(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-23
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】支保工の設置方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20250124BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
E02D17/04 B
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2021187054
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2024-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317018169
【氏名又は名称】ヒロセ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】井原 啓知
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 晃
(72)【発明者】
【氏名】西川 勤
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295275(JP,A)
【文献】特開平08-193330(JP,A)
【文献】特開平06-136759(JP,A)
【文献】特開2017-137688(JP,A)
【文献】特開昭63-019334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平旋回可能なターンテーブルを備えて床付け面上を走行可能な台車を用いて、土留壁に支保工を設置する方法であって、
前記支保工は腹起を含み、
前記方法は、
前記ターンテーブルに前記腹起を載置した状態で、前記台車を、前記土留壁の近傍まで走行させる第1の工程と、
前記土留壁の近傍にて前記ターンテーブルを水平旋回させることにより、前記腹起の向きを変更する第2の工程と、
前記土留壁に設けられたブラケットにレール部材の一端側を連結する第3の工程と、
前記向きが変更された前記腹起を、前記レール部材の一端側に向けて前記レール部材上をスライドさせて、前記ブラケットに載置する第4の工程と、
を含む、支保工の設置方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、上面視で、前記土留壁の延在方向に対して交差する方向に前記台車を走行させ、
前記第1の工程では、上面視で、前記ターンテーブル上の前記腹起が、前記台車の走行方向に沿う方向に延在する、請求項1に記載の支保工の設置方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、上面視で、前記土留壁の延在方向に対して直交する方向に前記台車を走行させ、
前記第2の工程では、上面視で、前記ターンテーブルを略90°旋回させる、請求項2に記載の支保工の設置方法。
【請求項4】
前記台車は、床付け面上を走行する台車本体と、前記台車本体に対して前記ターンテーブルを昇降可能なように構成される昇降装置と、を備える、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
【請求項5】
前記支保工は、前記ブラケットに載置された前記腹起に当接する支保部材を更に含み、
前記方法は、
前記支保部材を前記台車に載置した状態で、前記台車を、前記土留壁の近傍まで走行させる第5の工程と、
前記支保部材を前記台車から降ろして建て起こす第6の工程と、
を含む、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
【請求項6】
前記第6の工程では、前記支保部材の貫通孔に通されたワイヤの両側を引っ張ることで、前記支保部材を建て起こす、請求項5に記載の支保工の設置方法。
【請求項7】
前記ワイヤを引っ張る引張手段が前記腹起に設けられる、
請求項6に記載の支保工の設置方法。
【請求項8】
前記支保部材は、前記腹起と切梁との間に介装される、請求項5~
請求項7のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
【請求項9】
鉄道の軌道を支持する工事桁が前記床付け面の上方に位置し、
前記工事桁の下端部と前記床付け面との間の距離が、500mm~3000mmの範囲内である、請求項1~
