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特許7624897絞り調整治具、及び絞り弁の開度調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】絞り調整治具、及び絞り弁の開度調整方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 37/00 20060101AFI20250124BHJP
   F16M 13/02 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
F16K37/00 C
F16M13/02 V
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021129949
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023953
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】細田 翔
(72)【発明者】
【氏名】田沢 政徳
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直之
(72)【発明者】
【氏名】岩波 隼也
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-257420(JP,A)
【文献】特開2002-372165(JP,A)
【文献】実開平02-078878(JP,U)
【文献】国際公開第2007/135721(WO,A1)
【文献】米国特許第5400819(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 37/00
F16M 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに支持されている調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
入力軸と、伝達部と、出力軸と、計測部と、表示部と、を有し、
前記入力軸は、一方の端部が前記ケースの外部に露出するように配置されており、
前記出力軸は、一方の端部が前記ケースの外部に露出するように配置されており、
前記表示部は、前記ケースの外部に露出するように配置されており、
前記入力軸の前記一方の端部に回転力が付与されることで、前記入力軸は回転動作をし、
前記伝達部は、前記入力軸の前記回転動作を前記出力軸に伝達し、
前記出力軸は、絞り弁の開度調整部材に接続可能であり、
前記計測部は、前記出力軸の回転量を計測し、計測した前記出力軸の前記回転量に応じた表示値を前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記計測部から入力された前記表示値を表示する、
前記絞り弁を備えたバルブユニットに配置することができ、前記バルブユニットに配置された状態から取り外すことができる絞り調整治具。
【請求項2】
前記伝達部は、変速部を有し、
前記変速部は、あらかじめ定められた変速率に基づいて前記伝達部に伝達された前記入力軸の前記回転動作を二次回転動作に変化させ、前記二次回転動作を前記出力軸に伝達する、
請求項1に記載の絞り調整治具。
【請求項3】
前記伝達部は、変速スイッチを更に有し、
前記変速部は、前記変速スイッチの位置によって複数の異なる前記変速率の中から一つの前記変速率を選択することができ、
前記変速部は、選択された前記変速率に基づいて前記伝達部に伝達された前記入力軸の前記回転動作を前記二次回転動作に変化させる、
請求項に記載の絞り調整治具。
【請求項4】
ケースと、
前記ケースに支持されている調整機構と、
を備え、
前記調整機構は、
入力軸と、伝達部と、出力軸と、計測部と、表示部と、を有し、
前記入力軸は、一方の端部が前記ケースの外部に露出するように配置されており、
前記出力軸は、一方の端部が前記ケースの外部に露出するように配置されており、
前記表示部は、前記ケースの外部に露出するように配置されており、
前記入力軸の前記一方の端部に回転力が付与されることで、前記入力軸は回転動作をし、
前記伝達部は、前記入力軸の前記回転動作を前記出力軸に伝達し、
前記出力軸は、絞り弁の開度調整部材に接続可能であり、
前記計測部は、前記出力軸の回転量を計測し、計測した前記出力軸の前記回転量に応じた表示値を前記表示部に出力し、
前記表示部は、前記計測部から入力された前記表示値を表示し、

前記伝達部は、変速部を有し、
前記変速部は、あらかじめ定められた変速率に基づいて前記伝達部に伝達された前記入力軸の前記回転動作を二次回転動作に変化させ、前記二次回転動作を前記出力軸に伝達し、
前記伝達部は、変速スイッチを更に有し、
前記変速部は、前記変速スイッチの位置によって複数の異なる前記変速率の中から一つの前記変速率を選択することができ、
前記変速部は、選択された前記変速率に基づいて前記伝達部に伝達された前記入力軸の前記回転動作を前記二次回転動作に変化させる
り調整治具。
【請求項5】
前記調整機構は、ラチェット機構を更に有し、
前記ラチェット機構は、前記伝達部に対して前記入力軸の前記回転動作のうち許容された方向のみの前記回転動作を伝達することができる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の絞り調整治具。
