階的に変化させるだけでなく、通電角が90°より大きい値に設定されている状態において、ロータ22の回転速度の低下に応じて通電角を90°より大きい値から90°まで段階的に変化させてもよい。
【0171】
実施の形態3において、通電角θを切り替えるための回転速度の判定値として、例えば、
図11に示すように、複数の上限閾値Rtu1~Rtu3と、複数の下限閾値Rtd1~Rtd3とが設定される。
【0172】
上限閾値Rtu1,Rtu2は、1-2相励磁モードにおいて、通電角θを段階的に切り替える(減らす)ための回転速度の閾値であり、上限閾値Rtu3は、動作モードを1-2相励磁モードから1相励磁モードに切り替えるための回転速度の閾値である。
例えば、
図11に示すように、通電角θ=120°の1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu1以上になった場合、制御部11(通電角切替部120)は、通電角θを120°から110°に設定し、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0173】
次に、
図11に示すように、通電角θ=110°の1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu2(>Rtu1)以上になった場合、制御部11(通電角切替部120)は、通電角θを110°から100°に設定し、1-2相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0174】
更に、
図11に示すように、通電角θ=100°の1-2相励磁モードで2相ステッピングモータ20を駆動している状態において、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が上限閾値Rtu3(>Rtu2)以上になった場合、制御部11(通電角切替部120)は、通電角θを100°から90°に設定し、1相励磁モードによって2相ステッピングモータ20を駆動する。
【0175】
1相励磁モードから1-2励磁モードに切り替わる場合には、上述した
図10と同様に、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度の低下に応じて、通電角θが90°、100°、110°、120°の順に切り替わる。
【0176】
なお、上限閾値Rtu1~Rtu3および下限閾値Rtd1~Rtd3は、設定されている通電角θの値に応じて、適切な値に設定される。
【0177】
例えば、通電角θが90°に設定されている場合には、下限閾値Rtd3が設定され、通電角θが100°に設定されている場合には、上限閾値Rtu3および下限閾値Rtd2が設定され、通電角θが110°に設定されている場合には、上限閾値Rtu2および下限閾値Rtd3が設定され、通電角θが120°に設定されている場合には、上限閾値Rtu1が設定される。
【0178】
これによれば、動作モードが1相励磁モードから1-2励磁モードに切り替わった後に、1-2相励磁モードにおいて通電角θが段階的に変化するので、ロータ22の回転速度が低下する速度を緩やかにすることができるとともに、動作モードが1-2相励磁モードから1励磁モードに切り替わる場合において通電角θが段階的に変化するので、ロータ22の回転速度が上昇する速度を緩やかにすることができる。
【0179】
図12は、実施の形態3に係る通電角θの設定方法の流れを示すフローチャートである。
同図には、
図11に示した通電角θの設定方法を実現するための具体的な処理の流れが示されている。
【0180】
図12において、先ず、モータ駆動制御装置10は、例えば、電源投入後、外部の上位装置から2相ステッピングモータ20の駆動指令が入力された場合に、2相ステッピングモータ20の駆動制御(励磁モード移行制御)を開始する(ステップS51)。
【0181】
次に、モータ駆動制御装置10は、その時点での通電角θに対応する回転速度の判定値として、上限閾値Rtu及び下限閾値Rtdを設定する(ステップS52)。例えば、通電角θが110°に設定されている場合、モータ駆動制御装置10は、回転速度の判定値として、上限閾値Rtu2と下限閾値Rtd3を設定する。
【0182】
次に、通電角切替部120が、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が直前のステップS52において設定した上限閾値Rtu以上であるか否かを判定する(ステップS53)。回転速度が上限閾値Rtu以上でない場合(ステップS53:NO)、通電角切替部120が、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pをリセットする(ステップS54)。
【0183】
次に、通電角切替部120が、2相ステッピングモータ20のロータ22の回転速度が直前のステップS52において設定した下限閾値Rtd以下であるか否かを判定する(ステップS55)。回転速度が下限閾値Rtd以下でない場合(ステップS55:NO)、通電角切替部120が、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qをリセットする(ステップS56)。その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS52に戻る。