請求項8のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留壁に支保工を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、土留壁に上下2段の腹起を設置し、これら腹起の間に定着部材を架設することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の腹起などの支保工の設置には、一般に、クレーンなどの揚重装置が用いられる。しかしながら、低空頭な施工場所(換言すれば、空頭制限がある施工場所)において、支保工の設置にクレーンなどの揚重装置を用いることが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑み、低空頭な施工場所にも適用可能な支保工の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明の一態様は、水平旋回可能なターンテーブルを備えて床付け面上を走行可能な台車を用いて、土留壁に支保工を設置する方法であって、
前記支保工は腹起を含み、
前記方法は、
前記ターンテーブルに前記腹起を載置した状態で、前記台車を、前記土留壁の近傍まで走行させる第1の工程と、
前記土留壁の近傍にて前記ターンテーブルを水平旋回させることにより、前記腹起の向きを変更する第2の工程と、
前記土留壁に設けられたブラケットにレール部材の一端側を連結する第3の工程と、
前記向きが変更された前記腹起を、前記レール部材の一端側に向けて前記レール部材上をスライドさせて、前記ブラケットに載置する第4の工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低空頭な施工場所であっても、支保工の設置作業を円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の第1実施形態における、土留壁に設けられたブラケットを示す図
【
図1B】前記第1実施形態における、設置された上下2段の腹起を示す図
【
図1C】前記第1実施形態における、設置された副部材を示す図
【
図2】前記第1実施形態における腹起の設置方法を示す図
【
図3】前記第1実施形態における腹起の設置方法を示す図
【
図4】前記第1実施形態における腹起の設置方法を示す図
【
図5】前記第1実施形態における腹起の設置方法を示す図
【
図6】前記第1実施形態における腹起の設置方法を示す図
【
図7】前記第1実施形態における腹起の設置方法を示す図
【
図8】前記第1実施形態における、腹起がターンテーブルに載置された台車の走行状態を示す図
【
図9】前記第1実施形態における、水平旋回したターンテーブル及び腹起を示す図
【
図10】前記第1実施形態における、腹起のスライド方法を説明するための図
【
図11】前記第1実施形態における副部材の建て起こし方法を示す図
【
図12】本発明の第2実施形態における台車を示す図
【
図13】本発明の第3実施形態における台車を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1A~
図1Cは、本発明の第1実施形態における支保工30(腹起(主材)31,32及び副部材33を含む)の設置方法を示す。
図2~
図7は、本実施形態における腹起32の設置方法を示す。ここにおいて、
図1A~
図1Cは
図2のA-A断面に対応している。しかしながら、
図1A~
図1Cでは、
図2に図示の横矢板3、レール15、及び台車20などの図示を省略している。また、
図2~
図7では、
図1A~
図1Cに図示の軌道10L,10R及び工事桁11L,11Rの図示を省略し、この代わりに、軌道10Lの中心線10LCと軌道10Rの中心線10RCとを図示している。
【0011】
本実施形態では、土留壁1は、親杭横矢板壁であり、複数本の親杭2と複数枚の横矢板3とにより構成されている。しかしながら、土留壁1の構成はこれに限らない。例えば、土留壁1は、シートパイル壁であってもよく、又は、柱列壁であってもよい。
【0012】
土留壁1は、上面視で、鉄道の軌道10L,10Rに並んで延びている。工事桁11L,11Rは、軌道10L,10Rを支持するものである。工事桁11L,11Rは、各々が、複数本のかんざし桁12によって支持されており、各かんざし桁12は、親杭2によって支持されている。
【0013】
本実施形態では、工事桁11L,11Rの直下に間隔を空けて床付け面13が掘削形成されている。床付け面13は1次掘削で形成されたものであり、工事桁11L,11Rの下端部と床付け面13との間の距離Lは、500mm~3000mmの範囲内であり、例えば1000mm~2000mmの範囲内であり得る。このように、工事桁11L,11Rによって上空が制限されている床付け面13上の低空頭な施工場所(施工空間P)にて、支保工30(本実施形態では、主として上下2段の腹起31,32及び副部材33)の設置が行われる。