【請求項6】
前記ラチェット機構は、前記入力軸が一定の角度だけ回転する毎に衝撃を発生させることができる、
請求項に記載の絞り調整治具。
【請求項7】
前記計測部は、前記表示値を再設定値に設定することができる、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の絞り調整治具。
【請求項8】
複数の前記調整機構を備えた、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の絞り調整治具。
【請求項9】
複数の前記出力軸のそれぞれは、複数の前記開度調整部材に同時に接続可能である、
請求項に記載の絞り調整治具。
【請求項10】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の絞り調整治具を準備する工程と、
前記絞り調整治具の前記出力軸を前記絞り弁の前記開度調整部材に接続する工程と、
前記入力軸を回転させて、前記絞り弁の開度調整をする工程と、
を備えた、絞り弁の開度調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絞り弁の開度を調整する絞り調整治具、及び絞り弁の開度調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調整ねじを回転させて開度調整絞りの開度を調整していた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-139725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の開度調整絞りの開度調整においては、調整ねじをどの程度回転させたかは、作業者の感覚に頼っていた。このため、実際に調整ねじの回転量を定量的に把握できず、調整作業に時間がかかるという問題があった。
【0005】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化が図ることができる絞り調整治具、及び絞り弁の開度調整方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る絞り調整治具は、ケースと、ケースに支持されている調整機構と、を備え、調整機構は、入力軸と、伝達部と、出力軸と、計測部と、表示部と、を有し、入力軸は、一方の端部がケースの外部に露出するように配置されており、出力軸は、一方の端部がケースの外部に露出するように配置されており、表示部は、ケースの外部に露出するように配置されており、入力軸の一方の端部に回転力が付与されることで、入力軸は回転動作をし、伝達部は、入力軸の回転動作を出力軸に伝達し、出力軸は、絞り弁の開度調整部材に接続可能であり、計測部は、出力軸の回転量を計測し、計測した出力軸の回転量に応じた表示値を表示部に出力し、表示部は、計測部から入力された表示値を表示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る絞り調整治具、及び絞り弁の開度調整方法によれば、絞り弁の開度調整部材の回転量を数値化して把握することができ、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による絞り調整治具を示す正面図である。
図2図1の絞り調整治具の1つの調整機構の正面を示す正面図である。
図3図2の調整機構の機能を示す概略図である。
図4図1の絞り調整治具の背面側を示す斜視図である。
図5図1の絞り調整治具を用いるバルブユニットの正面図である。
図6図1の絞り調整治具の使用状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による絞り調整治具1を示す正面図である。絞り調整治具1は、ケース10と、6つの調整機構20と、図示しない電源と、図示しない電源スイッチとを備えている。6つの調整機構20と電源と電源スイッチとは、ケース10に支持されている。
【0010】
電源スイッチをONにすることで、電源から各調整機構20に電力が供給され、各調整機構20が起動する。即ち、電源スイッチをONにすることで、絞り調整治具1が起動する。
【0011】
電源及び電源スイッチには、周知な構成を適用することができる。例えば、電源として電池を用いてもよい。絞り調整治具1は、電源を備えているため、絞り調整治具1の携帯性が向上している。
【0012】
図2は、図1の絞り調整治具1の1つの調整機構20の正面を示す正面図である。図3は、図2の調整機構20の機能を示す概略図である。調整機構20は、入力軸30と、ラチェット機構35と、伝達部40と、出力軸50と、計測部60と、表示部70とを有している。
【0013】
入力軸30は、棒状の部材であり、ケース10の内部に支持されている。入力軸30は、軸線を持っている。入力軸30は、ケース10に対して入力軸30の軸線回りに回転可能である。入力軸30は、一方の端部がケース10の外部に露出するように配置されている。
【0014】
入力軸30の一方の端部の端面には、6角形の穴が設けられている。6角形の穴には、周知な工具である6角レンチを挿入することができる。入力軸30の一方の端部に挿入された6角レンチに回転力が付与されることで、入力軸30は、回転動作をする。
【0015】