【0184】
一方、回転速度が下限閾値Rtd以下である場合(ステップS55:YES)、通電角切替部120が、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qをインクリメントする(ステップS57)。次に、通電角切替部120は、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上、且つ通電角θが上限値(例えば、120°)未満であるか否かを判定する(ステップS58)。
【0185】
回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上、且つ通電角θが上限値未満でない場合(ステップS58:NO)、モータ駆動制御装置10は、ステップS52に戻る。
【0186】
一方、回転速度低下判定カウンタ122のカウント値qが第2閾値以上、且つ通電角θが上限値未満である場合(ステップS58:YES)、通電角切替部120は、通電角θを上限値(120°)に向かって一段階増加させる(ステップS59)。例えば、通電角θが100°である場合、通電角切替部120は、通電角θを110°に設定する。その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS52に戻り、新たに設定された通電角θに対応する上限閾値Rtuおよび下限閾値Rtdを設定し、ステップS53以降の処理を実行する。
【0187】
ステップS53において、回転速度が上限閾値Rtu以上ある場合(ステップS53:YES)、通電角切替部120が、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pをインクリメントする(ステップS60)。次に、通電角切替部120は、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上、且つ通電角θが下限値(90°)を超えているか否かを判定する(ステップS61)。
【0188】
回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上、且つ通電角θが下限値を超えていない、すなわちθ=90°の場合には(ステップS61:NO)、モータ駆動制御装置10は、ステップS52に戻る。
【0189】
一方、回転速度上昇判定カウンタ121のカウント値pが第1閾値以上、且つ通電角θが下限値を超えている場合(ステップS61:YES)、通電角切替部120は、通電角θを下限値(90°)に向かって一段階低下させる(ステップS62)。例えば、通電角θが100°である場合、通電角切替部120は、通電角θを90°に設定する。
【0190】
その後、モータ駆動制御装置10は、ステップS52に戻り、新たに設定された通電角θに対応する上限閾値Rtuおよび下限閾値Rtdを設定し、ステップS53以降の処理を繰り返し実行する。
【0191】
以上、実施の形態3に係る通電角の切り替え手法によれば、通電角θを段階的に変化させるので、ロータ22の回転速度を緩やかに変化させることができ、2相ステッピングモータ20のより安定した駆動の実現することが可能となる。
【0192】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0193】
例えば、上記実施の形態における2相ステッピングモータ20は、ロータ22の極数が2極である場合を例示したが、ロータ22の極数は特に限定されない。
【0194】
上記実施の形態に係るモータユニット1は、
図1に開示した構成に限定されない。例えば、駆動部12は、上述したモータ駆動部13の他に、コイル21A,21Bのコイル電流を検出するための電流検出回路等の他の回路を有していてもよい。
【0195】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【0196】
また、上記実施の形態では、制御部11は、ロータ22の回転状態としてロータ22の回転速度を監視し、ロータ22の回転速度が大きいほど通電角θが小さくなるように通電角θを設定する場合について説明したが、ロータ22の回転状態は回転速度に限られない。例えば、制御部11は、ロータ22の回転状態としてロータ22の負荷を監視し、ロータ22の負荷が小さいほど通電角θが小さくなるように通電角θを設定してもよい。以下、ロータ22の負荷を監視し、負荷に応じて通電角θを設定する場合の具体例について説明する。
【0197】
図13は、ロータ22の負荷に応じて通電角θを設定する制御部11Aの機能ブロック構成を示す図である。
【0198】
図13に示すように、制御部11Aは、
図7に示した制御部11における回転速度計測部118、回転速度判定部119、回転速度上昇判定カウンタ121、および回転速度低下判定カウンタ122に代えて(または加えて)、負荷計測部118A、負荷判定部119A、負荷上昇判定カウンタ121A、および負荷低下判定カウンタ122Aを有している。
【0199】
負荷計測部118Aは、2相ステッピングモータ20のロータ22の負荷を計測する機能部である。負荷計測部118Aは、例えば、2相ステッピングモータ20のA相のコイル21AおよびB相のコイル21Bに流れる電流の大きさを計測し、その電流値をロータ22の負荷の計測値とする。