【0014】
本実施形態のおける支保工30の設置方法では、まず、
図1Aに示すように、土留壁1の親杭2にブラケット5を取り付ける。ブラケット5は、上下2段の腹起31,32の各々を下方から支持することができるように構成されている。尚、
図1A~
図1Cでは、下段の腹起32を下方から支持するブラケット5が図示されている。
【0015】
次に、
図1Bに示すように、ブラケット5上に、下段の腹起32を設置し、これと同様に、下段の腹起32の上方に、上段の腹起31を設置する。下段の腹起32の設置方法については、
図2~
図7を用いて後述する。
【0016】
次に、
図1Cに示すように、副部材33を設置する。副部材33は、本発明の「支保部材」に対応するものであり、腹起31,32に当接するものである。また、副部材33は、腹起31,32に跨って配置されるものであり、腹起31,32と切梁(図示せず)との間に介装されるものである。副部材33の建て起こし方法については、
図11を用いて後述する。
【0017】
ここにおいて、親杭2は、上下方向に延びるH形鋼材で形成されている。ブラケット5は、親杭2のフランジ面(施工空間Pに臨む側の面)に取り付けられている。腹起31,32は、各々が、土留壁1の内面(施工空間Pに臨む側の面)に沿って略水平に延びるH形鋼材で形成されている。土留壁1の親杭2のフランジ面と腹起31,32のフランジ面との間には裏込材34が介装される。
【0018】
副部材33(後述する
図11参照)は、上下方向に延びる2本のH形鋼材を平行に並べて、隣接するフランジ同士を接合して一体化されたものである。副部材33には、補強板33aが複数枚設けられている。副部材33の上部には、ワイヤ40を通すための貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0019】
床付け面13における土留壁1と反対の側の領域(上面視で軌道10L,10R外の路下の領域)Q(
図2参照)には、腹起31,32が搬入され得る。これら搬入された腹起31,32が、台車20に載せられて、土留壁1の近傍まで運搬される。この運搬経路には、かんざし桁12や中間杭14などがあり、腹起31,32などの長尺物をその架設する向き(土留壁1に沿う向き)で運搬することが困難である。そこで、本実施形態では、例えば、
図2~
図7に示す腹起32の設置方法を用いる。
【0020】
腹起32の設置方法では、まず、
図2及び
図3に示すように、台車20を用いて、前述の領域Qから土留壁1の近傍まで、腹起32を運搬する。
【0021】
ここで、台車20の構成について、
図2及び
図3に加えて、
図8を用いて説明する。
図8は、腹起32がターンテーブル22に載置された台車20の走行状態を示す。
【0022】
台車20は、床付け面13上を走行する台車本体21と、台車本体21の上部に設けられたターンテーブル(回転テーブル)22とを備える。ターンテーブル22は、台車本体21に対して水平旋回可能なように支持軸23を介して台車本体21の上部に取り付けられている。ターンテーブル22には腹起32が載置されている。腹起32は、例えば固縛手段24によってターンテーブル22に固縛されている。
【0023】
台車本体21の走行用車輪25は、床付け面13上に敷設されたレール15上を転動する。レール15は、例えば上面開放のコ字状断面を有する溝形鋼からなり、この溝形状内に走行用車輪25の下部を入り込ませることで、台車20(台車本体21)はレール15に沿って床付け面13上を走行することができる。ここで、台車20(台車本体21)については、床付け面13上に敷設されたレール15上を走行するので、床付け面13に不陸があっても台車20の良好な走行性を確保することができる。
【0024】
レール15は、床付け面13上において略水平に、前述の領域Qから土留壁1の近傍まで延びている。ゆえに、台車20(台車本体21)は、床付け面13上を、レール15に沿って、前述の領域Qから土留壁1の近傍まで走行することができる。
【0025】
レール15は、上面視で、土留壁1の延在方向に対して交差する方向に延びている。ゆえに、本実施形態では、台車20(台車本体21)は、床付け面13上を、土留壁1の延在方向に対して交差する方向に、前述の領域Qから土留壁1の近傍まで走行することができる。
【0026】
ここで、本実施形態では、レール15は、上面視で、土留壁1の延在方向に対して直交する方向に延びている。ゆえに、本実施形態では、台車20(台車本体21)は、床付け面13上を、土留壁1の延在方向に対して直交する方向に、前述の領域Qから土留壁1の近傍まで走行することができる。
【0027】
尚、
図2及び