なお、入力軸30の一方の端部の端面に設けられた穴は、6角形に限られたものではない。入力軸30の一方の端部の端面には、入力軸30に回転力を付与できる周知な工具に対応した形状が設けられていればよい。
【0016】
入力軸30には、ラチェット機構35が接続されている。ラチェット機構35は、伝達部40に接続されている。ラチェット機構35は、入力軸30の回転動作を伝達部40に伝達することができる。
【0017】
ラチェット機構35は、ケース10の内部に支持されている。ラチェット機構35は、伝達部40に対して入力軸30の回転動作のうち許容された方向のみの回転動作を伝達する。ラチェット機構35は、ラチェット本体35aと、スイッチ35bとを有している。
【0018】
スイッチ35bは、棒状の部材である。スイッチ35bは、ケース10の表面に露出している。スイッチ35bの位置は、作業者の操作によって位置があらかじめ決められた3つの設定位置から選択可能になっている。スイッチ35bは、ラチェット本体35aと繋がっている。
【0019】
ラチェット本体35aは、入力軸30が受けた回転動作を伝達部40に伝達するラチェット機構35の状態を3つの伝達状態、即ち第1伝達状態、第2伝達状態、及び第3伝達状態の間で切り替え可能に設定することができる。ラチェット本体35aは、スイッチ35bの位置に応じてラチェット機構35の3つの伝達状態を切り替え、いずれかの伝達状態に設定する。
【0020】
ラチェット本体35aは、ラチェット本体35aを構成している各構成部品の接続状態を変えることで、ラチェット機構35の伝達状態を切り替えることができる。ラチェット本体35aには、周知な機構を適用することができる。例えば、爪車と爪とからなる構成をラチェット本体35aに適用してもよい。
【0021】
ラチェット機構35の第1伝達状態は、入力軸30が第1方向に回転する回転動作のみを伝達部40に伝達する状態である。ラチェット機構35の第2伝達状態は、入力軸30が第1方向とは逆の第2方向に回転する回転動作のみを伝達部40に伝達する状態である。ラチェット機構35の第3伝達状態は、入力軸30が第1方向及び第2方向のそれぞれに回転するときのいずれの回転動作も伝達部40に伝達する状態である。
【0022】
なお、ラチェット機構35の状態が第1伝達状態である場合は、入力軸30の第2方向への回転動作は、伝達部40には伝達されない。従って、ラチェット機構35の状態が第1伝達状態である場合には、伝達部40は、第1方向のみに回転し、第2方向には回転しない。
【0023】
ラチェット機構35の状態が第2伝達状態である場合は、入力軸30の第1方向への回転動作は、伝達部40には伝達されない。従って、ラチェット機構35の状態が第2伝達状態である場合には、伝達部40は、第2方向のみに回転し、第1方向には回転しない。
【0024】
ラチェット機構35の状態が第3伝達状態である場合は、入力軸30の第1方向及び第2方向のいずれの回転動作も伝達部40に伝達される。
【0025】
即ち、ラチェット機構35の伝達状態が第1伝達状態である場合、入力軸30の回転動作のうち第1方向の回転動作のみが許容される。ラチェット機構35の伝達状態が第2伝達状態である場合、入力軸30の回転動作のうち第2方向の回転動作のみが許容される。ラチェット機構35の伝達状態が第3伝達状態である場合、入力軸30の回転動作のうち第1方向及び第2方向の両方向の回転動作が許容される。
【0026】
ラチェット機構35は、ラチェット本体35aにおいて入力軸30が一定の角度だけ回転する毎に衝撃を発生させることができる。ラチェット機構35が発生させる衝撃には、音と振動とのうち少なくともいずれか一方が含まれる。
【0027】
入力軸30が回転動作をすると、作業者は、「カチッ」といったような音と振動とを感じることができる。即ち、ラチェット機構35は、入力軸30が一定角度回転する毎に衝撃を発生させることができる。
【0028】
更に、ラチェット機構35は、入力軸30が一定の角度だけ回転する毎に、入力軸30の回転動作の回転負荷を高める構成を持っている。従って、入力軸30に回転動作をさせるためには、高まった回転負荷以上の回転力を入力軸30に付加させる必要がある。ラチェット機構35の回転負荷を高める構成には、周知な構成を適用することができる。
【0029】
例えば、ラチェット本体35aは、入力軸30の回転動作によって回転する歯車と、歯車の歯先で弾かれる弾き部材とを有している。入力軸30の回転動作に伴って歯車は、歯先で弾き部材を弾きながら回転する。
【0030】
弾き部材を歯先で弾くために歯車の回転動作における回転負荷が高まる。従って、歯車を回転させるための入力軸30の回転動作においても回転負荷が同様に高まる。
【0031】
ラチェット機構35が発生する衝撃は、ラチェット本体35aの歯車の歯先が弾き部材を弾く際に発生する衝撃であってもよい。即ち、ラチェット機構35の衝撃を発生させる構成と、入力軸30の回転動作の回転負荷を高める構成とが同一の構成であってもよい。
【0032】
また、ラチェット機構35の伝達状態を決定する機構と、入力軸30が一定の角度だけ回転する毎に、入力軸30の回転動作の回転負荷を高める構成とが、同一の構成であってもよい。例えば、爪車と爪とからなる構成において、爪車が爪を弾く構成を、入力軸30の回転動作の回転負荷を高める構成としてもよい。
【0033】
伝達部40は、ケース10の内部に支持されている。伝達部40は、ラチェット機構35を介して伝達される入力軸30の回転動作を出力軸50に伝達する。伝達部40は、変速部41と変速スイッチ41aとを有している。