【0200】
負荷判定部119Aは、2相ステッピングモータ20のロータ22の負荷の計測値と、通電角θを切り替えるための負荷の判定値とを比較する機能部である。負荷判定部119Aは、負荷計測部118Aによる負荷の計測値と、負荷の上限閾値Ltuおよび下限閾値Ltdとを比較する機能部である。例えば、負荷判定部119Aは、負荷の計測値が上限閾値Ltu以上になった場合に、そのことを示す信号を通電角切替部120Aに与える。また、負荷判定部119Aは、負荷の計測値が下限閾値Ltd以下になった場合に、そのことを示す信号を通電角切替部120Aに与える。
【0201】
通電角切替部120Aは、負荷判定部119Aからの信号に応じて、通電角θ、すなわち動作モードを指示する動作モード信号を出力する。
【0202】
例えば、1-2相励磁モード(例えば、通電角θ=120°)で通電切替制御が行われている状態において、負荷判定部119Aから負荷の計測値が下限閾値Ltu以下になったことを示す信号が出力された場合に、通電角切替部120は、1相励磁モード(通電角θ=90°)を指示する動作モード信号を2相励磁期間算出部114に出力する。
【0203】
また、1相励磁モード(通電角θ=90°)で通電切替制御が行われている状態において、負荷判定部119Aから負荷の計測値が上限閾値Ltd以上になったことを示す動作モード信号が出力された場合に、通電角切替部120Aは、1-2相励磁モード(例えば、通電角θ=120°)を指示する動作モード信号を2相励磁期間算出部114に出力する。
【0204】
制御部11Aによれば、回転速度に応じて通電角θを設定する場合と同様に、負荷変動に対する2相ステッピングモータの駆動制御の安定性を高めることが可能となる。
【0205】
制御部11Aによる動作モードの切り替えは、回転速度を監視する場合と同様に、上限閾値Ltuおよび下限閾値Ltdに対する負荷の上昇および低下がそれぞれ複数回検出された場合に、実行されることが好ましい。例えば、
図13に示すように、通電角切替部120Aは、負荷上昇判定カウンタ121Aおよび負荷低下判定カウンタ122Aを有し、ロータ22の負荷が上限閾値Ltu以上になった回数を負荷上昇判定カウンタ121Aによってカウントするとともに、ロータ22の負荷が下限閾値Ltd以下になった回数を負荷低下判定カウンタ122Aによってカウントし、それらのカウンタのカウント値に基づいて動作モードを切り替えてもよい。
【0206】
具体的には、通電角切替部120Aは、負荷判定部119Aから負荷の計測値が上限閾値Ltu以上になったことを示す信号が出力された場合に、負荷上昇判定カウンタ121Aをインクリメントし(+1)、負荷の計測値が上限閾値Ltu未満になった場合に、負荷上昇判定カウンタ121Aをリセットする。
【0207】
また、通電角切替部120Aは、負荷判定部119Aから負荷の計測値が下限閾値Ltd以下になったことを示す信号が出力された場合に、負荷低下判定カウンタ122Aをインクリメントし(+1)、負荷の計測値が下限閾値Ltdより大きくなった場合に、負荷低下判定カウンタ122Aをリセットする。
【0208】
通電角切替部120Aは、負荷上昇判定カウンタ121Aのカウント値が第1閾値(例えば、2以上の整数)以上となった場合に、1-2相励磁モード(例えば、通電角θ=120°)を指示する動作モード信号を出力する。また、通電角切替部120Aは、負荷低下判定カウンタ122Aのカウント値が第2閾値(例えば、2以上の整数)以上となった場合に、1相励磁モード(通電角θ=90°)を指示する動作モード信号を出力する。
なお、第1閾値および第2閾値は同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。第1閾値および第2閾値の情報は、例えば、記憶部116に予め記憶されている。
【0209】
このように、負荷上昇判定カウンタ121Aおよび負荷低下判定カウンタ122Aを用いることにより、ロータ22の負荷の瞬間的な変動に応じた動作モードの切り替わりを防止することができる。
【符号の説明】
【0210】
1…モータユニット、10…モータ駆動制御装置、11,11A…制御部、12…駆動部、13…モータ駆動部、20…2相ステッピングモータ、21…コイル、21A…A相のコイル、21B…B相のコイル、22…ロータ、22N…N極、22S…S極、111…逆起電圧監視部、112…ゼロクロス点検出部、113…1相励磁期間計時部、114…2相励磁期間算出部、115…2相励磁期間計時部、116…記憶部、117…制御信号生成部、118…回転速度計測部、118A…負荷計測部、119…回転速度判定部、119A…負荷判定部、120,120A…通電角切替部、121…回転速度上昇判定カウンタ、121A…負荷上昇判定カウンタ、122…回転速度低下判定カウンタ、122A…負荷低下判定カウンタ、Sd…制御信号、Sz…検出信号、T1n…1相励磁の期間、T2n…目標通電時間(2相励磁の期間)、AP…A相のコイルの正極側の端子、AN…A相のコイルの負極側の端子、BP…B相のコイルの正極側の端子、BN…B相のコイルの負極側の端子、Rtu,Rtu1~Rtu3,Ltu…上限閾値、Rtd,Rtd1~Rtd3,Ltd…下限閾値。