図3に示す工程が本発明の「第1の工程」に対応し、この工程では、ターンテーブル22に腹起32を載置した状態で、台車20を、土留壁1の近傍まで走行させる。この工程では、上面視で、ターンテーブル22上の腹起32が、台車20の走行方向に沿う方向(換言すれば、レール15の延在方向に対して略平行)に延在する。また、この工程では、上面視で、ターンテーブル22上の腹起32が、かんざし桁12に対して略平行に延在する。
【0028】
次に、
図3及び
図4に示すように、土留壁1の近傍にてターンテーブル22を水平旋回させることにより、腹起32の向きを変更する。この
図3及び
図4に示す工程が本発明の「第2の工程」に対応する。ここで、
図9は、水平旋回したターンテーブル22及び腹起32を示している。尚、このターンテーブル22の水平旋回に先立って、台車20(台車本体21)の走行用車輪25用の車輪止め26を設けることが望ましい。
【0029】
このターンテーブル22による水平旋回では、腹起32がその架設する向き(土留壁1に沿う向き)となるように当該水平旋回が行われる。ゆえに、例えば、台車20のターンテーブル22に載置されて土留壁1の近傍まで運搬されてきた腹起32の向きが、上面視で、土留壁1の延在方向に対して直交する方向を向いている場合には、この水平旋回工程にて、上面視で、ターンテーブル22を台車本体21に対して略90°旋回させる。
【0030】
次に、
図5に示すように、土留壁1に設けられたブラケット5にレール部材28の一端側28aを連結する。この連結には、例えばブルマン(登録商標)などの挟締手段や、ボルトなどの締結手段が用いられてもよい。この
図5に示す工程が本発明の「第3の工程」に対応する。尚、レール部材28は例えば山形鋼である。
【0031】
レール部材28の他端側28bについては、後述する
図10に示すように、台車20近傍の床付け面13上に載置してもよく、又は、台車20上に載置してしてもよい。いずれにしても、上面視で、一対のレール部材28が、台車20の少なくとも一部(例えばターンテーブル22)をその両側から挟むように配置されることが好ましい。
【0032】
次に、
図5~
図7に示すように、前述の水平旋回工程にて向きが変更された腹起32を、レール部材28の他端側28bから一端側28aに向けてレール部材28上をスライド(摺動)させて、ブラケット5に載置する。この工程が本発明の「第4の工程」に対応する。この工程では、例えば
図10に示す、腹起32のスライド方法が用いられる。
【0033】
図10に示す例では、土留壁1の親杭2のフランジ面(施工空間Pに臨む側の面)におけるブラケット5より上方にブラケット37を設け、このブラケット37に例えばチェーンブロックを取り付けて、ワイヤ38を介して、腹起32を引っ張るようにする。このようにして、ターンテーブル22上の腹起32を、チェーンブロックなどの牽引手段を用いて、レール部材28上をスライドさせつつブラケット5側に引っ張ることで、腹起32をブラケット5に載置することができる。ここで、
図10には、ブラケット5上における腹起32の載置位置(架設位置)が一点鎖線で示されている。
【0034】
尚、本実施形態において、前述の「第3の工程」(ブラケット5にレール部材28の一端側28aを連結する工程)については、前述の「第4の工程」により前の任意の時期に実施可能である。すなわち、前述の「第3の工程」については、前述の「第2の工程」の後に限らず、前述の「第2の工程」に先立って実施されてもよく、又は、前述の「第1の工程」に先立って実施されてもよい。
【0035】
このようにして、下段の腹起32が土留壁1に設置される。尚、上段の腹起31についても、この腹起32と同様の手法を用いて土留壁1に設置可能であることは言うまでもない。
【0036】
次に、副部材33の設置方法について、
図11を用いて説明する。
図11は、副部材33の建て起こし方法を示す。
【0037】
床付け面13における土留壁1と反対の側の領域(上面視で軌道10L,10R外の路下の領域)Qには、副部材33が搬入され得る。この搬入された副部材33については、寝かせた状態(安定した状態)で台車20に載せられて、土留壁1の近傍まで運搬される。土留壁1の近傍まで運搬された、寝かせた状態の副部材33を建て起こす際には、その直上に工事桁11Lなどがあるので、クレーンなどの揚重装置を当該建て起こしに使用することが困難である。そこで、本実施形態では、例えば、
図11に示す副部材33の建て起こし方法を用いる。
【0038】
副部材33の設置方法では、まず、寝かせた状態(安定した状態)の副部材33を台車20に載置した状態で、台車20を、前述の領域Qから土留壁1の近傍まで走行させる。この工程が本発明の「第5の工程」に対応する。
【0039】