【0034】
変速部41には、伝達部40に伝達された入力軸30の回転動作が伝達される。変速部41は、伝達された回転動作を変化させて出力軸50に伝達する。
【0035】
変速部41は、伝達部40に伝達された入力軸30の回転動作をあらかじめ定められた一定の比率に従って異なる回転動作に変化させて出力軸50に出力する機能を有している。この時の一定の比率を変速率とする。
【0036】
即ち、変速部41は、あらかじめ定められた変速率に基づいて伝達部40に伝達された入力軸30の回転動作を二次回転動作に変化させる。変速部41は、二次回転動作を出力軸50に伝達する。
【0037】
変速スイッチ41aは、突起状のつまみであり、ケース10に設けられた孔から外側に突出している。変速スイッチ41aの位置は、作業者の操作によって位置があらかじめ決められた3つの設定位置から選択可能になっている。変速スイッチ41aは、変速部41と繋がっている。
【0038】
変速部41は、変速スイッチ41aの位置に応じて3つの異なる変速率のうちの一つの変速率を選択することができる。変速部41は、選択された変速率に基づいて伝達部40に伝達された入力軸30の回転動作を二次回転動作に変化させる。
【0039】
変速率は、特に限定されるものではない。例えば、変速部41は、入力軸30が10.0度の回転動作をしたとき、出力軸50を3.0度、1.0度、及び0.1度の回転動作に変速させる3つの変速率を有していてもよい。
【0040】
変速部41は、周知の機構によって構成されている。変速スイッチ41aと変速部41とは、電気的あるいは機械的に繋がっている。
【0041】
出力軸50は、棒状の部材である。出力軸50は、ケース10の内部に支持されている。入力軸30の回転動作は、伝達部40を介して、出力軸50に伝達される。
【0042】
図4は、図1の絞り調整治具1の背面側を示す斜視図である。出力軸50は、一方の端部がケース10の外部に露出するように配置されている。出力軸50の一方の端部は、ケース10の入力軸30が露出している面とは反対側の面に設けられた孔から外部に向かって突出している。
【0043】
出力軸50のケース10の外部に向かって突出している部分は、断面が6角形である棒状部材である。出力軸50のケース10の外部に向かって突出している部分は、絞り弁の開度調整部材に接続可能である。絞り弁の開度調整部材については、後に説明する。
【0044】
図1から図3に戻り説明を続ける。計測部60は、ケース10の内部に支持されている。計測部60は、複数の操作ボタンである操作部61を有している。操作部61は、ケース10の入力軸30が露出している面に設けられた孔から外側に露出するように配置される。
【0045】
計測部60は、出力軸50の回転量を計測する。計測部60には、周知な機構を採用することができる。例えば、計測部60にロータリーエンコーダーを用いてもよい。
【0046】
計測部60は、計測した出力軸50の回転量に応じた表示値を表示部70に出力する。表示値は、例えば、計測部60が計測した出力軸50の回転量についてラジアンを単位とする値に変換したものである。操作部61に対する操作によって計測部60は、表示値を再設定値に設定することができる。
【0047】
再設定値とは、作業者が適宜設定する値である。再設定値は、0(ゼロ)を含めた数値である。表示値が再設定値に設定された後には、計測部60は、再設定値に設定された表示値を基準にして出力軸50の回転量を表示値に変換する。
【0048】
表示部70は、ケース10に支持されている。表示部70は、計測部60から入力された表示値を表示する。表示部70の表示面には、計測部60から入力された表示値が表示される。
【0049】
表示部70は、ケース10の外部に露出するように配置されている。表示部70の表示面は、ケース10の入力軸30が露出している面からケース10の外側に向かって表示値が表示されるように設置されている。表示部70は、特に限定するものではないが、本実施の形態1では、正負の符号、及び、小数点以下1桁を含む3桁の数値を表示することができる。
【0050】
次に、絞り調整治具1を用いるバルブユニット100について説明する。図5は、図1の絞り調整治具1を用いるバルブユニット100の正面図である。
【0051】
バルブユニット100は、6つの絞り弁を備えている。絞り弁のそれぞれは、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fによって開度を調整することができる。各開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fの端面は、バルブユニット100の表面に露出している。ここで、絞り弁の開度調整について、1つの開度調整部材101aを例にあげて説明する。
【0052】
開度調整部材101aは、ねじ山が形成された棒状部材である。バルブユニット100側には、ねじ穴が形成されている。バルブユニット100のねじ穴には、開度調整部材101aがねじ込まれている。
【0053】
絞り弁の開度は、開度調整部材101aのバルブユニット100に対する位置に応じて設定される。作業者は、バルブユニット100のねじ穴にねじ込まれた開度調整部材101aを回転させて開度調整部材101aをバルブユニット100に対して前進、または後退させることで、絞り弁の開度調整をすることができる。
【0054】