次に、土留壁1の近傍まで運搬された、寝かせた状態の副部材33を台車20から降ろして、建て起こす。この工程が本発明の「第6の工程」に対応する。ここで、副部材33を台車20から降ろすことは、副部材33を台車20から床付け面13上に荷卸しすること、及び/又は、副部材33を台車20から前述のレール部材28に移載することを含み得る。また、この工程は、土留壁1の近傍まで運搬された副部材33を建て起こす工程であり、本発明の「建て起こし工程」に対応する。
【0040】
この「建て起こし工程」では、
図11(ア)~(ウ)に示すように、副部材33の貫通孔に通されたワイヤ40の両側を引っ張ることで、副部材33を徐々に建て起こす。
【0041】
図11(ア)~(ウ)に示す例では、上段の腹起31のフランジ面(施工空間Pに臨む側の面)に一対のブラケット41を設け、各ブラケット41に例えばレバーブロック(登録商標)42を取り付けて、副部材33の貫通孔に通されたワイヤ40を両側から引っ張り上げるようにする。このようにして、副部材33の貫通孔に通されたワイヤ40を、レバーブロック(登録商標)42などの引張手段を用いて両側から引っ張ることで、副部材33を簡易に建て起こすことができる。この建て起こしの際に、副部材33が前述のレール部材28上をスライドしてもよい。
【0042】
このようにして、上下方向に延在する副部材33が、上下2段の腹起31,32に跨るように設置される。
【0043】
本実施形態によれば、水平旋回可能なターンテーブル22を備えて床付け面13上を走行可能な台車20を用いて、土留壁1に支保工30を設置する方法であって、支保工30は腹起31,32を含み、土留壁1に支保工30を設置する方法は、ターンテーブル22に腹起31,32を載置した状態で、台車20を、土留壁1の近傍まで走行させる第1の工程(
図2、
図3、及び
図8参照)と、土留壁1の近傍にてターンテーブル22を水平旋回させることにより、腹起31,32の向きを変更する第2の工程(
図3、
図4、及び
図9参照)と、土留壁1に設けられたブラケット5にレール部材28の一端側28aを連結する第3の工程(
図5及び
図10参照)と、第2の工程で向きが変更された腹起31,32を、レール部材28の一端側28aに向けてレール部材28上をスライドさせて、ブラケット5に載置する第4の工程(
図5~
図7、及び
図10)と、を含む。これにより、前述の施工空間Pのような低空頭かつ狭隘な施工場所であっても、腹起31,32の設置作業を円滑に進めることができる。
【0044】
また本実施形態によれば、第1の工程(
図2、
図3、及び
図8参照)では、上面視で、土留壁1の延在方向に対して交差する方向に台車20を走行させ、第1の工程では、上面視で、ターンテーブル22上の腹起31,32が、台車20の走行方向に沿う方向に延在する。そして、例えば、第1の工程では、上面視で、土留壁1の延在方向に対して直交する方向に台車20を走行させ、第2の工程(
図3、
図4、及び
図9参照)では、上面視で、ターンテーブル22を略90°旋回させる。このようにすることで、かんざし桁12や中間杭14などの障害物を回避しつつ、腹起31,32を土留壁1の近傍(換言すれば、腹起31,32の架設位置の近傍)まで効率よく運搬することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、支保工30は、ブラケット5に載置された腹起31,32に当接する支保部材(副部材33)を更に含む。土留壁1に支保工30を設置する方法は、支保部材(副部材33)を台車20に載置した状態で、台車20を、土留壁1の近傍まで走行させる第5の工程と、支保部材(副部材33)を台車20から降ろして建て起こす第6の工程(
図11参照)と、を含む。第6の工程では、支保部材(副部材33)の貫通孔に通されたワイヤ40の両側を引っ張ることで、支保部材(副部材33)を建て起こす。これにより、前述の施工空間Pのような低空頭かつ狭隘な施工場所であっても、支保部材(副部材33)の設置作業を円滑に進めることができる。尚、支保部材(副部材33)は、腹起31,32と切梁との間に介装される部材であり得る。
【0046】
また本実施形態によれば、土留壁1に支保工30を設置する方法であって、支保工30は、土留壁1に設けられたブラケット5に載置された腹起31,32と、腹起31,32に当接する支保部材(副部材33)と、を含み、土留壁1に支保工30を設置する方法は、土留壁1の近傍まで運搬された支保部材(副部材33)を建て起こす建て起こし工程(
図11参照)を含み、この建て起こし工程では、支保部材(副部材33)の貫通孔に通されたワイヤ40の両側を引っ張ることで、支保部材(副部材33)を建て起こす。これにより、前述の施工空間Pのような低空頭かつ狭隘な施工場所であっても、支保部材(副部材33)の設置作業を円滑に進めることができる。尚、支保部材(副部材33)は、腹起31,32と切梁との間に介装される部材であり得る。