開度調整部材101aの端面には、6角形の穴が設けられている。作業者は、6角形の穴に6角レンチを挿入して回転させることで、開度調整部材101aを進退させる。これにより、作業者は、絞り弁の開度を調整することができる。他の開度調整部材101b、101c、101d、101e、101fについても同様である。
【0055】
図6は、図1の絞り調整治具1の使用状態を示す概略図である。絞り調整治具1は、バルブユニット100の開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fを覆うように配置されている。絞り調整治具1の出力軸50のそれぞれは、対応する開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに接続されている。
【0056】
図4に示される通り、出力軸50のそれぞれは、ケース10の外側に突出している部分の出力軸50の形状が断面6角形状の棒状である。出力軸50のそれぞれは、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fの端面に設けられた6角穴に挿入することができる。即ち、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fのそれぞれの端面に設けられた6角穴に、1つずつ出力軸50の端部が挿入されている。
【0057】
図5に示されるように、バルブユニット100における開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fのそれぞれの配置位置は、一直線上には並んでいない。従って、図4に示される通り、それぞれの出力軸50は、それぞれの開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fの配置位置に対応するように配置されている。
【0058】
即ち、複数の出力軸50のそれぞれは、対応する開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに同時に接続可能である。
【0059】
次に、絞り調整治具1を用いたバルブユニット100の絞り弁の開度調整方法について説明する。
【0060】
バルブユニット100は、油圧機構に用いられている。油圧機構とは、油圧で動作する機械機構であり、例えば、油圧エレベーター、油圧リフター、油圧プレスといったものである。
【0061】
油圧機構については、定期的に油圧によって動作する部材の動作速度、動作加速度といった動作状態を確認する必要がある。油圧機構の部材の動作確認で、部材の動作状態が規定の動作状態に適合しない場合、部材の動作状態を規定の動作状態に適合するように部材の動作に関連する絞り弁の開度を調整する。
【0062】
例えば、部材の動作速度が規定の速度範囲から外れている場合には、その部材を動作させる絞り弁の開度を調整し、部材の動作速度を規定の速度範囲内の動作速度とする。
【0063】
本実施の形態1では、上記の例について絞り調整治具1を用いたバルブユニット100の絞り弁の開度調整方法について説明する。
【0064】
まず、作業者は、絞り調整治具1を準備する。絞り調整治具1の電源スイッチをONにし、絞り調整治具1を起動させる。その後、作業者は、絞り調整治具1を開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fを覆うようにバルブユニット100に配置する。
【0065】
絞り調整治具1の出力軸50のそれぞれは、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに接続されている。
【0066】
作業者は、必要に応じて図示しない帯、テープ、クリップといった固定具を用いてバルブユニット100に絞り調整治具1を固定してもよい。
【0067】
次いで作業者は、各調整機構20の操作部61を操作して、それぞれの調整機構20における表示値を再設定値に設定する。例えば、表示値を0.0とする。
【0068】
その後、作業者は、油圧機構の動作状態を確認する。例えば、第1部材の実測した動作速度が規定の動作速度範囲内に達しない動作速度であったとする。この場合、作業者は、第1部材の動作速度に関連する絞り弁の開度を大きくする方向で絞り弁の開度調整をする。第1部材の動作速度に関連する絞り弁の開度調整には、開度調整部材101aを用いる。
【0069】
このとき、作業者は、第1部材の実測した動作速度と規定の動作速度とを比較して、絞り弁の開度調整部材101aを例えば1.0度程度緩める必要があることを経験的に認識する。作業者は、開度調整部材101aに接続された調整機構20の入力軸30に工具を接続し、回転させる。
【0070】
作業者は、開度調整部材101aに接続された調整機構20の入力軸30を回転させる際に、スイッチ35b及び変速スイッチ41aの位置を適宜好適な位置に設定する。作業者は、開度調整に適したラチェット機構35の伝達状態と、変速部41の変速率とを適宜選択することができる。
【0071】
作業者は、経験に基づいて、開度調整部材101aに接続された調整機構20の表示値が0.0から-1.0になるまで入力軸30を回転させる。表示値がマイナスの符号となる場合は、開度調整部材101aを緩める方向に出力軸50が回転したことを意味する。
【0072】
作業者は、再度、油圧機構の動作状態を確認する。例えば、第1部材の実測した動作速度が規定の動作速度範囲を越した動作速度となったとする。この場合、作業者は、絞り弁の開度を小さくする方向で絞り弁の開度調整をする。
【0073】
このとき、作業者は、第1部材の実測した動作速度と規定の動作速度との比較と、前回0.0から-1.0になるまで開度調整部材101aを回転させたこととを考慮して、開度調整部材101aの回転量を決める。例えば、作業者は、表示値が-1.0から-0.8になるまで開度調整部材101aを回転させればよいことを経験的に認識する。
【0074】
作業者は、開度調整部材101aに接続された調整機構20の表示値が-1.0から-8.0になるまで開度調整部材101aを回転させる。その後、作業者は、再度、油圧機構の動作状態を確認する。
【0075】
例えば、第1部材の実測した動作速度が規定の動作速度範囲内の動作速度となったとする。作業者は、第1部材に関する開度調整部材101aについての開度調整を終了する。
【0076】
その後、作業者は、必要に応じて、他の開度調整部材101b、101c、101d、101e、101fについても同様に開度調整を実施し、終了させる。
【0077】
作業者は、絞り調整治具1をバルブユニット100から取り外し、絞り調整治具1の電源スイッチをOFFする。これにて開度調整作業が終了する。
【0078】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、計測部60は、出力軸50の回転量を計測し、計測した出力軸50の回転量に応じた表示値を表示部70に出力し、表示部70は、計測部60から入力された表示値を表示する。従って、作業者は、出力軸50の回転量を数値化して把握することができる。よって、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。また、開度の調整量を数値として把握できるため、作業者による調整量のばらつきを抑えることができる。また、調整前の調整量を数値として把握できるため、調整前の調整量に開度を戻す場合も、確実に開度を戻すことができる。よって、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0079】
また、絞り弁の開度は、表示値に対応する数値、例えば、表示値が角度であれば、角度として数値で示すことができる。即ち、絞り弁を所望の開度とするためには、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fのそれぞれを何度回転させるかといった回転角度で示すことができる。よって、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0080】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、調整機構20は、ラチェット機構35を更に有し、ラチェット機構35は、伝達部40に対して入力軸30の回転動作のうち許容された方向のみの回転動作を伝達することができる。従って、作業者の意図しない逆方向への回転動作が入力軸30に付与された場合でも、逆方向への回転動作が出力軸50に伝達されることを防ぐことができる。よって、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0081】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、ラチェット機構35は、入力軸30が一定の角度だけ回転する毎に衝撃を発生させることができる。従って、作業者は、衝撃を感じることで入力軸30を容易に一定の角度だけ回転させることができる。よって、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0082】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、伝達部40は、変速部41を有し、変速部41は、あらかじめ定められた変速率に基づいて伝達部40に伝達された入力軸30の回転動作を二次回転動作に変化させ、二次回転動作を出力軸50に伝達する。従って、作業者は、例えば入力軸30に付与した回転動作に比べて微小な二次回転動作で出力軸50に回転動作を伝えることができる。従って、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに微小な回転動作を付与することができる。このため、微妙な絞り弁の開度調整作業が容易になり、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0083】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、伝達部40は、変速スイッチ41aを更に有し、変速部41は、変速スイッチ41aの位置によって複数の異なる変速率の中から一つの変速率を選択することができる。また、変速部41は、選択された変速率に基づいて伝達部40に伝達された入力軸30の回転動作を二次回転動作に変化させる。従って、作業者は、複数の変速率を使い分けることができる。よって、絞り弁の開度調整作業が更に容易になり、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0084】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、計測部60は、表示値を再設定値に設定することができる。