【0047】
また本実施形態によれば、ワイヤ40を引っ張る引張手段(例えばレバーブロック(登録商標)42)が腹起31に設けられる。尚、ワイヤ40を引っ張る引張手段(例えばレバーブロック(登録商標)42)が腹起32に設けられてもよい。
【0048】
また本実施形態によれば、鉄道の軌道10L,10Rを支持する工事桁11L,11Rなどの構造物(仮設構造物又は本設構造物)が床付け面13の上方に位置し、工事桁11L,11Rなどの構造物の下端部と床付け面13との間の距離Lが、500mm~3000mmの範囲内である。このような低空頭な施工場所であっても、台車20を用いて、腹起31,32及び副部材33の設置作業を円滑に進めることができる。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態について、
図12を用いて説明する。
図12は、本実施形態における台車20’を示す図である。
前述の第1実施形態と異なる点について説明する。
【0050】
本実施形態では、台車20’は、床付け面13上を走行する台車本体21’と、台車本体21’の上部に設けられた昇降装置50と、昇降装置50の上部に設けられたターンテーブル(回転テーブル)22とを備える。ターンテーブル22は、台車本体21’及び昇降装置50に対して水平旋回可能なように支持軸23を介して昇降装置50の上部に取り付けられている。ターンテーブル22には腹起31,32及び副部材33を載置することができる。この点、
図12は、ターンテーブル22に腹起32が載置される例を示している。
【0051】
台車本体21’は、クローラ21aと台車フレーム21bとを備える。台車フレーム21bの下側にクローラ21aが配置されており、台車フレーム21bの上部に昇降装置50が取り付けられている。台車本体21’がクローラ21aを備えることで、床付け面13に不陸があっても台車20’の良好な走行性を確保することができる。
【0052】
昇降装置50は、台車フレーム21bに対するターンテーブル22の高さを調整するための装置であり、台車フレーム21bに対してターンテーブル22を昇降可能なように構成されている。昇降装置50は、例えば、大ネジ51を備え、この大ネジ51をその中心軸まわりに回転させることで、台車フレーム21bに対してターンテーブル22を昇降させることができるように構成される。尚、昇降装置50の構成はこれに限らない。
【0053】
特に本実施形態によれば、台車20’は、床付け面13上を走行する台車本体21’と、台車本体21’に対してターンテーブル22を昇降可能なように構成される昇降装置50と、を備える。これにより、土留壁1への腹起31,32及び副部材33の設置作業を効率よく行うのに最適なターンテーブル22の高さとなるように、ターンテーブル22の高さ調整を行うことができる。
【0054】
尚、本実施形態における昇降装置50を前述の第1実施形態における台車20に適用して、昇降装置50が台車本体21に対してターンテーブル22を昇降可能なように構成されてもよいことは言うまでもない。
【0055】
次に、本発明の第3実施形態について、
図13を用いて説明する。
図13は、本実施形態における台車20’を示す図である。
前述の第2実施形態と異なる点について説明する。
【0056】
本実施形態では、台車フレーム21bに、レール部材28を下方から支持するための架台21cが設けられている。また、台車フレーム21bには反力壁21dが立設されており、この反力壁21dに形成された雌ネジ部21eに長ボルト21fの雄ネジ部が螺合している。長ボルト21fの雄ネジ部の一端には頭部21gがあり、他端には押圧板21hが取り付けられている。長ボルト21fの頭部21gを電動ドライバー(例えばインパクトドライバー)で回すことで、押圧板21hを介して、ターンテーブル22上の腹起32をレール部材28側に押圧し、レール部材28上をスライドさせて、ブラケット5上に載置することができる。ここで、
図13には、ブラケット5上における腹起32の載置位置(架設位置)が一点鎖線で示されている。
【0057】
本実施形態では、ブラケット5の高さ位置と、レール部材28の高さ位置と、ターンテーブル22の高さ位置とが一致するように、各々が高さ調整されることが好ましい。この高さ調整に前述の昇降装置50が用いられ得ることは言うまでもない。
【0058】
また、本実施形態において、ターンテーブル22上の腹起32がターンテーブル22の水平旋回に伴って水平旋回する際に反力壁21dに接触することを防ぐために、反力壁21dが起伏可能に構成されてもよく、又は、着脱可能に台車フレーム21bに取り付けられていてもよい。この点は、架台21cについても同様である。