従って、作業者は、作業時に表示値を作業者の望む値である再設定値に設定することができる。これにより、作業時の表示値を記憶するための転記といった作業者の作業をなくすことができる。このため、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0085】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、複数の調整機構20を備えている。従って、複数の絞り弁の開度調整を1つの絞り調整治具1を用いて実施することができる。よって、複数の絞り調整治具1を用意する必要がない。これにより、絞り弁の開度調整作業とその準備とを簡略化することができ、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0086】
実施の形態1による絞り調整治具1によれば、複数の出力軸50のそれぞれは、複数の開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに同時に接続可能である。従って、複数の絞り弁の開度調整を絞り調整治具1によって同時に実施することができる。よって、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0087】
実施の形態1による絞り弁の開度調整方法によれば、絞り調整治具1の出力軸50を絞り弁の開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに接続する工程と、入力軸30を回転させて、絞り弁の開度調整をする工程と、を備えている。従って、作業者は、絞り調整治具1の表示値を確認することで、どの程度の回転量を開度調整部材に付与したかを定量的に把握することができる。これにより、作業時の表示値を記憶するための転記といった作業を減少させることができる。このため、絞り弁の開度調整作業における作業時間の短縮化を図ることができる。
【0088】
なお、実施の形態1では、絞り調整治具1には、6つの調整機構20が設けられている。しかし、これに限られたものではない。調整機構20の数は、使用しているバルブユニット100が有する開度調整部材の数に応じて適宜変更することができる。例えば、1つの調整機構20を備えてもよい。また、6つ以外の複数の調整機構20を備えてもよい。
【0089】
また、実施の形態1では、調整機構20は、ラチェット機構35を有している。しかし、これに限られたものではない。調整機構20は、ラチェット機構35を有さず、入力軸30の回転動作を直接伝達部40に伝達してもよい。
【0090】
また、実施の形態1では、変速部41は、3つの変速率の中から1つの変速率を選択できる。しかし、これに限られたものではない。変速率は、1つのみでもよい。また3つ以外の複数の変速率から1つの変速率を選択してもよい。
【0091】
また、実施の形態1では、入力軸30が10.0度回転動作したとき、出力軸50が3.0度、1.0度、及び0.1度回転動作するように変速させる3つの変速率が設定されている。しかし、これに限られたものではない。変速率をどの程度とするかは、適宜選択することができる。
【0092】
また、実施の形態1では、調整機構20の伝達部40は、変速部41と変速スイッチ41aとを有している。しかし、これに限られたものではない。伝達部40は、変速部41と変速スイッチ41aとを有さず、入力軸30の回転動作、あるいはラチェット機構35に回転動作をそのまま出力軸50に伝達してもよい。
【0093】
また、実施の形態1では、表示部70は、正負の符号、及び、小数点以下1桁を含む3桁の数値を表示することができる。しかし、これに限られたものではない。表示部70の表示桁数、正負の符号表示、及び小数点以下の表示桁数は、適宜選択することができる。
【0094】
また、実施の形態1では、計測部60は、出力軸50の回転量をラジアンを単位とする表示値に変換している。しかし、これに限られたものではない。表示値をどのような単位系の数値で出力するかは、適宜選択することができる。また、例えば、表示値を無次元数で出力してもよい。
【0095】
また、実施の形態1では、ケース10の外側に突出している部分の出力軸50の断面形状は、6角形である。しかし、これに限られたものではない。ケース10の外側に突出している部分の出力軸50の断面形状は、開度調整部材101a、101b、101c、101d、101e、101fに回転動作を付与できる周知な工具に対応した形状であればよい。
【0096】
また、実施の形態1では、絞り調整治具1は、電源を備えている。しかし、これに限られたものではない。例えば、絞り調整治具1は、電源を備えずに外部の電源から電源ケーブルを介して電力の供給を受けてもよい。これにより、絞り調整治具1の軽量化が図れ、絞り調整治具1の携帯性が向上する。
【符号の説明】
【0097】
1 絞り調整治具、10 ケース、20 調整機構、30 入力軸、35 ラチェット機構、35a ラチェット本体、35b スイッチ、40 伝達部、41 変速部、41a 変速スイッチ、50 出力軸、60 計測部、61 操作部、70 表示部、100 バルブユニット、101a、101b、101c、101d、101e、101f 開度調整部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6