【0059】
また、本実施形態における台車本体21’の代わりに前述の第1実施形態における台車本体21を用いてもよいことは言うまでもない。
【0060】
前述の第1~第3実施形態では、腹起31,32及び副部材33の運搬に台車20,20’が用いられているが、これに加えて、切梁の運搬に台車20,20’が用いられてもよい。
【0061】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
尚、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
水平旋回可能なターンテーブルを備えて床付け面上を走行可能な台車を用いて、土留壁に支保工を設置する方法であって、
前記支保工は腹起を含み、
前記方法は、
前記ターンテーブルに前記腹起を載置した状態で、前記台車を、前記土留壁の近傍まで走行させる第1の工程と、
前記土留壁の近傍にて前記ターンテーブルを水平旋回させることにより、前記腹起の向きを変更する第2の工程と、
前記土留壁に設けられたブラケットにレール部材の一端側を連結する第3の工程と、
前記向きが変更された前記腹起を、前記レール部材の一端側に向けて前記レール部材上をスライドさせて、前記ブラケットに載置する第4の工程と、
を含む、支保工の設置方法。
[請求項2]
前記第1の工程では、上面視で、前記土留壁の延在方向に対して交差する方向に前記台車を走行させ、
前記第1の工程では、上面視で、前記ターンテーブル上の前記腹起が、前記台車の走行方向に沿う方向に延在する、請求項1に記載の支保工の設置方法。
[請求項3]
前記第1の工程では、上面視で、前記土留壁の延在方向に対して直交する方向に前記台車を走行させ、
前記第2の工程では、上面視で、前記ターンテーブルを略90°旋回させる、請求項2に記載の支保工の設置方法。
[請求項4]
前記台車は、床付け面上を走行する台車本体と、前記台車本体に対して前記ターンテーブルを昇降可能なように構成される昇降装置と、を備える、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
[請求項5]
前記支保工は、前記ブラケットに載置された前記腹起に当接する支保部材を更に含み、
前記方法は、
前記支保部材を前記台車に載置した状態で、前記台車を、前記土留壁の近傍まで走行させる第5の工程と、
前記支保部材を前記台車から降ろして建て起こす第6の工程と、
を含む、請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
[請求項6]
前記第6の工程では、前記支保部材の貫通孔に通されたワイヤの両側を引っ張ることで、前記支保部材を建て起こす、請求項5に記載の支保工の設置方法。
[請求項7]
土留壁に支保工を設置する方法であって、
前記支保工は、前記土留壁に設けられたブラケットに載置された腹起と、前記腹起に当接する支保部材と、を含み、
前記方法は、前記土留壁の近傍まで運搬された前記支保部材を建て起こす建て起こし工程を含み、
前記建て起こし工程では、前記支保部材の貫通孔に通されたワイヤの両側を引っ張ることで、前記支保部材を建て起こす、支保工の設置方法。
[請求項8]
前記ワイヤを引っ張る引張手段が前記腹起に設けられる、請求項6又は請求項7に記載の支保工の設置方法。
[請求項9]
前記支保部材は、前記腹起と切梁との間に介装される、請求項5~請求項8のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
[請求項10]
鉄道の軌道を支持する工事桁が前記床付け面の上方に位置し、
前記工事桁の下端部と前記床付け面との間の距離が、500mm~3000mmの範囲内である、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の支保工の設置方法。
【符号の説明】
【0062】
1…土留壁、2…親杭、3…横矢板、5…ブラケット、10L,10R…軌道、10LC,10RC…中心線、11L,11R…工事桁、12…かんざし桁、13…床付け面、14…中間杭、15…レール、20,20’…台車、21,21’…台車本体、21a…クローラ、21b…台車フレーム、21c…架台、21d…反力壁、21e…雌ネジ部、21f…長ボルト、21g…頭部、21h…押圧板、22…ターンテーブル、23…支持軸、24…固縛手段、25…走行用車輪、26…車輪止め、28…レール部材、28a…一端側、28b…他端側、30…支保工、31,32…腹起、33…副部材、33a…補強板、34…裏込材、37…ブラケット、38,40…ワイヤ、41…ブラケット、42…レバーブロック(登録商標)、50…昇降装置、51…大ネジ、L…距離、P…施工空間、Q…領域